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特許7613094エステル化合物、ポリエステル樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置
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  • 特許-エステル化合物、ポリエステル樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】エステル化合物、ポリエステル樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/80 20060101AFI20250107BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20250107BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20250107BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20250107BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C07C69/80 B CSP
C08F222/40
H01L23/30 R
H05K1/03 610M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020214823
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100697
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
(72)【発明者】
【氏名】迫 雅樹
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-015062(JP,B1)
【文献】特開2005-068063(JP,A)
【文献】特開平03-258821(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235424(WO,A1)
【文献】特開平01-141964(JP,A)
【文献】CHANG, Hao-Shiung et al.,Synthesis and properties of TLCPs with 2,6-naphthalene-based mesogen, polymethylene spacer, and nonl,Journal of Applied Polymer Science,2002年,83(7),P.1536-1546
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)。
【化1】
[上記一般式(1)中のAr炭素原子数2~4のアルケニル基、前記炭素原子数2~4のアルキニル基、炭素原子数2~4のアルケニルオキシ基、炭素原子数2~4のアルキニルオキシ基のいずれか一種以上を1~3つ有するアリール基である。Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基である。Rは炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項2】
請求項1記載のエステル化合物(A)を含有するポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記エステル化合物(A)の含有量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される値で10~60%の範囲である請求項記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記エステル化合物(A)と、下記一般式(2)で表されるエステル化合物(B)とを含有する、請求項又は記載のポリエステル樹脂。
【化2】
[上記一般式(2)中のArはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基である。Arは置換基を有していてもよいアリーレン基である。]
【請求項5】
前記エステル化合物(B)の含有量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の面積比から算出される値で10~50%の範囲である請求項記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
請求項1記載のエステル化合物(A)又は請求項のいずれか一つに記載のポリエステル樹脂を含有する硬化性組成物。
【請求項7】
更に、マレイミド化合物を含有する、請求項記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項又は記載の硬化性組成物を用いたプリプレグ。
【請求項10】
請求項又は記載の硬化性組成物を用いたプリント配線基板。
【請求項11】
請求項又は記載の硬化性組成物を用いたビルドアップフィルム。
【請求項12】
請求項又は記載の硬化性組成物を用いた半導体封止材。
【請求項13】
請求項12記載の半導体封止材を用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化合物、ポリエステル樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進んでおり、これに伴って使用される各種材料の要求性能が向上している。例えば、半導体パッケージ基板では、信号の高速化、高周波化が進んでおり、電気エネルギー損失の低い材料、つまり、低誘電正接の材料が求められている。
【0003】
このような低誘電正接の材料として、例えば、活性エステル化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1記載のエポキシ樹脂組成物は、フェノール樹脂を硬化剤とする一般的なエポキシ樹脂組成物と比較すると、硬化物における誘電正接が低い特性を有する。しかしながら、耐吸湿性が十分ではなく、湿熱条件下にさらされた場合に、誘電正接値が大幅に上昇してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-155990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物において湿熱条件下にさらした場合の誘電正接の上昇が小さい樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の分子構造を有するエステル化合物及びこれを含むポリエステル樹脂は、その硬化物を湿熱条件下にさらした場合の誘電正接の上昇が小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)に関する。
【0008】
【化1】
[上記一般式(1)中のArはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基である。Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基である。Rは炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。]
【0009】
本発明は更に、前記エステル化合物(A)を含有するポリエステル樹脂に関する。
【0010】
本発明は更に、前記エステル化合物(A)又は前記ポリエステル樹脂を含有する硬化性組成物に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【0012】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いたプリプレグに関する。
