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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024051268
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】522485073
【氏名又は名称】株式会社Premo
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 周太
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀典
(72)【発明者】
【氏名】入江 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】門本 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 修一
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/053438(WO,A1)
【文献】特開2013-165383(JP,A)
【文献】特開2021-087044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置であって、
第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、
前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加手段であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加手段と、
を備える、第1の通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンの前記第1の信号部分には、異なるビットパターンが符号化される、
第1の通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンは第2の信号部分を含み、
前記第2の信号部分は、当該第2の信号部分を含む電圧パターンの前記第1の信号部分に符号化されるビットパターンを識別する識別情報を含む、
第1の通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の第1の通信装置であって、
所定の初期値に基づいて複数のビットパターンを疑似ランダムに生成する生成手段を更に備え、
各電圧パターンの前記第1の信号部分には、前記複数のビットパターンのうちの異なる1つが符号化され、
前記所定の初期値は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間で共有される、
第1の通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
前記第1の信号部分は、伝送路符号に対応するパルス列を含み、
前記複数の電圧パターンに対応する複数のパルス列のうちの少なくとも1つについて、前記第2の通信装置におけるサンプリングタイミングを含まない部分的な期間が、前記伝送路符号に対応する電圧から反転した電圧を持つ、
第1の通信装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンの前記第1の信号部分は、異なる伝送路符号に対応する、
第1の通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンは第2の信号部分を含み、
前記第2の信号部分は、当該第2の信号部分を含む電圧パターンの前記第1の信号部分に対応する伝送路符号を識別する識別情報を含む、
第1の通信装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
前記複数の電圧パターンのうちの第1の電圧パターンの前記第1の信号部分に対応する、前記第2の通信装置において検出されたビットエラーの数に基づく評価値を、前記通信回路を介して受信する受信手段と、
前記評価値に基づいて、前記第1の電圧パターンよりも後に前記第1のコイルに印加される第2の電圧パターンの前記第1の信号部分の長さを制御する制御手段と、
を更に備える、第1の通信装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンは、予め定められたフォーマットを持つフレームを構成する複数の信号部分を含み、
各電圧パターンの前記第1の信号部分は、前記複数の信号部分のうちの1つである、
第1の通信装置。
【請求項10】
第2の通信装置であって、
第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得手段であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得手段と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出手段と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定手段と、
を備える、第2の通信装置。
【請求項11】
請求項10に記載の第2の通信装置であって、
各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分には、異なるビットパターンが符号化され、
各送信電圧パターンは第2の送信信号部分を含み、
前記第2の送信信号部分は、当該第2の送信信号部分を含む送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分に符号化されるビットパターンを識別する識別情報を含み、
前記検出手段は、各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する前記第1の受信信号部分から取得されるビットパターンと、前記第2の送信信号部分に対応する第2の受信信号部分から取得される識別情報により識別されるビットパターンとを比較することにより、前記ビットエラーの数を検出する、
第2の通信装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の第2の通信装置であって、
各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は、異なる伝送路符号に対応し、
各送信電圧パターンは第2の送信信号部分を含み、
前記第2の送信信号部分は、当該第2の送信信号部分を含む送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分に対応する伝送路符号を識別する識別情報を含み、
前記検出手段は、各受信電圧パターンについて、前記第2の送信信号部分に対応する第2の受信信号部分から取得される識別情報により識別される伝送路符号に基づいて、前記第1の送信信号部分に対応する前記第1の受信信号部分をデコードする、
第2の通信装置。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の第2の通信装置であって、
前記判定手段は、前記複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づく合成評価値をL個の閾値と比較することにより前記位置関係に関する判定を行い、
Lは1以上の整数である、
第2の通信装置。
【請求項14】
請求項13に記載の第2の通信装置であって、
Lは2以上の整数である、
第2の通信装置。
【請求項15】
請求項13に記載の第2の通信装置であって、
前記L個の閾値の各々は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の個別の位置関係に関連付けられている、
第2の通信装置。
【請求項16】
請求項13に記載の第2の通信装置であって、
各送信電圧パターンは、予め定められたフォーマットを持つフレームを構成する複数の送信信号部分を含み、
各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は、前記複数の送信信号部分のうちの1つである、
第2の通信装置。
【請求項17】
第1の通信装置が実行する制御方法であって、
前記第1の通信装置は、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記制御方法は、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加工程であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加工程を備える、
制御方法。
【請求項18】
第2の通信装置が実行する制御方法であって、
前記第2の通信装置は、第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記制御方法は、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得工程であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得工程と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出工程と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定工程と、
を備える、制御方法。
【請求項19】
第1の通信装置のプロセッサが実行するためのプログラムであって、
前記第1の通信装置は、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記プログラムは、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加工程であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加工程を実行させる、
プログラム。
【請求項20】
第2の通信装置のプロセッサが実行するためのプログラムであって、
前記第2の通信装置は、第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記プログラムは、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得工程であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得工程と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出工程と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定工程と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の半導体チップ間でコイルを用いた無線通信を行う技術が知られており、例えば、特許文献1には、水平方向に集積された複数の半導体チップ間で短距離の無線通信により情報のやり取りを行う情報処理装置が提案されている。
【0003】
また、疑似ランダム信号(Pseudo Random Bit Sequence(PRBS))を生成する技術が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-87044号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】碓井有三,“PRBS(疑似ランダム信号)”,[online],2017年8月28日,株式会社マクニカ,[2024年1月18日検索],インターネット <URL:https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/basic/124741/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外部からの力などが原因で、半導体チップ間の位置関係(距離又は角度など)が変化する場合がある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、半導体チップなどの通信装置間の位置関係に関する判定を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の通信装置であって、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加手段であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加手段と、を備える、第1の通信装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体チップなどの通信装置間の位置関係に関する判定を支援することが可能となる。
