(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20250109BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
(21)【出願番号】P 2022571432
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021046962
(87)【国際公開番号】W WO2022138542
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020217238
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 隆利
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064284(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187634(WO,A1)
【文献】特開2006-146133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に長さを有する第1ヨーク及び第2ヨークと、
前記光軸方向に長さを有し、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークの間に配置される第3ヨークと、
前記第1ヨークに配置される第1磁石と、
前記第2ヨークに配置される第2磁石と、
前記第3ヨークに貫通され、前記第1磁石および前記第2磁石の磁力により前記光軸方向に移動可能なコイルと、
レンズを保持し、前記コイルと一体で前記光軸方向に移動可能なレンズ保持枠と、
を備え、
前記レンズの周方向において対向する前記第1ヨークの2側面のうち前記第3ヨークから遠い第1側面を含む第1平面と、前記周方向において対向する前記第2ヨークの2側面のうち前記第3ヨークから遠い第2側面を含む第2平面とは、前記光軸方向から見た場合に、前記レンズの中心点と異なる前記レンズの範囲内の位置で交差
し、
前記第1磁石の前記第3ヨーク側の外周側角部と前記第3ヨークの中心点との第1距離と、前記第1磁石の前記第3ヨーク側の内周側角部と前記第3ヨークの前記中心点との第2距離との差が、0.14mm以下であり、
前記光軸と垂直な平面において、前記第3ヨークの中心点と前記レンズの中心点とを結ぶ第1直線と前記第1平面とがなす角、および、前記第1直線と前記第2平面とがなす角は、5.4°~11°の範囲内にある、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記レンズの中心点は、前記第1平面と前記第2平面との交線と、前記第3ヨークと、の間に位置する、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記光軸と垂直な平面において、前記第1平面と前記第2平面との交線は、前記第3ヨークの中心点と前記レンズの中心点とを結ぶ直線上にある、
請求項1または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1平面と前記第2平面との交線は、前記レンズと交差する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記レンズの周方向において対向する前記第1磁石の2側面のうち前記第3ヨークから遠い第3側面を含む第3平面と、前記レンズの周方向において対向する前記第2磁石の2側面のうち前記第3ヨークから遠い第4側面を含む第4平面と、は交差する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記光軸と垂直な平面において、前記第1ヨークの前記レンズ側かつ前記第3ヨークから遠い角部と前記レンズの中心点とを結ぶ直線と、前記第1直線とがなす角が16°~17°の範囲内にある場合、前記第1直線と前記第1平面又は前記第2平面とがなす角は、7.8°~8.3°の範囲内にある、
請求項
1から請求項5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの駆動装置として、ボイスコイルモータを採用したレンズ鏡筒が提案されている(例えば、特許文献1)。レンズ鏡筒では、駆動力の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、レンズ鏡筒は、光軸方向に長さを有する第1ヨーク及び第2ヨークと、前記光軸方向に長さを有し、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークの間に配置される第3ヨークと、前記第1ヨークに配置される第1磁石と、前記第2ヨークに配置される第2磁石と、前記第3ヨークに貫通され、前記第1磁石および前記第2磁石の磁力により前記光軸方向に移動可能なコイルと、レンズを保持し、前記コイルと一体で前記光軸方向に移動可能なレンズ保持枠と、を備え、前記レンズの周方向において対向する前記第1ヨークの2側面のうち前記第3ヨークから遠い第1側面を含む第1平面と、前記周方向において対向する前記第2ヨークの2側面のうち前記第3ヨークから遠い第2側面を含む第2平面とは、前記光軸方向から見た場合に、前記レンズの中心点と異なる前記レンズの範囲内の位置で交差し、前記第1磁石の前記第3ヨーク側の外周側角部と前記第3ヨークの中心点との第1距離と、前記第1磁石の前記第3ヨーク側の内周側角部と前記第3ヨークの前記中心点との第2距離との差が、0.14mm以下であり、前記光軸と垂直な平面において、前記第3ヨークの中心点と前記レンズの中心点とを結ぶ第1直線と前記第1平面とがなす角、および、前記第1直線と前記第2平面とがなす角は、5.4°~11°の範囲内にある。
