(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20250110BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20250110BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20250110BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20250110BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/12 301
G02B6/42
H01S5/0225
(21)【出願番号】P 2021074752
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/078735(WO,A1)
【文献】特開2001-194551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0228404(US,A1)
【文献】国際公開第2017/090333(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184106(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/261232(WO,A1)
【文献】特開2017-187719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
H01S 5/00- 5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って配列された複数のレーザダイオードと、
前記複数のレーザダイオードから出射された光を、それぞれ、導波させる複数の光導波路を有する平面光波回路と、
前記複数の光導波路から出射された前記光が入射するレンズと、
を備え、
前記複数のレーザダイオードは、第1ピーク波長で発振する第1レーザダイオードと、前記第1ピーク波長よりも長い第2ピーク波長で発振する第2レーザダイオードとを含み、
前記複数の光導波路は、前記第1レーザダイオードから出射された第1光を第1光入射端から入射させ、第1光出射端から出射する第1光導波路と、前記第2レーザダイオードから出射された第2光を第2光入射端から入射させ、第2光出射端から出射する第2光導波路とを含み、
前記第1光出射端と前記第2光出射端との中心間距離は、前記第1光入射端と前記第2光入射端との中心間距離よりも短く、
前記第1光出射端は、前記第1光を、前記第1光出射端の法線方向に対して傾斜した第1方向に屈折させて出射し、
前記第2光出射端は、前記第2光を、前記第2光出射端の法線方向に対して傾斜した第2方向に屈折させて出射し、
前記第1方向における前記第1光出射端から前記レンズの表面までの第1距離は、前記第2方向における前記第2光出射端から前記レンズの表面までの第2距離よりも短
く、
平面視において、前記第1光導波路の導波方向は、前記第1光出射端の法線方向に対して第1角度で交差し、前記第2光導波路の導波方向は、前記第2光出射端の法線方向に対して第2角度で交差し、前記第1角度は前記第2角度よりも小さく、
前記第1光導波路の前記第1光出射端に接続する部分と、前記第2光導波路の前記第2光出射端に接続する部分とは、互いに非平行である、発光装置。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2方向は同じ方向である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記平面光波回路は、
前記第1光入射端および前記第2光入射端を含む光入射面と、
前記第1光出射端および前記第2光出射端を含む光出射面を有し、
前記光出射面の法線方向は、前記レンズの光軸方向に対して傾斜している、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記レンズの光軸方向は、前記所定方向に対して傾斜している。請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
平面視において、前記平面光波回路の前記光出射面は、1または複数の段差を有している、請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1光出射端と前記第2光出射端との中心間距離は、2μm以上200μm以下である、請求項1か
ら5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数のレーザダイオードは、前記第2ピーク波長よりも長い第3ピーク波長で発振する第3レーザダイオードを含み、
前記複数の光導波路は、前記第3レーザダイオードから出射された第3光を第3光入射端から入射させ、第3光出射端から出射する第3光導波路を含み、
