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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】脈動発生装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/04 20060101AFI20250110BHJP
   F04D 35/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16K3/04 Z
F04D35/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021092794
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022185255
(43)【公開日】2022-12-14
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】信田 昌男
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076649(JP,A)
【文献】特開2019-183963(JP,A)
【文献】実開昭52-057194(JP,U)
【文献】特開2014-020497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0388598(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 35/00
F16K 3/04
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源に接続された軸体と、
前記軸体に設けられた弁体と、
流体の入口ポート及び出口ポートが形成された弁体収容室を有し、前記弁体を前記弁体収容室に非接触状態で収容した弁箱と、を備え、
前記弁体は、前記弁体収容室から所定のクリアランスに保たれて配置され
前記弁体収容室は、
前記入口ポート及び前記出口ポートの一方が形成され、前記軸体の軸方向で前記弁体と軸方向クリアランスをあけて対向する軸方向対向面と、
前記入口ポート及び前記出口ポートの他方が形成され、前記軸体の半径方向で前記弁体と半径方向クリアランスをあけて対向する半径方向対向面と、を有する、ことを特徴とする脈動発生装置。
【請求項2】
前記弁体には、前記軸方向対向面と対向可能な位置に、前記軸方向クリアランスを調整する軸方向クリアランス調整プレートが設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の脈動発生装置。
【請求項3】
前記弁体には、前記半径方向対向面と対向可能な位置に、前記半径方向クリアランスを調整する半径方向クリアランス調整リングが設置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の脈動発生装置。
【請求項4】
前記弁体には、前記入口ポートと対向可能な位置に、ポート開放孔が形成されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【請求項5】
前記ポート開放孔及び前記入口ポートの少なくとも一方に装着された流路形状変更部材を備える、ことを特徴とする請求項4に記載の脈動発生装置。
【請求項6】
前記流路形状変更部材を、前記軸体の軸方向で変位可能に支持する弾性部材を備える、ことを特徴とする請求項5に記載の脈動発生装置。
【請求項7】
前記ポート開放孔は、前記弁体に、前記軸体を中心とした周方向に沿って円弧状に形成されている、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【請求項8】
前記ポート開放孔は、前記弁体に、前記軸体を中心とした周方向に間隔をあけて複数形成されている、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【請求項9】
前記出口ポートは、前記弁体収容室に、前記軸体を中心とした周方向に間隔をあけて複数形成されている、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【請求項10】
前記駆動源は、前記軸体を中心に前記弁体を回転又は揺動させる、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【請求項11】
前記弁体の揺動において、全揺動範囲を決め、当該全揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在の圧力波形を形成する、ことを特徴とする請求項10に記載の脈動発生装置。
【請求項12】
駆動源と、
前記駆動源に接続された軸体と、
前記軸体に設けられた弁体と、
流体の入口ポート及び出口ポートが形成された弁体収容室を有し、前記弁体を前記弁体収容室に非接触状態で収容した弁箱と、を備え、
前記弁体は、前記弁体収容室から所定のクリアランスに保たれて配置され、
前記駆動源は、前記軸体を中心に前記弁体を回転又は揺動させ、
前記弁体の揺動において、全揺動範囲を決め、当該全揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在の圧力波形を形成する、ことを特徴とする脈動発生装置。
【請求項13】
前記駆動源は、サーボアクチュエータを備える、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の脈動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バルブ本体と、該バルブ本体に回転可能に収容されるローターと、該ローター又は前記バルブ本体に設けられた摺動面と摺動し該摺動面に押圧状態となるように構成された弁体とを備え、ローターの回転によりローターの流路と弁体の流路を連通又は閉止することで流体の流路切換を行うロータリーバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6093227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、流体の流れに脈動を発生させる脈動発生装置は公知である。例えば、上記ロータリーバルブにおいて、流路の連通又は閉止を周期的に繰り返すことで、流体の流れに脈動を発生させることができる。しかしながら、流路の連通又は閉止を行う弁体は、バルブ本体の摺動面に対して押圧状態であるため、摺動面から摩耗粉が発生する可能性がある。この摩耗粉は、流体に対するコンタミネーションとなる。また、摩耗により弁体における流路の形状が時間の経過とともに変化するため、脈動圧力の1周期の波形が経時的に変化してしまう。このことは、とりわけ細胞培養や医薬、食品加工機械をはじめとする清潔、清浄性、性状・性能不変性を要求される試験や装置の場合、試験の続行不可、周辺機器の破損のほか、その対応に多くの時間を要し、極めて大きな問題となる。
【0005】
また、ニードルバルブにおいても、流体の入口ポートの開口形状をテーパーに、それに対向する弁体の部分をニードルとして、弁体を軸方向に移動させることで、脈動を発生させることはできる。このタイプの場合、入口ポートと弁体のクリアランスは一定ではなく可変であり、弁体の軸方向の移動に応じて異なる。すなわち、弁体と入口ポートとの間において、流体が通過する流路断積の調整(負荷圧力範囲の調整)は、上述したロータリーバルブのような回転形に比較して困難になる。例えば、テーパー形状やニードル形状の場合、部材の形成時のテーパー角度の設定、製作や両者の同軸度の調整が難しくなる。
【0006】
また、このタイプの場合には、駆動源として、高分解能の軸方向の変位量制御が可能な比例ソレノイドや電動リニアアクチュエータなどを使用する必要がある。比例ソレノイドを使用する場合、入力信号に対する可動部変位量にヒステリシスが存在するので、精緻な開度制御のための制御回路が複雑になる。また、電動リニアアクチュエータの場合、駆動速度が遅いので、高周波数でのバルブ動作には向かない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、弁体等の摩耗による摩耗粉が流体に混入すること、すなわち、流体に対するコンタミネーションの発生を抑制でき、かつ任意の圧力範囲、周波数、圧力波形にて圧力脈動を発生することができる脈動発生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る脈動発生装置は、駆動源と、前記駆動源に接続された軸体と、前記軸体に設けられた弁体と、流体の入口ポート及び出口ポートが形成された弁体収容室を有し、前記弁体を前記弁体収容室に非接触状態で収容した弁箱と、を備え、前記弁体は、前記弁体収容室から所定のクリアランスに保たれて配置される。
【0009】
上記脈動発生装置においては、前記弁体収容室は、前記入口ポート及び前記出口ポートの一方が形成され、前記軸体の軸方向で前記弁体と軸方向クリアランスをあけて対向する軸方向対向面と、前記入口ポート及び前記出口ポートの他方が形成され、前記軸体の半径方向で前記弁体と半径方向クリアランスをあけて対向する半径方向対向面と、を有してもよい。
