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特許7617095光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20250109BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/37
C08K5/06
C08K5/13
C08L71/00 A
C08G75/045
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022524239
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2020061165
(87)【国際公開番号】W WO2021102073
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】62/939,640
(32)【優先日】2019-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】杉江 敦司
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠
(72)【発明者】
【氏名】ユク、チュヨン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-320511(JP,A)
【文献】特開平05-156163(JP,A)
【文献】特表2019-507813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に炭素数6~12の少なくとも1つのアリール基及び炭素数2~12の少なくとも1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B)分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物1~50質量部と、
(C)チオール基含有有機化合物であって、
(C)分子中に2つのチオール基を有する有機化合物、及び
(C)分子中に少なくとも3つのチオール基を有する有機化合物
を含む、チオール基含有有機化合物4~9.7質量部と、
(D)光ラジカル開始剤0.05~2質量部と、
を含み、
成分(C)中の成分(C )の成分(C )に対するモル比が、0.45~2.8の範囲である、光硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(A)が平均組成式:
SiO(4-a-b)/2
(式中、Rが炭素数2~12のアルケニル基であり、Rが炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、但し、Rの少なくとも30mol%が前記アリール基又は前記アラルキル基であり、「a」及び「b」が1≦a+b≦2.5及び0.001≦a/(a+b)≦0.2を満たす正の数である)
によって表されるオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
成分(B)が、分子中に、少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する有機化合物である、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
成分(D)が、リン原子を有する光ラジカル開始剤である、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
成分(A)100質量部当たり0.001~1質量部の量の、(E)ヒンダードフェノール化合物を更に含む、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
成分(A)100質量部当たり0.0001~1質量部の量の、(F)成分(E)以外のラジカル捕捉剤を更に含む、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
成分(A)100質量部当たり10質量部以下の量の、(G)接着付与剤を更に含む、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することによって得られる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月24日に出願された米国仮特許出願第62/939,640号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、分子中に炭素数6~12の少なくとも1つのアリール基及び炭素数2~12の少なくとも1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物と、分子中に少なくとも2つのチオール基を有する化合物と、リン原子を有する光ラジカル開始剤と、ヒンダードフェノール化合物と、を含む、光硬化性シリコーン組成物を提案している。光硬化性シリコーン組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化して、高温/高湿度条件に放置された場合であっても、着色及びヘイズによる透過率の低下を抑制する硬化物を形成する。
【0004】
しかしながら、そのような光硬化性シリコーン組成物は、熱老化後、その硬化物が、硬化中に、亀裂する、又は組成物が接触する基板から剥離するという問題を有する。
【0005】
[引用文献]/[特許文献]
特許文献1:国際公開第2017/155919(A1)号
【発明の概要】
【0006】
[技術的な問題]
本発明の目的は、光デバイス又は画像表示における硬化物の亀裂及び剥離を抑制する光硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0007】
[問題の解決策]
本発明の光硬化性シリコーン組成物は、
(A)分子中に炭素数6~12の少なくとも1つのアリール基及び炭素数2~12の少なくとも1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B)分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物1~50質量部と、
(C)チオール基含有有機化合物であって、
