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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250107BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022541561
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028750
(87)【国際公開番号】W WO2022030481
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020135092
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020180362
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】関川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】永山 裕道
(72)【発明者】
【氏名】石戸 総
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089346(JP,A)
【文献】特開2014-006356(JP,A)
【文献】国際公開第2022/075264(WO,A1)
【文献】米国特許第5726723(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面に沿って湾曲する位相差板を含む、光学素子であって、
前記位相差板は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された配向層と、前記配向層の上に形成された液晶層と、を含み、
前記配向層の前記液晶層と接する表面には、前記液晶層の液晶分子を配向させる互いに平行な複数の溝が形成されており、
前記溝のピッチが、10nm~600nmであり、
前記配向層は、エネルギー硬化性組成物の共重合体であり、前記表面にフッ素元素を含み、
前記位相差板の厚みが最も薄い部位における前記溝の深さが、前記位相差板の厚みが最も厚い部位における前記溝の深さよりも深い、光学素子。
【請求項2】
前記配向層の前記表面のフッ素元素濃度が、0.1原子%~50原子%である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記配向層は、界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
曲面に沿って湾曲する位相差板を含む、光学素子であって、
前記位相差板は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された配向層と、前記配向層の上に形成された液晶層と、を含み、
前記配向層の前記液晶層と接する表面には、前記液晶層の液晶分子を配向させる互いに平行な複数の溝が形成されており、
前記溝のピッチが、10nm~600nmであり、
前記配向層は、エネルギー硬化性組成物の共重合体であり、界面活性剤を含み、
前記位相差板の厚みが最も薄い部位における前記溝の深さが、前記位相差板の厚みが最も厚い部位における前記溝の深さよりも深い、光学素子。
【請求項5】
前記配向層における前記界面活性剤の含有量が、0.05質量%~4質量%である、請求項3又は4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記液晶層の厚みが、0.3μm~30μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記液晶層は、位相差層、又は補償層である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記溝の深さが、3nm~500nmである、請求項1~のいずれか1項に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の光学素子の製造方法は、(A)微細な溝構造を備える配向層を形成し、(B)配向層の上に液晶相を示すコーティング材を積層し、(C)コーティング材層を固化し、液晶相の配向を固定させる。
【0003】
特許文献2に記載の液晶デバイスは、第1の基板と第2の基板とで液晶分子を挟持し、液晶の複屈折により光波を変調する。第1の基板、又は第2の基板には、光波の波長より短いピッチを有するグレーティング構造が設けられる。グレーティング構造は、ナノインプリント法で形成され、液晶分子の配向方向を制御し、かつ、液晶を通過した光波の位相制御を行う。
【0004】
特許文献3に記載の液晶配向フィルムの製造方法は、配向フィルムの非平面上に液晶物質を注入し、液晶層を形成する工程を含む。配向フィルムの製造方法は、(A)被転写層にモールドの凹凸パターンを転写し、(B)その凹凸パターンの上に二酸化チタン層を形成し、(C)二酸化チタン層をレンズ形状の曲面に変形し、(D)曲面に変形した二酸化チタン層をエッチングし、曲面に微細な凹凸パターンを形成する。この凹凸パターンの上に、液晶物質が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特表2005-516236号公報
【文献】日本国特開2013-7781号公報
【文献】日本国特表2016-509966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、液晶分子を配向させるべく、配向層に微細な溝構造を形成することが検討されている。
【0007】
本開示の一態様は、配向層による配向規制力を向上し、液晶層のリタデーションを大きくする、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光学素子は、曲面に沿って湾曲する位相差板を含む。前記位相差板は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された配向層と、前記配向層の上に形成された液晶層と、を含む。前記配向層の前記液晶層と接する表面には、前記液晶層の液晶分子を配向させる互いに平行な複数の溝が形成されている。前記溝のピッチが、10nm~600nmである。前記配向層は、エネルギー硬化性組成物の共重合体であり、前記表面にフッ素元素を含む。前記位相差板の厚みが最も薄い部位における前記溝の深さが、前記位相差板の厚みが最も厚い部位における前記溝の深さよりも深い。
【0009】
また、本開示の別の一態様に係る光学素子は、曲面に沿って湾曲する位相差板を含む。前記位相差板は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された配向層と、前記配向層の上に形成された液晶層と、を含む。前記配向層の前記液晶層と接する表面には、前記液晶層の液晶分子を配向させる互いに平行な複数の溝が形成されている。前記溝のピッチが、10nm~600nmである。前記配向層は、エネルギー硬化性組成物の共重合体であり、界面活性剤を含む。前記位相差板の厚みが最も薄い部位における前記溝の深さが、前記位相差板の厚みが最も厚い部位における前記溝の深さよりも深い。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、配向層に含まれるフッ素元素又は界面活性剤によって、配向層による配向規制力を向上でき、液晶層のリタデーションを大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る光学素子を示す断面図である。
