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特許7613035液体組成物セット及び電気化学素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】液体組成物セット及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20250107BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20250107BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20250107BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M4/139
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/86
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020161032
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2021089887
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019213647
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫正
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】野村 正宜
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-172914(JP,A)
【文献】特開2005-050755(JP,A)
【文献】特開2011-014262(JP,A)
【文献】特開2003-163006(JP,A)
【文献】特開2019-036416(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01G 11/06
H01G 11/30
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置を用いて正極合材層又は負極合材層を形成するための液体組成物セットであって、
第1の電極材料が第1の液体に溶解又は分散している第1の液体組成物と、
前記第1の電極材料とは異なる第2の電極材料が前記第1の液体とは異なる第2の液体に溶解又は分散している第2の液体組成物を有し、
前記第1の液体組成物及び前記第2の液体組成物は、いずれも25℃における粘度が200mPa・s以下であり、
前記第2の電極材料は、前記第1の液体よりも、前記第2の液体に溶解又は分散しやすい、液体組成物セット。
【請求項2】
前記第1の液体組成物及び前記第2の液体組成物の少なくともいずれかを一種以上有する、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項3】
前記第1の液体組成物の粘度及び前記第2の液体組成物の粘度は、いずれも前記液体吐出装置の液体吐出ヘッドから吐出することが可能な粘度である、請求項1又は2に記載の液体組成物セット。
【請求項4】
前記第1の電極材料は、導電助剤を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項5】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料の少なくともいずれかは、活物質を含み、
前記活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵又は放出することが可能な材料である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項6】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料の少なくともいずれかは、活物質を含み、
前記活物質を含む液体組成物は、前記活物質の含有量が20質量%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項7】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料は、最大粒子径が前記液体吐出装置の液体吐出ヘッドのノズル径よりも小さい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項8】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料は、モード径が3μm以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項9】
前記第1の液体組成物は、乳酸エチルを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項10】
前記第2の液体組成物は、N-メチルピロリドンまたはN,N-ジメチルアセトアミドを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液体組成物セットを、電極基体上に塗布して、電極合材層を形成する工程を含む、電気化学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物セット及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車等へ搭載され、需要が拡大している。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、電気化学素子に対する要求が多様化している。
【0003】
従来、電気化学素子を構成する電極の製造方法としては、ダイコーター、コンマコーター、リバースロールコーター等を用いて、電極材料と、液体を含む電極合材層用液体組成物を塗布することにより、電極基体上に電極合材層を形成する方法が知られている。
【0004】
例えば、電極基体上に、電極合材層用液体組成物をスクリーン印刷することにより、電極合材層を形成することができる。
【0005】
しかしながら、ニーズに合わせた形状にスクリーン印刷するためには、ニーズ毎にスクリーンを作製する必要がある。
【0006】
そこで、液体吐出装置を用いて、電極基体上に、電極合材層用液体組成物を吐出することにより、電極合材層を形成する方法が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、電極合材層用液体組成物の乾燥効率の観点から、電極合材層用液体組成物に含まれる液体として、沸点が低い液体を用いることが考えられる。
【0008】
しかしながら、電気化学素子の特性が良好となる電極材料(例えば、活物質、導電助剤、バインダ、電解質等)の、当該沸点が低い液体に対する溶解性又は分散性が常に良好であるとは限らない。
【0009】
また、電極合材層用液体組成物の吐出特性の観点から、電極合材層用液体組成物に含まれる液体として、沸点が高い液体を用いることも考えられる。
【0010】
したがって、電気化学素子の特性や、吐出特性が良好となる電極合材層用液体組成物を設計する際には、液体の電気化学的特性や電極材料の電気化学的特性を考慮すると同時に、電極材料の液体に対する溶解性、分散性等の複数の条件を考慮する必要がある。そのため、電極合材層用液体組成物の設計の自由度を向上させることが望まれている。
【0011】
本発明は、設計の自由度が高く、電気化学素子を構成する正極合材層又は負極合材層の形成に用いることが可能な液体組成物セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、液体吐出装置を用いて正極合材層又は負極合材層を形成するための液体組成物セットであって、第1の電極材料が第1の液体に溶解又は分散している第1の液体組成物と、前記第1の電極材料とは異なる第2の電極材料が前記第1の液体とは異なる第2の液体に溶解又は分散している第2の液体組成物を有し、前記第1の液体組成物及び前記第2の液体組成物は、いずれも25℃における粘度が200mPa・s以下であり、前記第2の電極材料は、前記第1の液体よりも、前記第2の液体に溶解又は分散しやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設計の自由度が高く、電気化学素子を構成する正極合材層又は負極合材層の形成に用いることが可能な液体組成物セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の負極の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態の負極の製造方法の一例を示す模式図である。
図3】本実施形態の負極の製造方法の他の例を示す模式図である。
図4】本実施形態の負極の製造方法の他の例を示す図である。
図5】本実施形態の負極の製造方法の他の例を示す図である。
図6図2~5の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
図7】本実施形態の正極の一例を示す断面図である。
図8】本実施形態の電極素子の一例を示す断面図である。
図9】本実施形態の電気化学素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0016】
[液体組成物セット]
本実施形態の液体組成物セットは、正極合材層又は負極合材層の形成に用いられる。
【0017】
本実施形態の液体組成物セットは、第1の電極材料が第1の液体に溶解又は分散している第1の液体組成物と、第1の電極材料とは異なる第2の電極材料が第1の液体とは異なる第2の液体に溶解又は分散している第2の液体組成物を有する。
