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特許7617870基板処理装置、電極、半導体装置の製造方法およびプログラム
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  • 特許-基板処理装置、電極、半導体装置の製造方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】基板処理装置、電極、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20250110BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20250110BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20250110BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20250110BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20250110BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/31 C
H01L21/318 B
C23C16/507
H01L21/316 X
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022046320
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140468
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-03-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】原 大介
(72)【発明者】
【氏名】中條 博史
(72)【発明者】
【氏名】土倉 伊一郎
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044504(WO,A1)
【文献】特開2020-043221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/32
H05H 1/46
H01L 21/31
C23C 16/507
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外部に設けられ、前記処理室内にプラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加され、第1の長さを有する少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加され、前記第1の長さより長さが短い第2の長さを有する少なくとも1つの第2電極と、基準電位が与えられ、前記第1の長さと同じ長さの第3の長さを有する少なくとも1つの第3電極とで構成され、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の順で配置される第1電極群と、任意の電位が印加され、第4の長さを有する少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加され、前記第4の長と長さが短い第5の長さを有する少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられ、第6の長さを有する少なくとも1つの第6電極とで構成され、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極の順で配置される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記第5電極は、前記第2電極より短い長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2電極は、前記第3電極より短い長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第5電極は、前記第6電極より短い長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1電極と前記第4電極とは、同じ長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第3電極と前記第6電極とは、同じ長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第4電極と前記第6電極とは、同じ長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第3電極に隣り合うように配置される前記第2電極と前記第4電極の長さが異なる長さである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極は、等間隔で配置され、前記第4電極と前記第5電極と前記第6電極は、等間隔で配置される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極の中心間距離、前記第2電極と前記第3電極の中心距離、前記第4電極と前記第5電極の中心間距離、前記第5電極と前記第6電極の中心間距離は、13.0mm以上53.5mm以下とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極は、複数の前記基板が積載されて保持される方向に配置される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第2電極の先端と前記第5電極の先端が、前記積載されて保持されている前記複数の基板のうち最上段で保持されている基板位置から、印加される高周波電源の出力波長に対して0.5%以上6%以下の低い位置に配置される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板を加熱する加熱部を備え、
前記第1電極群と前記第2電極群とは、前記処理室と前記加熱部との間に設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
処理室の外部に設けられ、プラズマを発生させるための電極であって、
任意の電位が印加され、第1の長さを有する少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加され、前記第1の長さより長さが短い第2の長さを有する少なくとも1つの第2電極と、基準電位が与えられ、前記第1の長さと同じ長さの第3の長さを有する少なくとも1つの第3電極とで構成され、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の順で配置される第1電極群と、
任意の電位が印加され、第4の長さを有する少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加され、前記第4の長さより長さが短い第5の長さを有する少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられ、第6の長さを有する少なくとも1つの第6電極とで構成され、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極の順で配置される第2電極群と、
を有する電極。
【請求項15】
基板を処理する処理室と、前記処理室の外部に設けられ、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加され、第1の長さを有する少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加され、前記第1の長さより長さが短い第2の長さを有する少なくとも1つの第2電極と、基準電位が与えられ、前記第1の長さと同じ長さの第3の長さを有する少なくとも1つの第3電極とで構成され、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の順で配置される第1電極群と、任意の電位が印加され、第4の長さを有する少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加され、前記第4の長さより長さが短い第5の長さを有する少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられ、第6の長さを有する少なくとも1つの第6電極とで構成され、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極の順で配置される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に、前記プラズマ発生部によりプラズマを発生する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項16】