【0005】
第2の態様によれば、撮像装置は、上記レンズ鏡筒を備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るレンズ鏡筒と、カメラ本体と、を備えるカメラを示す図である。
【
図2】
図2(A)は、第1実施形態に係るボイスコイルモータの斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)において矢印AR1で示す方向からボイスコイルモータを見た図であり、
図2(C)は、
図2(A)において矢印AR2で示す方向からボイスコイルモータを見た図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1のA-A線断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のボイスコイルモータ周辺の拡大図である。
【
図4】
図4(A)は、第1固定筒10と第2固定筒20との間に比較例に係るボイスコイルモータを配置した例を示し、
図4(B)は、
図4(A)のボイスコイルモータ周辺の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図3(A)のボイスコイルモータ周辺の拡大図である。
【
図6】
図6は、第1および第2サイドヨークの配置について説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1および第2サイドヨークの配置を検討するために用いたモデルの概略を示す図である。
【
図8】
図8は、第1および第2サイドヨークの配置を検討するために用いたモデルの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係るレンズ鏡筒100について、図面を参照し、詳細に説明する。なお、各図において、理解を容易にするため、一部の要素の図示を省略している場合がある。
【0009】
図1は、本実施形態に係るレンズ鏡筒100と、カメラ本体101と、を備えるカメラ1を示す図である。なお、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、カメラ本体101に対して着脱可能であるが、これに限定されず、レンズ鏡筒100とカメラ本体101とは一体であってもよい。
【0010】
カメラ本体101は、内部に撮像素子111および制御部112等を備えている。撮像素子111は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子によって構成され、結像光学系(カメラ本体101に装着されたレンズ鏡筒100)によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0011】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、カメラ本体101および装着されたレンズ鏡筒100における合焦駆動を含む撮影に係る当該カメラ1全体の動作を統括制御する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、第1固定筒10と、第1固定筒10よりも内周側に配置された第2固定筒20と、を備える。本実施形態において、第1固定筒10は複数の部品から構成されているが、1つの部品により構成されてもよい。
図1に示すように、第1固定筒10には、レンズ鏡筒100をカメラ本体101に着脱可能とするレンズマウントLMが固定されている。
【0013】
また、レンズ鏡筒100は、共通の光軸OAに沿って順次配列された複数のレンズL1~L4を備える。レンズL3はレンズ保持枠F3に保持され、他のレンズは、第2固定筒20に保持されている。レンズL1~L4は、それぞれ、複数のレンズで構成されていてもよい。
【0014】
また、レンズ鏡筒100は、レンズ保持枠F3を光軸方向に案内するガイドバー22を備える。ガイドバー22は、第2固定筒20に固定されている。なお、ガイドバー22に代えて、光軸方向に延びる直進溝によってレンズ保持枠F3を光軸方向に案内してもよい。
【0015】
本実施形態において、レンズL3は、フォーカスレンズであって、光軸方向に移動されて、焦点調節を行う。レンズL3は、レンズ鏡筒100の内部に配設されたボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)30によって光軸方向に移動されるように設けられている。
【0016】
VCM30は駆動装置113によって駆動される。駆動装置113は、カメラ本体101の制御部112による制御下で、レンズL3の合焦駆動を制御する。具体的には、駆動装置113は、光学式エンコーダや磁気エンコ-ダ等の位置検出機構(不図示)から入力されるレンズL3の位置情報と、カメラ本体101の制御部112から入力されたレンズL3の目標位置情報とに基づいて、VCM30の駆動信号を生成し、VCM30に出力する。
【0017】
VCM30は駆動信号によって、レンズL3を光軸方向に直進駆動する。詳細は後述するが、
図1に示すように、VCM30が備えるコイル35には、レンズ保持枠F3が連結されている。具体的には、レンズ保持枠F3は、レンズ保持枠F3の連結部115を介して例えば接着剤等によってコイル35に連結されている。これにより、コイル35が光軸方向に直進駆動すると、レンズ保持枠F3が光軸方向に直進駆動され、レンズL3の光軸方向における位置が変化する。
【0018】