【0010】
上記脈動発生装置においては、前記弁体には、前記軸方向対向面と対向可能な位置に、前記軸方向クリアランスを調整する軸方向クリアランス調整プレートが設置されていてもよい。
【0011】
上記脈動発生装置においては、前記弁体には、前記半径方向対向面と対向可能な位置に、前記半径方向クリアランスを調整する半径方向クリアランス調整リングが設置されていてもよい。
【0012】
上記脈動発生装置においては、前記弁体には、前記入口ポートと対向可能な位置に、ポート開放孔が形成されていてもよい。
【0013】
上記脈動発生装置においては、前記ポート開放孔及び前記入口ポートの少なくとも一方に装着された流路形状変更部材を備えてもよい。
【0014】
上記脈動発生装置においては、前記流路形状変更部材を、前記軸体の軸方向で変位可能に支持する弾性部材を備えてもよい。
【0015】
上記脈動発生装置においては、前記ポート開放孔は、前記弁体に、前記軸体を中心とした周方向に沿って円弧状に形成されていてもよい。
【0016】
上記脈動発生装置においては、前記ポート開放孔は、前記弁体に、前記軸体を中心とした周方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。
【0017】
上記脈動発生装置においては、前記出口ポートは、前記弁体収容室に、前記軸体を中心とした周方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。
【0018】
上記脈動発生装置においては、前記駆動源は、前記軸体を中心に前記弁体を回転又は揺動させてもよい。
【0019】
上記脈動発生装置においては、前記弁体の揺動において、全揺動範囲を決め、当該全揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在の圧力波形を形成してもよい。
【0020】
上記脈動発生装置においては、前記駆動源は、サーボアクチュエータを備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の一態様によれば、流体に対するコンタミネーションの発生を抑制でき、かつ任意の圧力範囲、周波数、圧力波形にて圧力脈動を発生することができる脈動発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る脈動発生装置の概念図である。
図2】一実施形態に係る脈動発生装置の斜視図である。
図3】一実施形態に係る脈動発生装置の分解斜視図である。
図4】一実施形態に係る弁体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
図5】一実施形態に係る脈動発生装置の具体的構成例を示す断面図である。
図6】一実施形態に係る脈動発生装置の動作を説明する斜視図である。
図7】一実施形態に係る脈動発生装置の具体的動作を説明する平面図である。
図8図7に示すように脈動発生装置が動作したときの出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図9】一実施形態に係る脈動発生装置において、弁体の揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在に圧力波形を形成した場合の出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図10】一実施形態の変形例に係る脈動発生装置の具体的構成例を示す断面図である。
図11】一実施形態に係る弁体に軸方向クリアランス調整プレートを設置した場合の(a)斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
図12】一実施形態の変形例に係る弁箱のポートブロックの斜視図である。
図13】一実施形態の他の変形例に係る弁箱のポートブロックの分解斜視図である。
図14】一実施形態の他の変形例に係る弁箱のポートブロックの分解斜視図である。
図15】一実施形態の変形例に係る流路形状変更部材のバリエーションの一部を示す平面図である。
図16】一実施形態の他の変形例に係る弁箱のポートブロックの分解斜視図である。
図17】一実施形態に係る弁体に流路形状変更部材を装着した場合の(a)分解斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
図18】一実施形態の変形例に係る弁体の(a)平面図、(b)部分断面図である。
図19図18に示す弁体を用いた場合の脈動発生装置の具体的動作を説明する平面図である。
図20図19に示すように脈動発生装置が動作したときの出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図21】一実施形態の他の変形例に係る弁体の(a)平面図、(b)部分断面図である。
図22図21に示す弁体を用いた場合の脈動発生装置の具体的動作を説明する平面図である。
図23図22に示すように脈動発生装置が動作したときの出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図24】一実施形態の他の変形例に係る弁箱のポートブロックの(a)平面図、(b)A-A断面図である。
図25図24のポートブロックの変形例を示す(a)平面図、(b)B-B断面図である。
図26図24又は図25のポートブロックに対応する弁体を示す(a)平面図、(b)部分断面図である。
図27図24又は図25のポートブロックに対応する弁体の変形例を示す(a)平面図、(b)部分断面図である。
図28図25に示す弁体を用いた場合の脈動発生装置の具体的動作を説明する平面図である。
図29図28に示すように脈動発生装置が動作したときの出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図30図24又は図25のポートブロックに対応する弁体の他の変形例を示す平面図である。
図31図30の弁体の2つのポート開放孔と、図24のポートブロックの2つの入口ポートとの対向関係を示す部分断面図である。
図32図30に示す弁体を用いた場合の脈動発生装置の具体的動作を説明する平面図である。
図33図32に示すように脈動発生装置が動作したときの出口ポートにおける流体の圧力変化を示すグラフである。
図34】一実施形態の変形例に係る弁箱のケーシングの斜視図である。
図35】一実施形態に係る脈動発生装置を用いた液圧回路を示す概念図である。
図36】一実施形態に係る脈動発生装置を用いた液圧回路を示す回路図である。
図37図36の液圧回路を用いて、脈動容器内に圧力脈動を発生させたときの測定例を示すグラフである。
図38図36の液圧回路を用いて、脈動容器内に圧力脈動を発生させたときの測定例を示すグラフである。
図39図36の液圧回路を用いて、脈動容器内に圧力脈動を発生させたときの測定例を示すグラフである。
図40図36の液圧回路を用いて、脈動容器内に圧力脈動を発生させたときの測定例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る脈動発生装置1の概念図である。
脈動発生装置1は、例えば、図1に示すように、圧力が一定の流体の流れに対し、脈動を発生させるものである。
【0024】
脈動を発生させる流体としては、水道水などの動粘度が低いもの(水道水は約1.0[mm/s](20℃)、約0.66[mm/s](40℃))が好適である。なお、脈動を発生させる流体としては、一般的な油圧機器に使用される油圧作動油などの動粘度が高いもの(20~50mm/s(40℃))であっても構わない。
【0025】
図2は、一実施形態に係る脈動発生装置1の斜視図である。図3は、一実施形態に係る脈動発生装置1の分解斜視図である。
図2に示すように、脈動発生装置1は、駆動源2と、軸体3と、弁体4と、弁箱5と、を備えている。
【0026】
以下、軸体3の中心軸Oが延びる方向を軸方向という。また、中心軸Oと直交する方向を半径方向という。また、中心軸O周りに周回する方向を周方向という。
駆動源2は、例えば、サーボモータと、ギアボックスと、を有する。駆動源2は、軸体3を中心軸O周りに揺動または回転させる。
【0027】
軸体3は、中心軸Oに沿って軸方向に延びている。軸体3の一端部には、弁体4が設けられている。なお、図2及び図3に示す弁体4は、軸体3と一体成形されていているが、軸体3に取り付けられた別部品であってもよい。弁体4は、弁箱5の内部に収容されている。後述するように、弁体4と弁箱5のクリアランスは、所望のクリアランスで設定され、その位置関係は固定されている。軸体3の他端部は、弁箱5の外部に突出し、駆動源2と接続されている。
【0028】
図4は、一実施形態に係る弁体4の(a)斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
図4に示すように、弁体4は、弁本体41と、ポート開放孔42と、を有する。弁本体41は、中心軸Oと同軸の円板状に形成されている。ポート開放孔42は、弁本体41を軸方向に貫通して形成されている。ポート開放孔42は、弁箱5に形成された入口ポート61と対向可能な半径位置に形成されている。
【0029】
