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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】積層体、包装材及び食品包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20250107BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250107BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B32B27/30 102
B65D65/40 D
B65D85/50 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021567740
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020049019
(87)【国際公開番号】W WO2021132683
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019236045
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】中井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 邦泰
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-124669(JP,A)
【文献】特開平04-029845(JP,A)
【文献】特開平04-115927(JP,A)
【文献】特開2017-115076(JP,A)
【文献】特開2009-184138(JP,A)
【文献】特開平11-129379(JP,A)
【文献】特開2014-172632(JP,A)
【文献】特開2008-012764(JP,A)
【文献】特開2019-182463(JP,A)
【文献】特開平07-186337(JP,A)
【文献】プラスチック・データブック,初版第1刷発行,株式会社 工業調査会,1999年12月01日,第38-41頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
B65D 65/40
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、
上記外層1、上記中間層、上記外層2の順で配置され、
上記中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、
上記中間層の厚みが0.1~5μmであり、
上記ポリビニルアルコール系樹脂は変性率0.1~20モル%の変性ポリビニルアルコール系樹脂(但し、エチレン変性率10モル%以上のエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂を除く)であって側鎖に一級水酸基を有し、
上記外層1の水蒸気透過度と上記外層2の水蒸気透過度の差が100cc・30μm/m2・day以上であり、
上記外層1の水蒸気透過度と上記外層2の水蒸気透過度が下記式(1)を満たす、積層体。
外層1の水蒸気透過度<外層2の水蒸気透過度・・・(1)
【請求項2】
上記外層1の水蒸気透過度が100cc・30μm/m2・day以下であり、上記外層2の水蒸気透過度が200~1000cc・30μm/m2・dayである、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
上記外層1がポリオレフィンを含有する層を含む、請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
上記外層2がポリアミドを含有する層を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体からなる包装材。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体からなる食品包装材。
【請求項7】
外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、
上記外層1、上記中間層、上記外層2の順で配置され、
上記中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、
上記外層1の水蒸気透過度と上記外層2の水蒸気透過度の差が100cc・30μm/m2・day以上である積層体を水を含有する溶媒で洗浄する工程;
外層1と外層2を分離する工程;
を含むリサイクル方法。
【請求項8】
外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、
上記外層1、上記中間層、上記外層2の順で配置され、
上記中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、
外層1の水蒸気透過度と外層2の水蒸気透過度が下記式(1)を満たす積層体を
水を含有する溶媒で洗浄する工程;
外層1と外層2を分離する工程;
を含むリサイクル方法。
外層1の水蒸気透過度<外層2の水蒸気透過度・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。具体的には、回収性に優れる包装材等に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチック問題等が挙げられ、廃プラスチックに対する規制が厳しくなっている。これまで、廃プラスチックは、中国等へ輸出していたが、今後は国内で分別収集し、循環するように変わる。
従来では、収集する際には、分別せずに収集し、輸出前にも簡易選別のみしか行っていなかった。しかしながら、今後は、国内資源循環に向けて、分別収集をし、高度選別し、原材料化をすることになる。
【0003】
分別収集や高度選別する場合、単層フィルム等の単一樹脂で製造されたものは分別が容易であるが、多種類の樹脂を積層させた積層体を分別するのは非常に困難である。
【0004】
このような事情下、リサイクル性、主に回収性に優れた積層体として、中間層に水溶性樹脂を積層させた積層体が提案されている。
例えば、水溶性のエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂を中間層とし、熱可塑性樹脂を積層させた積層体において、使用後に熱可塑性樹脂層と中間層を分離し、回収できることが記載されている(例えば、特許文献1、2)。
