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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】全周型立体表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/10 20200101AFI20250109BHJP
   G02B 30/54 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B30/10
G02B30/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021102147
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001432
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
(72)【発明者】
【氏名】河北 真宏
(72)【発明者】
【氏名】片山 美和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】加納 正規
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓也
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103969838(CN,A)
【文献】特開2019-149777(JP,A)
【文献】特開2009-294509(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220327(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210575001(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2024/0219746(US,A1)
【文献】特開2008-278087(JP,A)
【文献】特開2016-014742(JP,A)
【文献】特開2012-008298(JP,A)
【文献】特開2021-076730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0348534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
H04N 13/00-13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグラル方式の要素画像を表示する表示素子と、前記表示素子からの光を出射するレンズアレイと、前記レンズアレイからの光を反射する反射手段との組である立体表示基本セットを1以上備える全周型立体表示装置であって、
前記立体表示基本セットにおいて、前記表示素子及び前記レンズアレイが平行に配置され、前記レンズアレイに対して、前記反射手段の一端側が近く、かつ、他端側が遠くなるように前記反射手段が斜めに配置され、
前記表示素子及び前記レンズアレイに平行な平面の法線を回転軸とし、前記一端側が前記回転軸側で前記他端側が前記回転軸に対して外周側となるように、前記立体表示基本セットを回転させる回転機構と、
観察者の視点位置、及び、前記立体表示基本セットの回転角度が入力され、入力された前記視点位置及び前記回転角度に応じて、前記要素画像を前記表示素子に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする全周型立体表示装置。
【請求項2】
前記立体表示基本セットにおいて、前記表示素子及び前記レンズアレイが水平に配置され、前記レンズアレイに対して、前記反射手段が斜め45度に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の全周型立体表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、光線追跡法で生成した前記要素画像を前記表示素子に表示させることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の全周型立体表示装置。
【請求項4】
前記反射手段は、反射鏡又はハーフミラーであることを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の全周型立体表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラル方式の全周型立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、360度の全周囲から立体像を観察できる技術として、高速に回転するスクリーンに同期させて画像を投射するスクリーン回転型画像投射装置が知られている(非特許文献1)。
【0003】