【0018】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、液体とは、電極材料を溶解又は分散させる媒体として機能する液体を意味し、バインダの前駆体として機能する液体(例えば、モノマー)を含まない。
【0019】
ここで、第1の電極材料は、活物質、導電助剤、バインダ、及び電解質の少なくともいずれかを含むことができ、好ましくは導電助剤を含む。これにより、電気化学素子の特性が向上する。
【0020】
また、第2の電極材料は、活物質、導電助剤、バインダ、及び電解質の少なくともいずれかを含むことができる。
【0021】
本実施形態の液体組成物セットでは、第2の電極材料が、第1の液体よりも、第2の液体に溶解又は分散しやすい。
【0022】
その結果、本実施形態の液体組成物セットでは、設計の自由度が高く、かつ、電気化学素子の特性、吐出特性に優れる液体組成物セットが得られる。
【0023】
なお、本実施形態の液体組成物セットは、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の少なくともいずれかを一種以上有していてもよい。
【0024】
ここで、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の少なくともいずれかとは、第1の液体組成物のみを示す場合、第2の液体組成物のみを示す場合、または第1の液体組成物と第2の液体組成物の両方を示す場合である。
【0025】
また、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の少なくともいずれかを一種以上有するとは、第1の液体組成物及び第2の液体組成物のいずれも一種ずつ有する場合、第1の液体組成物を二種以上有しかつ第2の液体組成物を一種有する場合、第1の液体組成物を一種有しかつ第2の液体組成物を二種以上有する場合、あるいは第1の液体組成物及び第2の液体組成物のいずれも二種以上有する場合を示す。
【0026】
一般に、電極合材層を構成する電極活物質、導電助剤、バインダ、及び電解質のいずれかが、液体に良好に溶解又は分散する条件は、それぞれによって異なる場合がある。また、電極合材層を構成する電極活物質、導電助剤、バインダ、及び電解質のいずれかが、同一の液体に良好に溶解又は分散しても、これらを混合すると、良好に溶解又は分散しなくなる場合がある。
【0027】
電気化学素子の特性が良好であると期待される、電極活物質、導電助剤、バインダ、及び電解質のうちの複数種の電極材料にとって、良好に溶解又は分散する液体が異なると、これらの電極材料のうちの複数種の電極材料を含む液体組成物を吐出することが困難になる可能性がある。
【0028】
そこで、第1の液体組成物及び前記第2の液体組成物の少なくともいずれかを一種以上有することにより、液体組成物の設計自由度が向上する。
【0029】
第1の電極材料及び前記第2の電極材料の少なくともいずれかが活物質を含む場合、液体組成物中の活物質の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。液体組成物中の活物質の含有量が20質量%以上であると、電気化学素子の容量が向上し、25%以上であると、電気化学素子の容量がさらに向上する。
【0030】
なお、液体組成物中の活物質の含有量は、60質量%以下であることが好ましい。液体組成物中の活物質の含有量が60質量%以下であると、液体組成物の吐出性が向上する。
【0031】
第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、液体吐出ヘッドから吐出することが可能な粘度であることが好ましい。
【0032】
液体組成物の25℃における粘度は、200mPa・s以下であることが好ましい。液体組成物の25℃における粘度が200mPa・s以下であると、液体組成物の吐出安定性が向上する。
【0033】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、電極材料が液体に溶解しているとは、液体組成物の25℃における粘度が200mPa・s以下であることを意味する。
【0034】
また、第2の電極材料は、第1の液体よりも、第2の液体に溶解しやすいとは、第2の液体組成物において、第2の液体を第1の液体に置換した場合に、25℃における粘度が上昇すること、又は、第2の電極材料が第1の液体に溶解しなくなることを意味する。
【0035】
第1の電極材料及び第2の電極材料は、最大粒子径が液体吐出ヘッドのノズル径よりも小さいことが好ましい。
【0036】
ここで、最大粒子径は、体積基準の粒度分布が100%となる粒径を示す。最大粒子径は、レーザ回折法を利用した粒度分布計により測定することができる。
【0037】
第1の電極材料及び第2の電極材料のモード径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。第1の電極材料及び第2の電極材料のモード径が20μm以下であると、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の吐出安定性及び耐沈降性が向上し、10μm以下であると、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の吐出安定性及び耐沈降性がより向上し、3μm以下であると、第1の液体組成物及び第2の液体組成物の吐出安定性及び耐沈降性がさらに向上する。
【0038】
ここで、モード径は、粒度分布の最頻値となる粒径を示す。モード径は、レーザ回折法を利用した粒度分布計により測定することができる。
【0039】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、電極材料が液体に分散しているとは、液体組成物のモード径が3μm以下であることを意味する。
【0040】
また、第2の電極材料は、第1の液体よりも、第2の液体に分散しやすいとは、第2の液体組成物において、第2の液体を第1の液体に置換した場合に、モード径が上昇すること、又は、第2の電極材料が第1の液体に分散しなくなることを意味する。
【0041】
第1の電極材料及び第2の電極材料の10%径(d10)は、0.10μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましい。第1の電極材料及び第2の電極材料のメジアン径(d10)が0.10μm以上であると、液体組成物の貯蔵安定性が向上し、0.15μm以上であると、液体組成物の貯蔵安定性がさらに向上する。
【0042】
電極材料の10%径は、レーザ回折法を利用した粒度分布計により測定することができる。
【0043】
<活物質>
活物質としては、正極活物質又は負極活物質を用いることができる。
【0044】
なお、正極活物質又は負極活物質は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0045】
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを吸蔵又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0046】
ここで、吸蔵とは、負極活物質にアルカリ金属イオンが挿入されることを示す。また、放出とは、負極活物質からアルカリ金属イオンが脱離することを示す。
【0047】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される一種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
【0048】
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO四面体(XはP、S、As、Mo、W、Si等である)を有するポリアニオン系化合物も用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の点で、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数、出力特性の点で、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。なお、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0050】
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを吸蔵又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0051】
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。
【0052】
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0053】
また、非水系蓄電素子のエネルギー密度の点から、負極活物質として、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0054】
<電解質>
電解質として固体電解質層を形成するための材料を用いることができる。固体電解質層を構成する材料としては、電子絶縁性を有し、かつ、イオン電導性を示す固体物質であれば、特に制限はないが、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質が、高いイオン導電性を有する観点で好ましい。
【0055】
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li10GeP12またはアルジロダイト型結晶構造を有するLiPSX(Xは、F、Cl、Br、またはIである)などが挙げられる。
【0056】
