(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】流路内蔵型超音波振動子
(51)【国際特許分類】
H04R 1/34 20060101AFI20250106BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20250106BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
H04R1/34 330B
H04R17/00 330C
H04R17/00 330D
H04R17/00 330L
G01N33/49 W
(21)【出願番号】P 2021030550
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591086854
【氏名又は名称】株式会社テクノメデイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛
(72)【発明者】
【氏名】呉 暁剛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】星島 康
(72)【発明者】
【氏名】針生 太郎
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-090181(JP,A)
【文献】特開2011-196917(JP,A)
【文献】特開2010-117355(JP,A)
【文献】特開平10-277485(JP,A)
【文献】特開平02-056283(JP,A)
【文献】特許第6774697(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/123610(WO,A1)
【文献】Xiaogang Wu et al.,High-power ultrasonic transducer for effective hemolysis,精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,2021年03月,p.753-754
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/34
H04R 17/00
B06B 1/00- 3/04
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び
前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子
を備え、
前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設け、
前記圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が前記反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されている
ことを特徴とする流路内蔵型超音波振動子。
【請求項2】
前記反射面が回転放物面である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
前記回転放物面が、それによって反射される超音波のフォーカスポイントが前記処理流路の壁面になるよう形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
前記回転放物面が、それによって反射される超音波のフォーカスポイントが前記処理流路を超えた位置になるよう形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項5】
前記回転放物面が、それによって反射される超音波のフォーカスポイントが前記処理流路内に位置するよう形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項6】
前記反射面が円錐面である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項7】
前記振動体の直径が、10mm~80mmであり、高さが10mm~30mmである
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の超音波振動子。
【請求項8】
前記圧電素子の内径が5mm~30mmであり、厚さが0.1mm~5mmである
ことを特徴とする請求項7に記載の超音波振動子。
【請求項9】
前記振動体が、アルミ合金、チタン合金、真鍮又はステンレスから形成されている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の超音波振動子。
【請求項10】
前記振動体が、その中心上部及び下部において中心軸線に沿って相互に離間して対向する上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔、並びに前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔間に中心軸線に沿って形成された貫通孔を備え、
前記貫通孔が前記処理流路として機能する
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の超音波振動子。
【請求項11】
該超音波振動子が、さらに、前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔に取り付け可能な上部連結具及び下部連結具を備え、各連結具が、その中心軸線に沿って貫通孔を有し、