図9に示すように、スクリーン回転型画像投射装置100は、画像投射部101と、反射鏡102と、スクリーン103と、回転ステージ104とを備える。画像投射部101は、所望の画像を投射するプロジェクタである。反射鏡102は、画像投射部101からの投射光を反射鏡102bに向けて反射する反射鏡102aと、反射鏡102aからの反射光をスクリーン103に向けて反射する反射鏡102bとを備える。スクリーン103は、反射鏡102からの反射仮を表示するものである。回転ステージ104は、画像投射部101、反射鏡102及びスクリーン103が平坦面に配置された台座である。
【0004】
ここで、回転ステージ104は、図示を省略した回転モータにより、画像投射部101、反射鏡102及びスクリーン103が一体となるように高速に回転する。図9の例では、回転ステージ104は、回転軸Aを中心に時計回りで回転する。このとき、画像投射部101は、反射鏡102を介して、スクリーン103の回転角度に対応した画像をスクリーン103に投射する。このようにして、スクリーン回転型画像投射装置100は、360度の全周囲に立体像Bを表示できる。
【0005】
非特許文献1に記載の技術では、スクリーン103に平面画像を投射するため、観察者が立体感を得ることができない。そこで、非特許文献1に記載の技術において、スクリーン103に指向性を持たせると共に、画像投射部101が右眼画像及び左眼画像を高速に切り替えることで、観察者が両眼視差による立体感を得られるようにする(以後、「従来技術」と表記)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Gregg Favalora et al., “Volumetric three-dimensional display system with rasterization hardware,” Proc. SPIE 4297, Stereoscopic Displays and Virtual Reality Systems VIII, pp. 227-235, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来技術では、観察者の左眼及び右眼に異なる画像を提示するため、スクリーン103の回転軸Aに対して、観察者の左眼及び右眼が垂直に位置する必要がある。つまり、この従来技術では、観察者の左眼及び右眼が水平に並んでいる必要がある。従って、従来技術では、観察者の両眼の配列方向が水平方向に制限されるため、両眼が水平に並んでいない場合、観察者が立体感を得られないという問題がある。なお、両眼の配列方向は、左右両眼の中心を結ぶ直線の方向を表している。
【0008】
本発明は、観察者の両眼の配列方向が制限されない全周型立体表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る全周型立体表示装置は、インテグラル方式の要素画像を表示する表示素子と、表示素子からの光を出射するレンズアレイと、レンズアレイからの光を反射する反射手段との組である立体表示基本セットを1以上備える全周型立体表示装置であって、回転機構と、制御手段と、を備える構成とした。
【0010】
立体表示基本セットにおいて、表示素子及びレンズアレイが平行に配置され、レンズアレイに対して、反射手段の一端側が近く、かつ、他端側が遠くなるように反射手段が斜めに配置される。
また、回転機構は、表示素子及びレンズアレイに平行な平面の法線を回転軸とし、一端側が回転軸で他端側が回転軸に対して外周側となるように、立体表示基本セットを回転させる。
そして、制御手段は、観察者の視点位置、及び、立体表示基本セットの回転角度が入力され、入力された視点位置及び回転角度に応じて、要素画像を表示素子に表示させる。
【0011】
かかる構成によれば、全周型立体表示装置は、回転する立体表示基本セットの内側に、円柱状の立体像の虚像が形成される。このとき、全周型立体表示装置は、インテグラル方式が2次元方向(水平方向及び垂直方向)に視域を有するので、立体像の虚像を観察する際、観察者の両眼の配列方向が水平方向に制限されない。
【0012】
また、参考例としての全周型立体表示装置は、インテグラル方式の要素画像を表示する表示素子と、表示素子からの光を出射するレンズアレイと、レンズアレイからの光を反射する反射手段との組である立体表示基本セットを複数備える全周型立体表示装置であって、制御手段、を備える構成とした。
【0013】
立体表示基本セットにおいて、表示素子及びレンズアレイが平行に配置され、レンズアレイに対して、反射手段の一端側が近く、かつ、他端側が遠くなるように反射手段が斜めに配置される。
また、複数の立体表示基本セットは、表示素子及びレンズアレイに平行な平面の法線を中心とし、一端側が法線側で他端側が法線に対して外側となるように放射状に配置される。
そして、制御手段は、観察者の視点位置が入力され、入力された視点位置、及び、平面上における立体表示基本セットの角度に応じて、要素画像を表示素子に表示させる。
【0014】
かかる構成によれば、全周型立体表示装置は、放射状に並んだ立体表示基本セットの内側に、角柱状の虚像が形成される。このとき、全周型立体表示装置は、インテグラル方式が2次元方向に視域を有するので、立体像の虚像を観察する際、観察者の両眼の配列方向が水平方向に制限されない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、観察者の両眼の配列方向が制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る全周型立体表示システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態において、立体表示基本セットによる立体像の形成を説明する説明図である。
