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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20250108BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20250108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 50/40 20210101ALI20250108BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/42
H01M4/46
H01M4/587
H01M4/64 A
H01M10/052
H01M10/0562
H01M50/40
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020188012
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2021077644
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143656
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】李 ミンソク
(72)【発明者】
【氏名】柳 永 均
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山本 章裕
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145299(JP,A)
【文献】特開2019-87348(JP,A)
【文献】国際公開第2019/103008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 4/00-4/84
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、
前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体の両面配置された正極活物質層、及び前記正極活物質層と前記正極集電体の全側面に配置された不活性部材を含み、
前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体に配置された第1負極活物質層を含み、
前記負極層は、前記正極層の一方面に配置される第1負極層と、前記正極層の他方面に配置される第2負極層とを含み、
前記固体電解質層は、前記正極層と前記第1負極層との間に第1固体電解質層を含み、前記正極層と前記第2負極層との間に第2固体電解質層を含み、
前記正極活物質層の面積が、前記正極活物質層と接触する前記固体電解質層の面積に比べて小さく、前記不活性部材が、前記正極活物質層と前記正極集電体全側面を取り囲んで配置され、前記正極活物質層と前記固体電解質層との面積段差を補正し、
前記正極活物質層の面積が、前記負極集電体の面積に比べて小さく、
前記負極集電体の面積が前記固体電解質層の面積と同一であり、
前記不活性部材が、第1固体電解質層と第2固体電解質層との間に配置され、
前記不活性部材は電気化学的活性を有する物質を含まない部材であり、
前記不活性部材はガスケットである、全固体二次電池。
【請求項2】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、
前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体の一方面に配置された正極活物質層、及び前記正極活物質層の全側面に配置された不活性部材を含み、
前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体の一方面に配置された第1負極活物質層を含む単一セル構造を備え、
前記不活性部材が、互いに対向する前記正極集電体と前記固体電解質層との間に配置され、
前記負極集電体の面積が、前記正極集電体の面積と同一であり、前記正極集電体の面積が、前記固体電解質層の面積と同一であり、
前記不活性部材は電気化学的活性を有する物質を含まない部材であり、
前記不活性部材はガスケットである、全固体二次電池。
【請求項3】
前記不活性部材が、前記正極活物質層の全側面を取り囲み、前記固体電解質層と接触する、請求項1又は2に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記不活性部材が、前記固体電解質層の末端部まで延長される、請求項3に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記正極活物質層の面積が、前記正極活物質層と接触する前記固体電解質層の面積に比べて小さく、
前記不活性部材が、前記正極活物質層の全側面を取り囲んで配置され、前記正極活物質層と前記固体電解質層との面積段差を補正する、請求項2に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記正極活物質層の面積が、前記負極集電体の面積に比べて小さい、請求項2に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記不活性部材が、リチウムイオン絶縁体及びリチウムイオン伝導体のうちから選択された1以上を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記不活性部材が、絶縁性高分子、イオン伝導性高分子、絶縁性無機物、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうちから選択された1以上を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記不活性部材の密度は、前記正極活物質層に含まれる正極活物質の密度の10%ないし200%である、請求項1から6のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記固体電解質層が硫化物系固体電解質層である、請求項1から9のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記硫化物系固体電解質層が、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、0超過10までの正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1以上を含む、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記硫化物系固体電解質層が、LiPSCl、LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1以上を含むアルジロダイトタイプの固体電解質を含む、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記アルジロダイトタイプの固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/ccである、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記第1負極活物質層が負極活物質及びバインダを含み、前記負極活物質が粒子形態を有し、前記負極活物質の平均粒径が4μm以下である、請求項1から13のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項15】
前記負極活物質が、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含み、前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素を含む、請求項14に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記金属負極活物質または準金属負極活物質が、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)のうちから選択された1以上を含む、請求項15に記載の全固体二次電池。
