(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20250109BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20250109BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q13/10
H01P11/00
(21)【出願番号】P 2021140384
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】笠原 久稔
(72)【発明者】
【氏名】岡村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高村 祐
(72)【発明者】
【氏名】望月 太貴
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342966(JP,A)
【文献】特開2009-017282(JP,A)
【文献】特開2020-065207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 13/10
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の出入口に配設される、スリット孔が形成された金属板によって構成されている第1のアンテナ部と、
導電性の部材であって、一端が、前記金属板における、前記スリット孔の側面、又は他の領域より薄く、前記スリット孔を含む領域に接続されている接続部と、
を備え
、
前記金属板における、前記構造物の外部側の面から、前記金属板に前記接続部の一端が接続されている給電点までの長さは、前記金属板の厚さの1/2以下である、アンテナ装置。
【請求項2】
前記スリット孔は、前記金属板が前記構造物に配設された際に、他の部材に当接しない部分である床版部に形成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記接続部の他端は、電気信号を送受信する内部装置に接続されている、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記接続部の他端に接続されている第2のアンテナ部を備える、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記金属板の面上に凸部が形成されており、
前記スリット孔は、前記凸部から5mm以上離れた位置に形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記接続部は、
ケーブルと、
前記ケーブルの一端が接続されている導電板と、を含み、
前記導電板が、導電性粘着剤によって前記第1のアンテナ部に固定されている、請求項1から
5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及びアンテナ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場拡大が見込まれるIoT(Internet of Things)分野において、LPWA(Low Power Wide Area)の通信方式を用いることが知られている(非特許文献1)。また、LPWA、Wi-Fi(登録商標)、5G、6G等の電波は、直進性が高く、通信距離が短いため、多数のアンテナを設置することが望まれている。
【0003】
そこで、多数のアンテナの設置を実現するために、室内外を問わず、既存の構造物にアンテナを取り付けること望まれている。このとき、アンテナを構造物に取り付けることによって、構造物の美観が損なれないようにすることが要求されている。このため、目立たない外観を有し、後付けすることが可能なガラスアンテナが提供されている(非特許文献2)。
【0004】
また、特製のマンホールの鉄蓋にアンテナを内蔵させることによって、アンテナが外力により損傷を受けることを抑制しつつ、車両の障害とならないように路面に取り付ける技術も開発されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】NTT西日本、「IoT事業拡大のためのLoRaWAN(登録商標)の事業化」、NTT技術ジャーナル、2018年10月号、pp.44-47
【文献】AGC、「AGCの『窓を基地局化するガラスアンテナ』5G対応の開発が完了」、[online]、[令和3年7月5日検索]、インターネット<URL:https://www.agc.com/news/detail/1200821_2148.html>