図3】第1実施形態において、要素画像の表示を説明する説明図である。
図4】第1実施形態において、領域ごとの色情報の割り当てを説明する説明図である。
図5】第1実施形態において、領域ごとの色情報と表示素子の色情報との対応関係を説明する説明図である。
図6】第2実施形態に係る全周型立体表示システムの概略構成図である。
図7】第2実施形態において、立体表示基本セットによる立体像の形成を説明する説明図である。
図8】変形例に係る全周型立体表示システムの概略構成図である。
図9】従来のスクリーン回転型画像投射装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0018】
(第1実施形態)
[全周型立体表示システムの構成]
図1を参照し、第1実施形態に係る全周型立体表示システム1の構成について説明する。
全周型立体表示システム1は、全周囲でインテグラル方式の立体表示を行うものである。つまり、全周型立体表示システム1では、観察者(不図示)が360度の全方向から立体像を観察することができる。図1に示すように、全周型立体表示システム1は、視点位置検出装置2と、全周型立体表示装置3とを備える。
【0019】
視点位置検出装置2は、観察者の視点位置(左右両眼の位置)を検出するものである。例えば、視点位置検出装置2は、全周型立体表示装置3の周囲にいる観察者の視点位置を検出できるように天井に取り付けられている。そして、視点位置検出装置2は、1秒間に240回、観察者の視点位置を検出する。本実施形態では、視点位置検出装置2は、赤外線による視点位置検出処理、カメラ画像からの視点位置処理など、一般的な視点位置検出処理を行う。そして、視点位置検出装置2は、検出した観察者の視点位置を全周型立体表示装置3に出力する。本実施形態では、視点位置の検出対象となる観察者が一人であることとする。
【0020】
なお、視点位置検出装置2は、有線又は無線を問わず、任意の手法で全周型立体表示装置3(正確には制御手段50)と通信できる。本実施形態では、視点位置検出装置2は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信回線を介して、全周型立体表示装置3と通信する。
【0021】
全周型立体表示装置3は、高速で回転することで360度の全周囲に立体映像を表示するものである。以下、図1を参照し、全周型立体表示装置3の構成を具体的に説明する。図1に示すように、全周型立体表示装置3は、1組の立体表示基本セット30と、回転機構40と、制御手段50とを備える。
なお、図1には、水平方向をx軸、垂直方向をy軸、奥行き方向をz軸とする3次元座標系を図示した。この3次元座標系の原点Oは、後記する虚像Sの中心であることとする。
【0022】
[全周型立体表示装置の構成]
立体表示基本セット30は、x-z面(水平面)に沿って時計回りに高速で回転することで、その残像効果により全周囲に立体像を形成するものである。図1に示すように、立体表示基本セット30は、表示素子31と、レンズアレイ32と、反射手段33との組である。
【0023】
表示素子31は、インテグラル方式の要素画像を表示するものである。例えば、表示素子31は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの一般的なフラットパネルディスプレイである。本実施形態では、表示素子31は、長方形の形状を有しており、後記する制御手段50から入力された要素画像を表示する。
【0024】
レンズアレイ32は、表示素子31からの光を出射するものである。つまり、レンズアレイ32は、インテグラル方式で一般的なレンズアレイであり、表示素子31からの光線方向を制御する。例えば、レンズアレイ32は、円形の微小な凸レンズである要素レンズ32aが、x軸及びz軸方向で2次元アレイ状に配列されている。また、レンズアレイ32は、長方形の形状を有しており、表示素子31と略同一のサイズである。
【0025】
反射手段33は、レンズアレイ32からの光を反射するものである(例えば、一般的な反射鏡)。本実施形態では、レンズアレイ32は、垂直方向から入射する光を観察者がいる水平方向に反射する。また、反射手段33は、長方形の形状を有しており、垂直方向から見て、表示素子31及びレンズアレイ32と略同一のサイズである。
【0026】
なお、図1には、反射手段33により形成される表示素子31の虚像31K、反射手段33により形成されるレンズアレイ32の虚像32K、及び、円柱状の虚像Sを細線で図示した(詳細を後記)。
【0027】
図1に示すように、立体表示基本セット30において、表示素子31及びレンズアレイ32が、平行(例えば、水平)に配置されている。また、立体表示基本セット30において、反射手段33が、レンズアレイ32に対して、反射手段33の一端側33nが近く、かつ、反射手段33の他端側33fが遠くなるように斜め(例えば、斜め45度)に配置されている。なお、立体表示基本セット30は、表示素子31、レンズアレイ32及び反射手段33を保持する保持部材(不図示)を備えてもよい。
