(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2022564158
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2021060629
(87)【国際公開番号】W WO2021214273
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-04
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・トレブナー
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514603(JP,A)
【文献】国際公開第2019/001919(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0298932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤(27)の用量を投与するための薬物送達デバイス(1)であって、電子データロギングデバイス(100)と協働するように動作可能であり:
薬剤(27)を収容するハウジング(32)であって、電子データロギングデバイス(100)を受け、かつ/または電子データロギングデバイス(100)と機械的に係合するようにさらに構成されているハウジング(32)と、
第1のデバイス構成要素(301)が第1の位置状態(351)から少なくとも第2の位置状態(352)まで第2のデバイス構成要素(302)に対して可動である、第1のデバイス構成要素(301)および第2の
デバイス構成要素(302)と、
を含み、
ここで、第1のデバイス構成要素(301)は第1の外面(311)を含み、第2のデバイス構成要素(302)は第2の外面(312)を含み、第1の外面(311)および第2の外面(312)のうちの少なくとも一方は、電子データロギングデバイス(100)と外部電子デバイス(65)との間の通信リンク(66)を確立するためのペアリングコード(320)の少なくとも第1のコード部分(321)を含み、
ペアリングコード(320)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2のデバイス構成要素(302)に対して第2の位置状態(352)にあるときにのみ、薬剤送達デバイス(1)の外側から視覚的に特定可能である、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
第1のコード部分(321)またはペアリングコード(320)は、第1の外面(311)に設けられ、第1のコード部分(321)またはペアリングコード(320)の少なくとも一部は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)から外れているとき、第2のデバイス構成要素(302)によって隠蔽される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項3】
第1の外面(311)に、第1のコード部分(321)およびペアリングコード(320)の全体のうちの一方を備え、第1の外面(311)は、
第1のコード部分(321)の数字または文字の列のフォント、サイズおよびスタイルと同一または同等の数字または文字の列のフォント、サイズおよびスタイルであるような、第1のコード部分(321)とまたはペアリングコード(320)と区別がつかない第1の隠蔽コード部分(335)
をさらに備え、第1の隠蔽コード部分(335)の少なくとも一部と第1のコード部分(321)およびペアリングコード(320)のうちの少なくとも一方との区別がつかない複合体は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)から外れているとき、薬物送達デバイス(1)の外側から識別可能である、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
第1の隠蔽コード部分(335)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)にあるとき、第2のデバイス構成要素(302)によって隠蔽される、請求項3に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項5】
ペアリングコード(320)および第1のコード部分(321)のうちの少なくとも一方は、第1の方向(3)に沿って延び、第1のデバイス構成要素(301)は、第2のデバイス構成要素(302)に対して第1の方向(3)に沿って可動である、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
ペアリングコード(320)は、第1のコード部分(321)と第2のコード部分(322)とを含み、第1のコード部分(321)は第1の外面(311)に設けられ、第2のコード部分(322)は第2の外面(312)に設けられている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項7】
第1のコード部分(321)および第2のコード部分(322)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)にあるとき、相互に再結合してペアリングコード(320)を構成する、請求項
6に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項8】
第2の外面(312)に、
第2のコード部分(322)の数字または文字の列のフォント、サイズおよびスタイルと同一または同等の数字または文字の列のフォント、サイズおよびスタイルであるような、第2のコード部分(322)と区別がつかない第2の隠蔽コード部分(336)をさらに備え、第1のコード部分(321)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)にあるとき、第2のコード部分(322)と整列する、請求項
6または7に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項9】
第1のコード部分(321)またはその一部は、第1のデバイス構成要素(301)が第2の位置状態(352)から外れているとき、第2の隠蔽コード部分(336)と整列する、請求項8に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項10】
第2の隠蔽コード部分(336)および第2のコード部分(322)のうちの少なくとも一方は、第2の方向(4)に沿って延び、第1のデバイス構成要素(301)は、第2のデバイス構成要素(302)に対して第2の方向(4)に沿って可動である、請求項8または9に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
第1のマーカ(303)および第2のマーカ(304)をさらに含み、ここで、第1のマーカ(303)は、第1のデバイス構成要素(301)によって提供されるか、または該第1のデバイス構成要素に連結され、第2のマーカ(304)は、第2のデバイス構成要素(302)によって提供されるか、または該第2のデバイス構成要素に連結され、第1のマーカ(303)には、第1のデバイス構成要素(301)が第2のデバイス構成要素(302)に対して動くとき、第2のマーカ(304)に対する動きが生じ、第1のマーカ(303)および第2のマーカ(304)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2のデバイス構成要素(302)に対して第2の位置状態(352)に達したとき、視覚的に整列する、視覚的に重なる、または機械的に係合する、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
第1のデバイス構成要素(301)は、ペン型注射デバイス(30)の用量ダイヤル(12)、ダイヤル延長部(70)、数字スリーブ(80)および保護キャップ(18)のうちの1つである、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
第2のデバイス構成要素(302)は、ペン型注射デバイス(30)のハウジング(32)、ハウジング(32)の本体(10)、およびカートリッジホルダ(14)のうちの1つである、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
薬剤(26)が充填されたカートリッジ(6)がハウジング(32)の内部に配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
薬物送達デバイス(1)の電子データロギングデバイス(100)を外部電子デバイス(65)とペアリングする方法であって、薬物送達デバイス(1)は、第2のデバイス構成要素(302)に対して可動の第1のデバイス構成要素(301)を含み、該第1のデバイス構成要素(301)は第1の外面(311)を含み、第2のデバイス構成要素(302)は第2の外面(312)を含み、第1の外面(311)および第2の外面(312)のうちの少なくとも一方は、ペアリングコード(320)の少なくとも第1のコード部分(321)を含み、ペアリングコード(320)は、第1のデバイス構成要素(301)が第2のデバイス構成要素(302)に対して第2の位置状態(352)にあるときにのみ、薬物送達デバイス(1)の外側から視覚的に特定可能であり、方法は:
外部電子デバイス(65)およびデータロギングデバイス(100)のうちの少なくとも一方をペアリングモードに設定する工程と、
第1のデバイス構成要素(301)を、ペアリングコード(320)が識別不可能である第1の位置状態(351)から第2の位置状態(352)に、第2のデバイス構成要素(302)に対して動かす工程と、
薬剤送達デバイス(1)の外側からペアリングコード(320)を視覚的に特定する工程と、
外部電子デバイス(65)とデータロギングデバイス(100)との間の通信リンク(66)を確立するためのペアリングコード(320)を使用する工程と、
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤の用量を投与するための薬物送達デバイスの分野に関する。本開示は、特に、電子データロギングデバイスと協働するように動作可能な薬物送達デバイスに関し、データロギングデバイスは、外部電子デバイスにさらに接続可能である。本開示は、特に、薬物送達デバイスに好適なデータロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクを確立または提供する分野に関する。本開示は、さらに、薬物送達デバイスの電子データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の1回分の用量または複数回分の用量を設定し投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体当技術分野でよく知られている。一般に、こうしたデバイスは、通常のシリンジと実質的に同様の目的を有することがある。
【0003】
注射デバイスまたは吸入デバイスなどの薬物送達デバイス、たとえば、ペン型注射器は、多くのユーザ固有の要件を満たさなければならない。たとえば、糖尿病などの慢性疾患を患っている患者の場合、患者は身体的に虚弱である可能性があり、視力も低下している可能性がある。したがって、特に自宅での投薬が意図された好適な薬物送達デバイスは、構造が頑強である必要があり、使用が容易でなければならない。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および全体的な取扱いは、分かりやすくかつ容易に理解できなければならない。こうした注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および続く投薬を提供するべきである。さらに、用量設定は用量投薬の手順とともに、操作が容易でなければならず、かつ明確でなければならない。
【0004】
薬物送達デバイスによって投薬または排出すべき薬剤は、多用量カートリッジに提供および収容することができる。こうしたカートリッジは、通常、ガラス製バレルを含み、このバレルは、穿孔可能なシールによって遠位方向に封止されるとともに、栓によって近位方向にさらに封止される。再使用可能な薬物送達デバイスでは、空のカートリッジは新たなカートリッジと交換可能である。それとは対照的に、使い捨てタイプの薬物送達デバイスには、こうしたカートリッジが容易に装備される。そうした薬物投薬デバイスは、カートリッジ内の薬剤が投薬されるかまたは使い切られたとき、完全に廃棄される。
【0005】
ペン型注射デバイスなど、いくつかの薬物送達デバイスでは、ユーザは、等しいかまたは可変のサイズの用量を、その用量を増減させるために注射デバイスの本体またはハウジングに対して用量ダイヤルを時計回りまたは反時計回りの方向に回転させることにより、設定しなければならない。液体薬剤の用量を注射および排出するために、ユーザは、遠位方向に、したがって注射デバイスの本体またはハウジングに向かって、トリガまたは用量ボタンを押し下げなければならない。通常、ユーザは、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブの近位端に位置する用量ボタンに対して、遠位に向けられた圧力をかけるために自身の親指を使用し、一方で、同じ手の残りの指で注射デバイスのハウジングを保持する。
【0006】
