(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】校正用パターン光投射装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20250114BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
G01M11/02 B
G01M11/00 L
(21)【出願番号】P 2021064624
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】三須 俊枝
(72)【発明者】
【氏名】三ツ峰 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-175457(JP,A)
【文献】特開2003-279446(JP,A)
【文献】特開2007-178742(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126647(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0380644(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0034521(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラに装着されたレンズの歪曲収差を測定するための校正用パターン光を、所定の物体へ投射する校正用パターン光投射装置であって、
光源を用いて前記校正用パターン光を発生するパターン光発生部と、
前記パターン光発生部により発生した前記校正用パターン光を反射させ、前記所定の物体へ投射するハーフミラーと、を備え、
前記光源から前記ハーフミラーを介して前記所定の物体までの間の光路長と、前記レンズの第一主点から前記ハーフミラーを介して前記所定の物体までの間の光路長とが一致しており、
前記校正用パターン光が前記所定の物体へ投射されると、前記所定の物体の表面で反射した反射光が、前記ハーフミラーを透過し前記レンズを介して前記カメラの焦点面に結像する、ことを特徴とする校正用パターン光投射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の校正用パターン光投射装置において、
前記パターン光発生部は、
前記光源と前記ハーフミラーとの間の光軸方向に、前記光源を移動可能な可動部を備えたことを特徴とする校正用パターン光投射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の校正用パターン光投射装置において、
さらに、前記ハーフミラーに対する前記光源の位置を固定した状態で、前記レンズの第一主点と前記ハーフミラーとの間の光軸方向に、当該校正用パターン光投射装置を前記カメラに対して移動させる装置可動部を備えたことを特徴とする校正用パターン光投射装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の校正用パターン光投射装置において、
前記パターン光発生部は、
前記校正用パターン光のパターンを形成するための複数の透過部及び複数の遮光部を有するマスクを備え、前記マスクを用いて、前記光源を頂点とした立体角的な前記校正用パターン光を発生する、ことを特徴とする校正用パターン光投射装置。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の校正用パターン光投射装置において、
前記パターン光発生部は、
前記光源の発する光線を走査する走査機構を備え、前記走査機構を用いて、前記光源を頂点とした立体角的な前記校正用パターン光を発生する、ことを特徴とする校正用パターン光投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの歪曲収差を測定するための校正用パターン光を投射する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズの歪曲収差を測定するために、特定のパターンを印刷した校正用パターンを用いる手法が知られている。
【0003】
図14は、校正用パターンを用いてレンズの歪曲収差を測定する従来手法を説明する図である。従来手法では、平面に特定のパターン(例えばチェッカーボードパターン)を印刷した校正用パターン101を使用し、ユーザは、計測対象レンズ110を筐体112に装着したカメラ102を用いて校正用パターン101を撮影する。
【0004】
歪曲収差測定装置103は、カメラ102の焦点面111上に得られた校正用パターン101の像を入力し、校正用パターン101の像に基づいて、計測対象レンズ110の歪曲収差を測定し、これを歪曲収差パラメータとして出力する。
【0005】
例えば歪曲収差測定装置103は、校正用パターン101の像から、校正用パターン101を構成する各パターン要素の重心位置を求め、各パターン要素の重心位置に基づいて、歪曲収差を求める。
【0006】
また、コリメートされた細いレーザー光を、被写体側から計測対象レンズに入射し、その結像状態(結像位置及びぼやけの状況)から歪曲収差を含む各種収差を測定する手法が知られている。
【0007】
さらに、カメラと被写体との間の相対位置を変化させながら、同一の被写体を複数回撮影し、複数の画像に基づいて歪曲収差を含むカメラ校正パラメータを測定する弱校正法が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0008】
