(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】貯留容器および熔湯排出停止機構
(51)【国際特許分類】
B22F 9/08 20060101AFI20250109BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B22F9/08 A
B22D45/00 A
(21)【出願番号】P 2021102174
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 進太郎
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-139707(JP,A)
【文献】特開平03-055488(JP,A)
【文献】特開昭58-189310(JP,A)
【文献】特開2006-052442(JP,A)
【文献】特開平05-320721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00- 9/30
B22D 33/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を熔融した熔湯を貯留する本体と、
該本体の底部に設けられた熔湯を排出するノズルと、
該ノズルを冷却する冷却部と、を備えて
おり、
前記冷却部が、
前記本体の底面に設けられ、前記ノズルが配置される貫通孔を有する伝熱部材と、
該伝熱部材を冷却する冷却装置と、を有している
ことを特徴とする貯留容器。
【請求項2】
前記伝熱部材が、
前記本体の側面より外方まで延びるフランジ部を備えており、
前記冷却装置はフランジ部を冷却するものである
ことを特徴とする
請求項1記載の貯留容器。
【請求項3】
前記冷却装置が、
前記伝熱部材を冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする
請求項1または2記載の貯留容器。
【請求項4】
前記冷却装置は、
互いに分離した、前記伝熱部材を冷却する複数の冷却器を備えており、
該複数の冷却器は、
前記作業位置に配置すると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものである
ことを特徴とする
請求項3記載の貯留容器。
【請求項5】
前記ノズルを加熱する加熱部を備えている
ことを特徴とする
請求項1、2、3または4記載の貯留容器。
【請求項6】
前記冷却部の伝熱部材を加熱する加熱部を備えており、
該加熱部および前記冷却装置が、
前記伝熱部材を加熱または冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする
請求項1、2、3または4記載の貯留容器。
【請求項7】
前記加熱部は、
互いに分離した、前記伝熱部材を加熱する複数の加熱器を備えており、
該複数の加熱器は、
前記作業位置に配置すると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものである
ことを特徴とする
請求項6記載の貯留容器。
【請求項8】
金属を熔融した熔湯を貯留する本体と、該本体の底部に設けられた熔湯を排出するノズルと、を有する貯留容器に設けられる、該貯留容器のノズルから熔湯が排出することを停止する熔湯排出停止機構であって、
該熔湯排出停止機構は、
前記ノズルを冷却する冷却部を備えて
おり、
前記冷却部が、
前記本体の底面に設けられ、前記ノズルが配置される貫通孔を有する伝熱部材と、
該伝熱部材を冷却する冷却装置と、を有している
ことを特徴とする熔湯排出停止機構。
【請求項9】
前記伝熱部材が、
前記本体の側面より外方まで延びるフランジ部を備えており、
前記冷却装置はフランジ部を冷却するものである
ことを特徴とする
請求項8記載の熔湯排出停止機構。
【請求項10】
前記冷却装置が、
前記伝熱部材を冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする
請求項8または9記載の熔湯排出停止機構。
【請求項11】
前記冷却装置は、
互いに分離した、前記伝熱部材を冷却する複数の冷却器を備えており、
該複数の冷却器は、
前記伝熱部材に取り付けると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものである
ことを特徴とする
請求項10記載の熔湯排出停止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留容器および熔湯排出停止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
