(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電力ネットワークおよび電力ネットワークの変更方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20250110BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20250110BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H02J1/00 301B
H02J7/34 A
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2021562603
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020043964
(87)【国際公開番号】W WO2021111967
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2019218832
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力宗 真寛
(72)【発明者】
【氏名】可知 純夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健吾
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127726(JP,A)
【文献】特開2014-138452(JP,A)
【文献】特開2015-226365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0088084(US,A1)
【文献】国際公開第2014/185035(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037212(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00-1/16
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートのいずれかから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、
前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、
を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力されるまたは出力する直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定され
、前記複数の電力ルータのそれぞれの前記複数の電力ポートのうちの、前記成行ポートとして設定されている前記少なくとも一つの電力ポート以外の電力ポートは、入力または出力される直流電力の特性が制御される制御ポートとして設定されている
ことを特徴とする電力ネットワーク。
【請求項2】
前記成行ポートの少なくとも一つは、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置に接続されている
請求項1に記載の電力ネットワーク。
【請求項3】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの前記成行ポートが、他の前記電力ルータの少なくとも一つの前記複数の電力ポートのうち、入力または出力される直流電力の電圧が所定の範囲で一定に制御される
電力ポートとして設定された電圧一定制御ポートと接続している
請求項1または2に記載の電力ネットワーク。
【請求項4】
前記成行ポートと接続された前記電圧一定制御ポートを有する前記電力ルータの前記成行ポートの少なくとも一つが、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置に接続されている
請求項3に記載の電力ネットワーク。
【請求項5】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの前記電力ポートが、入力または出力される直流電力の電圧が所定の範囲で一定に制御される
電力ポートとして設定された電
圧一定制御ポートであり、前記電
圧一定制御ポートは、他の前記電力ルータの前記複数の電力ポートのうち、入力または出力される直流電力の電流が所定の範囲で一定に制御される電力ポートとして設定された電流一定制御ポートと接続している
請求項1~4のいずれか一つに記載の電力ネットワーク。
【請求項6】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの動作を制御する制御部を備える
請求項1~5のいずれか一つに記載の電力ネットワーク。
【請求項7】
前記制御部は、前記少なくとも一つの電力ルータの少なくとも一つの電力ポートを、前記成行ポートと、入力または出力される直流電力の特性が制御される
電力ポートとして設定された制御ポートと、に相互に切り換える
請求項6に記載の電力ネットワーク。
【請求項8】
前記少なくとも一つの電力ルータの複数の電力ポートのそれぞれが、直流電力の貯蔵および放出が可能な、複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続されており、
前記制御部は、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれの充電状態に応じて、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続された前記電力ポートを、成行ポートと制御ポートとに相互に切り換える
請求項6または7に記載の電力ネットワーク。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の電力貯蔵装置のうち、充電状態を示す指標が上限値または下限値から近い電力貯蔵装置に接続された前記電力ポートを、成行ポートから制御ポートに切り換える
請求項
8に記載の電力ネットワーク。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の電力ルータのうち少なくとも2つの動作を制御する
請求項6~9のいずれか一つに記載の電力ネットワーク。
【請求項11】
前記制御部は、前記少なくとも2つの電力ルータのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持する
請求項10に記載の電力ネットワーク。
【請求項12】
前記制御部は、前記接続予定の電力ポートが成行ポートである場合に、該成行ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに設定する
請求項11に記載の電力ネットワーク。
【請求項13】
前記制御部は、前記複数の連携線の少なくとも一つの連携線に障害が発生し、かつ障害が発生した前記連携線に接続された電力ポートが成行ポートであると判定した場合は、前記成行ポートを有する電力ルータの他の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに切り換える
請求項10~12のいずれか一つに記載の電力ネットワーク。
【請求項14】
前記制御部は、成行ポートに切り換えた前記電力ポートに接続された連携線に接続された、他の電力ルータの電力ポートが、電圧一定制御ポートでない場合は、該電力ポートを電圧一定制御ポートに切り換える
請求項13に記載の電力ネットワーク。
【請求項15】
電力ネットワークの変更方法であって、
前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定され
、前記複数の電力ルータのそれぞれの前記複数の電力ポートのうちの、前記成行ポートとして設定されている前記少なくとも一つの電力ポート以外の電力ポートは、入力または出力される直流電力の特性が制御される制御ポートとして設定されており、
前記複数の電力ルータのうち少なくとも2つの電力ルータのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持し、
前記接続予定の電力ポートに連携線にて追加の電力ルータを接続する
ことを特徴とする電力ネットワークの変更方法。
【請求項16】
前記接続予定の電力ポートが成行ポートである場合に、該成行ポートに関わる電力ルータの動作を停止するともに前記接続予定以外の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに設定する
請求項15に記載の電力ネットワークの変更方法。
【請求項17】
電力ネットワークの変更方法であって、
前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定され
、前記複数の電力ルータのそれぞれの前記複数の電力ポートのうちの、前記成行ポートとして設定されている前記少なくとも一つの電力ポート以外の電力ポートは、入力または出力される直流電力の特性が制御される制御ポートとして設定されており、
前記複数の連携線の少なくとも一つの連携線に障害が発生し、かつ障害が発生した前記連携線に接続された電力ポートが成行ポートであると判定した場合は、前記成行ポートを有する電力ルータの他の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに切り換える
ことを特徴とする電力ネットワークの変更方法。
【請求項18】
成行ポートに切り換えた前記電力ポートに接続された連携線に接続された、他の電力ルータの電力ポートが、電圧一定制御ポートでない場合は、該電力ポートを電圧一定制御ポートに切り換える
