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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20241227BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/28 500
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022559894
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021058521
(87)【国際公開番号】W WO2021198380
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】20315116.2
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ダスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】カイ・シャイネルト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・オールンハンマー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアーン・シャーデルナ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ティム・シュラー
(72)【発明者】
【氏名】ロビー・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ノーブル
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・アントニー・マッギンリー
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514585(JP,A)
【文献】特表2014-519922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(110)であって:
近位端(P)および遠位端(D)を有し、薬剤容器(118)を受けるように構成された、長形ハウジング(111)と;
該ハウジング内でプライミング位置と完了位置との間を長手方向に移動可能であり、ハウジングに受け入れられるときに薬剤容器と係合可能になるように構成された、プランジャロッド(121)と;
を含み、
ここで、ハウジングは、該ハウジングの近位領域に配置されたインジケータ(124)を含み;該インジケータはスピンドル(126)を含み、該スピンドルは軸(127)およびダイヤル(128)を含み、
スピンドル(126)の軸は、プランジャロッド(121)のねじ機構(135)と係合するように構成されたねじ機構(136)を含み、その結果、プライミング位置から完了位置に向かうプランジャロッドの長手方向の動きによりスピンドルのダイヤル(128)が回転し、プランジャロッドの長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようになっており
スピンドル(126)は、長手方向に動くことがハウジング(111)によって防止されている、
前記注射デバイス。
【請求項2】
スピンドル(126)は、長手方向の動きが制限されており、プランジャロッド(121)に対して回転可能である、請求項1に記載の注射デバイス(110)。
【請求項3】
ダイヤル(128)は、使用時に、ダイヤルの遠位面(133)がハウジングの近位端に接触し、ダイヤルの近位面(134)が、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようにデバイスの外を向くように、ハウジング(111)の近位端に配置されている、請求項1または請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項4】
ダイヤル(128)は、該ダイヤルの近位面(134)が、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようにハウジングの外を向くように、ハウジング(111)の内側でハウジングの近位端に配置されている、請求項1または請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項5】
ダイヤル(128)の近位面(134)は、注射プロセスの進捗に関連する触覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された表面形態(156)を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項6】
ハウジング(111)は、ダイヤル(128)の近位面(134)を覆うようにハウジングの近位端から延びるカバー(146)を含み、該カバーは、ダイヤルが注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供できるように構成されている、請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項7】
ダイヤル(128)は、ハウジング(111)の近位端の内側に収容されており、ハウジングはさらに、その側面にディスプレイ窓を含み、そこを通してダイヤルの側面(145)を見ることができ、ダイヤルの側面は、注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された印を含む、請求項1または請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項8】
ねじ機構(135、136)は、プランジャロッド(121)およびスピンドル(126)の軸(127)の少なくとも一方に連続的なねじ山(172)を含み、該連続的なねじ山は、注射プロセスの進捗についての持続的なフィードバックを提供するように構成されている、請求項1に記載の注射デバイス(110)。
【請求項9】
ねじ機構(135、136)は、プランジャロッド(121)およびスピンドル(126)の軸(127)の一方に不連続のねじ山(181)を含み、該不連続のねじ山は、注射プロセスの進捗についての事象特有のフィードバックを提供するように構成されている、請求項1または請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項10】
プランジャロッド(121)は、中空であり、スピンドル(126)の軸(127)を受けるように構成された開放型近位端を含み、プランジャロッドはその内面(166)にねじ山(135)を含み、軸(127)はその外面(171)にねじ山(136)を含む、請求項または請求項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項11】
ハウジング(111)内でプランジャロッド(121)と注射デバイスの遠位端との間に受けられる薬剤容器(118)をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の注射デバイス(110)。
【請求項12】
請求項1に記載の注射デバイスの作動方法であって:
付勢要素が、プランジャロッドハウジング内でプライミング位置から完了位置に長手方向に動かように注射デバイスを作動させることと;
付勢要素がプランジャロッドをハウジング内でプライミング位置から完了位置に長手方向に動かした際に、インジケータがプランジャロッドの長手方向位置に関連する情報を提供することと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤用の注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射デバイス、たとえば自己注射器は、典型的には、封止された薬剤容器と、患者に薬剤を注射するための針とを有する。あるタイプのデバイスでは、薬剤容器は、薬剤カートリッジを含むことができ、初めは針がカートリッジとは別になっている。最初の操作でカートリッジおよび針が共に動いて、針がカートリッジを穿孔する。別のタイプのデバイスでは、薬剤容器は、薬剤を収容するシリンジを含むことができ、針はシリンジに固定されている。いずれの場合も、次に、プランジャまたはピストンは、注射針を通して患者に薬剤を投薬するためにカートリッジまたはシリンジ内で動くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一目的は、ピストンロッド解放機構を有する有利な注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、注射デバイスであって、近位端および遠位端を有し、薬剤容器を受けるように構成された、長形ハウジングと、ハウジング内でプライミング位置と完了位置との間を長手方向に移動可能であり、ハウジングに受け入れられるときに薬剤容器と係合可能になるように構成された、プランジャロッドとを含み;ここで、ハウジングは、ハウジングの近位領域に配置されたインジケータを含み;インジケータはスピンドルを含み、スピンドルは軸およびダイヤルを含み、スピンドルの軸は、プランジャロッドのねじ機構と係合するように構成されたねじ機構を含み、その結果、プライミング位置から完了位置に向かうプランジャロッドの長手方向の動きによりスピンドルのダイヤルが回転し、プランジャロッドの長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようになっている、注射デバイスが提供される。
【0005】
好ましくは、ハウジングの遠位端は注射部位に比較的近く、近位端は注射部位から比較的離れている。
【0006】
好ましくは、スピンドルは、長手方向の動きが制限されており、プランジャロッドに対して回転可能である。
【0007】
いくつかの実施形態では、スピンドルは、長手方向に動くことがハウジングによって防止されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、ダイヤルは、使用時に、ダイヤルの遠位面がハウジングの近位端に接触し、ダイヤルの近位面が、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようにデバイスの外を向くように、ハウジングの近位端に配置することができる。
【0009】
他の実施形態では、ダイヤルは、ダイヤルの近位面が、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するようにハウジングの外を向くように、ハウジングの内側でハウジングの近位端に配置することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ダイヤルの近位面は、注射プロセスの進捗に関連する触覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された表面形態を含むことができる。
【0011】
ハウジングは、ダイヤルの近位面を覆うようにハウジングの近位端から延びるカバーを含むことができ、カバーは、ダイヤルが注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供できるように構成されている。
