(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】変調装置及び受信機
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
H04L27/26 111
(21)【出願番号】P 2020172834
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】白井 規之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
(72)【発明者】
【氏名】高田 政幸
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-198426(JP,A)
【文献】特開2017-200126(JP,A)
【文献】特開2020-096343(JP,A)
【文献】蔀拓也,報告01 地上放送高度化に向けた伝送路符号化方式,NHK技研R&D No.172,2018年11月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を帯域合成してデータセグメントを構成し、前記データセグメントに所定のTMCC(伝送多重制御信号)を含む信号を付加することでOFDM(直交周波数分割多重)フレームを構成し、前記OFDMフレームの信号を送信する変調装置において、
前記A階層の信号、前記B階層の信号及び前記C階層の信号を、部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号に分離する部分受信帯域分離部と、
前記部分受信帯域分離部により分離された前記部分受信帯域の信号に対し、階層間におけるキャリア単位の周波数IL(インターリーブ)を示す階層間キャリア単位ILを行うか、または前記階層間におけるセグメント単位の周波数ILを示す階層間セグメント単位ILを行い、
前記階層間キャリア単位ILまたは前記階層間セグメント単位ILの後の前記部分受信帯域の信号を、階層間IL後の部分受信帯域の信号として出力する部分受信帯域階層間IL部と、
前記部分受信帯域階層間IL部により出力された前記階層間IL後の部分受信帯域の信号に対し、及び前記部分受信帯域分離部により分離された前記非部分受信帯域の信号に所定の周波数ILが行われた信号に対し、セグメント内の周波数ILを行い、セグ内IL後の部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号を出力するセグ内IL部と、
前記セグ内IL部により出力された前記セグ内IL後の部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号の帯域合成を行うことで、帯域合成後の信号を生成し、
前記帯域合成後の信号のうち部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントを、前記帯域合成後の信号の周波数方向の下端または上端に寄せることで、前記データセグメントを構成するか、または前記帯域合成後の信号を前記データセグメントとして構成する帯域合成部と、を備え
、
前記部分受信帯域階層間IL部は、
前記TMCCに基づいて、端寄せモードであるか否かを示す伝送帯域モード、部分受信ありまたは部分受信なしを示す部分受信フラグ、SP(スキャッタードパイロット)パターンが前記A階層、前記B階層及び前記C階層の間で同じまたは同じでないかを示すSPパターン状態を判定し、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信ありであり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間キャリア単位ILを行い、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信ありであり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じでない場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信なしである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外であり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間キャリア単位ILを行い、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外であり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じでない場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、
前記帯域合成部は、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合、前記帯域合成後の信号のうち前記部分受信帯域のセグメントまたは前記A階層のセグメントを、前記帯域合成後の信号の周波数方向の下端または上端に寄せることで、前記データセグメントを構成し、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外である場合、前記帯域合成後の信号を前記データセグメントとして構成する、ことを特徴とする変調装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の変調装置において、
さらに、前記OFDMフレームにおける周波数帯域の下端から上端に渡る固定のセグメント位置毎のセグメント内の所定のキャリア位置に前記TMCCを設定し、前記帯域合成部により構成された前記データセグメントに前記TMCCを付加することで、前記OFDMフレームを構成するOFDMフレーム構成部を備えたことを特徴とする変調装置。
【請求項3】
A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号が帯域合成されたデータセグメント及びTMCCを含むOFDMフレームの信号から、部分受信帯域の信号をフィルタ処理にて受信し、前記部分受信帯域の信号からA階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調する受信機において、
前記OFDMフレームの信号から、前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCを取得するTMCC取得部と、
前記TMCC取得部により取得された前記TMCC及び予め設定された中心周波数fcに基づいて、移動受信用中心周波数f’を決定する中心周波数決定部と、
前記TMCC取得部により取得された前記TMCCに基づいて、前記部分受信帯域の信号または前記A階層の信号が前記データセグメントの周波数方向の下端または上端に寄っている端寄せモードであるか否かを示す伝送帯域モードを判定し、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合、前記中心周波数決定部により決定された前記移動受信用中心周波数f’を基準にして、前記部分受信帯域の信号から前記A階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調し、
前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外である場合、前記中心周波数fcを基準にして、前記部分受信帯域の信号から前記A階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調する受信処理部と、を備え、
前記TMCC取得部は、
前記OFDMフレームの信号から任意のセグメント位置の1つのセグメントを抽出し、前記セグメント位置の前記セグメント内における予め設定された前記TMCCのキャリア位置からデータを抽出して復調することで、復調後のデータを生成し、前記復調後のデータの構造と予め設定された前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCのデータ構造とを比較するセグメント抽出比較処理を行い、
前記構造が不一致の場合、新たなセグメント位置の1つのセグメントについて、前記セグメント抽出比較処理を行い、
前記構造が一致する場合、前記復調後のデータを、前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCとして取得する、ことを特徴とする受信機。
【請求項4】
請求項
3に記載の受信機において、
前記受信処理部は、
前記TMCCに基づいて、部分受信ありまたは部分受信なしを示す部分受信フラグ、前記A階層の信号のセグメント数を示すA階層数、及び、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合の前記下端または前記上端を示す下端上端識別フラグを判定し、
前記中心周波数決定部は、
前記部分受信フラグ、前記A階層数、前記下端上端識別フラグ及び前記中心周波数fcに基づいて、移動受信用中心周波数f’を決定する、ことを特徴とする受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波により実現するシステムにおいて、特に、隣接チャンネルの干渉を低減する変調装置及び受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上波による4K・8K放送の実現に向けて、地上放送高度化方式の開発が進められている(例えば非特許文献1,2を参照)。地上放送高度化方式は、現行のISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式(例えば非特許文献3を参照)の特長である階層伝送が可能なセグメント構造を継承しており、1つの放送波で固定受信向けサービス及び移動受信向けサービスを多重可能な方式である。
【0003】
また、地上放送高度化方式は、伝送容量拡大のため、帯域幅を現行の地デジの5.57MHzから5.83MHzに拡大し、セグメント数も現行の地デジの13から35に拡大している。
【0004】
図20は、セグメント配置を説明する図である。(1)は現行の地デジの場合を示し、(2)は、地上放送高度化方式において階層間(A階層、B階層及びC階層の間)でSP(Scattered Pilot:スキャッタードパイロット)の配置パターン(SPパターン)が異なる場合を示し、(3)は、地上放送高度化方式において階層間でSPパターンが同じ場合を示す。
【0005】
(1)に示すように、現行の地デジのセグメント配置は、セグメント数が13であり、その全体の帯域幅は5.57MHzである。移動受信向けの部分受信帯域のセグメント(ワンセグ)は、13セグメントのうちの中央の1セグメントに配置されている。
【0006】
一方、(2)及び(3)に示すように、地上放送高度化方式は、セグメント数が35であり、その全体の帯域幅は5.83MHzである。移動受信向けセグメントを含む部分受信帯域のセグメントは、35セグメントの中央に配置され、その数は9セグメントである。
【0007】
(2)において、太線の枠で囲んだセグメントが、移動受信向けのA階層のセグメントである。移動受信用の受信機は、部分受信帯域のみの9セグメントをフィルタ処理にて受信し、そのうちのA階層のセグメント(本例では5セグメント)のみを抽出して復調する。
【0008】
また、(2)では、変調装置により、部分受信帯域内の階層間でセグメント単位のインターリーブ処理が行われ、(3)では、変調装置により、部分受信帯域内の階層間でキャリア単位のインターリーブ処理が行われる。
【0009】
一方、UHF帯で放送波を送信するためには、他の無線局への与干渉及び他の無線局からの被干渉を考慮する必要があり、それぞれの送信局の諸元(送信電力、送信指向性等)は、その基準値である混信保護比(例えば非特許文献4を参照)を満足するように設計されている。
【0010】