【文献】明電舎、「管きょリアルタイム監視用マンホールアンテナ」、[online]、[令和3年7月5日検索]、インターネット<URL: https://www.meidensha.co.jp/catalog/bb/BB524-3291.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したガラスアンテナのような脆性材料によって構成されるアンテナが、金属又は鉄筋コンクリートによって構成される構造物に取り付けられている場合、アンテナは、構造物が耐えうる外力と同等の外力に耐えることができない。このため、構造物が外力に対して損傷を受けない状況においても、アンテナは損傷を受けやすいことがある。したがって、アンテナが構造物に取り付けられる場合、該アンテナには、該アンテナが取り付けられる構造物と同等の靭性を有することが要求されている。また、アンテナが該構造物と同等の靭性を有するために、上述したような、構造物にアンテナを内蔵する手法には、高い作業負荷が発生し、高コストとなっている。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、高い作業負荷が発生し、高コストとなるのを抑制しつつ、構造物と同等の靭性を有することができるアンテナ装置及びアンテナ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るアンテナ装置は、構造物の出入口に配設される、スリット孔が形成された金属板によって構成されている第1のアンテナ部と、導電性の部材であって、一端が、前記金属板における、前記スリット孔の側面、又は他の領域より薄く、前記スリット孔を含む領域に接続されている接続部と、を備える。
【0009】
一実施形態に係るアンテナ装置の製造方法は、構造物に配設される金属板にスリット孔を形成するステップと、ケーブルの一端を導電板に取り付けるステップと、前記金属板における、前記スリット孔の側面、又は他の領域より薄く、前記スリット孔を含む領域に前記導電板を取り付けるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業負荷を抑制しつつ、構造物と同等の靭性を有することができるアンテナ装置及びアンテナ装置の製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図1に示すアンテナ装置のVSWRを示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係るアンテナ装置の製造方法一例を示すフローチャートである。
【
図6A】
図2に示す鉄蓋の一部の第1の変形例を示す図である。
【
図6B】
図2に示す鉄蓋の一部の第2の変形例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す概略図である。
【
図8】第2の実施形態に係るアンテナ装置の製造方法一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<第1の実施形態>>
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<アンテナ装置の構成>
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置100の構成の一例を説明する。
【0014】
図1に示すように、アンテナ装置100は、内部装置200と電気信号を送受信する。本例では、アンテナ装置100は、有線通信により、内部装置200と電気信号を送受信してもよい。
【0015】
また、アンテナ装置100は、外部装置300と無線通信により電気信号を送受信する。本例では、アンテナ装置100は、LTE(Long Term Evolution)、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)などの広域ネットワークにより、外部装置300と電気信号を送受信する。
【0016】
内部装置200は、アンテナ装置100から送信された電気信号を受信し、アンテナ装置100に電気信号を送信する送受信部、電気信号を制御する制御部、電源等を備える通信装置(第1の通信装置)である。内部装置200は、構造物の内部S1側に配設される。
【0017】
外部装置300は、例えば、内部装置200によって取得された各種の情報を管理するサーバ等の通信装置(第2の通信装置)である。外部装置300は、構造物の外部S2側に配設される。
【0018】
本実施形態における構造物は、地中内の空間を画定するための構造物である。構造物は、例えば、地中Aに埋設されたマンホール400である。構造物は、金属、コンクリート、又はレジンコンクリート等によって形成される。
【0019】
マンホール400は、首部41と、筐体42と、鉄蓋43とを備える。首部41および筐体42は、例えば、鉄筋コンクリートによって形成されている。首部41は、略円筒形状とすることができ、首部41によって画定される空間は、構造物の外部S2と連通している。筐体42は、略直方体形状とすることができる。また、首部41によって画定される空間と、筐体42とによって画定される空間とは連通されている。
【0020】
鉄蓋43は、構造物が画定する内部S1側の空間と、外部S2側への空間との境界(マンホール400の出入口)を覆う部材である。
図1に示す例では、鉄蓋43は、首部41における外部S2側に配設されている。一例では、
図2に示すように、鉄蓋43は、板面の形状を有する板面部431を含む。また、
図3A及び
図3Bに示すように、板面部431の面は円形とすることができる。
【0021】
図2、
図3A、及び