この弱校正法は、撮影により得られた複数の画像から、特徴的な画像パターン(特徴点)を複数抽出し、複数の画像間で特徴点間の対応付けを行い、その結果得られる複数の画像座標対から歪曲収差等を測定する(特許文献1の段落56~67を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図14に示した校正用パターン101を用いる手法では、校正用パターン101がカメラ102の画角αに丁度収まる程度に捉えられることが必要である。また、校正用パターン101は、計測対象レンズ110の光軸βに直交することが好ましい。
【0011】
このような校正用パターン101を用いる手法では、例えば計測対象レンズ110が広角であるほど、また、カメラ102と校正用パターン101との間の距離が長いほど、広い面積の校正用パターン101を使用する必要がある。このため、校正用パターン101の設置または取り回しに困難を生じやすい。そして、校正用パターン101の面積が広くなると、その平面性を保つことも難しくなり、結果として、歪曲収差の測定精度が劣化するという問題もある。
【0012】
また、前述のレーザー光を用いる手法は、専用の測定装置をカメラに装着し、厳密に校正された位置及び角度でレーザー光を測定対象レンズに入射するものである。この手法では、構成時に、専用の測定装置のある場所にカメラを持ち込み、専用の測定装置をカメラに装着して歪曲収差等を測定する。そして、運用時に、専用の計測装置のある場所から運用場所までカメラを移動する必要があり、輸送時の振動または温度変化によって、校正時の状態から歪曲収差等がずれてしまう可能性がある。
【0013】
また、前述の弱校正法によれば、特定の校正用パターンが不要となるが、十分に特徴点を取得可能な被写体を用意した上で、カメラと被写体との間の相対位置を変化させながら、複数の画像を取得する必要がある。
【0014】
被写体は、カメラの画角を十分に覆う大きさである必要があり、計測対象レンズが広角であるほど、また、カメラと被写体との間の距離が長いほど、大きな被写体を置く必要がある。
【0015】
相対位置を変化させるためにカメラを動かす場合には、振動等の影響によりカメラパラメータがずれる可能性がある。一方、相対位置を変化させるために被写体を動かす場合には、特に被写体が大きいときに当該被写体が歪む可能性があり、その結果、歪曲収差に誤差を生じる可能性がある。
【0016】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レンズの歪曲収差を測定する際の手間を減らすと共に、歪曲収差を高精度に測定可能な校正用パターン光投射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、請求項1の校正用パターン光投射装置は、カメラに装着されたレンズの歪曲収差を測定するための校正用パターン光を、所定の物体へ投射する校正用パターン光投射装置であって、光源を用いて前記校正用パターン光を発生するパターン光発生部と、前記パターン光発生部により発生した前記校正用パターン光を反射させ、前記所定の物体へ投射するハーフミラーと、を備え、前記光源から前記ハーフミラーを介して前記所定の物体までの間の光路長と、前記レンズの第一主点から前記ハーフミラーを介して前記所定の物体までの間の光路長とが一致しており、前記校正用パターン光が前記所定の物体へ投射されると、前記所定の物体の表面で反射した反射光が、前記ハーフミラーを透過し前記レンズを介して前記カメラの焦点面に結像する、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2の校正用パターン光投射装置は、請求項1に記載の校正用パターン光投射装置において、前記パターン光発生部が、前記光源と前記ハーフミラーとの間の光軸方向に、前記光源を移動可能な可動部を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項3の校正用パターン光投射装置は、請求項1または2に記載の校正用パターン光投射装置において、さらに、前記ハーフミラーに対する前記光源の位置を固定した状態で、前記レンズの第一主点と前記ハーフミラーとの間の光軸方向に、当該校正用パターン光投射装置を前記カメラに対して移動させる装置可動部を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項4の校正用パターン光投射装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の校正用パターン光投射装置において、前記パターン光発生部が、前記校正用パターン光のパターンを形成するための複数の透過部及び複数の遮光部を有するマスクを備え、前記マスクを用いて、前記光源を頂点とした立体角的な前記校正用パターン光を発生する、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項5の校正用パターン光投射装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の校正用パターン光投射装置において、前記パターン光発生部が、前記光源の発する光線を走査する走査機構を備え、前記走査機構を用いて、前記光源を頂点とした立体角的な前記校正用パターン光を発生する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、レンズの歪曲収差を測定する際の手間を減らすと共に、歪曲収差を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態による校正用パターン光投射装置を含む全体システムの一例を示す構成図である。
【
図2】パターン光発生部の第一例を示す構成図である。
【
