(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】金属前処理用途のためのビスマス組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 22/50 20060101AFI20250109BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20250109BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250109BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250109BHJP
C23C 22/34 20060101ALI20250109BHJP
C23C 22/53 20060101ALI20250109BHJP
C23C 22/56 20060101ALI20250109BHJP
C09D 5/08 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C23C22/50
C09D1/00
C09D7/61
C09D7/63
C23C22/34
C23C22/53
C23C22/56
C09D5/08
(21)【出願番号】P 2022548913
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2021017851
(87)【国際公開番号】W WO2021163476
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ヴォンク、 ドナルド ロブ
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン、 ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン、 ジョン エル.
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-149570(JP,A)
【文献】特開昭63-161176(JP,A)
【文献】特表2003-528218(JP,A)
【文献】特表2009-518538(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095231(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038430(WO,A1)
【文献】米国特許第02323424(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
101/00 - 201/10
C23C 22/00 - 22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)
ビスマス化合物、
B) A)を可溶化又は分散させるのに十分な量で存在する少なくとも1つの水溶性
有機酸及びその塩、
C) 溶解銅イオン、
D)一般式H
2
XF
6
の複合フルオロ酸(式中、XはTi、Zr、Hf及びSiから成る群から選択される)
を含み、
2.0~6の範囲のpHを有する、酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項2】
前記1つ又は複数の水溶性有機酸及びその塩が、脂肪族又は芳香族;直鎖状、分枝状又は環状;飽和又は不飽和のC3~C12有機酸及びその塩から選択される、請求項
1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項3】
前記1つ又は複数の水溶性有機酸及びその塩が、少なくとも1つの有機ポリカルボン酸及びその塩を含む、請求項
1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの有機ポリカルボン酸及びその塩が、置換及び/又は非置換アルファ,オメガ-ジカルボン酸を含む、請求項
3に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項5】
前記置換及び/又は非置換アルファ,オメガ-ジカルボン酸及びその塩が、1つ又は複数の置換及び/又は非置換プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸及びそれらの塩を含む、請求項
4に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項6】
前記1つ又は複数の水溶性有機カルボン酸及びその塩が、酒石酸及びその塩を含む、請求項
1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項7】
1重量%未満のリン含有酸及び/又はその塩、並びに1重量%未満のニッケルを含む、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項8】
遊離フッ化物、硝酸塩、及びSiベースの物質の供給源から成る群から選択される1つ又は複数の追加成分を含む、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項9】
前記酸性水性ビスマス化成コーティング組成物が、少なくとも1つのpH調整剤を含み、2.5~5.0のpHを有する、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項10】
前記
ビスマス化合物が、5~10,000ppmの総濃度で存在する、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項11】
前記
ビスマス化合物が、ビスマスの硝酸塩、酸化物及び水酸化物のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項12】
前記
ビスマス化合物が、硝酸ビスマス、硝酸ビスマス五水和物、亜硝酸ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの
水溶性有機酸及びその塩が、50~100,000ppmの総濃度で存在する、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【請求項14】
使用後に請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物を補充するための、ビスマス、銅、硝酸、及び任意で硝酸イオンを含む貯蔵安定組成物を含む補充剤組成物。
【請求項15】
a) 基板の金属表面を、前記金属表面の少なくとも一部上にビスマス化成コーティング層を形成するのに十分な時間、請求項1に記載の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物と接触させる工程と、
b) 前記ビスマス化成コーティング層を、水を含むリンス液ですすぐ工程と、
を含む、金属表面を有する基板上にビスマス化成コーティングを堆積させる方法。
【請求項16】
ビスマス化成コーティング層を有する金属表面の少なくとも一部を、塗装前に後処理及び/又はシーリングリンスに供する工程c)をさらに含む、請求項
15に記載のビスマス化成コーティングを堆積させる方法。
【請求項17】
ビスマス化成コーティング層を有する金属表面の少なくとも一部を、陰極堆積可能な電気泳動ディップコーティングで塗装する工程を含み、すすぎ工程b)の後、陰極堆積可能な電気泳動ディップコーティングでコーティングされる前に、前記金属表面が乾燥されない、請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項18】
A)
ビスマス化合物、
B) A)を可溶化又は分散させるのに十分な量で存在する
一般式H
2
XF
6
の複合フルオロ酸
(式中、XはTi、Zr、Hf及びSiから成る群から選択される)、
C) 溶解銅イオン、及び
組成物に2.0~6.0の範囲のpHを提供するのに十分な量で存在する、酸、塩基、又は緩衝酸/塩基の組合せの形態の少なくとも1つのpH調整剤、
を含む、酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス組成物、例えば、金属前処理用途のための化成コーティング組成物、例えば、耐食性及び/又は塗料接着性を改善するための金属表面への堆積、前記組成物を作製する方法、金属基板をコーティングする方法、及び組成物でコーティングされた金属表面を有する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの消費財及び工業製品は、金属基板から形成されており、これらの要素にさらされている。そのため、これらの金属製品は腐食性の環境にさらされる。したがって、それらはしばしば防食コーティング及び塗料を含む保護コーティングでコーティングされている。多くのこうした防食コーティングは、化成コーティングとして知られており、当技術分野では、金属表面を反応性コーティング組成物と接触させ、それによってその上に化成コーティングを形成することによって形成されるコーティングであると理解されている。これらの化成コーティングは、金属の耐食性を向上させるが、化成コーティングのさらなる改善が、自動車及び白物製品の用途に対する継続的な市場要件である。
【0003】
金属基板上に化成コーティング層を塗布するための典型的なプロセスは、化成コーティングの洗浄、すすぎ、堆積、並びに任意の後すすぎ及び/又はシーリングの工程を包含する。次に、化成コーティング層で少なくとも部分的にコーティングされた金属基板は、ほとんどの場合、塗装工程(例えば、Eコーティングとしても知られる電気泳動コーティングによる)にかけられる。
【0004】
従来のトリカチオン性リン酸亜鉛化成コーティングシステムは、優れた耐食性及び塗料接着性を提供するが、望ましくない重金属を含有し、重金属リン酸塩スラッジの沈殿によって環境に有害な廃棄物を生成する。これらのスラッジは、リン酸亜鉛浴からのオーバーフローと同様に、高濃度のリン酸イオンを含有し、どちらも天然水供給の富栄養化に寄与し得る。リン酸亜鉛浴も高温で操作されるため、エネルギー使用量を増やす必要がある。したがって、同等の耐食性及び塗料接着性を達成しながら、リン酸亜鉛プロセスの不利な点を低減又は回避することが望ましいであろう。ジルコニウムベースの化成コーティングが、トリカチオン性リン酸亜鉛の代替品として提案されているが、一部の用途では、これらの化成コーティングは、業界の要件、特に自動車業界の要件を満たしていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、代わりの化成コーティング及び方法の開発が非常に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属基板上にビスマス化成コーティングを堆積させるビスマス化成コーティング組成物が開発された。水性ビスマス化成コーティング組成物で前処理され、続いて塗料、特にEコート塗料が塗布された金属基板は、トリカチオン性リン酸亜鉛対照と比較して、同等の耐食性及び塗料接着性に改善された。
【0007】
ビスマス化成コーティング組成物は、金属基板を水溶液に浸す(dipping)(浸漬する(immersion))か、又は金属基板に溶液を噴霧することによって、基板の金属表面に塗布されてよい。あるいは、コーティング組成物は、ロールコーティング又は他の既知の化成コーティング堆積法によって塗布することができる。
【0008】
ビスマス化成コーティング組成物の好ましい実施形態は、従来のトリカチオン性リン酸亜鉛組成物に匹敵する耐食性及び塗料付着性を備えたビスマス化成コーティングを提供し、以下に起因する環境への影響の低減を改善する:重金属、例えば、Zn、Ni及びMnが存在しない;リンが存在しない;作動温度が下がる。
【0009】
ビスマス化成コーティング組成物のいくつかの用途としては、金属基板表面、例えば、鉄、亜鉛含有、アルミニウム含有の表面及びそれらの組み合わせのコーティングが挙げられ、これらは後で塗装され、塗料接着性と耐食性が必要である。適切な塗布には、自動車OEM(ボディインホワイト)、自動車部品などの輸送;エネルギー産業、例えば、風力及び太陽光設備;農業及び建設機械;RV車;建築;家電製品などの家庭用品;事務用家具;金属コイル;金属製の容器などが挙げられてよい。
【0010】
本発明の一態様(「態様1」)によれば、
A) 溶解及び/又は分散ビスマス、
B) A)を可溶化又は分散させるのに十分な量で存在する少なくとも1つの水溶性有機キレート剤、
C) 溶解銅イオン、
を含む酸性水性ビスマス化成コーティング組成物を含む、それらから本質的に成る、又はそれらから成り、約2.0~約6の範囲のpHを有する化成コーティング組成物が提供される。
【0011】
態様2:A)が、少なくとも1つの溶解Bi(III)並びに溶解及び/又は分散ビスマス化合物を含み、;B)が、1つ又は複数の水溶性有機酸及びその塩を含む、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0012】
