(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光学異方性積層体及びその製造方法、並びに、円偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250109BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20250109BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250109BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250109BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G09F9/30 365
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2024502920
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2023002076
(87)【国際公開番号】W WO2023162545
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2022030388
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大里 和弘
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-111234(JP,A)
【文献】特開2023-111233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/86
H10K 59/10
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性積層体の製造方法であって、
前記光学異方性積層体が、
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を含み、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)、及び下記式(5)を満たし、前記第一光学異方性層の遅相軸と前記第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°以上95°以下であ
り:
nx1>ny1≧nz1 (1)
nz2≧nx2>ny2 (2)
nz3>nx3≧ny3 (3)
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) (4)
Re1(550)>Re2(550)>Re3(550) (5)
ただし、
nx1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、前記第一光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、前記第二光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって、nx3を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz3は、前記第三光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
Re1(450)は、波長450nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、Re1(550)は、波長550nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、
Re2(450)は、波長450nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(550)は、波長550nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、
Re3(550)は、波長550nmにおける前記第三光学異方性層の面内位相差を表
し、
前記第一光学異方性層は、第一樹脂層を延伸した第一延伸層であり、
前記第一樹脂層は、脂環式構造含有重合体を含み正の固有複屈折値を有する樹脂(A)を含み、
前記第二光学異方性層は、第二樹脂層を延伸した第二延伸層であり、前記第二樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含み、
前記製造方法が、
前記第一樹脂層の上に前記樹脂(B)を含む塗工液(B)を塗工して前記第二樹脂層を形成して、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層を含む第一中間積層体を得る工程(1a)と、
前記第一中間積層体を延伸して、前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層を含み、前記第一光学異方性層の遅相軸と前記第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°以上95°以下である、第二中間積層体を得る工程(2)と、及び、
前記第二中間積層体に、前記第三光学異方性層を積層する工程(3)とを含む、
光学異方性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光学異方性積層体が、更に下記式(6)を満たす、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
100nm≦(Re1(550)-Re2(550))≦180nm (6)
ここで、Re1(550)及びRe2(550)はそれぞれ、前記と同義である。
【請求項3】
前記光学異方性積層体が、更に下記式(7)を満たす、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
Re2(450)/Re2(550)-Re1(450)/Re1(550)≧0.05 (7)
ここで、Re1(450)、Re1(550)、Re2(450)、及びRe2(550)はそれぞれ、前記と同義である。
【請求項4】
前記第一光学異方性層が、液晶配向層を含む、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
【請求項5】
前記第二光学異方性層が、液晶配向層を含む、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
【請求項6】
前記第三光学異方性層が、液晶配向層を含む、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
【請求項7】
前記第三光学異方性層が、第三樹脂層を延伸した第三延伸層であり、
前記第三樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(C)を含む、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
【請求項8】
前記光学異方性積層体が、前記第一光学異方性層、前記第二光学異方性層、及び前記第三光学異方性層をこの順で含むか、又は、
前記第一光学異方性層、前記第三光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含むか、又は、
前記第三光学異方性層、前記第一光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含む、請求項1に記載の光学異方性積層体
の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)が、前記第二中間積層体に、前記第三光学異方性層を貼合することを含む、請求項
1に記載の光学異方性積層体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(3)が、前記第二中間積層体の上に塗工液(C)を塗工して前記第三光学異方性層を形成することを含む、請求項
1に記載の光学異方性積層体の製造方法。
【請求項11】
前記塗工液(C)が、液晶化合物若しくは重合体、又は、液晶化合物及び重合体を含む、請求項
10に記載の光学異方性積層体の製造方法。
【請求項12】
円偏光板の製造方法であって、
前記円偏光板が、直線偏光子と
、光学異方性積層体とを含
み、
前記製造方法が、
前記光学異方性積層体を請求項1~11のいずれか一項に記載の光学異方性積層体の製造方法で製造する工程を含む、円偏光板
の製造方法。
【請求項13】
前記直線偏光子の吸収軸又は前記直線偏光子の透過軸と、前記第一光学異方性層の遅相軸とがなす角度が、40°以上50°以下である、請求項
12に記載の円偏光板
の製造方法。
【請求項14】
画像表示装置
の製造方法であって、
前記画像表示装置は、直線偏光子と
、光学異方性積層体と
、有機エレクトロルミネッセンス素子とをこの順で含
み、
前記製造方法が、
前記光学異方性積層体を請求項1~11のいずれか一項に記載の光学異方性積層体の製造方法で製造する工程を含む、画像表示装置
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性積層体及びその製造方法、並びに、円偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置(以下、適宜「有機EL画像表示装置」ということがある。)及び液晶画像表示装置等の画像表示装置には、光学異方性を有する層が複数重ねられた、光学異方性積層体が設けられることがある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-210459号公報(対応外国公報:米国特許出願公開第2017/052300号明細書)
【文献】特開2014-026266号公報(対応外国公報:米国特許出願公開第2015/168624号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置は、高温となる環境で使用される場合がある。したがって、画像表示装置に組み込まれる光学異方性積層体は、耐熱性を有し、熱による位相差変動が小さいことが好ましい。
しかし、特許文献1及び2の技術では、直線偏光子と組み合わせることにより、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において外光の反射による色付きを抑制できる円偏光板を得ることができ、かつ耐熱性に優れた光学異方性積層体を得ることが難しい場合があった。
【0005】
したがって、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において外光の反射による色付きを抑制可能な円偏光板を得ることができ、かつ耐熱性に優れた光学異方性積層体が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、特定の光学特性を備えた、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を含む、光学異方性積層体により、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
[1] 第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を含み、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)、及び下記式(5)を満たし、前記第一光学異方性層の遅相軸と前記第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°以上95°以下である、光学異方性積層体。
nx1>ny1≧nz1 (1)
nz2≧nx2>ny2 (2)
nz3>nx3≧ny3 (3)
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) (4)
Re1(550)>Re2(550)>Re3(550) (5)
ただし、
nx1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、前記第一光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、前記第二光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって、nx3を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz3は、前記第三光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
