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特許7617204粘着フィルム、これを含む光学部材、およびこれを含む光学表示装置
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  • 特許-粘着フィルム、これを含む光学部材、およびこれを含む光学表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】粘着フィルム、これを含む光学部材、およびこれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20250109BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
C09J133/08
C09J133/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023135563
(22)【出願日】2023-08-23
(65)【公開番号】P2024031924
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0105795
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 智 軟
(72)【発明者】
【氏名】金 度 泳
(72)【発明者】
【氏名】申 東 明
(72)【発明者】
【氏名】韓 智 映
(72)【発明者】
【氏名】朴 慶 坤
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083939(JP,A)
【文献】特開2013-018871(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0118554(KR,A)
【文献】国際公開第2008/010367(WO,A1)
【文献】特開2011-162593(JP,A)
【文献】特開2011-157458(JP,A)
【文献】特開2016-102195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび硬化剤を含む組成物を硬化させてなる粘着フィルムであって、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が80万g/mol~150万g/molであり、かつガラス転移温度が-70℃~-50℃であり、
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、重量平均分子量が3,000g/mol~50,000g/molであり、かつガラス転移温度が30℃~50℃であり、
前記硬化剤は、3官能以上のイソシアネート系硬化剤を含み、
前記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0質量部超0.12質量部以下であり、
前記3官能以上のイソシアネート系硬化剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0質量部超1質量部以下であり、
前記粘着フィルムは、60℃でのせん断変形率の最大値が50%以下であり、かつ25℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力が600gf/25mm(235.4N/m)以上である、粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、85℃での前記ポリイミド系フィルムに対する剥離力が400gf/25mm(156.9N/m)以上である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着フィルムは、厚さの偏差が4nm以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、-20℃での貯蔵弾性率が0.2MPa以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着フィルムは、-20℃での貯蔵弾性率と60℃での貯蔵弾性率との比(-20℃での貯蔵弾性率:60℃での貯蔵弾性率)が、1:0.1~1:0.8である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、ホモポリマーのガラス転移温度が互いに異なるアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の2種以上を含む単量体混合物の共重合体である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、前記ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である、請求項6に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記単量体混合物は、前記アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体として、n-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートの混合物を含む、請求項7に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、100万g/mol~130万g/molである、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、重量平均分子量が10,000g/mol~40,000g/molであり、かつガラス転移温度が30℃~40℃である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記3官能以上のイソシアネート系硬化剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.001~0.1質量部である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは水酸基を有する、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が90℃以上である(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位を含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項14】
前記(メタ)アクリル系単量体は、メチルメタクリレート、メタクリル酸、およびtert-ブチルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項13に記載の粘着フィルム。
【請求項15】
前記組成物は、金属キレート系硬化剤をさらに含み、
前記金属キレート系硬化剤は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以下の含有量で含まれる、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項16】
前記粘着フィルムは、厚さが20μm以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、これを含む光学部材、およびこれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置に対する関心が高まりながら、光学表示装置に含まれる粘着フィルムとしても、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れた粘着フィルムが要求されている。また、光学表示装置の駆動時、長期間熱が放出される発光素子パネルにおいては、耐熱性のためにポリイミド系フィルムが基材フィルムとして使用されることから、ポリイミド系フィルムに対する剥離力が高い粘着フィルムが要求されている。
【0003】