態様3:1つ又は複数の水溶性有機酸及びその塩が、脂肪族又は芳香族;直鎖状、分岐状又は環状;飽和又は不飽和C3-C12有機酸及びその塩から選択される、態様2に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0013】
態様4:1つ又は複数の水溶性有機酸及びその塩が、少なくとも1つの有機ポリカルボン酸及びその塩を含む、態様2に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0014】
態様5:少なくとも1つの有機ポリカルボン酸及びその塩が、置換及び/又は非置換アルファ,オメガ-ジカルボン酸を含む、態様4に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0015】
態様6:置換及び/又は非置換アルファ,オメガ-ジカルボン酸及びその塩が、1つ又は複数の置換及び/又は非置換プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸及びそれらの塩を含む、態様5に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0016】
態様7:1つ又は複数の水溶性有機カルボン酸及びその塩が、酒石酸及びその塩を含む、態様2に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0017】
態様8:1重量%未満のリン含有酸及び/又はその塩並びに1重量%未満のニッケルを含む、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0018】
態様9:遊離フッ化物、硝酸塩、及びSiベースの物質の供給源から成る群から選択される1つ又は複数の追加成分を含む、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0019】
態様10:酸性水性ビスマス化成コーティング組成物が、少なくとも1つのpH調整剤を含み、約2.5~約5.0のpHを有する、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0020】
態様11:溶解及び/又は分散ビスマスが、約5~10,000ppmの総濃度で存在する、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0021】
態様12:溶解及び/又は分散ビスマスが、ビスマスの硝酸塩、酸化物及び水酸化物のうちの1つ又は複数を含む、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0022】
態様13:溶解及び/又は分散ビスマスが、硝酸ビスマス、硝酸ビスマス五水和物、次硝酸ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス及びそれらの組合せから選択される、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0023】
態様14:少なくとも1つの水溶性有機キレート剤が、約50~100,000ppmの総濃度で存在する、態様1に記載される酸性水性ビスマス化成コーティング組成物。
【0024】
態様15:ビスマス、銅、硝酸、及び任意で硝酸塩を含む貯蔵安定組成物を含む、使用後に上記の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物を補充するための補充剤組成物を含む、それから本質的に成る、又はそれから成る、本発明の別の態様。
【0025】
態様16:a) 好ましくは鉄金属、亜鉛含有金属及びアルミニウム含有金属から選択される基板の金属表面を、金属表面の少なくとも一部上にビスマス化成コーティング層を形成するのに十分な時間、上記の酸性水性ビスマス化成コーティング組成物と接触させる工程、並びに
b) 水を含むリンス液でビスマス化成コーティング層をすすぐ工程、
を含む、金属表面を有する基板上にビスマス化成コーティングを堆積する方法を含む、それから本質的に成る、又はそれから成る、本発明の別の態様。
【0026】
態様17:工程c)ビスマス化成コーティング層を有する金属表面の少なくとも一部を陰極堆積可能な電気泳動ディップコーティングでコーティングすることをさらに含み、すすぎ工程b)の後、陰極堆積可能な電気泳動ディップコーティングでコーティングされる前に、金属表面が乾燥しない、態様16のビスマス化成コーティングを堆積する方法。
【0027】
態様18:その上に堆積されたビスマス化成コーティング層を含む金属表面を有する基板を含む、それから本質的に成る、又はそれから成り、ビスマス化成コーティング層が、酸化ビスマス及び/又は水酸化ビスマスを含み、さらに、元素Cu、Cu(I)及びCu(II)のうちの少なくとも1つを含む、本発明の別の態様。
【0028】
態様19:本発明のさらに別の態様によれば、以下を含む酸性水性ビスマス化成コーティング組成物を含む、それから本質的に成る、又はそれから成る化成コーティング組成物が提供される。
A) 溶解及び/又は分散ビスマス;
B) A)を可溶化又は分散させるのに十分な量で存在する複合フルオロ酸、好ましくはフルオロケイ酸;
C) 溶解銅イオン;並びに
組成物に約2.0~6.0の範囲のpHを提供するのに十分な量で存在する、酸、塩基、又は緩衝酸/塩基の組み合わせの形態の少なくとも1つのpH調整剤。
【0029】
特に否定されない限り、前述の態様の任意の組み合わせ又はサブ組み合わせは、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0030】
様々な理由から、本発明による水性ビスマス化成コーティング組成物は、上記で定義されるように、従来技術の同様の目的のための組成物に使用される多くの成分を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、以下に列挙される好ましくは最小化された成分ごとに独立して、本発明による水性組成物が、本発明によるプロセスにおいて金属と直接接触した場合、1.0、0.5、0.35、0.10、0.08、0.04、0.02、0.01、0.001、又は0.0002%以下、より好ましくは、1リットル当たりのグラムでの前記数値、最も好ましくはppm単位の数値の以下の各成分を含有することがますます好ましい:亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、シアン化物、亜硝酸イオン、有機界面活性剤、ホルムアルデヒド、ホルムアミド、尿素、ヒドロキシルアミン、アンモニア、第三級アミン、環状アミン、例えばヘキサメチレンテトラアミン;ケイ酸塩、シロキサン、オルガノシロキサン、シラン;ランタニド系金属、希土類金属;リン含有酸及び/又はその塩;硫黄、例えば硫酸塩、スルホン酸;過マンガン酸塩;過塩素酸塩;ホウ素、例えばホウ砂、ホウ酸塩;ストロンチウム;及び/又は遊離塩化物。
【0031】
また、以下に列挙される好ましくは最小化された成分ごとに独立して、本発明による堆積されたままのビスマス化成コーティング及び堆積されたままの後処理が、1.0、0.5、0.35、0.10、0.08、0.04、0.02、0.01、0.001、又は0.0002%以下、より好ましくは千分の1(ppt)での前記数値の以下の各成分を含有することがますます好ましい:クロム、シアン化物、亜硝酸イオン、有機界面活性剤、ホルムアルデヒド、ホルムアミド、尿素、ヒドロキシルアミン、アンモニア、ヘキサメチレンテトラアミン;ケイ酸塩、シロキサン、オルガノシロキサン、シラン;希土類金属;リン含有酸及び/又はその塩;硫黄、例えば硫酸塩、スルホン酸;過マンガン酸塩;過塩素酸塩;ホウ素、例えばホウ砂、ホウ酸塩;ストロンチウム;及び/又は塩化物。
【0032】
いくつかの材料は、例えば、前のプロセスステップからのドラッグイン、基板からの溶出、対イオン又は汚染物質としての含有に起因するビスマス化成コーティング作業浴中に存在する可能性がある。存在する可能性があり、望ましくは最小化される、浴に意図的に添加されていない材料の非限定例としては、洗浄剤ドラッグイン(cleaner drag-in)からのリン酸塩及びケイ酸;水質汚染から存在する可能性がある遊離のClイオン、基板から溶出するFe、Zn、及びAlイオンが挙げられる。存在する可能性がある対イオンとしては、アンモニア又はアンモニウムイオン、アルカリ金属(NH4
+、Na+、K+)、硫酸塩などが挙げられる。
【0033】
用語「塗料」は、特に明記されていない限り、又は文脈によって必然的に暗示されている場合を除き、ラッカー、エナメル、ワニス、シェラック、トップコート等のより専門的な用語で指定される可能性のあるすべての同様の材料が包含される。「金属」又は「金属の」という単純な用語は、それが物品であろうと表面であろうと、金属元素の原子、例えば、鉄、亜鉛等から構成される材料を意味すると当業者に理解されるであろう。少なくとも、55、65、75、85又は90原子%の順序で優先度が高くなる量で存在する金属元素の合計。単純な用語「鉄」には、純鉄及びその合金(鋼など)が包含され、同様に、「亜鉛含有(zinciferous)」及び「アルミニウム含有(aluminiferous)」には、純金属並びにそれらのそれぞれの合金が包含される。
【0034】
操作例、又は他に示された場合を除いて、本明細書で使用される成分の量、反応条件、又は成分パラメータを定義するすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって変更されると理解されるべきである。説明全体を通して、特に断りのない限り、パーセント、「部」、及び比率の値は重量又は質量によるものであり;本発明に関連する所与の目的に適した又は好ましいものとしての材料のグループ又はクラスの説明は、グループ又はクラスのメンバーの任意の2つ以上の混合物が等しく適切又は好ましいことを意味し;化学用語での構成要素の説明は、説明で指定された任意の組み合わせへの追加時、又は1つ又は複数の新しく追加された構成要素と他の構成要素が追加されたとき組成物中に既存の1つ又は複数の構成要素との間の化学反応による組成物内でのその場での生成時の構成要素を指し;イオン形態での構成要素の仕様は、組成物全体及び組成物に添加される任意の物質の電気的中性を生成するのに十分な対イオンの存在をさらに意味し;このように明示的に指定された対イオンは、好ましくは、イオン形態で明示的に指定された他の構成要素の中から可能な限り選択され;そうでなければ、そのような対イオンは、本発明の目的に不利に作用する対イオンを避けることを除いて、自由に選択することができ;分子量(MW)は重量平均分子量であり;「モル」という単語は「グラムモル」を意味し、単語自体とその文法上のバリエーションのすべては、種がイオン性、中性、不安定、仮定又は明確に定義された分子で実際に安定した中性物質であるかどうかに関係なく、そこに存在する原子のすべての種類と数によって定義される化学種に使用してよく;「保存安定性」という用語は、材料が機械的に乱されない少なくとも100時間、又は好ましくは少なくとも1000時間の観察期間にわたって視覚的に検出可能な相分離の傾向を示さない溶液及び分散液を含むと理解されるべきであり、材料の温度は周囲室温(18~25℃)に維持される。
【0035】
有機材料は、水素が結合した少なくとも1つの炭素原子で構成される分子を表すと理解される。炭素は鎖状又は環状構造を形成してよく、任意で、結合した追加の原子及び官能基(例えば、酸素、ケイ素、リン及び窒素)を含有してよい。
【0036】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、好ましい実施形態の詳細な説明から当業者にはより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、金属基材表面をコーティングするのに有用なビスマス化成コーティング組成物を提供する。水性酸性ビスマス化成コーティング組成物は、以下の混合物を含む、又は場合によっては、以下の混合物から本質的に成る、又は場合によっては、以下の混合物から成る:
A)望ましくはBi(III)イオンを含む、溶解及び/又は分散ビスマス、任意で溶解及び/又は分散ビスマス化合物;
B)望ましくは、溶解及び/又は分散ビスマスをキレート化することができ、好ましくはその溶解度を増加させることができる1つ又は複数の水溶性有機酸を含み、約2.0~約6の範囲のpHを有してよい、少なくとも1つの水溶性有機キレート剤;
C)銅(II)イオン;
D)望ましくは遊離フッ化物源、例えば、HFなどのフッ化物含有化合物及び/又は遊離フッ化物イオンのリザーバーを提供し得る複合フルオロ酸を含む、少なくとも1つの金属エッチャント。遊離及び複合フッ化物イオンは、金属基板表面のエッチングを増加させるように作用する;
E)pHを2~6、2.5~5、2.75~4.5、3~4の範囲に調整するのに有用な、酸、塩基、又は緩衝酸/塩基の組合せの形態の少なくとも1つのpH調整剤;
以下を含むビスマス化成コーティング組成物の任意成分:
F)硝酸イオン;
G)IVB族金属:Zr、Ti、Hf;
H)少なくとも1つの促進剤;及び
I)少なくとも1つの水溶性及び/又は水分散性高分子化合物。
【0038】
水性混合物は、溶液又は分散液、好ましくは貯蔵安定溶液又は分散液の形態であってよい。本明細書で使用される場合、「分散」という用語は、混合物の成分のいずれも水性媒体に溶解されない混合物、並びに混合物の1つ又は複数の成分の一部が水性媒体に溶解される混合物を包含する。
【0039】
成分A)、溶解及び/又は分散したビスマスは、望ましくは溶解したBi(III)を含むが、溶解ビスマス金属、溶解及び/又は分散ビスマス化合物から供給されてもよく、もしくは、望ましくは、ビスマスの酸化状態をBi(III)に下げるのに有用な還元剤を用いて、Bi(V)から供給されてもよい。ビスマスのいくつかの供給源は、水に比較的不溶性である場合があり、最初に酸に溶解するか、化成コーティング組成物のpHを調整することにより、本発明において有用であり得る。ビスマス源の例示的で非限定的な例は、硝酸ビスマスBi(NO3)3;硝酸ビスマス五水和物Bi(NO3)3・5H2O;次硝酸ビスマスBi5O(OH)9(NO3)4;酸化ビスマスBi2O3;水酸化ビスマスBi(OH)3;アルミン酸ビスマスBi2(Al2O4)3;クエン酸ビスマスアンモニウムC12H22BiN3O14;クエン酸ビスマスBiC6H5O7(1:1);亜クエン酸ビスマスC12H8BiK5O14;酒石酸ビスマスナトリウム(C4H4O6)2BiNa;トリグリコラミン酸ビスマスナトリウムC24H28BiN4Na7O25、ニトリロ三酢酸ビスマス錯体ナトリウム塩;亜酢酸ビスマスCH3COOBiO;亜炭酸ビスマス(塩基性炭酸ビスマス)(BiO)2CO3;炭酸ビスマスBi2(CO3)3;フッ化ビスマスBiF3;モリブデン酸ビスマスBi2(MoO4)3;次サリチル酸ビスマスHOC6H4COOBiO(1:1又は3:1);硫酸ビスマスBi2(SO4)3;ケイ酸ビスマスBi4Si3O12、複合ケイ酸塩;水酸化ビスマスBi(OH)3;タングステン酸ビスマスBi2(WO4)3;バナジン酸ビスマスBiVO4のようなビスマス化合物を含む。好ましいビスマス源の例示的で非限定的な例は、Bi化合物酸化ビスマス、硫酸ビスマス、硝酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、及び同様に少なくとも部分的に水溶性及び/又は酸可溶性のビスマス材料を含む。
【0040】
例えば、リン酸ビスマス(V)、Bi3(PO4)5;オルトリン酸ビスマス(III)、BiPO4;臭化ビスマス、BiBr3、BiOBr;オキシ臭化ビスマス、BiOBrのようなビスマスハロゲン;五フッ化ビスマス、BiF5;三水素化ビスマス、BiH3;塩化ビスマス、BiCl3;オキシ塩化ビスマス、BiOCl;ヨウ化ビスマス、Bii3;オキシヨウ化ビスマス、BiOI;同様に不溶性のビスマス酸ナトリウム、NaBiO3;シュウ酸ビスマス、Bi(C2O4)3;オレイン酸ビスマス、[CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COO]3Bi;同様に酸に溶解するとH2Sガスを放出し得るビスマスブチルチオラウレート、CH39(CH2)9CH(SC4H9)COOBi(OH)2及び硫化ビスマスBi2S3などのガス発生剤である他のBi源を使用することもできるが、それらの対イオン、環境への影響、及び/又は安全上の理由から望ましくない傾向がある。
【0041】
本明細書に開示されているように、金属基材上に化成コーティングとして付着可能なBi(III)を提供し、本発明の目的及び利益に悪影響を及ぼさない作業浴中のBi(III)の任意の無機又は有機源を使用してよい。2つ以上の異なるビスマス化合物の組み合わせを使用してよい。
【0042】
本発明において有用なビスマス化成コーティング組成物は、例えば、約5~10,000ppm、15~5000ppm、25~4000ppm、50~3000ppm、75~2000ppm、90~1500ppm、100~1000ppm、200~750ppm又は250~600ppmの成分A)溶解及び/又は分散ビスマスの濃度を有してよい。本発明の有利な実施形態によれば、ビスマス(III)の供給源として好ましいビスマス化合物は水溶性である。例えば、ビスマス化合物は、25℃で少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の水への溶解度を有してよい。しかしながら、他の実施形態では、ビスマス化合物は水に分散可能であり、好ましくは貯蔵安定性分散物を提供し、ビスマス化成コーティング組成物及び/又は成分B)と組み合わせた浴中にビスマス(III)イオンを提供する。
【0043】
成分B)、少なくとも1つの水溶性有機キレート剤は、好ましくは、溶解及び/又は分散ビスマスをキレート化することができる1つ又は複数の水溶性有機酸及び/又はその塩、好ましくは置換及び/又は非置換有機カルボン酸を含む。1つの実施形態では、成分B)は、水溶性C3-C12、好ましくはC4-C9有機酸及び/又はその塩を含む。(メタ)アクリルモノマー酸及びその塩は、浴中で重合する傾向があるため避けるのが好ましい。有機酸は脂肪族又は芳香族であってよく;直鎖状、分岐状又は環状であってよく;飽和又は不飽和であってよく、1つ又は複数の窒素含有官能基を包含してよい。水溶性有機酸は、モノカルボン酸であってよいが、ジ、トリ、テトラカルボン酸(有機ポリカルボン酸)又は本発明の目的を妨げない限りそれ以上のカルボキシル基を有するものが望ましい。複数のカルボキシル基を有することは、金属原子を結合するために利用可能な複数のドナー原子を提供する。好ましい実施形態では、有機ポリカルボン酸は少なくとも二座であり、これは、それらが2つの点で中央のビスマス原子又はイオンに結合することを可能にする2つのドナー原子を有することを意味する。2つの別々のドナーと比較して、ギ酸などのモノカルボン酸、二座供与はエントロピー的に有利である。水溶性有機酸及び/又はその塩は、ヒドロキシル基などの他の官能基で置換されていてもよい。1つの実施形態では、有機カルボン酸はヒドロキシル官能化ポリカルボン酸であってよい。さらなる実施形態では、ヒドロキシル官能化ポリカルボン酸は、望ましくは、約0.5:1~5:1の範囲のOH基対COOH基の比を有してよい。望ましくは、成分B)は、Biイオンを可溶化又は懸濁するのに十分な量、例えば、約50~100,000ppm、100~75,000ppm、200~50,000ppm、250~25,000ppm、300~20,000ppm、350~10,000ppm、400~7,5000ppm、450~5000ppm又は500~3000ppmで存在する。
【0044】
成分B)に適した材料の非限定的な例としては、次のものが挙げられる:アルファ,オメガ-ジカルボン酸などの複数のカルボン酸官能基を有する有機酸、例えばプロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等などであり、炭素鎖に沿って1つ又は複数の追加の官能基、例えばヒドロキシル官能基をさらに含んでよい。成分B)に適した材料の特定の例としては、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸など、並びに乳酸、グルコン酸、没食子酸、アスコルビン酸、ビシン(2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)及び、これらの酸のいずれかの塩、並びに有機酸及び塩の1つ又は複数の混合物が挙げられる。
【0045】
成分C)、銅イオン、好ましくは、銅(II)イオンは、ビスマス化成コーティング組成物中に、約1~300ppm、1.5~200ppm、2~150ppm、3~100ppm、3.5~75ppm、4~50ppm、4.5~25ppm又は5~20ppmの量で存在してよい。成分C)に適した材料の非現定例としては、ヘキサフルオロケイ酸、水酸化物、硝酸塩、塩化物、リン酸塩及び硫酸塩、並びに酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩のような水溶性及び/又は酸可溶性の無機及び有機の銅源、並びに他の銅の有機塩、並びに酸化物、亜セレン酸塩、亜セレン酸塩等が挙げられる。Cu(II)の任意の無機又は有機源を使用することができ、これは、化成コーティング組成物に溶解し、金属基材上の化成コーティングに少なくとも部分的に堆積可能であり、本発明の目的及び利点に悪影響を及ぼさないCu(II)イオンをもたらす。硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、酸化銅(II)、水酸化銅(II)が好ましい。2つ以上の異なる銅化合物の組み合わせを使用してもよい。
【0046】
成分D)、1つ又は複数の金属エッチャントは、HFなどの遊離フッ化物源及び/又は複合フルオロ酸を含んでよく、フッ化物イオン源として存在してよく、好ましくは複合フルオロ酸又はその塩である。複合フルオロ酸は、一般式H2XF6のフルオロ酸から選択されてよく、式中、XはTi、Zr、Hf及びSiであってよく、これらのフルオロ酸の塩もまた、本発明において有用である可能性がある。一般に、ビスマス化成コーティング組成物に有用なHF、複合フルオロ酸及び/又はその塩などの成分D)の量は、約0~5000ppm、100~4500ppm、200~4000ppm、300~3500ppm、又は400~3000ppm、450~2500ppm、500~2000ppm、525~1500ppmの範囲である。成分D)は、望ましくは、遊離フッ化物イオンのリザーバーを提供し得る。一般に、ビスマス化成コーティング組成物に有用な遊離フッ化物の量は、約0~5000ppm、1~4000ppm、3~3000ppm、4~2000ppm、5~1000ppm、6~500ppm、8~200ppm又は10~100ppmの範囲である。遊離及び複合フッ化物イオンは、金属基板表面のエッチングを増加させるように作用する。
【0047】
成分E)、pH調整剤は、酸、塩基、又は緩衝酸/塩基の組み合わせの形態であってもよい。ビスマス化成コーティング組成物は、pHが2~6の範囲にあることが好ましい。pHが2未満であると、エッチングが過剰になるため、十分な被膜形成ができなくなる。6を超えるとエッチングが不十分となるため、良好な塗膜が得られず、浴成分が析出する場合がある。より好ましくは、上記下限が2.5、上記上限が5.5である。さらにより好ましくは、上記下限が3、上記上限が4である。化成コーティング剤のpHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。pHレベルを2~6、2.5~5、2.75~4.5、3~4の範囲に調整する方法は、当業者に知られている。所望のpHは、好ましくは少なくとも1つの塩基、より好ましくは少なくとも1つの無機及び/又は少なくとも1つの有機塩基の添加によって設定される。本明細書に記載のビスマス化成コーティング組成物に有用なpH調整剤の適切な例としては、NaOH、KOH、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、及びBi(OH)3が挙げられる。
【0048】
成分F)、硝酸イオンは望ましくは存在し、ビスマス化成コーティング組成物の他の成分、例えば非限定的な例として、成分A)、並びに存在する場合は成分D)及び成分F)に対する対イオン又は部分的対イオンとして提供されてもよい。したがって、成分F)の適切な供給源としては、硝酸、硝酸ビスマス(III)五水和物;次硝酸ビスマス、並びに硝酸銅及びIVB族金属の硝酸塩が挙げられ、対カチオンが存在する場合、硝酸ナトリウム及び硝酸が好ましい。硝酸イオンは、望ましくは約0~10,000ppm、15~9000ppm、30~8000ppm、45~7000ppm、60~6000ppm、75~5000ppm、90~4000ppm、100~3500ppm又は75~3000ppmの量で存在する。本発明の目的及び利点に悪影響を及ぼさない硝酸イオンの任意の無機源又は有機源を使用してよい。2つ以上の異なる硝酸塩の組合せを使用してよい。
【0049】
ビスマス化成コーティング組成物の追加成分は、以下を含んでよい。
【0050】
成分G)、IVB族金属は、ビスマス化成コーティング組成物及び得られるコーティング中に存在し得る。望ましくは、IVB族金属は、Zr、Ti、及びHf、並びにそれらの組み合わせ、好ましくはZr及びTiから選択されてよい。一般に、ビスマス化成コーティング組成物に有用な成分G)の量は、約0~500ppm、10~450ppm、20~400ppm、30~350ppm、40~300ppm、45~250ppm、50~200ppm、70~150ppmである。成分G)に適した材料の非現定例としては、IVB族金属の水溶性及び/又は酸可溶性の無機及び有機源、例えば、フルオロチタン酸、H2TiF6;フルオロジルコン酸、H2ZrF6;ジルコニウム塩基性炭酸塩、Zr(OH)2CO3・ZrO2;硝酸チタン、Ti(NO3)4;酢酸チタン、Ti(CH3COO)2;硝酸ジルコニウム、Zr(NO3)4;酢酸ジルコニウム、Zr(CH3COO)2が挙げられる。IVB族金属のフルオロ酸はまた、任意で、成分D)の少なくとも一部を1つ以上の金属エッチャントとして提供してもよい。