Re1(450)は、波長450nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、Re1(550)は、波長550nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、
Re2(450)は、波長450nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(550)は、波長550nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、
Re3(550)は、波長550nmにおける前記第三光学異方性層の面内位相差を表す。
[2] 更に下記式(6)を満たす、[1]に記載の光学異方性積層体。
100nm≦(Re1(550)-Re2(550))≦180nm (6)
ここで、Re1(550)及びRe2(550)はそれぞれ、前記と同義である。
[3] 更に下記式(7)を満たす、[1]又は[2]に記載の光学異方性積層体。
Re2(450)/Re2(550)-Re1(450)/Re1(550)≧0.05 (7)
ここで、Re1(450)、Re1(550)、Re2(450)、及びRe2(550)はそれぞれ、前記と同義である。
[4] 前記第一光学異方性層が、第一樹脂層を延伸した第一延伸層であり、
前記第一樹脂層は、正の固有複屈折値を有する樹脂(A)を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[5] 前記第一光学異方性層が、液晶配向層を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[6] 前記第二光学異方性層が、第二樹脂層を延伸した第二延伸層であり、
前記第二樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[7] 前記第二光学異方性層が、液晶配向層を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[8] 前記第三光学異方性層が、液晶配向層を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[9] 前記第三光学異方性層が、第三樹脂層を延伸した第三延伸層であり、
前記第三樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(C)を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[10] 前記第一光学異方性層、前記第二光学異方性層、及び前記第三光学異方性層をこの順で含むか、又は、
前記第一光学異方性層、前記第三光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含むか、又は、
前記第三光学異方性層、前記第一光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
[11] 直線偏光子と、
[1]~[10]のいずれか一項に記載の光学異方性積層体とを含む、円偏光板。
[12] 前記直線偏光子の吸収軸又は前記直線偏光子の透過軸と、前記第一光学異方性層の遅相軸とがなす角度が、40°以上50°以下である、[11]に記載の円偏光板。
[13] [11]又は[12]に記載の円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを含む画像表示装置であって、
前記直線偏光子と、前記光学異方性積層体と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子とをこの順で含む、画像表示装置。
[14] 光学異方性積層体の製造方法であって、
前記光学異方性積層体が、[4]に記載の光学異方性積層体であり、
ここで、前記第二光学異方性層は、第二樹脂層を延伸した第二延伸層であり、前記第二樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含み、
前記製造方法が、
前記第一樹脂層の上に前記樹脂(B)を含む塗工液(B)を塗工して前記第二樹脂層を形成して、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層を含む第一中間積層体を得る工程(1a)と、
前記第一中間積層体を延伸して、前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層を含み、前記第一光学異方性層の遅相軸と前記第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°以上95°以下である、第二中間積層体を得る工程(2)と、及び、
前記第二中間積層体に、前記第三光学異方性層を積層する工程(3)とを含む、
光学異方性積層体の製造方法。
[15] 前記工程(3)が、前記第二中間積層体に、前記第三光学異方性層を貼合することを含む、[14]に記載の光学異方性積層体の製造方法。
[16] 前記工程(3)が、前記第二中間積層体の上に塗工液(C)を塗工して前記第三光学異方性層を形成することを含む、[14]に記載の光学異方性積層体の製造方法。
[17] 前記塗工液(C)が、液晶化合物若しくは重合体、又は、液晶化合物及び重合体を含む、[16]に記載の光学異方性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において外光の反射による色付きを抑制可能な円偏光板を得ることができ、かつ耐熱性に優れた光学異方性積層体;前記光学異方性積層体の製造方法;前記光学異方性積層体を含む円偏光板;前記光学異方性積層体を含む画像表示装置;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学異方性積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、色空間座標の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。また、図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0011】
以下の説明において、面内位相差Reは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値を示す。厚み方向の位相差Rthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2-nz}×dで表される値である。nxは、厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向(遅相軸方向)の屈折率を表し、nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、nzは、厚み方向の屈折率を表し、dは、厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。面内位相差及び厚み方向の位相差は、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定しうる。
【0012】
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該層の面内方向における遅相軸を表す。
【0013】
以下の説明において、複数の層を備える部材における各層の光学軸(吸収軸、透過軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記の層を厚み方向から見たときの角度を表す。
【0014】
以下の説明において、ある面の正面方向とは、別に断らない限り、当該面の法線方向を意味し、具体的には前記面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0015】
以下の説明において、ある面の傾斜方向とは、別に断らない限り、当該面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には当該面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0016】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°、±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0017】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0018】
以下の説明において、ある製品(光学異方性積層体、円偏光板等)の面内の光学軸(遅相軸、透過軸、吸収軸等)の方向及び幾何学的方向(フィルムの長手方向、幅方向等)の角度関係は、別に断らない限り、ある方向のシフトを正、他の方向のシフトを負として規定され、当該正及び負の方向は、当該製品内の構成要素において共通に規定される。例えば、ある円偏光板において、「円偏光板の長手方向に対してλ/2層の遅相軸がなす角度が45°であり、円偏光板の長手方向に対してλ/4層の遅相軸がなす角度が135°である」とは、下記の2通りの場合を表す:
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2層の遅相軸が、円偏光板の長手方向から時計周りに45°シフトし、且つ、λ/4層の遅相軸が、円偏光板の長手方向から時計周りに135°シフトしている。
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2層の遅相軸が、円偏光板の長手方向から反時計周りに45°シフトし、且つ、λ/4層の遅相軸が、円偏光板の長手方向から反時計周りに135°シフトしている。
【0019】
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの長手方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0020】
以下の説明において、「正の固有複屈折値を有する重合体」及び「正の固有複屈折値を有する樹脂」とは、「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも大きくなる重合体」及び「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂」をそれぞれ意味する。また、「負の固有複屈折値を有する重合体」及び「負の固有複屈折値を有する樹脂」とは、「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも小さくなる重合体」及び「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂」をそれぞれ意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0021】
以下の説明において、「偏光板」、「円偏光板」、「プレート」、及び「λ/2板」、「λ/4板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0022】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0023】
[1.光学異方性積層体]
[1.1.概要]
本発明の一実施形態に係る光学異方性積層体は、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を含む。本実施形態に係る光学異方性積層体を直線偏光子と組み合わせることにより、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において外光の反射による色付きを抑制可能な円偏光板を得ることができる。また本実施形態に係る光学異方性積層体は、耐熱性に優れる。
【0024】
光学異方性積層体は、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)、及び下記式(5)を満たす。
【0025】
nx1>ny1≧nz1 (1)
nz2≧nx2>ny2 (2)
nz3>nx3≧ny3 (3)
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) (4)
Re1(550)>Re2(550)>Re3(550) (5)
【0026】
ただし、
nx1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、前記第一光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、前記第一光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、前記第二光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、前記第二光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny3は、前記第三光学異方性層の面内方向であって、nx3を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz3は、前記第三光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
