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特許7615118積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/58 20240101AFI20250108BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20250108BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20250108BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20250108BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20250108BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20250108BHJP
   B01J 35/56 20240101ALI20250108BHJP
【FI】
B01J35/58 J
B01J32/00
B01J37/04 102
B01J37/00 D
B01J37/16
B01J37/08
B01J35/56 Z
B01J35/56 301B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022503480
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2020070117
(87)【国際公開番号】W WO2021013682
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】19187345.4
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネマ,マルコ オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒエルセン,バルト
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,ジャスパー
(72)【発明者】
【氏名】ワルスドルフ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ボルニンコフ,フレッド
(72)【発明者】
【氏名】シャルフ,フロリアン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03381546(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/099957(WO,A1)
【文献】米国特許第07527671(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 32/00、35/56、35/58
B01J 19/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔の空いた平行ストランドの層で構成される、触媒、触媒担体、又は吸収性材料の積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体であって、層内の平行ストランドは、小さい距離で離間された二本以上の間隔の狭い等距離のストランドのグループに配列され、等距離のストランドのグループは、隣接したストランド又は隣接したストランドのグループからより大きい距離で離間されている、三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体。
【請求項2】
隣接した層が平行ストランドの同じパターンを有し、互いにある角度で配向している、請求項1に記載の三次元構造体。
【請求項3】
互いにそれぞれ0°、60°、及び120°で配向している平行ストランドの層で構成される、六角形の断面を有する、請求項1又は2に記載の三次元構造体。
【請求項4】
三つの層ごとに同じ配向を有する、請求項3に記載の三次元構造体。
【請求項5】
互いにそれぞれ0°、45°、及び90°、及び135°で配向している平行ストランドの層で構成される、八角形の断面を有する、請求項1又は2に記載の三次元構造体。
【請求項6】
四つの層ごとに同じ配向を有する、請求項5に記載の三次元構造体。
【請求項7】
間隔の空いた平行ストランドの層でそれぞれ構成される断面を含み、ある断面の層内の間隔の空いた平行ストランドのパターンが、別の断面の層内の間隔の空いた平行ストランドのパターンとは異なる、請求項1から6のいずれか一項に記載の三次元構造体。
【請求項8】
各断面が、互いにある角度で配向している同じパターンの三つ又は四つの層を含む、請求項7に記載の三次元構造体。
【請求項9】
平行ストランドの異なるパターンを有する隣接した層を含む、請求項1に記載の三次元構造体。
【請求項10】
隣接した層において平行ストランドの厚さが異なっている、請求項1に記載の三次元構造体。
【請求項11】
大きい方の距離が小さい距離の2~10倍である、請求項1から10のいずれか一項に記載の三次元構造体。
【請求項12】
等距離の平行ストランドのグループが、二本、三本、又は四~六本の平行ストランドで構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の三次元構造体。
【請求項13】
層内で一本のストランドが、等距離の平行ストランドの二つのグループの間に配列されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の三次元構造体。
【請求項14】
小さい距離が0.5~2mmであり、より大きい距離が2~10mmである、請求項1から13のいずれか一項に記載の三次元構造体。
