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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 1/00 20060101AFI20250108BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20250108BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B24B1/00 Z
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021075550
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169863
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛修
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-8814(JP,A)
【文献】特開2018-114581(JP,A)
【文献】特開2014-27000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 1/00-1/04,5/00-19/28;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインによって区画された複数の領域のそれぞれにデバイスが設けられたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を表面側に有する円盤状の被加工物を裏面側から研削する際に用いられる被加工物の加工方法であって、
該被加工物の該裏面側を第1チャックテーブルで保持する第1保持ステップと、
該第1チャックテーブルにより保持された該被加工物の外周縁を含む環状の領域に対して、回転させた第1切削ブレードを該被加工物の該表面側から該被加工物の仕上がり厚さに相当する深さを超える深さまで切り込ませながら、該第1チャックテーブルを回転させることにより、該環状の領域の該表面側の一部が除去されることで残留する環状の残留部を形成する第1切削ステップと、
該被加工物の該表面側を第2チャックテーブルで保持する第2保持ステップと、
該第2チャックテーブルにより保持された該被加工物に対して、回転させた第2切削ブレードを、該被加工物の該裏面側から、該残留部の内側の縁よりも該被加工物の径方向で内側の位置まで、且つ、該残留部が除去される深さまで切り込ませながら、該第2チャックテーブルを回転させることにより、該残留部を除去する第2切削ステップと、
該第2チャックテーブルにより保持された該被加工物に対して、該第2切削ブレードの回転軸に対して交差する回転軸で回転させた研削ホイールが備える研削砥石を、該被加工物の該裏面側から接触させながら、該第2チャックテーブルを回転させることにより、該被加工物を該裏面側から研削して該仕上がり厚さまで薄くする研削ステップと、を含む被加工物の加工方法。
【請求項2】
該第2切削ステップにより該残留部を除去しながら、該研削ステップにより該被加工物を該裏面側から研削する請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのような円盤状の被加工物を研削する際に適用される被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量なデバイスチップを実現するために、集積回路等のデバイスが表面側に設けられた円盤状のウェーハを薄く加工する機会が増えている。例えば、ウェーハの表面側をチャックテーブルで保持し、砥粒を含む砥石が固定された研削ホイールと、チャックテーブルと、を互いに回転させて、純水等の液体を供給しながらウェーハの裏面に砥石を押し当てることで、このウェーハを研削して薄くできる。
【0003】
デバイスチップの製造に用いられる円盤状のウェーハの外周縁は、通常、搬送の際に加わる衝撃等による欠けや割れの発生を防ぐために、面取りされている。ところが、面取りされたウェーハを研削等の方法で薄くすると、ウェーハの外周縁はナイフエッジのように尖って脆くなり、却って、欠けや割れが発生し易くなってしまう。
【0004】
そこで、ウェーハを研削する前に、その面取りされた部分(以下、面取り部)を除去するエッジトリミングと呼ばれる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、ウェーハに切削ブレードを切り込ませて面取り部を除去しておけば、ウェーハを裏面側から研削しても、その外周縁が尖って脆くなることはない。
【0005】
