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特許7615709粘着剤組成物、粘着剤、粘着シート、および粘着付与剤用ポリエステル系樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤、粘着シート、および粘着付与剤用ポリエステル系樹脂
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20250109BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J7/38
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021012291
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2021123715
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2020015557
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健斗
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-523444(JP,A)
【文献】特表2017-509729(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055827(WO,A1)
【文献】特開平10-298528(JP,A)
【文献】特開2014-196471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0221776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08G63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)、および、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を含有し、
上記重合体(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂であり、
上記重合体(A)の含有割合が、粘着剤組成物全体に対して30重量%以上であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
上記ポリエステル系樹脂(B)が、数平均分子量が50~5000の封鎖剤(b3)により少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されてなることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位、上記ポリオール(b2)由来の構造単位および上記封鎖剤(b3)の少なくとも1つに芳香族構造単位を含有してなることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
上記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)が-80~30℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
上記ポリエステル系樹脂(B)の数平均分子量が300~30000であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
上記ポリエステル系樹脂(B)の水酸基価が10mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
上記ポリエステル系樹脂(B)の酸価が3mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
上記ポリエステル系樹脂(B)の結晶融解熱が10J/g以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
上記ポリエステル系樹脂(B)の含有量が、重合体(A)100重量部に対して0.1~180重量部であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
上記重合体(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位の少なくとも1つに芳香族構造単位を含有するポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)が-70~40℃であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)が、ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)よりも高い温度であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項14】
請求項13記載の粘着剤を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【請求項15】
電子部材の貼り合わせに用いることを特徴とする請求項14記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シート、および粘着付与剤用ポリエステル系樹脂に関し、さらに詳しくは、粘着力、耐薬品性、保持力、タック性に優れる粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートに関するものであり、また、新規な粘着付与剤用ポリエステル系樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分とポリオール成分とを組み合わせることにより、耐薬品性、耐可塑剤性、機械的強度等に優れたものとなることが知られており、感圧接着剤(粘着剤)の分野でも検討されている。
また、画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)においては、組み立てのために粘着テープが用いられている。具体的には、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる。また、車輌部品を車輌本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられており、このような粘着剤に、アクリル系樹脂を用いた粘着剤が検討されている。
【0003】
このような状況において、近年では、電子機器の小型化、軽量化及び低コスト化によって、携帯電話、スマートフォンウェアラブル端末等の常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの電子機器が広く普及している。このような携帯型の電子機器は、タッチパネル等により素手で操作が行われるため、皮脂や、香水、虫よけスプレー、手洗い用洗剤、除菌シート等アルコールなどの化学薬品に晒されることになり、高い粘着力、および皮脂やアルコール等に対する耐薬品性が求められている。
例えば、特許文献1においては、アクリル系樹脂と所定の水酸基価を有する粘着付与樹脂を含有してなるアクリル系粘着剤組成物が提案されている。
そして、特許文献2においては、ポリエステル系樹脂と粘着付与剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物が提案されている。
また、特許文献3においては、アクリル系樹脂、反応性化合物および所定酸価を有する環構造含有ポリエステルを含有するアクリル系粘着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-7477号公報
【文献】特開2014-169419号公報
【文献】特開2019-6925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の開示技術では、アクリル系樹脂に高水酸基価の粘着付与樹脂を配合しているが、ベースポリマーがアクリル系樹脂であるためアルコール等の極性が高い薬品への耐性に問題が残るものであった。
【0006】
また、特許文献2の開示技術では、ポリエステル系樹脂にロジンエステルやテルペン樹脂等の高軟化点の粘着付与剤を配合している。一般的に、高温での凝集力を付与するために高軟化点の粘着付与剤を配合することがよく行われるが、かかる粘着付与剤では、常温におけるタック性の低下や、相溶性が低くいことによる外観不良、アルコール等の極性が高い薬品に対する耐性に劣る等の問題が残るものであった。
【0007】
また、特許文献3の開示技術では、アクリル系樹脂にポリエステル系樹脂を配合しているが、かかるポリエステル系樹脂は官能基を有するものであるため、粘着剤組成物としての保存安定性や、架橋剤との反応が進行してしまうことにより粘着剤としてのタック性の低下やアルコール等の極性が高い薬品に対する耐性に劣る等の問題が残るものであった。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、粘着力、耐薬品性、保持力、タック性に優れる粘着剤組成物を提供することを目的とするものであり、さらに、粘着剤、粘着シート、および粘着付与剤用ポリエステル系樹脂も提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、重合体(A)およびポリエステル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物において、ポリエステル系樹脂(B)として、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を用いることにより、粘着力、耐薬品性、保持力、タック性に優れるポリエステル系粘着剤組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[17]を、その要旨とする。
[1] 重合体(A)、および、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物。
[2] 上記ポリエステル系樹脂(B)が、数平均分子量が50~5000の封鎖剤(b3)により少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されてなる[1]記載の粘着剤組成物。
[3] 上記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)が-80~30℃である[1]または[2]記載の粘着剤組成物。
[4] 上記ポリエステル系樹脂(B)の数平均分子量が300~30000である[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5] 上記ポリエステル系樹脂(B)の水酸基価が10mgKOH/g以下である[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6] 上記ポリエステル系樹脂(B)の酸価が3mgKOH/g以下である[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7] 上記ポリエステル系樹脂(B)の結晶融解熱が10J/g以下である[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[8] 上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位、上記ポリオール(b2)由来の構造単位および上記封鎖剤(b3)の少なくとも1つに芳香族構造単位を含有してなる[2]~[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[9] 上記ポリエステル系樹脂(B)の含有量が、重合体(A)100重量部に対して0.1~180重量部である[1]~[8]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[10] 上記重合体(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂である[1]~[9]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[11] 上記ポリエステル系樹脂が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位の少なくとも1つに芳香族構造単位を含有するポリエステル系樹脂である[10]記載の粘着剤組成物。
[12] 上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)が-70~40℃である[1]~[11]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[13] 上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)が、ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)よりも高い温度である[1]~[12]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[14] [1]~[13]のいずれかに記載の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤。
[15] [14]記載の粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着シート。
[16] 電子部材の貼り合わせに用いる[15]記載の粘着シート。
[17] 多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖剤(b3)により封鎖され、上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位、上記ポリオール(b2)由来の構造単位および上記封鎖剤(b3)の少なくとも1つに芳香族構造単位を有する粘着付与剤用ポリエステル系樹脂。
【0011】
粘着剤において、一般的には、被着体への粘着力を向上させるために粘着付与剤を配合するが、この場合、主剤との相溶性や被着体との密着性を高める点で粘着付与剤の樹脂構造中に極性基を導入することが考えられる。そのため、例えば、ポリエステル系樹脂を粘着付与剤として配合する場合には、ポリエステル系樹脂が水酸基またはカルボキシ基を有した状態で配合した方がよいと考えるのが常識である。
しかし、本発明では、あえてポリエステル系樹脂中の水酸基またはカルボキシ基を封鎖したポリエステル系樹脂を配合したものであり、これにより意外にも粘着力が低下することもなく、耐薬品性、保持力やタック性に優れ、本発明の目的を達成することができたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、重合体(A)、および、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を含有するものである。そのため、粘着力、耐薬品性、保持力、タック性に優れた効果を有するものであり、とりわけ、電子部材用や光学部材用の粘着剤として有用である。