Re1(450)は、波長450nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、Re1(550)は、波長550nmにおける前記第一光学異方性層の面内位相差を表し、
Re2(450)は、波長450nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(550)は、波長550nmにおける前記第二光学異方性層の面内位相差を表し、
Re3(550)は、波長550nmにおける前記第三光学異方性層の面内位相差を表す。
【0027】
また、本実施形態の光学異方性積層体は、前記第一光学異方性層の遅相軸と前記第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°以上95°以下である。
【0028】
前記式(1)は、第一光学異方性層が、いわゆるポジティブAプレート又はネガティブBプレートとして機能しうることを示す。
前記式(2)は、第二光学異方性層が、いわゆるネガティブAプレート又はポジティブBプレートとして機能しうることを示す。
【0029】
前記式(3)は、第三光学異方性層が、いわゆるポジティブCプレート又はポジティブBプレートとして機能しうることを示す。
【0030】
前記式(4)は、第一光学異方性層よりも、第二光学異方性層の波長分散性が大きいことを示す。
【0031】
「Re2(450)/Re2(550)-Re1(450)/Re1(550)」の値は、通常0より大きく、好ましくは下記式(7)を満たす。
Re2(450)/Re2(550)-Re1(450)/Re1(550)≧0.05 (7)
「Re2(450)/Re2(550)-Re1(450)/Re1(550)」の値は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.10以上であり、大きいほど好ましいが、例えば0.8以下であってもよい。このように面内位相差の波長分散性に差がある第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える光学異方性積層体は、積層状態で容易に逆波長分散特性を得ることができる。よって、光学異方性積層体を直線偏光子と組み合わせて広い波長範囲において機能する円偏光板としうる。
【0032】
「Re2(450)/Re2(550)」の値は、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.07以上、特に好ましくは1.10以上であり、特に限定されないが、例えば、1.8以下であってもよい。「Re2(450)/Re2(550)」の値が前記範囲にある場合、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0033】
「Re1(450)/Re1(550)」の値は、特に限定されないが、例えば、0.8以上であってもよく、好ましくは1.05以下、より好ましくは1.03以下、特に好ましくは1.01以下である。「Re1(450)/Re1(550)」が前記範囲にある場合、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0034】
(Re1(550)-Re2(550))の値は、通常0より大きく、好ましくは、光学異方性積層体がλ/4板として機能しうる値である。具体的には、光学異方性積層体は、好ましくは下記式(6)を満たす。
100nm≦(Re1(550)-Re2(550))≦180nm (6)
「Re1(550)-Re2(550)」の値は、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下である。「Re1(550)-Re2(550)」が前記範囲にある場合、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0035】
前記式(5)は、波長550nmにおける面内位相差の大きさが、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層の順であることを示す。
【0036】
Re1(550)の値は、前記式(1)~(5)を満たすことを条件として、好ましくは220nm以上、より好ましくは240nm以上、特に好ましくは250nm以上であり、好ましくは310nm以下、より好ましくは290nm以下、特に好ましくは280nm以下である。面内位相差Re1(550)が前記範囲にある場合、第一光学異方性層は、λ/2板として機能できる。そして、その第一光学異方性層を備える光学異方性積層体によれば、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0037】
Re2(550)の値は、前記式(1)~(5)を満たすことを条件として、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、特に好ましくは110nm以上であり、好ましくは170nm以下、より好ましくは150nm以下、特に好ましくは140nm以下である。面内位相差Re2(550)が前記範囲にある場合、第二光学異方性層は、λ/4板として機能できる。そして、その第二光学異方性層を備える光学異方性積層体によれば、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0038】
Re3(550)の値は、前記式(1)~(5)を満たすことを条件として、通常0nm以上であり、0nmであってもよく、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは5nm以下である。
【0039】
第一光学異方性層の遅相軸と、第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度は、通常85°以上、好ましくは87°以上、より好ましくは88°以上、更に好ましくは89°以上であり、通常95°以下、好ましくは93°以下、より好ましくは92°以下、更に好ましくは91°以下であり、最も好ましくは90°である。第一光学異方性層の遅相軸と第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、前記範囲内であることにより、光学異方性積層体の耐熱性を効果的に向上させうる。
【0040】
長尺の光学異方性積層体においては、第一光学異方性層の遅相軸及び第二光学異方性層の遅相軸の一方が、光学異方性積層体の幅方向に対して45°に近い特定の範囲の角度をなすことが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは40°以上、より好ましくは42°以上、更に好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは48°以下、更に好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。更にこの場合、第一光学異方性層の遅相軸及び第二光学異方性層の遅相軸の他方は、光学異方性積層体の幅方向に対して135°に近い特定の範囲の角度をなすことが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは130°以上、より好ましくは132°以上、更に好ましくは133°以上、特に好ましくは134°以上であり、好ましくは140°以下、より好ましくは138°以下、更に好ましくは137°以下、特に好ましくは136°以下である。一般的な長尺の直線偏光子は、当該直線偏光子の幅方向に平行又は垂直な吸収軸を有する。幅方向に対して前記範囲の角度をなす方向に遅相軸を有する第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える長尺の光学異方性積層体は、前記の一般的な直線偏光子に、単純に光学異方性積層体の幅方向と直線偏光子の幅方向とを平行にして貼り合わせて、円偏光板を得ることができる。したがって、光学異方性積層体と直線偏光子との貼り合わせをロール・トゥ・ロールで行うことができるので、円偏光板を特に簡単に製造することができる。
【0041】
第一光学異方性層及び第二光学異方性層のそれぞれの厚みに特に制限はない。第一光学異方性層及び第二光学異方性層の厚みは、それぞれ独立に、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0042】
第三光学異方性層の厚みに特に制限はない。第三光学異方性層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.2μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。
【0043】
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層はそれぞれ、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。ここで、一般に、複層構造を有する層(層(A)とする。)全体についてのnx、ny、及びnzは、当該複層構造を有する層(A)全体についての面内位相差Re及び厚み方向における位相差Rth、層(A)全体の厚み、並びに層(A)の平均屈折率naveにより算出される。平均屈折率naveは、次式により決定しうる。
nave=Σ(ni×Li)/ΣLi
ni:層(A)に含まれるi層の樹脂の屈折率
Li:i層の厚み
【0044】
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層は、それぞれ独立して、好ましくは単層構造を有する。
【0045】
[1.2.各層を形成する材料]
前記の、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を形成するための材料は任意である。第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層のそれぞれは、通常樹脂を含み、樹脂から形成される。
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層のそれぞれに含まれる樹脂は、固有複屈折値が正の樹脂であっても負の樹脂であってもよい。
【0046】
正の固有複屈折値を有する樹脂は通常、正の固有複屈折値を有する重合体を含む。この重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;脂環式構造含有重合体;棒状液晶ポリマー;などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、及びポリカーボネートが好ましく、脂環式構造含有重合体が特に好ましい。脂環式構造含有重合体は、環状オレフィン系重合体でありうる。環状オレフィン系重合体は、環状オレフィンを重合して得られる構造単位を有する重合体又はその水素化物を意味する。環状オレフィンは、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。
【0047】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を含有する重合体、のいずれも用いうる。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造が挙げられるが、熱安定性の観点から、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
【0048】
脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合が前記範囲にある場合、耐熱性に優れる光学異方性積層体を得ることができる。
【0049】
脂環式構造含有重合体としては、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、環状オレフィン重合体及びノルボルネン系重合体が好ましく、ノルボルネン系重合体が特に好ましい。ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を含有するモノマーの開環重合体、ノルボルネン構造を含有するモノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及び、それらの水素化物;ノルボルネン構造を含有するモノマーの付加重合体、ノルボルネン構造を含有するモノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン構造を含有するモノマーの開環重合体水素化物が特に好ましい。前記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002-321302号公報に開示されている重合体から選択されうる。