光学表示装置を薄型化しようとする要求が高まりながら、粘着フィルムも薄型化しようとする傾向が強くなっている。ところが、従来のUV硬化型として折りたたみ(フォルダブル)特性を有する粘着フィルムは、UV硬化効率を高めるという側面で無溶剤型の組成物で製造されており、粘着フィルムの厚さを薄型化するのに限界を有していた。また、粘着フィルムは、組成物を塗布した後で硬化させて製造されるため、無溶剤型の組成物で薄型の厚さを有する粘着フィルムを製造するとき、厚さの偏差が低い粘着フィルムを製造することは容易ではなかった。従来の熱硬化型で折りたたみ(フォルダブル)特性を有する粘着フィルムが知られているが、ポリイミド系フィルムに対する剥離力を高めるのに限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-072951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、厚さが薄型でありながら厚さの偏差が低く、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れ、かつポリイミド系フィルムに対する剥離力が高い粘着フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、熱硬化型組成物から形成され、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れた粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、粘着フィルムが提供される。
【0008】
上記粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび硬化剤を含み、上記粘着フィルムは、60℃でのせん断変形率の最大値が50%以下であり、25℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力が600gf/25mm(235.4N/m)以上である。
【0009】
本発明の他の一実施形態によると、光学部材が提供される。
【0010】
当該光学部材は、上記粘着フィルムを含む。
【0011】
本発明のさらに他の一実施形態によると、光学表示装置が提供される。
【0012】
当該光学表示装置は、上記粘着フィルムを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厚さが薄型でありながら厚さの偏差が低く、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れ、かつポリイミド系フィルムに対する剥離力が高い粘着フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着フィルムのせん断変形率の測定結果を示す図である。
図2】ポリイミド系フィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムに対する本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの剥離強度の測定方法を示す模式図である。
図3】ガラス板に対する本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの剥離強度の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態をより詳細に説明する。しかし、本明細書に開示された技術は、ここで説明する各実施形態に限定されず、他の形態で具体化されることも可能である。ただし、ここで説明する各実施形態は、開示された内容を徹底的かつ完全にするために、そして、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0016】
ここで使用される用語は、例示的な各具現例を説明するために使用されたものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。
【0017】
本明細書において、「せん断変形率」は、60℃で測定された値であって、時間と共に粘着フィルムに一定のせん断方向の力が加えられたときに変形する程度を意味する。図1を参照すると、下記実験例での条件で時間と共に粘着フィルムに一定の力を加えたとき、粘着フィルムの変形率(strain)が測定される。60℃での「せん断変形率」の最大値は、図1に示すグラフにおいてせん断変形率が最大になる値を意味する。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0019】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲル浸透クロマトグラフィー法でのポリスチレン換算によって求めた値である。
【0020】
本明細書において、数値範囲の記載時、「X~Y」は、X以上Y以下(X≦、および≦Y)を意味する。
【0021】
本発明者らは、厚さが薄型でありながら厚さの偏差が低く、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れ、ポリイミド系フィルムに対する剥離力が高い粘着フィルムを提供した。本発明者らは、熱硬化型組成物から形成され、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れた粘着フィルムを提供した。本発明の粘着フィルムは、熱硬化型透明粘着剤(OCA)として折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置に使用されてもよい。
【0022】
粘着フィルムは、厚さが20μm以下であってもよい。厚さがこのような範囲であれば、粘着フィルムは、超薄型の厚さを提供し、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置に使用された場合にも、薄型化効果を十分に提供することができる。具体的には、粘着フィルムは、厚さが0μm超20μm以下であってもよく、5μm~15μmであってもよい。
【0023】
粘着フィルムは、25℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力が600gf/25mm(N/m)以上である。25℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力がこのような範囲であれば、粘着フィルムは、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置のうちポリイミド系フィルムに高信頼性で粘着され得る。例えば、該剥離力は、剥離角度180゜での剥離試験(peel test)において、600gf/25mm(235.4N/m)、650gf/25mm(255.0N/m)、700gf/25mm(274.6N/m)、750gf/25mm(294.3N/m)、800gf/25mm(313.9N/m)、850gf/25mm(333.5N/m)、900gf/25mm(353.1N/m)、950gf/25mm(372.7N/m)、1000gf/25mm(392.3N/m)、1050gf/25mm(412.0N/m)、1100gf/25mm(431.6N/m)、1150gf/25mm(451.2N/m)、1200gf/25mm(470.8N/m)、1250gf/25mm(490.4N/m)、1300gf/25mm(510.0N/m)、1350gf/25mm(530.0N/m)、1400gf/25mm(549.3N/m)、1450gf/25mm(568.9N/m)、1500gf/25mm(588.5N/m)、1550gf/25mm(608.1N/m)、1600gf/25mm(627.7N/m)、1650gf/25mm(647.4N/m)、1700gf/25mm(667.0N/m)、1750gf/25mm(686.6N/m)、1800gf/25mm(706.2N/m)、1850gf/25mm(725.8N/m)、1900gf/25mm(745.4N/m)、1950gf/25mm(765.1N/m)、または2000gf/25mm(784.7N/m)であってもよく、600gf/25mm(235.4N/m)~2000gf/25mm(784.7N/m)であってもよい。ここで、「高信頼性」は、粘着フィルムを折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置に適用した際、室温(例:25℃)、高温(例:60℃)、高温高湿(例:60℃および95%の相対湿度)、および低温(例:-20℃)で、粘着フィルムがポリイミド系フィルムから剥離されることなく、折りたたみ(フォルダブル)効果を提供することを意味する。なお、1gf/25mm=0.3924N/mである。
【0024】