一方で、エッジトリミングでウェーハの面取り部を完全に除去すると、ウェーハの向きを示すノッチ等が失われ、また、ウェーハの直径に差が生じ易い。その結果、複数のウェーハを厚みの方向に重ねて高い精度で貼り合わせることが難しくなる。よって、複数のウェーハを貼り合わせるウェーハオンウェーハ(Wafer On Wafer)のような技術と組み合わせる場合には、面取り部の表面側の一部だけが除去されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、面取り部の表面側の一部が除去された状態のウェーハを裏面側から研削すると、外周縁に残っていた面取り部の一部(裏面側の部分)がウェーハから分離し、大きな端材となって装置内に留まり易い。そのため、端材を除去する作業の頻度が高くなっていた。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハのような円盤状の被加工物を研削する際に、大きな端材の発生を抑制できる新たな被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、分割予定ラインによって区画された複数の領域のそれぞれにデバイスが設けられたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を表面側に有する円盤状の被加工物を裏面側から研削する際に用いられる被加工物の加工方法であって、該被加工物の該裏面側を第1チャックテーブルで保持する第1保持ステップと、該第1チャックテーブルにより保持された該被加工物の外周縁を含む環状の領域に対して、回転させた第1切削ブレードを該被加工物の該表面側から該被加工物の仕上がり厚さに相当する深さを超える深さまで切り込ませながら、該第1チャックテーブルを回転させることにより、該環状の領域の該表面側の一部が除去されることで該裏面側に残留する環状の残留部を形成する第1切削ステップと、該被加工物の該表面側を第2チャックテーブルで保持する第2保持ステップと、該第2チャックテーブルにより保持された該被加工物に対して、回転させた第2切削ブレードを、該被加工物の該裏面側から、該残留部の内側の縁よりも該被加工物の径方向で内側の位置まで、且つ、該残留部が除去される深さまで切り込ませながら、該第2チャックテーブルを回転させることにより、該残留部を除去する第2切削ステップと、該第2チャックテーブルにより保持された該被加工物に対して、該第2切削ブレードの回転軸に対して交差する回転軸で回転させた研削ホイールが備える研削砥石を、該被加工物の該裏面側から接触させながら、該第2チャックテーブルを回転させることにより、該被加工物を該裏面側から研削して該仕上がり厚さまで薄くする研削ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該第2切削ステップにより該残留部を除去しながら、該研削ステップにより該被加工物を該裏面側から研削する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面にかかる被加工物の加工方法では、第1チャックテーブルにより保持された被加工物の外周縁を含む環状の領域に対して、回転させた第1切削ブレードを被加工物の表面側から切り込ませて、裏面側に残留する環状の残留部を形成し、その後、被加工物の研削に使用される第2チャックテーブルによって保持された状態で、回転させた第2切削ブレードを被加工物の裏面側から切り込ませて、残留部を除去するので、被加工物を研削する際に、残留部が被加工物から分離して大きな端材になることがない。
【0012】
また、本発明の一側面にかかる被加工物の加工方法では、回転させた第2切削ブレードを、残留部の内側の縁よりも被加工物の径方向で内側の位置まで切り込ませるので、例えば、研削ホイールと第2切削ブレードとの双方を使用する複合的な加工装置を用いる場合のように、第2切削ブレードによる切削の精度を高め難い状況でも、残留部を確実に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、円盤状の被加工物を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、切削装置のチャックテーブルにより保持された被加工物の外周縁を含む環状の領域が加工される様子を示す斜視図である。
図3図3は、切削装置のチャックテーブルにより保持された被加工物の外周縁を含む環状の領域が加工される様子を示す断面図である。
図4図4は、研削装置のチャックテーブルにより保持された被加工物に対して切削ブレードを切り込ませるとともに、研削ホイールが備える研削砥石を被加工物の裏面側から接触させる様子を示す斜視図である。
図5図5は、研削装置のチャックテーブルにより保持された被加工物に対して切削ブレードを切り込ませるとともに、研削ホイールが備える研削砥石を被加工物の裏面側から接触させる様子を示す断面図である。
図6図6は、被加工物に切り込ませる切削ブレードと被加工物との位置の関係を示す断面図である。
図7図7は、被加工物が仕上がり厚さまで薄くなる様子を示す斜視図である。
図8図8は、被加工物が仕上がり厚さまで薄くなる様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる被加工物の加工方法で加工される円盤状の被加工物11を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、被加工物11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、概ね円形の表面11aと、概ね円形の裏面11bと、を有している。
【0015】
この被加工物11は、予め面取りされている。すなわち、被加工物11の表面11aと裏面11bとを接続する外周縁(外周面)11cは、外向きに凸の曲面によって主に構成されている。また、被加工物11の外周縁11cを含む一部の領域には、ノッチ等と呼ばれ被加工物11の向き(代表的には、結晶方位)を示す切り欠き部分11dが設けられている。
【0016】
被加工物11の表面11a側は、中央側のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域と、に分けられる。デバイス領域は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13で更に複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が設けられている。
