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特許7616425ウレタン樹脂組成物、合成皮革、及び、合成皮革の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、合成皮革、及び、合成皮革の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20250109BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20250109BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20250109BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250109BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20250109BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L1/00
C08L83/04
C08K3/36
C08K3/34
B32B27/12
B32B27/40
B32B7/12
D06N3/14 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023564908
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2022043265
(87)【国際公開番号】W WO2023100728
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2021196033
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100146570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐武 紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 智博
(72)【発明者】
【氏名】上口 美和
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/084954(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100930(WO,A1)
【文献】特表2009-535466(JP,A)
【文献】特表2022-549487(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 18/00- 18/87
B32B 7/00- 7/14
B32B 27/00- 27/42
D06N 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性基を有するウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、粉体(C)を含有するウレタン樹脂組成物であって、
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度が100℃以上であり、
ウレタン樹脂(A)と水(B)との質量比[(A)/(B)]が、50/50~80/20の範囲であり、
前記粉体(C)の嵩密度が、400g/L以下であり、
前記粉体(C)が、シリカパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、ウレタン樹脂パウダー、アルミノシリカパウダー、ヘクトライトパウダー、及びベントナイトパウダーからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)のノニオン性基が、オキシエチレン構造を有する化合物により形成されたものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも、基布(i)、接着層(ii)、及び、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、前記接着層(ii)が、請求項1又は2記載のウレタン樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とする合成皮革。
【請求項4】
請求項1又は2記載のウレタン樹脂組成物を塗工し、完全硬化する前に、他の層を貼り合わせることを特徴とする合成皮革の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、合成皮革、及び、合成皮革の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂を用いてなる組成物は、例えば、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、手袋コーティング及び手袋皮膜、接着剤等の種々の用途に溶剤系ウレタン樹脂組成物が主に用いられている。この溶剤系ウレタン樹脂にはジメチルホルムアミド(DMF)が主に用いられているが、DMFは生体や環境への悪影響が懸念され法的規制が年々厳しくなっており、そのため弱溶剤化、水系化、無溶剤化等による製品の環境対応策が求められている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この中でもウレタン樹脂を水中分散させた水系ウレタン(PUD)が上記用途などに使用されている。PUD主剤のみの1液型接着剤の場合はエージング不要である一方、接着剤染み込み量の制御が困難であり、風合いや剥離強度が課題であり実使用が困難である。
【0004】