前記上部連結具及び下部連結具を前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔に取り付けた時に、連結具の貫通孔と、振動体の貫通孔とが連通して一本の流路を形成する
ことを特徴とする請求項10に記載の超音波振動子。
【請求項12】
前記上部連結具及び下部連結具が、各々一端にチューブ又はパイプを接続可能な接続部を備えている
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波振動子。
【請求項13】
前記振動体が、その底部に径方向外方に延びる環状フランジを備えている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の超音波振動子。
【請求項14】
平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び
前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子
を備え、
前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設けた二つの流路内蔵型超音波振動子片を、圧電素子が向き合い、かつ、処理流路が連通するよう上下に重ねて配置し、
前記各圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が各反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されている
ことを特徴とする流路内蔵型超音波振動子。
【請求項15】
血液を採取したシリンジを装着可能なシリンジ装着部と、
前記シリンジ装着部に装着されたシリンジの内部に侵入して、シリンジの内部の血液を吸引する吸引ノズルと、
前記吸引ノズルに接続された吸引ポンプと、
前記吸引ノズルで吸引した血液の成分を分析するためのセンサと
前記吸引ノズルから前記センサを介して廃液部へ繋がる血液流路と
少なくとも前記吸引ポンプの動作を制御する制御装置と
を備えた血液ガス分析装置において、
請求項1~14の何れか一項に記載の流路内蔵型超音波振動子を、その処理流路が前記血液流路と連通するよう設けた
ことを特徴とする血液ガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を集束させることによって強力な超音波を発生させる超音波振動子に関し、特に対象物を通す流路を内蔵した超音波振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波は、製造業、土木、農林水産、食品、薬品及び医療等の様々な分野で利用されており、超音波振動子としては、ランジュバン型振動子が多く利用されている。
ランジュバン振動子は、特許文献1に示すように、二つの金属ブロックの間に、円環形の圧電素子及び電極を挟み、二つの金属ブロックを貫通ボルトで締付け固定して成り、前記電極を介して圧電素子に交流電圧を印加することにより微小振動を励振し、振動子の長手方向の共振振動を利用して大振幅化して超音波を発生させる。このランジュバン振動子は、堅牢で高出力な振動子として多くの分野で利用されているが、ランジュバン振動子は、金属ブロックの長さ、材料種及び形態に依存して画一的な周波数領域の出力しか得られず、また、小型化もできないという問題があり、このため用途及び機能拡張にも制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-29758号公報
【文献】Kang CHEN, Takasuke IRIE, Takashi IIJIMA and Takeshi MORITA, "Double-parabolic-reflectors acoustic waveguides for high-power medical ultrasound", Scientific Reports, vol. 9, 18493, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した問題を解決するために、発明者等は、上部に第一回転放物面を有する円筒状の振動体の底面に縦振動モードを有する円環状の圧電素子を配置し、前記振動体の底面中心部分に下方に突出する第二回転放物面を形成する半球状凸部を形成すると共に、振動体の中心軸線に沿って前記凸部と反対方向に延出する細棒導波路を設け、圧電素子からの超音波振動を前記第一回転放物面及び第二回転放物面において二段階反射させ、第二回転放物面において超音波振動を平面波に変換して前記細棒導波路に集束させ、細棒導波路の先端から強力超音波を出力する強力超音波振動子を開発した(特許文献2参照)。この強力超音波振動子によれば、装置を小型化することができ、細棒の先端から強力な超音波を出力することが可能になる。
発明者等は、上記強力超音波振動子を開発後、さらに鋭意研究を続け、振動体から外部に強力超音波を出力するのではなく、振動体内部で対象物に対して強力超音波を当てることができる流路内蔵型超音波振動子を発明するに至った。
さらに、発明者等は、該流路内蔵型超音波振動子を血液中の血球粉砕に適用することに着目し、流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置を発明した。