なお、VCM30の駆動信号がOFFになっている場合、VCM30のコイル35はその位置を保つ保持力を有さないため、自由に移動する。そのため、レンズ鏡筒100を上向きまたは下向きにした場合、レンズ保持枠F3及びレンズL3の自重でコイル35が移動して、レンズ保持枠F3が第2固定筒20に衝突し、衝撃音が発生するおそれがある。そこで、
図1に示すように、光軸方向において、第2固定筒20のレンズ保持枠F3と重なる部分には、クッション材40が設けられている。これにより、連結部115がクッション材40に衝突するようになるため、衝撃が緩和されるとともに、衝撃音が抑制される。
【0019】
上記のようにカメラ本体101とレンズ鏡筒100とにより構成されたカメラ1は、図示しないシャッターボタンが押圧操作(レリーズ操作又は合焦操作)されると、カメラ本体101における制御部112が、駆動装置113を介してレンズ鏡筒100の合焦駆動等の制御を行う。また、レンズ鏡筒100によって結像された被写体像光を撮像素子111が電気信号に変換し、その画像データをカメラ本体101が備える図示しないメモリに記録(すなわち撮影)する。
【0020】
次に、レンズL3を駆動するVCM30の構成について説明する。
図2(A)は、VCM30の構成を示す斜視図であり、
図2(B)は、VCM30を
図2(A)の矢印AR1の方向から見た図であり、
図2(C)は、VCM30を
図2(A)の矢印AR2の方向から見た図である。
図3(A)は、
図1におけるA-A線断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のVCM30付近の拡大図である。
【0021】
本実施形態に係るVCM30は、
図2(A)に示すように、光軸方向に長さを有する第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと、光軸方向に長さを有し、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの間に配置されるセンターヨーク32と、を備える。
【0022】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、光軸OAと垂直な平面における第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの断面は、矩形形状を有し、光軸OAと垂直な平面における第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの断面積は光軸OAに沿って一様である。また、光軸OAと垂直な平面におけるセンターヨーク32の断面は略円形であり、光軸OAと垂直な平面におけるセンターヨーク32の断面積は光軸OAに沿って一様である。
【0023】
また、VCM30は、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における一端を接続する上ヨーク34aと、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における他端を接続する下ヨーク34bとを備える。これにより、閉磁路が形成される。
【0024】
第1サイドヨーク31aのセンターヨーク32側の側面には第1磁石33aが配置され、第2サイドヨーク31bのセンターヨーク
32側の側面には第2磁石33bが配置されている。
図3(A)及び
図3(B)に示すように、光軸OAと垂直な平面における第1磁石33aおよび第2磁石33bの断面は、矩形形状を有し、光軸OAと垂直な平面における第1磁石33aおよび第2磁石33bの断面積は光軸OAに沿って一様である。
【0025】
図2(B)に示すように、第1磁石33aは、例えば、センターヨーク32側がN極となるように配置されており、第2磁石33bも、センターヨーク32側がN極となるように配置されている。これにより、
図2(B)において、矢印で示すように、磁束が、第1磁石33aおよび第2磁石33bのN極からセンターヨーク32に入り、上ヨーク34aおよび下ヨーク34b並びに第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bを経て、第1磁石33aおよび第2磁石33bのS極にそれぞれ戻る磁路を形成している。
【0026】
第1および第2サイドヨーク31a,31bならびに上および下ヨーク34a,34bの材料は、例えば、冷間圧延鋼板(SPCC:Steel Plate Cold Commercial)であり、センターヨーク32の材料は、例えば、SS(Steel Structure)400である。
【0027】
また、VCM30は、センターヨーク32に貫通されるコイル35を備える。コイル35の内周面とセンターヨーク32との間には僅かな隙間があり、コイル35は、光軸方向に移動可能となっている。またコイル35は、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bからセンターヨーク32に集まる磁束の向きが、コイル35の巻き方向に垂直となるように構成されている。
【0028】
コイル35には、駆動装置113から駆動信号(電流)が入力される。コイル35に電流が流れると、第1磁石33aおよび第2磁石33bの磁力によりコイル35は光軸方向に移動する。より詳細には、電流が流れているコイル35と第1磁石33aおよび第2磁石33bとの間の電磁相互作用によりコイル35は光軸方向に移動する。コイル35に流す電流の向きを変更することで、コイル35の移動方向を被写体側とカメラ本体101側(像面側)との間で切り替えることができる。また、コイル35に流す電流値を変更することで、コイル35の駆動力や移動速度を変更することができる。
【0029】
本実施形態において、VCM30は、
