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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/88 20060101AFI20250110BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G01S17/88
G01S13/88
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021051075
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149095
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】眞子 凌
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 栄介
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0181127(US,A1)
【文献】特開2018-155694(JP,A)
【文献】特開2017-015601(JP,A)
【文献】特開2014-106897(JP,A)
【文献】特開2016-224854(JP,A)
【文献】特開2014-194729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176990(US,A1)
【文献】特開2019-056984(JP,A)
【文献】特開2010-287029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/64
G01S 13/00-17/95
G05D 1/00-1/87
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲の複数の地点の地面の高さを、周期的に検出するセンサ装置と、
検出した前記地点のうち、前記センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求める検知範囲決定部と、
前記検知範囲内に不連続検知領域が有れば、前記地面に凹型障害物が存在すると判定する第1判定部と、
を備え
前記第1判定部は、
前記センサ装置から前記最遠点までを複数の領域に分割して、該領域ごとに検出された前記地点の数を求め、
前記センサ装置から、検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離、および該領域の長さを検出し、
検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離と領域の長さとの比に基づいて、前記不連続検知領域が存在すれば、前記凹型障害物が存在すると判定する、
検出装置。
【請求項2】
前記第1判定部により前記地面の凹型障害物の存在が判定されないときに、前記検知範囲の時間的な変動に基づいて、前記地面の凹型障害物の有無を判定する第2判定部をさらに備える、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2判定部は、求めた前記検知範囲が、直近の所定の期間内における前記検知範囲と比べて小さいときに、前記凹型障害物が存在すると判定する、請求項に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第2判定部は、求めた前記検知範囲の、直近の所定の期間内の前記検知範囲の平均値に対する比が、前記移動体の速度に基づいて決定された第の閾値より小さいときに、前記凹型障害物が存在すると判定する、請求項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記センサ装置は、前記地面で反射された反射波を検知することによって、前記地面の高さを検出し、
前記第2判定部は、求めた前記検知範囲内における前記反射波の受信強度と、直近の所定の期間内における前記受信強度とを比較して、前記凹型障害物の有無を判定する、
請求項からまでのいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記センサ装置の検知方向による連続検出距離の偏りに基づいて、前記凹型障害物の有無を判定する第3判定部をさらに備える、請求項1からまでのいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
センサ装置により、移動体の周囲の複数の地点の地面の高さを、周期的に検出するステップと、
検出した前記地点のうち、前記センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求めるステップと、
前記検知範囲内に不連続検知領域が有れば、前記地面に凹型障害物が存在すると判定するステップと、
を含み、
前記判定するステップは、
前記センサ装置から前記最遠点までを複数の領域に分割して、該領域ごとに検出された前記地点の数を求めるステップと、
前記センサ装置から、検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離、および該領域の長さを検出するステップと、
検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離と領域の長さとの比に基づいて、前記不連続検知領域が存在すれば、前記凹型障害物が存在すると判定するステップと、