図2図2(A)は透明基材と配向層の一例を示す斜視図であり、図2(B)は図2(A)に示す配向層によって配向された液晶分子の一例を示す斜視図である。
図3図3(A)は第2実施形態に係る光学素子の位相差板とレンズとを接合する前の状態を示す断面図であり、図3(B)は図3(A)に示す位相差板とレンズとを接合してなる光学素子の断面図であり、図3(C)は図3(B)に示す光学素子の平面図である。
図4図4(A)は第2実施形態の第1変形例に係る光学素子を示す断面図であり、図4(B)は第2実施形態の第2変形例に係る光学素子を示す断面図であり、図4(C)は第2実施形態の第3変形例に係る光学素子を示す断面図である。
図5図5(A)は参考形態に係る光学素子の位相差板とレンズとを接合する前の状態を示す断面図であり、図5(B)は図5(A)に示す位相差板とレンズとを接合してなる光学素子を示す断面図であり、図5(C)は図5(B)に示す光学素子のRdの分布を示す平面図である。
図6図6(A)は参考形態の変形例に係る光学素子の位相差板とレンズとを接合する前の状態を示す断面図であり、図6(B)は図6(A)に示す位相差板とレンズとを接合してなる光学素子を示す断面図であり、図6(C)は図6(B)に示す光学素子のRdの分布を示す平面図である。
図7図7(A)は第3実施形態に係る光学素子の断面図であり、図7(B)は図7(A)の領域Bを拡大して示す断面図であり、図7(C)は図7(A)の領域Cを拡大して示す断面図である。
図8図8(A)は第3実施形態の変形例に係る光学素子の断面図であり、図8(B)は図8(A)の領域Bを拡大して示す断面図であり、図8(C)は図8(A)の領域Cを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る光学素子1について説明する。光学素子1は、位相差板3を含む。位相差板3は、例えば平板状である。位相差板3は、例えば、透明基材4と、透明基材4の上に形成される配向層5と、配向層5の上に形成される液晶層6と、を含む。
【0014】
位相差板3は、遅相軸と進相軸を有する。Z軸方向視で、遅相軸はX軸方向であり、進相軸はY軸方向である。遅相軸は屈折率の最も大きい方向であり、進相軸は屈折率の最も小さい方向である。
【0015】
位相差板3は、例えば1/4波長板である。1/4波長板と、不図示の直線偏光板とが組み合わせて用いられてもよい。直線偏光板の吸収軸と、1/4波長板の遅相軸とは、45°ずらして配置される。直線偏光板と1/4波長板とで、円偏光板が構成される。
【0016】
透明基材4は、例えばガラス基材又は樹脂基材で構成される。ガラス基材又は樹脂基材は、赤外線、可視光、及び紫外線のいずれか1つ、又は2つ以上に対して反射機能又は吸収機能を有し、特定の波長帯の光を透過する構成としてもよい。透明基材4は、単一の基材の単層構造でもよいし、主基材(ガラス基材又は樹脂基材)に反射や吸収機能を付与する膜を積層し特定の波長帯の光を透過させる複数層構造でもよい。また、透明基材4は、反射機能や吸収機能の他に、防汚などの機能を付与する膜を積層してもよい。
【0017】
例えば、透明基材4は、ガラス基材又は樹脂基材の他に、更に樹脂膜又は無機膜を含んでもよい。樹脂膜は、例えば、色調補正フィルタ、シランカップリング剤等の下地膜、又は防汚膜等の機能を有する膜である。樹脂膜は、例えば、スクリーン印刷、蒸着、スプレーコート又はスピンコート法等で形成される。無機膜は、例えば光干渉膜(反射防止や波長選択フィルタ)としての機能を有する金属酸化物膜等である。無機膜は、例えば、スパッタリング法、蒸着、又はCVD法等で形成される。
【0018】
透明基材4は、曲げ加工性の観点から、好ましくは樹脂基材である。樹脂基材の樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリカーボネート(PC)が挙げられる。
【0019】
透明基材4の位相差(リタデーション)は、例えば5nm以下であり、好ましくは3nm以下である。透明基材4の位相差は、色調のバラツキを低減する観点から、小さいほどよく、ゼロであってもよい。透明基材4の位相差は、例えば平行ニコル回転法により測定する。
【0020】
透明基材4のガラス転移点Tgfは、例えば80℃~200℃であり、好ましくは90℃~160℃である。Tgfが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。透明基材4のガラス転移点は、例えば熱機械分析(TMA)により測定される。
【0021】
透明基材4の厚みT1(図2参照)は、例えば0.01mm~0.3mmであり、好ましくは0.02mm~0.1mmであり、より好ましくは0.03mm~0.09mmである。T1が上記範囲内であれば、曲げ加工性と、ハンドリング性とを両立できる。
【0022】
配向層5は、液晶層6の液晶分子を配向させるものである。配向層5の液晶層6と接する表面51には、液晶層6の液晶分子を配向させる互いに平行な複数の溝52が形成されている。複数の溝52は、例えばストライプパターン状に形成される。Z軸方向視で、溝52の長手方向がX軸方向であり、溝52の幅方向がY軸方向である。
【0023】
溝52の平行度は、例えば0°~5°であり、好ましくは0°~3°であり、より好ましくは0°~1°である。溝52の平行度とは、Z軸方向視で、隣り合う2つの溝52のなす角の最大値である。隣り合う2つの溝52のなす角が0°に近いほど、平行度が良い。
【0024】
溝52の深さDは、例えば3nm~500nmであり、好ましくは5nm~300nmであり、より好ましくは10nm~150nmである。Dが3nm以上であれば、配向規制力が大きく、液晶分子が配向されやすい。一方、Dが500nm以下であれば、モールドの凹凸パターンの転写性が良い。また、Dが500nm以下であれば、回折光も発生しにくい。
【0025】
溝52のピッチpは、例えば10nm~600nmであり、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは80nm~200nmである。pが600nm以下であれば、配向規制力が大きく、液晶分子が配向されやすい。また、pが300nm以下であれば、回折光も発生しにくい。一方、pが10nm以上であれば、モールドの凹凸パターンの形成が容易である。
【0026】
溝52の開口幅Wは、例えば5nm~500nmであり、好ましくは20nm~200nmであり、より好ましくは30nm~150nmである。なお、ピッチpと開口幅Wの差(p-W:p>W)が、溝52同士の間隔である。
【0027】
溝52の長手方向(X軸方向)に垂直な断面は、図2では矩形であるが、三角形であってもよい。断面三角形の溝52は、深さが浅くなるほど、幅が広くなる。この場合、インプリント法で使用されるモールドの剥離が容易である。
【0028】
配向層5は、エネルギー硬化性組成物の共重合体である。エネルギー硬化性組成物は、光硬化性組成物、又は熱硬化性組成物である。特に加工性、耐熱性及び耐久性に優れる点から光硬化性組成物が好ましい。光硬化性組成物は、例えば、単量体(モノマー)、光重合開始剤、溶剤、及び必要に応じた添加剤(例えば界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤)を含む組成物である。光硬化性組成物として、例えば特許第5978761号公報の段落0028~0060に記載されているものが使用される。光硬化性組成物は、例えば、フッ素元素を含む含フッ素モノマーと、フッ素元素を含まない光硬化性モノマーとを含む。