【0028】
回転機構40は、表示素子31及びレンズアレイ32に平行な平面(x-z面)の法線を回転軸Aとし、一端側33nが回転軸A側(中心側)で他端側33fが回転軸Aに対して外周側となるように、立体表示基本セット30を回転させるものである。
【0029】
図1に示すように、回転機構40は、回転モータ41と、支持アーム42とを備える。
回転モータ41は、回転軸Aを中心として、支持アーム42に支持された立体表示基本セット30を回転させるものである。本実施形態では、回転モータ41は、1秒間に60回、立体表示基本セット30を時計回りに回転させる。例えば、回転モータ41は、エンコーダ付きの回転モータであり、立体表示基本セット30の回転角度θ(図2)を制御手段50に出力する。
【0030】
支持アーム42は、立体表示基本セット30を支持する逆L字状のアームである。具体的には、支持アーム42は、回転モータ41に取り付けられており、水平方向に延長された後、所定位置で直角に折れ曲がっている。
【0031】
制御手段50は、視点位置検出装置2から観察者の視点位置が入力され、回転機構40から立体表示基本セット30の回転角度θが入力される。そして、制御手段50は、入力された視点位置及び回転角度θに応じて、要素画像を表示素子31に表示させるものである。本実施形態では、制御手段50は、後記するように、光線追跡法で生成した要素画像を表示素子31に表示させる。
【0032】
なお、制御手段50は、表示素子31の裏面側(図面下側)に配置されているが、その配置位置は特に制限されない。例えば、制御手段50は、一般的なコンピュータのように床に配置してもよい(不図示)。
【0033】
<立体表示基本セットによる立体像の形成>
図2を参照し、立体表示基本セット30による立体像の形成を詳細に説明する。なお、図2では、図面を見やすくするため、視点位置検出装置2及び制御手段50の図示を省略した。
【0034】
図2に示すように、表示素子31が表示した要素画像の光Lは、レンズアレイ32を構成する要素レンズ32aに入射する。要素レンズ32aに入射した光Lは、反対側のレンズ面から出射して垂直方向に進行し、反射手段33により水平方向に反射される。その後、反射手段33で反射されたLは、観察者の両眼に入射する。この反射手段33で反射された光Lは、観察者から見て、要素レンズ32aの虚像32aKを出射して水平に進行する光と等価である。このようにして、立体表示基本セット30Bでは、要素レンズ32aの虚像32aKが形成される。
【0035】
前記したように、立体表示基本セット30は、回転軸Aを中心として、時計回りに高速で回転する。ここで、各要素レンズ32aの虚像32aKにおいて、回転軸Aに直交する辺の中点を結ぶ線Cに着目する。立体表示基本セット30の高速回転に伴って、線Cの軌跡は、円柱状の虚像Sを形成することになる。この虚像Sは、全周囲に形成された要素レンズ32aの虚像32aKであるため、観察者の肉眼には立体像として映る。
【0036】
なお、回転角度θは、x-z面上において、立体表示基本セット30が回転した角度のことであり、所定の方向(例えば、z軸)に対する立体表示基本セット30の位置を表している。図2には、立体表示基本セット30が0度から90度まで回転した状態を図示した。
【0037】
<視点位置及び回転角度に応じた要素画像の表示>
図3図5を参照し、視点位置及び回転角度θに応じた要素画像の表示を説明する。
本実施形態では、制御手段50は、視点位置及び回転角度θに応じた要素画像を生成し、生成した要素画像を表示素子31に出力する。このとき、制御手段50は、光線追跡法を用いて、被写体の3次元モデルMから、視点位置及び回転角度θに応じた要素画像を生成することとする。このように、制御手段50が3次元モデルMの立体像を光線によって生成するため、観察者の両眼の配列方向に制限を加えることなく、360度の全周囲で観察者に立体感を与えることができる。
【0038】
光線追跡法で要素画像を生成する際、制御手段50は、単一の視点位置ごとに色情報を割り当てるだけでなく、複数の視点位置を含む領域ごとに色情報を割り当ててもよい。ここでは、視点位置ごとの色情報の割り当て、又は、領域wごとの色情報の割り当ての何れを実行するかは、全周型立体表示システム1の利用者が、手動で設定する。
【0039】
<<視点位置ごとの色情報の割り当て>>
図3を参照し、視点位置pごとの色情報の割り当てを説明する。
まず、制御手段50は、立体表示基本セット30の回転角度θに基づいて、図3における表示素子31の虚像31K、及び、レンズアレイ32の虚像32Kの位置を求める。具体的には、制御手段50は、立体表示基本セット30の回転角度θから表示素子31及びレンズアレイ32の位置を求める。そして、制御手段50は、表示素子31及びレンズアレイ32の位置に対して、反射手段33の面対称となる位置を、表示素子31の虚像31K、及び、レンズアレイ32の虚像32Kの位置として求める。
【0040】