を含む、
検出方法。
【請求項8】
コンピュータに、
センサ装置により地面の高さが周期的に検出される、移動体の周囲の複数の地点のうち、前記センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求める機能と、
前記検知範囲内に不連続検知領域が有れば、前記地面に凹型障害物が存在すると判定する機能と、
を実現させるためのプログラムであって、
前記判定する機能は、
前記センサ装置から前記最遠点までを複数の領域に分割して、該領域ごとに検出された前記地点の数を求める機能と、
前記センサ装置から、検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離、および該領域の長さを検出する機能と、
検出された前記地点の数が第1の閾値より小さくなる領域までの距離と領域の長さとの比に基づいて、前記不連続検知領域が存在すれば、前記凹型障害物が存在すると判定する機能と、
を含む、
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法およびプログラムに関し、特に、移動体の周囲の地面の凹型障害物を検出可能な検出装置、検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用車両や建設用車両のように、あぜ道、圃場、土手道などの比較的未整備の路面上を走行する車両では、走行路の段差や溝などの凹型障害物の検出が不可欠である。このような凹型障害物の検出方法として、車両に取り付けたレーダやソナーなどのセンサ装置により、周囲の地面を監視する方法がある。例えば特許文献1には、車両の前方に取り付けられたレーザレーダ装置により、車両前方の路面の高度を計測し、凹型障害物の上側の地面および下側の地面に対応する1対の計測点の高度差と水平に対する勾配とに基づき、凹型障害物の候補点を設定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した手法では、高さが異なる2点の検出点を検出できることが前提となっている。しかしながら、農道や建設現場などには、崖などのように距離方向に広い範囲に渡って高度差の異なる空間や、狭幅の溝などの凹型障害物があることが想定される。このような路面では、凹型障害物の下側地面がレーダ装置の死角となることがあるため、必ずしも高さの異なる2点の検出点を検出できるとは限らない。
【0005】
本願発明では、凹型障害物の下側地面の検出点が得られない場合であっても、精度よく凹型障害物を検出することができる検出装置、検出方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、移動体の周囲の複数の地点の地面の高さを、周期的に検出するセンサ装置と、検出した地点のうち、センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求める検知範囲決定部と、検知範囲内に不連続検知領域が有れば、地面に凹型障害物が存在すると判定する第1判定部とを備える、検出装置により解決することができる。
【0007】
ここで、「移動体」は、1台の車両である必要はなく、トラクターとトレーラの組み合わせなどの移動する物体の集合体を含む。また、「センサ装置」とは、レーダ装置や、LiDAR、カメラなどの移動体に取り付けて地面の位置を検出できる装置である。「不連続検知領域」とは、検出点が所定範囲以上にわたって連続的に検出されていない領域である。ここで、「連続的」とは、例えば、距離方向に隣接する2点の検出点が所定距離範囲内に存在することをいう。地面と略平行な平面(xy平面)内で連接していなくても、センサ装置を中心とする径方向において2つの検出点が所定範囲内の距離であればよい。「凹型障害物」とは、下り段差や溝、崖などのように、非連続的に高さが低下する高低差を含む地形を意味する。
【0008】
第1判定部は、センサ装置から最遠点までの間に、検出された地点の数が第1の閾値より小さい領域があるときに、この小さい領域が不連続検知領域であり、凹型障害物が存在すると判定するように構成されていることが望ましい。
【0009】
また、第1判定部は、センサ装置から最遠点までを複数の領域に分割して、該領域ごとに検出された地点の数を求め、センサ装置から、検出された地点の数が第2の閾値より小さくなる領域までの距離、および該領域の長さを検出し、検出された地点の数が第2の閾値より小さくなる領域までの距離と大きさとの比に基づいて、不連続検知領域の存在が存在すれば、凹型障害物が存在すると判定するように構成されていることが望ましい。
【0010】
検出装置は、第1判定部により前記地面の凹型障害物の存在が判定されないときに、検知範囲の時間的な変動に基づいて、地面の凹型障害物の有無を判定する第2判定部をさらに備えることが望ましい。
【0011】
第2判定部は、求めた検知範囲が、直近の所定の期間内における検知範囲と比べて小さいときに、凹型障害物が存在するように構成されていることが望ましい。
【0012】
また、第2判定部は、求めた検知範囲の、直近の所定の期間内の検知範囲の平均値に対する比が、移動体の速度に基づいて決定された第3の閾値よりが小さいときに、凹型障害物が存在すると判定することが望ましい。
【0013】