【0029】
配向層5は、液晶層6と接する表面51にフッ素元素を含む。フッ素元素は、含フッ素モノマーに由来する。フッ素元素は、配向層5の内部よりも、配向層5の表面51に集まる傾向にある。フッ素元素は、配向層5の表面51の表面自由エネルギーを低下させ、後述する液晶組成物の濡れ性を低下させる。その結果、液晶組成物は、エネルギー的に最も安定な状態、つまり、液晶分子同士が平行に並ぶ状態に導かれる。従って、配向層5による配向規制力を向上でき、液晶層6のリタデーションを大きくできる。
【0030】
配向層5の表面51のフッ素元素濃度FCは、例えば0.1原子%~50原子%であり、好ましくは1原子%~40原子%であり、より好ましくは2原子%~30原子%であり、更に好ましくは5原子%~20原子%である。FCが0.1原子%以上であれば、配向規制力を向上する効果が得られる。一方、FCが50原子%以下であれば、配向層5の白濁を抑制できる。また、FCが50原子%以下であれば、配向層5と透明基材4の密着性、及び配向層5と液晶層6の密着性を向上できる。例えば、配向層5の材質がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であってFCが58原子%である場合に、配向層5に対して液晶組成物L1(実施例の欄参照)をスピンコート法で塗布したところ、液晶組成物L1が配向層5に密着せず剥離してしまった。
【0031】
配向層5は、フッ素元素に代えて、又はフッ素元素に加えて、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、配向層5に均等に分散される。界面活性剤は、例えば、フッ素系又はシリコーン系である。界面活性剤は、フッ素元素と同様に、配向層5の表面51の表面自由エネルギーを低下させ、後述する液晶組成物の濡れ性を低下させる。その結果、液晶組成物は、エネルギー的に最も安定な状態、つまり、液晶分子同士が平行に並ぶ状態に導かれる。従って、配向層5による配向規制力を向上でき、液晶層6のリタデーションを大きくできる。
【0032】
配向層5における界面活性剤の含有量SCは、例えば0.05質量%~4質量%であり、好ましくは0.1質量%~3質量%であり、より好ましくは0.2質量%~2質量%である。SCが0.05質量%以上であれば、配向層5の配向規制力を向上する効果が得られる。一方、SCが4質量%以下であれば、エネルギー硬化性組成物を構成する複数の成分が混ざりやすい。界面活性剤は、モノマーとは異なり、ほとんど重合しない。それゆえ、エネルギー硬化性組成物が溶剤を含まない場合、エネルギー硬化性組成物と配向層5とで、界面活性剤の含有量SCは同程度である。
【0033】
配向層5は、例えばインプリント法で形成される。インプリント法では、透明基材4とモールドの間にエネルギー硬化性組成物を挟み、モールドの凹凸パターンをエネルギー硬化性組成物に転写し、エネルギー硬化性組成物を硬化する。インプリント法を用いれば、溝52の寸法及び形状を精度良く制御でき、異物の混入も軽減できる。
【0034】
エネルギー硬化性組成物は、透明基材4の上に塗布されてもよいし、モールドの上に塗布されてもよい。その塗布方法は、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、又はコンマコート法等である。
【0035】
配向層5の厚みT2(図2参照)は、例えば1nm~20μmであり、好ましくは50nm~10μmであり、より好ましくは100nm~5μmである。配向層5の厚みT2は、透明基材4の配向層5が形成される表面41の各点における法線方向に測定する。配向層5が溝52を有する場合、本明細書において、配向層5の厚みT2とは、溝52の底と透明基材4の表面41との間隔のことである。配向層の厚みが20μm以下であれば加工性が良い。
【0036】
配向層5のガラス転移点Tg_alは、例えば40℃~200℃であり、好ましくは50℃~160℃であり、より好ましくは70℃~150℃である。Tg_alが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。配向層5のガラス転移点は、例えばTMAにより測定される。
【0037】
液晶層6は、遅相軸と進相軸を有する。遅相軸の屈折率neと進相軸の屈折率noとの差Δn(Δn=ne-no)と、液晶層6のZ軸方向寸法dとの積が、リタデーションRdである。つまり、Rdは、Rd=Δn×dの式から求められる。
【0038】
液晶層6は、図2(B)に示すように、配向層5によって互いに平行に配向される複数の液晶分子61を含む。Z軸方向視で、液晶分子61の長軸方向はX軸方向であり、液晶分子61の短軸方向はY軸方向である。液晶分子61は、本実施形態では棒状液晶であるが、ディスコティック液晶であってもよい。
【0039】
液晶層6は、液晶組成物の塗布及び乾燥によって形成される。液晶組成物は、アクリル基又はメタクリル基を含む光硬化性の液晶を含む。液晶組成物は、単独で液晶相を示さない成分を含んでいてもよい。重合によって液晶相が生じればよい。液晶相を示さない成分として、例えば単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートなどが用いられる。液晶組成物は、光硬化性のモノマーを含んでいてもよい。重合性の液晶組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、重合開始剤、界面活性剤、カイラル剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、又は二色性色素など用いられる。複数種類の添加剤が併用されてもよい。
【0040】
液晶組成物の塗布方法は、一般的なものであってよい。液晶組成物の塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、押し出しコート法、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、又はダイコート法等である。液晶組成物の溶剤は、塗布後の加熱によって除去される。
【0041】
液晶組成物の溶剤は、例えば有機溶剤である。有機溶剤は、アルコール(例えばイソプロピルアルコール)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、炭化水素(例えばベンゼン、若しくはヘキサン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、若しくはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、ケトン(例えばアセトン、シクロヘキサノン、若しくはメチルエチルケトン)、又はエーテル(例えばテトラヒドロフラン、若しくは1,2-ジメトキシエタン)である。2種類以上の有機溶剤が併用されてもよい。なお、液晶層6は、溶剤を使用しない蒸着法または真空注入法で形成されてもよい。
【0042】
使用する液晶組成物は、硬化後のΔn値の波長分散が正のものを用いても良いし、負のものを用いても良い。
【0043】
液晶組成物は、重合性の化合物として、例えば下記式(a-1)~(a-13)に示す化合物を含む。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