熔融金属から微粒子状の金属(金属粉末)を製造する方法にガスアトマイズ法や水アトマイズ法を含むアトマイズ法がある。例えば、水アトマイズ法では、金属材料を溶かした液体(熔湯)が容器(タンディッシュ)の底に形成された孔(ノズル)から流出され、ノズルから流出した熔湯に高圧水を噴射衝突させると、細かな金属粉(アトマイズ粉)が製造される(特許文献1、2参照)。
【0003】
このような水アトマイズ法によって金属粉を製造する装置では、金属粉の製造を停止する場合、通常は、タンディッシュの上方開口を通して棒状のストッパをノズルに挿入する等して、ストッパによってノズルを塞ぎノズルからの熔湯の流出を停止させる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-109212号公報
【文献】特開2009-035801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
棒状のストッパをノズルに挿入して熔湯の流出を停止する場合、通常、タンディッシュ内に熔湯を残した状態でストッパをノズルに挿入する。例えば、熔湯表面にスラグが浮かんでいるような場合には、スラグがノズルから流出する前にストッパをノズルに挿入する。ストッパを人力で操作する場合には、ストッパをノズルに挿入する際に熔湯が飛散する可能性があり、また、非常に高温の環境で作業するので、作業者の負担が大きい。一方、ストッパの作動を自動化させる場合にはタンディッシュ近傍にストッパを作動させる装置を設置しなければならないが、タンディッシュ近傍はスペースが狭い上、装置の耐熱性を高くしなければならないので、タンディッシュ近傍に装置を設置すること自体が困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、ノズルからの熔湯の排出を容易に停止できる貯留容器および熔湯排出停止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<貯留容器>
第1発明の貯留容器は、金属を熔融した熔湯を貯留する本体と、該本体の底部に設けられた熔湯を排出するノズルと、該ノズルを冷却する冷却部を備えており、前記冷却部が、前記本体の底面に設けられ、前記ノズルが配置される貫通孔を有する伝熱部材と、該伝熱部材を冷却する冷却装置と、を有していることを特徴とする。
第2発明の貯留容器は、第1発明において、前記伝熱部材が、前記本体の側面より外方まで延びるフランジ部を備えており、前記冷却装置はフランジ部を冷却するものであることを特徴とする。
第3発明の貯留容器は、第1または第2発明において、前記冷却装置が、前記伝熱部材を加熱または冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられていることを特徴とする。
第4発明の貯留容器は、第3発明において、前記冷却装置は、互いに分離した複数の冷却器を備えており、該複数の冷却器は、前記伝熱部材に取り付けると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものであることを特徴とする。
第5発明の貯留容器は、第1、第2、第3または第4発明において、前記ノズルを加熱する加熱部を備えていることを特徴とする。
第6発明の貯留容器は、第1、第2、第3または第4発明において、前記冷却部の伝熱部材を加熱する加熱部を備えており、該加熱部および前記冷却装置が、前記伝熱部材を加熱または冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられていることを特徴とする。
第7発明の貯留容器は、第6発明において、前記加熱部は、互いに分離した、前記伝熱部材を加熱する複数の加熱器を備えており、該複数の加熱器は、前記作業位置に配置すると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものであることを特徴とする。
<熔湯排出停止機構>
第8発明の熔湯排出停止機構は、金属を熔融した熔湯を貯留する本体と、該本体の底部に設けられた熔湯を排出するノズルと、を有する貯留容器に設けられ、該貯留容器のノズルから熔湯が排出することを停止する熔湯排出停止機構であって、該熔湯排出停止機構は、前記ノズルを冷却する冷却部を備えており、前記冷却部が、前記本体の底面に設けられ、前記ノズルが配置される貫通孔を有する伝熱部材と、該伝熱部材を冷却する冷却装置と、を有していることを特徴とする。
