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特許7618645潤滑油組成物、過給機搭載ディーゼルエンジン、及び潤滑油組成物の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、過給機搭載ディーゼルエンジン、及び潤滑油組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/08 20060101AFI20250114BHJP
   C10M 143/00 20060101ALN20250114BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20250114BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20250114BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20250114BHJP
   C10M 161/00 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
C10M141/08
C10M143/00
C10N40:25
C10N30:04
C10N10:04
C10M133/56
C10M135/10
C10M129/26
C10M133/12
C10M129/10
C10M161/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022508319
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010097
(87)【国際公開番号】W WO2021187370
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2020045632
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】蓬田 知行
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-100707(JP,A)
【文献】特開2009-102486(JP,A)
【文献】国際公開第2008/120599(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/117776(WO,A1)
【文献】特開2008-144018(JP,A)
【文献】特開2006-176672(JP,A)
【文献】特開2003-041283(JP,A)
【文献】特開2019-178296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)、非ホウ素変性コハク酸イミド(B)、ホウ素変性コハク酸イミド(C)、金属系清浄剤(D)、及び酸化防止剤(E)を含有し、
成分(C)に由来するホウ素原子と、成分(B)及び成分(C)に由来する窒素原子との含有量比[B/N]が、質量比で、0.30以下であり、
下記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たす、過給機搭載ディーゼルエンジンに用いられる、潤滑油組成物。
・要件(I):成分(D)が、塩基価100mgKOH/g未満の金属系清浄剤(D1)を含む。
・要件(II):成分(E)が、アミン系酸化防止剤(E1)を含み、成分(E1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.00質量%以下である。
【請求項2】
成分(B)が、下記一般式(b-1)で表されるコハク酸モノイミド(B1)、及び下記一般式(b-2)で表されるコハク酸ビスイミド(B2)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【化1】
〔上記一般式(b-1)及び(b-2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立して、質量平均分子量(Mw)が500~3000のアルケニル基である。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立して、炭素数2~5のアルキレン基である。
及びRC1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は-(AO)-Hで表される基(ただし、Aは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である)である。
x1は、1~10の整数であり、x2は、0~10の整数である。〕
【請求項3】
要件(I)及び(II)を共に満たす、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
要件(I)で規定する成分(D1)の金属原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~0.080質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
酸化防止剤(E)が、フェノール系酸化防止剤(E2)を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
成分(E1)と成分(E2)との含有量比〔(E1)/(E2)〕が、質量比で、0.01~0.60である、請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
さらに粘度指数向上剤(F)を含有し、
成分(F)が、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)の少なくとも一方を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
成分(F)が、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)を共に含み、
成分(F1)に対する成分(F2)の含有量比〔(F2)/(F1)〕が、質量比で、0.90以下である、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
成分(F2)が、星形ポリマー(F21)を含む、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
さらに耐摩耗剤(G)を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物のSAE粘度グレードが、0W-30又は5W-30である、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、過給機搭載ディーゼルエンジン。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物を適用した過給機搭載ディーゼルエンジン、並びに当該潤滑油組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機搭載ディーゼルエンジンが備える過給機は、高温になるため、ミスト化したエンジン油を吸い込み易い構造を有する。そのため、過給機周辺に浮遊するミストは、デポジットとして、過給機周辺に形成され易い。エンジンの排気量が大きくなるほど、過給機はより高温となり、ミスト化したエンジン油の取り込み量も多くなることから、デポジットの形成は増加する傾向にある。形成されたデポジットは、ターボタージャーの効率を低下させる等の弊害の要因となる。
【0003】
このような問題に対応すべく、デポジットの形成を抑制する方法について、様々な検討がされている。