前記第2光出射端と前記第3光出射端との中心間距離は、前記第2光入射端と前記第3光入射端との中心間距離よりも短く、
前記第3光出射端は、前記第3光を、前記第3光出射端の法線方向に対して傾斜した第3方向に屈折させて出射し、
前記第2距離は、前記第3光出射端から前記第3方向における前記レンズの表面までの第3距離よりも短い、請求項1か
ら5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1方向と前記第2方向と前記第3方向は同じ方向である、請求
項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1ピーク波長、前記第2ピーク波長、および前記第3ピーク波長は、いずれも、可視光域に含まれる、請求
項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記複数のレーザダイオードは、前記第1ピーク波長、第2ピーク波長、および第3ピーク波長のいずれとも異なる第4ピーク波長で発振する第4レーザダイオードを含み、
前記複数の光導波路は、前記第4レーザダイオードから出射された第4光を第4光入射端から入射させ、第4光出射端から出射する第4光導波路を含む、請求
項7に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1ピーク波長、前記第2ピーク波長、前記第3ピーク波長、および前記第4ピーク波長は、いずれも、可視光域に含まれる、請求
項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第4ピーク波長は、780nmから2000nmの範囲にある、請求
項10に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1ピーク波長は、400nmから495nmの範囲にあり、
前記第2ピーク波長は、495nmから600nmの範囲にあり、
前記第3ピーク波長は、600nmから750nmの範囲にある、請求項
7から12のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオード(半導体レーザ素子)を備える発光装置の用途は、様々な分野に拡大しつつある。特許文献1は、複数のレーザダイオードから出射されたレーザ光を光導波路アレイによって変調して感光材料に記録する装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、レーザダイオード(LD)単体では達成不可能な発光点ピッチと発光位置を実現し、小型化可能な発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の発光装置は、例示的な実施形態において、所定方向に沿って配列された複数のレーザダイオードと、前記複数のレーザダイオードから出射された光を、それぞれ、導波させる複数の光導波路を有する平面光波回路と、前記複数の光導波路から出射された前記光が入射するレンズと、を備える。前記複数のレーザダイオードは、第1ピーク波長で発振する第1レーザダイオードと、前記第1ピーク波長よりも長い第2ピーク波長で発振する第2レーザダイオードとを含む。前記複数の光導波路は、前記第1レーザダイオードから出射された第1光を第1光入射端から入射させ、第1光出射端から出射する第1光導波路と、前記第2レーザダイオードから出射された第2光を第2光入射端から入射させ、第2光出射端から出射する第2光導波路とを含む。前記第1光出射端と前記第2光出射端との中心間距離は、前記第1光入射端と前記第2光入射端との中心間距離よりも短い。前記第1光出射端は、前記第1光を、前記第1光出射端の法線方向に対して傾斜した第1方向に屈折させて出射する。前記第2光出射端は、前記第2光を、前記第2光出射端の法線方向に対して傾斜した第2方向に屈折させて出射する。前記第1方向における前記第1光出射端から前記レンズの表面までの第1距離は、前記第2方向における前記第2光出射端から前記レンズの表面までの第2距離よりも短い。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施形態によれば、レーザダイオード(LD)単体では達成不可能な発光点ピッチと発光位置を実現し、小型化可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態における発光装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、Y軸の負方向側から
図1の発光装置の平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)を見た光入射面を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、Y軸の正方向側から