第9発明の熔湯排出停止機構は、第8発明において、前記伝熱部材が、前記本体の側面より外方まで延びるフランジ部を備えており、前記冷却装置はフランジ部を冷却するものであることを特徴とする。
第10発明の熔湯排出停止機構は、第8または第9発明において、前記冷却装置が、前記伝熱部材を冷却する作業を行う作業位置と、該作業位置から離間した非作業位置との間で移動可能に設けられていることを特徴とする。
第11発明の熔湯排出停止機構は、第10発明において、前記冷却装置は、互いに分離した、前記伝熱部材を冷却する複数の冷却器を備えており、該複数の冷却器は、前記伝熱部材に取り付けると、前記本体の周囲を囲むように配置されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<貯留容器>
第1発明によれば、ノズルを冷却すれば、熔湯がノズル内で固化し、固化した熔湯によってノズルを閉塞できるので、ノズルからの熔湯の流出を停止できる。また、伝熱部材を介して冷却装置がノズルを冷却するので、冷却装置の設置位置等の自由度を高くできる。
第2発明によれば、伝熱部材を介して冷却装置がノズルを冷却するので、冷却装置の設置位置等の自由度を高くできる。
第3発明によれば、ノズルからの熔湯の流出を停止するとき以外は冷却装置を伝熱部材から離しておくことができるので、熔湯を流出している作業等の際に、冷却装置が邪魔にならない。
第4発明によれば、ノズルを均一に冷却しやすくなるし、冷却装置を作業位置に設置したり離間させたりしやすくなる。
第5発明によれば、ノズルを予熱すれば、熔湯の流出開始時にノズル内で熔湯が固化することを防止できる。また、熔湯の固化によって閉塞したノズルを加熱すれば、ノズル内の固化した熔湯を熔融できるので、ノズルを熔湯が流出できる状態に容易に戻すことができる。
第6発明によれば、必要なとき以外は冷却装置や加熱部を伝熱部材から離しておくことができるので、冷却装置や加熱部が他の作業を行う際に邪魔にならない。
第7発明によれば、ノズルを均一に加熱しやすくなるし、加熱部を作業位置に設置したり離間させたりしやすくなる。
<熔湯排出停止機構>
第8発明によれば、冷却部によってノズルを冷却すれば、熔湯がノズル内で固化し、固化した熔湯によってノズルを閉塞できるので、ノズルからの熔湯の流出を停止できる。伝熱部材を介して冷却装置がノズルを冷却するので、冷却装置の設置位置等の自由度を高くできる。
第9発明によれば、伝熱部材を介して冷却装置がノズルを冷却するので、冷却装置の設置位置等の自由度を高くできる。
第10発明によれば、ノズルからの熔湯の流出を停止するとき以外は冷却装置を伝熱部材から離しておくことができるので、熔湯を流出している作業等の際に、冷却装置が邪魔にならない。
第11発明によれば、ノズルを均一に冷却しやすくなるし、冷却装置を作業位置に設置したり離間させたりしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の貯留容器10の概略説明図であり、(A)は側面図であり、(B)は断面図である。
【
図2】本実施形態の貯留容器10の平面図であり、(A)は冷却装置25を作業位置に配置した状態であり、(B)は冷却装置25と加熱部30の両方を作業位置に配置した状態である。
【
図3】本実施形態の貯留容器10の概略断面図であり、(A)は冷却装置25を非作業位置に配置した状態であり、(B)は冷却装置25を作業位置に配置した状態である。
【
図4】加熱部30を設けた本実施形態の貯留容器10の概略説明図であり、(A)は側面図であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の貯留容器は、金属を熔融した液体(熔湯M)を貯留し貯留した熔湯を排出するノズルを有するものであって、ノズルからの熔湯の排出を停止する機能を有するものである。
【0011】
本実施形態の貯留容器が使用される設備はとくに限定さない。例えば、アトマイズ法を使用して金属粉を製造する設備において、アトマイズ装置の噴霧槽に対して熔湯を供給するための容器として使用することができる。また、鋳造設備においてタンディッシュなどに熔湯を供給する容器として使用することができる。
【0012】
<本実施形態の貯留容器10>
図1に示すように、本実施形態の貯留容器10は、本体11と、ノズル12と、冷却部20と、を有している。
なお、本実施形態の貯留容器10における冷却部20は、特許請求の範囲にいうは、熔湯排出停止機構に相当する。
【0013】
<本体11>
本体11は、内部に熔湯Mを貯留する空間を有する容器である。この本体11は、熔湯Mを貯留しても形状を維持することができる素材によって形成されている。例えば、アルミナやマグネシア、カーボン等、貯留する熔湯Mに応じた適切な素材によって本体11が形成されている。