基板を処理する処理室と、前記処理室の外部に設けられ、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加され、第1の長さを有する少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加され、前記第1の長さより長さが短い第2の長さを有する少なくとも1つの第2電極と、基準電位が与えられ、前記第1の長さと同じ長さの第3の長さを有する少なくとも1つの第3電極とで構成され、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の順で配置される第1電極群と、任意の電位が印加され、第4の長さを有する少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加され、前記第4の長さより長さが短い第5の長さを有する少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられ、第6の長さを有する少なくとも1つの第6電極とで構成され、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極の順で配置される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記処理室内に、前記プラズマ発生部によりプラズマを発生する手順と、
を前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、電極、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板処理装置の処理室内に基板を搬入し、処理室内に原料ガスと反応ガスとを供給して基板上に絶縁膜や半導体膜、導体膜等の各種膜を形成したり、各種膜を除去したりする基板処理が行われることがある。
【0003】
微細パターンが形成される量産デバイスにおいては、不純物の拡散を抑制したり、有機材料など耐熱性の低い材料を使用できるようにしたりするために低温化が求められることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-324477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を解決するため、プラズマを用いて基板処理を行うことが一般的に行われているが、膜を均一処理することが困難となってしまう場合がある。
【0006】
本開示の目的は、より均一な基板処理を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる少なくとも1つの第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電極が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有する電極の技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より均一な基板処理を可能とする技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
図2図1に示す基板処理装置におけるA-A断面図である。
図3】本開示の実施形態の電極であり、(a)は本開示の実施形態の電極を電極固定具に設置した際の斜視図であり、(b)は本開示の実施形態のヒータ、電極固定具、電極、電極を固定する突起部、反応管の位置関係を示すための図である。
図4】本開示の実施形態における第1の変形例の電極であり、(a)は本開示の実施形態における第1の変形例の電極を電極固定具に設置した際の斜視図であり、(b)は本開示の実施形態における第1の変形例のヒータ、電極固定具、電極、電極を固定する突起部、反応管の位置関係を示すための図である。
図5】本開示の実施形態の電極であり、(a)は本開示の実施形態の電極の正面図であり、(b)は電極を電極固定具に固定する点を説明する図である。
図6図1に示す基板処理装置におけるコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系の一例を示すブロック図である。
図7図1に示す基板処理装置を用いた基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図1から図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
(加熱装置)
図1に示すように、縦型基板処理装置の処理炉202は加熱装置(加熱機構、加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0012】
(処理室)
ヒータ207の内側には、後述する電極固定具301が配設され、更に電極固定具301の内側には、後述するプラズマ生成部の電極300が配設されている。更に、電極300の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0013】
(ガス供給部)
処理室201内には、第1、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a、249bを、それぞれ第1、第2ノズルとも称する。ノズル249a、249bは、例えば石英またはSic等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、処理容器には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a,249bは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。
【0014】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0015】
図1図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれ、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0016】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部(周縁部)と、で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249bを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250bから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0017】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232bからは、反応体(反応ガス)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1のガス供給系としての原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2のガス供給系としての反応体供給系(反応ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、反応体供給系および不活性ガス供給系を単にガス供給系(ガス供給部)とも称する。
【0021】
(基板支持具)
図1に示すように基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。
但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0022】
(プラズマ生成部)
次にプラズマ生成部について、図1から図5を用いて説明する。
【0023】
反応管203の外部、すなわち、処理容器(処理室201)の外部には、プラズマ生成用の電極300が設けられている。電極300に電力を印加することにより、反応管203の内部、すなわち、処理容器(処理室201)の内部でガスをプラズマ化させて励起させること、すなわち、ガスをプラズマ状態に励起させることが可能となっている。以下、ガスをプラズマ状態に励起させることを、単に印加されることで、反応管203内、すなわち、処理容器(処理室201)内に、プラズマは容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、略称:CCP)を生成させるように構成されている。
