(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の補修方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/147 20060101AFI20250110BHJP
F16L 59/153 20060101ALI20250110BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20250110BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16L59/147
F16L59/153
F16L11/08 Z
F16L11/12 J
(21)【出願番号】P 2021024180
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇介
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-039446(JP,A)
【文献】米国特許第06530137(US,B1)
【文献】実開昭61-055589(JP,U)
【文献】特開昭62-246693(JP,A)
【文献】特開平07-269784(JP,A)
【文献】特公昭46-031716(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/133778(WO,A1)
【文献】特開平07-301392(JP,A)
【文献】特開昭53-080049(JP,A)
【文献】実開昭57-040790(JP,U)
【文献】実開昭57-105493(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0292106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/147
F16L 59/153
F16L 11/08
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を輸送するための流体輸送用可撓管であって、
最内層に配置される内層と、
前記内層の外周に配置される断熱層と、
前記断熱層の外周に配置される外層と、
を具備し、
流体輸送用可撓管の端部近傍の所定の範囲において、前記断熱層が、流体輸送用可撓管の軸方向に対して分割された分割断熱材で構成され
、
前記端部以外の断熱層は、流体輸送可撓管の軸方向に対して分割されずに一体で構成されていることを特徴とする流体輸送用可撓管。
【請求項2】
前記内層と前記外層の間から前記分割断熱層を引き抜く際の引き抜き力は、0.2N以下であることを特徴とする請求項1記載の流体輸送用可撓管。
【請求項3】
前記分割断熱材が、遮水部材で被覆されていることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の流体輸送用可撓管。
【請求項4】
前記分割断熱材同士の隙間に、吸水性部材が配置されることを特徴とする請求項1
から請求項
3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項5】
前記分割断熱材には、治具を引っ掛けることが可能な引っ掛け部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項6】
流体輸送用可撓管の軸方向に併設される複数の前記分割断熱材の内、少なくとも一部の前記分割断熱材には、当該分割断熱材を識別可能なマークが付されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項7】
前記外層には、流体輸送用可撓管の軸方向に併設される複数の前記分割断熱材のそれぞれの配置に対応した位置にマークが付されることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項8】
流体輸送用可撓管の端部に端末部材が接続されており、
前記端末部材の一部が、前記内層と前記外層との間に挿入されていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれかに流体輸送用可撓管。
【請求項9】
流体を輸送するための流体輸送用可撓管を補修する方法であって、
前記流体輸送用可撓管は、
最内層に配置される内層と、
前記内層の外周に配置される断熱層と、
前記断熱層の外周に配置される外層と、
を具備し、
流体輸送用可撓管の少なくとも端部近傍の所定の範囲において、前記断熱層が、流体輸送用可撓管の軸方向に対して分割された分割断熱材で構成されており、
前記流体輸送用可撓管の端部に破損個所を有し、
破損個所を含む、前記流体輸送用可撓管の端部を切断する工程と、
前記流体輸送用可撓管の端部から、前記分割断熱材を引き抜き、前記内層と前記外層との間に隙間を形成する工程と、
前記内層と前記外層との間に端末部材の一部を挿入し
て固定
し、前記流体輸送用可撓管の端部に端末部材を接続する工程と、