本発明は、振動体内部に流路を内蔵した超音波振動子及び該流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子は、平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子を備え、前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設け、前記圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が前記反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されていることを特徴とする。
前記反射面は回転放物面であり得、その形状は、それによって反射される超音波のフォーカスポイントが前記流路の壁面、前記処理流路を超えた位置、又は前記処理流路内に位置するような形状であり得る。
また、前記反射面が円錐面で構成してもよく、この場合、それによって反射される超音波は、処理流路に沿って複数のポイントで集束し得る。
さらに、前記振動体は、アルミ合金、チタン合金、真鍮又はステンレスから形成され得る。
さらにまた、前記振動体に、その中心上部及び下部において中心軸線に沿って相互に離間して対向する上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔、並びに前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔間に中心軸線に沿って形成された貫通孔を形成し、前記貫通孔が前記処理流路として機能するように構成され得る。
この場合、該超音波振動子は、さらに、前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔に取り付け可能な上部連結具及び下部連結具を有し得、各連結具に、その中心軸線に沿って貫通孔を形成し、前記上部連結具及び下部連結具を前記上部連結具取付孔及び下部連結具取付孔に取り付けた時に、連結具の貫通孔と、振動体の貫通孔とが連通して一本の流路を形成するように構成することもできる。さらに、この場合、前記上部連結具及び下部連結具の一端には、例えば、血液等の処理対象物の供給回路を構成するチューブ又はパイプを接続可能な接続部が形成され得る。
前記振動体は、その底部に径方向外方に延びる環状フランジを有し得る。
また、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子は、平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子を備え、前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設けた二つの流路内蔵型超音波振動子片を、圧電素子が向き合い、かつ、処理流路が連通するよう上下に重ねて配置し、前記各圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が各反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置は、血液を採取したシリンジを装着可能なシリンジ装着部と、前記シリンジ装着部に装着されたシリンジの内部に侵入して、シリンジの内部の血液を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルに接続された吸引ポンプと、前記吸引ノズルで吸引した血液の成分を分析するためのセンサと、前記吸引ノズルから前記センサを介して廃液部へ繋がる血液流路と、少なくとも前記吸引ポンプの動作を制御する制御装置とを備えた血液ガス分析装置において、上記流路内蔵型超音波振動子を、その流路が前記血液流路と連通するよう設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る流路内蔵型超音波振動子は、平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子を備え、前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設け、前記圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が前記反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されているので、反射した超音波が、振動体内部に形成された処理流路又は処理流路近傍に集束し、処理流路において強力超音波を得ることが可能になる。このように本発明に係る流路内蔵型超音波振動子は、反射面における超音波の反射を利用して超音波を集束させて強力超音波を得るので、振動体を小型化することができ、結果として、超音波振動子全体を小型化することが可能になる。
また、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子によれば、反射面における超音波の反射を利用して超音波を集束させて強力超音波を得るように構成されているので、ランジュバン振動子のように共振周波数が振動体の長さに依存しないため、圧電素子に印加する交流電圧の周波数を調整することで、幅広い帯域の強力超音波を処理流路において得ることが可能になる。さらにまた、圧電素子に印加する交流電圧の波形を調整したり、波形を合成したりことにより処理流路において得られる強力超音波の波形を調整することも可能になり、これにより、様々な用途に合わせた強力超音波を得ることが可能になる。さらにまた、振動体の内部を通過する処理流路を設け、この振動体の内部の処理流路又は処理流路近傍に超音波が集束するように構成されているので、処理対象物を処理流路に流すことによって超音波振動子の内部で処理対象物に強力超音波を照射することが可能になる。