【請求項15】
a)触媒活性金属又は触媒支持粒子の金属、金属合金、金属化合物粒子の液体希釈剤中のペーストを調製するステップであって、金属、金属合金、又は金属化合物粒子を触媒支持体粒子上に支持させる又は触媒支持体粒子と混合させることができ、該ペーストが場合によりバインダー材料を含んでいてもよい、ステップと、
b)100μmを超える直径を有する一つ以上のノズルを通してステップa)のペーストを押出してストランドを形成させ、同じ又は異なる配向を有し互いに合同である又は合同ではない、直線状の間隔の空いた平行ストランドの連続した層状に押出ストランドを堆積させて三次元多孔性前駆体を形成させるステップと、
c)三次元多孔性前駆体を乾燥させて液体希釈剤を除去するステップと、
d)必要に応じて、多孔性前駆体の金属酸化物を還元して触媒活性金属又は金属合金を形成させる、又はさらに熱処理して触媒活性材料を製造するステップと
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体を製造する方法。
【請求項16】
平行ストランドが、各層の一本の単一の個々のストランドの部分的なストランドとして連続的に堆積される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
無機酸化物触媒支持体が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ヒドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コージェライト、炭化物、窒化物、又はそれらの混合物若しくはブレンドから成る群から選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
触媒活性金属が、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、及びCe、並びにそれらの混合物又は合金から成る群から選択される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
土、アルミナ、シリカ、又はそれらの混合物から成る、無機バインダーの群から選択されるバインダー材料が採用される、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
酸化反応、水素化反応、及び脱水反応における、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層触媒ストランドの三次元多孔性触媒構造体の使用。
【請求項21】
不規則充填反応器床又は反応器の構造化充填物における、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層触媒ストランドの三次元多孔性触媒構造体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体、三次元構造体を製造する方法、及び三次元構造体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、無機触媒、触媒担体、又は吸収剤は、押出ストランド又は押出モノリス又はハニカム構造体として製造される。
【0003】
直線状に延びたハニカム構造と比較してより様々な形状を可能にする代替法は、例えばラピッドプロトタイピング法により準備できる。米国特許第8,119,554号に記載される方法は例えば、バインダー材料を選択的に無機触媒粉末へ導入して三次元構造体を形成させる、粉末ベースのラピッドプロトタイピング法による成形体の製造を含む。
【0004】
しばしばロボキャスティングと名付けられるさらなる製造法を採用することができる。この方法では、触媒材料粒子のペーストを押出してストランドとし、これを積層状に堆積させて所望の三次元構造体を形成させる。その後、構造体を乾燥及び焼結させる。ロボキャスティング法による再生可能なディーゼル排気微粒子フィルターの製造は、米国特許第7,527,671号に開示される。
【0005】
この方法はウッドパイル型多孔質構造を有するCu/Al2O3触媒系の調製においても採用されてきた。Journal of Catalysis 334 (2016)、110~115頁は、不均一銅系触媒の3D印刷に関する。平均粒径が0.5μmであるAl2O3粉末を硝酸銅(II)の水溶液へ加え、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを粘度調整剤として加えることにより、得られる懸濁液の粘度を調整した。押出成形に適したものとなるまで蒸発により水を除去することにより、得られるインクを濃縮した。直径が410μmであるノズルを取り付けたシリンジに水性インクを充填した。ロボット堆積システムを使用してウッドパイル型構造を作った。構造体を室温で24時間乾燥させ、その後空気中、1400℃で2時間焼結させた。
【0006】
Ni/Al2O3で被覆された構造化の触媒がCatalysis Today、273 (2016)、234~243頁に記載されている。触媒を調製するために、ロボキャスティング法を使用してステンレス鋼支持体を調製した。得られる3D構造体を1300℃で4時間焼結させ、ニッケルを添加したベーマイト粉末のコーティングスラリーを塗布した。したがって、ステンレス鋼支持体構造のみがロボキャスティングにより調製された。
【0007】
上記の方法はすべて、1000℃を十分に超えた温度での焼結工程を必要とする。
【0008】
触媒活性金属を採用する多くの触媒において、そのような高温での焼結は触媒特性に対して悪影響がある。典型的には、この温度処理では触媒支持体上の触媒活性金属の分散が損なわれる。
【0009】