【0017】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体でなる円盤状のウェーハを被加工物11として用いるが、この被加工物11の材質、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0018】
本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、まず、被加工物11の外周縁11cを含む環状の領域(面取り部)を表面11a側から部分的に除去する。具体的には、まず、この加工に適した切削装置のチャックテーブル(第1チャックテーブル)で被加工物11の裏面11b側を保持する(第1保持ステップ)。
【0019】
図2は、切削装置2のチャックテーブル(第1チャックテーブル)4により保持された被加工物11の外周縁11cを含む環状の領域が、表面11a側から加工される様子を示す斜視図であり、図3は、チャックテーブル4により保持された被加工物11の外周縁11cを含む環状の領域が、表面11a側から加工される様子を示す断面図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、切削装置2は、被加工物11を保持できるように構成されたチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属を用いて形成された円盤状の枠体6を含む。枠体6の上面側には、円形状の開口を上端に持つ凹部6aが形成されている。
【0021】
枠体6の凹部6aには、セラミックス等を用いて多孔質の円盤状に形成された保持板8が固定されている。保持板8の上面8aは、概ね平坦に構成されており、被加工物11をチャックテーブル4で保持する際には、この上面8aに被加工物11の裏面11b等が接触する。なお、被加工物11の裏面11bには、予め樹脂等でなる保護部材を貼付しておいても良い。この場合には、保持板8の上面8aに保護部材が接触する。
【0022】
保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6bや、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持板8の上面8aに被加工物11の裏面11b等を接触させて、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させれば、被加工物11は、負圧に起因する吸引力でチャックテーブル4に保持される。
【0023】
枠体6の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル4は、この回転駆動源が生じる力によって、上面8aの中心が回転の中心となるように、例えば、鉛直方向(Z1軸方向)に沿う軸(回転軸)の周りに回転する。また、枠体6は、チャックテーブル移動機構(不図示)に支持されており、チャックテーブル4は、このチャックテーブル移動機構によって、上面8aに対して概ね平行な加工送り方向(X1軸方向)に移動する。
【0024】
チャックテーブル4の上方には、切削ユニット(第1切削ユニット)10が配置されている。切削ユニット10は、筒状のスピンドルハウジング12を備えている。スピンドルハウジング12の内側の空間には、柱状のスピンドル14の一部が収容されている。このスピンドル14の軸心(回転軸)は、チャックテーブル4の上面8aに対して概ね平行である。
【0025】
スピンドルハウジング12から露出するスピンドル14の一端側には、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレード(第1切削ブレード)16が装着されている。スピンドル14の他端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル14の一端側に装着された切削ブレード16は、この回転駆動源が生じる力によって、スピンドル14の軸心の周りに回転する。切削ブレード16の傍には、切削ブレード16や被加工物11に対して水等の液体(切削液)を供給できるノズル(不図示)が配置されている。
【0026】
スピンドルハウジング12(切削ユニット10)は、例えば、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されている。切削ユニット10は、この切削ユニット移動機構によって、チャックテーブル4の上面8aに対して概ね平行、且つ加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向(Y1軸方向)と、上面8aに対して概ね垂直な鉛直方向と、に移動する。
【0027】
チャックテーブル4で被加工物11の裏面11b側を保持する際には、被加工物11の裏面11b等を上面8aに接触させた上で、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させる。これにより、被加工物11は、負圧に起因する吸引力でチャックテーブル4に保持され、表面11a側が上方に露出した状態になる。
【0028】
被加工物11をチャックテーブル4で保持した後には、被加工物11の外周縁11cを含む環状の領域に切削ブレード16を切り込ませ、その表面11a側の一部を除去する(第1切削ステップ)。具体的には、まず、切削ブレード16の下端が被加工物11の表面11aと裏面11bとの間の高さ(位置)に位置付けられるように、鉛直方向における切削ユニット10の位置を切削ユニット移動機構で調整する。