粘着フィルムは、85℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力が400gf/25mm(156.9N/m)以上であってもよい。85℃でのポリイミド系フィルムに対する剥離力がこのような範囲であれば、粘着フィルムは、フォルダブル光学表示装置のうちポリイミド系フィルムに高信頼性で粘着され得る。例えば、該剥離力は、剥離角度180゜での剥離試験において、400gf/25mm(156.9N/m)、450gf/25mm(176.6N/m)、500gf/25mm(196.2N/m)、550gf/25mm(215.8N/m)、600gf/25mm(235.4N/m)、650gf/25mm(255.0N/m)、700gf/25mm(274.6N/m)、750gf/25mm(294.3N/m)、800gf/25mm(313.9N/m)、850gf/25mm(333.5N/m)、900gf/25mm(353.1N/m)、950gf/25mm(372.7N/m)、1000gf/25mm(392.3N/m)、1050gf/25mm(412.0N/m)、1100gf/25mm(431.6N/m)、1150gf/25mm(451.2N/m)、1200gf/25mm(470.8N/m)、1250gf/25mm(490.4N/m)、1300gf/25mm(510.0N/m)、1350gf/25mm(530.0N/m)、1400gf/25mm(549.3N/m)、1450gf/25mm(568.9N/m)、または1500gf/25mm(588.5N/m)であってもよく、400gf/25mm(157.0N/m)~1500gf/25mm(588.5N/m)であってもよい。
【0025】
粘着フィルムは、25℃および85℃の両方の温度でのポリイミド系フィルムに対する剥離力が高いと共に、25℃と85℃との間のポリイミド系フィルムに対する剥離力の比率が低いので、光学表示装置に適用するときに高信頼性を提供することができる。一具体例において、粘着フィルムは、ポリイミド系フィルムに対して、25℃での剥離力に対する85℃での剥離力の比率が0.55以上、例えば、0.58~1であってもよい。
【0026】
ポリイミド系フィルムは、他の高分子フィルムに比べて柔軟性および耐熱性に優れ、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置において、ウィンドウフィルムの基材フィルムまたはOLEDパネルなどの光学表示装置用パネルの基材フィルムとして多く使用されている。ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系フィルムを製造する当業者に知られている通常の方法を用いて製造されたフィルムであってもよい。例えば、ポリイミド系フィルムは、酸二無水物とジアミンとの間の反応によって形成されるフィルムであってもよい。酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、ベンゾキノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などであってもよく、ジアミンは、オキシジアニリン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどであってもよい。
【0027】
本発明の粘着フィルムは、60℃でのせん断変形率の最大値が50%以下であり、厚さの偏差が4nm以下である。このような範囲であれば、粘着フィルムは、広範囲な条件で折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置に適用するとき、厚さの不均一によって画面の品質が低下するという問題を最小化することができる。ここで「広範囲な条件」は、室温(例:25℃)、高温(例:60℃)、高温高湿(例:60℃および95%の相対湿度)、および低温(例:-20℃)を包括することができる。粘着フィルムは、具体的には、60℃でのせん断変形率の最大値が1%~50%、さらに具体的には10%~40%であってもよい。粘着フィルムは、具体的には、厚さの偏差が0nm~4nmであってもよい。
【0028】
粘着フィルムは、-20℃での貯蔵弾性率が0.2MPa以下、例えば、0.001MPa~0.2MPaであってもよく、0.05MPa~0.2MPaであってもよく、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、0.11MPa、0.12MPa、0.13MPa、0.14MPa、0.15MPa、0.16MPa、0.17MPa、0.18MPa、0.19MPa、または0.2MPaであってもよい。-20℃での貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、広範囲な条件で優れた折りたたみ(フォルダブル)特性を提供することを促進することができる。
【0029】
粘着フィルムは、25℃での貯蔵弾性率が0.2MPa以下、例えば、0.001MPa~0.2MPaであってもよく、0.1MPa~0.2MPaであってもよい。25℃での貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、広範囲な条件で優れた折りたたみ(フォルダブル)特性を容易に提供することができる。
【0030】
粘着フィルムは、60℃での貯蔵弾性率が0.2MPa以下、例えば、0.001MPa~0.2MPaであってもよく、0.01MPa~0.1MPaであってもよく、例えば、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、または0.1MPaであってもよい。60℃での貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、広範囲な条件で優れた折りたたみ(フォルダブル)特性を提供することを促進することができる。
【0031】
粘着フィルムは、-20℃での貯蔵弾性率と60℃での貯蔵弾性率との比率(-20℃での貯蔵弾性率:60℃での貯蔵弾性率)が1:0.1~1:0.8、具体的には、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、例えば、1:0.2~1:0.5であってもよい。貯蔵弾性率の比率がこのような範囲であれば、広範囲な条件で優れた折りたたみ(フォルダブル)特性を容易に提供することができる。
【0032】
粘着フィルムは、tanδ値が最大になる温度が0℃以下、具体的には、-50℃~0℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、さらに具体的には、-50℃~-15℃であってもよい。tanδ値が最大になる温度がこのような範囲であれば、広範囲な条件で優れたフォルダブル特性を容易に提供することができる。
【0033】
粘着フィルムは、可視光線領域、例えば、波長380nm~780nmでのヘイズが1%以下、例えば、0%~1%であってもよい。ヘイズがこのような範囲であれば、粘着フィルムが光学表示装置に使用され得る。
【0034】
粘着フィルムは、25℃でのガラス板に対する剥離力が600gf/25mm(235.4N/m)以上であってもよい。25℃でのガラス板に対する剥離力がこのような範囲であれば、粘着フィルムは、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置の各種の光学素子に高い信頼性で粘着され得る。例えば、当該剥離力は、剥離角度90゜での剥離試験により、600gf/25mm(235.4N/m)、650gf/25mm(255.0N/m)、700gf/25mm(274.6N/m)、750gf/25mm(294.3N/m)、800gf/25mm(313.9N/m)、850gf/25mm(333.5N/m)、900gf/25mm(353.1N/m)、950gf/25mm(372.7N/m)、1000gf/25mm(392.3N/m)、例えば、600gf/25mm(235.4N/m)~1000gf/25mm(392.3N/m)であってもよい。
【0035】
粘着フィルムは、25℃の温度条件で、コロナ処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムに対する剥離力が600gf/25mm(235.4N/m)以上であってもよい。25℃の温度条件でのコロナ処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムに対する剥離力がこのような範囲であれば、粘着フィルムは、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置の各種の光学素子に高い信頼性で粘着され得る。例えば、剥離角度180゜での剥離試験による剥離力は、600gf/25mm(235.4N/m)、650gf/25mm(255.0N/m)、700gf/25mm(274.6N/m)、750gf/25mm(294.3N/m)、800gf/25mm(313.9N/m)、850gf/25mm(333.5N/m)、900gf/25mm(353.1N/m)、950gf/25mm(372.7N/m)、または1000gf/25mm(392.3N/m)であってもよく、600gf/25mm(235.4N/m)~1000gf/25mm(392.3N/m)であってもよい。
