(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】線形加速器のための制御装置及び制御技術並びに線形加速器を有するイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H05H 7/02 20060101AFI20250110BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20250110BHJP
H01J 37/248 20060101ALI20250110BHJP
H05H 9/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H05H7/02
H01J37/317 Z
H01J37/248 B
H05H9/00 A
(21)【出願番号】P 2022556492
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(86)【国際出願番号】 US2021017623
(87)【国際公開番号】W WO2021194655
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-13
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コワル, キース イー.
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-043095(JP,A)
【文献】特表2023-510256(JP,A)
【文献】特表2021-525446(JP,A)
【文献】特開2007-087855(JP,A)
【文献】特開平03-034252(JP,A)
【文献】国際公開第2003/032694(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2018-0133240(KR,A)
【文献】中国実用新案第207883653(CN,U)
【文献】米国特許第06326746(US,B1)
【文献】特開2007-265966(JP,A)
【文献】特開2002-156500(JP,A)
【文献】特開2018-085179(JP,A)
【文献】特開2001-085198(JP,A)
【文献】特開平07-211500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 7/02
H01J 37/317
H01J 37/248
H05H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルマスタクロック発生器及びマスタ波形発生器を含むグローバル制御モジュールと、
前記グローバル制御モジュールに結合された複数の共振器制御モジュールと、を備える装置であって、
前記複数の共振器制御モジュールのうちの所与の共振器制御モジュールは、
ローカル共振器から共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合された第1の入力と、前記デジタルマスタクロック発生器からデジタルマスタクロック信号を受信するように結合された第2の入力と、
前記共振器出力電圧ピックアップ信号のゼロ交差イベントを特定するためのゼロ交差検出器と、前記ゼロ交差イベントと前記デジタルマスタクロック信号との比較によって特定された遅延信号を前記マスタ波形発生器に送信するように結合された第1の出力とを有する同期モジュールを備える、装置。
【請求項2】
前記マスタ波形発生器は、アナログ正弦波発生器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マスタ波形発生器は、前記遅延信号に基づいて前記ローカル共振器に送信される波形の位相を反復的に調整する、クロック調整回路を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の共振器制御モジュールのうちの所与の共振器制御モジュールが、前記共振器出力電圧ピックアップ信号を受信し、前記共振器出力電圧ピックアップ信号の位相を出力する位相検出器と、前記共振器出力電圧ピックアップ信号の前記位相に基づいて、前記ローカル共振器の共振チューナに同調信号を出力する同調回路とを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マスタ波形発生器は、複数のクロック調整回路を備え、前記複数のクロック調整回路は、前記複数の共振器制御モジュールに個々に結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記同期モジュールは、
位相検出器であって、前記位相検出器は、前記ローカル共振器から前記共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合され、さらに、前記マスタ波形発生器からマスタクロック波形を受信するように結合されている、位相検出器と、
前記共振器出力電圧ピックアップ信号と前記マスタクロック波形との間の位相遅延を特定し、前記位相遅延を前記グローバル制御モジュールに出力する回路と、