【0029】
次に、切削ブレード16を回転させて、ノズルからの液体の供給を開始する。また、外周縁11cを含む環状の領域に切削ブレード16を切り込ませるように、上面8aに対して概ね平行な方向におけるチャックテーブル4の位置と切削ユニット10の位置との関係を、チャックテーブル移動機構と切削ユニット移動機構とで調整する。その後、鉛直方向に沿う軸の周りにチャックテーブル4を1周以上回転させる。
【0030】
これにより、切削ブレード16を被加工物11の外周縁11cに沿って切り込ませ、外周縁11cを含む環状の領域の表面11a側の一部を除去できる。すなわち、被加工物11の表面11a側の外周部には、円柱の側面に相当する形状を有し表面11aに対して概ね垂直な側面11eが形成される。また、被加工物11の裏面11b側には、環状の領域の他の一部でなる環状の残留部11fが残留する。
【0031】
なお、本実施形態では、切削ブレード16の下端を、表面11a側からの距離が被加工物11の仕上がり厚さ(加工後の被加工物11の厚さ)を超える高さ(位置)に位置付けた状態で、被加工物11に切削ブレード16を切り込ませる。つまり、被加工物11の表面11a側から、被加工物11の仕上がり厚さに相当する深さを超える深さまで切削ブレード16を切り込ませる。その結果、被加工物11に形成される側面11eの高さ(鉛直方向の長さ)は、被加工物11の仕上がり厚さよりも大きくなる。
【0032】
被加工物11に切削ブレード16を切り込ませ、表面11aに対して概ね垂直な側面11eと、環状の残留部11fと、を形成した後には、裏面11b側から被加工物11を研削して仕上がり厚さまで薄くする。具体的には、まず、この加工に適した研削装置(複合的な加工装置)のチャックテーブル(第2チャックテーブル)で被加工物11の表面11a側を保持する(第2保持ステップ)。
【0033】
図4は、研削装置(複合的な加工装置)22のチャックテーブル(第2チャックテーブル)24により保持された被加工物11が裏面11b側から加工される様子を示す斜視図であり、図5は、チャックテーブル24により保持された被加工物11が裏面11b側から加工される様子を示す断面図である。
【0034】
図4及び図5に示すように、研削装置22は、被加工物11を保持できるように構成されたチャックテーブル24を備えている。チャックテーブル24の構造は、切削装置2が備えるチャックテーブル4の構造と類似している。例えば、チャックテーブル24は、セラミックス等を用いて形成された円盤状の枠体26を含む。枠体26の上面側には、円形状の開口を上端に持つ凹部26aが形成されている。
【0035】
枠体26の凹部26aには、セラミックス等を用いて多孔質の円盤状に形成された保持板28が固定されている。保持板28の上面28aは、円錐の側面に相当する形状に構成されており、被加工物11をチャックテーブル24で保持する際には、この上面28aに被加工物11の表面11a等が接触する。
【0036】
なお、図5等では、上面28aが平坦に表現されているが、上面28aの中心と外周縁との高さの差(高低差)は、10μm~30μm程度である。また、被加工物11の表面11aには、予め樹脂等でなる保護部材を貼付しておいても良い。この場合には、保持板28の上面28aに保護部材が接触する。
【0037】
保持板28の下面側は、枠体26の内部に設けられた流路26bや、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持板28の上面28aに被加工物11の表面11a等を接触させて、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させれば、被加工物11は、負圧に起因する吸引力でチャックテーブル24に保持される。
【0038】
枠体26の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル24は、この回転駆動源が生じる力によって、上面28aの中心が回転の中心となるように、鉛直方向(Z2軸方向)に対して平行な軸(回転軸)、又は、鉛直方向から僅かに傾いた軸(回転軸)の周りに回転する。また、枠体26は、チャックテーブル移動機構(不図示)に支持されており、チャックテーブル24は、このチャックテーブル移動機構によって、第1水平方向(X2軸方向)に移動する。
【0039】
チャックテーブル24の上方には、研削ユニット30が配置されている。研削ユニット30は、例えば、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングの内側の空間には、柱状のスピンドル32の一部が収容されている。スピンドル32の軸心(回転軸)は、例えば、鉛直方向に対して平行、又は僅かに傾いており、チャックテーブル24の上面28aに対して交差する。
【0040】
スピンドル32の下端部には、例えば、円盤状のマウント34が設けられている。マウント34の外周部には、このマウント34を厚さの方向に貫通する複数の穴(不図示)が形成されており、各穴には、ボルト36等が挿入される。マウント34の下面には、このマウント34と概ね直径が等しい円盤状の研削ホイール38が、ボルト36等によって固定されている。
【0041】
