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特許7614619低分子化合物、高分子化合物、有機半導体材料及び有機半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】低分子化合物、高分子化合物、有機半導体材料及び有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/22 20060101AFI20250108BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20250108BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20250108BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20250108BHJP
【FI】
C07D513/22 CSP
H10K30/50
H10K10/40
H10K85/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020141926
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037676
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)、「革新技術領域」「高効率ポリマー系太陽電池の開発」に関する委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 慎彦
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 格
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090636(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039369(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133471(WO,A1)
【文献】特開2013-131716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1又は式2で表される、
【化1-1】

(式1及び式2中、Rはアルキル基を表し、Aはヘテロ芳香環を表し、式2中、Bは式6a乃至式6gのいずれかで表される構造である。)
【化1-2】

(式6a乃至式6d中、Xは独立に水素、アルキル基、ハロゲンまたは置換されてもよい複素芳香環を表し、式6e乃至式6g中、R はアルキル基を表す。)
ことを特徴とする低分子化合物。
【請求項2】
式3又は式4で表される繰り返し単位を含む、
【化2-1】

(式3及び式4中、Rはアルキル基を表し、Aはヘテロ芳香環を表し、Arはヘテロ芳香環を表し、式4中、Bは式8a乃至式8dのいずれかで表される構造である。)
【化2-2】

ことを特徴とする高分子化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の低分子化合物、又は、請求項2に記載の高分子化合物を含む、
ことを特徴とする有機半導体材料。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体材料を含む活性層を有する、
ことを特徴とする有機半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子化合物、高分子化合物、有機半導体材料及び有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜太陽電池や有機薄膜トランジスタ等が注目されている。有機半導体材料で作製された半導体デバイスの場合、無機半導体材料等で作製された半導体デバイスに比べ、薄く柔軟性に優れるといった利点がある。このため、種々の有機半導体材料の研究開発が行われている。
【0003】
一方で、有機半導体材料で作製される半導体デバイスでは、電荷移動度や光電変換効率などの半導体特性向上のため、π共役系を拡張した有機半導体材料が注目されている。例えば、ナフトビスチアジアゾールを基調とするπ共役系を拡張した骨格を有する化合物が知られている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/039369号
【文献】特開2018-145125号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】I. Osaka et al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 3498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機半導体材料に用いられる化合物には高電荷移動度等の特性が求められており、これまで種々の有機半導体材料が開示されているものの、材料開発は未だ発展途上にあり、更なる有機半導体材料が求められている。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗布法に利用可能で、良好な半導体デバイス特性を示す低分子化合物、高分子化合物、有機半導体材料及び有機半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る低分子化合物は、
式1又は式2で表される、
【化1-1】

(式1及び式2中、Rはアルキル基を表し、Aはヘテロ芳香環を表し、式2中、Bは式6a乃至式6gのいずれかで表される構造である。)
【化1-2】

(式6a乃至式6d中、Xは独立に水素、アルキル基、ハロゲンまたは置換されてもよい複素芳香環を表し、式6e乃至式6g中、R はアルキル基を表す。)
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点に係る高分子化合物は、