例えば拡散律速反応において触媒の広い外表面積を得るために、又は固定床触媒反応器において低い空隙容量を伴う高い比質量偏差を得るために、より小さい触媒押出物の使用が必要である。特に物質移動律速反応では、小さい触媒押出物の性能がより大きい押出物の性能よりも良好である。しかし欠点は、より小さい押出物が充填床においてより高い圧力損失を示すことである。さらに、これらの小さい押出物の機械的強度は、典型的には充填床反応器を形成するのに不十分である。
【0010】
国際公開第2017/055565A1号は、セラミック材料を含む組成物を成形してグリーン構造体を得るステップであって、前記セラミック材料が触媒材料並びに第1及び第2の無機バインダーを含む、ステップと;グリーン構造体を焼成してバルク触媒構造体を得るステップであって、構造体が、流れ方向に延びる長さを有する第1のチャネル及び半径方向に延びる長さを有する第2のチャネルを含む、ステップとを含む、バルク触媒構造体を構築する方法を開示しており、成形ステップは、懸濁液、スラリー、又はペーストをファイバーとして三次元のファイバーの堆積により押出するステップを含み、ファイバーは層状ネットワークを形成する。
【0011】
層状ネットワークは、互いに平行なファイバーの交互層を含み、連続する層のファイバーは互いに直交して又は斜めに配列されている。
【0012】
米国特許第9,597,837B1号は、ラピッドプロトタイピング法を使用して支柱及び壁を三次元形状に堆積させて三次元多孔性流体デバイスを構築するステップを含む、三次元多孔性流体デバイスの作成方法を開示しており、三次元多孔性流体デバイスは、流体入口側及び出口側と;流体デバイスを取り囲む壁と;流体デバイスの壁の内部にある、細孔のネットワークを形成する層状に配置された複数の支柱の格子であって、第1の層の支柱が、第1の層及び第3の層の支柱に対してある角度で配列されている第2の層の支柱によって第3の層の支柱から離間されており、第3の層及び第1の層の支柱は間隔がずれており、相互に連結している細孔の蛇行した経路を有するチャネルが形成されるような間隔で、層内の支柱がその層内の隣接した支柱から離間されている、複数の支柱の格子とを含む。
【0013】
欧州特許第3381546A1号は、流体入口及び流体出口を含む、流体の貫通流のデバイスを開示しており、流体入口及び流体出口が、全体の流れの方向、流体入口と流体出口との間に配列された相互に連結された細孔を有する多孔性構造を画定し、多孔性構造が壁につながっていて多孔性構造と壁との間の熱伝導を実現し、多孔性構造が全体の流れの方向に交差する第1の方向に沿って多孔性の勾配を含み、壁に近い第1の位置における第1の多孔性と壁から離れた第2の位置における第1の多孔性よりも大きい第2の多孔性との間で、多孔性の勾配が第1の方向に沿って生じる。多孔性構造は、互いに付着しているファイバーの配列を含み、ファイバーは積層された平行な層状に配列している。
【0014】
ロボキャスティングにより調製される現在の触媒は広い表面積を有する。しかし、それらはまた個々のモノリス体にわたって高い圧力損失も有し、これは転じてこれらのモノリス体が置かれることになる反応器にわたる高い圧力損失につながる。或いは、不規則充填モノリスの床は反応器において低い圧力損失を有する場合があるが、各々の個々のモノリス体にわたる圧力損失に起因するモノリスへの入口障壁が、反応器を通るガス流のチャネリングにつながることになり、ロボキャスティング技術によって実現される幾何学的表面積の改善は完全には利用されないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の根底にある目的は、広い外表面積又は高い比質量偏差を有する触媒活性金属を含む触媒を提供することである。充填触媒床を反応器中に形成することができるように、触媒構造は機械的に十分に安定であるべきである。特に、触媒構造は触媒モノリス体の構造化床又は不規則充填床においてチャネリングの傾向を伴わず低い圧力損失をもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、間隔の空いた平行ストランドの層で構成される、触媒、触媒担体、又は吸収性材料の積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体であって、層内の平行なストランドは、小さい距離で離間された二本以上の間隔の狭い等距離のストランドのグループに配列され、等距離のストランドのグループは、隣接したストランド又は隣接したストランドのグループからより大きい距離で離間されている、三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体によって実現される。
【0017】
現在の最新技術のモノリス構造体は、モノリス構造体内の流れの第1の方向に平行な平行チャネルを有し、そのため交差チャネルの流れパターンを有していない。本発明の触媒形状は、優先的経路だけでなく構造体全体にわたる第2及び第3の交差チャネルの流れも有する、三次元構造体全体にわたるガスの複数の流れ方向を可能にする。本発明の三次元構造体の場合、三次元構造体全体にわたるジグザグの第1の流れパターンは、著しく低い圧力損失、体積あたりの表面積の減少が最小限であるより大きい乱流を実現する。
【0018】
層ごとのファイバーの添加を使用して調製される、現在の最新技術の添加製造触媒は、ガスの交差チャネル流を可能にするが、しかしガスの流れの第1の方向は層のストランドの堆積とは垂直な方向である。場合により、ファイバーはモノリスにわたるジグザグパターンの第1の流れを可能にするように置かれ、このジグザグパターンは直線状チャネルによる最新技術の触媒と比較して触媒の活性を改善することが知られている。これらの最新技術の三次元構造体の圧力損失及び乱流は、この三次元構造体を構築するのに等距離のファイバーの堆積パターンのみが使用されるという事実によって非常に制約を受ける。