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記マスタ波形発生器によって生成される波形の周波数は、少なくとも10MHzであり、100MHz未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記デジタルマスタクロック発生器によって生成されたデジタルクロック信号の周波数が、前記マスタ波形発生器によって生成されたマスタ波形の周波数に対応する、第2の周波数の整数倍である第1の周波数を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
複数のステージであって、前記複数のステージのうちの所与のステージは、電極アセンブリと、前記電極アセンブリに結合された共振器とを備える、複数のステージと、
前記複数のステージに結合された共振器制御アセンブリと、
を備える、線形加速器であって、
前記共振器制御アセンブリは、
デジタルマスタクロック発生器及びマスタ波形発生器を含むグローバル制御モジュールと、
前記複数のステージに結合され、さらに前記グローバル制御モジュールに結合された複数の共振器制御モジュールと、
を備え、
前記複数の共振器制御モジュールのうちの所与の共振器制御モジュールが、
ローカル共振器から共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合された第1の入力と、前記デジタルマスタクロック発生器からデジタルマスタクロック信号を受信するように結合された第2の入力と、
前記共振器出力電圧ピックアップ信号のゼロ交差イベントを特定するためのゼロ交差検出器と、前記ゼロ交差イベントと前記デジタルマスタクロック信号との比較によって特定された遅延信号を前記マスタ波形発生器に送信するように結合された第1の出力とを有する同期モジュールを備える、線形加速器。
【請求項10】
前記マス
タ波形発生器は、アナログ正弦波発生器を備える、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項11】
前記マスタ波形発生器が、前記遅延信号に基づいて前記ローカル共振器に送信される波形の位相を反復的に調整する、クロック調整回路を備える、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項12】
前記複数の共振器制御モジュールのうちの所与の共振器制御モジュールが、前記共振器出力電圧ピックアップ信号を受信し、前記共振器出力電圧ピックアップ信号の位相を出力する位相検出器と、前記共振器出力電圧ピックアップ信号の位相に基づいて、前記共振器の共振チューナに同調信号を出力する同調回路とを備える、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項13】
前記マスタ波形発生器は、複数のクロック調整回路を備え、前記複数のクロック調整回路は、前記複数の共振器制御モジュールに個々に結合される、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項14】
前記同期モジュールは、
位相検出器であって、前記位相検出器は、前記ローカル共振器から前記共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合され、さらに、前記マスタ波形発生器からマスタクロック波形を受信するように結合されている、位相検出器と、
前記共振器出力電圧ピックアップ信号と前記マスタクロック波形との間の位相遅延を特定し、前記位相遅延を前記グローバル制御モジュールに出力する回路と、
を備える、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項15】
前記デジタルマスタクロック発生器によって生成されたデジタルクロック信号の周波数が、前記マスタ波形発生器によって生成されたマスタ波形の周波数に対応する、第2の周波数の整数倍である第1の周波数を含む、請求項
9に記載の線形加速器。
【請求項16】
イオンビームを制御する方法であって、
複数のステージを備える線形加速器を通るように前記イオンビームを方向付けることであって、前記複数のステージのうちの所定のステージがRF共振器と共振器制御モジュールとを備える、前記イオンビームを方向付けることと、
前記共振器制御モジュール
において、デジタルマスタクロック発生器からデジタルマスタクロック信号を受信することと、
前記RF共振器によって出力される電圧信号の位相を
、前記共振器制御モジュールにおいて測定することと、
前記共振器制御モジュールにおいて、前記電圧信号の前記位相と前記デジタルマスタクロック信号との比較に従って、前記RF共振器に送信される入力波形の位相を調整する
遅延信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項17】
前記共振器制御モジュールが、
前記電圧信号を受信するように結合された第1の入力と、前記デジタルマスタクロック信号を受信するように結合された第2の入力と、
前記遅延信号をマスタ波形発生器に送信するように結合された第1の出力であって、前記マスタ波形発生器が前記入力波形を生成する第1の出力と、を有する同期モジュール
