(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20250110BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/304 648K
(21)【出願番号】P 2021058628
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 修
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 敦
(72)【発明者】
【氏名】浜 秀昭
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-9956(JP,A)
【文献】特開2006-332700(JP,A)
【文献】特開2010-177535(JP,A)
【文献】特開2013-74196(JP,A)
【文献】特開平8-159908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
H01L 21/306
B08B 1/00
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を許容する流体供給許容手段を有する基板処理装置と、
該基板処理装置に接続され、該基板処理装置で使用される流体を供給する流体供給装置と、を有する基板処理システムであって、
該流体供給装置は、
該基板処理装置に該流体が供給される流路に設置された流量計を有し、
該流体供給許容手段が該流体の受け入れを停止し、
該流量計が事前に設定された時間以上、基板処理装置への流体の供給を計測しなかったときは、該流体供給装置の運転を停止することを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
該流体供給許容手段は、
ポンプまたは開閉弁であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
該流体供給装置1台に対して複数台の該基板処理装置が接続され、
該流体供給装置は複数台の該基板処理装置に流体を供給することを特徴とする請求項1に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に流体を供給する流体供給装置を有する基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置では加工点の冷却、加工屑の排出、駆動部の冷却などのために純水が使用されている。また良好に加工するために、純水に炭酸ガスや薬剤を混合させている場合もある。
【0003】
このような流体は、基板処理装置と接続された流体供給装置によって供給され、流体供給装置によって温度や流量が制御されている。また廃棄を必須とする特殊な薬液を利用しない場合や廃液処理に制限がある特殊な被加工物を加工しない場合は、流体を循環させて繰り返し利用している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
通常基板処理装置の運転を停止する際は、流体供給装置の運転も同じく停止する事が一般的であるが、基板処理装置と流体供給装置とが離れて設置されている場合や、一台の流体供給装置に対して複数台の基板処理装置が接続されている場合は、オペレータが流体供給装置の電源を切りわすれる恐れや、電源を切ってもよいか判断しにくく、流体供給装置のみが継続的に稼働してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板処理装置と流体供給装置との制御ユニットがそれぞれ運転状況を通信し合い、電源を落とす設計になっていれば、自動制御が可能であるが、実際の半導体製造構造では、基板処理装置と流体供給装置の制御ユニット同士が、電気的に通信していないことも多い。
【0007】
このために、流体供給装置のみが継続的に稼働してしまう恐れがある。流体供給装置のみが継続的に稼働すると、この流体供給装置の消耗品が無駄に消費される恐れや、電力が必要となって、コストが高騰する恐れが生じる。
【0008】
本発明の目的は、流体供給装置内の消耗品の消耗品、流体供給装置の運転にかかる電力コストを抑制することができる基板処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の基板処理システムは、流体の供給を許容する流体供給許容手段を有する基板処理装置と、該基板処理装置に接続され、該基板処理装置で使用される流体を供給する流体供給装置と、を有する基板処理システムであって、該流体供給装置は、該基板処理装置に該流体が供給される流路に設置された流量計を有し、該流体供給許容手段が該流体の受け入れを停止し、該流量計が事前に設定された時間以上、基板処理装置への流体の供給を計測しなかったときは、該流体供給装置の運転を停止することを特徴とする。
【0010】
前記基板処理システムにおいて、該流体供給許容手段は、ポンプまたは開閉弁であっても良い。
【0011】