【0014】
本体11の底部には断熱材11dが設けられている。具体的には、本体11の底面(底11bの外面)と側面11aの底部近傍を覆うように、断熱材11dが設けられている。この断熱材11dは、1000℃以上の耐熱性、好ましくは1200℃以上、より好ましくは最高で1600℃まで耐熱性のあるようなものが望ましい。例えば、多結晶ムライト質のファイバーによって形成されたシート等を断熱材11dとして使用することができる。
【0015】
なお、断熱材11dは、後述する冷却部20の伝熱部材21と本体11とが直接接触しないように設けられていればよく、本体11の底面だけを覆うように設けてもよい。
【0016】
<ノズル12>
図1(B)に示すように、本体11には、底を貫通する孔11hが形成されている。具体的には、本体11の底11bと断熱材11dとを貫通するように孔11hが形成されている。この孔11hにはノズル12が挿入されている。このノズル12は、その両端間(上下端部間)を貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔によって本体11の内部と外部(つまり断熱材11dよりも下方)との間が連通されている。つまり、本体11内に貯留された熔湯Mは、ノズル12の貫通孔を通して、貫通孔の下端の開口から外部に流出することができるようになっている(
図3(A)参照)。このノズル12も、熔湯Mが貫通孔を流れても形状を維持することができる素材(例えば、アルミナやマグネシア、カーボン等)によって形成されている。
【0017】
<冷却部20>
図1に示すように、冷却部20は、伝熱部材21と冷却装置25と、を有している。
【0018】
<伝熱部材21>」
図1に示すように、断熱材11dの外面には、冷却部20の伝熱部材21が設けられている。この伝熱部材21は、その表面(
図1(B)では上面)が断熱材11dの外面と面接触するように配設されている。例えば、
図1(B)であれば、断熱材11dにおいて、本体11の底面を覆う部分と、本体11の側面11aの底部近傍を覆う部分と、を覆うように、伝熱部材21は設けられている。
【0019】
この伝熱部材21には、ノズル12と対応する位置(言い換えれば、本体11の底11bの孔11hと対応する位置)に貫通孔21hが形成されている。この貫通孔21hには、ノズル12が貫通孔21hの内面と接触するように挿通されている。つまり、ノズル12と伝熱部材21との間で熱伝導が行われるように、ノズル12が貫通孔21hに配置されている。
【0020】
また、
図1(B)に示すように、伝熱部材21は、本体11の側面11a(より詳しくは断熱材11dにおいて本体11の側面11aの底部近傍を覆う部分)より外方まで延びるフランジ部22を有している。このフランジ部22は、本体11を上下方向からみたときに、本体11の側面11aを囲むように設けられている。
【0021】
<冷却装置25>
図2に示すように、本体11の周囲には、冷却装置25が設けられている。冷却装置25は、伝熱部材21を冷却する機能を有するものである。この冷却装置25は、本体11を上下方向からみたときに、本体11の側面11aを囲むように設けられている。より具体的には、冷却装置25は、一対の冷却器25a,25bを備えている。一対の冷却器25a,25bは、略C字状であり、両者を組み合わせるとドーナツ状(円環状)になるように形成されている。言い換えれば、一対の冷却器25a,25bは、両者を組み合わせた際に形成される円形の空間内に本体11を配置できるように形成されている。
【0022】
一対の冷却器25a,25bは、熱伝導性に優れた素材によって形成された部材であり、その内部に冷却水等の冷媒を流すことができる流路を有している。つまり、流路に冷媒を流せば、一対の冷却器25a,25b自体が冷却される構造を有しいている。
【0023】
そして、一対の冷却器25a,25bは、その内面が伝熱部材21のフランジ部22の上面や側面と接触するように設けられている(
図1(B)参照)。つまり、一対の冷却器25a,25b自体が冷却されると、一対の冷却器25a,25bによって伝熱部材21のフランジ部22が冷却されるようになっている。
【0024】
本実施形態の貯留容器10が以上のごとき構造を有するので、以下のように作動すれば、本体11内の熔湯Mがノズル12を通して流出している状態から、熔湯Mの流出を停止することができる。
【0025】