例えば、特許文献1には、デポジットの形成を抑制する性能を向上させた潤滑油組成物の提供を目的として、沸点500~550℃を有する留分を14質量%以上、及び、沸点が550℃を超える留分を5質量%以上含有する潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-196595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下、例えば、過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に好適に適用し得るような新たな潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基油に、非ホウ素変性コハク酸イミドとホウ素変性コハク酸イミドとを所定の割合で含有し、さらに、金属系清浄剤として、所定値以下の塩基価を有する金属系清浄剤を含むか、もしくは、アミン系酸化防止剤を所定値以下の含有量で含有する潤滑油組成物を提供する。
【0007】
具体的な本発明の態様としては、下記[1]~[14]のとおりである。
[1]基油(A)、非ホウ素変性コハク酸イミド(B)、ホウ素変性コハク酸イミド(C)、金属系清浄剤(D)、及び酸化防止剤(E)を含有し、
成分(C)に由来するホウ素原子と、成分(B)及び成分(C)に由来する窒素原子との含有量比[B/N]が、質量比で、0.30以下であり、
下記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たす、潤滑油組成物。
・要件(I):成分(D)が、塩基価100mgKOH/g未満の金属系清浄剤(D1)を含む。
・要件(II):成分(E)が、アミン系酸化防止剤(E1)を含み、成分(E1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.00質量%以下である。
[2]成分(B)が、下記一般式(b-1)で表されるコハク酸モノイミド(B1)、及び下記一般式(b-2)で表されるコハク酸ビスイミド(B2)から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
【化1】
〔上記一般式(b-1)及び(b-2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立して、質量平均分子量(Mw)が500~3000のアルケニル基である。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立して、炭素数2~5のアルキレン基である。
及びRC1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は-(AO)-Hで表される基(ただし、Aは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である)である。
x1は、1~10の整数であり、x2は、0~10の整数である。〕
[3]要件(I)及び(II)を共に満たす、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4]要件(I)で規定する成分(D1)の金属原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~0.080質量%である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[5]酸化防止剤(E)が、フェノール系酸化防止剤(E2)を含有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[6]成分(E1)と成分(E2)との含有量比〔(E1)/(E2)〕が、質量比で、0.01~0.60である、上記[5]に記載の潤滑油組成物。
[7]さらに粘度指数向上剤(F)を含有し、
成分(F)が、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)の少なくとも一方を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[8]成分(F)が、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)を共に含み、
成分(F1)に対する成分(F2)の含有量比〔(F2)/(F1)〕が、質量比で、0.90以下である、上記[7]に記載の潤滑油組成物。
[9]成分(F2)が、星形ポリマー(F21)を含む、上記[8]に記載の潤滑油組成物。
[10]さらに耐摩耗剤(G)を含有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[11]前記潤滑油組成物のSAE粘度グレードが、0W-30又は5W-30である、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[12]前記潤滑油組成物が、過給機搭載ディーゼルエンジンに用いられる、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[13]上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、過給機搭載ディーゼルエンジン。
[14]上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、デポジットの形成の抑制効果が高いため、過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に好適に適用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
本明細書において、金属原子(アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子等)、リン原子及びホウ素原子の含有量は、JPI-5S-38-2003に準拠して測定した値を意味し、窒素原子の含有量は、JIS K2609に準拠して測定した値を意味する。
【0010】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)、非ホウ素変性コハク酸イミド(B)、ホウ素変性コハク酸イミド(C)、金属系清浄剤(D)、及び酸化防止剤(E)を含有し、成分(C)に由来するホウ素原子と成分(B)及び(C)に由来する窒素原子との含有量比[B/N]が、質量比で、0.30以下となるように調製している。
その上で、本発明の潤滑油組成物は、下記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たす。
・要件(I):成分(D)が、塩基価100mgKOH/g未満の金属系清浄剤(D1)を含む。
・要件(II):成分(E)が、アミン系酸化防止剤(E1)を含み、成分(E1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.00質量%以下である。
【0011】
本発明の潤滑油組成物は、上記の要件を満たすように調製しているため、デポジットの形成の抑制効果(以下、「耐デポジット性」ともいう)が高く、特に、高温環境下で連続的な使用に際しても優れた耐デポジット性を効果的に発現させ得る。
つまり、本発明の潤滑油組成物において、成分(C)と共に含有すると共に、上記含有量比[B/N]を0.30以下となるように調製することで、成分(C)のホウ素に起因したデポジットの形成も効果的に抑制すると共に、成分(D)及び(E)を配合した際の各成分が有する性能をより効果的に発現させ得るように、分散性を向上させていると考えられる。そのように添加剤の分散性が向上させた溶液中で、要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たすように調整することで、成分(D1)及び成分(E1)が有する性能を効果的に発現させて、耐デポジット性を向上させた潤滑油組成物となり得ると考えられる。