【請求項17】
前記負極活物質が非晶質炭素からなる第1粒子、及び金属または準金属からなる第2粒子の混合物を含み、前記第2粒子の含量は、前記混合物の総重量を基準に、8ないし60重量%である、請求項14に記載の全固体二次電池。
【請求項18】
前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間、及び前記固体電解質層と前記第1負極活物質層との間のうち1以上に配置された第2負極活物質層をさらに含み、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む析出層または金属層である、請求項1から17のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項19】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、
前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体に配置された正極活物質層、及び前記正極活物質層の全側面に配置された不活性部材を含み、
前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体に配置された第1負極活物質層を含む全固体二次電池の製造方法であって、
前記正極集電体、前記正極活物質層、前記固体電解質層、前記第1負極活物質層、及び前記負極集電体がこの順で配置され、前記正極活物質層の面積が、前記正極活物質層と接触する前記固体電解質層の面積に比べて小さく、前記不活性部材が、互いに対向する前記正極集電体と前記固体電解質層との間に配置され、前記負極集電体の面積が前記正極集電体の面積と同一であり、前記正極集電体の面積が前記固体電解質層の面積と同一である積層体を加圧処理する工程を含み、
前記不活性部材は電気化学的活性を有する物質を含まない部材である、全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求により、エネルギー密度が高く安全性に優れる電池の開発が活発に行われている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器分野、通信機器分野だけではなく、自動車分野においても、実用化されている。自動車分野においては、生命に係わるために、特に安全性が重要視される。
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含み、電解液が利用されているために、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。それらに対し、電解液の代わりに、固体電解質を利用した全固体電池が提案されている。
該全固体電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発が発生する可能性を大きく減らすことができる。従って、そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べ、大きく安全性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一側面は、新たな構造の全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一具現例により、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体上に配置された正極活物質層、及び前記正極活物質層の一側面(例えば、1以上の側面)上に配置された不活性部材(inactive member)を含み、前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体上に配置された第1負極活物質層を含む、全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0005】
一側面により、短絡が防止され、サイクル特性に優れる全固体二次電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
図2】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
図3】例示的な一具現例による全固体二次電池正極層の概路図である。
図4】例示的な一具現例による全固体二次電池の内部を部分的に示す概路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
全固体二次電池は、電解質が固体であるので、正極層と固体電解質層との間、及び負極層と固体電解質層との間の接触がそれぞれ十分に維持されない場合、電池内の抵抗が大きくなり、優れた電池特性を発揮し難くなる。
【0008】
負極層と固体電解質との接触を向上させるために、全固体二次電池の製造過程において、加圧過程を経る。該加圧過程において、正極層、負極層及び固体電解質層を含む積層体において、一部積層されていない部分に圧力差が発生し、そのような圧力差により、固体電解質層に微細欠陥が発生することがある。全固体二次電池の充放電過程において、そのような欠陥から、固体電解質層内に亀裂が発生して成長する。そのような亀裂を介し、リチウムが成長するにつれ、正極層と負極層との短絡が発生する可能性がある。
一側面による全固体二次電池は、新たな構造を有することにより、充放電時に短絡を防止し、サイクル特性を向上させることができる。
【0009】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、それは、本創意的思想を、特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術的範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
【0010】
以下で使用される用語は、ただ特定実施例について説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限する意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、字、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況によって「及び」とも解釈され、「または」とも解釈されうる。
【0011】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大させたり縮小させたりして示す。明細書全体を通じて、類似した部分については、同一図面符号を付す。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が他部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、構成要素は、用語によって限定されるものではない。用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。本明細書及び図面において、実質的に同一機能構成を有する構成要素については、同一符号を参照することにより、重複説明を略する。
【0012】
以下において、例示的な具現例による全固体二次電池について、さらに詳細に説明する。
[全固体二次電池]
一具現例による全固体二次電池は、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、正極層が、正極集電体、及び正極集電体上に配置された正極活物質層、及び正極活物質層の一側面 (例えば、1以上の側面) 上に配置された不活性部材(inactive member)を含み、負極層が、負極集電体、及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層を含む。該正極活物質層の一側面(例えば、1以上の側面)上に配置された不活性部材を含むことにより、全固体二次電池の加圧時、固体電解質層の亀裂が抑制される。従って、全固体二次電池の充放電時、固体電解質層の亀裂が抑制され、それにより、全固体二次電池の短絡が抑制される。結果として、全固体二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0013】