【0019】
三次元構造体全体にわたるジグザグの流れパターンは、層ファイバー添加により調製される最新技術で製造される触媒と比較した場合に構造体にわたる圧力損失の減少を実現しながら三次元構造体における高度な乱流を実現することにより触媒活性を高めるという事実をさらに足がかりとするために、本発明の構造体の形状を使用することができる。
【0020】
本発明の三次元構造体は一般に、触媒、触媒担体、若しくは吸収性モノリス、又はより小さい触媒、触媒担体、若しくは吸収性成形体として使用される。前者は一般に反応器の構造化充填物において使用されるが、一方後者は一般に不規則充填触媒床において使用される。
【0021】
好ましい実施形態において、隣接した層は平行ストランドの同じパターンを有し、互いにある角度で配向されている。
【0022】
好ましい一実施形態において、三次元構造体は六角形の断面を有し、互いにそれぞれ0°、60°、及び120°で配向している平行ストランドの層で構成されている。特に好ましい実施形態において、三つの層ごとに同じ配向を有する。
【0023】
さらなる好ましい実施形態において、三次元構造体は八角形の断面を有し、互いにそれぞれ0°、45°、及び90°、及び135°で配向している平行ストランドの層で構成されている。特に好ましい実施形態において、四つの層ごとに同じ配向を有する。
【0024】
さらに好ましい実施形態において、三次元構造体は間隔の空いた平行ストランドの層でそれぞれ構成される断面を含み、ここである断面の層内の間隔の空いた平行ストランドのパターンは、別の断面の層内の間隔の空いた平行ストランドのパターンとは異なる。パターンは層内の平行ストランドの配列である。
【0025】
一実施形態において、六角形の断面を有する三次元構造体の場合、各断面は互いにそれぞれ0°、60°、及び120°で配向している同じパターンの三つの連続した層で構成されている。別の実施形態において、八角形の断面を有する三次元構造体の場合、各断面は互いにそれぞれ0°、45°、及び90°、及び135°で配向している同じパターンの四つの連続した層で構成されている。
【0026】
さらなる実施形態において、三次元構造体は、平行ストランドの異なるパターンを有する隣接した層を含む。いくつかの実施形態において、平行ストランドの厚さは隣接した層において異なっていてもよい。
【0027】
一般に、大きい方の(第2の)距離は小さい(第1の)距離の2~10倍である。
【0028】
ある層において、間隔の狭い平行ストランド(第1の距離で離間されている)のいくつかの隣接したグループは、より大きい第2の距離(第1の距離よりも大きい)によって離間されていてもよく、間隔の狭い平行ストランドのいくつかの他の隣接したグループは、さらにより大きい第3の距離によって離間されていてもよい。第3の距離は、第2の距離の1.5~3倍であってもよい。
【0029】
好ましくは、平行ストランドのグループはそれぞれ、二本、三本、又は四~六本の間隔の狭い、等距離のストランドで構成されている。
【0030】
さらなる好ましい実施形態において、一本のストランドが、層内の間隔の狭い平行ストランドの二つのグループ間に配列されている。さらなる好ましい実施形態において、ストランドの対が、層内の間隔の狭い平行ストランドの二つのグループ間に配列されている。
【0031】
好ましい実施形態において、小さい(第1の)距離は0.5~2mmであり、より大きい(第2の)距離は2~10mmである。
【0032】
本発明を図によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による平行な間隔の空いたストランドの例示的な層パターンの略図を示し、ここで(a)は等距離の平行な間隔の空いたストランドの第1のグループを指定し、(c)は等距離の平行な間隔の空いたストランドの第2のグループを指定する。m1は、ストランドの第1のグループにおける平行な間隔の空いたストランド間の第1の距離を指定し、m2は、等距離の平行な間隔の空いたストランドのグループ間の第2の距離を指定する。例えば、ストランド径b=1mm、m1=2mm、及びm2=5mm。
図2図1に示す層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す図である。
図3】二本の間隔の空いたストランドの側部グループ及び四本の間隔の空いたストランドの中央グループを有する、本発明による実際の三次元構造体の上面図である。ストランド径b=1.6mm、m1=1mm、及びm2=2mm。
図4】第1の距離で隔てられており、第2の距離で隔てられた二本の中央ストランドから第2の距離で離間された、四本の平行ストランドの側部グループを有する、本発明による平行な間隔の空いたストランドのさらなる例示的な層パターンの略図である。例えば、b=1mm、m1=2、m2=4。
図5図4に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す図である。
図6図4に示される層パターンを有する、本発明による実際の三次元構造体の上面図を示す図である。例えば、ストランド径b=1.2mm、m1=0.5mm、及びm2=2mm。
図7】(a)m1によって隔てられたそれぞれ二本の間隔の狭い平行ストランドの二つの側部グループと、(c)m1によって隔てられた間隔の狭い平行ストランドの中央グループとを有する、本発明による平行な間隔の空いたストランドのさらなる層パターンの略図である。グループ(a)及び(c)は、一本のストランドからm2によって隔てられている。例えば、b=1mm、m1=1mm、及びm2=3mm。
図8図7に記載される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す図である。
図9図7に示される層パターンを使用した本発明の実際の三次元構造体の上面図を示す図である。b=1.2mm、m1=1mm、及びm2=5mm。