図3】(a)は、点列のマスクを説明する図である。(b)は、チェッカーボードパターンのマスクを説明する図である。
【
図4】(a)は、レンズアレイを用いたマスクを説明する図である。(b)は、マスク断面(A-A’面)の例を説明する図である。(c)は、マスク断面(A-A’面)の他の例を説明する図である。
【
図5】パターン光発生部の第二例を示す構成図である。
【
図6】パターン光発生部の第三例を示す構成図である。
【
図7】本発明の実施形態による校正用パターン光投射装置を用いた場合の光路長を説明する図である。
【
図8】光源とハーフミラーとの間の距離が適切な場合において、(a)は任意物体がカメラに対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。
【
図9】光源がハーフミラーに対して遠い場合において、(a)は任意物体がカメラに対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。
【
図10】光源がハーフミラーに対して近い場合において、(a)は任意物体がカメラに対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。
【
図11】点列のマスクを使用した場合において、(a)は歪曲収差がない場合の結像の例を説明する図であり、(b)は歪曲収差がある場合の結像の例を説明する図である。
【
図12】チェッカーボードパターンのマスクを使用した場合において、(a)は歪曲収差がない場合の結像の例を説明する図であり、(b)は歪曲収差がある場合の結像の例を説明する図である。
【
図13】任意物体の表面の凹凸による結像のぼやけについて説明する図である。
【
図14】校正用パターンを用いてレンズの歪曲収差を測定する従来手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔全体システム〕
図1は、本発明の実施形態による校正用パターン光投射装置を含む全体システムの一例を示す構成図である。このシステムは、校正用パターン光投射装置1、カメラ102、歪曲収差測定装置103及び任意物体104を備えて構成され、校正用パターン光を任意物体104へ投射することで形成される結像に基づいて、計測対象レンズ110の歪曲収差を測定する。
【0025】
校正用パターン光投射装置1は、計測対象レンズ110の歪曲収差を測定するための所定パターンの校正用パターン光を発生し、校正用パターン光を任意物体104へ投射する。
【0026】
カメラ102には、計測対象レンズ110が装着されている。カメラ102は、計測対象レンズ110及び筐体112を備えて構成され、筐体112が計測対象レンズ110を支持している。
【0027】
カメラ102は、任意物体104を撮影し、焦点面111に任意物体104の結像を形成する。具体的には、校正用パターン光投射装置1により投射された校正用パターン光が任意物体104へ照射されることで、任意物体104の反射光が、計測対象レンズ110を介して焦点面111へ入射し、焦点面111上に任意物体104の結像が形成される。
【0028】
歪曲収差測定装置103は、ユーザによる後述する初期調整にて所定の光路長の調整が行われた状態において、カメラ102の焦点面111上に形成された任意物体104の結像のデータを入力する。そして、歪曲収差測定装置103は、当該結像を構成する各パターン要素の重心位置を求め、各パターン要素の重心位置に基づいて、計測対象レンズ110の歪曲収差を測定する。そして、歪曲収差測定装置103は、これを歪曲収差パラメータとして出力する。
【0029】
〔校正用パターン光投射装置1〕
次に、本発明の実施形態による校正用パターン光投射装置1について説明する。校正用パターン光投射装置1は、
図1に示すように、カメラ102において、カメラ102に装着された計測対象レンズ110に対して任意物体104側に装着される。
【0030】
校正用パターン光投射装置1は、パターン光発生部10、ハーフミラー11及び筐体12を備えている。
【0031】
パターン光発生部10は、光源を頂点とした所定パターンの立体角的な(例えば円錐状に広がる)校正用パターン光を発生し、校正用パターン光をハーフミラー11へ投射する。
図1のパターン光発生部10には、可動部21、光源22及びマスク23を備えた後述する
図2の第一例が示されている。パターン光発生部10の詳細については後述する。
【0032】
ハーフミラー11は、パターン光発生部10により発生した校正用パターン光を反射させることで、反射した校正用パターン光を任意物体104へ投射する。ハーフミラー11は、計測対象レンズ110に対し斜交して配置される。
【0033】
好ましくは、ハーフミラー11は、パターン光発生部10に備えた光源22からマスク23の中心を通る軸Jを当該ハーフミラー11の面法線nに対して対称移動させた場合に、その軸が、計測対象レンズ110の光軸β1と一致するように配置される。
【0034】
ハーフミラー11の反射率及び透過率は任意である。例えば、当該校正用パターン光投射装置1が歪曲収差の測定時のみカメラ102に装着される場合には、反射率=透過率=0.5付近としてもよい。また、当該校正用パターン光投射装置1が歪曲収差の測定時のみならず、カメラ102の通常運用時にも装着される場合には、反射率を小さめ(例えば、反射率=0.1、透過率=0.9付近等)としてもよい。
図1には、ハーフミラー11と、当該ハーフミラー11から計測対象レンズ110への光軸β1との間の角度が45度をなすときの配置例が示されている。
【0035】