を備える、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記マスタ波形発生器は、アナログ正弦波発生器を備える、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は概して、イオン注入装置に関し、より具体的には、線形加速器に基づく高エネルギービームラインイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] イオン注入は、衝突によってドーパント又は不純物を基板に導入する処理である。イオン注入システムは、イオン源及び一連のビームライン構成要素を備えうる。イオン源は、イオンが生成されるチャンバを備えうる。中程度エネルギー及び高エネルギーのイオンビーム生成に適したイオン注入装置の1つのタイプは、線形加速器(LINAC)を使用し、ビームの周囲にチューブとして配置された一連の電極が、連続するチューブに沿ってイオンビームを次第に高いエネルギーにまで加速する。種々の電極を一連のステージに配置することが可能で、所与のステージの所与の電極が、AC電圧信号を受け取り、イオンビームを加速する。
【0003】
[0003] LINACでは、イオンビームがビームラインを通って導かれる際に、当該イオンビームをバンチ化する初期ステージが採用されている。LINACの所与のステージは、例えば、所与のステージにおいて所与の電極又は電極セットに印加されるRF電圧を生成する共振器を使用して、イオンを加速することによってイオンエネルギーを増大させるために使用される。RF電圧は、所与のLINACステージに印加されるRF電圧の位相及び振幅を制御することによって、LIACを通して伝導されるイオンビームに結合される振動電場を生成する。
【0004】
[0004] 所与のRF共振器は、イオンビームへのRFエネルギーの最適な結合のため、共振を維持するように調整される。所与のLINACは、4ステージ、6ステージ、12ステージ、又はそれ以上など、いくつかのステージを採用することがあるため、LINACを通してイオンビームを加速するように、同様の数の共振器が制御されることになっている。これらの複数の共振器は、ナノ秒以下のスケールの調整など、共振を維持するために正確な制御を必要とする。共振状態が維持されるほど、イオンビームを加速する能力は大きくなる。さらに、LINACの所与のステージを制御するために使用される所与の共振器は、他のステージにリンクされた他の共振器とは独立であってもよい。したがって、複数の異なるステージで共振を維持するのに要求されるレベルまで複数の共振器を制御することは、課題として残されている。
【0005】
[0005] これらの留意事項及び他の留意事項に関連して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 一実施形態では、装置は、デジタルマスタクロック発生器及びマスタ波形発生器を含むグローバル制御モジュールを含んでもよい。また、装置は、グローバル制御モジュールに結合された複数の共振器制御モジュールを含んでもよい。複数の共振器制御モジュールのうちの所与の共振器制御モジュールは、ローカル共振器から共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合された第1の入力と、デジタルマスタクロック発生器からデジタルマスタクロック信号を受信するように結合された第2の入力と、遅延信号をマスタ波形発生器に送信するように結合された第1の出力とを有する同期モジュールを含んでもよい。
【0007】
[0007] 別の実施形態では、線形加速器が提供される。線形加速器は、複数のステージを含んでもよく、複数のステージのうちの所与のステージは、電極アセンブリと、電極アセンブリに結合された共振器とを含む。また、状態は、複数のステージに結合された共振器制御アセンブリを含んでもよい。共振器制御アセンブリは、デジタルマスタクロック発生器及びマスタ波形発生器を含むグローバル制御モジュールと、複数のステージに結合され、さらにグローバル制御モジュールに結合された複数の共振器制御モジュールと、を含んでもよい。所与の共振器制御モジュールは、ローカル共振器から共振器出力電圧ピックアップ信号を受信するように結合された第1の入力と、デジタルマスタクロック発生器からデジタルマスタクロック信号を受信するように結合された第2の入力と、遅延信号をマスタ波形発生器に送信するように結合された第1の出力とを有する同期モジュールを含んでもよい。
【0008】
[0008] さらなる実施形態では、イオンビームを制御する方法が提示される。この方法は、複数のステージを備える線形加速器を通るようにイオンビームを方向付けることを含んでもよく、複数ステージの所定のステージは、RF共振器と、共振器制御モジュールとを備える。この方法は、共振器制御モジュールにおいてマスタデジタルクロック信号を受信することと、RF共振器によって出力される電圧信号の位相を測定することと、電圧信号の位相とマスタデジタルクロック信号との比較に従って、RF共振器に送られるべき入力波形の位相を調整することとを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による、例示的なイオン注入システムを示す。
【
図2】本開示の様々な実施形態による、LINACにおける複数の加速ステージを制御するための例示的な制御構成を図解している。
【