【0050】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネート)が挙げられる。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)及びセルロースジアセテート(DAC)が含まれうる。
【0051】
セルロースエステルの総アシル基置換度は、好ましくは2.20以上2.70以下であり、より好ましくは2.40以上2.60以下である。ここで、総アシル基は、ASTM D817-91に準じて測定しうる。また、セルロースエステルの重量平均重合度は、好ましくは350以上800以下であり、より好ましくは370以上600以下である。
【0052】
ポリカーボネートは、通常、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)を含む繰り返し単位を有する。ポリカーボネートとしては、例えば、ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位及びカーボネート構造(-O-(C=O)-O-で表される構造)を有する重合体が挙げられる。ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAが挙げられる。ポリカーボネート中に含まれる、ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0053】
正の固有複屈折値を有する樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にある場合、光学異方性層の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされる。前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量である。但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合には、GPCの溶媒としてトルエンを用いてもよい。
【0054】
正の固有複屈折値を有する樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、分子量分布が上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、光学異方性層の安定性を高めることができる。
【0055】
正の固有複屈折値を有する樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、特に好ましくは90重量%~100重量%である。重合体の割合が前記範囲にある場合、光学異方性層が十分な耐熱性及び透明性を得られる。
【0056】
正の固有複屈折値を有する樹脂は、前記の重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;等が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0057】
負の固有複屈折値を有する樹脂は通常、負の固有複屈折値を有する重合体を含む。この重合体としては、例えば、ポリスチレン系重合体(スチレン又はスチレン誘導体(例えば、2-ビニルナフタレン)の単独重合体(例えば、ポリスチレン、ポリ(2-ビニルナフタレン))、並びに、スチレン又はスチレン誘導体と任意のモノマーとの共重合体);ポリアクリロニトリル重合体;ポリメチルメタクリレート重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマー;などが挙げられる。また、スチレン又はスチレン誘導体に共重合させうる任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエン等が挙げられる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
負の固有複屈折値を有する重合体の中でも、ポリスチレン系重合体は、位相差の発現性が高いという観点から、好ましい。その中でも、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体は、耐熱性が高いという観点から、特に好ましい。この共重合体において、ポリスチレン系重合体100重量部に対して、無水マレイン酸単位の量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは28重量部以下、特に好ましくは26重量部以下である。無水マレイン酸単位とは、無水マレイン酸を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0059】
負の固有複屈折値を有する樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、特に好ましくは90重量%~100重量%である。重合体の割合が前記範囲にある場合、第二光学異方性層が適切な光学特性を発現できる。
【0060】
負の固有複屈折値を有する樹脂は、前記の重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば正の固有複屈折値を有する樹脂が含みうる任意の成分と同じ例が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層はそれぞれ、液晶配向層を含んでいてもよい。
液晶配向層は、配向した液晶化合物を含む液晶組成物の層を硬化させた硬化物層である。液晶配向層は、液晶組成物の硬化物で形成されているので、液晶化合物の分子を含む。
【0062】
液晶配向層において、液晶化合物は、好ましくは液晶配向層に求められる光学特性を実現しうるように配向している。
【0063】
液晶化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶化合物は、その分子が、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含むことが好ましい。液晶化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。重合性を有する液晶化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の屈折率楕円体において最大の屈折率を示す方向を変化させないように重合体となることができる。よって、液晶化合物が重合性を有する場合、液晶配向層において液晶化合物の配向状態を固定したり、液晶化合物の重合度を高めて液晶配向層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
【0064】
液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0065】
液晶組成物は、必要に応じて、液晶化合物に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。任意の成分の例としては、重合開始剤;界面活性剤;酸化防止剤;金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部としうる。
【0066】
液晶配向層を形成しうる液晶組成物の例としては、特開2002-333642号公報に記載された液晶組成物、重合性基を有する液晶化合物を含む組成物、側鎖型液晶ポリマーを含む組成物、円盤状液晶性化合物を含む組成物などが挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11-513360号公報、特開2002-030042号公報、特開2004-204190号公報、特開2005-263789号公報、特開2007-119415号公報、特開2007-186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2002-333642号公報、特開2003-177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。
【0067】
液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。よって、液晶配向層は、通常、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、液晶化合物が重合性を有する場合、液晶配向層は、液晶化合物の重合体を含む層でありうる。通常、重合によって液晶化合物の液晶性は失われるが、本願においては、そのように重合した液晶化合物も、用語「液晶配向層に含まれる液晶化合物」に含める。
【0068】
液晶配向層においては、液晶組成物が有していた流動性が失われる。よって、通常、液晶配向層においては、液晶化合物の配向状態が、固定されうる。用語「配向状態を固定された液晶化合物」には、前記の液晶化合物の重合体が包含される。液晶配向層は、配向状態を固定された液晶化合物の分子に組み合わせて配向状態を固定されていない液晶化合物の分子を含んでいてもよいが、液晶配向層に含まれる液晶化合物の分子の全てが配向状態を固定されていることが好ましい。
【0069】
液晶配向層の形成方法は特に限定されないが、例えば、基材となるフィルムに、液晶化合物を含む液晶組成物の層を形成する工程、液晶組成物の層に含まれる液晶化合物を配向させる工程、及び、液晶組成物の層を硬化させる工程を行うことにより形成しうる。
【0070】
[1.3.第一光学異方性層の好ましい形態]
第一光学異方性層は、好ましくは正の固有複屈折値を有する樹脂(A)を含み、樹脂(A)から形成される。正の固有複屈折値を有する樹脂(A)の例及び好ましい例としては、前記の正の固有複屈折値を有する樹脂として挙げた例及び好ましい例が挙げられる。
第一光学異方性層は、好ましくは、正の固有複屈折値を有する樹脂(A)を含む第一樹脂層を、延伸した層(第一延伸層)である。これにより、前記式(1)を満たす第一光学異方性層を、容易に形成しうる。
【0071】
別の実施形態では、第一光学異方性層は、液晶配向層を含むことが好ましい。第一光学異方性層に含まれうる液晶配向層の例としては、前記の液晶配向層の例が挙げられる。
【0072】
第一光学異方性層に含まれうる液晶配向層において、液晶化合物は、ホモジニアス配向であることが好ましい。これにより、式(1)を満たす第一光学異方性層を容易に実現できる。
【0073】
[1.4.第二光学異方性層の好ましい形態]
第二光学異方性層は、好ましくは、第一光学異方性層に含まれる樹脂の固有複屈折値と、符号が逆である樹脂を含み、より好ましくは、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含み、より好ましくは樹脂(B)から形成される。負の固有複屈折値を有する樹脂(B)の例及び好ましい例としては、前記の負の固有複屈折値を有する樹脂として挙げた例及び好ましい例が挙げられる。
第二光学異方性層は、好ましくは、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含む第二樹脂層を、延伸した層(第二延伸層)である。これにより、前記式(2)を満たす第二光学異方性層を、容易に形成しうる。
【0074】
別の実施形態では、第二光学異方性層は、液晶配向層を含むことが好ましい。第二光学異方性層に含まれうる液晶配向層の例としては、前記の液晶配向層の例が挙げられる。
【0075】
第二光学異方性層に含まれうる液晶配向層において、液晶化合物は、ホモジニアス配向であることが好ましい。これにより、式(2)を満たす第二光学異方性層を容易に実現できる。
【0076】
[1.5.第三光学異方性層の好ましい形態]
第三光学異方性層は、液晶配向層を含むことが好ましい。第三光学異方性層に含まれうる液晶配向層の例としては、前記の液晶配向層の例が挙げられる。
【0077】
第三光学異方性層に含まれうる液晶配向層において、液晶化合物は、ホメオトロピック配向であることが好ましい。これにより、式(3)を満たす第二光学異方性層を容易に実現できる。
【0078】
また別の実施形態では、第三光学異方性層は、好ましくは、負の固有複屈折値を有する樹脂(C)を含み、樹脂(C)から形成される。負の固有複屈折値を有する樹脂(C)の例及び好ましい例としては、前記の負の固有複屈折値を有する樹脂として挙げた例及び好ましい例が挙げられる。
別の実施形態では、第三光学異方性層は、好ましくは、負の固有複屈折値を有する樹脂(C)を含む第三樹脂層を、延伸した層(第三延伸層)である。これにより、前記式(3)を満たす第三光学異方性層を、容易に形成しうる。
【0079】
[1.6.光学異方性積層体の構成]