【0013】
更に、本発明の粘着付与剤用ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖剤(b3)により封鎖され、上記多価カルボン酸(b1)由来の構造単位、上記ポリオール(b2)由来の構造単位および上記封鎖剤(b3)の少なくとも1つに芳香族構造単位を有するため、粘着付与性能に優れており、重合体の粘着付与剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
また、本発明において、「yおよび/またはz(y,zは任意の構成または成分)」とは、yのみ、zのみ、yおよびz、という3通りの組合せを意味するものである。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、重合体(A)、および、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を含有するものである。
以下、本発明の粘着剤組成物に用いられる各構成成分について詳述する。
【0016】
<重合体(A)>
上記重合体(A)は、粘着剤組成物の主成分であり、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも粘着力、耐熱性の点でポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、耐薬品性、耐可塑剤性の点でポリエステル系樹脂が特に好ましい。なお、上記主成分とは、粘着剤組成物の特性に大きな影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、粘着剤組成物全体の30重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である。
以下、重合体(A)の好ましい態様である、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂について説明する。
【0017】
〔ポリエステル系樹脂〕
本発明で用いることができるポリエステル系樹脂は、後述するポリエステル系樹脂(B)を除くものであり、通常、構成原料として、多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)を含む共重合成分を共重合することにより得られ、そのポリエステル系樹脂は、その樹脂組成として、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位を有するようになる。
上記ポリエステル系樹脂が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位の少なくとも1つに芳香族構造単位を含有することが耐薬品性に優れる点から好ましく、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位に芳香族構造単位を有することが特に好ましい。
なお、本発明において、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
【0018】
[多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位]
上記多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位としては、例えば、二価カルボン酸類由来の構造単位、三価以上の多価カルボン酸類由来の構造単位が挙げられ、ポリエステル系樹脂を安定的に得られる点から二価カルボン酸類由来の構造単位を含むことが好ましい。
【0019】
上記二価カルボン酸類由来の構造単位としては、例えば、マロン酸類、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、チオジプロピオン酸類、ジグリコール酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類等の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造単位;
フタル酸類、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4’-オキシジ安息香酸類、さらに1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等のナフタレンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類由来の構造単位;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類等の脂環式ジカルボン酸類由来の構造単位;
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマー酸類(炭素数36~44のものを主とする)由来の構造単位;等が挙げられる。
また、上記三価以上の多価カルボン酸類由来の構造単位としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類等由来の構造単位が挙げられる。
これらの多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位は単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
【0020】
上記多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位のなかでも、ポリエステル系樹脂の結晶性を下げる点、耐薬品性に優れる点から、芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位を含ませることが好ましく、非対称の芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位としては、例えば、フタル酸類、イソフタル酸類、1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等由来の構造単位が挙げられる。なかでも反応性の点でイソフタル酸類由来の構造単位を含むことが特に好ましい。
【0021】
かかる芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位の含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位全体に対して、5~100モル%であることが好ましく、より好ましくは10~95モル%、さらに好ましくは20~90モル%、特に好ましくは40~85モル%、殊に好ましくは60~80モル%である。かかる含有量が少なすぎると、耐薬品性が低下したり、ポリエステル系樹脂が結晶化し、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。なお、かかる含有量が多すぎると初期粘着力(タック)が低下する傾向がある。
【0022】
また、本発明においては、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位として、初期粘着力(タック)を向上させる観点から、炭素数(カルボキシ基の炭素を含む)4以上の脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位を含有することが好ましく、なかでも炭素数(カルボキシ基の炭素を含む)6~12の脂肪族ジカルボン酸類を含有することがより好ましく、アジピン酸類、セバシン酸類、アゼライン酸類由来の構造単位を含有することが特に好ましい。
【0023】
かかる炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位の含有量としては、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位全体に対して、5~90モル%であることが好ましく、より好ましくは10~80モル%、さらに好ましくは15~60モル%、特に好ましくは20~40モル%である。かかる含有量が少なすぎるとポリエステル系樹脂のガラス転移温度が高くなりすぎ、充分な粘着力が得られなくなる傾向があり、多すぎると、耐薬品性が低下したり、ポリエステル系樹脂が結晶化し充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0024】
本発明においては、粘着物性の点から、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位として、非対称の芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位、および炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位が含まれることも好ましい。その場合、非対称の芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位と炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位との含有比率(モル比)は、(a1-1)/(a1-2)=1/99~99/1であることが好ましく、より好ましくは40/60~90/10、特に好ましくは55/45~80/20である。
【0025】
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸類(a1-3)由来の構造単位が含まれていてもよく、なかでも製造の際に比較的ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸類由来の構造単位が含まれることが好ましい。
【0026】
かかる三価以上の多価カルボン酸類(a1-3)由来の構造単位の含有量としては、粘着剤とした場合の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%である。かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0027】
[ポリオール(a2)由来の構造単位]
ポリオール(a2)由来の構造単位としては、二価アルコール由来の構造単位、三価以上のポリオール由来の構造単位が挙げられる。
【0028】
上記二価アルコール由来の構造単位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール由来の構造単位;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環式ジオール由来の構造単位;
4,4’-チオジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-、およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール、およびそれらのエチレンオキサイド付加体やプロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール由来の構造単位等が挙げられる。
さらに、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステル由来の構造単位や、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸や、エルカ酸等から誘導されるダイマージオール由来の構造単位、グリセロールモノステアレート由来の構造単位等が挙げられる。
また、上記三価以上のポリオール由来の構造単位としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール由来の構造単位等が挙げられる。
これらポリオール(a2)由来の構造単位は単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
【0029】
本発明においては、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を下げ、初期粘着力を向上させる点から、ポリオール(a2)由来の構造単位として、直鎖構造の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位を含有することが好ましく、より好ましくは、炭素数2~18の直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造単位を含有することであり、特に好ましくは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール由来の構造単位を含有することである。
【0030】
直鎖構造の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位の含有量は、ポリオール(a2)由来の構造単位全体に対して、5~100モル%であることが好ましく、より好ましくは10~95モル%、さらに好ましくは15~90モル%、特に好ましくは20~80モル%、殊に好ましくは30~70モル%である。かかる含有量が少なすぎると、安定した樹脂形成が得られにくくなる傾向がある。
【0031】
また、上記ポリオール(a2)由来の構造単位のなかでも結晶性を崩すことができる点から、側鎖に炭化水素基を有するジオール(a2-2)由来の構造単位を含有することが好ましい。このような側鎖に炭化水素基を有するジオール(a2-2)由来の構造単位としては、例えば、ジプロピレングリコール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の分岐構造を有する脂肪族ジオール由来の構造単位や、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の分岐構造を有する脂環式ジオール由来の構造単位や、オレイン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマージオール由来の構造単位等が挙げられる。なかでも、分岐構造を有する脂肪族ジオール由来の構造単位が好ましく、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール由来の構造単位が特に好ましい。
【0032】
上記側鎖に炭化水素基を有するジオール(a2-2)由来の構造単位の含有量は、ポリオール(a2)由来の構造単位全体に対して5~95モル%であることが好ましく、より好ましくは10~90モル%、さらに好ましくは15~80モル%、特に好ましくは20~70モル%、殊に好ましは30~60モル%である。かかる含有量が少なすぎると、樹脂が結晶化し充分な粘着性能が得られにくい傾向があり、多すぎると、ポリエステル系樹脂の製造において反応時間が長くなる傾向がある。
【0033】