請求項15に記載の電力ネットワークの変更方法。
【請求項19】
電力ネットワークの変更方法であって、
前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定され
、前記複数の電力ルータのそれぞれの前記複数の電力ポートのうちの、前記成行ポートとして設定されている前記少なくとも一つの電力ポート以外の電力ポートは、入力または出力される直流電力の特性が制御される制御ポートとして設定されており、かつ、前記少なくとも一つの電力ルータの複数の電力ポートのそれぞれが、直流電力の貯蔵および放出が可能な、複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続されており、
前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれの充電状態に応じて、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続された前記電力ポートを、成行ポートと制御ポートとに相互に切り換える
電力ネットワークの変更方法。
【請求項20】
前記複数の電力貯蔵装置のうち、充電状態を示す指標が上限値または下限値から近い電力貯蔵装置に接続された前記電力ポートを、成行ポートから制御ポートに切り換える
請求項19に記載の電力ネットワークの変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ネットワークおよび電力ネットワークの変更方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題の対応のため、再生可能エネルギーを利用した電源の導入が加速している。たとえば、国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)では、世界の平均気温の目標が設定され、再生可能エネルギーの導入は世界的な流れとなっている。一方で、周波数安定化制約のため、現状の電力系統のままでは、変動が大きく同期化力(GF(ガバナフリー)、LFC(負荷周波数制御)等)を持たない再生可能エネルギーの導入比率を上げると、大規模停電などの障害を引き起こす懸念がある。
【0003】
そこで近年、再生可能エネルギーの導入に関する技術が提案されている(特許文献1、2、非特許文献1)。たとえば、特許文献1や非特許文献1には、複数の地産地消のマイクログリッドをベースとして、非同期にマイクログリッド同士を接続して、過不足を融通しあうシステムとその機器としての電力ルータ(いわゆるデジタルグリッドルータ)が提案されている。これにより、再生可能エネルギーの大量導入を可能とするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-061970号公報
【文献】国際公開第2014/033892号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Rikiya Abe, et al.,”Digital Grid: Communicative Electrical Grids of the Future”, IEEE Transactions on Smart Grid ( Volume: 2, Issue: 2, June 2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力ネットワークにおいて、再生可能エネルギーを利用した電源を含むマイクログリッド同士は、直流(DC)の電力経路をツリー状接続して構成される場合がある。しかしながら、このようなツリー状接続による構成の場合、マイクログリッド間で柔軟な電力融通を行うことが困難な場合がある。また、電力ネットワークにおいて拡張や断線対応のため等の工事を行う際には、工事エリアを開閉器等で電気的に切り離す場合があるが、この切り離しによって電力ネットワークの運用が中断される場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、柔軟な電力融通に適する電力ネットワーク、および、柔軟な電力融通に適し、また運用の中断を抑制できる電力ネットワークの変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートのいずれかから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力されるまたは出力する直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されている。
【0009】
前記成行ポートの少なくとも一つは、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置に接続されていてもよい。
【0010】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの前記成行ポートが、他の前記電力ルータの少なくとも一つの前記複数の電力ポートのうち、入力または出力される直流電力の電圧が所定の範囲で一定に制御されるポートとして設定された電圧一定制御ポートと接続していてもよい。
【0011】
前記成行ポートと接続された前記電圧一定制御ポートを有する前記電力ルータの前記成行ポートの少なくとも一つが、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置に接続されていてもよい。
【0012】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの前記電力ポートが、入力または出力される直流電力の電圧が所定の範囲で一定に制御されるポートとして設定された電力一定制御ポートであり、前記電力一定制御ポートは、他の前記電力ルータの前記複数の電力ポートのうち、入力または出力される直流電力の電流が所定の範囲で一定に制御される電力ポートとして設定された電流一定制御ポートと接続していてもよい。
【0013】
前記複数の電力ルータの少なくとも一つの動作を制御する制御部を備えてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記少なくとも一つの電力ルータの少なくとも一つの電力ポートを、前記成行ポートと、入力または出力される直流電力の特性が制御されるポートとして設定された制御ポートと、に相互に切り換えてもよい。
【0015】
前記少なくとも一つの電力ルータの複数の電力ポートのそれぞれが、直流電力の貯蔵および放出が可能な、複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続されており、前記制御部は、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれの充電状態に応じて、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続された前記電力ポートを、成行ポートと制御ポートとに相互に切り換えてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記複数の電力貯蔵装置のうち、充電状態を示す指標が上限値または下限値から近い電力貯蔵装置に接続された前記電力ポートを、成行ポートから制御ポートに切り換えてもよい。
【0017】
前記制御部は、前記複数の電力ルータのうち少なくとも2つの動作を制御してもよい。
【0018】
前記制御部は、前記少なくとも2つの電力ルータのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持してもよい。
【0019】
前記制御部は、前記接続予定の電力ポートが成行ポートである場合に、該成行ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに設定してもよい。
【0020】
前記制御部は、前記複数の連携線の少なくとも一つの連携線に障害が発生し、かつ障害が発生した前記連携線に接続された電力ポートが成行ポートであると判定した場合は、前記成行ポートを有する電力ルータの他の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに切り換えてもよい。
【0021】
前記制御部は、成行ポートに切り換えた前記電力ポートに接続された連携線に接続された、他の電力ルータの電力ポートが、電圧一定制御ポートでない場合は、該電力ポートを電圧一定制御ポートに切り換えてもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る電力ネットワークの変更方法は、前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されており、前記複数の電力ルータのうち少なくとも2つの電力ルータのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに前記接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持し、前記接続予定の電力ポートに連携線にて追加の電力ルータを接続する。
【0023】
前記接続予定の電力ポートが成行ポートである場合に、該成行ポートに関わる電力ルータの動作を停止するともに前記接続予定以外の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに設定してもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る電力ネットワークの変更方法は、前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されており、前記複数の連携線の少なくとも一つの連携線に障害が発生し、かつ障害が発生した前記連携線に接続された電力ポートが成行ポートであると判定した場合は、前記成行ポートを有する電力ルータの他の電力ポートの少なくとも一つを成行ポートに切り換える。