図1ないし図4を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20,20a,20b、及び正極層10と負極層20,20a,20bとの間に配置された固体電解質層30,30a,30bと、を含み、正極層10が、正極集電体11、及び正極集電体上に配置された正極活物質層12,12a,12b、及び正極活物質層の一側面(例えば、1以上の側面)上に配置された不活性部材(inactive member)40を含み、負極層20,20a,20bが、負極集電体21,21a,21b、及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層22,22a,22bを含む。
【0014】
[正極層]
[正極層:不活性部材]
正極層10は、正極集電体11、及び正極集電体上に配置された正極活物質層12,12a,12b、及び正極活物質層の一側面上に配置された不活性部材40を含む。
【0015】
不活性部材40は、電気化学的活性を有する物質、例えば、電極活物質(electrode active material)を含まない部材である。該電極活物質は、リチウムを吸蔵/放出する物質である。不活性部材40は、電極活物質以外の物質であり、当該技術分野で使用する物質からなる部材である。
【0016】
不活性部材40は、正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲み、固体電解質層30,30a,30bと接触することができる。不活性部材40が、正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲み、固体電解質層30,30a,30bと接触することにより、正極活物質層12,12a,12bと接触しない固体電解質層30,30a,30bにおいて、加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。
【0017】
不活性部材40は、固体電解質層30,30a,30bの末端部までも延長される。不活性部材40が、固体電解質層30,30a,30bの末端部まで延長されることにより、固体電解質層30,30a,30bの末端部で発生する亀裂を抑制することができる。固体電解質層30,30a,30bの末端部は、固体電解質層30,30a,30bの側面と接する最外郭部分である。すなわち、不活性部材40は、固体電解質層30,30a,30bの側面と接する最外郭部分までも延長される。
【0018】
正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、正極活物質層12,12a,12bと接触する固体電解質層30,30a,30bの面積S2に比べて小さく、不活性部材40が、正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲んで配置され、正極活物質層12,12a,12bと固体電解質層30,30a,30bとの面積段差(area error)を補正することができる。不活性部材40の面積S3が、正極活物質層12,12a,12bの面積S1と、固体電解質層30,30a,30bの面積S2との差を補正することにより、加圧過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下または93%以下でもある。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の50%ないし100%未満、50%ないし99%、55%ないし98%、60%ないし97%、70%ないし96、80%ないし95%、または85%ないし95%でもある。正極活物質層12,12a,12bの面積S1が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2と同じであるか、あるいはそれよりさらに大きければ、正極活物質層12,12a,12bと負極活物質層22,22a,22bとが物理的に接触し、短絡が発生したり、リチウムの過充電などによって短絡が発生したりする可能性が上昇する。
【0019】
不活性部材40の面積S3が、正極活物質層12,12a,12bの面積S1の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下または10%以下でもある。例えば、不活性部材40の面積S3が、正極活物質層12,12a,12bの面積S1の1%ないし50%、5%ないし40%、5%ないし30%、5%ないし20%、または5%ないし15%でもある。不活性部材40の面積S3と、正極活物質層12,12a,12bの面積S1との和が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2と同一でもある。
【0020】
不活性部材40が、互いに対向する正極集電体11と、固体電解質層30との間に配置されるか、あるいは互いに対向する2層の固体電解質層30a,30bの間にも配置される。不活性部材40は、互いに対向する正極集電体11と、固体電解質層30との間の空間、または互いに対向する2個の固体電解質層30a,30b間の空間を充填する充填剤(filler)の役目を遂行することができる。
【0021】
正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4に比べても小さい。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4の100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、85%以下または93%以下でもある。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4の50%ないし100%未満、50%ないし99%、55%ないし98%、60%ないし97%、70%ないし96、80%ないし95%、または85%ないし95%でもある。
【0022】
負極集電体21,21a,21bの面積S4が、正極集電体11の面積S5及び/または形態が同一でもある。例えば、負極集電体21,21a,21bの面積S4が、正極集電体11の面積S5の100±5%範囲、100±3%、100±2%範囲、100±1%範囲または100±0.5%範囲でもある。正極集電体11の面積S5が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2及び/または形態が同一でもある。例えば、正極集電体11の面積S5が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の100±5%範囲、100±3%、100±2%範囲、100±1%範囲または100±0.5%範囲でもある。本明細書において、「同一」な面積及び/または形態は、面積及び/または形態を意図的に異ならせる場合を除き、「実質的に同一」な面積及び/または形態を有する全ての場合を含む。
【0023】
不活性部材40は、リチウムイオン絶縁体及びリチウムイオン伝導体のうちから選択された1以上を含んでもよい。不活性部材40は、電子絶縁体でもある。あるいは、不活性部材40は、電子伝導体でなくともよい。
【0024】
不活性部材40は、有機材料、無機材料または有無機複合材料でもある。該有機材料は、例えば、高分子でもある。該無機材料は、例えば、金属酸化物のようなセラミックスでもある。該有無機複合材料は、高分子と金属酸化物との複合体でもある。不活性部材40は、例えば、絶縁性高分子、イオン伝導性高分子、絶縁性無機物、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質のうちから選択された1以上を含んでもよい。不活性部材40は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)のようなオレフィン系重合体でもある。
【0025】