なお、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記要件(I)及び(II)を共に満たすことが好ましい。
【0012】
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)に由来するホウ素原子と、成分(B)及び(C)に由来する窒素原子との含有量比[B/N]は、質量比で、0.30以下であるが、好ましくは0.28以下、より好ましくは0.26以下、更に好ましくは0.25以下、より更に好ましくは0.24以下、特に好ましくは0.22以下であり、また、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上、より更に好ましくは0.09以上、特に好ましくは0.11以上である。
つまり、当該含有量比[B/N]は、質量比で、好ましくは0.01~0.30、より好ましくは0.01~0.28、より好ましくは0.05~0.26、更に好ましくは0.07~0.25、より更に好ましくは0.09~0.24、特に好ましくは0.11~0.22である。
【0013】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(B)及び成分(C)に由来する窒素原子の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.040~0.300質量%、より好ましくは0.045~0.250質量%、更に好ましくは0.050~0.200質量%、より更に好ましくは0.055~0.170質量%、特に好ましくは0.060~0.150質量%である。
また、成分(B)及び成分(C)に由来する窒素原子の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、0.062質量%以上、0.065質量%以上、0.067質量%以上、又は0.070質量%以上としてもよく、また、0.140質量%以下、0.130質量%以下、0.120質量%以下、0.110質量%以下、又は0.100質量%以下としてもよい。
【0014】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、要件(I)で規定する成分(D1)の塩基価は、100mgKOH/g未満であるが、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは85mgKOH/g以下、更に好ましくは80mgKOH/g以下、より更に好ましくは75mgKOH/g以下、特に好ましくは70mgKOH/g以下であり、さらに、65mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、又は30mgKOH/g以下としてもよい。
また、要件(I)で規定する成分(D1)の塩基価は、0mgKOH/g以上であるが、5mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、15mgKOH/g以上、20mgKOH/g以上、25mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、35mgKOH/g以上、又は40mgKOH/g以上としてもよい。
なお、要件(I)で規定する成分(D1)及び後述の成分(D2)の塩基価は、JIS K2501「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される「過塩素酸法」による塩基価を意味する。
【0015】
そして、本発明の一態様において、要件(I)を満たす潤滑油組成物において、成分(D1)の金属原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~0.080質量%、より好ましくは0.005~0.060質量%、更に好ましくは0.007~0.050質量%、より更に好ましくは0.010~0.040質量%、特に好ましくは0.012~0.035質量%である。
なお、成分(D1)の金属原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、0.015質量%以上、0.017質量%以上、又は0.020質量%以上としてもよく、また、0.032質量%以下、0.030質量%以下、又は0.027質量%以下としてもよい。
【0016】
本発明の一態様において、要件(II)を満たす潤滑油組成物において、成分(E1)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、1.00質量%以下であるが、好ましくは0.90質量%以下、より好ましくは0.80質量%以下、更に好ましくは0.70質量%以下、より更に好ましくは0.65質量%以下、特に好ましくは0.60質量%以下であり、さらに、0.55質量%以下、又は0.50質量%以下としてもよく、また、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上であり、さらに、0.25以上、又は0.30質量%以上としてもよい。
つまり、要件(II)を満たす潤滑油組成物において、成分(E1)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.00質量%、より好ましくは0.01~0.90質量%、より好ましくは0.05~0.80質量%以下、更に好ましくは0.10~0.70質量%、より更に好ましくは0.15~0.65質量%、特に好ましくは0.20~0.60質量%である。
【0017】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤(F)及び耐摩耗剤(G)の少なくとも一方をさらに含有することが好ましく、粘度指数向上剤(F)及び耐摩耗剤(G)を共に含有することがより好ましい。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(G)以外の他の潤滑油用添加剤をさらに含有してもよい。
【0018】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)~(E)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは55質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0019】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)~(G)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0020】
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0021】
<成分(A):基油>
本発明の一態様で用いる成分(A)である基油としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0022】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる成分(A)としては、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油、並びに合成油から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の一態様で用いる成分(A)の100℃における動粘度としては、好ましくは2.0~20.0mm/s、より好ましくは2.0~15.0mm/s、更に好ましくは3.0~12.0mm/s、より更に好ましくは3.2~9.0mm/s、特に好ましくは3.5~7.0mm/sである。
【0025】