【0025】
成行ポートに切り換えた前記電力ポートに接続された連携線に接続された、他の電力ルータの電力ポートが、電圧一定制御ポートでない場合は、該電力ポートを電圧一定制御ポートに切り換えてもよい。
【0026】
本発明の一態様に係る電力ネットワークの変更方法は、前記電力ネットワークは、直流電力の入力および出力が可能な複数の電力ポートを有し、前記複数の電力ポートの少なくとも一つから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する、複数の電力ルータと、前記複数の電力ルータを、前記電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線と、前記複数の電力ルータの少なくとも一つの、前記連携線と接続されていない電力ポートに接続された、電力を消費または供給する電力装置と、を備え、前記複数の電力ルータのそれぞれの、前記複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されており、かつ、前記少なくとも一つの電力ルータの複数の電力ポートのそれぞれが、直流電力の貯蔵および放出が可能な、複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続されており、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれの充電状態に応じて、前記複数の電力貯蔵装置のそれぞれに接続された前記電力ポートを、成行ポートと制御ポートとに相互に切り換える。
【0027】
前記複数の電力貯蔵装置のうち、充電状態を示す指標が上限値または下限値から近い電力貯蔵装置に接続された前記電力ポートを、成行ポートから制御ポートに切り換えてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の電力ルータのそれぞれの、複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力されるまたは出力する直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されている。その結果、電力ルータにおける電力の流入量と流出量の差分を成行ポートで調整することができるので、柔軟な電力融通に適する電力ネットワークを提供することができる。また、本発明によれば、複数の電力ルータのそれぞれの、複数の電力ポートの少なくとも一つが、入力または出力される直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されており、かつ、複数の電力ルータのうち少なくとも2つの電力ルータのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートに関わる電力ルータの動作を停止するとともに接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持し、接続予定の電力ポートに連携線にて追加の電力ルータを接続する。その結果、電力ルータにおける電力の流入量と流出量の差分を成行ポートで調整することができ、かつ、接続予定以外の電力ポートに関する電力ルータの動作を維持できるので、柔軟な電力融通に適し、かつ運用の中断を抑制できる電力ネットワークの変更方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係る電力ネットワークの構成要素を説明する図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係る電力ネットワークの構成要素の別の態様を説明する図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る電力ネットワークの構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る電力ネットワークの構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態3に係る電力ネットワークの構成図である。
【
図5】
図5は、実施形態4に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態5に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態6に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態7に係る電力ネットワークの障害時運用方法の説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態8に係る電力ネットワークの障害時運用方法の説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態9に係る電力ポートの設定の切換方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0031】
<電力ネットワークの構成要素>
はじめに、
図1Aを参照して、実施形態に係る電力ネットワークの構成要素を説明する。電力ネットワークは、たとえば、マイクログリッド10と、電力ルータ21とを含んでいる。マイクログリッドは、電力ルータ11と、ツリー状のDCバス12と、DC/DCコンバータ13a、14a、15a、16aおよび17aと、DC/ACコンバータ18aと、電力装置としての、EDLC(Electric Double-Layer Capacitor)13b、バッテリ14b、15bおよび16b、PV(PhotoVoltaic)装置17bならびに負荷(Load)18bと、エネルギー管理システム(EMS)19とを備えている。
【0032】
<電力ルータの構成>
本実施形態の電力ルータ11は、複数である3つの電力ポート11a1、11a2および11a3と、3つの電力測定部11b1、11b2および11b3と、電力ルータ11の動作を制御する制御部11cとを備えている。
【0033】
電力ポート11a1、11a2および11a3は、それぞれ、直流電力の入力および出力が可能な電力ポートである。電力ルータ11は、電力ポート11a1、11a2および11a3のいずれかから入力された電力を変換して他の少なくとも一つの電力ポートから出力する電力ルータの一例である。電力ルータ11は、たとえば、双方向に電力変換する自励式などの方式の電力変換器を用いて構成することができる。
【0034】
電力測定部11b1、11b2および11b3は、それぞれ、対応する電力ポート11a1、11a2および11a3のそれぞれを流通する電力に関する特性値を測定する測定装置である。電力測定部11b1、11b2および11b3において測定する特性値は、たとえば、電圧、電流、電力潮流、位相などである。
【0035】
制御部11cは、電力変換器を制御し、電力ポート11a1、11a2における電力の流通量を制御することができる。制御部11cは、たとえば、演算部と、記憶部と、通信部とを備えている。
【0036】
演算部は、制御部11cの機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはこれらを適宜組み合わせたもので構成される。
【0037】
記憶部は、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される、たとえばROM(Read Only Memory)を備えている。また、記憶部は、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果などを記憶するなどのために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)を備えている。記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を備えていてもよい。制御部11cの機能の少なくとも一部は、演算部が記憶部から各種プログラムを読み出して実行することで、機能部として実現される。
【0038】
通信部は、電力測定部11b1、11b2および11b3と通信可能に構成されており、電力測定部11b1、11b2および11b3が測定した特性値の情報を受信する。受信した情報は上述した記憶部に記憶される。また、通信部は、EMS19と通信可能に構成されており、EMS19から制御指令を受信し、EMS19に、電力ルータ11の動作状態の情報や、記憶部に記憶された特性値の情報を送信することができる。
【0039】
電力ルータ11において、電力ポート11a1はDCバス12に接続している。電力ポート11a2は、電力経路としての連携線101を介して電力ルータ21の電力ポート21aに接続している。なお、連携線はEdgeと呼ばれる場合がある。電力ルータ21は電力ルータ11と同様の構成、機能を有する。電力ポート11a3は、連携線101を介して不図示の電力ルータの電力ポートに接続している。電力ルータ21は、電力ポート21aの他に電力ポート21bおよび21cを備えている。電力ポート21bおよび21cは、それぞれ、連携線101を介して他の電力ルータの電力ポートに接続している。すなわち、複数の連携線101は、複数の電力ルータ11、21およびその他の電力ルータを、電力ポートを介してグリッド状に接続する。また、電力ポート11a1は連携線と接続されていない電力ポートである。
【0040】