【0036】
粘着フィルムは、85℃の温度条件で、コロナ処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムに対する剥離力が400gf/25mm(156.9N/m)以上であってもよい。85℃の温度条件でのコロナ処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムに対する剥離力がこのような範囲であれば、粘着フィルムは、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置の各種の光学素子に高い信頼性で粘着され得る。例えば、剥離角度180゜での剥離試験による当該剥離力は、400gf/25mm(156.9N/m)、450gf/25mm(176.6N/m)、500gf/25mm(196.2N/m)、550gf/25mm(215.8N/m)、600gf/25mm(235.4N/m)、650gf/25mm(255.0N/m)、700gf/25mm(274.6N/m)、750gf/25mm(294.3N/m)、800gf/25mm(313.9N/m)、850gf/25mm(333.5N/m)、900gf/25mm(353.1N/m)、950gf/25mm(372.7N/m)、または1000gf/25mm(392.3N/m)であってもよく、400gf/25mm(156.9N/m)~1000gf/25mm(392.3N/m)であってもよい。
【0037】
粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび硬化剤を含み、硬化剤は、イソシアネート系硬化剤であり得る。粘着フィルムは、金属キレート系硬化剤をさらに含むことができる。粘着フィルムは、シランカップリング剤をさらに含むことができる。一具体例において、粘着フィルムは、上記組成物の熱硬化物であり得る。
【0038】
一具体例において、粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび硬化剤を含む組成物から形成されてもよい。該硬化剤は、3官能以上のイソシアネート系硬化剤であってもよい。上記組成物は、金属キレート系硬化剤をさらに含むことができる。上記組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。一具体例において、粘着フィルムは、上記組成物の熱硬化物を含むことができる。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体は、下記で説明する(メタ)アクリル系オリゴマーおよび硬化剤と反応することによって、粘着フィルムのマトリックスを形成し、剥離力およびせん断変形率を提供することを促進することができる。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体であってもよい。
【0041】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、炭素数1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体から選択されたものが使用されてもよい。炭素数1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、エステル部位に炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであって、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびドデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0042】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に90質量%以上、具体的には95質量%~100質量%、さらに具体的には99質量%~100質量%の含有量で含まれてもよい。アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量がこのような範囲であれば、粘着フィルムのマトリックスを容易に形成することができる。
【0043】
(メタ)アクリル系共重合体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体であってもよい。ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を低下させ、これにより、本発明のせん断変形率および剥離力に容易に到逹することができる。(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が、具体的には-80℃~-50℃であってもよい。なお、「(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度」は、当業者に知られている通常の方法で測定されたり、商業的カタログを参照して得ることができる。
【0044】
一具体例において、ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に90質量%以上、具体的には95質量%~100質量%、さらに具体的には99質量%~100質量%の含有量で含まれてもよい。ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体の含有量がこのような範囲であれば、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を容易に低下させることができる。
【0045】
ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体は、上記アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体であってもよく、ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に1種以上、好ましくは2種以上含有されてもよい。
【0046】
一具体例において、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下である第1単量体、およびホモポリマーのガラス転移温度が-50℃以下であって、上記第1単量体とは異なる第2単量体の混合物であってもよい。第1単量体は、第2単量体と比べた際、ホモポリマーのガラス転移温度が互いに異なり、好ましくはさらに低くてもよい。第1単量体および第2単量体の総モル数を100としたとき、混合物中の第1単量体と第2単量体とのモル比(第1単量体:第2単量体)は、40:60~70:30であってもよい。第1単量体と第2単量体とのモル比がこのような範囲であれば、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を容易に低下させることができる。例えば、第1単量体は、n-ブチルアクリレートなどであってもよい。第2単量体は、2-エチルヘキシルアクリレートなどであってもよい。
【0047】
上記の単量体混合物は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体のうちの少なくとも1種を含まないか、微量で含むことができる。しかし、本発明の効果に影響を与えない範囲で、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体のうちの少なくとも1種をさらに含むこともできる。具体的には、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、単量体混合物中の1質量%以下、例えば、0質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.4質量%、0.45質量%、0.5質量%、0.55質量%、0.6質量%、0.65質量%、0.7質量%、0.75質量%、0.8質量%、0.85質量%、0.9質量%、0.95質量%、または1質量%であってもよく、0質量%~1質量%、0質量%超0.5質量%以下、または0質量%超0.05質量%以下であってもよい。