一方、PUD主剤とイソシアネート架橋剤を組み合わせた2液型接着剤は配合液の使用可能時間(ポットライフ)が短いため、安定に加工することが困難であった。また、PUD主剤とオキサゾリン架橋剤を組み合わせた2液型接着剤は配合液ポットライフが長いものの、架橋皮膜の強度が弱く加工品の剥離強度が低くなるため、実使用が困難であった。更に、PUD主剤とカルボジイミド架橋剤を組み合わせた2液型接着剤は配合液ポットライフが長く、架橋皮膜も強靭であるが、架橋反応の速度が速いため接着加工が不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-119749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水を含有するウレタン樹脂組成物において、優れた剥離強度、及び、風合いが得られるウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ノニオン性基を有するウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、粉体(C)を含有するウレタン樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度が100℃以上であり、ウレタン樹脂(A)と水(B)との質量比[(A)/(B)]が、50/50~80/20の範囲であり、前記粉体(C)の嵩密度が、400g/L以下である、ことを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、少なくとも、基布(i)、接着層(ii)、及び、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、前記接着層(ii)が、前記ウレタン樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物を塗工し、完全硬化する前に、他の層を貼り合わせることを特徴とする合成皮革の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するものであり、環境対応型のものである。また、前記ウレタン樹脂組成物は、剥離強度、及び、風合いに優れるものである。更に、前記ウレタン樹脂組成物は、架橋剤が不要で長いポットライフを有し、即剥離性にも優れるものである。
【0011】
よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、合成皮革の製造に好適に使用することができ、特に、合成皮革の接着層として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のウレタン樹脂組成物は、特定のウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、特定の粉体(C)を含有するものである。
【0013】
前記ウレタン樹脂(A)は、流動開始温度が100℃以上のものを用いることが必須である。前記ウレタン樹脂(A)により、乾燥の際にウレタン樹脂が熱溶融せず、基布等への染み込みを抑制し、優れた剥離強度、及び、柔軟な風合いを得ることが出来る。前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度としては、前記効果をより一層高めることができる点から、100~220℃が好ましく、120~200℃がより好ましい。
【0014】
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整する方法としては、主に後述する水性ウレタン樹脂(A)の原料である鎖伸長剤(a1)、ポリオール(a2)、及び、ポリイソシアネート(a3)の種類や使用量により調整する方法が挙げられる。前記流動開始温度を高く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリカーボネートポリオールやポリエーテルポリオールを用いること、鎖伸長剤(a1)の使用量を多くすること、ポリイソシアネート(a3)として、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートやジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのように結晶性の高いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。また、前記流動開始温度を低く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリエステルポリオールを用いること、鎖伸長剤(a1)の使用量を少なくすること、ポリイソシアネート(a3)として、トルエンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのように結晶性の低いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。よって、これらの方法を適宜選択することによって、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整することができる。なお、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0015】
前記ウレタン樹脂(A)は、ノニオン性基を有するものであり、水に分散し得るものである。また前記ウレタン樹脂(A)は、ノニオン性基を有することにより、本発明のウレタン樹脂組成物を接着剤として用いた場合に、接着剤を増粘させやすく、乾燥中も減粘傾向が小さくなり。乾燥中における接着剤の基布等への染み込みを抑制することができ、優れた剥離強度、及び、柔軟な風合いを得ることが出来る。
【0016】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0017】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より簡便に親水性を制御できる点から、ポリエチレングリコール、及び/又は、ポリエチレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0018】
前記オキシエチレン構造を有する化合物の数平均分子量としては、より一層優れた乳化性、及び、水分散安定性が得られる点から、200~10,000の範囲であることが好ましく、300~3,000の範囲がより好ましく、300~2,000の範囲であることがより好ましく、300~1,000の範囲が特に好ましい。なお、前記オキシエチレン構造を有する化合物の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0019】
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、例えば、鎖伸長剤(a1)、ポリオール(a2)、ポリイソシアネート(a3)、及び、前記オキシエチレン構造を有する化合物の反応物を用いることができる。
【0020】