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型結晶構造を有するLLZ(LiLaZr12)またはNASICON型結晶構造を有するLATP(Li1+xAlTi20(PO)(0.1≦x≦0.4)、ペロブスカイト型結晶構造を有するLLT(Li0.33La0.55TiO)、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.30.4)などが挙げられる。
【0057】
なお、これら固体電解質は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
これらの固体電解質層を構成するために液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、例えば、固体電解質の前駆体となるLiS、P、LiClなど、固体電解質の材料であるLiS-P系ガラス、Li11ガラスセラミックスなど、が挙げられる。
【0059】
また、電解質としてゲル電解質層を形成するための材料を用いることもできる。
【0060】
ゲル電解質としては、イオン電導性を示すものであれば、特に制限はなく、例えばゲル電解質の網目構造を構成するポリマーとしてはポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンのコポリマー、ポリエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0061】
また、ゲル電解質に保持される溶媒分子としてはイオン液体が挙げられる。イオン液体としてはメチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドがある。
【0062】
また、テトラグライム、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの液体とリチウム塩を混合したものでもよい。
【0063】
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)等が挙げられる。
【0064】
なお、これゲル体電解質を、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
これらのゲル電解質層を構成するために、液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、上記のポリマー化合物とイオン液体またはリチウム塩が溶解された溶液を用いてもよい。また、液体に溶解又は分散させる電解質材料として、ゲル電解質の前駆体となる材料(例えば、両末端がアクリレート基であるポエチレンオキサイドまたはポリプロピレンオキサイド等とイオン液体またはリチウム塩が溶解された溶液とを組合せたもの)を用いてもよい。
【0066】
<液体>
液体としては、正極材料又は負極材料を分散させることが可能であれば、特に制限はないが、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、メシチレン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ノルマルヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-タート-ブチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン等が挙げられる。
【0067】
なお、液体は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0068】
<導電助剤>
導電助剤としては、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により形成された導電性カーボンブラックの他、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子等の炭素材料を用いることができる。
【0069】
炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維を用いることができる。
【0070】
<バインダ>
バインダは、負極材料同士、正極材料同士、負極材料と負極基体、正極材料と正極基体を結着することが可能であれば、特に制限はないが、液体吐出ヘッドのノズル詰まりを抑制する観点から、液体組成物の粘度を上昇させない材料を用いることが好ましい。
【0071】
液体組成物の粘度を上昇させない材料としては、液体に溶解又は分散することが可能な高分子化合物等を用いることができる。
【0072】
液体に溶解することが可能な高分子化合物を用いる場合は、高分子化合物が液体に溶解している液体組成物が、液体吐出ヘッドから吐出することが可能な粘度であればよい。
【0073】
高分子化合物としては、例えば、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール(PEO)、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)等が挙げられる。
【0074】
液体に溶解することが可能な高分子化合物として、高分子粒子を用いてもよい。
【0075】
高分子粒子の最大粒子径は、液体吐出ヘッドのノズル径よりも小さければよい。
【0076】
高分子粒子のモード径は、0.01~1μmであることが好ましい。
【0077】
高分子粒子を構成する材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0078】
また、本実施形態の電極材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外の電極材料として、バインダの前駆体、分散剤等が含まれていてもよい。
【0079】
<バインダの前駆体>
バインダの前駆体としては、例えば、モノマー等の重合性化合物が挙げられる。
【0080】
重合性化合物を用いる場合、例えば、重合性化合物が液体に溶解している液体組成物を塗布した後に、加熱する、又は、非電離放射線、電離放射線、赤外線等を照射することにより、重合して、バインダが生成する。
【0081】
重合性化合物としては、重合性基を有していれば、特に制限は無いが、25℃で重合することが可能な化合物が好ましい。
【0082】
重合性化合物を用いると、電極合材層の内部に複数の空孔を形成することができる。このとき、電極合材層の内部の空孔が他の空孔と連結し、三次元的に広がっていることが好ましい。空孔が連結することで、電極合材層に電解質が十分に浸み込み、電気化学素子のイオン伝導性が向上する。
【0083】
重合性化合物は、単官能であってもよいし、多官能であってもよい。
【0084】
なお、多官能の重合性化合物とは、重合性基を2個以上有する化合物を意味する。
【0085】
多官能の重合性化合物としては、加熱、又は、非電離放射線、電離放射線、赤外線の照射によって重合することが可能であれば、特に制限はなく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0086】
多官能のアクリレート樹脂は、マイケル受容体として、用いることができるため、マイケル供与体と重付加反応させることができる。
【0087】
多官能のアクリレート樹脂としては、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の低分子化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の高分子化合物等の二官能のアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の三官能のアクリレート;ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の四官能以上のアクリレート等が挙げられる。
【0088】
マイケル供与体としては、多官能のアミン、多官能のチオール等が挙げられる。
【0089】
多官能のアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1、3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0090】
多官能のチオールとしては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,3,5-ベンゼントリチオール、4,4-ビフェニルジチオール等が挙げられる。
【0091】
重付加反応の触媒としては、マイケル付加反応に通常用いられる触媒を適宜選択して使用することができるが、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N-メチルジシクロヘキシルアミン等のアミン触媒、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基触媒、金属ナトリウム、ブチルリチウム等が挙げられる。
【0092】