【0024】
具体的には、図2に示すように、ヒータ207と反応管203との間に、電極300と、電極300を固定する電極固定具301と、が配設されている。ヒータ207の内側に、電極固定具301が配設され、電極固定具301の内側に、電極300が配設され、電極300の内側に、反応管203が配設されている。
【0025】
また、図1図2に示すように、電極300および電極固定具301は、ヒータ207の内壁と、反応管203の外壁との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の外壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向に延びるようにそれぞれ設けられている。電極300は、ノズル249a、249bと平行に設けられている。電極300および電極固定具301は、平面視において、反応管203およびヒータ207と同心円状に、また、ヒータ207とは非接触となるように、配列、配置されている。電極固定具301は、絶縁性物質(絶縁体)で構成され、電極300および反応管203の少なくとも一部をカバーするように設けられていることから、電極固定具301をカバー(石英カバー、絶縁壁、絶縁板)、または、断面円弧カバー(断面円弧体、断面円弧壁)と称することもできる。
【0026】
図2に示すように、電極300は複数設けられ、これら複数の電極300が、電極固定具301の内壁に、固定されて設置されている。より具体的には、図5に示すように、電極固定具301の内壁面には、電極300を引っ掛けることが可能な突起部(フック部)310が設けられており、電極300には、突起部310を挿通可能な貫通孔である開口部305が設けられている。電極固定具301の内壁面に設けられた突起部310に、開口部305を介して電極300を引っ掛けることで、電極300を電極固定具301に固定することが可能となっている。なお、図3図4では、1つの電極300につき、2つの開口部305が設けられ、1つの電極300につき、2つの突起部310を引っ掛けることで固定する例、すなわち、1つの電極を2箇所で固定する例を示している。なお、図2では、9つの電極300を、1つの電極固定具301に固定し、その構成(ユニット)が2組から成り、3つの電極300-1、3つの電極300-2、3つの電極300-0を、1つの電極固定具301に固定する構成(ユニット)の例を示している。
【0027】
電極300(第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3、第0種の電極300-0)は、ニッケル(Ni)などの耐酸化材料で構成されている。電極300を、SUS、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の金属材料で構成することもできるが、Niなどの耐酸化材料で構成することにより、電気伝導率の劣化を抑制することができ、プラズマ生成効率の低下を抑制することができる。さらに、電極300を、Alが添加されたNi合金材料で構成することもでき、この場合、耐熱性および耐腐食性の高い酸化被膜であるアルミニウム酸化膜(AlO膜)を、電極300の最表面に形成するようにすることもできる。電極300の最表面に形成されたAlO膜は、保護膜(ブロック膜、バリア膜)として作用し、電極300の内部の劣化の進行を抑制することができる。これにより、電極300の電気伝導率の低下によるプラズマ生成効率の低下を、より抑制することが可能となる。電極固定具301は、絶縁性物質(絶縁体)、例えば、石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。電極固定具301の材質は、反応管203の材質と、同様とすることが好ましい。
【0028】
図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)に示すように、電極300は、第1種の電極300-1と第2種の電極300-2と第3種の電極300-3と第0種の電極300-0を含んでいる。第1種の電極300-1と第2種の電極300-2と第3種の電極300-3は、整合器325を介して、高周波電源(RF電源)320に接続されており、任意の電位が印加されている。第0種の電極300-0は、アースに接地されており、基準電位(0V)となる。第1種の電極300-1と第2種の電極300-2と第3種の電極300-3をHot電極またはHOT電極とも称し、第0種の電極300-0をGround電極またはGND電極とも称する。第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3および第0種の電極300-0は、それぞれ、正面視が板状の部材として構成されている。図2図3では、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0がそれぞれ複数設けられ、4つの第1種の電極300-1と4つの第2種の電極300-2と4つの第0種の電極300-0が設けられている例を図3(a)、図3(b)に示している。図4(a)、図4(b)では、さらに第3種の電極300-3が複数設けられ、4つの第1種の電極300-1と2つの第2種の電極300-2と2つの第3種の電極300-3と4つの第0種の電極300-0が設けられる例を示している。整合器325を介してRF電源320から、第1種の電極300-1と第0種の電極300-0の間にRF電力を印加することで、第1種の電極300-1と第0種の電極300-0の間の領域にプラズマが生成され、同様にして、第2種の電極300-2と第0種の電極300-0の間にRF電力を印加することで、第2種の電極300-2と第0種の電極300-0の間の領域にプラズマが生成され、第3種の電極300-3と第0種の電極300-0の間にRF電力を印加することで、第3種の電極300-3と第0種の電極300-0の間の領域にプラズマが生成される。これらの領域をプラズマ生成領域とも称する。なお、電極300は、図1に示すように、処理容器に対して垂直方向(鉛直方向、基板が積載される方向)に配置され、また、図2から図4に示すように、平面視において円弧状に、また、等間隔に、すなわち、隣接する電極300(第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3、第0種の電極300-0)間の距離(間隙)が等しくなるように配置されている。また、電極300は反応管203とヒータ207との間に、反応管203の外壁に沿うように平面視において略円弧状に配置され、例えば、中心角が30度以上240度以下となる円弧状に形成された電極固定具301の内壁面に固定されて配置される。また、上述のように、電極300は、ノズル249a、249bと平行に設けられている。
【0029】
ここで、電極固定具301と電極300(第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3、第0種の電極300-0)とを、電極ユニットと称することもできる。電極ユニットは、図2に示すように、ノズル249a、249bおよび排気管231を避けた位置に配置されるようにすることが好ましい。図2では、2つの電極ユニットが、ノズル249a、249bおよび排気管231を避けて、ウエハ200(反応管203)の中心を挟んで対抗(対面)するように配置される例を示している。なお、図2では、2つの電極ユニットが、平面視において、直線Lを対称軸として線対称に、すなわちシンメトリに配置される例を示している。電極ユニットをこのように配置することで、ノズル249a、249b、温度センサ263および排気管231を、処理室201内におけるプラズマ生成領域外に配置することが可能となり、これらの部材へのプラズマダメージ、これらの部材の消耗、破損、これらの部材からのパーティクルの発生を抑制することが可能となる。本開示では特に区別して説明する必要のない場合には、電極300として記載して説明する。
【0030】
電極300には、高周波電源320から整合器325を介し、例えば25MHz以上35MHz以下、より具的には、周波数27.12MHzの高周波が入力されることによって反応管203内にプラズマ(活性種)302が生成される。このように生成されたプラズマによって、ウエハ200の周囲から基板処理のためのプラズマ302をウエハ200の表面に供給することが可能となる。電極300の下側(下端)から給電されるように構成されている。
【0031】