さらに、本発明においては、ポリエステル系樹脂中に後述の架橋剤(D)との反応点を形成し、凝集力を高める点からポリオール(a2)由来の構造単位として、三価以上のポリオール(a2-3)由来の構造単位が含まれることも好ましい。三価以上のポリオール(a2-3)由来の構造単位のなかでも、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール由来の構造単位が好ましく、比較的ゲルが発生しにくい点でトリメチロールプロパン由来の構造単位が含まれることが特に好ましい。
【0034】
かかる三価以上のポリオール(a2-3)由来の構造単位の含有量としては、ポリオール(a2)由来の構造単位全体に対して、10モル%以下であることが好ましく、さらには0.1~5モル%であることが好ましい。かかる三価以上のポリオール由来の構造単位の含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂の製造が困難となる傾向がある。
【0035】
ここで、上記ポリエステル系樹脂の各成分由来の構造単位割合(組成割合)は、例えば、NMRにより求めることができる。
【0036】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂は、上記多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)とを上記の含有量の範囲において、適宜選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0037】
上記多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a1)1当量あたり、ポリオール(a2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール(a2)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0038】
重縮合反応に際しては、まずエステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
【0039】
かかるエステル化反応においては、通常触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましく、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。
【0040】
該触媒の配合量は、全共重合成分に対して重量基準で1~10000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5000ppm、さらに好ましくは20~3000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0041】
エステル化反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~260℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧下である。
【0042】
上記エステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応で用いるものと同様の触媒を、さらに同程度の量配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0043】
かくして重合体(A)の好ましい態様の1つであるポリエステル系樹脂が得られる。
【0044】
〔アクリル系樹脂〕
本発明で用いることができるアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)と官能基含有モノマー(α2)、必要に応じて、その他の共重合性モノマー(α3)とを共重合させて得られるものである。
なお、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0045】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)は、アルキル基の炭素数が、通常1~20であり、好ましくは1~12、特に好ましくは1~8、さらに好ましくは1~4である。炭素数が大きすぎると、得られるアクリル系樹脂とポリエステル系樹脂(B)とが均一に混合しにくくなり粘着力が低下する傾向がある。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)のなかでも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ、および原料入手しやすさの点で、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)の重合成分中における含有量は、通常30~99重量%であり、好ましくは40~98重量%、特に好ましくは50~95重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)の含有量が上記範囲内であると、粘着力に優れる傾向がある。
【0048】
上記官能基含有モノマー(α2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー等を挙げることができる。これらの官能基含有モノマーは、単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
【0049】
上記官能基含有モノマー(α2)の重合成分中における含有量は、通常0.01~30重量%であり、好ましくは0.2~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、充分な粘着力が得られない傾向がある。
【0050】
上記水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましく、具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;
2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。
上記水酸基含有モノマーのなかでも、後述する架橋剤(D)との反応性に優れる点で、1級水酸基含有モノマーが好ましく、特には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
上記水酸基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常0.1~20重量%であり、好ましくは0.2~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、充分な粘着力が得られない傾向がある。
【0052】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。なかでも共重合性の点で(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0053】
上記カルボキシ基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、被着体を変質させやすい傾向や、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0054】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
上記アミノ基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0056】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等が挙げられる。
【0057】
上記アミド基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際に乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0058】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0059】
上記グリシジル基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0060】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチロールプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0061】
上記スルホン酸基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0062】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0063】
上記アセトアセチル基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、粘着シートとする際の乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0064】
上記その他の共重合性モノマー(α3)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記その他の共重合性モノマー(α3)の重合成分中における含有量としては、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。その他の共重合性モノマー(α3)が多すぎると粘着力が低下しやすくなる傾向がある。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)、官能基含有モノマー(α2)、その他の共重合性モノマー(α3)を共重合成分として重合することにより、(メタ)アクリル系樹脂を製造するのであるが、かかる重合法としては通常、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法により適宜行うことができる。なかでも溶液ラジカル重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系樹脂を製造できる点で好ましい。
【0067】
上記溶液ラジカル重合では、例えば、有機溶剤中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(α1)、官能基含有モノマー(α2)、その他の共重合性モノマー(α3)等のモノマー成分および重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは通常50~98℃で0.1~20時間程度重合すればよい。
【0068】
上記溶液ラジカル重合に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0069】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0070】
上記の重合方法によって、重合体(A)の好ましい態様の1つであるアクリル系樹脂が得られる。
【0071】
上記で説明したポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の重合体(A)は、以下の物性を有することが好ましい。
【0072】
上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)は、粘着物性の点から、通常-70~40℃であり、好ましくは-50~35℃、より好ましくは-40~30℃、さらに好ましくは-30~25℃、特に好ましくは-25~20℃、殊に好ましくは-20~15℃、最も好ましくは-10~10℃である。かかるガラス転移温度(TgA)が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着力が低下し、指圧程度の圧力で粘着力が発揮しにくくなり、作業性が低下する傾向があり、低すぎると凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向がある。
【0073】
ここで、上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)は、重合体(A)がポリエステル系樹脂の場合は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90~100℃で、温度上昇速度は、10℃/分である。
【0074】
また、上記重合体(A)がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、下記のFoxの式に当てはめて算出した値である。
ここで、アクリル系樹脂を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K 7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0075】
また、上記重合体(A)のガラス転移温度(TgA)は、後述するポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)よりも高いことが、粘着物性の点から好ましい。さらには、重合体(A)のガラス転移温度がポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度よりも5~80℃高いことがより好ましく、10~60℃高いことがさらに好ましく、20~40℃高いことが特に好ましく、25~35℃高いことが殊に好ましい。
【0076】
上記重合体(A)がポリエステル系樹脂の場合の重量平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から通常5000~300000である。好ましくは8000~200000であり、特に好ましくは10000~150000、さらに好ましくは20000~100000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向がある。また、重量平均分子量が大きすぎると基材への密着性が低下する傾向がある。
【0077】
上記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY APC XT 45を2本、の計4本を直列にして用いることにより測定される。
【0078】
また、上記重合体(A)がアクリル系樹脂の場合の重量平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から通常200000~1500000である。好ましくは300000~1000000であり、特に好ましくは400000~800000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向がある。また、重量平均分子量が大きすぎると基材への密着性が低下する傾向がある。
【0079】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして用いることにより測定される。
【0080】
また、上記重合体(A)の水酸基価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下、特に好ましくは15mgKOH/g以下である。水酸基価が高すぎると、架橋剤(D)との架橋効率が低下する傾向がある。