機械的に実装された注射デバイスの場合、注射デバイスの使用中に注射関連データの正確な、信頼性の高い、準自動化監視および/または収集を可能にすることが望ましい。機械的に動作する注射デバイスに、注射デバイスのユーザが引き起こす操作を監視するように構成された、電子的に実装されたアドオンデバイスまたはデータロギングデバイスを備えることができる。
【0007】
データロギングデバイスによっては、注射デバイスに取り付けられるように構成される場合がある。データロギングデバイスによっては、注射デバイスに埋め込まれるかまたは注射デバイス内に配置される場合がある。薬物送達デバイスによっては、電子的に実装される場合があり、そのため、それらは、薬物送達デバイスの動作を経時的に監視するように構成されるとともにそのように動作可能な、一体型電子ユニットを含む。ここでは、データロギングデバイスは、一体型電子ユニットによって提供される。
【0008】
投与の詳細および患者固有のデータは、それぞれの薬物送達デバイスの繰返しの使用中に、こうしたデータロギングデバイスに記録および記憶することができる。一般に、たとえば患者の監視のためかつ/または長期療法を最適化するために、データロギングデバイスに記憶されるそれぞれのデータにアクセスすることができることが望ましい。データロギングデバイスは、外部電子デバイスと通信リンクを確立するように構成することができる。通信リンクは、無線式である場合もあれば有線式である場合もある。データロギングデバイスに収集されるかまたは少なくとも一時的に記憶されるデータは、かなり機密性が高くかつ/または取扱いに注意を要する可能性がある。このデータの誤用または不正アクセスは、防止および回避されるべきである。
【0009】
データへの不正アクセスを防止するために、データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクの確立には、認証が必要な場合がある。ここで、データロギングデバイスおよび/または外部電子デバイスは、好適なキーまたはコードの確認または入力があった場合にのみ通信リンクを確立するように実装することができる。一般に、こうしたペアリングコードは、ペアリングコードが認可された人々にのみ分かることを条件として、データロギングデバイスに記憶されたデータの誤用または不正アクセスに対するセキュリティを提供することができる。
【0010】
一方、こうしたキーまたはコードは、認可された人々、たとえば医療提供者または患者が無条件に利用可能であるべきである。一方、十分なデータセキュリティを提供するために、こうしたペアリングコードは、薬物送達デバイスの外側から直接識別可能であってはならない。規制要件は、こうしたペアリングコードが注射デバイスまたはデータロギングデバイスの外側から可視でなければならないことをさらに明記する場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、電子データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクを確立するためのペアリングコードを提供するように構成された、改善された薬物送達デバイスを提供することが必要とされている。一方では、薬物送達デバイスは、ペアリングコードへの不正アクセスを防止すべきである。他方では、薬物送達デバイスは、認可された人々のためにペアリングコードに対する妨げられずかつ無条件なアクセスを効果的に提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した必要性を解決するために、独立請求項の構成に従って、薬剤の用量を投与するための改善された薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスの電子データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする方法とが提供される。デバイスおよび方法のさらなる構成は、従属請求項の主題である。
【0013】
一態様では、薬剤の用量を投与するための薬物送達デバイスが提供される。薬物送達デバイスは、電子データロギングデバイスと協働するように動作可能である。薬物送達デバイスは、薬剤を収容するハウジングを含む。ハウジングは、さらに、電子データロギングデバイスを受けるか、または電子データロギングデバイスと機械的に係合するように構成されている。ハウジングは、データロギングデバイスを収容するように構成することができる。データロギングデバイスは、薬物送達デバイスのハウジングにまたは薬物送達デバイスの可動構成要素に連結可能な別個のデバイスとして実装してもよい。他の例では、電子データロギングデバイスは、薬物送達デバイスに組み込まれ、薬物送達デバイスに属する。
【0014】
薬物送達デバイスは、第1のデバイス構成要素を含む。薬物送達デバイスは、第2のデバイス構成要素をさらに含む。第1のデバイス構成要素は、少なくとも第1の位置状態から少なくとも第2の位置状態まで、第2のデバイス構成要素に対して可動である。
【0015】
第1のデバイス構成要素は、第1の外面を含む。第2のデバイス構成要素は、第2の外面を含む。第1の外面および第2の外面のうちの少なくとも一方は、ペアリングコードの少なくとも第1のコード部分を含む。ペアリングコードは、電子データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクを確立するために使用可能である。ペアリングコードは、通信リンクを確立するために必要とすることができる。ペアリングコードは、通信リンクを確立するために、電子データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのうちの少なくとも一方によって要求されるセキュリティコードであり得る。ペアリングコードは、電子データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の接続を確立するために必要なキーを含むかまたは構成することができる。概して、ペアリングコードは、データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の安全な接続を確立するために使用可能であるかまたは必要である。
【0016】
ペアリングコードは、ボンディングコードまたはセッションキーのうちの少なくとも一方をも含むことができ、または構成することができる。ペアリングコードは、薬物送達デバイスと電子データロギングデバイスとの間の長期的な認証を確立するためのパスワードまたはパスフレーズとしての役割を果たすこともできる。
【0017】
典型的には、電子データロギングデバイスおよび外部電子デバイスは、各々、無線、したがって機械的に非接触の通信インターフェースを含む。電子データロギングデバイスの無線通信インターフェースと外部電子デバイスとの間の通信リンクを確立するために、無線通信インターフェースのうちの少なくとも一方は、たとえば明確に定義された無線通信規格に基づいて、ペアリングルーチンまたはペアリング手順を実行するように構成されている。
【0018】
概して、データロギングデバイスと薬物送達デバイスとの間の通信リンクおよび通信方法は、特定の無線通信技術の無線通信規格に限定されない。本開示は、概して、たとえばデータロギングデバイスおよび薬物送達デバイスそれぞれの、通信インターフェース間の安全な接続を確立するためにかつ/または確立する間に認証を必要とする、利用可能なすべてのタイプの機械的に非接触な通信リンクに適用可能である。
【0019】
いくつかの例では、通信リンクは、WiFi、Bluetooth、RFID、NFC、GSM、UMTS、LTEなど、非接触充電の、無線周波数ベースの通信を提供またはサポートすることができる、電磁通信リンクである。さらなる例では、通信リンクは、赤外線または可視スペクトル領域における光伝送に基づく。さらなる例では、通信リンクは音響信号に基づいている。
【0020】
ペアリングルーチンの実行は、認証工程を含む。ここで、外部電子デバイスおよび電子データロギングデバイスのうちの少なくとも一方は、外部電子デバイスおよび電子データロギングデバイスのうちの他方に関連付けられたペアリングコードを要求するように動作可能である。いくつかの実施形態では、典型的には電子データロギングデバイスに関連付けられたペアリングコードは、外部電子デバイスに通信または送信することができる。それぞれの通信リンクを確立することができる前に、ユーザに対して、電子データロギングデバイスおよび外部電子デバイスいずれかのうちの少なくとも一方の入力インターフェースにペアリングコードを入力することにより、ペアリングコードを確認するように、促すことができる。他の実施形態では、電子データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのうちの少なくとも一方は、通信リンクが確立される前にそれぞれのデバイスのユーザによって確認および/または承認されなければならないペアリングコードを、視覚的にまたは可聴的に提示するように動作可能であり得る。
【0021】
いくつかの例では、薬物送達デバイスに設けられたペアリングコードは、薬物送達デバイス、および/または薬物送達デバイスに意図されたかまたは薬物送達デバイスの内部に配置された薬剤を特徴付ける。したがって、異なるタイプの薬物送達デバイスは、異なるペアリングコードによって互いに識別することができる。同一の薬物送達デバイス、すなわち同じ薬剤が搭載された薬物送達デバイスには、共通のまたは同じペアリングコードを設けることができる。
【0022】
ペアリングコードは、薬物送達デバイスの内部に位置する薬剤の一意の情報または一意の識別を含むことができる。これは、特に、薬物送達デバイスが充填済み薬物送達デバイス、たとえば、1種類の薬剤のみが搭載されている充填済み注射デバイスである場合に、適用される。
【0023】
データロギングデバイスを薬物送達デバイスのハウジングに配置するかまたは組み込むことにより、データロギングデバイスは、薬物送達デバイスの構成を追跡することができる。データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングすると、たとえば、薬物送達デバイスに設けられたペアリングコードを外部電子デバイスに入力するかまたは外部電子デバイスで確認することにより、外部電子デバイスに、薬物送達デバイスの内部に位置する薬剤の一意の情報または一意の識別が本質的に提供される。
【0024】
さらにまた代替的に、たとえば、電子データロギングデバイスが、薬物送達デバイスの内部または上に固定してかつ取外し不能に配置される場合、薬剤のタイプ、および/または電子データロギングデバイスが実際に取り付けられている薬物送達デバイスのタイプを特定するのを可能にするのに十分な情報を、電子データロギングデバイスに予めプログラムして提供することができる。さらに、電子データロギングデバイスを薬剤送達デバイスに組み込むかまたは薬剤送達デバイスと組み立てる際またはその間に、第1および/または第2のデバイス構成要素上に、かつ電子データロギングデバイスの電子メモリに、ペアリングコードを提供することができる。また、薬物送達デバイス自体に設けられたペアリングコードと、電子データロギングデバイスのメモリに記憶された無関係なペアリングコードとの間に、一意の割当てを提供することができる。
【0025】
いくつかの例では、ペアリングコードは、少なくとも3桁、少なくとも4桁、少なくとも5桁、少なくとも6桁、またはそれよりも大きい任意の数の桁を含む。ここで、桁は、数字、文字、または他の任意の視覚的に特定可能な記号を含むことができる。
【0026】
ペアリングコードは、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態にあるときにのみ、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能である。したがって、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態にある限り、ペアリングコードは薬物送達デバイスの外側から識別可能である。他のすべての位置状態では、たとえば、第1の位置状態、または第1のデバイス構成要素の第2のデバイス構成要素に対するさらなる位置状態では、ペアリングコードは、薬物送達デバイスの外側から識別不可能である。
【0027】
ここで、ペアリングコードまたはその少なくとも一部は、第1または第2のデバイス構成要素のうちの少なくとも一方によって隠蔽するかまたは覆うことができる。いくつかの例では、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れているかまたはオフセットしている場合であっても、ペアリングコードは薬物送達デバイスの外側から可視であり得る。ここで、ペアリングコードには、ペアリングコードと区別ができない隠蔽コード部分など、補足的なコードを設けることができる。コードは、可視であっても、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態から外れている限り、視覚的に明確に特定することができない。
【0028】
薬物送達デバイスは、吸入器として、注射デバイスとして、または注入デバイスとして実装することができる。薬物送達デバイスは、ペン型注射器として実施することができる。電子データロギングデバイスは、薬物送達デバイスに組み込んでもよく、または、薬物送達デバイスに解放可能にまたは解放不能に取り付けられるように構成された別個のデータロギングデバイスまたはアドオンデバイスとして提供してもよい。典型的には、データロギングデバイスは、薬剤の用量の設定および/または投薬を検出するようにかつ/または定量的に決定するように構成された、少なくとも1つの検知配置を含む。典型的には、データロギングデバイスは、たとえばプリント回路基板(PCB)上に設けられた、集積回路を含む。データロギングデバイスは、典型的には、プロセッサおよびメモリを含む。データロギングデバイスは、通信インターフェースをさらに含む。通信インターフェースは、外部電子デバイスとの無線通信リンクを確立するために、無線トランシーバを含むことができる。