前記基板処理システムにおいて、該流体供給装置1台に対して複数台の該基板処理装置が接続され、該流体供給装置は複数台の該基板処理装置に流体を供給しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、流体供給装置内の消耗品の消耗品、流体供給装置の運転にかかる電力コストを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る基板処理システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された基板処理システムの基板処理装置の概略の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された基板処理システムの流体供給装置の構成例を分解して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る基板処理システムを図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る基板処理システムの構成を示す図である。
図2は、
図1に示された基板処理システムの基板処理装置の概略の構成を示す図である。
図3は、
図1に示された基板処理システムの流体供給装置の構成例を分解して示す分解斜視図である。
【0016】
図1に示す実施形態1に係る基板処理システム1は、
図2に示す基板200を処理するシステムである。なお、処理とは、基板200に、切削、研削、研磨、プラズマエッチング、樹脂被覆、レーザー加工等種々の加工を施すことをいう。実施形態1では、基板200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハである。基板200は、表面201に分割予定ライン202が複数設定され、表面201の分割予定ライン202により区画された各領域に図示しないデバイスが形成されている。
【0017】
また、本発明では、基板200は、基板上に配設されたデバイスチップがモールド樹脂で被覆されたパッケージ基板、電子部品に使用される各種セラミック基板、樹脂基板、又はガラス基板などであってもよい。実施形態1では、例えば、基板200は、
図2に示すように、基板200よりも大径な円板状の粘着テープ209が表面201の裏側の裏面203に貼着され、粘着テープ209の外縁部に内径が基板200の外径よりも大きな環状フレーム210が貼着されて、粘着テープ209を介して環状フレーム210に支持される。実施形態1では、基板200は、前述した処理が施されて、個々のデバイスに分割される。
【0018】
実施形態1に係る基板処理システム1は、
図1に示すように、複数台の基板処理装置2と、1台の流体供給装置3とを有する。基板処理装置2は、基板200に前述した処理を施す装置である。実施形態1では、基板200を分割予定ライン202に沿って切削する切削装置である。
【0019】
実施形態1において、基板処理装置2は、
図2に示すように、基板200を保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された基板200を切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる図示しない移動ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニット27とを備える。
【0020】
チャックテーブル10は、円盤状に形成され、基板200を保持面11で吸引保持する。チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源に接続され、真空吸引源により保持面11が吸引されることで、保持面11に粘着テープ209を介して載置された基板200を吸引保持する。また、チャックテーブル10は、周囲に環状フレーム210をクランプするクランプ部(
図2では、省略する)が設けられている。
【0021】
切削ユニット20は、切削ブレード21がスピンドル23に装着され、チャックテーブル10に保持された基板200を切削する処理ユニットである。切削ユニット20は、基板200を切削する切削ブレード21と、スピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられ先端に切削ブレード21が装着される駆動部であるスピンドル23と、スピンドル23を軸心回りに回転する図示しないスピンドルモータと、スピンドルハウジング22の先端面に取り付けられ、切削ブレード21の上方を覆うブレードカバー24と、切削ブレード21に流体としての純水300を供給する純水供給ノズル25とを備える。
【0022】
純水供給ノズル25は、ブレードカバー24に取り付けられ、ブレードカバー24の供給管26を通して流体としての純水300が流体供給装置3から供給される。純水供給ノズル25は、切削ブレード21に純水300を供給することで、基板200に切削ブレード21の切り刃が切り込む加工点に純水300を供給することとなる。