ほかにも、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムと基材フィルムとの間にワックスを含有する中間層を設け、剥離性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-348200号公報
【文献】特開平11-348201号公報
【文献】特開2003-112393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載の積層体は、層の剥離がエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性に依存するため、剥離速度の点で改良の余地があるものであった。
特許文献3のワックスを介した貼着は、ポリオレフィン層を剥離しやすい一方、接合強度不足から、流通過程や使用中にポリオレフィン層が剥がれてしまうおそれがある。特に、高温雰囲気下ではワックスの粘度が低下するため、真夏の流通過程やホットコーヒー等の熱湯を用いる飲料容器としては、ポリオレフィン層を、安定的な所望の接合強度に保持できないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、層間剥離するまでの時間が短く、回収性に優れる積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層体は、外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、上記外層1、上記中間層、上記外層2の順で配置され、上記中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、上記外層1の水蒸気透過度と上記外層2の水蒸気透過度の差が50cc・30μm/m2・day以上であり、上記外層1の水蒸気透過度と上記外層2の水蒸気透過度が下記式(1)を満たす、積層体である。
外層1の水蒸気透過度<外層2の水蒸気透過度・・・(1)
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、外層1と外層2が水に対して異なる特性を有し、異なる挙動を示すため、水に浸漬させた際の外層1と外層2の剥離時間が短く、さらにそれによって中間層であるポリビニルアルコール系樹脂を含有する層が暴露されるので水への溶解も速やかになり、回収性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本発明の実施形態において、「主成分」とは、各層を構成する成分全体を基準(100重量%)とした際に、各成分の含有量が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%含むことを意味する。
【0011】
本発明の実施態様に係る積層体は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)系樹脂を含有する層を中間層とし、外層1と外層2の水蒸気透過度(以下、「WVTR」という)の差を特定の範囲以上とした層を積層させた積層体である。
そして、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差が、100cc・30μm/m2・day以上であり、上記式(1)を満たすことを特徴とするものである。かかるWVTRの差は、150~1000cc・30μm/m2・dayが好ましく、特に200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、殊に300~900cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。かかるWVTRの差が大きすぎると、外層2のWVTRが大きくなり、包装材としてのバリア性が低下する可能性があり、逆に小さすぎると層の剥離時間が長くなる傾向がある。
【0012】
なお、本発明において、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差とは、外層1及び外層2の両方が単層の場合は、単層からなる外層の各WVTRの差を意味するものである。
また、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差とは、外層1及び外層2の一方が単層であり、他方が2以上の単層からなる複層である場合は、単層である外層のWVTRと、(1)複層である外層全体のWVTR、(2)複層である外層を構成する一部の複層のWVTR、または(3)複層である外層を構成するいずれか一の単層のWVTRのうち少なくとも一つとの差を意味するものである。
また、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差とは、外層1及び外層2の両方が複層の場合は、一方の外層における、(1)複層である外層全体のWVTR、(2)複層である外層を構成する一部の複層のWVTR、または(3)複層である外層を構成するいずれか一の単層のWVTRのうち少なくとも一つと、他方の外層における、(4)複層である外層全体のWVTR、(5)複層である外層を構成する一部の複層のWVTR、または(6)複層である外層を構成するいずれか一の単層のWVTRのうち少なくとも一つとの差を意味するものである。
次に、各層について説明する。
【0013】
<外層1>
本発明の実施態様に係る積層体に用いられる外層1としては、WVTRが、100cc・30μm/m2・day以下であることが好ましく、さらに0.1~50cc・30μm/m2・day、特に2~30cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。
かかる値が大きすぎると、外層2とのWVTRの差が小さく、すなわち水に対する挙動の差が小さくなり、外層1と外層2が剥離するまでに時間を要する傾向がある。小さすぎる場合には、特に弊害はないが、実際には下限値は0.1cc・30μm/m2・day程度である。
【0014】
本発明におけるWVTRの測定方法は、JIS Z 0208(1976)に準拠し、吸湿剤の入ったカップの口を、外層1における測定対象層(単層又は複層)で蓋をするように密閉し、そのカップを40℃、90%RHの恒温恒湿器中に静置し、吸湿剤の重量変化から単位面積あたりの水蒸気透過率を算出する方法が用いられる。
【0015】
外層1は単層であっても、異なる材料、異なる機能をもつ複数の層からなる複層であってもよい。
かかる複数の層としては、最外層、接着樹脂層、防水層、紫外線防止層、リグラインド層等を挙げることができ、これらを適宜、組み合わせて積層し、外層1とすればよい。
また最外層の上に印刷、着色等を施し、意匠性を付与することもできる。
【0016】