を具備することを特徴とする流体輸送用可撓管の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、極低温である液化ガス等の流体を輸送する際に用いられる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、温室効果ガスの抑制・排出規制への対応として、液化二酸化炭素の輸送や、燃料として液化アンモニア、液体水素などの送液技術が必要となっている。このような低温液体は、例えば船体などの移動体間での輸送が行われる。この場合、可撓性やハンドリング性に優れ、断熱性能を有する流体輸送用可撓管が必要となる。
【0003】
このような低温流体輸送用の可撓管としては、可撓性を有する内管と、内管の外周に設けられた補強層と、補強層の外周に設けられた断熱層と、断熱層の外周に設けられた緩衝層と、最外周部に設けられた保護層とを有する流体輸送用可撓管が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような流体輸送用可撓管は、端部に、他の接続部と接続可能な端末構造を有する。
図10は、従来の流体輸送用可撓管100の端部構造を示す図である。流体輸送用可撓管100は、内層107と、内層107の外周に配置される断熱層111と、断熱層111の外周に配置される外層117を有する。
【0006】
内層107は、最内層の可撓管103と、可撓管103の外周に配置される樹脂層105と、樹脂層105の外周に配置される補強層109等からなる。可撓管103は、例えばインターロック管などの可撓管である。樹脂層105は、可撓管103内を流れる流体を遮蔽する。補強層109は、内圧補強及び軸力補強のための層であり、例えばステンレスやアラミド製のテープや、抗張力体等で構成される。
【0007】
外層117を構成する保護層113は、例えばポリウレタン等の熱可塑性樹脂製であり、内層107に追従して変形可能である。断熱層111は、保護層113が流体の温度の影響を受けないように、内層107内の流体と外部とを断熱する。
【0008】
流体輸送用可撓管100の端部においては、内層107の外周の断熱層111と保護層113が除去される。より詳細には、内層107に対して、外層117が短くなり、断熱層111が外層117よりもさらに短くなるように外層117と断熱層111が除去される。すなわち、外層117と内層107との間には隙間が形成される。
【0009】
流体輸送用可撓管100の端末構造には、端末部材119a、119bが用いられる。端末部材119aは、外層117の端部を引き留めて固定するものであり、端末部材119bは、内層107の端部を引き留めて固定するものである。端末部材119bは、内層107を内外から挟み込んで固定される。また、端末部材119aは、外層117を内外から挟み込んで固定される。このため、端末部材119aの一部は、外層117と内層107の間に挿入される。この際、外層117の内部の断熱層111の一部が除去され、外層117と内層107との間に隙間が形成されるため、端末部材119aと断熱層111との干渉がない。
【0010】
一方、このような流体輸送用可撓管100は、使用時に損傷を受ける場合がある。例えば、内層107が損傷を受け、内部の液体の液漏れが生じる場合や、外層117が損傷を受け、十分な保護機能を得ることができなくなる場合などがある。このような損傷は、通常、流体輸送用可撓管100の端末構造近傍で生じることが多い。これは、端末構造近傍に応力が集中しやすいためである。
【0011】
このように流体輸送用可撓管100の端部近傍が損傷を受けた際に、補修を行おうとすると、一度端末部材119a、119bを外して、損傷部分を切除し、新たに、端末部材119a、119bを取り付ける必要がある。しかし、前述したように、流体輸送用可撓管100の端部において、内層107と外層117との間の断熱層111の一部を除去する必要があるが、外層117には所定以上の剛性があるため、折り返して内部の断熱層111を露出させるなどができない。このため、所定範囲の断熱層111を切除して除去することが困難であり、現場で端末構造を容易に補修することはできなかった。
【0012】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、現場でも容易に端末部材との接続が可能な流体輸送用可撓管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために第1の発明は、流体を輸送するための流体輸送用可撓管であって、最内層に配置される内層と、前記内層の外周に配置される断熱層と、前記断熱層の外周に配置される外層と、を具備し、流体輸送用可撓管の端部近傍の所定の範囲において、前記断熱層が、流体輸送用可撓管の軸方向に対して分割された分割断熱材で構成され、前記端部以外の断熱層は、流体輸送可撓管の軸方向に対して分割されずに一体で構成されていることを特徴とする流体輸送用可撓管である。