つまり、熔湯Mの流出を停止する際には、ノズル12から本体11内の熔湯Mを流出している状態で、所定の温度以下(例えば、32℃以下)の冷媒を冷却装置25の一対の冷却器25a,25b内に供給する。すると、一対の冷却器25a,25bが冷媒によって冷却され、一対の冷却器25a,25bと接触しているフランジ部22を介して伝熱部材21が冷却される。
【0026】
伝熱部材21が冷却されると、伝熱部材21と接触しているノズル12も冷却される。ノズル12の温度が所定の温度以下(例えば、銅の熔湯であれば1000℃以下)になるとノズル12内の熔湯Mが固化してノズル12の貫通孔が閉塞される。具体的には、ノズル12の貫通孔内を流れる熔湯Mのうちノズル12の貫通孔内面と接触した部分が固化してノズル12の貫通孔内面に付着する。すると、固化した部分が成長してノズル12の貫通孔を閉塞するので、熔湯Mの流出を停止することができる(
図3(B)参照)。
【0027】
以上のように、本実施形態の貯留容器10であれば、冷却部20の伝熱部材21を介してノズル12を冷却するだけで、熔湯Mの流出を停止することができるから、熔湯Mの流出を停止する作業が容易になり、作業者の負担を軽減できる。
【0028】
<冷却装置25の一対の冷却器25a,25bの移動>
冷却装置25の一対の冷却器25a,25bは、冷却部20の伝熱部材21のフランジ部22に接触する位置に固定した状態で設置されていてもよいが、一対の冷却器25a,25bを移動可能に設けてもよい。つまり、冷却部20は、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bを移動可能とする機構を有していてもよい。
【0029】
例えば、一対の冷却器25a,25bは、伝熱部材21のフランジ部22に接触した位置、つまり、伝熱部材21のフランジ部22を冷却する作業を行う位置(作業位置という場合がある、
図3(B)参照)と、作業位置から離間した位置(非作業位置という場合がある、
図3(A)参照)と、の間で移動可能に設けてもよい。かかる構成とすれば、熔湯Mの流出を停止するとき以外は、一対の冷却器25a,25bを本体11から離しておくことができる(
図3(B)参照)。すると、本体11近傍において、作業者等が作業を行う作業スペースを確保し易くなる。
【0030】
また、作業位置に一対の冷却器25a,25bが配置されていれば、本体11等からの熱によって一対の冷却器25a,25bが加熱される。すると、冷媒を供給してから一対の冷却器25a,25bを所定の温度まで低下させるまでに時間を要するため、冷却を開始してからノズル12を所定の温度まで低下させるまでの時間が長くなり、熔湯Mの流出の迅速な停止が困難になる。しかし、一対の冷却器25a,25bを非作業位置に配置しておけば、予め一対の冷却器25a,25bを所定の温度まで低下させておくことができる。すると、熔湯Mの流出を停止する際に一対の冷却器25a,25bを作業位置に配置すれば(
図3(B)参照)、冷却を開始してからノズル12を所定の温度まで低下させるまでの時間も短くできるので、熔湯Mの流出の迅速な停止が可能なる。
【0031】
なお、一対の冷却器25a,25bを作業位置と非作業位置との間で移動させる機構はとくに限定されず、種々の移動機構を採用することができる。なお、移動機構は、通常、一対の冷却器25a,25bを作業位置に配置するとき以外は本体11から離れた位置に配置しておくことも可能になる。すると、移動機構に対する耐熱性の要求を低くでき、耐熱性のそれほど高くない公知の移動機構を使用することも可能になる。
【0032】
<冷却部20について>
冷却部20の冷却装置25の一対の冷却器25a,25bは、伝熱部材21のフランジ部22を冷却することができるのであれば、必ずしも上述した構成に限られない。一対の冷却器25a,25bとして、例えば、フランジ部22と接することができる伝熱面を有する冷却管等の公知の冷却機構を採用した器具を使用することもできる。
【0033】
また、上記例では、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bが、本体11を上下方向からみたときに、本体11の側面11aを囲むように設けられている場合を説明した。このように冷却装置25の一対の冷却器25a,25bを配置すれば、ノズル12を均一に冷却し易くなるし、冷却速度を速めることができるという点で好ましい。しかし、冷却装置25の冷却器は、本体11を上下方向からみたときに、必ずしも本体11の周囲を囲むように配置しなくてもよい。この場合には、伝熱部材21のフランジ部22も、本体11を上下方向からみたときに、必ずしも本体11の周囲を囲むように配置しなくてもよい。例えば、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bのうち、一方の冷却器25a(または冷却器25b)だけを設けてもよい。この場合には、フランジ部22は、一方の冷却器25a(または冷却器25b)が接触する位置だけに設けてもよい。