前記反射面を回転放物面形状にすることによって、処理流路の壁面又は処理流路内にフォーカスポイントを設けることができ、フォーカスポイントにおいて強力超音波を得ることが可能になる。
また、反射面を、そのフォーカスポイントが前記処理流路を超えた位置になる回転放物面形状にすることによって、処理流路の広い範囲で強力超音波を得ることができる。
さらにまた、反射面を円錐面形状とすることによって、反射した超音波が処理流路に沿って複数のポイントで集束するので、処理流路のさらに広い範囲で強力超音波を得ることができる。
また、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子は、平坦な円形底面と、前記円形底面の上方に位置し、上方に向けて縮径する反射面とを有する振動体及び前記振動体の底面に接触し、両面に電極が設けられた厚み縦振動モードを有する円環板状の圧電素子を備え、前記振動体の中心に中心軸線に沿って振動体を上下方向に貫通する処理流路を設けた二つの流路内蔵型超音波振動子片を、圧電素子が向き合い、かつ、処理流路が連通するよう上下に重ねて配置し、前記各圧電素子に所定の周波数の交流電圧を加えることによって超音波を励振し、前記超音波が各反射面で反射して前記処理流路へ向かうように構成されているので、処理流路を長くすることができ、強力超音波を得ることができる範囲を広げることが可能になる。
この場合、反射面を円錐面形状とすることによって、長い処理流路に沿って複数のポイントで超音波が集束するので、一つの流路内蔵型超音波振動子片で構成した流路内蔵型超音波振動子の倍の範囲で強力超音波を得ることができる。
また、反射面を回転放射面形状とし、そのフォーカスポイントを一対の流路内蔵型超音波振動子片における処理流路の上下方向中心点とすることによって、一方の振動子片の圧電素子によって励振された超音波が、反射面で反射してフォーカスポイントを通り、さらに、他方の振動子片の反射面によって反射して他方の振動子片の圧電素子に戻すことができるので共振系を構成することが可能になり、より効率的に定電圧で強力超音波を得ることが可能になる。
また、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置は、血液を採取したシリンジを装着可能なシリンジ装着部と、前記シリンジ装着部に装着されたシリンジの内部に侵入して、シリンジの内部の血液を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルに接続された吸引ポンプと、前記吸引ノズルで吸引した血液の成分を分析するためのセンサと、前記吸引ノズルから前記センサを介して廃液部へ繋がる血液流路と、少なくとも前記吸引ポンプの動作を制御する制御装置とを備えた血液ガス分析装置において、上記流路内蔵型超音波振動子を、その流路が前記血液流路と連通するように設けているので、事前に血液を溶血することなくシリンジから血液を吸引して分析装置内で血液を溶血することが可能になる。これにより、例えば、ヘモグロビンの測定時には流路内蔵型超音波振動子を用いて血液を溶血してセンサへ送り、他の成分の測定時には流路内蔵型超音波振動子を作動させずに溶血していない血液をセンサへ送ることが可能になる。また、血液ガス分析装置に、二つの流路を設け、一方の流路に流路内蔵型超音波振動子を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の一実施例の概略側面図である。
【
図2】
図1に示した超音波振動子の分解中央縦断面図である。
【
図3】
図1に示した超音波振動子の組立中央縦断面図である。
【
図4】
図1に示した超音波振動子における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図5】本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第二実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図6】本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第三実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図7】本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第四実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図8】本発明に係る一対の超音波振動子片を備えた流路内蔵型超音波振動子の一実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図9】本発明に係る一対の超音波振動子片を備えた流路内蔵型超音波振動子の第二実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
【
図10】本発明に係る路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置の概略外観図である。
【
図11】
図10に示す血液ガス分析装置の内部機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示す幾つかの実施例を参照しながら本発明に係る流路内蔵型超音波振動子及び該流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置の実施の形態について説明する。