不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度の10%ないし200%、10%ないし150%、10%ないし140%、10%ないし130%、または10%ないし120%でもある。不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度の90ないし110%でもある。不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度と実質的同一でもある
【0026】
不活性部材40は、例えば、ガスケットでもある。不活性部材40として、ガスケットが使用されることにより、加圧過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。
【0027】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12,12a,12bは、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30,30a,30bに含まれる固体電解質と類似していても、異なっていてもよい。該固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30,30a,30b部分を参照する。
【0028】
該正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)することができる正極活物質である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)のようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄;または酸化バナジウム(vanadium oxide)などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、正極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。該正極活物質は、それぞれ単独でもあり、2種以上の混合物でもある。
【0029】
該正極活物質は, 例えば、該リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-bB’(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である)、Li1-bB’2-c(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiE2-bB’4-c(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiNi1-b-cCoB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1-b-cCoB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1-b-cMnB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1-b-cMnB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である)、LiNiCoMnGeO(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である)、LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、QO、QS、LiQS、V、LiV、LiI’O、LiNiVO、Li(3-f)(PO(0≦f≦2)、Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2)、LiFePOの化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。そのような化合物表面に、コーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物である。該コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内において選択される。該コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に周知されている内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0030】
該正極活物質は、例えば、前述のリチウム遷移金属酸化物において、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが相互に規則的に配列され、それにより、それぞれの原子層が、二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(fcc:face centered cubic lattice)が、互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0031】
該正極活物質は、前述のように、被覆層によって覆われてもいる。該被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであるならば、いずれのものでもよい。該被覆層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などである。
【0032】
該正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMのような三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態で正極活物質の金属溶出低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態におけるサイクル特性を向上させることができる。
【0033】
該正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形のような粒子状である。該正極活物質の粒径は、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極層に適用可能な範囲である。
【0034】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12,12a,12bは、例えば、固体電解質を含んでもよい。正極層10に含まれる固体電解質は、固体電解質層30,30a,30bに含まれる固体電解質と同一であっても、異なっていてもよい。該固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30,30a,30b部分を参照する。
【0035】
正極活物質層12,12a,12bに含まれる固体電解質は、固体電解質層30,30a,30bに含まれる固体電解質に比べ、D50平均粒径が小さいのである。例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30,30a,30bに含まれる固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下または20%以下でもある。
【0036】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12,12a,12bは、バインダを含んでもよい。該バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどである。
【0037】
[正極層:導電剤]
正極活物質層12,12a,12bは、導電剤を含んでもよい。該導電剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素ファイバ、金属粉末などである。
【0038】
[正極層:その他添加剤]
正極活物質層12,12a,12bは、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ、導電剤以外に、例えば、フィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0039】