弁本体41の底面(弁箱5のポートブロック5a側を向く面)には、図4(c)に示すように、コーティング層43が形成されている。コーティング層43は、ポートブロック5aとの接触摺動に備え、予め、樹脂、セラミック、ダイアモンドなどの水潤滑下で低摩擦摩耗特性を有する材料によって形成されている。なお、コーティング層43の低摩擦摩耗材料は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断する。
【0030】
図2に示すように、弁箱5は、ポートブロック5aと、ケーシング5bと、カバー5cと、シールハウジング5dと、を有する。ポートブロック5a、ケーシング5b、カバー5c、及びシールハウジング5dで囲まれた空間は、弁体4を収容する弁体収容室60を形成している。
【0031】
ポートブロック5aは、中心軸Oと同軸の円板状に形成されている。ポートブロック5aには、流体の入口ポート61が形成されている。入口ポート61は、弁体収容室60に連通している。
【0032】
ケーシング5bは、中心軸Oと同軸の円筒状に形成されている。ケーシング5bの軸方向の一方の開口端は、ポートブロック5aによって閉止されている。ケーシング5bには、半径方向に貫通する流体の出口ポート62が形成されている。出口ポート62は、弁体収容室60に連通している。
【0033】
カバー5cは、中心軸Oと同軸の円板状に形成されている。カバー5cは、ケーシング5bの軸方向の他方の開口端を閉止している。カバー5cの半径方向の中心位置には、軸体3が貫通する貫通孔が形成されている。
【0034】
シールハウジング5dは、中心軸Oと同軸の円板状に形成されている。シールハウジング5dは、カバー5cに支持されている。カバー5cの半径方向の中心位置には、軸体3が貫通する貫通孔が形成されている。当該貫通孔には、軸体3を軸封する環状のシール7が配置されている。
【0035】
シールハウジング5dには、ベアリング6が支持されている。ベアリング6は、軸体3を中心軸O周りに回転可能に支持している。
上述したポートブロック5a、ケーシング5b、弁体4、軸体3、カバー5c、シールハウジング5d、及びベアリング6は、図2に示すように、軸方向に組み合わせることができるようになっている。
【0036】
図5は、一実施形態に係る脈動発生装置1の具体的構成例を示す断面図である。
図5に示すように、脈動発生装置1は、駆動源2と、駆動源2に接続された軸体3と、軸体3に設けられた弁体4と、流体の入口ポート61及び出口ポート62が形成された弁体収容室60を有し、弁体4を弁体収容室60に非接触状態で収容した弁箱5と、を備えている。
【0037】
弁箱5は、上述したポートブロック5a及びケーシング5bが一体となった有底筒状のケーシングブロック51と、上述したカバー5c及びシールハウジング5dが一体となった円板状のカバーハウジング52と、上述したベアリング6を保持する円板状のベアリングハウジング53と、を備えている。
【0038】
ポートブロック5a及びケーシング5bを一体とすることで、弁箱5の密閉性を高め、流体の外部流出を抑制することができる。また、カバー5c及びシールハウジング5dを一体とすることで、弁箱5の密閉性を高め、流体の外部流出を抑制することができる。
【0039】
ケーシングブロック51には、カバーハウジング52がボルト54を介して軸方向に締結されている。ケーシングブロック51とカバーハウジング52との合わせ面には、環状のシール7が配置されている。カバーハウジング52には、ベアリングハウジング53がボルト55を介して軸方向に締結されている。
【0040】
カバーハウジング52の半径方向の中心位置には、軸体3が貫通する貫通孔52aが形成されている。貫通孔52aの内壁面には、複数の凹部が形成され、軸体3を軸封する環状のシール7が軸方向に間隔をあけて複数配置されている。カバーハウジング52には、上下のシール7の間で、貫通孔52aに連通する連通孔52bが形成されている。
【0041】
連通孔52bは、カバーハウジング52の外周面から、貫通孔52aまで直線状に延びている。この連通孔52bにおける流体の漏れを確認することで、シール7によって軸体3が適切に軸封されているか否かを確認することができる。また、連通孔52bは、流体のドレン孔として利用することができる。
【0042】
なお、連通孔52bは、1つに限るものではなく、複数形成しても構わない。また、軸体3と摺動するシール7の摺動面(リップ面)の断面形状は、矩形凹凸、台形凹凸、円形など各種ある中から適宜選択するとよい。
【0043】
ベアリングハウジング53の半径方向の中心位置には、ベアリング6を収容する座ぐり孔53aが形成されている。ベアリング6は、軸体3の中心軸O周りの揺動又は回転を円滑に行わせる。ベアリング6の内輪は、軸体3に固定され、玉ころを介して、ベアリング6の外輪に支持されている。ベアリング6の外輪は、ベアリングハウジング53に支持されている。
【0044】
ベアリング6の個数は、1個に限るものでなく、複数個を連装する場合もある。ベアリング6は、玉軸受のほか、円錐ころ軸受などのラジアル軸受、ラジアルスラスト軸受など、軸体3に作用する半径方向の荷重、軸方向の荷重に応じて適宜選択するとよい。
【0045】
ベアリングハウジング53には、架台23を介して駆動源2が支持されている。駆動源2としては、電動機、サーボモータをはじめとする、回転型アクチュエータを使用することができる。駆動源2は、回転軸21と、回転軸21と軸体3とを接続する軸カップリング22と、を備えている。
【0046】
なお、駆動源2は、上述した回転型アクチュエータに変速機(ギアボックス)を組み合わせる場合もある。駆動源2としては、入力信号に対する可動部変位量にヒステリシスがなく、駆動速度が速くて、高周波数でのバルブ動作に向いているサーボモータをはじめとする、サーボアクチュエータが好ましい。
【0047】
駆動源2の運転制御には、インバータ、サーボドライバなどの可変制御機器を用いるとよい。駆動源2は、回転軸21の揺動動作と回転動作の両動作を行える構成とすることが好ましい。なお、揺動動作の場合は、揺動範囲と揺動速度、揺動波形、回転動作の場合は回転数を任意に設定可能となるように、駆動源2と可変制御機器を構成するとよい。
【0048】
弁箱5の弁体収容室60には、流体の入口ポート61及び出口ポート62が形成されている。入口ポート61は、曲がり流路(エルボ流路)となっており、弁体4と対向する弁体収容室60の軸方向対向面60Aに形成された第1流路61aと、ケーシングブロック51の外周面から第1流路61aまで半径方向に延びる第2流路61bと、を備えている。
【0049】
出口ポート62は、弁体4と対向する弁体収容室60の半径方向対向面60Bに形成されている。出口ポート62は、流体の流れにおいて、弁体4よりも下流側に位置している。
【0050】
弁体収容室60には、弁体4が非接触状態で収容されている。具体的に、弁体4は、軸方向クリアランスD1をあけて弁体収容室60の軸方向対向面60Aと対向している。また、弁体4は、半径方向クリアランスD2をあけて弁体収容室60の半径方向対向面60Bと対向している。
【0051】
軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2は、圧力脈動負荷対象からの要求要件に応じて設定する。軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2のいずれにおいても、クリアランスの増加に伴い、クリアランス通過流量が増加することは周知である。一方で、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2を確保することは、流体へのコンタミネーションを抑制するためには必要不可欠である。
【0052】
このため、脈動発生装置1においては、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2の少なくとも一方が、0.2mm以下であることが好ましい。さらに、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2の少なくとも一方が、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0053】
但し、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2が小さすぎると、脈動発生装置1の動作中において、弁体4と弁箱5とが摺動する場合もあり得る。このため、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2は、脈動を負荷する流体の性状および脈動発生装置1により圧力脈動を負荷する対象からの所要の要件などに応じて、適宜設定するとよい。
【0054】
軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2の適切なクリアランスの設定方法としては、次のものが挙げられる。例えば、入口ポート61にポート開放孔42が重ならずに弁本体41が重なる状態(閉状態)にしておき、出口ポート62における流量が、入口ポート61の流量の10%未満、好ましくは5%未満、さらに好ましくは3%未満とするように、クリアランスを設定してもよい。
【0055】