電力ルータ11において、電力ポート11a1は、入力されるまたは出力する直流電力の特性が制御されない成行ポートとして設定されている。電力ポート11a2は、入力または出力される電力の電圧が一定に制御される、電圧一定制御ポートとして設定されている。電力ポート11a3は、入力または出力される電力の電流が一定に制御される、電流一定制御ポートとして設定されている。電圧一定制御ポートおよび電流一定制御ポートは、入力または出力される直流電力の特性が制御される制御ポートの一例である。なお、電圧または電流は、許容範囲内であれば変動してもよい。許容範囲内の変動であれば電圧または電流は一定であると見なすことができる。許容範囲は、たとえば電力ルータなどの、電力ネットワークに含まれる機器の安全性や動作安定性などを考慮して設定される。
【0041】
以下では、成行ポートは、d(dependent)ポートと記載し、電圧一定制御ポートは、CV(Constant Voltage)ポートと記載し、電流一定制御ポートは、CC(Constant Current)ポートと記載する場合がある。図においても、記号「d」、「CV」、「CC」で電力ポートの設定を示す場合がある。
【0042】
一方、電力ルータ21において、電力ポート21aは、CCポートとして設定されている。電力ルータの電力ポートは、dポート、CVポート、CCポートのいずれかに設定されている。
【0043】
電力ルータ11、21は、いずれも3つの電力ポートを有しているが、4以上の電力ポートを備えていてもよい。
【0044】
<DCバス12に接続された要素>
つづいて、DCバス12に接続された要素について説明する。これらの要素は、連携線と接続されていない電力ポート11a1に接続されている。
【0045】
EDLC13bは、電気二重層コンデンサであり、電力を供給する電力装置の一例であり、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置の一例でもある。DC/DCコンバータ13aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート13a1と、EDLC13bと電気的に接続された入出力ポート13a2とを備えている。DC/DCコンバータ13aは、EDLC13bから、その電力貯蔵量(充電量)に応じた成り行きの直流電力が入出力ポート13a2に入力されると、これを所定の範囲で一定の電圧の直流電力に変換して入出力ポート13a1からDCバス12へ出力する。一方、DC/DCコンバータ13aは、DCバス12から所定の範囲で一定の電圧の直流電力が入出力ポート13a1に入力されると、これを成り行きの直流電力に変換して入出力ポート13a2からEDLC13bへ出力する。すなわち、入出力ポート13a1はCVポートとして設定され、入出力ポート13a2はdポートとして設定されている。
【0046】
バッテリ14bは、鉛蓄電池であり、電力を供給する電力装置の一例であり、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置の一例でもある。DC/DCコンバータ14aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート14a1と、バッテリ14bと電気的に接続された入出力ポート14a2とを備えている。DC/DCコンバータ14aは、バッテリ14bから、その電力貯蔵量(充電量)に応じた成り行きの直流電力が入出力ポート14a2に入力されると、これを所定の範囲で一定の電圧の直流電力に変換して入出力ポート14a1からDCバス12へ出力する。一方、DC/DCコンバータ14aは、DCバス12から所定の範囲で一定の電圧の直流電力が入出力ポート14a1に入力されると、これを成り行きの直流電力に変換して入出力ポート14a2からバッテリ14bへ出力する。すなわち、入出力ポート14a1はCVポートとして設定され、入出力ポート14a2はdポートとして設定されている。
【0047】
バッテリ15bは、リチウムイオン電池であり、電力を供給する電力装置の一例であり、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置の一例でもある。DC/DCコンバータ15aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート15a1と、バッテリ15bと電気的に接続された入出力ポート15a2とを備えている。DC/DCコンバータ15aは、入出力ポート15a1がCVポートとして設定され、入出力ポート15a2がdポートとして設定されているDC/DCコンバータである。
【0048】
バッテリ16bは、リチウムイオン電池であり、電力を供給する電力装置の一例であり、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置の一例でもある。DC/DCコンバータ16aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート16a1と、バッテリ16bと電気的に接続された入出力ポート16a2とを備えている。DC/DCコンバータ16aは、入出力ポート16a1がCVポートとして設定され、入出力ポート16a2がdポートとして設定されているDC/DCコンバータである。
【0049】
なお、バッテリ14b、15b、16bは、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されたものでもよい。
【0050】
また、EDLC13b、バッテリ14b、15b、16bは、電圧や温度などの充電状態に関する情報を取得する公知のBMS(Battery Management System)を備えていてもよい。BMSは、たとえばセンサ、マイクロコンピュータ、および入出力インターフェイスを含んで構成されている。BMSは、取得した充電状態に関する情報を、自身が接続されたDC/DCコンバータや後述するEMSに送信する。BMSは、EDLC13b、バッテリ14b、15b、16bの外部に設けられていてもよいし、自身が接続されたDC/DCコンバータが備えていてもよい。
【0051】
PV装置17bは、太陽光発電により電力を供給(発電)する電力装置の一例である。PV装置17bは、気象条件に応じて発電力が変化するので、出力電力が最大となる最適動作点も変化する。DC/DCコンバータ17aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート17a1と、PV装置17bと電気的に接続された入出力ポート17a2とを備えている。DC/DCコンバータ17aは、PV装置17bから、その発電量に応じた成り行きの直流電力が入出力ポート17a2に入力されると、その発電量にて出力電力が最大になるように動作点が追従するMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御が成される。DC/DCコンバータ17aは、最大出力電力に相当する成り行きの直流電力を入出力ポート17a1からDCバス12へ出力する。すなわち、入出力ポート17a1はdポートとして設定されている。
【0052】
負荷18bは、交流電力を消費する電力装置の一例である。DC/ACコンバータ18aは、DCバス12と電気的に接続された入出力ポート18a1と、負荷18bと電気的に接続された入出力ポート18a2とを備えている。DC/ACコンバータ18aは、DCバス12から所定の範囲で一定の電圧の直流電力が入出力ポート18a1に入力されると、これを所定の範囲で一定の電力の交流電力に変換して入出力ポート18a2から負荷18bへ出力する。負荷18bはこの交流電力によって動作する。すなわち、入出力ポート18a2はdポートとして設定され、入出力ポート18a2は電力一定制御ポートとして設定されている。
【0053】
EMS19は、マイクログリッド10の状態を統合的に管理するシステムである。EMS19は、DC/DCコンバータ13a、14a、15a、16aおよび17aと、DC/ACコンバータ18aとを制御して、これらに入出力される電力のうち、電流、電圧または電力が制御対象となっている電力を制御する。なお、電力変換器であるDC/DCコンバータ13a、14a、15a、16a、17a、およびDC/ACコンバータ18aは、制御のために電力に関する特性値を測定する、電力測定部11b1と同様の電力測定部を備えており、かつ特性値の測定結果の情報をEMS19に通信可能に構成されている。EMS19は、受信した測定結果の情報を基に各電力変換器の動作を制御する。また、EMS19は、電力ルータ11の制御部11cから電力ルータ11の動作状態の情報や、記憶部に記憶された特性値の情報を受信し、これらの情報にもとづいて制御部11cに制御指令を送信する。すなわちEMS19は電力ルータ11の動作を制御できる。また、EMS19は、他のマイクログリッドのEMSと通信可能に構成されていてもよい。この場合、EMS19は、電力ルータ11と他のマイクログリッドの電力ルータとの、少なくとも2つの電力ルータの動作を制御することも可能である。
【0054】
EMS19は、たとえば、制御部11cと同様に、演算部と、記憶部と、通信部とを備えている。演算部は、EMS19の機能の実現のための各種演算処理を行うCPU、ASIC、FPGA、DSP、GPU、またはこれらを適宜組み合わせたものなどを備える。記憶部は、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納されるROMや、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果などを記憶するなどのためのRAMなどを備えており、HDDやSSDなどの補助記憶装置を備えていてもよい。制御部の機能の少なくとも一部は、演算部が記憶部から各種プログラムを読み出して実行することで、機能部として実現される。
【0055】
図1Bは、実施形態に係る電力ネットワークの構成要素の別の態様を説明する図である。
図1Bでは、
図1に示すマイクログリッド10がマイクログリッド10Aに置き換えられている。