前記鎖伸長剤(a1)としては、分子量が500未満(好ましくは50~450の範囲)のものを用いることができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記鎖伸長剤(a1)の分子量は、化学式から算出される値を示す。
【0021】
前記鎖伸長剤(a1)としては、30℃以下の比較的低い温度下でも容易に鎖伸長でき、反応時のエネルギー消費を抑制できる点、及び、ウレア基導入によるより一層優れた機械的強度、造膜性、風合い、低温屈強制、即剥離性、及び、剥離強度が得られる点、ウレタン樹脂(A)の高固形分化がより一層容易となる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤(以下「アミン系鎖伸長剤」と略記する。)が好ましく、分子量が30~250の範囲のアミン系鎖伸長剤を用いることがより好ましい。なお、前記鎖伸長剤として2種類以上を併用する場合には、前記分子量はその平均値を示し、平均値が前記好ましい分子量の範囲に包含されればよい。
【0022】
前記鎖伸長剤(a1)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度、造膜性、風合い、剥離強度、即剥離性、乳化性、低温屈曲性、及び、水分散安定性が得られる点、ウレタン樹脂(A)の高固形分化がより一層容易となる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1~30質量%が更に好ましく、0.5~10質量%が特に好ましい。
【0023】
前記ポリオール(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記ポリオール(a2)としては、前記ノニオン性基を付与する前記オキシエチレン構造を有する化合物以外のものを用いる。
【0024】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500~100,000の範囲であることが好ましく、800~10,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
前記ポリオール(a2)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中40~90質量%の範囲が更に好ましく、50~80質量%の範囲が特に好ましい。
【0026】
前記ポリイソシアネート(a3)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ポリイソシアネート(a3)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中5~40質量%の範囲が更に好ましく、10~35質量%の範囲が特に好ましい。
【0028】
前記オキシエチレン構造を有する化合物の使用割合としては、より一層優れた乳化性、水分散安定性、風合い、即剥離性、低温屈曲性、及び、造膜性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましく、0.25~3質量%の範囲が更に好ましい。
【0029】
前記ウレタン樹脂(A)の平均粒子径としては、より一層優れた風合い、低温屈曲性、及び、造膜性が得られる点から、0.01~1μmの範囲であることが好ましく、0.05~0.9μmの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0030】
本発明のウレタン樹脂組成物における、前記ウレタン樹脂(A)と水(B)との質量比[(A)/(B)]は、50/50~80/20の範囲であることが必須である。係る範囲であれば、乾燥の際に温度上昇による接着剤液の低粘度化より先に、乾燥に伴う接着剤液の高粘度化が発生する。よって、接着剤の基布等への染み込みを抑制でき、優れた剥離強度及び風合いが得られる。前記質量比としては、50/50~70/30がより好ましい。
【0031】
前記水(B)としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
次に、本発明で用いるウレタン樹脂(A)の製造方法について説明する。
【0033】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)の製造方法としては、前記ポリオール(a2)、前記ポリイソシアネート(a3)、及び、前記オキシエチレン構造を有する化合物を無溶媒下で反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を得(以下、「プレポリマー工程」と略記する。)、次いで、ウレタンプレポリマー(i)を前記水に分散させ(以下、「乳化工程」と略記する。)、その後、前記鎖伸長剤(a1)を反応させてウレタン樹脂(A)を得る工程(以下、「鎖伸長工程」と略記する。)を有するものである。
【0034】
前記プレポリマー工程は、無溶媒下で行うことが好ましい。従来技術では、プレポリマー工程の際に、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶媒中で行うことが一般的であったが、乳化工程後に前記有機溶剤を留去する脱溶剤工程が必要であり、実生産現場では数日の生産日数を要していた。また、前記脱溶剤工程で完全に有機溶剤を留去することも困難であり、若干の有機溶剤を残存しているケースが多く、環境対応に完全に対応することは困難であった。一方、無溶媒下でプレポリマーを製造することで、有機溶剤を完全に含まないウレタン樹脂が得られ、かつ、その生産工程も省力化することが可能である。
【0035】
前記プレポリマー工程は、撹拌翼を備えた反応釜;ニーダー、コンテイニアスニーダー、テーパーロール、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、万能混合機、プラストミル、ボデーダ型混練機等の混練機;TKホモミキサー、フィルミックス、エバラマイルダー、クレアミックス、ウルトラターラックス、キャビトロン、バイオミキサー等の回転式分散混合機;超音波式分散装置;インラインミキサー等の可動部がなく、流体自身の流れによって混合できる装置などを使用することにより行うことができる。
【0036】
前記プレポリマー工程における、前記ポリオール(a2)が有する水酸基、及び、前記オキシエチレン構造を有する化合物が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/(水酸基及びアミノ基)]としては、より一層優れた低温屈曲性、耐クラック性、造膜性、風合い、剥離強度、剥離強度、及び、機械的強度が得られる点から、1.1~3の範囲であることが好ましく、1.2~2の範囲がより好ましい。