筐体12は、後述する初期調整の際にパターン光発生部10(可動部21)が移動方向Dに移動するように、パターン光発生部10を支持しており、カメラ102側及び任意物体104側のそれぞれに開口部が設けられている。筐体12におけるカメラ102側の開口部の内部に、カメラ102に備えた筐体112の開口部が挿入されることで、校正用パターン光投射装置1がカメラ102に装着される。
【0036】
(パターン光発生部10の第一例)
次に、
図1に示したパターン光発生部10の構成例について詳細に説明する。
図2は、パターン光発生部10の第一例を示す構成図である。このパターン光発生部10-1は、可動部21、光源22及びマスク23を備えて構成され、筐体12に対して移動方向Dに移動するように支持されている。
【0037】
可動部21には凹部40が形成されており、凹部40の底面に光源22が固定設置され、凹部40の開口部にはマスク23が固定設置されている。可動部21は、筐体12に対して移動方向Dに移動可能である。このため、光源22及びマスク23も、筐体12に対して移動方向Dに移動可能である。移動方向Dは、光源22とハーフミラー11(後述する
図7に示す点B)との間の光軸(
図1に示した軸J)方向である。
【0038】
可動部21は、単純に移動方向Dに摺動する構造であってもよいし、例えばヘリコイド等を用いて、回転運動を移動方向Dの直線運動に変換する構造であっても構わない。可動部21は、後述の初期調整の際にユーザにより操作され、その位置が調整される。
【0039】
可動部21が移動方向Dに移動することで、可動部21に固定設置された光源22も移動方向Dに移動することとなり、光源22からハーフミラー11を介して任意物体104までの距離を変化させることができる(
図1を参照)。つまり、光源22からハーフミラー11を介して任意物体104までの間の光軸β2(後述する
図7を参照)の光路長L2を変化させることができる。
【0040】
光源22は、可動部21の凹部40の底面に固定設置されている。光源22は、点光源であることが望ましいが、絞り板、拡散板、レンズ、反射鏡等によって当該光源22の面積を十分に小さく絞ったもの(例えば、直径2mm以下)であっても構わない。また、光源22の発する光の指向性は、後述するマスク23が固定設置された可動部21の凹部40における開口の箇所を光学的にカバーするものとする。
【0041】
マスク23は、光源22の発する光から所定の校正用パターン光を生成するための複数の透過部及び複数の遮光部を備えている。マスク23に備えた複数の透過部は、光源22からの光を透過し、複数の遮光部は、当該光を遮光する。
【0042】
これにより、パターン光発生部10-1のマスク23に備えた複数の透過部から透過した光源22の光は、一定のパターンの校正用パターン光として生成され、ハーフミラー11を介して任意物体104へ投射される。
【0043】
図3(a)は、点列のマスク23の例を説明する図である。このマスク23-1は、2次元の格子状に配置したピンホール列の透過部、及び遮光部を備えている。白い箇所が透過部であり、黒い箇所が遮光部である。光源22の発する光がピンホール列の透過部を透過することで、校正用パターン光が生成される。
【0044】
図3(b)は、チェッカーボードパターンのマスク23の例を説明する図である。このマスク23-2は、チェッカーボードパターンの透過部、及び遮光部を備えている。
図3(a)と同様に、白い箇所が透過部であり、黒い箇所が遮光部である。光源22の発する光がチェッカーボードパターンの透過部を透過することで、校正用パターン光が生成される。
【0045】
図4(a)は、レンズアレイを用いたマスク23の例を説明する図である。このマスク23-3は、複数の微小レンズ30からなるレンズアレイの透過部、及び遮光部を備えている。
図3(a)(b)と同様に、白い箇所の複数の微小レンズ30が透過部であり、黒い箇所が遮光部である。光源22の発する光がレンズアレイの透過部を透過することで、校正用パターン光が生成される。
【0046】
図4(b)は、
図4(a)のマスク23-3におけるマスク断面(A-A’面)の例を説明する図である。
図4(b)に示すマスク23-3の断面において、レンズアレイは直線状に配置されている。このマスク23-3は、全体として平面状に形成されており、複数の微小レンズ30が平面上に配置されている。
【0047】
図4(c)は、
図4(a)のマスク23-3におけるマスク断面(A-A’面)の他の例を説明する図である。
図4(c)に示すマスク23-3の断面において、レンズアレイは湾曲状に配置されている。このマスク23-3は、全体として湾曲状に形成されており、光源22を中心とする球面から一部の正方形の箇所を切り取った構造をしている。尚、マスク23-3は、円柱形状等の任意の曲線形状の面から一部の正方形の箇所を切り取った構造であってもよい。
【0048】
図4(b)(c)に示したマスク23-3のいずれにおいても、レンズアレイを構成する複数の微小レンズ30の光軸は、光源22の発光の中心を通過するものとする。また、各微小レンズ30の焦点距離は、当該微小レンズ30における光源22側の主点から光源22の発光の中心までの距離と一致するものとする。
【0049】
図4(b)に示したマスク23-3のように、複数の微小レンズ30を平面上に配置した場合には、当該マスク23-3の中心付近の微小レンズ30の焦点距離は、周囲の微小レンズ30の焦点距離よりも短くなる。
【0050】
また、
図4(c)に示したマスク23-3のように、複数の微小レンズ30を、光源22の発光の中心を中心とする球面上に配置した場合には、微小レンズ30の焦点距離は、前記球面の半径と一致することとなる。
【0051】
尚、各微小レンズ30の光軸が光源22の発光の中心を通過し、かつその焦点距離が当該微小レンズ30における光源22側の主点から光源22の発光の中心までの距離である限り、各微小レンズ30の立体的な配置は任意である。
