IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7613061シート吸引装置、シート搬送装置、印刷装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】シート吸引装置、シート搬送装置、印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/14 20060101AFI20250107BHJP
   B41J 11/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B65H5/14 B
B41J11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020193194
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081942
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】宮川 寛亮
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-202966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/12-5/14
B41J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面にシートを担持し、駆動手段により回転される担持部材と、
前記担持部材の前記シートを担持する担持領域に設けられた複数の吸引穴と、
前記吸引穴を介して吸引する吸引手段と、
前記複数の吸引穴と前記吸引手段との間に介在され、前記担持部材に対し相対的に回転させることにより、前記複数の吸引穴の内で前記吸引手段と連通する前記吸引穴の数を変更する第1部材と、
前記第1部材の前記担持部材に対する回転を拘束する拘束手段と、を備え、
前記第1部材と前記担持部材の相対的な回転を前記駆動手段によって行い、
前記拘束手段は、
前記第1部材と前記担持部材との相対位相を保持する保持手段と、
前記第1部材と前記担持部材との相対的な回転を可能にするために前記保持手段を開放する開放手段と、を備えている
ことを特徴とするシート吸引装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート吸引装置を備えている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
搬送されるシートのサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
前記第1部材と前記担持部材との相対回転によって変更される吸引穴の数の情報を取得する相対角情報取得手段と、
前記サイズ情報取得手段により得られたサイズ情報と、前記相対角取得手段により得られた情報を照合し、不整合が発生しているときには、シート搬送動作を開始する前に、前記第1部材と前記担持部材との相対位相を変更して整合させるマッチング動作の制御を行う手段と、を備えていることを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置
【請求項4】
請求項1に記載のシート吸引装置、又は、請求項若しくはに記載のシート搬送装置を備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート吸引装置、シート搬送装置、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、例えば、ドラムなどの回転部材にシートを担持して搬送しながら印刷を施すものがある。
【0003】
シート(シート)を搬送する搬送装置として、ドラムの周面に吸引吸着で担持して搬送するシート搬送装置が知られている。
【0004】
例えば、周面にシートを担持して回転する担持部材と、担持部材のシートを担持する担持領域に設けられた複数の吸引穴と、吸引穴を介して吸引する吸引手段と、複数の吸引穴と吸引手段との間に介在された第1部材とを備え、第1部材は、回転させることにより、複数の吸引穴の内で吸引手段と連通する吸引穴の数を変更し、第1部材の回転操作にインデックスプランジャなどを利用して手動で回転させて位置決めを行うようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-019637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、第1部材の回転を手動操作で行うため、シートのサイズ変更の度に行わなければならない吸引領域の切替という手作業が煩わしいという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吸引領域の切替を自動化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係るシート吸引装置は、