【0037】
前記プレポリマー工程の反応は、例えば、50~120℃で1~10時間行うことが挙げられる。
【0038】
前記乳化工程は、例えば、撹拌翼を備えた反応釜;ニーダー、コンテイニアスニーダー、テーパーロール、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、万能混合機、プラストミル、ボデーダ型混練機等の混練機;ホモミキサー、スタティックミキサー、フィルミックス、エバラマイルダー、クレアミックス、ウルトラターラックス、キャビトロン、バイオミキサー等の回転式分散混合機;超音波式分散装置;インラインミキサー等の可動部がなく、流体自身の流れによって混合できる装置などを使用することにより行うことができる。
【0039】
前記乳化工程は、水が蒸発しない温度下で行うことが好ましく、例えば、10~90℃の範囲が挙げられる、前記乳化工程は、前記プレポリマー工程と同様の設備を使用して行うことができる。
【0040】
前記鎖伸長工程は、前記ウレタンプレポリマー(i)が有するイソシアネート基と、前記鎖伸長剤(a1)との反応により、ウレタンプレポリマー(i)を高分子量化させ、ウレタン樹脂(A)を得る工程である。前記鎖伸長工程の際の温度としては、生産性の点から、50℃以下で行うことが好ましい。
【0041】
前記鎖伸長工程における、前記ウレタンプレポリマー(i)が有するイソシアネート基と、前記鎖伸長剤(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計とのモル比[(水酸基及びアミノ基)/イソシアネート基]としては、より一層優れた低温屈曲性、耐クラック性、造膜性、剥離強度、即剥離性、風合い、及び、機械的強度が得られる点から、0.8~1.1の範囲であることが好ましく、0.9~1の範囲がより好ましい。
【0042】
前記鎖伸長工程は、前記プレポリマー工程と同様の設備を使用して行うことができる。
【0043】
前記粉体(C)は、嵩密度が400g/L以下のものを用いることが必須である。前記特定の粉体(C)を用いることにより、接着剤が増粘し、乾燥中も減粘傾向が小さくなる。そのため乾燥中の接着剤の基布等への染み込みを抑制できるため、優れた剥離強度、及び、風合いが得られる。前記粉体(C)の嵩密度としては、前記効果をより一層高めることができる点から、5~400g/Lが好ましく、10~360g/Lがより好ましい。なお、前記粉体(C)の嵩密度は、容量、重量が既知の容器に粉体を充填したものの重量を精秤測定して得られた値を示す。
【0044】
前記粉体(C)としては、例えば、シリカパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、ウレタン樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、アルミノシリカパウダー、ヘクトライトパウダー、ベントナイトパウダーなどを用いることができる。これらの中でも、前記効果をより一層高めることができる点から、シリカパウダー、シリコーンパウダー、及び、セルロースパウダーからなる群より選ばれる一種以上のものが好ましい。
【0045】
前記粉体(C)の使用量としては、前記効果をより一層高めることができる点から、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0046】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、粉体(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0047】
前記その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、乳化剤、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、顔料、染料、難燃剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、実質的に有機溶剤を含まないことが好ましいが、添加剤として有機溶剤を添加してもよい。
【0048】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するものであり、環境対応型のものである。また、前記ウレタン樹脂組成物は、剥離強度、及び、風合いに優れるものである。更に、前記ウレタン樹脂組成物は、架橋剤が不要で長いポットライフを有し、即剥離性にも優れるものである。よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、合成皮革の製造に好適に使用することができ、特に、合成皮革の接着層として好適に使用することができる。
【0049】
次に、本発明のウレタン樹脂組成物を接着層の材料とした合成皮革について説明する。
【0050】
前記合成皮革としては、少なくとも、基布(i)、接着層(ii)、及び、表皮層(iii)を有するものであり、具体的には、例えば、以下の構成が挙げられる。
(1)基布(i)、接着層(ii)、表皮層(iii)
(2)基布(i)、接着層(ii)、中間層、表皮層(iii)
(3)基布(i)、湿式多孔層、接着層(ii)、表皮層(iii)
(4)基布(i)、湿式多孔層、接着層(ii)、中間層、表皮層(iii)
【0051】
前記基布(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物などを用いることができる。
【0052】
前記湿式多孔層としては、溶剤系ウレタン樹脂組成物を用いた公知の湿式製膜法により形成されたものを用いることができる。
【0053】
前記中間層、及び、表皮層(iii)を形成する材料としては、例えば、公知の水性ウレタン樹脂、溶剤系ウレタン樹脂、無溶剤ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記接着層(ii)の厚さとしては、例えば、30~60μmの範囲が挙げられる。
【0055】
前記接着層(ii)の流動開始温度、すなわち、本発明のウレタン樹脂組成物の硬化物の流動開始温度としては、より一層優れた耐熱性が得られる点から、155℃以上であることが好ましく、160~220℃の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂組成物の硬化物の流動開始温度の流動開始温度の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0056】