【0056】
マイクログリッド10Aは、マイクログリッド10の構成において、DCバス12をDCバス12Aに置き換え、DC/DCコンバータ14aをDC/DCコンバータ14Aaに置き換え、DC/ACコンバータ31を追加した構成を有する。
【0057】
DC/ACコンバータ31は、DC側の入出力ポート31aがDCバス12に電気的に接続されており、AC側の入出力ポート31bが電力会社の電力系統32に電気的に接続されている。DC/ACコンバータ31は、電力系統32から、成り行きの交流電力が入出力ポート31bに入力されると、これを所定の範囲で一定の電圧の直流電力に変換して入出力ポート31aからDCバス12Aへ出力する。また、DC/ACコンバータ31は、DCバス12Aから、所定の範囲で一定の電圧の直流電力が入出力ポート31aに入力されると、これを成り行きの交流電力に変換して入出力ポート31bから電力系統32へ出力する。すなわち、入出力ポート31aはCV端子ポートとして設定され、入出力ポート31bはdポートとして設定されている。これにより、マイクログリッド10Aは電力系統32から電力を受電できるとともに、電力系統32に電力を出力(たとえば売電)することができる。
【0058】
また、マイクログリッド10Aにおいて、DC/DCコンバータ14Aaは、DCバス12Aと電気的に接続された入出力ポート14Aa1と、バッテリ14bと電気的に接続された入出力ポート14Aa2とを備えている。DC/DCコンバータ14Aaは、バッテリ14bから、所定の範囲で一定の電流の直流電力が入出力ポート14Aa2に入力されると、これを成り行きの直流電力に変換して入出力ポート14a1からDCバス12Aへ出力する。一方、DC/DCコンバータ14Aaは、DCバス12Aから成り行きの直流電力が入出力ポート14Aa1に入力されると、これを所定の範囲で一定の電流の直流電力に変換して入出力ポート14Aa2からバッテリ14bへ出力する。すなわち、入出力ポート14Aa1はdポートとして設定され、入出力ポート14Aa2はCCポートとして設定されている。
【0059】
以上の構成要素の説明に基づいて、各実施形態を説明する。
【0060】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る電力ネットワークの構成図である。電力ネットワーク100は、複数の電力ポートを有する複数のノードと、これらのノードを、電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線とを備えている。
図2では、複数のノードのうち、ノードN1およびノードN2を示し、複数の連携線のうち、電力経路P1、P2、P3、P4、P5およびP6を示している。
【0061】
ノードN1、N2は、それぞれ、
図1A、1Bに示すマイクログリッド10、10Aのような、電力ルータとDCバスと各種電力装置とを備えるマイクログリッドで構成されている。ただし、電力ネットワーク100の複数のノードの中には、電力ルータのみで構成されるノードが含まれていてもよい。すなわち、各ノードは、電力ルータを備えている。
【0062】
ノードN1の電力ルータが備える電力ポートT11、T12、T13は、それぞれCVポート、dポート、CCポートとして設定されている。ノードN2の電力ルータが備える電力ポートT21、T22、T23、24は、それぞれdポート、CVポート、CCポート、CCポートとして設定されている。なお、ノードの電力ポートのタイプは、電力ルータが備える制御部の制御によって相互に切り換え可能でもよい。
【0063】
電力経路P1は、ノードN1のCVポートである電力ポートT11と、ノードN2の電力ポートT21とを接続している。電力経路P2は、ノードN1の電力ポートT12と、他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P3は、ノードN1の電力ポートT13と、他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P4は、ノードN2の電力ポートT22と、他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P5は、ノードN2の電力ポートT23と他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P6は、ノードN2の電力ポートT24と他のノードの電力ポートとを接続している。
【0064】
各ノードは、複数の電力ポートの少なくとも一つがdポートとして設定されている。また、各連携線の一方の端部はCVポートに接続されている。各連携線の他方の端部はdポートまたはCCポートに接続されている。
【0065】
このように、電力ネットワーク100では、各ノードの複数の電力ポートの少なくとも一つがdポートとして設定されているので、各ノードにおける電力の流入量と流出量の差分をdポートで調整することができる。この場合、dポートはバッファとして機能する。たとえば、ノードN1において、電力ポートT11およびT13から電力が流出する場合、流出量の総和と同じ量の電力がdポートに流入する。また、電力ポートT11から第1量の電力が流出し、電力ポートT13から第1量より多い第2量の電力が流入する場合、第2量と第1量との差の量の電力がdポートから流出する。その結果、電力ネットワーク100は、dポートを利用した柔軟な電力融通に適するネットワーク構成となっている。また、各連携線の一方の端部はCVポートに接続されている。これにより、連携線に入出力する電力の電圧が安定する。また、連携線の他方の端部がCCポートに接続されていれば、その連係線については電圧と同時に潮流も制御されるので、より好適に制御された連携線が実現される。
【0066】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る電力ネットワークの構成図である。電力ネットワーク200は、複数のノードN3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9と、電力経路P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18、P19、P20、P21、P22およびP23と、バッテリB3、B4、B5、B6、B7、B8およびB9と、を備えている。
【0067】
ノードN3は、電力ポートT31、T32、T33およびT34を備え、これらはこの順にdポート、CVポート、CCポート、CCポートに設定されている。ノードN4は、電力ポートT41、T42、T43およびT44を備え、これらはこの順にdポート、CVポート、CVポート、CCポートに設定されている。ノードN5は、電力ポートT51、T52、T53およびT54を備え、これらはこの順にCVポート、CCポート、dポート、CCポートに設定されている。
【0068】
ノードN6は、電力ポートT61、T62、T63、T64およびT65を備え、これらはこの順にCVポート、CVポート、CVポート、CVポート、dポートに設定されている。ノードN7は、電力ポートT71、T72、T73およびT74を備え、これらはこの順にCCポート、CVポート、dポート、CVポートに設定されている。ノードN8は、電力ポートT81、T82およびT83を備え、これらはこの順にCCポート、dポート、CCポートに設定されている。ノードN9は、電力ポートT91、T92およびT93を備え、これらはこの順にCCポート、CCポート、dポートに設定されている。
【0069】
バッテリB3、B4、B5、B6、B7、B8は、直流電力の貯蔵および放出が可能な電力貯蔵装置の一例である。
【0070】
電力経路P7は、ノードN3のCVポートである電力ポートT32とノードN4のCCポートである電力ポートT44とを接続している連携線である。したがって、この電力経路P7は電圧および潮流が制御された連携線である。このような連携線を制御連携線と記載する場合がある。電力経路P8は、バッテリB3とノードN3のdポートである電力ポートT31とを接続している。電力経路P9は、ノードN3のCCポートである電力ポートT33とノードN5のCVポートである電力ポートT51とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。電力経路P10は、ノードN3のCCポートである電力ポートT34とノードN6のCVポートである電力ポートT61とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。
【0071】
電力経路P11は、バッテリB4とノードN4のdポートである電力ポートT41とを接続している。電力経路P12は、ノードN4のCVポートである電力ポートT42とノードN8のCCポートである電力ポートT81とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。電力経路P13は、ノードN4のCVポートである電力ポートT43とノードN5のCCポートである電力ポートT52とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。
【0072】
電力経路P14は、バッテリB5とノードN5のdポートである電力ポートT53とを接続している。電力経路P15は、ノードN5のCCポートである電力ポートT54とノードN6のCVポートである電力ポートT62とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。電力経路P16は、ノードN6のCVポートである電力ポートT63とノードN7のCCポートである電力ポートT71とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。電力経路P17は、ノードN6のCVポートである電力ポートT64とノードN9のCCポートである電力ポートT91とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。