式3又は式4で表される繰り返し単位を含む、
【化2-1】

(式3及び式4中、Rはアルキル基を表し、Aはヘテロ芳香環を表し、Arはヘテロ芳香環を表し、式4中、Bは式8a乃至式8dのいずれかで表される構造である。)
【化2-2】

ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点に係る有機半導体材料は、
本発明の第1の観点に係る低分子化合物、又は、本発明の第2の観点に係る高分子化合物を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点に係る有機半導体デバイスは、
本発明の第3の観点に係る有機半導体材料を含む活性層を有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布法に利用可能で、良好な半導体デバイス特性を示す低分子化合物、高分子化合物、有機半導体材料及び有機半導体デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】化合物7aを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図2】化合物7aを用いた有機薄膜太陽電池素子の分光感度特性のグラフである。
図3】化合物7bを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図4】化合物7bを用いた有機薄膜太陽電池素子の分光感度特性のグラフである。
図5】化合物7cを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図6】化合物7cを用いた有機薄膜太陽電池素子の分光感度特性のグラフである。
図7】化合物7dを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図8】化合物7dを用いた有機薄膜太陽電池素子の分光感度特性のグラフである。
図9】化合物8を用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図10】化合物8を用いた有機薄膜太陽電池素子の分光感度特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(低分子化合物)
本実施の形態に係る低分子化合物は、式1又は式2で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
式1及び式2中、Rはアルキル基を表す。アルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でもよいが、溶媒への溶解性の観点から分岐鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数に制限はないが、6~28であることが好ましい。
【0017】
式1及び式2中、Aはヘテロ芳香環を表す。ヘテロ芳香環は単環でも縮合環でもよいが、縮合環としては、二環式または三環式が好ましい。また、Aを構成するヘテロ芳香環の環員数は5または6であることが好ましい。ヘテロ芳香環として、例えば、式5a~式5fの構造が挙げられる。式1において式5a~式5f中、R~Rは水素、またはアルキル基、エステル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等の置換基を表す。Rはアルキル基を表す。R~Rのアルキル部位は、分岐鎖状でも直鎖状でもよい。また、アルキル部位の炭素数に制限はないが、6~28であることが好ましい。また、式2において式5a~式5f中、RはBを表す。R~Rは上記R~Rと同義である。
【0018】
【化4】
【0019】
式2中、Bはヘテロ環を表す。ヘテロ環の環員数は、4~6であることが好ましい。ヘテロ環として、例えば、式6a~式6gで表される構造が好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】
また、式6a~式6g中のXは独立に水素、アルキル基、ハロゲンまたは置換されてもよい複素芳香環、Rは式1のRと同義である。
【0022】
式1及び式2で表される低分子化合物は、ナフトビスチアジアゾールのナフタレンに2つのピロールが縮合し、更に、それぞれのピロールにヘテロ芳香環が縮合した構造であり、π共役系が拡張されている。このため、式1及び式2で表される低分子化合物は、強い分子間相互作用を持ち、高い結晶性を有する。
【0023】
一方で、塗布法における有機半導体デバイス材料として用いる場合、トルエンやクロロベンゼン、クロロホルム等の有機溶媒への溶解性が問題になり、π共役系が拡張された化合物は溶解性が低下し、有機半導体デバイス材料として利用し難くなり得る。しかしながら、式1及び式2で表される低分子化合物は、それぞれのピロールの窒素にアルキル基が結合しているため、有機溶媒への溶解性に優れる。このため、式1及び式2で表される化合物は有機溶媒に溶解しやすく、塗布法における有機半導体デバイス材料として用いる場合に有用である。
【0024】
なお、上述した式1及び式2で表される低分子化合物は、後述する実施例を参照して合成することができる。
【0025】
(高分子化合物)
本実施の形態に係る高分子化合物は、式3又は式4で表される繰り返し単位を含む。
【0026】
【化6】
【0027】
式3及び式4中、Rは、上述した式1及び式2中のRと同義である。式3及び式4中、Aはヘテロ芳香環を表す。ヘテロ芳香環は単環でも縮合環でもよいが、縮合環としては、二環式または三環式が好ましい。また、Aを構成するヘテロ芳香環の環員数は5または6であることが好ましい。ヘテロ芳香環として、例えば、式7a~式7fの構造が挙げられる。R、R、R8は式5a~式5fのR、R、Rとそれぞれ同義である。
【0028】
【化7】
【0029】
また、式4中、Bは、ヘテロ環を表す。ヘテロ環の環員数は、4~6であることが好ましい。ヘテロ環として、例えば、式8a~式8dで表される構造が好ましい。