また、例えば、所定の流量、圧力を脈動発生装置1に供給した状態で、入口ポート61にポート開放孔42が重なる状態(開状態)と、入口ポート61に弁本体41が重なる状態(閉状態)との圧力差が、目的とする圧力範囲(脈動発生装置1による圧力脈動負荷対象への圧力脈動の範囲)になるようにクリアランスを設定してもよい。
【0056】
続いて、上記構成の脈動発生装置1の動作について説明する。
【0057】
図6は、一実施形態に係る脈動発生装置1の動作を説明する斜視図である。図6においては、弁体4を揺動動作させている。
脈動発生装置1は、弁体4の揺動動作により、図6(a)に示す入口ポート61にポート開放孔42が重なる状態(開状態)と、図6(b)に示す入口ポート61にポート開放孔42が重ならずに弁本体41が重なる状態(閉状態)を切り替えることで、出口ポート62から流出する流体の圧力と流量を変化させる。
【0058】
図7は、一実施形態に係る脈動発生装置1の具体的動作を説明する平面図である。図8は、図7に示すように脈動発生装置1が動作したときの出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。なお、図7に示す(1)~(4)の動作状態は、図8に示す(1)~(4)の圧力に対応している。
【0059】
図7に示す(1)の動作状態のとき、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、入口ポート61から供給される流体の流量のほぼ総量が出口ポート62から流出する。この際の出口ポート62の流体圧力は、入口ポート61の流体圧力から、脈動発生装置1内の固有の圧力損失(流路形状などに基づく内部圧力損失)を除いた圧力となる。また、弁体収容室60内の通過流量のうち、弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)を除く流量が、弁体4のポート開放孔42を通過する流量となる。
【0060】
図7に示す(2)の動作状態のとき、弁体4は、揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(2)の動作状態から反時計回りに揺動動作を開始する。
図7に示す(2)~(3)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図8参照)。
【0061】
図7に示す(3)の動作状態のとき、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)がゼロになる。そのため、脈動発生装置1の流体の通過流量は、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2を通過する流量(漏れ流量)のみになる。また同時に、漏れ流体の流れよるものを除き、ポート開放孔42を通過する流量はほぼゼロになるので、出口ポート62の流体圧力は圧力脈動周期の最低正圧になる(図8参照)。
【0062】
図7に示す(4)の動作状態のとき、弁体4は揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(4)の動作状態から時計回りに揺動動作を開始する。
図7に示す(4)~(1)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が増加する。この重合量の増加過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が増加する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も増加する(図8参照)。
【0063】
このような弁体4の(1)~(4)の揺動動作を連続的に行うことで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)を変化させ、それによって脈動発生装置1の流体の通過流量と圧力を変化させ、結果、流体の流れに脈動を発生させることができる。なお、弁体4の揺動範囲と揺動速度を制御することで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)および重合量の時間当たりの変化量を調整し、脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を変更することができる。
【0064】
なお、入口ポート61とポート開放孔42との重合量がゼロの時でも、入口ポート61とポート開放孔42と距離に依存して流体の通過流量と圧力は変化する。すなわち、圧力脈動負荷対象からの要求要件に応じて、弁体4の揺動範囲と揺動速度を制御することで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)および重合量の時間当たりの変化量を調整し、脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を形成することができる。
【0065】
図9は、一実施形態に係る脈動発生装置1において、弁体4の揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在に圧力波形を形成した場合の出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。
図9に示す例の場合、弁体4の揺動範囲をA(度)からF(度)とし、
1.A(度)~B(度)までをR(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
2.B(度)~C(度)までをS(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
3.C(度)~D(度)までをT(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
4.D(度)~F(度)までをU(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
5.F(度)~E(度)までをV(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
6.E(度)~D(度)までをW(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
7.D(度)~C(度)までをX(度/秒)の周速で弁体4を動作させ、
8.C(度)~A(度)までをY(度/秒)の周速で弁体4を動作させる設定とし、
上記1~8の設定を周期的に弁体4に動作(揺動動作)させることで、図9に示す圧力波形を形成することができる。
【0066】
上述した本実施形態に係る脈動発生装置1は、図5に示すように、駆動源2と、駆動源2に接続された軸体3と、軸体3に設けられた弁体4と、流体の入口ポート61及び出口ポート62が形成された弁体収容室60を有し、弁体4を弁体収容室60に非接触状態で収容した弁箱5と、を備え、弁体4は、弁体収容室60から所定のクリアランスに保たれて配置される。この構成によれば、弁体4を弁体収容室60に非接触状態で収容しているため、弁体4と弁箱5との摺動部がゼロ若しくは殆どなく、摩耗粉の発生を抑え、流体へのコンタミネーションを抑制することができる。また、弁体4の摩耗がなく、弁体4における流路の形状が時間の経過とともに変化しないため、脈動圧力の1周期の波形が経時的に変化することなく、常に定められた波形の生成を繰り返すことができる。
【0067】
なお、脈動発生装置1は、以下のような構成も採用することができる。
【0068】
図10は、一実施形態の変形例に係る脈動発生装置1の具体的構成例を示す断面図である。
図10に示す脈動発生装置1は、軸方向クリアランスD1の大きさを調整するスペーサ56を備えている。スペーサ56は、環状に形成され、ベアリングハウジング53の座ぐり孔53aに収容され、ベアリング6を支持している。
【0069】
上記構成によれば、スペーサ56の高さを変えることで、ベアリング6に支持された軸体3の高さ、すなわち、弁体4の高さを変更できる。このため、弁体4と弁体収容室60の軸方向対向面60Aとの軸方向クリアランスD1を所望の寸法に調整することができる。このように軸方向クリアランスD1が調整されて脈動発生装置1に組み込まれると、もはや軸方向クリアランスD1の寸法を変更することはできず、脈動発生装置1として使用する時には軸方向クリアランスD1は所望の寸法に固定された状態である。
なお、上述した軸方向クリアランスD1の設定は、他に以下の4種の方法を採用してもよい。
【0070】
・予めケーシングブロック51の軸方向の深さ寸法を実測しておき、弁体4の高さを決定して設計及び製作を行う。
・予め弁体4の高さ寸法を実測しておき、ケーシングブロック51の軸方向の深さを決定して設計及び製作を行う。
・製作後の実部品同士の現合合わせにより追加加工調整を行う。
・ケーシングブロック51の軸方向の深さ寸法と、弁体4の高さ寸法を実測しておき、弁体4のケーシングブロック51側の面(底面)に、目的とする軸方向クリアランスD1にするために厚みを調整した軸方向クリアランス調整プレートを設置する。
【0071】
図11は、一実施形態に係る弁体4に軸方向クリアランス調整プレート56Aを設置した場合の(a)斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