【0012】
一実施形態では、ダイヤルは、ハウジングの近位端の内側に収容されており、ハウジングはさらに、その側面にディスプレイ窓を含み、そのディスプレイ窓を通してダイヤルの側面を見ることができ、ダイヤルの側面は、注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された印を含む。
【0013】
好ましくは、ねじ機構は、プランジャロッドおよびスピンドルの軸の少なくとも一方に連続的なねじ山を含み、連続的なねじ山は、注射プロセスの進捗についての持続的なフィードバックを提供するように構成されている。
【0014】
好ましくは、プランジャロッドおよびスピンドルの軸の少なくとも一方の連続的なねじ山は、プランジャロッドのプライミング位置と完了位置との間の長手方向距離以上の距離にわたって延びる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ねじ機構は、プランジャロッドおよびスピンドルの軸の一方に不連続のねじ山を含むことができ、不連続のねじ山は、注射プロセスの進捗についての事象特有のフィードバックを提供するように構成されている。
【0016】
プランジャロッドは、中空でよく、スピンドルの軸を受けるように構成された、開放型近位端を含むことができ、プランジャロッドはその内面にねじ山を含み、軸はその外面にねじ山を含む。
【0017】
注射デバイスはさらに、ハウジング内でプランジャロッドと注射デバイスの遠位端との間に受けられる薬剤容器を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、インジケータは、ハウジングの側壁に配置されたディスプレイ窓と、プランジャロッドから延び、プランジャロッドの近位端に連結されており、少なくともプライミング位置においてはディスプレイ窓を通して視認可能である、近位に延びる突出部とを含む。
【0019】
インジケータはさらに、インジケーション要素を含むことができ、突出部は、少なくともプライミング位置ではインジケーション要素のユーザの視認を妨げるように、ディスプレイ窓とインジケーション要素との間に配置されている。
【0020】
突出部は、軸に沿うようにプランジャロッドに連結されており、プランジャロッドがプライミング位置から完了位置に動かされるときに、第1のインジケート位置と第2のインジケート位置との間を動くように構成されており、第2のインジケート位置に向かって突出部が動くと、インジケーション要素のより大きい部分がディスプレイ窓を通して視認可能にされる。
【0021】
突出部が第1のインジケーション位置にあるときは、突出部の近位端は、ディスプレイ窓の近位端に配置されている。
【0022】
突出部が第1のインジケート位置にあるときは、突出部だけがディスプレイ窓を通して視認可能である。
【0023】
突出部が第2のインジケート位置にあるときは、突出部の近位端は、ディスプレイ窓の遠位端に配置される。
【0024】
突出部が第2のインジケート位置にあるときは、インジケーション要素だけがディスプレイ窓内で視認可能である。
【0025】
突出部は、注射プロセスの間はディスプレイ窓と位置合わせされたままであるように、プランジャロッドから回転不能にデカップリングされる。
【0026】
ハウジングの内面は、プランジャロッドの長手方向軸周りでの突出部の回転運動を制限するように構成された案内機構を含むことができる。
【0027】
ハウジングはさらに、ハウジングの遠位領域に、第2のディスプレイ窓を含む第2のインジケータを含むことができ、プランジャロッドがそのプライミング位置にありかつ薬剤容器がハウジングに受け入れられるときは、薬剤容器は第2のディスプレイ窓を通して視認可能であり、プランジャロッドが長手方向において完了位置に動かされるときは、プランジャロッドの遠位端は、第2のディスプレイ窓の遠位端に配置されている。
【0028】
プランジャロッドおよびインジケーション要素は、同じ印を含むことができ、突出部は、プランジャロッドおよびインジケーション要素とは異なる印を含む。
【0029】
注射デバイスはさらに、ハウジングの周りを延びるように構成された外側スリーブを含むことができ、外側スリーブは、長手方向において、外側スリーブがインジケータをカバーするハウジングの近位端の第1の位置から、外側スリーブがインジケータを露出するハウジングの遠位端の第2の位置に移動可能である。
【0030】
本発明の別の目的は、注射デバイスを使用する方法であって:プランジャロッドがハウジング内でプライミング位置から完了位置に長手方向に動かされるように注射デバイスを作動させることと;プランジャロッドの長手方向位置に関連する情報を、インジケータを用いて提供することとを含む、方法を提供することである。
【0031】
本発明のこれらのおよび他の態様は、本明細書で以下に記載される実施形態を参照することで明らかになり解明される。
【0032】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】本発明を実施する注射デバイスおよび着脱可能なキャップの概略側面図である。
図1B】キャップがハウジングから取り外された、図1Aの注射デバイスの概略側面図である。
図2】プライミング位置にある、本発明による注射デバイスの斜視図である。
図3】完了位置にある、図2の注射デバイスの概略斜視図である。
図4】使用中に保持されている、図2の注射デバイスの概略側面図である。
図5】注射プロセスの開始時に保持されている外側スリーブをさらに含む、図2の注射デバイスの概略側面図である。
図6】注射プロセス中に保持されている、図5の注射デバイスの概略側面図である。
図7】プライミング位置にある、本発明による注射デバイスの概略断面図である、
図8】プランジャロッドが完了位置に向かって動かされている、図7の注射デバイスの概略断面図である。
図9図7の注射デバイスの近位端における、ダイヤルの代替的な配置の概略断面図である。
図10図7の注射デバイスの近位端における、ダイヤルの代替的な配置の概略断面図である。
図11図7の注射デバイスのダイヤルの配置上の印の実施形態を集めたものを示す。
図12図7の注射デバイスの代替的なねじ係合の概略断面図を示す。
図13図7の注射デバイスのプランジャロッドおよびスピンドルの代替的な配置の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
薬物送達デバイスは、本明細書に記載されているように、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内の場合がある。こうしたデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの介護者が操作することもでき、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自己注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要がある、カートリッジベースのシステムを含むことができる。これら様々なデバイスを用いて送達される薬剤の体積は約0.5mlから約3mlの範囲にわたることがある。別のデバイスは、「大」量の薬剤(典型的には、約2mlから約50ml)を送達するために、ある期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分間)患者の皮膚に貼り付くように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。さらに別のデバイスは、デバイスのハウジング内に充填済みシリンジを含むことができる。シリンジは、ハウジング内で固定することもでき、ハウジング内で、たとえば後退位置から動作伸長位置まで、移動可能にすることもできる。
【0035】
特定の薬剤と組み合わせることで、要求される規格内で動作させるために、現在説明しているデバイスをカスタマイズすることもできる。たとえば、デバイスは、一定の期間(たとえば、自己注射器の場合は約3から約20秒間、LVDの場合は約10分から約60分間)以内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の規格には、低いレベルもしくは最小限のレベルの不快感、または人的要因、保存期間、使用期限、生体適合性、環境への配慮に関する一定の条件などが含まれる場合がある。このような変更は、たとえば、粘度が約3cPから約50cPの薬物など、様々な因子により起こることがある。その結果、薬物送達デバイスは、サイズが約25から約31ゲージの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは17および29ゲージである。
【0036】
本明細書に記載されている送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動式機能を含むこともできる。たとえば、針とカートリッジとを組み合わせること、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動式工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給することができる。エネルギー源は、たとえば力学的エネルギー、空圧エネルギー、化学エネルギー、または電気エネルギーを含むことができる。たとえば、力学的エネルギー源は、エネルギーを蓄積または放出する、ばね、てこ、エラストマー、または他の機械的な機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単回デバイスに組み込むことができる。デバイスはさらに、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換する、ギア、バルブ、または他の機構を含むことができる。
【0037】
自己注射器の1つまたはそれ以上の自動式機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。このような起動機構は、アクチュエータ、たとえばボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動式機能の起動は、1工程または複数工程のプロセスでよい。すなわち、ユーザは、自動式機能を始動するために1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動させる必要がある場合がある。たとえば、1工程プロセスでは、ユーザは、薬剤の注射を行うために、自身の身体に対してニードルスリーブを押し下げることができる。他のデバイスは、自動式機能の複数工程の起動を必要とする場合がある。たとえば、ユーザは、注射を行うために、ボタンを押し下げ、ニードルシールドを後退させる必要がある場合がある。
【0038】
さらに、1つの自動式機能の起動が、1つまたはそれ以上の後続の自動式機能を起動させて、起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動式機能の起動が、針とカートリッジとを組み合わせること、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動させることができる。いくつかのデバイスは、1つまたはそれ以上の自動式機能を始動させるように、特定のシーケンスの工程を必要とすることもある。他のデバイスは、一連の独立した工程を用いて動作することもできる。