【0048】
上記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、水酸基(ヒドロキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体、カルボン酸基(カルボキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体、アミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアミド基を有する(メタ)アクリル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0049】
水酸基(ヒドロキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体としては、1個以上の水酸基(ヒドロキシ基)を有する炭素数1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体から選択されたものが使用されてもよい。例えば、水酸基(ヒドロキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体は、エステル部位に1個以上の水酸基(ヒドロキシ基)を有する炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであって、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0050】
カルボン酸基(カルボキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸などであってもよい。
【0051】
アミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体は、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリレートなどを含むことができる。
【0052】
アミド基を有する(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドなどを含むことができる。
【0053】
(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体または交互共重合体であってもよいが、好ましくは、ランダム型の(メタ)アクリル系共重合体である。
【0054】
(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度が-50℃以下、例えば、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-70℃~-50℃であってもよい。(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度がこのような範囲であれば、本発明のせん断変形率および剥離力に容易に到逹することができる。
【0055】
(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が80万g/mol以上、例えば、80万g/mol、90万g/mol、100万g/mol、110万g/mol、120万g/mol、130万g/mol、140万g/mol、150万g/mol、好ましくは80g/mol万~150万g/mol、さらに好ましくは100万g/mol~130万g/molであってもよい。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量がこのような範囲であれば、本発明のせん断変形率および剥離力に容易に到逹することができる。なお、上記「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算値として求められてもよい。
【0056】
(メタ)アクリル系共重合体は、多分散指数(PDI、重量平均分子量/数平均分子量)が3~10、例えば、3~5であってもよい。(メタ)アクリル系共重合体の多分散指数がこのような範囲であれば、本発明の効果を容易に具現することができる。
【0057】
(メタ)アクリル系共重合体は、酸価が0.5mgKOH/g以下、具体的には0mgKOH/g~0.5mgKOH/gであってもよく、さらに具体的には0mgKOH/gであってもよい。(メタ)アクリル系共重合体の酸価がこのような範囲であれば、金属含有光学素子に接触したとき、腐食を抑制することができる。
【0058】
(メタ)アクリル系共重合体は、上記単量体混合物を通常の重合方法で重合させて製造されてもよい。重合方法は、当業者に知られている通常の方法を含むことができる。例えば、(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物に開始剤を添加した後、通常の共重合、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などで製造されてもよい。重合温度は、60℃~70℃であってもよく、重合時間は6時間~8時間であってもよい。開始剤としては、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルもしくは過酸化アセチルなどの過酸化物などを含む通常のものを使用することができる。
【0059】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明のせん断変形率を提供し、ポリイミド系フィルムに対する粘着フィルムの剥離力を高めることを促進することができる。
【0060】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系共重合体に比べてガラス転移温度が高いので、粘着フィルムが常温で適正な貯蔵弾性率を有することができる。
【0061】
一具体例において、(メタ)アクリル系オリゴマーは、ガラス転移温度が60℃以下、例えば、60℃未満、20℃~60℃、例えば、30℃~50℃、例えば、30℃~40℃であってもよい。ガラス転移温度がこのような範囲であれば、低温での貯蔵弾性率を低下させながら、ポリイミド系フィルムに対する粘着フィルムの剥離力を高めることを促進することができる。
【0062】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系共重合体に比べて重量平均分子量が低い。例えば、(メタ)アクリル系オリゴマーは、重量平均分子量が3,000g/mol~50,000g/mol、例えば、10,000g/mol~40,000g/molであってもよい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量がこのような範囲であれば、低温での貯蔵弾性率を低下させながら、ポリイミド系フィルムに対する粘着フィルムの剥離力を高めることを促進することができる。
【0063】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、架橋性官能基として水酸基(ヒドロキシ基)を有することができる。これにより、架橋性官能基の含有量が低い(メタ)アクリル系共重合体を使用した場合であっても、硬化剤による反応および剥離力を高めることができる。水酸基(ヒドロキシ基)は、(メタ)アクリル系オリゴマーを製造する際、上述した水酸基(ヒドロキシ基)を有する(メタ)アクリル系単量体を使用することによって提供され得る。
【0064】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が90℃以上、例えば、ホモポリマーのガラス転移温度が100℃~120℃である(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位を主要な構成単位として含むことができる。(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度がこのような範囲であれば、粘着フィルムの高温での貯蔵弾性率が過度に高くなることを防止することができ、上記のガラス転移温度の範囲を確保することができる。例えば、上記(メタ)アクリル系単量体は、単官能の(メタ)アクリル系単量体であって、具体的には、メチルメタクリレート、メタクリル酸、およびtert-ブチルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種などであってもよいが、これらに制限されない。上記「主要構成単位」は、(メタ)アクリル系オリゴマーの構成単位全体のうち、該当する単量体が50質量%以上、または60質量%以上含まれることを意味する。