主に、電極300、すなわち、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3および第0種の電極300-0により、ガスをプラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ生成部(プラズマ励起部、プラズマ活性化機構)が構成され、電極固定具301、整合器325、RF電源320をプラズマ生成部に含めて考えてもよい。
【0032】
また、電極300には、図5(a)に示すように、後述する突起頭部311を通す円形切欠き部303と、突起軸部312をスライドさせるスライド切欠き部304からなる開口部305が形成されている。
【0033】
電極300は、十分な強度を持ち、かつ、熱源によるウエハ加熱の効率を著しく下げないように、厚さは0.1mm以上、1mm以下、幅は5mm以上、30mm以下となる範囲で構成されることが好ましい。また、ヒータ207の加熱による変形防止のための変形抑制部としての曲げ構造を有することが好ましい。この場合の電極300は、石英反応管203とヒータ207の間に配置されるため、そのスペースの制約上、曲げ角は90°~175°が適切である。電極表面は熱酸化による被膜が形成されており、熱応力によりそれが剥れてパーティクルが発生することがあるので、曲げ過ぎに注意する必要がある。
【0034】
縦型基板処理装置において、高周波電源320の周波数を27.12MHzにて実施し、長さが1m、厚さが1mmからなる電極300を採用して、CCPモードのプラズマを生成する。
【0035】
ウエハ200のボート217への装填範囲を、高周波電源320の出力波長に対して8%以上で構成すると、電極300の縦方向において、進行波と反射波の重ね合わせから成る定在波(cosineカーブ)が有する偏った電圧分布が影響して、プラズマ302の密度分布にも偏りが表れる。そのため、プラズマ302の密度分布と相関性を有する膜厚や膜質において、ウエハ200間で不均一性が表れる。
【0036】
このような問題解決のアプローチとして、電極300の先端部の長さ調整で反射係数が変化することから、進行波と反射波の位相差を変化させてウエハ領域における定在波の電圧分布を下方向へシフトさせる方法がある。この方法を用いることで、電圧分布の偏りを改善させて、良好な均一性を有するプラズマ302の密度分布を確保し、ウエハ200間の膜厚や膜質の均一性を改善させることが可能となる。
【0037】
例えば、図3(a)、図3(b)に示すように、チューブ形状の反応管203の外壁に、4本の幅12.5mmかつ高さ1650mmの第1種の電極300-1と、4本の幅12.5mmかつ高さ1200mmの第2種の電極300-2と、4本の幅12.5mmかつ高さ1650mmの第0種の電極300-0とを、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第0種の電極300-0、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第0種の電極300-0、・・・の順に交互に配置している。さらに、第1種の電極300-1と第2種の電極300-2の隙間、第2種の電極300-2と第0種の電極300-0の隙間、第0種の電極300-0と第1種の電極300-1の隙間は、全て7.5mmとしている。
【0038】
図4(a)、図4(b)に示すように、チューブ形状の反応管203の外壁に、4本の幅12.5mmかつ高さ1650mmの第1種の電極300-1と、2本の幅12.5mmかつ高さ1350mmの第2種の電極300-2と、2本の幅12.5mmかつ高さ1050mmの第3種の電極300-3と、4本の幅12.5mmかつ高さ1650mmの第0種の電極300-0とを、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第0種の電極300-0、第1種の電極300-1、第3種の電極300-3、第0種の電極300-0、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第0種の電極300-0、・・・の順に交互に配置している。さらに、第1種の電極300-1と第2種の電極300-2の隙間、第2種の電極300-2と第0種の電極300-0の隙間、第0種の電極300-0と第1種の電極300-1の隙間、第1種の電極300-1と第3種の電極300-3の隙間、第3種の電極300-3と第0種の電極300-0の隙間は、全て7.5mmとしている。
【0039】
図3(a)、図3(b)と図4(a)、図4(b)の何れにおいても、電極300上部の先端位置については、第1種の電極300-1が第0種の電極300-0と同じかそれよりも低く、第2種の電極300-2と第3種の電極300-3が第1種の電極300-1と第0種の電極300-0の両者よりも低くなっている。さらに好ましくは、ウエハ200のボート217への装填範囲を、高周波電源320の出力波長に対して12%で構成している場合、第2種の電極300-2と第3種の電極300-3の先端を、最上段のウエハ位置から、高周波電源320の出力波長に対して0.5から6%(0.5%以上6%以下)の低い位置で構成し、第0種の電極300-0の先端を、最上段のウエハ位置と同じかそれよりも高い位置で構成するのが適切である。なお、第2種の電極300-2と第3種の電極300-3の両方の先端を、最上段のウエハ位置で構成している場合は、または、第2種の電極300-2あるいは第3種の電極300-3を、最上段のウエハ位置から、高周波電源320の出力波長に対して6%よりも低い位置で構成している場合は、電極300の電圧分布の偏りが顕著となるため、プラズマ302の密度分布の均一性を確保することが困難となる。
【0040】
ここで、図3(a)に示す第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0と、図4(a)に示す第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3、および、第0種の電極300-0とを例として纏めると、以下と言うことができる。なお、各電極については、以下のように構成されているものとする。
【0041】
図3(a)において、右側から配置される3本の電極(第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0)が第1電極群とされる。第1電極群は繰り返して配置される。第1電極群において、第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0が、第1電極、第2電極および第3電極とされる。
【0042】
図4(a)において、右側から配置される3本の電極(第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0)が第1電極群とされ、第1電極群の左側にさらに配置される3本の電極(第1種の電極300-1と、第3種の電極300-3および第0種の電極300-0)が第2電極群とされる。第1電極群と第2電極群は交互に繰り返して配置される。第1電極群において、第1種の電極300-1と、第2種の電極300-2および第0種の電極300-0が、第1電極、第2電極および第3電極とされる。また、第2電極群において、第1種の電極300-1と、第3種の電極300-3および第0種の電極300-0が、第4電極、第5電極および第6電極とされる。
【0043】
以上の第1電極~第6電極の構成において、好ましくは、以下の構成とされている。
【0044】
1)第2電極は、第1電極より短い長さである。
2)第5電極は、第4電極より短い長さである。
3)第5電極は、第2電極より短い長さである。
4)第2電極は、第3電極より短い長さである。
5)第5電極は、第6電極より短い長さである。
【0045】
6)第1電極と第4電極とは同じ長さである。
7)第3電極と第6電極とは同じ長さである。
8)第1電極と第3電極とは同じ長さである。
9)第4電極と第6電極とは同じ長さである。
10)第3電極に隣り合うように配置される第2電極と第4電極の長さが異なる長さである。
【0046】
11)第1電極と第2電極と第3電極は、第1電極、第2電極、第3電極の順で配置される。また、第4電極と第5電極と第6電極は、第4電極、第5電極、第6電極の順で配置される。
12)第1電極と第2電極と第3電極は、等間隔で配置される。また、第4電極と第5電極と第6電極は、等間隔で配置される。
13)第1電極と第2電極の中心間距離、第2電極と第3電極の中心距離、第4電極と第5電極の中心間距離、第5電極と第6電極のそれぞれの中心間距離は、13.0mm以上53.5mm以下とされる。
14)第1電極、第2電極、第3電極、第4電極、第5電極、第6電極は、複数の基板200が積載されて保持される方向(処理室201に対して垂直方向)に配置される。