図10図7に示される層パターンを使用した本発明の実際の三次元構造体のさらなる例の上面図を概略的に示す。b=1.6mm、m1=0.5mm、及びm2=2.5mm。
図11】間隔の空いた平行ストランドの対で構成された本発明による平行な間隔の空いたストランドのさらなる層パターンの略図であり、第1の(外側の)対のグループは小さい方の(第1の)距離(m1)で隔てられており、第2の(内側の)対のグループは大きい方(第2の)距離(m2)で隔てられている。内側の対のグループはさらに大きい(第3の)距離(m3)で隔てられている。例えば、b=1mm、m1=1mm、m2=3mm、及びm3=5mm。
図12図7に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示し、ここで三つの層ごとに図11に示される層パターンを有する。
図13】本発明による平行な間隔の空いたストランドのさらなる層パターンの略図である。例えば、b=1mm、m1=1mm、m2=3mm、及びm3=2.5mm。
図14図13に示される層パターンを使用した本発明によるモノリスの上面図である。
図15図13に示される層パターンを使用した本発明による実際の三次元構造体の上面図である。b=1.6mm、m1=0.5mm、及びm2=2.5mm。
図16】本発明による平行な間隔の空いたストランドの層パターンのさらなる例の略図であり、ここで(a)、(c)は、二本の等距離の平行な間隔の空いたストランドのグループを指定する。m1は、ストランドの各グループにおける平行な間隔の空いたストランド間の第1の距離を指定する。m2は、平行ストランドの内側グループと外側グループとの間のより大きい第2の距離を指定し、m3は、平行ストランドの二つの内側グループ間のさらに大きい第3の距離を指定する。例えば、b=1mm、m1=1mm、m2=3mm、m3=8mm。
図17図13に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示し、ここで三つの層ごとに図16に示される層パターンを有する。
図18図11に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す。
図19図16に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す。
図20】一本のストランドによって離間された、五本の等距離の間隔の狭い平行ストランドの四つのグループを有する、本発明による間隔の空いたストランドのさらなる層パターンの略図を示す。
図21図20に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す。
図22】一本のストランドによって離間された、三本の及び五本の等距離の間隔の狭い平行ストランドのグループを有する、本発明による間隔の空いたストランドのさらなる層パターンの略図を概略的に示す。
図23図22に示される層パターンを使用した本発明による三次元構造体の上面図を概略的に示す。
図24図20及び図22に示される層パターンを使用した本発明による実際の三次元構造体の斜視図である。三次元構造体は、互いに60°及び120°で回転させた、図20に示されるような平行な間隔の空いたストランドの層パターンを有する三つの層を堆積させ、続いて互いに60°及び120°で回転させた、図22に示されるような平行な間隔の空いたストランドの層パターンを有する三つの層を堆積させ、構造体全体にわたってこの層堆積の方法を繰り返すことによって調製される。ストランド径b=1.2mm、間隔の空いたストランドのグループ内の平行な間隔の空いたストランド間の第1の距離m1=1.5mm、平行な間隔の空いたストランドのグループと一本のストランドとの第2の距離m2=5.5mm。
図25図24に示される三次元構造体の上面図である。
図26図24に示される三次元構造体の斜視図である。
図27a】最新技術のマイクロ押出三次元構造体の層の図である。
図27b】最新技術マイクロ押出三次元構造体の上面図である。
図28】反応器内の本発明のものではない触媒構造体の充填床にわたるガス流の考えられる流れパターンを示す図である。イラストはロボキャスティングによる三次元構造体(28b)及び(28c)の中央を迂回するガス流(28a)を示す。この場合、触媒三次元構造体の増加させた表面積は、三次元構造体の周囲のガス流のチャネリングに起因して完全に利用されていない。
図29】反応器内の図7~10による本発明の触媒構造体の充填触媒床にわたるガス流の流れパターンの図である。イラストは、印刷された構造体(29b)及び(29c)の中央に入るガス流(29a)を示す。(31d)は、六角形の三次元構造体の一つのより大きいチャネルを通過する流れを表す。この場合、各々の個々の三次元構造体にわたる低い圧力損失に起因して、増加させた表面積はガス流にアクセスしやすい。
図30】マイクロ押出三次元構造体の三つの層の垂直の重なりを示す図である。(b)はファイバー径、(d)は実施例1及び2で示されるような層の重なりである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の目的は、
a)触媒活性金属又は触媒支持粒子の金属、金属合金、金属化合物粒子の液体希釈剤中のペーストを調製するステップであって、金属、金属合金、又は金属化合物粒子を触媒支持体粒子上に支持させる又は触媒支持体粒子と混合させることができ、該ペーストが場合によりバインダー材料を含んでいてもよい、ステップと、
b)100μmを超える直径を有する一つ以上のノズルを通してステップa)のペーストを押出してストランドを形成させ、同じ又は異なる配向を有し互いに合同である又は合同ではない、直線状の間隔の空いた平行ストランドの連続した層状に押出ストランドを堆積させて三次元多孔性前駆体を形成させるステップと、