また、センサ装置は、地面で反射された反射波を検知することによって、地面の高さを検知し、第2判定部は、求めた前記検知範囲内における反射波の受信強度と、直近の所定の期間内における受信強度とを比較して、凹型障害物の有無を判定するように構成されていることが望ましい。
【0014】
また、検出装置は、センサ装置の検知方向による連続検出距離の偏りに基づいて、凹型障害物の有無を判定する第3判定部をさらに備えることが望ましい。
【0015】
また、上記課題は、センサ装置により、移動体の周囲の複数の地点の地面の高さを、周期的に検出するステップと、検出した地点のうち、センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求めるステップと、検知範囲内に不連続検知領域が有れば、地面に凹型障害物が存在すると判定するステップとを含む、検出方法によっても解決することができる。
【0016】
さらに、上記課題は、コンピュータに、センサ装置により地面の高さが周期的に検出される、移動体の周囲の複数の地点のうち、センサ装置から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲を求める機能と、検知範囲内に不連続検知領域が有れば、地面に凹型障害物が存在すると判定する機能とを実現させるためのプログラムによっても解決することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凹型障害物の下側地面が検出できない場合であっても、精度よく凹型障害物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る検出装置の概略構成図である。
図2】レーダ装置による検出の説明図である。
図3】本発明に係る検出方法およびプログラムのフローチャートである。
図4】検知される凹型障害物の説明図である。
図5】レーダ装置による検出のフローチャートである。
図6】IMU情報に基づく高さ補正の説明図である。
図7】IMU情報に基づく高さ補正の説明図である。
図8】基本凹型障害物検出のフローチャートである。
図9】凹型障害物検出1の説明図である。
図10】凹型障害物検出1のフローチャートである。
図11】凹型障害物検出1の変形例である凹型障害物検出1’ の説明図である。
図12】凹型障害物検出1’ のフローチャートである。
図13】凹型障害物検出2の説明図である。
図14】凹型障害物検出2のフローチャートである。
図15】凹型障害物検出2の説明図である。
図16】凹型障害物検出2の説明図である。
図17】本発明に係る検出装置の変形例の概略構成図である。
図18】本発明に係る検出方法およびプログラムの変形例のフローチャートである。
図19】変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施態様である検出装置1の概略構成図を図1に示す。検出装置1は、センサ装置の一種であるレーダ装置10と、レーダ装置10に接続され、レーダ装置10の検知範囲を検出する検知範囲決定部24および凹型障害物を検出する3種類の判定部(基本判定部25、第1判定部26、第2判定部27)とを備える。検出装置1は、凹型障害物の検出結果を受けて、警報発信、凹型障害物回避のための自動操舵などの処理を行うための上位装置29に接続されている。図1には、1台のレーダ装置10のみを表示しているが、複数台のレーダ装置があってもよい。また、装置や判定部の間の接続は、有線で構成してもよいし、無線ネットワークで構成してもよい。
【0020】
レーダ装置10は、所定の周波数帯の信号を、周期的(例えば50msごとに)送受信するものであって、農機や、建機、一般自動車等の車両2の上部、下部、またはその双方に搭載され、車両周囲に存在する地面の状態を検出する。具体的には、図2に示すように車両2からみた地面の位置を検出することができる。図2(a)は、センサ装置10が搭載された車両2を上面からみた平面図、図2(b)は、車両2の側方からみた側面図である。センサ装置10により複数の検出点32が検出され、それぞれの検出点32について、高さを含めた三次元の位置情報が検出される。これら一群の検出点32に基づいて、センサ装置10の検知範囲31を定めることができる。検出した情報は、農道近辺に存在する溝や崖などの段差を検出し、農機等の車両が転落することを防ぐために利用される。また、農道両端の溝を検出することで道幅の検出に使用することもできる。
【0021】
レーダ装置10は、周期的な送信信号の信号パターンを生成する信号生成部14、信号生成部14に接続され、信号生成部14の動作を制御する送信制御部13、信号生成部14に接続され、信号生成部14からの信号パターンに基づいて送信信号を発振する発振部15、発振部15に接続され、発振部15で発振された送信波を地面に向かう方向に放射する送信アンテナ11、送信波が地面の物標40により反射された反射波を受信する受信アンテナ12、受信アンテナ12に接続され、受信アンテナ12で受信した信号をデジタル信号へ変換するADC17、デジタル信号に基づいてセンサ装置10に対する物標40の相対距離を算出する距離演算部18、デジタル信号に基づいて車両2の速度を算出する速度演算部19、検出部21で利用する検出閾値を設定する閾値設定部20、距離方向のピークを検出する検出部21、検出部21で検出された距離において、到来角度(水平角、仰角)を求める角度演算部22、および、検出方向のずれをIMU情報を利用して補正する補正部23を備える。発振部15とADC17とは、スイッチ16により直接接続することができる。本実施例のレーダ装置10は、FCM(Fast Chirp Modulation)方式を採用しているが、FCM方式に限定されず、パルス方式でもよい。