【0073】
電力経路P18は、バッテリB6とノードN6のdポートである電力ポートT65とを接続している。電力経路P19は、ノードN7のCVポートである電力ポートT72とノードN8のCCポートである電力ポートT83とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。
【0074】
電力経路P20は、バッテリB7とノードN7のdポートである電力ポートT73とを接続している。電力経路P21は、ノードN7のCVポートである電力ポートT74とノードN9のCCポートである電力ポートT92とを接続し、電圧および潮流が制御された制御連携線である。電力経路P22は、バッテリB8とノードN8のdポートである電力ポートT82とを接続している。電力経路P23は、バッテリB9とノードN9のdポートである電力ポートT93とを接続している。
【0075】
電力ネットワーク200では、連携線である全ての電力経路P7、P9、P10、P12、P13、P15、P16、P17、P19およびP21が、電圧および潮流が制御されている。また、全てのノードN3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9のそれぞれが、dポートに、バッファとなるバッテリB3、B4、B5、B6、B7、B8およびB9のそれぞれが接続されているので、各ノードにて電力の流入量と流出量の差分を調整することができ、全ての連携線で任意の電力融通を行える柔軟なネットワーク構成が実現されている。
【0076】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係る電力ネットワークの構成図である。電力ネットワーク200Aは、
図3に示す電力ネットワーク200の構成において、バッテリB3、B4、B8、B9を削除し、電力経路P7、P10、P12、P17を、それぞれP7A、P10A、P12A、P17Aに置き換えた構成を有する。また、ノードN3、N4、N8、N9では、一部の電力ポートの接続先が変更されている。
【0077】
具体的には、ノードN3では、dポートに設定された電力ポートT31が電力経路P10Aと接続されている。その結果、電力経路P10Aは、一方の端部がdポートに接続され、他方の端部がノードN6のCVポートである電力ポートT61に接続されるので、電圧と潮流との両方が制御される連携線ではない。このような連携線を非制御連携線と記載する場合がある。なお、図中、非制御連携線を破線で示す。
【0078】
また、ノードN4では、dポートに設定された電力ポートT41が電力経路P7Aと接続されている。その結果、電力経路P7Aは、一方の端部がdポートに接続され、他方の端部がノードN3のCVポートである電力ポートT32に接続された、非制御連携線である。
【0079】
また、ノードN8では、dポートに設定された電力ポートT82が電力経路P12Aと接続されている。その結果、電力経路P12Aは、一方の端部がdポートに接続され、他方の端部がノードN4のCVポートである電力ポートT42に接続された、非制御連携線である。
【0080】
また、ノードN9では、dポートに設定された電力ポートT93が電力経路P17Aと接続されている。その結果、電力経路P17Aは、一方の端部がdポートに接続され、他方の端部がノードN6のCVポートである電力ポートT64に接続された、非制御連携線である。
【0081】
電力ネットワーク200Aでは、dポートと連携線で接続されたCVポートを有するノードN5、N6、N7のdポートが、それぞれバッテリB5、B6、B7に接続されている。電力ネットワーク200Aでは、全ての連携線が制御連携線ではないが、バッテリが削除されたノードのdポート(たとえばノードN9のdポート)と、バッテリが削除されないノードのCVポート(たとえばノードN6のCVポート)とを接続することによって、バッテリの数を削減しながらも柔軟な電力融通を行うことができるネットワーク構成が実現されている。
【0082】
(実施形態4)
つぎに、電力ネットワーク変更方法の一例として、電力ネットワークの拡張方法について説明する。
図5は、実施形態4に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
図5に示す電力ネットワーク300は、
図2に示す電力ネットワーク100の構成において、ノードN2をノードN10に置き換えた構成を有する。ノードN10は、電力ポートT101、T102、T103およびT104を有している。電力ポートT101はCCポートであり、ノードN1のCVポートである電力ポートT11と電力経路P1で接続されている。電力ポートT102はCVポートであり、電力経路P31で他のノードと接続されている。電力ポートT103はCCポートであり、電力経路P32で他のノードと接続されている。電力ポートT104はdポートであり、電力経路P33で他のノードと接続されている。
【0083】
この電力ネットワーク300を拡張する場合は、ノードN1の空きの電力ポートT14に、電力経路P14を介してノードN11の電力ポートT111を接続すればよい。このとき、電力ポートT14と電力ポートT111とで一方をCVポート、他方をCCポートに設定すれば、電力経路P14を制御連携線とすることができる。また、ノードN1の他の電力ポートT11、T12、T13の運用を中断せずに拡張工事を実施できる。
【0084】
(実施形態5)
図6は、実施形態5に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
図6に示す電力ネットワーク300Aは、
図5に示す電力ネットワーク300に、全てのノードの動作を制御可能なEMS310を追加した構成を有する。このようなEMS310はセンターEMSと呼ばれる場合がある。
【0085】
電力ネットワーク300Aにおいて、ノードN1とノードN10との間に新たなノードを追加するとする。この場合、まず、EMS310が、ノードN1とノードN10とのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートである電力ポートT11、T101に関わるノードN1とノードN10との動作を停止させるとともに接続予定以外の電力ポートに関わるノードN1とノードN10と動作を維持する。
【0086】
つづいて、電力経路P1を取り外し、追加のノードN12の電力ポートT121と電力ポートT11とを連携線としての電力経路P41で接続し、電力ポートT122と電力ポートT101とを連携線としての電力経路P42で接続する。ノードN12の他の電力ポートT123は電力経路P43にて他のノードと接続してもよい。なお、電力経路P41、P42、P43に接続される電力ポートについては、一方がCVポート、他方がCCポートまたはdポートとなるように設定する。その後、EMS310は、ノードN1、N10の停止していた動作を再開させ、ノードN12の動作を開始させる。
【0087】
この方法によれば、ノードN1とノードN10とについて、接続予定の電力ポートに関わる動作のみを停止し、その他の電力ポートに関わる動作は維持するので、電力ネットワーク300Aの運用の中断の程度を抑制しながら拡張工事を実施できる。
【0088】
(実施形態6)
図7は、実施形態6に係る電力ネットワークの拡張方法の説明図である。
図7に示す電力ネットワーク100Aは、
図2に示す電力ネットワーク100に、全てのノードの動作を制御可能なEMS110を追加した構成を有する。
【0089】
電力ネットワーク100Aにおいて、ノードN1とノードN2との間に新たなノードを追加するとする。この場合、まず、EMS110が、ノードN1とノードN2とのそれぞれの電力ポートのうち連携線にて接続予定の電力ポートである電力ポートT11、T21に関わるノードN1とノードN2との動作を停止させるとともに接続予定以外の電力ポートに関するノードN1とノードN2と動作を維持する。ただし、電力ポートT21はdポートとして設定されていたため、動作を停止させるとノードN2のdポートが不在になる。そこで、EMS110は、電力ポートT21に関わるノードN2の動作を停止する前に、ノードN2の接続予定以外の電子ポートであり、CCポートとして設定されている電力ポートの存在を確認する。ここでは、電力ポートT23、T24がCCポートであるので、たとえば電力ポートT24をdポートに変更する設定をする。
【0090】
つづいて、電力経路P1を取り外し、追加のノードN13の電力ポートT131と電力ポートT11とを連携線としての電力経路P51で接続し、電力ポートT132と電力ポートT21とを連携線としての電力経路P52で接続する。ノードN13の他の電力ポートT133は電力経路P53にて他のノードと接続してもよい。その後、EMS110は、ノードN1、N2の停止していた動作を再開させ、ノードN13の動作を開始させる。
【0091】
この方法によれば、ノードN1とノードN2とについて、接続予定の電力ポートに関わる動作のみを停止し、その他の電力ポートに関わる動作は維持するので、電力ネットワーク100Aの運用の中断の程度を抑制しながら拡張工事を実施できる。また、ノードN2についてdポートを確保するので、電力ネットワーク100Aの柔軟な電力融通が維持される。
【0092】
なお、この方法ではCCポートとして設定されている電力ポートをdポートに変更している。これに対して、接続予定以外の電子ポートが全てCVポートである場合は、EMSは、いずれかのCVポートを適宜選択し、そのCVポートと連携線で接続されているノードの電力ポートをCVポートに変更してから、選択したCVポートをdポートに変更する。これにより、連携線の一方がCVポートに接続される状態が確保される。