15)第2電極の先端は、第1電極の先端より低い位置に配置される。
【0047】
16)第5電極の先端は、第4電極の先端より低い位置に配置される。
17)第5電極の先端は、第2電極の先端より低い位置に配置される。
18)第2電極の先端は、第3電極の先端より低い位置に配置される。
19)第5電極の先端は、第6電極の先端より低い位置に配置される。
20)第1電極の先端と第4電極の先端は、同じ高さの位置に配置される。
【0048】
21)第3電極の先端と第6電極の先端は、同じ高さの位置に配置される。
22)第2の電極の先端と第5電極の先端が、積載されて保持されている複数の基板200のうち最上段で保持されている基板位置から、印加される高周波電源の出力波長に対して0.5%以上6%以下の低い位置に配置される。
23)第1電極と第2電極と第4電極及び第5電極に印加される高周波電源の周波数は、25MHz以上35MHz以下とする。
24)第1電極群と第2電極群とは、基板200を処理する処理室201の外部に設けられ、処理室201内にプラズマを発生させるように構成される。
25)基板200を加熱する加熱部207を備え、第1電極群と第2電極群とは、処理室201と加熱部207との間に設けられる。
【0049】
上記で記述したように電極300の構成が適切な場合は、電極300近傍の反応管203内壁とウエハ200の間で生じる電界は一様に強く分布するために、プラズマ302の密度が高くかつ一様に分布し、基板処理の効率と質と一様性を同時に高めることができる。また、第2種の電極300-2と第3種の電極300-3の先端を、最上段のウエハ位置から、高周波電源320の出力波長に対して1.5から4.5%の低い位置で構成している場合は、さらに高い効率と質と一様性を同時に実現することが可能になる。
【0050】
ここで、基板処理時の炉内圧力は、10Pa以上、300Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が10Paより低い場合、プラズマのデバイ長よりもガス分子の平均自由工程が長くなってしまい、炉壁を直接叩くプラズマが顕著化するため、パーティクルの発生を抑制することが困難となってしまうためである。また、炉内の圧力が300Paより高い場合、プラズマの生成効率が飽和してしまうため、反応ガスを供給してもプラズマの生成量は変化することがなく、反応ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでのプラズマ活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0051】
(電極固定治具)
次に電極300を固定する電極固定治具としての電極固定具301について、図3および図5を用いて説明する。図3(a),(b)、図5(a),(b)で示すように、複数本設けられた電極300は、その開口部305を湾曲形状の電極固定治具である電極固定具301の内壁面に設けられた突起部310に引掛け、スライドさせて固定し、この電極固定具301と一体となるようユニット化(フック式電極ユニット)して反応管203の外周に設置されている。なお、電極固定具301と電極300の材料として、それぞれ、石英とニッケル合金を採用している。
【0052】
電極固定具301は、十分な強度を持ち、かつ、ヒータ207によるウエハ加熱の効率を著しく下げないよう、厚さは1mm以上、5mm以下の範囲となるように構成されることが好ましい。電極固定具301の厚みが1mm未満となってしまうと、電極固定具301の自重や温度変化などに対する所定の強度を得ることができなくなってしまい、5mmよりも大きく構成するとヒータ207から放射される熱エネルギーを吸収してしまうため、ウエハ200への熱処理を適切に行うことができなくなってしまう。
【0053】
また、電極固定具301は反応管側である内壁面に、電極300を固定するための鋲形状の固定部としての突起部310を複数有している。この突起部310は、突起頭部311と突起軸部312から構成されている。突起頭部311の最大幅は、電極300の開口部305の円形切欠き部303の径より小さく、突起軸部312の最大幅は、スライド切欠き部304の幅よりも小さくなっている。電極300の開口部305は鍵穴のような形状をし、このスライド切欠き部304は上記の突起軸部312をスライド時に誘導でき、かつ、この突起頭部311はこのスライド切欠き部304で抜けない構造となっている。つまり、電極固定治具は、電極300が係止される柱状部である突起軸部312から抜けてしまうことを抑制する先端部である突起頭部311を備えた固定部を有しているといえる。なお、前述した開口部305と突起頭部311の形状は、電極300が電極固定具301に係止できれば、図3および図5に示した形状に限定されないことは明らかである。例えば、突起頭部311は、ハンマーやトゲのような凸形状を有してもよい。
【0054】
電極固定具301もしくは反応管203と電極300の距離を一定に離すために、両者の間にスペーサやバネ等の弾性体を電極固定具301または電極300に有してもよく、また、これらは電極固定具301または電極300と一体となった構造を有してもよい。本実施例においては、図5(b)で示すようなスペーサ330が電極固定具301と一体となった構造を有している。このスペーサ330は、一本の電極に対して複数個を有した方が、両者間の距離を一定にして固定する上では効果的である。
【0055】
基板温度500℃以下で高い基板処理能力を得るためには、電極固定具301の占有率を中心角30°以上240°以下の略円弧形状とし、また、パーティクルの発生を避けるために排気口である排気管231やノズル249a、249bなどを避けた配置が望ましい。つまり、電極固定具301は、反応管203内に設けられたガス供給部であるノズル249a、249bとガス排気部である排気管231が設置された位置以外の反応管203の外周に配置される。本実施形態においては中心角110°の電極固定具301を2台で左右対称に設置している。
【0056】
(スペーサ)
次に電極固定治具である電極固定具301や反応管203の外壁に対して、電極300を一定の距離で固定するためのスペーサ330を図5(a)、(b)示す。例えば、スペーサ330は、円柱形状の石英材料で電極固定具301と一体化され、電極300と当接することで、電極300は電極固定具301に固定されている。電極固定具301や反応管203に対して、電極300を一定の距離で固定できるであれば、スペーサ330はどのような形態であっても、電極300と電極固定具301のどちらかと一体化されてもよい。例えば、スペーサ330は半円柱形状の石英材料で電極固定具301と一体化して、電極300を固定してもよいし、また、スペーサ330はSUSなどの金属製板材として電極と一体化して、電極300を固定してもよい。いずれにしろ、突起部310とスペーサが設けられるため、電極300の位置決めが容易となり、また、電極300が劣化した場合に電極300のみを交換することができるため、コスト低減となる。ここで、スペーサ330は上述した電極ユニットに含めてもよい。
【0057】
(排気部)
反応管203には、図1に示すように処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0058】
(周辺装置)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0059】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。
【0060】
ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0061】
反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様に、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0062】
(制御装置)
次に制御装置について図6を用いて説明する。図6に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0063】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0064】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241d、バルブ243a~243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、高周波電源320等に接続されている。