【0022】
検知範囲決定部24、基本判定部25、第1判定部26、および第2判定部27は、各部の機能をプログラムで記述し、コンピュータによって実行することにより、各部の機能を実施しているが、各部を個別のハードウェアやソフトウェアによって構成してもよい。プログラムは、コンピュータの記憶装置に格納されている。
【0023】
次に、図3および図4に基づいて、検出装置1の動作、すなわち本発明の実施態様である検出方法およびプログラムについて説明する。図3は全体的なフローチャートであり、図4は、判定部で判別される凹型障害物52の類型を説明するための説明図である。
【0024】
はじめに、レーダ装置10により、車両2の周囲の複数の地点の地面を周期的に検出して、検出情報を検知範囲決定部24に提供する(ステップ101)。検出情報には、車両2の速度や、検出された地点(検出点)ごとの、地面の高さを含む三次元位置情報および反射波の受信強度を含む。検出情報は、各周期に対応するフレームごとに、時系列的に、検出装置1のメモリに記憶される。
【0025】
次に、基本判定部25が基本凹型障害物判定処理を実行する(ステップ102)。基本凹型障害物判定処理は、検出された地面の高さの平均hが所定の閾値より小さいときに、凹型障害物52が存在すると判定する判定処理である。基本凹型障害物判定処理によって凹型障害物52が判定された場合には(ステップ103)、上位装置29へ凹型障害物52が判定されたことを送信して(ステップ108)、終了する。
【0026】
基本凹型障害物判定処理によって凹型障害物52が判定されない場合には、検知範囲決定部24が、レーダ装置10から最も遠くに位置する最遠点までの検知範囲31を求め、第1判定部26が、凹型障害物判定1の処理を実行する(ステップ104)。凹型障害物判定1は、図4(a)に示すように、検知範囲31内にある溝状の凹型障害物52を判定する処理である。溝状の凹型障害物52は、レーダ装置10の死角となるため、凹型障害物52の領域は検出点32が得られない。凹型障害物判定1は、レーダ装置10から最遠点までの間の検知領域内に不連続検知領域が有れば、地面に凹型障害物52が存在すると判定する。凹型障害物52が判定された場合には(ステップ105)、上位装置29へ凹型障害物52が判定されたことを送信して(ステップ108)、終了する。
【0027】
凹型障害物判定1の処理によって凹型障害物52が判定されない場合には、第2判定部27が凹型障害物判定2の処理を実行する(ステップ106)。凹型障害物判定2は、図4(b)に示すように、検知範囲31内にある崖状の凹型障害物52を判定する処理である。崖状の凹型障害物52は、レーダ装置10の死角となるため、崖よりも遠方の領域には検出点32がない。凹型障害物判定2の処理によって凹型障害物が判定された場合には(ステップ107)、上位装置29へ凹型障害物が判定されたことを送信して(ステップ108)、終了する。凹型障害物判定2は、レーダ装置10の検知範囲の時間的な変動に基づいて、地面の凹型障害物52の有無を判定する。凹型障害物52が判定された場合には(ステップ107)、上位装置29へ凹型障害物52が判定されたことを送信して(ステップ108)、終了する。これに対して、凹型障害物52が判定されない場合には、上位装置29へ凹型障害物が判定されなかったことを送信して(ステップ109)、終了する。
【0028】
次に、レーダ検出(ステップ101)、基本凹型障害物判定(ステップ102)、凹型障害物判定1(104)、凹型障害物判定2(106)の各処理について、詳細に説明する。
【0029】
図5は、レーダ検出(ステップ101)の動作を示すフローチャートである。はじめに、送信制御部13、信号生成部14および発振部15が所定の周波数の送信信号を生成し、送信アンテナ11から車両2の前方の地面に向けて送信波を放射する送信処理を行う(ステップ701)。次に、送信波が1または複数の物標(地面)40によって反射された反射波を、受信アンテナ12により受信信号として受信し、ADC17によりデジタル信号に変換する受信処理を行う(ステップ702)。
【0030】
次に、距離演算部18は、デジタル信号に基づいて、レーダ装置10と物標(地面)40との相対距離を求める距離演算を行う(ステップ703)。また、速度演算部19は、デジタル信号に基づいて速度演算を行う(ステップ704)。具体的には、速度演算部19は、受信信号に基づいて、1または複数の対象物との相対速度情報を算出する。速度演算により対象物の速度を検出することができる。その後、閾値設定部20は、検出部21で利用するピークを検出のための検出閾値を設定する(ステップ705)。具体的には、受信アンテナ12の取り付け位置、高さ、角度などに基づいて閾値を調整する。そして、検出部21は、CFAR(Constant False Alarm Rate) などの所定の方式を用いて、距離方向のピークを検出する(ステップ706)。次に、角度演算部22は、検出部21で検出された距離において、反射波の到来角度(水平角、仰角)を求める角度演算処理を行い、レーダ装置10の位置を原点として放射方向を基準軸とする仮想的な空間において、物標(地面)40が存在する方向を算出する。
【0031】
