IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ウレタン形成性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20250109BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20250109BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/10
C08L75/04
C08K5/3472
C08K5/07
C08J5/18 CFF
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020031952
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134288
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 義久
(72)【発明者】
【氏名】大浜 俊生
(72)【発明者】
【氏名】大谷 泰歩
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314488(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026751(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152094(WO,A1)
【文献】特表2016-534181(JP,A)
【文献】特開2016-132724(JP,A)
【文献】特開昭60-104120(JP,A)
【文献】特開昭54-090339(JP,A)
【文献】特開2020-110960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)及びアセト酢酸エチル又はアセチルアセトンのいずれか1種以上のケトエノール互変異性化合物(E)を含むウレタン形成性組成物(G)であって、該ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下、且つ
ウレタン化触媒(D)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下、且つ
ケトエノール互変異性化合物(E)の含有率が0.5質量%以上10質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/ウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上であり、
ケトエノール互変異性化合物(E)/ウレタン化触媒(D)のモル比率が50倍~5000倍の範囲であり、
前記ウレタン形成性組成物(G)中に酸遅延剤(F)を含むことを特徴とする、ウレタン形成性組成物(G)。
【請求項2】
ウレタンプレポリマー(H)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)及びアセト酢酸エチル、アセチルアセトンのいずれか1種以上のケトエノール互変異性化合物(E)を含むウレタンプレポリマー組成物(I)であって、
ウレタンプレポリマー(H)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つの水酸基を有し、
前記ウレタンプレポリマー(H)を形成する、ポリオール(A)の有する水酸基の総和(MOH)に対する前記ポリイソシアネート化合物(B)の有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)が1.0未満であって、
該ウレタンプレポリマー組成物(I)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下、ウレタン化触媒(D)の含有率が0質量%を超えて0.5質量%以下、ケトエノール互変異性化合物(E)の含有率が0.5質量%以上10質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上であり、ケトエノール互変異性化合物(E)/ウレタン化触媒(D)のモル比率が50倍~5000倍の範囲である、ことを特徴とするウレタンプレポリマー組成物(I)。
【請求項3】
トリアゾール誘導体(C)がベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、請求項2に記載のウレタンプレポリマー組成物(I)。
【請求項4】
ベンゾトリアゾール誘導体がフェノール性水酸基を1つ以上有することを特徴とする、請求項2乃至請求項3に記載のウレタンプレポリマー組成物(I)。
【請求項5】
前記トリアゾール誘導体(C)/前記金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が25倍以上200倍以下である請求項2~請求項4に記載のウレタンプレポリマー組成物(I)。
【請求項6】
前記ウレタンプレポリマー組成物(I)中に酸遅延剤(F)を含むことを特徴とする、請求項2~請求項5のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)。
【請求項7】
請求項2~請求項6のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)と有機溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液(K)であって、
該ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)中のウレタンプレポリマー組成物(I)の濃度が10質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタンプレポリマー組成物溶液(K)。
【請求項8】
請求項2~請求項6のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)とポリイソシアネート化合物(J)とを含むウレタン形成性組成物(G)。
【請求項9】
請求項7に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液(K)とポリイソシアネート化合物(J)とを含むウレタン形成性組成物溶液(L)。
【請求項10】
請求項8に記載のウレタン形成組成物(G)又は請求項9に記載のウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物(G)の反応物であるポリウレタン(M)。
【請求項11】
請求項10に記載のポリウレタン(M)からなるポリウレタンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタン形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン化反応の反応性、硬化性を高めるための手法として、触媒として種々の有機金属触媒が用いられている。
【0003】
しかしながら、このように硬化性を高めるため有機金属触媒を用いて多官能のポリオールと多官能イソシアネートを硬化させる際には収縮によるシワが発生しやすく、安定的に平滑で良好な外観のポリウレタンが得られないという問題が生じ、更にこのような触媒系はウレタン化反応に対する活性が高く、それを用いたウレタン形成性組成物は昇温時や乾燥時、エージングなどで急激にゲル化するため成形性が悪いという課題があった。
【0004】
ここで、特許文献1ではウレタンの硬化収縮を抑制する手法として可塑剤を用いる手法が開示されている。しかしながら、可塑剤を用いる手法では低分子量の化合物を多く使用する必要がありコストが上昇するとともに、ほぼ全量がポリウレタン中に残存するため、得られるポリウレタンの硬化性が悪化したり、硬度が低下しウレタンとしての特性が損なわれるという課題があった。
【0005】
すなわち、有機金属触媒を用いて多官能のポリオールとイソシアネートの反応・硬化時の収縮を抑制でき、硬化性、成形性が良好であって、得られるポリウレタンの硬度等の特性を損なうことなく、シワがない平滑で良好な外観となるウレタン形成性組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6628453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、有機金属触媒を用いても硬化収縮を抑制し、硬化性、成形性が良好で合って、硬度等の物性が良好でシワがない平滑で良好な外観のポリウレタンの形成に資するウレタン形成性組成物、および、ウレタン形成性組成物を含むウレタン形成性組成物溶液を提供することに向けられている。
【0008】
本発明の更に他の態様は、該ポリウレタンからなるポリウレタンシートを提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、トリアゾール誘導体と特定のウレタン化触媒を組み合わせ、且つその特定のウレタン化触媒に対してトリアゾール誘導体を特定のモル比率以上の過剰の割合で作用させることによって、驚くべきことに硬化性を維持しつつシワによる外観不良の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の各態様は以下に示す[1]~[18]である。
[1]ポリオール(A)、イソシアネート化合物(B)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含むウレタン形成性組成物(G)であって、
該ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下、且つ
ウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上である、ことを特徴とするウレタン形成性組成物(G)
[2]トリアゾール誘導体(C)がベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、[1]に記載のウレタン形成性組成物(G)
[3]トリアゾール誘導体(C)がフェノール性水酸基を1つ以上有するベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、[1]乃至[2]に記載のウレタン形成性組成物(G)
[4]前記ウレタン形成性組成物(G)中にケトエノール互変異性化合物(E)を必須成分として含み、
ケトエノール互変異性化合物(E)にアセト酢酸エチル、アセチルアセトンのいずれか1種以上を必須成分として含むことを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のウレタン形成性組成物(G)