【0051】
ビスマス化成コーティング組成物には、成分H)、1つ又は複数の促進剤が存在してよい。化成コーティング組成物は、促進剤を含有しない例によって示されるように、比較的迅速な堆積のために、典型的に、促進剤の存在を必要としない。必要に応じて、1~5000ppmの量の1つ又は複数のコーティング促進剤、好ましくは、過酸化物、鉄(III)イオン、亜硝酸イオン、ヒドロキシルアミン、過硫酸イオン、亜硫酸イオン、次亜硫酸イオン、及び塩素酸ナトリウムなどのハロゲン系イオンなどの酸化促進剤を包含してよい。成分H)に適した材料の非現定例としては、ヒドロキシルアミン(硫酸ヒドロキシルアミンなどの塩として提供されてもよい)などの水溶性及び/又は酸可溶性促進剤;過酸化物、好ましくは過酸化水素;ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム;作業浴又は堆積コーティングに悪影響を与えることなく、ビスマス化成コーティング組成物の堆積反応を促進することができる亜硝酸ナトリウム、ニトログアニジン、オキシムなどが挙げられる。成分H)の量は、使用される促進剤の種類によって変化し、適切な量を選択することは化成コーティング技術の当業者の知識の範囲内である。一般に、ビスマス化成コーティング組成物に有用な成分H)の量は、約0~500ppm、10~450ppm、20~400ppm、30~350ppm、40~300ppm、45~250ppm、50~200ppm、70~150ppmの範囲であり得、あるいは活性の低い促進剤、又は例えば分解により濃度が急速に低下する促進剤の場合、促進剤の上限量は、前述の範囲に加えて、1000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、又は600ppmの濃度を包含してよい。
【0052】
ビスマス化成コーティング組成物は、ポリマーの非存在下で満足のいくビスマスコーティングを堆積させるが、成分I)、1つ又は複数の水溶性及び/又は水分散性ポリマー成分は、必要に応じてビスマス化成コーティング組成物に有利に包含されてよい。一般に、ビスマス化成コーティング組成物に有用な成分I)の量は、約0~500ppm、10~450ppm、20~400ppm、30~350ppm、40~300ppm、45~250ppm、50~200ppm、70~150ppmの範囲である。成分I)に適した材料の非現定例としては、(i.1)ポリ{p-ヒドロキシスチレン}のポリヒドロキシルアルキルアミノ誘導体、米国特許第4,963,596号により詳細に記載されており、その全開示は、本明細書における明示的な記述に反する程度を除いて、参照により本明細書に組み込まれる;(i.2)エポキシポリマー、特にビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルのポリマーであって、任意に末端が非重合性基でキャップされ、及び/又はエポキシ基の一部がヒドロキシル基に加水分解されているもの;(i.3)アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩のポリマー及びコポリマー;(i.4)フェナルカミン化合物、ポリアミドアミン化合物、カテコール化合物及びカテコールコポリマーから選択される有機ポリマー成分;並びに(i.5)有機及び/又は無機ポリマーであってよい、ケイ素を含むポリマー及びコポリマー;が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「フェナルカミン化合物」という用語は、ベンゼン環に結合した少なくとも3つの官能基:a)OH(すなわちヒドロキシル)基;b)C6-C30飽和又は不飽和アルキル基;及びc)アミノ-アルキル置換基などのアミン官能化置換基を有するベンゼン環を含む分子を意味する。本発明の一実施形態によれば、フェナルカミン化合物は、下記式(I)に対応する:
R-Ar(-OH)-CHR’NHCH2CH2(NHCH2CH2)nNH2 (I)
式中、Arはベンゼン環であり、RはC6-C30直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和アルキル基であり、R’はH又はアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等のC1-C6又はC1-C3アルキル)であり、nは0、又は少なくとも1、2、3、4、5、及び20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下、又は6以下、好ましくは1-4である整数である。
【0054】
一実施形態によれば、a)及びc)は互いにオルトであり;すなわち、それらはベンゼン環の隣接する炭素原子に結合している。さらなる実施形態によれば、b)は、a)及びc)が結合している炭素原子のそれぞれからベンゼン環の少なくとも1個の炭素原子だけ離れているベンゼン環の炭素原子に結合している。別の実施形態において、c)はヒドロキシ基に対してオルトであり、b)はa)に対してメタである。ベンゼン環は、式(I)に列挙されたもの以外の1つ又は複数の追加の非水素置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル)及びヒドロキシル基(aに加えて)を有してよい。例えば、第2の任意のヒドロキシル基は、c)に対してメタ位でベンゼン環上に存在してよい。1つの実施形態では、フェナルカミン化合物は、a)に対してオルトであるヒドロキシル基を含まなくてもよい。アミン官能化置換基c)は、アルキレン基がベンゼン環に結合しているアルキレン基上で置換された1つ又は複数のアミノ基、好ましくは第一級及び/又は第二級アミノ基を含んでよい。1つの実施形態では、c)は、少なくとも1つの第一級アミノ基、又は任意で2つ以上の第一級及び/又は第二級アミノ基を含んでよい。フェナルカミン化合物の混合物又は組み合わせも利用してよい。望ましくは、フェナルカミンポリマーは、200~2000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。フェナルカミンは、同時係属中の国際出願番号PCT/2019/065127にさらに記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ポリアミドアミン化合物」という用語は、複数のアミド官能基と、任意でアミン及び/又はイミダゾリン官能基とを含む直鎖状又は分枝鎖状の飽和又は不飽和有機ポリマーを意味する。ポリマーは、第三級窒素原子、複数の分枝、及び/又は置換基にアミド結合を有する少なくともいくつかのイミダゾリン官能基を含んでよい。望ましくは、ポリアミドポリアミンポリマーは、200~10,000の範囲の重量平均分子量を有する。ポリアミドアミンは、国際特許公開WO2016167928にさらに詳細に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
「カテコール化合物」という用語は、芳香環系の隣接する炭素原子上に位置する少なくとも2つのヒドロキシル基を包含する芳香環系を有する有機化合物を意味する。本明細書で使用される場合、「カテコール化合物」という用語は、カテコール、及び例えば、ドーパミン及び3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニンのようなカテコールアミンなどのカテコール誘導体を含む。「カテコールコポリマー」は、少なくとも1つのカテコール/カテコール誘導体と、それと反応する1つ以上の官能基を有する少なくとも1つの共反応化合物との反応生成物(ここで、共反応化合物は、例えば、アミン、特にポリエチレンイミンなどのポリアミン、又はメタクリルアミドエチルエチレン尿素などの(メタ)アクリル官能化化合物であってよい)、並びにそれらの塩及び混合物を意味する。望ましくは、カテコールコポリマーは、200~10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。カテコール、カテコール誘導体及び高分子反応生成物は、国際特許公開WO2018119368にさらに詳細に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
添加剤がビスマス化成コーティングの堆積及び性能を妨げない限り、金属前処理技術において知られている他の添加物を本明細書に開示するビスマス化成コーティング組成物に含めることができる。添加剤としては、界面活性剤、酸化剤(促進剤とは異なる)、増粘剤、レオロジー調整剤、分散剤、殺生物剤、バイオスタット、接着促進剤などが挙げられる。
【0058】
金属元素などの一部の材料は、化成コーティング組成物中に、IIB族、VB~VIIB族、VIII属、IIIA属及びIVA族、並びにSbの金属などの添加剤又は汚染物質として存在してよい。これらの金属元素は、添加剤がビスマス化成コーティングの堆積及び性能を妨げないという条件で、添加剤として使用されてよい。いくつかの実施形態では、そのような金属は、本明細書で開示されるビスマス化成コーティング組成物に意図的に添加されず、好ましくは省略されるが、避けられない汚染物質として存在する可能性がある。
【0059】
めっき光沢剤などの光沢剤、例えば、ナフタレンジスルホン酸、ジフェニルスルホネート、アリールスルホンアミド、アゾ染料などは、好ましいものではないが、光沢剤がビスマス化成コーティングの堆積及び性能を妨げない限り、本明細書に開示されるビスマス化成コーティング組成物に任意の成分として包含させてよい。本明細書に開示されるビスマス化成コーティング組成物の好ましい実施形態では、光沢剤は存在せず、製品にコストがかかるため一般に省略される。
【0060】
製造方法
本発明のビスマス化成コーティング組成物は、当技術分野で知られている任意の適切な技術を使用して調製されてよい。一実施形態では、ビスマス化成コーティング組成物は、B)少なくとも1つの水溶性有機キレート剤を、水、好ましくは蒸留水と組み合わせ、続いてA)溶解及び/又は分散ビスマスの供給源を攪拌しながら加えて、混合物を形成する。その後、混合物のpHを選択された浴操作pH値に調整する。
【0061】
好ましい実施形態において、B)は、1つ又は複数の水溶性有機酸を含んでよく、pHは、好ましくは、アルカリ性物質、例えば重炭酸アンモニウムの希釈溶液の添加によって、約2~6の範囲のpHに調整されてよい。化成コーティングの堆積と性能を妨げない限り、その他のアルカリ源、例えば、水酸化ナトリウムを、pHを上げるために使用してよい。
【0062】
操作条件に合わせてpHを調整した後、化成コーティング組成物は、望ましくはBi(III)イオンを含有し、ビスマス粒子のコロイド状分散物を含んでもよい。ビスマス化成コーティング組成物は、操作pHに基づいて、解離した水溶性有機キレート剤の陰イオンを含んでよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、混合物(溶液又は分散液のいずれであっても)を指す場合の用語「貯蔵安定性」は、混合物が、20℃で少なくとも3ヶ月の観察期間にわたって密閉容器に貯蔵された後、混合物は機械的に乱されず、相分離を示さず、人間の肉眼で見える物質の沈殿や沈降もない。
【0064】
本発明の態様に従って、少なくとも1つのビスマス化成コーティング組成物の水性混合物を裸の金属基板表面と接触させる。こうした水性混合物(溶液又は分散液の形態であってもよく、好ましくは貯蔵安定性混合物である)は、任意の適切な方法で形成されてよい。例えば、水性混合物は、直接、又は水性混合物を特定の所望の最終使用濃度に希釈した後に使用してよい。このような希釈には水のみを使用してよいが、本発明の他の実施形態では、1つ又は複数の他の種類の成分を水性混合物に包含させてよいと考えられる。例えば、酸、塩基又は緩衝剤を水溶液に組み合わせて、そのpH特性を変更してよい。本発明の特定の実施形態では、水性混合物のpHは、裸の金属基材表面と接触するとき(すなわち、作業用化成コーティング浴で使用されるとき)、例えば2~6、2.5~5、2.75~4.5、3~4であってよい。
【0065】
裸の金属基板表面と繰り返し接触する水性混合物(作業浴)は、時間が経つにつれて、ビスマス化合物や銅などの他の成分の濃度が低下する可能性がある。これが起こった場合、作業浴中の水性混合物は、所望の濃度を回復するのに有効な量のビスマス化合物などを提供するために量を調整する必要がある個々の成分又は成分の組み合わせを含む補充剤を添加することによって補充されてよい。本発明による組成物は、2パックで提供されてもよく、その場合、パートAは、例えば、ビスマス、銅、及びBi及び/又はCuとの沈殿物を生成しない他の成分、例えば、硝酸及び/又はキレート剤を含んでよく、パートBは、キレート剤、フッ化物含有化合物及び他の成分を含んでよい。1つの実施形態では、ビスマス化成コーティング浴の補充剤は、ビスマス、銅、及び硝酸を含み、任意で容易に分散可能なスラリーの形態である。さらに、水性混合物を含有する繰り返し使用される作業浴は、アルカリ性ビルダー(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩)、界面活性剤、及び油/グリース/汚れ汚染物質など、洗浄段階から持ち越された様々な成分をいくらか蓄積する可能性があることが理解される。そのような成分のレベルが作業浴の性能又は処理中の化成コーティング金属基材の品質に悪影響を与える点に達すると、作業浴の内容物を廃棄し、交換するか、又はそのような成分を除去又は低減するために処理することができる又は、他の方法でそれらの効果を打ち消す(例えば、pH調整及び/又はイオン交換による)。