正極活物質層12,12a,12bに含まれるフィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に、全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0040】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0041】
[固体電解質層]
[固体電解質層:固体電解質]
図1ないし図4を参照すれば、固体電解質層30,30a,30bは、正極層10と負極層20,20a,20bとの間に配置された固体電解質を含む。
【0042】
該固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質である。硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1以上である。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pのような出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を行うことができる。該固体電解質は、非晶質でもあり、結晶質でもあり、それらが混合された状態でもある。また、該固体電解質は、例えば、前述の硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものでもある。例えば、固体電解質は、LiS-Pを含む材料でもある。該固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むものを利用する場合、LiSとPの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50ないし90:10ほどの範囲である。
【0043】
該硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式1で表示されるアルジロダイト型(Argyrodite type)固体電解質を含んでもよい:
(化学式1)Li 12-n-xn+2- 6-x
【0044】
上記化学式1で、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Yは、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCNまたはNであり、1≦n≦5、0≦x≦2である。該硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1以上を含むアルジロダイトタイプの化合物でもある。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiPSCl、LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1以上を含むアルジロダイトタイプ化合物でもある。
【0045】
該アルジロダイトタイプの固体電解質の密度が、1.5ないし2.0g/ccでもある。該アルジロダイトタイプの固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が低減し、Liによる固体電解質層の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0046】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30,30a,30bは、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30,30a,30bに含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30,30a,30bのバインダは、正極活物質層12,12a,12bと負極活物質層22とに含まれるバインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
[負極層]
[負極層:負極活物質]
第1負極活物質層22,22a,22bは、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0048】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下または900nm以下である。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nmないし4μm以下、10nmないし3μm以下、10nmないし2μm以下、10nmないし1μm以下、または10nmないし900nm以下である。該負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時、リチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易にもなる。該負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)径(D50)である。
【0049】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含む。
【0050】
該炭素系負極活物質は、特に、非晶質炭素(amorphous carbon)である。該非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェンなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、非晶質炭素で分類されるものであるならば、いずれも可能である。該非晶質炭素は、結晶性を有さないか、あるいは結晶性が非常に低い炭素であり、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0051】
該金属負極活物質または該準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0052】
第1負極活物質層22,22a,22bは、そのような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、あるいは複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22,22a,22bは、非晶質炭素のみを含むか、あるいは金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上を含む。代案として、第1負極活物質層22,22a,22bは、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上との混合物を含む。非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上との混合物との混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1でもあるが、必ずしもそのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。該負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0053】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子、及び金属または準金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または準金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。準金属は、代案として、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%である。第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0054】
[負極層:バインダ]
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。該バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダによっても構成される。