(C)分子中に2つのチオール基を有する有機化合物、及び
(C)分子中に少なくとも3つのチオール基を有する有機化合物を含む、チオール基含有有機化合物4~40質量部と、
(D)光ラジカル開始剤0.05~2質量部と、を含む。
【0008】
様々な実施形態において、成分(A)は平均組成式:
SiO(4-a-b)/2
によって表されるオルガノポリシロキサンである。
【0009】
式中、Rは炭素数2~12のアルケニル基であり、Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、但し、Rの少なくとも30mol%はアリール基又はアラルキル基であり、「a」及び「b」は1≦a+b≦2.5及び0.001≦a/(a+b)≦0.2を満たす正の数である。
【0010】
様々な実施形態において、成分(B)は、分子中に、少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する有機化合物である。
【0011】
様々な実施形態において、成分(C)中の成分(C)の成分(C)に対するモル比は、0.45~2.8の範囲である。
【0012】
様々な実施形態において、成分(D)は、リン原子を有する光ラジカル開始剤である。
【0013】
様々な実施形態において、光硬化性シリコーン組成物は、成分(A)100質量部当たり0.001~1質量部の量の、(E)ヒンダードフェノール化合物を更に含む。
【0014】
様々な実施形態において、光硬化性シリコーン組成物は、成分(A)100質量部当たり0.0001~1質量部の量の、(F)成分(E)以外のラジカル捕捉剤を更に含む。
【0015】
様々な実施形態において、光硬化性シリコーン組成物は、成分(A)100質量部当たり10質量部以下の量の、(G)接着付与剤を更に含む。
【0016】
本発明の硬化物は、上記の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することにより得られる。
【0017】
[発明の効果]
本発明の光硬化性シリコーン組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化して、光硬化性シリコーン組成物を2つの基板間に積層して硬化させた場合であっても、熱老化後の亀裂及び剥離を抑制する、硬化物を形成する。
【0018】
本発明の硬化物は、優れた耐亀裂性及び接着性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0020】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0022】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠された任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、その中に整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、記述し、想定すると理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、そして各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
【0023】
<光硬化性シリコーン組成物>
成分(A)は、本組成物のベース化合物であり、分子中に炭素数6~12の少なくとも1つのアリール基及び炭素数2~12の少なくとも1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0024】
アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基が挙げられる。様々な実施形態において、経済性の観点からは、フェニル基が望ましい場合がある。
【0025】
アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。様々な実施形態において、経済性及び反応性の観点からは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基が望ましい場合がある。
【0026】
成分(A)中のアリール基及びアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基の例としては、炭素数1~12のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基;炭素数7~20のアラルキル基、例えばベンジル基、フェネチル基、及び3-フェニルプロピル基;炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、例えばクロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及びノナフルオロブチルエチル基が挙げられる。様々な実施形態において、経済性の観点からは、メチル基が望ましい場合がある。更に、成分(A)中のケイ素原子は、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などに結合してもよい。
【0027】
成分(A)は、好ましくは、平均組成式:
SiO(4-a-b)/2
によって表されるオルガノポリシロキサンである。
【0028】
式中、Rは、炭素数2~12のアルケニル基であり、その例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。それらの中でも、ビニル基及びヘキセニル基が好ましい。
【0029】
式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基が好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、及びビフェニル基が挙げられる。それらの中でも、フェニル基が好ましい。アラルキル基の例としては、フェニルメチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、及び2-フェニルプロピル基が挙げられる。それらの中でも、2-フェニルエチル基及び2-フェニルプロピル基が好ましい。成分(A)では、分子中においてRの少なくとも30mol%はアリール基又はアラルキル基である。
【0030】