図1の発光装置のPLCを見た光出射面を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態におけるPLCの複数の光出射端から光が屈折されて出射する様子を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態におけるPLCの複数の光出射端からレンズの表面までの距離の関係を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態における発光装置の他の構成例を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、Y軸の負方向側から
図5の発光装置のPLCを見た光入射面を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、Y軸の正方向側から
図5の発光装置のPLCを見た光出射面を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態におけるPLCの変形例の一部分を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態におけるPLCの他の変形例の一部分を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態における発光装置の更に他の構成例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態における発光装置の更に他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1、
図2A、
図2B、および
図3を参照して、本開示の実施形態における発光装置の基本的な構成例を説明する。図面には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が模式的に示されている。
【0009】
まず、
図1を参照する。
図1は、本実施形態における発光装置の構成例を模式的に示す平面図である。
図1に示す発光装置1000は、所定方向(
図1のX軸方向)に沿って配列された複数のレーザダイオード10を備える。
図1では、複数のレーザダイオード10の形状およびサイズは、相互に等しく記載されているが、形状またはサイズは、互いに異なっていてもよい。図示される例において、複数のレーザダイオード10は、第1レーザダイオード10-1と、第2レーザダイオード10-2と、第3レーザダイオード10-3とを含む。レーザダイオード10の個数は、3個に限定されず、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。第1レーザダイオード10-1は、第1ピーク波長λ1で発振する。第2レーザダイオード10-2は、第1ピーク波長λ1よりも長い第2ピーク波長λ2で発振する。第3レーザダイオード10-3は、第2ピーク波長λ2よりも長い第3ピーク波長λ3で発振する。このように本実施形態では、複数のレーザダイオード10から、それぞれ、異なるピーク波長のレーザ光が出射される。このため、本実施形態に係る発光装置1000を「多波長光源」と呼ぶことができる。このような多波長光源を、表示装置の光源として使用する場合、第1ピーク波長λ1は、例えば400nmから495nmの範囲にあり、第2ピーク波長λ2は、例えば495nmから600nmの範囲にあり、第3ピーク波長λ3は、例えば600nmから750nmの範囲にあり得る。
【0010】
なお、複数のレーザダイオード10は、第1ピーク波長λ1、第2ピーク波長λ2、および第3ピーク波長λ3のいずれとも異なる第4ピーク波長λ4で発振する第4レーザダイオードを含んでいてもよい。
【0011】
第1ピーク波長λ1、第2ピーク波長λ2、第3ピーク波長λ3、および第4ピーク波長λ4は、いずれも、可視光域に含まれていてもよいし、いずれかのピーク波長が可視光域外にあってもよい。例えば、第4ピーク波長λ4は、赤外域に含まれる780nmから2000nmの範囲にあってもよい。第4ピーク波長λ4を赤外域の範囲とすることで、センサとすることができ、映像に影響を与えずにセンシングできる。
【0012】
発光装置1000は、更に、複数のレーザダイオード10から出射された光を、それぞれ、導波させる複数の光導波路20を有する平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)200と、複数の光導波路20から出射された光が入射するレンズ30とを備える。複数のレーザダイオード10とPLC200との間にレンズを備えていてもよい。各光導波路20の構成は、特に限定されず、光導波路として機能するための任意の構成が採用され得る。例えば、PLC200は、基板と、基板上に設けられる導波路コアと、導波路コアを覆うクラッド層とを備える。基板、導波路コア、クラッド層は、シリコンもしくは石英などの無機材料、またはプラスチックもしくは樹脂などの有機材料から形成されている。