外層1の中の最外層としては、主成分として熱可塑性樹脂を含む層が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVOH等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
中でも、ヒートシール性に優れる理由から、ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0017】
外層1の中の最外層には、主成分となる熱可塑性樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、好ましくは本発明の効果を損なわない範囲で且つ食品安全性を損なわない範囲で、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、接着樹脂等、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0018】
外層1の中の最外層の厚みとしては、通常1~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは15~200μmであり、さらにより好ましくは15~100μmである。
【0019】
外層1の中の接着樹脂層の主成分を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させてえられ得るカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体等が好ましく用いられる。
【0020】
接着樹脂層の厚みは、通常0.5~50μm、さらには1~30μm、特には2~20μm、殊には3~10μmが好ましい。かかる厚みが0.5μm未満では、接着力不足等が生じるおそれがある。逆に50μmを超えると機械的強度が不充分となり、また経済的にも不利となって好ましくない。
【0021】
また、外層1の中の最外層以外の層を積層させる場合の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(a)外層1(最外層/接着樹脂層)/PVA系樹脂層/外層2
(b)外層1(最外層/防水層/接着樹脂層)/PVA系樹脂層/外層2
(c)外層1(最外層/リグラインド層/接着樹脂層)/PVA系樹脂層/外層2
(d)外層1(印刷/最外層/接着層)/PVA系樹脂層/外層2
(e)外層1(最外層/ヒートシール層)/PVA系樹脂層/外層2
【0022】
外層1の厚みは、水蒸気バリア性を確保できるように、ピンホール等がない範囲の厚みでなければならない。具体的には、通常1~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは15~200μmである。薄すぎた場合、防湿性、防水性が不充分となるおそれがあり、機械的強度が不足し破れやすくなる。厚すぎる場合は、二次成形が困難になる傾向がある。
【0023】
<外層2>
本発明の実施態様に係る積層体に用いられる外層2としては、WVTRが、200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、さらに300~900cc・30μm/m2・day、特に400~800cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。
かかる値が小さすぎると、外層1とのWVTRの差が小さく、水に対する挙動の差が小さくなり、外層1と外層2が剥離するまでに時間を要する傾向がある。大きすぎると、水蒸気を透過し、中間層であるPVA系樹脂層のガスバリア性が低下する傾向がある。
【0024】
外層2のWVTRの測定方法は、外層1の場合と同様である。即ち、JIS Z 0208(1976)に準拠し、吸湿剤の入ったカップの口を、外層2における測定対象層(単層又は複層)で蓋をするように密閉し、そのカップを40℃、90%RHの恒温恒湿器中に静置し、吸湿剤の重量変化から単位面積あたりの水蒸気透過率を算出する方法が用いられる。
【0025】
外層2は単層であっても、異なる材料、異なる機能をもつ複数の層からなる複層であってもよい。
かかる複数の層としては、最外層、接着樹脂層、防水層、紫外線防止層、リグラインド層等を挙げることができ、これらを適宜、組み合わせて積層し、外層2とすればよい。
また最外層の上に印刷、着色等を施し、意匠性を付与することもできる。
【0026】
外層2の中の最外層としては、主成分として熱可塑性樹脂を含む層が好ましく、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、ナイロン6等のポリアミド、ポリスチレン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
中でも、接着性・機械物性の理由から、ポリアミドが好ましい。
【0027】
外層2の中の最外層には、主成分となる熱可塑性樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、好ましくは本発明の効果を損なわない範囲で且つ食品安全性を損なわない範囲で、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、接着剤等、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0028】
外層2の最外層の厚みとしては、通常1~50μmであり、好ましくは2~20μmであり、より好ましくは3~10μmであり、更に好ましくは4~10μmである。
【0029】
外層2の中の接着樹脂層の主成分を構成する樹脂としては、例えば、特に制限されないが、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させてえられ得るカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体等が好ましく用いられる。
【0030】
接着樹脂層の厚みは、通常0.5~50μmであり、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは2~20μm、殊には3~10μmが好ましい。かかる厚みが0.5μm未満では、接着力不足等が生じるおそれがある。逆に50μmを超えると機械的強度が不充分となり、また経済的にも不利となって好ましくない。
【0031】
また、外層2の中の最外層以外の層を積層させる場合の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(a)外層1/PVA系樹脂層/(接着樹脂層/最外層)外層2
(b)外層1/PVA系樹脂層/(接着樹脂層/防水層/最外層)外層2
(c)外層1/PVA系樹脂層/(接着樹脂層/リグラインド層/最外層)外層2