図3Bに示すように、鉄蓋43は、板面部431より十分に小さい、凸部432をさらに含んでもよい。凸部432は、板面部431の面上に配設され、面の両方の側に配設されてもよいし、面の一方の側に配設されてもよい。なお、
図3A及び
図3Bにおいては、一部の凸部432のみに符号が付され、他の凸部432の符号は省略されている。
【0022】
例えば、
図3Aに示すように、鉄蓋43は、外部S2側から見て、複数の略正方形の凸部432aを有していてもよい。また、鉄蓋43は、外部S2側から見て、略円形の凸部432bを有してもよい。また、鉄蓋43には、該鉄蓋43を貫通する、該鉄蓋43より十分に小さい穴HLが形成されていてもよい。
【0023】
また、
図3Bに示すように、鉄蓋43は、内部S1側の面に、凸部432を有していてもよい。具体的には、鉄蓋43は、内部S1側の面に、一の方向(y軸方向)に延在する2つの凸部432cを有し、一の方向に直交する方向(x軸方向)に2つの凸部432dを有していてもよい。x軸方向に延在する2つの凸部432cと、y軸方向に延在する2つの凸部432dとによって井桁が形成されてもよい。井桁は、構造物に配設された鉄蓋43に負荷される重量を支持する部材である。
【0024】
鉄蓋43には、該鉄蓋43を貫通している、矩形状の孔であるスリット孔SHLが形成されている。該鉄蓋43におけるスリット孔SHLの周辺に流れる電流が変化すると、該鉄蓋43の周辺における磁場が変化することにより、該鉄蓋43は、電波を送信し、アンテナ(後述するアンテナ部11に相当)として機能する。
【0025】
スリット孔SHLは、鉄蓋43の面の法線方向(z軸方向)から見て、矩形の形状を有している。スリット孔SHLは、該スリット孔SHLが形成されていない金属板を切削加工することにより、スリット孔SHLを形成してもよいし、スリット孔SHLが形成されるように金属板を成型してもよい。
【0026】
スリット孔SHLは、鉄蓋43における床版部に形成されていてもよい。床版部は、鉄蓋43が構造物に配設された際に、他の部材に当接しない部分である。床版部に及ぼされる耐力影響は小さいため、アンテナ部11におけるスリット孔SHL周辺が破損されるのを抑制することができる。
図2及び
図3Bに示す例では、床版部は、鉄蓋43における井桁を構成する凸部432c及び432dが設けられていない部分である。
【0027】
図3A及び
図3Bに示すように、スリット孔SHLは、凸部432から5mm以上離れた位置に形成されてもよい。具体的には、スリット孔SHLの長辺が延在する方向(y軸方向)において凸部432から5mm以上(
図3Aでは5mmであり、
図3Bでは7mm)離れた位置に形成され、かつスリット孔SHLの短辺が延在する方向(x軸方向)において凸部432から5mm以上(
図3A及び
図3Bでは5mm)離れるように形成されてよい。スリット孔SHL凸部432から5mm以上離れていることによる効果は、追って
図4を参照して説明される。
【0028】
同様にして、スリット孔SHLは、穴HLから5mm以上離れるように形成されてもよい。
【0029】
また、スリット孔SHLのサイズは、内部装置200及び外部装置300と送受信する電気信号に基づく電波の波長λに応じた値とすることができる。例えば、スリット孔SHLの長辺の長さy_shlは0.7λ以上で0.8λ以下とすることができる。また、スリット孔SHLの短辺の長さx_shlは0.02λ以上で0.05λ以下とすることができる。また、スリット孔SHLの高さz1(
図2参照)は、波長λによらず、一例として、9mmとすることができる。スリット孔SHLが、鉄蓋43より十分に小さく形成されることによって、鉄蓋43の強度は、スリット孔SHLにより及ぼされる影響は小さい。
【0030】
また、スリット孔SHLに樹脂等の絶縁物が充填されてもよい。これにより、アンテナ装置100は、スリット孔SHLにおける、空気、水等の通過を抑制することができる。これにより、アンテナ装置100は、スリット孔SHLを画定している、鉄蓋43の表面の防錆を図ることができる。
【0031】
また、スリット孔SHLに樹脂等の絶縁物が充填されていなくてもよい。このような構成において、鉄蓋43におけるスリット孔SHLを画定する面に防錆処理が施されていてもよい。これにより、アンテナ装置100は、鉄蓋43におけるスリット孔SHLを画定する面の防錆を図りつつ、通気性を保つことができる。
【0032】
鉄蓋43には、複数のスリット孔SHLが形成されていてもよい。これにより、複数のスリット孔SHLの周辺それぞれが複数の電波を送信するため、鉄蓋43は、複数の電波を送信するアンテナとして機能する。これにより、1つのスリット孔SHLが形成される場合に比べて、単位時間あたりに多くの電波を送信することができ、通信速度が向上される。また、複数のスリット孔SHLの位置及び方向が適宜設計されることによって、アンテナ装置100は、鉄蓋43から送信される電気信号に基づく電波の指向性をよりよく制御することができる。これに伴い、特に無給電中継する場合に顕著に発生する電波減衰を抑制することができる。
【0033】
アンテナ装置100は、アンテナ部(第1のアンテナ部)11と、接続部12とを備える。
【0034】