[5]前記ウレタン形成性組成物(G)中に酸遅延剤(F)を必須成分として含むことを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載のウレタン形成性組成物(G)
[6][1]~[5]のいずれかに記載のウレタン形成性組成物(G)と有機溶媒を含むウレタン形成性組成物溶液(L)であって、
該ウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物(G)の濃度が10質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタン形成性組成物溶液(L)
[7][1]~[5]のいずれかに記載のウレタン形成組成物(G)、[6]に記載のウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物(G)の反応物であるポリウレタン(L)
[8][7]に記載のポリウレタン(M)からなるポリウレタンシート
[9]ウレタンプレポリマー(H)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含むウレタンプレポリマー組成物(I)であって、
ウレタンプレポリマー(H)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つの水酸基を有し、
前記ウレタンプレポリマー(H)を形成する、ポリオール(A)の有する水酸基の総和(MOH)に対する前記イソシアネート(B)の有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)が1.0未満であって、
該ウレタンプレポリマー組成物(I)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下
ウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上である、ことを特徴とするウレタンプレポリマー組成物(I)
[10]トリアゾール誘導体(C)がベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、[9]記載のウレタンプレポリマー組成物(I)
[11]トリアゾール誘導体(C)がフェノール性水酸基を1つ以上有するベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、[9]乃至[10]に記載のウレタンプレポリマー組成物(I)
[12]前記ウレタンプレポリマー組成物(I)中にケトエノール互変異性化合物(E)を必須成分として含み、
ケトエノール互変異性化合物(E)にアセト酢酸エチル、アセチルアセトンのいずれか1種以上を必須成分として含むことを特徴とする、
[9]~[11]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)
[13]前記ウレタンプレポリマー組成物(I)中に酸遅延剤(F)を必須成分として含むことを特徴とする[9]~[12]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)
[14][9]~[13]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)と有機溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液(K)であって、該ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)中のウレタンプレポリマー組成物(I)の濃度が10質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタンプレポリマー組成物溶液(K)
[15][9]~[13]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(I)とイソシアネート化合物(J)とを含むウレタン形成性組成物(G)
[16][14]に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液(K)とイソシアネート化合物(J)とを含むウレタン形成性組成物溶液(L)
[17][15]に記載のウレタン形成組成物(G)、[16]に記載のウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物(G)の反応物であるポリウレタン(M)
[18][17]に記載のポリウレタン(M)からなるポリウレタンシート
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタン形成性組成物は、ポリウレタンを得るために、塗工機などで塗工する際の成形性が良好で、有機金属触媒を用い高い硬化性を発現するにも係わらず硬化収縮を抑制でき、硬度等の物性が良好で、シワがない平滑な外観のポリウレタンを形成できる。
【0012】
また、本発明のウレタン形成性組成物を用いることで得られたポリウレタンは、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤など幅広い用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための例示的な態様を詳細に説明する。
【0014】
本発明の一態様にかかるウレタン形成組成物(G)は、ポリオール(A)、イソシアネート化合物(B)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含むウレタン形成性組成物(G)であって、該ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下、且つウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つトリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上である。
【0015】
以下、各成分について説明する。
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は、ポリウレタンの製造に用いられる市販のポリオールが挙げられる。特に限定されないが、例えば、アルキレンオキシドやテトラヒドロフランの開環重合等により得られるポリエーテルポリオール類、ポリエーテルポリオール中でビニルモノマーをラジカル重合して得られるポリマーポリオール類、多価アルコールと多価カルボン酸類との重縮合により得られるポリエステルポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類とアミノアルコール類との重縮合により得られるポリエステルアミドポリオール類、ラクトン類の開環重合により得られるポリラクトンポリオール類、多価アルコール類とカーボネート類との重縮合により得られるポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物類、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物類、部分鹸化エチレン-酢酸ビニル共重合体、大豆油やひまし油等の天然油系ポリオール類、ハロゲン及び/又はリン系ポリオール、フェノール系ポリオール等が挙げられる。これらポリオールは、一種又は二種以上混合して使用してもよい。
【0016】
なかでも、シワ等の外観不良は発生しやすいもののトリアゾール誘導体の添加により抑制しやすく、汎用性が高く入手が容易であり、透明性や硬度を始めとした良好な物性バランスを発現しやすいため、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールの何れか1種以上を含むことが好まし。ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールの割合としては、ポリオール100重量部中、10~100重量部の範囲であることが好ましい。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸と多価アルコールより誘導される化合物が挙げられる。特に限定されないが、例えば、アジピン酸、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、リノシール酸、ジメチルテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから誘導されるポリエステルポリオール等が挙げられる。また、ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンジアミン、トリレンジアミン、シュークロース、アミノアルコール、ブタノール、グリセリン、ジエチレングリコール、分子量1000以下の低分子量ポリプロピレングリコール等の開始剤に対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドやテトラヒドロフランを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオール化合物が挙げられる。ポリエーテルポリオールを用いる場合、特に限定されないが成形性と透明性が良くなりやすいためエチレンオキシド残基、プロピレンオキシド残基の何れか1種以上を有することが好ましい。
【0019】
ハロゲン及び/又はリン系ポリオールとしては、例えば、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、ブロモ化ペンタエリスリトール/シュークロース系ポリオール、テトラブロモフタル酸ポリエステル等のハロゲン系ポリオール、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン系ポリオール等が挙げられる。
【0020】
フェノール系ポリオールとしては、例えば、フェノール、又はノニルフェノール、アルキルフェノール等のフェノール誘導体をホルムアルデヒドとジエタノールアミン等の2級アミンやアンモニア、1級アミン等を用いてマンニッヒ変性し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを開環付加重合して得られるマンニッヒ系ポリオール等が挙げられる。
【0021】
ポリオールとしては、ポリマー末端、分岐鎖末端等に少なくとも1個の水酸基を有していればよく、特に限定されないが、イソシアネート化合物との反応によって得られるポリウレタンの架橋構造が密になり、シワ等の外観不良は発生しやすいもののトリアゾール誘導体の添加により抑制することができ、得られるウレタンの透明性や高い硬度を始めとした良好な物性バランスを発現しやすいため分子中に2~8個の水酸基を有していることが好ましく、さらに好ましくは入手が容易で設計の幅が広く汎用性が高いため分子中に2~4個の水酸基を有しているポリオールであり、最も好ましくは3個の水酸基を有している多官能ポリオールである。ポリオールの平均官能基数が1.0以上2.0未満の場合、イソシアネート官能基数が3以上の多官能のイソシアネートを用いること、必要に応じて水やジアミンなどのイソシアネートと反応する活性水素を2つ以上有する成分を含むことで、架橋構造が密になり好ましい。