周面にシートを担持し、駆動手段により回転される担持部材と、
前記担持部材の前記シートを担持する担持領域に設けられた複数の吸引穴と、
前記吸引穴を介して吸引する吸引手段と、
前記複数の吸引穴と前記吸引手段との間に介在され、前記担持部材に対し相対的に回転させることにより、前記複数の吸引穴の内で前記吸引手段と連通する前記吸引穴の数を変更する第1部材と、
前記第1部材の前記担持部材に対する回転を拘束する拘束手段と、を備え、
前記第1部材と前記担持部材の相対的な回転を前記駆動手段によって行い、
前記拘束手段は、
前記第1部材と前記担持部材との相対位相を保持する保持手段と、
前記第1部材と前記担持部材との相対的な回転を可能にするために前記保持手段を開放する開放手段と、を備えている
構成とした。
【0009】
本発明によれば、吸引領域の切替を自動化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略説明図である。
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るシート吸引装置の全体概略構成を説明する説明図である。
図4】ドラムの駆動系の説明に供する説明図である。
図5】ドラムの分解斜視説明図である。
図6】同ドラムの担持領域とその分割領域の説明並びに回転角取得手段の説明に供する模式的側面説明図である。
図7】同ドラムの周方向における吸引口の配置とシートサイズの説明に供する説明図である。
図8】ロータリバルブの外観斜視説明図である。
図9】同じく半断面斜視説明図である。
図10】同じく要部拡大断面斜視説明図である。
図11】同ロータリバルブを構成する固定部の側面説明図である。
図12】同ロータリバルブを構成する第2部材の側面説明図である。
図13】同ロータリバルブを構成する第1部材の側面説明図である。
図14】同ロータリバルブを構成する第3部材の側面説明図である。
図15】第1部材と第2部材の相対回転による吸引エリアの切替(サイズ切替)の説明に供する説明図である。
図16】同じく説明図である。
図17】第1部材による吸引エリアの切替え動作の説明に供するロータリバルブの回転部の側面説明図である。
図18】同じく側面拡大説明図である。
図19】本発明の第1実施形態における第1部材の回転動作自動化機構の説明に供する説明図である。
図20】同じく拡大説明図である。
図21】同回転動作自動化機構の作用説明に供する説明図である。
図22】同回転動作自動化機構の作用説明に供する説明図である。
図23】第1部材とドラムとの相対位相(相対角)の情報を取得する構成の説明に供する説明図である。
図24】本発明の第2実施形態に係るシート搬送装置の説明に供するブロック説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1は同実施形態に係る印刷装置の概略説明図、図2は同印刷装置の吐出ユニットの一例の平面説明図である。
【0012】
印刷装置1は、搬入部10と、印刷部20と、乾燥部30と、搬出部40とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入されるシートPに対し、印刷部20で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部30でシートPに付着した液体を乾燥させた後、シートPを搬出部40に排出する。
【0013】
搬入部10は、複数のシートPが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシートPを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シートPを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13とを備えている。
【0014】
給送装置12には、ローラやコロを用いた装置や、エアー吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシートPは、その先端がレジストローラ対13に到達した後、レジストローラ対13が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部20へ送り出される。
【0015】
印刷部20は、シートPを搬送するシート搬送装置21を備えている。シート搬送装置21は、シートPを周面に担持して、駆動手段58(図4参照)により動力を受けながら回転する担持部材(回転部材)であるドラム51、ドラム51の周面に吸引力を生じさせる吸引手段である吸引装置52などを有している。また、印刷部20は、シート搬送装置21のドラム51に担持されたシートPに向けて液体を吐出する液体吐出部22を備えている。