【0010】
なお、本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面及び以下の発明を実施するための形態における記載によって更に明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】複数の通信装置により構成される通信システムの概念図。
図2】半導体チップ1の他の構成例を示す図。
図3】送信コイル30と受信コイル40との間の結合を等価回路で説明する図。
図4】受信コイル40におけるバイアス電圧の概念図。
図5】コイル間の誘導結合を利用する無線通信を説明する図。
図6】半導体チップ1がデータの送受信に用いるフレームのフォーマットの例を示す図。
図7】評価用フレームのフォーマットの例を示す図。
図8】複数の評価用信号(ビットパターン)を管理する評価用信号テーブルの例を示す図。
図9】評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャート。
図10】評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理のフローチャート。
図11】センシング処理のうちの位置関係判定処理のフローチャート。
図12】電圧パターンの一部を反転させる方法を説明する図。
図13】評価用信号における電圧の反転ルールを管理する反転ルールテーブルの例を示す図。
図14】電圧パターンの一部を反転させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャート。
図15】電圧パターンの一部を反転させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理のフローチャート。
図16】Return to Zero(RZ)、Non Return to Zero Inversion(NRZI)、及びマンチェスタ符号を説明する図。
図17】複数の伝送路符号を管理する伝送路符号テーブルの例を示す図。
図18】評価用信号の伝送路符号を変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャート。
図19】評価用信号の伝送路符号を変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理のフローチャート。
図20】(a)評価用信号IDのための領域を含む評価用フレームの例を示す図、(b)評価用フレームのフォーマットの他の例を示す図。
図21】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図22】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図23】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図24】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図25】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図26】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図27】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図28】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図29】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図30】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図31】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図32】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図33】位置関係に関する判定の様々な具体例を説明する図。
図34】半導体チップ1の機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<通信システムの構成>
図1は、複数の通信装置により構成される通信システムの概念図である。図1の例では、通信装置は半導体チップである。図1には2つの半導体チップ(半導体チップ1a,1b)が示されているが、通信システムが含む半導体チップの数は特に限定されず、3以上の半導体チップが通信システムに含まれていてもよい。
【0014】
以下の説明において、各半導体チップを厳密に区別する必要がない場合には、通信システムに含まれる半導体チップの総称として、「半導体チップ1」という表記を用いる。この場合、図1に示す半導体チップ1の各構成要素についても、例えば「プロセッサ10」のように、参照符号からアルファベットを除いた表記を総称として用いる。この点は、後述する図2においても同様である。
【0015】
半導体チップ1は、プロセッサ10と、プロセッサ10内に設けられたメモリ20と、送信コイル30と、受信コイル40と、送信側変換回路50と、受信側変換回路60とを備える。半導体チップ1は、不図示の給電装置から供給される電力で動作する。
【0016】
プロセッサ10は、例えばCPUであり、プログラムを実行することにより様々な処理を行う。メモリ20は、プロセッサ10が実行するプログラムや、プロセッサが使用する様々な情報などを記憶する。
【0017】
なお、プロセッサ10は、CPUに加えて、特定の用途の信号処理を行うように構成された論理回路ブロックを含んでいてもよい。この場合、以下でプロセッサ10が実行するものとして説明される処理の一部又は全部は、論理回路ブロックにより実行されてもよい。
【0018】
送信側変換回路50は、送信コイル30と他の半導体チップ1の受信コイル40との間の誘導結合を利用する無線通信により、プロセッサ10から出力されたデータを他の半導体チップ1へ送信する。受信側変換回路60は、受信コイル40と他の半導体チップ1との間の誘導結合を利用する無線通信により、他の半導体チップ1からデータを受信する。なお、「誘導結合」と同じ意味を持つ用語として、「近接場誘導結合」、「近接場磁界結合」、「磁界結合」、「電磁誘導」、又は「磁界共振」が用いられる場合もある。
【0019】
なお、図1の例では、半導体チップ1は送信用のコイル(送信コイル30)と受信用のコイル(受信コイル40)とを別々に備えているが、図2に示すように、1つのコイルを送受信に兼用する構成を採用してもよい。
【0020】
図2に示す通信システムでは、半導体チップ1は、送信コイル30及び受信コイル40の代わりに、送受信に兼用されるコイル35を備える。また、半導体チップ1は、送信側変換回路50及び受信側変換回路60の代わりに、送信側変換回路50及び受信側変換回路60の機能を兼ね備える変換回路55を備える。図2の半導体チップ1がデータを送信する場合、変換回路55及びコイル35は、図1の半導体チップ1の送信側変換回路50及び送信コイル30と同様の役割を果たす。図2の半導体チップ1がデータを受信する場合、変換回路55及びコイル35は、図1の半導体チップ1の受信側変換回路60及び受信コイル40と同様の役割を果たす。
【0021】
以下では、特に断らない限り、半導体チップ1が図1に示す構成を持つものとして説明を行う。しかし、以下の説明は、半導体チップ1が図2に示す構成を持つ場合に対しても同様に当てはまる。この場合、送信側変換回路50及び送信コイル30に関する以下の説明は、送信側の半導体チップ1の変換回路55及びコイル35に関する説明に相当する。また、受信側変換回路60及び受信コイル40に関する以下の説明は、受信側の半導体チップ1の変換回路55及びコイル35に関する説明に相当する。
【0022】
<送信コイル30及び受信コイル40の等価回路>
図3は、送信コイル30と受信コイル40との間の結合を等価回路で説明する図である。送信コイル30は、インダクタLtx、2つの抵抗Rtx、及びキャパシタCtxを含む等価回路で表される。受信コイル40は、インダクタLrx、2つの抵抗Rrx、及びキャパシタCrxを含む等価回路で表される。
【0023】
受信コイル40の等価回路において、インダクタLrxの中点にはバイアス電圧VBが印加されている。これは例えば、図4に示すように二巻のコイルの中点であるPort2にバイアス電圧VBを印加することにより実現される。
【0024】
特定の半導体チップ1の送信コイル30は、近接する他の半導体チップ1の受信コイル40と結合する。加えて、特定の半導体チップ1の送信コイル30は、同じ半導体チップ1の受信コイル40とも結合する。従って、例えば、図1に示す半導体チップ1aの送信コイル30aは、半導体チップ1bの受信コイル40bと結合すると共に、半導体チップ1aの受信コイル40aとも結合する。任意の送信コイル30と受信コイル40との間の結合を図3の等価回路で表現することができるが、結合係数は、送信コイル30と受信コイル40の位置関係(距離又は角度など)に応じて変化する。
【0025】
なお、図2に示すように半導体チップ1がコイルを1つしか持たない場合には、同じ半導体チップ内での2つのコイル間の結合は生じないが、近接する2つの半導体チップ1のコイル同士の結合は、図1の場合と同様に生じる。
【0026】
図1の通信システムでは、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間でコイルが結合するように、半導体チップ1aと半導体チップ1bとが近接して配置されている。
【0027】
半導体チップ1のメモリ20には、通信システムに含まれる各半導体チップ1の識別情報(ID)と、通信システムにおける半導体チップ1間の結合関係を示す情報(結合関係情報)とが予め格納される。従って、半導体チップ1は、結合関係情報を参照することにより、通信システムにおいて誘導結合により直接通信可能な他の半導体チップ1を識別することができる。例えば、図1の通信システムにおいて、半導体チップ1aは、メモリ20aに格納された結合関係情報を参照することにより、半導体チップ1aと直接通信可能な他の半導体チップ1として、半導体チップ1bを識別することができる。
【0028】
<コイル間の誘導結合を利用する無線通信>
図1の通信システムにおいて半導体チップ1aが半導体チップ1bへデータを送信する場合を例に、コイル間の誘導結合を利用する無線通信について説明する。この場合、図3の送信側変換回路50及び送信コイル30はそれぞれ、半導体チップ1aの送信側変換回路50a及び送信コイル30aに対応する。また、図3の受信側変換回路60及び受信コイル40はそれぞれ、半導体チップ1bの受信側変換回路60b及び受信コイル40bに対応する。
【0029】
プロセッサ10aは、送信するデータを表すビット列を、HighとLowの2値の電圧で表されるデジタル信号(パルス列)として、送信側変換回路50aへ出力する。送信側変換回路50aは、プロセッサ10aから出力されたパルス列に対して、電圧の変換及びパルス波形の整形などを含む波形変換処理を行うことにより、Txdata及び
を生成する。以下の説明では、
を「Txdata(バー)」と表記する場合もある。
【0030】
図5(a)は、Txdataの例を示す図であり、図5(b)は、Txdata(バー)の例を示す図である。Txdataは、プロセッサ10aから出力されたパルス列と同じパルス波形を持つ。Txdata(バー)は、TxdataのHighとLowを反転させたパルス波形を持つ。なお、以下の説明では、プロセッサ10aから出力されたパルス列におけるHighの電圧と、TxdataにおけるHighの電圧は、いずれも1.2Vであるものとする。しかし、プロセッサ10aから出力されたパルス列におけるHighの電圧と、TxdataにおけるHighの電圧は、異なっていてもよい。
【0031】
送信側変換回路50aは、Txdata及びTxdata(バー)に対応する電圧を、送信コイル30aに印加する。図3の例では、送信コイル30aの上側のポートにTxdataが印加され、下側のポートにTxdata(バー)が印加されるように、送信側変換回路50aと送信コイル30aが接続されている。TxdataがHigh、Txdata(バー)がLowの場合、送信コイル30aの電流Itxは、図3のインダクタLtxの上側から下側の方向に流れる。この場合の電流は、図5(c)においてItxの値が5.0mAになっている期間に対応する。一方、TxdataがLow、Txdata(バー)がHighの場合、送信コイル30aの電流Itxは、図3のインダクタLtxの下側から上側の方向に流れる。この場合の電流は、図5(c)においてItxの値が-5.0mAになっている期間(TxdataがHigh、Txdata(バー)がLowの場合と比べて極性が反転している期間)に対応する。