始めに、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子(以下、単に「超音波振動子」と称する)の第一実施例について説明する。
図1は、超音波振動子の概略側面図であり、
図2は
図1に示した超音波振動子の分解中央縦断面図、
図3は
図1に示す超音波振動子の組立中央縦断面図を各々示している。
図中、符号1は超音波振動子全体を示しており、この超音波振動子1は、振動体2、圧電素子3、上部連結具4及び下部連結具5を備えている。
振動体2は上部が反射面としての回転放物面2aを有する半球状に形成された円柱体から成り、その底面2bに円環板状の圧電素子3が固定されている。
振動体2は、その中心上部及び下部に、上部連結具4及び下部連結具5の取り付け用の相互に離間した、振動体2の中心軸線に沿ってのびる連結具取付孔2c及び2dを備え、前記連結具取付孔2c及び2dの間に、振動体の中心軸線に沿って延びる本発明に係る流路を構成する貫通孔2eが形成されている。
この振動体2は、圧電素子3によって励振される超音波振動の伝搬に有利な材料、例えば、アルミ合金、チタン合金、真鍮又はステンレス等で形成される。尚、振動体2の材料は、アルミ合金等に限定されるものではなく圧電素子3によって励振される超音波振動の伝搬に有利な材料であれば任意の材料でよい。尚、符号2fは振動体2の下部に形成された径方向外方に広がるフランジを示しており、このフランジ2fを介して振動体2は任意の構造体に固定される。
前記圧電素子3は、前記下部連結具取付孔2dの径より大きい内径を有する円環板状の形態であり、その両面に電極(図示せず)が設けられた圧電セラミックスから成り、厚み縦振動モードを有する。
前記圧電素子3は、接着剤等によって振動体2の底面に固定され、不図示の制御装置を介して所定の周波数で交流電圧を印加することによって超音波を励振する。
上部連結具4及び下部連結部5は、各々一端に前記連結具取付孔2c及び2dに取り付け可能に形成された取付部4a及び5aを備え、かつ、他端には処理対象物を流す配管又はチューブを接続可能な接続部4b及び5bが形成されている。また、上部連結具4及び下部連結具5は、その中心軸線に沿って延びる貫通孔4c及び5cが形成されており、上部連結具4及び下部連結具5を振動体2に取り付けた時に、上部連結具4及び下部連結具5の貫通孔4c及び5cと、振動体2に形成された貫通孔2dが連通して一本の流路を形成するように構成されている。
この実施例では、上記したように構成された超音波振動子1における振動体2の回転放物面2aは、圧電素子3によって励振される超音波を、流路を構成する振動体2の貫通孔2eの任意の壁面のフォーカスポイントPに集束する。
上記したように構成された超音波振動子1によれば不図示の制御装置を介して所定の周波数で交流電圧を圧電素子3に印加することによって圧電素子3から回転放物面2aに向けて平行に超音波を励振させ、圧電素子3で励振された超音波を回転放物面2aで反射させてフォーカスポイントPに集束させることにより、フォーカスポイントPにおいて強力超音波が得られ、結果として貫通孔2eによって構成される処理流路内部に強力な音波を生じさせる(
図4参照)。尚、
図1~
図4は、超音波振動子の構成を説明するための概略図であり、回転放物面の形状は、正確に描写されているものではない。
超音波振動子1における振動体2の寸法は直径40mm、高さ10mmであり、その材質はアルミ合金(ジェラルミン)であり、また、圧電素子3の寸法は内径16mm、外径40mm、厚さ1.1mmである。このように構成された超音波振動子1の圧電素子3に交流電圧80Vppを印加することにより、処理流路において周波数1.2MHzの強力超音波が得られることが確認できた。
尚、振動体2及び圧電素子3の寸法は、上記した実施例に限定されることなく、例えば、振動体2の直径は10mm~80mm、高さは10mm~30mmであり得、また、圧電素子l3の内径は5mm~30mm、厚さが0.1mm~5mmであり得る。
また、圧電素子3に印加する電圧は、周波数20kHz~20MHzの交流電圧であり得、これによりフォーカスポイントPで得られる超音波の周波数は10KHz~20MHzであり得る。
【0009】
上記したように構成された、超音波振動子1によれば、圧電素子3において励振される超音波を、回転放物面2aを用いて集束させることによって処理流路において強力超音波を得るように構成されているので、振動体2を小型化することが可能になり、従って、超音波振動子1全体を小型化することが可能になる。
また、ランジュバン振動子のように共振周波数が振動体の長さに依存しないため、圧電素子3に印加する交流電圧の周波数を調整することで、幅広い帯域の強力超音波をフォーカスポイントPにおいて得ることが可能になる。さらにまた、圧電素子3に印加する交流電圧の波形を調整したり、波形を合成したりことによりフォーカスポイントPにおいて得られる強力超音波の波形を調整することも可能になり、これにより、様々な用途に合わせた強力超音波を得ることが可能になる。
さらにまた、振動体2の内部を通過する処理流路を設け、この振動体2の内部の処理流路にフォーカスポイントPを設けているので、処理対象物を処理流路に流すことによって超音波振動子1の内部で処理対象物に強力超音波を照射することが可能になる。これにより、例えば、血液ガス分析装置のように血液を流す流路に超音波振動子1を介在させることにより、流路に流れる血液中の血球を、超音波を用いて崩壊させる等の用途に用いることができる。尚、本発明に係る超音波振動子1の用途は、血液ガス分析装置に限定されるものではなく、処理対象物を処理流路に流す装置であれば任意の装置に適用可能であり、具体的には、例えば、ダイオキシンの分解や消毒や滅菌をする装置、乳化装置、又はキャビテーションを利用した化学反応装置等に適用され得る。