(d)外層1/PVA系樹脂層/(接着樹脂層/最外層/印刷)外層2
(e)外層1/PVA系樹脂層/(ヒートシール層/最外層)外層2
【0032】
外層2の厚みは、液体不透過性を確保できるように、ピンホール等がない範囲の厚みでなければならない。具体的には、通常1~50μmであり、好ましくは2~20μmであり、より好ましくは3~10μmである。薄すぎる場合、防湿性、防水性が不充分となるおそれがあり、機械的強度が不足し破れやすくなる。また、厚すぎる場合は、二次成形が困難になる傾向がある。
【0033】
<中間層>
本発明の実施態様に係る中間層は、PVA系樹脂を主成分として含有するPVA系樹脂層である。
かかるPVA系樹脂は、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と未ケン化部分の酢酸ビニル構造単位を有するものである。
【0034】
PVA系樹脂層の厚みは、ガスバリア性を確保できるように、ピンホール等がない範囲の厚みでなければならない。具体的には、通常0.1~30μmであり、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは2~5μmである。薄すぎた場合、ガスバリア性が不充分となるおそれがあり、機械的強度が不足し破れやすくなる。また、厚すぎる場合は、二次成形が困難になる傾向がある。
【0035】
本発明のPVA系樹脂層で用いられるPVA系樹脂としては、未変性PVAの他に、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性PVAや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性PVAが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、かかる変性は、PVA系樹脂の水溶性が失われない範囲で行うことができる。また、場合によっては、変性PVAを更に後変性させてもよい。
【0036】
ビニルエステル系樹脂の製造時にビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、そのモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド;アリルトリメチルアンモニウムクロライド;ジメチルアリルビニルケトン;N-ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン等のポリオキシアルキレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレンビニルアミン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類あるいはそのアシル化物等の誘導体を挙げられる。
また、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、グリリンモノアリルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジメチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン等のジオールを有する化合物等が挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0037】
また、後反応によって官能基が導入された後変性PVAとしては、例えば、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基を有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVA系樹脂と反応させて得られたもの等を挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、溶融成形に適したPVA系樹脂が好ましい。
溶融成形に適したPVA系樹脂としては、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂や、エチレン変性PVA系樹脂が好ましく、特に、溶融成形性に優れ、さらに水溶性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂が好ましい。かかる構造単位における一級水酸基の数は、通常1~5個であり、好ましくは1~2個であり、特に好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
【0039】
このような側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基構造単位を有する変性PVA系樹脂等が挙げられる。中でも、特に下記一般式(2)で表される、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(以下、「側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂」と称することがある。)を用いることが好ましい。
なお、1,2-ジオール構造単位以外の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
【0040】
【化1】
(上記一般式(2)において、R1~R6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0041】
上記一般式(2)において、R1~R6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表すところ、なかでも、R1~R6は、すべて水素原子であることが側鎖の末端が一級水酸基となり望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1~4のアルキル基であってもよい。当該有機基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が好ましく、当該アルキル基は必要に応じてハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0042】