付加重合(ラジカル重合)することが可能な重合性化合物としては、例えば、ミルセン、カレン、オシメン、ピネン、リモネン、カンフェン、テルピノレン、トリシクレン、テルピネン、フェンチェン、フェランドレン、シルベストレン、サビネン、ジペンテン、ボルネン、イソプレゴール、カルボン等の不飽和結合を有するテルペンの二重結合をエポキシ化し、アクリル酸又はメタクリル酸を付加させたエステル;シトロネロール、ピノカンフェオール、ゲラニオール、フェンチルアルコール、ネロール、ボルネオール、リナロール、メントール、テルピネオール、ツイルアルコール、シトロネラール、ヨノン、イロン、シネロール、シトラール、ピノール、シクロシトラール、カルボメントン、アスカリドール、サフラナール、ピペリトール、メンテンモノオール、ジヒドロカルボン、カルベオール、スクラレオール、マノール、ヒノキオール、フェルギノール、トタロール、スギオール、ファルネソール、パチュリアルコール、ネロリドール、カロトール、カジノール、ランセオール、オイデスモール、フィトール等のテルペン由来のアルコールとアクリル酸又はメタクリル酸のエステル;シトロネロル酸、ヒノキ酸、サンタル酸;メントン、カルボタナセトン、フェランドラール、ピメリテノン、ペリルアルデヒド、ツヨン、カロン、ダゲトン、ショウノウ、ビサボレン、サンタレン、ジンギベレン、カリオフィレン、クルクメン、セドレン、カジネン、ロンギホレン、セスキベニヘン、セドロール、グアヨール、ケッソグリコール、シペロン、エレモフィロン、ゼルンボン、カンホレン、ポドカルプレン、ミレン、フィロクラデン、トタレン、ケトマノイルオキシド、マノイルオキシド、アビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、イソ-d-ピマル酸、アガテンジカルボン酸、ルベニン酸、カロチノイド、ペラリアルデヒド、ピペリトン、アスカリドール、ピメン、フェンケン、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類等の骨格を側鎖に有するアクリレート又はメタクリレートが挙げられる。
【0093】
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。
【0094】
光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。
【0095】
光ラジカル発生剤としては、例えば、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4´-ジクロロベンゾフェン、4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、モノアシルホスフィンオキシド、ジアシルホスフィンオキシド、チタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン、キサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、ジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0096】
なお、2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のビスアジド化合物等の光架橋型ラジカル発生剤を光ラジカル発生剤と併用してもよい。
【0097】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
【0098】
重合開始剤として、光酸発生剤を用いてもよい。この場合、塗布された液体組成物に光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、重合性化合物が重合する。
【0099】
酸の存在下で重合する重合性化合物としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等の環状エーテル基を有する化合物、上述した環状エーテル基を側鎖に有するアクリル化合物又はビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルエーテル類、ビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、α-メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールと、アクリル酸、メタクリル酸等とのエステル化合物等のビニルアルコールエステル類等のカチオン重合することが可能なビニル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0100】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド、有機ハロゲン化物、芳香族スルホネート、ジスルホン化合物、スルホニル化合物、スルホネート、スルホニウム塩、スルファミド、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。これらの中でも、オニウム塩が好ましい。
【0101】
オニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素酸イオン、トリフルオロメタンスルホネートイオン、p-トルエンスルホネートイオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。
【0102】
上記以外の光酸発生剤としては、ハロゲン化トリアジンを使用することができる。
【0103】
なお、光酸発生剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、光酸発生剤を使用する場合は、増感色素を併用してもよい。
【0104】
増感色素としては、例えば、アクリジン、ベンゾフラビン、ペリレン、アントラセン、レーザ色素等が挙げられる。
【0105】
<分散剤>
液体組成物は、分散剤をさらに含んでいてもよい。
【0106】
分散剤としては、液体中の電極材料の分散性を向上させることが可能であれば、特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤、ポリリン酸塩系分散剤等の無機分散剤等が挙げられる。
【0107】
[電気化学素子の製造方法]
本実施形態の電気化学素子の製造方法は、本実施形態の液体組成物セットを電極基体上に塗布して、電極合材層を形成する工程を含む。
【0108】
ここで、液体組成物セットを電極基体上に塗布する方法としては、液体組成物セットを構成する液体組成物を、電極基体上に順次塗布する方法、液体組成物セットを構成する液体組成物を、電極基体上に略同時に塗布する方法等が挙げられる。
【0109】
液体組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、液体吐出方法等が挙げられる。これらの中でも、電極の生産性の点で、液体吐出方法が特に好ましい。
【0110】
液体組成物が重合性化合物を含む場合は、液体組成物を電極基体上に塗布した後に、加熱する、又は、非電離放射線、電離放射線、赤外線等を照射することにより、重合性化合物が重合し、バインダが生成する。
【0111】
電極基体(集電体)を構成する材料としては、導電性を有し、印加される電位に対して安定であれば、特に制限はない。
【0112】
<負極>
図1に、本実施形態の負極の一例を示す。
【0113】
負極10は、負極基体11の片面に、負極合材層12が形成されている。
【0114】
なお、負極合材層12は、負極基体11の両面に形成されていてもよい。
【0115】
負極10の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。
【0116】
負極基体11を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅等が挙げられる。
【0117】
<負極の製造方法>
図2に、本実施形態の負極の製造方法の一例を示す。
【0118】
負極10の製造方法は、液体吐出装置300A及び300Bを用いて、負極基体11上に、第1の液体組成物12Aと、第2の液体組成物12Bを、順次吐出する工程を含む。
【0119】
ここで、液体組成物は、負極材料を含み、負極材料は、負極活物質、導電助剤、バインダ又はバインダの前駆体を含む。
【0120】
液体組成物12Aは、タンク307Aに貯蔵されており、タンク307Aからチューブ308Aを経由して液体吐出ヘッド306Aに供給される。同様に、液体組成物12Bは、タンク307Bに貯蔵されており、タンク307Bからチューブ308Bを経由して液体吐出ヘッド306Bに供給される。
【0121】
なお、液体吐出装置の個数は、2個に限定されず、3個以上であってもよい。
【0122】
また、液体吐出装置300A(又は300B)は、液体組成物12A(又は12B)が液体吐出ヘッド306A(又は306B)から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0123】
負極10を製造する際には、加熱することが可能なステージ400上に、負極基体11を設置した後、液体吐出ヘッド306A、306Bから、第1の液体組成物12Aの液滴、第2の液体組成物12Bの液滴を、順次負極基体11に吐出する。このとき、ステージ400が移動してもよく、液体吐出ヘッド306A、306Bが移動してもよい。
【0124】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際には、ステージ400により加熱してもよいし、ステージ400以外の加熱機構により加熱してもよい。
【0125】
加熱機構としては、第1の液体組成物12Aと、第2の液体組成物12Bに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。
【0126】
なお、加熱機構は、複数個設置されていてもよい。
【0127】
また、重合性化合物を重合するための紫外線による硬化装置が設置されていてもよい。
【0128】
加熱温度は、重合性化合物が重合する温度であれば、特に制限はなく、使用エネルギーの観点から、70~150℃の範囲であることが好ましい。
【0129】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0130】
本実施形態に係る負極の製造方法では、負極基体11上に負極合材層12が形成され、負極10が得られる。
【0131】
図3に、本実施形態の負極の製造方法の他の例を示す。
【0132】
負極10の製造方法は、液体吐出装置300Cを用いて、負極基体11上に、第1の液体組成物12Aと、第2の液体組成物12Bを、順次吐出する工程を含む。
【0133】