研削ホイール38は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属を用いて形成された円盤状のホイール基台40を含む。ホイール基台40の下面には、このホイール基台40の周方向に沿って複数の研削砥石42が固定されている。スピンドル32の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール38は、この回転駆動源が生じる力によって、スピンドル32の軸心の周りに回転する。
【0042】
研削ホイール38の傍、又は研削ホイール38の内部には、研削砥石42や被加工物11に対して水等の液体(研削液)を供給できるように構成された研削用ノズル(不図示)が設けられている。研削ユニット30のスピンドルハウジングは、例えば、研削ユニット移動機構(不図示)に支持されている。研削ユニット30は、この研削ユニット移動機構によって、鉛直方向に移動する。
【0043】
また、この研削ユニット30と干渉しない位置には、切削ユニット(第2切削ユニット)44が配置されている。切削ユニット44は、筒状のスピンドルハウジング46を備えている。スピンドルハウジング46の内側の空間には、柱状のスピンドル48の一部が収容されている。スピンドル48の軸心(回転軸)は、研削ユニット30が備えるスピンドル32の軸心に対して交差(例えば、直交)している。
【0044】
スピンドルハウジング46から露出するスピンドル48の一端側には、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレード(第2切削ブレード)50が装着されている。この切削ブレード50(切り刃)の幅は、少なくとも、残留部11fの幅(径方向の長さ)よりも大きい。スピンドル48の他端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル48の一端側に装着された切削ブレード50は、この回転駆動源が生じる力によって、スピンドル48の軸心の周りに回転する。
【0045】
切削ブレード50の傍には、切削ブレード50や被加工物11に対して水等の液体(切削液)を供給できる切削用ノズル(不図示)が配置されている。切削ユニット44のスピンドルハウジング46は、例えば、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されている。切削ユニット44は、この切削ユニット移動機構によって、第1水平方向及び鉛直方向に対して概ね垂直な第2水平方向(Y2軸方向)と、鉛直方向と、に移動する。
【0046】
チャックテーブル24で被加工物11の表面11a側を保持する際には、被加工物11の表面11a等を上面28aに接触させた上で、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させる。これにより、被加工物11は、負圧に起因する吸引力でチャックテーブル24に保持され、裏面11b側が上方に露出した状態になる。
【0047】
被加工物11をチャックテーブル24で保持した後には、被加工物11に対して切削ブレード50を切り込ませ、残留部11fを除去する(第2切削ステップ)。また、被加工物11の裏面11b側から研削ホイール38の研削砥石42を接触させて、被加工物11を仕上がり厚さまで薄くする(研削ステップ)。
【0048】
具体的には、まず、研削ホイール38を回転させる際の研削砥石42の軌跡が被加工物11の中心の直上を通り、また、残留部11fの直上に切削ブレード50が配置されるように、チャックテーブル24の位置、研削ユニット30の位置、及び切削ユニット44の位置の関係を、チャックテーブル移動機構と切削ユニット移動機構とで調整する。
【0049】
そして、図4及び図5に示すように、チャックテーブル24を回転させた状態で、切削ブレード50を回転させて、切削用ノズルから液体を供給しながら、切削ユニット44を徐々に下降させる。同様に、チャックテーブル24を回転させた状態で、研削ホイール38を回転させて、研削用ノズルから液体を供給しながら、研削ユニット30を徐々に下降させる。これにより、切削ブレード50を切り込ませて残留部11fを除去しながら、被加工物11を裏面11b側から研削して薄くすることができる。
【0050】
図6は、被加工物11に切り込ませる切削ブレード50と被加工物11との位置の関係を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態では、環状の残留部11fの内側の縁よりも被加工物11の径方向で内側の位置まで切削ブレード50が切り込むように、チャックテーブル24の位置と切削ユニット44の位置との関係が調整される。つまり、被加工物11の径方向で内側に位置する切削ブレード50の側面を、径方向で側面11eよりも内側に位置付ける。
【0051】
また、本実施形態では、環状の残留部11fを完全に除去できる深さまで切削ブレード50が切り込むように、切削ユニット44を下降させる。つまり、切削ブレード50の下端の高さ(位置)が残留部11fの下端の高さ(位置)より低くなるまで、切削ユニット44を下降させる。ただし、切削ブレード50の下端の高さ(位置)が研削後の被加工物11の裏面11gの高さ(位置)よりも高い状態で、切削ユニット44の下降を停止させる必要がある。
【0052】
このように、本実施形態では、環状の残留部11fの内側の縁よりも被加工物11の径方向で内側の位置まで切削ブレード50を切り込ませ、また、切削ブレード50の下端の高さ(位置)が残留部11fの下端の高さ(位置)より低く研削後の被加工物11の裏面11gの高さ(位置)よりも高くなるように切削ブレード50を切り込ませる。よって、切削の精度を高め難い本実施形態のような研削装置22を用いる場合にも、被加工物11の残留部11fを確実に除去できる。