また、本発明の一態様で用いる成分(A)の粘度指数としては、潤滑油組成物の用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上、より更に好ましくは100以上、特に好ましくは110以上である。
なお、本発明の一態様において、成分(A)として、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは30~98質量%、より好ましくは40~95質量%、更に好ましくは50~93質量%、より更に好ましくは60~90質量%、特に好ましくは65~87質量%である。
【0027】
<成分(B):非ホウ素変性コハク酸イミド>
本発明の潤滑油組成物は、非ホウ素変性コハク酸イミド(B)を含有する。
成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる成分(B)としては、下記一般式(b-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド(B1)、及び下記一般式(b-2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミド(B2)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
上記一般式(b-1)及び(b-2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立して、重量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは1000~3000)のアルケニル基である。当該アルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立して、炭素数2~5のアルキレン基である。
及びRC1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は-(AO)-Hで表される基(ただし、Aは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である)である。
x1は、1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
x2は、0~10の整数であり、好ましくは1~5の整数、より好ましくは2~4の整数である。
【0030】
本発明の一態様で用いる成分(B)は、上記一般式(b-1)及び(b-2)中のR及びRC1が、水素原子ではなく、炭素数1~10のアルキル基又は-(AO)-Hで表される基である化合物であることが好ましい。このような化合物を成分(B)として用いることで、耐熱性及び清浄性をより向上することができ、その結果、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とすることができる。
なお、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(B)は、前記一般式(b-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド(B1)を少なくとも含むことが好ましい。
【0031】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(B)の窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.005~0.120質量%、より好ましくは0.007~0.100質量%、更に好ましくは0.010~0.080質量%、より更に好ましくは0.015~0.070質量%、特に好ましくは0.020~0.065質量%である。
【0032】
<成分(C):ホウ素変性コハク酸イミド>
本発明の潤滑油組成物は、成分(B)と共に、ホウ素変性コハク酸イミド(C)を含有する。
なお、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(C)は、成分(B)と共に含有して、成分(C)に由来するホウ素原子と、成分(B)及び(C)に由来する窒素原子との含有量比[B/N]を0.30以下に調整するために用いられる。そして、当該含有量比[B/N]を0.30以下に調整して、耐デポジット性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
【0033】
本発明の一態様で用いる成分(C)としては、ホウ素変性コハク酸モノイミドであってもよく、ホウ素変性コハク酸ビスイミドであってもよい。
具体的には、前記一般式(b-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素変性物及び前記一般式(b-2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物が挙げられる。
【0034】
本発明の一態様で用いる成分(C)を構成するホウ素原子と窒素原子の比率〔B/N〕としては、質量比で、好ましくは0.10~0.90、より好ましくは0.15~0.80、更に好ましくは0.20~0.70、より更に好ましくは0.25~0.60、特に好ましくは0.30~0.50である。
【0035】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~0.070質量%、より好ましくは0.003~0.060質量%、更に好ましくは0.006~0.050質量%、より更に好ましくは0.008~0.040質量%、特に好ましくは0.010~0.035質量%である。
成分(C)に由来するホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、0.011質量%以上、0.012質量%以上、又は0.013質量%以上としてもよく、また、0.032質量%以下、0.030質量%以下、0.027質量%以下、0.025質量%以下、0.023質量%以下、又は0.020質量%以下としてもよい。
【0036】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(C)の窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.015~0.180質量%、より好ましくは0.020~0.150質量%、更に好ましくは0.025~0.120質量%、より更に好ましくは0.030~0.100質量%、特に好ましくは0.032~0.085質量%である。
【0037】
<他の無灰系分散剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)及び(C)以外の他の無灰系分散剤を含有してもよい。
このような他の無灰系分散剤としては、例えば、コハク酸モノイミド、コハク酸ビスイミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、及びこれらのホウ素変性物等が挙げられる。
【0038】
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)及び(C)以外の他の無灰系分散剤の含有量は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B)及び(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~30質量部、更に好ましくは0~10質量部、より更に好ましくは0~5質量部、特に好ましくは0~1質量部である。
【0039】
<成分(D):金属系清浄剤>
本発明の潤滑油組成物は、金属系清浄剤(D)を含有する。成分(D)を含有することで、清浄分散性が向上し、耐デポジット性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の一態様で用いる成分(D)としては、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上であることが好ましい。