更に、式中、「a」及び「b」は、1≦a+b≦2.5、好ましくは1.5≦a+b≦2.2、及び0.001≦a/(a+b)≦0.2、好ましくは0.005≦a/(a+b)≦0.1を満たす正の数である。
【0031】
25℃における成分(A)の状態は、限定されず、好ましくは液体である。成分(A)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは100~1000000mPa・sの範囲内である。
【0032】
成分(A)は、上記の平均組成式を満たす1種のオルガノポリシロキサンであってもよく、又は上記の平均組成式を満たす少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。そのような成分(A)の例としては、以下の「平均組成式:平均式」によって表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。なお、式中、「Me」、「Vi」、「Hex」、「Ph」、「Phe」、及び「Php」はそれぞれ、メチル基、ビニル基、ヘキセニル基、フェニル基、2-フェニルエチル基、及び2-フェニルプロピル基を示す。
Vi0.03Me1.03Ph0.97SiO0.99:ViMeSiO(MePhSiO)65SiMeVi
Vi0.10Me1.10Ph0.90SiO0.95:ViMeSiO(MePhSiO)18.4SiMeVi
Vi0.09Me1.06Ph0.91SiO0.97:PhSi{O(PhMeSiO)10SiMeVi}
Hex0.09Me1.07Ph0.89SiO0.98:Si{O(PhMeSiO)10SiMeHex}
Hex0.12Me1.12Ph0.88SiO0.94:HexMeSiO(PhMeSiO)15SiMeHex
Vi0.06Me1.38Phe0.63SiO0.97:ViMeSiO(PheMeSiO)20(MeSiO)10SiMeVi
Hex0.06Me1.38Php0.63SiO0.97:HexMeSiO(PhpMeSiO)20(MeSiO)10SiMeHex
【0033】
成分(B)は、本組成物の第2のベース化合物であり、分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物である。成分(B)における脂肪族炭素-炭素二重結合を有する基は限定されず、それらの例としてはアルケニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が挙げられる。それらの中でも、アクリロイル基又はメタクリロイル基が好ましい。更に、25℃における成分(B)の状態は、限定されず、好ましくは液体である。成分(B)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは1~10000mPa・sの範囲内である。
【0034】
そのような成分(B)の例としては、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシノナエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールジエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAトリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAトリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、プロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール/プロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
【0035】
成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部当たり、1~50質量部の範囲内、任意に5~40質量部の範囲内、任意に5~40質量部の範囲内、又は任意に10~40質量部の範囲内である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上であるとき、高温/高湿での硬化物の透過率の低下が小さくなるためである。一方、含有量が上記範囲の上限以下であるとき、高温での硬化物の硬度変化は小さく、着色は低減される。
【0036】
成分(C)は、本組成物の硬化剤であり、(C)分子中に2つのチオール基を有する有機化合物、及び(C)分子中に少なくとも3つのチオール基を有する有機化合物を含む、チオール基含有有機化合物である。
【0037】
成分(C)は、分子中に2つのチオール基を有する有機化合物である。成分(C)は、有機化合物が成分(A)及び/又は成分(B)に十分な溶解性を有する限り限定されない。そのような成分(C)の例としては、o-、m-、又はp-キシレンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-チオプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-チオプロピオネート)、及びメルカプト基で置換されたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0038】
成分(C)は、分子中に少なくとも3つのチオール基を有する有機化合物である。成分(C)は、有機化合物が成分(A)及び/又は成分(B)に十分な溶解性を有する限り限定されない。そのような成分(C)の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-チオプロピオネート)、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌル酸トリス(3-チオプロピオネート)、及びメルカプト基で置換されたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0039】
成分(C)中の成分(C)の成分(C)に対するモル比は、好ましくは0.45~2.8の範囲内、任意に0.5~2.8の範囲内、任意に0.6~2.8の範囲内、任意に0.5~2.6の範囲内、任意に0.5~2.5の範囲内、又は任意に0.6~2.4の範囲内である。これは、成分(C)中の成分(C)の成分(C)に対するモル比が上記範囲の下限以上であるとき、高温/高湿での硬化物の透過率の低下が小さくなるためである。一方、成分(C)中の成分(C)の成分(C)に対するモル比が上記範囲の上限以下であるとき、高温での硬化物の硬度変化は小さく、着色は低減される。