地上放送高度化方式の放送波を現行の地デジと同じUHF帯で送信するためには、同様の混信保護比の基準が必要となる。この混信保護比の基準が現行の地デジと同じである場合には、送信局の設計基準が同じとなるが、混信保護比を変更することができれば、設計基準を緩和することができ、例えば、地上放送高度化方式の送信局の送信出力を現行の地デジの送信局の送信電力より大きくすることでサービスエリアを拡大することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】蔀他、“地上放送高度化に向けた伝送路符号化方式”、NHK技研R&D、NO.172、201.119、P.11-19
【文献】M. Nakamura,et al.,“A study on the transmission system for advanced ISDB-T”,Proc.14th IEEE Int. symp. on BMSB,4A-2(Jun.2019)
【文献】電波産業会、“地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式”、ARIB STD-B31 2.2版(2014)
【文献】電波産業会、“デジタル放送用受信装置(望ましい仕様)”、ARIB STD-B21 5.10版(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
地上放送高度化方式のセグメント配置は
図20(2)及び(3)に示したとおりであるが、日本国内のテレビ放送が使用しているUHF帯の周波数(放送用周波数帯)の利用状況は逼迫しているのが現状である。
【0013】
このような現状において、隣接チャンネルの混信保護比の基準を緩和することができれば、送信局の置局(放送ネットワークの設計)に関する自由度を増やすことができる。
【0014】
また、隣接チャンネル関係にある他の放送局の受信への影響(干渉の基準値)を緩和することができれば、チャンネルプランの検討に寄与し、UHF帯全体でみれば、更なる周波数有効利用が可能となる。
【0015】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波にて実現する際に、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減可能な変調装置及び受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、請求項1の変調装置は、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を帯域合成してデータセグメントを構成し、前記データセグメントに所定のTMCC(伝送多重制御信号)を含む信号を付加することでOFDM(直交周波数分割多重)フレームを構成し、前記OFDMフレームの信号を送信する変調装置において、前記A階層の信号、前記B階層の信号及び前記C階層の信号を、部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号に分離する部分受信帯域分離部と、前記部分受信帯域分離部により分離された前記部分受信帯域の信号に対し、階層間におけるキャリア単位の周波数IL(インターリーブ)を示す階層間キャリア単位ILを行うか、または前記階層間におけるセグメント単位の周波数ILを示す階層間セグメント単位ILを行い、前記階層間キャリア単位ILまたは前記階層間セグメント単位ILの後の前記部分受信帯域の信号を、階層間IL後の部分受信帯域の信号として出力する部分受信帯域階層間IL部と、前記部分受信帯域階層間IL部により出力された前記階層間IL後の部分受信帯域の信号に対し、及び前記部分受信帯域分離部により分離された前記非部分受信帯域の信号に所定の周波数ILが行われた信号に対し、セグメント内の周波数ILを行い、セグ内IL後の部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号を出力するセグ内IL部と、前記セグ内IL部により出力された前記セグ内IL後の部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号の帯域合成を行うことで、帯域合成後の信号を生成し、前記帯域合成後の信号のうち部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントを、前記帯域合成後の信号の周波数方向の下端または上端に寄せることで、前記データセグメントを構成するか、または前記帯域合成後の信号を前記データセグメントとして構成する帯域合成部と、を備え、前記部分受信帯域階層間IL部が、前記TMCCに基づいて、端寄せモードであるか否かを示す伝送帯域モード、部分受信ありまたは部分受信なしを示す部分受信フラグ、SP(スキャッタードパイロット)パターンが前記A階層、前記B階層及び前記C階層の間で同じまたは同じでないかを示すSPパターン状態を判定し、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信ありであり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間キャリア単位ILを行い、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信ありであり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じでない場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードであり、かつ前記部分受信フラグが前記部分受信なしである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外であり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じである場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間キャリア単位ILを行い、前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外であり、前記SPパターン状態が前記階層間で同じでない場合、前記部分受信帯域の信号に対し、前記階層間セグメント単位ILを行い、前記帯域合成部が、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合、前記帯域合成後の信号のうち前記部分受信帯域のセグメントまたは前記A階層のセグメントを、前記帯域合成後の信号の周波数方向の下端または上端に寄せることで、前記データセグメントを構成し、前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外である場合、前記帯域合成後の信号を前記データセグメントとして構成する、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2の変調装置は、請求項1に記載の変調装置において、さらに、前記OFDMフレームにおける周波数帯域の下端から上端に渡る固定のセグメント位置毎のセグメント内の所定のキャリア位置に前記TMCCを設定し、前記帯域合成部により構成された前記データセグメントに前記TMCCを付加することで、前記OFDMフレームを構成するOFDMフレーム構成部を備えたことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項3の受信機は、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号が帯域合成されたデータセグメント及びTMCCを含むOFDMフレームの信号から、部分受信帯域の信号をフィルタ処理にて受信し、前記部分受信帯域の信号からA階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調する受信機において、前記OFDMフレームの信号から、前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCを取得するTMCC取得部と、前記TMCC取得部により取得された前記TMCC及び予め設定された中心周波数fcに基づいて、移動受信用中心周波数f’を決定する中心周波数決定部と、前記TMCC取得部により取得された前記TMCCに基づいて、前記部分受信帯域の信号または前記A階層の信号が前記データセグメントの周波数方向の下端または上端に寄っている端寄せモードであるか否かを示す伝送帯域モードを判定し、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合、前記中心周波数決定部により決定された前記移動受信用中心周波数f’を基準にして、前記部分受信帯域の信号から前記A階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調し、前記伝送帯域モードが前記端寄せモード以外である場合、前記中心周波数fcを基準にして、前記部分受信帯域の信号から前記A階層の信号を抽出し、前記A階層の信号を復調する受信処理部と、を備え、前記TMCC取得部が、前記OFDMフレームの信号から任意のセグメント位置の1つのセグメントを抽出し、前記セグメント位置の前記セグメント内における予め設定された前記TMCCのキャリア位置からデータを抽出して復調することで、復調後のデータを生成し、前記復調後のデータの構造と予め設定された前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCのデータ構造とを比較するセグメント抽出比較処理を行い、前記構造が不一致の場合、新たなセグメント位置の1つのセグメントについて、前記セグメント抽出比較処理を行い、前記構造が一致する場合、前記復調後のデータを、前記部分受信帯域の信号のセグメントに含まれる前記TMCCとして取得する、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項4の受信機は、請求項3に記載の受信機において、前記受信処理部が、前記TMCCに基づいて、部分受信ありまたは部分受信なしを示す部分受信フラグ、前記A階層の信号のセグメント数を示すA階層数、及び、前記伝送帯域モードが前記端寄せモードである場合の前記下端または前記上端を示す下端上端識別フラグを判定し、前記中心周波数決定部が、前記部分受信フラグ、前記A階層数、前記下端上端識別フラグ及び前記中心周波数fcに基づいて、移動受信用中心周波数f’を決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波にて実現する際に、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による変調装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】部分受信帯域(セグメント番号0~8)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てを説明する図である。
【
図3】非部分受信帯域(セグメント番号9~33,35)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てを説明する図である。
【
図4】TMCCのビットに割り当てられた伝送帯域識別情報を説明する図である。
【
図5】TMCCのビットに割り当てられたリザーブを説明する図である。
【
図7】部分受信帯域階層間IL部の処理例(「端寄せノーマルモード」)を示すフローチャートである。
【
図8】帯域合成部の処理例(「端寄せノーマルモード」)を示すフローチャートである。
【
図9】帯域合成部の処理例において、「部分受信あり」の場合の処理を説明する図である。
【
図10】帯域合成部の処理例において、「部分受信なし」の場合の処理を説明する図である。
【
図11】FFTサイズが16,384(以下、16kという。)、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
【
図12】FFTサイズが16k、「端寄せノーマルモード」、「部分受信あり」の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
【
図13】FFTサイズが16k、「端寄せノーマルモード」、「部分受信なし」の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
【