【0032】
送信コイル30aに電流Itxが流れると、受信コイル40bには、電流Itxの遷移に応じた電圧が誘起される。誘起される電圧の極性は、Txdataの遷移がLowからHighであるか、又はHighからLowであるかによって異なる。
【0033】
図5(d)及び図5(e)は、受信コイル40bに誘起される電圧の波形の例を示す図である。図5(d)に示すVrx1は、受信コイル40bの上側のポートで観測される電圧であり、図5(e)に示すVrx2は、受信コイル40bの下側のポートで観測される電圧である。Vrx1は、バイアス電圧VBを中心として、送信コイル30aの電流Itxの波形の立ち上がりに対応する誘起電圧により正方向に変動し、電流Itxの波形の立ち下がりに対応する誘起電圧により負方向に変動する。Vrx2は、送信コイル30aの電流Itxの波形の立ち上がり及び立ち下がりに応じて、Vrx1と反対の方向に変動する。Vrx1及びVrx2の振幅は、電流Itxの大きさ、及び、送信コイル30aと受信コイル40bとの間の結合係数に比例する。
【0034】
受信コイル40bの電圧Vrx1及びVrx2は、受信側変換回路60bに入力される。受信側変換回路60bとして、例えば、ヒステリシスコンパレータを用いることができる。受信側変換回路60bは、電圧Vrx1及びVrx2に基づいて、図5(f)に示すHighとLowの2値で表されるパルス列(Rxdata)を生成する。受信側変換回路60bにより生成されるパルス列は、プロセッサ10aが出力したパルス列に対応する波形を持つ。受信側変換回路60bは、生成したパルス列をプロセッサ10bに入力する。このように、プロセッサ10bは、受信側変換回路60bを介して受信された受信信号として、プロセッサ10aが出力したパルス列(送信信号)に対応するパルス列(Rxdata)を取得することができる。
【0035】
プロセッサ10bは、受信側変換回路60bから入力されたパルス列を、所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、1(High)又は0(Low)で表される2値信号列(ビット列)へとデコードすることができる。図5の例では、サンプリング周波数は1GHz(従って、サンプリング周期は1ナノ秒(ns))であり、「01101」というビット列が取得される。
【0036】
このように、半導体チップ1aと半導体チップ1bとは、コイル間の誘導結合を利用する無線通信により、データの送受信を行うことができる。
【0037】
<データ送受信用のフレームのフォーマット>
半導体チップ1間のデータの送受信では、予め定められたフォーマットを持つフレームを用いることができる。図6は、半導体チップ1がデータの送受信に用いるフレームのフォーマットの例を示す図である。図6の例では、フレームは、プリンアンブル信号と、フレーム制御信号と、フレーム長信号と、宛先ID信号と、送信元ID信号と、データ信号と、フレーム検査信号とを含むフォーマットを持つ。
【0038】
プリアンブル信号は、フレームの存在を示す予め定められた信号列(例えば、「101101」のような特定のパターンのビット列)で構成される。半導体チップ1のプロセッサ10は、プリアンブル信号の存在を検出することにより、他の半導体チップ1がフレームを送信していることを検出することができる。
【0039】
フレーム制御信号は、フレームの種別を示す信号である。フレームの種別として、「情報フレーム」、「制御フレーム」、「管理フレーム」、「評価用フレーム」などがある。フレーム制御信号より後ろのフレームフォーマットは、フレームの種別に応じて異なる。図6は、フレームの種別が情報フレームである場合に対応している。
【0040】
フレーム長信号は、フレームの長さの情報を含んだ制御信号である。
【0041】
宛先ID信号は、フレームの宛先の半導体チップ1の識別情報(ID)を示す。例えば、半導体チップ1aが半導体チップ1bに対して送信するフレームの宛先ID信号には、半導体チップ1bのIDを示すビット列が含まれる。
【0042】
送信元ID信号は、フレームを送信する半導体チップ1のIDを示す。例えば、半導体チップ1aが半導体チップ1bに対して送信するフレームの送信元ID信号には、半導体チップ1aのIDを示すビット列が含まれる。
【0043】
データ信号は、送信されるデータ(情報)の本体を含む信号である。またデータ信号は、データ信号の順序を示すシーケンス番号を含んでもよい。
【0044】
フレーム検査信号は、受信したフレーム中の誤りの有無を検査するための信号である。フレーム検査信号としては、例えば巡回冗長検査(CRC)符号が使用される。半導体チップ1は、フレーム検査信号の受信をもって、フレームの受信を完了する。
【0045】
<センシング処理の概要、及び評価用フレームのフォーマット>
半導体チップ1は、センシング処理を行うことができる。センシング処理とは、半導体チップ1が他の半導体チップ1との間の無線通信の品質を表す評価値を取得し、取得した評価値に基づいて、これら2つの半導体チップ1間の位置関係に関する判定を行う処理である。センシング処理では、2つの半導体チップ1の一方から他方へ評価用フレームが送信される。従って、センシング処理は、送信側の半導体チップ1が受信側の半導体チップ1へ評価用フレームを送信する処理(評価用フレーム送信処理)、受信側の半導体チップ1が評価値を取得する処理(評価値取得処理)、及び受信側の半導体チップ1が位置関係に関する判定を行う処理(位置関係判定処理)を含む。
【0046】
図7は、評価用フレームのフォーマットの例を示す図である。評価用フレームは図6の情報フレームに似ているが、フレーム制御信号にはフレームの種別として「評価用フレーム」が設定される。また、評価用フレームは、データ信号の代わりに評価用信号(第1の信号部分)を含む。
【0047】
評価用信号は、半導体チップ1が、無線通信の評価値を取得するために使用する信号である。本実施形態では、評価値として、受信された評価用信号におけるビットエラーの数に基づく値が取得される。ビットエラーの数に基づく評価値は、ビットエラーの数そのものであってもよいし、ビットエラーの数を評価用信号のビット数で割ることにより算出されるビットエラー率(BER)のような、ビットエラーの数に基づいて算出される値であってもよい。また、ブロックエラー率(BLER)、フレームエラー率(FER)、及びパケットエラー率(PER)なども、評価用信号におけるビットエラーの数の指標となるようにビットエラーの数に基づいて算出された値である限り、ビットエラーの数に基づく評価値として用いることができる。例えば、評価値がビットエラーの数である場合、ビットエラーの数が少ないほど、無線通信の品質が良好であると考えられる。また、評価値がBERである場合、BERが小さいほど、無線通信の品質が良好であると考えられる。
【0048】
評価用信号には、予め定められた信号列(例えば、「11100111」のような特定のパターンのビット列)が設定される。例えば、半導体チップ1は、既知の評価用信号と実際に受信された評価用信号とを比較することにより、評価用信号におけるビットエラーの数を検出し、無線通信の評価値を取得することができる。
【0049】
前述の通り、受信側変換回路60に入力される電圧Vrx1及びVrx2の振幅は、送信コイル30の電流Itxの大きさ、及び送信コイル30と受信コイル40との間の結合係数に比例する。Vrx1及びVrx2の振幅が小さい場合、ノイズ等の影響を受けやすくなるため、受信信号におけるビットエラーの発生確率が上昇する。そのため、評価用信号におけるビットエラーの数は、結合係数に応じて変化する。また、結合係数は、両コイルの位置関係(距離又は角度など)に応じて変化する。その結果、評価用信号におけるビットエラーの数は、両コイルの位置関係(距離又は角度など)に応じて変化する。従って、評価値は、無線通信の品質を表す役割だけでなく、2つの半導体チップ1間の位置関係に関する指標としての役割も持つ。このような理由により、半導体チップ1は、評価値に基づいて、2つの半導体チップ1間の位置関係に関する判定を行うことができる。例えば、評価値が所定の閾値を超えた場合に、半導体チップ1は、2つの半導体チップ1間の位置関係が、本来の望ましい位置関係からずれたと判定することができる。
【0050】
<電圧パターンの周波数特性とビットエラーの発生確率との関係>
図5を参照して説明した通り、送信コイル30に印加(入力)される電圧(Txdata及びTxdata(バー))は、送信されるビット列を表すパターンを持つ。そのため、送信コイル30に印加される電圧パターンは、送信されるビット列の内容(ビットパターン)に応じた周波数特性を持つ。
【0051】
ここで、送信コイル30と受信コイル40との間の結合には周波数特性がある。そのため、受信信号におけるビットエラーの発生確率は、上で説明した両コイルの位置関係に基づく結合係数だけではなく、送信コイル30aに印加される電圧パターンの周波数特性と結合の周波数特性の影響も受ける。そのため、両コイルの位置関係が変化しなくても、特定の電圧パターンにより送信されるビット列についてはビットエラーの発生頻度が比較的高く、別の電圧パターンにより送信されるビット列についてはビットエラーの発生頻度が比較的低い、という現象が生じる場合がある。
【0052】
従って、評価用信号におけるビットエラーの数は、評価用信号の電圧パターンの周波数特性の影響を受ける。その結果、ビットエラーの数に基づく評価値にバイアスが発生し、2つの半導体チップ1間の位置関係に関する判定の精度が低下する可能性がある。
【0053】
そこで、以下では、周波数特性の異なる複数の評価用信号(より正確には、周波数特性の異なる複数の電圧パターン)を用いることにより、周波数特性に起因する評価値のバイアスの影響を軽減する構成を含んだセンシング処理について説明する。
【0054】
なお、本実施形態のセンシング処理は、周波数特性の異なる複数の評価用信号を用いる構成に限定される訳ではない。評価用信号の周波数特性が変化しない構成を採用した場合であっても、取得される評価値は、位置関係に関する判定のために使用することができる。
【0055】
<周波数特性の異なる複数の評価用信号を用いるセンシング処理>
以下では、周波数特性の異なる複数の評価用信号を用いるセンシング処理について、図1の通信システムにおいて半導体チップ1aが半導体チップ1bへ評価用フレームを送信する場合を例に説明を行う。
【0056】
評価用信号の周波数特性(より正確には、評価用信号が符号化された電圧パターンの周波数特性)を変化させる方法としては、例えば、評価用信号のビットパターンを変化させる方法、電圧パターンの一部を反転させる方法、及び、評価用信号の伝送路符号を変化させる方法がある。以下、各方法を用いる場合について順に説明する。なお、これら3つの方法のうちの2つ又は3つを組み合わせて用いることも可能である。
【0057】
●評価用信号のビットパターンを変化させる方法
前述の通り、電圧パターンは送信されるビットパターンに応じた周波数特性を持つ。そのため、複数の評価用信号の間でビットパターンを変化させることで、複数の評価用信号の間で周波数特性を変化させることができる。
【0058】
図8は、複数の評価用信号(ビットパターン)を管理する評価用信号テーブルの例を示す図である。評価用信号テーブルは、インデックスNと、評価用信号IDと、評価用信号(ビットパターン)とを含む。図8の例では、3種類の評価用信号が評価用信号テーブルに含まれている。通信システムの各半導体チップ1のメモリ20には、共通の評価用信号テーブルが予め格納されている。即ち、使用される複数のビットパターンの情報は、通信システムに含まれる複数の半導体チップ1の間で予め共有されている。
【0059】
図9は、評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャートである。本フローチャートでは、フレーム毎に異なるビットパターンの評価用信号を含む評価用フレームが送信される。
【0060】
S901で、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、インデックスNを1に初期化する。
【0061】
S902で、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、評価用フレーム(図7参照)を生成するために、評価用フレームの「プリアンブル信号」に、フレームの存在を示す予め定められたビット列を設定する。
【0062】