例えば、基板が無機材料から形成されている場合、導波路コアおよびクラッド層も無機材料から形成され、基板が樹脂材料から形成されている場合、導波路コアおよびクラッド層も樹脂材料から形成され得る。導波路コアおよびクラッド層をポリマーから形成する場合、ポリマーの例は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリキノリン系樹脂、ポリキノキサリン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、および、ポリベンゾイミダゾール系樹脂を含む。なお、ポリイミド系樹脂の例は、ポリイミド樹脂、ポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、および、ポリエステルイミド樹脂を含む。
【0013】
導波路コアは周囲の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から形成されており、光閉じ込め効果を発揮することができる。複数の光導波路20のそれぞれから出射された光は、所定の角度で拡がりながら、それぞれ、
図1に示される破線の方向に進行する。
【0014】
レンズ30は、例えばコリメートレンズである。レンズ30は、PLC200の複数の光導波路20から出射された光の拡がりの角度(発散角度)を屈折によって小さくするレンズ面を有している。このようなレンズ面は、レンズ30の入射側および出射側の少なくとも一方に形成される。レンズ面の形状は球面に限定されず、非球面であってもよい。レンズ30を透過した光は、厳密な平行ビームを形成している必要はなく、他の光学系との組み合わせにおいて、収束または発散するように構成されていてもよい。図の例において、レンズ30の光軸方向32は、レーザダイオード10が配列される所定方向(X軸方向)に対して、例えば25度以上85度以下の範囲で、傾斜している。またレンズ30は、開口数(NA)が0.1以上0.7以下、好ましくは0.2以上0.6以下であり、焦点距離が0.5mm以上10mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0015】
複数の光導波路20から出射されたピーク波長の異なる光は、互いに重なり合ってレンズ30に入射する。レンズ30の焦点距離(光の波長が455nmのとき)が例えば3mmのとき、レンズ30に入射した光のビーム径(直径)は、レンズ30の表面30Sの位置において、例えば0.9mm以上5mm以下であり得る。レンズ30の表面30Sは、レンズ面として機能するような曲面である必要はなく、平面であってもよい。
【0016】
本実施形態において、PLC200が有する複数の光導波路20は、第1光導波路20-1と、第2光導波路20-2と、第3光導波路20-3とを含む。第1光導波路20-1は、第1レーザダイオード10-1から出射された第1光を第1光入射端22-1から入射させ、第1光出射端24-1から出射する。第2光導波路20-2は、第2レーザダイオード10-2から出射された第2光を第2光入射端22-2から入射させ、第2光出射端24-2から出射する。第3光導波路20-3は、第3レーザダイオード10-3から出射された第3光を第3光入射端22-3から入射させ、第3光出射端24-3から出射する。第4レーザダイオードをさらに有する場合、複数の光導波路20は、第4レーザダイオードから出射された第4光を第4光入射端から入射させ、第4光出射端から出射する第4光導波路をさらに含み得る。第1~4光は第1~4光入射端に対し、垂直に入射させることが好ましいが、垂直に入射させなくてもよい。
【0017】
PLC200は、第1光入射端22-1、第2光入射端22-2、および第3光入射端22-3を含む光入射面220を有する。また、PLC200は、第1光出射端24-1、第2光出射端24-2、および第3光出射端24-3を含む光出射面240を有する。本実施形態において、PLC200の光入射面220および光出射面240は、いずれも、平面視において、直線状に延びている。また、
図1に示されるように、PLC200の光出射面240の法線方向N1は、レンズ30の光軸方向32に対して傾斜している。図示されている例では、PLC200における光出射面240の法線方向N1は、光入射面220の法線方向N2に対しても傾斜している。言い換えると、PLC200の光入射面220と光出射面240とは、非平行の関係にある。本開示において、2つの方向が「傾斜している」とは、2つの方向の間の角度が5度以上85度以下の範囲にあることである。
【0018】
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照する。
図2Aは、Y軸の負方向側からPLC200を見た光入射面220を示す図である。