【0016】
また、印刷部20は、送り込まれたシートPを受け取ってドラム51との間でシートPを渡す渡し胴24と、ドラム51によって搬送されたシートPを乾燥部30へ受け渡す受け渡し胴25を備えている。
【0017】
搬入部10から印刷部20へ搬送されてきたシートPは、渡し胴24に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴24の回転に伴って搬送される。渡し胴24により搬送されたシートPは、ドラム51との対向位置でドラム51へ受け渡される。
【0018】
ドラム51の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シートPの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム51の表面には、複数の吸引穴が分散して形成されている。吸引手段である吸引装置52によってドラム51の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0019】
そして、渡し胴24からドラム51へ受け渡されたシートPは、シートグリッパ106によって先端が把持されるとともに、吸引装置52による吸い込み気流によってドラム51上に吸着担持され、ドラム51の回転に伴って搬送される。
【0020】
液体吐出部22は、液体吐出手段である吐出ユニット23(23A~23F)を備えている。例えば、吐出ユニット23Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット23Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット23Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット23Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、吐出ユニット23F,23Fは、YMCKのいずれか、或いは、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出に使用する。さらに、表面コート液などの処理液を吐出する吐出ユニットを設けることもできる。
【0021】
吐出ユニット23は、例えば、図2に示すように、複数のノズルを配列したノズル列126を有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)125をベース部材127に配置したフルライン型ヘッドである。
【0022】
液体吐出部22の各吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラムに担持されたシートPが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0023】
乾燥部30は、印刷部20でシートP上に付着した液体を乾燥させるための乾燥機構部31と、印刷部20から搬送されてくるシートPを吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)吸引搬送機構部32とを備えている。
【0024】
印刷部20から搬送されてきたシートPは、吸引搬送機構部32に受け取られた後、乾燥機構部31を通過するように搬送され、搬出部40へ受け渡される。
【0025】
乾燥機構部31を通過するとき、シートP上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シートP上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シートPのカールが抑制される。
【0026】
搬出部40は、複数のシートPが積載される搬出トレイ41を備えている。乾燥部30から搬送されてくるシートPは、搬出トレイ41上に順次積み重ねられて保持される。
【0027】
なお、印刷装置1には、例えば、シートPに対して前処理を行う前処理部を印刷部20の上流側に配置したり、液体が付着したシートPに対して後処理を行う後処理部を乾燥部30と搬出部40との間に配置したりすることもできる。
【0028】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシートPに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部20で印刷されたシートを反転させて再び印刷部20へ送ってシートPの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理などを行うものが挙げられる。