【0023】
また、切削ユニット20は、スピンドルハウジング22内に純水300が供給され、スピンドルハウジング22内に供給される純水300によりスピンドル23が軸心回りに回転(駆動)することで発生する熱が冷却される。
【0024】
制御ユニット27は、基板処理装置2を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット27は、基板200に対する処理動作を基板処理装置2に実行させるものである。制御ユニット27は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。
【0025】
制御ユニット27の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、基板処理装置2を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して基板処理装置2の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット27は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット、オペレータが加工条件などを登録する際に用いる入力ユニットと接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0026】
また、基板処理装置2は、切削前後の基板200を複数収容するカセットと、カセットに基板200を出し入れする搬出入手段と、切削後の基板200を洗浄する洗浄手段と、基板200を搬送する搬送手段等を備えている。
【0027】
基板処理装置2は、基板200を処理する処理動作では、搬出入手段によりカセット内から切削前の基板200を取り出し、取り出された基板200を搬送手段によりチャックテーブル10に搬送する。そして、基板処理装置2は、チャックテーブル10により基板200を吸引保持し、移動ユニットにより、チャックテーブル10と切削ユニット20とを水平方向と平行なX軸方向、水平方向と平行でかつX軸方向に対して直交するY軸方向、鉛直方向と平行なZ軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させて、切削水を供給しながら基板200を切削して個々のデバイスに分割する。基板処理装置2は、切削後の基板200を搬送手段によりチャックテーブル10から洗浄手段に搬送した後、洗浄手段により洗浄する。そして、基板処理装置2は、洗浄後の基板200を搬送手段により搬出入手段に搬送し、搬出入手段によりカセット内に収容する。
【0028】
なお、基板処理装置2は、処理動作では、流体としての純水300が純水供給ノズル25、スピンドルハウジング22内、また図示しない洗浄手段に切削後の基板200を洗浄するために供給される。また、基板処理装置2は、純水300と切削等の処理により生じる加工屑とを含む加工廃液301を流体供給装置3に向けて送り出す。また、実施形態1では、基板処理装置2は、3台設けられている。なお、純水供給ノズル25に供給される流体は、加工廃液301に加工屑が混入するために加工屑を除去して循環させる必要がある。一方、スピンドルハウジング22内に供給される流体は加工屑が混入しないため温度管理のみを行い繰り返し循環させることができる。よって、純水供給ノズル25に供給される流体のように加工点の冷却や洗浄のために加工点に供給され加工液として機能する流体と、スピンドルハウジング22のような駆動部に供給される冷却水として機能する流体と、は、流体供給装置から異なる流路を通って供給され管理されても良い。その場合、流量計84は、どちらかの流路のみに設置されても良いし、両方の流路に設置されても良い。
【0029】
また、基板処理装置2は、
図1に示すように、加工廃液供給管5と、純水供給管7と、開閉弁8とを有する。加工廃液供給管5及び純水供給管7は、一端が複数台の基板処理装置2それぞれに接続され、他端が1台の流体供給装置3に接続されている。加工廃液供給管5及び純水供給管7は、基板処理装置2と1対1で対応し、一端が対応した基板処理装置2に接続している。こうして、加工廃液供給管5及び純水供給管7により、流体供給装置3、1台に対して、複数台(実施形態1では、3台)の基板処理装置2が接続している。加工廃液供給管5は、基板処理装置2から流体供給装置3に加工廃液301が供給される加工廃液301の流路である。純水供給管7は、流体供給装置3から基板処理装置2に純水300が供給される純水300の流路である。
【0030】
開閉弁8は、基板処理装置2に設置されている。開閉弁8は、開くことで、純水300の基板処理装置2への供給を許容し、閉じることで、純水300の基板処理装置2への供給(受け入れ)を停止するものである。このために、開閉弁8は、基板処理装置2の処理ユニットである切削ユニット20に接続して、基板処理装置2への純水300の供給を許容する流体供給許容手段である。基板処理装置2は、流体供給許容手段として開閉弁の代わりに制御ユニット27によって制御されるポンプを利用してもよい。基板処理装置2は、制御ユニット27によってポンプの駆動することで流体供給装置3から必要な流量に応じて純水300の供給を受け入れ、ポンプの駆動を停止する事で純水300の受け入れを停止しても良い。