液体組成物12Aは、タンク307Aに貯蔵されており、タンク307Aからチューブ308Aを経由して液体吐出ヘッド306Cに供給される。同様に、液体組成物12Bは、タンク307Bに貯蔵されており、タンク307Bからチューブ308Bを経由して液体吐出ヘッド306Cに供給される。
【0134】
負極10を製造する際には、加熱することが可能なステージ400上に、負極基体11を設置した後、液体吐出ヘッド306Cから、第1の液体組成物12Aの液滴、第2の液体組成物12Bの液滴を、順次負極基体11に吐出する。
【0135】
図4に、本実施形態の負極の製造方法の他の例を示す。
【0136】
負極10の製造方法は、液体吐出装置300A及び300Bを用いて、負極基体11上に、第1の液体組成物12Aと、第2の液体組成物12Bを、順次吐出する工程を含む。
【0137】
まず、細長状の負極基体11を準備する。そして、負極基体11を筒状の芯に巻き付け、負極合材層12を形成する側が、図中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、負極基体11は、図中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の負極基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306A、306Bから、図2と同様にして、第1の液体組成物12Aの液滴、第2の液体組成物12Bの液滴を、順次搬送される負極基体11上に吐出する。第1の液体組成物12Aの液滴、第2の液体組成物12Bの液滴は、負極基体11の少なくとも一部を覆うように吐出される。
【0138】
なお、液体吐出ヘッド306A、306Bは、負極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。
【0139】
また、図3と同様にして、液体吐出装置300A及び300Bの代わりに、液体吐出装置300Cを設置してもよい(図5参照)。
【0140】
次に、第1の液体組成物12Aの液滴、第2の液体組成物12Bの液滴が吐出された負極基体11は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、負極基体11上の第1の液体組成物12A、第2の液体組成物12Bが乾燥して負極合材層12が形成され、負極10が得られる。その後、負極10は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0141】
加熱機構309としては、第1の液体組成物12A、第2の液体組成物12Bに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。
【0142】
なお、加熱機構309は、負極基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0143】
加熱温度は、重合性化合物が重合する温度であれば、特に制限はなく、使用エネルギーの観点から、70~150℃の範囲であることが好ましい。
【0144】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0145】
図6に、液体吐出装置300A及び300Bの変形例を示す。
【0146】
液体吐出装置300A´は、ポンプ310Aと、バルブ311A、312Aを制御することにより、第1の液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306A、タンク307A、チューブ308Aを循環することが可能である。同様に、液体吐出装置300B´は、ポンプ310Bと、バルブ311B、312Bを制御することにより、第2の液体組成物12Bが液体吐出ヘッド306B、タンク307B、チューブ308Bを循環することが可能である。
【0147】
また、液体吐出装置300A´は、外部タンク313Aが設けられており、タンク307A内の第1の液体組成物12Aが減少した際に、ポンプ310Aと、バルブ311A、312A、314Aを制御することにより、外部タンク313Aからタンク307Aに第1の液体組成物12Aを供給することも可能である。同様に、液体吐出装置300B´は、外部タンク313Bが設けられており、タンク307B内の第2の液体組成物12Bが減少した際に、ポンプ310Bと、バルブ311B、312B、314Bを制御することにより、外部タンク313Bからタンク307Bに第2の液体組成物12Bを供給することも可能である。
【0148】
液体吐出装置を用いると、負極基体11の狙ったところ(負極合材層12を形成したい負極基体11の領域)に、第1の液体組成物12A、第2の液体組成物12Bを吐出することができる。また、液体吐出装置を用いると、負極基体11と負極合材層12の上下に接する面同士を結着することができる。さらに、液体吐出装置を用いると、負極合材層12の厚さを均一にすることができる。
【0149】
<正極>
図7に、本実施形態の正極の一例を示す。
【0150】
正極20は、正極基体21の片面に、正極合材層22が形成されている。
【0151】
なお、正極合材層22は、正極基体21の両面に形成されていてもよい。
【0152】
正極20の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。
【0153】
正極基体21を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、タンタル等が挙げられる。
【0154】
<正極の製造方法>
正極20の製造方法は、正極基体21上に正極合材層22に形成すること以外は、負極10の製造方法と同様である。
【0155】
ここで、液体組成物は、正極材料を含み、正極材料は、正極活物質、導電助剤、バインダ又はバインダの前駆体を含む。
【0156】
<電極素子>
図8に、本実施形態の電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す。
【0157】
電極素子40は、負極15と正極25が、セパレータ30を介して、積層されている。ここで、正極25は、負極15の両側に積層されている。また、負極基体11には、引き出し線41が接続されており、正極基体21には、引き出し線42が接続されている。
【0158】
負極15は、負極基体11の両面に、負極合材層12が形成されていること以外は、負極10と同様である。
【0159】
正極25は、正極基体21の両面に、正極合材層22が形成されていること以外は、正極20と同様である。
【0160】
なお、電極素子40の負極15と正極25の積層数は、特に制限は無い。
【0161】
また、電極素子40の負極15の個数と正極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0162】
<セパレータ>
セパレータ30は、負極15と正極25の短絡を防ぐために、必要に応じて、負極15と正極25の間に設けられている。
【0163】
セパレータ30としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜等が挙げられる。
【0164】
セパレータ30の大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば、特に制限はない。
【0165】
セパレータ30は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0166】
なお、固体電解質を使用する場合は、セパレータ30を省略することができる。
【0167】
<電気化学素子>
図9に、本実施形態の電気化学素子の一例を示す。
【0168】
電気化学素子1は、図8に示す電極素子40に、電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより、電解質層51が形成されており、外装52により封止されている。電気化学素子1において、引き出し線41及び42は、外装52の外部に引き出されている。
【0169】
電気化学素子1は、必要に応じて、その他の部材を有してもよい。
【0170】
電気化学素子1としては、特に制限はなく、例えば、水系蓄電素子、非水系蓄電素子等が挙げられる。
【0171】
電気化学素子1の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0172】
<電解質水溶液>
電解質水溶液を構成する電解質塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩化亜鉛等が挙げられる。
【0173】
<非水電解質>
非水電解質としては、固体電解質又は非水電解液を使用することができる。
【0174】
ここで、非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0175】
<非水溶媒>
非水溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。
【0176】
非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。
【0177】
また、非プロトン性有機溶媒は、粘度が低いことが好ましい。
【0178】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。
【0179】
非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量は、50質量%以上であることが好ましい。非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量が50質量%以上であると、鎖状カーボネート以外の非水溶媒が誘電率が高い環状物質(例えば、環状カーボネート、環状エステル)であっても、環状物質の含有量が少なくなる。このため、2M以上の高濃度の非水電解液を作製しても、非水電解液の粘度が低くなり、非水電解液の電極へのしみ込みやイオン拡散が良好となる。
【0180】