図2Bは、Y軸の正方向側からPLC200を見た光出射面240を示す図である。図示される例において、PLC200は、基板25と、基板25上に設けられた複数の導波路コア26と、複数の導波路コア26を覆うクラッド層27とを有している。基板25は、表面にアンダークラッド層を有していてもよい。導波路コア26を覆うクラッド層27は、オーバークラッド層として機能する。アンダークラッド層およびオーバークラッド層のそれぞれの厚さは、例えば、10μm以上100μm以下の範囲にある。導波路コア26の高さ(厚さ)および横幅は、それぞれ、例えば、約1μm以上10μm以下の範囲にある。個々の導波路コア26の、導波方向に垂直な断面は、概略的に矩形の形状を有している。この断面は、円形または楕円形の形状を有していてもよい。導波路コア26のサイズは、シングルモードで導波がなされる場合よりも、マルチモードで導波がなされる場合の方が大きい。本実施形態では、シングルモードで導波がなされるように導波路コア26のサイズが選択される。例えば、光の波長が455nmであるとき、導波路コア26の高さおよび横幅は、いずれも、1μm以上3μm以下であり得る。
【0019】
図2Aおよび
図2Bからわかるように、第1光出射端24-1と第2光出射端24-2との中心間距離は、第1光入射端22-1と第2光入射端22-2との中心間距離よりも短く、第2光出射端24-2と第3光出射端24-3との中心間距離は、第2光入射端22-2と第3光入射端22-3との中心間距離よりも短い。第1光出射端24-1、第2光出射端24-2、および第3光出射端24-3のうちの隣り合う光出射端の中心間距離は、PLC200の光出射面240における隣り合う発光点の中心間距離に相当する。発光点の中心間距離は、例えば2μm以上200μm以下の範囲にあり得、好ましくは2μm以上100μm以下の範囲にあり得る。
【0020】
このようなPLC200を用いることにより、PLC200の光出射面240における発光点の中心間距離を、素子サイズや実装時の余裕度によって決まる複数のレーザダイオード10の中心間距離として可能な下限(例えば250μm)よりも小さくすることができる。発光点の中心間距離を小さくすると、それぞれの発光点から出た光をコリメートするために複数のレンズを用いる必要が無く、1個のレンズによるコリメートが可能になる。これは、複数の発光点をレンズの光軸の近くに配置することが可能になるからである。また、
図1の例において、複数のレーザダイオード10とPLC200の光入射面220との間にレンズを備えていない場合は、例えば10μm以下のギャップが存在しているだけである。小型化のためには、レーザダイオード10をPLC200の光入射面220に近接配置することが望ましい。これらのような構成は、本開示による発光装置をヘッドマウントディスプレイなどの光源として利用する場合にヘッドマウントディスプレイなどを小型化できるため有利である。本開示による発光装置は、例えば、眼鏡状のヘッドマウントディスプレイにおけるツルの部分に搭載され得る。各レーザダイオード10と光導波路20との間にマイクロレンズなどの光学素子が配置されてもよい。また、発光装置の小型化を意図しない場合は、各レーザダイオード10から出射された光を光ファイバによって光導波路20に結合してもよい。
【0021】
次に
図3を参照する。
図3は、本実施形態におけるPLC200の複数の光出射端24-1、24-2、24-3から光が屈折されて出射する様子を模式的に示す平面図である。本実施形態において、第1光出射端24-1は、第1光を、第1光出射端24-1の法線方向N11に対して傾斜した第1方向101に屈折させて出射する。第2光出射端24-2は、第2光を、第2光出射端24-2の法線方向N12に対して傾斜した第2方向102に屈折させて出射する。第3光出射端24-3は、第3光を、第3光出射端24-3の法線方向N13に対して傾斜した第3方向103に屈折させて出射する。
図3の例において、法線方向N11、N12、N13は、互いに平行である。光出射面240は、平面であることが望ましいが、光出射面240は必ずしも平面ある必要はなく、法線方向N11、N12、N13の間に相互に10度以下の角度が生じていてもよい。
【0022】
図3の平面視において、第1光導波路20-1の導波方向は、第1光出射端24-1の法線方向N11に対して第1角度θ
i1で交差し、第2光導波路20-2の導波方向は、第2光出射端24-2の法線方向N12に対して第2角度θ
i2で交差する。第1角度θ
i1は第2角度θ
i2よりも小さい。第3光導波路20-3の導波方向は、第3光出射端24-3の法線方向N13に対して第3角度θ
i3で交差し、第2角度θ
i2は第3角度θ
i3よりも小さい。第1角度θ
i1、第2角度θ
i2、第3角度θ
i3は、いずれも、0度より大きく、全反射角度よりも小さい。
【0023】
第1光導波路20-1を導波されてきた光は、第1光出射端24-1において、固体と空気との界面で屈折して伝搬方向を変化させる。同様に、第2光導波路20-2および第3光導波路20-3を導波されてきた光は、それぞれ、第2光出射端24-2および第3光出射端24-3において、固体と空気との界面で屈折して伝搬方向を変化させる。