この際、軸方向クリアランス調整プレート56Aには、弁体4に形成されたポート開放孔42に相当する位置および口径と同一場所、同一形状にて開口部を設ける。また、軸方向クリアランス調整プレート56Aの設置方法は、接着、ねじ止め、嵌合などその方法は、流体の性状、圧力により選択するとよい。また、軸方向クリアランス調整プレート56Aの材質においても金属、樹脂など、流体の性状、圧力により選択するとよい。
【0072】
また、上述した半径方向クリアランスD2の調整においても、以下の4種の方法を採用してもよい。
【0073】
・予めケーシングブロック51の内径の寸法を実測しておき、弁体4の外径の寸法を決定して設計及び製作を行う。
・予めケーシングブロック51の内径の寸法および弁体4の外径の寸法を実測しておき、弁体4の大径部の外輪(外周面)に対し、半径方向クリアランスD2の調整値(狙い寸法)にする厚みの環状リング(半径方向クリアランス調整リング)を設定する。なお、環状リングの材質(金属や樹脂など)、設置方法(接着、ねじ止め、圧入、嵌合など)は、使用流体の性状、圧力により都度選択する。
・予め弁体4の外径の寸法を実測しておき、ケーシングブロック51の内径を決定して設計及び製作を行う。
・製作後の実部品同士の現合合わせにより追加加工調整を行う。
【0074】
図12は、一実施形態の変形例に係る弁箱5のポートブロック5aの斜視図である。
図12に示すポートブロック5aは、軸方向に貫通する入口ポート61を有している。すなわち、この入口ポート61は、直線流路の第1流路61aのみで形成されている。この構成によれば、入口ポート61の流路に曲がり部がないため、流体通過中の圧力損失を抑制できる。
【0075】
なお、上述した図3に示すポートブロック5aは、入口ポート61が曲がり流路を形成しており、入口ポート61の開口がポートブロック5aの側面に設置され、流体配管が側面接続されるため、ポートブロック5aの床面などへの設置(載置)が容易になる。
図12に示すポートブロック5aの場合は、流体配管が底面接続されることになるため、ポートブロック5aを所定高さに支持する架台などを設置するとよい。
【0076】
図13は、一実施形態の他の変形例に係る弁箱5のポートブロック5aの分解斜視図である。
図13に示すポートブロック5aは、入口ポート61に装着された流路形状変更部材70を備えている。なお、図13に示すポートブロック5aは、入口ポート61が曲がり流路を形成している。
【0077】
図13に示す入口ポート61には、第1流路61aの開口周縁部に溝部61cが形成されており、溝部61cに流路形状変更部材70が装着されるようになっている。流路形状変更部材70は、溝部61cに対し、嵌合、ねじ止めなどにより着脱可能に装着されている。
【0078】
なお、流路形状変更部材70の着脱が不要の場合は、溝部61cに対し、接着、溶接などにより装着されていてもよい。また、流路形状変更部材70の溝部61cに対する装着は、上記方法のみでなく、ポートブロック5aに対して揺るぎや隙間なく、流路形状変更部材70を装着できれば、どの方法を用いてもよい。
【0079】
流路形状変更部材70は、入口ポート61の開口形状と異なる開口部71を備えている。この開口部71の形状を任意に設定(形成)することで、弁体4の動作による流体通過面積(開口面積)の変化量を可変にして、脈動発生装置1への要求試験仕様や試験条件に応じた圧力流量変動(負荷圧力幅、負荷圧力変動波形)を供試体に与えることができる。
【0080】
図14は、一実施形態の他の変形例に係る弁箱5のポートブロック5aの分解斜視図である。
図14に示すポートブロック5aは、入口ポート61が直線流路を形成しているが、この入口ポート61の開口周縁部にも溝部61cを設けることで、図13と同じように流路形状変更部材70を装着することが可能となる。
【0081】
図15は、一実施形態の変形例に係る流路形状変更部材70のバリエーションの一部を示す平面図である。
図15(a)に示す流路形状変更部材70は、平面視円形の開口部71aを備えている。
図15(b)に示す流路形状変更部材70は、平面視楕円形の開口部71bを備えている。
【0082】
図15(c)に示す流路形状変更部材70は、平面視長方形の開口部71cを備えている。
図15(d)に示す流路形状変更部材70は、平面視二等辺三角形の開口部71dを備えている。
【0083】
図15(e)に示す流路形状変更部材70は、平面視平行四辺形の開口部71eを備えている。
図15(f)に示す流路形状変更部材70は、平面視菱形の開口部71fを備えている。
【0084】
図15(g)に示す流路形状変更部材70は、平面視五角形の開口部71gを備えている。
図15(h)に示す流路形状変更部材70は、図15(g)よりも大きな平面視五角形の開口部71hを備えている。
【0085】
図15(i)に示す流路形状変更部材70は、平面視等脚台形の開口部71iを備えている。
図15(j)に示す流路形状変更部材70は、平面視異形(円形と三角形が合体した形)の開口部71jを備えている。
【0086】
なお、図15に示した流路形状変更部材70の形状はあくまでも一例であり、これらに限るものでなく、脈動発生装置1への要求仕様、動作条件に応じて、都度、計画、設計製作し、ポートブロック5aに装着するとよい。装着の際には、流路形状変更部材70の上面が、ポートブロック5aの上面と凹凸なく水平面となるように設置することが好ましい。
【0087】
図16は、一実施形態の他の変形例に係る弁箱5のポートブロック5aの分解斜視図である。
図16に示すポートブロック5aは、流路形状変更部材70を、軸体3の軸方向で変位可能に支持する弾性部材80を備えている。
【0088】
弾性部材80は、例えば、ゴム、弾性樹脂、板バネなどであり、溝部61cに収容され、流路形状変更部材70を支持している。上記構成によれば、流路形状変更部材70の上面が、ポートブロック5aの上面と水平面となるように設置することが困難な場合で、弁体4が流路形状変更部材70に接触摺動する可能性があるときに、弁体4との摺動接触やその直前の流体の圧力の高まりによって流路形状変更部材70を弁体4から離れる方向に変位させることができる。
【0089】
なお、弾性部材80は、流路形状変更部材70が、弁体4に接触摺動した場合にも最小限の接触力を有するものを選択するとよい。これにより、流路形状変更部材70が、弁体4に接触摺動した場合においても、本部位からの摩耗粉の発生を抑制することができる。なお、弾性部材80は、ゴム、弾性樹脂、板バネなどがその例であるが、流路形状変更部材70が弁体4に接触摺動した際の緩衝機能を有するものであれば、上記材質、形状に限るものではない。
【0090】
なお、流路形状変更部材70は、3Dプリンタなどの加工機を使用して、ポートブロック5aの入口ポート61の開口部の形状を直接加工して形成してもよい。
【0091】
また、流路形状変更部材70は、弁体4のポート開放孔42に装着する構成であっても構わない。
図17は、一実施形態に係る弁体4に流路形状変更部材70を装着した場合の(a)分解斜視図、(b)平面図、(c)部分断面図である。
図17に示すように、弁体4におけるポート開放孔42のポートブロックとの対向面に、流路形状変更部材70を装着してもよい。
【0092】
なお、図17に示す弁体4の底面(ポートブロック5a側を向く面)には、図17(c)に示すように、コーティング層43が形成されている。コーティング層43は、ポートブロック5aとの接触摺動に備え、予め、樹脂、セラミック、ダイアモンドなどの水潤滑下で低摩擦摩耗特性を有する材料によって形成されている。また、当該低摩擦摩耗材料は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0093】
図18は、一実施形態の変形例に係る弁体4の(a)平面図、(b)部分断面図である。
図18に示す弁体4は、図18(a)に示すように、中心軸Oを中心とする一対の円弧41aと、一対の円弧41aの両端で結ぶ一対の直線41bと、によって外形が形成された弁本体41を備えている。
【0094】
弁本体41の底面(ポートブロック5a側を向く面)には、図18(b)に示すように、コーティング層43が形成されている。コーティング層43は、ポートブロック5aとの接触摺動に備え、予め、樹脂、セラミック、ダイアモンドなどの水潤滑下で低摩擦摩耗特性を有する材料によって形成されている。なお、当該低摩擦摩耗材料は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0095】
なお、弁本体41自体が、上述した低摩擦摩耗特性を有する材料で形成されていてもよい。また、弁本体41と対向するポートブロック5aの上面が、上述した低摩擦摩耗特性を有する材料で形成されていても構わない。なお、流路形状変更部材70が装着されている場合、この流路形状変更部材70の表面又は材料自体が、上述した低摩擦摩耗特性を有する材料で形成されていても構わない。なお、当該低摩擦摩耗材料は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0096】