S903で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「フレーム制御信号」に、「評価用フレーム」を表すビット列を設定する。また、プロセッサ10aは、メモリ20aに格納されている評価用信号テーブルを参照して、現在のインデックスNに対応する評価用信号IDを表すビット列(例えば、N=1の場合は「1100」)を「フレーム制御信号」(第2の信号部分)に設定する。
【0063】
S904で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「フレーム長信号」に、評価用フレームのフレーム長を表すビット列を設定する。
【0064】
S905で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「宛先ID信号」に、評価用フレームの宛先である半導体チップ1bのIDを表すビット列を設定する。
【0065】
S906で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「送信元ID信号」に、半導体チップ1aのIDを表すビット列を設定する。
【0066】
S907で、プロセッサ10aは、メモリ20aに格納されている評価用信号テーブルを参照して、現在のインデックスNに対応する評価用信号を表すビット列(例えば、N=1の場合は「1100101000110101」)を、評価用フレームの「評価用信号」に設定する。
【0067】
S908で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「フレーム検査信号」に、検査用のビット列(例えば、フレームを構成するビット列から生成されるCRC符号)を設定する。
【0068】
S909で、プロセッサ10aは、半導体チップ1bへ評価用フレームを送信する。具体的には、プロセッサ10aは、評価用フレームのビット列に対応するパルス列を送信側変換回路50に入力することにより、Txdata及びTxdata(バー)を送信コイル30aに印加する。これにより、評価用フレームのビット列に対応する電圧パターンが送信コイル30aに印加(入力)され、評価用フレームの無線送信が実現する。
【0069】
S910で、プロセッサ10aは、「N=(N mod Nmax)+1」の計算を行うことにより、インデックスNを更新する。インデックスNの最大値(Nmax)は、評価用信号テーブルに格納されている評価用信号(ビットパターン)の数であり、図8の例では3である。「(N mod Nmax)」は、NをNmaxで割ることにより得られる余りを意味する。例えば、N=1、Nmax=3の場合、(N mod Nmax)=1であるため、Nは2に更新される。その後、処理はS902に戻り、S902~S909の処理により次の評価用フレームが送信される。Nが更新されているため、次の評価用フレームの「評価用信号」には、前の評価用フレームとは異なるビットパターンが用いられる。図8の評価用信号テーブルが用いられる場合、Nは1、2、3、1、2、3、・・・のように順に更新される。そのため、評価用信号として、3種類のビットパターンが繰り返し順に用いられる。
【0070】
次に、図10を参照して、評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理について説明する。S1001で、半導体チップ1bのプロセッサ10bは、既知のプリアンブル信号が検出されたか否か(即ち、隣接する半導体チップ1aがフレームを送信しているか否か)を判定する。具体的には、プロセッサ10bは、受信側変換回路60bから供給されるパルス列(Rxdata)を所定のサンプリング周波数でデコードすることにより得られたビット列と、既知のプリアンブル信号とを比較し、両者が一致した場合に、既知のプリアンブル信号が検出されたと判定する。プロセッサ10bは、プリアンブル信号が検出されるまでS1001の処理を繰り返す。プリアンブル信号が検出されると、処理はS1002に進む。
【0071】
S1002で、プロセッサ10bは、プリアンブル信号に続くフレーム制御信号をデコードし、フレームの種別が評価用フレームであるか否かを判定する。フレームの種別が評価用フレームである場合、処理はS1004に進み、そうでない場合、処理はS1003に進む。なお、フレームの種別が評価用フレームである場合、フレーム制御信号には、評価用信号IDを表すビット列も含まれているので、フレーム制御信号のデコードにより評価用信号IDも取得される。
【0072】
S1003で、プロセッサ10bは、フレームの種別に応じた処理を適宜行う。その後、処理はS1001に戻る。
【0073】
S1004で、プロセッサ10bは、フレーム長信号をデコードし、フレームの長さを確認する。
【0074】
S1005で、プロセッサ10bは、宛先ID信号をデコードし、フレームが自分宛であるか否か(宛先IDが半導体チップ1bのIDであるか否か)を判定する。フレームが自分宛である場合、処理はS1006に進み、そうでない場合、処理はS1001に戻る。
【0075】
S1006で、プロセッサ10bは、送信元ID信号をデコードし、フレームの送信元の半導体チップ1のIDを取得する。半導体チップ1aがフレームの送信元である場合、半導体チップ1aのIDが取得される。
【0076】
S1007で、プロセッサ10bは、評価用信号をデコードし、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)を取得する。
【0077】
S1008で、プロセッサ10bは、評価用信号ID及びデコードされた評価用信号(受信されたビット列)に基づいて、評価値を取得する。具体的には、プロセッサ10bは、メモリ20bに格納された評価用信号テーブルを参照して、評価用信号IDに対応するビット列(即ち、正しいビット列)を取得する。そして、プロセッサ10bは、取得された正しいビット列と受信されたビット列とを比較することにより、ビットエラーの数を検出(カウント)し、ビットエラーの数に基づく評価値を取得する。以下の説明では、例として、ビットエラーの数に基づく評価値はBERであるものとする。プロセッサ10bは、取得した評価値をメモリ20bに記録する。その際に、プロセッサ10bは、評価値の取得元である評価用フレームの受信時刻と、評価用フレームの送信元IDとを評価値に関連付けて記録する。これにより、特定の送信元に対応する評価値の時系列変化を示す情報がメモリ20bに蓄積される。
【0078】
S1109で、プロセッサ10bは、フレーム検査信号をデコードし、評価用フレームを誤りなく受信できたか否かを判定する。また、プロセッサ10bは、判定結果(フレーム検査の結果)に応じて、Acknowledgement(ACK)信号(フレーム検査がOKの場合)、又はNegative ACK(NACK)信号(フレーム検査がNGの場合)を半導体チップ1bに対して送信してもよい。その後、処理はS1001に戻る。
【0079】
次に、図11を参照して、センシング処理のうちの位置関係判定処理について説明する。図11の位置関係判定処理は、図10の評価値取得処理と並行して実行される。従って、位置関係判定処理と並行して、繰り返し評価値の取得が行われる。
【0080】
S1101で、半導体チップ1bのプロセッサ10bは、評価値取得処理により新たな評価値が取得されたか否かを判定する。プロセッサ10bは、新たな評価値が取得されるまでS1101の処理を繰り返す。新たな評価値が取得されると、処理はS1102に進む。
【0081】
S1102で、プロセッサ10bは、新たな評価値を含む、直近に取得された複数の評価値に基づく演算を行うことにより、合成評価値を算出(取得)する。具体的な演算方法は特に限定されないが、例えば、プロセッサ10bは、合成評価値として、複数の評価値の平均値を算出してもよいし、複数の評価値の合計値を算出してもよい。直近の複数の評価用信号において検出されたビットエラーの数に基づく値が得られる限り、任意の方法で合成評価値を算出することができる。以下では、例として、合成評価値は複数のBERの平均値(平均BER)であるものとする。また、合成評価値の取得に用いられる評価値の数M(M≧2)は特に限定されないが、用いられる評価値の数Mが大きいほど、周波数特性に起因する評価値のバイアスの影響を軽減する効果が大きくなる。また、M=1の場合が本実施形態から除外される訳ではない。M=1であっても、M≧2の場合と比べて相対的に精度が低下する可能性はあるが、依然として1つの評価値に基づいて位置関係に関する判定を行うことは可能である。
【0082】
また、プロセッサ10bは、算出された合成評価値を、最新の評価値に対応する評価用フレームが受信された時刻に関連付けてメモリ20bに格納してもよい。これにより、合成評価値の時系列の変化が記録される。
【0083】
なお、取得済みの評価値の数がMより小さい場合、プロセッサ10bは、取得済みの全ての評価値に基づいて合成評価値を算出してもよいし、合成評価値を算出せずに処理をS1101に戻してもよい。
【0084】
S1103で、プロセッサ10bは、合成評価値に基づいて位置関係に関する判定を行う。例えば、合成評価値(平均BER)が所定の閾値(例えば、0.1)を超えた場合に、半導体チップ1bは、半導体チップ1bと半導体チップ1aとの間の位置関係が、本来の望ましい位置関係からずれたと判定することができる。位置関係に関する判定の様々な具体例は後述する。
【0085】
S1104で、プロセッサ10bは、位置関係に関する判定結果に関する処理を行う。ここでの処理は特に限定されないが、例えば、プロセッサ10bは、判定結果を外部の管理装置(不図示)へ送信してもよい。この場合、外部の管理装置は、受信した判定結果に基づいて、半導体チップ1bと半導体チップ1aとの間の位置関係が、本来の望ましい位置関係にあるか否かを認識し、必要に応じて、ユーザに対して警告することなどができる。その後、処理はS1101に戻る。
【0086】
●電圧パターンの一部を反転させる方法
図5を参照して説明したように、プロセッサ10bは、受信側変換回路60bから入力されたパルス列を、所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、1(High)又は0(Low)で表される2値信号列(ビット列)へとデコードすることができる。図5の例では、サンプリング周波数は1GHz(従って、サンプリング周期は1ナノ秒(ns))であり、「01101」というビット列が取得される。
【0087】
ここで、プロセッサ10bは、各ビットに対応する期間(1ビット期間)の全体に亘ってサンプリングを行う必要はなく、1ビット期間内の特定のタイミング(サンプリングタイミング)においてサンプリングを行えば、パルス列をビット列にデコードすることができる。例えば、図12(a)において上から下へ向かう矢印で示すように、プロセッサ10bは、1ビット期間の中央よりも早いタイミングでサンプリングを行うことにより、「10011001」というビット列を取得することができる。この場合、サンプリングタイミング外の期間においては、電圧を反転させても、デコードされるビット列は変化しない。
【0088】
図12(b)は、一部のビットについて、ビット期間の後半部分の電圧を反転させる例を示す図である。図12(b)において、左右方向の矢印で示される期間(期間1201など)は、電圧が反転された期間を示す。期間1201は、「1」に対応するビット期間の後半部分であるため、本来は「High」の電圧を持つはずであるが、ここでは「Low」に反転されている。しかし、期間1201はサンプリングタイミング外の期間であるため、デコードされるビットとしては、図12(a)の場合と同様に「1」が取得される。図12(b)の例では、「10」のビットパターンにおいて「1」に対応するビット期間、及び、「01」のビットパターンにおいて「0」に対応するビット期間において、後半部分の電圧の反転が発生している。
【0089】
電圧パターンにおいて一部のビット期間内の電圧が部分的に反転すると、電圧パターンの周波数特性が変化する。そのため、サンプリングタイミング外の期間の電圧を部分的に反転させることにより、ビットパターンを変化させずに、電圧パターンの周波数特性を変化させることができる。
【0090】
図12(b)の例では、電圧を反転させる期間は1ビット期間の後半部分(後ろ50%)であるが、サンプリングタイミングを含まない限り、任意の部分の電圧を反転させることができる。例えば、受信側のプロセッサ10bが1ビット期間の先頭から15%以内のタイミングでサンプリングを行うように構成されている場合、送信側のプロセッサ10aは、1ビット期間の先頭から15%を除いた任意の部分の電圧を反転させることができる。
【0091】
図13は、評価用信号における電圧の反転ルールを管理する反転ルールテーブルの例を示す図である。反転ルールテーブルは、インデックスNと、反転ルールとを含む。図13の例では、3種類の反転ルールが反転ルールテーブルに含まれている。通信システムの各半導体チップ1のメモリ20には、反転ルールテーブルが予め格納されている。図8の場合とは異なり、半導体チップ1aと半導体チップ1bとで、異なる反転ルールテーブルが格納されていてもよい。