【0039】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自己注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された力学エネルギー源(典型的には、自己注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的には、ペン注射器に見られる)を含むこともできる。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび図1Bに示されている。デバイス10は、上述のように、患者の身体に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10はハウジング11を含み、ハウジング11は、典型的には、注射予定の薬剤を収容するリザーバを画成するカートリッジまたは充填済みシリンジと、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要な構成要素とを含む。
【0041】
デバイス10はキャップ12も含むことができ、キャップ12は、ハウジング11に着脱可能に取り付けることができる。典型的には、ユーザは、デバイス10が動作可能になる前に、ハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0042】
図示のように、ハウジング11は、実質的に円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って直径が実質的に一定である。ハウジング11は遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。「遠位」という用語は注射部位に比較的近い方の位置を指し、「近位」という用語は注射部位から比較的離れた方の位置を指す。
【0043】
デバイス10はニードルスリーブ19も含むことができ、ニードルスリーブ19は、ハウジング11に対するスリーブ19の動きを可能にするようにハウジング11に連結されている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに平行な長手方向に動くことができる。詳細には、スリーブ19が近位方向に動くことで、針17をハウジング11の遠位領域Dから伸長可能にすることができる。
【0044】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定して配置することができ、最初は、伸長したニードルスリーブ19内に配置することができる。患者の身体に接するようにスリーブ19の遠位端を置いてハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ19を近位に動かすと、針17の遠位端が露出する。このような相対運動により、針17の遠位端が患者の身体中に伸長することが可能になる。このような挿入は、スリーブ19に対してハウジング11を患者が手動で動かすことで針17が手動で挿入されるため、「手動」の挿入と呼ばれる。
【0045】
挿入の別の形態は、ハウジング11に対して針17が動く「自動式」である。このような挿入は、スリーブ19の動きによって、または別の形態の起動、たとえばボタン13などによってトリガすることができる。図1Aおよび図1Bに示されているように、ボタン13はハウジング11の近位端に配置されている。しかし、他の実施形態では、ボタン13はハウジング11の側面に配置することもできる。
【0046】
他の手動または自動の機能は、薬物の注射もしくは針の後退またはその両方を含むことができる。注射は、カートリッジ18から針17を通して薬剤を押し出すために、栓またはピストン14がカートリッジ18のリザーバ内で近位の位置からより遠位の位置に動かされるプロセスである。いくつかの実施形態では、ドライブばね(図示せず)は、デバイス10が起動される前には圧縮下にある。ドライブばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内で固定することができ、ドライブばねの遠位端は、ピストン14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動の後に、ドライブばねに蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を、ピストン14の近位面に加えることができる。こうした圧縮力はピストン14に作用してピストン14を遠位方向に動かすことができる。このような遠位の動きがカートリッジ18内の液体薬剤を圧縮するように作用して、薬剤が針17から押し出される。
【0047】
注射の後に、針17は、スリーブ19またはハウジング11内に後退することができる。後退は、ユーザが患者の身体からデバイス10を取り除いてスリーブ19が遠位に動くときに行われる。これは、針17がハウジング11に対して固定して配置されたままであるので行われる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を越えて動かされ、針17がカバーされると、スリーブ19をロックすることができる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19の任意の近位の動きをロックすることを含むことができる。
【0048】
針後退の別の形態は、針17がハウジング11に対して動かされる場合に行われる。このような動きは、ハウジング11内のカートリッジ18がハウジング11に対して近位方向に動かされる場合に行われる。この近位の動きは、遠位領域Dに配置されている牽引ばね(図示せず)を用いることによって実現することができる。圧縮された牽引ばねは、起動時に、カートリッジ18を近位方向に動かすのに十分な力を供給することができる。十分な後退の後に、針17とハウジング11との間の相対運動はいずれもロッキング機構を用いてロックすることができる。さらに、ボタン13またはデバイス10の他の構成要素を必要に応じてロックすることができる。
【0049】
ここで図2を参照すると、本発明の注射デバイス20の実施形態が示されている。本発明の注射デバイス20は、上記で説明したデバイス10と同様であり、したがって、上記で説明したデバイス10の構成および構成要素と同じデバイス20の構成および構成要素は、同じ用語および参照番号のままである。
【0050】
注射デバイス20は、薬剤容器18、すなわち、カートリッジを受けるように構成されたハウジング11を含む。薬剤容器18は、薬剤を受けるような容器、または少なくとも部分的に薬剤で充填された容器を指すことができる。ハウジング11は長形であり、近位端Pおよび遠位端Dを含む。薬剤容器18は、ハウジング11の遠位領域D’に受け入れられる。すなわち、薬剤容器18は、ハウジング11の近位端Pよりも、ハウジング11の遠位端Dの近くに配置されている。
【0051】
以下の説明のために、遠位領域D’は、ハウジング11のうちの、ハウジングの近位端Pよりもハウジング11の遠位端Dに近い部分であると見なすことができる。ハウジング11の近位領域P’は、ハウジング11のうちの、ハウジング11の遠位端Dよりもハウジング11の近位端Pに近い部分であると見なすことができる。
【0052】
図2および図3では、注射デバイス20の内部の構成要素をより明確に見せるために、注射デバイス20のハウジング11は部分的に透けて見えるように示されている。分かりやすくするために、キャップ12およびニードルスリーブ19など、注射デバイス20のいくつかの構成要素は、話を簡単にするために図2および図3に示していない。
【0053】
注射デバイス20はさらに、プランジャロッド21を含み、プランジャロッド21は、ハウジング11内で図2に示されたプライミング位置と図3に示された完了位置との間を長手方向に移動可能である。好ましくは、プランジャロッド21は、そのプライミング位置にあるときは、完全でなければ大部分が近位領域P’に配置されており、その完了位置にあるときは、大部分が遠位領域D’に配置されている。したがって、プランジャロッド21は、注射が進行する間に、ハウジング11の近位領域P’からハウジング11の遠位領域D’に移動可能である。いずれの場合も、プランジャロッド21は、その完了位置に配置されているときはプライミング位置にあるときよりも、ハウジング11の遠位端Dの近くに配置されている。
【0054】
注射デバイス20はさらに、薬剤容器18を含む。プランジャロッド21は遠位端22および近位端23を含む。薬剤容器18は、ハウジング11内でプランジャロッド21と注射デバイス20の遠位端Dとの間で受けられる。
【0055】
プランジャロッド21は、その遠位端22に配置されている栓14を含む。栓14は、封止を形成するために薬剤容器18の側壁に接触するように構成されており、そうすることで、プランジャロッド21が長手方向においてプライミング位置から遠位位置に向かって遠位方向に動かされるときに薬剤が針17を通して容器18から押し出される。
【0056】
注射デバイス20はさらに、インジケータ24を含む。インジケータ24は、ハウジング11の近位領域P’に配置されている。好ましくは、インジケータ24は、近位端Pの領域に配置されている。すなわち、好ましくは、インジケータ24は、ハウジング11の近位端Pでなければその近くに配置されている。インジケータ24は、プライミング位置と完了位置との間のプランジャロッドの長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように構成されている。
【0057】
本実施形態では、インジケータ24はディスプレイ窓25を含む。ディスプレイ窓25はハウジング11の側壁に配置されている。ディスプレイ窓25は遠位端28aおよび近位端28bを含む。ディスプレイ窓25は、ハウジング11の近位領域P’に配置されている。好ましくは、ディスプレイ窓25は、全体がハウジング11の近位領域P’に配置されている。さらにより好ましくは、ディスプレイ窓は、ハウジング11の近位端Pの近くに配置されている。すなわち、好ましくはディスプレイ窓25の近位端28bは、ハウジング11の近位端Pの隣に配置されている。ディスプレイ窓25がハウジング11の近位端Pの近くに位置することで、ユーザが注射デバイス20をハウジング11の遠位端Dのより近くで把持することが可能になり、そうすることで、ユーザの手が注射部位により近くなるため注射中のデバイス20の安定性が改善される。ディスプレイ窓25がハウジング11の近位端Pの近くに位置すると、やはり、ユーザがデバイス20をその遠位端Dの近くで保持することを可能にしながら、図4に示されているように、依然としてインジケータ24および注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザが見ることが可能になる。
【0058】
図2および図3では、ディスプレイ窓25は、ハウジング11の側壁において矩形のアパーチャ27として示されている。ディスプレイ窓25は、ハウジング11の長手方向軸に平行に延びる長手方向軸を有する。ディスプレイ窓25の長手方向長さ、すなわち、遠位端28aと近位端28bとの間の距離は、プランジャロッド21がそのプライミング位置と完了位置との間で動かなければならない長手方向距離に実質的に等しい。