ここで、要素レンズ32aの虚像32aKの主点を通過し、ある視点位置pで観察される光線L1に着目する。次に、制御手段50は、3次元モデルMと光線L1との交点となる画素を求め、その画素の色情報e1(例えば、輝度値、RGB値)を3次元モデルMから抽出する。また、制御手段50は、抽出した色情報e1を表示素子31の虚像31Kで対応する画素位置の色情報e2として割り当てる。そして、制御手段50は、全ての要素レンズ32aの虚像32aKについて、光線L1と同様の処理を行う。
【0041】
なお、一点鎖線で図示した光線L2については、3次元モデルMとの交点が存在しないため、色情報を割り当てることができない。この場合、3次元モデルMの背景を表す色情報として、表示素子31の虚像31Kで対応する画素位置に「黒」を割り当ててもよい。また、点線で図示した光線L3については、表示素子31の虚像31Kで対応する画素位置が存在しないため、色情報を割り当てることができない。
【0042】
<<領域ごとの色情報の割り当て>>
図4を参照し、領域wごとの色情報の割り当てを説明する。
図4に示すように、制御手段50は、視点位置pがz軸上に存在する場合、視点位置pを含み、x-y平面に平行な領域wを設定する。ここでは、平面状の領域wを設定したが、制御手段50は、視点位置pを含む曲面を領域wとして設定してもよい。そして、この視点位置pにおいて、制御手段50は、図3と同様の手順で色情報を割り当てる。さらに、別の視点位置pにおいても、制御手段50は、図3と同様の手順で色情報を割り当てる。
【0043】
領域wに9個の視点位置を設定した場合を考える。この場合、制御手段50は、1個の虚像32aKに対して、9個の色情報e2を割り当てる(i=1,2,…,9)。図5には、1個の虚像32aKに割り当てる色情報e2と、表示素子31に表示された9個の色情報e3との対応関係を図示した。図5に示すように、色情報e2,e3は、1対1で対応する。
【0044】
[作用・効果]
以上のように、第1実施形態に係る全周型立体表示装置3は、回転する立体表示基本セット30の内側に、円柱状の虚像Sが形成される。このとき、全周型立体表示装置3は、インテグラル方式が2次元方向に視域を有するので、観察者の両眼の配列方向が水平方向に制限されない。つまり、全周型立体表示装置3では、観察者が虚像Sを観察した際、従来技術のように両眼が水平に並んでいなくても立体感を得られる。
【0045】
以上、第1実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
前記した実施形態では、反射手段33が反射鏡であることとして説明したが、ハーフミラー(半透鏡)であってもよい。この場合、拡張現実(AR:Augmented Reality)を実現し、観察者が立体像を実際の背景に重なった状態で観察できる。
【0046】
前記した実施形態では、立体表示基本セット30が1組であることとして説明したが、立体表示基本セット30は複数組であってもよい。例えば、全周型立体表示装置3は、対向するように2組の立体表示基本セット30を備えてもよい。この場合、全周型立体表示装置3は、立体表示基本セット30の回転速度を低下させることができる。
【0047】
前記した実施形態では、観察者が一人であることとして説明したが、観察者は複数であってもよい。観察者が複数の場合、全周型立体表示装置3は、観察者の人数に応じて、要素画像を時分割表示すればよい。
【0048】
前記した実施形態では、360度の全周囲で立体表示を行うこととして説明したが、全周囲ではなく所望の範囲内のみで立体表示を行ってもよい。
【0049】
(第2実施形態)
[全周型立体表示システムの構成]
図6を参照し、第2実施形態に係る全周型立体表示システム1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
第1実施形態では、1組の立体表示基本セット30(図1)を高速で回転させることで、全周囲の立体表示を実現した。これに対し、第2実施形態では、複数組の立体表示基本セット30Bを放射状に配置することで、全周囲の立体表示を実現する点が第1実施形態と異なる。
【0050】
図6に示すように、全周型立体表示システム1Bは、視点位置検出装置2と、全周型立体表示装置3Bとを備える。
視点位置検出装置2は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0051】
[全周型立体表示装置の構成]
以下、図6を参照し、全周型立体表示装置3の構成を具体的に説明する
全周型立体表示装置3Bは、放射状に配置された立体表示基本セット30Bにより、360度の全周囲に立体映像を表示するものである。図6に示すように、全周型立体表示装置3Bは、複数組(例えば、8組)の立体表示基本セット30B(30B~30B)と、制御手段50Bとを備える。なお、全周型立体表示装置3Bは、回転機構40(図1)を備える必要はない。
【0052】
複数組の立体表示基本セット30Bは、表示素子31及びレンズアレイ32と平行な平面(x-z面)において、互いに等間隔となるように放射状に配置されている。図6の例では、立体表示基本セット30Bが8組なので、x-z面上において、隣接する立体表示基本セット30Bの間隔が45度となる(後記する角度φが45度間隔)。
【0053】