【0092】
図14は、電圧パターンの一部を反転させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャートである。図14では、Nmaxは、反転ルールテーブルに格納されている反転ルールの数であり、図13の例では3である。
【0093】
S1403で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「フレーム制御信号」に、「評価用フレーム」を表すビット列を設定する。ここでは、図9のS903とは異なり、プロセッサ10aは、評価用信号IDを表すビット列を「フレーム制御信号」に設定する必要はない。
【0094】
S1407で、プロセッサ10aは、評価用信号を表すビット列(例えば、「10011001」)を、評価用フレームの「評価用信号」に設定する。ここでは、図9のS907とは異なり、現在のインデックスNの値に関わらず、評価用信号として同じビットパターンを用いることができる。
【0095】
S1409で、プロセッサ10aは、半導体チップ1bへ評価用フレームを送信する。具体的には、プロセッサ10aは、評価用フレームのビット列に対応するパルス列を送信側変換回路50に入力することにより、Txdata及びTxdata(バー)を送信コイル30aに印加する。この際に、評価用フレームのうちの評価用信号の電圧に対しては、プロセッサ10aは、メモリ20aに格納された反転ルールテーブルを参照して、現在のインデックスNに対応する反転ルールを適用する。例えば、図13の例では、N=1の場合、図12(a)に示す電圧パターンがTxdataとして送信コイル30aに入力され、N=2の場合、図12(b)に示す電圧パターンがTxdataとして送信コイル30aに入力される。これにより、評価用信号のビットパターンを変化させずに、評価用フレーム毎に電圧パターンの周波数特性を変化させることができる。
【0096】
なお、図12(b)の例では、電圧を反転させる期間は1ビット期間の後半部分(後ろ50%)に固定されているが、図12(c)に示すように、電圧を反転させる期間をビット毎に変動させる構成を採用してもよい。図12(c)の例では、反転対象のビットは、図12(b)と同様、「10」のビットパターンにおける「1」、及び、「01」のビットパターンにおける「0」である。しかし、反転対象のビットに対応する各ビット期間において反転される部分は、ビット毎にランダムに決定される(この決定は、反転される部分がサンプリングタイミングを含まないように行われる)。このような構成を採用する場合、各半導体チップ1のメモリ20に反転ルールテーブルを格納する必要がなくなる。
【0097】
次に、図15を参照して、電圧パターンの一部を反転させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理について説明する。
【0098】
S1502で、プロセッサ10bは、図10のS1002と同様に、プリアンブル信号に続くフレーム制御信号をデコードし、フレームの種別が評価用フレームであるか否かを判定する。フレームの種別が評価用フレームである場合、処理はS1004に進み、そうでない場合、処理はS1003に進む。なお、図10のS1002とは異なり、フレームの種別が評価用フレームである場合であっても、評価用信号IDは取得されない。
【0099】
S1507で、プロセッサ10bは、評価用信号をデコードし、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)を取得する。評価用信号をデコードするためのサンプリングは、電圧が反転される期間に含まれないように予め定められたサンプリングタイミングで行われる。従って、プロセッサ10bは、送信側で用いられた反転ルールを知らなくても、評価用信号をデコードすることができる。
【0100】
S1508で、プロセッサ10bは、予め定められた既知の正しいビット列と、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)とを比較することにより、ビットエラーの数を検出(カウント)し、ビットエラーの数に基づく評価値を取得する。プロセッサ10bは、取得した評価値をメモリ20bに記録する。その際に、プロセッサ10bは、評価値の取得元である評価用フレームの受信時刻と、評価用フレームの送信元IDとを評価値に関連付けて記録する。これにより、特定の送信元に対応する評価値の時系列変化を示す情報がメモリ20bに蓄積される。
【0101】
なお、センシング処理のうちの位置関係判定処理については、プロセッサ10bは、評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合と同様に、図11に示す処理を実行する。
【0102】
●評価用信号の伝送路符号を変化させる方法
これまでの説明では、半導体チップ1間の無線通信の伝送路符号(符号化方式)として、Non Return to Zero(NRZ)が用いられている。NRZ以外に利用可能な伝送路符号としては、例えば、Return to Zero(RZ)、Non Return to Zero Inversion(NRZI)、及びマンチェスタ符号がある。
【0103】
図16は、Return to Zero(RZ)、Non Return to Zero Inversion(NRZI)、及びマンチェスタ符号を説明する図である。図16から理解できるように、ビットパターンが同じであっても、伝送路符号が異なれば電圧パターンが異なるため、周波数特性も異なる。そのため、評価用信号の伝送路符号を変化させることにより、ビットパターンを変化させずに、評価用信号を表す電圧パターンの周波数特性を変化させることができる。
【0104】
図17は、複数の伝送路符号を管理する伝送路符号テーブルの例を示す図である。伝送路符号テーブルは、インデックスNと、評価用信号IDと、伝送路符号とを含む。図17の例では、4種類の伝送路符号が伝送路符号テーブルに含まれている。通信システムの各半導体チップ1のメモリ20には、共通の伝送路符号テーブルが予め格納されている。即ち、使用される複数の伝送路符号の情報は、通信システムに含まれる複数の半導体チップ1の間で予め共有されている。
【0105】
図18は、評価用信号の伝送路符号を変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価用フレーム送信処理のフローチャートである。図18では、Nmaxは、伝送路符号テーブルに格納されている伝送路符号の数であり、図17の例では4である。
【0106】
S1803で、プロセッサ10aは、評価用フレームの「フレーム制御信号」に、「評価用フレーム」を表すビット列を設定する。また、プロセッサ10aは、メモリ20aに格納されている伝送路符号テーブルを参照して、現在のインデックスNに対応する評価用信号IDを表すビット列(例えば、N=1の場合は「1100」)を「フレーム制御信号」に設定する。
【0107】
S1807で、プロセッサ10aは、評価用信号を表すビット列(例えば、「101100」)を、評価用フレームの「評価用信号」に設定する。ここでは、図9のS907とは異なり、現在のインデックスNの値に関わらず、評価用信号として同じビットパターンを用いることができる。
【0108】
S1809で、プロセッサ10aは、半導体チップ1bへ評価用フレームを送信する。具体的には、プロセッサ10aは、評価用フレームのビット列に対応するパルス列を送信側変換回路50に入力することにより、Txdata及びTxdata(バー)を送信コイル30aに印加する。この際に、評価用フレームのうちの評価用信号のビット列に対しては、プロセッサ10aは、メモリ20aに格納された伝送路符号テーブルを参照して、現在のインデックスNに対応する伝送路符号を用いて符号化を行う。これにより、評価用信号のビットパターンを変化させずに、評価用信号が符号化された電圧パターンの周波数特性を評価用フレーム毎に変化させることができる。なお、評価用信号以外の部分については、予め定められた伝送路符号(例えば、NRZ)が用いられる。
【0109】
次に、図19を参照して、評価用信号の伝送路符号を変化させる方法を用いる場合における、センシング処理のうちの評価値取得処理について説明する。
【0110】
S1902で、プロセッサ10bは、プリアンブル信号に続くフレーム制御信号をデコードし、フレームの種別が評価用フレームであるか否かを判定する。フレームの種別が評価用フレームである場合、処理はS1004に進み、そうでない場合、処理はS1003に進む。なお、フレームの種別が評価用フレームである場合、フレーム制御信号には、評価用信号IDを表すビット列も含まれているので、フレーム制御信号のデコードにより評価用信号IDも取得される。
【0111】
S1907で、プロセッサ10bは、S1902で取得された評価用信号IDに基づいて評価用信号をデコードし、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)を取得する。具体的には、プロセッサ10bは、メモリ20bに格納された伝送路符号テーブルを参照して、評価用信号IDに対応する伝送路符号を識別する。そして、プロセッサ10bは、識別された伝送路符号に従って、評価用信号をデコードする。なお、評価用信号以外の部分については、プロセッサ10bは、予め定められた伝送路符号(例えば、NRZ)に従ってデコードを行う。
【0112】
S1908で、プロセッサ10bは、予め定められた既知の正しいビット列と、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)とを比較することにより、ビットエラーの数を検出(カウント)し、ビットエラーの数に基づく評価値を取得する。プロセッサ10bは、取得した評価値をメモリ20bに記録する。その際に、プロセッサ10bは、評価値の取得元である評価用フレームの受信時刻と、評価用フレームの送信元IDとを評価値に関連付けて記録する。これにより、特定の送信元に対応する評価値の時系列変化を示す情報がメモリ20bに蓄積される。
【0113】
なお、センシング処理のうちの位置関係判定処理については、プロセッサ10bは、評価用信号のビットパターンを変化させる方法を用いる場合と同様に、図11に示す処理を実行する。
【0114】
<評価用信号IDの通知方法に関する変形例>
上の説明では、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、評価用フレームのフレーム制御信号に評価用信号IDを設定することにより、評価用信号IDを半導体チップ1bへ通知するものとした。しかし、評価用信号IDの通知方法は、上で説明した方法に限定されない。
【0115】
一例として、評価用信号IDがフレームの種別を示す信号を兼ねる構成を採用することができる。例えば、フレームの種別を示す信号が4ビットの場合、「0001」が「情報フレーム」、「0010」が「制御フレーム」、「0011」が「管理フレーム」を示すものとして、フレームの種別を示す信号を定義する。また、図8に評価用信号IDとして例示される「1100」、「1101」、及び「1110」のいずれもが「評価用フレーム」を示すものとして、フレームの種別を示す信号を定義する。この場合、フレーム制御信号に評価用信号IDを設定することは、同時に、フレーム制御信号にフレームの種別として「評価用フレーム」を示す信号を設定することを意味する。
【0116】
他の例として、図20(a)に示すように、評価用フレームの送信元ID信号と評価用信号との間に、評価用信号IDのための領域(第2の信号部分)を設けてもよい。この場合、評価用フレーム以外のフレームについては、評価用信号IDのための領域を削除したり他の用途に使用したりすることができる。例えば、情報フレームについては、評価用信号IDのための領域を、データ信号の領域の一部として使用することができる。
【0117】
上で例示した2種類の構成のいずれかを採用すれば、評価用フレームのための追加的なビットをフレーム制御信号に設ける必要がなくなるので、フレーム制御信号のビット数を削減して無線通信のオーバーヘッドを削減することができる。
【0118】