【0034】
また、上記例では、冷却装置25が一対の冷却器25a,25bを有する場合を説明したが、冷却装置25は、冷却器を一つだけ有していてもよいし、3つ以上の冷却器を有していてもよい。3つ以上の冷却器を設けた場合には、一対の冷却器25a,25bと同様に、種々の移動機構によって、各冷却器を作業位置と非作業位置との間で移動させる構成としてもよい。また、3つ以上の冷却器を設けた場合には、一対の冷却器25a,25bと同様に、本体11を上下方向からみたときに、3つ以上の冷却器を本体11の側面11aを囲むように設けることが望ましい。
【0035】
また、冷却部20は、ノズル12を冷却することができるのであれば、必ずしも上述した構成に限られない。例えば、伝熱部21と冷却装置25とを一体化した構造としてもよい。つまり、伝熱部21自体を分割可能な構造(例えば、上述した一対の冷却器25a,25bのようなC字状)とし、本体11に対して着脱可能としてもよい。しかし、上記のような伝熱部材21を設けて、伝熱部材21を冷却装置25によって冷却する構成とすれば、ノズル12を冷却する冷却装置25の設置位置等の自由度を高くできる。例えば、伝熱部材21のフランジ部22の長さ(本体11の側面11aからの距離)を長くすれば、冷却装置25として耐熱性が高くない機器でも使用することが可能になる。
【0036】
<加熱部30>
図4に示すように、本実施形態の貯留容器10は、上述した冷却部20に加えて、ノズル12を加熱する加熱部30を有していてもよい。加熱部30を有していれば、冷却部20によって閉塞されたノズル12を加熱して、ノズル12内の固化した材料を熔融することができるので、閉塞されたノズル12を熔湯Mが流出できる状態に復帰させることができる。また、本体11内に熔湯Mを入れる前に加熱部30によってノズル12を加熱するようにすれば、熔湯Mを流出させる際に、熔湯Mが固まることを防止できる。
【0037】
図4に示すように、冷却部20の伝熱部材21のフランジ部22と対応する位置に加熱部30の加熱器として一対の加熱用バーナー31a,31bを設ける。具体的には、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bの作業位置の上方に、加熱部30の加熱器として一対の加熱用バーナー31a,31bを設ける。この場合、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bを作業位置から非作業位置に移動させて、一対の加熱用バーナー31a,31bに点火すれば、一対の加熱用バーナー31a,31bの炎によって伝熱部材21のフランジ部22を加熱することができる(
図4(B)参照)。すると、伝熱部材21と接触しているノズル12を加熱することができるので、ノズル21の温度を上昇させることができる。したがって、加熱用バーナー31によって伝熱部材21のフランジ部22を加熱すれば、ノズル12内で熔湯Mが固まることを防止できる。
【0038】
<加熱部30の一対の加熱用バーナー31a,31bの移動>
加熱部30の一対の加熱用バーナー31a,31bは、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bの作業位置の上方に固定した状態で設置されていてもよいが、一対の加熱用バーナー31a,31bも、伝熱部材21のフランジ部22を加熱する作業を行う位置(作業位置という場合がある、
図4参照)と、作業位置から離間した位置(非作業位置という場合がある)と、の間で移動可能に設けてもよい。かかる構成とすれば、伝熱部材21のフランジ部22を加熱するとき以外は、一対の加熱用バーナー31a,31bを本体11から離しておくことができる。すると、本体11近傍において、作業者等が作業を行う作業スペースを確保し易くなる。また、平面視において、一対の加熱用バーナー31a,31bの作業位置を、冷却装置25の一対の冷却器25a,25bの作業位置と同じ位置にすることができる(
図2(B)参照)。この場合、一対の加熱用バーナー31a,31bの炎を効率よく伝熱部材21のフランジ部22に当てることができるので、伝熱部材21を加熱する効率、つまり、ノズル12を加熱する効率を向上することができる。
【0039】