図3(A)に示すように、第1固定筒10と第2固定筒20との間に配置される。このため、
図2(C)に示すように、上ヨーク34a(および下ヨーク34b)の形状が円弧形状となっており、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとが非平行に配置されている。第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとが非平行に配置されているため、第1固定筒10と第2固定筒20との間にVCM30を効率よく配置できる。
【0030】
より具体的には、
図3(A)に示すように、VCM30では、レンズL3の周方向において対向する第1サイドヨーク31aの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF1を含む平面P1と、周方向において対向する第2サイドヨーク31bの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF2を含む平面P2と、は交差する。また、平面P1と平面P2とは、レンズL3の中心点C1と異なる位置で交差する。つまり、平面P1と平面P2との交線IL1は、レンズL3の中心点C1と交わらない。また、レンズL3の中心点C1は、センターヨーク32と交線IL1との間に位置する。
【0031】
また、光軸OAと垂直な平面において、交線IL1は、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線上にある。言い換えると、光軸OAと垂直な平面において、センターヨーク32の中心点C2と、レンズL3の中心点C1と、交線IL1とは、一直線上にある。また、交線IL1は、レンズL3と交差する。
【0032】
さらに、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとが非平行に配置されているため、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bのセンターヨーク32側の側面にそれぞれ取り付けられている第1磁石33aおよび第2磁石33bも非平行となっている。より具体的には、レンズL3の周方向において対向する第1磁石33aの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF3を含む平面P3と、周方向において対向する第2磁石33bの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF4を含む平面P4と、は交差する。また、平面P3と平面P4との交線IL2は、レンズL3と交差する。また、交線IL2は、センターヨーク32とレンズL3の中心点C1との間に位置する。より詳細には、交線IL2は、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線上にある。
【0033】
図4(A)は、第1固定筒10と第2固定筒20との間に比較例に係るVCM30Xを配置した例を示す。比較例に係るVCM30Xにおいても、VCM30と同様に、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとが非平行に配置されている。ただし、比較例では、第1サイドヨーク31aの側面SF1を含む平面P1と、第2サイドヨーク31bの側面SF2を含む平面P2との交線IL1は、レンズL3の中心点C1と交わる。他の構成は、VCM30と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
図4(B)は、
図4(A)におけるVCM30Xの周辺の拡大図である。
図4(B)に示すように、比較例に係るVCM30Xにおいて、光軸OAと垂直な平面において、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離d3が、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離d4よりも長くなる。このため、外周側の磁界が内周側の磁界よりも弱くなり、比較例に係るVCM30Xでは所望の駆動力を得られないおそれがある。
【0035】
一方、本実施形態に係るVCM30では、
図3(A)に示すように、第1サイドヨーク31aの側面SF1を含む平面P1と、第2サイドヨーク31bの側面SF2を含む平面P2との交線IL1が、レンズL3の中心点C1と交わらず、レンズL3の中心点C1が、センターヨーク32と交線IL1との間に位置するように、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bが配置されている。
【0036】
これにより、
図5に示すように、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離d1と、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離d2との差(d1-d2)が、比較例に係るVCM30Xにおける距離d3と距離d4との差(d3-d4)よりも小さくなる。その結果、VCM30では、外周側の磁界が、比較例のVCM30Xよりも強くなるため、VCM30の駆動力が比較例のVCM30Xよりも改善する。そのため、安定してレンズL3を駆動することができる。
【0037】
より具体的には、
図6に示すように、VCM30では、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線と、第1サイドヨーク31aの側面SF1を含む平面P1とがなす角βを、5.4°~11°の範囲内にしている。センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線と、第2サイドヨーク31bの側面SF2を含む平面P2とがなす角についても同様である。