【0055】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22,22a,22bが、負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程において、第1負極活物質層22,22a,22bの体積変化、及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22,22a,22bの亀裂が抑制される。例えば、第1負極活物質層22,22a,22bがバインダを含まない場合、第1負極活物質層22,22a,22bが、負極集電体21から容易に分離することが可能である。負極集電体21,21a,21bから、第1負極活物質層22,22a,22bが離脱することにより、負極集電体21,21a,21bが露出された部分において、負極集電体21,21a,21bが、固体電解質層30,30a,30bと接触することにより、短絡が発生する可能性が高まる。第1負極活物質層22,22a,22bは、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bを構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥させて作製される。バインダを第1負極活物質層22,22a,22bに含めることにより、スラリー中に、負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法で、スラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することが可能である。
【0056】
[負極層:その他添加剤]
第1負極活物質層22,22a,22bは、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことが可能である。
【0057】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22,22a,22bの厚みは、例えば、正極活物質層厚みの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下である。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みは、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmである。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが過度に薄ければ、第1負極活物質層22,22a,22bと負極集電体21,21a,21bとの間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22,22a,22bを崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが過度に厚くなれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22,22a,22bによる全固体二次電池1の内部抵抗が増大加し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0058】
第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが薄くなれば、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量も減少する。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、例えば、正極活物質層12,12a,12bの充電容量に比べ、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、例えば、正極活物質層12,12a,12bの充電容量に比べ、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが非常に薄くなるので、反復される充放電過程において、第1負極活物質層22,22a,22bと負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22,22a,22bを崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量が過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22,22a,22bによる全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0059】
正極活物質層12,12a,12bの充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12,12a,12bにおける、正極活物質の質量を乗じて得られる。該正極活物質がさまざまな種類使用される場合、正極活物質ごとに、充電容量密度質量値を計算し、該値の総合が、正極活物質層12,12a,12bの充電容量である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量も、同じ方法によって計算される。すなわち、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22,22a,22bにおいて、負極活物質の質量を乗じて得られる。該負極活物質がさまざまな種類使用される場合、負極活物質ごとに、充電容量密度×質量値を計算し、該値の総合が、第1負極活物質層22,22a,22bの容量である。ここで、該正極活物質及び該負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。全固体半電池を利用した充電容量測定により、正極活物質層12,12a,12bと第1負極活物質層22,22a,22bとの充電容量が直接測定される。測定された充電容量を、それぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。代案として、正極活物質層12,12a,12bと第1負極活物質層22,22a,22bとの充電容量は、最初充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0060】
[負極層:第2負極活物質層]
全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置される第2負極活物質層をさらに含んでもよい。該第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む析出層(plated layer)でもある。該析出層は、電池の充電によっても析出される。該第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。該金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、該第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用されるものであるならば、いずれも可能である。該第2負極活物質層は、そのような合金のうち一つ、またはリチウムによってもなるか、あるいはさまざまな種類の合金によってもなる。
【0061】
該第2負極活物質層の厚みは、特別に制限されないが、例えば、1μmないし1,000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。該第2負極活物質層の厚みが過度に薄ければ、第2負極活物質層によるリチウム貯蔵庫の役目を遂行し難い。該第2負極活物質層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下する可能性がある。該第2負極活物質層は、例えば、そのような範囲の厚みを有する金属ホイルでもある。
【0062】