また、振動体2に上部連結具4及び下部連結部5を接続する構成は本実施例に限定されるものではなく、例えば、振動体2における放射面2a及び底面2bの外方で上部連結具4及び下部連結部5を接続するように構成してもよい。このようにすることで振動体2の内部における流路の距離を長く確保することができるので、フォーカスポイントPの位置の選択範囲が広がり、振動体2の形状の選択肢が広がる。
また、フォーカスポイントPの位置は、本実施例に限定されるものではなく、処理流路において強力な音波を発生させることができる位置であれば任意の位置でよく、また、フォーカスポイントPは必ずしも一点である必要はなく、例えば、反射面を回転放物面ではなく、円錐面形状にすることによって、処理流路に沿って複数のフォーカスポイントPを配置することが可能になる。
【0010】
図5は、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第二実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。この実施例では、フォーカスポイントPの位置が第一実施例と異なるだけで、他の構成は第一実施例に示す超音波振動子の構成と同一であるので、対応する構成要素に第一実施例と同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図面に示すように、この実施例では、フォーカスポイントPは、処理流路を構成する貫通孔2eを超えた位置にある。
このようにフォーカスポイントPが、回転放物面2aで反射した後に、処理流路を超えた位置で集束するように構成することにより、処理流路の広い範囲で強力超音波を得ることができるようになる。
尚、
図5の回転放物面は、
図1に示す回転放物面と同一の形状で描かれているが、
図5は、本発明に係る超音波振動子の構成を示す概略図であり、回転放物面の形状は概略的に描かれているものであり、実際には、第二実施例における回転放物面と、第一実施例における回転放物面とはその形状が異なることはいうまでもない。
【0011】
図6は、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第三実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。この実施例では、フォーカスポイントPの位置が第一実施例と異なるだけで、他の構成は第一実施例に示す超音波振動子の構成と同一であるので、対応する構成要素に、第一実施例と同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図面に示すように、この実施例では、フォーカスポイントPは、処理流路を構成する貫通孔2eの中心に位置している。
このようにフォーカスポイントPが、回転放物面2aで反射した後に、処理流路の中心で集束するように構成することにより、処理流路内で強力超音波を得ることができるようになる。
尚、
図6の回転放物面は、
図1及び
図5に示す回転放物面と同一の形状で描かれているが、
図6は、本発明に係る超音波振動子の構成を示す概略図であり、回転放物面の形状は概略的に描かれているものであり、実際には、第三実施例における回転放物面と、第一実施例及び第二実施例における回転放物面とはその形状が異なることはいうまでもない。
【0012】
上記した実施例では、反射面が回転放物面として構成されているが、反射面の形状は本実施例に限定されることなく、例えば、円錐面の形状であってもよい。
図7は、本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の第四実施例における超音波の伝搬状態を示す図である。
この実施例では、振動体が、円錐形であること以外は、第一実施例の構造と同一であるため、第一実施例に対応する構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図面に示すように、この実施例に係る超音波振動子の振動体2は円錐形であり、その底面2bに圧電素子3が設けられており、反射面が円錐面2aで構成されている。
上記したように構成された超音波振動子によれば、不図示の制御装置を介して所定の周波数で交流電圧を圧電素子3に印加することによって圧電素子3から円錐面2aに向けて平行に超音波を励振させ、圧電素子3で励振された超音波は円錐面2aで反射して、処理流路を構成する貫通孔2eに向かう。これにより、
図7に示すように、超音波は処理流路に沿った複数のポイントで集束し、処理流路の内部に広い範囲で強力な音波を生じさせる。このように構成することにより、超音波振動子の処理流路において強力は音波が生じる範囲を広げることができ、その結果、処理流路における処理可能な範囲を広げることが可能になる。
【0013】
次に、
図8を参照して、上記したように構成された超音波振動子1と同様の構成を有する一対の超音波振動子片10及び20を、圧電素子13及び23が対面するように上下に二つ配置してなる本発明に係る流路内蔵型超音波振動子の構成について説明していく。
図中、符号10及び20は、超音波振動子片を示している。各超音波振動子片10及び20は、振動体12及び22を有し、振動体12及び22の底面には両面に不図示の電極が設けられた円環状の圧電素子13及び23が固定されている。
各振動体12及び22は、切頭円錐形状であり、各々反射面としての円錐面12a及び22aを有する。