【0013】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いたプリント配線基板に関する。
【0014】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いたビルドアップフィルムに関する。
【0015】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いた半導体封止材に関する。
【0016】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いた半導体封止材を用いた半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、その硬化物を湿熱条件下にさらした場合の誘電正接の上昇が小さいエステル化合物、ポリエステル樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1で得られたポリエステル樹脂(1)のGPCチャートである。
図2図2は、実施例2で得られたポリエステル樹脂(2)のGPCチャートである。
図3図3は、実施例3で得られたポリエステル樹脂(3)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明のエステル化合物(A)は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0020】
【化2】
[上記一般式(1)中のArは、置換基を有していてもよいアリール基である。Arは置換基を有していてもよいアリーレン基である。Rは炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。]
【0021】
前記一般式(1)中のArは、置換基を有していてもよいアリール基である。その具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びこれらの芳香環上にハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基等の置換基を1つ乃至複数有する構造部位等が挙げられる。
【0022】
前記ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素原子数1~8のアルキル基や、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の炭素原子数2~4のアルケニル基、エチニル基、プロパギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等の炭素原子数2~4のアルキルニル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基等の炭素原子数2~4のアルケニルオキシ基等が挙げられる。前記アルキニルオキシ基は、例えば、エチニルオキシ基、プロパギルオキシ基、1-ブチニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、3-ブチニル基オキシ等の炭素原子数2~4のアルキニルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
中でも、前記エステル化合物(A)単独で、或いはマレイミド樹脂等の他の重合性不飽和基含有化合物と配合しての硬化反応が可能となることから、前記Arは、少なくとも、前記炭素原子数2~4のアルケニル基、前記炭素原子数2~4のアルキニル基、炭素原子数2~4のアルケニルオキシ基、炭素原子数2~4のアルキニルオキシ基のいずれか一種以上を1~3つ有することが好ましい。この時、前記Arはこれら以外の置換基を有していてもよい。
【0024】
前記一般式(1)中のArは、置換基を有していてもよいアリーレン基である。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、及びこれらの芳香環上にハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基等の置換基を1つ乃至複数有する構造部位等が挙げられる。ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基の具体例としては、前記Ar上の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。
【0025】
中でも、Arはフェニレン基、ナフチレン基、及びこれらの芳香環上にハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基のいずれか一種以上を1乃至3つ有する構造部位であることが好ましく、フェニレン基又はナフチレン基が好ましい。
【0026】
前記一般式(1)中のRは、炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。中でも、硬化物における誘電特性に優れる効果が一層顕著となることから、Rは直鎖のアルキレン基であることが好ましく、その炭素原子数は6~14の範囲であることが好ましい。
【0027】
前記エステル化合物(A)の製造方法は特に限定されないが、一例としては、例えば、下記構造式(3)で表されるフェノール性水酸基含有化合物(a1)、下記一般式(4)で表される芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び下記構造式(5)で表されるジオール化合物(a3)を反応原料とする方法が挙げられる。
【0028】
【化3】
[上記一般式(3)中のArは置換基を有していてもよいアリール基である。一般式(4)中のArは置換基を有していてもよいアリーレン基である。一般式(5)中のRは炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。]
【0029】
前記一般式(3)~(5)中のAr、Ar、Rの具体例及び好ましいものは、前記一般式(1)中のものと同様である。
【0030】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び前記ジオール化合物(a3)から前記ポエステル化合物(A)を製造する場合、反応生成物中に前記エステル化合物(A)以外の副生成物が生じることがある。本発明においては、反応生成物から前記エステル化合物(A)を単離精製して用いてもよいし、反応生成物を本発明のポリエステル樹脂として用いてもよい。
【0031】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び前記ジオール化合物(a3)の反応生成物をそのまま本発明のポリエステル樹脂とする場合、前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び前記ジオール化合物(a3)の他、これら以外の反応原料を併用してもよい。その場合、硬化物における誘電特性により優れるポリエステル樹脂となることから、ポリエステル樹脂の反応原料100質量部に占める前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び前記ジオール化合物(a3)の合計質量が、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることが特に好ましい。
【0032】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、及び前記ジオール化合物(a3)の反応方法は特に限定されず、例えば、反応原料を一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料の一部を先に反応させ、追って残りの反応原料を反応させるような多段反応で製造してもよい。特に、前記エステル化合物(A)をより効率的に製造できることから、前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)と前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である中間体(M)を予め製造し、これと前記ジオール化合物(a3)とを反応させる方法が好ましい。