【0022】
特に限定されないが、ポリウレタン原料としては、なかでも水酸基価1~1000(mgKOH/g)が好ましく、さらに好ましくは10~800(mgKOH/g)の範囲である。なお、水酸基価はJIS K1557の方法などに従って算出できる。
【0023】
ポリオール(A)の分子量としては、特に限定されないが硬化性と成形性が優れやすいため水酸基価と官能基数より算出した数平均分子量が100~50000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは500~10000の範囲である。

<イソシアネート化合物(B)、(J)>
イソシアネート化合物(B)、(J)は、特に限定されないが、ポリウレタンの製造に用いられる市販のイソシアネートが挙げられ、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネートー4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、それらとポリオールとの反応によるイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらの二種以上の混合物等が挙げられる。さらに、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体(多核体と称されることもある)も包含される。これらのイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
イソシアネート化合物(B)、(J)は、ポリマー末端、分岐鎖末端等に少なくとも1個のイソシアネート基を有していればよく、特に限定されないが、ポリオールとの反応によって得られるポリウレタンの架橋構造が密になり、シワ等の外観不良は発生しやすいもののトリアゾール誘導体の添加により抑制することができ、得られるウレタンの透明性や高い硬度を始めとした良好な物性を発現しやすいため、イソシアネート基の平均官能基数が2.0以上であれば好ましい。
【0025】
イソシアネート基の平均官能基数が1.0以上2.0未満の場合、ポリオール官能基数が3以上の多官能のポリオールを用いること、また必要に応じてポリイソチオシアネートなどポリオールと反応する多官能成分を含むことで、架橋構造が密になり、好ましい。
【0026】
イソシアネート化合物(B)の含有量としては、少ないと硬度が低下する場合があり、多いと成形性が悪化したり、トリアゾール誘導体を添加してもシワを抑制しにくい場合があるため、ポリオール100重量部に対して0.1~300重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは塗膜外観と成形性を両立しやすいため、ポリオール100重量部に対して1~50重量部の範囲である。ポリウレタンフォーム製品を製造する場合はポリオール100重量部に対して10~300重量部の範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いるポリオール(A)とイソシアネート化合物(B)等の各原料の一部を予め反応させ、ウレタンプレポリマー(H)を形成していてもよく、必要に応じて触媒や各添加剤を含むウレタンプレポリマー組成物(I)や更に溶剤を含むウレタンプレポリマー組成物溶液(K)を形成することもできる。
【0028】
イソシアネート化合物(B)を含む組成物を用いてウレタンプレポリマー(H)を形成する場合、プレポリマー形成後に架橋剤としてイソシアネート化合物(J)を加えることでウレタン形成性組成物(G)を製造することができる。

<トリアゾール誘導体(C)>
ウレタン形成性組成物(G)は、トリアゾール誘導体(C)を含有することを特徴とする。ウレタン形成性組成物中にトリアゾール誘導体(C)を含むことで、金属触媒を用い多官能ウレタン原料を反応硬化させる際に発生する硬化収縮を安定的に抑制し、良好な成形性でシワのない良好な外観のウレタンを形成することができる。更には得られるウレタンが高い硬度となり、良好な透明性を発現しやすい。
【0029】
これはトリアゾール誘導体(C)が金属触媒へ作用し、乾燥・エージング等での硬化反応時の反応性を抑制することで多官能ポリオールとイソシアネートの急激な硬化による収縮を抑制するとともに、反応が均一に進行し反応完結後の架橋度が高くなるため、得られるウレタンが高い硬度と良好な透明性を発現するものと考えられる。
【0030】
ウレタン形成性組成物中にトリアゾール誘導体(C)を含まない場合、高官能基数のポリオールやイソシアネートを用い、且つ金属触媒を用いてウレタンを形成する際に加工条件の影響が軽微で安定的にシワのない良好な塗膜外観のウレタンを形成することが困難であるとともに、透明性が悪化しやすく使用が困難である。
【0031】
ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の含有量は0.1質量%以上3.0質量%以下である。なかでも、より高透明で良好な塗膜外観を形成しやすいため、トリアゾール誘導体(C)の含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3質量%以上1.5質量%以下である。
【0032】
ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の含有量が0.1質量%未満ではシワの抑制効果が低く良好な塗膜外観のウレタンの安定的な形成が困難となり、3質量%を超えると保存時に相分離を起こしやすく加工性が悪化するとともに、相溶性が悪化して得られるウレタンの透明性悪化や塗工ムラにより外観不良となったり、ゲル分率が低下しタック発現や硬度等の物性が悪化するため使用が困難となる。
【0033】
ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)の金属成分を含むウレタン化触媒(D)に対するトリアゾール誘導体(C)のモル比率(トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D))は7倍以上である。なかでも、良好な相溶性を維持してより高い透明性が発現しやすく、且つシワの抑制効果が高く塗膜外観も優れやすいため、金属成分を含むウレタン化触媒(D)に対するトリアゾール誘導体(C)のモル比率(トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D))は10倍以上500倍以下であることが好ましく、更に好ましくは15倍以上300倍以下であり、最も好ましくは乾燥・硬化条件によらずより安定的にシワを抑制しやすいため25倍以上200倍以下である。
【0034】
金属触媒に対するトリアゾール誘導体(C)のモル比率が7倍を下回ると、金属触媒へ作用するトリアゾール誘導体のモル比率が相対的に少なくなるため、金属触媒の反応活性の調整作用が小さく、硬化収縮によるシワの抑制が困難となり良好な塗膜外観のウレタンの形成が得られないため使用が困難である。
【0035】
ウレタン形成性組成物(G)中のトリアゾール誘導体(C)としては、5員環に3つの窒素原子を含むトリアゾール構造を含んでいれば、特に限定されない。トリアゾール誘導体のように3つの窒素原子を含まない化合物では、金属触媒へ窒素が適度に配位して昇温時や乾燥、エージング時の触媒活性が温和になる影響と考えられる硬化収縮の抑制効果が小さく、安定的にシワのない良好な塗膜外観のウレタンの形成が困難である。
【0036】
トリアゾール誘導体(C)としては、例えば、1,2,4-トリアゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール誘導体が挙げられ、好適に使用できる。
【0037】
なかでも、硬化収縮の抑制効果が高く、良好な塗膜外観のウレタンを形成しやすいため、1,2,3-トリアゾール誘導体の1種であるベンゾトリアゾール誘導体を1種以上含むことが好ましい。また、ベンぞトリアゾール誘導体は、シワの抑制効果が高くなりやすいためフェノール性水酸基を1つ以上有することが好ましく、イソシアネートと反応して失活しにくく安定的にシワを抑制しやすいため、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有することが更に好ましい。フェノール性水酸基のオルト位に有することが好ましい置換基としては、t-ブチル基などの4級の置換基やトリアゾリル基などの3級の置換基、メチレン基などの2級の置換基などが挙げられる。またトリアゾール誘導体を液状化しやすく、相溶性が良く塗工ムラが発生しにくく透明な外観のウレタンを形成しやすいためフェノール性水酸基のパラ位にアルキル基やエステル基を有することが好ましい。
【0038】
トリアゾール誘導体(C)は、硬化時の揮発やウレタンからのブリードがしにくくシワの抑制効果が高くなりやすく、また相溶性が良好で得られるウレタンの塗工ムラが発生しにくく透明な外観のウレタンを形成しやすいため、分子量100~2000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは分子量200~1000の範囲であり、最も好ましくは分子量300~700の範囲である。特に限定されないが、これらトリアゾール誘導体(C)は相溶性に優れやすく、より得られるウレタンの透明性等の塗膜外観が良好となりやすいため室温で液状であることが好ましい。必要に応じて液状とするためトリアゾール誘導体に対し10質量%以下の微量の希釈剤を含んでもよい。
【0039】
特に限定されないが、1,2,4-トリアゾール誘導体としては、下記一般式(1)で示す化合物が挙げられる。またこれらの互変異性体も含む。
【0040】
【化1】
【0041】
(式(1)中、R1、R2及びR3は、特に限定されず、置換基の種類、有無は任意に選ぶことができる。)
R1、R2及びR3は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール又はアルキル置換アリール基、ヘテロアリール又はアルキル置換ヘテロアリール基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ポリオキシアルキレン基、水素などが挙げられる。
【0042】
上記化合物としては、例えば、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール等が挙げられ、好適に使用できる。