アンテナ部11は、構造物の出入口に配設される、スリット孔SHLが形成された金属板によって構成されている。金属板は、例えば、上述したマンホール400が備える鉄蓋43の板面部431とすることができる。アンテナ部11におけるスリット孔SHLの周辺に流れる電流が変化すると、該アンテナ部11の周辺における磁場が変化することにより、アンテナ部11は、電波を送信する。アンテナ部11は、アクティブアンテナとして機能することもでき、パッシブアンテナとして機能することもできる。
【0035】
また、アンテナ部11を構成する金属板の面上に凸部が形成されていてもよい。上述したような、金属板が、鉄蓋43の板面部431である例において、金属板の面上に形成される凸部は、鉄蓋43の凸部432である。そのため、鉄蓋43の例を参照して説明したように、アンテナ部11に形成されているスリット孔SHLは、アンテナ部11を構成する金属板の面上の凸部から5mm以上離れた位置に形成されていてもよい。
【0036】
接続部12は、導電性の部材であって、該接続部12の一端は、アンテナ部11を構成する金属板におけるスリット孔SHLの周辺に接続されている。本例では、スリット孔SHLの周辺は、スリット孔SHLの側面である。接続部12の他端は、電気信号を送受信する内部装置200に接続されている。接続部12は、ケーブルを含み、該ケーブルは、例えば、同軸ケーブル121とすることができる。接続部12は、ケーブルの一端が接続されている導電板122をさらに含んでいてもよい。
【0037】
ケーブルの一端は、アンテナ部11を構成する金属板におけるスリット孔SHLの周辺に接続される。ケーブルが同軸ケーブル121である構成において、同軸ケーブル121は、内部導体121aと、内部導体121aの周縁を囲む外部導体121bとを含む。
【0038】
図2に示すように、同軸ケーブル121の内部導体121a及び外部導体121bそれぞれの一端は、アンテナ部11を構成する金属板におけるスリット孔SHLの周辺に接続される。具体的は、同軸ケーブル121の内部導体121aの一端は、金属板における、スリット孔SHLを画定する一方の内側面に接続されている。また、同軸ケーブル121の外部導体121bの一端は、金属板における、スリット孔SHLを画定する一方の内側面に対向する他方の内側面に接続されている。
図2に示す例では、追って詳細に説明するように、内部導体121a及び外部導体121bのそれぞれの一端は、内側面に取り付けられた導電板122を介して、金属板に接続されている。
【0039】
なお、同軸ケーブル121は、結束部材によって結束されてアンテナ部11に接続されていてもよいし、カシメ片によってアンテナ部11に接続されていてもよい。これにより、接続部12はアンテナ部11に強固に接続される。
【0040】
金属板における、構造物の外部S2側の面から給電点までの長さは、アンテナ部11を構成する金属板の厚さの1/2以下であってよい。ここで、給電点は、アンテナ部11を構成する金属板における接続部12の一端が接続されている部分である。また、「厚さ」は、金属板の面に直交する方向(z軸方向)における長さである。
図2に示す例では、金属板における、構造物の外部S2側の面から給電点までの長さは、鉄蓋43における、構造物の外部S2側の面から給電点までの長さz2に相当する。アンテナ部11を構成する金属板の厚さは、鉄蓋43の厚さz1に相当する。
【0041】
導電板122は、導電性の部材である。導電板122には、同軸ケーブル121の一端が取り付けられており、導電板122は、アンテナ部11に固定されている。具体的には、接続部12は、2つの導電板122を備え、一方の導電板122には、同軸ケーブル121の内部導体121aが取り付けられ、他方の導電板122には、同軸ケーブル121の外部導体121bが取り付けられている。導電板122は、アンテナ部11より小さく、そのため、導電板122と同軸ケーブルとの熱容量の差は、アンテナ部11と同軸ケーブルとの熱容量の差より小さい。このため、同軸ケーブル121をアンテナ部11に直接、はんだ付けする場合に比べて、安定して同軸ケーブル121を導電板122にはんだ付けすることができる。
【0042】
一例では、導電板122は、導電性粘着剤によってアンテナ部11に固定されていてもよい。導電性粘着剤は、例えば、導電性テープ、導電性接着剤とすることができる。また、このとき、導電板122は、はんだ付けによりアンテナ部11に取り付けられてから、導電性粘着剤によってアンテナ部11に固定されていてもよい。他の例では、導電板122は、カシメ片により固定され、はんだ付けにより給電点に取り付けられていてもよい。
【0043】
ここで、
図1から
図3Bを参照して説明したアンテナ装置100におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)について、
図4を参照して説明する。
【0044】