なお、一対の加熱用バーナー31a,31bを作業位置と非作業位置との間で移動させる装置はとくに限定されず、種々の移動機構を採用することができる。なお、移動機構は、通常、本体11から離れた位置に配置しておくことも可能になるので、移動機構に対する耐熱性の要求を低くでき、耐熱性のそれほど高くない公知の移動機構を使用することも可能になる。
【0040】
<加熱部30について>
加熱部30の一対の加熱用バーナー31a,31bは、本体11を上下方向からみたときに、本体11の側面11aを囲むように設けることが望ましい。この場合、ノズル12を均一に加熱し易くなるし、ノズル12の昇温速度を速めることができる点で好ましい。しかし、加熱部30の加熱用バーナーは、本体11を上下方向からみたときに、必ずしも本体11の周囲を囲むように配置しなくてもよい。例えば、加熱部30の一対の加熱用バーナー31a,31bのうち、一方の加熱用バーナー31a(または加熱用バーナー31b)だけを設けてもよい。
【0041】
また、上記例では、加熱部30が一対の加熱用バーナー31a,31bを有する場合を説明したが、加熱部30は、加熱用バーナーを一つだけ有していてもよいし、3つ以上の加熱用バーナーを有していてもよい。3つ以上の加熱用バーナーを設けた場合には、一対の加熱用バーナー31a,31bと同様に、種々の移動機構によって、各加熱用バーナーを作業位置と非作業位置との間で移動させる構成としてもよい。また、3つ以上の加熱用バーナーを設けた場合には、一対の加熱用バーナー31a,31bを設けた場合と同様に、本体11を上下方向からみたときに、本体11の側面11aを囲むように3つ以上の加熱用バーナーを設けることが望ましい。
【0042】
加熱部30において伝熱部材21のフランジ部22を加熱する加熱器は、必ずしも上述した一対の加熱用バーナー31a,31bに限られない。伝熱部材21を加熱して、ノズル12を所定の温度以上(例えば、熔湯が銅の場合であれば1000℃以上)に加熱できる装置であれば、種々の装置を使用できる。
【0043】
例えば、加熱器として、伝熱部材21のフランジ部22の表面に伝熱ヒータを設ければ、加熱部30を常時作業位置に配置しておくことが可能になる。つまり、電気ヒータを使用した場合、電気ヒータに通電すれば伝熱部材21のフランジ部22を加熱できるし、通電を停止しておけば、電気ヒータが冷却装置25の一対の冷却器25a,25bによるフランジ部22の冷却の邪魔にならない。
【0044】
また、伝熱部材21としてグラファイトを使用すれば、伝熱部材21自体をノズル12を加熱する装置、つまり、加熱器として使用できる。例えば、伝熱部材21に通電すれば伝熱部材21自体が発熱してノズル12を加熱できるし、通電を停止しておけば、伝熱部材21を単なる熱伝導性の高い部材として機能させることができる。
【0045】
また、加熱部30は、ノズル12を加熱することができるのであれば、必ずしも上述した構成に限られない。例えば、小型のバーナー等によってノズル12を直接加熱するようにしてもよい。しかし、上記のように、冷却部20の伝熱部材21を加熱部30の加熱器によって加熱する構成とすれば、ノズル12を加熱する加熱部30の加熱器の設置位置等の自由度を高くできる。例えば、伝熱部材21のフランジ部22の長さ(本体11の側面11aからの距離)を長くすれば、加熱部30の加熱器として耐熱性が高くない機器でも使用することが可能になる。
【0046】
<本実施形態の貯留容器10の設置>
本実施形態の貯留容器10は、例えば、アトマイズ装置の噴霧室の上面に配置されるが、貯留容器10を設置する場合、設置場所(
図1(B)のS)と冷却部20の伝熱部材21との間には、断熱部材(
図1(B)のD)を設けることが望ましい。断熱部材を設ければ、設置場所からの熱によって伝熱部材21が加熱されたり、逆に、設置場所に熱を奪われて伝熱部材21が冷却されたりすることを防止できる。すると、伝熱部材21の状態、つまり、伝熱部材21の温度を冷却装置25や加熱部30によって所定の温度に維持しやすくなるし、冷却装置25が伝熱部材21を冷却するタイミング、つまりノズル12を冷却するタイミングや、加熱部30が伝熱部材21を加熱するタイミングを調整しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の貯留容器は、アトマイズ法を使用して金属粉を製造する設備において、アトマイズ装置の噴霧槽に対して熔湯を供給するための容器や、鋳造設備における注湯作業において熔湯を供給する容器に適している。
【符号の説明】
【0048】
10 貯留容器
11 本体
11a 側面
11b 底
12 ノズル
20 冷却部
21 伝熱部材
25 冷却装置
25a 冷却器
25b 冷却器
30 加熱部
31a 加熱用バーナー
31b 加熱用バーナー
M 熔湯