前記内層と前記外層の間から前記分割断熱層を引き抜く際の引き抜き力は、0.2N以下であることが望ましい。
【0014】
前記分割断熱材が、遮水部材で被覆されていてもよい。
【0015】
前記分割断熱材同士の隙間に、吸水性部材が配置されてもよい。
【0016】
前記分割断熱材には、治具を引っ掛けることが可能な引っ掛け部が形成されてもよい。
【0017】
流体輸送用可撓管の軸方向に併設される複数の前記分割断熱材の内、少なくとも一部の前記分割断熱材には、当該分割断熱材を識別可能なマークが付されてもよい。
【0018】
前記外層には、流体輸送用可撓管の軸方向に併設される複数の前記分割断熱材のそれぞれの配置に対応した位置にマークが付されてもよい。
【0019】
流体輸送用可撓管の端部に端末部材が接続されており、前記端末部材の一部が、前記内層と前記外層との間に挿入されてもよい。
【0020】
第1の発明によれば、流体輸送用可撓管の端部近傍の所定の範囲において、断熱層が分割断熱材で構成されるため、流体輸送用可撓管の端部を切断した後に、分割断熱材を端部から引き抜くことで、容易に外層と内層との間に隙間を形成することができる。このため、現場において、端末部材の取付け作業が容易である。
また、内層と外層の間から分割断熱層を引き抜く際の引き抜き力を0.2N以下とすることで、人力で分割断熱材を引き抜くことができる。
【0021】
また、分割断熱材が遮水部材で覆われることで、水が浸入した際に、分割断熱材の吸水によって、断熱性能が劣化することを抑制することができる。
【0022】
また、分割断熱材同士の隙間に、吸水性部材を配置することで、水分が断熱層を伝った水走りを抑制することができる。
【0023】
また、分割断熱材に、治具を引っ掛けることが可能な引っ掛け部を形成することで、流体輸送用可撓管の端部から分割断熱材を引き抜く際に、治具等を引っ掛け部に引っ掛けて引き抜くことができる。このため、分割断熱材の引き抜きが容易となる。
【0024】
また、複数の分割断熱材に、流体輸送用可撓管の先端からの配置される順序がわかるようにマークが付されることで、分割断熱材を引き抜いた際に、あとどのくらいの分割断熱材が残っているかを容易に把握することができる。
【0025】
また、複数の分割断熱材のそれぞれの配置に対応した位置の外層にマークを付すことで、外部から、分割断熱材の配置を知ることができる。このため、外層等の切除する位置を把握しやすく、また、あとどのくらいの範囲に分割断熱材が残っているかを容易に把握することができる。
【0026】
このような流体輸送用可撓管の端部に、あらかじめ端末部材が接続されていてもよい。
【0027】
第2の発明は、流体を輸送するための流体輸送用可撓管を補修する方法であって、前記流体輸送用可撓管は、最内層に配置される内層と、前記内層の外周に配置される断熱層と、前記断熱層の外周に配置される外層と、を具備し、流体輸送用可撓管の少なくとも端部近傍の所定の範囲において、前記断熱層が、流体輸送用可撓管の軸方向に対して分割された分割断熱材で構成されており、流体輸送用可撓管の端部に破損個所を有し、破損個所を含む、前記流体輸送用可撓管の端部を切断する工程と、前記流体輸送用可撓管の端部から、前記分割断熱材を引き抜き、前記内層と前記外層との間に隙間を形成する工程と、前記内層と前記外層との間に端末部材の一部を挿入して固定し、前記流体輸送用可撓管の端部に端末部材を接続する工程と、を具備することを特徴とする流体輸送用可撓管の補修方法である。
【0028】
第2の発明によれば、現場で容易に流体輸送用可撓管の端末部を補修することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、現場でも容易に端末部材との接続が可能な流体輸送用可撓管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】(a)は、流体輸送用可撓管1の端末構造を示す図、(b)は他の端末構造を示す図。
【
図4】(a)、(b)は流体輸送用可撓管1の補修工程を示す図。
【
図5】(a)、(b)は流体輸送用可撓管1の補修工程を示す図。
【
図6】(a)、(b)は流体輸送用可撓管1の補修工程を示す図。
【
図8】(a)は、流体輸送用可撓管1bの断面図、(b)は、流体輸送用可撓管1cの断面図。
【
図9】(a)は分割断熱材21の他の実施形態を示す図、(b)は分割断熱材21のさらに他の実施形態を示す図。
【
図10】従来の流体輸送用可撓管100を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる流体輸送用可撓管1の斜視図、
図2は、流体輸送用可撓管1の軸方向の断面図である。液化ガスなどの低温流体を輸送可能な流体輸送用可撓管1は、主に、可撓管3、補強層9、断熱層11、保護層13等から構成される。なお、流体輸送用可撓管1の構造は、図示した例には限られない。
【0032】