【0059】
ディスプレイ窓25が、限定されるものではないが、三角形、円形、または曲線を含む任意の他の形状でもよいことが理解されよう。さらに、好ましくは長手方向の隙間によって離間した、2つ以上のディスプレイ窓25をハウジング11の側壁に配置してよいことが理解されよう。ディスプレイ窓25はカバー29を含むことができ、カバー29は、デブリが注射デバイス20のハウジング11に入ることを防止するように構成されている。カバー29は、ユーザがディスプレイ窓25を通してデバイス20の中を見ることができるように構成することができる。すなわち、カバーは透明または半透明でよい。
【0060】
インジケータ24はさらに、近位に延びる突出部30を含む。突出部30は遠位端31および近位端32を含む。突出部30は、プランジャロッド21に連結されており、プランジャロッド21から離れて近位方向に延びる。好ましくは、突出部30の遠位端31が、プランジャロッド21に連結されている。突出部30は、少なくともプランジャロッド21がそのプライミング位置にあるときは、ディスプレイ窓25を介して視認可能になるように構成されている。
【0061】
突出部30は外向きの面33を含み、その面33は、少なくともプランジャロッド21がそのプライミング位置にあるときは、ディスプレイ窓25を通して視認されるように構成されている。外向きの面33は、突出部の長手方向に突出するアーム34に配置されている。好ましくは、突出部30の遠位端31は、プランジャロッド21の近位領域において、すなわち、プランジャロッド21の近位端23の近くで、プランジャロッド21に連結されている。突出部30の遠位端31はフランジ35を含むことができ、フランジ35は、突出部30のアーム34の遠位端31をプランジャロッド21の近位領域に連結している。
【0062】
図2に示されているように、突出部30は、突出部30の大部分がプランジャロッド21の近位端よりもハウジング11の遠位端Dから離れるように配置されるように近位方向に延びる。すなわち、突出部30のアーム34の近位端32は、プランジャロッド21の近位端23から離間しており、ハウジング11の近位端Pのより近くに配置されている。
【0063】
インジケータ24はさらにインジケーション要素36を含む。インジケーション要素36は、ディスプレイ窓25と同じ長手方向位置に配置されている。いくつかの実施形態では、インジケーション要素36は、ディスプレイ窓25の面積よりもわずかに大きい面積をカバーすることができる。インジケーション要素36も、ディスプレイ窓25、およびプランジャロッド21から延びる突出部30のアーム34の径方向内側に配置されている。突出部30のアーム34は、ディスプレイ窓25とインジケーション要素36との間に配置されている。突出部30のアーム34は、少なくともプランジャロッド21がそのプライミング位置にあるときは、インジケーション要素36のユーザの視認を妨げるように構成されている。
【0064】
突出部30は、軸に沿うようにプランジャロッド21に連結されている。突出部30は、プランジャロッド21が図2に示されたプライミング位置から図3に示された完了位置に動かされるときに、図2に示された第1のインジケーション位置Aと、図3に示された第2のインジケーション位置Bとの間を動くように構成されている。したがって、プランジャロッド21が長手方向に動くと、突出部30が長手方向に同じ量だけ動く。さらに、第1のインジケート位置Aから第2のインジケート位置Bに向かって突出部30が動くと、インジケーション要素36のより大きい部分がディスプレイ窓25を通して視認可能にされる。
【0065】
一実施形態では、突出部30が第1のインジケーション位置Aに配置されているときは、図2に示されているように、突出部30のアーム34の近位端32は、ディスプレイ窓25の近位端28bに配置されている。このような実施形態では、インジケーション要素36のほとんどは、ディスプレイ窓25を通した視認が突出部30のアーム34によって妨げられて、プランジャロッド21がそのプライミング位置にあることを示すことができる。別の実施形態では、突出部30が第1のインジケーション位置Aに配置されているときは、突出部30のアーム34だけがディスプレイ窓25を通して視認可能であり、プランジャロッド21がそのプライミング位置にあることを示すことができる。
【0066】
一実施形態では、突出部30が第2のインジケート位置Bに配置されているときは、突出部30の近位端32は、ディスプレイ窓25の遠位端28aに配置されている。このような実施形態では、インジケーション要素36のほとんどを、ディスプレイ窓25を通して視認可能にすることができる。すなわち、突出部30が第2のインジケート位置Bに配置されているときは、インジケーション要素36のごく一部だけが、ディスプレイ窓を通した視認を突出部30のアーム34によって妨げられて、プランジャロッド21がその完了位置にあることを示すことができる。別の実施形態では、突出部30が第2のインジケーション位置Bに配置されているときは、インジケーション要素36だけが、ディスプレイ窓25を通して視認可能であり、図3に示されているようにプランジャロッド21がその完了位置にあることを示すことができる。すなわち、突出部30がその第2のインジケート位置Bにあるときは、突出部30のアーム34は、ディスプレイ窓25を通して視認可能にできない。
【0067】
一実施形態では、プランジャロッド21は、純粋に長手方向の運動に制限される。このような実施形態では、突出部30はプランジャロッド21と一体形成することができる。代替として、突出部30は、プランジャロッド21の近位領域に固定して取り付けることができる。このような実施形態では、図2に示されたプライミング位置から図3に示された完了位置へのプランジャロッド21の純粋に長手方向の運動は、突出部30が長手方向にだけ動き、したがって、注射プロセス中は常にディスプレイ窓25と一列になることを意味する。
【0068】
別の実施形態では、プランジャロッド21は、プライミング位置から完了位置へのその長手方向の運動中に回転可能に動くことができる。このような実施形態では、突出部30は、注射プロセスの間はディスプレイ窓25と位置合わせされたままであるように、プランジャロッド21から回転不能にデカップリングされる。したがって、プランジャロッド21の回転運動はいずれも、突出部30の回転を引き起こすことはなく、したがって、回転運動によって突出部30がディスプレイ窓から移動されることはない。
【0069】
突出部30は、図3に示されている案内機構40によって、長手方向の動きに制限される。案内機構40は案内要素41を含むことができる。案内要素41は、ハウジング11の内面42に配置することができる。案内要素41は、プランジャロッド21の長手方向軸周りでの突出部の回転運動を防止するように構成することができる。一実施形態では、案内要素41は、ハウジング11の内面42から内向きに突出することができる。案内要素41は、ハウジング11の内面42に沿って長手方向に延びることができる。案内要素41は、突出部30が回転してディスプレイ窓25から離れることを防止するように、ディスプレイ窓25の周縁に沿って延びることができる。長手方向軸周りでの両方向の回転を防止するために、ディスプレイ窓25の両側に案内要素41を1つずつ配置することができる。
【0070】
案内機構40は、突出部がプランジャロッド21に固定して取り付けられているときは、専ら突出部30のまたは突出部30およびプランジャロッド21の回転を防止するために使用することができる。
【0071】
プランジャロッド21と突出部30とが別々に形成され、後から互いに固定される実施形態では、突出部30はさらに連結要素44を含むことができる。連結要素44は、フランジ35の端部において、アーム34に対向するように配置されている。連結要素44は、限定されるものではないが、たとえば、プランジャロッド21の近位領域の周りに嵌合する2つのアームを有するスナップ嵌め連結、またはプランジャロッド21の溝に配置された環状のリングを含むことができる。これらのタイプの連結要素44は、突出部30に対するプランジャロッド21の回転を可能にする。
【0072】
一実施形態では、突出部30は、長手方向に延びるアーム34の代わりに、環状の要素(図示せず)を含むことができる。環状の要素は、長手方向軸周りで最大360度延びることができ、そうすることで、突出部30がプランジャロッド21に対して回転しても、突出部30がディスプレイ窓25から離れることがなくなる。
【0073】
突出部30の外向きのアーム34およびインジケート要素36は、ユーザが任意の時間に注射プロセスの進捗を判定するのを助けるように構成された異なる印を含む。突出部30の外向きのアーム34は第1の印を含み、インジケート要素36は、第1の印とは異なる第2の印を含む。印は、限定されるものではないが、たとえば、1つまたはそれ以上の色、色の濃淡、模様、画像、または数目盛などでよい。
【0074】
注射デバイス20は機械的に駆動することができる。インジケータ24は機械的インジケータでよい。たとえば、図2および図3に示された注射デバイス20は、付勢要素46を含む。本実施形態では、付勢要素はつる巻きばね47である。注射デバイス20が作動され、プランジャロッド21が自由に遠位に動くときに、付勢要素46は、ハウジング11の遠位端Dに向かってプランジャロッド21を付勢する。ばね47は、プランジャロッド21をその完了位置に向かって付勢するために、突出部30のフランジ35またはプランジャロッド21の近位端23に当接してよい。長手方向においてプランジャロッド21が遠位方向に運動すると、長手方向において突出部30も遠位方向に運動し、突出部のアーム34の近位端32がディスプレイ窓25の近位端から遠位方向にディスプレイ窓25の遠位端28aに向かって動いて、インジケーション要素36が見えるようになる。ばね47がさらに伸長すると、突出部30の近位端32は、ディスプレイ窓25の遠位端28aのより近くに動き、インジケーション要素36がさらに見えるようになる。
【0075】
一実施形態では、注射デバイス20のハウジング11はさらに、第2のインジケータ50を含むことができる。第2のインジケータ50は、遠位端52および近位端53を有する第2のディスプレイ窓51を含む。第2のディスプレイ窓は、ハウジング11の遠位領域D’に配置されている。すなわち、第2のインジケータはハウジング11の遠位端Dのすぐ近くに配置されている。第2のディスプレイ窓51は、カバー54を含むこともできる。プランジャロッド21がそのプライミング位置にあり、薬剤容器18がハウジング11に受け入れられているときは、薬剤容器18は第2のディスプレイ窓25を通して視認可能である。
【0076】
プランジャロッド21が長手方向に完了位置に向かって動かされると、プランジャロッド21の遠位端22は第2のディスプレイ窓51に沿って動かされる。プランジャロッド21がその完了位置に動かされるときは、プランジャロッド21の遠位端22は、第2のディスプレイ窓51の遠位端に配置することができる。
【0077】