【0066】
金属基板
本発明は、腐食を受けやすい金属基材表面、特に塗装される裸の金属表面の処理に関連して特に有用である。例えば、鉄(鉄含有)金属基板は、本発明に従って処理されてよい。例示的な金属基材としては、これらに限定されないが、鉄;冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、ステンレス鋼などの鋼基材;亜鉛金属、電気亜鉛メッキ鋼、ガルバリウム、ガルバニール、溶融亜鉛メッキ鋼などの亜鉛合金でコーティングされた鋼;マグネシウム合金;アルミニウム合金及びアルミニウムメッキ鋼基板が挙げられる。2種類以上の金属基材を含む部品又は物品は、本明細書に記載の手順に従って処理することができる。本発明はまた、鉄含有構成要素又は層が鉄を含まない金属コーティング(例えば、亜鉛コーティング)で覆われている金属基材を使用して実施されてよく、鉄含有構成要素又は層は、切断、成形、取り付け、紙やすりで磨く、研削、研磨、スコアリング、又は他の同様の操作の結果として露出する。
【0067】
洗浄工程
本明細書で使用される場合、「裸の金属基板表面」という用語は、本質的にいかなる汚染物質も含まず、化成コーティングされていないか、又は金属元素と大気中の酸素との反応によって存在する可能性のある自然酸化物以外の他の物質でコーティングされていない金属基板の金属表面を指す。本発明の特定の態様によれば、ビスマス化成コーティング組成物で前処理される裸の金属基板表面は、例えば弱アルカリ性又は強アルカリ性洗浄剤、中性洗浄剤及び酸性洗浄剤を包含する、当技術分野で既知又は従来から使用されている洗浄手順及び材料のいずれかを使用して、金属基板表面を洗浄して、グリース、油、汚れ又は他の異物及び汚染物質を除去することによって得られる。金属表面を洗浄する方法は、例えば、マーフィー著「金属表面処理、洗浄」、カーク・オスマー化学技術百科事典、2000年に記載されている。水性及び非水性(すなわち、有機溶剤系)の洗浄剤を使用してよい。適切な洗浄剤の成分には、例えば、無機塩基(例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩)、ビルダー(例えば、リン酸塩、ケイ酸塩)、界面活性剤、水、有機溶媒などが包含されてよい。アルカリ洗浄剤の例としては、パルコ(登録商標)洗浄剤ZX-1、パルコ(登録商標)洗浄剤315、及びボンデライト(登録商標)C-AK T51が挙げられ、これらはそれぞれミシガン州マディソンハイツのヘンケル社から入手可能である。洗浄剤は、噴霧、浸漬、拭き取りなどの任意の適切な方法を使用して、金属基材表面に塗布し、接触させてよい。接触中のより清浄な温度は、例えば、約20℃~60℃であってよいが、プロセスに悪影響を及ぼさないより低い又はより高い温度であってよい。洗浄剤と金属基板との接触時間は、所望の程度の汚染物質除去を達成するのに有効な任意の時間(例えば、10秒~5分)であってよい。汚染物質の除去を助けるために、機械的作用を利用してよい。典型的に、このような目的で使用される洗浄剤は、液体又は溶液の形であるが、研磨、サンドブラスト、又は他の乾燥媒体によるブラストなどの機械的手段のみを使用して金属基材の表面を洗浄することもできる。金属基材は、洗浄ステップに続いて、任意で、1つ又は複数の予め形成されたカテコール化合物/共反応化合物反応生成物を含む溶液又は分散液と接触させる前に、1つ又は複数のさらなるステップに供されてよい。例えば、金属基板表面は、洗浄後、水及び/又は酸性水溶液で1回又は複数回、すすがれる。
【0068】
裸の金属基材表面は、切断、切り込み、やすりがけ、研削、研磨、ショットブラスト、やすりがけなどの、裸の金属表面が生成される結果となる金属物品を形成又は仕上げる方法によって調製されてもよい。
【0069】
化成コーティング工程
任意の洗浄ステップに続いて、金属基材表面は、本発明のビスマス化成コーティング組成物と接触させることによる化成コーティング工程を受ける。化成コーティング工程は、洗浄工程の直後、又は上述の任意の脱酸素及び/若しくはさらなるすすぎ工程の後に、又は洗浄工程後、長時間経過した後に行ってよい。
【0070】
本発明によれば、ビスマス化合物を含む水性混合物を、金属基材の洗浄された表面と接触させる。このような接触は、例えば、噴霧、浸漬、ディップ、ブラッシング、ロールコーティングなどの任意の適切な方法によって達成されてよい。典型的に、そのような接触中の水性混合物は、周囲温度(例えば、室温)から周囲温度より適度に高い温度までの温度に維持される。例えば、作業浴中の水性混合物の温度は、10~54℃、16~49℃、25~36℃、又は32~43℃であってよい。
【0071】
接触時間は、有効量のビスマス化成コーティングを裸の金属基材表面に堆積させるのに十分な時間となるように選択する必要があり、一般にASTM B117-19に従って測定された金属基板表面の腐食量を、同じ条件下で測定された裸の金属基板表面対照と比較して減少させるのに有効な量と見なされる。典型的には、0.1~30分(例えば、8秒~30分、又は10秒~20分、又は30秒~10分、1分~6分、1.5分~3分、又は開示された範囲に包含される範囲のいずれか)の接触時間を適切なものとして選択してよい。
【0072】
ビスマス化成コーティング組成物との所望の接触時間に達したら、接触を停止し、化成コーティングされた金属基材をさらなる処理工程に移してよい。例えば、噴霧を停止するか、又は化成コーティング金属基材を含む物品を浸漬浴から取り出してよい。残留又は余剰の水性混合物は、金属基材の表面から排出されてよい。残留又は余剰の水溶液の除去は、ドリップドライ、スクイージー、拭き取り、水切り又は水ですすぐなどの任意の適切な方法又は方法の組み合わせによって達成することができる。特定の実施形態によれば、化成コーティングされた金属基材表面を乾燥させてもよい(例えば、空気乾燥、加熱又はオーブン乾燥)。他の実施形態では、化成コーティング金属基材は、塗料による電気泳動コーティングの非限定的な例によるシーリング、塗装などのさらなる処理ステップに進む前に乾燥されない。
【0073】
基板金属のビスマスと金属酸化物の化成コーティングを金属基板に堆積させると、最終塗装部品の耐食性がトリカチオン性リン酸亜鉛と同等になることが実証されている。
【0074】
1つの実施形態では、ビスマス化成コーティング組成物は、金属基材をビスマス化成コーティング組成物とおよそ2分間、24~40℃の温度で接触させることによって、反応性金属基材の表面に塗布されてよい。接触は、ディップ、噴霧、ロールコーティングなどを含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって達成されてよい。接触時間及び温度は変動し得るが、典型的には10分未満、好ましくは5分未満である。望ましくは、接触時間は、少なくとも約1秒、3秒、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、40秒、50秒又は60秒であり、約9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分又は2分以下である。望ましくは、温度範囲は、少なくとも約21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、又は32℃であり、約40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃又は33℃を超えない。化成コーティングの析出を妨げたり、金属ビスマス化成コーティング作業浴又は化成コーティングの性能に悪影響を与えたりしない限り、少なくとも浴の凝固点よりも高く、50℃までの高温又は低温を使用してもよい。
【0075】
単一の理論に拘束されないが、金属基材を水性酸性ビスマス化成コーティング組成物と接触させると、いくつかの反応が生じる:基板の酸化(M0→Mn++ne、M=Fe、Zn、Al)、H+の還元による局所的なpHの上昇により、基材元素(Fe、Zn、Al)と酸化ビスマス及び/又は水酸化ビスマスの混合物として、基材の金属表面にBi3+が堆積する。
【0076】
後処理
本発明はまた、堆積されたままのビスマス化成コーティングが、塗装前に後処理及び/又はシーリングリンスを受ける多段階プロセスの一部であってもよい。
【0077】
適切な後処理の非限定例としては、堆積したままのビスマス化成コーティングを、典型的には他の成分(金属エッチャント(例えば、フッ化物)、任意で銅及び/又は硝酸塩及び/又は亜鉛及び/又はSiベースの物質など)も含む、Zr、Ti及びHfなどの1つ又は複数の周期表第IV族金属からなる酸性の水性後処理組成物(例えば、酸化ジルコニウム堆積組成物)と接触させることが挙げられる。酸性水性後処理組成物は、例えば、5.0以下のpHを有してよく、以下のものを含んでよい:50~750ppmの少なくとも1つのIV族金属;0~50、1~50、又は5~50ppmの銅。10~100ppmの遊離フッ化物;任意で、硝酸塩;任意で、シラン、SiO2、シリケートなどのSiベースの物質。任意で、後処理は、溶解及び/又は分散した有機ポリマーをさらに含む複合後処理であってもよい。酸性水性後処理組成物は、表面の少なくとも一部に堆積したビスマス化成コーティングを有する金属基材の表面に、金属基材を酸性水性後処理組成物と接触させて金属基板表面の少なくとも一部上の第IV族金属酸化物を形成するのに十分な時間適用することができる。接触は、ディップ、噴霧、ロールコーティングなどを包含するがこれらに限定されない任意の適切な手段によって達成されてよい。接触時間及び温度は変動し得るが、典型的には10分未満、好ましくは5分未満である。望ましくは、接触時間は、少なくとも約1秒、3秒、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、40秒、50秒又は60秒であり、約9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分又は2分以下である。望ましくは、温度範囲は、少なくとも約21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、℃、又は32℃であり、約40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃又は33℃を超えない。化成コーティングの堆積を妨げたり、金属ビスマス化成コーティング作業浴又は化成コーティングの性能に悪影響を及ぼしたりしない限り少なくとも浴の凝固点よりも高く、50℃までの高温又は低温を使用してもよい。
【0078】
適切なシーリングリンスは、望ましくは水性リンスであってよいが、任意に有機溶媒を包含してよい。シーリングリンスは、有機ポリマー、無機ポリマー、又はそれらの組み合わせを含有してよい。シーリングリンスは、典型的に、加熱の有無にかかわらず、乾燥時に化成コーティングされた金属基材上に合体、架橋、又はシール層を形成できる水溶性及び/又は水分散性ポリマーを含む。シーリングリンスは、典型的に、約4~10のpHを有してよい。
【0079】
シーリングリンスは、以下の違いにより、本発明の目的のために「塗料」と区別される:
有機シーリングリンスの厚さは、一般におよそ0.05~2.0ミクロン(ウェットフィルム)であるが、塗料フィルムの厚さは、典型的に15~500ミクロン(ウェットフィルム)である。
有機シーリング層は、典型的に、グロー放電発光分光法で測定した乾燥フィルム厚で0.01~1.0ミクロンである。塗料層の乾燥フィルム厚は、最小で約15ミクロンであり、一般に1ミル(25.4ミクロン)、1.5ミル(38.1ミクロン)以上であり、典型的な車両塗料は約3-5ミル(76.2~127ミクロン)の総塗料厚を有する。
有機シーリングリンスは、典型的には最大で約0.5重量%の有機固体を含有するが、塗料組成物は、典型的に少なくとも約5重量%から約60重量%までの有機固体を含有する。
【0080】