図14】FFTサイズが8192(以下、8kという。)、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
【
図15】FFTサイズが32,768(以下、32kという。)、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
【
図16】本発明の実施形態による受信機の構成例を示すブロック図である。
【
図17】移動受信処理の例を示すフローチャートである。
【
図18】移動受信処理の例において、TMCC取得処理の例(ステップS1701)を示すフローチャートである。
【
図19】移動受信処理の例において、移動受信用中心周波数決定処理の例(ステップS1705)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波にて実現する場合に、移動受信向けセグメント(A階層のセグメント)の所要CN比が、固定受信向けセグメントよりも低い点に着目したものである。本発明は、A階層、B階層及びC階層のセグメントの帯域合成(セグメント合成)を行う際に、移動受信向けセグメントを伝送帯域の周波数方向の下端(周波数が最も低い端)または上端(周波数が最も高い端)へ寄せることを特徴とする。
【0024】
これにより、低所要CN比の移動受信向けセグメントが、当該チャンネルにおける周波数方向の下端または上端の所定帯域に位置するため、固定受信向けセグメントが下端または上端に位置する場合に比べ、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。
【0025】
〔変調装置〕
まず、本発明の実施形態による変調装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態による変調装置の構成例を示すブロック図である。この変調装置1は、地上放送高度化方式を適用した伝送路符号化部の基本構成を示している。
【0026】
変調装置1は、入力I/F(インターフェース)10、基本変調部11、レベル調整部12、系統分離部13、階層合成部14-1,14-2、変調部30-1,30-2、MISO(Multi Input Single Output:多入力単出力)符号化部19、スイッチ20、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control:伝送多重制御信号)情報ビット生成部21、同期ビット生成部22、TMCC生成部23、パイロット生成部24、差動基準ビット付加部25、DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying:差動二位相偏移変調)部26、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)フレーム構成部27-1,27-2、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部28-1,28-2及びGI(Guard Interval:ガードインターバル)付加部29-1,29-2を備えている。
【0027】
変調部30-1は、帯域分割部15-1、時間IL(InterLeave:インターリーブ)部16-1、周波数IL部17-1及び帯域合成部18-1を備えている。変調部30-2は、帯域分割部15-2、時間IL部16-2、周波数IL部17-2及び帯域合成部18-2を備えている。
【0028】
入力I/F10は、3系統の階層別フレームの信号であるA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を入力すると共に、TMCC情報及びLLch(Low Latency channel:低遅延伝送路)情報を外部から入力する。そして、入力I/F10は、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を基本変調部11に出力し、TMCC情報をTMCC情報ビット生成部21及びパイロット生成部24に出力する。また、入力I/F10は、LLch情報を差動基準ビット付加部25に出力する。TMCC情報は、後述する
図2及び
図3に示すビット割り当て毎に、予め設定された情報である。
【0029】
基本変調部11は、入力I/F10からA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を入力し、誤り訂正符号化及びキャリアシンボルのマッピングをそれぞれ行う。そして、基本変調部11は、基本変調後のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルをレベル調整部12に出力する。
【0030】
レベル調整部12は、基本変調部11から基本変調後のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを入力し、階層毎に電力のレベル調整(例えば、A階層のキャリアシンボルに対して電力ブースト)を行う。そして、レベル調整部12は、レベル調整後のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを系統分離部13に出力する。
【0031】
系統分離部13は、レベル調整部12からレベル調整後のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを入力し、これらのキャリアシンボルのそれぞれを2系統に分離する。そして、系統分離部13は、分離後の第1系統のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを階層合成部14-1に出力する。また、系統分離部13は、分離後の第2系統のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを階層合成部14-2に出力する。
【0032】
階層合成部14-1は、系統分離部13から第1系統のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを入力し、これらのキャリアシンボルを階層合成する。そして、階層合成部14-1は、階層合成後の信号(A階層、B階層及びC階層の合成信号)を変調部30-1に出力する。
【0033】
変調部30-1は、階層合成部14-1からA階層、B階層及びC階層の合成信号を入力すると共に、TMCC生成部23からTMCCを入力する。そして、変調部30-1は、TMCCに基づき、これらの合成信号に対して帯域分割、時間IL(インターリーブ)、周波数IL及び帯域合成を行う。変調部30-1は、部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントを伝送帯域の周波数方向の下端または上端に寄せて、1OFDMフレームにて伝送されるデータセグメントを構成する。変調部30-1は、データセグメントをMISO符号化部19及びOFDMフレーム構成部27-1に出力する。変調部30-1の構成及び処理の詳細については後述する。
【0034】
MISO符号化部19は、変調部30-1からデータセグメントを入力する。そして、MISO符号化部19は、データセグメントに対してMISO符号化(STBC(Space Time Block Coding:空間時間ブロック符号化)またはSFBC(Space Frequency Block Coding:空間周波数ブロック符号化))を施す。MISO符号化部19は、MISO符号化後のデータセグメントをスイッチ20に出力する
【0035】
階層合成部14-2は、系統分離部13から第2系統のA階層のキャリアシンボル、B階層のキャリアシンボル及びC階層のキャリアシンボルを入力し、階層合成部14-1と同様の処理を行い、A階層、B階層及びC階層の合成信号を変調部30-2に出力する。
【0036】
変調部30-2は、階層合成部14-2からA階層、B階層及びC階層の合成信号を入力すると共に、TMCC生成部23からTMCCを入力し、変調部30-1と同様の処理を行い、データセグメントをスイッチ20に出力する。
【0037】
TMCC情報ビット生成部21は、入力I/F10からTMCC情報を入力し、TMCC情報を用いて、後述する
図2~
図5に示すビット割り当てを行い、TMCC情報ビットを生成してTMCC生成部23に出力する。
【0038】
同期ビット生成部22は、所定の同期ビットを生成してTMCC生成部23に出力する。
【0039】
TMCC生成部23は、TMCC情報ビット生成部21からTMCC情報ビットを入力すると共に、同期ビット生成部22から同期ビットを入力する。そして、TMCC生成部23は、図示しない差動復号の基準ビット、並びに入力した同期ビット及びTMCC情報ビットを合成し、合成信号に対してDBPSKを施すことでTMCCを生成する。TMCC生成部23は、TMCCを変調部30-1,30-2及びOFDMフレーム構成部27-1,27-2に出力する。そして、変調部30-1,30-2により、TMCCに基づきIL及び帯域合成が行われ、OFDMフレーム構成部27-1,27-2により、データセグメントにTMCC等が付加(挿入)される。TMCCのビット割り当ての詳細については後述する。
【0040】
ここで、部分受信帯域(セグメント番号0~8)のセグメントに付加されるTMCCと、非部分受信帯域(セグメント番号9~33,35)のセグメントに付加されるTMCCとは、異なるビット割り当てのデータである。これは、部分受信帯域(セグメント番号0~8)のセグメントでは、A階層の信号を復号するために必要なTMCCのみが伝送され、非部分受信帯域(セグメント番号9~33,35)のセグメントでは、全ての階層(A階層、B階層及びC階層)のTMCCが伝送されるからである。
【0041】
図2は、部分受信帯域(セグメント番号0~8)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てを説明する図である。
図2に示すように、部分受信帯域におけるTMCCのビット割り当てA
0~A
1はシステム識別情報、ビット割り当てA
2~A
3は伝送帯域識別情報、・・・、ビット割り当てA
10は部分受信フラグ、ビット割り当てA
11~A
41はA階層伝送パラメータ情報、・・・、ビット割り当てA
61~A
74はB階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
75~A
88はC階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
89~A
121はリザーブである。
【0042】
図3は、非部分受信帯域(セグメント番号9~33,35)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てを説明する図である。
図3に示すように、非部分受信帯域におけるTMCCのビット割り当てA
0~A
1はシステム識別情報、ビット割り当てA
2~A
3は伝送帯域識別情報、・・・、ビット割り当てA
10は部分受信フラグ、ビット割り当てA
11~A
41はA階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
42~A
72はB階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
73~A
103はC階層伝送パラメータ情報、・・・、ビット割り当てA
158~A
243はリザーブである。
【0043】
図2及び
図3において、ビット割り当てA
10の部分受信フラグは、伝送帯域を構成する35セグメントのうち中央の9セグメントで部分受信帯域の信号を受信(部分受信)するか否かを示すフラグであり、「部分受信あり」または「部分受信なし」を示す。「部分受信あり」及び「部分受信あり」の詳細については、以下の文献を参照されたい。
[非特許文献] 成清他、“次世代地上放送伝送方式の暫定仕様に向けた部分受信部の一検討”、2016年映像情報メディア学会年次大会講演予稿集、31A-2(2016)
【0044】
また、
図2に示したビット割り当てA
11~A
41のA階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
61~A
74のB階層伝送パラメータ情報及びビット割り当てA
75~A