上記一般式(2)中、Xは単結合又は結合鎖であり、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で、単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定されず、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、-O-、-(CH2O)m-、-(OCH2)m-、-(CH2O)mCH2-、-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(C64)CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO2-、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO4-、-Si(OR)2-、-OSi(OR)2-、-OSi(OR)2O-、-Ti(OR)2-、-OTi(OR)2-、-OTi(OR)2O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等が挙げられる。Rは各々独立して水素原子又は任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基(特にC1~C4アルキル基)が好ましい。またmは自然数であり、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。
なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいはCH2OCH2-が好ましい。
【0043】
上記一般式(2)で表される1,2-ジオール構造単位における特に好ましい構造は、R1~R6がすべて水素原子であり、Xが単結合である。
【0044】
本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常、60~100モル%である。
また、ケン化度の好ましい範囲は、変性種によって異なり、例えば、未変性PVA系樹脂の場合、通常、60~99.9モル%であり、好ましくは65~95モル%、特に好ましくは70~90モル%である。かかるケン化度が高すぎると融点と分解温度が近くなり、溶融成形が困難になる傾向があり、低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
また、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂のケン化度は、通常、60~99.9モル%であり、好ましくは65~99.8モル%、特に好ましくは70~99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
更に、少量のエチレンで変性されたエチレン変性PVA系樹脂のケン化度は、通常、60モル%以上であり、好ましくは70~95モル%、特に好ましくは75~90モル%である。かかるケン化度が高すぎると融点と分解温度が近くなり、溶融成形が困難になる傾向があり、低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常、100~3000であり、好ましくは150~2000、特に好ましくは180~1000、更に好ましくは200~800である。かかる平均重合度が大きすぎると溶融成形時の溶融粘度が高くなり、溶融成形が困難となる傾向がある。
【0046】
また、PVA系樹脂が変性PVA系樹脂である場合、かかる変性PVA系樹脂中の変性率、すなわち共重合体中の各種モノマーに由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、官能基の種類によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、通常、0.1~20モル%である。
更に、PVA系樹脂が側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂である場合の変性率は、通常、0.1~20モル%であり、好ましくは0.5~10モル%、特に好ましくは1~8モル%である。かかる変性率が高すぎても低すぎても溶融成形が困難になる傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2-ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100モル%のPVA系樹脂の1H-NMRスペクトル(溶媒:DMSO-d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2-ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、及びメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトン等に由来するピーク面積から算出することができる。
【0047】
PVA系樹脂が少量のエチレンで変性されたエチレン変性PVA系樹脂である場合の変性率は、通常、0.1~15であり、好ましくは0.5~10モル%、更に好ましくは1~10モル%、特に好ましくは5~9モル%である。かかる変性率が高すぎると水溶性が低下する傾向があり、低すぎると溶融成形が困難となる傾向がある。
【0048】
PVA系樹脂の融点は、通常140~230℃であり、好ましくは145~220℃、より好ましくは180~200℃、特に好ましくは150~200℃、更に好ましくは155~190℃である。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)で昇降温速度10℃/minで測定した値である。
【0049】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。PVA系樹脂を2種類以上用いる場合としては、例えば、ケン化度、平均重合度、融点等が異なる2種以上の未変性PVA系樹脂の組み合わせ;未変性PVA系樹脂と変性PVA系樹脂との組み合わせ;ケン化度、平均重合度、融点、官能基の種類や変性率等が異なる2種以上の変性PVA系樹脂の組み合わせ等が挙げられるが、ケン化度、平均重合度、変性率等の平均値は本発明の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0050】
本発明で用いられるPVA系樹脂の主鎖の結合様式は1,3-ジオール結合が主であり、1,2-ジオール結合の含有量は1.5~1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって1,2-ジオール結合の含有量を増やすことができ、その含有量を1.8モル%以上、更には2.0~3.5モル%に増やすことができる。
【0051】
本発明で用いられるPVA系樹脂の製造方法としては、例えば酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化して製造する方法が挙げられる。