【0029】
外部電子デバイスは、スマートウォッチ、アクティビティウォッチ、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはパーソナルコンピュータなどのパーソナルデジタルデバイスとして実装することができる。データロギングデバイスおよび外部電子デバイスは、たとえばRFIDおよびNFCまたはBluetoothなどの無線周波数通信に基づく、標準化された無線通信プロトコルに従って無線通信リンクを確立するように実装することができる。
【0030】
電子データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのペアリングルーチンは、特に、ペアリングコードを要求するようにまたは確認するように実装される。薬物送達デバイスによって提供されるようなペアリングコードは、データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのいずれかのうちの少なくとも一方に入力する必要がある場合がある。いくつかの例では、ペアリングコードは、たとえば、データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのうちの少なくとも一方によって、薬物送達デバイスのユーザに対して視覚的に表示することができる。次いで、ユーザに対して、図示されたペアリングコードが薬物送達デバイスに設けられているペアリングコードと同一であることを確認するように促すことができる。このように、電子データロギングデバイスに記憶されたデータの誤用を効果的に防止することができる。
【0031】
通信リンクを確立するために必要であり得るペアリングコードは、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態にあるときにのみ、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能または識別可能である。第2のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素の他のすべての利用可能な位置状態では、ペアリングコードは隠蔽されているか、または第1のデバイス構成要素および/または第2のデバイス構成要素の外側に設けられた他のコード情報と区別することができない。
【0032】
このように、薬物送達デバイスの改善は、2つの代替的な手法を提供する。1つの手法では、第1のデバイス構成要素および第2のデバイス構成要素のうちの少なくとも一方に設けられたペアリングコードは、第1のデバイス構成要素が、第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態から外れているか、または第2の位置状態と重なっていない限り、第1および第2のデバイス構成要素のうちの他方によって少なくとも部分的に覆われる。この手法では、第1および第2のデバイス構成要素は、典型的には、交互配置様式で互いに対して変位可能である。
【0033】
したがって、第1および第2のデバイス構成要素のうちの、少なくとも第1のコード部分を備える構成要素は、第1および第2のデバイス構成要素のうちの他方の内部に少なくとも部分的に受け入れられる。したがって、第1および第2のデバイス構成要素のうちの少なくとも一方の外面に設けられた第1のコード部分の少なくとも一部は、第1および第2のデバイス構成要素のうちの他方によって隠蔽される。ここで、第1および第2のデバイス構成要素は相互に重なる。それらは、交互配置様式または少なくとも部分的に入れ子様式で配置することができる。第1の位置状態では、重なりの程度が比較的大きく、それにより、第1のコード部分の少なくとも一部が覆われるかまたは隠蔽される。第2の位置状態にあるときは、第1の符号部分またはペアリングコードの全体を明らかにするように、相互の重なりの程度が減少する。
【0034】
第2の代替手法によれば、ペアリングコードは、第1および第2のデバイス構成要素の外側で恒久的に可視である。ここで、ペアリングコードに、補足的なコード、したがって、ペアリングコードと区別できない隠蔽コード部分が与えられる。両方、すなわち、ペアリングコードと補足的な隠蔽コード部分との両方が薬物送達デバイスの外側で可視である限り、ペアリングコードおよび隠蔽コードの区別できない組合せにおいてまたはその組合せから、それぞれのユーザが関連するペアリングコードの全長および位置が分からないため、ペアリングコードを視覚的に特定することができない。
【0035】
ここで、作成されたペアリングコードは、補足的な隠蔽コード部分の間に隠すことができる。第1のデバイス構成要素を第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態に動かしたときにのみ、補足的なかつ/または隠蔽コード部分が隠蔽されるかまたは覆われ、それにより、残りのペアリングコードが薬物送達デバイスの外側から識別可能になる。
【0036】
本文脈において、第1のデバイス構成要素と第2のデバイス構成要素との間の位置状態は、第1のデバイス構成要素と第2のデバイス構成要素との間の相対的な位置とともに、相対的な向きを含む。第1および第2の位置状態において、第1のデバイス構成要素の位置および向きのうちの少なくとも一方は、第2のデバイス構成要素のそれぞれの位置または向きとは異なる。
【0037】
第1および第2のデバイス構成要素は、直接または間接的に機械的に係合させることができる。さらに、第1および第2のデバイス構成要素は、ねじ係合するかまたは摺動可能に係合することができる。第1および第2のデバイス構成要素は、回転不能に係合させてもよく、または回転不能にロックさせてもよい。
【0038】
第1のデバイス構成要素の第1の位置状態から第2の位置状態への動きは、回転運動、摺動運動、または螺旋運動のうちの少なくとも1つ、したがって、回転運動および摺動運動の組合せを含むことができる。第1および第2のデバイス構成要素は、たとえばねじ係合によるかまたは溝付きリンクによって、恒久的に連結することができる。
【0039】
第1および第2のデバイス構成要素の第1の位置状態は、たとえば、薬物送達デバイスが患者または顧客に手渡される、それぞれの構成要素の初期状態と一致することができる。第1および第2のデバイス構成要素の第2の位置状態は、特定のデバイス構成と一致することができる。いくつかの例では、薬剤の用量を投与するための薬物送達デバイスの準備には、第2のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素の動きが必要である。いくつかの例では、薬剤の用量の設定には、第1のデバイス構成要素を第2のデバイス構成要素に対して動かすことが必要であり、またはその逆が必要である。いくつかの例では、薬剤の用量を排出または投薬には、第2のデバイス構成要素に対して第1のデバイス構成要素を動かすことが必要である。
【0040】
第2のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素の第2の位置状態は、第2のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素の特徴的な相対位置および/または相対向きである。薬物送達デバイスのユーザは、この特徴的な部分を十分に認識しており、第1のデバイス構成要素を第2の位置状態に達するように第2のデバイス構成要素に対して動かすことにはほとんど苦労しない。
【0041】
典型的には、ペアリングコードが視覚的に特定可能であるか、またはペアリングコードが薬物送達デバイスの外側から識別可能である、第2の位置状態は、初期デバイス構成と一致しない。ペアリングコードを薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能にするには、常に、目下のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素の、明確に定義されたユーザが引き起こす動きが必要である。
【0042】
概して、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して動かされることのみが関係する。第1のデバイス構成要素に、環境に対する動きが実際に生じるか否かは、まったく無関係である。第2の位置状態に達するために、第2のデバイス構成要素が第1のデバイス構成要素に対して動かされる間、第1のデバイス構成要素は、たとえばユーザの手によって固定することができる。
【0043】
さらなる例によれば、第1のコード部分またはペアリングコードは、第1の外面に設けられる。第1のコード部分の少なくとも一部またはペアリングコードの少なくとも一部は、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れているとき、第2のデバイス構成要素によって隠蔽される。このように、第1のデバイス構成要素が、第2の位置状態から外れているかまたは第2の位置状態と重なっていない限り、ペアリングコードの全体は、薬物送達デバイスの外側から依然として視覚的に特定可能ではない。ここで、第1のコード部分を備える、またはペアリングコードの全体を備える第1の外面のそれぞれの部分は、第2のデバイス構成要素によって覆われている。典型的には、第2のデバイス構成要素、またはその少なくとも第1のデバイス構成要素と空間的に重なる部分は、不透明である。
【0044】
このように、第1のコード部分またはペアリングコードの全体は、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態に達すると、明らかになる。第1のデバイス構成要素、したがって第1のコード部分またはペアリングコードの全体が、第1の位置状態にある限り、少なくとも第1のコード部分の一部またはペアリングコードの全体のそれぞれの部分は、薬物送達デバイスの外側から識別不可能である。この位置状態において、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れている限り、ペアリングコードは、その全体を、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定することができない。たとえば薬剤送達デバイスに取り付けられるかまたは一体化された電子データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信ペアリングは、可能ではなく、電子データロギングデバイスに記憶されたデータは、誤用に対して保護される。
【0045】
別の例によれば、第1の外面に、第1のコード部分およびペアリングコードのうちの一方を備える。第1の外面には、第1の隠蔽コード部分をさらに備える。隠蔽コード部分は、第1のコード部分とまたはペアリングコードと区別がつかない。隠蔽コード部分の少なくとも一部と、第1のコード部分およびペアリングコードのうちの少なくとも一方との区別がつかない複合体(composition)は、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れたとき、たとえば、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第3の位置状態にあるとき、薬物送達デバイスの外側から識別可能である。
【0046】
隠蔽コード部分は、ペアリングコードと比較して、同じタイプのコードであり得る。いくつかの例では、ペアリングコードは、数字または文字の列を含むことができる。隠蔽コード部分は、同等の数字または文字の列を含むことができる。ペアリングコードおよび隠蔽コード部分の列のフォント、サイズおよびスタイルは、同一または同等であり、したがって区別がつかない可能性がある。また、隠蔽コード部分は、第1のコード部分および/またはペアリングコードと直接位置合せすることができる。
【0047】
第1のコード部分またはペアリングコードは、第1の隠蔽コード部分によって埋め込むかまたは囲むことができる。第1の隠蔽コード部分と、第1のコード部分およびペアリングコードのうちの少なくとも一方との複合体の列の長さについて、ユーザは認識することができない。したがって、ペアリングコードは、すなわちペアリングコードまたはその第1のコード部分が、第1の外面に第1の隠蔽コード部分とともに設けられている限り、隠蔽コード部分と混合されるかまたは混ざり合い、視覚的に区別がつかなくなる。
【0048】
いくつかの例では、第1のコード部分またはペアリングコードの全体は、第1のデバイス構成要素が第1の位置状態にあるとき、完全に不可視とすることができ、したがって第2のデバイス構成要素によって完全に隠蔽することができる。第1のデバイス構成要素が第1の位置状態から第2の位置状態に向かって動かされるに従い、第1のコード部分またはペアリングコードの全体は、連続的に可視となる。
【0049】
第2の位置状態に到達すると、関連する第1のコード部分またはペアリングコードの全体は、第2のデバイス構成要素から明らかにすることができる。第2のデバイス構成要素が、第3の位置状態に向かってさらに同じ方向に動かされるに従い、第1のコード部分および/またはペアリングコードの全体に加えて、第1の外面に設けられた隠蔽コード部分が、可視となり、明らかとなる。