c)三次元多孔性前駆体を乾燥させて液体希釈剤を除去するステップと、
d)必要に応じて、三次元多孔性前駆体の金属酸化物を還元して触媒活性金属又は金属合金を形成させる、又はさらに熱処理して触媒活性材料を製造するステップと
を含む、触媒、触媒担体又は吸収性材料を含む積層ストランドの三次元多孔性触媒、触媒担体、又は吸収性構造体を製造する方法によってさらに実現される。
【0035】
本発明の三次元構造体の層パターン及び層組織は、各々の個々の三次元構造体にわたる圧力損失の著しい減少をもたらす。これは、本発明の三次元構造体で満たされた反応器にわたる、より低い圧力損失、及び個々の三次元構造体のランダム充填によって満たされた反応器床を通る、より均質な流れをもたらす。
【0036】
この点において、三次元構造体はストランドの少なくとも二つの積層された層でできた一体物である。
【0037】
一般に、ストランドは交互の層で互いに直交して又は斜めに堆積される。各々の連続した層のストランドの配向は、前の層に対してある特定の角度で、例えば60°、45°、又は36°で、時計回り又は反時計回りに回転していてもよい。異なる配向を有する平行ストランドの個々の層の重ね合わせにより、チャネルが三次元構造体に形成される。
【0038】
好ましくは、ストランドは多数の第1の層、第2の層、及び第3の層をそれぞれ含む連続した層状に堆積され、第1の層、第2の層、及び第3の層それぞれにおけるストランドは同じ配向を有し、第1、第2、及び第3の層は互いにそれぞれ0°、60°及び120°で配向している。好ましくは、三次元触媒構造体はこの場合六角形の断面を有するが、円形の断面を有していてもよい。
【0039】
さらなる実施形態において、ストランドは、第1、第2、第3、及び第4の層を含む連続した層で堆積され、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層におけるストランドは互いにそれぞれ0°、45°、90°、及び135°で配向している。好ましくは、三次元多孔性触媒構造体はこの場合八角形の断面を有するが、円形の断面を有していてもよい。
【0040】
三次元構造体は、任意の他の適切な断面、例えば三角形、正方形、五角形、又は円形の断面を有していてもよい。三角形の三次元多孔性触媒構造体は、互いにそれぞれ0°、60°及び120°で配向した一連の層を有していてもよい。五角形の三次元構造体は、互いにそれぞれ0°、36°、72°、108°、及び144°で配向した一連の層を有していてもよい。
【0041】
一実施形態において、各層の平行ストランドは一本の単一のストランドの一部として連続的に堆積された部分的なストランドであり、一本の単一のストランドは角を有し層の平面内でその方向を変える。
【0042】
好ましい実施形態において、三次元多孔性触媒構造体の外周は、三次元構造体の外周を画定する層のフレームを形成するストランドを、一部の層又はすべての層において、好ましくはすべての層において堆積させることにより作られる。したがって最外部のストランドはフレームの一部である。各層の積層されたフレームは三次元多孔性触媒構造体の固体の側壁をもたらす。
【0043】
さらに好ましい実施形態において、一部の層又はすべての層において、三次元多孔性触媒の外周を画定する層のフレームを形成するストランドが配列される。
【0044】
標準的な押出成形法においても使用される配合物は、原理上はペースト状懸濁液として適している。触媒前駆体材料の粒径がマイクロ押出ノズルに対して十分に小さいことが必要条件である。最大の粒子(d99値)はノズル径よりも好ましくは少なくとも5倍小さく、特に少なくとも10倍小さくあるべきである。
【0045】
適切な配合物はマイクロ押出に必要なレオロジー特性を示す。上記の文献は、適切なレオロジー特性をどのようにして成立させることができるかを詳細に記載している。必要に応じて、バインダー及び粘度調整添加剤、例えばデンプン又はカルボキシメチルセルロースなどを配合物へ加えてもよい。
【0046】
マイクロ押出可能なペースト状懸濁液は、好ましくは水を液体希釈剤として含有するが、有機溶媒も採用してもよい。懸濁液は、触媒活性組成物又は触媒活性組成物の前駆体化合物だけでなく無機支持材料又は不活性材料も含有していてもよい。特定の反応ではそれ自体が触媒活性である場合もある、一般に使用される支持材料又は不活性材料の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、珪藻土、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ヒドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、金属ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コージェライト、炭化物、窒化ホウ素、金属有機構造体、及びそれらの混合物である。
【0047】
本発明による方法は、支持材料又は不活性材料のみを本質的に含む成形体を製造するのにも使用してもよい。本発明による方法により製造されるそのような成形体を、次いで例えば含浸又はコーティング、及び場合によりさらなる熱処理ステップによって、さらなるステップにおいて触媒成形体へ転化させてもよい。
【0048】
触媒活性金属又は金属合金の、金属、金属合金、又は金属酸化物粒子は、ロボキャスティング法において採用することができ、機械的に安定な触媒活性の構造体を得るための、1000℃を超える温度での処理又は焼結ステップは不要である。
【0049】
無機酸化物触媒支持粒子上に支持された又は無機酸化物触媒支持粒子と混合された、金属、金属合金、又は金属酸化物を採用する場合、1000℃を超える温度での温度処理が不要であるので、触媒活性金属又は金属合金の高い分散性を得ることができる。多くの場合、そのような温度処理は触媒活性金属又は合金の分散性の低下につながる。