【0033】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)と前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、20~70℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。反応終了後は所望に応じて水洗や再沈殿等により反応生成物を精製してもよい。
【0034】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ピリジン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3~30質量%の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。アルカリ触媒の添加量は、反応原料中の水酸基1モルに対し、0.1~3モルの範囲であることが好ましい。また、反応効率を高めるため、アルキルアンモニウム塩やクラウンエーテル等の層間移動触媒を使用しても良い。これらは、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。送還移動触媒の添加量は、反応原料の総質量に対し、0.01~1質量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。これら有機溶媒の使用量は、反応原料の総質量に対し、20~300質量%の範囲であることが好ましい。
【0036】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)と前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応割合は、前記エステル化合物(A)をより高収率で得られることから、前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)1モルに対し、前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)が0.8~3モルとなる範囲であることが好ましく、1.5~2.2モルとなる範囲であることがより好ましい。
【0037】
前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)と前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である中間体(M)と前記ジオール化合物(a3)との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、50~250℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。反応終了後は、エステル交換反応の結果生じた前記フェノール性水酸基含有化合物(a1)を留去することが好ましい。また、所望に応じて水洗や再沈殿等により反応生成物を精製してもよい。
【0038】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ピリジン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0~30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高いジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンが好ましい。アルカリ触媒の添加量は、反応原料の総質量に対し、0.01~10質量%の範囲であることが好ましい。また、反応効率を高めるため、アルキルアンモニウム塩やクラウンエーテル等の層間移動触媒を使用しても良い。
【0039】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0040】
前記中間体(M)と前記ジオール化合物(a3)との反応割合は、前記エステル化合物(A)をより高収率で得られることから、前記ジオール化合物(a3)に対し、前記中間体(M)を過剰量用いることが好ましい。具体的には、前記ジオール化合物(a3)1モルに対し、前記中間体(M)を1.1~5モル用いることが好ましく、1.5~4モル用いることがより好ましく、1.8~3モル用いることが更に好ましい。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂中の前記エステル化合物(A)の含有量は、硬化物における誘電特性に優れる効果がより顕著になることから、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される値で10%以上であることが好ましく、15%以上であることが好ましい。また、その上限値は、60%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。なお、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0042】
更に、本発明のポリエステル樹脂は、硬化物における誘電特性に優れる効果がより顕著になることから、下記一般式(2)で表されるエステル化合物(B)を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂中の前記エステル化合物(B)の含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される値で10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。また、その上限値は、50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。なお、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【化4】
[上記一般式(2)中のArはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基である。Arは置換基を有していてもよいアリーレン基である。]
【0043】
前記一般式(2)中のAr、Arの具体例及び好ましいものは、前記一般式(1)中のものと同様である。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂は、前記エステル化合物(A)やエステル化合物(B)の他、下記一般式(6)で表されるエステル化合物(C)を含有していてもよい。
【0045】
【化5】
[上記一般式(1)中のArはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基である。Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基である。Rは炭素原子数4~20の脂肪族炭化水素基である。nは2以上の整数である。]
【0046】
前記一般式(6)中のAr、Ar、Rの具体例及び好ましいものは、前記一般式(1)中のものと同様である。前記一般式(6)中のnは2以上の整数であり、より好ましくは、2~10の整数である。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は500~5,000の範囲であることが好ましく、600~3,000の範囲であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は700~7,000の範囲であることが好ましく、800~5,000の範囲であることがより好ましい。本明細書においてポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0048】