さらに、補正部23が、地面の凹凸などの影響でレーダ装置が傾いた場合に乗じる検出位置のずれをIMU(Interial Measurement Unit)情報を利用することで補正する。図6のAで示すように、車両2が平坦な地面を走行している場合にはレーダ装置10と地面3の位置関係が変わらないので高さはぶれずに検出することできる。図中のグラフから明らかなとおり、検出点32は所定の範囲60内に位置している。これに対して、図6のBで示すように車両2が凹凸がある地面を走行すると、レーダ装置10で得られる物標(地面)40の位置はレーダからの相対的な位置によって決まるため、ずれが生ずる。例えば、レーダ装置10が上向くと地面は本来の位置よりも低く検出され、本来位置しなければならない範囲60から大幅にずれた検出点33が検出される。このずれを解消するために車両のIMU情報から車両の姿勢の変化(三次元の移動量)を認識し、レーダ装置10から見た座標情報をグローバル座標(スタート位置を原点とした座標)に直す。図7に補正部23によるIMU補正前の検出結果(a)と、補正後の検出結果(b)を示す。補正前に範囲60から大幅にずれていた検出点33が、補正により範囲60に位置する検出点34に補正されていることがわかる。
【0032】
以上の処理により、レーダ装置10は、各検出点の三次元位置情報および反射波の受信強度と、対象物の速度とを含む検出情報を検出することができる。レーダ装置10の検出情報は、各周期に対応するフレームごとに、時系列的に、検出装置1のメモリに記憶される。
【0033】
次に、図8に基づいて、基本凹型障害物判定(ステップ102)の詳細な処理を説明する。基本凹型障害物判定は、基本判定部25を構成するコンピュータ(プロセッサ)が、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより実施する。
【0034】
はじめに、基本判定部25は、検出装置1のメモリに記憶された検出情報のうち、最新のフレーム(以下、「現フレーム」という)の検出情報を読み出し、それぞれの検出点32について、三次元位置情報に含まれる高さの情報を取得する。そして、現フレームで検出された地面の高さの平均値hを算出する(ステップ201)。次に、基本判定部25は、地面3の凹型障害物52を判定するための閾値thを設定する(ステップ202)。例えば、閾値thは、(1)式のように、レーダの取り付け高さなどから求まる本来の地面の高さgを基準とした所定の範囲(t)内の値とする。
th=f (g<f<g+t) ・・・(1)
【0035】
次に、基本判定部25は、現フレームで検出されたターゲットの高さの平均値hと、閾値thとを比較する(ステップ203)。現フレームで検出されたターゲットの高さの平均値hが閾値thよりも低い場合には、検知範囲31内の地面3に凹型障害物52があると判断する(ステップ204)。一方、現フレームで検出されたターゲットの高さの平均値hが閾値th以上である場合には、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0036】
続いて、図9および図10に基づいて、凹型障害物判定1(ステップ104)の詳細な処理を説明する。凹型障害物判定1は、第1判定部26を構成するコンピュータ(プロセッサ)が、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより実施する。凹型障害物判定1は、検知範囲31内にある溝状の凹型障害物52を判定する処理である。具体的には、図9に示すように、検知範囲31をレーダ装置10からの距離方向に、所定の探索範囲rごとの領域61、62、63に分割して、レーダ装置10に近い領域から順に領域内の検出点32の数をカウントし、所定の閾値よりも小さい不連続検知領域があるときに、この小さい領域が凹型障害物であると判定する処理である。検知範囲31は、レーダ装置10から、レーダ装置10から最も遠い最遠点35までの距離で規定される。
【0037】
次に、図10に示した凹型障害物判定1のフローチャートに基づいて、具体的な処理手順を説明する。はじめに、第1判定部26は、距離インデックスdを0に初期化し(ステップ301)、所定の探索範囲rを設定する(ステップ302)。次に、第1判定部26は、最遠点までの距離wmaxを検出する(ステップ303)。最遠点までの距離wmaxは、図9に示すように、検出点32のうち、レーダ装置10から最も遠くに位置する検出点35までの距離である。
【0038】
次に、第1判定部26は、距離インデックスdからd+rまでの領域に存在する検出点の数cntをカウントする(ステップ304)。この時点では距離インデックスd=0であるため、レーダ装置10から探索範囲rまでの領域61に存在する検出点の数cntをカウントする。そして、第1判定部26は、カウントした検出点の数cntと所定の閾値thcntとを比較する(ステップ305)。カウントした検出点の数cntが所定の閾値thcntよりも少ない場合には、領域61に不連続検知領域が存在し、凹型障害物52があると判断して(ステップ308)、終了する。一方、カウントした検出点の数cntが所定の閾値thcnt以上の場合には、領域61に凹型障害物52が存在しないと判定する。次に、第1判定部26は、距離インデックスdを探索範囲rを加算して(ステップ306)、加算後の距離インデックスdと最遠点までの距離wmaxとを比較する(ステップ307)。加算後の距離インデックスdが最遠点までの距離wmax以下の場合には、ステップ304に戻る。
【0039】