可撓管3は、流体輸送用可撓管1の最内層に位置し、例えばインターロック管などの外圧に対する座屈強度に優れ、低温耐性や耐食性も良好なステンレス製である。この場合、可撓管3はテープを断面S字形状に成形させてS字部分で互いに噛み合わせて連結されて構成され、可撓性を有する。なお、インターロック管に代えて、同様の可撓性を有し、座屈強度等に優れる管体であれば、ベローズ管などの他の態様の管体を使用することも可能である。
【0033】
可撓管3の外周部には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5は、可撓管3内を流れる流体を遮蔽する。樹脂層5は、例えばポリエチレン等の樹脂製である。なお、可撓管3と樹脂層5との間に座床層15aを設けてもよい。座床層15aは、必要に応じて設けられ、可撓管3の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、可撓管3の可撓性に追従して変形可能である。例えば、座床層15aは不織布等のように、ある程度の厚みを有し、可撓管3の外周の凹凸のクッションとしての役割を有する。
【0034】
なお、可撓管3の外周部に、樹脂層5が設けられるとは、必ずしも可撓管3と樹脂層5とが接触していることを要せず、例えば、座床層15aのような他層が間に挟まれて設けられたとしても、樹脂層5は、可撓管3の「外周部に」設けられていると称する。また、以下の説明において、「外周部」なる用語を用いる場合も同様とする。なお、
図2においては、座床層についての図示を省略する。
【0035】
樹脂層5の外周部には、補強層9が設けられる。補強層9は、主に可撓管3内を流れる流体の内圧等による変形や、流体輸送用可撓管1が軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑えるための層である。補強層9は、複数の繊維補強テープ等が巻きつけられて構成されてもよく、また、軸方向と周方向に織り込まれた織布であってもよい。また、樹脂層5の内部に、抗張力体を軸方向に埋設してもよい。
【0036】
なお、補強層9は、断熱層11の内側に位置し、可撓管3の内部に低温流体が流された場合に、低温流体に近い温度まで冷やされる。そのため、極低温下でも高い強度を維持し、脆化が生じない低温特性に優れた材質であることが望ましい。
【0037】
ここで、可撓管3、樹脂層5及び補強層9を合わせて内層7とする。すなわち、断熱層11よりも内側の最内層に配置される層を総称して内層7とする。なお、可撓管3のみで内部の流体の気密性・水密性を確保することができれば、樹脂層5は不要である。このように、内層7は、可撓性を有し、内部に流体が流れ、外部への流出を遮蔽することができれば、その態様は特に制限されない。
【0038】
補強層9(内層7)の外周には断熱層11が設けられる。断熱層11は、可撓管3内を流れる低温流体と流体輸送用可撓管1の外部とを断熱するとともに、可撓管3の可撓性に追従して変形可能である。断熱層11としては、例えばガラスファイバー、セラミックファイバー、ロックウールなどのブランケット状断熱材、エアロジェル、発泡プラスチック、ガラスビーズ等のフィラー材を分散したプラスチック等が用いられる。
【0039】
なお、補強層9の外周には、必要に応じて座床層15bが設けられる。座床層15bは、補強層9の外周の凹凸形状を略平らにならすための層である。
【0040】
断熱層11の外周には、保護層13が設けられる。すなわち、流体輸送用可撓管1の最外周部に保護層13が形成される。なお、断熱層11の外周には、あらかじめ座床層15cを設けてもよい。保護層13は、外部からの水の浸入を防ぐとともに、可撓管3の可撓性に追従して変形可能であり、例えばポリウレタン等の熱可塑性樹脂等が用いられる。なお、断熱層11よりも外側の層を外層17とする。すなわち、本実施形態では、主に保護層13が外層17を構成するが、他の層が含まれてもよい。
【0041】
なお、流体輸送用可撓管1は以上の構成には限らない。その他の機能層を有してもよく、流体輸送用可撓管1としての機能を満足させることができれば、一部の構成を省略してもよい。
【0042】
次に、流体輸送用可撓管1の端末構造について説明する。
図3(a)は、流体輸送用可撓管1の端末構造を示す軸方向の断面図である。流体輸送用可撓管1の端部近傍では、所定の範囲において断熱層11が、流体輸送用可撓管の軸方向に対して分割された複数の分割断熱材21で構成されている。すなわち、それぞれの分割断熱材21は略環状であり、流体輸送用可撓管1の軸方向に対して、内層7の外周に併設される。なお、分割断熱材21は、完全な環状でなくてもよく、一部が切れた略C字状の部材であってもよい。また、流体輸送用可撓管1の端部の所定の範囲以外の部位の断熱層11は、流体輸送用可撓管1の軸方向に対して分割されずに一体(螺旋巻きや縦添え巻き含む)で構成される。
【0043】
なお、分割断熱材21の幅(流体輸送用可撓管の軸方向に対する長さ)は、例えば0.1m~1m程度とすることができ、さらに望ましくは0.1m~0.5m程度である。また、分割断熱材21が配置される範囲としては、例えば、端部から10m程度とすることができる。