【0024】
第1光出射端24-1から出射される光と、第1光出射端24-1の法線方向N11との間の角度をθo1とする。同様に、第2光出射端24-2から出射される光と、第2光出射端24-2の法線方向N12との間の角度をθo2とする。また、第3光出射端24-3から出射される光と、第3光出射端24-3の法線方向N13との間の角度をθo3とする。このとき、スネルの法則により、下記の関係が成立する。
Sin θo1 = (sin θi1)ni(λ1)/no
Sin θo2 = (sin θi2)ni(λ2)/no
Sin θo3 = (sin θi3)ni(λ2)/no
ここで、ni(λ)は、波長λにおける光導波路20の屈折率(例えば、1.4~2.0)であり、noは気体側の材料(典型的には空気)の屈折率である。光導波路20は、同じ材料から形成されている必要はない。同じ材料から形成されている場合、それぞれの光導波路20を導波される光の波長が異なるため、屈折率ni(λ)は、波長に依存する。この材料が正常分散を有する場合、λ1<λ2<λ3であるため、ni(λ1)>ni(λ2)>ni(λ3)となる。このような場合、本実施形態では、θi1<θi2<θi3であるため、θo1、θo2、θo3を互いに近づけることが可能である。なお、光導波路20の材料が波長分散を有しない場合、あるいは、その波長分散を無視できる場合、θi1、θi2、θi3が互いに等しい大きさを有していると、θo1、θo2、θo3も互いに等しい大きさを有することになる。
【0025】
このように、各光導波路20の屈折率に基づいてθ
i1、θ
i2、θ
i3を調整することにより、θ
o1、θ
o2、θ
o3を制御することができる。言い換えると、第1光出射端24-1、第2光出射端24-2、第3光出射端24-3のそれぞれから出射される光の方向を制御することができる。
図3の例において、第1方向101、第2方向102、および第3方向は、互いに平行であり、同じ方向を向いている。
【0026】
次に
図4を参照する。
図4は、実施形態におけるPLCの複数の光出射端からレンズ30の表面30Sまでの距離の関係を示す平面図である。
【0027】
図4に示されるように、本実施形態の構成によれば、第1方向101における第1光出射端24-1からレンズ30の表面30Sまでの第1距離L1は、第2方向102における第2光出射端24-2からレンズ30の表面30Sまでの第2距離L2よりも短い。また、第2方向102における第2光出射端24-2からレンズ30の表面30Sまでの第2距離L2は、第3方向103における第3光出射端24-3からレンズ30の表面30Sまでの第3距離L3よりも短い。図示される例において、レンズ30の焦点距離は、光の波長λに依存して異なる値をとる。図の例では、光の波長λが短いほど、レンズ30の焦点距離が短い。本実施形態によれば、レンズ30の光軸方向32が、光出射面240の法線方向N1に対して平行ではなく、傾斜している。言い換えると、レンズ30の光軸方向32は、光出射面240に対して傾斜している。
【0028】
ここで、光出射面240に対するレンズ30の光軸方向32の角度をθとする。第1方向101と第2方向102とが略平行であれば、L2-L1は、第1光出射端24-1と第2光出射端24-2との中心間距離をcos θ倍した距離に近似的に等しい。同様に、第2方向102と第3方向103とが略平行であれば、L3-L2は、第2光出射端24-2と第3光出射端24-3との中心間距離をcos θ倍した距離に近似的に等しい。
【0029】
以上のことから明らかなように、隣り合う光出射端24の中心間距離と、角度θと、を調整することにより、距離L1、L2、L3を、それぞれの光の波長に合った焦点距離に整合させることが可能になる。上述したように、PLC200の発光点ピッチは、200μm以下に小さくすることができる。しかし、距離L1、L2、L3を、それぞれ、レンズ30の焦点距離に応じて適切に設定するためには、L2-L1、およびL3-L2で示される距離を適切に調節する必要があり、発光点ピッチも調節され得る。場合によって、発光点ピッチは200μmを超える値に設定され得る。
【0030】
上記の説明では、簡単のため、レーザダイオード10の個数は3個であった。以下、レーザダイオード10の個数が6個の例を説明する。
【0031】
図5は、本開示の実施形態に係る発光装置2000の他の構成例を示す平面図である。発光装置2000の基本的な構成は、前述した発光装置1000の基本的な構成と同様である。
【0032】
本実施形態における発光装置2000は、所定方向(X軸方向)に沿って配列された6個のレーザダイオード10を備える。図示される例において、6個のレーザダイオード10は、第1レーザダイオード10-1と、第2レーザダイオード10-2と、第3レーザダイオード10-3と、第4レーザダイオード10-4と、第5レーザダイオード10-5と、第6レーザダイオード10-6を含む。以下、これらのレーザダイオードの参照符号を「10-N」で表す場合がある。ここで「N」は、1以上の整数である。レーザダイオード10-Nの発振のピーク波長は「λN」で表される。