【0065】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以下、例えば、ガラス転移温度が-60℃~0℃である(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位をさらに含むこともできる。例えば、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以下である(メタ)アクリル系単量体は、n-ブチルアクリレートなどであってもよい。
(メタ)アクリル系オリゴマーは、上記単量体混合物を通常の重合方法で重合させて製造されてもよい。重合方法は、当業者に知られている通常の方法を含むことができる。例えば、(メタ)アクリル系オリゴマーは、単量体混合物に開始剤を添加した後、通常の重合、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などで製造されてもよい。このとき、重合温度および重合時間は、上述した重量平均分子量およびガラス転移温度を提供する範囲内で調節されてもよい。開始剤としては、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルもしくは過酸化アセチルなどの過酸化物などを含む通常のものを使用することができる。
【0066】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以下、例えば、0質量部超5質量部以下、0.001質量部~0.1質量部、0.01質量部~0.1質量部の含有量で含まれてもよい。(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量がこのような範囲であれば、本発明のせん断変形率を提供し、ポリイミド系フィルムに対する粘着フィルムの剥離力を高めることを促進することができる。
【0067】
硬化剤は、粘着フィルムの剥離力を高めながら粘着フィルムの架橋密度を高めることによって、粘着フィルムのせん断変形率を低下させることを促進することができる。
【0068】
一具体例において、硬化剤としては、3官能以上のイソシアネート系硬化剤が使用されてもよい。3官能以上のイソシアネート系硬化剤は、2官能のイソシアネート系硬化剤に比べて粘着フィルムの剥離力を高めながら粘着フィルムの架橋密度を高めることによって、粘着フィルムのせん断変形率を著しく容易に低くすることができる。
【0069】
3官能以上のイソシアネート系硬化剤は、イソシアネート基(NCO)を3個以上有する硬化剤であれば制限なく使用することができる。具体的には、イソシアネート系化合物の3官能イソシアヌレート、トリメチロールプロパンなどのポリオール化合物との付加物体、またはビュレット体などを含むことができる。イソシアネート系化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水素化XDI)、H12-MDI(水素化MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;または上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類;などを含むことができる。例えば、3官能以上のイソシアネート系硬化剤としては、トルエンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの間の3官能イソシアネート系付加体などが使用されてもよい。
【0070】
硬化剤、例えば、3官能以上のイソシアネート系硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以下、例えば、0質量部超1質量部以下、0.001質量部~1質量部、0.001質量部~0.5質量部、0.001質量部~0.1質量部の含有量で含まれてもよい。3官能以上のイソシアネート系硬化剤の含有量がこのような範囲であれば、粘着フィルムの剥離力を確保しながらせん断変形率を容易に確保することができる。
【0071】
上記の組成物は、硬化剤として金属キレート系硬化剤をさらに含むことができる。
【0072】
金属キレート系硬化剤は、硬化触媒として組成物を熱硬化させたとき、硬化速度を高めることができる。
【0073】
金属キレート系硬化剤は、金属とキレート結合とで構成される硬化剤であって、当業者に知られている通常の硬化剤を含むことができる。一具体例において、金属キレート系硬化剤は、金属と2個以上のキレート結合とを有する硬化剤、例えば、金属と3個~6個のキレート結合とを有する硬化剤を含むことができる。例えば、上記金属の例としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、コバルト等が挙げられ、好ましくは、アルミニウムを含むことができる。例えば、キレート結合を形成する配位子としては、アセチルアセトネート、エチルアセトアセテートなどが挙げられるが、これらに制限されない。具体的には、金属キレート系硬化剤は、アセチルアセトネートアルミネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(アセトアセテート)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)、およびコバルトトリス(アセチルアセトネート)からなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに制限されない。
【0074】
金属キレート系硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体 100質量部に対して5質量部以下、例えば、0質量部以上5質量部以下、0質量部超5質量部以下、0.001質量部~5質量部、0.001質量部~1質量部、0.001質量部~1質量部の含有量で含まれてもよい。金属キレート系硬化剤の含有量がこのような範囲であれば、粘着フィルムの熱硬化率を高めることができる。
【0075】
上記の組成物、すなわち、粘着フィルムは、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0076】
シランカップリング剤は、粘着フィルムの剥離力をさらに高めることができる。シランカップリング剤は、当業者に知られている通常のシランカップリング剤を含むことができる。例えば、シランカップリング剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤等が挙げられるがが、これらに制限されない。
【0077】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~5質量部の含有量で含まれてもよい。シランカップリング剤の含有量がこのような範囲であれば、剥離力の改善効果が得られる。
【0078】
上記組成物は、溶剤をさらに含むことができる。溶剤は、組成物から薄型の厚さ、特に、厚さ20μm以下の粘着フィルムを作るとき、粘着フィルムの表面を均一にすることができる。溶剤としては、当業者に知られている通常の溶剤を制限なく使用することができる。例えば、溶剤は、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤であってもよいが、これらに制限されない。上記組成物は、固形分含有量が50質量%以下、例えば、20質量%以下であってもよい。
【0079】
上記組成物、すなわち、粘着フィルムは、添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、粘着フィルムに追加的な機能を提供することができる。具体的には、添加剤は、UV吸収剤、反応抑制剤、接着性向上剤、揺変性付与剤、導電性付与剤、色素調整剤、安定化剤、酸化防止剤、レベリング剤、および帯電防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに制限されない。組成物、すなわち、粘着フィルムのうち添加剤の含有量は、本発明の効果に影響を与えない範囲内で適切に選択され得る。
【0080】
粘着フィルムは、上記組成物、好ましくは、溶剤を含有する組成物を熱硬化させて製造されてもよい。例えば、離型フィルムに前記組成物を所定の厚さで塗布した後で乾燥させ、溶剤を除去することによって塗膜を製造し、該塗膜を熱硬化条件で処理することによって製造され得る。熱硬化条件は、該塗膜を90℃~120℃で1分~1時間にわたって熱処理することを意味し得る。