【0052】
このように、
図3(a)に示したマスク23-1、
図3(b)に示したマスク23-2及び
図4(a)に示したマスク23-3を用いることにより、光源22の発する光から一定のパターンの校正用パターン光が生成されることとなる。そして、パターン光発生部10-1にて発生した校正用パターン光は、ハーフミラー11で反射し任意物体104へ投射される。
【0053】
尚、
図2に示したパターン光発生部10-1では、光源22及びマスク23が可動部21と共に移動する構成を示したが、マスク23をハーフミラー11に対して固定設置するようにしてもよい。例えば、マスク23は、可動部21の移動を妨げない筐体12の所定箇所に固定設置される。この場合、パターン光発生部10-1は、可動部21及び光源22を備えたパターン光発生部10、マスク23、ハーフミラー11、並びに筐体12を備えて構成され、光源22のみが可動部21の移動と共に移動することとなる。
【0054】
(パターン光発生部10の第二例)
次に、
図1に示したパターン光発生部10の第二例について説明する。
図5は、パターン光発生部10の第二例を示す構成図である。このパターン光発生部10-2は、可動部21、走査機構24及び光源25を備えて構成され、筐体12に対して移動方向Dに移動するように支持されている。
【0055】
可動部21には、
図2に示したパターン光発生部10-1と同様に凹部40が形成されている。凹部40の底面には走査機構24が設置されている。可動部21は、筐体12に対して移動方向Dに移動可能である。後述のとおり走査機構24には光源25が設置されているため、走査機構24及び光源25も、筐体12に対して移動方向Dに移動可能である。
【0056】
可動部21が移動方向Dに移動することで、光源25も移動方向Dに移動することとなり、光源25からハーフミラー11を介して任意物体104までの距離(光路長)を変化させることができる。
【0057】
走査機構24は、可動部21の凹部40の底面に設置された首振り機構である。走査機構24には、光源25が配置されている。走査機構24は、首振り機構により、光源25の発する光線を走査する。尚、走査機構24は、複数の軸において走査可能とすることで(例えば仰角及び方位角を変えることで)、面的な走査を実現するようにしてもよい。
【0058】
光源25は、十分に絞られ(例えば、発光部の直径を2mm以下とする。)かつ十分に並行化した(例えば、光線の広がりを5分角以下とした)光線(絞られたコリメート光γ1)を発生するものとする。光源25としては、例えばレーザー及びコリメートレンズの組み合わせを用いることができる。
【0059】
また、パターン光発生部10-2は、図示しない制御部を備えており、制御部は、走査機構24の走査、及び光源25の点滅(発光の有無)または発光量の程度を、所定の制御パターンに従って制御する。例えば制御部は、
図3(a)の点列のマスク23-1に対応する校正用パターン光が発生するように、走査機構24を走査して光源25を点滅させる。また、例えば制御部は、光源25を点灯させた状態で、格子状の線の校正用パターン光が発生するように、走査機構24を走査させる。また、例えば制御部は、光源25を点灯させた状態で、1または複数の円形状の校正用パターン光が発生するように、走査機構24を走査させる。
【0060】
このように、図示しない制御部による制御パターンに従って走査機構24が動作することで、光源25からのコリメート光γ1の方向、及び光源25の点灯または点滅等を制御することができ、一定のパターンの校正用パターン光が発生することとなる。そして、パターン光発生部10-2にて発生した校正用パターン光は、ハーフミラー11を介して任意物体104へ投射される。
【0061】
(パターン光発生部10の第三例)
次に、
図1に示したパターン光発生部10の第三例について説明する。
図6は、パターン光発生部10の第三例を示す構成図である。このパターン光発生部10-3は、可動部21、ガルバノミラー26及び光源27を備えて構成され、筐体12に対して移動方向Dに移動するように支持されている。
【0062】
可動部21には、
図2及び
図5に示したパターン光発生部10-1,10-2と同様に凹部40が形成されている。凹部40の底面にはガルバノミラー26が設置されている。可動部21は、筐体12に対して移動方向Dに移動可能である。
【0063】
可動部21が移動方向Dに移動することで、可動部21に固定されたガルバノミラー26も移動方向Dに移動することとなり、光源27からガルバノミラー26及びハーフミラー11を介して任意物体104までの距離(光路長)を変化させることができる。
【0064】
ガルバノミラー26は、可動部21の凹部40の底面に設置された可動反射鏡であり、光源27からの光線を反射させ、反射光γ2をハーフミラー11の方向(
図6では下方向)へ投射する。つまり、ガルバノミラー26は、光源27の発する光線の反射光γ2を走査する。
【0065】
光源27は、可動部21の凹部40の所定箇所に固定設置されており、
図5に示した光源25と同様に、十分に絞られかつ十分に並行化した光線(絞られたコリメート光γ1)を発生するものとする。
【0066】
また、パターン光発生部10-3は、図示しない制御部を備えており、制御部は、ガルバノミラー26の走査、及び光源27の点滅または発光量の程度を、所定の制御パターンに従って制御する。
【0067】
このように、制御部による制御パターンに従ってガルバノミラー26が動作することで、光源27の発するコリメート光γ1の反射光γ2の方向及び光源27の点灯または点滅等を制御することができ、一定のパターンの校正用パターン光が発生することとなる。そして、パターン光発生部10-3にて発生した校正用パターン光は、ハーフミラー11を介して任意物体104へ投射される。