上記式(a-5)及び(a-8)中、nは2~6の整数である。上記式(a-6)及び(a-7)中、Rは炭素原子数3~6のアルキル基である。上記式(a-11)、(a-12)及び(a-13)中、nは「ノルマル」を意味し、直鎖状であることを意味する。
【0047】
液晶層6の厚みT3(図2参照)は、光の波長と、位相差と、Δn(Δn=ne-no)とに基づいて決められる。例えば、光の波長が543nmであり、位相差が1/4波長である場合、Rdは136nmである。Rdが136nmであってΔnが0.1である場合、液晶層6の厚みT3は1360nmである。
【0048】
液晶層6の厚みT3は、上記の通り、光の波長と、位相差と、Δnとに基づいて決められ、特に限定されないが、例えば0.3μm~30μmであり、好ましくは0.5μm~20μmであり、より好ましくは0.8μm~10μmである。T3が0.3μm以上であれば、目的の位相差が得られやすい。また、T3が30μm以下であれば、液晶分子61が配向しやすい。
【0049】
なお、液晶層6は、1/4波長板には限定されず、1/2波長板等であってもよい。また、液晶層6は、直交する2つの直線偏光成分間の位相をずらす位相差層には限定されず、補償層であってもよい。補償層は、例えば、液晶ディスプレイの異なる視野角で生じる位相差を補正し、所定の視野角内で画面のコントラストを向上させる。
【0050】
液晶層6の厚みT3は、透明基材4の表面41の各点における法線方向に測定する。配向層5が溝52を有する場合、本明細書において、液晶層6の厚みT3とは、溝52の底と液晶層6の配向層5とは反対側の表面との間隔のことである。
【0051】
液晶層6のガラス転移点Tg_aは、例えば50℃~200℃であり、好ましくは80℃~180℃である。Tg_aが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。液晶層6のガラス転移点Tg_aは、例えばTMAで測定される。
【0052】
位相差板3の厚みT4は、特に限定されないが、例えば0.011mm~0.301mmであり、好ましくは0.021mm~0.101mmであり、より好ましくは0.031mm~0.091mmである。位相差板3の厚みT4は、透明基材4の表面41の各点における法線方向に測定する。
【0053】
位相差板3は、図示しないが、液晶層6の上に積層される第2液晶層を更に含む広帯域位相差板であってもよい。広帯域位相差板に含まれる液晶層の数は、2つ以上であればよく、3つ以上であってもよい。Z軸方向視で、複数の液晶層は、互いに異なる方位の遅相軸を有する。位相差板3は、複数の液晶層を含む場合、複数の配向層を含んでもよく、液晶層と配向層の組を繰り返し有してもよい。複数の配向層は、同じ材質を有してもよいし、異なる材質を有してもよい。
【0054】
位相差板3のリタデーションは、特に限定されないが1/4波長板であれば、例えば100nm~180nmであり、好ましくは110nm~170nmであり、より好ましくは120nm~160nmである。位相差板3が1/2波長板の場合のリタデーションは、例えば200nm~280nmであり、好ましくは210nm~270nmであり、より好ましくは220nm~260nmである。
【0055】
(第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態に係る光学素子1について説明する。以下、上記第1実施形態との相違点について主に説明する。光学素子1は、用途によっては、性能の観点から、曲面を有することが望まれる。例えば、光学素子1は、レンズ2を含む。レンズ2は、球面レンズでもよいし、非球面レンズでもよい。また、レンズ2は、両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、平凸レンズ、及び凸メニスカスレンズのいずれでもよい。
【0056】
レンズ2は、曲面21を有する。曲面21は、例えば10mm~100mmの曲率半径を全面又は一部に有する。曲面21の曲率半径は、好ましくは20mm~80mm、より好ましくは50mm~70mmである。曲面21は、例えば、図3(A)及び図3(B)に示すように、凹曲面である。凹曲面は、重心P0が周縁よりも凹む曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凹曲面の重心P0は、凹曲面の周縁よりも凹む。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに垂直である。Z軸方向は、凹曲面の重心P0における法線方向である。XY平面は、凹曲面の重心P0における接平面に対して平行である。
【0057】
なお、曲面21は、本実施形態では凹曲面であるが、図4(B)及び図4(C)に示すように凸曲面であってもよい。凸曲面は、重心P0が周縁よりも凸む(突出する)曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凸曲面の重心P0は、凸曲面の周縁よりも凸む。
【0058】
レンズ2の外形は、図3(C)に示す円形には限定されず、例えば楕円形、又は多角形(四角形を含む)等であってもよい。
【0059】
レンズ2の材質は、樹脂でもよいし、ガラスでもよい。樹脂レンズの樹脂は、例えばポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート、または環状オレフィンである。ガラスレンズのガラスは、例えばBK7、または合成石英である。
【0060】
光学素子1は、位相差板3を含む。位相差板3は、レンズ2の曲面21に沿って湾曲する。位相差板3は、例えば、透明基材4と、透明基材4の上に形成される配向層5と、配向層5の上に形成される液晶層6と、を含む。
【0061】
位相差板3は、例えば1/4波長板である。1/4波長板と、不図示の直線偏光板とが組み合わせて用いられてもよい。直線偏光板は、位相差板3を基準としてレンズ2とは反対側に配置されてもよいし、位相差板3とレンズ2との間に配置されてもよいし、レンズ2を基準として位相差板3とは反対側に配置されてもよい。
【0062】
位相差板3は、例えば、図3(B)に示すようにレンズ2側から、透明基材4と、配向層5と、液晶層6とを、この順番で含む。なお、図4(A)及び図4(C)に示すように、位相差板3は、レンズ2側から、液晶層6と、配向層5と、透明基材4とを、この順番で含んでもよい。
【0063】
透明基材4の厚みT1(図2参照)は、レンズ2の曲面21の各点における法線方向に測定する。溝52の深さD(図2参照)は、レンズ2の曲面21の全体において一定でもよいが、後述するように場所に応じて差を付けてもよい。溝52のピッチpは、レンズ2の曲面21の全体において一定でもよいが、場所に応じて差を付けてもよい。
【0064】
なお、本実施形態の透明基材4はレンズ2とは別に用意され、レンズ2の曲面21の上に設けられるが、透明基材4がレンズ2であってもよい。後者の場合、レンズ2の曲面21の上に直接に配向層5が形成される。
【0065】
位相差板3は、図示しないが、液晶層6の上に積層される第2液晶層を更に含む広帯域位相差板であってもよい。広帯域位相差板に含まれる液晶層の数は、2つ以上であればよく、3つ以上であってもよい。Z軸方向視で、複数の液晶層は、互いに異なる方位の遅相軸を有する。
【0066】
広帯域位相差板は、例えば、配向層5と液晶層6を交互に積層したものである。レンズ2側から、配向層5と液晶層6とがこの順番で積層される。なお、レンズ2とは別の透明基材の上に形成された液晶層と、レンズ2の上に形成された液晶層とを貼り合わせて、広帯域位相差板を形成してもよい。