プランジャロッド21、突出部30、およびインジケーション要素36は印を含むことができる。一実施形態では、プランジャロッド21および突出部30は第1の印を含むことができ、インジケーション要素36は、第1の印とは異なる第2の印を含むことができる。このような配置において、その印は、第1および第2のディスプレイ窓25、52を通した第1の印の動きによって、ならびにプランジャロッド21がそのプライミング位置からその完了位置に動かされるにつれてインジケーション要素36の面積のサイズが増大することによって、プランジャロッド21が動いた距離をユーザに示す。
【0078】
代替の実施形態では、プランジャロッド21およびインジケーション要素36は第1の印を含むことができ、突出部30は、第1の印とは異なる第2の印を含むことができる。好ましくは、突出部30の第2の印は、薬剤容器18の薬剤の外観と同様である。このような配置において、第2の印が、プランジャロッドがどの程度遠くまで動いたかを表し、第1の印が、プランジャロッド21がプロセス終了にどの程度近いかを表すため、注射プロセスの進捗はユーザに明らかである。
【0079】
図5および図6を簡単に参照すると、注射デバイス20はさらに、外側スリーブ55を含むことができる。外側スリーブ55は、ハウジング11の周りを延びるように構成されている。さらに、外側スリーブ55は、長手方向において、図5に示されたハウジング11の近位端Pの第1の位置から、図6に示されたハウジング11の遠位端Dの第2の位置に移動可能になるように構成されている。
【0080】
図5を参照すると、外側スリーブ55がその第1の位置にあるときは、第2のディスプレイ窓51およびハウジング11内の薬剤容器18は視認可能であり、第1のディスプレイ窓25は外側スリーブの後ろに隠されている。ここで、図6を参照すると、外側スリーブ55がその第2の位置にあるときは、第2のディスプレイ窓51は隠されており、第1のディスプレイ窓25は視認可能である。
【0081】
外側スリーブ55は、ユーザが注射デバイス20を把持しているときにユーザによって動かすことができる。外側スリーブ55を動かすのに必要な力は、ニードルスリーブ19をハウジング11中に後退させるのに必要な力よりも小さく、そのため、ユーザがデバイス20の遠位端Dを身体に押し付けるときは、ニードルスリーブ19が後退される前に、外側スリーブが長手方向にハウジング11の遠位端に動く。そのことにより、注射プロセス中のデバイス20の安定性を改善するように、ユーザがハウジング11の遠位端Dの近くで注射デバイス20を保持することが保証される。
【0082】
ここで図7および図8を参照すると、本発明の注射デバイス110の実施形態が示されている。本発明の注射デバイス110は、上記で説明した注射デバイス10と同様であり、したがって、上記で説明したデバイス10の構成および構成要素と同じデバイス110の構成および構成要素は、同じ用語および対応する参照番号のままである。
【0083】
注射デバイス110は、薬剤容器118、すなわち、カートリッジを受けるように構成されたハウジング111を含む。薬剤容器18は、薬剤を受けるような容器、または少なくとも部分的に薬剤で充填された容器を指すことができる。ハウジング111は長形であり、近位端Pおよび遠位端Dを含む。薬剤容器118は、ハウジング111の遠位領域D’に受け入れられる。すなわち、薬剤容器118は、ハウジング111の近位端Pよりも、ハウジング111の遠位端Dの近くに配置されている。
【0084】
以下の説明のために、遠位領域D’は、ハウジング111のうちの、ハウジング111の近位端Pよりもハウジング111の遠位端Dに近い部分であると見なすことができる。ハウジング111の近位領域P’は、ハウジング111のうちの、ハウジング111の遠位端Dよりもハウジング111の近位端Pに近い部分であると見なすことができる。
【0085】
図7から図10では、注射デバイス110の内部の構成要素をより明確に見せるために、注射デバイス110のハウジング111は概略断面図に示されている。分かりやすくするために、キャップ12およびニードルスリーブ19など、注射デバイス110のいくつかの構成要素は、話を簡単にするために図7から図10に示していない。
【0086】
注射デバイス110はさらに、プランジャロッド121を含み、プランジャロッド121は、ハウジング111内で図7に示されたプライミング位置と、図8に示された、プランジャロッド121がその位置にほぼ到達した完了位置との間を長手方向に移動可能である。好ましくは、プランジャロッド121は、そのプライミング位置にあるときは、完全でなければ大部分が近位領域P’に配置されており、その完了位置にあるときは、完全でなければ大部分が遠位領域D’に配置されている。したがって、プランジャロッド121は、注射が進行する間に、ハウジング111の近位領域P’からハウジング111の遠位領域D’に移動可能である。いずれの場合も、プランジャロッド121は、その完了位置に配置されているときはプライミング位置にあるときよりも、ハウジング111の遠位端Dの近くに配置されている。
【0087】
注射デバイス110はさらに、薬剤容器118を含む。プランジャロッドは遠位端122および近位端123を含む。薬剤容器118は、ハウジング111内でプランジャロッド121と注射デバイス110の遠位端Dとの間で受けられる。
【0088】
プランジャロッド121は、その遠位端122に配置されている栓114を含む。栓114は、封止を形成するために薬剤容器118の側壁に接触するように構成されており、そうすることで、プランジャロッド121が長手方向においてプライミング位置から遠位位置に向かって遠位方向に動かされるときに薬剤が針117を通して薬剤容器118から押し出される。
【0089】
注射デバイス110はさらに、インジケータ124を含む。インジケータ124は、ハウジング111の近位領域P’に配置されている。好ましくは、インジケータ124は、近位端Pの領域に配置されている。すなわち、好ましくは、インジケータ124は、ハウジング111の近位端Pでなければその近くに配置されている。インジケータ124は、プライミング位置と完了位置との間のプランジャロッド121の長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように構成されている。
【0090】
注射デバイス110のインジケータ124は、スピンドル126を含む。スピンドル126は、軸127およびダイヤル128を含む。ダイヤル128は、プランジャロッド121の長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように回転するように構成されている。ダイヤル128はディスプレイ面129を含む。ダイヤル128のディスプレイ面129は注射プロセスの進捗に関連する情報を提供する。ダイヤル128は軸127に固定して取り付けられており、そうすることで、軸127の回転運動がダイヤル128を回転させる。
【0091】
図7および図8に示されているように、スピンドル126の軸127は、遠位端131および近位端132を含む。軸127は、その近位端132でダイヤル128に固定して取り付けられている。本実施形態では、ダイヤル128の直径は、スピンドル126の軸127よりも大きい。ダイヤル128の直径が大きいほど、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するためのディスプレイ面129を大きくすることができる。ダイヤル128は、遠位面133および反対側の近位面134を含む。ダイヤル128の近位面134はデバイス110の外を向く。本実施形態では、近位面134はディスプレイ面129である。すなわち、近位面134は注射プロセスの進捗に関連する情報を提供する。
【0092】
プランジャロッド121は第1のねじ機構135を含み、スピンドル126の軸127は第2のねじ機構136を含む。軸127の第2のねじ機構136は、プランジャロッド121の第1のねじ機構135と係合するように構成されている。本明細書で以下により詳細に説明されるように、プランジャロッド121およびスピンドル126の軸127のねじ機構135、136の係合は、プランジャロッド121がプライミング位置から完了位置に向かって長手方向に動くと、軸127、したがって、ダイヤル128が注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように回転するように構成されている。
【0093】
スピンドル126は長手方向の動きが制限されている。すなわち、スピンドル126は、長手方向に動くことが防止されている。いくつかの実施形態では、スピンドル126は、長手方向に動くことがハウジング111によって防止されている。スピンドル126の長手方向の動きを防止するようにハウジング111を構成できる手法が多くある。
【0094】
たとえば、図7および図8に示された一実施形態では、ダイヤル128は、ハウジング111の近位端Pに接触している。すなわち、ダイヤル128は、ダイヤル128の遠位面133がハウジング111の近位端に接触するようにハウジング111の近位端に配置されている。
【0095】
ハウジング111は、長手方向に延びる側壁138を含み、側壁138は、ハウジング111の近位端Pに端部面139を含む。本実施形態では、端部面139は、ハウジング111の近位端Pから見ると環状である。しかし、いくつかの実施形態では、端部壁139は、ハウジング111の近位端Pを横切って延びる端部プレートを含むことができる。
【0096】
さらに、ダイヤル128は、ダイヤル128の遠位面133がハウジング111の近位端で端部面139に接触するように位置している。このように、プランジャロッド121が長手方向にプライミング位置から完了位置に向かって動かされるときに、ハウジング111の端部面139は、ダイヤル128の遠位面133に抵抗して作用することによって、スピンドル126が長手方向に完了位置に向かって動くことを防止する。ダイヤル128がハウジング111の近位端に配置されている実施形態では、ダイヤル128の近位面134がデバイス110の最も近位の端部である。
【0097】
スピンドル126の長手方向の動きを防止する他の例示的な構成は、ハウジング111の内面142が溝(図示せず)(143)を含み、軸127またはダイヤル128の側面145から延びる突出部(図示せず)(144)がその溝に配置された構成を含む。このような溝は、完了位置に近接解離するスピンドル126の長手方向の動きを防止することができる。代替として、突出部144が、ハウジング111の内面142から、図10に示されたスピンドル126の軸127またはダイヤル128の側面141に配置された溝143に延びることができる。いくつかの実施形態では、ハウジング111の端部面139を形成する端部プレートによって突出部を形成することができる。
【0098】
代替の実施形態では、図9に示されているように、ダイヤル128は、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように、ダイヤル128の近位面134がハウジング111の外を向くようにハウジング111の内側に配置されている。このような実施形態では、好ましくは、ダイヤル128は、ダイヤル128の近位面134がハウジング111の近位端Pの平面を越えて延びないように、ハウジング111内に配置されている。すなわち、ダイヤル128の近位面134は、ハウジング111の端部面139を越えて延びない。