【0031】
流体供給装置3は、基板処理装置2に接続され、基板処理装置2で使用される流体である純水300を基板処理装置2に供給するものである。実施形態1では、流体供給装置3は、基板処理装置2から基板200の切削に使用された純水300と加工屑を含む加工廃液301(基板処理装置2から排出される流体に相当)が供給され、この加工廃液301を純水300(加工屑が除去された流体に相当)に精製して基板処理装置2で再利用するためのものである。流体供給装置3は、
図3に示すように、循環ユニット6と、制御ユニット4とを備える。
【0032】
循環ユニット6は、基板処理装置2から排出される加工廃液301が加工廃液供給管5から供給され、加工廃液301から加工屑を除去し、加工屑が除去された純水300を生成して、精製した純水300を純水供給管7を通して再度基板処理装置2に供給するものである。循環ユニット6は、廃液貯留タンク30と、フィルタユニット40と、清水収容ユニット50と、純水精製ユニット60と、精密フィルタ70と、温度調整ユニット80とを備える。
【0033】
廃液貯留タンク30は、基板処理装置2により排出された加工屑を含む加工廃液301を貯留するものである。即ち、廃液貯留タンク30が貯留する加工廃液301は、基板処理装置2が基板200を加工するのに用いた使用済みの加工廃液であり、加工屑を含むものである。廃液貯留タンク30は、加工廃液供給管5を通して基板処理装置2から供給された加工廃液301を貯留する密閉タンクである廃液タンク31と、廃液タンク31内の加工廃液301を送給する
図3に示す廃液送給ポンプ32を備えている。
【0034】
フィルタユニット40は、廃液貯留タンク30に一旦貯留されかつ廃液貯留タンク30から送給された加工廃液301から加工屑を濾過して除去し、加工廃液301を清水302に精製するものである。フィルタユニット40は、廃液貯留タンク30から送給された加工廃液301が配管41を介して導入される第1のフィルタ42と、加工廃液301が配管41を介して導入される第2のフィルタ43と、第1のフィルタ42及び第2のフィルタ43を着脱自在に設けた清水受けパン46などを備えている。廃液送給ポンプ32と第1のフィルタ42及び第2のフィルタ43とを接続する配管41には、電磁開閉弁44-1,44-2が設けられている。電磁開閉弁44-1,44-2が開くと、第1のフィルタ42及び第2のフィルタ43に加工廃液301が導入される。また、配管41には、加工廃液301の圧力を検知する圧力検知手段45が取り付けられている。
【0035】
第1のフィルタ42及び第2のフィルタ43は、導入された加工廃液301を濾過し、加工廃液301中の加工屑を捕捉して、清水302に精製する。第1のフィルタ42及び第2のフィルタ43は、精製した清水302を清水受けパン46上に流出する。清水受けパン46は、フレキシブルホースなどからなる配管47を通して清水302を清水収容ユニット50に送る。
【0036】
清水収容ユニット50は、フィルタユニット40からの清水302を貯留するものである。清水収容ユニット50は、配管47を通してフィルタユニット40から供給された清水302を収容する密閉タンクである清水貯留タンク51を備えている。
【0037】
純水精製ユニット60は、清水302を純水300に精製するものである。純水精製ユニット60は、加圧ポンプ61と、紫外線照射ユニット72と、第1のイオン交換ユニット62と、第2のイオン交換ユニット63と、吸引ポンプ64とを備える。加圧ポンプ61は、清水貯留タンク51内の清水302を配管65を通して、紫外線照射ユニット72に送給する。
【0038】
紫外線照射ユニット72は、加工屑が除去された清水302に紫外線を照射するものである。紫外線照射ユニット72は、清水302が導入されかつ導入された清水302を収容する密閉タンクである清水収容タンク73と、清水収容タンク73内に設置されかつ清水収容タンク73内に導入された清水302に紫外線を照射して有機物を分解し殺菌する図示しない紫外線照射ランプと、を備える。清水収容タンク73は、金属により構成されて、内部に設置された紫外線照射ランプからの紫外線が外部に漏れることを抑制する。
【0039】
紫外線照射ユニット72は、配管74を通して第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63の流入口に接続している。紫外線照射ユニット72と第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63とを接続する配管74には、電磁開閉弁66-1,66-2が設けられている。電磁開閉弁66-1,66-2が開くと、第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63に清水302が導入される。
【0040】