また、各振動体12及び22は、その底面に軸線方向外方に突出し、相互に篏合可能な寸法の円筒状の連結フランジ12b及び22bが形成されている。さらに、各振動体12及び22は、その中心軸線に沿って貫通孔12c及び22cが形成されており、振動体12及び22を結合させた時に貫通孔12c及び22cが連通して処理通路を形成する。
図中、符号12d及び22dは、径方向外方に突出するフランジを示しており、符号14は上部連結具、符号24は下部連結具を各々示している。
上記したように構成された二つの超音波振動子片10及び20は、圧電素子13及び23が対面するように上下に配置して結合され、結合時に連結フランジ12b及び22が篏合して、流路内蔵型超音波振動子を構成する。
上記したように構成された流路内蔵型超音波振動子によれば、不図示の制御装置を介して所定の周波数で交流電圧を各圧電素子13及び23に印加することによって圧電素子13及び23から反射面としての円錐面12a及び22aに向けて平行に超音波を励振させ、圧電素子13及び23で励振された超音波を円錐面12a及び22aで反射させて処理流路を構成する貫通孔12c及び22cに集束させることにより、処理流路において強力超音波が得られる。尚、
図8は、超音波振動子の構成を説明するための概略図であり、円錐面の形状は、正確に描写されているものではない。
このように、反射面として円錐面を有する二つの超音波振動子片10及び20を、その貫通孔12c及び22cが連通して一本の処理流路を形成するように上下に重ねて配置することにより、強力超音波が得られる処理流路の範囲を広げることができ、具体的には、強力超音波が得られる処理流路の範囲を
図7に示した実施例の範囲の倍にすることが可能になる。
また、このように超音波振動子片を上下に二つに重ねて配置することで、集束過程における音波の広がり(拡散)によって、超音波振動子全体の中心部分において特に効率的に超音波集束ができるようになるので、振動体及び圧電素子の直径を小さくすることも可能になる。
【0014】
さらに、
図9を参照して、一対の超音波振動子片を有する流路内蔵型超音波振動子の別の実施例を説明していく。
この実施例における各超音波振動子片の構成は、振動体の形状以外は
図8に示した実施例と同一の構造を有するので、対応する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
この実施例では、超音波振動子片10及び20の振動体12及び22は、各々上部に回転放物面12a及び22aを有する円柱体から成り、前記回転放物面12a及び22aは、各々、そのフォーカスポイントPが超音波振動子全体の中心点、即ち、連結孔12c及び22cを連通してなる処理流路の中心に位置するように形成されている。
上記したように構成された超音波振動子によれば、一方の超音波振動子片10の圧電素子13から出力された超音波が、その超音波振動子片10の回転放物面12aで反射し、フォーカスポイントPを通過した後、他方の超音波振動子片20の回転放物面22aで反射して超音波振動子片20の圧電素子23に戻るので、共振系を構成することができるようになり、より効率的に定電圧でフォーカスポイントPに強力超音波を発生させることが可能になる。
【0015】
次に、
図10及び
図11を用いて本発明に係る流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置の実施の形態について説明する。
図10は血液ガス分析装置の一実施例の斜視図を、
図11は
図10に示した血液ガス分析装置の内部機構を示す概略図を各々示している。
図中符号30は血液ガス分析装置全体を示し、符号31は血液ガス分析装置30のケーシングを、符号32は操作パネルとしても機能するモニタを、符号33は分析結果を印字するためのプリンタを示している。
ケーシング31の前面には較正液タンク35、洗浄液タンク36及び廃液タンク37が着脱可能に装着されている。
ケーシング31の上面前方には、シリンジSを装着するためのシリンジ装着部38が設けられている。シリンジ装着部38には、シリンジSの装着の有無を検知するシリンジ検知センサ38aが設けられている(
図6参照)。
また、
図11に示すように、ケーシング31の内部には、
装着部38に装着されたシリンジSの内部に出し入れすることができるように構成された吸引ノズル40と、
吸引ノズル40を動かすための作動部41と、
吸引ノズル40に接続された吸引回路42と、
吸引回路42を通して吸引ノズル40に吸引力を生じさせるポンプ43と、
吸引回路42におけるポンプ43の上流に配置されたフローセンサ44と、
吸引回路42におけるポンプ43とフローセンサ44との間に配置された流路内蔵型超音波振動子45と、
吸引回路42における流路内蔵型超音波振動子45とポンプ43との間に配置された分析用センサ部46と、
上記各部を制御する制御装置47と
が設けられている。
また、
図10及び
図11において符号50は、吸引ノズル40がシリンジSに出し入れ可能に動作され得るように吸引ノズル40を収容する吸引ノズル収容部を示している。
図11に示すように、吸引ノズル40は、少なくともシリンジSの内部に侵入可能な直径を有する先端部40aと、先端部40aに繋がり、少なくとも先端部40aより直径が小さい胴体部40bとを有する。