全固体二次電池1において、該第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置されるか、あるいは全固体二次電池1の組み立て後、充電により、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に析出される。全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に、第2負極活物質層22が配置される場合、第2負極活物質層がリチウムを含む金属層であるので、リチウム貯蔵庫として作用する。例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間にリチウムホイルが配置される。それにより、該第2負極活物質層を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層が析出される場合、全固体二次電池1の組み立て時、第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が上昇する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量を超えて充電する。すなわち、第1負極活物質層22,22a,22bを過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22,22a,22bにリチウムが吸蔵される。第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、正極層10から移動して来たリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22,22a,22bの容量を超えて充電を行えば、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bの背面、すなわち、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第2負極活物質層に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層は、主に、リチウム(すなわち、金属リチウム)によって構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質が、リチウムと合金または化合物を形成する物質によって構成されることによって得られる。放電時には、第1負極活物質層22,22a,22b及び第2負極活物質層、すなわち、金属層のリチウムがイオン化され、正極層10方向に移動する。従って、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、第1負極活物質層22,22a,22bが第2負極活物質層を被覆するために、第2負極活物質層、すなわち、金属層の保護層の役目を行うと共にに、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割を遂行する。従って、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制して、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層が配置される場合、負極集電体21,21a,21b及び第1負極活物質層22,22a,22b、並びにそれら間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLi-フリー(free)領域である。
【0063】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21,21a,21bは、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によって構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、電極集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。負極集電体21は、前述の金属ののうち1種によって構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金または被覆材料によっても構成される。負極集電体21は、例えば、板状またはホイル状である。
【0064】
全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21,21a,21b上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜をさらに含んでもよい。該薄膜は、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置される。薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。該薄膜は、それら金属のうち一つで構成されるか、あるいはさまざまな種類の金属の合金によって構成される。該薄膜が、負極集電体21,21a,21b上に配置されることにより、例えば、該薄膜と第1負極活物質層22,22a,22bとの間に析出される第2負極活物質層の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上することができる。
【0065】
該薄膜の厚みは、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmである。該薄膜の厚みが1nm未満になる場合、該薄膜による機能が発揮され難くなる。該薄膜の厚みが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを吸蔵し、負極においてリチウムの析出量が減少し、全固体電池のエネルギー密度が低下され、全固体二次電池1のサイクル特性が低下してしまう。薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、負極集電体21,21a,21b上に配置されうるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において、薄膜を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【実施例
【0066】
以下の実施例及び比較例を介して、本創意的思想についてさらに具体的に説明する。ただし、該実施例は、本創意的思想を例示するためのものであり、それらだけにより、本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0067】
「実施例1:バイセル(bi-cell)」
(負極層製造)
【0068】
負極集電体として、厚み10μmのNi箔を準備した。また、負極活物質として、一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子径が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0069】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子とを3:1の重量比で混合した混合粉末4gを容器に入れ、そこにPVDFバインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたNMP溶液4gを追加し、混合溶液を準備した。次に、該混合溶液に、NMPを少しずつ添加しながら、混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーを、Ni箔 に、バーコータ(bar coater)を利用して塗布し、空気中で80℃で10分間乾燥させた。それによって得られた積層体を、40℃で10時間真空乾燥させた。乾燥された積層体を、300MPaの圧力で10ms間、ロール加圧(roll press)し、積層体の第1負極活物質層表面を平坦化させた。以上の工程によって負極層を作製した。負極層に含まれる第1負極活物質層の厚みは、約7μmであった。
【0070】
(正極層製造)