【0081】
上記重合体(A)の酸価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは5mgKOH/g以下、さらに好ましくは3mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、殊に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。酸価が高すぎると、加水分解が進行しやすくなる傾向や、粘着剤層の一方の面に、金属等の層を貼り合わせた場合に腐食させてしまう傾向がある。
【0082】
ここで、上記本発明における水酸基価、酸価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0083】
<ポリエステル系樹脂(B)>
上記ポリエステル系樹脂(B)は、粘着付与剤としての効果を奏するものであり、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有し、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたものであり、上記反応性分子末端は封鎖剤(b3)により封鎖されることが好ましい。
また、上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位、上記ポリオール(b2)由来の構造単位および封鎖剤(b3)の少なくともひとつに芳香族構造単位を含有することが耐薬品性に優れる点から好ましく、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位および/または封鎖剤(b3)に芳香族構造単位を含有することがより好ましく、封鎖剤(b3)に芳香族構造単位を含有することが特に好ましい。
【0084】
上記ポリエステル系樹脂(B)は、反応性分子末端として、多価カルボン酸類(b1)に由来するカルボキシ基末端および、ポリオール(b2)に由来する水酸基末端の少なくとも1つを有する末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’)の反応性分子末端を後述する封鎖剤(b3)で封鎖することにより得られる。
以下、末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’)について説明する。
【0085】
〔末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’)〕
上記末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’)〔以下、「ポリエステル系樹脂(B’)」と称する場合がある〕は、通常、構成原料として、多価カルボン酸類(b1)およびポリオール(b2)を含む共重合成分を共重合することにより得られ、そのポリエステル系樹脂(B’)は、樹脂組成として、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位およびポリオール(b2)由来の構造単位を有するようになる。
【0086】
〔多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位〕
上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位としては、前記多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位で説明したものが挙げられる。
【0087】
上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位のなかでも、ポリエステル系樹脂の結晶性を下げる点、耐薬品性に優れる点から、芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位が含まれることが好ましく、非対称の芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位としては、例えば、フタル酸類、イソフタル酸類、1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類由来の構造単位等が挙げられる。なかでも反応性の点でイソフタル酸類由来の構造単位が特に好ましい。
【0088】
かかる芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位の含有量は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位全体に対して、0.1~100モル%であることが好ましく、より好ましくは5~80モル%、さらに好ましくは10~70モル%、特に好ましくは20~60モル%である。かかる含有量が少なすぎると、耐薬品性が低下したり、ポリエステル系樹脂(B)が結晶化し、充分な粘着性能が得られなくなる傾向があり、多すぎると初期粘着力(タック)が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が好ましい範囲内であると、初期粘着力(タック)に優れる傾向がある。
【0089】
また、上記多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位として、初期粘着力(タック)を向上させる観点から、炭素数(カルボキシ基の炭素を含む)4以上の脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含有することが好ましく、なかでも炭素数(カルボキシ基の炭素を含む)6~12の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造単位を含有することがより好ましく、アジピン酸類、セバシン酸類、アゼライン酸類由来の構造単位を含有することが特に好ましい。
【0090】
かかる炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位の含有量としては、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位全体に対して、10~100モル%であることが好ましい。とりわけ、20~95モル%であることが好ましく、さらに好ましくは30~90モル%、特に好ましくは40~80モル%である。かかる含有量が少なすぎるとポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が高くなりすぎ、充分な粘着力が得られなくなる傾向がある。なお、かかる含有量が好ましい範囲内であると、ポリエステル系樹脂(B)の結晶化が抑制され、粘着剤の初期粘着力に優れる傾向がある。
【0091】
本発明においては、粘着物性の点から、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位として、非対称の芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位、および炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含有することも好ましい。その場合、非対称の芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位と炭素数4以上の脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位との含有比率(モル比)は、(b1-1)/(b1-2)=1/99~99/1であることが好ましく、特に好ましくは5/95~90/10、さらに好ましくは20/80~80/20、殊に好ましくは30/70~70/30である。
【0092】
また、ポリエステル系樹脂中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸類(b1-3)由来の構造単位を用いることもでき、なかでも製造の際に比較的ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸類を用いることが好ましい。
【0093】
かかる三価以上の多価カルボン酸類(b1-3)由来の構造単位の含有量としては、粘着剤とした場合の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸類(b1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0094】
〔ポリオール(b2)〕
上記ポリオール(b2)由来の構造単位としては、前記ポリオール(a2)由来の構造単位で説明したものが挙げられる。
【0095】
上記ポリオール(b2)由来の構造単位としては、ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)を下げ、初期粘着力を向上させる点から、直鎖構造の脂肪族ジオール(b2-1)由来の構造単位を含有することが好ましく、より好ましくは、炭素数2~18の直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造単位を含有することであり、特に好ましくは、1,6-ヘキサンジオール由来の構造単位を含有することである。
【0096】
直鎖構造の脂肪族ジオール(b2-1)由来の構造単位の含有量は、ポリオール(b2)由来の構造単位全体に対して、1~100モル%であることが好ましく、より好ましくは5~90モル%、さらに好ましくは10~80モル%、特に好ましくは15~70モル%、殊に好ましくは20~60モル%である。かかる含有量が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(B’)の製造時の反応性が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が好ましい範囲内であると、ポリエステル系樹脂(B)の結晶化が抑制され、粘着剤の初期粘着力に優れる傾向がある。
【0097】
また、上記ポリオール(b2)由来の構造単位のなかでも結晶性を崩すことができる点から、側鎖に炭化水素基を有するジオール(b2-2)由来の構造単位を含有することが好ましい。上記炭化水素基を有するジオール(b2-2)由来の構造単位としては、前記炭化水素基を有するジオール(a2-2)で説明したものが挙げられる。なかでも、分岐構造を有する脂肪族ジオール由来の構造単位を含有することが好ましく、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール由来の構造単位を含有することが特に好ましい。
【0098】
上記側鎖に炭化水素基を有するジオール(b2-2)由来の構造単位の含有量は、ポリオール(b2)由来の構造単位全体に対して5~100モル%であることが好ましく、特には15~80モル%、さらには30~70モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(B)が結晶化し、粘着剤の初期粘着力が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が好ましい範囲内であると、ポリエステル系樹脂(B’)の製造時の反応性が高くなる傾向がある。
【0099】
さらには、ポリオール(b2)由来の構造単位として、三価以上のポリオール(b2-3)由来の構造単位が含まれていてもよい。かかる三価以上のポリオール(b2-3)由来の構造単位の含有量としては、ポリオール(b2)由来の構造単位全体に対して、10モル%以下であることが好ましく、さらには0.01~5モル%、特に好ましくは0.05~3モル%、殊に好ましくは0.1~1モル%であることが好ましい。かかる三価以上のポリオール由来(b2-3)の構造単位の含有量が多すぎると、タック性が低下する傾向がある。
【0100】
上記多価カルボン酸類(b1)とポリオール(b2)とを前述のポリエステル系樹脂の製造方法に準じた方法により反応させることにより、末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’)が得られる。
【0101】
なお、上記ポリエステル系樹脂(B’)の多価カルボン酸類(b1)とポリオール(b2)の配合割合としては、水酸基末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、多価カルボン酸類(b1)1当量あたり、ポリオール(b2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.03~1.8当量であり、より好ましくは1.05~1.7、殊に好ましくは1.1~1.6である。ポリオール(b2)の配合割合が低すぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向があり、高すぎると粘着剤として凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向がある。
また、カルボキシ末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、ポリオール(b2)1当量あたり、多価カルボン酸類(b1)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.03~1.8当量であり、より好ましくは1.05~1.7、殊に好ましくは1.1~1.6である。多価カルボン酸類(b1)の配合割合が低すぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向があり、高すぎると粘着剤として凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向がある。
【0102】
このようにして得られるポリエステル系樹脂(B’)は、反応性分子末端として、通常、多価カルボン酸類(b1)に由来するカルボキシ基末端および、ポリオール(b2)に由来する水酸基末端の少なくとも1つを有するものであり、耐加水分解性の点から水酸基末端を有することがより好ましい。
【0103】
上記ポリエステル系樹脂(B’)のガラス転移温度(Tg)は、粘着物性の点から、通常、-80~30℃であり、好ましくは-75~20℃、さらに好ましくは-70~0℃、特に好ましくは-65~-20℃、殊に好ましくは-60~-40℃である。かかるガラス転移温度(Tg)が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着力が低下し、指圧程度の圧力で粘着力が発揮しにくくなり、作業性が低下する傾向があり、低すぎると凝集力が低下し、粘着シートが変形しやすくなってしまい外観を損ねる傾向がある。なお、上記ポリエステル系樹脂(B’)のガラス転移温度は、前記重合体(A)で説明したポリエステル系樹脂のガラス転移温度と同じ方法により測定することができる。
【0104】