図3A】本開示の実施形態による、共振器制御装置の例示的な詳細を示す。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、例示的な処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0014] 図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は単なる表現にすぎず、本開示の具体的なパラメータを描写することを意図するものではない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すためのものであり、したがって、範囲を限定するものと見なすべきではない。図面では、類似の付番は類似の要素を表わしている。
【0011】
[0015] ここで、本開示による装置、システム及び方法を、システム及び方法の実施形態が示される添付の図面を参照しながら、以下により詳細に説明する。システム及び方法は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が一貫した完全なものであり、システム及び方法の範囲を当業者に十分に伝える。
【0012】
[0016] 本明細書で使用されているように、「a」又は「an」という単語に続いて、単数形で列挙される要素または動作は、同様に複数の要素または動作を含む可能性があるものとして、理解される。さらに、本開示の「一実施形態(one embodiment)」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加的な実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しない。
【0013】
[0017] 本明細書では、ビームラインアーキテクチャに基づく、改良された線形加速器、及び改良された高エネルギーイオン注入システムのためのアプローチが提供される。簡潔にするために、本明細書では、イオン注入システムを「イオン注入装置」と呼ぶこともある。様々な実施形態が、高エネルギーイオンを生成する能力を提供するための新規な構成を提供し、基板に届けられる最終的なイオンエネルギーは、300keV、500keV、1MeV、又はそれ以上でありうる。例示的な実施形態では、複数のステージを有するLINAC内の共振器を制御するための新規な制御構成及び技術が提供される。
【0014】
[0018] ここで
図1を参照すると、イオン注入システム100として示された例示的なイオン注入装置が、ブロック形態で示されている。イオン注入システム100は、ビームラインイオン注入装置を表し、説明をわかりやすくするため、いくつかの要素が省略されている。イオン注入システム100は、当該技術分野で知られているように、エンクロージャ104内のイオン源102と、高電圧に保持されたガスボックス107と、を含みうる。イオン源102は、第1のエネルギーでイオンビーム106を生成するために、抽出構成要素及びフィルタ(図示せず)を含みうる。第1のイオンエネルギーのための適切なイオンエネルギーの例は、5keV~100keVの範囲にあるが、実施形態は、本文脈に限定されない。高エネルギーイオンビームを形成するために、イオン注入システム100は、イオンビーム106を加速するための様々な追加の構成要素を含む。
【0015】
[0019] イオン注入システム100は、受け取ったイオンビームを分析するように機能する分析器110を含みうる。したがって、いくつかの実施形態では、分析器110が、イオン源102に位置する抽出光学系によって与えられたエネルギーを有するイオンビーム106を受け取ることができ、イオンエネルギーは、100keV以下、具体的には80keV以下の範囲にある。他の実施形態では、分析器110は、DC加速カラムによって加速され、200keV、250keV、300keV、400keV、又は500keVといったより高いエネルギーとなったイオンビームを受け取りうる。実施形態はこの文脈に限定されるわけではない。イオン注入システム100はまた、分析器110の下流に配置された線形加速器126(破線で図示)を含みうる。線形加速器126は、共振器128によって代表されるように、直列に配置された複数の加速器ステージを含みうる。例えば、線形加速器の所与のステージは、所与の共振器によって駆動され、MHz範囲(RF範囲)のAC電圧信号を生成することができ、AC電圧信号は、所与のステージの電極においてAC場を生成する。AC場は、イオンビームを加速するように作用し、イオンビームは、バンチ化されたイオンビームとしてパケットのステージに送達されうる。バンチャは、別個に示されていないが、線形加速器126の第1のステージに配置されて、連続イオンビームを受け取り、バンチャでRF共振器の作用によってバンチ化されたイオンビームを生成することができる。加速器ステージは、バンチャと同様に作用し、所与のステージでバンチ化されたイオンビームを出力し、イオンビームを段階的により高いエネルギーまで加速することができる。したがって、バンチャは、イオンビームが連続イオンビームとして受け取られるという点で、下流の加速器ステージとは異なる第1の加速器ステージと見做されうる。共振器は、共振器制御モジュール132及びグローバル制御モジュール134によって制御することができる。共振器制御モジュール及びグローバル制御モジュールの例を以下に詳細に示す。
