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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】岸壁クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20250108BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20250108BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20250108BHJP
   B66C 5/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B66C15/00 B
F16F15/04 P
F16F15/023 A
B66C5/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022012798
(22)【出願日】2022-01-31
(65)【公開番号】P2023111127
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小浜 優
(72)【発明者】
【氏名】堀江 雅人
(72)【発明者】
【氏名】出雲 弘一
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-144044(JP,A)
【文献】特開2000-044168(JP,A)
【文献】特開2002-302377(JP,A)
【文献】特開2018-150103(JP,A)
【文献】特開2007-230734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 5/02
B66C 15/00
F16F 15/04
F16F 15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横行方向に間隔をあけて対置される海側脚および陸側脚を有する脚構造体と、前記海側脚に対応する位置に配置される海側免震装置と、前記陸側脚に対応する位置に配置される陸側免震装置とを備える岸壁クレーンにおいて、
上下方向に間隔をあけて配置される上フランジおよび下フランジと、前記上フランジと前記下フランジとの間に設置されていて前記下フランジに対して前記上フランジを横行方向に移動可能とする状態で垂直荷重を支持するスライド機構とを有する第一免震装置と、
前記上フランジと前記下フランジと前記スライド機構とに加えて、前記上フランジと前記下フランジとの間に配置されていて前記下フランジに対して横行方向に移動した前記上フランジに復元力を発生させる復元機構を有する第二免震装置とを備えていて、
前記第一免震装置は前記復元機構を有さず、前記海側免震装置または前記陸側免震装置の一方が前記第一免震装置で構成されていて、他方が前記第二免震装置で構成されることを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記第二免震装置が、
前記上フランジまたは前記下フランジの一方に配置されていて横行方向に延設されるレール部材と他方に配置されていて前記レール部材に接触する接触部材とを有する前記スライド機構と、
横行方向において前記レール部材の一端部側に配置される積層ゴムを有する前記復元機構と、
横行方向を直角に横断する走行方向において前記下フランジに対して前記上フランジの移動を拘束する拘束機構と、を有する請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
前記レール部材が走行方向に突出する底板部を有していて、
前記接触部材が、前記底板部の下面側に配置される下方ローラと、前記底板部の上面側に配置される上方ローラとを有する請求項2に記載の岸壁クレーン。
【請求項4】
前記陸側免震装置が前記第二免震装置で構成されて、前記海側免震装置が前記第一免震装置で構成される請求項1~3のいずれかに記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
横行方向において、前記第一免震装置の前記スライド機構と前記第二免震装置の前記スライド機構との間となる位置に、前記第二免震装置の前記復元機構が配置される請求項1~4のいずれかに記載の岸壁クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を備える岸壁クレーンに関するものであり、詳しくは固有周期を長周期化することで免震性能を向上した岸壁クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層ゴムで構成された免震装置を備える岸壁クレーンが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、脚部材の途中に免震装置を配置された岸壁クレーンの構成が開示されている。免震装置は積層ゴムで構成されていた。