シーリングリンスでの使用に適したポリマーの非限定例としては、エポキシ、フェノール、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、及びポリイミド、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態では、エポキシ、フェノール、ポリイミドから選択される有機ポリマーが使用される。追加の層を形成する好ましいポリマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド対フェノールのモル比が1未満であるノボラック樹脂、及びホルムアルデヒド対フェノールのモル比が1より大きいレゾール樹脂から生成されるフェノール-ホルムアルデヒドベースのポリマー及びコポリマーが挙げられる。このようなポリフェノールポリマーは、例えば米国特許第5,891,952号に従って、当技術分野で知られているように製造することができる。ノボラック樹脂は、硬化を容易にするために架橋剤と組み合わせて使用することが望ましい。1つの実施形態では、約1.5のホルムアルデヒド対フェノールのモル比を有するレゾール樹脂を利用して、ビスマス化成コーティング上にポリマー追加層を形成する。ポリマー層を形成するのに有用なフェノール樹脂は、望ましくは、約1000~約5000g/モル、好ましくは2000~4000g/モルの分子量を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、水溶性及び/又は水分散性ポリマーは、ポリマーとコーティングとの間に結合を形成する可能性のある、ビスマス化成コーティング中の元素と反応する官能基を含んでよい。例えば、未硬化のノボラック及びレゾール樹脂は、ビスマス化成コーティング中の金属と反応し得、それによってポリマーをコーティングに結合させることができるOH官能基を含む。
【0082】
任意で、シラン、SiO2、シリケートなどのSiベースの物質をシーラントとして使用するか、又は添加剤として使用してよい。シーリングリンスは、ビスマス化成コーティングの表面を濡らす、及び/又は、金属基板表面の少なくとも一部にシーラントの層を形成するのに十分な時間、金属基材をシーリングリンスと接触させることによって、表面の少なくとも一部に堆積したビスマス化成コーティングを有する金属基材の表面に塗布してよい。接触は、化成コーティング金属基材表面の耐食性をさらに高める任意の適切な手段によって達成されてよい。
【0083】
追加コーティングの適用
化成コーティング及び任意で1つ又は複数の後すすぎ(又は「シーリング」)工程に続いて、金属基材は、特に塗料又は他の装飾及び/又は保護コーティングの適用を包含する、1つ又は複数のさらなる処理工程に供されてもよい。例えば、電気泳動コーティング(Eコーティング)、溶剤系塗料、水性塗料、粉体塗装などを包含する、当技術分野で知られている任意のそのようなコーティングを使用してよい。そのような用途では、ビスマス化成コーティング又はシーラーは、プライマー又は防食層として機能する可能性がある。
【0084】
したがって、本発明は、以下の例示的な多段階プロセスに従って実施されてよい:
1)金属基板表面を洗浄する;
2)予め形成されたカテコール化合物/官能化された共反応物反応生成物からなる水性混合物により、洗浄された(裸の)金属基板表面をすすぐ;
3)洗浄及びリンスされた金属基材表面を化成コーティングする;
4)任意で、化成コーティングされた金属基材表面を水及び/又は後すすぎ溶液又は分散液ですすぐ;
5)任意ですすがれた化成コーティングされた金属基材表面を電気泳動コーティングする;
6)電気泳動コーティングされた金属基板表面を水ですすぐ;及び
7)すすがれた電気泳動コーティングされた金属基板をベーキングする。
【0085】
本明細書において、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を記述できるように記載されているが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明のすべての態様に適用可能であることを理解されたい。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書の発明は、組成物、物品又は方法の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。
【0087】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の範囲及び均等の範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細にさまざまな変更を加えることができる。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水 99.72重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)4 0.08%(0.057重量% Bi)
乳酸(88重量%) 0.20重量%
【0089】
混合物のpH=2.7。脱イオン水75%、混合物25%で、上述の混合物を脱イオン水に添加すると、pHが3.1に上昇した。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、Bi143ppmと乳酸440ppmを含有する澄んだ麦わら色の溶液が得られた。
【0090】
溶液を32℃に加温した。ACT CRSパネルをビスマス化成コーティング組成物に浸漬した(以下に概説するプロセス)。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0091】
パネルコーティングプロセス:コーティングの試料として、ACTラボラトリーズ社から市販されている裸の金属パネルを使用した。特に記載がない限り、コーティングプロセスは以下のとおりである。
【0092】
ビスマス化成コーティングプロセス
洗浄液:ボンデライト(登録商標)C-AK T51(2%v/v、49℃、遊離アルカリ度(以降「FAlK」)5.0、90秒噴霧、10psi)
リンス液:水道水(38℃、60秒噴霧、10psi)
リンス液:脱イオン水(21℃、60秒噴霧、10psi)
化成コーティング:32℃、120秒浸漬
リンス液:脱イオン水(21℃、60秒噴霧、10psi)
Eコート:BASFカソガード800(35℃、240秒浸漬、0.9Amps定電流~230V)
リンス液:脱イオン水(24℃、60秒噴霧、10psi)
塗料硬化:オーブン焼き(185℃、35分)。
【0093】
比較のリン酸亜鉛コーティングプロセス(ボンデライト(登録商標)M-ZN958)
ACTラボラトリーズ社から購入した1.5~2.0g/m2の総金属リン酸塩(ホパイト及びフォスフォフィライト)コーティング重量を有する前処理されたリン酸亜鉛コーティングパネルを使用した。リン酸亜鉛コーティングをヘンケル社技術プロセス公報に従って適用した。
リンス液:脱イオン水(21℃、60秒噴霧、10psi)
Eコート:BASFカソガード800(35℃、240秒浸漬、0.9Amps定電流~230V)
リンス液:脱イオン水(24℃、60秒噴霧、10psi)
塗料硬化:オーブン焼き(185℃、35分)。
【0094】
グロー放電発光分光元素深度プロファイルは、本発明に従ってコーティングされたパネルで得られ、コーティング中に存在する元素を確認した。
【0095】
(実施例2)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水 92.22重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)4 0.58%(0.41重量% Bi)
乳酸(88重量%) 7.2重量%
【0096】
混合物のpH=1.97。脱イオン水95%、混合物5%で、上述の混合物を脱イオン水に添加すると、pHが2.7に上昇した。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、Bi209ppmと乳酸3368ppmを含有する澄んだ麦わら色の溶液が得られた。
【0097】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0098】
(実施例3)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水 59.95重量%
フルオロケイ酸(25重量%) 40.00%
酸化ビスマス;Bi2O3 0.05%(0.045重量% Bi)
pH=1.10
pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、450ppmBi及び10%フルオロケイ酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0099】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0100】
(実施例4)
0.05%の酸化ビスマスBi2O3の代わりに、0.05%の次硝酸ビスマスBi5O(OH)9(NO3)4を使用して実施例3を繰り返し、pH=1の混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、357ppmBi及び10%フルオロケイ酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0101】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0102】
(実施例5)
0.05%の酸化ビスマスBi2O3の代わりに、0.05%の硝酸ビスマスBi(NO3)3を使用して実施例3を繰り返し、pH=1.2の混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、253ppmのBi及び10%フルオロケイ酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0103】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0104】
(実施例6)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水94.25重量%
酸化ビスマス;Bi2O30.5%(0.45重量%Bi)
酒石酸5.25重量%
【0105】
混合物のpH=1.7。脱イオン水95%、混合物5%で、上述の混合物を脱イオン水に添加すると、pHが2.7に上昇した。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、224ppmのBi及び2625ppmの酒石酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0106】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0107】
(実施例7)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水94.17重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)40.58%(0.41重量%Bi)
酒石酸5.25重量%
【0108】
混合物のpH=1.7。脱イオン水95%、混合物5%で、上述の混合物を脱イオン水に添加すると、pHが2.7に上昇した。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、209ppmのBi及び2625ppmの酒石酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0109】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0110】
(実施例8)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水99.30重量%
硝酸ビスマス;Bi(NO3)30.10重量%
フルオロケイ酸(25重量%)0.40%
酒石酸0.20重量%
【0111】
混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する無色透明の溶液が得られた。
【0112】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、C、O、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0113】
(実施例9)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水99.30重量%
硝酸ビスマス;Bi(NO3)30.10重量%
フルオロケイ酸(25重量%)0.40%
酒石酸0.20重量%
硝酸銅(1.841%Cu)0.05%
【0114】
混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。
【0115】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、C、Cu及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0116】
(実施例10)