【0033】
発光装置2000では、発振のピーク波長について、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5<λ6の関係が成立している。レーザダイオード10には、例えば、青色の光を放射するレーザダイオード、緑色の光を放射するレーザダイオード、または、赤色の光を放射するレーザダイオードなどを採用することができる。また、紫外や赤外等の、青色、緑色、赤色以外の光を放射するレーザダイオードを採用してもよい。
【0034】
本明細書において、青色の光は、発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲にある光である。緑色の光は、発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲にある光である。赤色の光は、発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲にある光である。
【0035】
青色の光を発するレーザダイオード、または、緑色の光を発するレーザダイオードとして、窒化物半導体を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色の光を発するレーザダイオードとして、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。
【0036】
本実施形態における発光装置2000では、例えば、λ1は420nm~494nmの範囲にあり、λ2およびλ3は495nm~570nmの範囲にあり、λ4、λ5およびλ6は605nm~750nmの範囲にある。言い換えると、ピーク波長の異なる2種類の光成分を含む青色、緑色、赤色の光がレーザダイオード10から出射されるようにしてもよい。
【0037】
発光装置2000は、更に、複数のレーザダイオード10-Nから出射された光を、それぞれ、導波させる複数の光導波路20-Nを有するPLC200と、複数の光導波路20-Nから出射された光が入射するレンズ30とを備える。各光導波路20およびレンズ30の構成は、前述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
図6Aは、Y軸の負方向側からPLC200を見た光入射面220を示す図である。
図6Bは、Y軸の正方向側からPLC200を見た光出射面240を示す図である。光入射面220および光出射面240の少なくとも一方には、保護膜または反射防止膜が設けられていてもよい。
【0039】
この例において、第N光導波路20-Nは、第Nレーザダイオード10-Nから出射された第N光を第N光入射端22-Nから入射させ、第N光出射端24-Nから出射する。N個の光出射端24から出射された光は、レンズ30の光軸方向32に対して、平行な方向に向けられることが望ましい。
【0040】
本実施形態によれば、6個の発光点からレーザ光を出射する場合でも、狭い範囲に発光点を収めることができる。また、可視光域の広い範囲にわたった異なるピーク波長を有する多波長のレーザ光について、各発光点をレンズ30の焦点位置の近くに集めることが可能になる。本実施形態では、第1光出射端24-1からレンズ30の表面30Sまでの距離と、第6光出射端24-6からレンズ30の表面30Sまでの距離との間には、ピーク波長の差に起因する焦点距離の差に応じて、5μm~100μmのオフセットを与えることができる。その結果、異なる色のレーザビームを同一のレンズ30によって好適にコリメートすることが可能になる。
【0041】
この発光装置2000では、発振のピーク波長について、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5<λ6の関係が成立しているが、すべてのレーザダイオード10の発振波長が異なっている必要はない。例えば、λ1<λ2=λ3<λ4=λ5=λ6の関係が成立していてもよい。この場合、レーザダイオード10-1、10-2は青色の光を放射する。また、レーザダイオード10-3、10-4は緑色の光を放射し、レーザダイオード10-5、10-6は赤色の光を放射する。なお、複数のレーザダイオード10は、赤外の光を放射するレーザダイオードを含んでいてもよい。
【0042】
図7は、PLC200の変形例の一部分を示す平面図である。PLC200の光出射面240は、平面視において、1または複数の段差を有し得る。
図7の例では、図示されている範囲において、光出射面240は、段差S1および段差S2を有している。段差S1、S2は、光出射面240の一部がレンズ30の光軸方向32にオフセットすることによって形成される。第1光出射端24-1と第2光出射端24-2との間に段差S1が存在するため、第1光出射端24-1からレンズ30の表面30Sまでの距離に対して、第2光出射端24-2からレンズ30の表面30Sまでの距離を更に長くすることができる。段差S1、S2のそれぞれが形成する、レンズ30の光軸方向32におけるオフセット量は、例えば5μm以上100μm以下の範囲にある。