【0003】
近年、岸壁クレーンは大規模地震に対応することが求められている。大規模地震に対応するためには積層ゴムの変位量を大きくする必要があった。また積層ゴムは岸壁クレーンの構造体の重量を支持する必要があった。変位量を大きくするためには、これにともない積層ゴムを半径方向(水平方向)に大きくする必要があった。
【0004】
積層ゴムを半径方向に大型化すると、その構造上、積層ゴムの復元力が過大となる不具合があった。復元力の増加にともない岸壁クレーンの固有周期が短くなり、免震性能が低下する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2011-144044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は固有周期を長周期化することで免震性能を向上した岸壁クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための岸壁クレーンは、横行方向に間隔をあけて対置される海側脚および陸側脚を有する脚構造体と、前記海側脚に対応する位置に配置される海側免震装置と、前記陸側脚に対応する位置に配置される陸側免震装置とを備える岸壁クレーンにおいて、上下方向に間隔をあけて配置される上フランジおよび下フランジと、前記上フランジと前記下フランジとの間に設置されていて前記下フランジに対して前記上フランジを横行方向に移動可能とする状態で垂直荷重を支持するスライド機構とを有する第一免震装置と、前記上フランジと前記下フランジと前記スライド機構とに加えて、前記上フランジと前記下フランジとの間に配置されていて前記下フランジに対して横行方向に移動した前記上フランジに復元力を発生させる復元機構を有する第二免震装置とを備えていて、前記第一免震装置は前記復元機構を有さず、前記海側免震装置または前記陸側免震装置の一方が前記第一免震装置で構成されていて、他方が前記第二免震装置で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第二免震装置にのみ復元機構が設置されているため、岸壁クレーンに設置される免震装置の全体としてのばね定数を小さくすることができる。地震動の周期に対して岸壁クレーンの固有周期を長周期化できるので、岸壁クレーンが地震動に共振する可能性を低減できる。岸壁クレーンの免震性能を向上するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】岸壁クレーンの概略を例示する説明図である。
図2】第一免震装置を拡大して例示する説明図である。
図3図2の第一免震装置のAA断面を例示する説明図である。
図4図3の第一免震装置のBB矢視を例示する説明図である。
図5】第二免震装置を拡大して例示する説明図である。
図6図5の第二免震装置のCC断面を例示する説明図である。
図7図6の第二免震装置のDD矢視を例示する説明図である。
図8】地震発生時の岸壁クレーンの概略を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の岸壁クレーンを図に示した実施形態に基づいて説明する。なお、図中では岸壁クレーンの走行方向を矢印y、この走行方向yを直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0011】
図1に例示するように本発明の岸壁クレーン1は、一対の海側脚2と一対の陸側脚3と複数の水平部材からなる脚構造体4と、この脚構造体4に支持されていて横行方向xに延設されるガーダ5およびブーム6と、脚構造体4の下方に配置される複数の走行装置7とを備えている。
【0012】
一対の海側脚2どうしは走行方向yに間隔をあけて対置される。一対の陸側脚3どうしは走行方向yに間隔をあけて対置される。海側脚2と陸側脚3とは横行方向xに間隔をあけて対置される状態となる。
【0013】
この実施形態では海側脚2は、上部海側脚2aと下部海側脚2bとに上下方向zにおいて二つに分割されている。同様に陸側脚3も、上部陸側脚3aと下部陸側脚3bとに上下方向zにおいて二つに分割されている。上部海側脚2aの下端と上部陸側脚3aの下端とは横行方向xに延設される上部水平部材8で連結されている。下部海側脚2bの上端と下部陸側脚3bの上端とは横行方向xに延設される下部水平部材9で連結されている。上部海側脚2aの上端と上部陸側脚3aの下端とは斜材10で連結されている。
【0014】
海側脚2に対応する位置に配置される海側免震装置11と、陸側脚3に対応する位置に配置される陸側免震装置12とを岸壁クレーン1は備えている。海側脚2に対応する位置とは、海側脚2の延設方向(上下方向z)における途中またはその延長線上となる位置をいう。陸側脚3に対応する位置とは、陸側脚3の延設方向(上下方向z)における途中またはその延長線上となる位置をいう。
【0015】