第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63は、紫外線照射ユニット72から送水される清水302をイオン交換して純水300に精製するものである。第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63は、上部に設けられた流入口と下部に設けられた排出口を備え、流入口が配管74に接続し、排出口が配管67を介して精密フィルタ70に接続している。第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63は、図示しない消耗品であるイオン交換樹脂を収容している。
【0041】
イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂のうちの少なくとも一方などが用いられる。なお、実施形態1では、イオン交換樹脂として、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂の両方が所定の割合で各イオン交換ユニット62,63内に充填されている。カチオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂よりも比重が大きい。イオン交換樹脂は、清水302が供給されると、イオン分が吸着して、体積収縮を起こし、イオン交換樹脂間に隙間を生じさせる。
【0042】
具体的には、カチオン交換樹脂は、清水302中の陽イオンを取ってH+を放出し、アニオン交換樹脂は、陰イオンを取ってOH-を放出する。カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂などのイオン交換樹脂中のH+やOH-は、H2Oとくっついて存在しており、交換されるイオンと比較して体積が大きい。このために、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂などのイオン交換樹脂は、イオン交換を実施していくと体積が徐々に減少する。
【0043】
第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63は、流入口から導入された清水302を収容したイオン交換樹脂間に導き、イオン交換樹脂によりイオン交換して純水300に精製し、排出口から配管67に送り出す。
【0044】
また、第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63の排出口と精密フィルタ70とを接続する配管67には、第1のイオン交換ユニット62及び第2のイオン交換ユニット63の排出口からの純水300の圧力を検知する圧力検知手段68、比抵抗計69及び精製された純水300を吸引する吸引ポンプ64が取り付けられている。
【0045】
精密フィルタ70は、純水300中のイオン交換樹脂などの樹脂屑などの微細な物質を捕捉して除去し、微細な物質が捕捉された純水300を配管71を通して温度調整ユニット80に送り出す。温度調整ユニット80は、純水300を所定温度に調整して、供給配管81及び純水供給管7を通して基板処理装置2に送給するものである。なお、供給配管81は、各基板処理装置2の純水供給管7に接続している。
【0046】
前述した構成の流体供給装置3は、圧力検知手段45,68-1の検出結果に基づいて、電磁開閉弁44-1,44-2,66-1,66-2、加圧ポンプ61及び吸引ポンプ64を制御して、加工廃液301を廃液貯留タンク30に収容した後、フィルタユニット40で濾過して清水302に精製し、清水302を清水収容ユニット50に収容した後、純水精製ユニット60で純水300に精製し、精密フィルタ70及び温度調整ユニット80を介して複数台の基板処理装置2に純水300を供給する。このために、ポンプ61,64は、流体供給装置3内で流体を循環させる。
【0047】
また、流体供給装置3は、両端が配管71と配管47とに接続して純水300などの流体を通すことが可能な循環配管82と、循環配管82に設置された開閉弁83と、純水供給管7に設置された流量計84とを有する。
【0048】
循環配管82は、配管71に送り出された純水300を配管47を通して、清水収容ユニット50の清水貯留タンク51に導いて、純水300を清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間で循環させるものである。
【0049】
開閉弁83は、開くことで、純水300の清水収容ユニット50の清水貯留タンク51への供給を許容して、純水300の清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間の循環を許容するものである。開閉弁83は、閉じることで、純水300の清水収容ユニット50の清水貯留タンク51への供給(受け入れ)を停止して、純水300の清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間の循環を停止するものである。
【0050】