【0052】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピパリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等を用いることができるが、価格や入手の容易さの観点で、酢酸ビニルが好ましく用いられる。次いで、かかるビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化してPVA系樹脂を製造する。
【0053】
また、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、特開2002-284818号公報、特開2004-285143号公報、特開2006-95825号公報に記載されている方法により製造することができる。
【0054】
また、本発明に用いられるPVA系樹脂は、1種のみでも多種のPVA系樹脂の混合物でもよい。なお、混合物を用いる場合には、それらの平均ケン化度や平均重合度が上記の範囲内であることが好ましい。
さらに水に溶解し、さらに溶融押出性が損なわれない限りは、PVA系樹脂のほかに他の水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂が含まれていてもよい。併用可能な水溶性あるいは水分散性樹脂としては、デンプン、酸化デンプン、カチオン変性デンプン等のデンプン誘導体;ゼラチン、カゼイン等の天然系たんぱく質類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸等の天然高分子多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸塩等の水溶性樹脂;SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル樹脂系エマルジョン、塩化ビニル樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、外層1と外層2との接着性を向上させるために、PVA樹脂層に接着樹脂を混合してもよい。
【0055】
<積層体>
上記のとおり、本発明の実施形態に係る積層体は、外層1、中間層、外層2の順で配置された積層体である。なお、外層1は、積層体のうち中間層及び外層2を除く部分である。また、外層2は、積層体のうち中間層及び外層1を除く部分である。
上記のとおり、本発明の実施態様に係る積層体は、PVA系樹脂を含有する層を中間層とし、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差を、100cc・30μm/m2・day以上とした点に特徴がある。
特に、外層1を構成する層のうち最外層のWVTRと、外層2を構成する層のうち最外層のWVTRとの差が、100cc・30μm/m2・day以上であることが好ましく、150~1000cc・30μm/m2・dayがより好ましく、特に200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、殊に300~900cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。
なお、最外層とは、積層体を構成する層のうち最も外側に位置する層であり、各外層が単層で構成される場合は、当該各単層が最外層であり、また、各外層が複層で構成される場合は、当該複層を構成する単層のうち中間層から最も離れた位置に配置される単層が最外層である。
また、外層1を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する他の層とからなる複層のWVTRと、外層2を構成する層のうち最外層のWVTR、又は、外層2を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する他の層とからなる複層のWVTRのいずれか一方又は両方との差が、100cc・30μm/m2・day以上であることが好ましく、150~1000cc・30μm/m2・dayがより好ましく、特に200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、殊に300~900cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。なお、外層2を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する他の層とからなる複層のWVTRと、外層1を構成する層のうち最外層のWVTR、又は、外層1を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する他の層とからなる複層のWVTRのいずれか一方又は両方との差においても、上記各数値範囲は同様に好適である。
また、外層1を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する粘着樹脂層からなる複層のWVTRと、外層2を構成する層のうち最外層のWVTR、又は、外層2を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する粘着樹脂層からなる複層のWVTRのいずれか一方又は両方との差が、100cc・30μm/m2・day以上であることが好ましく、150~1000cc・30μm/m2・dayがより好ましく、特に200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、殊に300~900cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。なお、外層2を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する粘着樹脂層からなる複層のWVTRと、外層1を構成する層のうち最外層のWVTR、又は、外層1を構成する層のうち最外層及び最外層に隣接する粘着樹脂層からなる複層のWVTRのいずれか一方又は両方との差においても、上記各数値範囲は同様に好適である。
更には、外層1を構成する全層のWVTRと、外層2を構成する全層のWVTRとの差が100cc・30μm/m2・day以上であることが好ましく、150~1000cc・30μm/m2・dayがより好ましく、特に200~1000cc・30μm/m2・dayであることが好ましく、殊に300~900cc・30μm/m2・dayであることが好ましい。
【0056】
本発明の実施形態に係る積層体の厚みは、特に制限されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、3~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは20~200μmである。