【0044】
流体輸送用可撓管1の端部においては、端末部材19a、19bが接続される。端末部材19aは、外層17の端部を引き留めて固定するものであり、端末部材19bの一方の面は、内層7の端部を引き留めて固定するものである。端末部材19bは内層7の端部形状に対応した溝が形成され、溝に内層7の端部が挿入される。この状態で、内層7を内外から挟み込むようにして、図示を省略した固定部材により端末部材19bと内層7が固定される。
【0045】
また、端末部材19aの一方の面には、外層17の端部形状に対応した溝が形成され、溝に外層17の端部が挿入される。この状態で、外層17を内外から挟むようにして、図示を省略した固定部材により端末部材19aと外層17が固定される。さらに、端末部材19a、19bは、図示を省略した連結部材で連結される。この際、端末部材19aの一部は、外層17と内層7の間に挿入されるが、外層17の内部の一部の分割断熱材21が除去され、外層17と内層7との間に隙間が形成されるため、端末部材19aと断熱層11との干渉がない。
【0046】
なお、端末構造としては、
図3(a)に示す例には限られない。例えば
図3(b)に示すように、端末部材19a、19bが一体化したような端末部材19cを用いてもよい。すなわち、端末部材19cの一方の面には、内層7及び外層17の端部形状にそれぞれ対応した溝が同心円状に形成される。内層7及び外層17は、それぞれの溝に挿入されて固定される。このように、端末構造の形状は特に限定されないが、端末部材の一部が内層7と外層17との隙間に挿入される場合において、本発明は効果的である。
【0047】
次に、流体輸送用可撓管1を補修する方法について説明する。
図4(a)は、流体輸送用可撓管1の端末構造の一部に破損個所23が生じた状態を示す図である。すなわち、流体輸送用可撓管1は、端部に破損個所を有する。なお、以下の説明では、端末部材19a、19bを用いた例を説明するが、端末部材19cも同様である。前述したように、流体輸送用可撓管1の端末構造においては、端末部材19a、19bとの接続部近傍に応力が集中しやすく、破損個所が生じやすい。なお、破損個所は、図示を省略したセンサを用いて検出してもよく、一度切断して内部を視認することで、破損位置を特定してもよい。
【0048】
このように、流体輸送用可撓管1の端部近傍において破損個所が生じた際には、
図4(b)に示すように、破損個所23を含む流体輸送用可撓管1の端部を端末部材19a、19bと共に切断する。なお、流体輸送用可撓管1の端部の切断の際には、あらかじめ端末部材19a、19bを取り外してもよく、端末部材19a、19bは再利用してもよい。
【0049】
次に、
図5(a)に示すように、必要に応じて、外層17を所定長さ切断する。すなわち、外層17に対して、内層7を突出させる。外層17の切断は、流体輸送用可撓管1の外周から刃物で容易に行うことができる。なお、本工程は、端末部材19cを用いる場合には不要である。
【0050】
次に、
図5(b)に示すように、流体輸送用可撓管1の端部(切断面)から、分割断熱材21を所定数だけ引き抜く。引き抜く分割断熱材21の個数は、端末部材19aのサイズや分割断熱材21のサイズに応じて設定される。内層7と外層17との間から、分割断熱材21を抜き取ることで、外層17をめくりあげることなく、内層7と外層17との間に隙間を形成することができる。
【0051】
なお、それぞれの分割断熱材21は、幅(流体輸送用可撓管の軸方向に対する長さ)が狭いため、大きな引き抜き力は不要である。例えば、分割断熱材21を引き抜く際の引き抜き力は、0.2N以下であることが望ましく、より望ましくは、0.1N以下である。このようにすることで、人力で分割断熱材21を引き抜くことができる。
【0052】
次に、
図6(a)に示すように、外層17の端部を内外から挟み込むように、内層7と外層17との間に端末部材19aの一部を挿入し固定する。さらに、
図6(b)に示すように、内層7の端部を内外から挟み込むように端末部材19bを固定する。最後に、端末部材19a、19bを固定して、流体輸送用可撓管1の補修が完了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる流体輸送用可撓管1によれば、端部近傍における断熱層11が、分割断熱材21によって構成されているため、端末部材19aを取り付ける際に、必要な数だけ、分割断熱材21を引き抜くことができる。このため、容易に内層7と外層17との間に所望の長さの隙間を形成することができ、端末部材を取り付けることができる。このように、現場でも容易に端末部材の取付け作業を行うことができるため、端末部材近傍において破損が生じた際にも、現場で容易に補修を行うことができる。
【0054】
次に、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態にかかる流体輸送用可撓管1aを示す図である。なお、以下の説明において、流体輸送用可撓管1と同様の機能を奏する構成については、