【0029】
また、印刷部として液体吐出手段を備える例で説明しているが、液体吐出以外の手段で印刷を行うこともできる。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態に係るシート吸引装置につい図3及び図4を参照して説明する。図3は同シート吸引装置の全体概略構成を説明する説明図、図4はドラムの駆動系の説明に供する説明図である。
【0031】
シート吸引装置50は、ドラム51と、吸引手段である吸引装置52と、ドラム51と吸引装置52との間に配置された吸引領域切替装置としてのロータリバルブ200を備えている。吸引装置52とロータリバルブ200とはホース(チューブ)55Aで通じており、ロータリバルブ200とドラム51とはホース(チューブ)55Bで通じている。
【0032】
ロータリバルブ200は、回転部202と、固定部201とを有している。回転部202は、ドラム51に連れ回る回転部材である。固定部201は、吸引装置52に接続され、ドラム51に連れ回らない固定部材である。なお、回転部202、固定部201ともに円盤状に加工された金属板を用いている。
【0033】
ロータリバルブ200の固定部201は、印刷装置1のフレーム100に固定される。フレーム100は、ドラム51や渡し胴24、吐出ユニット23などを支えている。
【0034】
そして、回転部202と固定部201の相対的な位相の違いにより、ドラム51の吸引穴112と吸引装置52との連通及び非連通を切り替えることで、ドラム51の周面上の負圧の発生を制御することができる。
【0035】
ドラム51は、駆動手段58の回転がギヤ列などの駆動力伝達手段59を介して軸部103に伝達されて回転駆動される。駆動手段58は、例えば駆動モータであり、フレーム100に固定された支持部材100aに取り付けられている。
【0036】
次に、ドラム51について図5ないし図7を参照して説明する。図5は同ドラムの分解斜視説明図、図6は同ドラムの担持領域とその分割領域の説明並びに回転角取得手段の説明に供する模式的側面説明図、図7は同ドラムの周方向における吸引口の配置とシートサイズの説明に供する説明図である。
【0037】
ドラム51は、ドラム本体101と吸引プレート102とで構成される。なお、吸引プレート102とドラム本体101との間にはラバーシートなどのシール材を介在させることもできる。
【0038】
このドラム51は、3つの担持領域105(105A~105C)を有し、周方向において、複数枚のシートPを担持可能である。各担持領域105は、図4に示すように、複数の吸引穴112を有し、各吸引穴112が通じるチャンバ113を形成している吸引プレート102と、チャンバ113に通じる溝状の吸引口111が形成されたドラム本体101で構成されている。なお、担持領域105のドラム回転方向先端部にはシートグリッパ106(簡略化して図示している)が配置されている。
【0039】
1つの担持領域105には、複数(ここでは9つ)のシートサイズに相当するシート領域S1~S9を割り付け、周方向では12本の吸引口111a、111b(111b1~111b11)が配置されている。ここで、回転方向先頭側の吸引口111a(111a1~111a9)は、各シートサイズS1~S9に対応して、吸引口111a1~111a9が軸方向に配列されている。
【0040】
例えば、シート領域S1に対応して複数の吸引穴112が臨むチャンバ113に連通する吸引口111a1、111b1が配置されている。シート領域S2のうちシート領域S1を除く領域の複数の吸引穴112が臨むチャンバ113に連通する吸引口111a2、111b2が配置されている。その他のシート領域S3ないしS9についても同様である。
【0041】
また、1つの担持領域105は、周方向(回転方向)において、回転方向先頭側から、第1領域116A、第2領域116B、第3領域116C、第4領域116Dに分割している。
【0042】
ここで、図7に示すように、第1領域116Aはドラム回転方向先頭の吸引口111aに割り当て、第2領域116Bは吸引口111b1~111b3に割り当て、第3領域116Cは吸引口111b4~111b8に割り当て、第4領域116Dは吸引口111b9~111b11に割り当てている。
【0043】
したがって、ドラム51上の各吸引口111(111a、111b)にホース55Bを接続して、各吸引口111(111a、111b)に対して負圧発生の有無を切り替えることで吸引範囲(吸引領域)を切り替えることができる。
【0044】
次に、前述した図6を参照して、ドラム51の回転角取得手段について説明する。
【0045】
ドラム51及びドラム51に連れ回るロータリバルブ200の回転部202は、回転運動をするため、駆動手段(駆動源)から動力を得る。