また、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間で評価用信号の変更パターンを示す情報を予め共有することにより、評価用信号IDの通知を不要にする構成を採用してもよい。例えば、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、情報フレームを用いて、評価用信号の変更パターンを示す情報を半導体チップ1bへ送信する。これにより、例えば、半導体チップ1bのプロセッサ10bは、評価用信号ID「1100」→「1101」→「1110」→「1100」→「1101」→「1110」→・・・のように3種類の評価用信号IDに対応する評価用信号が順に繰り返し使用されることを事前に知ることができる。その後、プロセッサ10bは、評価用フレームを受信する度に、評価用信号の変更パターンに従って正しい評価用信号(ビット列)を特定し、受信されたビット列と正しいビット列とを比較することにより評価値を取得する。このような構成を採用した場合も、フレーム制御信号のビット数を削減して無線通信のオーバーヘッドを削減することができる。
【0119】
なお、評価用信号IDの通知を不要にする構成において、半導体チップ1aと半導体チップ1bの距離が大きく離れた状態が継続した場合、多数のビットエラーが長期間に亘って発生するため、半導体チップ1bは、評価用信号の変更タイミングを見失ってしまう可能性がある。そこで、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間で評価用信号の変更パターンを示す情報を予め共有した上で、半導体チップ1aから半導体チップ1bへ評価用信号IDを明示的に通知する構成を採用してもよい。この構成では、半導体チップ1bは、一時的なビットエラーにより評価用信号IDを正しく取得できなかった場合、予め共有された変更パターンに従って正しい評価用信号を特定し、評価値を取得することができる。また、半導体チップ1bは、評価用信号の変更タイミングを見失っても、その後、評価用信号IDを正しく受信できたタイミングで、評価用信号の変更タイミングを認識することができる。
【0120】
<評価用フレームのフォーマットに関する変形例>
上の説明では、評価用フレームは、図7又は図20(a)に示すフォーマットなどを持つものとした。しかしながら、評価用フレームのフォーマットは、図7又は図20(a)に示すフォーマットなどに限定されない。
【0121】
例えば、評価用フレームの送信タイミングが半導体チップ1a及び1bの間で予め共有されている場合、図20(b)に示す評価用フレームを用いることができる。この場合、半導体チップ1bのプロセッサ10bは、既知のタイミングに受信側変換回路60bからパルス列(Rxdata)が供給された場合に、そのパルス列が評価用フレームであると判断し、パルス列をデコードすることにより評価用信号ID及び評価用信号を取得することができる。
【0122】
評価用フレームの送信タイミングを半導体チップ1a及び1bの間で予め共有する方法の例として、情報フレーム(図6)を利用する方法がある。例えば、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、「情報フレームの送信後、0.2秒毎に評価用フレームを送信する」といったような、送信タイミングを示す情報が「データ信号」に設定された情報フレームを半導体チップ1bへ送信する。半導体チップ1bのプロセッサ10bは、この情報フレームを受信することで、情報フレームの送信時刻を基点に、0.2秒、0.4秒、0.6秒、・・・のように0.2秒毎のタイミングで評価用フレームが送信されることを認識することができる。
【0123】
<複数の評価用信号の生成方法に関する変形例>
上では、ビットパターンの異なる複数の評価用信号を生成するために、複数の評価用信号(ビットパターン)を管理する評価用信号テーブル(図8)を用いる構成について説明した。しかし、ビットパターンの異なる複数の評価用信号を生成する方法は、上で説明した方法に限定されない。他の例として、疑似ランダム信号(Pseudo Random Bit Sequence(PRBS))生成器を用いる方法、及び、ビットの繰返し回数を変化させる方法が挙げられる。以下、各方法について順に説明する。
【0124】
●PRBS生成器を用いる方法
この方法では、各半導体チップ1は、PRBS生成器を備える。PRBS生成器は、任意の公知の技術(例えば、非特許文献1に開示される技術)に従って実装可能である。また、PRBS生成器は、半導体チップ1が備える専用のハードウェア回路として実装されてもよいし、半導体チップ1のプロセッサ10が実行するソフトウェア機能として実装されてもよい。以下の説明では、PRBS生成器は、半導体チップ1のプロセッサ10が実行するソフトウェア機能として実装されるものとする。
【0125】
半導体チップ1aのPRBS生成器と半導体チップ1bのPRBS生成器とは、共通のアルゴリズムによりビット列(PRBS)を生成するように構成される。また、半導体チップ1aのPRBS生成器及び半導体チップ1bのPRBS生成器には共通の初期値が設定される。この場合、半導体チップ1aのPRBS生成器により順次生成される複数のビット列は、半導体チップ1bのPRBS生成器により順次生成される複数のビット列と一致する。このように順次生成される複数のビット列を、複数の評価用信号として用いることができる。
【0126】
例えば、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、所定の初期値を自身のPRBS生成器に設定すると共に、情報フレームを用いて、この初期値を示す情報を半導体チップ1bへ送信する。半導体チップ1bのプロセッサ10bは、受信した初期値を自身のPRBS生成器に設定する。その後、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、複数の評価用フレームを順次送信する際に、PRBS生成器により順次生成される各ビット列を、各評価用フレームの評価用信号として用いる。半導体チップ1bのプロセッサ10bは、評価用フレームを受信する度にPRBS生成器によりビット列を生成し、デコードされた評価用信号(受信されたビット列)と生成されたビット列(即ち、正しいビット列)とを比較することで、評価値を取得する。
【0127】
このようにPRBS生成器を用いて複数の評価用信号する場合、各半導体チップ1のメモリ20に評価用信号テーブル(図8)を格納する必要がない。そのため、メモリ20の使用量を削減することができる。また、評価用フレームの中に評価用信号IDを含める必要がないため、評価用フレームのビット数を削減して無線通信のオーバーヘッドを削減することができる。
【0128】
なお、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間で複数の初期値を予め共有し、PRBS生成器により複数の初期値それぞれについて複数の評価用信号を生成する構成を採用してもよい。例えば、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、情報フレームを用いて、初期値X及び初期値Yを示す情報を半導体チップ1bへ送信する。その後、プロセッサ10aは、複数の評価用フレームを順次送信する際に、初期値Xから1回目に生成されたビット列、初期値Yから1回目に生成されたビット列、初期値Xから2回目に生成されたビット列、初期値Yから2回目に生成されたビット列、初期値Xから3回目に生成されたビット列、・・・のように、フレーム毎に異なるビット列を評価用信号として用いる。これにより、評価用信号の周波数特性の偏りを更に軽減することができる。
【0129】
●ビットの繰返し回数を変化させる方法
特定のビットパターンにおける各ビットの繰返し回数を変化させることで、1つのビットパターンから、複数の評価用信号として使用可能な複数のビットパターンを生成することができる。
【0130】
例えば、「11001010」という8ビットのビットパターンについて、各ビットの繰返し回数を2とすると、「1111000011001100」という16ビットのビットパターンが得られる。元のビットパターン「11001010」(繰返し回数=1)と、ビットの繰り返しにより得られたビットパターン「1111000011001100」(繰返し回数=2)とを、複数の評価用信号として使用することができる。
【0131】
この方法を用いる場合、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間で、元のビットパターンが予め共有される。例えば、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、情報フレームを用いて、元のビットパターンを示す情報を半導体チップ1bへ送信する。半導体チップ1aのプロセッサ10aは、評価用フレームを送信する度に、繰返し回数を1、2、1、2、・・・のように変化させることで、周波数特性の異なる複数の評価用信号を送信することができる。半導体チップ1bのプロセッサ10bは、評価用フレームを受信する度に、繰返し回数を1、2、1、2、・・・のように変化させることで、元のビットパターンから、受信したビット列と比較すべき正しいビット列を生成することができる。
【0132】
なお、複数の評価用信号の間でビット数を統一するために、ビットの繰り返しにより得られたビットパターンの一部を抽出して評価用信号として用いてもよい。例えば、ビットパターン「1111000011001100」(繰返し回数=2)のうちの先頭8ビットから抽出される「11110000」を、「繰返し回数=2」に対応するビットパターンとして用いてもよい。
【0133】
このように特定のビットパターンにおける各ビットの繰返し回数を変化させることにより複数の評価用信号を生成する場合、各半導体チップ1のメモリ20に評価用信号テーブル(図8)を格納する必要がない。そのため、メモリ20の使用量を削減することができる。また、評価用フレームの中に評価用信号IDを含める必要がないため、評価用フレームのビット数を削減して無線通信のオーバーヘッドを削減することができる。
【0134】
なお、プロセッサ10aは、評価用フレームの中にビットの繰返し回数を示す情報を含めてもよい。この場合、繰返し回数を任意のパターンで変化させることが可能になる。
【0135】
<評価用信号の長さ(ビット数)に関する変形例>
一般的に、評価用信号のビット数が多いほど、より高精度な評価値を取得することができる。しかし、半導体チップ1間の距離が長く、BERが大きい(例えば、約0.5)場合には、評価用信号のビット数を増やしても評価値(BER)の精度はあまり向上しない。そこで、評価値に応じて評価用信号のビット数を変化させる構成を採用してもよい。
【0136】
この場合、半導体チップ1bのプロセッサ10bは、評価値を取得した後、取得した評価値を半導体チップ1aへ送信する。例えば、プロセッサ10bは、半導体チップ1aへ送信するACK信号又はNACK信号(図10図15、及び図19のS1009参照)の中に評価値を含めることができる。
【0137】
なお、プロセッサ10aは、送信した評価用フレームに対応するACK信号又はNACK信号を受信できなかった場合、無線通信の品質が極めて悪い可能性が高いため、評価値(BER)は0.5であると判断してもよい。
【0138】
半導体チップ1aのプロセッサ10aは、受信した評価値を1つ以上の閾値と比較することにより、次に送信する評価用フレームの評価用信号のビット数を決定する。例えば、プロセッサ10aは、評価値(BER)が10-10未満の場合、ビット数を16に決定し、BERが10-10以上0.1未満の場合、ビット数を8に決定し、BERが0.1以上の場合、ビット数を4に決定する。これにより、評価値の精度向上があまり期待できない状況において長い評価用信号を送信することが抑制され、効率的な無線通信が実現する。
【0139】
なお、プロセッサ10a及びプロセッサ10bは、決定される可能性のある最長のビット数の評価用信号を取得可能なように構成される。例えば、PRBS生成器を用いる場合において、最長のビット数が16である場合、プロセッサ10a及びプロセッサ10bのPRBS生成器は、16ビットのビット列を生成するように構成される。例えば、実際に決定されたビット数が8ビットの場合、プロセッサ10a及びプロセッサ10bは、PRBS生成器により生成された16ビットのビット列のうちの先頭8ビットを評価用信号として用いることができる。プロセッサ10bは、評価用フレームの「フレーム長信号」から取得されるフレーム長から、評価用信号以外の領域の長さを減算することにより、受信した評価用フレームにおける評価用信号のビット数を知ることができる。
【0140】
<位置関係に関する判定の様々な具体例>
ここでは、図11のS1103において行われる位置関係に関する判定の具体例を説明する。なお、以下では、半導体チップ1bが半導体チップ1aへ評価用フレームを送信する場合(従って、半導体チップ1aが図11の位置関係判定処理を実行する場合)について説明を行う。
【0141】