【0053】
なお、本実施形態では、切削ブレード50の下端が研削砥石42の下端よりも先行して下降するように、研削ユニット30と切削ユニット44とを下降させる。つまり、研削ユニット30の下降は、切削ユニット44の下降を開始させた後に開始され、研削砥石42を残留部11fに接触させない。このように、研削砥石42を残留部11fに接触させることなく、残留部11fを切削ブレード50により除去することで、研削砥石42との接触により残留部11fが被加工物11から分離して大きな端材になることがない。
【0054】
図7は、被加工物11が仕上がり厚さまで薄くなる様子を示す斜視図であり、図8は、被加工物11が仕上がり厚さまで薄くなる様子を示す断面図である。図7及び図8に示すように、残留部11fが除去され、被加工物11が仕上がり厚さまで薄くなると、被加工物11の加工を終了させる。なお、被加工物11が仕上がり厚さまで薄くなると、研削後の裏面11gが上方に露出した状態になる。
【0055】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、切削装置2のチャックテーブル(第1チャックテーブル)4により保持された被加工物11の外周縁11cを含む環状の領域に対して、回転させた切削ブレード(第1切削ブレード)16を被加工物11の表面11a側から切り込ませて、裏面11b側に残留する環状の残留部11fを形成し、その後、被加工物11の研削に使用される研削装置(複合的な加工装置)22のチャックテーブル(第2チャックテーブル)24によって保持された状態で、回転させた切削ブレード(第2切削ブレード)50を被加工物11の裏面11b側から切り込ませて、残留部11fを除去するので、被加工物11を研削する際に、残留部11fが被加工物11から分離して大きな端材になることがない。
【0056】
また、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、回転させた切削ブレード50を、残留部11fの内側の縁よりも被加工物11の径方向で内側の位置まで切り込ませるので、例えば、研削ホイール38と切削ブレード50との双方を使用する研削装置22を用いる場合のように、切削ブレード50による切削の精度を高め難い状況でも、残留部11fを確実に除去できる。
【0057】
更に、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、切削ブレード50を切り込ませて残留部11fを除去しながら、被加工物11を裏面11b側から研削するので、例えば、切削ブレード50を切り込ませて残留部11fを完全に除去した上で、被加工物11を裏面11b側から研削する場合に比べて、被加工物11の加工に要する時間を大幅に短くできる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、被加工物11に残留部11fを形成した後、チャックテーブル(第2チャックテーブル)24で被加工物11を保持する前には、被加工物11と別の被加工物との貼り合わせをはじめとする任意の処理を被加工物11に対して行うことができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、切削ブレード(第2切削ブレード)50を切り込ませて残留部11fを除去しながら、被加工物11を裏面11b側から研削しているが、切削ブレード50を切り込ませて残留部11fを完全に除去した上で、被加工物11を裏面11b側から研削しても良い。なお、この場合には、残留部11fを形成する場合と同様の手順で切削ブレード50を被加工物11に切り込ませ、残留部11fを除去しても良い。
【0060】
更に、上述した実施形態では、切削装置2と研削装置(複合的な加工装置)22とを用いて被加工物11を加工しているが、研削装置(複合的な加工装置)22のみを用いて同様の手順で被加工物11を加工することもできる。この場合には、チャックテーブル(第1チャックテーブル)24によって保持された被加工物11に対して切削ブレード(第1切削ブレード)50を切り込ませることで、残留部11fを形成することになる。
【0061】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0062】
11 :被加工物
11a :表面
11b :裏面
11c :外周縁(外周面)
11d :切り欠き部分
11e :側面
11f :残留部
11g :裏面
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
2 :切削装置
4 :チャックテーブル(第1チャックテーブル)
6 :枠体
6a :凹部
6b :流路
8 :保持板
8a :上面
10 :切削ユニット(第1切削ユニット)
12 :スピンドルハウジング
14 :スピンドル
16 :切削ブレード(第1切削ブレード)
22 :研削装置(複合的な加工装置)
24 :チャックテーブル(第1チャックテーブル、第2チャックテーブル)
26 :枠体
26a :凹部
26b :流路
28 :保持板
28a :上面
30 :研削ユニット
32 :スピンドル
34 :マウント
36 :ボルト
38 :研削ホイール
40 :ホイール基台
42 :研削砥石
44 :切削ユニット(第2切削ユニット)
46 :スピンドルハウジング
48 :スピンドル
50 :切削ブレード(第1切削ブレード、第2切削ブレード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8