【0067】
位相差板3は、曲げ加工され、レンズ2と接合される。接合層7は、例えば、透明光学粘着剤(OCA)、液体接着剤(OSA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0068】
接合層7の位相差(リタデーション)は、例えば5nm以下であり、好ましくは3nm以下である。接合層7の位相差は、色調のバラツキを低減する観点から、小さいほどよく、ゼロであってもよい。接合層7の位相差は、例えば平行ニコル回転法により測定する。
【0069】
接合層7のガラス転移点は、例えば-60℃~100℃であり、好ましくは-40℃~50℃である。接合層7のガラス転移点が上記範囲内であれば、曲げ加工性と形状追従性とを両立できる。接合層7のガラス転移点は、例えばTMAにより測定される。
【0070】
接合層7の厚みは、例えば0.001mm~0.1mmであり、好ましくは0.005mm~0.05mmである。接合層7の厚みが上記範囲内であれば、曲げ加工性と形状追従性とを両立できる。接合層7の厚みは、レンズ2の曲面21の各点における法線方向に測定する。
【0071】
位相差板3とレンズ2とは、加熱されながら接合される。加熱温度は、透明基材4のガラス転移点Tgfを基準として設定され、例えば(Tgf-10)℃以上、(Tgf+30)℃以下の範囲内で設定され、好ましくは(Tgf-10)℃以上、(Tgf+20)℃以下の範囲内で設定される。位相差板3とレンズ2の接合は、真空中で実施されてもよい。
【0072】
なお、射出成形用の金型の内部に位相差板3を設置し、位相差板3を曲げ加工した後、レンズ2を射出成形してもよい。インモールド成形によってレンズ2と位相差板3とが一体化される場合、接合層7は不要である。
【0073】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態等に係る光学素子1について説明する。以下、上記第2実施形態との相違点について主に説明する。
【0074】
先ず、図5及び図6を参照して、参考形態に係る光学素子1Aについて説明する。図5(C)及び図6(C)において、Rdの大きさは、グレースケールで表す。色が白色から黒色に近づくほど、光学素子1AのRdの大きさが大きい。
【0075】
参考形態に係る光学素子1Aは、レンズ2Aと、位相差板3Aとを含む。位相差板3Aは、透明基材4Aと、配向層5Aと、液晶層6Aとを含む。レンズ2Aと位相差板3Aとは、例えば接合層7Aを介して接合される。
【0076】
位相差板3Aの曲げ加工時に、位相差板3Aの周縁と中央とで、位相差板3Aの伸び率が異なっている。その結果、位相差板3Aの厚み及び液晶層6Aの厚みが、同心円状に変化してしまう。それゆえ、Rdが同心円状にシフトしてしまい、色調が同心円状にシフトしてしまう。なお、伸び率(%)は、曲げ加工前の寸法をA1とし、曲げ加工後の寸法をA2とすると、「(A2-A1)/A1×100」の式から求められる。
【0077】
例えば、図5(A)に示すようにレンズ2Aの曲面21Aが凹曲面である場合、図5(B)に示すように位相差板3Aが曲げ加工されると、位相差板3Aの周縁から中央にかけて位相差板3Aの厚みが連続的に薄くなってしまう。これは、位相差板3Aの周縁と中央とで曲面21Aに接触するタイミングが異なり、位相差板3Aの中央が周縁よりも後で曲面21Aに接触するからである。
【0078】
従って、図5(B)に示すように、液晶層6Aの周縁から中央にかけて液晶層6Aの厚みが連続的に薄くなってしまう。その結果、液晶層6Aの周縁から中央にかけて、図5(C)に示すようにRdが連続的に小さくなってしまう。従って、色調が同心円状にシフトしてしまう。
【0079】
また、図6(A)に示すようにレンズ2Aの曲面21Aが凸曲面である場合、図6(B)に示すように位相差板3Aが曲げ加工されると、位相差板3Aの中央から周縁にかけて位相差板3Aの厚みが連続的に薄くなってしまう。これは、位相差板3Aの周縁と中央とで曲面21Aに接触するタイミングが異なり、位相差板3Aの周縁が中央よりも後で曲面21Aに接触するからである。
【0080】
従って、図6(B)に示すように、液晶層6Aの中央から周縁にかけて液晶層6Aの厚みが連続的に薄くなってしまう。その結果、液晶層6Aの中央から周縁にかけて、図6(C)に示すようにRdが連続的に小さくなってしまう。従って、色調が同心円状にシフトしてしまう。
【0081】
本実施形態に係る光学素子1は、図7及び図8に示すように、レンズ2と、位相差板3とを含む。位相差板3は、透明基材4と、配向層5と、液晶層6とを含む。レンズ2と位相差板3とは、例えば接合層7を介して接合される。配向層5は、液晶層6と接触する面に、互いに平行な複数の溝52を有する。
【0082】
位相差板3の曲げ加工時に、位相差板3の周縁と中央とで、位相差板3の伸び率が異なっている。その結果、上記参考形態と同様に、位相差板3の曲げ加工後に、位相差板3の周縁と中央とで、位相差板3の厚みT4及び液晶層6の厚みT3が異なる。
【0083】
例えば、図7(A)に示すようにレンズ2の曲面21が凹曲面である場合、上記参考形態でも説明したように、位相差板3が曲げ加工されると、位相差板3の周縁から中央にかけて位相差板3の厚みT4及び液晶層6の厚みT3が連続的に薄くなる。
【0084】
レンズ2の曲面21が凹曲面である場合、位相差板3の伸び率は下記の通りである。位相差板3の周縁での位相差板3の伸び率は、例えば0.1%~20%であり、好ましくは1%~15%である。また、位相差板3の中央での位相差板3の伸び率は、例えば0.5%~40%であり、好ましくは1%~20%である。
【0085】
また、図8(A)に示すようにレンズ2の曲面21が凸曲面である場合、上記参考形態でも説明したように、位相差板3が曲げ加工されると、位相差板3の中央から周縁にかけて位相差板3の厚みT4及び液晶層6の厚みT3が連続的に薄くなる。
【0086】
レンズ2の曲面21が凸曲面である場合、位相差板3の伸び率は下記の通りである。位相差板3の中央での位相差板3の伸び率は、例えば0.1%~20%であり、好ましくは1%~15%である。また、位相差板3の周縁での位相差板3の伸び率は、例えば0.5%~40%であり、好ましくは1%~20%である。
【0087】
そこで、本実施形態等の光学素子1では、位相差板3の厚みT4が最も薄い部位における溝52の深さDが、位相差板3の厚みT4が最も厚い部位における溝52の深さDよりも深い。溝52の深さDは、例えばインプリント法で使用されるモールドの凹凸パターンで調整される。また、溝52の深さDは、配向層5の表面51を部分的にアッシングすることでも調整できる。
【0088】
溝52の深さDが深いほど、配向規制力が大きく、Δnが大きい。Δnの増大によるRdの増大で、dの減少によるRdの減少を打ち消すことができ、Rdのバラツキを抑制できる。
【0089】
例えば、図7(A)に示すようにレンズ2の曲面21が凹曲面である場合、図7(B)と図7(C)を比較すれば明らかなように、位相差板3の中央における溝52の深さDが、位相差板3の周縁における溝52の深さDよりも深い。位相差板3の周縁から中央にかけて、溝52の深さDが連続的又は段階的に深くなる。従って、Rdが同心円状にシフトするのを抑制でき、色調が同心円状にシフトするのを抑制できる。
【0090】