【0016】
[0020] 様々な実施形態において、イオン注入システム100は、フィルタ磁石116、スキャナ118、及び、コリメータ120といった、追加の構成要素を含んでよく、フィルタ磁石116、スキャナ118、及び、コリメータ120の一般的な機能は良く知られており、本明細書ではさらに詳細には説明しない。このように、高エネルギーイオンビーム115によって代表される、線形加速器126によって加速された後の高エネルギーイオンビームが、基板124の処理のために、末端ステーション122へと届けられうる。
【0017】
[0021] イオンビーム106が分析器110に直接的に供給されるいくつかの実施形態では、線形加速器126は、上述のように、100keV未満といった比較的低いエネルギーの連続イオンビームとして、イオンビーム106を受け取りうる。他の実施形態では、イオン注入システムがDC加速カラムを含む場合には、イオンビーム106は、最大500keV以上のエネルギーの連続イオンビームとして供給されるよう加速されうる。
【0018】
[0022]
図2は、本開示の様々な実施形態による、LINACにおける複数の加速ステージを制御するための例示的な制御構成を示す。制御構成200は、デジタルマスタクロック発生器212及びマスタ波形発生器210を含むグローバル制御モジュール202を含む共振器制御アセンブリ205を含み、共振器制御アセンブリは、構成要素が発振器214に結合されてもよい。また、共振器制御アセンブリ205は、複数の共振器制御モジュールを含んでもよく、複数の共振器制御モジュールは、共振器制御モジュール204として示される。所与の共振器制御モジュールは、グローバル制御モジュール202と共振器制御モジュール204との間で信号を伝送するため、少なくとも1つのケーブルを介してグローバル制御モジュール202に結合される。例えば、グローバル制御モジュール202の少なくとも一部は、ラックまたは他の構成要素内に配置され、複数のケーブルによって共振器制御モジュール204に接続されうる。動作中、グローバル制御モジュール202は、共振器制御モジュール204とグローバル制御モジュール202との間で送られる特定の信号を生成及び管理して、線形加速器126の異なるステージに対して共振器128の動作を管理するためのロジックを含んでもよい。
【0019】
[0023] 簡単に説明すると、制御構成200は、共振器128の各々を駆動するために提供される精密なクロック及び波形の監視と維持に役立ちうる。例えば、線形加速器126の所与の加速ステージにおける所与の共振器は、所与のステージを通過するイオンビームを加速する最大電位を生成するため、共振を維持するようにサブナノ秒の制御を必要とすることがある。制御構成200は、所与の加速ステージへの入力信号を監視し、その信号をグローバル制御モジュール202によって生成されるマスタデジタルクロック信号と比較することができる。以下で詳述するように、共振器制御モジュール204は互いに同じ様に配置されてよく、所与の共振器制御モジュールは、共振器128を制御するために使用されるマスタ波形201を調整するため、クロック調整回路216として示される専用構成要素に結合される。マスタ波形発生器210は、共振器制御モジュール204の数に適合するように、多数のクロック調整回路を含むことができる。
図2に示すように、制御構成200は、共振器128のうちの所与の共振器に結合され、共振器出力電圧ピックアップ信号を生成する電圧ピックアップを含んでもよい。したがって、制御構成200は、共振器128において共振器出力電圧ピックアップ信号を特定し、この信号を共振器128を駆動する波形の位相と比較することができる。任意の位相遅延は、所与の共振器において共振をより正確に維持できるように、慎重なクロック遅延測定/調整を行う能力を支援することができる。
【0020】
[0024] 共振器128のいくつか又はすべての共振器について、位相遅延は、制御構成200によって特定され、共振器128を目標精度に同調させるため、グローバル制御モジュール202に報告が返されてもよい。この較正が完了すると、線形加速器126の異なる共振器間の位相関係が分かるであろう。いくつかの実施形態では、グローバル制御モジュール202のマスタ波形発生器210は、13.56MHzなどの特定された周波数で共振器128を駆動するための正弦波を生成することができ、一方、デジタルマスタクロック発生器212は、27.12MHzなどの正弦波周波数の倍数でデジタル信号を生成することができる。これらの構成要素の両方のクロックは、温度又はその他の要因などの周囲の変化に従って、時間の経過とともにドリフトすることがある。本開示の実施形態によれば、制御構成200は、そのような変化を考慮するために、共振器128の各々を適切に維持及び調整するように作用する。
【0021】
[0025]
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、共振器制御モジュール204の一変形例の例示的な詳細を示す。
図3Aにおいて、共振器制御モジュール204は、上述のグローバル制御モジュール202、並びに共振器128と、共振器128にRF電力を供給するRF源304(AC電力340によって別々に給電される)と、を含む制御配置300との関連で示されている。RF源304によって生成されるRF電力の例示的な周波数は、いくつかの非限定的な実施形態によれば、数十メガヘルツから最大100メガヘルツの範囲になりうる。RF源304による典型的な電力出力は、いくつかの非限定的な実施形態によれば、kWから数十kWの範囲とすることができる。