次に、前記(1)の構成を有する合成皮革の製造方法について説明する。
【0057】
前記合成皮革の製造方法としては、例えば、離型処理された基材上に、表皮層形成用樹脂を塗工し、乾燥・工程することにより、表皮層(iii)を得、次いで、この表皮層(iii)上に、本発明のウレタン樹脂組成物を塗工し、前記ウレタン樹脂組成物が完全硬化する前に、これを前記基布(i)と貼り合わせる方法が挙げられる。これらの方法は、ウェットラミネーション法、又は、セミウェットラミネーション法と呼ばれる。係る方法を使用することで、より一層優れた剥離強度を得ることができる。
【0058】
前記ウレタン樹脂を塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、スプレーコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用した方法が挙げられる。
【0059】
前記合成皮革を製造した後は、必要に応じて、例えば、30~100℃で1~10日エージングしてもよい。
【実施例
【0060】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0061】
[実施例1]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(三菱化学株式会社製「PTMG2000」、数平均分子量;2,000、以下「PTMG」と略記する。)1,000質量部と、ポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG600」、数平均分子量;600、以下「PEG」と略記する。)38質量部と、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略記する。)262質量部とをNCO%が2.8質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA1を得た。
70℃に加熱した前記ウレタンプレポリマーA1 1,000質量部に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS-20F」)を200質量部、水を650質量部、混合して乳化液を得た。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のピペラジン(以下、「PP」と略記する。)の水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の不揮発分の含有率が50質量%のウレタン樹脂水分散体を得た。
このウレタン樹脂樹脂水分散体100質量部、粉体(Evonik社製「Acematt OK-412」、嵩密度;130g/Lのシリカパウダー、以下「OK-412」と略記する。)5質量部、消泡剤(Evonik社製「TEGO FOAMEX800」)0.1質量部を容器に入れ、メカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで、真空脱泡器により脱泡させてウレタン樹脂組成物(1)を得た。
【0062】
[実施例2]
実施例1において、PTMGの種類をポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH-100」、数平均分子量;1,000)に変更し、ウレタン樹脂と水との質量比が60/40となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物(2)を得た。
【0063】
[実施例3]
実施例1において、PTMGの種類をポリエステルポリオール(株式会社ダイセル製「プラクセル210」、数平均分子量;1,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂樹脂組成物(3)を得た。
【0064】
[実施例4]
実施例1において、OK-412の種類をセルロースパウダー(日本製紙ケミカル社製「KC-フロック W-200Y」、嵩密度;350g/L、以下「W-200Y」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物(4)を得た。
【0065】
[比較例1]
実施例1において、OK-412の種類をシリコーンレジンパウダー(信越化学社製「KMP-590」、嵩密度;580g/L、以下「KMP-590」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物(R1)を得た。
【0066】
[比較例2]
実施例1において、OK-412の種類をウレタン樹脂パウダー(根上工業社製「アートパールJMB-800」、嵩密度;413g/L、以下「JMB-800」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂水分散体(1)を含む水性樹脂組成物(R2)を得た。
【0067】
[比較例3]
実施例1において、OK-412を使用しない以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物(R3)を得た。
【0068】
[比較例4]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(三菱化学株式会社製「PTMG1000」、数平均分子量;1,000)1,000質量部と、イソホロンジイソシアネート444質量部とをNCO%が2.9%に達するまで70℃で反応させた後、アセトン619質量部を加えてウレタン樹脂のアセトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にジアミノエチルスルホンナトリウムの50%水溶液365質量部と、イオン交換水1639質量部を混合させて転相乳化させることでウレタン樹脂が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からアセトンを留去することによって、不揮発分50質量%のウレタン樹脂水分散体を得た。なお、ウレタン樹脂の流動開始温度は180℃であった。
このウレタン樹脂水分散体100質量部、OK-412を5質量部、消泡剤(Evonik社製「TEGO FOAMEX800」)0.1質量部を容器に入れ、メカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで、真空脱泡器により脱泡させてウレタン樹脂組成物(R4)を得た。