この時点では距離インデックスd=rであるため、第1判定部26は、レーダ装置10からの距離がrから2rまでの領域62に存在する検出点の数cntをカウントする(ステップ304)。そして、第1判定部26は、カウントした検出点の数cntと所定の閾値thcntとを比較する(ステップ305)。カウントした検出点の数cntが所定の閾値thcntよりも少ない場合には、領域62に不連続検知領域が存在し、領域62に凹型障害物52があると判断して(ステップ308)、終了する。一方、カウントした検出点の数cntが所定の閾値thcnt以上の場合には、領域62に凹型障害物52存在しないと判定する。次に、第1判定部26は、距離インデックスdを探索範囲rだけ加算して(ステップ306)、加算後の距離インデックスdと最遠点までの距離wmaxとを比較する(ステップ307)。加算後の距離インデックスdが最遠点までの距離wmax以下の場合には、ステップ304に戻る。
【0040】
このように、凹型障害物52が判定されるか、加算後の距離インデックスdが最遠点までの距離wmaxより大きくなるまで場合、ステップ304~307の処理を繰り返す。ステップ307において、加算後の距離インデックスdが最遠点までの距離wmaxより大きいと判断されると、検知範囲31内に不連続検知領域が存在せず、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0041】
続いて、図11および図12に基づいて、凹型障害物判定1の変形例である凹型障害物判定1’の処理を説明する。凹型障害物判定1’は、第1判定部26を構成するコンピュータ(プロセッサ)が、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより実施する。凹型障害物判定1’は、検知範囲31内にある溝状の凹型障害物52を判定する処理であり、レーダ装置10から最遠点35までを複数の領域に分割して、各領域ごとに検出点の数を求める点は、凹型障害物判定1と同様である。ただし、図11に示すように、距離に対する検出点の数を示すヒストグラムを作成し、レーダ装置10から、検出数が所定の閾値thcnt’より小さくなる領域66までの距離w、および、当該領域66の長さwを検出し、距離wと長さwとの比に基づいて、不連続検知領域となる凹型障害物52の有無を判定する点が異なる。領域66までの距離wとその長さwとの比に基づいて判定することにより、狭い不感帯領域を、凹型障害物52と誤判定することを防止することができ、より精度の高い凹型障害物52の判定が可能となる。
【0042】
次に、図12に示した凹型障害物判定1’のフローチャートに基づいて、具体的な処理手順を説明する。はじめに、第1判定部26は、レーダ装置10から最遠点35までを複数の領域61、62、63に分割して、各領域ごとに検出点の数を求め、図11に示したような、距離rに対する検出点の数cntを示すヒストグラムを作成する(ステップ401)。次に、第1判定部26は、各領域ごとに、カウントした検出点の数cntと所定の閾値thcnt’とを比較して、カウントした検出点の数cntと所定の閾値thcnt’より小さくなる領域66が有るか否かを判定する(ステップ402)。検出点の数cntが所定の閾値thcnt’より小さくなる領域66が検出されない場合には、検知範囲31内に不連続検知領域が存在せず、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0043】
一方、検出点の数cntが所定の閾値thcnt’より小さくなる領域66が検出された場合には、第1判定部26は、レーダ装置の位置10から領域66までの距離wを検出し(ステップ403)、さらに領域66の長さwを検出する(ステップ404)。 そして、第1判定部26は、領域66が不連続検知領域と評価できるか否かを判定する。具体的には、レーダ装置の位置10から領域66までの距離wと領域66の長さwの比であるw/wと所定の閾値thhistとを比較する(ステップ405)。wはレーダの取り付け高さや角度などによって変動する値であるため、判定のための閾値thhistは、レーダ装置の位置や角度などによって調整してもよい。比w/wが閾値thhistよりも大きい場合には、領域66が大きいことを意味することから、領域66が不連続検知領域と評価できると判定し、検知範囲31に凹型障害物52があると判断して(ステップ406)、終了する。一方、比w/wが閾値thhist以下の場合には、領域66が不連続検知領域とは評価できず、検知範囲31にわたって連続的に検出できており、検知範囲31内に不連続検知領域が存在せず、ゆえに検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0044】
続いて、図13および図14に基づいて、凹型障害物判定2(ステップ106)の詳細な処理を説明する。凹型障害物判定2は、第2判定部27を構成するコンピュータ(プロセッサ)が、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより実施する。凹型障害物判定2は、第1判定部26により地面の凹型障害物52の存在が判定されないときに、検知範囲の時間的な変動に基づいて、検知範囲31内にある崖状の凹型障害物52の有無を判定する処理である。すなわち、現フレームの検出点から求めた検知範囲が、直近の所定の期間内の複数のフレームの検知範囲と比べて小さいときに、凹型障害物52が存在すると判定する。より具体的には、現フレームの検出点から求めた検知範囲の、直近の所定の期間内の複数のフレームの検知範囲の平均値に対する比が、移動体の速度に基づいて決定された第3の閾値より小さいときに、凹型障害物52が存在すると判定する。図13(a)に示すように、検知範囲31に崖状の凹型障害物52が含まれない場合には、最遠点35は、検知範囲31の境界付近に存在する。しかしながら、図13(b)に示すように、検知範囲31に崖状の凹型障害物52が含まれる場合には、崖状の凹型障害物52より遠方の領域の検出点は得られないことから、最遠点35は、本来の検知範囲39よりも手前に位置し、検知範囲31が狭くなる。このため、検知範囲31の時系列的な変化を検出することにより、凹型障害物52を検出することができる。