0.20重量%の酒石酸の代わりに、0.20重量%のアスコルビン酸を使用して実施例9を繰り返し、pH=2.0の混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmのアスコルビン酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。
【0117】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、Cu及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0118】
(実施例11)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水99.40重量%
硝酸ビスマス;Bi(NO3)30.10重量%
フルオロケイ酸(25重量%)0.40%
クエン酸0.10重量%
硝酸銅(1.841%Cu)0.05%
【0119】
混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び1000ppmのクエン酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。
【0120】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、C、Cu、及びFeを含有する目に見えて灰色/黒色のコーティングが得られた。
【0121】
(実施例12)
以下の組成物を使用して、32℃のコーティング浴を使用した上記の塗布プロセスにより、むき出しのACT CRS基板上にビスマス化成コーティングを堆積させた。
1. Bi2O3からの450ppmのBi、10%フルオロケイ酸;pH=3.5;
2. 次硝酸ビスマスからの360ppmのBi、10%フルオロケイ酸;pH=3.5;
3. 硝酸ビスマスからの250ppmのBi、10%フルオロケイ酸;pH=3.5;
4. 次硝酸ビスマスからの216ppmのBi、0.3%乳酸;pH=3.5;
5. 硝酸ビスマスからの720ppmのBi、1000ppmのフルオロケイ酸、2000ppmの酒石酸、10ppmのCu;pH=3.5。
【0122】
これらのビスマス化成コーティング組成物の5つすべてが、暗黒色のBi化成コーティングを堆積させた。
【0123】
0.1M NaOH(pH=12.2)に21℃の温度で4時間浸漬することによって、これらの化成コーティングの耐アルカリ性を評価した。比較のために、市販のリン酸亜鉛化成コーティング(ボンデライト(登録商標)M-ZN958)でコーティングされた裸のACT CRSも、同じ試験条件を使用して評価した。
【0124】
NaOHにさらした後、パネルを30秒間すすぎ、きれいな圧縮空気源(90psi)を使用して風乾した。ビスマスでコーティングされたすべてのACT CRSパネルは、赤錆/鉄の酸化の形跡がなく、黒いままであった。ビスマスの損失は、元の重量の約10%であった。リン酸亜鉛試料は、赤錆で100%覆われており、リン酸亜鉛コーティングが大幅に失われていた(元の重量の50%を超える損失)。いずれの場合も、コーティングの損失は、グロー放電発光分光分析元素深度プロファイル(GDOES)を使用して特定された。
【0125】
(実施例13)
この実施例では、異なる種類のACT金属パネル(CRS、EG、HDG及びAl6111パネル)が試験された。実施例9に従うビスマス化成コーティング組成物が作製され、pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。溶液を32℃に加温し、72ppmの遊離フッ化物及びpH3.5を有していた。
【0126】
前述の適用プロセスに従い、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。
【0127】
(実施例14)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水99.30重量%
フルオロケイ酸(25重量%)0.40%
酒石酸0.20重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)40.07%
グリコールウリル樹脂200ppm
硝酸銅(1.841%Cu)0.05%
【0128】
混合物のpH=1.97。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、200ppmのグリコールウリル樹脂、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。
【0129】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、CRS基板上に元素Bi、O、C、Cu、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0130】
(実施例15)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水99.30重量%
フルオロケイ酸(25重量%)0.40%
酒石酸0.20重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)40.07%
硝酸銅(1.841%Cu)0.05%
ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、(SNBS)100ppm
【0131】
混合物のpH=2.08。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、100ppmのSNBS、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。
【0132】
溶液を32℃に加温した。このビスマス化成コーティング組成物を使用して、前述の塗布プロセスに従って、ACT CRSパネルをディップコーティングした。これにより、元素Bi、O、C、Cu、及びFeを含有する目に見えて黒色のコーティングが得られた。
【0133】
(実施例16)
この実施例では、異なる種類のACT金属パネル(CRS、EG、HDG及びAl6111パネル)をコーティングして試験した。以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水 99.28重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)4 0.07%
フルオロケイ酸(25重量%) 0.40%
酒石酸 0.20重量%
硝酸銅(1.841%Cu) 0.05%
【0134】
混合物のpH=2.08。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。この混合物には、未溶解の次硝酸ビスマス(白色固体)も含有されていた。
【0135】
前述の適用プロセスに従い、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。ビスマス化成コーティングの適用後、ビスマス化成コーティング、Eコート工程について上記に示したパラメータに従って、プロセスを乾燥させたり停止させたりすることなく、パネルをカソード電着塗装、BASFカソガード800で塗装した。塗装時間=4.0分。比較のために、市販のトリカチオン性リン酸亜鉛(ボンデライト(登録商標)M-ZN958)でコーティングされたACTパネルを、同じ塗装パラメータを使用してBASFカソガード800でEコーティングしたものを包含する、上記のリン酸亜鉛処理プロセスでコーティングした。
【0136】
ビスマス化成コーティングパネルのEコートの外観は、滑らかで均一であり、マッピング欠陥はなかった。ビスマス化成コーティングパネルの硬化塗料の色は、リン酸亜鉛コーティングの対照パネルよりも目に見えて暗かった。ドライEコートの厚さは、リン酸亜鉛対照パネルに匹敵する厚さを提供するビスマス化成コーティングで測定された。
【0137】
【0138】
塗料接着性
GMW14829/14704を用いて塗料接着性を評価した。手順GMW14704は、初期クロスハッチ、24時間の水浸漬に続くクロスハッチ、及び48時間の水浸漬に続くクロスハッチの3つの個別の試験を包含する。各クロスハッチの後に、ゼネラルモーターズの試験方法によって定義されたテーププルが続き、パーセンテージの数値が高いほど、性能が優れていることを示す。パネルは3つで試験した。24時間浸漬試験と48時間浸漬試験では、異なるパネルを使用した。
【0139】
【0140】
ビスマスコーティングへの塗料接着性は、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0141】
腐食性能
GMW14872、露出C(26サイクル、質量損失=3.892g)を使用して、循環腐食性能を評価した。試験サイクルは、ゼネラルモーターズの試験方法によって定義され、湿度、水霧、及び塩水噴霧への一連の暴露が包含される。塗装されたパネルは、スクライブし、26サイクルに供した。パネルを3回試験した。
【0142】
【0143】
ビスマスコーティングへの耐食性は、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0144】
いくつかの未塗装パネルのビスマス化成コーティングのコーティング重量と厚さが特徴付けられた。ビスマスとして測定された平均ビスマス化成コーティング重量は、Niton Xl3t(X線蛍光)を使用して決定され、コーティングの厚さは、グロー放電発光分光元素深さ(深さプロファイリング)を使用して決定された。
【0145】
【0146】
(実施例16’)変更された洗浄
上記の実施例16を、以下のプロセス変更を伴うACTパネルの第2のセットで繰り返した:ボンデライト(登録商標)C-AK T51を90秒間スプレーする単一の「洗浄」工程は、次の2つの連続した「洗浄」工程:1)ボンデライト(登録商標)C-AK T51を10psiで60秒間噴霧し、その後すぐの2)ボンデライト(登録商標)C-AK T51に120秒間浸漬:に置換された。ビスマス化成コーティングとすすぎの後、一部の未塗装パネルのビスマス化成コーティングの特性を評価した。ビスマスとして測定された平均ビスマス換算コーティング重量は、ニトロンXl3t(X線蛍光)を使用して決定され、コーティングの厚さは、グロー放電発光分光元素深さ(深さプロファイリング)を使用して決定された。
【0147】
【0148】
ビスマス化成コーティングパネルのEコートの外観は滑らかで均一であり、マッピング欠陥はなかった。ビスマス化成塗装パネルの硬化塗料の色は、リン酸亜鉛塗装の対照パネルよりも目に見えて暗かった。ドライEコートの厚さは、リン酸亜鉛対照パネルに匹敵する厚さを提供するビスマス化成コーティングで測定された。
【0149】
【0150】
腐食性能
実施例16’のパネルは、GMW14872を使用して循環腐食性能について評価され、露出Cは修正され使用された:(29サイクル、質量損失=4.065g)。
【0151】
【0152】
異なる試験を使用して、実施例16’のパネルの循環腐食性能を、フォード、L-467を使用して評価した。試験サイクルは、フォードモーターカンパニーの試験方法によって定義され、湿度、水霧、及び塩水噴霧への一連の暴露が包含される。塗装されたパネルは、6週間の期間、スクライブされ、試験された。パネルを3回試験した。
【0153】
【0154】
(実施例17)
酒石酸の量を減らして(0.20重量%から0.108重量%に減らして)、実施例16を繰り返した。混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmのフルオロケイ酸及び1080ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。この溶液は透明であり、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0155】
実施例16の手順に従った結果、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒色コーティングを有するACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルが得られた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。Eコートの外観は滑らかで均一であり、マッピング欠陥はなかった。ビスマス化成塗装パネルの硬化塗料の色は、リン酸亜鉛塗装の対照パネルよりも目に見えて暗かった。Eコート乾燥フィルム厚は、ビスマスコーティングとリン酸亜鉛コーティング対照との間で同等であった。ゼロ浸し及び48時間浸しの塗料接着性、及び耐食性試験を、実施例16の手順に従って実施し、結果を以下の表に示す。
【0156】
【0157】
ビスマスコーティングへの塗料接着性は、EG及びHDG基材を除いて、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0158】
【0159】
ビスマスコーティングの耐食性は、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0160】