【0050】
触媒活性金属が酸化物の形態である、既製の支持触媒の粉末は、適切であれば、それらの特性、例えば触媒支持体上の活性金属の分散性を著しく変化させることなく、ロボキャスティング法において成形することができる。上記の既知の方法によれば、支持触媒はロボキャスティング及び焼結のみの終了時に得られた。
【0051】
ロボキャスティング法は、通常の押出物と比較して向上した外表面積を有する、積層触媒ファイバーの三次元多孔性触媒構造体の製造を可能にする。
【0052】
これは、水素化反応、酸化反応、又は脱水反応のような拡散律速反応において、向上した外表面積に起因するより高い活性及び選択性につながる。
【0053】
水素化反応の例は、ブタナールからブタノールの水素化反応又はブチンジオール水素化である。
【0054】
さらに、酸化反応、例えばエチレンオキシド反応のような、熱輸送律速反応を想定することができる。
【0055】
低い圧力損失が可能であり、そのため単一の押出物と比較してより小さいファイバー径を扱う作業を可能にする。
【0056】
積層触媒ストランドの三次元多孔性触媒は、不規則充填反応器床において又は反応器の構造化充填物において使用できる。
【0057】
本発明は、本発明の積層触媒ストランドの三次元多孔性触媒を含む、不規則充填触媒床にも関する。
【0058】
本発明は、本発明の積層触媒ストランドの三次元多孔性触媒を含む、反応器の構造化充填物にも関する。
【0059】
既製の触媒の粉末から出発する場合、触媒支持体上の元の活性金属(酸化物)の分散性を維持することができる。
【0060】
本発明に従って採用される3Dロボキャスティング技術は、十分に確立されており、米国特許第7,527,671号、米国特許第6,027,326号、米国特許第6,401,795号、Catalysis Today 273 (2016)、234~243頁、又はJournal of Catalysis 334 (2016)、110~115頁、又は米国特許第6,993,406号に記載されるように実施することができる。
【0061】
粒径が押出成形ノズルを通過するのに十分小さいならば、標準的な押出成形技術で現在使用されているペーストに基づいていてもよい触媒配合物と共に3Dロボキャスティング技術を使用できる。押出成形配合物又はペーストは、予備成形された触媒材料、例えば酸化ニッケル粒子が既に存在しているニッケル澱物を含有している。必要に応じて、バインダーを押出成形混合物へ加えてもよい。
【0062】
ロボキャスティング技術は、0.2mmを超える、好ましくは0.5mmを超える直径を有する一つ以上のノズルを通して押出することを伴う。特に好ましくは、ノズルの直径は0.75mm~2.5mm、最も好ましくは0.75mm~1.75mmの範囲内であるべきである。ノズルは、例えば円形、楕円、正方形、星形、ローブ形の、任意の所望の断面を有していてもよい。最大直径は、非円形断面の最大直径である。マイクロ押出の主な基準の一つは、マイクロ押出技術における適正なレオロジー特性を有する押出可能なペーストを使用することである。上記の文献は、要求されるレオロジー特性をどのようにして得るかについて詳細なアドバイスを示している。
【0063】
必要に応じて、本発明による方法において、粘度調整剤を採用することができる。典型的な粘度調整剤は、カルボキシメチルセルロースのようなセルロースである。好ましくは、粘度調整剤又はポリマーは採用されない。
【0064】
すべての商業的に採用される無機酸化物触媒支持粒子は、本発明に従って採用されてもよい。好ましくは、無機酸化物触媒支持体は、珪藻土、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ヒドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コージェライト、炭化物、窒化物、又はそれらの混合物若しくはブレンドから成る群から選択される。
【0065】
上記の商業的に採用される無機酸化物触媒支持粒子(又はそれらの混合物)に加えて、無機酸化物支持体(又はそれらの混合物)の一部として、又は指示構造体上のさらなるコーティングとして、又はいくつかの連続コーティングとして、触媒活性材料を加えてもよい。この触媒活性材料は、すべての成分が触媒活性ではなくても、以下の元素:Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、及びCeのいくつかで構成されていてもよい。
【0066】
支持体の量を基準とした、触媒活性金属又は金属合金の量は、好ましくは0.1~95wt.-%、より好ましくは3~75wt.-%、最も好ましくは8~65wt.-%の範囲内である。
【0067】
本発明による方法のステップa)で調製される懸濁液ペーストは、好ましくは1~95wt.-%、より好ましくは10~65wt.-%の固形分を有する。
【0068】
必要に応じて、金属(酸化物)及び/又は支持粒子を共に結合させるためのバインダー材料を懸濁液ペーストにおいて採用することができる。好ましいバインダー材料は、粘土、アルミナ、シリカ、又はそれらの混合物などの無機バインダーの群から選択される。
【0069】
懸濁液ペーストにおけるバインダー材料の量は、濁液ペーストを基準として、好ましくは0.1~80wt.-%、より好ましくは1~15wt.-%の範囲内である。
【0070】
多くの場合、懸濁液において有機バインダー材料をさらに使用することは、それらの使用が本発明に従って可能ではあるが、必要ではない。したがって、好ましくは有機バインダー材料は懸濁液中に存在しない。
【0071】
ここで採用される用語「多孔性」は、三次元構造体が材料の固体のブロックではなく、チャネル及び/又は細孔を含有することを定義している。