前記吸引ノズル収容部50には、吸引ノズル40の先端部40aによって閉弁可能な第一弁51及び第二弁52が、吸引ノズル40の移動方向に沿って間隔を開けて配置されている。吸引ノズル収容部50における前記二つの弁51及び52の間には、洗浄液導入口53及び廃液口54が設けられており、吸引ノズル40及び吸引回路42を洗浄する時に、吸引ノズル40の先端部40aを第一弁51及び第二弁52を閉弁する位置に移動し、次いで、不図示のポンプ(又はポンプ43)によって前記洗浄液タンク36から前記洗浄液導入口53を介して洗浄液を吸引ノズル収容部50における第一弁51と第二弁52との間の空間に供給し、ポンプ43を介して吸引ノズル40で洗浄液を吸引させ、洗浄液をフローセンサ44、超音波振動子45及び分析用センサ部46に流して廃液タンク37に廃液させる。また、洗浄後に、吸引ノズル40によって吸引されなかった洗浄液は、不図示のポンプ(又はポンプ43)によって前記廃液口54を介して前記廃液タンク37に廃液される。
制御装置47は、シリンジ検知センサ38a及びフローセンサ44からの信号を入力して、これらの信号に基づいて、作動部41及びポンプ43の動作を制御する。
また、制御装置47は、分析用センサ部46からの検知信号に基づいて血液成分分析を行い、その分析結果をモニタ32及びプリンタ33に出力する。分析用センサ部46からの検知信号に基づく血液成分分析処理については、公知の血液成分分析装置と同様の処理であるので、この明細書では詳細な説明は省略する。
さらに、制御装置47は、シリンジ検知センサ38a及びフローセンサ44からの信号に基づいて、流路内蔵型超音波振動子45の動作を制御する。
流路内蔵型超音波振動子45の構成は、
図1~
図4に基づいて説明した流路内蔵型超音波振動子1の構造と同一であるので、ここでは
図1~
図4の実施例に対応する構成要素については同じ符号を用いて説明をする。
流路内蔵型超音波振動子45は、その上部連結具4の接続部4b及び下部連結具5の接続部5bに吸引回路42を接続して、吸引回路42を流れる血液が流路内蔵型超音波振動子45の流路を流れるように設けられている。制御装置47は、シリンジ検知センサ38a及びフローセンサ44からの信号に基づいて血液が流路内蔵型超音波振動子45における処理流路を通過する際に、圧電素子3に所定の周波数の交流電圧を印加して超音波を励振し、処理流路内に強力超音波を発生させ、強力超音波により血中の赤血球を破壊して血液を溶血させる。
この実施例では、超音波振動子25における振動体2の寸法は直径40mm、高さ10mmであり、その材質はアルミ合金(ジェラルミン)であり、また、圧電素子3の寸法は内径16mm、外径40mm、厚さ1.1mmである。さらに、制御装置47によって圧電素子3に印加される交流電圧は80Vppであり、処理流路において得られる強力超音波の周波数は1.2MHzであり、この強力超音波により血液中の赤血球が破壊できることを確認した。
上記したように流路内蔵型超音波振動子を備えた血液ガス分析装置によれば、血液ガス分析装置における吸引回路中に流路内蔵型超音波振動子を設けることで、事前に血液を溶血することなくシリンジSから血液を吸引して分析装置内で血液を溶血することが可能になる。これにより必要に応じてヘモグロビンの測定時には流路内蔵型超音波振動子を用いて血液を溶血して分析用センサ部46へ送り、他の成分の測定時には流路内蔵型超音波振動子を作動させずに溶血していない血液を分析用センサ部46へ送ることが可能になる。
尚、上記した実施例では、制御装置47によって流路内蔵型超音波振動子45の圧電素子3へ印加する電圧を変えて、処理流路において得られる強力超音波を変更して、処理流路において超音波における洗浄機能を発揮させることも可能である。
また、上記した実施例では、一本の吸引回路42に流路内蔵型超音波振動子45を介在させているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、吸引回路42に、分岐する二つの回路を設け、一方の回路にヘモグロビン測定用センサを設け、他方のセンサにヘモグロビン以外の測定用センサを設け、ヘモグロビン測定用センサが設けられている回路のみに、流路内蔵型超音波振動子45を設けてもよい。
さらにまた、上記した実施例では、血液ガス分析装置に、
図1~
図4に示した流路内蔵型超音波振動子を設けているが、この構成は本実施例に限定されることなく、
図5~
図9に示した流路内蔵型超音波振動子を吸引回路に設けることが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0016】
1 超音波振動子
2 振動体
2a 回転放物面
2b 底面
2c 上部連結具取付孔
2d 下部連結具取付孔
2e 貫通孔(処理流路)
2f フランジ
2' 振動体(第四実施例)
2a' 円錐面(第四実施例)
3 圧電素子
4 上部連結具
4a 取付部
4b 接続部
4c 貫通孔
5 下部連結具
5a 取付部
5b 接続部
5c 貫通孔
P フォーカスポイント
10 超音波振動子片
12 振動体
12a 円錐面(
図8の実施例);回転放物面(
図9の実施例)
12b 連結フランジ
12c 貫通孔
12d フランジ
13 圧電素子
14 上部連結具
20 超音波振動子片
22 振動体
22a 円錐面(
図8の実施例);回転放物面(
図9の実施例)
22b 連結フランジ
22c 貫通孔
22d フランジ
23 圧電素子
24 下部連結具
P フォーカスポイント
30 血液ガス分析装置
31 ケーシング
32 操作パネル
33 プリンタ
35 較正液タンク
36 洗浄液タンク
37 廃液タンク
38 シリンジ装着部
38a シリンジ検知センサ
40 吸引ノズル
40a 先端部
40b 胴体部
41 作動部
42 吸引回路
43 ポンプ
44 フローセンサ
45 流路内蔵型超音波振動子
46 分析用センサ部
47 制御装置
50 吸引ノズル収容部
51 第一弁
52 第二弁
53 洗浄液導入口
54 廃液口
S シリンジ