図4においては、凸部432までの距離が0mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合におけるVSWR(実線参照)が示されている。また、凸部432までの距離が1mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合におけるVSWR(破線参照)が示されている。また、凸部432までの距離が5mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合におけるVSWR(一点鎖線参照)が示されている。
【0045】
凸部432までの距離が0mm又は1mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合、いずれの周波数帯域においてもVSWRは2より大きい。これに対して、凸部432までの距離が5mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合、2.30GHz以上で2.58GHz未満の周波数帯域において、VSWRは2以下である。すなわち、凸部432までの距離が5mmであるようにスリット孔SHLが形成されている場合、2.30GHz以上で2.58GHz未満の周波数帯域において、インピーダンス整合がとれている。また、凸部432までの距離が5mmより大きいようにスリット孔SHLが形成されている場合も、該周波数帯域において、VSWRは2以下であることが見出された。さらに、穴HLまでの距離が5mm以上であるようにスリット孔SHLが形成されている場合も、該周波数帯域において、VSWRは2以下であることが見出された。このように、スリット孔SHLが、凸部及び穴HLまでの距離が5mm以上であるように形成されていることによって、アンテナ装置100は、電波を安定的に放射することができ、必要十分な通信特性を得ることができる。
【0046】
<アンテナ装置の製造方法>
ここで、第1の実施形態に係るアンテナ装置100を製造する工程について、
図5を参照して説明する。
図5は、第1の実施形態に係るアンテナ装置100を製造する工程の一例を示すフローチャートである。
図5を参照して説明するアンテナ装置100を製造する工程は、第1の実施形態に係るアンテナ装置100の製造方法一例に相当する。
【0047】
ステップS1において、構造物に配設される金属板にスリット孔SHLを形成する。ここでは、スリット孔SHLが形成されていない金属板を切削加工することにより、スリット孔SHLを形成してもよいし、スリット孔SHLが形成されるように金属板を成型してもよい。また、本ステップにおいて、さらに、金属板における、スリット孔SHLを画定する、切削加工された部分を研磨してもよい。
【0048】
ステップS2において、ケーブルの一端を導電板122に取り付ける。上述したように、ケーブルが同軸ケーブル121である例では、同軸ケーブル121の一端を導電板122に取り付ける。具体的には、同軸ケーブル121の内部導体121aを一の導電板122に取り付け、外部導体121bを他の導電板122に取り付ける。
【0049】
ステップS3において、金属板におけるスリット孔SHLの周辺に導電板122を取り付ける。スリット孔SHLの周辺とは、スリット孔SHLの側面であってもよい。具体的には、アンテナ部11における一の給電点に一の導電板122を取り付け、アンテナ部11における他の給電点に他の導電板122を取り付ける。このとき、例えば、導電板122は、はんだ付けにより給電点に取り付けられてもよい。
【0050】
ステップS4において、アンテナ部11に導電板122を固定する。このとき、例えば、導電性粘着剤を用いて、アンテナ部11に導電板122を固定してもよい。
【0051】
このようにして製造されたアンテナ装置100は、同軸ケーブル121の他端を内部装置200に接続させることによって、内部装置200と電気信号を送受信することができる。なお、同軸ケーブル121は、コネクタ、他のケーブル等を介して、内部装置200に接続されてもよい。また、内部装置200から受信した電気信号に基づく電波を外部装置300に送信したり、外部装置300から電波を受信して、該電波に基づく電気信号を内部装置200に送信したりすることができる。
【0052】
なお、上述したように、アンテナ装置100は、導電板122を備えなくてもよく、そのような構成において、ステップS3において、導電板122ではなく、同軸ケーブル121の一端がアンテナ部11に接続されてもよい。
【0053】
また、上述したステップS3において、アンテナ部11の給電点にはんだ付けにより導電板122を取り付け、ステップS4において、導電性粘着剤により導電板122を固定したがこれに限られない。例えば、ステップS3において、カシメ片により導電板122を固定し、ステップS4において、導電板122をはんだ付けにより給電点に取り付けてもよい。
【0054】
以上、説明したように、第1の実施形態に係るアンテナ装置100は、構造物に配設される、スリット孔SHLが形成された金属板によって構成されているアンテナ部11と、導電性の部材であって、金属板におけるスリット孔SHLの周辺に一端が接続されている接続部12と、を備える。これにより、作業負荷を抑制しつつ、構造物と同等の靭性を有することができる。
【0055】
また、第1の実施形態に係るアンテナ装置100において、スリット孔SHLは、金属板において、構造物に当接しない部分である床版部に形成されている。これにより、アンテナ装置100は、構造物と同等の靭性を有することができる。