【0065】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC241a~241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、高周波電源320の電力供給等を制御するようことが可能なように構成されている。
【0066】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0067】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するプロセス例について、図7を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0068】
本明細書では、図7に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0069】
(原料ガス→反応ガス)×n
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0070】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0071】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0072】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。但し、成膜ステップを室温以下の温度条件下で行う場合は、ヒータ207による処理室201内の加熱は行わなくてもよい。なお、このような温度下での処理だけを行う場合には、ヒータ207は不要となり、ヒータ207を基板処理装置に設置しなくてもよい。この場合、基板処理装置の構成を簡素化することができる。
【0073】
続いて、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0074】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6)
その後、ステップS3,S4,S5,S6を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0075】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0076】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介してガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流すようにしてもよい。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0077】
また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流すようにしてもよい。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0078】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは100~1000Pa
原料ガス供給流量:0.1~3slm
原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0079】
なお、本明細書における「25~550℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25~550℃」とは「25℃以上550℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0080】
上述の条件下でウエハ200に対して原料ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1層が形成される。例えば、原料ガスとして、後述するシリコン(Si)含有ガスを用いる場合、第1層としてSi含有層が形成される。
【0081】
害1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層の形成に寄与した後の原料ガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243c,243dを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0082】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:BDMAS)ガス、ビスジ(エチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチル)アミノシラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH[N(C]、略称:DIPAS)ガス、等のアミノシラン系ガスを用いることができる、原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0083】
また、原料がとしては、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスや、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。すなわち、原料ガスとしては、ハロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0084】
また、原料ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス、ジシラン(Si、略称:DS)ガス、トリシラン(Si、略称:TS)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0085】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0086】
(反応ガス供給ステップ:S5,S6)
成膜処理が終了した後、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させた反応ガスを供給する(S5)。
【0087】
このステップでは、バルブ243b~243dの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行う。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介してガス供給孔250bから処理室201内へ供給される。このとき、高周波電源320から電極300へ高周波電力(RF電力、本実施の形態では周波数27.12MHz)を供給(印加)する。処理室201内へ供給された反応ガスは処理室201の内部でプラズマ状態に励起され、活性種としてウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。
【0088】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25°)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~300Pa、好ましくは10~100Pa
反応ガス供給流量:0.1~10slm
反応ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
RF電力:50~1000W
RF周波数:27.12MHz
が例示される。
【0089】
上述の条件下でウエハ200に対して反応ガスをプラズマ状態に励起させて供給することにより、プラズマ中で生成されたイオンと電気的に中性な活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1有層に対して改質処理が行われ、第1層は第2層へ改質される。
【0090】
反応ガスとして、例えば、酸素(O)含有ガス等の酸化ガス(酸化剤)を用いる場合、O含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、O含有活性種が発生し、このO含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、O含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として酸化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン酸化層(SiO層)へと改質される。
【0091】