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0181】
なお、カーボネート系有機溶媒以外の非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒
等を用いることができる。
【0182】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0183】
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)等が挙げられる。
【0184】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン等が挙げられる。
【0185】
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0186】
<電解質塩>
電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はない。
【0187】
電解質塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましい。
【0188】
電解質塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオン等が挙げられる。
【0189】
電解質塩を構成するアニオンとしては、例えば、BF 、PF 、AsF 、CFSO 、(CFSO、(CSO等が挙げられる。
【0190】
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)等が挙げられる。これらの中でも、イオン伝導度の点から、LiPFが好ましく、安定性の点から、LiBFが好ましい。
【0191】
なお、電解質塩は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0192】
非水電解液中の電解質塩の濃度は、目的に応じて適宜選択することができるが、非水系蓄電素子がスイング型である場合、1mol/L~2mol/Lであることが好ましく、非水系蓄電素子がリザーブ型である場合、2mol/L~4mol/Lであることが好ましい。
【0193】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等が挙げられる。
【実施例
【0194】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例では、電極材料が正極活物質、負極活物質である場合の適用について説明するが、電極材料が正極活物質、負極活物質以外の電極材料である場合の適用についても同様である。
【0195】
[液体組成物の粒度分布]
レーザ回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(マルバーン社製)を用いて、液体組成物を、水又は有機溶媒に分散させた後、25℃で液体組成物の粒度分布を計測した。
【0196】
[液体組成物の粘度]
B型粘度計(コーンプレート型粘度計)にNo.CPA-40Zのロータを装着して、液体組成物の100rpmにおける粘度を25℃で計測した。
【0197】
[電極合材層の剥離強度]
粘着・皮膜剥離解析装置VPA-3(協和界面科学社製)を用いて、電極合材層の剥離強度を測定した(ピール強度試験法)。具体的には、電極を、幅1.8cm×長さ10cmに切断した試験片の電極合材層の側の表面にセロハンテープを貼り付けた後、剥離速度30mm/分、剥離角度90°の条件で、試験片の一端からセロハンテープを100mm引き剥がし、そのときの応力を測定した。このような応力の測定を10回実施して、応力の加重平均を求め、電極合材層の剥離強度とした。
【0198】
[正極A~F、A´の容量]
正極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工した後、コイン缶中に、正極、厚さ100μmのガラスセパレータ(ADVANTEC社製)、非水電解液1、対極としての、厚さ200μmのリチウム(本庄金属社製)を入れ、非水系蓄電素子を得た。
【0199】
非水系蓄電素子に、室温(25℃)において、0.1mA/cmで充電終止電圧4.2Vまで定電流充電した後、0.1mA/cmで2.5Vまで定電流放電して初期充放電を実施した。次に、非水系蓄電素子に、0.1mA/cmで4.2Vまで定電流充電した後、0.1mA/cmで3.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを2回実施し、正極の単位面積当たりの容量を計測した。
【0200】
なお、電極の単位面積当たりの容量は、充放電測定装置TOSCAT3001(東洋システム社製)を用いて計測した。
【0201】
[負極Aの容量]
負極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工した後、コイン缶中に、負極、厚さ100μmのガラスセパレータ(ADVANTEC社製)、非水電解液1、対極としての、厚さ200μmのリチウム(本庄金属社製)を入れ、非水系蓄電素子を作製した。
【0202】
非水系蓄電素子に、室温(25℃)において、0.1mA/cmで充電終止電圧1.0Vまで定電流充電した後、0.1mA/cmで2.0Vまで定電流放電して初期充放電を実施した。次に、非水系蓄電素子に、0.1mA/cmで1.0Vまで定電流充電した後、0.1mA/cmで2.0Vまで定電流放電する定電流放電サイクルを2回実施し、負極の単位面積当たりの容量を計測した。
【0203】
[負極Bの容量]
負極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工した後、コイン缶中に、負極、厚さ100μmのガラスセパレータ(ADVANTEC社製)、非水電解液1、対極としての、厚さ200μmのリチウム(本庄金属社製)を入れ、非水系蓄電素子を作製した。
【0204】
非水系蓄電素子に、室温(25℃)において、0.4mA/cmで充電終止電圧0.2Vまで定電流充電した後、0.4mA/cmで2.0Vまで定電流放電して初期充放電を実施した。次に、非水系蓄電素子に、0.1mA/cmで0.2Vまで定電流充電した後、0.4mA/cmで2.0Vまで定電流放電する定電流放電サイクルを2回実施し、負極の単位面積当たりの容量を計測した。
【0205】
[正極活物質1]
五酸化バナジウム、水酸化リチウム、リン酸、スクロース、水を混合して沈殿を生成させた後、粉砕して、リン酸バナジウム粒子の前駆体を得た。次に、窒素雰囲気下、900℃で、リン酸バナジウムの前駆体を焼成し、炭素含有量3質量%のリン酸バナジウムリチウム(LVP)を得た。LVPは、モード径が10μmであった。さらに、ジェットミルを用いて、LVPを解砕して、正極活物質1を得た。正極活物質1は、モード径が0.7μmであり、単位面積当たりの容量が0.26mAh/cmであった。
【0206】
[正極活物質2]
ジェットミルを用いて、ニッケル系正極活物質(NCA)(JFEミネラル社製)を解砕して、正極活物質2を得た。正極活物質2は、モード径が1.5μmであり、単位面積当たりの容量が0.35mAh/cmであった。
【0207】
[正極活物質3]
ビーズミルを用いて、コバルト酸リチウム(LCO)(豊島製作所社製)を解砕して、正極活物質3を得た。正極活物質3は、モード径が1.3μmであり、単位面積当たりの容量が0.23mAh/cmであった。
【0208】
[正極活物質4]
ビーズミルを用いて、マンガン酸リチウム(LMO)(豊島製作所社製)を解砕して、正極活物質4を得た。正極活物質4は、モード径が1.3μmであり、単位面積当たりの容量が0.31mAh/cmであった。
【0209】
[正極活物質5]
ビーズミルを用いて、リン酸鉄リチウム(LFP)(TATUNG FINE CHEMICALS社製)を解砕して、正極活物質5を得た。正極活物質5は、モード径が1.0μmであり、単位面積当たりの容量が0.33mAh/cmであった。
【0210】
[正極活物質6]
ビーズミルを用いて、ニッケル系正極活物質(NCA)(JFEミネラル社製)を解砕
して、正極活物質6を得た。正極活物質6は、モード径が9.6μmであり、単位面積当たりの容量が0.35mAh/cmであった。
【0211】
[負極活物質1]
ビーズミルを用いて、チタン酸リチウム(LTO)(石原産業社製)を解砕して、負極活物質1を得た。負極活物質1は、モード径が2.0μmであり、単位面積当たりの容量が0.31mAh/cmであった。
【0212】
[負極活物質2]
ビーズミルを用いて、一酸化ケイ素(SiO)(大阪チタニウム社製)を解砕して、負極活物質2を得た。負極活物質2は、モード径が1.0μmであり、単位面積当たりの容量が2.0mAh/cmであった。
【0213】
表1に、活物質のモード径(μm)、および単位面積当たりの容量の評価結果を示す。
【0214】
【表1】
【0215】
[非水電解液1]
プロピレンチレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC)/エチルメチルカーボネート(EMC)の質量比1:1:1の混合溶媒に、1.0mol/Lとなるように、LiPFを溶解させ、非水電解液1(20mL)を調製した。
【0216】
(実施例1)
正極活物質としての正極活物質1(30質量%)、導電助剤としてのカーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Aを作製した。液体組成物Aは、粘度が10.3mPa・sであり、モード径が1.58μmであった。
【0217】
バインダとしてのポリアミドイミド(3質量%)、N-メチルピロリドン(NMP)(富士フイルム和光純薬社製)(97質量%)を混合し、第2の液体組成物としての、液体組成物Bを作製した。液体組成物Bは、ポリアミドイミドがN-メチルピロリドン(NMP)に溶解しており、粘度が9.6mPa・sであった。