【0038】
また、光軸OAと垂直な平面において、第1サイドヨーク31aのレンズL3側かつセンターヨーク32から遠い角部CR3とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線と、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線とがなす角αが16°~17°の範囲内にある場合、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線と平面P1および平面P2とがなす角βを、7.8°~8.3°の範囲内にしている。
【0039】
これにより、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離と、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離とを、略等しくできるため、VCM30の駆動力を向上できる。
【0040】
第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの配置について検討した。
図7及び
図8は、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの配置を検討するために用いたモデルの概略を示す図である。
図7及び
図8では、コイル35の図示を省略している。また、二点鎖線および三点鎖線はそれぞれ、第2固定筒20の外周面と、第1固定筒10の内周面に相当する。
【0041】
図7及び
図8に示すように、レンズL3の中心軸Oの座標を(0,0)とし、サイドヨークと磁石とを合わせて長方形R1で近似し、長方形の各頂点をA1,A2,A3,A4とする。
【0042】
また、長方形R1の長手方向の長さ(幅)をW、長方形R1の短手方向の長さ(厚み)をtとする。光軸OAと垂直な平面において、長方形R1の頂点A1とレンズ
L3の中心軸Oとを結ぶ直線L11の長さをR、センターヨーク32の中心点C2とレンズ
L3の中心軸Oとを結ぶ直線と長方形R1の頂点A1とレンズ
L3の中心軸Oとを結ぶ直線L11とがなす角をαとし、センターヨーク32の中心点C2とレンズ
L3の中心軸Oとを結ぶ直線と長方形R1の頂点A3および頂点A1を通る直線L12とがなす角をβとする。なお、α=βの場合(
図7の場合)が、比較例に該当する。
【0043】
上記のように仮定すると、長方形R1の頂点A1~A4およびセンターヨーク32の中心点C2の座標は、それぞれ以下のようになる。
A1の座標:(R・cosα,R・sinα)
A2の座標:(R・cosα+t・sinβ,R・sinα-t・cosβ)
A3の座標:(R・cosα+W・cosβ,R・sinα+W・sinβ)
A4の座標:(R・cosα+W・cosβ+t・sinβ,R・sinα+W・sinβ-t・cosβ)
C2の座標:(R+0.5W,0)
【0044】
R、W、t、α、およびβの値を変えて、頂点A2とセンターヨーク32の中心点C2との距離D1および頂点A4とセンターヨーク32の中心点C2との距離D2を計算した。計算結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
ここで、距離D1と距離D2との差が小さいほど、外周側の磁界と内周側の磁界との強さの差が少なくなり、ボイスコイルモータの駆動力を向上することができる。実施例1~実施例11に示すように、各寸法を変更した場合でも、βが5.4°~11°の範囲内にある場合、距離D1と距離D2との差を小さくできる。
【0047】
また、例えば、実施例1~3、8、および11に示すように、α=16°~17°である場合、βを7.8°~8.3°とすることで、Rの大きさにかかわらず、距離D1と距離D2との差を小さくできる。
【0048】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、光軸方向に長さを有する第1サイドヨーク31a及び第2サイドヨーク31bと、光軸方向に長さを有し、第1サイドヨーク31a及び第2サイドヨーク31bの間に配置されるセンターヨーク32と、第1サイドヨーク31aに配置される第1磁石33aと、第2サイドヨーク31bに配置される第2磁石33bと、センターヨーク32に貫通され、第1磁石33aおよび第2磁石33bの磁力により光軸方向に移動可能なコイル35と、レンズL3を保持し、コイル35と一体で光軸方向に移動可能なレンズ保持枠F3と、を備え、レンズL3の周方向において対向する第1サイドヨーク31aの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF1を含む平面P1と、周方向において対向する第2サイドヨーク31bの2側面のうちセンターヨーク32から遠い側面SF2を含む平面P2と、は交差する。すなわち、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとが非平行に配置されている。これにより、第1固定筒10と第2固定筒20との間にVCM30を効率よく配置できる。また、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとを平行に配置する場合と比較して、VCM30をレンズL3の径方向において小型化できる。
【0049】
また、本実施形態において、平面P1と平面P2とはレンズL3の中心点C1と異なる位置で交差する。さらに、レンズL3の中心点C1は、平面P1と平面P2との交線IL1と、センターヨーク32と、の間に位置する、