【0081】
以下、本発明の一実施形態である光学部材を説明する。
【0082】
光学部材は、光学フィルム、および該光学フィルムの少なくとも一面に形成された粘着フィルムを含み、粘着フィルムは、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムを含む。よって、光学部材は、良好なベンディングおよび/または良好な折りたたみ(フォルディング)特性を有するため、折りたたみ(フォルダブル)ディスプレイ装置に使用され得る。
【0083】
一実施形態において、光学フィルムは、ディスプレイ装置のうち一定の光学的機能、例えば、偏光、光学補償、ディスプレイ画質改善、および/または導電性を提供するものである。光学フィルムとしては、ウィンドウフィルム、ウィンドウ、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射偏光フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、OLED素子バリア層、プラスチックLCD基板、ITO(indium tin oxide)、FTO(fluorinated tin oxide)、AZO(aluminum dopped zinc oxide)、CNT(carbon nanotube)、Agナノワイヤ、グラフェンなどを含む透明電極フィルムなどを挙げることができる。光学フィルムの製造方法は、本発明の属する分野で通常の知識を有する者によって容易に製造され得る。
【0084】
例えば、タッチパッドに粘着フィルムを用いてウィンドウや光学フィルムを付着させ、タッチパネルを形成することができる。または、従来のように通常の偏光フィルムに粘着フィルムを適用することもできる。
【0085】
他の実施形態において、光学フィルムは、光学的に透明な光学フィルムであって、光学フィルムおよび粘着フィルムを含む光学部材は、ディスプレイ素子の支持層として機能することができる。例えば、ディスプレイ素子は、ウィンドウフィルムなどを含むことができる。ウィンドウフィルムは、上記光学部材、および上記光学部材上に形成されたウィンドウコーティング層(例:シリコン系コーティング層)を含むことができる。具体的には、光学フィルムは、可視光線領域で全光線透過率が90%以上であり、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレートなどを含むポリアクリレート樹脂、環状オレフィンポリマー樹脂、アクリル樹脂、およびポリアミド樹脂のうち1つ以上の樹脂で形成されたフィルムであってもよい。光学フィルムは、厚さが10μm~100μm、具体的には20μm~75μm、さらに具体的には30μm~50μmであってもよい。光学フィルムの厚さがこのような範囲であれば、光学フィルムがディスプレイ素子の支持層として使用され得る。
【0086】
光学部材は、光学フィルム、及び光学フィルムの一面に形成された粘着フィルムを含む2層の光学部材であってもよい。又は、光学部材は、2個以上の光学フィルムを含み、前記光学フィルムのうち少なくとも2個以上が本発明の粘着フィルムによって積層された3層以上のフィルム積層体であってもよい。
【0087】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0088】
光学表示装置は、有機発光素子表示装置などを含む発光素子表示装置、液晶表示装置などを含むことができる。光学表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置を含むことができる。しかし、光学表示装置は、ノン・フレキシブルディスプレイ装置を含むこともできる。
【実施例
【0089】
以下、本発明の好適な実施例を通じて、本発明の構成および効果をさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明の理解を促進するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例により限定されることはない。
【0090】
(実施例1)
n-ブチルアクリレート(n-BA)50質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)49質量部、および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)1質量部を含む単量体混合物100質量部を重合することによって、(メタ)アクリル系バインダーを製造した。
【0091】
固形分を基準にして、上記で製造した(メタ)アクリル系バインダー 100質量部、(メタ)アクリル系オリゴマー1 0.08質量部、3官能イソシアネート系硬化剤 0.03質量部、金属キレート系硬化剤 0.05質量部、およびシランカップリング剤 0.05質量部を混合し、溶剤として有機溶剤である酢酸エチルを添加することによって、固形分の含有量が20質量%である組成物を製造した。
【0092】
上記で得られた組成物を、PET製の第1離型フィルム(軽薄離型フィルム)に所定の厚さで塗布した後乾燥させ、乾燥後に厚さ15μmの塗膜を製造した。この塗膜を、PET製の第2離型フィルム(中薄離型フィルム)で覆った後、塗膜を100℃で3分間乾燥させることによって、第1離型フィルムと第2離型フィルムとの間に、厚さ15μmの粘着フィルムが存在する粘着シートを製造した。
【0093】
(実施例2~実施例3)
実施例1において、(メタ)アクリル系バインダーおよび(メタ)アクリル系オリゴマーの種類を下記表1のように変更し、組成物中の各成分の含有量を下記表1のように変更した点を除いては、実施例1と同様の方法で粘着フィルムを製造した。下記表1において、各成分の含有量の単位は質量部であり、「-」は、該当の成分が含まれないことを意味する。
【0094】
(比較例1~比較例5)
実施例1において、(メタ)アクリル系バインダーおよび(メタ)アクリル系オリゴマーの種類を下記表1のように変更し、組成物中の各成分の含有量を下記表1のように変更した点を除いては、実施例1と同様の方法で粘着フィルムを製造した。
【0095】
(比較例6)
4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)20質量部、および2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)80質量部を含む単量体混合物100質量部、開始剤としてOmnirad(登録商標) 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、IGM Resins B.V.社製)0.03質量部を反応器内でよく混合した。反応器内の溶存酸素を窒素ガスに交換した後、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することによって混合物を部分的に重合させ、25℃で5,000mPa・sの粘度を有する粘性液体を製造した。粘性液体に、開始剤であるOminirad(登録商標) 184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resins B.V.社製)0.5質量部を添加して混合し、無溶剤型の粘着剤組成物を製造した。粘着剤組成物を離型フィルムであるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、紫外線で2000mJ/cmの光量を照射することによって、粘着フィルム(厚さ15μm)とPETフィルムとの粘着シートを製造した。
【0096】
実施例および比較例の粘着フィルムの構成を下記表1に示した。実施例および比較例の粘着フィルムに対して、下記表2に示す物性を評価した。
【0097】
(1)粘着フィルムの厚さの偏差(単位:nm):PET製の第1離型フィルムと、PET製の第2離型フィルムとの間に、実施例および比較例で製造された厚さ15μmの粘着フィルムがある粘着シートに対して、厚さ測定器(株式会社ミツトヨ製、ID-C112X)を用いて、面内方向全体で厚さ(厚さ1)を測定した。その後、同様の方法で第1離型フィルムの厚さ(厚さ2)および第2離型フィルムの厚さ(厚さ3)をそれぞれ測定した。(厚さ1-厚さ2-厚さ3)を計算したときの最大値と最小値とを求めた後、(最大値-最小値)を厚さの偏差とした。
【0098】