また、反応ガスとして、例えば、窒素(N)及び水素(H)含有ガス等の窒化ガス(窒化剤)を用いる場合、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、N及びH含有活性種が発生し、このN及びH含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、N及びH含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として窒化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0092】
第1層を第2層へ改質させた後、バルブ243bを閉じ、反応ガスの供給を停止する。また、電極300へのRF電力の供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する反応ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S6)。
【0093】
反応ガスとしては、上述のように、例えば、O含有ガスや、N及びH含有ガスを用いることができる。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、オゾン(O)ガス、過酸化水素(H)ガス、水蒸気(HO)、水酸化アンモニウム(NH(OH))ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等を用いることができる。N及びH含有ガスとしては、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0094】
不活性ガスとしては、例えば、ステップS4で例示した各種ガスを用いることができる。
【0095】
(所定回数実施:S7)
上述したステップS3,S4,S5,S6をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)、すなわち、1回以上行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第1層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。なお、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiO層を形成する場合、膜として、シリコン酸化膜(SiO膜)が形成されることとなる。また、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiN層を形成する場合、膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)が形成されることとなる。
【0096】
(大気圧復帰ステップ:S8)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留する反応ガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰:S8)。
【0097】
(搬出ステップ:S9)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0098】
ここで、基板処理時の炉内圧力は、10Pa以上、300Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が10Paより低い場合、プラズマのデバイ長よりもガス分子の平均自由工程が長くなってしまい、炉壁を直接叩くプラズマが顕著化するため、パーティクルの発生を抑制することが困難となってしまうためである。また、炉内の圧力が300Paより高い場合、プラズマの生成効率が飽和してしまうため、反応ガスを供給してもプラズマの生成量は変化することがなく、反応ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでのプラズマ活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0099】
(3)本実施形態による効果
ボート217に装填されているウエハ200の領域の範囲を、高周波電源320の出力波長に対して12%で構成し、第2種の電極300-2と第3種の電極300-3の先端を、最上段のウエハ位置から、高周波電源320の出力波長に対して0.5から6%の低い位置で構成し、第0種の電極300-0の先端を、最上段のウエハ位置と同じかそれよりも高い位置で構成することで、電極300近傍の反応管203内壁とウエハ200の間で生じる電界は縦方向(基板が積載される方向)に一様に強く分布するようになり、プラズマ302の密度が高くかつ縦方向に一様に分布し、基板処理の効率と質と基板間の一様性を同時に高めることが可能となる。
【0100】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0101】
また、例えば、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応体を供給する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、原料、反応体の供給順序は逆でもよい。すなわち、反応体を供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0102】
本開示は、ウエハ200上に、SiO膜やSiN膜を形成する場合だけでなく、ウエハ200上に、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0103】
例えば、上述したガスの他、もしくは、これらのガスに加え、アンモニア(NH)ガス等の窒素(N)含有ガス、プロピレン(C)ガス等の炭素(C)含有ガス、三塩化硼素(BCl)ガス等の硼素(B)含有ガス等を用い、例えば、SiN膜、SiON膜、SiOCN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、BCN膜等を形成することができる。なお、各ガスを流す順番は適宜変更することができる。これらの成膜を行う場合においても、上述の実施形態と同様な処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態と同様の効果が得られる。これらの場合、反応ガスとしての酸化剤には、上述した反応ガスを用いることができる。
【0104】
また、本開示は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本開示は、ウエハ200上に、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜、TiN膜、TiSiN膜、TiBN膜、TiBCN膜、ZrO膜、ZrOC膜、ZrOCN膜、ZrON膜、ZrN膜、ZrSiN膜、ZrBN膜、ZrBCN膜、HfO膜、HfOC膜、HfOCN膜、HfON膜、HfN膜、HfSiN膜、HfBN膜、HfBCN膜、TaO膜、TaOC膜、TaOCN膜、TaON膜、TaN膜、TaSiN膜、TaBN膜、TaBCN膜、NbO膜、NbOC膜、NbOCN膜、NbON膜、NbN膜、NbSiN膜、NbBN膜、NbBCN膜、AlO膜、AlOC膜、AlOCN膜、AlON膜、AlN膜、AlSiN膜、AlBN膜、AlBCN膜、MoO膜、MoOC膜、MoOCN膜、MoON膜、MoN膜、MoSiN膜、MoBN膜、MoBCN膜、WO膜、WOC膜、WOCN膜、WON膜、WN膜、WSiN膜、WBN膜、WBCN膜等を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0105】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C)(CH)]、略称:TEMAH)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(Zr[N(C)(CH)]、略称:TEMAZ)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)ガス、チタニウムテトラクロライド(TiCl)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)ガス等を用いることができる。
【0106】
すなわち、本開示は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0108】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0109】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0110】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
プラズマを発生させるための電極であって、