【0043】
特に限定されないが、1,2,3-トリアゾール誘導体としては、下記一般式(2)で示す化合物が挙げられる。またこれらの互変異性体も含む。
【0044】
【化2】
【0045】
(式(2)中、R1、R2及びR3は、特に限定されず、置換基の種類、有無は任意に選ぶことができる。)
R1、R2及びR3は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール又はアルキル置換アリール基、ヘテロアリール又はアルキル置換ヘテロアリール基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ポリオキシアルキレン基、水素などが挙げられる。また式中のR1、R2は独立していても、結合しアリールやヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニルといった環を形成してもよい。
【0046】
ベンゾトリアゾール誘導体としては、1,2,3-トリアゾール誘導体であって、トリアゾールの4位と5位の炭素を含むベンゼン環構造を有する化合物であり、特に限定されないが、下記一般式(3)で示す化合物が挙げられる。またこれらの互変異性体も含む。
【0047】
【化3】
【0048】
(式(3)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、特に限定されず、置換基の種類、有無は任意に選ぶことができる。)
R1、R2、R3、R4及びR5は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール又はアルキル置換アリール基、ヘテロアリール又はアルキル置換ヘテロアリール基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ポリオキシアルキレン基、水素などが挙げられる。なかでも、シワの抑制効果が高く安定的に良好な塗膜外観となりやすいため、R5にフェニル環構造を直結して有することが好ましい。
【0049】
上記化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2‘-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール(城北化学工業製TT-LYK)、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール(城北化学工業製TT-LX)、カルボキシベンゾトリアゾール(城北化学工業製CBT-1)、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(城北化学工業製BT-LX)、1,2,3-ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6‘-tert-ブチル-4’-メチル-2,2‘-メチレンビスフェノール(城北化学工業製JAST-500)、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](城北化学工業製JF-832)、2-(2‘-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学工業製JF-83)、2-(2‘-ヒドロキシ-3’,5‘-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学工業製JF-80)、2-(2’-ヒドロキシ-3‘-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(城北化学工業製JF-79)、2-(2‘-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学工業製JF-77)などが挙げられる。
【0050】
フェノール性水酸基を有するベンゾトリアゾール誘導体としては、上記一般式(3)中のR1、R2、R3、R4、R5のいずれか1つ以上にフェノール性水酸基を含む化合物が挙げられる。フェノール性水酸基はベンゼン環に直結した水酸基を指し、上記フェノール性水酸基を含むアリール基はベンゾトリアゾールに直結していても、直結していなくてもよいが、トリアゾールの金属への配位を促進し反応性を調整しシワを抑制しやすいため、フェノール性水酸基を含むアリール基がベンゾトリアゾールに直結していることが好ましい。
【0051】
なかでも、イソシアネートとフェノール性水酸基が反応しにくくシワ抑制効果が高くなりやすいためフェノキシ基のオルト位とトリアゾール窒素が直結した化合物であることが更に好ましく、特に限定されないが、下記一般式(4)で示す化合物が挙げられる。またこれらの互変異性体も含む。
【0052】
【化4】
【0053】
(式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は特に限定されず、置換基の種類、有無は任意に選ぶことができる。)
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール又はアルキル置換アリール基、ヘテロアリール又はアルキル置換ヘテロアリール基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ポリオキシアルキレン基、水素などが挙げられる。なかでも一般式中のR8はt-ブチル基などの4級の置換基やトリアゾリル基などの3級の置換基、メチレン基などの2級の置換基であることが更に好ましく、液状化させやすいためR6にアルキル基やエステル基などの置換基を有することが好ましい。
【0054】
上記化合物としては、特に限定されないが、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製チヌビン571)、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロピオン酸の炭素数7~9のアルキルエステル)(BASF製チヌビン99-2)などが挙げられ、シワの抑制に最も好適に使用できる。

<金属成分を含むウレタン化触媒(D)>
ウレタン化触媒(D)は金属成分を含む。
【0055】
アミン触媒など金属成分を含まないウレタン化触媒のみを用いた場合や無触媒系など、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含まない場合、トリアゾール誘導体(C)が触媒として作用する金属へ配位しえず、硬化収縮によるシワの抑制効果が得られないため使用が困難であり、また空気中の水分とイソシアネートとの泡化反応(ウレア化反応)などの副反応が進行しやすく、気泡で塗膜外観が悪化したり、均一な架橋構造を形成せずダングリング鎖を形成して硬化性や透明性を悪化させる場合があるため、使用が困難である。
【0056】
ウレタン形成性組成物(G)中の金属成分を含むウレタン化触媒(D)の含有量は、0.001質量%以上0.5質量%以下である。特に限定されないが、より成形性が良好となり得られるウレタンの塗膜外観が良好となりやすいため、金属成分を含むウレタン化触媒(D)の含有量は0.001質量%~0.1質量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.005質量%~0.07質量%の範囲である。
【0057】
金属成分を含むウレタン化触媒(D)の含有量が0.5質量%を超えると、硬化反応が早くなりすぎて成形性が悪化するとともに、シワを助長しやすくシワの抑制に必要なトリアゾール誘導体(C)の必要量が多くなりすぎて相溶性の悪化や得られるウレタンの硬度や透明性が悪化するため、使用が困難である。
【0058】
金属成分を含むウレタン化触媒(D)としては、金属成分を含みウレタン化活性を示す化合物であれば特に限定されないが、Fe、Sn、Zr、Ti、Alのいずれか一つ以上の金属を含む有機金属化合物であることが好ましい。なかでも、入手が容易であり触媒活性の温度依存性が低いSn触媒、ならびに反応性を調整しやすいFeキレート触媒、Zrキレート触媒、Tiキレート触媒、Alキレート触媒等の金属キレート触媒の1種または2種以上であると、トリアゾール誘導体を添加時にシワを抑制しやすいため更に好ましく、最も好ましくはSn触媒またはFeキレート触媒を単独で使用することである。
【0059】
Sn触媒としては特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジバーサテート、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
【0060】
特に限定されないが、例えば、Feキレート触媒としてはトリスアセチルアセトネート鉄等、Zrキレート触媒としてはジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等、Tiキレート触媒としては、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等、Alキレート触媒としてはアルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。

<ケトエノール互変異性化合物(E)>
本発明のウレタン形成性組成物(G)は、触媒活性を調整して成形性が良好となりやすいため、アセト酢酸エチル又はアセチルアセトンのいずれか1種以上のケトエノール互変異性化合物を含むことが好ましい。
【0061】
ケトエノール互変異性化合物(E)を含む場合、その含有量は、より成形性が良くなりやすいため金属成分を含むウレタン化触媒に対するモル比率(ケトエノール互変異性化合物/金属触媒)が10倍以上であることが好ましく、更に好ましくは50倍~5000倍の範囲であり、ウレタン形成性組成物(G)中の含有量としては、0.01質量%~20質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲である。

<酸遅延剤(F)>
本発明のウレタン形成性組成物(G)は、乾燥、エージング、塗工時に急激なゲル化を抑制しやすくなり、安定的にシワを抑制して成形性が良くなりやすいため酸遅延剤(F)を含むことが好ましく、特に限定されないがpKa5.0以下の酸を含むことが好ましい。そのようなpKa5.0以下の酸としては、塩酸、硝酸、リン酸やエチルアシッドホスフェートや2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等の炭素数2~20の酸性リン酸エステル等のリン系酸遅延剤などが挙げられ、なかでも、反応性と物性のバランスが良好となりやすいためリン系酸遅延剤を用いることが好ましい。酸遅延剤(F)を用いるときのウレタン形成性組成物(G)中の含有量としては、0.001質量%~1質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.005質量%~0.1質量%の範囲である。また、酸遅延剤を用いるときのウレタン形成性組成物(G)のpHとしては、4~9の範囲となる量であることが好ましい。ウレタン形成性組成物(G)のpHは、水とIPAを重量比5:3で混合した液に7質量%で分散し、pH計にて測定した値を指す。