【0056】
また、第1の実施形態に係るアンテナ装置100において、接続部12の他端は、電気信号を送受信する内部装置200に接続されている。これにより、内部装置200からアンテナ部11に直接給電され、高い電波放射特性を実現することができる。
【0057】
また、第1の実施形態に係るアンテナ装置100において、金属板の面上に凸部432が形成されており、スリット孔SHLは、凸部432から5mm以上離れた位置に形成されている。これにより、アンテナ装置100は、インピーダンス整合をとることができる。
【0058】
また、第1の実施形態に係るアンテナ装置100では、金属板における、構造物の外部S2側の面から、接続部12の一端が金属板に接続される給電点までの長さは、金属板の厚さz1の1/2以下である。これにより、アンテナ装置100は、構造物の外部S2に配設されている外部装置300へ送信される電波への金属板による影響を低減することができる。
【0059】
また、第1の実施形態に係るアンテナ装置100の製造方法は、構造物に配設される金属板にスリット孔SHLを形成するステップと、同軸ケーブル121の一端を導電板122に取り付けるステップと、金属板におけるスリット孔SHLの周辺に導電板122を取り付けるステップとを含む。これにより、構造物に用いられる金属板における外形の変化を抑制しつつ、かつ、強度が損なわれることなく、構造物と同等の靭性を有するアンテナ装置100を製造することができる。
【0060】
(第1の変形例)
アンテナ部11を構成する金属板は、上述した実施形態の金属板とは異なり、厚さが一定でなくてもよい。ここで、厚さとは、金属板の面の法線方向における長さである。ここで、
図6Aを参照して、金属板が鉄蓋43の板面部431-1である例における厚さについて説明する。
図6Aに示す板面部431-1は、金属板の一例である。例えば、板面部431-1において、第2の領域431-1Bの厚さz1は、一例として9mmとすることができる。第1の領域431-1Aの厚さz2は、第2の領域431-1Bの厚さz1の1/2未満であってよい。さらに、厚さz2が0.5以上2.0mm以下の範囲である場合、最も安定した送受信が可能となる。第1の領域431-1Aは、スリット孔SHLが形成されている領域である。第2の領域431―1Bは、スリット孔SHLの短辺の方向(x軸方向)で、第1の領域431-1Aに隣接して位置する領域である。このような構成において、接続部12は、導電性の部材であって、該接続部12の一端は、アンテナ部11を構成する金属板におけるスリット孔SHLの周辺に接続されている。本例では、スリット孔SHLの周辺は、金属板における、他の領域(第2の領域431-1B)より薄く、スリット孔SHLを含む領域(第1の領域431-1A)である。具体的には、導電板122が、第1の領域431-1Aにおける内部S1側の面に取り付けられ、同軸ケーブル121の一端が、該導電板122に取り付けられている。このとき、導電板122は、アンテナ部11の外部S2側の表面から給電点までの距離が、第2の領域431-1Bの厚さz1の1/2以下となるように取り付けられてもよい。なお、本変形例では、アンテナ装置100を製造する工程における、上述したステップS3において、金属板におけるスリット孔SHLの周辺に導電板122を取り付けるにあたり、スリット孔SHLの周辺は、他の領域(第2の領域431-1B)より薄く、スリット孔SHLを含む領域(第1の領域431-1A)であってもよい。
【0061】
(第2の変形例)
アンテナ部11を構成する金属板は、上述した実施形態の金属板とは異なり、厚さが一定でなくてもよい。ここで、
図6Bを参照して、金属板が鉄蓋43の板面部431-2である例における厚さについて説明する。
図6Bに示す板面部431-2は、金属板の一例である。例えば、板面部431-2において、第1の領域431-2Aは、スリット孔SHLから離れるほど厚さが大きくなるようなテーパ形状を有している。ここで、第1の領域431-2Aは、厚さz2のスリット孔SHLが形成されている領域である。第2の領域431-2Bの厚さz1は、一定であり、例えば、9mmとすることができる。また、厚さz2は、厚さz1の1/2未満であってもよい。さらに、厚さz2が0.5以上2.0mm以下の範囲である場合、最も安定した送受信が可能となる。ここで、第2の領域431―2Bは、スリット孔SHLの短辺の方向(x軸方向)で、第1の領域431-2Aに隣接して位置する領域である。このような構成において、接続部12は、導電性の部材であって、該接続部12の一端は、アンテナ部11を構成する金属板における、他の領域(第2の領域431-2B)より薄く、スリット孔SHLを含む領域(第1の領域431-2A)に接続されている。具体的には、導電板122が、第1の領域431-2Aのテーパ状に形成された部分に取り付けられ、同軸ケーブル121の一端が、該導電板122に取り付けられている。このとき、導電板122は、アンテナ部11の外部S2側の表面から給電点までの距離が、第2の領域431-2Bの厚さz1の1/2以下となるように取り付けられてもよい。なお、本変形例でも、アンテナ装置100を製造する工程における、上述したステップS3において、金属板におけるスリット孔SHLの周辺に導電板122を取り付けるにあたり、スリット孔SHLの周辺は、他の領域(第2の領域431-1B)より薄く、スリット孔SHLを含む領域(第1の領域431-1A)であってもよい。