例えば、図21に示すように、半導体チップ1a及び1bを計測対象4の上に水平方向(X軸方向)に距離Dxだけ離して配置した場合を考える。計測対象4は、X軸方向に伸縮する素材であり、例えば鉄製レールや鉄骨などである。この場合、温度変化等の要因により計測対象4がX軸方向に伸縮すると、それに応じて距離Dxが変化する。前述の通り、距離Dxが変化すると、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの間の結合係数が変化し、評価用信号におけるビットエラーの数が変化する。そのため、ビットエラーの数に基づく評価値(例えば、BER)及び合成評価値(例えば、平均BER)も変化する。
【0142】
図22は、半導体チップ1a及び1b間の距離DxとBERとの関係の例をグラフ形式及び表形式で示す図である。距離DxとBERとの関係を示す情報は、例えば、予め複数の距離におけるBERを測定する実験を行うことにより取得可能である。ここで取得するBERは、1つの評価用信号に基づくBERであってもよいし、複数の評価用信号に基づく平均BERであってもよい。従って、図22に記載される「BER」は、平均BERであってもよい。この点は、図23以降においても同様である。
【0143】
図22から理解できるように、450μm前後の距離において、BERが大きく変化する。そこで、450μmに対応するBER(1×10-4)を閾値として各半導体チップ1のメモリ20に事前に格納しておくことが考えられる。この場合、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、図11のS1103において、S1102で取得された平均BER(合成評価値)とメモリ20aに格納された閾値(1×10-4)とを比較することで、距離Dxが450μmより大きいか否かを判定することができる。即ち、位置関係に関する判定として、距離Dxが特定の距離(ここでは450μm)より大きいか否かを判定することができる。
【0144】
また、例えば、本来の望ましい位置関係ではDxが450μm未満であるものとする。この場合、プロセッサ10aは、S1102で取得された平均BER(合成評価値)が閾値(1×10-4)を超えたと判定されたことに応じて、半導体チップ1a及び1bの位置関係が本来の望ましい位置関係からずれたと判定することができる。
【0145】
図22の例では、距離Dxの変化は計測対象4の伸縮に応じて発生するため、半導体チップ1a及び1bを含む通信システムは、計測対象4の伸縮を検出するセンサとしての役割を果たすことができる。
【0146】
なお、図22の例では、BERに関する閾値の数は1であるが、2以上であってもよい。即ち、閾値の数Lは、1以上の整数である限り、任意の数であってもよい。図23は、BERについて4つの閾値を設定する例を示す図である。この例では、4つの閾値として、Dx=Dth1(440μm)、Dth2(445μm)、Dth3(450μm)、Dth4(460μm)に対応する4つのBER(1×10-8、1×10-5、1×10-4、1×10-3)が各半導体チップ1のメモリ20に事前に格納される。この場合、S1102で取得された平均BERが、4つの閾値により区切られる5つの区間のどこに位置するかを判定することで、より正確な位置関係を判定することができる。
【0147】
また、図23のグラフ又は表に相当するデータのような、距離DxとBERとの関係を詳細に示す情報を各半導体チップ1のメモリ20に格納してもよい。この場合、位置関係を更に詳細に判定することが可能になる。
【0148】
上の説明では、位置関係に関する判定として、半導体チップ1a及び1bの水平方向(X軸方向)の距離Dxに関する判定を行う場合について説明した。しかし、本実施形態において判定可能な位置関係は、水平方向(X軸方向)の距離Dxに限定されない。
【0149】
例えば、図24(a)に示すように、計測対象4の性質に起因して、半導体チップ1a及び1bがY軸方向に変位する場合を考える。この場合、図24(b)に示すように、事前の測定によりY軸方向の変位量DyとBERとの関係を示す情報を取得することで、変位量Dyに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、変位量Dyに関する判定を行うことが可能になる。
【0150】
他の例として、図25(a)及び(b)に示すように、半導体チップ1aが計測対象4a上に配置されており、半導体チップ1bが計測対象4b上に配置されている場合を考える。計測対象4aと計測対象4bの接点は、半導体チップ1aと半導体チップ1bとの中間に相当し、計測対象4aは、この接点を軸にして回転するように構成されている。計測対象4aと計測対象4bとが水平に並んでいる状態において、半導体チップ1a及び1b間のX軸方向の距離はDxである。この場合、図25(c)に示すように、事前の測定によりX軸に対する計測対象4aの角度DaとBERとの関係を示す情報を取得することで、角度Daに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、角度Daに関する判定を行うことが可能になる。
【0151】
更に他の例として、図26(a)及び(b)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図25(a)及び(b)の場合と異なり、図26(a)及び(b)では、計測対象4aは、左辺を軸にして回転する。この場合、図26(c)に示すように、事前の測定によりX軸に対する計測対象4aの角度DaとBERとの関係を示す情報を取得することで、角度Daに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、角度Daに関する判定を行うことが可能になる。
【0152】
更に他の例として、図27(a)及び(b)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図26(a)及び(b)の場合と異なり、図27(a)及び(b)では、計測対象4aは、半導体チップ1aのX軸方向の中心を通るY軸方向の軸に対して回転する。この場合、図27(c)に示すように、事前の測定によりX軸に対する計測対象4aの回転角DrとBERとの関係を示す情報を取得することで、回転角Drに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、回転角Drに関する判定を行うことが可能になる。なお、この場合、回転角Drが90度を超えると、半導体チップ1aの送信コイル30aを貫く磁束の向きが、回転角Drが90度以下の場合と比べて反転する。そのため、送信コイル30aに誘起される電圧の正負の極性が反転し、その結果、Rxdataの正負も反転する。そのため、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、パルスの反転を考慮に入れてBERを計算する。
【0153】
更に他の例として、図28(a)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図28(a)では、計測対象4bは、半導体チップ1bのY軸方向の中心を通るX軸方向の軸に対して回転する。この場合、図28(b)に示すように、事前の測定によりY軸に対する計測対象4bの回転角DrとBERとの関係を示す情報を取得することで、回転角Drに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、回転角Drに関する判定を行うことが可能になる。なお、この場合、回転角Drが90度を超えると、半導体チップ1aの送信コイル30aを貫く磁束の向きが、回転角Drが90度以下の場合と比べて反転する。そのため、送信コイル30aに誘起される電圧の正負の極性が反転し、その結果、Rxdataの正負も反転する。そのため、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、パルスの反転を考慮に入れてBERを計算する。
【0154】
これまでの例では、半導体チップ1a及び1bが計測対象4上に(又は計測対象4a及び4b上に)X軸方向に配置されていた。しかし、本実施形態は、半導体チップ1a及び1bが垂直方向(Z軸方向)に配置(積層)されている場合に対しても適用可能である。
【0155】
例えば、図29(a)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。この例では、半導体チップ1a及び1bのZ軸方向の距離Dzが変化する。この場合、図29(b)に示すように、事前の測定によりZ軸方向の距離DzとBERとの関係を示す情報を取得することで、距離Dzに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、距離Dzに関する判定を行うことが可能になる。
【0156】
他の例として、図30(a)及び(b)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図29(a)の場合と異なり、図30(a)及び(b)では、Z軸方向の距離Dzは変化しないものとする。この状況において、計測対象4a及び4bは、X軸方向の位置関係が変化する。この場合、図30(c)に示すように、事前の測定によりX軸方向の変位量DxとBERとの関係を示す情報を取得することで、変位量Dxに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、変位量Dxに関する判定を行うことが可能になる。
【0157】
更に他の例として、図31(a)及び(b)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図29(a)の場合と異なり、図31(a)及び(b)では、Z軸方向の距離Dzは変化しないものとする。この状況において、計測対象4a及び4bは、Y軸方向の位置関係が変化する。この場合、図31(c)に示すように、事前の測定によりY軸方向の変位量DyとBERとの関係を示す情報を取得することで、変位量Dyに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、変位量Dyに関する判定を行うことが可能になる。
【0158】
更に他の例として、図32(a)及び(b)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。図29(a)の場合と異なり、図32(a)及び(b)では、Z軸方向の距離Dzは変化しないものとする。この状況において、計測対象4a及び4bは、X軸方向及びY軸方向の両方の位置関係が変化する。この場合、X軸方向の位置関係の変化に由来するBERの変化と、Y軸方向の位置関係の変化に由来するBERの変化とを区別することはできない。そこで、半導体チップ1a及び1bの中心間の距離Drに着目するものとする。この場合、図32(c)に示すように、事前の測定により、半導体チップ1a及び1bの中心間の距離DrとBERとの関係を示す情報を取得することで、距離Drに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、距離Drに関する判定を行うことが可能になる。
【0159】
更に他の例として、図33(a)に示すように半導体チップ1a及び1bが配置されている場合を考える。この例では、計測対象4aが、X軸と平行な線を回転軸にして回転する。この場合、図33(b)に示すように、事前の測定によりX軸に対する回転角DaとBERとの関係を示す情報を取得することで、回転角Daに関するBERの閾値を決定し、各半導体チップ1のメモリ20に格納することができる。これにより、位置関係に関する判定として、回転角Daに関する判定を行うことが可能になる。なお、この場合、回転角Daが90度を超えると、半導体チップ1aの送信コイル30aを貫く磁束の向きが、回転角Daが90度以下の場合と比べて反転する。そのため、送信コイル30aに誘起される電圧の正負の極性が反転し、その結果、Rxdataの正負も反転する。そのため、半導体チップ1aのプロセッサ10aは、パルスの反転を考慮に入れてBERを計算する。
【0160】
<半導体チップ1の機能構成>
図34は、半導体チップ1の機能構成を示すブロック図である。図34において、制御部3401は、プロセッサ10がメモリ20に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0161】
制御部3401は、半導体チップ1の全体制御を行う。また、制御部3401は、半導体チップ1の無線通信に関する各種制御を行う機能を備える。ここでいう各種制御を行う機能には、例えば以下の機能が含まれるが、これに限定される訳ではない。
・ビットエラーの数に基づく評価値を、通信回路3423を介して受信し、評価用信号の長さを制御する機能(「評価用信号の長さ(ビット数)に関する変形例」参照)
・通信回路3423を介して送信コイル30に電圧パターン(Txdata及びTxdata(バー))を印加(入力)する機能