なお、前記金属原子としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。つまり、成分(D)は、カルシウム系清浄剤であることが好ましい。
【0041】
また、前記金属スルホネートとしては、下記一般式(d-1)で表される化合物が好ましく、前記金属サリシレートとしては、下記一般式(d-2)で表される化合物が好ましく、前記金属フェネートとしては、下記一般式(d-3)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化3】
【0043】
上記一般式(d-1)及び(d-2)中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子であり、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
上記一般式(d-3)中、M’は、アルカリ土類金属であり、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。yは、0以上の整数であり、好ましくは0~3の整数である。
上記一般式(d-1)~(d-3)中、pはMの価数であり、1又は2である。Rは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルケニル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0044】
上記要件(I)を満たす場合、成分(D)は、塩基価100mgKOH/g未満の金属系清浄剤(D1)を含む。成分(D1)としては、金属スルホネート及び金属サリシレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、カルシウムスルホネート又はカルシウムスルホネートを少なくとも含むことがより好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D1)中の金属スルホネート(好ましくはカルシウムスルホネート)及び金属サリシレート(好ましくはカルシウムサリシレート)の合計含有割合としては、当該潤滑油組成物に含まれる成分(D1)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
【0045】
上記要件(I)を満たす場合、成分(D)は、成分(D1)と共に、塩基価100mgKOH/g以上の金属系清浄剤(D2)を含むことが好ましい。
上記要件(I)を満たす場合、成分(D1)と成分(D2)との含有量比〔(D1)/(D2)〕は、金属原子換算での質量比で、好ましくは1/99~50/50、より好ましくは1.5/98.5~40/60、更に好ましくは2/98~30/70、より更に好ましくは2.5/97.5~25/75、特に好ましくは3/97~20/80である。
【0046】
上記要件(I)を満たさない場合、成分(D)は、成分(D2)を含むものとなる。
本発明の一態様で用いる成分(D2)の塩基価は、100mgKOH/g以上であるが、好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは120mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは180mgKOH/g以上、特に好ましくは200mgKOH/g以上であり、また、好ましくは600mgKOH/g以下、より好ましくは550mgKOH/g以下、更に好ましくは500mgKOH/g以下、より更に好ましくは450mgKOH/g以下、特に好ましくは400mgKOH/g以下である。
つまり、成分(D2)の塩基価は、好ましくは100~600mgKOH/g、より好ましくは110~600mgKOH/g、より好ましくは120~550mgKOH/g、更に好ましくは150~500mgKOH/g、より更に好ましくは180~450mgKOH/g、特に好ましくは200~400mgKOH/gである。
【0047】
成分(D2)としては、金属サリシレートを含むことが好ましく、カルシウムサリシレートを含むことがより好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D2)中の金属サリシレート(好ましくはカルシウムサリシレート)の含有割合としては、当該潤滑油組成物に含まれる成分(D2)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
【0048】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D)の金属原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.010~0.600質量%、より好ましくは0.030~0.500質量%、更に好ましくは0.060~0.450質量%、より更に好ましくは0.100~0.400質量%、特に好ましくは0.130~0.300質量%である。
【0049】
<成分(E):酸化防止剤>
本発明の潤滑油組成物は、酸化防止剤(E)を含有する。成分(E)を含有することで、酸化安定性が向上し、耐デポジット性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
成分(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明の一態様で用いる成分(E)としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0051】
ここで、上記要件(II)を満たす場合、成分(E)は、アミン系酸化防止剤(E1)を含む。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有する置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0052】
上記要件(II)を満たす場合、成分(E)は、成分(E1)と共に、フェノール系酸化防止剤(E2)を含むことが好ましい。
また、上記要件(II)を満たさない場合においても、成分(E)は、フェノール系酸化防止剤を含むことが好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、C7~C9アルキル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;等を挙げられる。
【0053】
上記要件(II)を満たす場合、成分(E1)と成分(E2)との含有量比〔(E1)/(E2)〕は、質量比で、好ましくは0.01~0.60、より好ましくは0.03~0.50、更に好ましくは0.05~0.40、より更に好ましくは0.07~0.35、特に好ましくは0.10~0.30である。
【0054】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E2)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~7.0質量%、より好ましくは0.5~6.0質量%、更に好ましくは0.7~5.5質量%、より更に好ましくは1.0~5.0質量%、特に好ましくは1.5~4.0質量%である。
【0055】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(E)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~8.0質量%、より好ましくは0.5~7.2質量%、更に好ましくは0.8~6.7質量%、より更に好ましくは1.2~5.2質量%、特に好ましくは1.6~4.7質量%である。