光学異方性積層体に含まれる、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性は、任意の順で配置されていてよい。すなわち、光学異方性積層体は、以下の(1)~(3)の構成でありうる。
(1)光学異方性積層体は、前記第一光学異方性層、前記第二光学異方性層、及び前記第三光学異方性層をこの順で含む。
(2)光学異方性積層体は、前記第一光学異方性層、前記第三光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含む。
(3)光学異方性積層体は、前記第三光学異方性層、前記第一光学異方性層、及び前記第二光学異方性層をこの順で含む。
【0080】
好ましくは、光学異方性積層体は、前記(1)又は(3)の構成を有する。前記(1)又は(3)の構成を有する光学異方性積層体は、前記第一光学異方性層及び第二光学異方性層を積層した中間積層体に、第三光学異方性層を積層することにより、容易に製造しうる。
【0081】
光学異方性積層体の一例を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学異方性積層体を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、光学異方性積層体100は、第一光学異方性層110、第二光学異方性層120、及び前記第三光学異方性層130をこの順で含む。第一光学異方性層110と第二光学異方性層120とは、間に任意の層を介さずに、直接している。第二光学異方性層120と第三光学異方性層130とは、間に任意の層を介さずに、直接している。
【0082】
光学異方性積層体は、必要に応じて、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層以外の任意の層を備えていてもよい。任意の層の例としては、光学等方性を有する任意の層が挙げられる。この光学等方性を有する任意の層は、波長550nmにおける面内位相差が通常10nm以下であり、例えば、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を保護するための保護フィルム層;第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層等の各層を接着する接着層;などが挙げられる。また、任意の層の別の例としては、光学異方性を有する任意の層が挙げられる。
【0083】
光学異方性積層体は、枚葉のフィルムであってもよく、長尺のフィルムであってもよい。
【0084】
光学異方性積層体は、好ましくは、λ/4板として機能しうる位相差を有する。光学異方性積層体は、波長550nmにおける面内位相差が、好ましくは75nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下である。光学異方性積層体の面内位相差が、前記範囲内である場合、外光の反射による色付きを効果的に抑制できる円偏光板を得ることができる。
【0085】
光学異方性積層体は、好ましくは、逆波長分散性を示す。光学異方性積層体が逆波長分散性を有することにより、光学異方性積層体から、広い波長範囲において機能する円偏光板を得ることができる。
光学異方性積層体は、下記式を満たすことが好ましい。
Re(450)/Re(550)<Re(650)/Re(550)
ここで、Re(450)は、光学異方性積層体の波長450nmにおける面内位相差を表し、Re(550)は、光学異方性積層体の波長550nmにおける面内位相差を表し、Re(650)は、光学異方性積層体の波長650nmにおける面内位相差を表す。
【0086】
Re(450)/Re(550)の値は、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.92以下である。
Re(650)/Re(550)の値は、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.03以上であり、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下である。
【0087】
光学異方性積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定できる。
【0088】
光学異方性積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、ヘイズメーターを用いて測定できる。
【0089】
光学異方性積層体の厚みに、特に制限はない。光学異方性積層体の具体的な厚みは、薄型化の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0090】
[1.7.光学異方性積層体の耐熱性]
光学異方性積層体は、耐熱性が高い。具体的には、光学異方性積層体は、熱による位相差変動が小さい。光学異方性積層体を85℃で500時間加熱する耐熱性試験の前における、光学異方性積層体の波長550nmにおける面内位相差をReb(550)と定義し、当該耐熱性試験の後における、光学異方性積層体の波長550nmにおける面内位相差をRea(550)と定義する。
絶対値|Reb(550)-Rea(550)|は、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下であり、0nmに近いほど好ましいが、0.5nm以上であってもよい。
【0091】
本実施形態に係る光学異方性積層体の耐熱性が高い理由として、本発明を限定するものではないが、下記の理由が推察される。
光学異方性積層体は、面内位相差を有する第一光学異方性層と面内位相差を有する第二光学異方性層とを含む。
面内位相差を有する樹脂フィルムは、加熱すると、面内位相差が小さくなる傾向がある。この現象は、樹脂に含まれる重合体分子の配向が加熱により緩和されることにより生じるものと考えられる。光学異方性積層体を加熱した場合も、第一光学異方性層及び第二光学異方性層のそれぞれは、加熱前よりも面内位相差が小さくなると考えられる。
第一光学異方性層の遅相軸と、第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度は、90°に近いか又は90°である。その場合、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を含む積層体の面内位相差は、通常、第一光学異方性層の面内位相差と第二光学異方性層の面内位相差との差となる。ここで、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を含む積層体を加熱すると、第一光学異方性層の面内位相差及び第二光学異方性層の面内位相差は、どちらも加熱前よりも小さくなる傾向がある。したがって、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を含む光学異方性積層体を加熱しても、光学異方性積層体の面内位相差は、積層体ではない光学異方性部材と比較して変動が小さい。
このような理由により、本実施形態に係る光学異方性積層体は耐熱性が高いと考えられる。
【0092】
[2.光学異方性積層体の製造方法]
前記の光学異方性積層体は、任意の方法により製造されうる。例えば、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層をそれぞれ用意し、それらを貼合することにより光学異方性積層体を製造しうる。貼合にあたっては、適切な接着剤、又は適切な接着剤の層を用いてよい。
【0093】
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を貼合する順序は任意である。第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層のいずれか二層を含む積層体を製造し、当該積層体に、残りの一層を積層することにより、光学異方性積層体を製造してもよい。
【0094】
第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層はそれぞれ、任意の方法により製造されうる。また、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層のいずれかを基材フィルム上に形成してから別の層に貼合し、基材フィルムを除去することにより積層してもよい。
【0095】
また、前記樹脂(A)を含む第一樹脂層及び前記樹脂(B)を含む第二樹脂層を含む、第一中間積層体を用意する工程(1)と、前記第一中間積層体を延伸して第二中間積層体を得る工程(2)と、前記第二中間積層体に、第三光学異方性層を積層する工程(3)とを含む製造方法により、光学異方性積層体を製造してもよい。ここで、工程(1)、工程(2)、及び工程(3)は、通常この順に行われる。また、第一中間積層体及び第二中間積層体はそれぞれ、枚葉であってもよいが、長尺であることが好ましい。第一中間積層体及び第二中間積層体を、長尺体として用意することにより、光学異方性積層体の製造を、簡便かつ効率的に行うことができる。
【0096】
第一中間積層体は、任意の方法で製造されうる。第一中間積層体は、例えば、共押出法、共流延法、ある層上にそれ以外の層の材料を含む液状組成物を塗工する塗工法、などが挙げられる。中でも、第一樹脂層上に樹脂(B)を含む液状組成物(塗工液(B))を塗工し、塗工された液状組成物を必要に応じて乾燥させる方法が好ましい。
【0097】
工程(1)は、工程(1a)を含むことが好ましい。
工程(1a)では、第一樹脂層の上に樹脂(B)を含む塗工液(B)を塗工して第二樹脂層を形成して、第一樹脂層及び第二樹脂層を含む第一中間積層体を得る。
【0098】
ここで、第一樹脂層は、前記のとおり、樹脂(A)を含み、樹脂(A)から形成される。第一樹脂層は、任意の方法により製造されうる。第一樹脂層は、例えば、溶融成形法、溶液流延法によって製造できる。中でも、溶融成形法が好ましい。溶融成形法の中でも、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。これらの方法によれば、第一樹脂層を、長尺のフィルムとして製造できる。
【0099】
塗工液(B)は、樹脂(B)に加えて、溶媒を含みうる。溶媒としては、樹脂(B)を溶解又は分散させうるものが好ましく、樹脂(B)を溶解させうるものが特に好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。塗工液(B)における樹脂(B)の濃度は、塗工液(B)の粘度を塗工に適した範囲に収められるように調整することが好ましく、例えば1重量%~50重量%でありうる。
【0100】
塗工液(B)の塗工方法に制限は無い。塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法などが挙げられる。
【0101】
樹脂(B)を含む塗工液(B)の塗工により、その塗工液(B)の層が第一樹脂層上に形成される。よって、必要に応じて塗工液(B)の層を乾燥させて溶媒を除去することにより、第一樹脂層上に第二樹脂層が形成されて、第一中間積層体を得ることができる。乾燥方法に制限はなく、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥などの乾燥方法を用いうる。
【0102】
工程(2)において、第一中間積層体を延伸することにより、第二中間積層体を得うる。第二中間積層体に含まれる、第一光学異方性層及び第二光学異方性層のそれぞれの遅相軸は、所定の角度をなす。第一樹脂層は、正の固有複屈折値を有する樹脂(A)を含み、第二樹脂層は、負の固有複屈折値を有する樹脂(B)を含むため、第一樹脂層及び第二樹脂層を含む第一中間積層体を延伸することにより、第一樹脂層には通常延伸方向と略同一方向、好ましくは同一方向の遅相軸が発現し、第二樹脂層には通常延伸方向に対して略90°、好ましくは90°の方向の遅相軸が発現する。
【0103】
したがって、第二中間積層体において、第一光学異方性層の遅相軸と第二光学異方性層の遅相軸とのなす角度は、好ましくは85°以上、より好ましくは87°以上、更に好ましくは88°以上、更に好ましくは89°以上であり、好ましくは95°以下、より好ましくは93°以下、更に好ましくは92°以下、更に好ましくは91°以下であり、最も好ましくは90°である。
【0104】
工程(2)における第一中間積層体の延伸は、任意の方向に行いうる。また、延伸を一段階で行ってもよく、二段階以上で行ってもよい。
【0105】