図19は、図18に示す弁体4を用いた場合の脈動発生装置1の具体的動作を説明する平面図である。図20は、図19に示すように脈動発生装置1が動作したときの出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。なお、図19に示す(1)~(4)の動作状態は、図20に示す(1)~(4)の圧力に対応している。
【0097】
図19に示す(1)の動作状態のとき、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、入口ポート61から供給される流体の流量のほぼ総量が出口ポート62から流出する。この際の出口ポート62の流体圧力は、入口ポート61の流体圧力から、脈動発生装置1内の固有の圧力損失(流路形状などに基づく内部圧力損失)を除いた圧力となる。また、弁体収容室60内の通過流量のうち、弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)を除く流量が、弁体4のポート開放孔42を通過する流量となる。
【0098】
図19に示す(2)の動作状態のとき、弁体4は、揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(2)の動作状態から反時計回りに揺動動作を開始する。
図19に示す(2)~(3)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図20参照)。
【0099】
図19に示す(3)の動作状態のとき、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)がゼロになる。そのため、脈動発生装置1の流体の通過流量は、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2を通過する流量(漏れ流量)のみになる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も、漏れ流体の流れよるものを除き、ポート開放孔42を通過する流量はほぼゼロになるので、出口ポート62の流体圧力は圧力脈動周期の最低正圧になる(図20参照)。
【0100】
図19に示す(4)の動作状態のとき、弁体4は揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(4)の動作状態から時計回りに揺動動作を開始する。
図19に示す(4)~(1)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が増加する。この重合量の増加過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が増加する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も増加する(図20参照)。
【0101】
このような弁体4の(1)~(4)の揺動動作を連続的に行うことで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)を変化させ、それによって脈動発生装置1の流体の通過流量と圧力を変化させ、結果、流体の流れに脈動を発生させることができる。なお、弁体4の揺動範囲と揺動速度を制御することで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)および重合量の時間当たりの変化量を調整し、脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を変更することができる。
また、このような弁体4の構造においても、上述した実施形態と同様に、弁体4の全揺動範囲を決め、全揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在の圧力波形を形成することができる。
【0102】
図21は、一実施形態の他の変形例に係る弁体4の(a)平面図、(b)部分断面図である。
図21に示す弁体4は、図21(a)に示すように、上述した図18に示す弁本体41よりも幅が狭い弁本体41を備えており、且つ、この弁本体41には、ポート開放孔42が形成されていない。弁本体41の底面(ポートブロック5a側を向く面)には、図21(b)に示すように、コーティング層43が形成されている。なお、コーティング層43は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0103】
図22は、図21に示す弁体4を用いた場合の脈動発生装置1の具体的動作を説明する平面図である。図23は、図22に示すように脈動発生装置1が動作したときの出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。なお、図22に示す(1)~(4)の動作状態は、図23に示す(1)~(4)の圧力に対応している。
【0104】
図22に示す(1)の動作状態のとき、入口ポート61が閉ざされ、軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2を通過する流量(漏れ流量)のみになる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も、漏れ流体の流れよるものを除き、ほぼゼロになる(図23参照)。
【0105】
図22に示す(2)の動作状態のとき、弁体4は揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(2)の動作状態から反時計回りに揺動動作を開始する。
図22に示す(2)~(3)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61と弁箱5の間の開口面積が増加する。この重合量の増加過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が増加する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も増加する(図23参照)。
【0106】
図22に示す(3)の動作状態のとき、入口ポート61と弁箱5の間の開口面積が最大になる。この状態では、入口ポート61から供給される流体の流量のほぼ全量が、出口ポート62から流出する。この際の出口ポート62の流体圧力は、入口ポート61の流体圧力から、脈動発生装置1内の固有の圧力損失(流路形状などに基づく内部圧力損失)を除いた圧力となる。
【0107】
図22に示す(4)の動作状態のとき、弁体4は、揺動動作を開始する状態にある。なお、弁体4は、(3)の動作状態から時計回りに揺動動作を開始する。
図22に示す(4)~(1)の動作状態では、弁体4の揺動動作に応じて、入口ポート61と弁箱5の間の開口面積が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図23参照)。
【0108】
このような弁体4の(1)~(4)の揺動動作を連続的に行うことで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)を変化させ、それによって脈動発生装置1の流体の通過流量と圧力を変化させ、結果、流体の流れに脈動を発生させることができる。なお、弁体4の揺動範囲と揺動速度を制御することで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)および重合量の時間当たりの変化量を調整し、脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を変更することができる。
また、このような弁体4の構造においても、上述した実施形態と同様に、弁体4の全揺動範囲を決め、全揺動範囲内で揺動角度と揺動速度を任意に設定することで、任意かつ自在の圧力波形を形成することができる。
【0109】
図24は、一実施形態の他の変形例に係る弁箱5のポートブロック5aの(a)平面図、(b)A-A断面図である。
図24に示すポートブロック5aは、分岐した2つの第1流路61aを備える入口ポート61を備えている。2つの第1流路61aは、中心軸Oを中心に点対称の位置関係を有している。
【0110】
入口ポート61は、図24(a)に示すように、第2流路61bから直角方向両側に延びる分岐流路61dを備えている。分岐流路61dの両端には、それぞれ第1流路61aが接続されている。第1流路61aは、図24(b)に示すように、それぞれポートブロック5aの上面まで延びている。
【0111】
なお、入口ポート61の各第1流路61aに対して、第2流路61b及び分岐流路61dを介して供給される流体が圧力、流量ともに均一に導入されるように、入口ポート61の流路を形成するとよい。
【0112】
図25は、図24のポートブロック5aの変形例を示す(a)平面図、(b)B-B断面図である。
図25に示すポートブロック5aは、分岐した2つの第1流路61aの開口周縁部に、上述した流路形状変更部材70を装着可能な溝部61cが形成されている。
【0113】
なお、図24又は図25に示す入口ポート61の第1流路61aは2つであるが、第1流路61aはこれに限るものではなく、3つ以上の場合もある。また、入口ポート61の第2流路61bは、ポートブロック5aの側面に形成する以外に、ポートブロック5aの底面に形成する場合もある。