88のC階層伝送パラメータ情報に含まれる情報に基づいて、後述する変調部30-1,30-2により、パイロット信号のSPパターンが階層間で同じであるか否かを示すSPパターン状態が判定される。同様に、
図3に示したビット割り当てA
11~A
41のA階層伝送パラメータ情報、ビット割り当てA
42~A
72のB階層伝送パラメータ情報及びビット割り当てA
73~A
103のC階層伝送パラメータ情報に含まれる情報に基づいて、後述する変調部30-1,30-2により、SPパターン状態が判定される。
【0045】
図4は、TMCCのビットに割り当てられた伝送帯域識別情報を説明する図であり、
図2及び
図3のビット割り当てA
2~A
3の伝送帯域識別情報(α)を示している。伝送帯域識別情報により伝送帯域モードが特定され、伝送帯域モードは、ビット割り当てA
2~A
3がビット00の場合「リザーブ」、ビット01の場合「ノーマルモード」、ビット10の場合「互換モード」、ビット11の場合「端寄せノーマルモード(端寄せモード)」を示す。
【0046】
伝送帯域モードが「ノーマルモード」または「互換モード」の場合、従来の処理が行われ、「端寄せノーマルモード」の場合、本発明の実施形態の処理が行われる。
【0047】
図5は、TMCCのビットに割り当てられたリザーブを説明する図であり、
図2のビット割り当てA
89及び
図3のビット割り当てA
158(β)を示している。(1)に示すように、部分受信帯域(セグメント番号0~8)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てA
89は、下端上端識別フラグであり、ビット0の場合「下端」、ビット1の場合「上端」を示す。
【0048】
また、(2)に示すように、非部分受信帯域(セグメント番号9~33,35)のセグメントに付加されるTMCCのビット割り当てA158は、下端上端識別フラグであり、ビット0の場合「下端」、ビット1の場合「上端」を示す。
【0049】
図1に戻って、パイロット生成部24は、入力I/F10からTMCC情報を入力し、TMCC情報に基づいてパイロット信号を生成し、パイロット信号をOFDMフレーム構成部27-1,27-2に出力する。
【0050】
差動基準ビット付加部25は、入力I/F10からLLch情報を入力し、LLchフレームの先頭に差動基準ビットを付加し、差動基準ビットが付加されたLLch情報をDBPSK部26に出力する。
【0051】
DBPSK部26は、差動基準ビット付加部25から差動基準ビットが付加されたLLch情報を入力し、差動基準ビットが付加されたLLch情報に対してDBPSKを施す。DBPSK部26は、DBPSK後のLLchをOFDMフレーム構成部27-1,27-2に出力する。
【0052】
これにより、LLch情報については、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号とは異なる処理が適用され、低遅延伝送を実現することができる。
【0053】
OFDMフレーム構成部27-1は、変調部30-1からデータセグメントを、TMCC生成部23からTMCCを、パイロット生成部24からパイロット信号を、DBPSK部26からLLchをそれぞれ入力する。そして、OFDMフレーム構成部27-1は、データセグメントにTMCC、パイロット信号及びLLchを付加することで、OFDMフレームを構成する。ここで、OFDMフレーム構成部27-1は、OFDMフレームを構成する際に、OFDMフレームにおける周波数帯域の下端から上端に渡る固定のセグメント位置毎のセグメント内の所定のキャリア位置に、TMCC等を設定する。OFDMフレーム構成部27-1は、OFDMフレームをIFFT部28-1に出力する。OFDMフレームにおけるセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係については後述する。
【0054】
IFFT部28-1は、OFDMフレーム構成部27-1からOFDMフレームを入力し、OFDMフレームにIFFTを施すことでOFDM変調を行い、時間領域の信号をGI付加部29-1に出力する。
【0055】
GI付加部29-1は、IFFT部28-1から時間領域の信号を入力し、時間領域の信号にGIを付加し、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号を生成する。そして、IF信号は、信号aの放送波として変調装置1から送信される。
【0056】
OFDMフレーム構成部27-2は、MISO符号化部19からスイッチ20を介して、MISO符号化後のデータセグメントを入力するか、または変調部30-2からスイッチ20を介してデータセグメントを入力する。そして、OFDMフレーム構成部27-2は、OFDMフレーム構成部27-1と同様の処理を行う。
【0057】
IFFT部28-2及びGI付加部29-2は、IFFT部28-1及びGI付加部29-1と同様の処理を行う。GI付加部29-2により生成されたIF信号は、信号bの放送波として変調装置1から送信される。
【0058】
ここで、SISO(Single Input Single Output:単入力単出力)伝送の信号は、
図1の(1)(2)及び(3)の系統を経て生成され、信号aの放送波として送信される。
【0059】
また、MISO伝送において、第1系統の信号は、
図1の(1)(2)及び(3)の系統を経て生成され、信号aの放送波として送信され、第2系統の信号は、
図1の(1)(4)及び(5)の系統を経て生成され、信号bの放送波として送信される。
【0060】
また、地上放送高度化方式では、第1系統及び第2系統の送信アンテナから異なる情報を送信し、伝送容量を拡大する空間分割多重方式(SDM:Space Division Multiplexing)の MIMO(Multi Input Multi Output:多入力多出力)を選択することができる。
【0061】
MIMO伝送において、第1系統の信号は、
図1の(1)(2)及び(3)の系統を経て生成され、信号aの放送波として送信され、第2系統の信号は、
図1の(6)(7)及び(5)の系統を経て生成され、信号bの放送波として送信される。
【0062】
このように、地上放送高度化方式では、SISO、2×1MISO及び2×2MIMOが導入され、送信アンテナを1本としたユースケースでは、全ての階層の信号をSISOにて伝送することができる。また、送信アンテナを2本としたユースケースでは、階層毎にMISOまたはMIMOを指定することができる。例えば、移動受信向けのA階層の信号をMISO伝送することにより、受信特性を改善することができ、固定受信向けのB階層の信号をMIMO伝送することにより、伝送容量を拡大することができる。
【0063】
〔変調部30〕
次に、
図1に示した変調部30-1,30-2(以下、総称して変調部30とする。)について詳細に説明する。帯域分割部15-1,15-2、時間IL部16-1,16-2、周波数IL部17-1,17-2及び帯域合成部18-1,18-2を総称して、それぞれ帯域分割部15、時間IL部16、周波数IL部17及び帯域合成部18とする。
【0064】
図6は、変調部30の構成例を示すブロック図である。この変調部30は、帯域分割部15、時間IL部16、周波数IL部17及び帯域合成部18を備えている。帯域分割部15は、階層分離部40及び帯域分離部41を備えている。周波数IL部17は、セグ間IL部42、部分受信帯域分離部43、部分受信帯域階層間IL部44、セグ内IL部45,47及び非部分受信帯域階層間IL部46を備えている。
【0065】
帯域分割部15の階層分離部40は、階層合成部14-1,14-2からA階層、B階層及びC階層の合成信号を入力し、これらの合成信号をA階層の信号(セグメント)、B階層の信号(セグメント)及びC階層の信号(セグメント)に分離(分割)する。そして、階層分離部40は、A階層の信号及びB階層の信号を時間IL部16に出力する。また、階層分離部40は、C階層の信号を帯域分離部41に出力する。
【0066】
帯域分離部41は、階層分離部40からC階層の信号を入力し、C階層の信号から拡張帯域の信号を分離し、分離後のC階層の信号及び拡張帯域の信号を時間IL部16に出力する。
【0067】
時間IL部16は、階層分離部40からA階層の信号及びB階層の信号を入力すると共に、帯域分離部41から分離後のC階層の信号及び拡張帯域の信号を入力する。そして、時間IL部16は、A階層の信号、B階層の信号、C階層の信号及び拡張帯域の信号のそれぞれに対し、既知の時間ILを施し、時間IL後のA階層の信号、B階層の信号、C階層の信号及び拡張帯域の信号を周波数IL部17に出力する。
【0068】
周波数IL部17は、時間IL部16から時間IL後の拡張帯域の信号を入力し、時間IL後の拡張帯域の信号を帯域合成部18にそのまま出力する。
【0069】
周波数IL部17のセグ間IL部42は、時間IL部16からA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を入力する。そして、セグ間IL部42は、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号のそれぞれに対し、既知のセグメント間の周波数IL(階層毎に、当該階層の全てのセグメントにおいて周波数IL)を施す。セグ間IL部42は、セグメント間IL後のA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を部分受信帯域分離部43に出力する。
【0070】
部分受信帯域分離部43は、セグ間IL部42からセグメント間IL後のA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を入力する。そして、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のA階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を、部分受信帯域の信号(セグメント)及び非部分受信帯域の信号(セグメント)に分離する。部分受信帯域分離部43は、部分受信帯域の信号を部分受信帯域階層間IL部44に出力し、非部分受信帯域の信号を非部分受信帯域階層間IL部46に出力する。
【0071】
具体的には、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のB階層の信号から、部分受信帯域の信号の一部である所定セグメント番号及び所定数のセグメントを分離する。そして、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のA階層の信号と、セグメント間IL後のB階層から分離された信号とを合成することで、部分受信帯域の信号を生成する。
【0072】
また、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のB階層から分離された残りの信号と、セグメント間IL後のC階層の信号とを合成することで、非部分受信帯域の信号を生成する。
【0073】
例えば、A階層の信号のセグメント数が5の場合、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のA階層の信号である5セグメントと、セグメント間IL後のB階層の信号のうちの所定の4セグメントとを合成し、9セグメントの部分受信帯域の信号を生成する。また、部分受信帯域分離部43は、セグメント間IL後のB階層の信号のうちの残りのセグメントと、セグメント間IL後のC階層の信号とを合成し、非部分受信帯域の信号を生成する。
【0074】
部分受信帯域階層間IL部44は、部分受信帯域分離部43から部分受信帯域の信号を入力すると共に、TMCC生成部23からTMCCを入力する。そして、部分受信帯域階層間IL部44は、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の示す伝送帯域モード(「ノーマルモード」「互換モード」及び「端寄せノーマルモード」)等に応じて、部分受信帯域の信号に対して階層間の周波数ILを施す。
【0075】