流量計84は、流体供給装置3の中の供給配管81に設置されている。即ち、流量計84は、基板処理装置2の複数台に対して一つ設けられている。
【0051】
流量計84は、基板処理装置2に供給される純水300の流量を検出し、検出結果を制御ユニット4に出力する。例えば、実施形態1では、流量計84は、対応した基板処理装置2の開閉弁8が閉じた時に検出する純水300の流量が0(L/min)となり、対応した基板処理装置2の開閉弁8が開いた時に検出する純水300の流量が所定値(L/min)となる。
【0052】
流量計84は、超音波式流量計、電磁式流量計、リオリ式流量計、熱式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、浮き子式流量計、又は差圧式流量計などである。
【0053】
制御ユニット4は、流体供給装置3を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御して、加工廃液301を純水300に精製する精製動作を流体供給装置3に実行させるものである。制御ユニット4は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。
【0054】
制御ユニット4の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、流体供給装置3を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して流体供給装置3の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット4は、各構成要素の動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット、オペレータが動作条件などを登録する際に用いる入力ユニットと接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0055】
前述した構成の流体供給装置3は、加工廃液301を純水300に精製する循環ユニット6を備えて、所謂純水精製装置が一体となっている。また、流体供給装置3は、基板処理装置2から離れた位置に設置されても良い。
【0056】
このように、実施形態1に係る基板処理システム1は、基板処理装置2が制御ユニット27を備え、流体供給装置3が制御ユニット27から独立して動作する制御ユニット4を備えている。実施形態1に係る基板処理システム1は、制御ユニット27と制御ユニット4とが互いに情報の送受信せずに、制御ユニット27と制御ユニット4とにより基板処理装置2と流体供給装置3との動作が互いに独立して制御される。
【0057】
前述した基板処理システム1は、少なくとも1台の基板処理装置2が処理動作を開始する際には、流体供給装置3がまず精製動作を開始する。開閉弁8を閉じたまま、流体供給装置3は、開閉弁83を開いて、ポンプ32,61,64を駆動して、加工廃液301を純水300に精製、精製した純水300を清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間で所定時間循環させて、純水300の温度と品質を基板処理装置2が必要な状態に安定させる。または流体供給装置3は、流体供給源から新たな流体を供給し、清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間で所定時間循環させて、純水300の温度と品質を基板処理装置2が必要な状態に安定させてもよい。
【0058】
基板処理システム1は、流体供給装置3が精製動作を開始してから所定時間経過すると、制御ユニット4が開閉弁83を閉じ、制御ユニット27が開閉弁8を開いて、各基板処理装置2が処理動作を開始する。基板処理システム1は、各基板処理装置2が処理動作を開始すると、各基板処理装置2が流体供給装置3から純水300が供給され、開閉弁8が開いた純水供給管7に設置された流量計84が流体供給装置3から基板処理装置2に供給される純水300の流量を検出する。
【0059】
また、基板処理システム1は、各基板処理装置2が処理動作を開始すると、各基板処理装置2が、加工廃液301を加工廃液供給管5を通して流体供給装置3に供給する。
【0060】
また、基板処理システム1は、各基板処理装置2が処理動作を開始した後に各基板処理装置2が処理動作を終了する際には、制御ユニット27が開閉弁8を閉じる。すると、開閉弁8が閉じた純水供給管7に設置された流量計84が検出する純水300の流量が0(L/min)となる。
【0061】
基板処理システム1は、全ての基板処理装置2の開閉弁8が閉じ、流体供給装置3の流量計84の検出する純水300の流量が0(L/min)になると、流体供給装置3の配管71内の水圧が上がり、一定以上の圧力がかかると開くように設計された開閉弁83が開かれ、純水精製ユニット60が精製した純水300を、循環配管82内を通して清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間で循環させる。なお、開閉弁83は圧力によって自動で開かず、制御ユニット4によって開かれても良い。