図6に示すように、立体表示基本セット30Bは、表示素子31と、レンズアレイ32と、反射手段33Bとの組である。なお、表示素子31及びレンズアレイ32は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0054】
反射手段33Bは、隣接する反射手段33B同士で隙間なく配置するため、逆台形状の形状を有する。従って、反射手段33Bは、垂直方向から見て、表示素子31及びレンズアレイ32より大きなサイズとなる。他の点、反射手段33Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0055】
ここで、立体表示基本セット30Bにおいて、表示素子31及びレンズアレイ32が、平行(例えば、水平)に配置されている。また、立体表示基本セット30Bにおいて、反射手段33Bが、レンズアレイ32に対して、反射手段33Bの一端側33nが近く、かつ、反射手段33Bの他端側33fが遠くなるように斜め(例えば、斜め45度)に配置されている。従って、複数の立体表示基本セット30Bが、表示素子31及びレンズアレイ32に平行な平面の法線Dを中心とし、一端側33nが法線D側(中心側)で他端側33fが法線Dに対して外側となるように放射状に8組配置されている。
【0056】
制御手段50Bは、視点位置検出装置2から観察者の視点位置が入力される。そして、制御手段50Bは、入力された視点位置、及び、平面上における立体表示基本セットの角度φに応じて、要素画像を表示素子31に表示させるものである。
【0057】
前記した第1実施形態では、制御手段50(図1)は、立体表示基本セット30が高速で回転しているため、その回転角度θから表示素子31の虚像31K、及び、レンズアレイの虚像32Kの位置を求めた。これに対し、制御手段50Bは、立体表示基本セット30Bの角度φが予め決まっているため、この角度φから表示素子31の虚像31K、及び、レンズアレイの虚像32Kの位置を定めればよい。他の点、制御手段50Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0058】
なお、立体表示基本セット30Bの角度φは、x-z面上において、所定の方向(例えば、z軸)を基準としたときの立体表示基本セット30Bの角度を表す。
【0059】
<立体表示基本セットによる立体像の形成>
図7を参照し、立体表示基本セット30Bによる立体像の形成を詳細に説明する。図7に示すように、立体表示基本セット30Bにおいて、表示素子31が表示した要素画像の光Lは、レンズアレイ32を構成する要素レンズ32aに入射する。要素レンズ32aに入射した光Lは、反対側のレンズ面から出射して垂直方向に進行し、反射手段33Bにより水平方向に反射される。その後、反射手段33Bで反射されたLは、観察者の両眼に入射する。この反射手段33Bで反射された光Lは、観察者から見て、要素レンズ32aの虚像32aKを出射して水平に進行する光と等価である。このようにして、立体表示基本セット30Bでは、要素レンズ32aの虚像32aKが形成される。
【0060】
他の立体表示基本セット30B~30Bにおいても、立体表示基本セット30Bと同様、要素レンズ32aの虚像32aKが形成される。結果として、8つの立体表示基本セット30B~30Bによって、八角柱状の虚像Tが形成される。この虚像Tは、全周囲に形成された要素レンズ32aの虚像32aKであるため、観察者の肉眼には立体像として映る。
【0061】
[作用・効果]
かかる構成によれば、全周型立体表示装置3Bは、放射状に並んだ立体表示基本セット30Bの内側に、反射手段33が角柱状の虚像Tを形成する。このとき、全周型立体表示装置3Bは、インテグラル方式が2次元方向に視域を有するので、観察者が立体像の虚像を観察する際、観察者の両眼の配列方向が水平方向に制限されない。つまり、全周型立体表示装置3Bでは、観察者が虚像Tを観察した際、従来技術のように両眼が水平に並んでいなくても立体感を得られる。
【0062】
以上、第2実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
前記した実施形態では、立体表示基本セット30Bが8組であることとして説明したが、2組以上(例えば、4組)であればよい。ここで、立体表示基本セット30Bがn組の場合、隣接する立体表示基本セット30B同士の角度φが360/n度となる。
【0064】
前記した実施形態では、8組の立体表示基本セット30Bにおいて、表示素子31及びレンズアレイ32が別々であることとして説明したが、これに限定されない。つまり、図8に示すように、表示素子31C及びレンズアレイ32Cを一体化してもよい。図8の表示素子31C及びレンズアレイ32Cは、図6の表示素子31及びレンズアレイ32を一枚で形成したものである。
【符号の説明】
【0065】
1,1B 全周型立体表示システム
2 視点位置検出装置
3,3B 全周型立体表示装置
30,30B 立体表示基本セット
31 表示素子
32 レンズアレイ
32a 要素レンズ
33,33B 反射手段
40 回転機構
41 回転モータ
42 支持アーム
50,50B 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9