<その他添加剤>
本発明のウレタン形成性組成物(G)は、酸化防止剤、鎖延長剤、帯電防止剤、可塑剤、レベリング剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0062】
なかでも、成形性が良好となりやすいため、ポリオール(A)やイソシアネート化合物(B)に加えて単官能性化合物を含むことが好ましい。そのような官能性化合物としては、より成形性が良好となりやすいため単官能アルコール、単官能イソシアネート、単官能アミンの何れか1種以上であることが好ましく、更に好ましくは分子量100~1000のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノ脂肪酸エステルの何れか1種以上である。単官能性化合物を用いるときのウレタン形成性組成物(G)中の含有量としては、0.1質量%~5質量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
鎖延長剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、分子量1000以下の低分子量ポリアルキレングリコール等のグリコール類;エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミンが挙げられる。なかでも、ウレタンウレアを形成し、良好な物性のウレタンを得やすいため多価アミンが好ましい。
【0064】
帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やイオン液体等が挙げられ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド等のリチウム塩や4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0065】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸エステルや脂環式エステル、ポリエーテルエステル等が挙げられ、例えばエポキシ化脂肪酸エステル、ミリスチン酸エステル、ポリアルキレングリコールの末端エステル変性化合物等が挙げられる。

<ウレタン形成性組成物(G)>
本発明の一態様であるウレタン形成性組成物(G)は、ポリオール(A)、イソシアネート化合物(B)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含むウレタン形成性組成物(G)であって、トリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3.0質量%以下、且つウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つトリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上である。またポリオール(A)、イソシアネート化合物(B)等の各原料は予め混合・反応し、ウレタンプレポリマー(H)を予め形成していてもよい。
【0066】
特に限定されないが、ウレタン形成性組成物(G)は、得られるウレタンのシワを抑制し、透明で良好な外観となりやすいため、均一に分散した際の25℃での粘度が0.1~100Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1~30Pa・sの範囲である。また液状であり、液の弾性が低く流動性が高いことが好ましい。
【0067】
ウレタン形成性組成物(G)の調製には、ウレタン形成性組成物(G)に含まれる原料を均一に分散することができる方法であれば特に限定されるものではなく、従来公知の様々な撹拌方法を用いることができ、例えば、撹拌機を用いて撹拌する方法が挙げられる。撹拌機としては、例えば、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、ディスパー分散機、ディゾルバー、ニーダー、ミキサー、ラボプラストミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。ウレタン形成性組成物(G)の成分がいずれも撹拌する温度で液状の場合は、自転公転ミキサー、汎用撹拌機、ディスパー分散機、ディゾルバーが好適に用いられる。また脱泡のため必要に応じて加温や加圧、静置等の操作を加えてもよい。
【0068】
ウレタン形成性組成物(G)に用いる原料の一部を一定の比率で事前に混合・反応したウレタンプレポリマー(H)を含む場合、ウレタンプレポリマーの調製にも従来公知の様々な撹拌方法を用いることができる。

<ウレタンプレポリマー組成物(I)>
本発明の一態様であるウレタンプレポリマー組成物(I)は、ウレタンプレポリマー(H)、トリアゾール誘導体(C)、金属成分を含むウレタン化触媒(D)を含むウレタンプレポリマー組成物(I)であって、
ウレタンプレポリマー(H)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つの水酸基を有し、
前記ウレタンプレポリマー(H)を形成する、ポリオール(A)の有する水酸基の総和(MOH)に対する前記イソシアネート(B)の有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)が1.0未満であって、
該ウレタンプレポリマー組成物(I)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3質量%以下、ウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上であることを特徴とする。
【0069】
ウレタンプレポリマー(H)を事前に形成する場合、急激な硬化収縮を抑制しやすく成形性が良好となり、得られるポリウレタンにシワがでづらく塗膜外観が良好となりやすいため重量平均分子量が1000以上であることが好ましく、なかでも流動性が良好で成形性に優れやすい重量平均分子量が5000~1000000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは重量平均分子量が10000~500000の範囲である。また粘度によらず液の弾性が低く流動性に優れやすくなって成形性に優れやすいため、ウレタンプレポリマー(H)の分子量分布は1.05~6.0未満であることが好ましく、更に好ましくは1.5~4.0未満であることが好ましい。なお、ウレタンプレポリマー(H)の重量平均分子量、分子量分布は、ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法を用い、常法に従って測定することができる。
【0070】
ウレタンプレポリマー(H)を事前に形成する場合、ポリオール(A)の有する水酸基の総和(MOH)に対する前記イソシアネート(B)の有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)は1.0未満であることを特徴とする。なかでも0.10以上0.95以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.15以上0.80以下である。なお、比(MNCO/MOH)はモル比を表す。比(MNCO/MOH)が1.0以上ではウレタンプレポリマー組成物の保存安定性が悪くなりやすく、それを用いて得られるウレタン形成性組成物中に微量のゲル化物や泡が生成しやすく塗膜にブツや発泡等の外観不良が発生しやすいためウレタンを形成した際に塗膜外観が悪化することがある。
【0071】
またポリオール(A)の平均官能基数は、特に限定されないが1.9以上であることが好ましく、2以上6以下であることが更に好ましい。各官能基数とモル比より算出した平均官能基数が1.9以上であるウレタン形成性組成物(G)は反応に伴う硬化によってポリウレタンを得る際に、その硬化(固化)性に優れ、ポリウレタンがさらに良好な機械物性を有することになるため好ましい。
【0072】
ウレタンプレポリマー(H)を製造する際のポリオール(A)、及び、イソシアネート化合物(B)は、真空加熱等で脱水して使用することが好ましいが、作業が煩雑となる場合は脱水せずに使用してもよい。
該ウレタンプレポリマー組成物(I)中のトリアゾール誘導体(C)の含有率が0.1質量%以上3質量%以下、ウレタン化触媒(D)の含有率が0.5質量%以下、且つ
トリアゾール誘導体(C)/金属成分を含むウレタン化触媒(D)のモル比率が7倍以上であることを特徴とする。好ましい含有量、組成比、液粘度としては、前記ウレタン形成性組成物(G)中の好ましい含有量、組成比、液粘度と同様の範囲である。

<ウレタン形成性組成物溶液(L)>
ウレタン形成性組成物(G)は、これらの取り扱いを容易なものにするために、または、所望の粘度や塗工性を得るために、有機溶媒と混合してウレタン形成性組成物溶液(L)とすることができる。
【0073】
このとき、ウレタン形成組成物溶液(L)は、ウレタン形成性組成物(G)、及び、有機溶媒、を含み、当該ウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物(G)の濃度が、10質量%以上95質量%以下である。
【0074】
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。溶解性、有機溶媒の沸点等の点から、特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンまたはこれらの混合溶媒が好ましい。なお、これらの溶媒は、任意の段階で添加することができる。
【0075】
ウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタン形成性組成物の濃度は、10質量%以上95質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下である。濃度がこの範囲であると、ウレタン形成性組成物溶液(L)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。
【0076】
また、ウレタン形成性組成物溶液(L)の25℃における粘度は特に限定されないが、
0.1~100Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1~30Pa・sの範囲である。また液状であり、液の弾性が低く流動性が高いことが好ましい。