【0072】
多孔性は好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%であり、好ましくは20~90%の範囲内であってもよく、Hg-PV及びHe-密度によって決定できる。これは以下の式によって決定できる。多孔性(%)=100-[(マイクロ押出構造体全体の密度/ファイバー材料の密度)×100]。マイクロ押出構造体全体の密度は、その全重量をその全体積で割ることによって決定される。ファイバー材料の密度は、Hg-PV及びHe-密度を測定することにより決定できる。
【0073】
ファイバーから形成される格子又は骨格は自立するので、ファイバー間の空いた空間が残り、これが多孔性をもたらす。それぞれの構造は上記の文献で見ることができる。
【0074】
本発明に従って採用されるロボキャスティング法は、3Dファイバー堆積と記載されることもある。
【0075】
3DFDとも呼ばれるマイクロ押出成形の概要
【0076】
3Dファイバー堆積(3DFD)は、触媒、触媒担体、又は吸収性材料の粉末を成形するのに使用される。3DFD法は、高充填されたペーストが移動するノズルによって押出される、適応性のある製造方法である。押出成形ヘッドの動きをx、y、及びz-方向にコンピューター制御することにより、多孔性材料は、押出ファイバー又はストランドから層ごとに製造することができる。乾燥後、多孔性材料を熱により乾燥させてもよい。
【0077】
この技術の主な利益は、多孔性パラメーター(ファイバー厚さ、ストランド間距離、及び積層デザイン)に関する自由度である。
【0078】
3DFD技術の典型的なフローチャートは、以下のステップから成る:
粘性の高いペーストを調製する
細いノズルを通して押出する
ファイバーをコンピューター制御により堆積させて多孔性の周期的構造体を形成させる
乾燥及び必要に応じて還元させる
【0079】
粉末を溶媒/希釈剤(例えば水)と、必要に応じてバインダー及び添加剤と共に混合し、それにより粘性のペーストを得る。均質のペーストを得るための良好な混合(凝集又は気泡の取り込みを最小限にする)は、スムーズで再現性のあるプロセスにおいて必要条件である。機能性材料の粉末添加量は、比表面積、粒径分布、及び粉末モルフォロジーによって決まる。一般に、粉末の粒径が減少すると、ペーストの粘度は増加することになる。したがって固体添加量はこれらの粉末については低くする必要がある。有機、又は好ましくは無機バインダーとは別に、ペーストのレオロジー的挙動を制御するためにレオロジー改質剤を加えることができる。場合によって、ペースト中の気泡を避けるために消泡剤も添加される。
【0080】
室内条件(又は制御された雰囲気下及び温度下)で乾燥後、必要に応じて3DFD構造体を還元させる。1000℃を超える温度での焼成又は焼結は不要である。
【0081】
積層ファイバーの三次元構造体は熱処理に起因して収縮することがある。この収縮は「グリーン」触媒体の印刷サイズの5~50%の範囲内である可能性がある。
【0082】
積層触媒ファイバーの三次元構造体は、規則的な繰り返しの積層パターン(周期的に構造化された触媒)で押出ファイバーを堆積させて、三次元構造化多孔性触媒前駆体を形成させることにより、三次元的に構造化される。
【0083】
押出物の方向が変化する位置又は押出物が堆積される層は、所望のストランド径よりも大きい径を有していてもよい。望ましくはないが、印刷スピードの変化に起因して、個々のストランドの径は成形体の平行な断面において変化することがある。
【0084】
ファイバー又はストランドは好ましくは0.2 mm~2.5 mm、より好ましくは0.5mm~2mm、最も好ましくは0.75mm~1.75mmの厚さを有する。
【0085】
それらは好ましくはより小さい第1の距離及びより大きい第2の距離によって互いに空間的に離間され、第1の距離は式:
m1=b*d
によって決定され、式中、ファイバー間の第1の距離(m1)は、ストランド径bに係数dをかけることにより決定され、ここでdは0.25~2、より好ましくは1~2である。
【0086】
より大きい第2の距離は、式:
m2=m1*e
によって計算され、式中、m2は第2のストランド間距離の少なくとも一つであり、eは2~10、好ましくは2~6である。
【0087】
さらに、式:
mx=m1*e
によって表されるように、(x)の数の間隔が三次元構造体に存在していてもよく、式中、mxは後続するストランド間距離の少なくとも一つであり、eは2~10、好ましくは2~6である。
【0088】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【0089】
圧力損失シミュレーション
【0090】
[実施例1~3]
圧力損失と触媒三次元構造体の形状との相関を、固体触媒構造の間の空隙における流れを完全に分析する、数値流動シミュレーション(計算流体力学、CFD)により計算した。CFDシミュレーションは、複雑な3D形状における圧力損失を計算するための標準的なツールである。最初に、3Dマイクロ押出(ロボキャスティングされた)触媒三次元構造体の形状を作る。この目的のために、単一の触媒体のCAD(コンピューター支援設計)モデルをCADプログラムにより作る。内部圧力損失の計算のために、三次元構造体の周りの迂回流を排除するように、多孔性三次元構造体をちょうど同じ断面を有する管内に仮想的に置いた。周囲温度及び様々なガス空間速度(GHSV、gas hourly space velocity)での気流をシミュレートすることにより、圧力損失計算を行った。1barの一定の操作圧力及び20℃の温度における熱力学的特性及び空気の輸送特性の値を科学文献から引用した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27a
図27b
図28
図29
図30