また、上記ポリエステル系樹脂(B’)の数平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から、通常、200~30000であり、好ましくは500~20000、特に好ましくは1000~10000、さらに好ましくは1000~9000、殊に好ましくは1500~8000、より好ましくは2000~6000である。かかる数平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向がある。また、数平均分子量が大きすぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向がある。なお、上記数平均分子量は、前記重合体(A)で説明したポリエステル系樹脂の重量平均分子量と同じ方法により測定することができる。
【0105】
上記ポリエステル系樹脂(B’)の水酸基価は、水酸基末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、5~200mgKOH/gであり、好ましくは10~150mgKOH/g以下、さらに好ましくは15~100mgKOH/gである。水酸基価が高すぎると凝集力が低下する傾向があり、低すぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向がある。
また、カルボキシ基末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、10mgKOH/g以下であり、好ましくは5mgKOH/g以下、さらに好ましくは3mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、殊には0.5mgKOH/g以下である。なお、下限は0.0mgKOH/gである。水酸基価が高すぎるとタック性が低下する傾向がある。
【0106】
上記ポリエステル系樹脂(B’)の酸価は、水酸基末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、10mgKOH/g以下であり、好ましくは5mgKOH/g以下、さらに好ましくは3mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、殊には0.5mgKOH/g以下である。なお、下限は0.0mgKOH/gである。酸価が高すぎると凝集力の低下や、加水分解が進行しやすい傾向がある。
また、カルボキシ基末端を有するポリエステル系樹脂(B’)とする場合は、5~200mgKOH/gであり、好ましくは10~150mgKOH/g、さらに好ましくは15~100mgKOH/gである。酸価が高すぎると、凝集力の低下や、加水分解が進行しやすくなる傾向や、粘着剤層の一方の面に、金属等の層を貼り合わせた場合に腐食させてしまう傾向がある。
【0107】
前述のとおり上記ポリエステル系樹脂(B’)は、反応性分子末端として、通常、カルボキシ基末端および水酸基末端の少なくとも1つを有するものである。本発明で用いるポリエステル系樹脂(B)は、上記ポリエステル系樹脂(B’)の反応性分子末端の少なくとも1つを封鎖剤(b3)によって、封鎖することによって得られる。
【0108】
〔封鎖剤(b3)〕
上記封鎖剤(b3)は、上記ポリエステル系樹脂(B’)の反応性末端と反応性を有する官能基を含有するものであり、例えば、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボキシ基含有化合物、ヒドロキシ基含有化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0109】
本発明において、上記イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子構造中に1つ有するモノイソシアネートが好ましい。
上記モノイソシアネート化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、n-ブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ネオペンチルイソシアネート、2-エチル-ヘキシルイソシアネート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、イソシアン酸オクタデシル等の脂肪族モノイソシアネート化合物、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、1-ナフチルイソシアネート、2-ナフチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等の芳香族モノイソシアネート化合物等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、反応性、耐薬品性に優れる点で芳香族モノイソシアネート化合物が好ましく、フェニルイソシアネートが特に好ましい。
【0110】
本発明において、上記カルボジイミド基含有化合物としては、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個有するモノカルボジイミドが好ましい。
上記モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、およびナフチルカルボジイミド等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0111】
本発明において、上記エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を分子構造中に1つ有する単官能エポキシ化合物が好ましく、例えば、モノグリシジルエステル化合物やモノグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0112】
上記モノグリシジルエステル化合物としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘニン酸グリシジルエステル、バーサチック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0113】
上記モノグリシジルエーテル化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0114】
本発明において、上記オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を分子構造中に1つ有する単官能オキサゾリン化合物が好ましい。具体的には、例えば、2-フェニル(2-オキサゾリン)、2-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0115】
本発明において、上記カルボキシ基含有化合物としては、カルボキシ基を分子構造中に1つ有するモノカルボン酸が好ましく、特に好ましくは飽和モノカルボン酸等が好ましい。
上記モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ピロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2-メチルブタン酸、ピバル酸、ヘキサン酸、4-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、へプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸、トリアコンタン酸などの脂肪族モノカルボン酸類、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸類が挙げられ、これらを単独もしくは2種以上を併用することができる。なかでも、反応性、耐薬品性に優れる点で芳香族モノカルボン酸類が好ましい。
【0116】
本発明において、上記ヒドロキシ基含有化合物としては、ヒドロキシ基を分子構造中に1つ有するモノアルコールが好ましい。
上記モノアルコールとしては、例えば、ブタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノールなどの脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコール、3-フェニル-1-プロパノールなどの芳香族モノアルコールが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上を併用することができる。
【0117】
なお、本発明においては、封鎖剤(b3)として、上記の官能基を1つ有する化合物の他に、2つ以上の官能基を有する化合物を本発明の効果を損なわない範囲で用いることもできる。
【0118】
上記封鎖剤(b3)のなかでも、ポリエステル系樹脂(B’)のヒドロキシ基末端との反応性に優れる点でイソシアネート基含有化合物が好ましい。
【0119】
また、上記封鎖剤(b3)は、粘着物性に優れる点から、数平均分子量が50~5000であることが好ましく、60~3000であることがより好ましく、70~1000であることが特に好ましく、80~500であることがさらに好ましく、90~300であることが殊に好ましい。かかる分子量が小さすぎると揮発性が高くなる傾向があり、大きすぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向がある。
【0120】
本発明で用いるポリエステル系樹脂(B)は、粘着物性に優れる点から、上記封鎖剤(b3)により少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されてなることが好ましく、より好ましくは、全ての反応性分子末端が封鎖されてなることである。
【0121】
上記封鎖剤(b3)を用いたポリエステル系樹脂(B’)の反応性分子末端の封鎖は、公知の方法で行えばよく、例えば、有機溶剤中で、ポリエステル系樹脂(B’)と上記封鎖剤(b3)とを反応させてもよい。
【0122】
上記ポリエステル系樹脂(B’)と封鎖剤(b3)との反応比率は、ポリエステル系樹脂(B’)の水酸基価、および酸価に応じて、すなわち、ポリエステル系樹脂(B’)が有するカルボキシ基、および水酸基に応じて最適化させることが好ましく、ポリエステル系樹脂(B’)が有するカルボキシ基100モル%、または、水酸基100モル%に対し、封鎖剤(b3)が有する反応性分子末端と反応する官能基を通常、80~120モル%、好ましくは90~110モル%、より好ましくは95~105モル%、特に好ましくは97~103モル%、さらに好ましくは98~102モル%、殊に好ましくは99~101モル%用いればよい。例えば、封鎖剤(b3)として、イソシアネート基含有化合物を用いる場合、イソシアネート基含有化合物は、カルボキシ基および水酸基と反応性を有することから、ポリエステル系樹脂(B’)が有するカルボキシ基およびヒドロキシ基の合計100モル%に対して、上記の範囲のイソシアネート基含有化合物を用いればよい。
【0123】
上記有機溶剤としては、封鎖剤(b3)と反応性を示さないものを用いればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0124】
上記ポリエステル系樹脂(B’)と封鎖剤(b3)との反応温度は、通常、20~80℃、好ましくは30~60℃であり、反応時間は、通常、0.1~24時間、好ましくは0.5~12時間、より好ましくは0.5~3時間である。
【0125】
上記の方法により、少なくとも1つの反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B)を得ることができる。
【0126】
上記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)は、-80~30℃であることが好ましく、-70~25℃であることがより好ましく、-60~20℃であることがさらに好ましく、-55~0℃であることが特に好ましく、-50~-10℃であることが殊に好ましく、-40~-15℃であることが最も好ましい。ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が低すぎると、凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向があり、ガラス転移温度が高すぎると、柔軟性が失われ、初期粘着力が低下し、指圧程度の圧力で粘着力が発揮しにくくなる傾向がある。そして、すでに述べているとおり、重合体(A)のガラス転移温度との関係においては、重合体(A)のガラス転移温度(TgA)が、ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)よりも高い温度であることが好ましい。
【0127】
上記ポリエステル系樹脂(B)は非晶性であることが好ましい。結晶性を有する場合、結晶融解熱は20J/g以下であることが好ましく、10J/g以下であることがより好ましく、5J/g以下であることが特に好ましく、3J/g以下であることがさらに好ましく、1J/g以下であることが殊に好ましい。結晶融解熱が高すぎると、保存安定性やタック性が低下したり、重合体(A)との相溶性が劣る傾向がある。
【0128】
ここで、上記ポリエステル系樹脂(B)の結晶融解熱は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90~100℃で、温度上昇速度は、10℃/分であり、100℃まで昇温し完全融解させたのち、-90℃まで降温し、再び100℃まで昇温させた場合の融解発熱の熱量を結晶融解熱とした。
【0129】
また、上記ポリエステル系樹脂(B)の数平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から300~30000である。好ましくは500~20000であり、特に好ましくは1000~10000、さらに好ましくは1000~8000、殊に好ましくは1500~6000、より好ましくは2000~4000である。かかる数平均分子量が小さすぎるとポリエステル系樹脂(B)を粘着付与剤として用いた場合に粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向がある。また、数平均分子量が大きすぎると重合体(A)との相溶性が低下する傾向がある。なお、上記数平均分子量は、前記重合体(A)で説明したポリエステル系樹脂の重量平均分子量と同じ方法により測定することができる。
【0130】
上記ポリスエテル系樹脂(B)の水酸基価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、8mgKOH/g以下であることがより好ましく、5mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、3mgKOH/g以下であることが特に好ましく、1mgKOH/g以下であることが殊に好ましく、0.5mgKOH/g以下であることが最も好ましい。なお、下限は0mgKOH/gである。水酸基価が高すぎると、重合体(A)と架橋し、粘着力、およびタック性が低下する傾向がある。
【0131】