好ましくは、工程(2)において長尺の第一中間積層体を延伸する場合、工程(2)における第一中間積層体の延伸方向は、第一中間積層体の幅方向に対して45°に近い特定の範囲の角度をなすことが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは40°以上、より好ましくは42°以上、更に好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは48°以下、更に好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。前記の延伸角度で延伸を行う場合、通常は、光学異方性積層体の遅相軸を光学異方性積層体の幅方向に対して45°に近い角度としうるので、光学異方性積層体を長尺の直線偏光子とロール・トゥ・ロールで貼り合わせて円偏光板を特に簡単に製造できる。
【0106】
工程(2)における第一中間積層体の延伸倍率は、好ましくは1.0倍より大きく、より好ましくは1.05倍以上、更に好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは1.2倍以上、更に好ましくは1.3倍以上、特に好ましくは1.35倍以上であり、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.5倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。
【0107】
工程(3)において、第二中間積層体に第三光学異方性層を積層する方法は任意である。例えば、第三光学異方性層を用意し、第二中間積層体に第三光学異方性層を貼合してもよい。したがって、一実施形態において、工程(3)は、第二中間積層体に、前記第三光学異方性層を貼合することを含む。第三光学異方性層は、任意の方法で製造されうる。
【0108】
例えば、負の固有複屈折値を有する樹脂(C)を含む第三樹脂層を製造し、第三樹脂層を延伸することにより、第三光学異方性層を製造しうる。第三樹脂層は、任意の方法で製造されうる。第三樹脂層を製造する方法の例及び好ましい例は、前記第一樹脂層を製造する方法の例及び好ましい例と同様である。
【0109】
また別の実施形態において、工程(3)は、第二中間積層体の上に塗工液(C)を塗工し、塗工された塗工液(C)を必要に応じて乾燥させて第三光学異方性層を形成することを含む。
【0110】
第三光学異方性層が、液晶配向層を含む場合、塗工液(C)は、液晶化合物を含む、液晶組成物でありうる。液晶組成物として、例えば、液晶配向層の項に例示した、液晶組成物を用いうる。液晶組成物は、液晶化合物に加えて、溶媒、重合開始剤などの、任意の成分を含みうる。液晶組成物における、溶媒を除いた成分の総重量は、塗工液(C)の粘度を塗工に適した範囲に収められるように調整することが好ましく、例えば1重量%~50重量%でありうる。
【0111】
塗工液(C)は、重合体を含んでいてもよい。重合体は、液晶化合物であってもよく、液晶化合物でなくてもよい。
塗工液(C)に含まれうる重合体の例としては、側鎖型液晶ポリマーが挙げられる。
【0112】
第二中間積層体の上に塗工液(C)を塗工する方法は任意である。塗工方法としては、塗工液(B)の塗工方法として挙げた例と同様の例が挙げられる。塗工された塗工液(C)を乾燥させる場合、乾燥方法は任意であり、塗工液(B)の層を乾燥させる方法の例と同様の例が挙げられる。
【0113】
以上の工程(1)~(3)に加えて、光学異方性積層体の製造方法は、任意の製造方法を含んでいてもよい。
例えば、長尺の第一中間積層体又は長尺の第二中間積層体を用いて長尺の光学異方性積層体を得た場合、光学異方性積層体の製造方法は、得られた光学異方性積層体を所望の形状に切り出すトリミング工程を含んでいてもよい。トリミング工程によれば、所望の形状を有する枚葉の光学異方性積層体が得られる。また、光学異方性積層体の製造方法は、例えば、光学異方性積層体に保護層を設ける工程を含んでいてもよい。
【0114】
[3.円偏光板]
本発明の一実施形態に係る円偏光板は、直線偏光子と、光学異方性積層体とを含む。この円偏光板を、画像表示装置の表示面に設けることにより、外光の反射を抑制できる。上述した光学異方性積層体を含む円偏光板によれば、表示面を正面方向から見た場合及び表示面を傾斜方向から見た場合のいずれでも、外光の反射を抑制して、色付きを効果的に抑制できる。
【0115】
円偏光板は、直線偏光子、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を、この順に備えていることが好ましい。
【0116】
また、直線偏光子の吸収軸と又は直線偏光子の透過軸と、第一光学異方性層の遅相軸とがなす角度は、45°に近い特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは40°以上、より好ましくは42°以上、更に好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは48°以下、更に好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。
更にこの場合、直線偏光子の吸収軸と又は直線偏光子の透過軸と、第二光学異方性層の遅相軸とがなす角度は、135°に近い特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは130°以上、より好ましくは132°以上、更に好ましくは133°以上、特に好ましくは134°以上であり、好ましくは140°以下、より好ましくは138°以下、更に好ましくは137°以下、特に好ましくは136°以下である。
【0117】
直線偏光子としては、任意の直線偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。これらのうち、直線偏光子としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0118】
直線偏光子に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。この直線偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、直線偏光子の厚みは、好ましくは5μm~80μmである。
【0119】
上述した円偏光板は、更に、任意の層を含みうる。任意の層としては、例えば、偏光子保護フィルム層;直線偏光子及び光学異方性積層体を貼り合わせるための接着層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;フィルムの滑り性を良くするマット層;反射抑制層;防汚層;帯電抑制層;等が挙げられる。これらの任意の層は、1層だけを設けてもよく、2層以上を設けてもよい。
【0120】
[4.画像表示装置]
上述した円偏光板は、画像表示装置に設けうる。特に、円偏光板は、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置に設けることが好ましい。この有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)と、を備える。この有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、通常、直線偏光子、光学異方性積層体及び有機EL素子を、この順に備える。
【0121】
有機EL素子は、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、及びポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【0122】
前記の画像表示装置は、表示面における外光の反射を抑制できる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが光学異方性積層体を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、画像表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子中の反射電極等)により反射され、再び光学異方性積層体を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。これにより、反射抑制の機能が達成される。
【0123】
光学異方性積層体が上述した光学特性を有するので、前記の有機EL画像表示装置は、反射抑制の機能を、表示面の正面方向だけでなく、傾斜方向においても発揮できる。これにより、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において、外光の反射を効果的に抑制して、色付きを抑制することが可能である。
【0124】
前記の色付きの程度は、反射のある表示面を観察して測定される色度と、反射の無い黒色の表示面の色度との色差ΔE*abによって、評価しうる。前記の色度は、表示面で反射した光のスペクトルを測定し、このスペクトルから、人間の目に対応する分光感度(等色関数)を乗じて三刺激値X、Y及びZを求め、色度(a*,b*,L*)を算出することにより求めうる。また、前記の色差ΔE*abは、外光によって表示面が照らされていない場合の色度(a0*,b0*,L0*)、及び、外光によって照らされている場合の色度(a1*,b1*,L1*)から、下記の式(X)から求めうる。
【0125】
【0126】
また、一般に、反射光による表示面の色付きは、観察方向の方位角によって異なりうる。そのため、表示面の傾斜方向から観察した場合、観察方向の方位角によって、測定される色度は異なりうるので、色差ΔE
*abも異なりうる。そこで、前記のように表示面の傾斜方向から観察した場合の色付きの程度を評価するためには、複数の方位角方向から観察して得られる色差ΔE
*abの平均値によって、色付きの評価を行うことが好ましい。具体的には、方位角方向に5°刻みで、方位角φ(
図2参照。)が0°以上360°未満の範囲で、色差ΔE
*abの測定を行い、測定された色差ΔE
*abの平均値(平均色差)によって、色付きの程度を評価する。前記の平均色差が小さいほど、表示面の傾斜方向から観察した場合の表示面の色付きが小さいことを表す。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0128】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0129】
[評価方法]
(厚み)
積層体及び各層の厚みを、膜厚測定システム(フィルメトリクス社製「F20」)により測定した。
【0130】
(位相差の測定方法)
位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、評価対象の波長450nm、550nm及び650nm、温度23℃における面内位相差Re;並びに、波長550nm、温度23℃における厚み方向位相差Rthを測定した。以下同様に、位相差計による測定は、温度23℃において行った。
分離できない積層体の各層の物性を求める際は、試料を多方向から測定し、付属のマルチレイヤー解析ソフトでフィッティング解析することにより算出した。
【0131】
(配向角の測定方法)
光学異方性積層体を構成する各層の遅相軸の方向を、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定した。この遅相軸が、各層の幅方向に対してなす角度を、配向角θ(0°≦θ<180°)として計算した。
【0132】
(耐熱性試験による位相差変動)
光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出した。切り出しは、サンプルの各辺が、長尺の光学異方性積層体の幅方向又は長手方向に平行となるように行った。切り出した光学異方性積層体のサンプルについて、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて位相差を測定した。その後、サンプルを85℃の恒温機中に500時間静置した後恒温機から取り出し、位相差を測定した。耐熱性試験前後における位相差の差を求めることにより耐熱性を評価した。
【0133】
(ΔE*ab:シミュレーションによる色差の計算方法)
シミュレーション用のソフトウェアとしてシンテック社製「LCD Master」を用いて、各実施例及び比較例で製造された円偏光板をモデル化し、下記の計算を行った。
【0134】
シミュレーション用のモデルでは、平面状の反射面を有するミラーの前記反射面に、円偏光板を設けた構成を設定した。円偏光板における、光学異方性積層体及び直線偏光子の配置を、各実施例及び比較例と同様となるように設定し、反射面、直線偏光子、及び光学異方性積層体の順になるように設定した。光学異方性積層体としては、各実施例及び比較例で得たものを設定した。また、直線偏光子としては、一般的に使用されている偏光度99.99%の偏光板を設定した。また、ミラーとして、入射した光を反射率100%で鏡面反射しうる理想ミラーを設定した。
【0135】
図2は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、色空間座標の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、D65光源(図示せず。)によって照らされたときに、円偏光板を設けられたミラーの反射面10で観察される色空間座標を計算した。また、光源によって照らされていないときの色空間座標をa0