この実施形態では上部水平部材8と下部水平部材9との上下方向zにおける間となる位置に海側免震装置11および陸側免震装置12が配置されている。上部海側脚2aと下部海側脚2bとの上下方向zにおける間となる位置に、海側免震装置11は配置されているとも言える。また上部陸側脚3aと下部陸側脚3bとの上下方向zにおける間となる位置に、陸側免震装置12は配置されているとも言える。
【0016】
岸壁クレーン1は、岸壁13に敷設されたレールに沿って走行装置7が作動することで走行方向yに移動することができる。
【0017】
この実施形態では海側免震装置11は図2~4に例示する第一免震装置14で構成されて、陸側免震装置12は図5~7に例示する第二免震装置15で構成される。第一免震装置14と第二免震装置15とは異なる構成を有している。つまり海側免震装置11と陸側免震装置12とは異なる構成を有している。
【0018】
図2に例示するように第一免震装置14は、上下方向zに間隔をあけて配置される上フランジ16および下フランジ17と、上フランジ16と下フランジ17との間に配置されるスライド機構18とを備えている。上フランジ16は例えば上部水平部材8に固定されて、下フランジ17は例えば下部水平部材9に固定される。
【0019】
この実施形態では走行方向yに間隔をあけて配置される一対のスライド機構18を第一免震装置14は備えている。スライド機構18は、上フランジ16の側に固定されるレール部材19と、下フランジ17の側に固定される接触部材20とを備えている。
【0020】
図3に例示するようにレール部材19は横行方向xに延設されている。レール部材19の下端には走行方向yの両側に突出する底板部19aが配置されている。
【0021】
図4に例示するようにこの実施形態では接触部材20は、底板部19aの下面側に配置される下方ローラ20aと、底板部19aの上面側に配置される上方ローラ20bとを有している。下方ローラ20aは底板部19aを下方から支持している。上方ローラ20bは底板部19aの上面と接触可能に構成されている。下方ローラ20aおよび上方ローラ20bは走行方向yを中心軸として回転可能に構成されるローラで構成されている。二つの下方ローラ20aが横行方向xに間隔をあけて配置されている。同様に二つの上方ローラ20bが横行方向xに間隔をあけて配置されている。図4では説明のため、下方ローラ20a、上方ローラ20bおよび底板部19aの一部を破線で示している。
【0022】
また図2および3に例示するように下方ローラ20aおよび上方ローラ20bは、レール部材19を走行方向yの両側から挟み込む状態で配置されている。この実施形態では一つの第一免震装置14に、八つの下方ローラ20aおよび八つの上方ローラ20bが配置されている。下方ローラ20aおよび上方ローラ20bの数は上記に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0023】
下方ローラ20aは底板部19aと接触してレール部材19を支持することで、第一免震装置14の上方に位置する脚構造体4やガーダ5やブーム6等の荷重を支持する。上方ローラ20bは、レール部材19が上方に移動しようとしたときにこの荷重を支持する構成を有している。つまり上方ローラ20bは、レール部材19の浮き上がりを防止するための機構であり、必須の構成要件ではない。上方ローラ20bは底板部19aと接触している状態でもよく、底板部19aとの間に隙間を有する状態であってもよい。この場合はレール部材19が浮き上がったときに上方ローラ20bが底板部19aと接触する状態となる。第一免震装置14が、接触部材20として下方ローラ20aのみを有していて、上方ローラ20bを有さない構成であってもよい。
【0024】
図2および図3に例示するように第一免震装置14は、走行方向yにおいて下フランジ17に対する上フランジ16の移動を拘束する拘束機構21を有していてもよい。この実施形態では拘束機構21は、上フランジ16と下フランジ17とを連結するリンク部材で構成されている。図3に例示するように一対の拘束機構21は、横行方向xに間隔をあけて配置されていて、走行方向yにおいて一対のスライド機構18の間となる位置に配置されている。拘束機構21は第一免震装置14の必須の構成要件ではない。
【0025】
図3に例示するようにレール部材19は、走行方向yの両側から上方ローラ20bで挟み込まれる状態となる。そのため走行方向yにおいて下フランジ17に対する上フランジ16の移動を、上方ローラ20bにより拘束する構成としてもよい。この場合はレール部材19および上方ローラ20bが拘束機構21を構成していると言える。
【0026】
レール部材19を走行方向yの両側から挟み込むローラが別途配置されてもよい。このローラは上下方向zを回転軸として回転する構成を有する。この場合はこのローラおよびレール部材19が拘束機構21を構成することになる。レール部材19により拘束機構21が構成される場合は、リンク部材で構成される拘束機構21が不要となる。第一免震装置14を走行方向yにおいて小型化するには有利である。