【0057】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、従来公知の成形方法によって製造することができ、具体的には溶融成形法や溶液状態からの成形法を用いることができる。例えば、溶融成形法としては、外層1を構成する樹脂からなるフィルム、あるいはシートに、外層1を構成する接着性樹脂、中間層を構成するPVA系樹脂、外層2を構成する樹脂(例えば、ポリアミド樹脂)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、逆に外層2を構成する樹脂からなるフィルム、あるいはシートに、中間層を構成するPVA系樹脂、外層1を構成する接着性樹脂、外層1を構成する樹脂(例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、又は、外層1を構成する樹脂および接着樹脂、中間層を構成するPVA系樹脂、外層2を構成する樹脂を共押出又は共射出する方法が挙げられる。
また、溶液状態からの成形法としては、外層1又は外層2のフィルム、あるいはシート等に接着樹脂を良溶媒に溶解した溶液を溶液コートし、乾燥後、PVA系樹脂の水溶液を溶液コートし、その上に外層1又は外層2のフィルム、あるいはシート等を積層させる方法等を挙げられる。
中でも、一工程で製造でき、層間接着性が優れた積層体が得られる点で溶融成形法が好ましく、特に共押出法が好ましく用いられる。そして、かかる溶融成形法を用いる場合には、PVA系樹脂として側鎖に1,2-ジオール構造を有するものを用いることが好ましい。
【0058】
上記共押出法においては、例えば具体的にはインフレーション法、Tダイ法、マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法が挙げられる。ダイ外接着法等のダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができる。
溶融押出時の溶融成形温度は、通常190~250℃であり、好ましくは200~230℃の範囲が用いられる。
【0059】
<包装材>
本発明の実施形態に係る包装材は、上記積層体を含むものである。具体的には、上記積層体を用いて形成される袋、カップ、トレイ、チューブ、ボトル等の容器及び蓋材等の包装材として好適に用いられ、特に食品包装用の包装材として好適である。食品包装用の包装材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料の各種の包装材として有用である。
また、本発明の実施形態に係る包装材は、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂がガスバリア性を有しているので、バリア性が必要な包装材に好適に使用できる。
なお、本発明の実施形態に係る包装材は、例えば、食品等の被包装物と接する層を外層2とし、外気と接する層を外層1とする包装材とすることができる。また逆に、食品等の被包装物と接する層を外層1、外気と接する層を外層2とする包装材とすることもできる。
【0060】
本発明の実施形態に係る積層体及び包装材は、リサイクル性という点で優れている。例えば、シート成形した端部や使用済み積層体は、水に浸漬し、撹拌することにより、外層1と外層2が剥離し、それぞれを回収することができる。
【0061】
<積層体等のリサイクル方法>
本発明は、上記積層体等の構成材料を分離し、回収するためのリサイクル方法としても好適に提供される。
より具体的には、本発明の一実施形態としては、外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、外層1、中間層、外層2の順で配置され、中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差が100cc・30μm/m2・day以上である積層体、当該積層体を含む包装材、又は、当該積層体を含む食品包装材を、水を含有する溶媒で洗浄する工程と、外層1と外層2を分離する工程を含むリサイクル方法としても好適に提供される。
【0062】
また、本発明の一実施形態としては、外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、上記外層1、上記中間層、上記外層2の順で配置され、上記中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、外層1のWVTRと外層2のWVTRが下記式(1)を満たす積層体、当該積層体を含む包装材、又は、当該積層体を含む食品包装材を、水を含有する溶媒で洗浄する工程と、外層1と外層2を分離する工程を含むリサイクル方法としても好適に提供される。
外層1のWVTR<外層2のWVTR・・・(1)
【0063】
また、本発明の好ましい一実施形態としては、外層1、中間層及び外層2を有する積層体であって、外層1、中間層、外層2の順で配置され、中間層はポリビニルアルコール系樹脂を含有する層であり、外層1のWVTRと外層2のWVTRの差が100cc・30μm/m2・day以上であり、且つ、外層1のWVTRと外層2のWVTRが下記式(1)を満たす積層体、当該積層体を含む包装材、又は、当該積層体を含む食品包装材を、水を含有する溶媒で洗浄する工程と、外層1と外層2を分離する工程を含むリサイクル方法として特に好適に提供される。
外層1のWVTR<外層2のWVTR・・・(1)
【0064】
かかるリサイクル方法によれば、積層体や包装材の構成材料として用いている外層1及び外層2とを速やかに分離することができ、さらにそれによってPVA系樹脂層が暴露されるので水への溶解も速やかになり、廃プラスチックを容易に回収することができる点で極めて有用である。
【実施例
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0066】
〔実施例1〕
(1)PVA系樹脂1の作製
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m-ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0067】
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖に一般式(2)で表される1,2-ジオール構造単位を有するPVA系樹脂1を作製した。得られたPVA系樹脂1の1,2-ジオール構造単位は、一般式(2)において、R1~R6は水素原子であり、Xは単結合である。
【0068】
得られたPVA系樹脂1のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.2モル%であった。
【0069】