【0068】
尚、パターン光発生部10-3は、ガルバノミラー26の代わりに、アクチュエータに装着したポリゴンミラーを備えるようにしてもよい。また、ガルバノミラー26は、2以上の可動反射鏡を組み合わせて面的に走査するようにしてもよい。
【0069】
また、パターン光発生部10-3は、さらに、光源27が発するコリメート光γ1を走査する走査機構(
図5に示した走査機構24と同等のもの)を備えるようにしてもよい。この場合の光源27は、可動部21の凹部40の所定箇所に設置されておらず、当該走査機構に設置され、当該走査機構は、可動部21の凹部40の所定箇所に設置される。これにより、当該走査機構とガルバノミラー26の可動反射鏡による走査機構とを組み合わせることで、面的な走査を実現することができる。
【0070】
〔パターン光発生部10-1を用いた場合の光源22とハーフミラー11との間の距離及び結像のサイズ〕
次に、
図8~
図10を用いて、パターン光発生部10-1を用いた場合の光源22とハーフミラー11との間の距離、及び焦点面111に結像した結像パターンのサイズについて説明する。尚、パターン光発生部10-2,10-3を用いた場合についても同様である。
【0071】
図1を参照して、校正用パターン光投射装置1により発生した校正用パターン光は、その一部がハーフミラー11で反射して任意物体104へ投射される。そして、任意物体104へ投射された校正用パターン光は、任意物体104の表面で反射する(以下、拡散反射成分のみを考慮する)。
【0072】
任意物体104の表面に投射された校正用パターン光のパターン部分(例えば
図3(a)に示した点列のマスク23-1が用いられた場合、点列のいずれかの輝点により任意物体104に投射された点)で反射した反射光は、拡散してハーフミラー11を透過する。そして、ハーフミラー11を透過した任意物体104からの反射光は、計測対象レンズ110を介して焦点面111に(場合によっては焦点ずれを伴って)結像する。
【0073】
図7は、
図1に示した校正用パターン光投射装置1を用いた場合の光路長を説明する図である。
図7に示すように、計測対象レンズ110の第一主点Mから任意物体104までの間の光軸β1の距離(光路長)をL1、光源22からハーフミラー11を介して任意物体104までの間の光軸β2の距離(光路長)をL2とする。また、任意物体104からの反射光が透過するハーフミラー11における光軸β1の位置(透過点)であって、かつ、光源22の発する光が反射するハーフミラー11における光軸β2の位置(反射点)を点Bとする。
【0074】
また、計測対象レンズ110の第一主点Mからハーフミラー11の点Bまでの間の光軸の距離(光路長)をL11とし、光源22からハーフミラー11の点Bまでの間の光軸の距離(光路長)をL22とする。
【0075】
焦点面111に結像した結像パターンのサイズは、光路長L1,L2の関係(光路長L11,L22)に応じて変化する。例えば後述する初期調整により光路長L1と光路長L2が一致する場合(光路長L11と光路長L22が一致する場合)、すなわち光源22とハーフミラー11との間の距離が適切な場合を想定する。この場合、後述する
図8に示すように、結像パターンのサイズは、カメラ102と任意物体104との間の距離に関わることなく不変となる。以下、
図8~
図10を用いて詳細に説明する。
【0076】
図8は、光源22とハーフミラー11との間の距離が適切な場合において、(a)は任意物体104がカメラ102に対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。尚、
図8並びに後述する
図9及び
図10は、
図3(a)に示した点列のマスク23-1を使用した場合の結像の例を示している。
【0077】
図8(a)及び(b)は、後述する初期調整により、光源22とハーフミラー11との間の距離が適切に調整された場合、すなわちパターン光発生部10の可動部21が適切に調整された場合を示している。
【0078】
前述のとおり、適切に調整された場合とは、
図7において、光路長L1と光路長L2とが一致している場合(ハーフミラー11を基準にして、計測対象レンズ110の第一主点Mの虚像が光源22の位置と一致する場合)をいう。つまり、L1=L2(L11=L22)の場合である。
【0079】
この場合の焦点面111における結像パターンの大きさ及び歪曲は、
図8(a)及び(b)に示すように、カメラ102と任意物体104との間の距離の遠近によらず、不変となる。尚、結像パターンのぼやけ具合は変化することがある。また、結像パターンの配置が幾何学的に歪む場合もあるが、歪み具合は距離の遠近によらず不変である。
【0080】
図9は、光源22がハーフミラー11に対して遠い場合において、(a)は任意物体104がカメラ102に対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。
【0081】
図9(a)及び(b)は、光源22が適切な位置よりもハーフミラー11に対して遠い場合、すなわち、
図7においてL1<L2(L11<L22)の場合を示している。
【0082】
焦点面111における結像パターンのサイズは、
図9(a)及び(b)に示すように、任意物体104がカメラ102に対して遠いほど、小さくなる。
【0083】
図10は、光源22がハーフミラー11に対して近い場合において、(a)は任意物体104がカメラ102に対して近いときの結像の例を説明する図であり、(b)は遠いときの結像の例を説明する図である。
【0084】