【0050】
第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bをこのように配置することにより、
図5に示すように、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離d1と、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離d2との差(d1-d2)を小さくできるため、外周側の磁界と内周側の磁界との強さの差が少なくなり、ボイスコイルモータ
30の駆動力を向上することができる。これにより、レンズL3を安定して駆動することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、光軸OAと垂直な平面において、平面P1と平面P2との交線IL1は、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線上にある。すなわち、光軸OAと垂直な平面において、第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとは、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線について対称に配置されている。これにより、第1磁石33aとセンターヨーク32との間の磁界の強さと、第2磁石33bとセンターヨーク32との間の磁界の強さとを等しくできるため、レンズL3を安定して駆動することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、平面P1と平面P2との交線IL1は、レンズL3と交差する。これにより、上ヨーク34a(および下ヨーク34b)の形状を
図1(C)に示すような円弧形状にしても、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離d1と、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離d2との差を小さくできる。したがって、高い駆動力を有しレンズ鏡筒100内に配置可能なVCMを実現することができる。
【0053】
本実施形態において、光軸OAと垂直な平面において、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線と、第1サイドヨーク31aの側面SF1を含む平面P1および第2サイドヨーク31bの側面SF2を含む平面P2とがなす角βを、5.4°~11°の範囲内としている。これにより、表1に示すように、第1磁石33aのセンターヨーク32側の外周側角部CR1とセンターヨーク32の中心点C2との距離d1と、第1磁石33aのセンターヨーク32側の内周側角部CR2とセンターヨーク32の中心点C2との距離d2との差を小さくでき、外周側の磁界の強さと、内周側の磁界の強さとの差を小さくできるため、VCM30の駆動力を向上することができる。
【0054】
さらに、光軸OAと垂直な平面において、第1サイドヨーク31aのレンズL3側かつセンターヨーク32から遠い角部CR3とレンズL3の中心点C1と結ぶ直線と、センターヨーク32の中心点C2とレンズL3の中心点C1とを結ぶ直線とがなす角αが16°~17°の範囲内にある場合、βを、7.8°~8.3°の範囲内としている。これにより、表1に示すように、距離D1と距離D2とを略等しくすることができるため、第1磁石33aおよび第2磁石33bとセンターヨーク32との間の磁界の強さをレンズL3の径方向において略一様にすることができるので、VCM30の駆動力を向上することができる。
【0055】
上記実施形態では、第1および第2サイドヨーク31a,31bならびに上および下ヨーク34a,34bの材料がSPCCであり、センターヨーク32の材料がSS400である場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1および第2サイドヨーク31a,31bならびに上および下ヨーク34a,34bの材料をSPCCとし、センターヨーク32の材料を、SPCCよりも高い飽和磁束密度を有する材料(例えば、Fe-35%Co-Cr合金、Fe-20%Co-Cr-V合金、珪素鋼板Fe-3%Si合金、純鉄、またはSS400)としてもよい。これにより、センターヨーク32の光軸方向における端部で発生する磁束の渋滞を解消し、センターヨーク32内の磁束の流れを改善することができるため、VCM30の駆動力を向上できる。
【0056】
また、上記実施形態では、光軸方向に垂直な面におけるセンターヨーク32の断面積が、光軸OAに沿って一定であるとしたが、これに限られるものではない。例えば、センターヨーク32の光軸方向における両端部の断面積が、中央部の断面積よりも大きくてもよい。これにより、センターヨーク32の光軸方向における端部で発生する磁束の渋滞を解消し、センターヨーク32内の磁束の流れを改善することができるため、VCM30の駆動力を向上できる。
【0057】
なお、上記実施形態において、レンズ保持枠F3を収納する第2固定筒20は、光軸方向に直進移動が可能な移動筒であってもよい。また、上記実施形態およびその変形例において、レンズ鏡筒100は単焦点レンズであってもよいし、ズームレンズであってもよい。
【0058】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 カメラ
30 ボイスコイルモータ
31a 第1サイドヨーク
31b 第2サイドヨーク
32 センターヨーク
33a 第1磁石
33b 第2磁石
35 コイル
100 レンズ鏡筒
101 カメラ本体
L3 レンズ
F3 レンズ保持枠