【0099】
ハウジング111はさらに、カバー146を含む。カバー146は、ダイヤル128の近位面134を覆うように延びる。カバー146は、ハウジング111の近位端Pを覆うように延びることもできる。カバー146は、周縁の突出部146aを含むことができ、突出部146aは、ハウジング111の内面142の溝146bに配置されるように構成されている。いくつかの実施形態では、カバー146は、ハウジング111の近位端Pの平面を越えて延びることができず、すなわち、カバー146は、ハウジング111の端部面139を越えて延びない。他の実施形態では、カバー146が、注射デバイス110の最も近位の端部を形成することができる。
【0100】
カバー146は、ダイヤル128が注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供できるように構成されている。カバー146は、ユーザがダイヤル128を上から見ることを可能にするように、透明または少なくとも半透明であってよい。いくつかの実施形態では、カバーの一部分だけが、ユーザがダイヤル128を見ることを可能にするように構成することができる。
【0101】
図7から図9に示されたダイヤル128は、注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供するために様々な形で構成することができる。ダイヤル128の近位面134は、近位面がドーム形になるように湾曲していてもよく、代替の実施形態では、ダイヤル128の近位面134は平坦でもよい。さらに、ダイヤル128の近位面134は途切れていなくてよい。すなわち、近位面134には穴またはくぼみなどがなくてよい。このような実施形態では、ダイヤル128の近位面134は、ハウジング111の側壁138の近位端の印と整列するように構成された印を含むことができる。
【0102】
たとえば、近接面134および側壁138の一方は、ダイヤル128の周縁を向く矢印を含むことができ、近接面134および側壁138の他方は、限定されるものではないが、たとえば、数目盛、色の濃淡、または注射プロセス中に起きる事象を表す言葉によって、注射プロセスの進捗に関連する情報を提供する印を含むことができる。
【0103】
図11を簡単に参照すると、ダイヤル128のさらなる例示的な実施形態が示されている。図11の右上に示された実施形態を参照すると、ダイヤル128は少なくとも部分的に透けて見えていてよい。すなわち、ユーザがダイヤル128を通して見ることができるように、ダイヤル128全体が透明または少なくとも半透明でよい。代替として、ダイヤル128の一部分だけが透明または半透明でよい。注射デバイス110はさらに、ダイヤル128の遠位でハウジング111に配置されたディスプレイプレート147を含むことができる。ディスプレイプレート147は、その近接面148、すなわち、ダイヤル128に向かって注射デバイス110の外を向いた面に印を含むことができる。図示の例では、ダイヤル128およびディスプレイプレート147の近接面148の一方は、矢印149を含み、ダイヤル128および近接面148の他方は、注射プロセス中に起きる事象を表す言葉の形態の印151を含む。プランジャロッド121が長手方向にその完了位置に動かされると、ダイヤル128が回転し、矢印149の指す事象が変わって、注射プロセスの進捗に関連する情報がユーザに提供される。
【0104】
スピンドル126の軸127がディスプレイプレート147の中央の孔を貫通できることが理解されよう。さらに、ハウジング111のディスプレイプレート147が注射プロセス中にスピンドル126の長手方向の動きを防止するようにスピンドル126の軸127と相互作用する溝143または突出部144を含むことができることが理解されよう。いくつかの実施形態ではディスプレイプレート147がハウジング111の端部面139を形成できることがさらに理解されよう。
【0105】
図11の左に示されている実施形態を簡単に参照すると、ダイヤル128は切抜き部152を含むことができる。切抜き部152は、ダイヤル128を通って近位面134から遠位面133に延び、ユーザがダイヤル128の下にディスプレイプレート147を見ることを可能にする。切抜き部152は、限定されるものではないが、たとえば、扇形でよい。ダイヤル128はディスプレイ窓153を含むこともできる。ディスプレイ窓153は、ユーザがダイヤル128の下にディスプレイプレート147を見ることができるように、ダイヤル128を通して近位面134から遠位面133に延びるという点で切抜き部と同様である。ディスプレイ窓153は、限定されるものではないが、たとえば、半円形または三日月形でよい。しかし、切抜き部152およびディスプレイ窓153は、ダイヤル128において異なる径方向位置および角度位置にあってよく、注射プロセスの進捗についての異なる情報を提供するために使用することができる。図11の右下に示された実施形態を簡単に参照すると、ダイヤル128には複数の切抜き部152を形成できることを理解できる。
【0106】
切抜き部152およびディスプレイ窓153は両方とも、デブリが注射デバイス110のハウジング111に入ることを防止するために、切抜き部152またはディスプレイ窓153に配置されるように構成されたカバー154を含むことができる。カバー154は、ユーザがカバー154を通してディスプレイプレート147の近接面148に配置された印を見ることを可能にするために、透明または少なくとも半透明でよい。カバー154は、切抜き部152またはディスプレイ窓153へのインサートではなく、ダイヤル128の透明または半透明の部分によって形成することができる。
【0107】
上記の実施形態では、ダイヤル128がディスプレイプレート147に対して回転すると、切抜き部152および/または窓153は、ディスプレイプレート147の近位面148の上で動かされ、そうすることで、切抜き部152および/またはディスプレイ窓153の回転位置が変化すると、切抜き部152および/またはディスプレイ窓153を通して視認可能なディスプレイプレート147の近位面148の印も変わる。したがって、印が変わることで、注射プロセスの進捗に関する視覚的フィードバックが提供される。
【0108】
上記の実施形態では、ダイヤル128は、ユーザがディスプレイプレート147の近接面148に配置された印を見ることができるように、切抜き部152および/またはディスプレイ窓153を含む。しかし、代替の実施形態では、カバー146は、透明または少なくとも半透明の部分を含むことができ、印は、ダイヤル128の近接面134に配置することができる。したがって、ダイヤル128がカバー146の透明の部分に対して回転すると、ダイヤル128の近接面134の印は、注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように、カバー146の透明の部分の下を通る。
【0109】
いくつかの実施形態では、ダイヤル128は、視覚的フィードバックの代わりに、注射プロセスの進捗に関連する触覚的フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。このような実施形態の例が図10に示されている。図10では、ダイヤル128の近位面134は、注射プロセスの進捗に関連する触覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された表面形態156を含む。表面形態156は、限定されるものではないが、たとえば、1つもしくはそれ以上の突出部、1つもしくはそれ以上のくぼみ、または表面の起伏によって形成することができる。
【0110】
注射デバイス110のさらなる実施形態では、ダイヤル128は、ハウジング111の内側に収容することができる。ハウジング111は、その側壁138にディスプレイ窓(158)を含むことができ、側壁138を通してダイヤル128の側面145を見ることができる。ダイヤル128の側面145は、注射プロセスの進捗に関連する視覚的フィードバックをユーザに提供するように構成された印を含むことができる。
【0111】
再び図7および図8を参照すると、プランジャロッド121は、スピンドル126の軸127とねじ係合した状態で示されている。本実施形態では、プランジャロッド121の第1のねじ機構135は内側を向く。すなわち、本実施形態では、プランジャロッド121は、中空の管状のハウジング161を含む。管状のハウジング161は、遠位壁162および長手方向に延びる側壁163を含む。本実施形態では、ハウジング161は、円筒形であり、したがって、側壁163は、ハウジング111の近位端Pから見ると環状である。管状のハウジング161は、開放型近位端164および内部の空所165を含む。内部の空所165は、側壁163の内面166および遠位壁162の内面167によって画成されている。プランジャロッド121の第1のねじ機構135は、プランジャロッド121の側壁163の内面166に形成されている。
【0112】
プランジャロッド121は、長手方向の動きに制限されている。すなわち、プランジャロッド121は、長手方向に動くことができるが、長手方向軸周りで回転することが防止されている。プランジャロッド121は、ハウジング111の内面142の溝に配置されるように構成された突出部168を含む。突出部168は、プランジャロッド121の外面169から径方向外向きに延びる。ハウジング111の内面142の溝は、少なくともプランジャロッド121がプライミング位置と完了位置との間で動かなければならない距離に等しい距離を長手方向に延びる。溝の側壁は、ハウジング111に対するプランジャロッド121の回転を防止するために、プランジャロッド121の突出部168に当接している。
【0113】
プランジャロッド121に形成された空所165は、スピンドル126の軸127を少なくとも部分的に受けるように構成されている。好ましくは、プランジャロッド121がそのプライミング位置にあるときは、軸127の遠位端131は、プランジャロッド121の遠位壁162の内面167、すなわち、近位面に当接している。スピンドル126の軸127は、軸127の外面171に第2のねじ機構136を含む。スピンドル126の軸127の外面171にある第2のねじ機構136は、プランジャロッド121の内面166にある第1のねじ機構135とねじ係合するように構成されている。
【0114】
図7および図8に示されている実施形態では、スピンドル126の軸127は、プランジャロッド121の内側に配置されている。しかし、代替の実施形態では、スピンドル126の軸127はプランジャロッド121の外側に配置できることが理解される。このような実施形態では、第1のねじ機構135は、プランジャロッド121の外面169に配置することができ、第2のねじ機構136は、軸127の内面に配置されることになる。
【0115】
本実施形態では、プランジャロッド121の第1のねじ機構135は、連続的なねじ機構を含む。すなわち、連続的なねじ機構は、連続的なねじ山172を含む。連続的なねじ機構は、プランジャロッド121の内面166の遠位端173からプランジャロッド121の内面166の近位端174まで延びる。すなわち、連続的な第1のねじ機構135は、プランジャロッド121の内面166の長さに沿って延びる。同様に、スピンドル126の軸127の第2のねじ機構136は、連続的なねじ機構を含む。連続的なねじ機構は、軸127の遠位端131から軸127の近位端132に向かって延びる。本実施形態では、第2のねじ機構136は、プランジャロッド121の内面166の長さに等しい距離の分のみ軸127に沿って延びる。したがって、第1および第2のねじ機構135と136とは、プランジャロッド121がプライミング位置と完了位置との間を長手方向に動く間ずっと接触している。