また、図8(A)に示すようにレンズ2の曲面21が凸曲面である場合、図8(B)と図8(C)を比較すれば明らかなように、位相差板3の周縁における溝52の深さDが、位相差板3の中央における溝52の深さDよりも深い。位相差板3の中央から周縁にかけて、溝52の深さDが連続的又は段階的に深くなる。従って、Rdが同心円状にシフトするのを抑制でき、色調が同心円状にシフトするのを抑制できる。
【実施例
【0091】
以下、実験データについて説明する。
【0092】
<材料>
材料は、下記の通りであった。
単量体B1:AGC社製品名「C6FMA」ペルフルオロヘキシルエチルメタクリレート単量体B2:新中村化学工業社製品名「NKエステル A-DCP」、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート
単量体B3:新中村化学工業社製品名「NKエステル A-HD-N」、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
単量体B4:新中村化学工業社製品名「DPHA」
界面活性剤C1:AGCセイミケミカル社製品名「サーフロンS-651」
界面活性剤C2:ネオス社製品名「フタージェント710FL」
界面活性剤C3:BYK社製品名「BYK327」
液晶D1:BASF社製品名「LC242」
光重合開始剤E1:チバスペシャリティーケミカルズ社製品名「IRGACURE907」溶剤F1:メチルエチルケトン
透明基材G1:TACフィルム(富士フイルム社製ZRD40SL 厚み40μm)。
【0093】
<光硬化性組成物A1~A13>
光硬化性組成物A1~A13は、表1に示す配合量で調製した。
【0094】
【表1】
光硬化性組成物A1~A13は、いずれも、溶剤を含まない無溶剤型であった。光硬化性組成物A12及びA13は、白濁しており、光を通しにくいので、配向層として不適切であった。
【0095】
<液晶組成物L1>
100gの液晶D1と、3.0gの光重合開始剤E1とを混合し、得られた混合物を固形分濃度25質量%となるように溶剤F1で希釈し、液晶組成物L1を得た。
【0096】
<液晶組成物L2>
100gの液晶D1と、0.4gの界面活性剤C1と、3.0gの光重合開始剤E1とを混合し、得られた混合物を固形分濃度25質量%となるように溶剤F1で希釈し、液晶組成物L2を得た。
【0097】
<モールドM1~M7>
モールドM1~M7は、下記の通りであった。
モールドM1:フォトリソグラフィー法によりシリコンウェハー上に溝のピッチ90nm、溝の深さ130nmの凹凸パターンを作製したもの
モールドM2:フォトリソグラフィー法によりシリコンウェハー上に溝のピッチ140nm、溝の深さ130nmの凹凸パターンを作製したもの
モールドM3:エドモンド社製ホログラフィー回折格子3600GPM VIS 50mm
モールドM4:エドモンド社製ホログラフィー回折格子2400GPM VIS 50mm
モールドM5:エドモンド社製ホログラフィー回折格子1800GPM VIS 50mm
モールドM6:エドモンド社製ホログラフィー回折格子1200GPM VIS 50mm
モールドM7:エドモンド社製ブレーズド回折格子900GPM 500nm 25mm。
【0098】
<モールドM8>
モールドM8は、下記の手順で作製した。先ず、モールドM1とPETフィルム(東洋紡社製コスモシャインA4300、厚み250μm)との間に光硬化性組成物A1を挟み、その間隙を5μmに維持した状態で、PETフィルムを介して光硬化性組成物A1に1000mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化性組成物A1を硬化させた。その後、モールドM1を剥離することにより、モールドM1-2を作製した。モールドM1-2の凹凸パターンは、モールドM1の凹凸パターンを反転したものであった。
【0099】
モールドM1-2を真空化において酸素200ml/min、出力400Wで5分アッシングした。その後、モールドM1-2とPETフィルム(東洋紡社製コスモシャインA4300、厚み250μm)との間に光硬化性組成物A1を挟み、その間隙を5μmに維持した状態で、PETフィルムを介して光硬化性組成物A1に1000mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化性組成物A1を硬化させた。その後、モールドM1-2を剥離することにより、モールドM8を作製した。モールドM8の凹凸パターンは、モールドM1-2の凹凸パターンを反転したものであった。モールドM8の溝の深さは25nmであった。
【0100】
<モールドM9>
モールドM9は、モールドM1の代わりにモールドM2を使用し、アッシングの時間を8分としたこと以外はモールドM8と同様に作製した。モールドM9の溝の深さは40nmであった。
【0101】
<モールドM10>
モールドM10は、モールドM1の代わりにモールドM2を使用し、アッシングの時間を12分としたこと以外はモールドM8と同様に作製した。モールドM10の溝の深さは15nmであった。
【0102】
<光学素子>
下記の例1~例49では、上記の光硬化性組成物A1~A11と、上記のモールドM1~M10と、上記の液晶組成物L1~L2を用いて光学素子を作製した。下記の例2~12、14、16、18、24、26、28、30、32、34、36、38~39、41、43、45~46及び48が実施例であり、下記の例1、13、15、17、19~23、25、27、29、31、33、35、37、40、42、44、47及び49が比較例である。
【0103】
(例1)
配向層は、下記の手順で作製した。先ず、モールドM2と透明基材G1との間に光硬化性組成物A1を挟み、その間隙を5μmに維持した状態で、透明基材G1を介して光硬化性組成物A1に1000mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化性組成物A1を硬化させた。その後、モールドM2を剥離することにより、凹凸が形成された配向層と透明基材G1とからなる積層体を作製した。
【0104】
液晶層は、下記の手順で作製した。先ず、配向層の凹凸の形成された表面に、上記の液晶組成物L1をスピンコート法により塗布し、90℃にて5分乾燥させ、厚み1μmの液膜を形成した。窒素雰囲気下において1000mJ/cmの紫外線を液膜に照射し、液晶組成物L1を硬化させた。これにより、液晶層と配向層と透明基材とを含む光学素子を得た。
【0105】
(例2)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A2を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0106】
(例3)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A3を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0107】
(例4)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A4を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0108】
(例5)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0109】
(例6)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A6を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0110】