【0046】
ドラム51の回転軸51aには、ドラム51と同期して回転するエンコーダホイール53が取り付けられている。また、ドラム51には、ドラム51と同期して回転するフィラー56が取り付けられている。
【0047】
印刷装置1のフレーム100には、エンコーダホイール53の回転量を検知するエンコーダセンサ54及びフィラー56を検知するホームポジションセンサ57が取り付けられている。ホームポジションセンサ57は、ドラム1周につき1パルス(1回)だけフィラー56を検知することにより、ドラム51の回転方向におけるホームポジションを検知する。また、エンコーダセンサ54は、エンコーダホイール53の回転量を検知することにより、ホームポジションからのドラム51の相対的な回転量を検知する。
【0048】
印刷装置1の制御部は、2つのセンサ54、57の検知結果を組み合わせることにより、ドラム51及びドラム51に連れまわるロータリバルブ200の回転部202の絶対的な位相(回転位相)を検知する。
【0049】
次に、ロータリバルブの一例について図8ないし図14を参照して説明する。図8は同ロータリバルブの外観斜視説明図、図9は同じく半断面斜視説明図、図10は同じく要部拡大断面斜視説明図である。図11は同ロータリバルブを構成する固定部の側面説明図、図12は同ロータリバルブを構成する第2部材の側面説明図、図13は同ロータリバルブを構成する第1部材の側面説明図である。図14は同ロータリバルブを構成する第3部材の側面説明図である。
【0050】
ロータリバルブ200の固定部201は、前述したように、印刷装置1のフレーム100に固定される。なお、固定部201、ホームポジションセンサ57及びエンコーダセンサ54は、分割された複数のフレームやブラケットにそれぞれ固定されてもよい。
【0051】
固定部201には、回転部202と摺動させる側に、半径方向に並び、周方向で3分割されている複数本の溝部212の列が設けられている。各溝部212には貫通穴211が設けられて、吸引装置52と接続される。ここでは、同じ同心円上に位置する各溝部212の列を、それぞれ溝部列210A、210B、210C,210Dと称する。
【0052】
ロータリバルブ200の回転部202は、第1部材203、第2部材204、第3部材205で構成され、固定部201側から第3部材205、第1部材203、第2部材204の順に配置されている。ただし、図10に示すように、半径方向では、第1部材203は第3部材205の外周面を覆う形状をし、第3部材205は第1部材203に嵌め込まれている。
【0053】
第2部材204には、円盤状部材の周面に、ドラム51の吸引口111に通じる複数(ここでは9個)の穴部241(241A~241I)が設けられ、各穴部241は第1部材203と接する側面に設けられた開口241aを有している。この周方向に設けた9個の穴部241A~241Iはドラム51の軸方向の9個の吸引口111a(111a1~111a9)に連通し、複数の吸引穴112のそれぞれと接続可能である。
【0054】
また、第2部材204には、円盤状部材の側面などに複数種類の複数の穴部242(242A~242I)が設けられている。
【0055】
穴部242A、242C1は、第2部材204を軸方向に貫通する貫通穴243a及び貫通穴243aが通じる周方向の溝部243bで構成される。穴部242B、242C2、242E、242G1、242Hは、第2部材204を軸方向に貫通する貫通穴243aで構成される。穴部242D、242F、242G2、242Iは、第2部材204を軸方向に貫通しない非貫通穴243c及び非貫通穴243cから半径方向に延びる穴243dで構成される。これらの穴部242も吸引口111に通じている。
【0056】
なお、図12に示すように、複数の穴部241などは、各担持領域105A、105B、105Cに対応してそれぞれ設けられている。
【0057】
第1部材203には、円盤状部材の側面に、周方向に沿う貫通溝部231が各担持領域105に対応して設けられている。ここでは、溝部231は、半径方向において、外周側から中心に向かって、同心円上に4箇所配置されており、同じ同心円上に位置する各溝部231の列を、それぞれ溝部列230A、230B、230C,230Dと称する。
【0058】
ここで、図16に戻って、第1部材203の各溝部列230A~230Dにそれぞれ対応する第2部材204の周方向に並ぶ開口241及び穴部242の各列を、外周側から中心に向かって、それぞれ、穴部列240(240A~240D)とする。
【0059】
そして、第2部材204の穴部列240Dに属する穴部242C1と穴部列240Bに属する穴部242C2とは、第1部材203の単位回転量の回転で同時に連通される2以上の穴部242である。
【0060】