粘度がこの範囲であると、ウレタン形成性組成物溶液(L)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。

<ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)>
ウレタンプレポリマー組成物(I)は、これらの取り扱いを容易なものにするために、または、所望の粘度や塗工性を得るために、有機溶媒と混合してウレタンプレポリマー組成物溶液(K)とすることができる。
【0077】
このとき、ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)は、ウレタンプレポリマー組成物(I)、及び、有機溶媒、を含み、当該ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)中のウレタン形成性組成物(G)の濃度が、10質量%以上95質量%以下である、または、ウレタンプレポリマー組成物(I)、及び、有機溶媒、を含み、当該ウレタン形成性組成物溶液(L)中のウレタンプレポリマー組成物(I)の濃度が、10質量%以上95質量%以下である、。
【0078】
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。溶解性、有機溶媒の沸点等の点から、特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンまたはこれらの混合溶媒が好ましい。なお、これらの溶媒は、任意の段階で添加することができる。
【0079】
ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)中のウレタン形成性組成物の濃度は、10質量%以上95質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下である。濃度がこの範囲であると、ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。
【0080】
また、ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)の25℃における粘度は特に限定されないが、0.1~100Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1~30Pa・sの範囲である。また液状であり、液の弾性が低く流動性が高いことが好ましい。
【0081】
粘度がこの範囲であると、ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。
【0082】
ウレタンプレポリマー組成物溶液(K)はイソシアネート化合物(J)との組成物とすることによりウレタン形成性組成物溶液(L)とすることができる。

<ポリウレタン(M)>
ポリウレタン(M)は、ウレタン形成性組成物(G)を種々の方法によって反応させ、硬化(固化)することで得られる。それらのポリウレタン(M)の製造方法としては特に限定されない。例えば、ウレタン形成性組成物(G)を、必要に応じて、ウレタン化触媒、溶剤、酸化防止剤、光安定化剤、鎖延長剤、架橋剤、その他添加剤等の存在下、常温または150℃以下の高温でウレタン化反応、ウレア化反応を進めることによって製造することができる。
【0083】
また、良好な硬化性を発現するため、必要に応じて高温で賦活化する工程や溶剤や添加剤を除去する工程を含んでもよい。
ここで、ウレタン形成性組成物(G)は、塗工機等で塗工する際の成形性が顕著に優れることから、厚みが薄くて、均一な厚みのポリウレタン(M)の塗膜やポリウレタンのシートが得られる。
【0084】
ポリウレタン(M)の塗膜においては、その厚みは特に制限されないが、塗膜の外観が特に良好になることから、塗膜の厚みは1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5μm以上300μm以下であることが更に好ましい。
【0085】
ポリウレタン(M)の用途は、特に限定されるものでなく、通常のポリウレタンが使用される何れの用途にも使用できるが、機械物性や粘・接着特性などが要求される用途に特に好適に使用できる。具体的には、建築・土木用シーリング材、建築用弾性接着剤等の接着剤、ガムテープや表面保護フィルム、光学用に代表される各種粘着剤、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が例示され、好適に使用できる。
【0086】
その中でも、ポリウレタンに対して、機械物性や粘・接着特性の要求が強く、施工性や塗工性が求められることから、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤として用いることが特に好ましい。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
(原料1)実施例及び比較例に用いたポリオールA
ポリオールA1:3官能、分子量3400のポリプロピレン・ポリエチレングリコール((株)ADEKA製アデカポリエーテルGR3308)
ポリオールA2:2官能、分子量2000のポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP2000)
ポリオールA3:分子量1000ポリエステルポリオール(東ソー(株)製ニッポラン4009)
原料ポリオールは何れも使用前に予め脱水したものを用いた。
(原料2)実施例及び比較例に用いたイソシアネート化合物(B)、(J)
イソシアネート化合物B1、J1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー製コロネートHXR)
イソシアネート化合物B2:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性(東ソー製コロネートL)
(原料3)実施例及び比較例に用いたトリアゾール誘導体(C)、化合物(CC)
トリアゾール誘導体C1:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製チヌビン571、液状)
トリアゾール誘導体C2:3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロピオン酸の炭素数7~9のアルキルエステル)(BASF製チヌビン99-2、液状)
トリアゾール誘導体C3:1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(城北化学工業製BT-LX、液状)
トリアゾール誘導体C4:6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール(城北化学工業製JAST-500、粉体)
化合物CC1:1,2-ジメチルイミダゾール
化合物CC2:N,N’-ジメチルピペラジン
化合物CC3:ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)
(原料4)実施例及び比較例に用いた金属成分を含むウレタン化触媒(D)、非金属系ウレタン化触媒(DC)
ウレタン化触媒D1:ジオクチルスズジラウレート
ウレタン化触媒D2:トリスアセチルアセトネート鉄
ウレタン化触媒DC1:トリエチレンジアミン
(原料5)添加剤
ケトエノール互変異性化合物E1:アセチルアセトン
酸遅延剤F1:2-エチルヘキシルアシッドホスフェート
単官能性化合物1:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル#400

(ウレタン形成性組成物(G)、ウレタン形成性組成物溶液(L)の作製)
実施例及び比較例では、所定量の各原料(例えば、ポリオール(A)、イソシアネート化合物(B)、トリアゾール誘導体(C)、ウレタン化触媒(D)、その他各原料)を50mlのサンプル瓶にいれ、自転公転ミキサーを用いて、常温で、撹拌脱泡することでウレタン形成性組成物を得た。プレポリマー(H)を用いる場合、事前に合成しゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより重量平均分子量、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)を測定し使用した。
【0088】
自転公転ミキサーには、株式会社シンキー製のあわとり練太郎ARE-310を用い、自転は回転数2000rpmで5分間、公転は回転数2200rpmで5分間行ってウレタン形成性組成物(G)またはウレタン形成性組成物溶液(L)とし、直後にB型粘度計で測定した値をその粘度として、その後性能評価へ移行した。
【0089】
その工程において性状を以下の基準で評価した。
(性状評価)
<粘度>
粘度〇(良好):0.1~30Pa・s、且つ液を180°傾けて3秒以内で1cm流動
粘度△(可能):30Pa・s超、または液を180°傾けても1cmの流動に3秒超要(高弾性)
<重量平均分子量>
重量平均分子量〇(良好):1万~50万
重慮平均分子量△(可能):50万超
<分子量分布>
分子量分布〇(良好):1.05~6.0未満
分子量分布△(可能):6.0以上

(性能評価)
ウレタン形成性組成物(G)を、厚さ38μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚みが100μm以下となるようにベーカー式アプリケーターを用いて塗工した。その後、130℃に設定したオーブンに3分間保持して溶剤等を揮発させ、23℃、相対湿度50%の環境で1週間静置することで塗膜を得た。
【0090】
その工程においてウレタン形成性組成物の性能の指標として、以下の評価基準にて評価した。
<成形性(塗工性、厚みムラ)>
◎(成形性合格):塗工ムラがなく、端部と中心部の厚み差が3%以下の均一な厚みの成形シートが得られる場合。
○(成形性合格):目視上軽微な塗工ムラが見られる場合。または端部と中心部の厚み差が3%超5%以下の軽微な厚みムラがある場合。
×(成形性不合格):塗工時または乾燥時に液が流れる(均一な成形が困難)、または端部と中心で5%を超える明確な厚みムラがある場合。
<硬化性>
◎(硬化性合格):オーブンから取り出し後、室温環境に戻した時にベタツキ感が消失している場合。
○(硬化性合格):オーブンから取り出し後、指触にて僅かにタックが残り、23℃、相対湿度50%の環境で7日静置することで、べたつき感が凡そ消失する場合。
××(硬化性不合格):オーブンから取り出し後、23℃、相対湿度50%の環境で7日静置後もベタツキ感が残存する場合(硬化不良)。
<塗膜外観>
◎(塗膜外観合格):得られたウレタンにシワがなく、目視上ブツがなく平滑な場合。
○(塗膜外観合格):得られたウレタンにシワ、気泡はないものの、僅かにブツ等で平滑性に劣る場合や目視上透明性が悪い場合。