図10(a)及び(b)は、光源22が適切な位置よりもハーフミラー11に対して近い場合、すなわち、
図7においてL1>L2(L11>L22)の場合を示している。
【0085】
焦点面111における結像パターンのサイズは、
図10(a)及び(b)に示すように、任意物体104がカメラ102に対して遠いほど、大きくなる。
【0086】
〔計測対象レンズ110の歪曲収差の測定手順/初期調整〕
次に、校正用パターン光投射装置1を用いた計測対象レンズ110の歪曲収差の測定手順について説明する。
【0087】
図8~
図10に示した性質から、光源22とハーフミラー11との間の距離が適切な場合の
図8の性質が得られるように、実際の測定の前に初期調整が行われる。ユーザは、初期調整としてまず、カメラ102から任意物体104までの間の光路長L1を変えながら、任意物体104の撮影を行う。そして、ユーザは、結像パターンの大きさが撮影距離によって変化しなくなるように、可動部21を移動方向Dに移動させることで、可動部21の位置を調整する。
【0088】
これにより、計測対象レンズ110の第一主点Mからハーフミラー11を介して任意物体104までの間の光路長L1と、光源22からハーフミラー11を介して任意物体104までの間の光路長L2とが一致する(L1=L2(L11=L22))。つまり、
図8(a)及び(b)に示したように、結像パターンの大きさ及び歪曲は、カメラ102と任意物体104との間の光路長L1の遠近によらず、不変となり、任意物体104までの撮影距離に依存しない校正用パターン光の投射を確立することができる。
【0089】
このような初期調整の後に、校正用パターン光投射装置1から何らかの任意物体104に対して校正用パターン光が投射され、焦点面111に形成された結像のデータが、歪曲収差測定装置103へ入力される。そして、歪曲収差測定装置103により、結像のデータに基づいて計測対象レンズ110の歪曲収差が測定される。
【0090】
〔焦点面111に形成される結像〕
次に、焦点面111に形成される結像について説明する。焦点面111に形成される結像は、計測対象レンズ110の歪曲収差をそのまま反映した像となる。加えて、結像は、焦点ずれに起因するぼやけを生じることもあるが、歪曲の度合い及び結像パターンの大きさに影響はない。この結像パターンの大きさ及び形状は、カメラ102と任意物体104との間の撮影距離に依存しないことから、任意物体104の形状は如何なるものであってもよいし、撮影距離は如何なる距離にあってもよい。また、任意物体104は剛体である必要もない。
【0091】
図11は、
図3(a)に示した点列のマスク23-1を使用した場合において、(a)は歪曲収差がない場合の結像の例を説明する図であり、(b)は歪曲収差がある場合の結像の例を説明する図である。
【0092】
図11(a)に示す歪曲収差がない場合、点列を構成するそれぞれの点の重心の配列は、マスク23-1のピンホール列の配列と所定の比率において相似となる。
図11(b)に示す歪曲収差がある場合の歪曲は、樽型歪みである。
【0093】
尚、結像におけるぼやけの度合いは、結像の場所毎に異なる。
図11(a)及び(b)、並びに後述する
図12(a)及び(b)では、結像の上部ほど、ぼやけの程度が高い。
【0094】
図13は、任意物体104の表面の凹凸による結像のぼやけについて説明する図である。
図13において、任意物体104の表面における場所C1からの反射光m1,m2等は、焦点面111の場所R2に結像し、場所C2からの反射光n1,n2等は、焦点面111の場所R1に結像するものとする。また、カメラ102から任意物体104の場所C1までの間の距離が、任意物体104の場所C2までの間の距離よりも短いものとする。
【0095】
この場合、焦点面111の場所R2では、ぼやけが伴わない結像が形成されるが、焦点面111の場所R1では、ぼやけが伴う結像が形成されることとなる。
【0096】
このように、任意物体104の反射面に凹凸があり、カメラ102からの距離が反射面の場所によって異なる場合には、結像におけるぼやけの度合いは、
図11(a)及び(b)に示したとおり、場所毎に異なることとなる。しかし、任意物体104の反射面の凹凸に伴い、カメラ102からの距離が反射面の場所によって異なる場合であっても、焦点面111に形成される結像の点列における重心の配列は、歪曲収差の有無を問わず変化することがない。
【0097】
校正用パターン光投射装置1は、
図11(a)または(b)のような結像のデータを入力し、結像のデータに基づいて、点列を構成するそれぞれの点の重心位置を求め、各重心位置に基づいて計測対象レンズ110の歪曲収差を測定する。
【0098】
図12は、
図3(b)に示したチェッカーボードパターンのマスク23-2を使用した場合において、(a)は歪曲収差がない場合の結像パターンの例を説明する図であり、(b)は歪曲収差がある場合の結像パターンの例を説明する図である。
【0099】
図12(a)に示す歪曲収差がない場合、ぼやけの度合いは場所毎に異なるが、チェッカーボードパターンを構成するそれぞれの要素の重心の配列は、マスク23-2のチェッカーボードパターン配列と所定の比率において相似となる。
図12(b)に示す歪曲収差がある場合の歪曲は、樽型歪みである。
【0100】
校正用パターン光投射装置1は、
図12(a)または(b)のような結像のデータを入力する。そして、校正用パターン光投射装置1は、結像のデータに基づいて、チェッカーボードパターンを構成するそれぞれの要素の重心位置を求め、各重心位置に基づいて計測対象レンズ110の歪曲収差を測定する。
【0101】