つまり、同時に連通される2以上の穴部242C1と穴部242C2とは、第1部材203の回転中心Oからの距離が異なっている。言い換えれば、同時に連通される2つの穴部242C1と穴部242C2とは、第2部材204の半径方向に並ぶ複数の穴部列240において異なる穴部列240Dと穴部列240Bにそれぞれ属している。
【0061】
同様に、第2部材204の穴部列240Bに属する穴部242G1と穴部列240Cに属する穴部242G2とは、第1部材203の単位回転量の回転で同時に連通される2以上の穴部242である。
【0062】
つまり、同時に連通される2以上の穴部242G1と穴部242G2とは、第1部材203の回転中心Oからの距離が異なっている。言い換えれば、同時に連通される2つの穴部242G1と穴部242G2とは、第2部材204の半径方向に並ぶ複数の穴部列240において異なる穴部列240Bと穴部列240Cにそれぞれ属している。
【0063】
このように、単位回転量の回転で同時に連通される2つの穴部242C1、242C2、あるいは、242G1、242G2を備えることにより、使用するシートPのサイズに応じていずれかを選択して、選択しない穴部は栓にて閉じる。これにより、仕向け地のサイズの種類に容易に対応することができる。
【0064】
第3部材205には、円盤状部材を貫通して、固定部201の溝部212と第1部材203の溝部231とを連通する貫通穴251が設けられている。
【0065】
これらの回転部202を構成する第1部材203、第2部材204、第3部材205は、シートPの搬送中はドラム51に連れ回る。
【0066】
吸引領域(吸引エリア)を切り替えるときには、第1部材203を第2部材204及び第3部材205(これらは常に連れ回る)に対して相対回転させる。この第1部材203の回転により第1部材203の溝部231に連通する第2部材204の穴部242の数が変化して、吸引経路の接続の状態が変化し、シートサイズに応じて吸引領域を切り替えて設定することができる。
【0067】
次に、第1部材と第2部材の相対回転による吸引エリアの切替(サイズ切替)について図15及び図16を参照して説明する。図15及び図16は同説明に供する説明図であり、(a)はドラム上のシートサイズと吸引口の説明図、(b)は第1部材と第2部材を透過状態で示す側面説明図、(c)は(b)の拡大説明図である。
【0068】
前述したように、第2部材204の周方向に設けた9個の穴部241A~241Iは9個の吸引口111a(111a1~111a9)に連通している。
【0069】
したがって、第1部材203の溝部列230Aの溝部231aに連通する第2部材204の吸引口111aの数が切り替わることで、ドラム51の周方向と直交する軸方向の吸引領域(吸引エリア)のサイズが切り替わる。
【0070】
そして、第1部材203の溝部231に連通する第2部材204の吸引口111aの数が切り替わることで、吸引口111aが連通するチャンバ113に臨む吸引穴112の数が切り替わることになる。
【0071】
また、第2部材204の吸引口111b(111b1~111b11)は第1部材203の溝部列230B~230Dのいずれかに連通している。
【0072】
したがって、第1部材203の溝部列230B~230Dの溝部231に連通する第2部材204の穴部242を介して通じる吸引口111b(111b1~111b11)の数が切り替わることで、ドラム51の周方向の吸引エリアのサイズが切り替わる。
【0073】
そして、第1部材203の溝部231に連通する吸引口111bの数が切り替わることで、吸引口111bが連通するチャンバ113に臨む吸引穴112の数が切り替わることになる。
【0074】
例えば、図15(b)、(c)に示すように、第1部材203と第2部材204との相対位置関係を、第1部材203の溝部列230Aの溝部231と第2部材204の穴部241Aが連通し、第1部材203の溝部列230Dの溝部231と第2部材204の穴部242とが連通した状態にする。
【0075】
このとき、吸引装置52とドラム51の吸引口111a1とが連通した状態になり、吸引装置52とドラム51の吸引口111b1とが連通した状態となる。
【0076】
これにより、図16(a)に示すように、吸引口111a1に通じる領域BA、吸引口111b1に通じる領域BBに属する吸引穴112から吸引が行われ、シート領域S1の吸引エリアを吸引することができる。
【0077】
この状態から、例えば、図16(b)、(c)に示すように、第1部材203を第2部材204に対して矢印D方向に回転させ、第1部材203と第2部材204との相対位置関係を、第1部材203の溝部列230Aの溝部231と第2部材204の穴部241A、241Bが連通し、第1部材203の溝部列230Dの溝部231と第2部材204の2つの穴部242とが連通した状態にする。なお、図16(b)、(c)の黒丸が新たに通じる箇所を示している。