前記一般式(1)中のArやAr上の置換基としてアルケニル基やアルキニル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基等の重合性不飽和基を有する場合、本発明のエステル化合物(A)又はこれを含有するポリエステル樹脂単独で、或いはマレイミド化合物等、他の重合性不飽和基含有化合物と配合することにより、硬化性組成物として利用することができる。この場合、硬化反応は、一般に光照射や加熱により進行する。加熱硬化時の加熱温度や加熱時間は、硬化性組成物中の配合成分等によって適宜調整されるが、100~300℃で1~24時間程度が好ましい。
【0049】
前記マレイミド化合物は、例えば、下記一般式(6)~(9)のいずれかで表されるもの等が挙げられる。また、マレイミド樹脂の市販品の例としては、大和化成工業株式会社製「BMI-1000」、「BMI-2000」、「BMI-2300」、「BMI-3000」、「BMI-4000」、「BMI-6000」、「BMI-7000」、「BMI-8000」、「BMI-TMH」等、ケイ・アイ化成株式会社製「BMI」、「BMI-70」、「BMI-80」等、東京化成工業株式会社製「B1109」、「N1971」、「B4807」、「P0778」、「P0976」等が挙げられる。前記マレイミド化合物は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
【化6】
[上記一般式(6)中のRは二価の有機基である。上記一般式(7)~(9)中のRは炭素原子数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、nは0~3の整数である。上記一般式(7)のXは炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数6~20のシクロアルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基のいずれかであり、mは1以上の整数である。上記一般式(8)中のRは水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、アリール基のいずれかである。前記一般式(9)中のlは3~6の整数である。]
【0051】
前記一般式(6)中のRについて、二価の有機基の具体例としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数6~20のシクロアルキレン基、アリーレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、及びこれらの基が2つ以上連結した構造部位等が挙げられる。前記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-〔1,3-(2-メチルフェニレン)〕ビスマレイミド、N,N’-〔1,3-(4-メチルフェニレン)〕ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2-ビス〔[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、2,2’-ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドなどが挙げられる。
【0052】
本発明のエステル化合物(A)又はこれを含有するポリエステル樹脂が重合性不飽和基を有する場合、硬化性組成物中の重合性不飽和基を有する化合物の総質量に対する前記エステル化合物(A)又はこれを含有するポリエステル樹脂の割合は特に限定されず、所望の樹脂性能や用途等に応じて適宜調整される。中でも、硬化性組成物中の重合性不飽和基を有する化合物の総質量100質量部に対する前記エステル化合物(A)又はこれを含有するポリエステル樹脂の割合が20質量%以上であることが好ましく、25~75質量%の範囲であることがより好ましく、30~60質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0053】
本発明のエステル化合物(A)及びこれを含有するポリエステル樹脂は、構造中に芳香環同士のエステル結合を有することから、所謂活性エステル化合物又は樹脂として機能するため、エポキシ樹脂等と配合することにより、硬化性組成物として利用することができる。この場合、硬化反応は、一般に加熱により進行する。加熱温度や加熱時間は硬化性組成物中の配合成分等によって適宜調整されるが、100~300℃で1~24時間程度が好ましい。また、本発明の硬化性組成物は、前記マレイミド化合物等の重合性不飽和基含有化合物と、エポキシ樹脂との両方を含有していてもよい。
【0054】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α―ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β―ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格およびジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の硬化性組成物が前記エポキシ樹脂を含有する場合、本発明のエステル化合物(A)又はポリエステル樹脂以外のエポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。前記エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、本発明のエステル化合物(A)又はポリエステル樹脂以外の活性エステル樹脂や、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノール樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0056】
本発明の硬化性組成物が前記エポキシ樹脂を含有する場合、発明のエステル化合物(A)又はポリエステル樹脂や、これ以外のエポキシ樹脂用硬化剤との配合割合は、硬化性組成物中のエポキシ基の合計1モルに対して、硬化剤中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0057】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0058】
前記硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤、過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0059】
前記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
【0060】
アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0061】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0062】
グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
【0063】
前記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0064】
前記過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0065】
上述の硬化促進剤のうち、ジクミルパーオキサイド、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジンを用いることが好ましい。
【0066】
なお、上述の硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