【0050】
第1の隠蔽コード部分は、第1のコード部分とまたはペアリングコードと概して区別がつかないため、第1の隠蔽コード部分の第1のコード部分とのかつ/またはペアリングコードとの組合せは、第1のデバイス構成要素の第1の外面に設けられるような区別のつかないコード複合体において、関連するペアリングコードまたはその関連するコード部分を特定することができないため、ユーザにとって事実上使用不可能である。
【0051】
これにより、電子データロギングデバイスに記憶されたデータに対する誤用または不正アクセスに対するさらなる安全機能が提供される。ペアリングコードの全体を視覚的に特定するには、第2のデバイス構成要素に対する第1のデバイス構成要素のかなり特定的でありかつ明確に定義された第2の位置状態に関する知識が必要である。
【0052】
別の例によれば、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態にあるとき、第1の隠蔽コード部分は、第2のデバイス構成要素によって隠蔽される。ここで、第1の隠蔽コード部分は、第2のデバイス構成要素によって覆い隠すかまたは遮蔽することができる。その結果、第2の位置状態にあるとき、関連する部分、したがって第1のコード部分またはペアリングコードの全体は、第1の隠蔽コード部分の、第1のコード部分およびペアリングコードのうちの少なくとも一方との複合体と、またはその複合体において、区別がつくようになる。
【0053】
別の例によれば、ペアリングコードは、第1のコード部分および第2のコード部分を含む。第1のコード部分は、第1の外面に設けられる。第2のコード部分は、第2の外面に設けられる。ここで、ペアリングコードの全体は、第1のデバイス構成要素と第2のデバイス構成要素との間で分割される。第1のコード部分は、第1のデバイス構成要素の第1の外面に設けられ、第2のコード部分は、第2のデバイス構成要素の第2の外面に設けられる。ペアリングコードの全体は、第1のコード部分と第2のコード部分との組合せである。したがって、ペアリングコードの全体を視覚的に特定するためには、第1のコード部分および第2のコード部分が、再結合しなければならず、かつ/または、互いに補完しなければならない。
【0054】
この例では、第1のコード部分および第2のコード部分の両方が、薬物送達デバイスの外側から恒久的に可視であり得る。第2のコード部分において第1のコード部分からペアリングコードを再結合するために、第1のコード部分および第2のコード部分を明確に定義されたまたは所定の様式で配置することが必要である場合がある。いくつかの例では、第1のコード部分および第2のコード部分は、薬物送達デバイスのユーザにのみ分かる特定の構成で位置合せする必要がある。
【0055】
いくつかの例では、第1のコード部分および第2のコード部分のうちの一方のみが、第1の外面および第2の外面のうちの一方においてそれぞれ恒久的に可視であり得る。第2のデバイス構成要素に対して第1のデバイス構成要素を動かすことにより、第1および第2の外面の相互の空間的かつ非透過的な重なりの程度を変更することができる。
【0056】
したがって、第1の位置状態では、第2のコード部分のみが薬物送達デバイスの外側から可視とすることができ、一方、第1のコード部分またはその一部は、第2のデバイス構成要素によって隠蔽されたままである。第1のデバイス構成要素を第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態まで動かすことは、第2のコード部分に対する第1のコード部分の動きを伴う。ここで、第1のコード部分は、第2のデバイス構成要素から明らかとすることができる。
【0057】
加えて、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対し第2の位置状態にあるとき、第1のコード部分は、第2のコード部分を補完して、ペアリングコードを構成するかまたは再結合することができる。
【0058】
第1のデバイス構成要素が第2の位置状態にあるとき、第1のコード部分および第2のコード部分は、相互に再結合し、ペアリングコードを構成する。
【0059】
他の構成では、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態から外れているとき、薬物送達デバイスの外側から可視である第1のコード部分と、薬物送達デバイスの外部から可視であるような第2のコード部分と組合せもまた、相互に整列するかまたは再結合する可能性があるが、動作不能である可能性があり、ペアリングコードを提供することができない。第2の位置状態と区別がつくかまたは異なる、第1のデバイス構成要素および第2のデバイス構成要素のこうした位置状態において、第1のコード部分および第2のコード部分の再結合は、ペアリングコードと区別がつき、したがって、電子データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクを設定するためまたは確立するために必要なペアリングコードを、表すかまたは再構成することはない。
【0060】
別の例によれば、ペアリングコードおよび第1のコード部分のうちの少なくとも一方は、第1および第2のデバイス構成要素のうちの少なくとも一方において、したがって第1の外面および第2の外面のうちの少なくとも一方において、第1の方向に沿って延びている。ここで、第1のデバイス構成要素は、第2のデバイス構成要素に対して第1の方向に沿って可動である。これは、たとえばペアリングコードまたは第1のコード部分が第1の外面に設けられ、第1のデバイス構成要素の第1の外面が、たとえば、少なくとも第1のデバイス構成要素が第1の位置状態にあるときに、第2のデバイス構成要素によって少なくとも部分的に覆われている場合に、特に有用である。第1のデバイス構成要素が第2の位置状態に向かって動かされるに従い、第1の外面のより多くの部分を、第2のデバイス構成要素から明らかとすることができる。
【0061】
いくつかの例では、第1のデバイス構成要素の少なくとも一部は、第1の位置状態にあるとき、第2のデバイス構成要素の内部に位置することができる。第1のデバイス構成要素が第2の位置状態に向かって動かされるに従い、第1の外面は、第2のデバイス構成要素の端部から連続的に突出することができ、または、それぞれの第1の外面は、第2のデバイス構成要素の端部から連続的に突出するか、または、第2のデバイス構成要素のアパーチャ内に延びて、第1のコード部分またはペアリングコードの全体のより多くが、第2のデバイス構成要素の端部から突出することにより、または第2のデバイス構成要素のアパーチャに現れることにより、識別可能かつ可視となるようにすることができる。
【0062】
第1のデバイス構成要素に第1の位置状態から第2の位置状態に向かう動きが生じている間に、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第1の方向に沿って動かされるに従い、第1のコード部分およびペアリングコードの一定に増加する部分が、識別可能になる。
【0063】
さらなる例によれば、第2のデバイス構成要素の第2の外面に、第2の隠蔽コード部分をさらに備える。第2の隠蔽コード部分は、第2の外面に設けられた第2のコード部分と区別がつかない。第1のコード部分は、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態にあるとき、第2のコード部分と整列する。第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れている限り、第1のコード部分は第2のコード部分からオフセットすることができる。ここで、第1のコード部分は、第2の隠蔽コードの一部と、または断片と整列することができる。第2の隠蔽コードまたはその一部の第1のコード部分との組合せおよび整列は、ペアリングコードを構成または再結合することができない。
【0064】
さらなる例によれば、第2の隠蔽コードは、第2の外面上に第2の方向に沿って延びている。典型的には、第2の方向は、第1のコード部分が延びる第1の方向と区別することができる。いくつかの例では、第2の隠蔽コードは、管状および/または長尺状の第2のデバイス構成要素の接線方向に沿って延びることができる。第1のコード部分は、長尺状の、たとえば管状の第1または第2のデバイス構成要素の長手方向軸と一致することができる、第1の方向に沿って延びることができる。
【0065】
第1のコード部分が第1の方向に沿って延びる場合、ならびに、第2のコード部分および/または第2の隠蔽コードが第2の方向に沿って延びる場合であって、第1の方向および第2の方向が互いに対して所定の非ゼロ角度で延びる場合、ペアリングコードを再結合し構成するには、第1のデバイス構成要素が第1の位置状態から第2の位置状態に向かって第2の方向に沿って動かされることが必要であり得る。このとき、第1のデバイス構成要素を第2のデバイス構成要素に対して第1の方向に沿って動かすことは、単に任意選択的であってもよい。
【0066】
第1の方向と第2の方向とは、互いに垂直に延びることができる。ペアリングコードは、第1のコード部分および第2の隠蔽コード部分のうちの少なくとも一方、ならびに第1のコード部分および第2の隠蔽コード部分のうちの他方の一部と交差する直線によって再結合することができる。
【0067】
別の例によれば、第1のコード部分またはその一部は、第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れているとき、第2の隠蔽コード部分と整列する。第1のコード部分の第2の隠蔽コード部分の一部との整列は、ペアリングコードを再結合するかまたは構成するのに有効ではない。第1のデバイス構成要素が第2の位置状態から外れている限り、第1のコード部分は、第2の隠蔽コード部分とまたはその一部と排他的に整列し、したがって、第1のコード部分および第2の隠蔽コード部の重なりにおいて、ペアリングコードを視覚的に特定するのを効果的に妨げることができる。
【0068】
さらなる例によれば、第2の隠蔽コード部および第2のコード部分のうちの少なくとも一方は、第2の方向に沿って延びている。第1のデバイス構成要素は、第2のデバイス構成要素に対して第2の方向に沿って可動である。いくつかの例では、第1の方向は、薬物送達デバイスのハウジングの対称軸に沿ってまたは長手方向軸に沿って延びている。第2の方向は、こうした長尺状の、たとえば管状のハウジングに関して、接線方向または周方向に延びることができる。第1および第2の方向は、互いに対して所定の非ゼロ角度で延びることができる。第1および第2の方向は、互いに垂直に延びることができる。
【0069】
別の例によれば、薬物送達デバイスは、第1のマーカおよび第2のマーカを含む。第1のマーカは、第1のデバイス構成要素によって提供されるか、または第1のデバイス構成要素に連結される。第2のマーカは、第2のデバイス構成要素によって提供されるか、または第2のデバイス構成要素に連結される。第1のマーカは、第1の外面に設けることができる。第2のマーカは、第2の外面に設けることができる。第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して動かされたときに、第1のマーカに第2のマーカに対する動きが生じる。
【0070】
第1のマーカおよび第2のマーカは、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態に達すると、視覚的に整列し、視覚的に重なり合い、または機械的に係合する。第1のマーカおよび第2のマーカを用いて、第1のデバイス構成要素と第2のデバイス構成要素との第2の位置状態を特定することができる。第1および第2のマーカのうちの少なくとも一方は、薬物送達デバイスのユーザから恒久的に可視である。第1および第2のマーカのうちの他方は、第1および第2のそれぞれのデバイス構成要素の他方によって一時的に隠蔽することができる。
【0071】
第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して動くと、かつ、第2の位置状態に達すると、第1および第2のマーカは相互に整列する、視覚的に重なる、または機械的に係合し、それにより、第2の位置状態に達したことと、ペアリングコードが薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能となったことをユーザに示す。
【0072】
いくつかの例では、第1のマーカは、第1のデバイス構成要素の第1の表面上の識別機能を含む。第1のマーカは、特定の文字(character)、または文字(letter)もしくは数字などの視覚的記号を含むことができる。第2のマーカは、たとえば第2の外面上に、対応する視覚的記号、文字または数字を含むことができる。いくつかの例では、第2のマーカは、第2のデバイス構成要素のアパーチャを含むことができる。第2のマーカは、ポインタも含むことができる。たとえば、第2のデバイス構成要素が薬物送達デバイスのハウジングである場合、または、第2のデバイス構成要素が薬物送達デバイスのハウジングの一部を形成する場合、第2のデバイス構成要素は、アパーチャを含むことができ、このアパーチャを通して、第1のデバイス構成要素の少なくとも一部、典型的には第1のマーカを備える第1の外面の少なくとも一部を、視覚的に特定するかまたは検出することができる。
【0073】
いくつかの例では、第1および第2のマーカは、突出部および対応する凹部等、相互に対応するかつ/または相補的な形状の係合機能を含む。このように、第1および第2のデバイス構成要素が第2の位置状態に達したときに、第1および第2のマーカが機械的に係合することができる。