【0114】
図26は、図24又は図25のポートブロック5aに対応する弁体4を示す(a)平面図、(b)部分断面図である。
図26に示す弁体4は、図26(a)に示すように、軸体3を中心とした周方向に沿って円弧状に形成されたポート開放孔42を備えている。弁本体41の底面(ポートブロック5a側を向く面)には、図26(b)に示すように、コーティング層43が形成されている。なお、コーティング層43は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0115】
ポート開放孔42は、図26(a)に示すように、眉型開口部であり、中心軸Oを中心とした180度の範囲に亘って形成されている。ポート開放孔42が形成されていない範囲は、入口ポート61を閉塞可能な閉塞部45となっている。
【0116】
図27は、図24又は図25のポートブロック5aに対応する弁体4の変形例を示す(a)平面図、(b)部分断面図である。
図27に示す弁体4は、図27(a)に示すように、中心軸Oを中心とした270度の範囲に亘って形成されている。ポート開放孔42が形成されていない範囲は、入口ポート61を閉塞可能な閉塞部45となっている。
【0117】
図26又は図27に示す弁体4のポート開放孔42は、ポートブロック5aの2つの第1流路61aに対応する半径位置に形成されている。閉塞部45は、弁体4の回転動作により発生する脈動の圧力、流量の範囲(上限、下限)を調整するものである。
【0118】
図28は、図27に示す弁体4を用いた場合の脈動発生装置1の具体的動作を説明する平面図である。図29は、図28に示すように脈動発生装置1が動作したときの出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。なお、図28に示す(1)~(11)の動作状態は、図29に示す(1)~(11)の圧力に対応している。
【0119】
図28に示す(1)の動作状態のとき、2つ入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、2つの入口ポート61から供給される流体の流量の総量が出口ポート62から流出する。この際の出口ポート62の流体圧力は、2つの入口ポート61の流体圧力から、脈動発生装置1内の固有の圧力損失(流路形状などに基づく内部圧力損失)を除いた圧力となる。また、弁体収容室60内の通過流量のうち、弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)を除く流量が、弁体4のポート開放孔42を通過する流量となる。
【0120】
弁体4は、(1)の動作状態から反時計回りに回転動作を開始する。
図28に示す(2)の動作状態では、弁体4の回転動作に応じて、2つの入口ポート61の一方(紙面左側)とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図29参照)。
【0121】
図28に示す(3)の動作状態のとき、2つの入口ポート61の一方(紙面左側)とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)がゼロになる。そのため、脈動発生装置1を通過する流体は、2つの入口ポート61の他方(紙面右側)を通過する流体と弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)になるため、2つの入口ポート61とポート開放孔42とのトータルの重合量(流路開口面積)が減り、出口ポート62の圧力、流量は最小となる(図29参照)。
【0122】
図28に示す(4)の動作状態のとき、弁体4の回転動作に応じて、2つの入口ポート61の一方(紙面左側)とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が増加する。この重合量の増加過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が増加する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も増加する(図29参照)。
【0123】
図28に示す(5)の動作状態のとき、2つ入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、脈動発生装置1の流体の通過流量が最大になる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も最大になる(図29参照)。
【0124】
図28に示す(6)~(8)の動作状態のときも同様に、2つ入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になるため、脈動発生装置1の流体の通過流量が最大になる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も最大になる(図29参照)。
【0125】
図28に示す(9)の動作状態では、弁体4の回転動作に応じて、2つの入口ポート61の他方(紙面右側)とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図29参照)。
【0126】
図28に示す(10)の動作状態のとき、2つの入口ポート61の他方(紙面右側)とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)がゼロになる。そのため、脈動発生装置1を通過する流体は、2つの入口ポート61の一方(紙面左側)を通過する流体と弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)になるため、2つの入口ポート61とポート開放孔42とのトータルの重合量(流路開口面積)が減り、出口ポート62の圧力、流量は最小となる(図29参照)。
【0127】
このような弁体4の(1)~(11)の回転動作を繰り返し行うことで、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)を変化させ、それによって脈動発生装置1の流体の通過流量と圧力を変化させ、結果、流体の流れに脈動を発生させることができる。なお、弁体4の回転速度および回転角ごとの(周)速度を制御することで、弁体4の一回転当たりの脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を自在に変更、設定することができる。
【0128】
図30は、図24又は図25のポートブロック5aに対応する弁体4の他の変形例を示す平面図である。
図30に示す弁体4は、図27(a)に示すように、中心軸Oを中心とした周方向に間隔をあけて複数のポート開放孔42が形成されている。上記構成によれば、弁体4の回転動作時の1回転当たりの脈動回数(脈動周波数)を増加させることができる。
【0129】
すなわち、ポート開放孔42の数を増やすことで、所望の脈動周波数を満たすための弁体4の回転数を下げることが可能となる。弁体4の回転数を下げることにより、軸体3を軸封するシール7の寿命が長期化することに加え、脈動発生装置1の駆動に要するエネルギーを低減させることが可能となる。
【0130】
図31は、図30の弁体4の2つのポート開放孔42と、図24のポートブロック5aの2つの入口ポート61との対向関係を示す部分断面図である。
図31に示すように、弁体4の2つのポート開放孔42は、互いに独立して、ポートブロック5aの2つの入口ポート61と対向している。なお、図31に示すコーティング層43は、弁体4に形成されていなくても良く、使用流体や使用環境によりその形成の要否を判断するとよい。
【0131】
図32は、図30に示す弁体4を用いた場合の脈動発生装置1の具体的動作を説明する平面図である。図33は、図32に示すように脈動発生装置1が動作したときの出口ポート62における流体の圧力変化を示すグラフである。なお、図32に示す(1)~(6)の動作状態は、図33に示す(1)~(6)の圧力に対応している。
【0132】
図32に示す(1)の動作状態のとき、2つ入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、2つの入口ポート61から供給される流体のほぼ総量が出口ポート62から流出する。この際の出口ポート62の流体圧力は、2つの入口ポート61の流体圧力から、脈動発生装置1内の固有の圧力損失(流路形状などに基づく内部圧力損失)を除いた圧力となる。また、弁体収容室60内の通過流量のうち、弁体収容室60内の漏れ流量(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2による流量損失)を除く流量が、弁体4のポート開放孔42を通過する流量となる。
【0133】
弁体4は、(1)の動作状態から反時計回りに回転動作を開始する。
図32に示す(2)の動作状態のとき、2つ入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)は未だ最大である。この状態では、脈動発生装置1の流体の通過流量が最大になる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も最大になる(図33参照)。
【0134】