任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有する電極が、提供される。
【0111】
(付記2)
付記1の電極において、好ましくは、
前記第2電極は、前記第1電極より短い長さである。
【0112】
(付記3)
付記1又は付記2の電極において、好ましくは、
前記第5電極は、前記第4電極より短い長さである。
【0113】
(付記4)
付記1~3のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第5電極は、前記第2電極より短い長さである。
【0114】
(付記5)
付記1~4のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第2電極は、前記第3電極より短い長さである。
【0115】
(付記6)
付記1~5のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第5電極は、前記第6電極より短い長さである。
【0116】
(付記7)
付記1~6のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第4電極とは同じ長さである。
【0117】
(付記8)
付記1~7のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第3電極と、前記第6電極とは同じ長さである。
【0118】
(付記9)
付記1~8のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第3電極とは同じ長さである。
【0119】
(付記10)
付記1~9のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第4電極と前記第6電極とは同じ長さである。
【0120】
(付記11)
付記1~10のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第3電極の隣に配置される前記第2電極と前記第4電極の長さが異なる長さである。
【0121】
(付記12)
付記1~11のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極は、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の順で配置され、前記第4電極と前記第5電極と前記第6電極は、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極の順で配置される。
【0122】
(付記13)
付記1~12のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極は、等間隔で配置され、前記第4電極と前記第5電極と前記第6電極は、等間隔で配置される。
【0123】
(付記14)
付記1~13のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第2電極の中心間距離、前記第2電極と前記第3電極の中心距離、前記第4電極と前記第5電極の中心間距離、前記第5電極と前記第6電極の中心間距離は、13.0mm以上53.5mm以下とする。
【0124】
(付記15)
付記1~14のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極、前記第4電極、前記第5電極、前記第6電極は、複数の基板が積載されて保持される方向(処理室に対して垂直方向)に配置される。
【0125】
(付記16)
付記1~15のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第2電極の先端は、前記第1電極の先端より低い位置に配置される。
【0126】
(付記17)
付記1~16のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第5電極の先端は、前記第4電極の先端より低い位置に配置される。
【0127】
(付記18)
付記1~17のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第5電極の先端は、前記第2電極の先端より低い位置に配置される。
【0128】
(付記19)
付記1~18のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第2電極の先端は、前記第3電極の先端より低い位置に配置される。
【0129】
(付記20)
付記1~19のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第5電極の先端は、前記第6電極の先端より低い位置に配置される。
【0130】
(付記21)
付記1~20のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極の先端と前記第4電極の先端は、同じ高さの位置に配置される。
【0131】
(付記22)
付記1~21のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第3電極の先端と前記第6電極の先端は、同じ高さの位置に配置される。
【0132】
(付記23)
付記1~22のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第2電極の先端と前記第5電極の先端が、前記積載されて保持されている前記複数の基板のうち最上段で保持されている基板位置から、印加される高周波電源の出力波長に対して0.5%以上6%以下の低い位置に配置される。
【0133】
(付記24)
付記1~23のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極と前記第2電極と前記第4電極及び前記第5電極に印加される高周波電源の周波数は、25MHz以上35MHz以下とする。
【0134】
(付記25)
付記1~24のいずれかの電極において、好ましくは、
前記第1電極群と前記第2電極群とは、基板を処理する処理室の外部に設けられ、前記処理室内にプラズマを発生させるように構成される。
【0135】
(付記26)
付記1~25のいずれかの電極において、好ましくは、
基板を加熱する加熱部を備え、
前記第1電極群と前記第2電極群とは、前記処理室と前記加熱部との間に設けられる。
【0136】
(付記27)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、
を備える基板処理装置が、提供される。
【0137】
(付記28)
本開示の一態様によれば、
付記1~26のいずれかの電極を備えた基板処理装置が、提供される。
【0138】
(付記29)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に、前記プラズマ発生部によりプラズマを発生する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が、提供される。
【0139】
(付記30)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に、前記プラズマ発生部によりプラズマを発生する工程と、
を有する基板処理方法が、提供される。
【0140】
(付記31)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、プラズマを発生させるための電極であって、任意の電位が印加される少なくとも1つの第1電極と、任意の電位が印加される前記第1電極と長さが異なる第2電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第3電極とで構成される第1電極群と、任意の電位が印加される少なくとも1つの第4電極と、任意の電位が印加される前記第4電極と長さが異なる少なくとも1つの第5電極と、基準電位が与えられる少なくとも1つの第6電極とで構成される第2電極群と、を有するプラズマ発生部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記処理室内に、前記プラズマ発生部によりプラズマを発生する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラムが、提供される。
【符号の説明】
【0141】
300・・・電極
300-0・・・第0種の電極
300-1・・・第1種の電極
300-2・・・第2種の電極
300-3・・・第3種の電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7