【0074】
いくつかの例では、薬物送達デバイスは、数字の列が印刷された数字スリーブを含む。数字の列は、実際に設定された用量のサイズを示す。第1のマーカは、特定の所定の用量サイズに対応することができ、たとえば、所定の数の用量サイズ、たとえば、25単位の用量サイズによって表することができる。ここで、数字スリーブは、第1のデバイス構成要素を表すことができる。第2のデバイス構成要素は、薬物送達デバイスのハウジングによって、たとえば、ハウジングの本体よってまたはカートリッジホルダによって表することができる。
【0075】
薬物送達デバイスのハウジングの本体として実装される場合、第2のデバイス構成要素は、アパーチャまたは窓を含むことができ、そこを通して、その下に位置する第1のデバイス構成要素の少なくとも一部が可視である。第2のデバイス構成要素のアパーチャにまたは用量窓内に、したがって、薬物送達デバイスのハウジングまたは本体の投与量窓内に、たとえば特定のかつ所定の用量サイズの形態での、第1のマーカが現れることにより、これは、薬物送達デバイスのユーザに対する、ペアリングコードが薬物送達デバイスの外部から識別可能である、第1のデバイス構成要素が所定の第2の位置状態に達したという明確な標示であり得る。
【0076】
さらなる例によれば、第1のデバイス構成要素は、ペン型注射デバイスの用量ダイヤル、ダイヤル延長部、数字スリーブ、および保護キャップのうちの1つである。用量ダイヤルには、典型的には、可変サイズの用量を設定する間にかつ/または設定するために回転運動が生じる。用量の設定中、用量ダイヤルに、典型的には、薬物送達デバイスのハウジングに対する回転が生じる。用量ダイヤルに、ハウジングに対して組み合わされた長手方向摺動運動が生じるようにすることができ、たとえば、本明細書の用語法によれば第2のデバイス構成要素としての役割を果たすこともできる。さらに、用量ダイヤルに、薬物送達デバイスのハウジングまたは本体に対して組み合わされた回転運動および長手方向運動が生じるようにすることができる。したがって、用量ダイヤルは、用量が設定されると、ハウジングまたは本体に対して螺旋運動を行うことができる。
【0077】
同じことをダイヤル延長部にも適用することができる。薬剤の用量の設定中および/または用量の投薬もしくは排出中に、ダイヤル延長部に長手方向摺動運動が生じるようにすることができる。ダイヤル延長部に、組み合わされた長手方向摺動運動および回転運動が生じるようにすることができる。ダイヤル延長部またはその構成要素に、たとえば、薬剤の用量の設定もしくは排出の間にかつ/またはそうした設定もしくは排出のために、薬物送達デバイスのハウジングに対する螺旋運動が生じるようにすることができる。数字スリーブは、ダイヤル延長部の一部を形成することができる。
【0078】
いくつかの例では、数字スリーブは、薬物送達デバイスのハウジングの内部にあり続ける。数字スリーブは、薬物送達デバイスのハウジングの中または上に回転可能に支持されている。いくつかの例では、数字スリーブは、ハウジングに対して長手方向にロックされる。さらなる例では、数字スリーブは、ハウジングとねじ係合する。そして、数字スリーブは、ハウジングに対する動きが生じると、ハウジングに対して相対的に螺旋経路をたどることができる。
【0079】
他の例では、薬物送達デバイスの投薬または排出端を覆うように構成された保護キャップは、上記の用語法に従って第1のデバイス構成要素として実装することができる。保護キャップは、薬物送達デバイスのハウジングの遠位端に回転可能に支持することができる。保護キャップは、ハウジングに対して多数の回転状態で自由に向けることができる。保護キャップは、長手方向に関してハウジングに取外し可能にロックすることができる。保護キャップは、ハウジングにクリップ留めするかまたはカチッと留めることができる。
【0080】
他の例では、第2のデバイス構成要素は、ペン型注射デバイスのハウジング、ハウジングの本体、およびカートリッジホルダのうちの1つである。
【0081】
いくつかの例では、第2のデバイス構成要素は、薬物送達デバイスのハウジングに摺動可能に支持されるとともに、薬物送達デバイスの管状のハウジングに回転不能にロックされる、ゲージ要素を含むことができる。ゲージ要素は、たとえば数字スリーブと、ねじ係合することができる。ゲージ要素は、窓またはアパーチャを含むことができ、これを通して、数字スリーブの一部が識別可能または可視である。ゲージ要素の実装により、数字スリーブは、薬物送達デバイスのハウジングに対して長手方向にロックすることができる。数字スリーブは、ハウジングに対して自由に回転することができる。ゲージ要素は、ダイヤル延長部の一部に属するか、またはダイヤル延長部の一部を形成することもできる。
【0082】
第2のデバイス構成要素自体として作用するゲージ要素は、ハウジングの長手方向アパーチャ内に摺動可能に支持することができる。ここで、ハウジングは、第1のデバイス構成要素として作用することができる。ゲージ要素は、凹部またはゲージアパーチャを含むことができ、そこを通して、下に位置する数字スリーブの選択された部分が明らかになる。数字スリーブとねじ係合すると、数字スリーブの回転により、ハウジングのアパーチャに対してゲージ要素が長手方向に変位することになる。
【0083】
ゲージ要素の外面に、少なくともペアリングコードの第1のコード部分を設けることができる。処方されたまたは所定のサイズの用量を設定することにより、ゲージ要素、すなわち第2のデバイス構成要素は、ハウジングに対して、すなわち第1のデバイス構成要素に対して動かされる。このように、第1のデバイス構成要素は、第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態に達することができ、その逆もまた可能である。この位置状態において、ゲージ要素の外面に設けられるような少なくとも第1のコード部分またはコード全体は、ハウジングの長手方向アパーチャ内で識別可能となることができる。
【0084】
用量のダイヤル設定または用量の設定中、数字スリーブに、ハウジングに対する回転運動を生じさせることができる。数字スリーブとのねじ係合およびハウジングとの回転インターロックにより、ゲージ要素は、回転する数字スリーブに沿って摺動し、これにより、ゲージ要素の窓またはアパーチャに現れる一続きの数字または用量サイズの表示を視覚的に示すことができる。
【0085】
ハウジングの本体は、典型的には、ハウジングの近位部分である。本体は、薬物送達デバイスの駆動機構を収納するようにまたは収容するように構成することができる。本体は、ペン型注射デバイスのカートリッジホルダに解放不能にまたは取外し可能に連結することができる。カートリッジホルダは、特に、薬剤が充填されたカートリッジを収容するように適用することができる。使い捨てデバイスでは、薬剤が充填されたカートリッジは、ハウジングの内部、典型的にはカートリッジホルダの内部に容易に配置される。カートリッジホルダは、薬物送達デバイスのハウジングの本体に解放不能にまたは取外し不能に連結することができる。
【0086】
薬物送達デバイスの第1および第2のデバイス構成要素を互いに対して可動に設けるという上述した概念は、ペン型注射デバイスの多数の構成要素に写像および転写することができる。たとえば、保護キャップの近位端にまたはその近くに第1のコード部分を設けることができ、こうしたペン型注射器のハウジングの本体の遠位端にまたはその近くに、連続的な第2のコード部分を設けることができる。保護キャップは、本体に対して長手方向軸に関して自由に回転することができる。保護キャップおよび本体の1つまたはいくつかのさらなる概して利用可能な位置状態においてのみ、それぞれの第1および第2のコード部分は相互に整列し、したがって、ペアリングコードは薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能となる。他の構成では、保護キャップは、本体に組み付けられるかまたは取り付けられたときに、ペアリングコードの少なくとも一部を覆うことが好適であり得る。そして、保護キャップを取り外すことにより、ペアリングコードを明らかにすることができる。
【0087】
薬物送達デバイスの別の例によれば、薬剤が充填されたカートリッジがハウジングの内部に配置される。このように、薬物送達デバイスは、薬物デバイスの組合せである。薬物送達デバイスは、内部にカートリッジが容易に組み付けられる使い捨てのデバイスとして実装することができる。薬物送達デバイスは、再利用可能なデバイスとして構成および実装することもできる。ここで、カートリッジホルダは、薬物送達または注射デバイスの近位本体に取外し可能に連結され、したがって、空のカートリッジを新たな、したがって充填されたカートリッジと交換することができるようにする。
【0088】
さらなる例によれば、電子データロギングデバイスは、薬物送達デバイスに組み込まれる。データロギングデバイスは、薬物送達デバイスの内部に、薬物送達デバイスのハウジングの内部内に、または薬物送達デバイスのダイヤル延長部の内部に、組み込みかつ/または組み付けることができる。他の例では、電子データロギングデバイスは、別個のデータロギングデバイスとして提供される。電子データロギングデバイスは、薬物送達デバイスの所定の位置で対応するまたは相補的な形状の締結機能と係合する、少なくとも1つの締結機能を含むことができる。
【0089】
別個の電子データロギングデバイスとして実装される場合、データロギングデバイスは、たとえば薬物送達デバイスの近位端に取付け可能とすることができ、または、容易に取り付けることができる。いくつかの例では、データロギングデバイスは、ペン型注射デバイスのダイヤル延長部に、かつ/または用量ダイヤルおよびトリガのうちの少なくとも一方に取り付けられる。
【0090】
別の態様によれば、本開示は、薬物送達デバイスの電子データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする方法に関する。薬物送達デバイスは、第2のデバイス構成要素に対して可動の第1のデバイス構成要素を含む。第1のデバイス構成要素は、第1の外面を含む。第2のデバイス構成要素は、第2の外面を含む。第1の外面および第2の外面のうちの少なくとも一方は、少なくともペアリングコードの第1のコード部分を含む。ペアリングコードは、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置関係にあるときにのみ、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能である。
【0091】
本方法は、外部電子デバイスおよびデータロギングデバイスのうちの少なくとも一方をペアリングモードに設定する工程を含む。その前、その間、またはその後、第1のデバイス構成要素は、ペアリングコードが識別不可能である第1の位置状態から、ペアリングコードが視覚的に特定可能である第2の位置状態に、第2のデバイス構成要素に対して動かされる。その後、第1のデバイス構成要素が第2のデバイス構成要素に対して第2の位置状態に達すると、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能となったペアリングコードは、たとえば人により、実際に視覚的に特定されるかまたは取り込まれる。
【0092】
特定されたペアリングコードは、次いで、外部電子デバイスとデータロギングデバイスとの間の通信リンクを確立するためかつ/または設定するために使用される。ペアリングルーチンの特定の実装に応じて、ユーザに対して、たとえば外部電子デバイスに、またはデータロギングデバイスに、ペアリングコードを入力するように促すことができる。他の例では、ペアリングコードは、データロギングデバイスおよび外部電子デバイスのうちの少なくとも一方によって、視覚的にまたは可聴的に提示することができる。次いで、ユーザに対して、ペアリングコードを確認するように促すことができる。これら2つのデバイスをペアリングする過程においてデータロギングデバイスおよび外部電子デバイスのうちのいずれか一方によって提案されたペアリングコードが、薬物送達デバイスの外側から視覚的に特定可能なペアリングコードと一致するべきでない場合、データロギングデバイスに記憶されたデータの誤用または不正使用を防止するために、ユーザは、ペアリングルーチンを中止して中断してキャンセルするべきである。
【0093】
さらに、薬物送達デバイスを用いて電子データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする本方法は、広く適用可能であり、上述したような任意のタイプの薬物送達デバイスによって実行可能であることが留意されるべきである。したがって、薬物送達デバイスに関連して上述したようないかなる特徴、利点、および効果も、ペアリング方法に等しく適用され、逆もまた同様である。
【0094】
さらなる態様によれば、本開示は、薬剤注射システムに関する。注射システムは、上述したような薬物送達デバイスまたは注射デバイスを含む。注射システムは、薬物送達デバイスに組み込まれるかまたは薬物送達デバイスに取付け可能な、データロギングデバイスをさらに含む。ここで、データロギングデバイスは、スマートウォッチ、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはパーソナルコンピュータなどの外部電子デバイスへの通信リンク、たとえば無線通信リンクを確立するようにまたは設定するように構成され、実装されている。この限りにおいて、上述したようなすべての特徴、効果、および利点は、薬剤注射システムにも同様に適用される。
【0095】