【0043】
なお、
図7の例において、第1光出射端24-1の法線方向N11と、第2光出射端24-2の法線方向N12とは、互いに平行であるが、本開示の実施形態において、法線方向N11、N12は互いに平行である必要はない。また、それぞれの光出射端24-1、24-2から出射される光の方向101、102も、レンズ30の光軸方向32に対して平行である必要はない。各発光点(光出射端24-Nの中心)が、レンズ30の焦点位置に近い位置に配置されていれば、各発光点から出射される光の向きが異なっていても、各発光点から出射される光がレンズ30の有効径の範囲に入射する限り、適切にコリメートされ得る。これは、レンズが、焦点位置にある発光点から発散する光線の束を近似的に平行にする機能を有しているからである。したがって、光出射端24-1、24-2、24-3の中心間距離が短縮され、各発光点がレンズ30のそれぞれの色に応じて焦点の位置に近ければ、第1方向101、第2方向102、および第3方向103は、同一方向である必要はない。
【0044】
図8は、PLC200の他の変形例の一部分を示す平面図である。このPLC200の光出射面240は、第n光出射端24-nの法線方向N1nが異なる方向を向くように複数の平面領域から構成されている。
図8の例では、第1光出射端24-1に対して第2光出射端24-2が傾斜しているため、第1光出射端24-1からレンズ30の表面30Sまでの距離に対して、第2光出射端24-2からレンズ30の表面30Sまでの距離を長くすることができる。同様に、第2光出射端24-2に対して第3光出射端24-3が傾斜しているため、第2光出射端24-2からレンズ30の表面30Sまでの距離に対して、第3光出射端24-3からレンズ30の表面30Sまでの距離を長くすることができる。
【0045】
図9は、本開示の実施形態における発光装置の更に他の構成例を示す平面図である。
図9の例において、PLC200の光出射面240の法線方向N1と光入射面220の法線方向N2とは、平行である。本実施形態では、PLC200の基板として、矩形形状の基板を採用することができる。平面視におけるPLC200の形状および大きさは、任意である。
【0046】
上記のいずれの実施形態に係る発光装置も、複数のレーザダイオード10およびPLC200を封止するパッケージを備えていてもよい。
【0047】
図10は、複数のレーザダイオード10、PLC200、およびレンズ30を内部に封止するパッケージ構造を有する発光装置4000の例を示す斜視図である。
図11は、
図10における発光装置4000のYZ面に平行な、ある断面を模式的に示す図である。発光装置4000は、複数のレーザダイオード10、PLC200、およびレンズ30を支持する支持基板14と、複数のレーザダイオード10、PLC200、およびレンズ30を覆うキャップ部材16とを備えている。支持基板14とキャップ部材16は、内部に収容されるレーザダイオード10、PLC200、およびレンズ30を気密に封止するパッケージとして機能する。より詳細には、キャップ部材16は、支持基板14に接合される壁面部16Wと、支持基板14に対向する上面部16Tとを有している。キャップ部材16の壁面部16Wは、支持基板14上の複数のレーザダイオード10、PLC200、およびレンズ30を囲んでいる。壁面部16Wの一部または全部は、レンズ30によってコリメートまたは収束された光を透過する透光材料から形成され、レンズ30を透過した光を発光装置4000から外部に出射させることを可能にする。
【0048】
図10および
図11に示される例において、複数のレーザダイオード10はサブマウント18に支持されている。サブマウント18の厚さは、レーザダイオード10から出射された光をPLC200の光入射端に適切に入射させることができるように決定され得る。
【0049】
なお、図示される例において、レーザダイオード10の個数は3個であるが、発光装置4000は、4個以上のレーザダイオード10を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の発光装置は、ヘッドマウントディスプレイやプロジェクタなどの光源として好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0051】
10・・・レーザダイオード、20・・・光導波路、25・・・基板、26・・・導波路コア、27・・・クラッド層、30・・・レンズ、30S・・・レンズの表面、32・・・レンズの光軸方向、101・・・第1方向、102・・・第2方向、103・・・第3方向、200・・・PLC、220・・・光入射面、240・・・光出射面、N1・・・光出射面の法線方向、N2・・・光入射面の法線方向