【0045】
次に、図14のフローチャートに基づいて、凹型障害物判定2の具体的な処理手順を説明する。はじめに、第2判定部27は、直近の所定の期間内における検知範囲を求める(ステップ501)。すなわち、図15(a)に示すように、現フレーム(フレームNo.n)からn-1フレーム分だけ遡って、それぞれの過去のフレーム(フレームNo.1~n-1)の検出点について、センサ装置10から連続的に検知される検出点までの検知範囲w~wn-1を求めて、メモリに記憶する。次に、第2判定部27は、検知範囲w~wn-1の平均値waveを算出し(ステップ502)、現フレームの検知範囲wと過去フレームの検知範囲平均値waveの比w/waveを算出する(ステップ503)。なお、上述したステップ501~503では、直近のn-1フレーム分の全ての検知範囲w~wn-1を用いて平均値waveを求めているが、一部のフレームのみを用いて検知範囲の平均値waveを求めてもよい。
【0046】
次に、第2判定部27は、検知範囲の変動の有無を判定するための変動判定閾値thを設定する(ステップ504)。地面に溝や崖があるケースでは、検知範囲wは小さくなるため、比w/waveは、0<w/wave<1となる。0に近づくほど溝や崖に近づいていることを意味する。したがって、変動判定閾値thは、(2)式のように、1より小さな所定の値とする。
th=f (0<f<1) ・・・(2)
ここで、thは固定値に限らず、(3)式のように、レーダ装置10を搭載する車両2の車速などに応じた係数kをかけてもよい。
th=f×k (0<f×k<1) ・・・ (3)
すなわち、第2判定部27は、レーダ装置10の検出情報に含まれる車両2の車速vに基づいて、図16に示すような車速ごとに設定したテーブルから、係数kを読み出す。係数kは車速が速いほど大きく、車速が遅いほど小さい値となっている。次に、(3)式で示したような演算を行って、係数kに基づいて変動判定閾値thを設定する。係数kの決定は、テーブルを参照せずに、車速vの関数式により算出してもよい。
【0047】
次に、第2判定部27は、フレームの検知範囲wと過去フレームの検知範囲平均値waveの比w/waveと変動判定閾値thとを比較する(ステップ505)。比w/waveが変動判定閾値th以上である場合には、検知範囲31の時系列的な変動はなく、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0048】
一方、比w/waveが変動判定閾値thより小さい場合には、検知範囲31の時系列的な変動が検出される。ここで、検知範囲31の時系列的な変動は、凹型障害物52の存在だけでなく、地面3の材質などの他の要因により地面3からの反射波の強度が変化することによっても生ずることがある。このため、レーダ装置10の検出情報に含まれる反射波の受信強度の時系列的な変化、すなわち現フレーム内における検出点の反射波の受信強度と、直近の所定の期間内における検出点の反射波の受信強度とを比較する。より具体的には、現フレーム内における検出点の反射波の受信強度の平均値と、直近の所定の期間内における検出点の受信強度の平均値との比を所定の閾値と比較する。受信強度の変化が過去フレームに比べて小さい場合には、受信強度による影響は小さいと判断して、検知範囲31の時系列的な変動は凹型障害物52によるものであると判定することができ、凹型障害物52を検出することができる。
【0049】
上述した受信強度による影響を判定するため、まず、第2判定部27は、現フレーム内における検出点の反射波の受信強度の平均値ampを求める(ステップ506)。次に、直近の所定の期間内における受信強度を求めて、過去フレームの受信強度の平均値ampaveを求める(ステップ507)。すなわち、図15(b)に示すように、現フレーム(フレームNo.n)からn-1フレーム分だけ遡って、それぞれのフレームの検出点について、フレーム内の検出点の反射波の受信強度の平均値amp~ampn-1を求めて、メモリに記憶する。次に、第2判定部27は、受信強度amp~ampn-1の平均値ampaveを算出する。この際、直近のn-1フレーム分の全ての受信強度の平均値amp~ampn-1を用いて平均値ampaveを求めてもよいし、一部のフレームのみを用いて平均値ampaveを求めてもよい。
【0050】