別の態様によれば、薬剤注射システムは、データロギングデバイスへの通信リンク、たとえば無線通信リンクを確立するようにかつ/または設定するように構成された外部電子デバイスをさらに含む。
【0096】
注射システムは、データロギングデバイスへの通信リンクを確立するように構成された外部電子デバイスをさらに含む。
【0097】
概して、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって定義される。注射デバイスは、特定の実施形態または例に限定されず、異なる実施形態または例の要素の任意の組合せを含む。その限りにおいて、本開示は、請求項の任意の組合せと、異なる例または実施形態に関連して開示する特徴の任意の技術的に実現可能な組合せとを包含する。
【0098】
本明細書において、「遠位」または「遠位端」という用語は、人または動物の注射部位の方に面する注射デバイスの端部に関連する。「近位」または「近位端」という用語は、人または動物の注射部位から最も遠く離れた、注射デバイスの反対側の端部に関連する。
【0099】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0100】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含み得る。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0101】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルであり得る。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、またはそれを含み得る。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0102】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0103】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかであり得る。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0104】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0105】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0106】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0107】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0108】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0109】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0110】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0111】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体であり得る。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0112】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0113】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0114】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0115】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0116】
本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の変更(追加および/または削除)を行うことができ、本発明は、こうした変更形態およびそのありとあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0117】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対してさまざまな変更および変形を行うことができることは、当業者にはさらに明らかとなろう。さらに、添付の特許請求の範囲で用いる任意の参照番号は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが留意されるべきである。
【0118】
以下、注射デバイスと、データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする方法との多数の例を、図面を参照することにより、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】注射デバイスとして実装された薬物送達デバイスの一例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の薬物送達デバイスの多数の構成要素を概略的に示す図である。
【
図3】電子データロギングデバイスの一例の概略ブロック図である。
【
図4】薬物送達デバイスに組み込まれた電子データロギングデバイスを概略的に示す図である。
【
図5】データロギングデバイスと外部電子デバイスとの間の通信リンクを設定するためのペアリングコード部分を担持する第1および第2のデバイス構成要素を有する薬物送達デバイスの一部を概略的に示す図であり、第1および第2のデバイス構成要素は第1の位置状態にある。
【
図6】
図5の例を示す図であり、第1および第2のデバイス構成要素は第2の位置状態にある。
【
図7】ペアリングコードを備える薬物送達デバイスの別の例を概略的に示す図であり、第1および第2のデバイス構成要素は、第1の位置状態にある。
【
図8】
図7の例を示す図であり、第1および第2のデバイス構成要素は第2の位置状態にある。
【
図9】第3の位置状態にある、
図7および
図8の第1および第2のデバイス構成要素を示す図である。
【
図10】
図1~
図9のうちの任意ものによる薬物送達デバイスによって提供されるようなペアリングコードを用いることにより、電子データロギングデバイスを外部電子デバイスとペアリングする方法を実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0120】
薬剤27の用量を投与する薬物送達デバイス1の1つの例を
図1および
図2に示す。薬物送達デバイス1は、注射デバイス30として実装されている。注射デバイス30は、手持ち式のペン型注射器である。注射デバイス30は、使い捨ての注射デバイス30として実装することができる。注射デバイス30は、カートリッジホルダ14の内部に配置された充填済みカートリッジ6を含むことができる。使い捨ての注射デバイス30の場合、カートリッジホルダ14は、注射デバイス30のハウジング32の本体10に取外し不能に連結することができる。
【0121】
他の例では、注射デバイス30は再使用可能な注射デバイスであり、カートリッジホルダ14は、空のカートリッジ6を交換するために本体10に取外し可能に連結される。ハウジング32の遠位端にまたはその近くに、したがってカートリッジホルダ14の遠位端に、注射針15を取り付けるかまたは注射針15と係合するように構成されたソケット28を備える。ソケット28は、ねじ付ソケットとして実装することができ、注射針15は、ソケット28とのねじ係合を提供するために対応してねじ切られたニードルハブを含むことができる。
【0122】
典型的には、注射針15は、内側ニードルキャップ16と、注射デバイス30のハウジング32の遠位セクションを囲むようにかつ保護するように構成されている外側ニードルキャップ17および/または保護キャップ18とによって保護される。本体10は、
図2に示すように、駆動機構34を収容するように構成された主ハウジング部材を含むとともに形成することができる。カートリッジホルダ14は、注射デバイス30の遠位ハウジング構成要素とみなすことができる。カートリッジホルダ14は、本体10または主ハウジングに恒久的にまたは解放可能に連結することができる。
【0123】
カートリッジ6は、円筒状または管状のバレル25を含み、バレル25は、バレル25の内部に位置する栓7によって近位方向3に封止される。カートリッジ6には、液体薬剤27を予め充填することができる。栓7は、駆動機構34のピストンロッド20によってカートリッジ6のバレル25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止部26によって封止されており、封止部26は、注射針15の近位に向けられた先端によって穿孔可能である。注射針15をカートリッジホルダ14の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26が貫通され、それによりカートリッジ6の内部への流体移送アクセスが確立する。
【0124】
注射デバイス1がたとえばヒトインスリンを投与するように構成されている場合、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定された投与量を、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5μgの純結晶インスリン(1/22mg)と生物学的に同等である。用量ダイヤル12は、注射デバイス30のハウジング32の近位端にあるスリーブ状のつまみを含むことができる。
【0125】
図1および
図2にさらに示すように、本体10は、本体10におけるアパーチャの形態であり得る投与量窓13を含む。投与量窓13により、ユーザは、用量ダイヤル12が回されたときに動くように構成されている数字スリーブ80の限られた部分を見ることができる。数字スリーブ80および投与量窓13は、目下設定されている用量の視覚標示を提供する。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されると、本体10に対して螺旋状の経路上を回転することができる。
【0126】
他のタイプの注射デバイスでは、用量ダイヤル12は、本体10に対して長手方向にロックすることができる。そして、用量ダイヤル12は、用量を設定するために、本体10に対する回転運動に制限することができる。
【0127】
注射デバイス30は、投与量つまみ12を回すと機械的クリック音が発生してユーザに音響フィードバックを提供するように構成することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に突き刺されているとき、トリガ11または注射ボタンが押されると、投与量窓13に表示されたインスリン用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押された後、注射デバイス1の針15が皮膚部分に一定時間留まると、用量の高い割合が実際に患者の体内に注射される。インスリン用量の排出によってもまた、機械的クリック音が発生する可能性があるが、これは用量ダイヤル12を使用する際に発生する音とは異なる。
【0128】
図示する実施形態では、インスリン用量の送達中に、用量ダイヤル12が軸方向運動で、すなわち回転なしに初期位置まで回され、その間、数字スリーブ80は、その初期位置に戻るように、たとえば0単位の用量を表示するように回転する。
【0129】
注射デバイス30は、カートリッジ6が空になるか、注射デバイス1内の薬剤の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。
【0130】
図2には、駆動機構34の一例の少なくともいくつかの構成要素をより詳細に示す。駆動機構34は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20のねじ山22とねじ係合したねじ付軸方向貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、その上で、押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として自由に回転する。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位に面する推力受け面に軸方向に当接するように構成されている。投薬動作中、ピストンロッド20は、ハウジング10に対して回転し、それによって、ハウジング10に対する、したがってカートリッジ6のバレル25に対する、遠位に向けられた前進運動が生じる。その結果、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20とハウジング10とのねじ係合により、明確に定義された距離だけ遠位方向2に変位する。
【0131】
さらに、数字スリーブ80としても示す用量ダイヤルスリーブを備える。数字スリーブ80は、ハウジング10の半径方向内向きに位置する。数字スリーブ80の外面の周囲に螺旋状の溝81を備える。本体10には投与量窓13を備え、そこを通して、数字スリーブ80の外面の一部を見ることができる。本体10には、挿入片62の内側側壁部分に螺旋状リブをさらに備え、この螺旋状リブは、数字スリーブ80の螺旋状溝81に着座する。管状の挿入片62は、管状本体10の近位端に挿入される。代替的に、こうした螺旋状リブは、本体10の側壁の内側に直接設けてもよい。螺旋状リブは、挿入片62とともに、本体10に回転不能にかつ軸方向に固定される。本体10に第1および第2の止め具を設けて、数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転する用量設定手順を制限することができる。