【0030】
【化8】
【0031】
式3及び式4中、Arは、ヘテロ芳香環を表し、例えば、チオフェン、ビチオフェン、ビチアゾール、チエノチオフェン、ベンゾジチオフェン等が挙げられる。これらのヘテロ芳香環は置換されていてもよい。
【0032】
式3、式4で表される高分子化合物の重量平均分子量は、10,000~1,000,000の範囲であることが好ましい。また、数平均分子量は10,000~200,000の範囲であることが好ましい。
【0033】
(有機半導体材料)
式1、式2で表される低分子化合物、式3、式4で表される高分子化合物は、p型有機半導体(電子供与体/ドナー)、またはn型有機半導体(電子受容体/アクセプター)のいずれとしても機能を発揮し、有機半導体材料に用いることができる。この有機半導体材料は、湿式成膜法等の塗布法によって有機半導体デバイスの活性層を形成することができる。
【0034】
有機半導体材料は、式1、式2で表される低分子化合物、式3、式4で表される高分子化合物のみを含んでいても、他の有機半導体材料や他の成分を含んでいてもよい。有機薄膜太陽電池用材料として用いる場合、組み合わされる他の有機半導体材料として、式1、式2で表される低分子化合物、式3、式4で表される高分子化合物がドナーであれば、アクセプターとしての機能を発揮する電子受容性化合物を含むことが好ましく、また、式1、式2で表される低分子化合物、式3、式4で表される高分子化合物がアクセプターであれば、ドナーとしての機能を発揮する電子供与性化合物を含むことが好ましい。電子受容性化合物は、所謂n型有機半導体材料として機能する化合物であればよく、PCBM等のフラーレン誘導体およびチオフェン系低分子化合物やチオフェン系化合物のポリマー等、公知の化合物が用いられる。電子供与性化合物は、所謂p型有機半導体材料として機能する化合物であればよく、ポリチオフェンおよびチオフェン系化合物のポリマー等、公知の化合物が用いられる。
【0035】
(有機半導体デバイス)
有機半導体デバイスは、有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光電変換素子や有機トランジスタ等であり、活性層に上記の有機半導体材料を含んでいる。上記の有機半導体材料は光電変換効率に優れるので、有機薄膜太陽電池に好適に利用できる。有機薄膜太陽電池は、光活性層に上述した有機薄膜太陽電池材料を含んでいる。有機薄膜太陽電池は、上述した有機薄膜太陽電池材料を用い、公知の手法で作製することができる。有機薄膜太陽電池の構造は、一対の電極の間に光活性層を備える構造であれば特に制限されない。有機薄膜太陽電池の構成は、例えば、以下の態様が挙げられる。なお、p層、p材料とは、上述した電子供与性化合物を含有する層、材料であり、n層、n材料とは、上述した有機薄膜太陽電池材料を含有する層、材料を表す。
(A)電極/p材料とn材料の混合層/電極
(B)電極/p層/p材料とn材料の混合層/n層/電極
(C)電極/p層/n層/電極
【実施例
【0036】
以下、実施例に基づき、化合物、化合物を用いた有機薄膜太陽電池の特性について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(化合物7a-7dの合成)
下記スキームに基づいて、順次合成を行い、化合物7a-7dを合成した。
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
原料となる化合物1は、「Chatterjee et al., NPG Asia Materials, 2018, 1016-1028」を参考に合成して使用した。また、化合物2は、「Hyeongjin Hwang et al., J. Mater. Chem. A, 2017, 5, 10269」を参考に合成して使用した。
【0043】
(化合物3の合成)
アルゴン雰囲気下、反応容器に化合物1(500mg,1.14mmol)、化合物2(1.46g,2.51mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg,4.4mol%)、及び、トルエン(30mL)を加え、110℃で12時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水、水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:クロロホルム(1:1)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで化合物3を赤色固体で得た(980mg,収率99%)。
【0044】
得られた化合物3の物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=7.85(s,2H),7.19(s,2H),2.80(d,J=7.7Hz,4H),1.83-1.77(m,4H),1.66-1.19(m,32H),0.93-0.83(m,6H)
【0045】
(化合物4aの合成)
アルゴン雰囲気下、反応容器に化合物3(980mg,1.13mmol)、アジ化ナトリウム(294mg,4.52mmol)、及び、ジメチルスルホキシド(30mL)を加え、90℃で12時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、抽出した有機層を水で洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、乾燥することで粗生成物を青色固体で得た(490mg)。アルゴン雰囲気下、反応容器に粗生成物(290mg,1.13mmol)、1-ブロモ-2-へキシルデカン(414mg,1.36mmol)、炭酸カリウム(374mg,2.71mmol)、ジメチルホルムアミド(100mL)を加え、180℃で12時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出し、抽出した有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:クロロホルム(1:1)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで化合物4aを赤色固体で得た(320mg,収率37%)。