【0022】
[0026] 特に、本実施形態の線形加速器では、加速ステージごとに、共振器128が同様の共振器制御モジュールに結合されることになる。したがって、共振器128と協働する
図3Aの共振器制御モジュール204の動作は、線形加速器の異なる加速ステージについて複製されることになる。言い換えると、12個の加速ステージを有する線形加速器では、12個の別個の共振器を個々に制御するために、12個の共振器制御モジュール204を設けることができる。実施形態は、この文脈において、任意の特定の数の加速ステージ又は対応する共振器に限定されない。
【0023】
[0027] 動作中、いくつかの実施形態によれば、グローバル制御モジュール202のマスタ波形発生器210は、アナログ正弦波発生器として作用し、波形342として示される波形をアナログ正弦波として生成してもよい。この波形は、RF源304によって(増幅器306などによって)増幅され、共振器128へのRF電力として出力される。
【0024】
[0028] 制御構成300は、RF源304から共振器128への入力電力を測定するように構成された電流ピックアップ308を含む、ピックアップの種々のモニタを含んでもよい。制御構成300は、さらに、共振器128によって出力されるAC(RF)電圧を測定するように構成された電圧ピックアップ312と、共振チューナ314とを含む。
図3の実施形態では、加速ステージ301は、RF源304、共振器128、及びACドリフトチューブ303によって表される。制御構成300に示されたように、RF電圧は、所与の加速ステージのACドリフトチューブ303に送られてもよい。ACドリフトチューブ303は、中空シリンダとして配置され、中にRF場を生成し、ACドリフトチューブ303を通過するイオンビームを加速するために使用されてもよい。加速ステージは一般的に、
図2に描かれているように、線形加速器の長さに沿って配置されるであろう。
【0025】
[0029] 加速ステージ301の動作を監視及び調整するために、共振器制御モジュール204として示された専用の共振器制御モジュールが設けられる。
図3Aに示したように、共振器出力電圧ピックアップ信号は、ローカル共振器から生成されており、共振器128に結合される電圧ピックアップ312からの信号を意味する。信号は、共振器出力電圧ピックアップ信号311として示される。共振器出力電圧ピックアップ信号311は、波形342の周波数でアナログ波形の形態を有してもよい。制御配置300では、この信号は、電圧振幅検出器324及び電圧位相検出器326を含む共振器制御モジュール204の様々な構成要素に分配されてもよい。共振器制御モジュール204は、さらに、振幅検出器320と、位相検出器322とを含んでもよく、各検出器は、CTピックアップ308からのVin信号を受信するように結合されている。振幅検出器320及び電圧振幅検出器324は、共振器310の「総」同調用構成要素として機能してもよく、一方、位相検出器322及び位相検出器326は、共振器310の微調整用構成要素として機能してもよい。
【0026】
[0030] 共振器制御モジュール204は、さらに、ADCアセンブリ330Aとして示されるアナログデジタル変換器のアセンブリと、異なる非限定的実施形態においてフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のマイクロプロセッサでありうる処理回路330Bとを含む制御モジュール330を含んでもよい。ADCアセンブリ330Aは、例えば、振幅検出器320からのIin信号、位相検出器322からのφ0信号、振幅検出器324からのVD信号、及び位相検出器326からのφ1信号を受信するように結合された様々な入力を含んでもよい。これらの信号は、制御モジュール330によって処理され、後述する同期モジュール332に出力することができる。
【0027】
[0031] この変形例では、共振器制御モジュール204は、共振器出力電圧ピックアップ信号311も受信するように結合された第1の入力を有する同期モジュール332を含む。さらに、同期モジュール332は、デジタルマスタクロック発生器212からデジタルマスタクロック信号211を受信するように結合された第2の入力と、遅延信号215をマスタ波形発生器210に送信するように結合された第1の出力とを含んでもよい。
【0028】