【0132】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12は、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、本体10の近位端の外径に対応しかつ一致する。用量ダイヤル12は、用量ダイヤル12と数字スリーブ80との間の相対運動を防止するために、数字スリーブ80に固定される。用量ダイヤル12には、中心開口部を設けられている。
【0133】
用量ボタンとしても示すトリガ11は、実質的にT字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられている。トリガ11のステム64が、用量ダイヤル12内の開口部を通って延びている。ステム64、したがってトリガ11は、数字スリーブ80に対して軸方向運動が制限されるように保持される。トリガ11のヘッドは、略円形である。トリガ側壁またはスカートが、ヘッドの周辺部から延び、用量ダイヤル12の近位にアクセス可能な環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
【0134】
用量をダイヤル設定するために、ユーザは、用量増加方向4に沿って、たとえば時計回りに用量ダイヤル12を回転させる。用量のダイヤル設定には、クリック音が伴うことができる。このように、ダイヤル設定されている用量の可聴および/または触覚フィードバックが提供される。用量のダイヤル設定には、数字スリーブ80の回転がさらに伴い、数字スリーブ80は、用量増加方向4に沿って、たとえば時計回り方向にダイヤル設定されると、本体10から近位方向3に向かって延び始める。
【0135】
数字スリーブ80、投与ダイヤル12およびトリガは、したがって、ダイヤル延長部70の部分と、用量がダイヤル設定されると本体10の近位端から延びるかまたは変位し始める駆動機構34の構成要素のアセンブリとを形成することができる。用量の投薬中、したがって、ユーザがトリガ11を遠位方向2に押すとき、ダイヤル延長部70に、本体10に対する遠位に向けられた、したがって遠位方向2に沿った動きが生じる。こうした投薬動作の間、数字スリーブ80には、用量減少方向5に沿った、たとえば反時計回りの回転が生じる。
【0136】
上述したような排出機構または駆動機構34は、単に、概して使い捨てまたは再使用可能なペン型注射器に実装可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つを例示するものである。上述したような駆動機構は、たとえば、国際公開第2004/078239A1号、国際公開第2004/078240A1号または国際公開第2004/078241A1号においてより詳細に説明されており、それらの開示全体は参照によって本明細書に組み入れる。
【0137】
薬物送達デバイス1、したがって注射デバイス30には、
図3または
図4に示すように、データロギングデバイス100をさらに備えることができる。データロギングデバイス100は、注射デバイス30に組み込むことができる。データロギングデバイス100は、トリガ11および用量ダイヤル12のうちの少なくとも一方によって提供される中空レセプタクル内に位置することができる。他の例では、データロギングデバイス100は、本体10に、または注射デバイス30のハウジング32の他のいくつかの部分に、取外し可能に連結可能な別個の構成要素である。
【0138】
このように、
図2は、薬剤注射システム102を説明するものである。薬剤注射システム102は、注射デバイス30と、少なくともデータロギングデバイス100とを含む。データロギングデバイス100は、注射デバイス30に取付け可能であり得る。データロギングデバイス100は、注射デバイス30のハウジング32に取外し可能に連結可能であっても、取外し可能に固定可能であってもよい。代替的に、データロギングデバイス100は、注射デバイス30に組み込まれている。薬剤注射システム102は、外部電子デバイス65をさらに含むことができる。外部電子デバイス65は、携帯型電子デバイスとして実装することができる。外部電子デバイス65は、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、またはパーソナルコンピュータを含むことができる。外部電子デバイス65およびデータロギングデバイス100は、それらの間でデータを転送するために、通信リンク66、たとえば無線通信リンクを確立するように構成されている。
【0139】
図3に概略的に示すようなデータロギングデバイス100は、典型的には、たとえば回転検知配置200の形態のセンサを含み、こうしたセンサにより、薬物送達デバイス1の少なくとも1つの構成要素の薬物送達デバイス1の別の構成要素に対する相対回転を、たとえば、用量の設定および用量の投薬のうちの少なくとも一方の間に、決定するかまたは定量的に測定することができる。
【0140】
データロギングデバイス100は、薬物送達デバイス1に組み込んでもよく、または、別個のアドオンデバイスとして提供してもよい。別個のアドオンデバイスとして提供される場合、データロギングデバイス100に、薬物送達デバイス1または注射デバイス30のハウジング32に取付け可能な独自のハウジング101を設けることができる。
【0141】
データロギングデバイス100は、メモリ114とともに、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサ240を含む。メモリ114は、プログラムメモリとメインメモリとを含むことができ、それらは、プロセッサ240が実行するソフトウェアと、カウントされたパルス、導出された用量サイズ、タイムスタンプなど、データロギングデバイス100の使用中に生成または捕捉されたデータとを記憶することができる。任意選択的なスイッチ122が、電源120を、回転検知配置200を含むデータロギングデバイス100の電子部品に接続する。ディスプレイ118は、存在してもしなくてもよい。回転検知配置200は、第1の部材201および第2の部材202に結合することができる。回転検知配置200は、第2の部材202に接続または取り付けられる少なくとも1つのセンサ220を含み、第1の部材201に接続または取り付けられる少なくとも1つの信号発生器210をさらに含む。
【0142】
データロギングデバイス100における回転検知配置200の本実施態様では、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、注射デバイス30のハウジング32に連結または締結することができ、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、たとえば、注射デバイス30の回転可能な用量ダイヤル12に連結可能または締結可能である。
【0143】
データロギングデバイス100は、典型的には、プロセッサ240に接続されたインターフェース124を含む。インターフェース124は、Wi-FiまたはBluetooth(登録商標)、RFIDまたはNFC(近距離無線通信)などの無線通信プロトコルまたはネットワークを介して、たとえば携帯型電子デバイスの形態の、別の外部電子デバイス65と通信する無線通信インターフェースであり得る。無線通信インターフェースは、無線周波数範囲で動作可能であり得る。たとえば、無線通信インターフェースは、無線周波数識別技術(RFIDとして知られる)に基づいてもよく、これにより、互換性のあるハードウェアがラジオ波を使用して、本来電力が供給されず受動的な電子タグに電力を供給するとともにそれと通信することができる。そのため、無線通信インターフェースは、識別、認証、および追跡に使用することができる。
【0144】
他の例では、インターフェース124は、ユニバーサルシリーズバス(USB)、ミニUSB、またはマイクロUSBコネクタを受けるソケットなど、有線通信リンクとして実装される。このために、インターフェース124は、データを送受信するように構成されたトランシーバ126を含む。
図3は、アドオンデバイス100が、データ転送のために通信リンク66を介して、外部電子デバイス65に接続される、注射システムの一例を示す。データ接続66は、有線式であっても無線式であってもよい。
【0145】
たとえば、プロセッサ240は、ユーザによって投与される際の注射に対する、決定された送達薬剤量およびタイムスタンプを記憶し、その後、その記憶されたデータを外部電子デバイス65に転送することができる。デバイス65は、治療ログを維持し、かつ/または治療履歴情報を、たとえば医療専門家が検討するために、遠隔地に転送する。
【0146】
アドオンデバイス100またはデータ収集デバイスは、35回以上の注射イベントなど、多数の注射イベントの送達薬剤量およびタイムスタンプなどのデータを記憶するように構成することができる。1日1回の注射療法によれば、これは、約1カ月の治療履歴を収納するのに十分である。データメモリ114は、最新の注射イベントがデータ収集デバイス100のメモリに常に存在することを確実にして、先入れ先出し方式で編成することができる。外部電子デバイス65に転送されると、アドオンデバイス100内の注射イベント履歴は削除してもよい。代替的に、そうしたデータはアドオンデバイス100に残り、新しいデータが記憶されると、最も古いデータが自動的に削除される。このように、データ収集デバイス内のログは、使用中に経時的に蓄積され、常に最新の注射イベントを含むことになる。代替的に、他の構成は、70(毎日2回)、100(3カ月)、または治療要件および/またはユーザの好みに応じて他の任意の好適な数の注射イベントの記憶容量を有することができる。
【0147】
別の実施形態では、インターフェース124は、無線通信リンクを用いて情報を送信するように構成することができ、かつ/または、プロセッサ240は、そうした情報を外部電子デバイス65に周期的に送信するように構成することができる。
【0148】
プロセッサ240は、決定された薬剤用量情報を表示するように、かつ/または最後の薬剤用量が送達されてからの経過時間を表示するように、任意選択的なディスプレイ118を制御することができる。たとえば、プロセッサ240は、ディスプレイ118に、最新の決定された薬剤投与量情報の表示と経過時間の表示とを周期的に切り替えさせることができる。
【0149】
電源120は、電池であり得る。電源120は、コイン電池であってもよく、または、直列もしくは並列に配置された複数のコイン電池であってもよい。タイマ115も設けることができる。アドオンデバイス100をオンとオフとに切り替えることに加えて、またはその代わりに、スイッチ122は、係合および/または係合解除されたときにタイマ115をトリガするように配置することができる。たとえば、スイッチの第1および第2の電気接点の係合または係合解除の両方、またはスイッチ122の動作および動作停止の両方で、タイマ115がトリガされる場合、プロセッサ240は、タイマ115からの出力を使用して、トリガ11が押された時間の長さを決定し、たとえば、注射の持続時間を決定することができる。
【0150】
代替的に、またはさらに、プロセッサ240は、タイマ115を使用して、それぞれのスイッチ構成要素の係合解除またはスイッチ122の動作の停止の時間によって示されるように、注射が完了してから経過した時間の長さを監視することができる。場合により、経過時間はディスプレイ118に表示することができる。同様に場合により、スイッチ122が次に操作されたとき、プロセッサ240は、経過時間を所定の閾値と比較して、ユーザが以前の注射の後過度に早く別の注射を投与しようとしている可能性があるか否かを判断し、そうである場合、ディスプレイ118にまたは出力116を介して可聴信号および/または警告メッセージなどの警報を発生させることができる。出力160は、たとえば、ユーザに警報を出すために、可聴音を発生させるか、または振動を誘発し、すなわち触覚信号を生成するように構成することができる。
【0151】
図3に示すような検知配置200は、回転検知配置として実装することができる。それは、第1の部材201と第2の部材202とを含むことができる。第1の部材201は、回転軸203に関して第2の部材202に対して回転可能である。典型的には、第1の部材201および第2の部材202は、回転軸に関して同軸に配置される。いくつかの例では、第1の部材201および第2の部材202は、回転軸203に関して軸方向に隣接して配置される。第1の部材201と第2の部材202は、直接機械的に係合させることができる。他の例では、第1の部材201と第2の部材202は、互いに機械的に係合解除される。ここで第1の部材201および第2の部材202は、注射デバイス30のハウジング32内もしくはハウジング32に、または別個のアドオンデバイス100のそれぞれのハウジング101内にもしくはハウジング101に、別個に配置するかまたは回転可能に支持することができる
【0152】