【0093】
(実施形態7)
つぎに、電力ネットワークの変更方法の一例として、電力ネットワークの障害時運用方法について説明する。
図8は、実施形態7に係る電力ネットワークの障害時運用方法の説明図である。
図8に示す電力ネットワーク200Bは、
図4に示す電力ネットワーク200Aに、全てのノードの動作を制御可能なEMS210を追加した構成を有する。
【0094】
図8に示すように、ノードN6のCVポートである電力ポートT64とノードN9のdポートである電力ポートT93とを接続する連携線である電力経路P17Aに断線が発生したとする。断線が発生すると、EMS210は、ノードN6、N9のそれぞれに備えられた電力ルータの制御部から送信されてきた測定結果の情報から、断線の発生を検知する。また、断線が発生すると、ノードN6、N9のそれぞれに備えられた電力ルータの制御部が、EMS210に断線が発生したという情報を送信する構成でもよい。
【0095】
EMS210は、断線の発生を検知すると、電力経路P17Aに接続された電力ポートT64に関わるノードN6の動作、および電力ポートT93に関わるノードN9の動作を停止させる。EMS210は、電力ポートT93に関わるノードN9の動作を停止させる前に、電力ポートT93がdポートであると判定し、ノードN9に制御指令を送信し、CCポートとして設定されている電力ポートT92をdポートに切り換えるポートタイプ切り換えを実行する。これにより、ノードN9にdポートが確保される。なお、電力ポートT92がdポートに切り換えられると、電力ポートT92とノードN7の電力ポートT74とを接続している電力経路P20は、制御連携線から非制御連携線に変わる。
【0096】
この方法によれば、電力ネットワーク200Bの柔軟な電力融通を維持しながら、運用の中断の程度を抑制できる。
【0097】
(実施形態8)
図9は、実施形態8に係る電力ネットワークの障害時運用方法の説明図である。本実施形態も実施形態7と同様に電力ネットワーク200Bを参照して説明する。
【0098】
図9に示すように、ノードN3のCVポートである電力ポートT32とノードN4のdポートである電力ポートT41とを接続する連携線である電力経路P7Aに断線が発生したとする。断線が発生すると、EMS210は、ノードN3、N4のそれぞれに備えられた電力ルータの制御部から送信されてきた測定結果の情報から、断線の発生を検知する。また、断線が発生すると、EMS210は、ノードN3、N4のそれぞれに備えられた電力ルータの制御部が、EMS210に断線が発生したという情報を送信してもよい。
【0099】
EMS210は、断線の発生を検知すると、電力経路P7Aに接続された電力ポートT32に関わるノードN3の動作、および電力ポートT41に関わるノードN4の動作を停止させる。EMS210は、電力ポートT41に関わるノードN4の動作を停止させる前に、電力ポートT41がdポートであると判定する。また、EMS210は、ノードN4には電力ポートT41の他の電力ポートはCVポートであることも確認する。その後、ノードN4に制御指令を送信し、CVポートとして設定されている電力ポートのうち、たとえば電力ポートT43をdポートに切り換えるポートタイプ切り換えを実行するためにノードN4の電力ルータの制御部に制御指令を送信する(ポートタイプ切り換え(1))。これにより、ノードN4にdポートが確保される。ノードN4の電力ルータの制御部は、切り換えを完了させると、EMS210に完了を通知する。
【0100】
一方、EMS210は、電力ポートT43のdポートへの切り換えの前に、電力ポートT43に接続された電力経路P13に接続された他の電力ポートのタイプを確認する。本例では、電力経路P13の接続先の電力ポートはノードN5の電力ポートT52であり、CCポートに設定されている。この場合、EMS210は、電力ポートT52がCVポートではないと判定し、電力ポートT52をCVポートに切り換えるポートタイプ切り換えを実行するためにノードN5の電力ルータの制御部に制御指令を送信する(ポートタイプ切り換え(2))。ノードN5の電力ルータの制御部は、切り換えを完了させると、EMS210に完了を通知する。EMS210は、完了の通知の受信後に電力ポートT43のdポートへの切り換えを実行する。これにより、電力経路P13は非制御連携線に変わるが、一方がCVポートに接続されているため、電圧が一定に制御される。
【0101】
この方法によれば、電力ネットワーク200Bの柔軟な電力融通を維持しながら、運用の中断を抑制できる。また、連携線について、電圧を一定に制御した状態を確保できる。
【0102】
なお、実施形態7、8に係る障害時運用方法は、断線に限らず、短絡や地絡等の各種障害にも適用できる。
【0103】
(実施形態9)
つぎに、電力ネットワーク変更方法の一例として、電力貯蔵装置の充電状態に応じた電力ポートの設定の切換方法について説明する。
図10は、実施形態9に係る電力ポートの設定の切換方法の説明図である。
図10に示す電力ネットワーク400は、実施形態1の電力ネットワークと同様に、複数の電力ポートを有する複数のノードと、これらのノードを、電力ポートを介してグリッド状に接続する複数の連携線とを備えている。
図10では、複数のノードのうち、ノードN21およびノードN22を示し、複数の連携線のうち、電力経路P61、P62、P63、P64、P65およびP66を示している。さらに、電力ネットワーク400は、バッテリB21、B22と、全てのノードの動作を制御可能なEMS410を備えている。バッテリB21、B22は、BMSを備えている。バッテリB21、B22は、複数の電力貯蔵装置の一例である。バッテリB21、B22は電力貯蔵装置の一例であり、たとえばリチウムイオン電池である。
【0104】
電力経路P61は、ノードN21の電力ポートT211と、ノードN22の電力ポートT223とを接続している。電力経路P62は、ノードN21の電力ポートT212とバッテリB21とを接続している。電力経路P63は、ノードN21の電力ポートT213と、他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P64は、ノードN22の電力ポートT221とバッテリB21とを接続している。電力経路P65は、ノードN22の電力ポートT222と、他のノードの電力ポートとを接続している。電力経路P66は、ノードN22の電力ポートT224と、他のノードの電力ポートとを接続している。
【0105】
この電力ネットワーク400では、EMS410が、バッテリB21、B22の充電状態に応じて、バッテリB21、B22のそれぞれに接続された電力ポートT212、221をdポートと制御ポートとに相互に切り換える。
【0106】
たとえば、電力ポートT212は、
図10の上側に示す図のようなCCポートの設定から、下側に示す図のようなdポートの設定に切り換えられる。また電力ポートT212は、dポートの設定からCCポートの設定に切り換えられる。また、電力ポートT221は、
図10の上側に示す図のようなdポートの設定から、下側に示す図のようなCCポートの設定に切り換えられる。また電力ポートT221は、CCポートの設定からdポートの設定に切り換えられる。これらの切換は、EMS410が、BMSが取得したバッテリB21、B22の充電状態に関する情報から、充電状態を取得し、取得した充電状態に応じて実行される。充電状態の取得は、演算部による演算や、記憶部に記憶されたテーブルデータの参照などによって実行される。参照されるテーブルデータには、充電状態に関する情報と充電状態との対応関係が格納されている。
【0107】
以下、具体例によって実施形態9の方法について説明する。
図10の上側に示す図では、バッテリB22がdポートに接続され、バッファとして機能している。またバッテリB22はCCポートに接続されている。この状態において、バッテリB22は調整余力が小さく、バッテリB21は調整余力が大きいとする。
【0108】
ここで、調整余力とは、バッファとしての機能の程度を意味し、調整余力が大きいとはバッファとしての機能が高いことを意味する。たとえば、あるバッテリにおいて、充電状態の指標の一例であるSoC(State Of Charge)が上限値(たとえば100%)に近い値の場合は電力を放電する放電バッファとしての機能は高いので調整余力が大きく、SoCが下限値(たとえば0%)に近い値の場合は電力を充電する充電バッファとしてしての機能は低いので調整余力が小さい。また、SoCが上限値および下限値から離れている(たとえば50%程度)の場合は放電バッファとしても充電バッファとしても機能が高いといえる。本実施形態では、EMS410は、SoCが上限値および下限値から離れている、たとえば50%により近いバッテリの方が、調整余力が大きいと判定することとする。また、EMS410は、SoCが上限値または下限値に近い、たとえば50%からより遠いバッテリの方が、調整余力が小さいと判定することとする。
【0109】
EMS410は、BMSからの情報により取得したSoCから、バッテリB22の調整余力がバッテリB21の調整余力よりも小さい(SoCが上限値または下限値に近い)と判定すると、バッテリB22に接続された電力ポートT221をdポートからCCポートに切り換え、バッテリB21に接続された電力ポートT212をCCポートからdポートに切り換える。なお、バッテリB21およびB22の少なくとも一方のバッファの機能を維持しながら切り換えを実行するため、電力ポートT212をdポートに切り換えた後に電力ポートT221をCCポートに切り換えてもよい。
【0110】
また、
図10の上側の図の場合は、ノードN22において電力ポートT221がdポートのとき、電力ポートT222、T223、T224はそれぞれCVポート、CVポート、CCポートである。この場合、電力ポートT221をCCポートに切り換えるとノードN22のdポートがなくなってしまう。そこで、dポートの存在の維持のため、電力ポートT223をCVポートからdポートに切り換えた後に電力ポートT221をCCポートへ切り換えてもよい。また、