上記ポリスエテル系樹脂(B)の酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、特には5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましく、0.5mgKOH/g以下であることが殊に好ましい。なお、下限は0mgKOH/gである。酸価が高すぎると、重合体(A)と架橋し、粘着力、およびタック性が低下したり、耐加水分解性が低下する傾向がある。
【0132】
上記ポリエステル系樹脂(B)の酸価と水酸基価の合計は15mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることがより好ましく、5mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、3mgKOH/g以下であることが特に好ましく、1mgKOH/g以下であることが殊に好ましく、0.5mgKOH/g以下であることが最も好ましい。なお、下限は0mgKOH/gである。酸価と水酸基価の合計が高すぎると、重合体(A)と架橋し、粘着力、およびタック性が低下したり、耐加水分解性が低下する傾向がある。
【0133】
上記ポリエステル系樹脂(B)の含有量は、重合体(A)100重量部に対して0.1~180重量部であることが好ましく、1~175重量部であることがより好ましく、5~170重量部であることがさらに好ましく、10~160重量部であることが特に好ましく、30~150重量部であることがより好ましく、40~140重量部であることがさらに好ましく、50~130重量部であることが特に好ましく、60~120重量部であることが殊に好ましく、70~110重量部であることが最も好ましい。ポリエステル系樹脂(B)の含有量が多すぎると、凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向があり、含有量が少なすぎるとタック性が低下する傾向がある。
【0134】
また、上記ポリエステル系樹脂(B)の含有量は、粘着剤組成物100重量%に対して0.1~75重量%であることが好ましく、1~70重量%であることがより好ましく、5~65重量%であることがさらに好ましく、10~60重量%であることが特に好ましく、20~55重量%であることが殊に好ましく、30~50重量%であることが最も好ましい。ポリエステル系樹脂(B)の含有量が多すぎると、凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向があり、含有量が少なすぎるとタック性が低下する傾向がある。
【0135】
<加水分解抑制剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、さらに加水分解抑制剤(C)を含有することが好ましい。かかる加水分解抑制剤(C)は、長期耐久性を担保するために含有されるものである。
【0136】
上記加水分解抑制剤(C)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、重合体(A)が有するカルボキシ基末端と反応して結合する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、等の官能基を含有する化合物等が挙げられる。上記加水分解抑制剤(C)は、単独でもしくは2種以上を併用することができる。なかでも、カルボジイミド基含有化合物が、カルボン酸末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0137】
上記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のカルボジイミド系化合物が挙げられ、なかでもカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特にはカルボジイミド基を分子内に3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。なお、上記多価カルボジイミド系化合物が、分子内に含有するカルボジイミド基の数は通常50個以下であり、カルボジイミド基が多すぎると分子構造が大きくなりすぎるために、重合体(A)との相溶性が低下し好ましくない傾向がある。
【0138】
また、上記カルボジイミド基含有化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成する高分子量ポリカルボジイミドを用いることも好ましい。
【0139】
このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。高分子量ポリカルボジイミドを合成する場合は、例えば、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0140】
かかるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0141】
さらに、上記高分子量ポリカルボジイミドは末端イソシアネート基が封止剤によって封止されているものが、保存安定性の点で好ましい。封止剤としては、イソシアネート基と反応する活性水素を有する化合物、またはイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。例えば、カルボキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選ばれる置換基を1個有するモノアルコール類、モノカルボン酸類、モノアミン類、およびモノイソシアネート類が挙げられる。
【0142】
上記カルボジイミド基含有化合物のカルボジイミド当量は、好ましくは、50~10000、特には100~1000、さらには150~500であることが好ましい。
なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
【0143】
また、上記カルボジイミド基含有化合物は、市販品を用いてもよく、カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらのなかでも、カルボジライト(登録商標)「V-01」、「V-02B」、「V-03」、「V-04K」、「V-04PF」、「V-05」、「V-07」、「V-09」、「V-09GB」は重合体(A)との相溶性に優れる点で好ましい。
【0144】
前記エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
上記グリシジルエステル化合物としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘニン酸グリシジルエステル、バーサチック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0145】
上記グリシジルエーテル化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0146】
前記オキサゾリン基含有化合物としては、ビスオキサゾリン化合物等が好ましい。具体的には、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0147】
これら加水分解抑制剤(C)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いることが好ましく、通常、300~10000、好ましくは1000~5000のものを用いる。
また、加水分解抑制剤(C)としては、耐加水分解性の観点から重量平均分子量が高いものを用いることが好ましい。加水分解抑制剤(C)の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量の上限は通常50000である。
加水分解抑制剤(C)の分子量が小さすぎると、耐加水分解性が低下する傾向がある。なお、分子量が大きすぎると、重合体(A)との相溶性が低下する傾向がある。
【0148】
上記加水分解抑制剤(C)の含有量は、上記重合体(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.3~3重量部、殊に好ましくは0.5~2重量部である。かかる含有量が、多すぎると重合体(A)との相溶性不良により濁りが発生する傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
【0149】
また、上記加水分解抑制剤(C)の含有量は、上記重合体(A)の酸価に応じて、含有量を最適化させることが好ましい。
例えば、重合体(A)がポリエステル系樹脂の場合では、粘着剤組成物中のポリエステル系樹脂の酸性官能基のモル数合計(X)に対する、粘着剤組成物中の加水分解抑制剤(C)の官能基のモル数合計(Y)のモル比〔(Y)/(X)〕が、0.5≦(Y)/(X)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(Y)/(X)≦1000、さらに好ましくは1.5≦(Y)/(X)≦100である。
(X)に対する(Y)のモル比が低すぎると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。なお、(X)に対する(Y)のモル比が高すぎると、重合体(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向がある。
【0150】
<架橋剤(D)>
本発明の粘着剤組成物には、更に架橋剤(D)を含むことが好ましい。
上記架橋剤(D)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物等、重合体(A)に含まれる水酸基、およびカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が挙げられる。これらのなかでも初期粘着力と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にポリイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。
【0151】
かかるポリイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート系化合物のビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(D)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0152】
かかる架橋剤(D)の含有量は、重合体(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、重合体(A)に含まれる水酸基、およびカルボキシ基の少なくとも一方の1当量に対して、架橋剤(D)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(D)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、さらに好ましくは0.5~3当量である。
かかる架橋剤(D)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下する傾向がある。
【0153】
また、上記架橋剤(D)の含有量は、重合体(A)100重量部に対して0.1~20重量部であることが好ましく、0.5~15重量部であることがより好ましく、1~10重量部であることが特に好ましく、1.5~8重量部であることがさらに好ましく、2~6重量部であることが殊に好ましい。架橋剤(D)の含有量が多すぎるとタック性が低下する傾向があり、含有量が少なすぎると凝集力が低下し耐薬品性が低下する傾向がある。
【0154】
上記重合体(A)と架橋剤(D)との反応においては、これら重合体(A)、および架橋剤(D)成分と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0155】
<ウレタン化触媒(E)>
本発明の粘着剤組成物は、ウレタン化触媒(E)をさらに含有することが好ましい。 上記ウレタン化触媒(E)としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0156】
上記有機金属系化合物としては、例えば、ジルコニウム系化合物、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物等を挙げることができる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄等が挙げられる。
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等が挙げられる。
鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
【0157】
また、上記3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7等が挙げられる。
【0158】
これらウレタン化触媒(E)のなかでも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、有機金属系化合物が好ましく、特に好ましくはジルコニウム系化合物であり、殊に好ましくはジルコニウムアセチルアセトネートである。
【0159】
〔触媒作用抑制剤〕
本発明の粘着剤組成物においては、ポットライフを延長し、塗工性を向上させる点で上記ウレタン化触媒(E)に触媒作用抑制剤を含有させることが好ましい。
触媒作用抑制剤としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性化合物であり、これらが上記ウレタン化触媒(E)を保護することにより、ウレタン化触媒(E)の溶液状態での触媒活性を低下させ、配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
これらのなかでも、ポットライフと硬化速度のバランスの点から、触媒作用抑制剤としてアセチルアセトンを用いることが好ましい。なお、これらの触媒作用抑制剤は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0160】
触媒作用抑制剤とウレタン化触媒(E)の配合割合(重量比)は、触媒作用抑制剤:ウレタン化触媒(E)=0.001:1~15:1の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.005:1~13:1であり、特に好ましくは0.01:1~10:1である。ウレタン化触媒(E)の含有量に対して、触媒作用抑制剤の含有量が少なすぎるとポットライフが短く塗工性が低下する傾向があり、多すぎると硬化速度が低下する傾向がある。
【0161】
本発明の粘着剤組成物においては、上記重合体(A)、ポリエステル系樹脂(B)、加水分解抑制剤(C)、架橋剤(D)、ウレタン化触媒(E)等の他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、安定剤、耐電防止剤、ポリエステル系樹脂(B)以外の粘着付与剤、等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等の粉体、粒子状等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0162】