第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方は、典型的には、注射デバイス1のハウジング10の中または上に回転可能に支持される。いくつかの例では、第1の部材201および第2の部材202の両方が、ハウジング32に、またはハウジング32に関して回転可能に支持することができる。典型的には、注射デバイス30における回転検知配置200の具体的な実装または統合に応じて、第1の部材201および第2の部材20のうちの一方が、ハウジング32に回転不能にロックされ、一方、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、ハウジング10に対して回転可能に可動である。典型的には、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、回転軸203に関してハウジング32に対して回転可能である。第2の部材202は、用量ダイヤル12によって表すことができる。第1の部材201は、トリガ11によって表すことができる。用量の設定および投薬のうちの少なくとも一方の間、第2の部材202には、第1の部材201に対する回転が生じる。第1の部材201と第2の部材202との間の相対的な回転の程度は、実際に設定されかつ/または投薬される用量のサイズを直接示す。
【0153】
回転検知配置200は、
図4に示すように、プリント回路基板260を含むことができる。プリント回路基板260上には、少なくとも1つのセンサ220とともにプロセッサ240を設けることができる。プリント回路基板260には、電源120をさらに設けることができる。電源120は、プリント回路基板260の一方の側に位置することができる。プリント回路基板260の同じ側または反対側には、プロセッサ240および/または少なくとも1つのセンサ220を設けることができる。
【0154】
十分なデータセキュリティを提供するために、データロギングデバイス100と外部電子デバイス65との間の通信リンク66の確立には、ペアリングコード320の使用が必要である。規制要件により、ペアリングコード320は、薬物送達デバイス1の外側から可視または識別可能でなければならない場合がある。しかしながら、薬物送達デバイス1にアクセスすることができるいかなる人にも直接可視であるべきではない。電子データロギングデバイス100の外部電子デバイス65との不正なペアリングを防止するために、ペアリングコード320は、薬物送達デバイス1の構成要素によって隠蔽されるとともに、ユーザの操作によって明らかにならなければならない。他の選択肢によれば、ペアリングコード320は、少なくとも2つのデバイス構成要素301、302上に分割または分散される。ペアリングコード320を再結合するためには、第1および第2のデバイス構成要素301、302を所定の位置状態に動かさなければならない。
【0155】
図5および
図6の例では、ダイヤル延長部70および数字スリーブ80のうちの少なくとも一方は、第2のデバイス構成要素302に対して可動の第1のデバイス構成要素301を提供する。第2のデバイス構成要素302は、注射デバイス30のハウジング32の本体10によって提供することができる。第1のデバイス構成要素301は、第2のデバイス構成要素302の中空セクションの内部に少なくとも部分的に収容されるかまたは受け入れられる。
図5および
図6の比較から明らかであるように、第1のデバイス構成要素301は、長手方向に沿って、したがって近位方向3に向かって、第2のデバイス構成要素302に対して変位可能または可動である。場合により、第1のデバイス構成要素301は、第2のデバイス構成要素302に対して回転可能であってもよい。
【0156】
第1および第2のデバイス構成要素301、302の相互係合は、第2のデバイス構成要素302に対する第1のデバイス構成要素301の螺旋運動を可能にするとともに支持するのみであり得る。第1のデバイス構成要素301に、第1の外面311を備える。第1の外面311には、ペアリングコード320の少なくとも第1のコード部分321がこの場合もまた設けられている。典型的には、データロギングデバイス100と外部電子デバイス65との間の通信リンク66を確立するために、または設定するために、ペアリングコードの全体が必要である。
【0157】
第2のデバイス構成要素302は、第2の外面312を含む。第2の外面312には、第2のコード部分322を備える。第2のコード部分322、したがって文字「B」と、第1のコード部分321の数字および文字の列「123ABC」との再結合は、ペアリングコード320を補完し、または構成する。ペアリングコード320は、第1のデバイス構成要素301が第2のデバイス構成要素302に対して所定の第2の位置状態352にあるときにのみ、第1のコード部分321と第2のコード部分322とから補完され再結合される。
【0158】
この特定の位置状態は、第1および第2のデバイス構成要素301、302の相対位置によって、かつ/または、第1および第2のデバイス構成要素301、302の互いに対する所定の回転向きによって、特徴付けられる。第2の位置状態352は、第2のデバイス構成要素302によって提供される第2のマーカ304と一致するように、整列するように、または空間的に重なるように構成された、第1のデバイス構成要素303の第1のマーカ303によって、特徴付けることができ、かつ特定することができる。ここで、第2のマーカ304は、第1のデバイス構成要素302の側壁におけるアパーチャである。アパーチャ304は、上述した投与量窓13と一致することができる。第1のマーカ303は、たとえば数字スリーブ80として実装される、第1のデバイス構成要素301の外面311に設けられるような、多数の利用可能な数字または記号の選択されたまたは所定の数字または記号であり得る。目下図示する例では、第1のマーカ303は数字25であり、第1および第2のデバイス構成要素301、302の本構成において25単位の用量が実際に設定されたことも示している。
【0159】
目下図示する例では、第2のデバイス構成要素302には、第2のコード部分322も設けられている。第2のコード部分322および第1のコード部分321は、通信リンク66を確立するためまたは設定するために必要なペアリングコード320を再構成するように、直線に沿ってまたは螺旋状の線に沿って位置合せしなければならない。
【0160】
目下例示する例では、第2のコード部分322は、第2の隠蔽コード部分336と組み合わせて第2の外面312に設けられている。第2の隠蔽コード部分336は、第2のコード部分322と概して区別がつかない何らかのさらなるまたは補足的なコード部分を提供する。第2の隠蔽コード部分336は、第2のコード部分322と位置合せされる多数の文字、記号または数字を含むことができる。たとえば薬物送達デバイスのユーザマニュアルによって適切に知らされていない場合、薬物送達デバイス1の認可されたユーザには、ペアリングコード320を再結合し構成するために、第2の隠蔽コード部分336、たとえば文字「A」または「C」および第2のコード部分322、文字「B」のうちのいずれが、第1のコード部分321と整列すべきか分からない。
【0161】
図5および
図6の例では、第2の隠蔽コード部分336は、第2の方向4に沿って延びている。第2の方向は、第1の方向3に対して所定の角度で延びることができる。第1のコード部分は、第1の方向3に沿って延び、第2の隠蔽コード部分336は、第2の方向4に沿ってまたは第2の方向4と平行に延びている。第1のデバイス構成要素301に、第2の位置状態352に達するために、第2のデバイス構成要素302に対して第1の方向3に沿った動きと第2の方向4に沿った動きとの両方の動きが生じるとき、第1のコード部分321の長手方向延長線と第2の隠蔽コード部分336との交点は、第2のコード部分322を指すかまたは示すことができる。
【0162】
目下図示する例では、たとえば第1のマーカ303と一致しない薬剤の用量をダイヤル設定した場合、第1のコード部分321と第2のコード部分322との間に位置ずれがあり、したがって、ペアリングコード320は適切に現れない。
【0163】
連続した
図7~
図9に示すような別の例では、第2のデバイス構成要素302には、第2のコード部分322または第2の隠蔽コード部分336がない。そこでは、第2のデバイス構成要素302は不透明であり、その中空内部に第1のデバイス構成要素301の少なくとも一部を受ける。
図7に示すような第1の位置状態351では、第1のデバイス構成要素301の第1の外面311は、注射デバイス30の外側からほとんど見えない。第1のデバイス構成要素301が第2のデバイス構成要素302に対して動いたとき、第1の外面311の一部が第2のデバイス構成要素302から明らかになる。
【0164】
図7に示すような第1の位置状態351から
図8に示すような第2の位置状態352にへの、第2のデバイス構成要素302に対する第1のデバイス構成要素301の動きは、薬剤の用量を設定する過程で行うことができる。したがって、電子データロギングデバイス100と外部電子デバイス65とのペアリングのためのユーザマニュアルは、注射デバイス30のユーザに対して、25標準単位の数字をダイヤル設定するように指示することができる。たとえば、第2のデバイス構成要素302に対する第1のデバイス構成要素301の動きによって行われる、このダイヤル設定または用量設定動作により、第2のデバイス構成要素302に対する第1のデバイス構成要素301の組み合わされた回転および長手方向の変位がもたらされる。
【0165】
図8に示すように、第1のデバイス構成要素301は、長手方向端部から、したがって、第1のデバイス構成要素302の近位端から、長手方向に突出する。その結果、第1の外面311のそれぞれの部分が現れる。
図8に示すように第2の位置状態352に達すると、薬物送達デバイス30の外側から視覚的に特定可能であるのは、ペアリングコード320の全体のみである。ここでは、明らかになるのは、排他的にペアリングコード320のみである。
【0166】
図9のさらなる例示から明らかであるように、したがって、第1のデバイス構成要素301が、さらにかつ第2の位置状態を越えて、たとえば、第1のデバイス構成要素302に対して近位方向3に沿って動かされると、第1の外面311のさらなる部分が現れる。第1の外面311のさらなる部分に、第1の隠蔽コード部分335を備える。第1の隠蔽コード部分335は、第1のコード部分321とまたはペアリングコード320と区別がつかない。したがって、
図9に示すような構成では、デバイスのユーザは、ペアリングコード320と第1の隠蔽コード部分335との区別がつかない組合せのいずれの部分を使用すべきか、またはそのいずれの部分がデータロギングデバイス100と外部電子デバイス65とのペアリングを開始または承認するために関連しているかを、視覚的に特定することができない。
【0167】
薬物送達デバイス30の典型的な実施態様では、第1のデバイス構成要素301は、第2のデバイス構成要素302に対して、薬剤27の用量を投薬する必要なしに、
図5および
図7に示すような第1の位置状態351から
図6および
図8に示すような第2の位置状態352に、かつ反対に第2の位置状態352から第1の位置状態351に、可動である。
【0168】
図10に、データロギングデバイス100の外部電子デバイス65とのペアリングの方法のフローチャートを示す。典型的には、ペアリングの方法は、別個のデータロギングデバイス100として提供されるか、または薬物送達デバイス1に組み込まれるかのいずれかである、外部電子デバイス65およびデータロギングデバイス100に関連して上述したように、薬物送達デバイス1または注射デバイス30で行うことができる。
【0169】
第1の工程400において、データロギングデバイス100と外部電子デバイス65との間の通信リンク66を設定するために、外部電子デバイス65およびデータロギングデバイス100のうちの少なくとも一方は、ペアリングモードに設定される。典型的には、外部電子デバイス65およびデータロギングデバイス100は、たとえば、Bluetoothなどの標準化されたRF接続プロトコルを使用して、無線通信リンクを設定するように構成される。続く工程402において、第1のデバイス構成要素301は、ペアリングコード320が識別不可能である第1の位置状態351から第2の位置状態352に、第2のデバイス構成要素302に対して動かされる。続く工程404において、ペアリングコード320は、薬物送達デバイスのユーザによって視覚的に特定される。さらなる工程406において、工程404でユーザによって特定されたようなペアリングコード320は、外部電子デバイス65とデータロギングデバイス100との間の通信リンク66を確立するために、または承認するために使用される。
【符号の説明】
【0170】
1 薬物送達デバイス
2 遠位方向
3 第1の方向
4 第2の方向
5 用量減少方向
6 カートリッジ
7 栓
8 ドライブ機構
9 用量設定機構
10 身体
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
19 突出部
20 ピストンロッド
21 支承部
22 ねじ付セクション
23 押さえ
25 バレル
26 封止部
27 薬剤
28 ソケット
30 注射デバイス
32 ハウジング
34 駆動機構
62 挿入片
64 ステム
65 外部電子デバイス
66 通信リンク
70 ダイヤル延長部
80 数字スリーブ
81 溝
100 データロギングデバイス
101 ハウジング
102 薬剤注射装置
114 メモリ
115 タイマ
116 出力
118 ディスプレイ
120 電源
122 スイッチ
124 インターフェース
126 トランシーバ
200 検知配置
201 第1の部材
202 第2の部材
203 回転軸
210 信号発生器
220 センサ
240 プロセッサ
260 プリント回路基板
301 デバイス構成要素
302 デバイス構成要素
303 マーカ
304 マーカ
311 外面
312 外面
320 ペアリングコード
321 コード部分
322 コード部分
335 コード部分
336 コード部分
351 位置状態
352 位置状態
353 位置状態