図32に示す(3)の動作状態では、弁体4の回転動作に応じて、2つの入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が減少する。この重合量の減少過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が減少する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も減少する(図33参照)。
【0135】
図32に示す(4)の動作状態のとき、2つの入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)がゼロになる。この状態では、脈動発生装置1の流体の通過流量が最小になる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も最小になる(図33参照)。
【0136】
図32に示す(5)の動作状態のとき、弁体4の回転動作に応じて、2つの入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が増加する。この重合量の増加過程で、脈動発生装置1の流体の通過流量が増加する。また同時に、出口ポート62の流体圧力も増加する(図33参照)。
【0137】
図32に示す(6)の動作状態のとき、2つ入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大になる。この状態では、脈動発生装置1の流体の通過流量が最大になる。また同時に、出口ポート62の流体圧力も最大になる(図33参照)。
【0138】
このような弁体4の(1)~(6)の回転動作を繰り返し行うことで、2つの入口ポート61と2つのポート開放孔42との重合量(流路開口面積)を変化させ、それによって脈動発生装置1の流体の通過流量と圧力を変化させ、結果、流体の流れに脈動を発生させることができる。なお、弁体4の回転速度および回転角ごとの(周)速度を制御することで、弁体4の一回転当たりの脈動発生装置1の通過流体の時間(軸)に対する圧力波形を自在に変更、設定することができる。
【0139】
なお、図4図11図17図18図21に示す弁体4および図3図12図13図14図16により構成においても、弁体4を回転動作させることで同様の効果を得られることは言うまでもない。
またこの際は、ポート開放孔42は一つに限られるものではなく、圧力脈動負荷対象の要求要件に応じて、その個数と回転速度を設定するとよい。
【0140】
図34は、一実施形態の変形例に係る弁箱5のケーシング5bの斜視図である。
図34に示すケーシング5bには、2つの出口ポート62が形成されている。このように出口ポート62の数は、1つに限られるものでなく、図34に示すように2つ、または3つ以上であっても構わない。なお、出口ポート62の口径は、脈動発生装置1に供給される流体の圧力と流量および弁体4と弁体収容室60とのクリアランス(軸方向クリアランスD1及び半径方向クリアランスD2)に応じて設定するとよい。
【0141】
出口ポート62の口径の調整、設定により、脈動発生装置1からの脈動の圧力、流量の範囲(上限、下限)を調整することができる。
つまり、出口ポート62の口径を小さくすれば、脈動発生装置1により生成される流体の圧力流量の範囲(上限、下限)は小さくなり、出口ポート62の口径大きくすれば、脈動発生装置1により生成される圧力流量の範囲(上限、下限)は大きくなる。
出口ポート62の口径を小さくすれば、入口ポート61とポート開放孔42との重合量(流路開口面積)が最大のときにおいても、出口ポート62の流路開口面積が制限されるため、脈動発生装置1により生成される圧力脈動(出口ポート62を通過する圧力、流量)の最大値が制限される。
また、出口ポート62の口径を大きくすれば、脈動発生装置1により生成される圧力脈動(出口ポート62を通過する圧力、流量)の最大値は、入口ポート61より流入する流量、圧力とほぼ同一の流量、圧力となる。
【0142】
図35は、一実施形態に係る脈動発生装置1を用いた液圧回路100を示す概念図である。
図35に示す液圧回路100は、脈動発生装置1と、タンク101と、送液ポンプ102と、脈動容器103と、を備えている。タンク101、送液ポンプ102、脈動発生装置1、脈動容器103は、流体の流れに沿ってこの順に配管を介して接続されている。
【0143】
脈動容器103は、流体の流れに脈動を付加することで、その耐久性を評価する対象である。図35に示す液圧回路100では、送液ポンプ102によりタンク101内の流体を脈動発生装置1に供給し、脈動発生装置1の動作により、供給された流体の流れに脈動を発生させ、脈動容器103に作用させる。
【0144】
なお、図35に示す液圧回路100では、一つの脈動発生装置1にて複数の脈動容器103に対して脈動流体を供給する構成としているが、脈動容器103に対して各々個別に異なる脈動流体を供給するために、各脈動容器103に対し脈動発生装置1を個別に設置しても構わない。また、脈動発生装置1は、脈動容器103の上流側に設置しているが、下流側に設置しても同様に脈動容器103内の脈動流体の発生効果が得られる。
【0145】
図36は、一実施形態に係る脈動発生装置1を用いた液圧回路100を示す回路図である。
図36に示す液圧回路100は、タンク101、送液ポンプ102、脈動発生装置1、脈動容器103が配置された往路配管100Aと、脈動容器103からタンク101に戻る復路配管100Bと、を備えている。
【0146】
往路配管100Aには、脈動発生装置1と脈動容器103との間に開閉バルブ104が設けられている。復路配管100Bには、開閉バルブ105、逆流防止バルブ106、フィルタ107が設けられている。このため、脈動発生装置1を通り脈動容器103に供給排出された流体は、復路配管100Bに導入され、フィルタ107を経由してタンク101に戻る。つまり、図36に示す液圧回路100は、流体の閉ループ回路を形成している。
【0147】
脈動容器103には、圧力検出器108が取り付けられている。そして、圧力検出器108の検出信号は、動ひずみ計109に入力され、データレコーダー110に保存されるようになっている。
【0148】
図37図40は、図36の液圧回路100を用いて、脈動容器103内に圧力脈動を発生させたときの測定例を示すグラフである。
図37のグラフは、脈動発生装置1の弁体4を所定の揺動角度で揺動させたときの、脈動容器103内の流体圧力の脈動幅の例を示している。
【0149】
図38のグラフは、脈動発生装置1の弁体4の揺動角度を変更し、脈動容器103内の流体圧力の脈動幅を小さくした例を示している。
図39のグラフは、脈動発生装置1の弁体4の揺動周波数を変更し、脈動容器103内の流体圧力の脈動周波数を高めた例を示している。
図40のグラフは、脈動発生装置1の弁体4が入口ポート61を閉塞している時間を長くし、脈動容器103内の流体圧力の波形を調整した例を示している。
【0150】
以上のように、脈動発生装置1によれば、弁体4の動作を適宜制御することで、脈動容器103内の流体圧力の波形を任意に調整することができる。
【0151】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0152】
例えば、上述した脈動発生装置1においては、入口ポート61を出口ポート62、出口ポート62を入口ポート61にしても所要の機能を実現することができる。また、脈動発生装置1は、図2図5等に示すように、ケーシングブロック51が下、カバーハウジング52が上の状態で設置するのみならず、ケーシングブロック51が上、カバーハウジング52が下の天地逆さまの状態で設置してもよいし、垂直方向に90度向きを変えて設置しても構わない。
【符号の説明】
【0153】
1 脈動発生装置
2 駆動源
3 軸体
4 弁体
5 弁箱
5a ポートブロック
5b ケーシング
5c カバー
5d シールハウジング
6 ベアリング
7 シール
21 回転軸
22 軸カップリング
23 架台
41 弁本体
41a 円弧
41b 直線
42 ポート開放孔
43 コーティング層
45 閉塞部
51 ケーシングブロック
52 カバーハウジング
52a 貫通孔
52b 連通孔
53 ベアリングハウジング
53a 座ぐり孔
54 ボルト
55 ボルト
56 スペーサ
56A 軸方向クリアランス調整プレート
60 弁体収容室
60A 軸方向対向面
60B 半径方向対向面
61 入口ポート
61a 第1流路
61b 第2流路
61c 溝部
61d 分岐流路
62 出口ポート
70 流路形状変更部材
71 開口部
71a 開口部
71b 開口部
71c 開口部
71d 開口部
71e 開口部
71f 開口部
71g 開口部
71h 開口部
71i 開口部
71j 開口部
80 弾性部材
100 液圧回路
100A 往路配管
100B 復路配管
101 タンク
102 送液ポンプ
103 脈動容器
104 開閉バルブ
105 開閉バルブ
106 逆流防止バルブ
107 フィルタ
108 圧力検出器
109 動ひずみ計
110 データレコーダー
D1 軸方向クリアランス
D2 半径方向クリアランス
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40