【0078】
このとき、吸引装置52とドラム51の吸引口111a1,111a2とが連通した状態になり、吸引装置52とドラム51の吸引口111b1、111b2とが連通した状態となる。
【0079】
これにより、図16(a)に示すように、吸引口111a1、111a2に通じる領域BA、吸引口111b1、111b2に通じる領域BBに属する吸引穴112から吸引が行われ、シート領域S1の次の大きさのシート領域S2の吸引エリアを吸引することができる。
【0080】
同様にして、第1部材203と第2部材204、即ちドラム51との相対位置関係を変えることによって、吸引装置52に連通するドラム51の吸引穴112の数が変わり、吸引エリアを変更できる。
【0081】
次に、第1部材による吸引エリアの切替え動作について図17及び図18を参照して説明する。図17はロータリバルブの回転部の側面説明図、図18は同じく側面拡大説明図である。
【0082】
第1部材203は回転可能であり、第1部材203を回転することで吸引エリアの切り替えを行うことができる。第1部材203の回転位置は、プランジャ206などを利用し、プランジャ206の先端部が各位置に応じて第3部材205の周面に形成された穴部252に嵌まり込むことで位置決めできるようにしている。
【0083】
第1部材203の回転動作を行うときには、プランジャ206を穴部252から抜いて、目的とする位置まで第1部材203を第2部材204及び第3部材205に対して相対回転させ、目的とする位置で、プランジャ206の先端部を穴部252に嵌め込む。
【0084】
次に、本発明の第1実施形態における第1部材の回転動作自動化機構について図19及び図20を参照して説明する。図19は同回転動作自動化機構の説明に供する説明図、図20は同じく拡大説明図である。
【0085】
なお、第1部材203の溝部列230A、230B、230C,230Dの貫通溝部231の周方向位置は、前述した図18などとは異なっているが、作用は同じである。
【0086】
回転動作自動化機構300は、第1部材203の回転を拘束する拘束手段であり、レバー機構301と、直動機構302とを備えている。
【0087】
レバー機構301は、第1部材203と担持部材であるドラム51との相対位相を保持する保持手段である。直動機構302は、第1部材203とドラム51との相対的な回転を可能にするために保持手段(レバー機構301)による保持(拘束)を開放する開放手段である。
【0088】
レバー機構301は、凹部311aを有するブロック311を備えている。ブロック311にはレバー部材312が支軸313で回転可能に取り付けられている。
【0089】
レバー部材312の一端部(先端部)312aには第1部材203を拘束するプランジャ206がピン315によって連動可能に取り付けられている。レバー部材312の他端部(後端部)312bは、ブロック311の凹部311aに臨んでいる。
【0090】
プランジャ206は、ブロック311に設けられたガイド穴部に往復移動可能に挿入されており、スプリング207により第3部材205の穴部252の方向に付勢されている。
【0091】
直動機構302は、フレーム100に固定される。直動機構302は、内部の駆動源によって直進往復運動を行うピストン321を備えている。ピストン321は、レバー機構301のブロック311の凹部311aに対して進退可能であり、レバー部材312の後端部312bに当接可能である。ピストン321は、円筒形状で、先端部はテーパー形状となっている。スプリング207と直動機構302によって、保持手段(レバー機構301)による第1部材203の拘束と保持手段の開放を行う単一のアクチュエータ手段を構成している。
【0092】
なお、単一のアクチュエータ手段である直動機構302によって保持手段であるレバー機構301による第1部材203の拘束と開放を行うこともできる。
【0093】
次に、回転動作自動化機構300の作用について図21及び図22を参照して説明する。図21及び図22は同作用説明に供する説明図である。
【0094】
第1部材203を回転させるときには、直動機構302を駆動してピストン321を進出運動させる。これにより、図21に示すように、ピストン321が、第1部材203に向かって進み、レバー部材312の後端部312bに当接する。
【0095】
ピストン321が更に進出することにより、図22に示すように、レバー部材312の後端部312bが押されて、レバー部材312は支軸313を中心に矢印方向に回転し、これに連動してプランジャ206が矢印方向に移動する。
【0096】
これにより、プランジャ206は、図18で説明した第3部材205の穴部252から抜けて、第1部材203とドラム51のロック状態が解除され、第1部材203とドラム51とは相対回転可能な状態になる。
【0097】