以上のように、本発明の実施形態による校正用パターン光投射装置1によれば、パターン光発生部10は、ハーフミラー11との間の距離を調整するための可動部21を備えており、校正用パターン光を発生し、校正用パターン光をハーフミラー11へ投射する。ハーフミラー11は、計測対象レンズ110に対し斜交して配置され、パターン光発生部10から投射された校正用パターン光を反射させ、任意物体104へ投射する。
【0102】
ユーザは、歪曲収差測定装置103により計測対象レンズ110の歪曲誤差が測定される前に、初期調整を行うことで、パターン光発生部10に備えた可動部21を適切な位置に移動させる。
【0103】
ユーザは、初期調整において、カメラ102から任意物体104までの間の距離を変えながら、任意物体104の撮影を行う。そして、ユーザは、結像パターンの大きさが撮影距離によって変化しなくなるように、可動部21を移動方向Dに移動させることで、可動部21の位置を調整する。
【0104】
これにより、
図7を参照して、計測対象レンズ110の第一主点Mから任意物体104までの間の光路長L1と、光源22からハーフミラー11を介して任意物体104までの間の光路長L2とを一致させることができる。この場合、計測対象レンズ110の第一主点Mからハーフミラー11の点Bとの間の光路長L11と、光源22からハーフミラー11の点Bとの間の光路長L22とが一致することとなる。
【0105】
これらの距離が一致した状態で校正用パターン光が任意物体104へ投射されると、任意物体104の表面で反射した反射光が、ハーフミラー11を透過し、計測対象レンズ110を介して焦点面111に結像する。この結像パターンの大きさ及び歪曲は、カメラ102から任意物体104までの間の距離、任意物体104の表面の凹凸の程度、及び計測対象レンズ110の画角によらず不変となる。
【0106】
その結果、計測対象レンズ110固有の歪曲収差の測定を、任意の形状の任意物体104を校正用パターン光の投射対象として実施することができる。すなわち、任意物体104の表面の凹凸の有無にかかわらず、また任意物体104が剛体であるか否かにかかわらず、投射対象とすることができる。例えば、任意物体104は、スタジオの壁、カーテン、動物、生物等のように、光を拡散的に反射できる物体であればよい。
【0107】
したがって、校正用パターン光投射装置1を用いることにより、計測対象レンズ110の歪曲収差を測定する際の手間を減らすと共に、歪曲収差を高精度に測定することができる。
【0108】
また、従来技術として、カメラ102から計測対象レンズ110を取り外し、計測対象レンズ110単体に対してレーザー光等を用いて歪曲収差を測定する手法がある。本発明の実施形態では、計測対象レンズ110をカメラ102に装着した状態で歪曲収差を測定することができるため、前述の従来技術に比べ、計測対象レンズ110の装着時のガタまたはたわみに起因する歪曲収差も測定することができる。
【0109】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0110】
例えば前記実施形態では、校正用パターン光投射装置1のパターン光発生部10は、移動方向Dに移動可能な可動部21を備えるようにしたが、可動部21の代わりに、移動しない(筐体12に対して固定設置される)固定部を備えるようにしてもよい。
【0111】
この固定部は、
図7に示した光路長L1と光路長L2とが一致するように(光路長L11と光路長L22とが一致するように)、筐体12に固定されているものとする。この場合、ユーザによる初期調整は不要となる。
【0112】
また、前記実施形態では、校正用パターン光投射装置1のパターン光発生部10の可動部21は、光源22の光軸の方向である移動方向Dに移動する構造とし、光源22をハーフミラー11に対して遠近するように移動させるようにした。
【0113】
これにより、計測対象レンズ110の第一主点Mからハーフミラー11の点Bまでの間の光路長L11を固定した状態で、光源22からハーフミラー11の点Bまでの間の光路長L22を変えることができ、両距離を一致させることができる。
【0114】
これに対し、校正用パターン光投射装置1は、ハーフミラー11に対する光源22及びマスク23の位置を固定した状態で、当該校正用パターン光投射装置1全体をカメラ102に対して移動させる装置可動部を備えるようにしてもよい。校正用パターン光投射装置1全体の移動方向は、
図7に示した光軸β1の方向である。この場合、校正用パターン光投射装置1のパターン光発生部10は、可動部21の代わりに、前述の固定部を備える。
【0115】
これにより、計測対象レンズ110の第一主点Mからハーフミラー11の点Bまでの間の光路長L11を変えることができ、光源22からハーフミラー11の点Bまでの間の光路長L22を固定した状態で、両距離を一致させることができる。
【0116】
また、校正用パターン光投射装置1は、光源22を移動させる可動部21を備えると共に、当該校正用パターン光投射装置1全体を移動させる前述の装置可動部を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 校正用パターン光投射装置
10,10-1,10-2,10-3 パターン光発生部
11 ハーフミラー
12,112 筐体
21 可動部
22,25,27 光源
23,23-1,23-2,23-3 マスク
24 走査機構
26 ガルバノミラー
30 微小レンズ
40 凹部
101 校正用パターン
102 カメラ
103 歪曲収差測定装置
104 任意物体
110 計測対象レンズ
111 焦点面
α 画角
β,β1,β2 光軸
γ1 コリメート光
γ2,m1,m2,n1,n2 反射光
J 軸
M 第一主点
B 点
D 移動方向
L1,L2,L11,L22 光路長
C1,C2,R1,R2 場所