(2)ポリイミド(PI)系フィルムに対する剥離力(単位:gf/25mm、N/m):実施例および比較例の粘着シートを長さ100mm×幅25mmの長方形の大きさに切断した後、PET製の第1離型フィルムを剥離した。次に、ポリイミド系フィルム(GL200A、SKCコーロン製、長さ150mm×幅25mm×厚さ50μm)の表面に粘着フィルムを合わせた後、PET製の第2離型フィルムを剥離し、ポリイミド系フィルム(GL200A、SKCコーロン製、長さ150mm×幅25mm×厚さ50μm)に合わせ、2kgのハンドローラーで粘着させることによって、図2の(a)のように、ポリイミド系フィルム、粘着フィルム、およびポリイミド系フィルムの順に積層された試験片を製造した。製造された試験片を3.5bar(0.35MPa)の圧力、および50℃で1000秒間オートクレーブし、TA.XT-Plusテクスチャーアナライザー(Texture Analyzer)(Stable Micro System製)に固定した。TA.XT-Plusテクスチャーアナライザーを用いて、25℃または85℃で、図2の(b)のように、一の側のポリイミド系フィルムは固定し、他の側のポリイミド系フィルムは、剥離角度180゜および剥離速度300mm/minで引っ張り、ポリイミド系フィルムから粘着フィルムが剥離されるT-ピール(peel)剥離強度を測定した。
【0099】
(3)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する剥離力(単位:gf/25mm、N/m):上記(2)のポリイミド系フィルムの代わりに、コロナ処理されたPET製離型フィルム(コロナ処理条件:1回当たり78doseの線量で放電させながらコロナ2回処理(総線量:156dose))を使用し、コロナ処理されたPET製離型フィルム、粘着フィルム、およびコロナ処理されたPET製離型フィルムの順に積層された試験片を製造した。この試験片を用いて、上記(2)と同様の方法で、25℃または85℃で、コロナ処理されたPET製離型フィルムから粘着フィルムが剥離される剥離角度180゜および剥離速度300mm/minの条件下で剥離強度を測定した。
【0100】
(4)ガラス板に対する剥離力(単位:gf/25mm、N/m):ポリイミド系フィルムの代わりにガラス板(ソーダライムガラス板)を使用し、図3の(a)に示すガラス板-粘着フィルム-コロナ処理されたPET離型フィルムの順に積層された試験片を製造した。この試験片を使用し、図3の(b)に示す方法で、25℃でガラス板から粘着フィルムが剥離される剥離角度90゜および剥離速度300mm/minの条件下での剥離強度を測定した。
【0101】
(5)せん断変形率(単位:%):実施例および比較例の粘着シートから両側のPETフィルムを離型させ、粘着フィルム(長さ×幅×厚さ:100mm×25mm×15μm)を得た。複数個の粘着フィルムを積層し、直径が8mmの穿孔機で積層物を穿孔することによって、上部面と下部面とを有する円柱試験片(厚さ:400μm、直径:8mm)を製造した。
【0102】
製造した円柱試験片の上部面および下部面は、それぞれ動的粘弾性測定装置であるレオメーター(TA社製、DHR3)の上部治具と下部治具とに噛み合うように装着した。チャンバー温度60℃、軸力(Axial force)1N、トルク(Torque)2000Paにセッティングし、時間を600秒に指定してから600秒間力を加え(600秒のストレス(stress))、600秒間力を除去した後(600秒のリリース(release))、600秒のストレスであるときの変形率の値が最大の変形率の値になり、この値をせん断変形率として得た。せん断変形率を測定すると、図1のグラフ形状を有する、時間による変形率の値を得ることができる。図1において、X軸は時間(単位:秒)であり、Y軸はせん断変形率(単位:%)である。
【0103】
(6)貯蔵弾性率(単位:MPa):実施例および比較例で製造した粘着シートから2個の離型フィルムを剥離した後、複数個の粘着フィルムを積層し、500μmの厚さでサンプルを作製した。粘着フィルムのサンプルは、直径が8mmである穿孔機で積層物を穿孔し、試験片として使用した。動的粘弾性測定装置であるレオメーター(TA社、DHR3)を使用し、-50℃~100℃の温度範囲において、5℃/minの温度上昇速度で温度スイープ試験(temperature sweep test)モードによって1%の変形率および1Hzの条件下での貯蔵弾性率を測定した。-20℃および60℃のそれぞれで貯蔵弾性率を測定した。
【0104】
(7)tanδ値が最大になる温度(単位:℃、tanδ MAX):(6)と同様の方法で、貯蔵弾性率と損失弾性率とを求めた。貯蔵弾性率と損失弾性率との間の比率でtanδ値を得た後、tanδ値が最大になる温度を求めた。
【0105】
(8)低温での折りたたみ(フォルディング)特性:実施例および比較例で製造された粘着シートにおいて、両側の離型フィルムをそれぞれ分離し、粘着フィルムを得た。粘着フィルムを、2個のコロナ処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に入れ、PETフィルムのコロナ処理された面を粘着フィルムと接触させ、ローラーで付着させた後、12時間にわたって常温で熟成(aging)し、横×縦(70mm×140mm)の大きさに切断することによって試験片を製造した。切断された試験片を、粘着剤(4965、Tesa社製)を用いて屈曲性評価装置(CFT-200、Covotech社製)に固定し、-20℃で試験片の縦(140mm)を、曲率半径が3mmになるように1分当たり30サイクルの速度で折り曲げ(ベンディング、粘着フィルムを半分に1回曲げてから広げることを1サイクルと言う)を繰り返した。ベンディングを1サイクルとして繰り返したとき、肉眼で、ポリエチレンテレフタレートフィルムにクラックが発生する最初のサイクル数を測定した。最初のサイクル数が大きい粘着フィルムは、ベンディングによるポリエチレンテレフタレートフィルムのストレスを容易に緩和(relaxation)できる粘着フィルムを意味する。最初のサイクル数が10万回以上である場合はOKとし、10万回未満である場合はNGとした。
【0106】
実施例および比較例の構成を下記表1に、上記の各評価結果を下記表2に、それぞれ示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
上記表1における各成分は、以下の通りである:
(メタ)アクリル系オリゴマー1:Saiden社製;4-ヒドロキシブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸およびn-ブチルアクリレートから形成されたオリゴマー
(メタ)アクリル系オリゴマー2:Saiden社;4-ヒドロキシブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸およびtert-ブチルメタクリレートから形成されたオリゴマー
3官能NCO系硬化剤:TDI(トルエンジイソシアネート)-TMP(トリメチロールプロパン)変性アダクト系、Saiden社製
2官能NCO系硬化剤:HDI系、NCI社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤
金属キレート系硬化剤:Saiden社製、アルミニウムキレート系硬化剤
シランカップリング剤:Saiden社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
【0110】
上記表2に示すように、本発明の粘着フィルムは、厚さが薄型でありながら厚さの偏差が低く、熱硬化型組成物から形成され、折りたたみ(フォルダブル)特性に優れていた。本発明の粘着フィルムは、ポリイミド系フィルムに対する剥離力が高かったので、上記表1および表2には示していないが、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置のうち、ポリイミド系フィルムに高信頼性で粘着され得ると予想される。
【0111】
しかしながら、従来の光硬化型で製造された比較例6の粘着フィルムは、薄型に製造したときに厚さの偏差が大きかった。本発明の構成を満足していない比較例1~比較例5の粘着フィルムは、ポリイミド系フィルムに対する剥離力が600gf/25mm(235.4N/m)未満であったため、上記表1および表2には示していないが、折りたたみ(フォルダブル)光学表示装置のうち、ポリイミド系フィルムに対する信頼性が低いと予想される。
【0112】
本発明の単純な変形および変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
図1
図2
図3