上記ポリエステル系樹脂(B)以外の粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、石油系粘着付与剤、キシレン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等が挙げられる。なかでも、タック性、粘着力に優れる点で、石油系粘着付与樹脂やテルペン系粘着付与剤を用いることが好ましく、特にはスチレン系粘着付与剤、テルペンフェノール系粘着付与樹脂が好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0163】
ポリエステル系樹脂(B)以外の粘着付与剤を配合する場合には、重合体(A)100重量部に対して、0.01~50重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~30重量部、さらに好ましくは1~20重量部、殊に好ましは3~10重量部であることが、タック性に優れる点で好ましい。
【0164】
また、本発明の粘着剤組成物は、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0165】
このような粘着剤組成物は、例えば、上記重合体(A)、ポリエステル系樹脂(B)および必要な任意成分等を準備し、重合体(A)の製造時に配合し分散させることにより、もしくは有機溶剤で溶解させた重合体(A)の溶液に配合しミキシングローラーを用いて分散させること等により、得ることができる。
【0166】
また、本発明にかかる粘着剤は、上記粘着剤組成物からなるもの、すなわち、粘着剤組成物が架橋(硬化)されてなるものである。
【0167】
そして、本発明の粘着シートは、上記粘着剤を含有する粘着剤層を有するものである。上記粘着シートは、支持基材の片面または両面に、粘着剤層を有する粘着シートであっても、また、基材を有しない基材レスタイプの基材レス両面粘着シートであってもよい。そして、本発明の粘着シートは、特には、電子部材の貼り合わせに用いる電子部材用粘着シートとして好適である。
なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味である。
【0168】
<粘着シート>
上記粘着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
かかる粘着シートの製造方法としては、公知一般の粘着シートの製造方法にしたがって製造することができ、例えば、基材の一方の面に、上記粘着剤組成物を塗工、乾燥して、粘着剤層を形成し、その表面(基材に接する面の反対面)に離型シートを貼合し、必要により養生することで、基材と粘着剤層とを有し、上記粘着剤層が上記基材の少なくとも片面に設けられた本発明の粘着シートが得られる。
【0169】
あるいは、離型シート上に、上記粘着剤組成物を塗工、乾燥して、粘着剤層を形成し、その表面(離型シートに接する面の反対面)に基材を貼合し、必要により養生することでも、本発明の粘着シートが得られる。
【0170】
また、離型シート上に粘着剤層を形成し、その表面(離型シートに接する面の反対面)に上記離型シートと別の離型シートを貼り合わせることにより、基材を有しない基材レスタイプの基材レス両面粘着シートを製造することができる。
【0171】
得られた粘着シートや基材レス両面粘着シートは、使用時には、上記離型シートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と被着体を貼合する。
【0172】
上記基材としては、例えば、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン製フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリウレタンフィルム;セロハン等が挙げられる。
上記紙としては、例えば、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。
上記布としては、例えば、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、例えば、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が挙げられる。
上記ゴムシートとしては、例えば、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。
上記発泡体シートとしては、例えば、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリアクリルシート、発泡ポリオレフィンシート等が挙げられる。
上記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
これらの基材は、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0173】
これらのなかでも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリアクリルシート、または発泡ポリオレフィンシートからなる基材が好ましく、特には粘着剤との接着性に優れる点でポリエチレンテレフタレートが好ましく、基材と粘着剤との粘着力に優れ、本発明に用いられる粘着剤の効果を顕著に発揮できる点で好ましい。
【0174】
上記離型シートとしては、例えば、上記基材で例示した各種樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡シート、金属箔、これらの複合体等に離型処理したものを使用することができる。なかでも、離型シートとしては、シリコーン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0175】
上記基材として樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルム基材の厚みは特に限定されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、基材フィルムの厚みは、例えば、200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下とすることができる。また、粘着シートの使用目的や使用態様に応じて、基材フィルムの厚みは、70μm以下であってよく、50μm以下でもよく、30μm以下でもよく、20μm以下でもよく、10μm以下でもよい。基材フィルムの厚みを薄くすることにより、粘着シートの総厚みが同じであっても粘着剤層の厚みをより大きくすることができる。このことは、基材との密着性向上の観点から有利となり得る。基材フィルムの厚みの下限は特に制限されないが、粘着シートの取扱い性(ハンドリング性)や加工性等の観点から、通常は0.5μm以上であり、好ましくは2μm以上、特に好ましくは4μm以上である。
【0176】
上記基材として発泡体基材を用いる場合、発泡体基材の厚みは、特に限定されず、粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。接合部を薄型化する観点から、発泡体基材の厚みとしては、通常、0.70mm以下であり、0.40mm以下がより好ましく、0.30mm以下が特に好ましく、0.2mm以下であることが殊に好ましい。また接着界面への薬品浸入量低減等の観点から、発泡体基材の厚みとしては、0.05mm以上が好ましく、0.06mm以上がより好ましく、0.07mm以上が特に好ましく、0.10mm以上が殊に好ましい。発泡体基材の厚みが大きくなると、耐衝撃性が発揮される傾向にある。
【0177】
上記粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を用いればよい。
【0178】
上記粘着剤組成物を塗工した後の乾燥条件としては、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃である。また、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは1~5分間である。
【0179】
上記養生処理の条件としては、温度は通常室温(23℃)~70℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、好ましくは23℃で3~14日間、40℃で1~10日間等の条件で行えばよい。
【0180】
上記粘着シート、および基材レス両面粘着シートの粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、いずれも0.5~500μmであることが好ましく、特に好ましくは1~300μm、さらに好ましくは5~200μm、殊に好ましくは10~100μmである。かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、50μm以上とすることが好ましい。
【0181】
なお、上記粘着剤層の厚みは、デジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、ID-C112B)を用い、粘着シート全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる値である。
【0182】
上記粘着剤層のゲル分率については、耐薬品性と粘着力の点から5重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは10~80重量%、さらに好ましくは15~60重量%、殊に好ましくは20~40重量%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する懸念がある。
【0183】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、PETフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0184】
さらに、かかる粘着シートは、必要に応じて、粘着剤層の外側に離型シートを設け、粘着剤層を保護してもよい。また、粘着剤層が基材の片面に形成されている粘着シートでは、基材の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、上記剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。
【0185】
また、本発明の粘着剤は、種々の部材の貼り合わせに用いることができるが、なかでも、光学部材の貼り合わせに用いる光学部材用粘着剤として用いることが好ましい。かかる粘着剤組成物からなる粘着剤の粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、上記粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0186】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型フィルムを剥離して、粘着剤層と被着体を貼合する。かかる離型フィルムとしては、シリコーン系の離型フィルムを用いることが好ましい。
【実施例
【0187】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるガラス転移温度や重量平均分子量、数平均分子量、酸価、水酸基価等に関しては、前述の方法に従って測定した。
【0188】
下記の通り各成分を用意した。
以下のポリエステル系樹脂の製造例で記載する多価カルボン酸類である各成分のモル%は、多価カルボン酸類の合計量を100モル%とした場合のモル比を示す。
また、以下の製造例で記載するポリオールである各成分のモル%は、ポリオールの合計量を100モル%とした場合のモル比を示す。
【0189】
〔重合体A〕
〔ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管、および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸386部、アジピン酸146部、ポリオール(a2)としてエチレングリコール113部、1,6-ヘキサンジオール216部、ネオペンチルグリコール138部、触媒として二酸化ゲルマニウム0.04部仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。
その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
得られたポリエステル系樹脂(A-1)のガラス転移温度(Tg)は-5℃、数平均分子量は10000、重量平均分子量(Mw)は33000であった。その他の諸物性等は後記の表1の通りであった。
また、出来上がり成分割合は、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸/アジピン酸=70モル%/30モル%、ポリオール(a2)としてエチレングリコール/1,6-ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール=35モル%/39モル%/26モル%であった。
【0190】
〔ポリエステル系樹脂(B-1)~(B-4)〕
[末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-1)~(B’-4)の製造]
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管、および真空装置の付いた反応缶に、後記の表2に示す通りの多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)、触媒として二酸化ゲルマニウム0.04部仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。
その後、内温260℃まで上げ100hPaまで減圧し、1時間かけてエステル化反応を行い、末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-1)~(B’-4)を得た。
また、得られた末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-1)の出来上がり成分割合は、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸/アジピン酸=5モル%/95モル%、ポリオール(a2)として1,6-ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール=40モル%/60モル%であった。また、酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は92.2mgKOH/gであった。
得られた末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-2)の出来上がり成分割合は多価カルボン酸類(a1)としてアジピン酸=100モル%、ポリオール(a2)として3-メチル-1,5-ペンタンジオール=100モル%であった。また、酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は227.5mgKOH/gであった。