正極活物質として、LiO-ZrO(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造した。固体電解質として、アルジロダイト型結晶体であるLiPSCl(D50=0.5μm、結晶質)を準備した。バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテプロンバインダ)を準備した。導電剤として、炭素ナノファイバ(CNF)を準備した。そのような材料が、正極活物質:固体電解質:導電剤:バインダ=84:11.5:3:1.5の重量比で、キシレン溶媒と混合され混合物をシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させ、正極シートを製造した。該正極シート周囲に、正極シートを取り囲むポリプロピレン(PP)材質のガスケットを配置した。ガスケットによって取り囲まれた正極シートを、18μm厚のカーボンコーティングされたアルミニウムホイルからなる正極集電体の両面上にそれぞれ圧着して正極層を製造した。正極層に含まれる正極活物質層及びガスケットの厚みは、約100μmであった。
【0071】
該正極活物質層は、正極集電体の中心部に配置され、ガスケットが正極活物質層を取り囲み、正極集電体の末端部まで配置された。該正極活物質層の面積は、正極集電体面積の約90%であり、該正極活物質層が配置されていない正極集電体の残り10%の面積全体にガスケットが配置された。
【0072】
(固体電解質層の製造)
アルジロダイト型結晶体であるLiPSCl固体電解質(D50=3.0μm、結晶質)に、固体電解質98.5重量部に対し、1.5重量部のアクリル系バインダを追加し、混合物を準備した。準備された混合物に、酢酸オクチルを添加しながら撹拌し、スラリーを製造した。製造されたスラリーを、不織布上に、バーコータを利用して塗布し、空気中で80℃温度で10分間乾燥させ、積層体を得た。得られた積層体を、80℃で6時間真空乾燥させた。以上の工程により、固体電解質層を製造した。
【0073】
(全固体二次電池の製造)
正極層の両面上に、固体電解質層をそれぞれ配置し、この固体電解質層上に、第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように、負極層をそれぞれ配置し、積層体を準備した。準備された積層体を、常温で500MPaの圧力で30分間、平板加圧(plate press)処理した。そのような加圧処理により、固体電解質層が焼結され、電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚みは、約45μmであった。焼結された固体電解質層に含まれるアルジロダイト型結晶体であるLiPSCl固体電解質の密度は、1.6g/ccであった。該正極活物質層の面積は、固体電解質層の面積の約90%であった。該固体電解質層の面積は、正極集電体の面積、及び負極集電体の面積とそれぞれほぼ同一であった。
【0074】
加圧された積層体をパウチに入れ、真空密封し、全固体二次電池を製造した。正極集電体と負極集電体との一部を、密封された電池外部に突出させ、正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0075】
「実施例2:単一セル(single cell)」
正極集電体の一面上に、正極活物質層及びガスケットを配置し、正極層を準備し、正極層の一面上に、固体電解質層及び負極層を順次に配置し、電池を製造したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0076】
「実施例3:Sn薄膜導入」
負極集電体として、厚み10μmのSUSシートを準備した。このSUSシート上に、厚み500nmのスズ(Sn)メッキ層を形成した。そのようなスズ薄膜が形成されたSUSシートを、負極集電体として使用したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0077】
「比較例1:ガスケットなし(free)」
正極層製造時、ガスケットを使用しないことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0078】
「比較例2:第1負極活物質層なし」
第1負極活物質層を形成させず、Ni負極集電体のみを使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体リチウム電池を製造した。
【0079】
「比較例3:Ni単独」
負極活物質として、一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子直径が約60nmである銀(Ag)粒子の3:1混合物の代わりに、平均粒径100nmのニッケル(Ni)粒子を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体リチウム電池を製造した。
【0080】
「比較例4:黒鉛単独」
負極活物質として、一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子直径が約60nmである銀(Ag)粒子の3:1混合物の代わりに、平均粒径5μmの鱗片(scale)状黒鉛粒子を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体リチウム電池を製造した。
【0081】
「評価例1:全固体電池作製後の亀裂発生の確認」
実施例1ないし3、及び比較例1ないし4で製造された全固体二次電池の断面を、走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、固体電解質層を貫通する亀裂が発生するか否かを観察した。
【0082】
実施例1ないし3で製造された全固体二次電池においては、固体電解質層の亀裂が観察されなかった。
それに反し、比較例1ないし4の全固体二次電池においては、正極層のコーナー部分で、固体電解質層の亀裂が多数観察された。
従って、実施例1ないし3の全固体二次電池において、不活性部材の使用により、電池製造過程において、固体電解質層の亀裂が防止されるということを確認した。
【0083】
「評価例2:充放電試験」
実施例1ないし3、及び比較例1ないし4で製造された全固体二次電池の充放電特性を、次の充放電試験によって評価した。該充放電試験は、全固体二次電池を60℃の恒温槽に入れて行った。
【0084】
第1サイクルは、電池電圧が3.9Vないし4.25Vになるまで、3.6mA/cmの定電流で12.5時間充電した。次に、電池電圧が2.5Vになるまで、3.6mA/cm2の定電流で12.5時間放電を実施した。
【0085】
第2サイクル後においては、第1サイクルと同一条件で、充電及び放電を5サイクルまで実施した。
【0086】
実施例1ないし3の全固体二次電池は、第5サイクルまで、充放電が正常に進められた。
比較例1で製造された全固体二次電池は、第2サイクルの充電過程において短絡が発生し、短絡発生後には、充電が進められず、電池電圧も、それ以上増大しなかった。
比較例2ないし4の全固体二次電池は、第1サイクルの充電過程、または第1サイクルの放電過程において短絡が発生した。
【0087】
実施例1及び実施例2の全固体二次電池において、第1サイクルの充電が完了した後、それら電池の断面に対するSEMイメージを測定し、第1負極活物質層と負極集電体との間に、第2負極活物質層に該当する析出層(すなわち、リチウム金属層)が形成されたことを確認した。
実施例3の全固体二次電池において、第1サイクルの充電が完了した後、それら電池の断面に対するSEMイメージを測定し、第1負極活物質層とSn薄膜層との間に、第2負極活物質層に該当する析出層(すなわち、リチウム金属層)が形成されたことを確認した。
【0088】
前述のところのように、本実施例に係る全固体二次電池は、さまざまな携帯機器や車両などにも適用可能である。
【0089】
以上、添付された図面を参照し、例示的な一具現例について詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されるものではない。本創意的思想が属する技術分野において当業者であるならば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例を導き出すことができるということは、自明であり、それらも、本創意的思想の技術的範囲に属するということは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12,12a,12b 正極活物質層
20,20a,20b 負極層
21,21a,21b 負極集電体
22,22a,22b 第1負極活物質層
30 固体電解質層
40 不活性部材
図1
図2
図3
図4