【0116】
プランジャロッド121の側壁163の内面166は、プランジャロッド121のプライミング位置と完了位置との間の、長手方向の最大移動距離を決定する。このことは、プランジャロッド121とスピンドル126とがねじ係合しなくなると、ダイヤル128が注射プロセスの進捗についての正確な情報を提供できなくなるので必要である。プランジャロッド121および/またはスピンドル126の軸127にある連続的なねじ山は、注射プロセスの進捗についての持続的なフィードバックを提供するために、プランジャロッド121が軸方向に動かされるときにスピンドル126が確実に常時回転されるように構成されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、プランジャロッド121およびスピンドル126の軸127の一方にある連続的なねじ山の長手方向長さは、プランジャロッド121のプライミング位置とプランジャロッド121の完了位置との間の長手方向距離に等しい。そのことは、スピンドル126のダイヤル128が、プライミング位置と完了位置との間のどの段階でも、プランジャロッド121の位置に応じた注射プロセスの進捗についてのフィードバックを提供することを可能にする。
【0118】
他の実施形態では、プランジャロッド121およびスピンドル126の軸127の一方にある連続的なねじ山の長手方向長さは、プランジャロッド121のプライミング位置とプランジャロッド121の完了位置との間の長手方向距離よりも大きい。そのことは、プランジャロッド121がそのプライミング位置に動かされる前および/またはプランジャロッド121がその完了位置に動かされた後の段階で、スピンドル126のダイヤル128がプランジャロッド121の位置に応じた注射プロセスの進捗についてのフィードバックを提供することを可能にする。
【0119】
たとえば、プランジャロッド121は、薬剤容器118がハウジング121に装填されるまでプランジャロッド121が保持される、プライミング位置の近位の装填位置を有することができる。次いで、プランジャロッド121は、装填位置から遠位に、栓114が薬剤容器118の近位端と接触しているプライミング位置に動かすことができる。
【0120】
図7および図8において、注射デバイス110がさらに付勢要素175を含むことを理解できる。図示の実施形態では、付勢要素175はつる巻きばね176である。しかし、任意の他のタイプの付勢部材175も使用できることが当業者には明らかである。つる巻きばね176は、その長手方向軸がスピンドル126の軸127の長手方向軸およびプランジャロッド121の長手方向軸と一致するように配置されている。このように、つる巻きばね176は、スピンドル126の軸127周りで延びる。そのことが、圧縮されたときにばね176が曲がって長手方向軸との位置合わせから逸脱することを防止するように助けることができる。
【0121】
つる巻きばね176は、遠位端177および近位端178を含む。つる巻きばね176の遠位端177は、プランジャロッド121の近位端123と接触している。つる巻きばね176の近位端178は、近位領域P’においてハウジング111に接触している。いくつかの実施形態では、つる巻きばね176の近位端178は、ディスプレイプレート147、ハウジング111の内面142、またはハウジング111の内面142から延びる突出部に当接することができる。プランジャロッド121がそのプライミング位置にあるときは、プランジャロッド121がその完了位置にあるときよりも、付勢部材175がより高い圧縮状態にある。
【0122】
注射デバイス110が作動されるときは、プランジャロッド121の長手方向の動きを防止するロック要素が解放され、付勢部材175がその圧縮状態から伸長する。つる巻きばね176の近位端178は、固定されたハウジング111に取り付けられており、したがって、ばね176の伸長がばね176の遠位端177、したがって、プランジャロッド121を長手方向において遠位に付勢する。プランジャロッド121の遠位方向の動きは、プランジャロッド121からの突出部168をハウジング111の内面142の溝に配置することで、長手方向の動きに制限されている。
【0123】
プランジャロッド121が長手方向に動くと、第1のねじ機構135が遠位に動く。スピンドル126は長手方向の動きが防止されているため、第1のねじ機構135が長手方向遠位に動くと、第2のねじ機構136が第1のねじ機構135に対して滑動する。そのことは、スピンドル126の軸127、したがって、ダイヤル128を回転させる。ダイヤル128が回転すると、注射プロセスの進捗のフィードバックがユーザに提供される。
【0124】
図12を簡単に参照すると、ねじ機構の別の実施形態を見ることができる。代替の実施形態では、ねじ機構は、プランジャロッド121およびスピンドル126の軸127の一方に不連続のねじ山181を含む。図12では、プランジャロッド121の内面166にある第1のねじ機構135は、連続的なねじ山172である。しかし、連続的なねじ山172は、プランジャロッド121の近位端で長手方向のわずかな距離しか延びていない。スピンドル126の軸127にある第2のねじ機構136は、不連続のねじ山181を含む。不連続のねじ山181は、近位部分182および遠位部分183を含む。
【0125】
したがって、プランジャロッド121が長手方向に動いたときは、プランジャロッド121の連続的な第1のねじ機構135は、不連続の第2のねじ機構136の近位部分182に係合して、ねじ機構が接触しなくなるまでダイヤル128を回転させる。プランジャロッド121と軸127とがねじ係合されなくなると、プランジャロッド121の連続的な第1のねじ機構135が不連続の第2のねじ機構136の遠位部分183に係合してダイヤル128を回転させるまで、プランジャロッド121のさらなる長手方向の動きはダイヤル128の回転を引き起こさない。
【0126】
このような実施形態では、不連続のねじ山181は、注射プロセスの進捗についての事象特有のフィードバックを提供するように構成されている。これは、プランジャロッド121が長手方向においてプライミング位置から完了位置に動かされるときのダイヤル128の不連続な回転方向の動きによって示される。たとえば、不連続のねじ山181の近位部分182による回転は、薬剤容器118が装填されたことを示してから、プランジャロッド121がそのプライミング位置にあることを示すまでダイヤル128を回すことができ、不連続のねじ山181の遠位部分183による回転は、プランジャロッド121がそのプライミング位置にあることを示してから、プランジャロッド121がその完了位置にあることを示すまでダイヤル128を回すことができる。
【0127】
第1のねじ機構135が不連続のねじ山181を含み、第2のねじ機構136が連続的なねじ山を含む実施形態では、連続的なねじ山は、軸127の遠位端131に配置することができる。
【0128】
さらに、いくつかの実施形態では、プランジャロッド121および軸127の一方の連続的なねじ山の代わりに、プランジャロッド121および軸127の他方の連続的なねじ山または不連続のねじ山に延びる突出部を使用できることが理解される。それら実施形態では、ねじ山のピッチはねじ機構の長さに沿って変えることができる。ピッチを大きくすると、ねじ山の角度が動きの長手方向とより緊密に位置合わせされるため、ねじ山との摩擦力を小さくすることができる。したがって、付勢要素173がプランジャーロッド121を長手方向に移動させるのに必要な力を小さくするため、軸127の遠位端に向かうほどねじ山のピッチを大きくすることができる。減少した力は、プランジャーロッド121が伸びるときに、ばね174がプランジャーロッド121を押し出すのを助ける。代替として、ダイヤル128をより速く回転させるために事象特有の段階でピッチを変える、すなわち、小さくすることができる。
【0129】
図13を簡単に参照すると、代替の実施形態では、スピンドル126が中空であり端部が開放型であることを理解できる。このような実施形態では、付勢部材173は、スピンドル126の中空部分に収容することができる。したがって、ばね174の遠位端175は、プランジャロッド121の遠位壁162の内面166に接触することができる。
【0130】
いくつかの代替の実施形態では、ダイヤル128によって提供されるフィードバックは、上記で論じたものとは異なるタイプのフィードバックを含むことができる。たとえば、ダイヤル128によって提供されるフィードバックは、限定されるものではないが、動画、画像、または映像でよい。フィードバックは、ユーザまたは薬剤の受け手を快適にさせることを意図してよい。いくつかの実施形態では、ダイヤルは、フィードバックを表示するためのディスプレイを含むことができる。代替として、ダイヤルの表面に画像を提供することができる。
【0131】
フィードバックは、デバイスが作動されるときに開始することができる。いくつかの実施形態では、フィードバックは、プランジャロッドがプライミング位置から動かされる前に、限定されるものではないが、たとえば、キャップを取り外した時またはニードルシールドの後退時などに開始することができる。いくつかの実施形態では、フィードバックは、プランジャロッドが動く少なくとも2秒前に開始することができる。より好ましくは、フィードバックは、プランジャロッドが動く少なくとも5秒前に開始することができる。
【0132】
フィードバックは、注射が完了したときに終了することができる。すなわち、フィードバックは、プランジャロッドがプライミング位置から動かされたときに開始でき、プランジャロッドが完了位置にあるときに終了することができる。いくつかの実施形態では、フィードバックは、プランジャロッドが完了位置に到達した後に終了することができる。フィードバックは、注射が完了した後の所与の期間にわたって継続することができる。たとえば、フィードバックは、注射が完了した後に少なくとも2秒間継続することができる。より好ましくは、フィードバックは、注射が完了した後に少なくとも5秒間継続することができる。
【0133】
図2から図6に示された注射デバイス20は、同じ実施形態で明示的に説明されていなかったとしても、図7から図13に示された注射デバイス111を参照しながら説明した構成を組み込むことができることが当業者には理解されよう。さらに、図7から図13に示された注射器デバイス111は、同じ実施形態で明示的に説明されていなかったとしても、図2から図6に示された注射デバイス20を参照しながら説明した構成を組み込むことができることが当業者には理解されよう。実施形態は、各機構に関して明瞭にするために別々に説明しただけであり、図2から図6に示された構成および図7から図13に示された構成は、同じ注射デバイスに組み込むことができる。