*=0,b0
*=0,L0
*=0とした。そして、(i)光源で照らされたときの色空間座標と、(ii)光源で照らされていないときの色空間座標とから、色差ΔE
*abを求めた。
【0136】
前記の色差ΔE*abの計算を、反射面10に対する極角ρが0°の観察方向20で行って、正面方向での色差ΔE*abを求めた。極角ρとは、反射面10の法線方向11に対してなす角を表す。
【0137】
また、前記の色差ΔE*abの計算を、反射面10に対する極角ρが60°の観察方向20で行った。この極角ρ=60°での計算は、観察方向20を方位角方向に、方位角φを0°以上360°未満の範囲で5°刻みに移動させて、複数行った。方位角φとは、反射面10に平行な方向が、反射面10に平行なある基準方向12に対してなす角を表す。そして、計算された複数の観察方向20での色差ΔE*abの平均を計算して、極角ρ=60°の傾斜方向での色差ΔE*abを得た。
【0138】
(正面方向における目視による円偏光板の評価方法)
有機EL画像表示装置を備える画像表示装置(Apple社「AppleWatch」(登録商標))を用意した。この画像表示装置を分解し、有機EL画像表示装置の表面に貼合されていた偏光板を剥離して、反射電極を露出させた。この反射電極の表面と、各実施例及び比較例で得た円偏光板の直線偏光子とは反対側の面とを、粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して貼り合せた。これにより、反射電極、粘着剤及び円偏光板をこの順に備えるサンプルを得た。
【0139】
前記サンプルの円偏光板を晴れた日に日光で照らした状態で、反射電極上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の、極角0°、方位角0°の正面方向で行った。観察の結果、有彩色が視認された場合に「不良」と判定し、有彩色が視認されなかった場合に「良」と判定した。
【0140】
(傾斜方向における目視による円偏光板の評価方法)
前記の(正面方向における目視による円偏光板の評価方法)で用意したサンプルの円偏光板を晴れた日に日光で照らした状態で、反射電極上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の極角60°、方位角0°~360°の傾斜方向で行った。観察の結果、反射輝度及び色付きの優劣を総合的に判定して、実施例及び比較例を順位づけした。そして、順位づけられた実施例及び比較例に、その順位に相当する点数(1位7点、2位6点、・・・最下位1点)を与えた。
【0141】
前記の観察を多人数が行い、各実施例及び比較例について、与えられた点数の合計点を求めた。実施例及び比較例を前記の合計点の順に並べ、その合計点のレンジを5等分して、上位グループからA、B、C、D及びEの順に評価した。
【0142】
(耐熱性:耐熱性試験前後における目視による円偏光板の評価方法)
各実施例及び比較例で得た、円偏光板(1)又は円偏光板(2)を、前記の(正面方向における目視による円偏光板の評価方法)と同様にして、有機EL画像表示装置に貼り合せた。前記サンプルの円偏光板を晴れた日に日光で照らした状態で、反射電極上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の、極角0°、方位角0°の正面方向で行った。観察の結果、円偏光板(1)を貼り合わせた画像表示装置と円偏光板(2)を貼り合わせた画像表示装置とで、色相の変化があった場合を「不良」と判定し、色相の変化がなかった場合を「良」と判定した。
【0143】
[実施例1]
(1-1.第一樹脂層の形成)
ペレット状のノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア1215」;ガラス転移温度126℃)を100℃で5時間乾燥して、熱可塑性の樹脂(A)を得た。この熱可塑性樹脂(A)を、押出機に供給し、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出した。押し出された熱可塑性樹脂(A)を冷却し、厚み100μmの長尺の樹脂フィルムを第一樹脂層として得た。得られた第一樹脂層をロール状に巻き取って回収した。
【0144】
(1-2.第二樹脂層の形成)
乾燥し、窒素で置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン500ml、重合触媒としてn-ブチルリチウム0.29mmolを入れた後、2-ビニルナフタレン35gを加えて25℃で1時間反応させた。その結果、2-ビニルナフタレンのホモポリマーとしてのポリ(2-ビニルナフタレン)を含む反応物を得た。この反応物を大量の2-プロパノールに注いで、ポリ(2-ビニルナフタレン)を沈殿させ、分取した。得られたポリ(2-ビニルナフタレン)を真空乾燥機を用いて200℃で24時間乾燥させ、熱可塑性の樹脂(B)を得た。GPCにより測定したポリ(2-ビニルナフタレン)の重量平均分子量は250000であった。また、示差走査熱量分析計により測定したポリ(2-ビニルナフタレン)のガラス転移温度は142℃であった。
【0145】
ポリ(2-ビニルナフタレン)と1,3-ジオキソランとを混合して、熱可塑性樹脂(B)を含む、塗工液(B)としての液状組成物を得た。この液状組成物におけるポリ(2-ビニルナフタレン)の濃度は、15重量%であった。
【0146】
第一樹脂層をロールから引き出し、引き出された第一樹脂層上に前記の液状組成物を塗工した。その後、塗工された液状組成物を乾燥して、第一樹脂層上に第二樹脂層としてのポリ(2-ビニルナフタレン)の層(厚み12μm)を形成した。これにより、ノルボルネン系樹脂で形成された第一樹脂層及びポリ(2-ビニルナフタレン)で形成された第二樹脂層を備える第一中間積層体を得た。得られた第一中間積層体を、ロール状に巻き取って回収した。
【0147】
(1-3.工程(2):延伸工程)
第一中間積層体をロールから引き出し、引き出された第一中間積層体をテンター式延伸機に供給した。このテンター式延伸機を用いて、第一中間積層体を、当該第一中間積層体の幅方向に対して45°の角度をなす延伸方向に、延伸温度135℃、延伸倍率2.0倍に延伸し、長尺の第二中間積層体を得た。この第二中間積層体は、第一樹脂層が延伸されて得られた、第一光学異方性層としての第一延伸層と、第二樹脂層が延伸されて得られた、第二光学異方性層としての、第二延伸層とを備えていた。
【0148】
延伸工程における延伸方向と、第一光学異方性層及び第二光学異方性層のそれぞれの配向角とから、第一光学異方性層を形成するノルボルネン系樹脂は、正の固有複屈折値を有し、第二光学異方性層を形成するポリ(2-ビニルナフタレン)は、負の固有複屈折値を有することを確認した。
【0149】
(1-4.第三光学異方性層の用意)
下記化学式(I)で示される側鎖型液晶ポリマー(重量平均分子量Mw:5000、特許文献2:特開2014-026266号公報に記載の化合物)を用意した。
【0150】
【0151】
当該側鎖型液晶ポリマーを20重量部と、ネマチック液晶相を示す、重合性基を有する液晶化合物として、BASF社製「Paliocolor LC242」を80重量部と、光重合開始剤として、チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュア907」を5重量部とを、溶媒としてシクロペンタノン200重量部に溶解して、塗工液(C)としての、液晶組成物を調製した。
【0152】
前記液晶組成物を、基材フィルムとしての日本ゼオン社製「ゼオネックスフィルム」(ノルボルネン系樹脂フィルム)にバーコーターにより塗工し、基材フィルムの上に液晶組成物の層を形成した。液晶組成物の層を80℃で4分間加熱して乾燥させた。これにより、液晶組成物中の液晶化合物を配向させた。乾燥させた液晶組成物の層に、紫外線を照射し、液晶組成物の層を硬化させて、基材フィルム上に、第三光学異方性層としての、厚み0.58μmの液晶配向層を形成した。
【0153】
(1-5.工程(3):積層工程)
延伸工程で延伸されて得られた第二中間積層体をロールから引き出し、引き出された第二中間積層体の第二光学異方性層と、前記基材フィルム上の第三光学異方性層(液晶配向層)とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせた。貼り合わせは、長尺である第二中間積層体の幅方向と、長尺である第三光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。
【0154】
次いで、基材フィルムを除去して、第二中間積層体に第三光学異方性層を転写し、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層をこの順で備える光学異方性積層体を得た。得られた光学異方性積層体及び当該光学異方性積層体に含まれる各層の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、遅相軸の方向)を、上述した方法で測定した。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、1nm未満であった。
【0155】
(1-6.円偏光板の製造)
ヨウ素で染色された長尺のポリビニルアルコール樹脂フィルムを用意した。このフィルムを、当該フィルムの幅方向に対して90°の角度をなす長手方向に延伸して、長尺の偏光フィルムとしての直線偏光子を得た。この直線偏光子は、当該直線偏光子の長手方向に吸収軸を有し、当該直線偏光子の幅方向に透過軸を有していた。
【0156】
前記の直線偏光子と光学異方性積層体とを、直線偏光子と第一光学異方性層とが、光学等方性の粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向するように貼り合わせて、円偏光板(1)を得た。前記の貼り合わせは、直線偏光子の幅方向と長尺の光学異方性積層体の幅方向とを平行にして行った。得られた円偏光板(1)は、直線偏光子、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び、第三光学異方性層を、この順に備えていた。
得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。また、円偏光板(1)と同様にして、耐熱性試験後の光学異方性積層体サンプルを前記の直線偏光子と貼り合わせて円偏光板(2)を得た。
【0157】
[実施例2]
実施例1の(1-5.工程(3):積層工程)において、第二中間積層体の第一光学異方性層と、前記基材フィルム上の第三光学異方性層とを、アクリル系粘着剤を介して対向させて貼り合わせた。以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、光学異方性積層体を得た。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、1nm未満であった。
【0158】
次いで、直線偏光子と光学異方性積層体とを、直線偏光子と第三光学異方性層とが、光学等方性の粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向するように貼り合わせた。以上の事項以外は、実施例1の(1-6.円偏光板の製造)と同様に操作して、円偏光板(1)を得た。得られた円偏光板(1)は、直線偏光子、第三光学異方性層、第一光学異方性層、及び、第二光学異方性層を、この順に備えていた。得られた円偏光板(1)について評価した。また、円偏光板(1)と同様にして、耐熱性試験後の光学異方性積層体サンプルを前記の直線偏光子と貼り合わせて円偏光板(2)を得た。
【0159】
[実施例3]
実施例1と同様に操作して、第一中間積層体を得た。第一中間積層体を、自由一軸延伸機に供給して、延伸温度135℃、延伸方向を当該第一中間積層体の幅方向に対して90°の角度をなす方向、延伸倍率1.7倍として自由一軸延伸して、第二中間積層体を得た。
【0160】
得られた第二中間積層体を用いて、実施例1と同様の操作により、光学異方性積層体を得た。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、1nm未満であった。
【0161】
次いで、前記長尺の光学異方性積層体から、矩形である枚葉の光学異方性積層体を切り出した。切り出しは、枚葉である光学異方性積層体の各辺が、長尺の光学異方性積層体の長手方向又は幅方向と平行となるように行った。切り出した光学異方性積層体と、実施例1と同様に操作して得られた直線偏光子とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせ、円偏光板(1)を得た。貼り合わせは、光学異方性積層体が備える第一光学異方性層の遅相軸と、直線偏光子の透過軸方向とが、45°の角度をなすように、行った。得られた円偏光板(1)は、直線偏光子、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び、第三光学異方性層を、この順に備えていた。得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。また、円偏光板(1)と同様にして、耐熱性試験後の光学異方性積層体サンプルを前記の直線偏光子と貼り合わせて円偏光板(2)を得た。