【0062】
基板処理システム1は、流体供給装置3の全ての流量計84の検出する純水300の流量が0(L/min)、即ち、全ての基板処理装置2の開閉弁8が閉じてから事前に設定された所定時間(実施形態1では。例えば、3時間)以上経過すると、流体供給装置3の制御ユニット4が、ポンプ32,61,64の動作を停止して、純水300の清水収容ユニット50と純水精製ユニット60との間の循環を停止し、流体供給装置3の運転を停止する。このように、流体供給装置3の制御ユニット4は、流体供給装置3の全ての流量計84の検出する純水300の流量が0(L/min)、即ち、全ての基板処理装置2が処理動作を終了して、全ての開閉弁8が基板処理装置2への純水300の受け入れを停止し、全ての流量計84が事前に設定された所定時間以上、全ての基板処理装置2への純水300の供給を計測(検出)しなかったときは、流体供給装置3の運転を停止する。
【0063】
以上のように、実施形態1に係る基板処理システム1は、流体供給装置3の制御ユニット4が、全ての開閉弁8が基板処理装置2への純水300の受け入れを停止し、全ての流量計84が事前に設定された所定時間以上、全ての基板処理装置2への純水300の供給を計測(検出)しなかったときは、流体供給装置3の運転を停止する。このように、実施形態1に係る基板処理システム1は、流体供給装置3単体で、各基板処理装置2の稼働状況を判断し、流体供給装置3自体の運転を停止する事ができる。
【0064】
その結果、基板処理システム1は、基板処理装置2と流体供給装置3の動作が互いに独立して制御されても、流体供給装置3内の消耗品であるイオン交換樹脂や紫外線照射ランプ等の消耗品、流体供給装置3の運転にかかる電力コストを抑制することができるという効果を奏する。
【0065】
また、実施形態1に係る基板処理システム1は、流体供給装置3が備えている流量計84を利用することで、追加のコストをかけずに、複数台の基板処理装置2と接続されていたとしても、流体供給装置3単体で、各基板処理装置2の稼働状況を判断し、流体供給装置3自体の運転を停止でき、流体供給装置3内の消耗品であるイオン交換樹脂や紫外線照射ランプ等の消耗品、流体供給装置3の運転にかかる電力コストを抑制することができるという効果を奏する。流体供給装置3は基板処理装置2が一台でも稼働している間は運転する必要があるとともに、各基板処理装置2に必要な流量の管理は、各基板処理装置2が有する流体供給許容手段が行うため、個別にどの基板処理装置2が稼働しているかを把握していなくても良い場合が多い。そのため複数台の基板処理装置2に接続されていたとしても、基板処理装置2の数に応じた複数の流量計84を備える必要が無く、流体供給装置3に設置された1つの流量計84で流体供給装置3の運転を制御できるため経済的である。
【0066】
実施形態1に係る基板処理システム1の流体供給装置3は、炭酸ガスや界面活性剤などの薬液を混合させるユニットを更に有しても良い。また、実施形態1に係る基板処理システム1の流体供給装置3は、流体供給源と排出部とに接続され、加工廃液301を循環させる循環ユニット6を有さず、純水300の流量と温度管理のみを行っても良い。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0068】
実施形態1では、基板処理装置2は、基板200を切削する切削装置であるが、本発明では、切削装置に限定されない。本発明では、基板処理装置2は、基板200を研削する研削装置、基板200を研磨する研磨装置、基板をプラスマエッチングするプラズマエッチング装置、基板200を液状樹脂で被覆する被覆装置、基板をレーザー加工するレーザー加工装置でも良い。
【0069】
また、基板処理装置2が、研削装置または研磨装置である場合には、流体供給装置3は、研削砥石または研磨パッドと基板200とが接触する加工点に供給される加工液、スピンドル等の駆動部を冷却する冷却液、加工後の基板200を洗浄する洗浄ユニットで用いられる洗浄液を供給するのが望ましい。
【0070】
また、基板処理装置2が、プラズマエッチング装置である場合には、流体供給装置3は、プラズマ化されて基板200のエッチングされる加工点に供給されるエッチングガスを供給するのが望ましい。
【0071】
また、基板処理装置2が、被覆装置である場合には、流体供給装置3は、基板200に被覆される液状樹脂を供給するのが望ましい。
【0072】
また、基板処理装置2が、レーザー加工装置である場合には、レーザー加工装置が加工屑の基板200への付着を防止するために基板200を液状樹脂で被覆する樹脂被覆ユニットに用いられる液状樹脂、レーザー加工後の基板200を洗浄する洗浄ユニットで用いられる洗浄液を供給するのが望ましい。
【符号の説明】
【0073】
1 基板処理システム
2 基板処理装置
3 流体供給装置
7 純水供給管(流路)
8 開閉弁(流体供給許容手段)
61 加圧ポンプ
64 吸引ポンプ
84 流量計
300 純水(流体)