得られた末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-3)の出来上がり成分割合は多価カルボン酸類(a1)としてアジピン酸=100モル%、ポリオール(a2)として3-メチル-1,5-ペンタンジオール=100モル%であった。また、酸価は0.2mgKOH/g、水酸基価は115.3mgKOH/gであった。
得られた末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-4)の出来上がり成分割合は多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸/アジピン酸=50/50モル%、ポリオール(a2)として3-メチル-1,5-ペンタンジオール=100モル%であった。また、酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は56.0mgKOH/gであった。
得られた末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-1)~(B’-4)の諸物性等を後記の表2に示す。
【0191】
[ポリエステル系樹脂(B-1)の製造]
次に、上記の末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-1)100部に対して酢酸エチル40部、封鎖剤としてフェニルイソシアネート19.6部を仕込み、内温60℃で4時間かけて反応し、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B-1)を得た。
得られたポリエステル系樹脂(B-1)の酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は0.0mgKOH/gであった。なお、得られたポリエステル系樹脂(B-1)は、結晶融解熱(J/g)のピークが観察できず、融点がなかった。
【0192】
[ポリエステル系樹脂(B-2)の製造]
上記の末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-2)について、封鎖剤としてフェニルイソシアネート47.3部に変更した以外は上記(B-1)と同様にして、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B-2)を得た。
得られたポリエステル系樹脂(B-2)の酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は4.6mgKOH/gであった。なお、得られたポリエステル系樹脂(B-2)は、結晶融解熱(J/g)のピークが観察できず、融点がなかった。
【0193】
[ポリエステル系樹脂(B-3)の製造]
上記の末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-3)について、封鎖剤としてフェニルイソシアネート24.0部に変更した以外は上記(B-1)と同様にして、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B-3)を得た。
得られたポリエステル系樹脂(B-3)の酸価は0.2mgKOH/g、水酸基価は2.3mgKOH/gであった。なお、得られたポリエステル系樹脂(B-3)は、結晶融解熱(J/g)のピークが観察できず、融点がなかった。
【0194】
[ポリエステル系樹脂(B-4)の製造]
上記の末端封鎖前のポリエステル系樹脂(B’-4)について、封鎖剤としてフェニルイソシアネート11.8部に変更した以外は上記(B-1)と同様にして、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B-4)を得た。
得られたポリエステル系樹脂(B-4)の酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は0.6mgKOH/gであった。なお、得られたポリエステル系樹脂(B-4)は、結晶融解熱(J/g)のピークが観察できず、融点がなかった。
【0195】
上記で得られた、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂(B-1)~(B-4)の諸物性等を後記の表3に示す。また、ポリエステル系樹脂(B)との比較対象として、脂肪酸エステル化合物であるアジピン酸ジオクチルを準備した。上記脂肪酸エステル化合物の諸物性等も後記の表3に示す。
【0196】
〔加水分解抑制剤(C)〕
(C-1):ポリカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、「カルボジライトV-09GB」)
【0197】
〔架橋剤(D)〕
(D-1):トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、「コロネートL55E」)
【0198】
〔ウレタン化触媒(E)〕
(E-1):アセチルアセトンで固形分濃度1%に希釈したジルコニウム系化合物(マツモトファインケミカル社製、「オルガチックスZC-150」)
【0199】
(実施例1)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)(固形分として100部)に対し、ポリエステル系樹脂(B-1)30部、加水分解抑制剤(C-1)0.5部、架橋剤(D-1)4部(固形分)、ウレタン化触媒(E-1)0.05部(固形分)を配合し、撹拌、混合することにより、粘着剤組成物を得た。
【0200】
(実施例2)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-2)30部、架橋剤(D-1)4部を8部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0201】
(実施例3)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-3)50部、架橋剤(D-1)4部を7部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0202】
(実施例4)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-3)100部、架橋剤(D-1)4部を11部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0203】
(実施例5)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-4)50部、架橋剤(D-1)4部を5部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0204】
(実施例6)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-4)100部、架橋剤(D-1)4部を9部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0205】
(実施例7)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B-4)150部、架橋剤(D-1)4部を11部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0206】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)を配合せず、架橋剤(D-1)4部を3部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0207】
(比較例2)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を(B’-4)30部、架橋剤(D-1)4部を6部に変更したに変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組物を得た。
【0208】
(比較例3)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)30部を脂肪族酸エステル化合物としてアジピン酸ジオクチル30部、架橋剤(D-1)4部を3.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組物を得た。
上記実施例および比較例にて得られた粘着剤組成物を用いて、下記の通り粘着シートを作製し、下記の通り評価した。
【0209】
<片面離型フィルム付き粘着シートの作製>
実施例1~7および比較例1~3で得られた粘着剤組成物を、厚み38μmのPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT60」)上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤組成物層の厚みが25μmのPETフィルム付き粘着シートを得た。
次いで、得られたPETフィルム付き粘着シートの粘着剤組成物層表面を厚み38μmのPET製離型フィルム(三井化学東セロ社製、SP-PET-01-BU)で覆い、40℃で4日間エージング処理を行い、片面離型フィルム付き粘着シートを得た。
【0210】
[ゲル分率]
上記で得られた粘着シートを200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量と浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量を測定し、以下の計算式の通り百分率を算出し、ゲル分率(%)とした。ただし、基材の重量は差し引いた。
浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量/浸漬前の粘着剤成分の重量×100(%)
【0211】
(粘着シート評価)
[粘着力(初期)]
上記で得られた片面離型フィルム付き粘着シートを、23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmの大きさに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を、鏡面仕上げステンレス鋼板(SUS-BA板)に2kgローラーを往復させ加圧貼付し、同雰囲気下で24時間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAG-X 50N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離度(N/25mm)を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・5N/25mmより大きく、剥離状態が被着体界面剥離
△・・・3N/25mmより大きく5N/25mm以下であり、剥離状態が被着体界面剥離
×・・・3N/25mm以下、もしくは剥離状態が凝集剥離、基材界面剥離、ジッピング剥離、被着体汚染
【0212】
[粘着力(耐薬品試験後)]
上記で得られた片面離型フィルム付き粘着シートを、23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmの大きさに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を、鏡面仕上げステンレス鋼板(SUS-BA板)に2kgローラーを往復させ加圧貼付し同雰囲気下で30分間養生し、測定サンプルとした。次いで、上記測定サンプルをイソプロピルアルコールが入った容器に浸漬し、60℃雰囲気下で24時間静置した。その後、上記測定サンプルをイソプロピルアルコールより取り出し、付着したイソプロピルアルコールを吹き取り、23℃、50%RHの環境下で30分間養生し、オートグラフ(島津製作所社製、「オートグラフAG-X 50N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離度(N/25mm)を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・5N/25mmより大きく、剥離状態が被着体界面剥離
△・・・3N/25mmより大きく5N/25mm以下であり、剥離状態が被着体界面剥離
×・・・3N/25mm以下、もしくは剥離状態が凝集剥離、基材界面剥離、ジッピング剥離、被着体汚染
【0213】
[保持力]
上記で得られた片面離型フィルム付き粘着シートを、23℃、50%RHの環境下で25mm×50mmの大きさに裁断した後、離型フィルムを剥がし、ステンレス鋼板(SUS304)に2kgローラーを往復させ加圧貼付(貼り付け面積25mm×25mm)し、クリープテスター(テスター産業社製、高温恒湿槽付保持力試験機BE-501)を用いて荷重1kgを60℃雰囲気下で24時間かけて保持力を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
〇・・・ズレなし
△・・・ズレが1.0mm以下
×・・・ズレ1.0mmより大きい、もしくは落下
【0214】
[タック性]
上記で得られた片面離型フィルム付き粘着シートを、23℃、50%RHの環境下で12mm×12mmの大きさに裁断した後、離型フィルムを剥がし、プローブタック(テスター産業社製、TE-6001)を用いてプローブ径5mmΦ、押し込み速度10mm/sec、引き上げ速度10mm/sec、加圧時間5秒、貼付圧力1000gf/cm2でプローブタックを測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
〇・・・0.8N以上
×・・・0.8Nより小さい
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
上記表4の結果より、実施例1~7の粘着剤組成物から得られる粘着シートは、粘着力、耐薬品性、保持力、タック性のいずれにも優れることがわかる。
これに対し、比較例1の粘着剤組成物から得られる粘着シートは、耐薬品性、保持力は有するものの、剥離状態にてジッピング剥離が見られ、タック性についても劣るものであった。また、反応性分子末端が封鎖されていないポリエステル樹脂を用いた比較例2でも同様に剥離状態、タック性に劣るものであった。さらに、反応性分子末端が封鎖されたポリエステル系樹脂のかわりに脂肪酸エステル化合物を用いた比較例3では、脂肪酸エステル化合物の数平均分子量が小さく、エステル結合による繰り返しを有さないため、重合体(A)との相溶性が低くブリードが生じ、粘着力、耐薬品性、タック性に劣るものであった。このことからも、反応性分子末端封鎖されたポリエステル系樹脂を含有する粘着剤組成物が、粘着特性に優れるものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の粘着剤組成物は、粘着力、保持力およびタック性に優れるものであり、そのため、それを用いた粘着剤や粘着シートは、電子部材、光学部材や建築部材等の貼り合わせ用途に好適に用いることができる。