(例7)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A7を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0111】
(例8)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A8を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0112】
(例9)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0113】
(例10)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0114】
(例11)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A11を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0115】
(例12)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0116】
(例13)
モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0117】
(例14)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM3を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0118】
(例15)
モールドM2の代わりにモールドM3を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0119】
(例16)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM4を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0120】
(例17)
モールドM2の代わりにモールドM4を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0121】
(例18)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0122】
(例19)
モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0123】
(例20)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM6を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0124】
(例21)
モールドM2の代わりにモールドM6を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0125】
(例22)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM7を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0126】
(例23)
モールドM2の代わりにモールドM7を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0127】
(例24)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM8を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0128】
(例25)
モールドM2の代わりにモールドM8を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0129】
(例26)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM9を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0130】
(例27)
モールドM2の代わりにモールドM9を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0131】
(例28)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、モールドM2の代わりにモールドM10を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0132】
(例29)
モールドM2の代わりにモールドM10を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0133】
(例30)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0134】
(例31)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0135】
(例32)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0136】
(例33)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0137】
(例34)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0138】
(例35)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0139】
(例36)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0140】
(例37)
液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0141】
(例38)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0142】
(例39)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0143】
(例40)
液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0144】
(例41)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0145】
(例42)
液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0146】
(例43)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0147】
(例44)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM1を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0148】