×(塗膜外観不合格):得られたウレタンに気泡が発生して塗膜外観に劣る場合。
××(塗膜外観不合格):得られたウレタンに硬化収縮によるシワが発生して塗膜外観に劣る場合。
<塗膜物性>
◎(塗膜物性合格):指触による評価でタックがない場合。
〇(塗膜物性合格):指触による評価でタックを僅かに感じる場合。
××(塗膜物性不合格):指触による評価でタックがある場合(硬度不足)。
【0091】
何れの評価項目も合格のものは、塗膜外観や塗膜物性に優れるポリウレタンの形成に資するウレタン形成性組成物であり、且つ成形性、硬化性が良好で塗工や硬化に時間を要さず高い生産性を有するウレタン形成性組成物であると判断した。

<実施例、比較例>
実施例1は、ポリオール(A1)100重量部、トリアゾール誘導体(C1)1重量部、金属を含むウレタン化触媒(D1)0.02重量部、ケトエノール互変異性化合物(E1)3.0重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含み、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)のMOH=1.05となるようイソシアネート化合物(B1)を混合したウレタン形成性組成物(G1)である。表1に実施例1の結果を示すが、ウレタン形成性組成物(G1)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物(G1)から得たポリウレタン(M1)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0092】
比較例1は、実施例1に対してトリアゾール誘導体(C1)を含まない、ウレタン形成性組成物(GC1)である。当該組成物(GC1)はトリアゾール誘導体(C1)を含まないため乾燥時にシワが発生し、均一な成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物(GC1)から得たポリウレタン(MC1)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0093】
実施例2は、ポリオール(A2)100重量部、トリアゾール誘導体(C1)1.5重量部、金属を含むウレタン化触媒(D1)0.015重量部、ケトエノール互変異性化合物(E1)3.0重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含み、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B2)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B2)のMNCO/(A1)のMOH=1.05となるようイソシアネート化合物(B2)を混合したウレタン形成性組成物(G2)である。
【0094】
ウレタン形成性組成物(G2)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物(G2)から得たポリウレタン(M2)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0095】
比較例2は、実施例2に対してウレタン化触媒(D1)を含まない、ウレタン形成性組成物(GC2)である。当該組成物(GC2)はウレタン化触媒(D1)を含まないため乾燥時に液が流動し成形性に劣るとともに硬化性が悪く、当該組成物(GC2)から得たポリウレタン(MC2)は指触によるタックが強く塗膜物性に劣り、塗膜外観も悪く、使用が困難であった。
【0096】
実施例3は、実施例1に対してトリアゾール誘導体(C1)を0.4重量部へ減量し、ウレタン化触媒(D1)を0.05重量部へ増加したウレタン形成性組成物(G3)である。ウレタン形成性組成物(G3)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物(G3)から得たポリウレタン(M3)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0097】
比較例3は、実施例3に対してトリアゾール誘導体(C1)を0.07重量部へ更に減量し、ウレタン化触媒(D1)に対してトリアゾール誘導体(C1)のモル比率を2.6に低減したウレタン形成性組成物(GC3)である。
【0098】
当該組成物(GC3)はウレタン化触媒(D1)に対するトリアゾール誘導体(C1)の比率が7倍未満であるため、ウレタン形成時の硬化収縮を抑制できず、塗膜にシワが発生して塗膜の外観不良が発生し、使用が困難であった。
【0099】
実施例4は、ポリオール(A3)100重量部、トリアゾール誘導体(C2)2.9重量部、金属を含むウレタン化触媒(D1)0.03重量部、ケトエノール互変異性化合物(E1)5.0重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含み、(A3)に由来する水酸基の量(MOH)と(B2)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B2)のMNCO/(A3)のMOH=1.05となるようイソシアネート化合物(B2)を混合したウレタン形成性組成物(G4)である。
【0100】
ウレタン形成性組成物(G4)は液状トリアゾールが多いため実施例2より厚み差があったが概ね成形性と硬化性は良好で、当該組成物(G4)から得たポリウレタン(M4)の塗膜はシワ等の外観不良がなく、タックも概ねない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0101】
比較例4は、実施例4に対してトリアゾール誘導体(C2)を4.0重量部へ更に増量したウレタン形成性組成物(GC4)である。当該組成物(GC4)はウレタン形成性組成物中のトリアゾール誘導体(C1)の含有量が3.0質量%を超えるため、硬化時のシワは抑制できるものの硬化に時間を要し、得られるポリウレタン(MC4)もタックが強い塗膜物性に劣る使用が困難な組成物であった。
【0102】
実施例5は、ポリオール(A1)50重量部、ポリオール(A2)50重量部、トリアゾール誘導体(C2)0.5重量部、金属を含むウレタン化触媒(D1)0.02重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含み、(A1)と(A2)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)と(A2)のMOH=1.05となるようイソシアネート化合物(B1)を混合したウレタン形成性組成物(G5)である。
【0103】
ウレタン形成性組成物(G5)はケトエノール互変異性化合物(E1)を含まないため、実施例3に対して僅かに成形性に劣るが、概ね成形性と硬化性は良好で、当該組成物(G5)から得たポリウレタン(M5)の塗膜はシワ等の外観不良がなく、タックもない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0104】
比較例5は、実施例5に対してトリアゾール誘導体(C2)を含まず、代わりに反応性調整のためウレタン化触媒(D1)を0.001重量部へ低減した、ウレタン形成性組成物(GC5)である。
【0105】
ウレタン形成性組成物(GC5)はトリアゾール誘導体(C)を含まないため、ウレタン化触媒(D1)を低減しても乾燥時にシワが発生し、当該組成物(GC5)から得たポリウレタン(MC5)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0106】
実施例6は、実施例5に対して反応性調整のための酸遅延剤(F1)を含まず、代わりにトリアゾール誘導体(C2)を1.0重量部へ増量したウレタン形成性組成物(G6)である。
【0107】
ウレタン形成性組成物(G6)は単官能性化合物(1)を含まないため、実施例5に対して僅かに成形性に劣るが、概ね成形性と硬化性は良好で、当該組成物(G6)から得たポリウレタン(M6)の塗膜にシワはなく、僅かに塗工ムラは見られるが概ね良好な塗膜外観であり、塗膜物性に優れるものであった。
【0108】
表1に示す実施例1~6、比較例1~5は何れも30Pa・s未満の低粘度でハンドリング性に問題はなかった。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例7は、実施例1に対してSnを中心金属としたウレタン化触媒(D1)から金属キレート触媒であるウレタン化触媒(D2)に変更したウレタン形成性組成物(G7)である。ウレタン形成性組成物(G7)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物(G7)から得たポリウレタン(M7)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0111】
実施例8は、実施例7に対してトリアゾール誘導体(C1)を(C2)へ変更し、ウレタン化触媒(D2)を0.005重量部に低減したウレタン形成性組成物(G8)である。ウレタン形成性組成物(G8)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物(G8)から得たポリウレタン(M8)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0112】
実施例9は、実施例1に対してフェノール性水酸基を有するトリアゾール誘導体(C1)からフェノール性水酸基を有さないトリアゾール誘導体(C3)へ変更したウレタン形成性組成物(G9)である。
【0113】
ウレタン形成性組成物(G9)は塗工性と硬化性は良好で、トリアゾール誘導体を含むため当該組成物(G9)から得たポリウレタン(M9)の塗膜にシワはなく、僅かに塗工 ムラは見られるが概ね良好な塗膜外観であり、塗膜物性に優れるものであった。
【0114】
実施例10は、実施例1に対して液状のトリアゾール誘導体(C1)を粉体のトリアゾール誘導体(C4)へ変更し、ウレタン化触媒(D1)0.02重量部から0.005重量部に変更してウレタン化触媒に対してトリアゾール誘導体のモル比率を297.5倍に増量したウレタン形成性組成物(G10)である。
【0115】
ウレタン形成性組成物(G10)は塗工性と硬化性は良好で、粉体のトリアゾール誘導体を含むため当該組成物(G10)から得たポリウレタン(M10)の塗膜にシワはなく、微量のブツにより僅かに平滑性は劣るが概ね良好な塗膜外観であり、タックもほぼなく塗膜物性も概ね優れるものであった。
【0116】