【0134】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を記述するために使用される。以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つの低分子もしくは高分子またはそれらの組合せを含みうる。例示的な薬学的に活性な化合物としては、低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物も企図される。
【0135】
「薬物送達デバイス」という用語は、薬物が人体または動物体に投薬されるように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえば、シリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内送達、皮下送達、筋肉内送達、もしくは血管内送達用に構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば、鼻用または肺用)、埋め込み物(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムでありうる。ここに記載される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用でありうる。
【0136】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬学的に活性な化合物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、薬物製剤の2つ以上の成分(たとえば、薬物と希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に薬物もしくは薬剤の2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0137】
本発明に記載の薬物送達デバイスおよび薬物は、多くの異なるタイプの障害の治療および/または予防のために使用可能である。例示的な障害としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。
【0138】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のための例示的な薬物としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、もしくはそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「誘導体」という用語は、元の物質と実質的に同様の機能性または活性(たとえば、治療効果)を有するように、構造的に十分同様である任意の物質を指す。
【0139】
例示的なインスリンアナログは、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0140】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストは、たとえば、リキシセナチド/AVE0010/ZP10/リキスミア、エキセナチド/エキセンジン-4/バイエッタ/ビデュリオン/ITCA650/AC-2993(ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド/ビクトーザ、セマグルチド、タスポグルチド、シンクリア/アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0141】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセン/キナムロである。
【0142】
例示的なDPP4阻害剤は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0143】
例示的なホルモンとしては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0144】
例示的な多糖としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20/シンビスク、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0145】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。
【0146】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0147】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0148】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0149】
本明細書に記載の化合物は、(a)化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤に使用可能である。化合物は、1つもしくはそれ以上の他の活性医薬成分を含む医薬製剤、または本化合物もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩が唯一の活性成分である医薬製剤にも使用可能である。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0150】
本明細書に記載のいずれの薬物の薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、もしくはK+、またはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリール基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は当業者には公知である。
【0151】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)もしくはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0152】
本発明の全範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載される物質の様々な成分、製剤、装置、方法、システムおよび実施形態の修正(追加および/または省略)を行うことができ、本発明がこのような修正形態およびそのあらゆる等価物を包含することを当業者は理解する。
【0153】
本明細書には以下の項目が含まれる。
【0154】
項目1.注射デバイスであって:
近位端および遠位端を有し、薬剤容器を受けるように構成された、長形ハウジングと;
ハウジング内でプライミング位置と完了位置との間を長手方向に移動可能であり、ハウジングに受け入れられるときに薬剤容器と係合可能になるように構成された、プランジャロッドと;
を含み、
ここで、ハウジングは、ハウジングの近位領域に配置されたインジケータを含み;インジケータは、プランジャロッドの長手方向位置に応じた注射プロセスの進捗に関連する情報をユーザに提供するように構成されている、
注射デバイス。
【0155】
項目2.インジケータは、ハウジングの側壁に配置されたディスプレイ窓と、
プランジャロッドから延び、プランジャロッドの近位端に連結されており、少なくともプライミング位置においてはディスプレイ窓を通して視認可能である、近位に延びる突出部と、
を含む、項目1に記載の注射デバイス。
【0156】
項目3.インジケータはさらに、インジケーション要素を含み、突出部は、少なくともプライミング位置ではインジケーション要素のユーザの視認を妨げるように、ディスプレイ窓とインジケーション要素との間に配置されている、項目2に記載の注射デバイス。
【0157】
項目4.突出部は、軸に沿うようにプランジャロッドに連結されており、プランジャロッドがプライミング位置から完了位置に動かされるときに、第1のインジケート位置と第2のインジケート位置との間を動くように構成されており、第2のインジケート位置に向かって突出部が動くと、インジケーション要素のより大きい部分がディスプレイ窓を通して視認可能にされる、項目3に記載の注射デバイス。
【0158】
項目5.突出部が第1のインジケーション位置にあるときは、突出部の近位端は、ディスプレイ窓の近位端に配置されている、項目4に記載の注射デバイス。
【0159】
項目6.突出部が第1のインジケート位置にあるときは、突出部だけがディスプレイ窓を通して視認可能である、項目5に記載の注射デバイス。
【0160】
項目7.突出部が第2のインジケート位置にあるときは、突出部の近位端は、ディスプレイ窓の遠位端に配置されている、項目4~6のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【0161】
項目8.突出部が第2のインジケート位置にあるときは、インジケーション要素だけがディスプレイ窓内で視認可能である、項目7に記載の注射デバイス。
【0162】
項目9.突出部は、注射プロセスの間はディスプレイ窓と位置合わせされたままであるように、プランジャロッドから回転不能にデカップリングされる、項目2~項目8のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【0163】
項目10.ハウジングの内面は、プランジャロッドの長手方向軸周りでの突出部の回転運動を制限するように構成された案内機構を含む、項目9に記載の注射デバイス。
【0164】
項目11.ハウジングはさらに、ハウジングの遠位領域に第2のディスプレイ窓を含む第2のインジケータを含み、プランジャロッドがそのプライミング位置にありかつ薬剤容器がハウジングに受け入れられるときは、薬剤容器は第2のディスプレイ窓を通して視認可能であり、プランジャロッドが長手方向に完了位置に動かされるときは、プランジャロッドの遠位端は、第2のディスプレイ窓の遠位端に配置されている、項目2~10のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【0165】
項目12.プランジャロッドおよびインジケーション要素は同じ印を含み、突出部は、プランジャロッドおよびインジケーション要素とは異なる印を含む、項目11に記載の注射デバイス。
【0166】
項目13.ハウジングの周りを延びるように構成された外側スリーブをさらに含み、その外側スリーブは、長手方向において、外側スリーブがインジケータをカバーするハウジングの近位端の第1の位置から、外側スリーブがインジケータを露出するハウジングの遠位端の第2の位置に移動可能である、項目1~12のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【0167】
項目14.ハウジング内でプランジャロッドと注射デバイスの遠位端との間に受けられる薬剤容器をさらに含む、項目1~13のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【0168】
項目15.項目1に記載の注射デバイスを使用する方法であって:
プランジャロッドがハウジング内でプライミング位置から完了位置に長手方向に動かされるように注射デバイスを作動させることと;
プランジャロッドの長手方向位置に関連する情報を、インジケータを用いて提供することと
を含む、方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13