具体的には、部分受信帯域階層間IL部44は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外(「ノーマルモード」「互換モード」)である場合、通常の階層間IL(SPパターンが階層間で同じであるとき、階層間(A,B階層間(A階層及びB階層の全てのセグメント))においてキャリア単位の周波数IL(階層間キャリア単位IL)、SPパターンが階層間で同じでないとき、階層間(A,B階層間)においてセグメント単位のキャリアIL(階層間セグメント単位IL))を行う。
【0076】
一方、部分受信帯域階層間IL部44は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信なし」である場合、階層間セグメント単位ILを行う。また、部分受信帯域階層間IL部44は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信あり」である場合、前述の通常の階層間ILを行う。
【0077】
部分受信帯域階層間IL部44は、階層間IL後の部分受信帯域の信号をセグ内IL部45に出力する。
【0078】
このように、部分受信帯域階層間IL部44において、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信なし」である場合に、階層間キャリア単位ILが行われず、強制的に階層間セグメント単位ILが行われる。
【0079】
図7は、部分受信帯域階層間IL部44の処理例(「端寄せノーマルモード」)を示すフローチャートであり、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」の場合の処理例を示している。
【0080】
部分受信帯域階層間IL部44は、部分受信帯域分離部43から部分受信帯域の信号(9セグメント)を入力すると共に(ステップS701)、TMCC生成部23からTMCCを入力する(ステップS702)。
【0081】
部分受信帯域階層間IL部44は、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」である場合、TMCCから部分受信フラグ、A階層伝送パラメータ、B階層伝送パラメータ及びC階層伝送パラメータを抽出する(ステップS703)。
【0082】
部分受信帯域階層間IL部44は、部分受信フラグが「部分受信あり」であるか、または「部分受信なし」であるかを判定する(ステップS704)。部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS704において、部分受信フラグが「部分受信あり」であると判定した場合(ステップS704:部分受信あり)、ステップS705へ移行する。
【0083】
部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS704(部分受信あり)から移行して、A階層伝送パラメータ、B階層伝送パラメータ及びC階層伝送パラメータに基づき、SPパターン状態についてSPパターンが階層間で同じであるか否かを判定する(ステップS705)。
【0084】
部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS705において、SPパターンが階層間で同じであると判定した場合(ステップS705:Y)、部分受信帯域の信号に対して階層間キャリア単位ILを施す(ステップS706)。
【0085】
一方、部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS705において、SPパターンが階層間で同じでないと判定した場合(ステップS705:N)、部分受信帯域の信号に対して階層間セグメント単位ILを施す(ステップS707)。
【0086】
部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS704において、部分受信フラグが「部分受信なし」であると判定した場合(ステップS704:部分受信なし)、SPパターン状態によることなく、部分受信帯域の信号に対して階層間セグメント単位ILを施す(ステップS708)。
【0087】
部分受信帯域階層間IL部44は、ステップS706,S707,S708から移行して、階層間IL後の部分受信帯域の信号をセグ内IL部45に出力する(ステップS709)。
【0088】
このように、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信なし」である場合、部分受信帯域の信号に対し、階層間キャリア単位ILではなく、強制的に階層間セグメント単位ILが施される。
【0089】
これは、部分受信帯域の信号に対して階層間キャリア単位ILを施したとすると、部分受信帯域のそれぞれのセグメント内にA階層及びB階層の信号が混在することとなり、後述する帯域合成部18は、後述する
図8のステップS810,S811において、部分受信帯域の信号のうちのA階層の信号のみを下端または上端へ寄せることができなくなるからである。このため、部分受信帯域の信号に対し、強制的に階層間セグメント単位ILを施すようにした。
【0090】
また、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信あり」である場合、部分受信帯域の信号に対して通常の階層間ILが施される。通常の階層間ILとは、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合に行われる処理と同じであり、SPパターンが階層間で同じであるとき、階層間キャリア単位ILが行われ、SPパターンが階層間で同じでないとき、階層間セグメント単位ILが行われる。
【0091】
図6に戻って、セグ内IL部45は、部分受信帯域階層間IL部44から階層間IL後の部分受信帯域の信号を入力し、階層間IL後の部分受信帯域の信号に対し、既知のセグメント内の周波数ILを施す。そして、セグ内IL部45は、セグメント内IL後の部分受信帯域の信号を帯域合成部18に出力する。
【0092】
非部分受信帯域階層間IL部46は、部分受信帯域分離部43から非部分受信帯域の信号を入力し、非部分受信帯域の信号に対し、既知の階層間の周波数ILを施す。そして、非部分受信帯域階層間IL部46は、階層間IL後の非部分受信帯域の信号をセグ内IL部47に出力する。
【0093】
セグ内IL部47は、非部分受信帯域階層間IL部46から階層間IL後の非部分受信帯域の信号を入力し、階層間IL後の非部分受信帯域の信号に対し、既知のセグメント内の周波数ILを施す。そして、セグ内IL部47は、セグメント内IL後の非部分受信帯域の信号を帯域合成部18に出力する。
【0094】
帯域合成部18は、周波数IL部17のセグ内IL部45からセグメント内IL後の部分受信帯域の信号を、セグ内IL部47からセグメント内IL後の非部分受信帯域の信号を、周波数IL部17から拡張帯域の信号をそれぞれ入力する。また、帯域合成部18は、TMCC生成部23からTMCCを入力する。
【0095】
帯域合成部18は、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の示す伝送帯域モード(「ノーマルモード」「互換モード」及び「端寄せノーマルモード」)に応じて、部分受信帯域の信号、非部分受信帯域の信号及び拡張帯域の信号の帯域合成を行う。
【0096】
具体的には、帯域合成部18は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合、予め設定されたセグメント配置に従った通常の帯域合成を行い、1OFDMセグメントにて伝送されるデータセグメントを構成する。
【0097】
一方、帯域合成部18は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」である場合、通常の帯域合成を行うことで、帯域合成後の信号を生成する。そして、帯域合成部18は、帯域合成後の信号のうち部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントを、帯域合成後の信号の周波数方向の下端または上端に寄せ、寄せた後の抜けた部分(セグメント)は詰めることで、データセグメントを構成する。そして、帯域合成部18は、データセグメントを出力する。
【0098】
図8は、帯域合成部18の処理例(「端寄せノーマルモード」)を示すフローチャートであり、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」の場合の処理例を示している。
【0099】
帯域合成部18は、周波数IL部17から部分受信帯域の信号、非部分受信帯域の信号及び拡張帯域の信号を入力すると共に(ステップS801)、TMCC生成部23からTMCCを入力する(ステップS802)。
【0100】
帯域合成部18は、部分受信帯域の信号、非部分受信帯域の信号及び拡張帯域の信号に対し、予め設定されたセグメント配置に従った通常の帯域合成を行い、通常のデータセグメントを構成する(ステップS803)。
【0101】
帯域合成部18は、TMCCに含まれる伝送帯域識別情報の伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」である場合、TMCCから部分受信フラグ及び下端上端識別フラグ(
図5を参照)を抽出する(ステップS804)。
【0102】
帯域合成部18は、部分受信フラグが「部分受信あり」であるか、または「部分受信なし」であるかを判定する(ステップS805)。
【0103】
帯域合成部18は、ステップS805において、部分受信フラグが「部分受信あり」であると判定した場合(ステップS805:部分受信あり)、ステップS806へ移行する。一方、帯域合成部18は、ステップS805において、部分受信フラグが「部分受信なし」であると判定した場合(ステップS805:部分受信なし)、ステップS809へ移行する。
【0104】
帯域合成部18は、ステップS805(部分受信あり)から移行して、下端上端識別フラグが「下端」であるか、または「上端」であるかを判定する(ステップS806)。
【0105】
帯域合成部18は、ステップS806において、下端上端識別フラグが「下端」であると判定した場合(ステップS806:下端)、9セグメントの部分受信帯域の信号を、ステップS803にて構成した通常のデータセグメントにおける周波数帯域の下端(周波数の最も低い端)へ寄せる(移動させる)(ステップS807)。
【0106】
一方、帯域合成部18は、ステップS806において、下端上端識別フラグが「上端」であると判定した場合(ステップS806:上端)、9セグメントの部分受信帯域の信号を、ステップS803にて構成した通常のデータセグメントにおける周波数帯域の上端(周波数の最も高い端)へ寄せる(ステップS808)。
【0107】
これにより、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信あり」の場合、下端上端識別フラグに従い、9セグメントの部分受信帯域の信号が、35セグメントの周波数帯域の上端または下端に寄せられる。
【0108】
帯域合成部18は、ステップS805(部分受信なし)から移行して、下端上端識別フラグが「下端」であるか、または「上端」であるかを判定する(ステップS809)。
【0109】
帯域合成部18は、ステップS809において、下端上端識別フラグが「下端」であると判定した場合(ステップS809:下端)、9セグメントの部分受信帯域の信号から例えば5セグメントのA階層の信号を抽出する。そして、帯域合成部18は、5セグメントのA階層の信号を、ステップS803にて構成した通常のデータセグメントにおける周波数帯域の下端へ寄せる(ステップS810)。
【0110】
一方、帯域合成部18は、ステップS809において、下端上端識別フラグが「上端」であると判定した場合(ステップS809:上端)、9セグメントの部分受信帯域の信号から例えば5セグメントのA階層の信号を抽出する。そして、帯域合成部18は、5セグメントのA階層の信号を、ステップS803にて構成した通常のデータセグメントにおける周波数帯域の上端へ寄せる(ステップS811)。
【0111】
これにより、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であり、かつ部分受信フラグが「部分受信なし」の場合、下端上端識別フラグに従い、例えば5セグメントのA階層の信号が、35セグメントの周波数帯域の上端または下端に寄せられる。