図1~
図6(b)と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0055】
流体輸送用可撓管1aは、流体輸送用可撓管1と略同様の構成であるが、吸水性部材25が配置される点で異なる。分割断熱材21同士の隙間には、吸水紐などの吸水性部材25が配置される。このように、分割断熱材21同士の隙間に吸水性部材25を配置することで、分割断熱材21同士の隙間における水走りを抑制することができる。
【0056】
なお、吸水性部材25は、分割断熱材21同士の隙間にのみ配置されるのではなく、他の部位に配置してもよい。例えば、断熱層11の全長にわたって、断熱層11の外周又は内周に吸水紐等を螺旋状に配置してもよい。
【0057】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、吸水性部材25によって、分割断熱材21同士の隙間への水走りを抑制することができる。
【0058】
次に、第3の実施形態について説明する。
図8(a)は、第3の実施形態にかかる流体輸送用可撓管1bを示す図である。流体輸送用可撓管1bは、流体輸送用可撓管1と略同様の構成であるが、それぞれの分割断熱材21に、マーク27aが付される点で異なる。
【0059】
マーク27aは、数値や記号や色などによって、それぞれの分割断熱材21を識別することができる。このため、流体輸送用可撓管1bの軸方向に併設される複数の分割断熱材21に対して、元の流体輸送用可撓管1bの先端からの配置を知ることができる。例えば、前述した流体輸送用可撓管の補修を複数回繰り返した際に、引き抜いた分割断熱材21のマーク27aを確認することで、残りの分割断熱材21の個数が分かるため、補修の可否判断が可能となる。また、残りの補修可能回数を把握することも可能となる。
【0060】
なお、マーク27aは、図示したように分割断熱材21の外周面に配置することには限定されず、分割断熱材21の端面に配置してもよい。また、全ての分割断熱材21にマーク27aを付するのではなく、基部側(先端側とは逆側であって、図中左側)の一部の分割断熱材21にのみマーク27aを付し、マーク27aが付された分割断熱材21を確認することで、分割断熱材21の残りがわずかとなったことを把握できるようにしてもよい。このように、流体輸送用可撓管1の軸方向に併設される複数の分割断熱材21の内、少なくとも一部の分割断熱材21に、当該分割断熱材21を識別可能なマーク27aが付されればよい。
【0061】
また、
図8(b)に示す流体輸送用可撓管1cのように、外層17の、流体輸送用可撓管1cの軸方向に併設される複数の分割断熱材21のそれぞれの配置に対応した位置(例えば分割断熱材21同士の間の位置)に、マーク27bを付してもよい。このようにしても、分割断熱材21の残り数を容易に把握することができる。また、流体輸送用可撓管1cの端部を切断する際にも、分割断熱材21の位置に合わせて切断することができる。
【0062】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、所望の位置に、マーク27a、27bを付すことで、分割断熱材21の配置や、残り数を把握することができる。
【0063】
なお、より高い止水性を得るためには、
図9(a)に示すように、分割断熱材21を遮水部材29で被覆してもよい。また、
図9(b)に示すように、分割断熱材21の端面に、引っ掛け部31を設けてもよい。引っ掛け部31には、治具等を引っ掛けることが可能である。なお、引っ掛け部31は、例えば紐や繊維などを環状に配置してもよく、又は、フックなどの金具を配置してもよい。また、端面に治具を引っ掛けることが可能な凹部や突部を形成してもよい。
【0064】
引っ掛け部31を流体輸送用可撓管1の端部側に向けて配置することで、流体輸送用可撓管1の端部から治具等を引っ掛け部31に引っ掛けることができ、内層7と外層17との隙間から容易に分割断熱材21を引き抜くことができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、流体輸送用可撓管の構成は、図示した例に限られず、内層、断熱層及び外層を有すれば、いかなる断面構造であってもよい。また、前述した各実施形態にかかる構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b、1c………流体輸送用可撓管
3………可撓管
5………樹脂層
7………内層
9………補強層
11………断熱層
13………保護層
15a、15b、15c………座床層
17………外層
19a、19b、19c………端末部材
21………分割断熱材
23………破損個所
25………吸水性部材
27a、27b………マーク
29………遮水部材
31………引っ掛け部
100………流体輸送用可撓管
103………可撓管
105………樹脂層
107………内層
109………補強層
111………断熱層
113………保護層
117………外層
119a、119b………端末部材