[0032] 同期モジュール332は、共振器128によって出力される波形、例えば共振器出力電圧ピックアップ信号31の位相と、デジタルマスタクロック発生器212から受信されるデジタルマスタクロック信号211の位相との間の遅延又はオフセットを特定することができる。例えば、同期モジュール332は、電圧ピックアップ312から生成された共振器出力電圧ピックアップ信号311のゼロ交差イベントを特定するために、ゼロ交差検出器334を含んでもよい。同期モジュール332は、さらに、ゼロ交差検出器334からゼロ交差信号315を受信するための入力と、デジタルマスタクロック信号211を受信するための入力と、を有する遅延測定回路336を含んでもよい。これら2つの信号の間の位相オフセットを比較することによって、共振器310に関連する遅延を特定することができる。次いで、この遅延は、同期モジュール332によって遅延信号215としてグローバル制御モジュール202に報告されうる。同様の遅延信号が、線形加速器126の各加速ステージの各共振器について報告されてもよい。したがって、この遅延は、線形加速器126の加速ステージ301の各共振器の動作を監視し、制御し、調整するために使用されうる。例えば、遅延信号215は、グローバル制御モジュール202のクロック調整回路216として示されるマスタ波形発生器210の専用回路によって受信されてもよい。次いで、クロック調整回路216は、同調信号を出力することができ、その結果、マスタ波形発生器210によって共振器128に出力される波形342の位相を必要に応じて調整することができる。
【0029】
[0033] 特に、
図3Aの配置では、電圧位相検出器326も、マスタ波形発生器210によって出力される波形342を受信するように結合される。そのため、RF源304に送られるような波形342と、共振器128で検出される電圧波形との間の遅延又は位相オフセットを特定することができる。この遅延は、システムクロック遅延を構成し、同期モジュール332によって定量化され、共振器310についてグローバル制御モジュール202に戻って報告され、互いの加速ステージ301について共振器310のそれぞれについて報告されてもよい。このようにして、グローバル制御モジュール202の前述の構成要素又は回路は、LINACの異なる加速ステージの共振器間の相対的位相遅延を特定することができる。
【0030】
[0034] また、制御モジュール330は、出力電圧ピックアップ信号の位相に基づいて、同調信号を共振器310の共振チューナ314に出力するための同調回路として機能してもよい。共振チューナ314は、調整可能なキャパシタ又は共振器310を調整するための他の適切な構成要素などの、調整可能な構成要素であってもよい。
【0031】
[0035]
図3Bは、クロック調整回路350の1つの実装を示す。クロック調整回路350は、デジタルマスタクロック発生器212からマスタデジタルクロック信号を受信するように結合された遅延クロック発生器352を含む。遅延クロック発生器352は、波形データブロック354に出力し、このブロックは、デジタルアナログ変換器358への出力に結合される。コントローラ356は、第1の制御信号を遅延クロック発生器に送信するための第1の出力と、第2の制御信号をデジタル/アナログ変換器358に送信し、アドレス信号を波形データブロック354へ送信するための第2の出力と、を有するように提供される。それに応じて、デジタルアナログ変換器358は、アナログ信号を信号条件ブロック360に出力することができ、このブロックは、次に、調整された波形を共振器及び関連する共振器制御モジュールに送信する。
【0032】
[0036]
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な処理フロー400を示す。ブロック402では、イオンビームが線形加速器(LINAC)を通るように方向付けられる。イオンビームは、例えば、線形加速器の第1のステージでバンチャを使用して、バンチイオンビームとして線形加速器内に受け入れられる。
【0033】
[0037] ブロック404では、LINACの複数のステージで複数の共振器を制御するためにマスタ波形が生成されるが、イオンビームはLINACを通って伝導される。マスタ波形は、複数のRF共振器でRF電力を生成するためにマスタ波形を増幅する複数のRF源に送信されるアナログ正弦波として生成することができる。
【0034】
[0038] ブロック406では、マスタデジタルクロック信号が、複数の共振器に結合された複数の共振器コントローラに向けられる。マスタデジタルクロック信号は、マスタ波形の周波数の整数倍の周波数で生成されてもよい。
【0035】
[0039] ブロック408では、LINACの複数の共振器の各共振器によって出力される電圧信号の位相が個々に測定される。
【0036】
[0040] ブロック410では、複数の共振器に対する位相遅延の報告が受信され、ここで、位相遅延は、所与の共振器に対する電圧信号の位相とマスタデジタルクロック信号との比較に基づく。
【0037】
[0041] ブロック412では、複数の共振器のうちの所与の共振器に入力するためのマスタ波形の位相は、マスタデジタルクロック信号に対する電圧信号の位相の比較に基づいて、個々に調整されてもよい。
【0038】
[0042] 上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。第1の利点は、所与のRF共振器に対する共振が自動的に維持されることを保証する手段を提供することによって実現される。第2の利点は、所与の共振器で遅延をより正確に特定する能力である。
【0039】
[0043] 本明細書では、本開示のある種の実施形態について説明してきたが、本開示は当該技術分野が許容する限り広い範囲にわたり、本明細書も同様に読まれうるので、本開示は本明細書での説明に限定されるわけではない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者には、本明細書に付随する特許請求の範囲及び主旨におけるその他の改変も想起されよう。