【0112】
帯域合成部18は、ステップS807,S808,S810,S811から移行して、前述の上端または下端寄せの処理に伴い、35セグメントの上端または下端に寄せられた信号の抜けた部分は詰めることで、上端寄せまたは下端寄せ後の35セグメントの周波数帯域のデータセグメントを構成する(ステップS812)。
【0113】
帯域合成部18は、上端寄せまたは下端寄せ後のデータセグメントを出力する(ステップS813)。
【0114】
図9は、帯域合成部18の処理例において、「部分受信あり」の場合の処理を説明する図である。
図8のステップS803の処理により、部分受信帯域の信号、非部分受信帯域の信号及び拡張帯域の信号に対して通常の帯域合成が行われ、通常のデータセグメントが構成される。
図9の上部に示すとおり、通常の帯域合成処理により構成された35セグメントからなるデータセグメントにおいて、中央の9セグメントの信号が部分受信帯域の信号である。
【0115】
図8のステップS805の処理により、部分受信フラグが「部分受信あり」であると判定され、ステップS806の処理により、下端上端識別フラグが「上端」であると判定された場合を想定する。
【0116】
この場合、ステップS808,S812の処理により、9セグメントの部分受信帯域の信号が、35セグメントの周波数帯域の上端へ寄せられ、抜けた部分は下端側へ詰めることで、上端寄せ後の35セグメントの周波数帯域のデータセグメントが構成される。
図9の下部に示すとおり、9セグメントの部分受信帯域の信号は、35セグメントの周波数帯域のうち上端側へ移動したこととなる。
【0117】
図10は、帯域合成部18の処理例において、「部分受信なし」の場合の処理を説明する図である。
図8のステップS803の処理により、部分受信帯域の信号、非部分受信帯域の信号及び拡張帯域の信号に対して通常の帯域合成が行われ、通常のデータセグメントが構成される。
図10の上部に示すとおり、通常の帯域合成処理により構成された35セグメントからなるデータセグメントにおいて、中央の9セグメントの信号が部分受信帯域の信号である。また、9セグメントの部分受信帯域の信号のうち、セグメント番号0,3,4,5,8の信号が5セグメントのA階層の信号であるとする。
【0118】
図8のステップS805の処理により、部分受信フラグが「部分受信なし」であると判定され、ステップS809の処理により、下端上端識別フラグが「上端」であると判定された場合を想定する。
【0119】
この場合、ステップS811,S812の処理により、5セグメントのA階層の信号が、35セグメントの周波数帯域の上端へ寄せられ、抜けた部分は下端側へ詰めることで、上端寄せ後の35セグメントの周波数帯域のデータセグメントが構成される。
図10の下部に示すとおり、5セグメントのA階層の信号は、35セグメントの周波数帯域のうち上端側へ移動したこととなる。
【0120】
図9に示した「部分受信あり」の場合の端寄せ処理と、
図10に示した「部分受信なし」の場合の端寄せ処理とを比較すると、「部分受信なし」の場合の方が「部分受信あり」の場合よりも、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減する度合いは高い。なぜならば、「部分受信なし」の場合は、低所要CN比の移動受信用セグメントであるA階層のセグメントのみが周波数帯域の端に寄せられ、「部分受信あり」の場合は、低所要CN比のA階層のセグメントに加え、これよりも高所要C/Nの他のセグメントも周波数帯域の端に寄せられるからである。
【0121】
〔セグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係〕
次に、OFDMフレーム構成部27-1,27-2がOFDMフレームを構成する場合のセグメント毎のTMCC等のキャリア位置について説明する。前述のとおり、OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、データセグメントにTMCC、パイロット信号及びLLchを付加することで、OFDMフレームを構成する。この場合、OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、OFDMフレームにおける周波数帯域の下端から上端に渡る固定のセグメント位置毎のセグメント内の所定のキャリア位置に、TMCC等を設定する。
【0122】
ここで、変調部30の帯域合成部18により、部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントが周波数方向の下端または上端に寄せられ、データセグメントが構成された場合であっても、OFDMフレーム構成部27-1,27-2において、TMCC等は、OFDMフレームの周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントにおいて、固定のキャリア位置に設定される。つまり、部分受信帯域のセグメント及びA階層のセグメントの端寄せ処理に伴い、そのTMCCも同様に端寄せされるが、TMCCのキャリア位置は、端寄せ前後で同じではない。
【0123】
図11は、FFTサイズが16k、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。「端寄せノーマルモード」以外の場合、周波数帯域の下端から上端に渡り、OFDMフレームを構成する35セグメントのセグメント番号は、
図11に示すとおり、34,32,・・・,8,6,4,2,0,1,3,5,7,・・・,31,33である。周波数帯域の中央には、セグメント番号8,6,4,2,0,1,3,5,7の9セグメントの部分受信帯域の信号が配置されている(太枠の箇所を参照)。
【0124】
この場合の各セグメント番号におけるTMCCのキャリア位置及びLLchのキャリア位置は、
図11のとおりである。キャリア位置を示す番号は、セグメント内のキャリア番号を示す。例えば、部分受信帯域の信号のセグメント番号8においては、TMCCのキャリア位置は、キャリア番号50,175,304,385である。つまり、部分受信帯域の信号のセグメント番号8におけるTMCCは、
図2に示したビット割り当てにて、下端から上端に渡る周波数帯域内のセグメント番号8の位置のセグメントにおいて、当該キャリア番号の位置に付加される。また、非部分受信帯域の信号のセグメント番号34においては、TMCCのキャリア位置は、キャリア番号62,202,221,413である。つまり、非部分受信帯域の信号のセグメント番号34におけるTMCCは、
図3に示したビット割り当てにて、下端から上端に渡る周波数帯域内で最も下端のセグメントの当該キャリア番号の位置に付加される。
【0125】
図1に示したOFDMフレーム構成部27-1,27-2は、
図11に示したセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を反映したテーブルを備えている。そして、OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、「端寄せノーマルモード」以外の場合に、当該テーブルを用いて、データセグメントに対し、予め設定されたセグメント毎のキャリア位置にTMCC、パイロット信号及びLLchを付加し、OFDMフレームを構成する。
【0126】
図12は、FFTサイズが16k、「端寄せノーマルモード」、「部分受信あり」の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。(1)は、下端寄せ(
図8のステップS807の処理)が行われた場合を示し、(2)は、上端寄せ(
図8のステップS808の処理)が行われた場合を示す。
【0127】
「端寄せノーマルモード」及び「部分受信あり」であって、(1)の下端寄せの場合、周波数帯域の下端から上端に渡り、OFDMフレームを構成する35セグメントのセグメント番号は、
図12に示すとおり、8,6,4,2,0,1,3,5,7,34,32,・・・,31,33である。周波数帯域の下端には、セグメント番号8,6,4,2,0,1,3,5,7の9セグメントの部分受信帯域の信号が配置されている(太枠の箇所を参照)。つまり、これらの9セグメントの部分受信帯域の信号において、TMCC及びLLchもデータセグメントと同様に、端寄せ処理が行われる。
【0128】
また、「端寄せノーマルモード」及び「部分受信あり」であって、(2)の上端寄せの場合、周波数帯域の下端から上端に渡り、OFDMフレームを構成する35セグメントのセグメント番号は、
図12に示すとおり、34,32,・・・,31,33,8,6,4,2,0,1,3,5,7である。周波数帯域の上端には、セグメント番号8,6,4,2,0,1,3,5,7の9セグメントの部分受信帯域の信号が配置されている(太枠の箇所を参照)。つまり、これらの9セグメントの部分受信帯域の信号において、TMCC及びLLchもデータセグメントと同様に、端寄せ処理が行われる。
【0129】
この場合の各セグメント番号におけるTMCCのキャリア位置及びLLchのキャリア位置は、
図12のとおりである。例えば、(1)の場合、部分受信帯域の信号のセグメント番号8においては、TMCCのキャリア位置は、キャリア番号62,202,221,413である。つまり、部分受信帯域の信号のセグメント番号8におけるTMCCは、
図2に示したビット割り当てにて、下端から上端に渡る周波数帯域内で最も下端のセグメントの当該キャリア番号の位置に付加される。尚、部分受信帯域の信号のセグメント番号8のセグメントの端寄せ処理に伴い、そのTMCCも同様に端寄せされるが、TMCCのキャリア位置は、端寄せ前後で同じではない。
【0130】
周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントのそれぞれにおけるTMCC及びLLchのキャリア位置で見ると、
図12のキャリア位置は
図11と同様である。後述する
図13についても同様である。
【0131】
つまり、伝送帯域モードが「ノーマルモード」「互換モード」「端寄せノーマルモード」に関わることなく、また、部分受信フラグが「部分受信あり」「部分受信なし」に関わることなく、さらに、下端上端識別フラグが「下端」「上端」に関わることなく、周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントのそれぞれにおけるTMCC及びLLchのキャリア位置は、同じである。
【0132】
図1に示したOFDMフレーム構成部27-1,27-2は、
図12に示したセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を反映したテーブルを備えている。そして、OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、「端寄せノーマルモード」及び「部分受信あり」の場合に、(1)の下端寄せ及び(2)の上端寄せに応じて、当該テーブルを用いて、データセグメントに対し、予め設定されたセグメント毎のキャリア位置にTMCC、パイロット信号及びLLchを付加し、OFDMフレームを構成する。
【0133】
図13は、FFTサイズが16k、「端寄せノーマルモード」、「部分受信なし」の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。(1)は、下端寄せ(
図8のステップS810の処理)が行われた場合を示し、(2)は、上端寄せ(
図8のステップS811の処理)が行われた場合を示す。
図13には、A階層の信号が1セグメントの場合、2セグメントの場合、3セグメントの場合、・・・、8セグメントの場合及び9セグメント場合が示されている。尚、
図13には、TMCC等のキャリア位置は省略してあるが、周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントにおいて、
図11及び
図12と同様である。
【0134】
「端寄せノーマルモード」、「部分受信なし」、例えばA階層の信号が3セグメントであって、(1)の下端寄せの場合、周波数帯域の下端から上端に渡り、OFDMフレームを構成する35セグメントのセグメント番号は、