【0046】
得られた化合物4aの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=7.01(s,2H),2.78-2.76(m,4H),1.85-1.81(m,4H),0.97-0.64(m,104H)
【0047】
(化合物4bの合成)
1-ブロモ-2-へキシルデカンを1-ブロモ-2-ブチルオクタン(234mg,0.936mmol)に代える以外、化合物4aの合成方法と同様にして合成を行い、化合物4bを赤色固体で得た(195mg,収率35%)。
【0048】
得られた化合物4bの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=7.06(s,2H),2.82(d,J=7.6Hz,4H),1.92-1.79(m,4H),1.52-1.22(m,34H),1.05-0.62(m,48H),0.50(t,J=6.6Hz,6H)
【0049】
(化合物5aの合成)
アルゴン雰囲気下、反応容器にジメチルホルムアミド(4.0mL)、及び、塩化ホスホリル(0.5mL,5.37mmol)を加え、0℃で30分撹拌した後、室温まで昇温し2時間撹拌した。その後、反応溶液を、化合物4a(320mg,0.245mmol)、及び、1,2-ジクロロエタン(20mL)を加えた溶液に滴下した。その後、80℃で1時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出し、抽出した有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:クロロホルム(1:10)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで化合物5aを赤色固体で得た(260mg,収率78%)。
【0050】
得られた化合物5aの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=10.16(s,2H),3.23-3.18(m,4H),1.95-1.89(m,4H),1.76-1.69(m,2H),1.41-0.62(m,102H)
【0051】
(化合物5bの合成)
化合物4aを化合物4b(195mg,0.164mmol)に代える以外、化合物5aの合成方法と同様にして合成を行い、化合物5bを赤色固体で得た(184mg,収率90%)。
【0052】
得られた化合物5bの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=10.10(s,2H),3.20-3.02(m,4H),2.82(d,J=7.6Hz,4H),1.92-1.85(m,4H),1.70-1.13(m,32H),0.95-0.56(m,46H),0.47-0.41(m,6H)
【0053】
(化合物7aの合成)
アルゴン雰囲気下、反応容器に化合物5a(130mg,0.0956mmol)、化合物6a(66mg,0.287mmol)、ピリジン(1.0mL)、及び、クロロホルム(20mL)を加え、60℃で5時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出し、抽出した有機層を1N塩酸、水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:クロロホルム(1:10)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで化合物7aを暗緑色固体で得た(110mg,収率64%)。
【0054】
得られた化合物7aの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=8.74(s,2H),8.41(dd,J=9.9,6.5Hz,2H),7.55-7.46(m,2H), 3.07(d,J=7.9Hz,4H)1.83-1.77(m,4H),1.42-1.30(m,4H),1.15-1.09(m,6H),0.96-0.65(m,94H)
【0055】
(化合物7bの合成)
化合物6aを化合物6b(70mg,0.265mmol)に代える以外、化合物7aの合成方法と同様にして合成を行い、化合物7bを暗緑色固体で得た(70mg,収率43%)。
【0056】
得られた化合物7bの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=8.80(s,2H),8.62(s,2H),7.84(d,J=4.0Hz,2H),3.04(s,4H)1.83-1.67(m,4H),1.51-0.55(m,104H)
【0057】
(化合物7cの合成)
化合物5aを化合物5b(100mg,0.08mmol)に代える以外、化合物7aの合成方法と同様にして合成を行い、化合物7cを暗緑色固体で得た(80mg,収率60%)。
【0058】
得られた化合物7cの物性データは次の通りである。
HNMR(500MH,CDCl,TMS)δ=8.71(d,J=4.5Hz,2H),8.43-8.35m,2H),7.50(d,J=7.4Hz,2H),3.05(s,4H)1.77(d,J=15.0Hz,4H),1.54-1.12(m,8H),1.02-0.58(m,74H),0.49(s,6H)
【0059】
(化合物7dの合成)
化合物5aを化合物5b(80mg,0.0641mmol)に、化合物6aを化合物6b(51mg,0.192mmol)に代える以外、化合物7aの合成方法と同様にして合成を行い、化合物7dを暗緑色固体で得た(70mg,収率63%)。
【0060】
得られた化合物7dの物性データは次の通りである。