次に、受信強度の変動の有無を判定するための変動判定閾値thを設定する(ステップ508)。そして、第2判定部27は、現フレームの受信強度の平均値ampと過去フレームの受信強度の平均値ampaveとの比amp/ampaveを、変動判定閾値thと比較する(ステップ509)。比amp/ampaveが変動判定閾値th以上である場合には、受信強度の時系列的な変動はなく、ステップ505で検出された検知範囲31の変動は地面3の凹型障害物52によるものであり、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52があると判断して(ステップ510)、終了する。一方、比amp/ampaveが変動判定閾値thより小さい場合には、ステップ505で検出された検知範囲31の時系列的な変動は、地面3の材質などの他の要因によって生じた可能性が高いと判断し、検知範囲31内の地面3には凹型障害物52がないと判断して、終了する。
【0051】
以上で説明したように、本発明の実施態様である検出装置1の構成および動作を参照しながら、本発明に係る検出装置、検出方法およびプログラムについて説明を行った。検知範囲内に不連続検知領域が有れば、地面に凹型障害物が存在すると判定することにより、凹型障害物の下側地面が検出できない場合であっても、精度よく凹型障害物を検出することができる。
【0052】
続いて、図17~19を参照しながら、本発明に係る検出装置、検出方法およびプログラムの変形例について説明する。図17は検出装置4の概略構成図であり、図18は検出装置4の動作を示すフローチャートである。検出装置4は、レーダ装置10と上位装置29とに接続された第3判定部28を備える点が、前述した検出装置1の構成(図1)と異なり、他の構成は検出装置1と同じである。また、検出装置4の動作は、図18のステップ110、111が設けられている点で、前述した検出装置1の動作(図3)と異なり、他の動作は検出装置1と同じである。第3判定部28は、図18に示したフローチャートのステップ110、111を実施するための構成である。
【0053】
検出装置1においては、レーダ装置10の検知方向によらず全ての検出点32を用いて、検知範囲31内の凹型障害物52の有無を判定している。これに対して、検出装置4は、図19(a)に示すように、検知範囲31をレーダ装置10を中心とした所定の角度範囲θごとに複数の領域71、72に分割して、各領域ごとの連続領域距離wから、凹型障害物52の有無を判定する。通常の平坦な道を走行している場合には、検知方向によって連続検出距離は大きな差異は生まれないが、例えば、車両側方に溝などがある場合、溝がある方向の連続検出距離は短くなるものの、溝がない方向の連続検出距離は変わらないため、検知方向によって連続検出距離に偏りが生じる。したがって、この偏りを検出することで近傍に凹型障害物52があるかどうかを判断する。
【0054】
次に、図18を参照しながら、検出装置4の動作について説明する。なお、検出装置1と同一の動作については、同じ参照を付して説明を省略する。第1判定部26による凹型障害物52の判定(ステップ104、105)後に、第3判定部28が、検知範囲31をレーダ装置10を中心として所定の角度θごとのに複数の領域71、72に分割して、各領域内の検出点に基づいて、当該領域における連続領域距離wを求める(ステップ110)。連続検出距離wは、凹型障害物判定1’の距離wと同じ方法で求めることができる。すなわち、角度方向に分割された領域71.72を、さらに径方向に分割した複数の領域について、検出点の数cntが所定の閾値thcnt’より小さくなる領域から、レーダ装置10の位置までの距離が、連続検出距離wである。各領域71、72ごとに距離wを求めることにより、図19(b)のように、検知方向に対する連続検出距離wのヒストグラムを作成することができる。
【0055】
次に、第3判定部28は、レーダ装置10の検知方向によって連続検出距離に偏りがあるか否かを判定する(ステップ111)。検出装置4では、検知方向による偏りを、分散値を求めるなど統計的な手法を用いているが、他の方法で偏りを求めてもよい。例えば、隣り合う角度ごとに検出された距離の変化量または変化率を算出し、所定の閾値以上の変化があると判定された場合に偏りが生じていると判定してもよい。検知方向による偏りがある場合には、凹型障害物52が存在すると判定する判定して、上位装置29へ凹型障害物が判定されたことを送信して(ステップ108)、終了する。一方、検知方向による偏りがない場合には、第2判定部27による凹型障害物判定2(ステップ106、107)を実行する。
【0056】
以上で説明したように、検出装置4は、検知方向も考慮して凹型障害物を検出することにより、側溝など車両に対して特定の方向に位置する凹型障害物も、精度よく検出することができる。
【0057】
以上、本発明にかかる検出装置、検出方法およびプログラムについて説明を行ったが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。
【符号の説明】
【0058】
1、4 検出装置
2 移動体(車両)
3 地面
10 センサ装置(レーダ装置)
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 送信制御部
14 信号生成部
15 発振部
16 スイッチ
17 ADC
18 距離演算部
19 速度演算部
20 閾値設定部
21 検出部
22 角度演算部
23 補正部
24 検知範囲決定部
25 基本判定部
26 第1判定部
27 第2判定部
28 第3判定部
29 上位装置
31、39 検知範囲
32、33、34、36、37 検出点
35 最遠点
40 物標(地面)
51 上側地面
52 凹型障害物
53 下側地面
61、62、63、66、71、72 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19