図13のA階層3セグ(1)に示すとおり、2,0,1,34,32,・・・,31,33である。周波数帯域の下端には、セグメント番号2,0,1の3セグメントのA階層の信号が配置されている(太枠の箇所を参照)。
図13の太枠の箇所は、端寄せが行われたセグメント番号を示す。つまり、これらの3セグメントのA階層の信号において、TMCC及びLLchもデータセグメントと同様に、端寄せ処理が行われる。
【0135】
また、「端寄せノーマルモード」、「部分受信なし」、例えばA階層の信号が3セグメントであって、(2)の上端寄せの場合、周波数帯域の下端から上端に渡り、OFDMフレームを構成する35セグメントのセグメント番号は、
図13のA階層3セグ(2)に示すとおり、34,32,・・・,2,0,1である。周波数帯域の上端には、セグメント番号2,0,1の3セグメントのA階層の信号が配置されている(太枠の箇所を参照)。つまり、これらの3セグメントのA階層の信号において、TMCC及びLLchもデータセグメントと同様に、端寄せ処理が行われる。
【0136】
この場合のTMCCのキャリア位置及びLLchのキャリア位置は、
図11及び
図12と同様である。例えば、A階層3セグ(1)の場合、A階層の信号のセグメント番号2においては、TMCCのキャリア位置は、キャリア番号62,202,221,413である。つまり、A階層の信号のセグメント番号2におけるTMCCは、
図2に示したビット割り当てにて、下端から上端に渡る周波数帯域内で最も下端のセグメントの当該キャリア番号の位置に付加される。
【0137】
図1に示したOFDMフレーム構成部27-1,27-2は、
図13に示したセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を反映したテーブルを備えている。そして、OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、「端寄せノーマルモード」及び「部分受信なし」の場合に、A階層のセグメント数(A階層数N)、(1)の下端寄せ及び(2)の上端寄せに応じて、当該テーブルを用いて、データセグメントに対し、予め設定されたセグメント毎のキャリア位置にTMCC、パイロット信号及びLLchを付加し、OFDMフレームを構成する。
【0138】
図14は、FFTサイズが8k、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
図15は、FFTサイズが32k、「端寄せノーマルモード」以外の場合のセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係を説明する図である。
図14及び
図15に示すセグメント番号とTMCC等のキャリア位置の関係は、
図11に示したFFTサイズが16kの場合に対応している。
【0139】
図11~
図15から、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントにおいて、TMCCは、周波数軸上で予め設定された固定の位置(セグメント内の予め設定された固定のキャリア番号の位置)に付加されることがわかる。変調装置1から送信された放送波を受信する後述する受信機2は、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントの周波数軸上において、予め設定された位置からTMCCを取得することができる。
【0140】
以上のように、本発明の実施形態の変調装置1によれば、変調部30に備えた周波数IL部17の部分受信帯域分離部43は、A階層の信号、B階層の信号及びC階層の信号を、部分受信帯域の信号及び非部分受信帯域の信号に分離する。
【0141】
部分受信帯域階層間IL部44は、TMCCから伝送帯域識別情報の示す伝送帯域モード(「端寄せノーマルモード」または「端寄せノーマルモード」以外のモード)、部分受信フラグが示す「部分受信なし」または「部分受信あり」等を判断する。
【0142】
部分受信帯域階層間IL部44は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合、部分受信帯域の信号に対して通常の階層間ILを行う。一方、部分受信帯域階層間IL部44は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」かつ「部分受信なし」の場合、部分受信帯域の信号に対して階層間セグメント単位ILを行い、「端寄せノーマルモード」かつ「部分受信あり」の場合、部分受信帯域の信号に対して通常の階層間ILを行う。
【0143】
帯域合成部18は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合、部分受信帯域階層間IL部44及びセグ内IL部45により処理が行われた部分受信帯域の信号、及び非部分受信帯域階層間IL部46及びセグ内IL部47により処理が行われた非部分受信帯域の信号等に対して通常の帯域合成を行い、データセグメントを構成する。
【0144】
一方、帯域合成部18は、「端寄せノーマルモード」の場合、通常の帯域合成を行った後、部分受信フラグ及び下端上端識別フラグに応じて、部分受信帯域のセグメントまたはA階層のセグメントを周波数方向の下端または上端に寄せ、寄せた後の抜けた部分は詰めることで、データセグメントを構成する。
【0145】
OFDMフレーム構成部27-1,27-2は、データセグメントに対し、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る固定のセグメント位置のセグメント毎に予め設定されたキャリア位置にTMCC、パイロット信号及びLLchを付加し、OFDMフレームを構成する。
【0146】
これにより、低所要CN比のA階層のセグメントである移動受信向けセグメントが、当該チャンネルの帯域における周波数方向の下端または上端に位置するため、固定受信向けセグメントが下端または上端に位置する場合に比べ、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。つまり、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波にて実現する際に、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。
【0147】
また、隣接する干渉波の帯域外発射成分の実態等の条件によるが、放送ネットワークの設計基準の1つである隣接チャンネル干渉の混信保護比を緩和することができ、放送ネットワークの設計について、自由度を増やすことができる。
【0148】
〔受信機〕
次に、本発明の実施形態による受信機について説明する。受信機の処理として、固定受信処理及び移動受信処理がある。受信機は、固定受信を行う受信機、移動受信を行う受信機、及び固定受信及び移動受信を行う受信機のうちのいずれかである。
【0149】
固定受信を行う受信機は、
図1に示した変調装置1により送信された放送波に対してTMCC取得処理を行い、OFDMフレームを構成する35セグメントのうち、セグメント番号9~33,35のセグメントを抽出し、FFT処理等の復調を行うことで、通常の受信処理を行う。
【0150】
ここで、セグメント番号9~33,35のセグメント位置は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合、
図11、
図14及び
図15に示したとおり固定であるが、「端寄せノーマルモード」の場合、
図12及び
図13に示したとおり、部分受信フラグ及び下端上端識別フラグに応じて変動する。
【0151】
一方で、
図11~
図15に示したとおり、TMCCは、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントにおいて、周波数軸上で予め設定された位置に付加されている。すなわち、周波数軸上、TMCCのキャリア位置は固定となっているが、セグメント番号は変動している可能性がある。周波数軸上におけるTMCCのキャリア位置は、部分受信帯域用のセグメント番号0~8のセグメント内のキャリア位置であるか、または非部分受信帯域用のセグメント番号9~33,35のセグメント内のキャリア位置であるかのいずれかである。
【0152】
そこで、固定受信を行う受信機は、後述する
図18に示すTMCC取得処理に準じた処理を行うことで、セグメント番号9~33,35のTMCCを取得する。具体的には、当該受信機は、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントの周波数軸上において、任意の1セグメントにおける予め設定されたTMCCのキャリア位置からデータを取得し、当該データの構造がセグメント番号9~33,35におけるTMCCのデータ構造(
図3を参照)と一致すると判定した場合、取得したデータを固定受信処理用のTMCCとして扱う。
【0153】
一方、移動受信を行う受信機は、
図1に示した変調装置1により送信された放送波に対してTMCC取得処理を行い、TMCCに含まれる情報に応じて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を決定する。そして、受信機は、予め設定された中心周波数fc[MHz]または決定された移動受信用中心周波数f’[MHz]を基準にして、OFDMフレームを構成する35セグメントのうち部分受信帯域の信号をフィルタ処理にて受信する。受信機は、部分受信帯域の信号からA階層の信号を抽出し、FFT処理等による復調を行うことで、通常の受信処理を行う。
【0154】
ここで、A階層の信号のセグメント位置は、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外の場合、
図11、
図14及び
図15に示したとおり固定であるが、「端寄せノーマルモード」の場合、
図12及び
図13に示したとおり、部分受信フラグ及び下端上端識別フラグに応じて変動する。一方で、
図11~
図15に示したとおり、TMCCは、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントにおいて、周波数軸上で予め設定された位置に付加されている。すなわち、周波数軸上、TMCCのキャリア位置は固定となっているが、セグメント番号は変動している可能性がある。TMCCのキャリア位置は、部分受信帯域用のセグメント番号0~8のセグメント内のキャリア位置であるか、または非部分受信帯域用のセグメント番号9~33,35のセグメント内のキャリア位置であるかのいずれかである。
【0155】
そこで、移動受信を行う受信機は、後述する
図18に示すTMCC取得処理を行うことで、部分受信帯域の信号のセグメント番号0~8のTMCCを取得する。具体的には、当該受信機は、OFDMフレームを構成する周波数帯域の下端から上端に渡る35セグメントの周波数軸上において、任意の1セグメントにおける予め設定されたTMCCのキャリア位置からデータを取得し、当該データの構造がセグメント番号0~8におけるTMCCのデータ構造(
図2を参照)と一致すると判定した場合、取得したデータをTMCCとして扱う。
【0156】
また、移動受信処理を行う受信機は、後述する
図19に示す移動受信用中心周波数決定処理を行うことで、移動受信用中心周波数f’[MHz]を決定する。以下、移動受信を行う受信機について詳細に説明する。
【0157】
図16は、本発明の実施形態による受信機の構成例を示すブロック図であり、移動受信を行う受信機の構成例を示している。この受信機2は、地上放送高度化方式を適用した変調装置1により送信された放送波を受信する装置であり、受信処理部50、TMCC取得部51及び中心周波数決定部52を備えている。
【0158】
図17は、移動受信処理の例を示すフローチャートである。まず、受信機2のTMCC取得部51は、変調装置1から送信された放送波に対し、TMCC取得処理を行う(ステップS1701)。これにより、部分受信帯域の信号のセグメント番号0~8のTMCCが取得される。TMCC取得処理の詳細については後述する。
【0159】
受信処理部50は、TMCC取得部51により取得された部分受信帯域の信号のセグメント番号0~8のTMCCを復調することで、
図2、
図4及び
図5に示した伝送帯域識別情報、下端上端識別フラグ、部分受信フラグ及びA階層数Nを取得する(ステップS1702)。A階層数Nは、A階層の信号に含まれるセグメントの数を示し、A階層伝送パラメータ情報に格納されている。