(実施例18)
酒石酸の量を増やして(0.20重量%から0.54重量%に増やして)実施例16を繰り返した。混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmBi、10ppmCu、1000ppmフルオロケイ酸及び5400ppm酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。この溶液は透明であり、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0161】
実施例16の手順に従った結果、異なる金属基板サンプルのそれぞれに目に見えて黒色コーティングを有するACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルが得られた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。CRS基板上のビスマス化成コーティングは、100,000倍の最高倍率で電界放出型走査電子顕微鏡法(FESEM)を使用して検査された。CRS上に堆積されたビスマス化成コーティングは、均一なノジュラー構造を有する完全な基板コーティング層を示した。露出したCRS基質は観察されなかった。Eコートの外観は滑らかで均一で、マッピング欠陥はなかった。ビスマス化成塗装パネルの硬化塗料の色は、リン酸亜鉛塗装の対照パネルよりも目に見えて暗かった。Eコート乾燥フィルム厚は、ビスマスコーティングとリン酸亜鉛コーティング対照との間で同等であった。ゼロ浸し及び48時間浸しの塗料接着性、及び耐食性試験を、実施例16の手順に従って実施し、結果を以下の表に示す。
【0162】
【0163】
ビスマスコーティング上の塗料接着性は、EG基材を除いて、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0164】
【0165】
ビスマスコーティングの耐食性は、リン酸亜鉛対照に匹敵する。
【0166】
(実施例19)
0.20重量%の酒石酸の代わりに0.10重量%のグルコン酸ナトリウムを使用して実施例16を繰り返し、pH=2.0の混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、1000ppmフルオロケイ酸及び1000ppmグルコン酸ナトリウムを含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。この溶液は透明で、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0167】
実施例16の手順に従った結果、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒色のコーティングを有するACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルが得られた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。
【0168】
(実施例20)
以下のものを配合し混合して化成コーティング組成物を調製した。
脱イオン水 99.30重量%
フルオロケイ酸(25重量%) 0.40%
酒石酸0.20重量%
次硝酸ビスマス;Bi5O(OH)9(NO3)4 0.07%
ポリアミドアミン樹脂 0.005%
【0169】
ポリアミドアミン高分子添加剤は、ガブリエル・パフォーマンス・プロダクツから市販されているバーサミド150であり、二量化脂肪酸とポリアミンとの反応生成物であり、MW:200~10,000ダルトン;アミン含有量:樹脂1グラムあたり100~1000mg KOHを有すると記載されている。
【0170】
混合物のpH=2.0。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、50ppmのポリアミドアミン樹脂、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有するわずかに黄色の溶液が得られた。この溶液は透明で、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0171】
溶液を32℃に加温した。前述の適用プロセスに従い、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、及びCと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。
【0172】
(実施例21)
ポリアミドアミン樹脂0.005%の代わりに、カルドライト社から商品名カルドライトNX-8101で市販される、フェナルカミン樹脂0.005%、カシューナッツシェルリキッド(カルダノール、カルドール、アナカルド酸)及びポリアミンに基づく樹脂、MW:=200~2,000ダルトン;アミン含有量:樹脂1グラム当たり100~500mg KOHを用いて、実施例20を繰り返し、pH=2.0混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、50ppmのフェナルカミン樹脂、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有するわずかに黄色の溶液の溶液が得られた。この溶液は透明であり、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0173】
溶液を32℃に加温した。前述の適用プロセスにしたがい、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。各ビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、及びCと、それぞれのベース基板からの金属が含まれていた。
【0174】
(実施例22)
グレースマテリアルテクノロジーズから市販されている0.025%の量のコロイダルシリカ(20%)の水性分散液であるルドックスTMAを添加して実施例16を繰り返し、pH=2.0の混合物を得た。pH=3.5が達成されるまで、10%重炭酸アンモニウム溶液(ボンデライト(登録商標)M-AD700)を使用してpHを上昇させた。これにより、506ppmのBi、10ppmのCu、50ppmのSiO2、1000ppmのフルオロケイ酸及び2000ppmの酒石酸を含有する透明でやや青色/緑色の溶液の溶液が得られた。この溶液は透明であり、未溶解の(目に見える)固体はなかった。
【0175】
溶液を32℃に加温した。前述の適用プロセスに従い、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。ビスマス化成コーティングのそれぞれは、それぞれのベース基材からの金属だけでなく、元素Bi、O、C、Si及びCuを含有していた。
【0176】
ビスマス化成コーティング後の後処理
(実施例23)
ジルコニウム含有後処理
この実施例では、ビスマス化成コーティングを有するACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルにジルコニウム含有後処理を適用し、ビスマス化成コーティング層との適合性を評価した。
【0177】
前述の適用プロセスに従い、実施例16のこのビスマス化成コーティング組成物を使用して、ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルをディップコーティングし、続いて、以下のプロセスに従ってジルコニウム含有後処理の噴霧堆積が行われた。
【0178】
ビスマス化成コーティング/後処理プロセス
洗浄液:ボンデライト(登録商標)C-AK T51(2%v/v、49℃、FAlK5.0、90秒噴霧、10psi)
リンス液:水道水(38℃、60秒噴霧、10psi)
リンス液:脱イオン水(21℃、60秒噴霧、10psi)
化成コーティング:32℃、120秒浸漬
リンス液:脱イオン水(21℃、60秒噴霧、10psi)
後処理:ボンデライト(登録商標)M-PT54NC、酸性、クロムフリー、ジルコニウム含有不動態化後処理(0.5%v/v、21℃、pH=4.0、60秒噴霧)
リンス液:脱イオン水(24℃、60秒噴霧、10psi)
空気乾燥(周囲温度、圧縮空気、90psi)
【0179】
ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111金属基板試料のそれぞれに、目に見えて黒色のコーティングが堆積した。それぞれのビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。ビスマス化成コーティングは、ジルコニウム含有後処理組成物との反応によって有意に除去されず、ビスマス化成コーティングの後に酸性後処理を行うことができることを示している。
【0180】
(実施例24)有機ポリマーシーラント
ジルコニウム含有後処理の代わりに有機ポリマーシーラントを使用して、実施例23のコーティングプロセスを繰り返した。ビスマス化成コーティング層との適合性を評価するために、有機ポリマーシールを、ビスマス化成コーティングを有するACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルに適用した。
【0181】
ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルを、実施例23の適用プロセスに従ってビスマス化成コーティング組成物を使用してディップコーティングし、続いて、以下のパラメータを使用して、0.75%v/vのボンデライト(登録商標)M-PT99X、有機ポリマーシーラントを噴霧堆積した:21℃、pH=4.0、60秒噴霧。
【0182】
ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111金属基板試料のそれぞれに、目に見えて黒色のコーティングを堆積した。それぞれのビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。ビスマス化成コーティングは、有機ポリマーシーラント組成物との接触/反応によって著しく除去されることはなく、ビスマス化成コーティングが、必要に応じて有機ポリマーシーリングに適している可能性があることを示している。
【0183】
(実施例24’)有機ポリマーシーラント
上記の実施例24を、上記のACTパネルの2番目のセットで、以下のプロセス変更を加えて繰り返した:ボンデライト(登録商標)C-AK T51を90秒間スプレーする単一の「洗浄」工程を、次の2つの連続した「洗浄」工程に置き換えた:1)ボンデライト(登録商標)C-AK T51を10psiで60秒間スプレーし、その後すぐに2)ボンデライト(登録商標)C-AK T51に120秒間浸漬し、「空気乾燥」を「Eコート:BASFカソガード800(35℃、270秒浸漬、0.9Amps定電流~230V)、リンス液:脱イオン水(24℃、60秒噴霧、10psi)及び塗料硬化:オーブン焼き(185℃、35分)に置き換えた。
【0184】
ACT CRS、EG、HDG、及びAl6111パネルを、上記のようにディップコーティングした。これにより、異なる金属基板試料のそれぞれに目に見えて黒いコーティングが生じた。それぞれのビスマス化成コーティングには、元素Bi、O、C、及びCuと、それぞれのベース基板からの金属が含有されていた。腐食性能を評価するために、パネルは、ビスマス化成コーティング、Eコート工程について上記に記載されたパラメータに従って、プロセスを乾燥又は停止することなく、カソード電着塗装、BASFカソガード800で塗装された。塗装時間=4.5分。
【0185】
ビスマス化成コーティングパネルのEコートの外観は滑らかで均一であり、マッピング欠陥はなかった。ビスマス化成コーティングパネルの硬化塗料の色は、リン酸亜鉛コーティングの対照パネルよりも目に見えて暗かった。ドライEコートの厚さは、リン酸亜鉛対照パネルに匹敵する厚さを提供するビスマス化成コーティングで測定された。
【0186】
【0187】
腐食性能
実施例24’のパネルは、GMW14872を使用して循環腐食性能について評価され、露出Cは修正され使用された:(29サイクル、質量損失=4.065g)。
【0188】
【0189】
別の試験を使用して、実施例24’のパネルの循環腐食性能を、Ford、L-467を使用して評価した。試験サイクルは、フォードモーターカンパニーの試験方法によって定義され、湿度、水霧、及び塩水噴霧への一連の暴露が包含される。塗装されたパネルを、6週間の期間、スクライブし、試験した。パネルを3回試験した。
【0190】
【0191】
前述の発明は、関連する法的基準に従って説明されており、したがって、記載は、本質的に限定的ではなく例示的なものである。開示された実施形態に対する変形及び修正は、当業者には明らかになる可能性があり、本発明の範囲内に入る。したがって、本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。