HNMR(400MH,CDCl,TMS)δ=8.78(s,2H),8.59(d,J=1.4Hz,2H),7.84(d,J=4.1Hz,2H),3.01(s,J=7.9Hz,4H),1.72(s,4H),1.51-1.09(m,12H),1.02-1.58(m,70H),0.47(s,6H)
【0061】
続いて合成した化合物7a-7dそれぞれを用いて太陽電池素子を作製し、光電変換効率を評価した。
【0062】
(化合物7aを用いた太陽電池素子の作製、評価)
ITO膜がパターンニングされたガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、酢酸亜鉛(II)二水和物0.5g及びエタノールアミン0.142mLを2-メトキシエタノール5mLに溶解した溶液を5000rpmで30秒間スピンコートし、基板を180℃で30分間加熱することで、電子取り出し層を成膜した。
電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、化合物7a及び電子受容体である高分子化合物P1を含むクロロベンゼン溶液(化合物7a/高分子化合物P1の重量比=1.2/1)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚100nm)。なお、高分子化合物P1は「S. Wen et al., Chem. Mater. 2019, 31, 919.」を参照して合成して用いた。
【0063】
【化13】
【0064】
さらに、活性層上に、正孔取り出し層として厚さ7.5nmの三酸化モリブデン(MoO)膜を、次いで電極層として厚さ100nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜し、4mm角の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0065】
得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。図1に電流密度-電圧特性のグラフを、図2に分光感度特性をそれぞれ示す。
【0066】
得られた図1から短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FFを求めたところ、Jsc=15.92mA/cm、Voc=0.94V、FF=0.57であった。また、光電変換効率(η)を、式η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出したところ、8.6%であった。
【0067】
(化合物7bを用いた太陽電池素子の作製、評価)
化合物7b及び高分子化合物P1を含むクロロホルム溶液(化合物7b/高分子化合物P1の重量比=1.2/1)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した以外は上記と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し(膜厚100nm)、その特性を評価した。図3に示す電流密度-電圧特性が得られ、Jsc=17.91mA/cm、Voc=0.90V、FF=0.58であった。ηは9.3%であった。また、図4に分光感度特性を示す。
【0068】
(化合物7cを用いた太陽電池素子の評価)
化合物7c及び高分子化合物P1を含むクロロホルム溶液(化合物7c/高分子化合物P1の重量比=1.2/1)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した以外は上記と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し(膜厚100nm)、その特性を評価した。図5に示す電流密度-電圧特性が得られ、Jsc=17.63mA/cm、Voc=0.92V、FF=0.61であった。ηは10.0%であった。また、図6に分光感度特性を示す。
【0069】
(化合物7dを用いた太陽電池素子の評価)
化合物7d及び高分子化合物P1を含むクロロホルム溶液(化合物7d/高分子化合物P1の重量比=1.2/1)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した以外は上記と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し(膜厚100nm)、その特性を評価した。図7に示す電流密度-電圧特性が得られ、Jsc=19.08mA/cm、Voc=0.88V、FF=0.61であった。ηは10.2%であった。また、図8に分光感度特性を示す。
【0070】
(比較例:化合物8を用いた太陽電池素子の作製、評価)
市販の電子供与体である化合物8を用いて太陽電池素子を作製し、評価した。
【0071】
【化14】
【0072】
化合物8及び高分子化合物P1を含むクロロホルム溶液(化合物8/高分子化合物P1の重量比=1/1.2)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した以外は上記と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し(膜厚100nm)、その特性を評価した。図9に示す電流密度-電圧特性が得られ、Jsc=16.9mA/cm、Voc=0.85V、FF=0.57、ηは8.3%であった。また、図10に分光感度特性を示す。
【0073】
化合物7a-7d、及び、化合物8を用いて得られた有機薄膜太陽電池の特性を表2にまとめた。化合物7a-7dを用いて得られた有機薄膜太陽電池は、化合物8を用いて得られた有機薄膜太陽電池に比べて、光電変換効率が高く、良好な特性を有していることがわかる。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る低分子化合物、高分子化合物は、有機薄膜太陽電池や有機薄膜トランジスタ等の有機半導体デバイスの活性層を形成する有機半導体材料として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10