【0027】
第一免震装置14は、通常時は下フランジ17に対する上フランジ16の位置を固定して、地震発生時にこの固定を解除する図示しない固定機構を有している。
【0028】
図5図7に例示するように第二免震装置15は、上フランジ16と下フランジ17とスライド機構18とを備えている。この実施形態では第二免震装置15は、第一免震装置14が備える構成と同一の構成を全て備えている。第一免震装置14が備える構成に加えて、上フランジ16と下フランジ17との間に配置されていて下フランジ17に対して上フランジ16に復元力を発生させる復元機構22を、第二免震装置15は備えている。
【0029】
この実施形態では復元機構22は、積層ゴムで構成されている。第二免震装置15は、第一免震装置14と同様に下方ローラ20aがレール部材19を支持することで、第二免震装置15の上方に位置する脚構造体4等の荷重を支持する。そのため復元機構22を構成する積層ゴムは垂直荷重を支持する必要がない。積層ゴムは、垂直荷重を支持しないので半径方向に大型化する必要がなく、復元力を発生させるのみでよい。半径方向の大きさが比較的小さい積層ゴムで復元機構22を構成することが可能となる。
【0030】
図8に例示するようにこの実施形態では、第一免震装置14および第二免震装置15が上部水平部材8と下部水平部材9との間に配置される。海側免震装置11として第一免震装置14が配置されて、陸側免震装置12として第二免震装置15が配置される。図8では説明のため横行方向xにおける上部水平部材8および下部水平部材9の一部を省略して図示している。
【0031】
地震発生時には固定機構による固定が解除されて、第一免震装置14および第二免震装置15が横行方向xに変形可能な状態となる。つまり下フランジ17に対して上フランジ16が横行方向xに移動可能な状態となる。復元力を発生させる復元機構22が、第二免震装置15にのみ配置されている。そのため海側免震装置11および陸側免震装置12の両方に積層ゴム等の復元機構22が配置される場合に比べて、免震装置全体としてのばね定数は小さくなる。
【0032】
岸壁クレーン1の固有周期Tは2π√(M/K)で表すことができる。ここでMは質量、Kはばね定数となる。第一免震装置14のばね定数をK1として第二免震装置15のばね定数をK2とすると、第一免震装置14は復元機構22を有さないのでK1≪K2となる。第二免震装置15のばね定数K2に比べて第一免震装置14のばね定数K1は十分に小さい値となる。第二免震装置15が、復元機構22を有さない第一免震装置14よりも大きい復元力を発生させる状態となる。
【0033】
海側免震装置11および陸側免震装置12の両方が復元機構22を有する従来と比べて、岸壁クレーン1の免震装置全体としてのばね定数K=K1+K2は小さくなる。ばね定数Kが小さくなるほど固有周期Tは大きくなる。岸壁クレーン1の固有周期Tを長周期化できるので、免震性能を向上できる。
【0034】
岸壁クレーン1の脚構造体4等の荷重を支持するスライド機構18を、第一免震装置14および第二免震装置15のいずれもが備えている。復元機構22として積層ゴムが採用される場合であっても、この積層ゴムは垂直荷重を支持する必要がない。積層ゴムは垂直荷重を支持する必要がないため、半径方向に小さく上下方向zに長い積層ゴムを免震装置に採用できる。積層ゴムの大径化を回避するには有利である。
【0035】
図6に例示するように復元機構22を構成する積層ゴムは、横行方向xに沿って延設されるレール部材19の一端部側に配置される。走行方向yにおいて第二免震装置15を小型化するには有利である。下部水平部材9の上面に第二免震装置15を配置する際に、走行方向yにおいて下部水平部材9からはみ出さずに配置することが容易となる。
【0036】
図8に例示するように陸側免震装置12が復元機構22を有する第二免震装置15で構成されて、海側免震装置11が第一免震装置14で構成されることが望ましい。第二免震装置15の方が復元機構22を有する分だけ、第一免震装置14より重量が大きくなる。この場合、陸側免震装置12の方が海側免震装置11よりも重量が大きくなるため、海側脚2の下端に配置されている走行装置7の車輪にかかる荷重(輪重)を比較的小さくすることができる。岸壁クレーン1は海側に突出するブーム6を有する構造上、海側の車輪の方が陸側の車輪よりも輪重が大きくなる。海側の車輪の輪重を抑制できるほど、岸壁13への負担を小さくできるので望ましい。岸壁13に十分な強度がある場合は、海側免震装置11として復元機構22を有する第二免震装置15を採用してもよい。
【0037】
岸壁クレーン1は走行方向yに対置される一対の海側脚2と一対の陸側脚3とを備えている。そのため合計四つの免震装置が岸壁クレーン1に配置されることになる。一対の海側脚2に対応する位置にそれぞれ第一免震装置14を配置して、一対の陸側脚3に対応する位置にそれぞれ第二免震装置15を配置する構成とすることが望ましいが、この構成に限定されない。