【0218】
なお、ポリアミドイミド(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(97%)を混合し、液体組成物を作製したところ、液体組成物は白濁し、沈殿が生じた。即ち、第2の電極材料であるポリアミドイミドは、第1の液体である乳酸エチルよりも、第2の液体であるN-メチルピロリドンに溶解しやすい。
【0219】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物A、Bを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Aを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、130℃に加熱した。液体組成物A、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.0mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物A、Bは、吐出効率が良好であった。
【0220】
正極Aは、正極合材の剥離強度が1.05Nであり、単位面積当たりの容量が0.26mAh/cmであった。
【0221】
(実施例2)
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物A、Bを、図3に示すように、アルミニウム箔に吐出した以外は、実施例1と同様にして、正極Aを得た。液体組成物A、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が1.9mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物A、Bは、吐出効率が良好であった。
【0222】
正極Aは、正極合材の剥離強度が1.09Nであり、単位面積当たりの容量が0.25mAh/cmであった。
【0223】
(実施例3)
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物A、Bを、図4に示すように、アルミニウム箔に吐出した以外は、実施例1と同様にして、正極Aを得た。液体組成物A、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が1.9mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物A、Bは、吐出効率が良好であった。
【0224】
正極Aは、正極合材の剥離強度が1.11Nであり、単位面積当たりの容量が0.25mAh/cmであった。
【0225】
(実施例4)
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物A、Bを、図5に示すように、アルミニウム箔に吐出した以外は、実施例1と同様にして、正極Aを得た。液体組成物A、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.1mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物A、Bは、吐出効率が良好であった。
【0226】
正極Aは、正極合材の剥離強度が1.08Nであり、単位面積当たりの容量が0.27mAh/cmであった。
【0227】
(実施例5)
正極活物質2(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Cを作製した。液体組成物Cは、粘度が10.3mPa・sであり、モード径が2.52μmであった。
【0228】
ポリアミドイミド(3質量%)、N,N-ジメチルアセトアミド(富士フイルム和光純薬社製)(97質量%)を混合し、第2の液体組成物としての、液体組成物Dを作製した。液体組成物Dは、ポリアミドイミドがN,N-ジメチルアセトアミドに溶解しており、粘度が9.6mPa・sであった。
【0229】
なお、ポリアミドイミド(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(97%)を混合し、液体組成物を作製したところ、液体組成物は白濁し、沈殿が生じた。即ち、第2の電極材料であるポリアミドイミドは、第1の液体である乳酸エチルよりも、第2の液体であるN,N-ジメチルアセトアミドに溶解しやすい。
【0230】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物C、Dを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Bを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物C、Dは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.2mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物C、Dは、吐出効率が良好であった。
【0231】
正極Bは、正極合材の剥離強度が1.14Nであり、単位面積当たりの容量が0.36mAh/cmであった。
【0232】
(実施例6)
正極活物質3(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Eを作製した。液体組成物Eは、粘度が10.7mPa・sであり、モード径が1.22μmであった。
【0233】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物E、Dを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Cを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物E、Dは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.0mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物E、Dは、吐出効率が良好であった。
【0234】
正極Cは、正極合材の剥離強度が1.05Nであり、単位面積当たりの容量が0.23mAh/cmであった。
【0235】
(実施例7)
正極活物質4(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Fを作製した。液体組成物Fは、粘度が11.1mPa・sであり、モード径が1.48μmであった。
【0236】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物F、Dを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Dを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物F、Dは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.0mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物F、Dは、吐出効率が良好であった。
【0237】
正極Dは、正極合材の剥離強度が1.08Nであり、単位面積当たりの容量が0.25mAh/cmであった。
【0238】
(実施例8)
正極活物質5(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Gを作製した。液体組成物Gは、粘度が10.9mPa・sであり、モード径が2.11μmであった。
【0239】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物G、Dを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Eを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物G、Dは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.1mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物G、Dは、吐出効率が良好であった。
【0240】
正極Eは、正極合材の剥離強度が1.09Nであり、単位面積当たりの容量が0.30mAh/cmであった。
【0241】
(実施例9)
負極活物質1(30質量%)、カーボンブラック(1質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(69質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Hを作製した。液体組成物Hは、粘度が10.1mPa・sであり、モード径が1.05μmであった。
【0242】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物H、Bを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、負極Aを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物H、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.1mg/cmの負極合材層を形成することができ、液体組成物H、Bは、吐出効率が良好であった。
【0243】
負極Aは、負極合材の剥離強度が1.05Nであり、単位面積当たりの容量が0.32mAh/cmであった。
【0244】
(実施例10)