【0040】
そのような成分(C)の例としては、o-、m-、又はp-キシレンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、
ヘキサンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-チオプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-チオプロピオネート)、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌル酸トリス(3-チオプロピオネート)、及びメルカプト基で置換されたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0041】
成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部当たり、4~40質量部の範囲内、任意に5~30質量部の範囲内、又は任意に5~20質量部の範囲内である。成分(C)の含有量は、本成分によって提供されるチオール基の量が、本組成物の成分(A)及び(B)中の全脂肪族炭素-炭素二重結合1mol当たり、0.2~2.0molの範囲内、任意に0.3~1.6molの範囲内、又は任意に0.5~1.5molの範囲内である量である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲内であるとき、得られる硬化物の機械的強度が増大するためである。
【0042】
成分(D)は、本組成物の光硬化反応を開始するための成分である。成分(D)は限定されないが、好ましくはリン原子を含有する光ラジカル開始剤である。そのような成分(D)の例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:TPO、BASF製)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスホネート(商品名:TPO-L、BASF製)、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Irgacure 819、BASF製)が挙げられる。
【0043】
成分(D)の含有量は、成分(A)100質量部当たり、0.05~2質量部の範囲内、任意に0.05~1質量部の範囲内、又は任意に0.1~0.8質量部の範囲内である。これは、成分(D)の含有量が上記範囲内であるとき、硬化が効率的に進行して、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が形成されるためである。
【0044】
本組成物は、上記の成分(A)~成分(D)を含むが、本組成物の硬化物の耐熱性を高めるために、(E)ヒンダードフェノール化合物が含有させることが好ましい。そのような成分(E)の例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル}ホスホネート、3 3′,3′′,5,5′,5′′-ヘキサン-tert-ブチル-4-a,a′,a′′-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及びヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0045】
成分(E)の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.001~1質量部の範囲内、又は任意に0.003~0.5質量部の範囲内である。これは、成分(E)の含有量が上記範囲内であるとき、光硬化前の組成物の粘度変化が小さく、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が得られるためである。
【0046】
本組成物は、上記の成分(A)~成分(E)を含むが、本組成物の遮光状態での保存安定性を高めるために、(F)成分(E)以外のラジカル捕捉剤が含有させることが好ましい。そのような成分(F)の例としては、ヒンダードアミン、例えばN,N′,N′′,N′′′-テトラキス(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、及び8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン;キノン又はフェノール類、例えばメチルハイドロキノン、1,4-ナフトキノン、4-メトキシナフトール、tert-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、ピロガロール、及びフェノチアジンが挙げられる。
【0047】
成分(F)の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.0001~1質量部の範囲内、任意に0.0001~0.1質量部の範囲内、又は任意に0.0001~0.05質量部の範囲内である。これは、成分(F)の含有量が上記範囲内であるとき、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が得られるためである。
【0048】
本組成物は、本発明の目的が損なわれない限り、任意成分として(G)接着付与剤を更に含有し得る。
【0049】
成分(G)の例としては、シラン化合物、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;ケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合水素原子のうちの少なくとも1つ、及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を分子中に有するシロキサン化合物;少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物と、