【0062】
<<第2の実施形態>>
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0063】
<アンテナ装置の構成>
本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置100-1の構成の一例を説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0064】
図7に示すように、アンテナ装置100-1は、第1の実施形態のアンテナ装置100と同様に、アンテナ装置100-1は、内部装置200と電気信号を送受信し、外部装置300と無線通信により電気信号を送受信する。本例では、アンテナ装置100-1は、無線通信により、内部装置200と電気信号を送受信する。また、アンテナ装置100-1は、第1の実施形態のアンテナ装置100と同様に、例えば、LTE、LoRaWAN等の広域ネットワークにより外部装置300と外部装置300と電気信号を送受信する。
【0065】
アンテナ装置100-1は、アンテナ部(第1のアンテナ部)11と、接続部12-1と、第2のアンテナ部13とを備える。
【0066】
第2のアンテナ部13は、接続部12-1の他端に接続されている。第2のアンテナ部13は、アンテナ機能を有する部材であり、指向性アンテナとすることができる。第2のアンテナ部13は、内部基板および内部基板上に設けられる指向性の導電パターンを含むことができる。内部基板は、方形状とすることができる。指向性アンテナは、例えば、パッチアンテナであってよい。
【0067】
接続部12-1は、導電性の部材であって、該接続部12-1の一端は、アンテナ部11を構成する金属板におけるスリット孔SHLの周辺に接続されている。接続部12-1の他端は、第2のアンテナ部13に接続されている。接続部12-1は、ケーブルを備え、ケーブルは、例えば、同軸ケーブル121とすることができる。接続部12-1は、導電板122をさらに備えてもよい。
【0068】
第2のアンテナ部13は、アンテナ部11から接続部12-1を介して受信した電気信号に基づいて、内部装置200に向けて電波を送信する。また、第2のアンテナ部13は、内部装置200から送信された電波を受信し、該電波に基づく電気信号を、接続部12-1を介してアンテナ部11に送信する。
【0069】
<アンテナ装置の製造方法>
ここで、第2の実施形態に係るアンテナ装置100-1を製造する工程について、
図8を参照して説明する。
図8は、第2の実施形態に係るアンテナ装置100-1を製造する工程の一例を示すフローチャートである。
図8を参照して説明するアンテナ装置100-1を製造する工程は、第2の実施形態に係るアンテナ装置100-1の製造方法一例に相当する。なお、第2の実施形態における、第1の実施形態と同じステップには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0070】
まず、第1の実施形態と同様に、ステップS1からステップS4の処理を実行する。
【0071】
ステップS5において、同軸ケーブル121の他端を第2のアンテナ部13に取り付ける。
【0072】
以上、説明したように、第2の実施形態に係るアンテナ装置100-1は、第2のアンテナ部13をさらに備え、接続部12-1の他端は、第2のアンテナ部13に接続されている。これにより、アンテナ装置100-1は、マンホール400内に配設された放射源である内部装置200との無線通信により電気信号を送受信することができる。
【0073】
<その他の変形例>
本実施形態では、構造物として、マンホール400を適用する場合を一例に挙げて説明したが、構造物は、マンホール400に限定されるものではなく、例えば、ハンドホール、シールドトンネル、汚泥貯留槽などであってもよい。
【0074】
本実施形態では、金属板が鉄蓋43の板面部431である例を説明したが、金属板は、鉄蓋43の板面部431に限定されるものではなく、例えば、扉等が形成している板面上の部材であってもよい。
【0075】
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0076】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
11 アンテナ部(第1のアンテナ部)
12、12-1 接続部
13 第2のアンテナ部
41 首部
42 筐体
43 鉄蓋
100、100-1 アンテナ装置
121 同軸ケーブル
121a 内部導体
121b 外部導体
122 導電板
200 内部装置
300 外部装置
400 マンホール
431、431-1、431-2 板面部
431-1A、431-2A 第1の領域
431-1B、431-2B 第2の領域
432、432a、432b、432c、432d 凸部