比較例6は、実施例7に対してトリアゾール誘導体(C1)1.0重量部から、窒素系複素環であるイミダゾール誘導体である化合物(CC1)1.0重量部へ変更したウレタン形成性組成物(GC6)である。当該組成物(GC6)はトリアゾール誘導体(C)を含まずイミダゾール誘導体を含むため乾燥時にシワに加えて気泡が発生し、且つ硬化も早く均一な成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物(GC6)から得たポリウレタン(MC6)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0117】
比較例7は、実施例10に対してトリアゾール誘導体(C4)1.0重量部から、窒素系複素環であるピペラジン誘導体である化合物(CC2)1.0重量部へ変更したウレタン形成性組成物(GC7)である。当該組成物(GC7)はトリアゾール誘導体(C)を含まずピペラジン誘導体を含むため硬化性は概ね良好であるが、乾燥時にシワに加えて気泡が発生し成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物(GC7)から得たポリウレタン(MC7)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0118】
比較例8は、実施例10に対してトリアゾール誘導体(C4)1.0重量部から、フェノール性水酸基を有するがトリアゾール構造を含まない化合物(CC3)1.0重量部へ変更したウレタン形成性組成物(GC8)である。
【0119】
当該組成物(GC8)はトリアゾール誘導体(C)を含まないため乾燥時にシワが発生し、均一な成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物(GC8)から得たポリウレタン(MC8)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0120】
比較例9は、実施例8に対して、金属成分を含むウレタン化触媒(D2)0.005重量部から金属成分を含まないアミン系触媒(DC1)0.07重量部へ変更し、トリアゾール誘導体(C2)を増量したウレタン形成性組成物(GC9)である。
【0121】
当該組成物(GC9)は金属成分を含むウレタン化触媒(D2)を含まず、アミン触媒を含むため僅かな液流動と硬化の僅かな遅延があるため成形性、硬化性が僅かに劣り、当該組成物(GC9)から得たポリウレタン(MC9)は気泡発生により塗膜外観が悪く、タックもあり硬度も不十分なため使用が困難であった。
【0122】
表2に示す実施例7~10、比較例6~9は何れも30Pa・s未満の低粘度でハンドリング性に問題はなかった。
【0123】
【表2】
【0124】
実施例11は、予めポリオール(A1)100重量部、単官能性化合物(1)0.5重量部、イソシアネート化合物(B1)を、ウレタン化触媒(D1)0.02重量部存在下(A1)と単官能性化合物(1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)と単官能性化合物(1)のMOH=0.35となるよう混合・反応してプレポリマー(H11)を事前に調整した。
【0125】
上記プレポリマー(H11)、トリアゾール誘導体(C1)1.0重量部、ケトエノール互変異性化合物(E1)3.0重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含むウレタンプレポリマー組成物(I11)を含み、(A1)と単官能性化合物(1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)と単官能性化合物(1)のMOH=0.70となるようイソシアネート化合物(J1)を混合したウレタン形成性組成物(G11)と、有機溶媒として酢酸エチルを含むウレタン形成性組成物溶液(L11)である。当該溶液(L11)中の(G11)の濃度は30%である。
【0126】
ウレタン形成性組成物溶液(L11)は溶液粘度が30Pa・s未満と低く、プレポリマーの重量平均分子量も50万以下で分子量分布も1.5以上6.0未満と低くハンドリング性に優れる溶液性状であった。
【0127】
表3に実施例11の結果を示すが、ウレタン形成性組成物溶液(L11)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物溶液(L11)から得たポリウレタン(M11)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0128】
実施例12は、予めポリオール(A1)75重量部、ポリオール(A2)25重量部、単官能性化合物(1)5重量部、イソシアネート化合物(B2)を、ウレタン化触媒(D1)0.02重量部存在下(A1)と(A3)と単官能性化合物(1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B2)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B2)のMNCO/(A1)と(A3)と単官能性化合物(1)のMOH=0.35となるよう混合・反応してプレポリマー(H12)を事前に調整した。
【0129】
上記プレポリマー(H12)、トリアゾール誘導体(C2)1.0重量部、ケトエノール互変異性化合物(E1)3.0重量部、酸遅延剤(F1)0.03重量部を含むウレタンプレポリマー組成物(I12)を含み、(A1)と(A3)と単官能性化合物(1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B2)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B2)のMNCO/(A1)と(A3)と単官能性化合物(1)のMOH=0.70となるようイソシアネート化合物(J1)を混合したウレタン形成性組成物(G12)と、有機溶媒として酢酸エチルを含むウレタン形成性組成物溶液(L12)である。当該溶液(L12)中の(G12)の濃度は70%である。
【0130】
ウレタン形成性組成物溶液(L12)は溶液粘度が30Pa・s未満と低く、プレポリマーの重量平均分子量も50万以下で分子量分布も1.5以上6.0未満と低くハンドリング性に優れる溶液性状であった。
【0131】
表3に実施例12の結果を示すが、ウレタン形成性組成物溶液(L12)は塗工性と硬化性は良好で、当該組成物溶液(L12)から得たポリウレタン(M12)の塗膜はシワ等の外観不良やタックがない塗膜外観、塗膜物性に優れるものであった。
【0132】
実施例13は、予めポリオール(A1)100重量部、イソシアネート化合物(B1)を、ウレタン化触媒(D1)0.005重量部存在下(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)のMOH=0.52となるよう混合・反応してプレポリマー(H13)を事前に調整した。
【0133】
上記プレポリマー(H13)、トリアゾール誘導体(C3)1.0重量部を含むウレタンプレポリマー組成物(I13)を含み、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(B1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(B1)のMNCO/(A1)のMOH=0.53となるようイソシアネート化合物(J1)を混合したウレタン形成性組成物(G13)と、有機溶媒としてメチルエチルケトンを含むウレタン形成性組成物溶液(L13)である。当該溶液(L13)中の(G13)の濃度は60%である。
【0134】
ウレタン形成性組成物溶液(L13)はプレポリマーの重量平均分子量も50万超で分子量分布も6.0以上と高いため溶液の流動性がやや低く、使用は可能であったがややハンドリング性に劣る溶液性状であった。
【0135】
表3に実施例13の結果を示すが、ウレタン形成性組成物溶液(L13)は塗工性と硬化性は概ね良好で、当該組成物溶液(L13)から得たポリウレタン(M13)の塗膜にシワはなく、ごく僅かに平滑性は劣るが概ね良好な塗膜外観であり、タックがない塗膜物性に優れるものであった。
【0136】
比較例10は、実施例11に対してプレポリマー形成後混合するトリアゾール誘導体(C1)からトリアゾール構造を含まない化合物(CC1)に変えたウレタン形成性組成物(GC10)と、有機溶媒として酢酸エチルを含むウレタン形成性組成物溶液(LC10)である。当該溶液(LC10)中の(GC10)の濃度は50%である。
【0137】
当該組成物溶液(LC10)はトリアゾール誘導体(C1)を含まずにイミダゾール誘導体を含むため乾燥時にシワに加えて気泡が発生し、均一な成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物溶液(LC10)から得たポリウレタン(MC10)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0138】
比較例11は、実施例11に対してプレポリマー形成後混合するトリアゾール誘導体(C1)からフェノール性水酸基を有するがトリアゾール構造を含まない化合物(CC3)に変えたウレタン形成性組成物(GC11)と、有機溶媒として酢酸エチルを含むウレタン形成性組成物溶液(LC11)である。当該溶液(LC11)中の(GC11)の濃度は50%である。
【0139】
当該組成物溶液(LC11)はトリアゾール誘導体(C1)を含まないため乾燥時にシワが発生し、均一な成形体が得られず成形性に劣るとともに、当該組成物溶液(LC11)から得たポリウレタン(MC11)は指触によるタックはなく硬度は発現するもののシワ等で平滑性がなく外観不良があるため、使用が困難であった。
【0140】
比較例12は、実施例11に対して金属成分を有するウレタン化触媒(D1)を含まないウレタン形成性組成物(GC12)と、有機溶媒として酢酸エチルを含むウレタン形成性組成物溶液(LC12)である。当該溶液(LC12)中の(GC12)の濃度は50%である。当該組成物(GC12)はウレタン化触媒(D1)を含まないため硬化性が顕著に悪く、当該組成物(GC12)から得たポリウレタン(MC12)は塗膜外観も不透明で、指触によるタックが強く塗膜物性に劣り、使用が困難であった。
【0141】
本発明の実施例に用いた組成物は何れもpHが4~9の範囲であり、低腐食性で良好な硬化性が発現しやすい良好な液性を示すものであった。
【0142】
【表3】
【0143】
以上、実施例で示したように、本開発におけるウレタン形成性組成物は、塗工機などで塗工、乾燥、硬化する際の成形性に優れ、硬化性を損なうことなくシワや気泡等による塗膜外観の悪化を抑制することができる。
【0144】
更に、イソシアネート化合物との反応でタックが小さく硬度等の物性も良好なポリウレタンを得ることができる。その特徴を活かすことにより、ウレタン形成性組成物より得られるポリウレタンは、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できることが示された。