【0069】
[比較例5]
メチルエチルケトン1,225質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(三菱化学株式会社製「PTMG1000」、数平均分子量;1,000)1,000質量部と、2,2’-ジメチロールプロピオン酸50質量部と、イソホロンジイソシアネート175質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてアニオン性ウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(Hydrophile-Lipophile Balance;13)61質量部と、トリエチルアミン38質量部を混合させた後に、イオン交換水2,450質量部を加えて転相乳化させることでウレタン樹脂が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分50質量%のウレタン樹脂水分散体を得た。なお、ウレタン樹脂の流動開始温度は40℃以下であった。
このウレタン樹脂水分散体100質量部、OK-412を5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトV-04」(固形分40質量%)、以下「V-04」と略記する。)13質量部を容器に入れ、メカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで、真空脱泡器により脱泡させてウレタン樹脂組成物(R5)を得た。
【0070】
[比較例6]
実施例1において、水を加え、ウレタン樹脂と水との質量比が40/60となるように調製した以外は、実施例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物(R6)を得た。
【0071】
[数平均分子量の測定方法]
実施例および比較例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0072】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0073】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0074】
[ウレタン樹脂(A)の流動開始温度の測定方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂水分散体を離型紙に塗布し(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機にて70℃、4分間、次いで120℃で2分間乾燥することで乾燥物を得た。この乾燥物を、株式会社島津製作所製フローテスター「CFT-500A」(口径1mm、長さ1mmのダイスを使用、荷重98N、昇温速度3℃/分)を使用して、流動開始温度を測定した。
【0075】
[表皮層配合液の作製方法]
エーテル系PUD「ハイドランWLS-120AR」(DIC株式会社製)100gと増粘剤「Borch Gel ALA」(Borchers社製)2.0g、レベリング剤「TEGO Flow425」(Evonik社製)、消泡剤「TEGO Twin4000」(Evonik社製)、黒顔料「DILAC HS-9550」(DIC株式会社製)をメカニカルミキサーにて2000rpm、2分間撹拌し、次いで真空脱泡機を用いて脱泡させて表皮層配合液を作成した。
【0076】
[合成皮革の作製方法]
離型紙EK-100D(Lintech社製)上に前記表皮層配合液をナイフコーターにて塗工後(塗工厚み100μm)、熱風乾燥機にて表皮層フィルムを形成した(乾燥条件;70℃で2分、その後120℃で2分)。さらに表皮層フィルム上に実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物をナイフコーターにて塗工後(乾燥した場合に塗膜厚み50μmとなるよう塗工厚みを調整)、布基材を前記ウレタン樹脂組成物層(接着層)に乗せ、ラミネーターにて温度25℃、圧力5MPa、送り速度0.5m/分の条件で貼り合せた。さらに熱風乾燥機にて接着層を乾燥(乾燥条件;120℃で2分)させた直後に離型紙から剥離して加工品合皮を得た
【0077】
[剥離強度の測定方法]
2.5cm幅のホットメルトテープ(「BW-2」サン化成株式会社製)を前記合成皮革の表皮層フィルム表面に置いて150℃で30秒加熱圧着し、ホットメルトテープを接着した。ホットメルトテープの幅に沿って試料を切断した。この試料の一部を剥離し、基材とホットメルトテープをチャックで挟み、島津オートグラフ「AG-1」(株式会社島津製作所製)を使用して、フルスケール5kg、ヘッドスピード20mm/分の条件にて剥離強度を測定した。得られたデータの平均値を求め、1cm幅に換算した。
【0078】
[接着剤層の形成状態評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を1mm幅で切り出し、加工品断面を光学顕微鏡にて観察し、以下のように評価した。
「T」:接着剤層が表皮層と基材の間に形成されている
「F」:表皮層と基材の間に接着剤層が存在しない
【0079】
[風合いの評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を触感により評価した。
◎:柔軟性に富む、○:やや柔軟性がある、△:柔軟性が劣る、×:硬い
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
本発明のウレタン樹脂組成物である実施例1~4は、剥離強度、及び、風合いに優れることが分かった。
【0083】
一方、比較例1及び2は、粉体(C)として、嵩密度が本発明で規定する範囲外の粉体を用いた態様であるが、剥離強度、及び、風合いが不良であった。
【0084】
比較例3は、粉体(C)を用いない態様であるが、剥離強度、及び、風合いが不良であった。
【0085】
比較例4は、ウレタン樹脂(A)の代わりに、アニオン性基を有するウレタン樹脂を用いた態様であるが、剥離強度、及び、風合いが不良であった。
【0086】
比較例5は、ウレタン樹脂(A)の代わりに、アニオン性基を有し、流動開始温度が本発明で規定する範囲外のウレタン樹脂を用いた態様であるが、剥離強度、及び、風合いが不良であった。
【0087】
比較例6は、ウレタン樹脂(A)と水(B)との質量比が本発明で規定する範囲外の態様であるが、剥離強度、及び、風合いが不良であった。