【0162】
[比較例1]
実施例1の(1-6.円偏光板の製造)において、光学異方性積層体の代わりに、実施例1で得られた第二中間積層体を用いて、円偏光板(1)及び円偏光板(2)を得た。得られた円偏光板(1)及び円偏光板(2)は、直線偏光子、第一光学異方性層、及び第二光学異方性層を、この順に備えていた。
得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。また、第二中間積層体及び第二中間積層体が備える各層の光学特性を、上述した方法で測定した。
【0163】
[比較例2]
(C2-1.第一光学異方性層の製造)
ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア1215」;ガラス転移温度126℃)から形成された、厚み70μmであるロール状の未延伸フィルムを、テンター式延伸機に供給し、133℃で斜め延伸して、厚みが45μmである第一光学異方性層としての延伸フィルムを得た。斜め延伸は、延伸機の左右の送り速度を異ならせることにより、連続的に行った。得られた第一光学異方性層について、前記の方法で光学特性を測定した。得られた第一光学異方性層の遅相軸は、幅方向に対して67.5°の方向であった。
【0164】
(C2-2.第二光学異方性層の製造)
ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア1215」;ガラス転移温度126℃)から形成された、厚み50μmであるロール状の未延伸フィルムを、テンター式延伸機に供給し、128℃で横一軸延伸して、厚みが40μmである第二光学異方性層としての延伸フィルムを得た。延伸は、倍率を1.526倍として、連続的に行った。得られた第二光学異方性層について、前記の方法で光学特性を測定した。得られた第二光学異方性層の遅相軸は、幅方向に対して平行(0°)の方向であった。
【0165】
(C2-3.光学異方性積層体の製造)
前記第一光学異方性層と前記第二光学異方性層とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせて、中間積層体を得た。貼り合わせは、長尺である第一光学異方性層の幅方向と長尺である第二光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。
【0166】
以下の事項を変更した以外は、実施例1の(1-4.第三光学異方性層の用意)と同様に操作して、基材フィルム上に、第三光学異方性層を形成した。
・Rth(550)が所望の値となるように、バーコーターによる塗工の厚みを調整することにより、液晶配向層の厚みを調整した。
前記の中間積層体の第二光学異方性層と、前記の基材フィルム上の第三光学異方性層とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせた。貼り合わせは、長尺である中間積層体の幅方向と、長尺である第三光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。
【0167】
次いで、基材フィルムを除去して、中間積層体に第三光学異方性層を転写し、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層をこの順で備える光学異方性積層体を得た。得られた光学異方性積層体及び当該光学異方性積層体に含まれる各層の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、遅相軸の方向)を、上述した方法で測定した。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、1nmであった。
【0168】
(C2-4.円偏光板の製造)
得られた光学異方性積層体を用いて、実施例1の(1-6.円偏光板の製造)と同様に操作して、円偏光板(1)及び(2)を得た。得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。
【0169】
[比較例3]
比較例2の(C2-1.第一光学異方性層の製造)と同様に操作して、第一光学異方性層を得た。
【0170】
以下の事項を変更した以外は、実施例1の(1-4.第三光学異方性層の用意)と同様に操作して、基材フィルム上に、第三光学異方性層を形成した。
・Rth(550)が所望の値となるように、バーコーターによる塗工の厚みを調整することにより、液晶配向層の厚みを調整した。
【0171】
第一光学異方性層と、基材フィルム上の第三光学異方性層とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせた。貼り合わせは、長尺である第一光学異方性層の幅方向と、長尺である第三光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。
【0172】
次いで、基材フィルムを除去して、第一光学異方性層に第三光学異方性層を転写し、第一光学異方性層及び第三光学異方性層を備える中間積層体を得た。
【0173】
比較例2の(C2-2.第二光学異方性層の製造)と同様に操作して、第二光学異方性層を得た。
【0174】
前記の中間積層体の第三光学異方性層と、前記の第二光学異方性層とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせた。貼り合わせは、長尺である中間積層体の幅方向と、長尺である第二光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。これにより、第一光学異方性層、第三光学異方性層、及び第二光学異方性層をこの順で備える光学異方性積層体を得た。
【0175】
得られた光学異方性積層体及び当該光学異方性積層体に含まれる各層の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、遅相軸の方向)を、上述した方法で測定した。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、1nmであった。
【0176】
得られた光学異方性積層体を用いて、実施例1の(1-6.円偏光板の製造)と同様に操作して、円偏光板(1)及び(2)を得た。得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。
【0177】
[比較例4]
イソソルビドを37.5重量部と、9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを91.5重量部と、ポリエチレングリコール(平均分子量400)を8.4重量部と、ジフェニルカーボネートを105.7重量部と、触媒としての炭酸セシウムの0.2重量%水溶液を0.594重量部とを、反応容器に投入し、窒素雰囲気下、150℃で約15分間加熱撹拌して、原料を溶解させた。
【0178】
次いで、反応容器内の圧力を、13.3kPaとして、1時間で190℃まで昇温させながら、発生するフェノールを反応容器の外へ抜き出した。次いで、反応容器内温を190℃として15分間保持した。次いで、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、230℃まで15分間で昇温し、発生するフェノールを反応容器の外へ抜き出した。次いで250℃まで8分間で昇温し、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に減圧して、さらに発生するフェノールを反応容器の外へ抜き出した。
【0179】
反応を終了し、得られた反応物(ポリカーボネート樹脂)を水中に押し出して、ペレット状に成形した。得られたポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度が126℃であり、還元粘度が0.372dL/gであり、9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに由来する構造単位を42.9モル%、イソソルビドに由来する構造単位を52.8モル%、ポリエチレングリコールに由来する構造単位を4.3モル%の割合で含んでいた。
【0180】
得られたポリカーボネート樹脂のペレットを、80℃で5時間、真空乾燥させた。次いで、単軸押出機(設定温度:220℃)、Tダイ(設定温度:220℃)、冷却ドラム(設定温度:120~130℃)、及び巻取機を備えたフィルム成形装置に、ポリカーボネート樹脂のペレットを供給して、長さ3m、幅300mm、厚み120μmのポリカーボネート樹脂フィルムを製造した。
【0181】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、温度136℃、延伸倍率2倍で縦方向に延伸して、延伸フィルムを得た。
【0182】
以下の事項を変更した以外は、実施例1の(1-4.第三光学異方性層の用意)と同様に操作して、基材フィルム上に、第三光学異方性層を形成した。
・Rth(550)が所望の値となるように、バーコーターによる塗工の厚みを調整することにより、液晶配向層の厚みを調整した。
【0183】
前記延伸フィルムと、基材フィルム上の第三光学異方性層とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせた。貼り合わせは、長尺である延伸フィルムの幅方向と、長尺である第三光学異方性層の幅方向とが、平行となるように行った。これにより、ポリカーボネート樹脂の延伸フィルム及び第三光学異方性層を備える光学異方性積層体が得られた。
【0184】
得られた光学異方性積層体及び当該光学異方性積層体に含まれる各層の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、遅相軸の方向)を、上述した方法で測定した。また、光学異方性積層体から50mm×50mm角にサンプルを切り出して、前記の方法により、耐熱性試験前後における面内位相差の差を求めた。面内位相差の差は、4nmであった。
【0185】
前記長尺の光学異方性積層体から、矩形である枚葉の光学異方性積層体を切り出した。切り出しは、枚葉である光学異方性積層体の各辺が、長尺の光学異方性積層体の長手方向又は幅方向と平行となるように行った。切り出した光学異方性積層体と、実施例1と同様に操作して得られた直線偏光子とを、アクリル系粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を介して対向させて貼り合わせ、円偏光板(1)を得た。貼り合わせは、光学異方性積層体が備える延伸フィルムの遅相軸と、直線偏光子の透過軸方向とが、45°の角度をなすように、行った。
【0186】
得られた円偏光板(1)を、上述した方法で評価した。また、円偏光板(1)と同様にして、耐熱性試験後の光学異方性積層体サンプルを前記の直線偏光子と貼り合わせて円偏光板(2)を得た。
【0187】
[結果]
結果を下表に示す。
下表において、層構成における記号P、A、B、及びCはそれぞれ、直線偏光子、A層、B層、及びC層を表し、例えば、「P/A/B/C」とは、直線偏光子、A層、B層、及びC層の順に配置されていることを示す。
「第1層」、「第2層」、及び「第3層」はそれぞれ、第一光学異方性層、第二光学異方性層、及び第三光学異方性層を表す。
「配向角」は、各層の幅方向と各層の遅相軸とがなす角度を表す。ただし、実施例3における層Aの配向角及び層Bの配向角はそれぞれ、層Aの遅相角と直線偏光子の透過軸方向とのなす角度及び層Bの遅相軸と直線偏光子の透過軸方向とのなす角度であり、比較例4における層Aの配向角は、層Aの遅相軸と、直線偏光子の透過軸方向とのなす角度である。
「COP」は、ノルボルネン系樹脂を意味する。
「VN」は、ポリ(2-ビニルナフタレン)を意味する。
「LC」は、液晶組成物の硬化物を意味する。
「PC]は、ポリカーボネート樹脂を意味する。
【0188】
【0189】
【0190】
以上の結果によれば、実施例1~3に係る光学異方性積層体は、耐熱性が良好であり、かつ、光学異方性積層体から得られた円偏光板は、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても、画像表示装置の表示面の色付きを抑制しうることがわかる。
【符号の説明】
【0191】
10 反射面
11 反射面の法線方向
12 基準方向
20 観察方向
φ 方位角
ρ 極角
100 光学異方性積層体
110 第一光学異方性層
120 第二光学異方性層
130 第三光学異方性層