負極活物質2(30質量%)、カーボンブラック(1質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(69質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Iを作製した。液体組成物Iは、粘度が13.1mPa・sであり、モード径が2.15μmであった。
【0245】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物I、Bを、図2に示すように、銅箔に吐出し、負極Bを得た。このとき、銅箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物I、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が1.9mg/cmの負極合材層を形成することができ、液体組成物I、Bは、吐出効率が良好であった。
【0246】
負極Bは、負極合材の剥離強度が1.08Nであり、単位面積当たりの容量が2.0mAh/cmであった。
【0247】
(実施例11)
ポリアミドイミド(6質量%)、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)(94質量%)を混合し、第2の液体組成物としての、液体組成物B´を作製した。液体組成物B´は、ポリアミドイミドがN-メチルピロリドンに溶解しており、粘度が9.6mPa・sであった。
【0248】
なお、ポリアミドイミド(6質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(94%)を混合し、液体組成物を作製したところ、液体組成物は白濁し、沈殿が生じた。即ち、第2の電極材料であるポリアミドイミドは、第1の液体である乳酸エチルよりも、第2の液体であるN-メチルピロリドンに溶解しやすい。
【0249】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物A、B´を、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Aを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、130℃に加熱した。液体組成物A、B´は、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.2mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物A、B´は、吐出効率が良好であった。
【0250】
正極Aは、正極合材の剥離強度が2.17Nであり、単位面積当たりの容量が0.26mAh/cmであった。
【0251】
(実施例12)
正極活物質6(40質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬製)(57質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Jを作製した。液体組成物Jは、粘度が11.9mPa・sであり、モード径が9.11μmであった。
【0252】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物J、Bを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Fを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物J、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.1mg/cm2の正極合材層を形成することができ、液体組成物J、Bは、吐出効率が良好であった。
【0253】
正極Fは、正極合材の剥離強度が1.13Nであり、単位面積当たりの容量が0.34mAh/cm2であった。
【0254】
(実施例13)
正極活物質6(50質量%)、カーボンブラック(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬製)(47質量%)を混合し、第1の液体組成物としての、液体組成物Kを作製した。液体組成物Kは、粘度が13.9mPa・sであり、モード径が9.41μmであった。
【0255】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物K、Bを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Fを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物K、Bは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が2.2mg/cm2の正極合材層を形成することができ、液体組成物K、Bは、吐出効率が良好であった。
【0256】
正極Fは、正極合材の剥離強度が1.09Nであり、単位面積当たりの容量が0.36
mAh/cm2であった。
【0257】
(比較例1)
正極活物質1(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、ポリアミドイミド(3質量%)、乳酸エチル(富士フイルム和光純薬社製)(64質量%)を混合し、液体組成物Lを作製したが、液体組成物Lがゲル化したため、吐出することができなかった。
【0258】
(比較例2)
負極活物質2(30質量%)、カーボンブラック(10質量%)、ポリアミドイミド(3質量%)、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)(57質量%)を混合し、液体組成物Mを作製したが、液体組成物Mの粘度が上昇した。液体組成物Mは、モード径が11.5μmであり、吐出することができなかった。
【0259】
(比較例3)
正極活物質1(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、ポリアミドイミド(3質量%)、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)(64質量%)を混合し、液体組成物Nを作製した。液体組成物Nは、粘度が13.5mPa・sであり、モード径が1.71μmであった。
【0260】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物Nを、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極Aを得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物Nは、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が1.9mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物Nは、吐出効率が良好であった。
【0261】
正極Aは、正極合材の剥離強度が1.01Nであり、単位面積当たりの容量が0.24mAh/cmであった。
【0262】
(比較例4)
正極活物質1(30質量%)、カーボンブラック(3質量%)、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)(67質量%)を混合し、液体組成物N´を作製した。液体組成物N´は、粘度が10.2mPa・sであり、モード径が1.71μmであった。
【0263】
液体吐出装置EV2500を用いて、液体組成物N´を、図2に示すように、アルミニウム箔に吐出し、正極A´を得た。このとき、アルミニウム箔をホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。液体組成物N´は、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。その結果、単位面積当たりの活物質量が1.9mg/cmの正極合材層を形成することができ、液体組成物N´は、吐出効率が良好であった。
【0264】
正極A´は、正極合材の剥離強度が0.002Nであったため、単位面積当たりの容量を計測することができなかった。
【0265】
表2に、単位面積当たりの活物質量、電極合材層の剥離強度、電極の容量の評価結果を示す。
【0266】
なお、液体の略称は、以下の通りである。
NMP:N-メチルピロリドン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
【0267】
【表2】
【0268】
表2から、実施例1~13の電極は、単位面積当たりの活物質量、電極合材層の剥離強度、電極の容量が良好であり、設計の自由度が高いことがわかる。例えば、実施例11の電極は、バインダの添加量を増加したため、電極合材層の剥離強度が高い。
【0269】
これに対して、比較例1は、正極Aを作製する際に、実施例1~4、11の液体組成物Aで用いられている乳酸エチルを含む単一の液体組成物Lを作製したため、ゲル化した。
【0270】
比較例2は、負極Bを作製する際に、実施例10の液体組成物Bで用いられているNMPを含む単一の液体組成物Mを作製したため、粘度が上昇した。
【0271】
比較例3は、電極の単位面積当たりの活物質量、電極合材層の剥離強度、電極の容量が良好であるが、液体組成物Nの設計の自由度が低い。
【0272】
比較例4は、液体組成物N´がバインダを含まないため、電極合材層の剥離強度が低い。
【符号の説明】
【0273】
1 電気化学素子
10、15 負極
11 負極基体
12 負極合材層
12A 第1の液体組成物
12B 第2の液体組成物
20、25 正極
21 正極基体
22 正極合材層
30 セパレータ
40 電極素子
41、42 引き出し線
51 電解質層
52 外装
【先行技術文献】
【特許文献】
【0274】
【文献】特許第5571304号公報
【文献】特許第5913780号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9