また、PVA系樹脂1の平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
また、一般式(2)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、1H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質:テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。
【0070】
(2)水蒸気透過度(WVTR)の測定
JIS Z 0208(1976)に準拠し、吸湿剤の入ったカップの口を、外層1又は外層2の測定用サンプルで蓋をするように密閉し、そのカップを40℃、90%RHの恒温恒湿器中に静置し、吸湿剤の重量変化から単位面積あたりの水蒸気透過率を算出し、30μmの厚みに換算して求めた。
具体的には、JIS Z 0208(1976)に準拠し、直径70mmに切断した外層1又は外層2の測定用サンプルを、約10gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、温度40℃、湿度90%RHの恒温恒湿器(ナガノサイエンス社製、LH21-11M)に入れ、24時間静置した前後の重量増加を測定して水蒸気透過率を算出し、30μmの厚みに換算し([測定サンプルの厚み(μm)/30μm]を乗じて)、WVTRを求めた。
なお、実施例及び比較例においては、外層1及び外層2の測定用サンプルとして、最外層を構成する樹脂からなる単層フィルムを用い、上記WVTRを求めた。結果を表1に示す。
【0071】
(3)積層体の作製
外層1の最外層を構成する樹脂としてポリエチレン(日本ポリプロ社製「ノバテック UF960」)、外層1の接着樹脂層を構成する樹脂として変性ポリオレフィン(三菱ケミカル社製「Modic M533」)、外層2を構成する樹脂としてポリアミド(DSM社製「Novamid 2030J」)、中間層であるPVA系樹脂層を構成する樹脂として上記で得られたPVA系樹脂1を用い、押出機を4台備えた4種5層多層成膜装置にて、ポリエチレン層/接着樹脂層/PVA系樹脂1層/ポリアミド層の4種4層構造の積層体を作製した。
なお、各押出機、及びロールの設定温度は下記の通りであった。
【0072】
[設定温度]
(C1~C4:各シリンダー、H:ヘッド、J:ジョイント、FD1,2:フロントダイス、D1~3:ダイスを示す。)
ポリアミド:C1/C2/C3/C4/H/J=200℃/225℃/230℃/235℃/230℃/220℃
PVA系樹脂1:C1/C2/C3/C4/H/J=180℃/200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
ポリエチレン:C1/C2/C3/C4/H/J=190℃/210℃/210℃/220℃/220℃/220℃
接着樹脂:C1/C2/C3/C4/H/J=190℃/210℃/210℃/220℃/220℃/220℃
ダイス:FD1/FD2/D1/D2/D3=220℃
ロール:60℃
【0073】
(4)評価(剥離時間)
上記で得られた積層体を2cm角に切断して試験片とした。750mL容器に600mLの水を入れて40℃に加温し、当該水中に試験片を浸漬し、400rpmで撹拌して、外層1と外層2が完全に剥離するまでの時間をストップウォッチで計測した。結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例2〕
実施例1において、中間層のPVA系樹脂1に変えて、上記で得られたPVA系樹脂1を80部、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下「PBAT」という。BASF社製「エコフレックス」)20部の組成物とした以外は、実施例1と同様に積層体を作製した(ポリエチレン層/接着樹脂層/PVA系樹脂1及びPBATを含む組成物層/ポリアミド層)。実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例1〕
実施例1において、外層1及び外層2をポリアミド(DSM社製「Novamid 2030J」)とした以外は、実施例1と同様に積層体を作製した(ポリアミド層/PVA系樹脂1層/ポリアミド層)。実施例1同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例2〕
実施例2において、外層1及び外層2をポリアミド(DSM社製「Novamid 2030J」)とした以外は、実施例2と同様に積層体を作製した(ポリアミド層/PVA系樹脂1及びPBATを含む組成物層/ポリアミド層)。実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例3〕
実施例1において、外層2を最外層と接着樹脂層とからなる複層とし、外層2の最外層を構成する樹脂をポリエチレン(日本ポリプロ社製「ノバテック UF960」)、外層2の接着樹脂層を構成する樹脂を変性ポリオレフィン(三菱ケミカル社製「Modic M533」)とした以外は、実施例1と同様に積層体を作製した(ポリエチレン層/接着樹脂層/PVA系樹脂1層/接着樹脂層/ポリエチレン層)。実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0078】
〔比較例4〕
実施例1において、外層1の最外層を構成する樹脂をポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテック EA7AD」)とし、外層2を最外層と接着樹脂層からなる複層とし、外層2の最外層を構成する樹脂をポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテック EA7AD」)、外層2の接着樹脂層を構成する樹脂を変性ポリオレフィン(三菱ケミカル社製 「ModicM533」)とした以外は、実施例1と同様に積層体を作製した(ポリプロピレン層/接着樹脂層/PVA系樹脂1層/接着樹脂層/ポリプロピレン層)。実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
本発明の積層体を用いた実施例1及び2は、10分以内に剥離し、回収性の高い積層体であった。一方、外層1と外層2を同じ樹脂を用いた比較例1~4は、剥離するまでに20分以上の時間を要し、回収性に劣るものであった。
【0081】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の積層体は、水に浸漬するだけで、構成材料として用いている外層1と外層2を速やかに分離することができ、廃プラスチックの回収ができる。従って、本発明の積層体は、包装材、とりわけ食品包装材として好適に用いられる。