【0038】
一方の海側脚2に対応する位置に第一免震装置14を配置して陸側脚3に対応する位置に第二免震装置15を配置するとともに、他方の海側脚2に対応する位置に第二免震装置15を配置して陸側脚3に第一免震装置14を配置する構成としてもよい。つまり岸壁クレーン1に配置される二つの海側免震装置11のうち一方を第一免震装置14として他方を第二免震装置15としてもよい。このとき岸壁クレーン1に配置される二つの陸側免震装置12は一方が第一免震装置14であり他方が第二免震装置15となる。
【0039】
第一免震装置14および第二免震装置15が配置される位置は、海側脚2または陸側脚3に対応する位置に配置されていればよい。脚構造体4が上部水平部材8や下部水平部材9を有さない構成であってもよい。この場合は脚の途中部分に第一免震装置14等が配置される。また第一免震装置14等が配置される位置は、上部海側脚2aと下部海側脚2bとの間に限らない。海側脚2とその下端に配置される走行装置7との間に、第一免震装置14等が配置されてもよい。同様に陸側脚3とその下端に配置される走行装置7との間に、第一免震装置14等が配置されてもよい。
【0040】
図8に例示するように、横行方向xにおいて第一免震装置14のスライド機構18と第二免震装置15のスライド機構18との間となる位置に、第二免震装置15の復元機構22が配置されることが望ましい。横行方向xにおいて復元機構22の両側にスライド機構18が配置される構成となるため、復元機構22に発生する垂直荷重を抑制できる。
【0041】
走行方向yを中心軸とする転倒モーメントが岸壁クレーン1に発生して、復元機構22を構成する積層ゴムに上下方向zの引張力が生じる場合がある。このとき積層ゴムが横行方向xにおいて二つのスライド機構18の内側に配置されることで、積層ゴムの上下方向zに発生する引張力を抑制できる。積層ゴムが剥離等により故障する不具合を回避するには有利である。特にスライド機構18がレール部材19の浮き上がりを防止する上方ローラ20bを有する場合は、積層ゴムに上下方向zの引張力が発生することを回避できる。
【0042】
図8に例示するように例えば第一免震装置14のスライド機構18を構成する一対の下方ローラ20aおよび一対の上方ローラ20bが横行方向xに間隔をあけて配置されている。一対の下方ローラ20aおよび一対の上方ローラ20bにより上下方向zから底板部19aが挟まれる状態であるため、走行方向yを中心軸とする転倒モーメントを第一免震装置14等は容易に支持することができる。
【0043】
復元機構22は、積層ゴムに限らない。横行方向xにおいて第二免震装置15に復元力を発生させる構成を有していればよい。例えば横行方向xに伸縮するバネで復元機構22が構成されてもよい。
【0044】
図5~7に例示するように第二免震装置15が、横行方向xにおいて減衰力を発生させる減衰機構23を有していてもよい。この実施形態では減衰機構23は、一端を上フランジ16に連結されて他端を下フランジ17に連結されて、横行方向xに伸縮可能な油圧ダンパーで構成されている。この油圧ダンパーは復元力を発生させるバネが内蔵されていてもよい。このバネは復元機構22として第二免震装置15に復元力を発生させる。減衰機構23は油圧ダンパーに限定されず、第二免震装置15の横行方向xの変形に対して減衰力を発生させる構成を有していれば他の機器で構成されてもよい。
【0045】
第一免震装置14が減衰機構23を有する構成であってもよい。このとき減衰機構23がバネを内蔵した油圧ダンパーで構成されてもよい。この場合は、積層ゴム等の復元機構22から得られる復元力に比べて、復元力が十分に小さいバネが採用される。減衰機構23のように比較的小さいながらも復元力を発生させる構成を第一免震装置14が有する構成は許容される。ただし第一免震装置14には復元力を発生させることを目的とする復元機構22が設置されることはない。第二免震装置15の方が、復元機構22を有さない第一免震装置14よりも大きい復元力を発生させる構成を有している。免震装置全体としてのばね定数を小さくすることができるため、第一免震装置14が一切の復元力を発生させない構成であることが望ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 岸壁クレーン
2 海側脚
2a 上部海側脚
2b 下部海側脚
3 陸側脚
3a 上部陸側脚
3b 下部陸側脚
4 脚構造体
5 ガーダ
6 ブーム
7 走行装置
8 上部水平部材
9 下部水平部材
10 斜材
11 海側免震装置
12 陸側免震装置
13 岸壁
14 第一免震装置
15 第二免震装置
16 上フランジ
17 下フランジ
18 スライド機構
19 レール部材
19a 底板部
20 接触部材
20a 下方ローラ
20b 上方ローラ
21 拘束機構
22 復元機構
23 減衰機構
x 横行方向
y 走行方向
z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8