分子中に少なくとも1つのケイ素原子結合ヒドロキシ基と、少なくとも1つのケイ素原子結合アルケニル基を有するシロキサン化合物との混合物;メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、及びエポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられる。粘着付与剤の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.01~10質量部の範囲内である。
【0050】
本組成物は、本発明の目的が損なわれない限り、任意成分として、上記の成分(D)以外の(H)UV吸収剤を更に含有し得る。
【0051】
そのような成分(H)の例としては、置換及び非置換ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、並びにヒドロキシフェニルトリアジンが挙げられる。例えば、好適なUV吸収剤としては、様々なヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)、及びヒドロキシベンゾトリアゾールが挙げられる。好ましいUV吸収剤としては、TINUVIN(登録商標)384-2(液体ヒドロキシベンゾトリアゾール紫外線吸収化合物)、TINUVIN(登録商標)479(ヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収化合物)及びTINUVIN(登録商標)400(液体ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)紫外線吸収化合物)を含む、BASF(Florham Park,New Jersey)により商品名TINUVIN(登録商標)で市販されている化合物が挙げられる。利用され得る他の好適なUV吸収剤は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2006/0007519(A1)号に開示されている。
【0052】
成分(H)の含有量は、限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは2質量部以下、又は任意に1質量部以下である。
【0053】
本組成物は、上記の成分(A)及び(B)以外に、任意成分として、分子中に少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物;無機充填剤、例えばシリカ、酸化チタン、ガラス、アルミナ、又は酸化亜鉛;ポリメタクリレート樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂微粉末;並びに、本発明の目的が損なわれない限りにおいて、顔料又は蛍光物質を更に含有し得る。
【0054】
そのような有機化合物の例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフランアクリレート、ベンジルアクリレート、o-フェニルフェノールエトキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、2-プロペン酸オクタヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-5-イルエステル、デシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、アリルメタクリレート、ジビニルスルホン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0055】
本組成物の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは100~100000mPa・sの範囲内、又は任意に500~10000mPa・sの範囲内である。これは、本組成物の粘度が上記範囲の下限以上であるとき、機械的強度の高い硬化物が得られるためである。一方、粘度が上記範囲の上限以下であるとき、得られる組成物の被覆性/作業性が優れたものとなり、硬化物においてボイドの形成が回避される。
【0056】
本組成物は、様々なポッティング剤、シーリング剤、及び接着剤として有用である。その硬化物は、高温において又は高温/高湿条件において着色が少なく、ヘイズが生じにくいため、本組成物は、画像表示デバイスの画像表示部と保護部との間において中間層を形成するための材料として好適である。
【0057】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することにより得られる。本組成物を硬化させるために使用される光の例としては、紫外線及び可視光が挙げられるが、250~500nmの範囲の波長を有する光が好ましい。これは、優れた硬化性が得られ、硬化物が光により分解されないためである。
【0058】
硬化物は、典型的には、光学的に透明である。これは、硬化物を、好ましくは光デバイス又は画像表示に使用する場合、光学的な透明性が高性能にとって望ましいためである。硬化物の形態は限定されず、シート、フィルム、又はブロックの形態であることができる。硬化物は様々な基板と組み合わせることができる。硬化物は、典型的には、同じ基板又は異なる基板間、特に光デバイス内の同じ基板又は異なる基板間で積層される。
【0059】
硬化物の状態は限定されないが、好ましくはエラストマー又はゲルである。硬化物の硬度は、ショアOO硬度において、好ましくは0~80の範囲内、又は任意に10~70の範囲内である。一方、硬化物の針入度は、好ましくは0~100の範囲内、又は任意に10~70の範囲内である。これは、硬化物が上記の範囲内である場合、変形に対する良好な凝集力及び材料破砕に対する良好な可撓性が得られるためである。なお、本明細書において、ショアOO硬度は、ASTM D 2240に従ってOO硬度を用いて23±2℃において測定した値である。一方、針入度は、JIS K 2220に準拠した1/4コーンで規定された針入度を用いて測定される値である。
【0060】