図10の上側の図の場合は、ノードN21において電力ポートT212がCCポートのとき、電力ポートT211、T213はそれぞれdポート、CVポートである。この場合、ノードN22の電力ポートT223をdポートに切り換えると連携線である電力経路P61の電圧の安定性が低下するおそれがある。そこで、電力経路P61の電圧の安定性の確保のため、電力ポートT211をdポートからCVポートに切り換えた後に電力ポートT223をdポートへ切り換えてもよい。
【0111】
したがって、電力ポートの切り換えの順番の一例は、以下の通りである。すなわち、まず電力ポートT212をdポートに切り換える。つづいて、電力ポートT211をCVポートに切り換える。つづいて、電力ポートT223をdポートへ切り換える。つづいて、電力ポートT221をCCポートに切り換える。
【0112】
実施形態9に係る方法によれば、電力ネットワーク400の柔軟な電力融通を維持しながら、電力貯蔵装置であるバッテリのバッファとしての調整余力を、より大きい状態にすることができる。
【0113】
なお、実施形態9に係る方法では、EMS410は、バッテリB21、B22のうち、SoCが上限値および下限値から離れているバッテリを調整余力が大きいと判定し、SoCが上限値または下限値に近いバッテリを調整余力が小さいと判定しているが、調整余力の判定の基準はこれには限られない。たとえば、EMS410は、バッテリB21、B22のうち、取得した残容量が、最大容量および最小容量から離れたバッテリを調整余力が大きいと判定してもよい。この場合、バッテリの残容量が充電状態の指標である。たとえば、バッテリB21、B22が互いに最大容量が異なるバッテリである場合、バッテリの残容量を充電状態の指標とした方がよい場合がある。また、バッテリが複数ある場合は、最も調整余力が小さいバッテリに接続された電力ポートをdポートからCCポートに切り換えてもよいし、充電状態を示す指標に基づいて決定した調整余力が、所定基準よりも小さい2以上のバッテリに接続された電力ポートを、dポートからCCポートに切り換えてもよい。
【0114】
また、バッテリに接続された電力ポートをdポートからCCポートに切り換える判定条件は、上記に限られない。たとえば、EMS410は、dポートである電力ポートに接続されるバッテリはSoCが所定の範囲にあると判定した場合にはdポートの設定を維持し、所定の範囲から外れたと判定した場合にはCCポートに切り換えるという制御を実行してもよい。所定の範囲は、たとえば下限値を20%または30%とし、上限値を70%または80%とする範囲であるが、バッテリによって異なる範囲でもよい。また、SoCに限らず、残容量が所定の範囲にあるか外れているかの判定に応じて切り換える制御を実行してもよい。
【0115】
また、EMS410は、他のEMSや外部サーバから、電力ネットワーク400の発電量・需要予測情報を取得してもよい。発電量・需要予測情報は、電力ネットワーク400における発電量の予測情報や電力の需要予測情報を含む。たとえば、電力ネットワーク400がPV装置を含む場合、PV装置が設置されている地域の季節や現在の天気、今後の天気予報などの情報を含んでもよい。また、たとえば、電力ネットワーク400が、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動自動車に搭載されたバッテリを含む場合、これらの電動自動車による電力の需給の情報を含んでもよい。
【0116】
EMS410は、取得した発電量・需要予測情報に基づき、調整余力の大小の判定の基準を変更してもよい。たとえば、今後発電量が増加すると予測される情報が得られた場合には、バッファには、充電可能な電力量が多いことが望まれるので、SoCが下限値により近いバッテリを、調整余力が高いバッテリであると判定してもよい。またたとえば、今後電力の需要が増加すると予測される情報が得られた場合には、バッファには、放電可能な電力量が多いことが望まれる。そこで、SoCが上限値により近いバッテリを、調整余力が高いバッテリであると判定してもよい。このようなEMS410による判定基準の変更は、たとえば、演算部による演算や、記憶部に記憶されたテーブルデータの参照などによって実行される。
【0117】
また、EMS410は、取得した発電量・需要予測情報に基づき、電力ポートの切換のために設定された、指標(たとえばSoC)に関する所定範囲を変更してもよい。
【0118】
また、実施形態9に係る方法では、バッテリに接続された電力ポートを、dポートとCCポートとに相互に切り換えているが、dポートと、制御ポートであるCVポートとに相互に切り換えてもよい。
【0119】
また、実施形態9に係る方法では、別々のノードの電力ルータに接続されたバッテリB21、B22の充電状態に応じて電力ポートの設定の切換が実行している。しかしながら、別の実施形態に係る方法として、同一のノードの電力ルータの複数の電力ポートのそれぞれに接続された複数のバッテリのそれぞれの充電状態に応じて電力ポートの設定の切換を実行してもよい。
【0120】
また、
図1A、1Bにおいて、CVポートとして設定された入出力ポート(たとえば入出力ポート15a1)は、DCバス12側の電圧と出入力する電力との関係が所定のドループ(垂下)特性を有する参照関数に追随するようにドループ制御されてもよい。ここで、「ドループ特性」とは、垂下特性を意味し、電圧と電力の出入力量との関係が、所定の電圧範囲にわたって電力の出入力量一定である関係または所定の電力の出入力量の範囲にわたって電圧一定である関係以外の関係を備えている特性である。
【0121】
たとえば、
図11は、入出力ポート15a1に関するドループ制御の一例の説明図である。DCバス12側の電圧がV2とV3との間の場合は、マイクログリッド10は電力需給が平均的な平常状態であり、参照関数は、バッテリ15bの充放電が無い状態(P=0)となるように設定されている。
【0122】
また、DCバス12側の電圧がV1とV2との間の場合は、マイクログリッド10は電力需要が平常状態より多く電圧が低下した第1準平常状態であり、参照関数は、比較的大きい垂下係数にてバッテリ15bが放電するドループ制御が実行されるように設定されている。一方、DCバス12側の電圧がV3とV4との間の場合は、マイクログリッド10は電力需要が平常状態より少なく電圧が上昇した第2準平常状態であり、参照関数は、比較的大きい垂下係数にてバッテリ15bが充電するドループ制御が実行されるように設定されている。
【0123】
また、DCバス12側の電圧がV1未満の場合は、マイクログリッド10は電力需要が第1準平常状態よりもさらに多い過渡状態であり、参照関数は、規定の最大電力P1にてバッテリ15bが放電するように設定されている。一方、DCバス12側の電圧がV4を超える場合は、マイクログリッド10は電力需要が第2準平常状態よりもさらに少ない過渡状態であり、参照関数は、規定の最大電力|P2|にてバッテリ15bが充電するように設定されている。
【0124】
また、上記実施形態の電力ネットワークにおいて、いずれかのノードがマイクログリッド10または10Aの構成を備えていれば、マイクログリッド10はdポートにEDLC13b、バッテリ14b、15bおよび16bが接続されているので、マイクログリッド10が全体として電力貯蔵装置として機能する。また、マイクログリッド10Aと同様に、いずれかのノードのdポートが電力会社の電力系統に接続され、電力の流入量と流出量の差分を受電や売電にて調整してもよい。
【0125】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
10、10A マイクログリッド
11、21 電力ルータ
11a1、11a2、11a3、21a、21b 電力ポート
11b1、11b2、11b3 電力測定部
11c 制御部
12 DCバス
13a、14a、14Aa、15a、16a、17a DC/DCコンバータ
13a1、13a2、14a1、14Aa1、14a2、14Aa2、15a1、15a2、16a1、16a2、17a1、17a2、18a1、18a2 入出力ポート
13b EDLC
14b、15b、16b、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B21、B22 バッテリ
17b PV装置
18a、31 DC/ACコンバータ
18b 負荷
19 、110、210、310、410 EMS
32 電力系統
100、100A、200、200A、200B、300、300A、400 電力ネットワーク
101 連携線
N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、N9、N10、N11、N12、N13、N21、N22 ノード
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P7A、P8、P9、P10、P10A、P11、P12、P12A、P13、P14、P15、P16、P17、P17A、P18、P19、P20、P21、P22、P23、P31、P32、P33、P41、P42、P43、P51、P52、P53、P61、P62、P63、P64、P65、P66 電力経路
T11、T12、T13、T14、T21、T22、T23、T24、T31、T32、T33、T34、T41、T42、T43、T44、T51、T52、T53、T54、T61、T62、T63、T64、T65、T71、T72、T73、T74、T81、T82、T83、T91、T92、T93、T101、T102、T103、T104、T111、T121、T122、T123、T131、T132、T133、T211、T212、T213、T221、T222、T223、T224 電力ポート