この状態において、ピストン321はブロック311の凹部311aに嵌り、レバー部材312は回り止めがされた状態になる。
【0098】
そこで、ドラム51の駆動源(駆動手段)を駆動させることで、第1部材203とドラム51(第2部材204)とが相対回転する。
【0099】
このように、回転動作自動化機構300のアクチュエータ手段を駆動制御し、ドラム51を回転させる駆動手段を駆動制御して、第1部材203をドラム51に対して相対回転させることで、サイズ変更に対して吸引エリアを自動的に変更することが可能になる。
【0100】
なお、プランジャ206を穴部252から引き抜く手段としてレバーによる構成で説明しているが、くさび等の手段により行うこともできる。
【0101】
次に、第1部材とドラムとの相対位相(相対角)の情報を取得する構成について図23を参照して説明する。図23は同説明に供する説明図である。なお、第1部材は簡略化して示している。
【0102】
前述した図6で説明したように、ドラム51と同期して回転するエンコーダホイール53を検知するエンコーダセンサ54と、ドラム51と同期して回転するフィラー56を検知するホームポジションセンサ57の各検知結果からドラム51の位相を取得できる。
【0103】
第1部材203についても、同様の構成、例えば第1部材203側にフィラー456を設け、フレーム100側にホームポジションセンサ457を設ける。
【0104】
これにより、ドラム51のホームポジションセンサ57と、第1部材203のホームポジションセンサ457の各検出信号と、ドラム51のエンコーダセンサ54からのエンコーダー信号に基づいて、第1部材203とドラム51との位相差を算出し、現在のサイズ設定を取得できる。
【0105】
また、印刷装置1が受ける印刷命令に含まれるシートPのサイズ情報と、第1部材203の設定状態とを照合し、照合の結果が不整合(アンマッチ)であるときには、印刷を中止し、その旨を通知するようにできる。
【0106】
次に、本発明の第2実施形態について図24を参照して説明する。図24は同実施形態に係るシート搬送装置の説明に供するブロック説明図である。
【0107】
本実施形態では、マッチング制御手段801と、サイズ情報取得手段802と、相対角情報取得手段803とを備えている。
【0108】
サイズ情報取得手段802は、搬送されるシートPのサイズ情報を取得する。例えば、サイズ情報取得手段802は、印刷装置1が受ける印刷命令に含まれるシートPのサイズ情報を取得する。
【0109】
相対角情報取得手段803は、第1部材203と担持部材(ドラム51)との相対回転によって変更される吸引穴112の数の情報を取得する。
【0110】
マッチング制御手段801は、サイズ情報取得手段802により得られたサイズ情報と、相対角情報取得手段803により得られた情報を照合し、サイズ情報と吸引穴の数(吸引領域)の不整合が発生しているか否かを判別する。
【0111】
そして、マッチング制御手段801は、サイズ情報と吸引穴の数の不整合が発生しているときには、シート搬送動作が開始される前に、第1部材203とドラム51との相対位相を変更して、サイズ情報と吸引穴の数を整合させるマッチング動作の制御を行う。
【0112】
マッチング制御手段801は、マッチング動作の制御においては、第1実施形態で説明したように、レバー機構301のレバー部材312を回動させるアクチュエータ手段804を駆動して第1部材203を回転可能な状態にする。
【0113】
そして、マッチング制御手段801は、ドラム51を回転させる駆動手段58を駆動制御して、第1部材203をドラム51に対して相対回転させることで、サイズ情報と吸引穴の数(吸引領域)を整合させる。
【0114】
このようにして、吸引領域の切替を自動的に行うことができ、吸引領域の切替操作の煩わしを低減できる。
【符号の説明】
【0115】
1 印刷装置
10 搬入部
20 印刷部
21 シート搬送装置
22 液体吐出部
23 吐出ユニット
24 渡し胴(回転部材)
25 受け渡し胴(回転部材)
50 シート吸引装置
51 ドラム
52 吸引装置(吸引手段)
105、105A~105C 担持領域
111a、111a1~111a9、111b1~111b11 吸引口
112 吸引穴
113 チャンバ
116A~116D 第1領域~第4領域
200 ロータリバルブ(吸引領域切替装置)
201 固定部(固定部材)
202 回転部(回転部材)
203 第1部材
204 第2部材
205 第3部材
231 溝部
241 穴部
300 回転動作自動化機構
301 レバー機構(拘束手段)
302 直動機構(アクチュエータ手段)
501 駆動手段
801 マッチング制御手段
804 アクチュエータ手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24