【0160】
受信処理部50は、伝送帯域識別情報から伝送帯域モードを判定する(ステップS1703)。受信処理部50は、ステップS1703において、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」以外(「ノーマルモード」または「互換モード」)であると判定した場合(ステップS1703:ノーマルモード、互換モード)、中心周波数fc[MHz]を基準にして通常の受信処理を行う(ステップS1704)。
【0161】
具体的には、受信処理部50は、予め設定された部分受信帯域の中心周波数fc[MHz]を基準にして9セグメントの部分受信帯域の信号をフィルタ処理にて受信する。そして、受信処理部50は、部分受信帯域の信号からA階層数NのA階層の信号を抽出し、FFT処理等の復調を行うことで、A階層の信号を復元する。
【0162】
一方、受信処理部50は、ステップS1703において、伝送帯域モードが「端寄せノーマルモード」であると判定した場合(ステップS1703:端寄せノーマルモード)、中心周波数決定部52は、移動受信用中心周波数決定処理を行う(ステップS1705)。これにより、端寄せ後の部分受信帯域の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が決定される。移動受信用中心周波数決定処理の詳細については後述する。
【0163】
受信処理部50は、中心周波数決定部52により決定された移動受信用中心周波数f’[MHz]を基準にして、通常の受信処理を行う(ステップS1706)。
【0164】
具体的には、受信処理部50は、移動受信用中心周波数f’[MHz]を基準にして9セグメントの部分受信帯域の信号をフィルタ処理にて受信する。そして、受信処理部50は、部分受信帯域の信号からA階層数NのA階層の信号を抽出し、FFT処理等の復調を行うことで、A階層の信号を復元する。
【0165】
(TMCC取得処理)
図18は、移動受信処理の例において、TMCC取得処理の例を示すフローチャートであり、
図17のステップS1701の処理を示している。
図11~
図15に示したとおり、セグメント番号によってTMCCのキャリア位置が異なり、
図2及び
図3に示したとおり、セグメント番号0~8とセグメント番号9~33,35とでは、TMCCのデータ構造が異なる。このため、部分受信帯域のセグメント番号0~8のTMCCを取得するには、セグメント毎に順番に、当該セグメント内のTMCCのキャリア位置から抽出したデータの構造が、
図2に示したTMCCのデータ構造と一致するか否かを確認する必要がある。
【0166】
TMCC取得部51は、変調装置1から送信された放送波のOFDMフレームを構成する35セグメントのうち、任意のセグメント位置における1セグメントを抽出する(ステップS1801)。そして、TMCC取得部51は、当該セグメント位置のセグメント内における予め設定されたTMCCのキャリア位置からデータを抽出し、当該データを復調する(ステップS1802)。
【0167】
TMCC取得部51は、復調したデータ(TMCCのキャリア位置のデータ)の構造を、
図2に示した部分受信帯域のセグメント番号0~8のTMCCにおけるデータ構造と比較する(ステップS1803)。
【0168】
例えば、TMCC取得部51は、
図2に示したそれぞれのビット割り当てのデータにおいて、対応する復調したデータのそれぞれが、当該ビット割り当てのデータ範囲に属するか否かを判断する。TMCC取得部51は、全てのビット割り当てにおいて、対応する復調したデータがデータ範囲に属する場合、一致すると判定する。一方、TMCC取得部51は、1以上のビット割り当てにおいて、対応する復調データがデータ範囲に属しない場合、不一致と判定する。
【0169】
TMCC取得部51は、ステップS1803において、両者のデータ構造が一致しないと判定した場合(ステップS1803:不一致)、当該セグメントをセグメント番号9~33,35のセグメントであるとみなす(ステップS1804)。そして、TMCC取得部51は、復調したデータを、非部分受信帯域のセグメント番号9~33,35のTMCCとして取得し(ステップS1805)、ステップS1801へ移行する。そして、他のセグメント位置のセグメントについて、ステップS1802,S1803の処理が行われる。
【0170】
一方、TMCC取得部51は、ステップS1803において、両者のデータ構造が一致すると判定した場合(ステップS1803:一致)、当該セグメントをセグメント番号0~8のセグメントであるとみなす(ステップS1806)。そして、TMCC取得部51は、復調したデータを、部分受信帯域のセグメント番号0~8のTMCCとして取得する(ステップS1807)。
【0171】
このように、ステップS1802にて復調された復調データの構造が、
図2に示した部分受信帯域のセグメント番号0~8のTMCCにおけるデータ構造と一致するまで、ステップS1801~S1803のセグメント抽出比較処理及びステップS1804,S1805の処理が繰り返され、部分受信帯域のセグメント番号0~8のTMCCが取得される。
【0172】
(移動受信用中心周波数決定処理)
図19は、移動受信処理の例において、移動受信用中心周波数決定処理の例を示すフローチャートであり、
図17のステップS1705の処理を示している。受信処理部50は、
図17のステップS1702の処理にて取得した下端上端識別フラグが「下端」であるか、または「上端」であるかを判定する(ステップS1901)。
【0173】
受信処理部50は、ステップS1901において、下端上端識別フラグが「下端」であると判定した場合(ステップS1901:下端)、部分受信フラグが「部分受信あり」であるか、または「部分受信なし」であるかを判定する(ステップS1902)。
【0174】
受信処理部50は、ステップS1902において、部分受信フラグが「部分受信なし」であると判定した場合(ステップS1902:部分受信なし)、予め設定された中心周波数fc[MHz]及び
図17のステップS1702の処理にて取得したA階層数Nを用いた以下の式にて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を算出する(ステップS1903)。
[数1]
f’=fc-(35-N)/12
【0175】
これにより、
図8のステップS810にて下端寄せ処理が行われたA階層の信号の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が得られる。
【0176】
一方、受信処理部50は、ステップS1902において、部分受信フラグが「部分受信あり」であると判定した場合(ステップS1902:部分受信あり)、予め設定された中心周波数fc[MHz]を用いた以下の式にて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を算出する(ステップS1904)。
[数2]
f’=fc-13/6
【0177】
これにより、
図8のステップS807にて下端寄せ処理が行われた部分受信帯域の信号の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が得られる。
【0178】
一方、受信処理部50は、ステップS1901において、下端上端識別フラグが「上端」であると判定した場合(ステップS1901:上端)、部分受信フラグが「部分受信あり」であるか、または「部分受信なし」であるかを判定する(ステップS1905)。
【0179】
受信処理部50は、ステップS1905において、部分受信フラグが「部分受信なし」であると判定した場合(ステップS1905:部分受信なし)、予め設定された中心周波数fc[MHz]及び
図17のステップS1702の処理にて取得したA階層数Nを用いた以下の式にて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を算出する(ステップS1906)。
[数3]
f’=fc+(35-N)/12
【0180】
これにより、
図8のステップS811にて上端寄せ処理が行われたA階層の信号の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が得られる。
【0181】
一方、受信処理部50は、ステップS1905において、部分受信フラグが「部分受信あり」であると判定した場合(ステップS1905:部分受信あり)、予め設定された中心周波数fc[MHz]を用いた以下の式にて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を算出する(ステップS1907)。
[数4]
f’=fc+13/6
【0182】
これにより、
図8のステップS808にて上端寄せ処理が行われた部分受信帯域の信号の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が得られる。
【0183】
このように、端寄せ後のA階層の信号の中心周波数、または端寄せ後の部分受信帯域の信号の中心周波数である移動受信用中心周波数f’[MHz]が決定される。
【0184】
以上のように、本発明の実施形態の受信機2によれば、TMCC取得部51は、受信した放送波の35セグメントのうち任意の1セグメントを抽出し、当該セグメントにおける予め設定されたTMCCのキャリア位置からデータを取得する。そして、TMCC取得部51は、取得したデータの構造がセグメント番号0~8におけるTMCCのデータ構造と一致すると判定した場合、取得したデータをTMCCとして扱う。
【0185】
受信処理部50は、TMCCから伝送帯域識別情報、下端上端識別フラグ、部分受信フラグ及びA階層数Nを取得し、伝送帯域識別情報の伝送帯域モードから「端寄せノーマルモード」以外を判定した場合、中心周波数fc[MHz]を基準にして通常の受信処理を行う。
【0186】
一方、受信処理部50は、「端寄せノーマルモード」を判定した場合、中心周波数決定部52は、下端上端識別フラグが示す「下端」または「上端」、部分受信フラグが示す「部分受信あり」または「部分受信なし」に応じて、移動受信用中心周波数f’[MHz]を決定する。受信処理部50は、移動受信用中心周波数f’[MHz]を基準にして通常の受信処理を行う。
【0187】
これにより、「端寄せノーマルモード」以外の場合、中心周波数fc[MHz]を基準にしてA階層の信号を復元することができ、「端寄せノーマルモード」の場合、移動受信用中心周波数f’[MHz]を基準にしてA階層の信号を復元することができる。
【0188】
したがって、前述したとおり、低所要CN比のA階層のセグメントである移動受信向けセグメントが、当該チャンネルの帯域における周波数方向の下端または上端に位置するため、固定受信向けセグメントが下端または上端に位置する場合に比べ、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。つまり、固定受信向け放送及び移動受信向け放送のサービスを1つの放送波にて実現する際に、隣接チャンネルの放送波からの被干渉を低減することができる。
【0189】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【符号の説明】
【0190】
1 変調装置
2 受信機
10 入力I/F(インターフェース)
11 基本変調部
12 レベル調整部
13 系統分離部
14 階層合成部
15 帯域分割部
16 時間IL(インターリーブ)部
17 周波数IL部
18 帯域合成部
19 MISO(多入力単出力)符号化部
20 スイッチ
21 TMCC(伝送多重制御信号)情報ビット生成部
22 同期ビット生成部
23 TMCC生成部
24 パイロット生成部
25 差動基準ビット付加部
26 DBPSK(差動二位相偏移変調)部
27 OFDM(直交周波数分割多重)フレーム構成部
28 IFFT(逆高速フーリエ変換)部
29 GI(ガードインターバル)付加部
30 変調部
40 階層分離部
41 帯域分離部
42 セグ間IL部
43 部分受信帯域分離部
44 部分受信帯域階層間IL部
45,47 セグ内IL部
46 非部分受信帯域階層間IL部
50 受信処理部
51 TMCC取得部
52 中心周波数決定部