・通信回路3423を介して電圧パターン(Rxdata)を取得する機能
・通信回路3423を介して取得された電圧パターン(Rxdata)をデコードする機能
・評価用信号におけるビットエラーの数を検出する機能
・評価用信号において検出されたビットエラーの数に基づく評価値、及び、複数の評価用信号において検出されたビットエラーの数に基づく合成評価値を取得(算出)する機能
・評価値又は合成評価値に基づいて、半導体チップ1間の位置関係に関する判定を行う機能
【0162】
生成部3402は、「複数の評価用信号の生成方法に関する変形例」で説明したPRBS生成器の機能を持つ。生成部3402は、半導体チップ1が備える専用のハードウェア回路として実装されてもよいし、半導体チップ1のプロセッサ10が実行するソフトウェア機能として実装されてもよい。
【0163】
記憶部3411は、メモリ20の記憶領域の一部により実現される。記憶部3411には、例えば評価用信号テーブル(図8)など、上で説明した様々な処理のために必要となる様々な情報が格納される。
【0164】
送信回路3421は、送信コイル30及び送信側変換回路50により実現される。送信回路3421は、送信コイル30と他の半導体チップ1の受信コイル40との間の誘導結合を介して他の半導体チップ1への無線送信を行う。
【0165】
受信回路3422は、受信コイル40及び受信側変換回路60により実現される。受信回路3422は、受信コイル40と他の半導体チップ1の送信コイル30との間の誘導結合を介して他の半導体チップ1からの無線受信を行う。
【0166】
送信回路3421及び受信回路3422により、通信回路3423が構成される。また、半導体チップ1が図2に示すように構成される場合には、通信回路3423はコイル35及び変換回路55により実現され、通信回路3423が送信回路3421及び受信回路3422の役割を果たす。
【0167】
<実施形態のまとめ>
上述の実施形態により、半導体チップなどの通信装置間の位置関係に関する判定を支援することが可能となる。
【0168】
なお、上述の実施形態において説明した各種機能を実装するソフトウェア(プログラム)及びハードウェアの具体的な構成については特に限定されない。技術的に可能である限り、任意のソフトウェア、任意のハードウェア、並びに任意のソフトウェア及び任意のハードウェアの任意の組合せが、上述の実施形態の範囲に含まれる。
【0169】
上述の実施形態は、少なくとも以下の通信装置、制御方法、及びプログラムを開示している。
[項目1]
第1の通信装置であって、
第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、
前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加手段であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加手段と、
を備える、第1の通信装置。
[項目2]
項目1に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンの前記第1の信号部分には、異なるビットパターンが符号化される、
第1の通信装置。
[項目3]
項目2に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンは第2の信号部分を含み、
前記第2の信号部分は、当該第2の信号部分を含む電圧パターンの前記第1の信号部分に符号化されるビットパターンを識別する識別情報を含む、
第1の通信装置。
[項目4]
項目1に記載の第1の通信装置であって、
所定の初期値に基づいて複数のビットパターンを疑似ランダムに生成する生成手段を更に備え、
各電圧パターンの前記第1の信号部分には、前記複数のビットパターンのうちの異なる1つが符号化され、
前記所定の初期値は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間で共有される、
第1の通信装置。
[項目5]
項目1乃至4のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
前記第1の信号部分は、伝送路符号に対応するパルス列を含み、
前記複数の電圧パターンに対応する複数のパルス列のうちの少なくとも1つについて、前記第2の通信装置におけるサンプリングタイミングを含まない部分的な期間が、前記伝送路符号に対応する電圧から反転した電圧を持つ、
第1の通信装置。
[項目6]
項目1乃至5のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンの前記第1の信号部分は、異なる伝送路符号に対応する、
第1の通信装置。
[項目7]
項目6に記載の第1の通信装置であって、
各電圧パターンは第2の信号部分を含み、
前記第2の信号部分は、当該第2の信号部分を含む電圧パターンの前記第1の信号部分に対応する伝送路符号を識別する識別情報を含む、
第1の通信装置。
[項目8]
項目1乃至7のいずれか1項に記載の第1の通信装置であって、
前記複数の電圧パターンのうちの第1の電圧パターンの前記第1の信号部分に対応する、前記第2の通信装置において検出されたビットエラーの数に基づく評価値を、前記通信回路を介して受信する受信手段と、
前記評価値に基づいて、前記第1の電圧パターンよりも後に前記第1のコイルに印加される第2の電圧パターンの前記第1の信号部分の長さを制御する制御手段と、
を更に備える、第1の通信装置。
[項目9]
第2の通信装置であって、
第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得手段であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得手段と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出手段と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定手段と、
を備える、第2の通信装置。
[項目10]
項目9に記載の第2の通信装置であって、
各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分には、異なるビットパターンが符号化され、
各送信電圧パターンは第2の送信信号部分を含み、
前記第2の送信信号部分は、当該第2の送信信号部分を含む送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分に符号化されるビットパターンを識別する識別情報を含み、
前記検出手段は、各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する前記第1の受信信号部分から取得されるビットパターンと、前記第2の送信信号部分に対応する第2の受信信号部分から取得される識別情報により識別されるビットパターンとを比較することにより、前記ビットエラーの数を検出する、
第2の通信装置。
[項目11]
項目9又は10に記載の第2の通信装置であって、
各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は、異なる伝送路符号に対応し、
各送信電圧パターンは第2の送信信号部分を含み、
前記第2の送信信号部分は、当該第2の送信信号部分を含む送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分に対応する伝送路符号を識別する識別情報を含み、
前記検出手段は、各受信電圧パターンについて、前記第2の送信信号部分に対応する第2の受信信号部分から取得される識別情報により識別される伝送路符号に基づいて、前記第1の送信信号部分に対応する前記第1の受信信号部分をデコードする、
第2の通信装置。
[項目12]
項目9乃至11のいずれか1項に記載の第2の通信装置であって、
前記判定手段は、前記複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づく合成評価値をL個の閾値と比較することにより前記位置関係に関する判定を行い、
Lは1以上の整数である、
第2の通信装置。
[項目13]
項目12に記載の第2の通信装置であって、
Lは2以上の整数である、
第2の通信装置。
[項目14]
項目12又は13に記載の第2の通信装置であって、
前記L個の閾値の各々は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の個別の位置関係に関連付けられている、
第2の通信装置。
[項目15]
第1の通信装置が実行する制御方法であって、
前記第1の通信装置は、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記制御方法は、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加工程であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加工程を備える、
制御方法。
[項目16]
第2の通信装置が実行する制御方法であって、
前記第2の通信装置は、第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記制御方法は、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得工程であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得工程と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出工程と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定工程と、
を備える、制御方法。
[項目17]
第1の通信装置のプロセッサが実行するためのプログラムであって、
前記第1の通信装置は、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記プログラムは、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加工程であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加工程を実行させる、
プログラム。
[項目18]
第2の通信装置のプロセッサが実行するためのプログラムであって、
前記第2の通信装置は、第2のコイルを含む通信回路であって、前記第2のコイルと第1の通信装置の第1のコイルとの間の誘導結合を介して前記第1の通信装置との無線通信を行う、通信回路を備え、
前記プログラムは、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記第1のコイルに印加された複数の送信電圧パターンに対応する複数の受信電圧パターンを、前記通信回路を介して取得する取得工程であって、各送信電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の送信信号部分を含み、各送信電圧パターンの前記第1の送信信号部分は異なる周波数特性を持つ、取得工程と、
各受信電圧パターンについて、前記第1の送信信号部分に対応する第1の受信信号部分におけるビットエラーの数を検出する検出工程と、
前記複数の受信電圧パターンに対応する複数の第1の受信信号部分において検出されたビットエラーの数に基づいて、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の位置関係に関する判定を行う判定工程と、
を実行させる、プログラム。
【0170】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0171】
1…半導体チップ、10…プロセッサ、20…メモリ、30…送信コイル、40…受信コイル、50…送信側変換回路、60…受信側変換回路
【要約】
【課題】半導体チップなどの通信装置間の位置関係に関する判定を支援する技術を提供する。
【解決手段】第1の通信装置であって、第1のコイルを含む通信回路であって、前記第1のコイルと第2の通信装置の第2のコイルとの間の誘導結合を介して前記第2の通信装置との無線通信を行う、通信回路と、前記通信回路を介して複数の電圧パターンを前記第1のコイルに印加する印加手段であって、各電圧パターンは前記第2の通信装置においてビットエラーの数の検出に用いられる第1の信号部分を含み、各電圧パターンの前記第1の信号部分は異なる周波数特性を持つ、印加手段と、を備える、第1の通信装置を提供する。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図34