硬化促進剤の使用量は、硬化性組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3であることがさらに好ましい。硬化促進剤の使用量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の使用量が5質量部以下であると、成形性に優れることから好ましい。
【0068】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0069】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0070】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0071】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が25~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が25~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0072】
また、本発明の硬化性組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0073】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~200℃の温度条件下で2~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例
【0074】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8320」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0076】
13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製「JNM-ECA500」
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30質量%
積算回数 :4,000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0077】
<FD-MSの測定>
FD-MSは日本電子株式会社製の二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」を用いて測定した。
【0078】
(実施例1:ポリエステル樹脂(1)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド101.0gとトルエン397.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換し、溶解させた。次いで、2-アリルフェノール134.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換し、溶解させた。更にテトラブチルアンモニウムブロマイド0.30gを加えて溶解させた。窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液206.0gを3時間かけて滴下した。同温度条件下で1.0時間攪拌を続けた。反応終了後、静置して分液し、水層を取り除いた。反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して約15分間攪拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、液状の中間体(1)を得た。中間体(1)の13C-NMRチャートを図1に、FD-MSチャートを図2に、GPCチャートを図3に示す。
【0079】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに1,9-ノナンジオール60.0g、前記中間体(1)298.4g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)1.79gを仕込んだ。系内を減圧窒素置換した後、190℃まで昇温し、同温度で3時間撹拌した。その後、減圧蒸留にて2-アリルフェノールを除去し、ポリエステル樹脂(1)を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は1,848であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(1)中のエステル化合物(A)の含有量は29%、エステル化合物(B)の含有量は21%であった。ポリエステル樹脂(1)のGPCチャートを図1に示す。
【0080】
(実施例2:ポリエステル樹脂(2)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに1,6-ヘキサンジオール40.0g、前記中間体(1)249.5g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)1.45gを仕込んだ。系内を減圧窒素置換した後、190℃まで昇温し、同温度で3.5時間撹拌した。その後、減圧蒸留にて2-アリルフェノールを除去し、ポリエステル樹脂(2)を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は1,489であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(2)中のエステル化合物(A)の含有量は28%、エステル化合物(B)の含有量は21%であった。ポリエステル樹脂(2)のGPCチャートを図2に示す。
【0081】
(実施例3:ポリエステル樹脂(3)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに1,12-ドデカンジオール50.0g、前記中間体(1)208.74g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)1.29gを仕込んだ。系内を減圧窒素置換した後、190℃まで昇温し、同温度で7時間撹拌した。その後、減圧蒸留にて2-アリルフェノールを除去し、ポリエステル樹脂(2)を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(3)の重量平均分子量(Mw)は1,647であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される、ポリエステル樹脂(3)中のエステル化合物(A)の含有量は32%、エステル化合物(B)の含有量は26%であった。ポリエステル樹脂(3)のGPCチャートを図3に示す。
【0082】
(実施例4~6及び比較例1)
<硬化性組成物の調製>
表1に示す割合でポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、及び触媒を配合して加熱混合し、硬化性組成物を得た。
マレイミド樹脂:大和化成工業株式会社製「BMI-5100」
触媒:ジクミルパーオキシド
【0083】
<試験片の作成>
先で得た硬化性組成物を、厚さ2mmの型枠内に流し込み、200℃で3時間加熱し、硬化させた。その後、加熱真空乾燥させ、23℃、湿度50%の室内に24時間保存し、試験片を得た。
【0084】
<誘電正接の測定>
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、試験片の1GHz、10GHzでの誘電正接を測定した。また、試験片を湿熱条件下(121℃、湿度100%)に6時間放置した後の1GHz、10GHzでの誘電正接を測定した。また、その変化率を計算した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
図1
図2
図3