(例45)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A10を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0149】
(例46)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0150】
(例47)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとした以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0151】
(例48)
光硬化性組成物A1の代わりに光硬化性組成物A9を使用し、液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0152】
(例49)
液晶組成物L1の代わりに液晶組成物L2を使用し、液晶層の厚みT3を2μmとし、モールドM2の代わりにモールドM5を使用した以外、例1と同様に光学素子を作製した。
【0153】
<配向層の溝の深さDとピッチp>
例1~49で作製した配向層の溝の深さDとピッチpは、断面SEM観察により測定した。より詳細には、Dとpは、それぞれ、5点で測定し、その平均値として求めた。
【0154】
<配向層の表面のフッ素元素濃度FC>
配向層の表面のフッ素元素濃度FCは、X線光電子分光法(XPS)により測定した。XPSにおける検出深さは約5nmと非常に浅いので、XPSの測定値をFCとして採用した。XPSの測定条件は、下記の通りであった。
使用機器:サーモフィッシャー社製 K-Alpha
分析サイズ;Φ0.4mm
取込領域
Survey scan;0eV~1350eV
Narrow scan;F1s,C1s,O1s,N1s
Pass energy
Survey scan;1eV
Narrow scan;0.1eV。
【0155】
<光学素子のリタデーション>
例1~49で作製した光学素子のリタデーションRdは、大塚電子社製Photalを用いて測定した。なお、Rdは、波長589nmの光のリタデーションである。面内をランダムに5点測定した平均値を測定値とした。
【0156】
<回折光の有無>
例1~49で作成した光学素子の回折光の有無は、光学素子の透明基材側から白色LED光を照射し液晶層側から観察して、確認した。
【0157】
<まとめ>
表2に、例1~11の評価結果を示す。なお、表2において、「〇」はリタデーションRdの改善効果が認められたことを意味し、「×」はリタデーションRdの改善効果が認められなかったことを意味する。表3~7において、「〇」、「×」は同じ意味である。
【0158】
【表2】
表2から明らかなように、例2~12では、例1とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤の少なくとも一方を含んでいたので、例1に比べて、Rdを大きくできた。また、例1~12では、溝のピッチpが300nm以下であったので、回折光が発生しなかった。
【0159】
表3に、例1、9及び12~23の評価結果を示す。
【0160】
【表3】
表3から明らかなように、例12、9、14、16及び18では、例13、1、15、17及び19とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたので、例13、1、15、17及び19に比べて、Rdを大きくできた。但し、例20及び22では、例21及び23とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたが、例21及び23に比べて、Rdを大きくできなかった。表3から、溝のピッチpが600nmよりも大きければ、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたとしても、Rdの改善効果が得られないことが分かる。また、例1、9及び12~15では、例16~23とは異なり、溝のピッチpが300nm以下であったので、回折光が発生しなかった。
【0161】
表4に、例24~29の評価結果を示す。
【0162】
【表4】
表4から明らかなように、例24、26及び28では、例25、27及び29とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたので、例25、27及び29に比べて、Rdを大きくできた。表4から、溝の深さDが3nm以上であれば、配向層がフッ素元素及び界面活性剤の少なくとも一方を含む効果が得られることが分かる。
【0163】
表5に、例30~35の評価結果を示す。
【0164】
【表5】
表5から明らかなように、例30、32及び34では、例31、33及び35とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたので、例31、33及び35に比べて、Rdを大きくできた。また、例32では、例10とは異なり、液晶組成物として界面活性剤を含むもの(液晶組成物L2)を用いたので、液晶組成物L1を用いた例10に比べて、Rdを大きくできた。なお、液晶組成物が界面活性剤を含む場合、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含むか否かで生じるRdの差が小さくなることが分かる(例1、10、32及び33参照。)
【0165】
表6に、例36~42の評価結果を示す。
【0166】
【表6】
表6から明らかなように、例36、38~39及び41では、例37、40及び42とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたので、例37、40及び42に比べて、Rdを大きくできた。また、例36、39及び41では、例12、9及び19に比べて液晶層の厚みT3が2倍であったが、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含む効果が得られた。
【0167】
表7に、例43~49の評価結果を示す。
【0168】
【表7】
表7から明らかなように、例43、45~46及び48では、例44、47及び49とは異なり、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含んでいたので、例44、47及び49に比べて、Rdを大きくできた。また、例45では、例32に比べて液晶層の厚みT3が2倍であったが、配向層がフッ素元素及び界面活性剤を含む効果が得られた。また、例43、45~46及び48では、例36、38~39及び41とは異なり、液晶組成物として界面活性剤を含むもの(液晶組成物L2)を用いたので、液晶組成物L1を用いた例36、38~39及び41に比べて、Rdを大きくできた。
【0169】
以上、本開示に係る光学素子について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0170】
本出願は、2020年8月7日に日本国特許庁に出願した特願2020-135092号、及び2020年10月28日に日本国特許庁に出願した特願2020-180362号に基づく優先権を主張するものであり、特願2020-135092号及び特願2020-180362号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0171】
1 光学素子
2 レンズ
3 位相差板
4 透明基材
5 配向層
6 液晶層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8