硬化物は、光デバイス又は画像表示における積層体として有用である。光デバイスは、例えば、光半導体デバイスである。光半導体デバイスの例としては、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、及びCCDが挙げられる。更に、光半導体素子として、発光ダイオード(LED)素子及び固体画像センサが示される。特に、多数の小LED素子が基板上に配置された構造を有するいわゆるマイクロLED(ミニLED)を集合的にシーリングする場合であっても、本発明の光硬化性シリコーン組成物を好適に使用することができる。このとき、硬化物の屈折率は、アリール基の含有量などの官能基の種類を選択することによって、必要に応じて調整され得る。更に、本発明の光硬化性シリコーン組成物は耐熱性及び耐湿性に優れているため、透明性が低下し難く、濁りがほとんど引き起こされない。したがって、マイクロLEDを含む光半導体デバイスの光取り出し効率を良好に維持することができるという利点がある。
【実施例
【0061】
本発明の光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物を、実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。なお、式中、「Me」、「Ph」、「Vi」はそれぞれ、メチル基、フェニル基、及びビニル基を示す。光硬化性シリコーン組成物の硬化物の特性を以下のように測定した。
【0062】
<硬化物の外観>
光硬化性シリコーン組成物を、所定形状の凹部を有する成形型に充填し、累積放射線(cumulative radiation)が4000mJ/cmとなるように405nmのUV-LEDランプを用いて上部の液面から紫外線で照射した。硬化物の外観を、目視検査によって観察した。
【0063】
<硬化物の針入度>
光硬化性シリコーン組成物を、所定形状の凹部を有する成形型に充填し、累積放射線が4000mJ/cmとなるように405nmのUV-LEDランプを用いて上部の液面から紫外線で照射した。硬化物の針入度を、JIS K 2220に準拠した1/4コーンで規定された針入度を用いて測定した。
【0064】
<硬化物の重ね剪断伸長及び強度>
光硬化性シリコーン組成物を、長さ25mm×幅75mm×厚さ2mmの2つのガラス基板の間に注ぎ、長さ25mm×幅25mm×厚さ0.2mmの接着面積を作製し、累積放射線が4000mJ/cmとなるように405nmのUV-LEDランプを用いて上部のガラス表面から紫外線で照射した。硬化物の重ね剪断強度を、JIS K 6850に準拠して測定した。同時に、重ね剪断伸長を、破断点での変形量に対する硬化物の厚さのパーセントで表した。
【0065】
<熱老化試験後の積層パネルの外観>
光硬化性シリコーン組成物を、長さ165mm×幅105mm×厚さ2mmのガラス基板と、長さ210mm×幅160mm×厚さ1mmのPMMAコーティングPC基板との間に充填し、長さ165mm×幅85mm×厚さ0.13mmの硬化物を作製した。積層体を、累積放射線が4000mJ/cmとなるように405nmのUV-LEDランプを用いて上部のガラス表面から紫外線で照射した。硬化積層体を90℃で24時間熱老化させ、その外観を目視で確認した。
【0066】
<実施例1~5及び比較例1~8>
表1~5に示す組成(質量部)に従って以下の成分を均一に混合して、実施例1~5及び比較例1~8の光硬化性シリコーン組成物を調製した。式中、「Me」、「Vi」、「Ph」、及び「Ep」は、それぞれ、メチル基、ビニル基、フェニル基、及び3-グリシドキシプロピル基を表す。表1において、「(c1)/(c2)」は、光硬化性シリコーン組成物中の成分(c2)1モルに対する成分(c1)のモル数を表す。更に、表1において、「SH/C=C」は、光硬化性シリコーン組成物中の成分(A)及び(B)中の脂肪族飽和炭素-炭素二重結合1モル当りの成分(C)中のチオール基のモル数を表す。光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を表1に示す。
【0067】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(A)として使用した。
(a1)2000mPa・sの粘度を有し、以下の平均式:
ViMeSiO(MePhSiO)18.4SiMeVi
(平均組成式:Vi0.10Me1.10Ph0.90SiO0.95)で表されるオルガノポリシロキサン。
【0068】
(a2)40000mPa・sの粘度を有し、以下の平均式:
ViMeSiO(MePhSiO)65SiMeVi
(平均組成式:Vi0.03Me1.03Ph0.97SiO0.99)で表されるオルガノポリシロキサン。
【0069】
以下の有機化合物を成分(B)として使用した。
(b1):150mPa・sの粘度を有するノニルフェノキシオクタエチレングリコールアクリレート
(b2):100mPa・sの粘度を有するトリデカエチレングリコールジアクリレート
【0070】
以下の化合物を成分(C)として使用した。
(c1):1,4-ビス(3-チオブチリルオキシ)ブタン
(c2):ペンタエリスリトールテトラキス(3-チオブチレート)
【0071】
以下の光ラジカル開始剤を成分(D)として使用した。
(d1):ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
【0072】
以下のヒンダードフェノール化合物を成分(E)として使用した。
(e1):2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
【0073】
以下のラジカル捕捉剤を成分(F)として使用した。
(f1):アルミニウム-N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン
【0074】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(G)として使用した。
(g1)以下の平均単位式:
(MeViSiO1/20.18(MeEpSiO2/20.28(PhSiO3/20.54で表されるオルガノポリシロキサン。
【0075】
以下の有機化合物を成分(H)として使用した。
(h1):Tinuvin384-2、BASFによって製造されたヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール分類の液体UV吸収剤
【表1】
【表2】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本組成物は、紫外線及び可視光などの高エネルギー線を照射することで容易に硬化し、透明な硬化物を提供し、光デバイス又は画像表示における硬化物の亀裂及び剥離を抑制する。したがって、本組成物は、様々なポッティング剤、シーリング剤、及び接着剤として有用である。