【0056】
<成分(F):粘度指数向上剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに粘度指数向上剤(F)を含有することが好ましい。成分(F)を含有することで、省燃費性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
成分(F)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~8.0質量%、更に好ましくは0.7~6.0質量%、より更に好ましくは1.0~4.0質量%、特に好ましくは1.2~2.5質量%である。
【0058】
本発明の一態様で用いる成分(F)は、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、櫛形ポリマー(F1)及びオレフィン系共重合体(F2)を共に含むことが好ましい。
【0059】
本発明の一態様で用いる成分(F)において、成分(F1)に対する成分(F2)の含有量比〔(F2)/(F1)〕は、質量比で、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.70以下、より更に好ましくは0.60以下であり、また、せん断安定性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.12以上、より更に好ましくは0.15以上である。
つまり、以上の観点から、成分(F1)に対する成分(F2)の含有量比〔(F2)/(F1)〕は、質量比で、好ましくは0.05~0.90、より好ましくは0.10~0.80、更に好ましくは0.12~0.70、より更に好ましくは0.15~0.60である。
【0060】
<成分(F1):櫛形ポリマー>
本発明の一態様で用いる成分(F1)である櫛形ポリマーとしては、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有する重合体であればよい。
【0061】
本発明の一態様で用いる成分(F1)としては、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を少なくとも有する重合体が好ましい。この構成単位(X1)が、上述の「高分子量の側鎖」に該当する。
なお、本発明において、上記の「マクロモノマー(x1)」とは、重合性官能基を有する高分子量モノマーのことを意味し、末端に重合性官能基を有する高分子量モノマーであることが好ましい。
【0062】
本発明の一態様で用いる成分(F1)において、構成単位(X1)の含有量は、成分(F1)の構成単位の全量(100モル%)基準で、好ましくは0.5~20モル%、より好ましくは0.7~10モル%、更に好ましくは0.9~5モル%である。
なお、本明細書において、成分(F1)や成分(F2)における各構成単位の含有量は、13C-NMR定量スペクトルを解析して算出した値を意味する。
【0063】
マクロモノマー(x1)の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下である。
つまり、マクロモノマー(x1)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは300~100,000、より好ましくは400~50,000、更に好ましくは500~20,000である。
【0064】
マクロモノマー(x1)が有する重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基(CH=CH-COO-)、メタクリロイル基(CH=CCH-COO-)、エテニル基(CH=CH-)、ビニルエーテル基(CH=CH-O-)、アリル基(CH=CH-CH-)、アリルエーテル基(CH=CH-CH-O-)、CH=CH-CONH-で表される基、CH=CCH3-CONH-で表される基等が挙げられる。
【0065】
マクロモノマー(x1)は、上記重合性官能基以外に、例えば、以下の一般式(i)~(iii)で表される繰り返し単位を1種以上有していてもよい。
【化4】
【0066】
上記一般式(i)中、Rb1は、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
上記一般式(ii)中、Rb2は、炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
上記一般式(iii)中、Rb3は、水素原子又はメチル基である。Rb4は、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
なお、上記一般式(i)~(iii)で表される繰り返し単位をそれぞれ複数有する場合には、複数のRb1、Rb2、Rb3、及びRb4は、それぞれ同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0067】
本発明の一態様において、マクロモノマー(x1)は、前記一般式(i)で表される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましく、前記一般式(i)中のRb1が1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の少なくとも一方である繰り返し単位(X1-1)を有する重合体であることがより好ましい。
【0068】
繰り返し単位(X1-1)の含有量としては、マクロモノマー(x1)の構成単位の全量(100モル%)基準で、好ましくは1~100モル%、より好ましくは20~95モル%、更に好ましくは40~90モル%、より更に好ましくは50~80モル%である。
【0069】
なお、マクロモノマー(x1)が、前記一般式(i)~(iii)から選ばれる2種以上の繰り返し単位を有する共重合体である場合、共重合の形態としては、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0070】
本発明の一態様で用いる成分(F1)は、1種類のマクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)のみからなる単独重合体でもよく、2種類以上のマクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を有する共重合体であってもよい。
また、本発明の一態様で用いる成分(F1)は、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)と共に、マクロモノマー(x1)以外の他のモノマーに由来する構成単位(X2)を有する共重合体であってもよい。
このような櫛形ポリマーの具体的な構造としては、モノマー(x2)に由来する構成単位(X2)を含む主鎖に対して、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を含む側鎖を有する共重合体が好ましい。
【0071】
モノマー(x2)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、窒素原子含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体、リン原子含有単量体、脂肪族炭化水素系ビニル単量体、脂環式炭化水素系ビニル単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニル単量体、ハロゲン元素含有ビニル単量体、不飽和ポリカルボン酸のエステル、(ジ)アルキルフマレート、(ジ)アルキルマレエート、芳香族炭化水素系ビニル単量体等が挙げられる。
【0072】
なお、モノマー(x2)としては、リン原子含有単量体及び芳香族炭化水素系ビニル単量体以外の単量体が好ましく、下記一般式(a1)で表される単量体、アルキル(メタ)アクリレート、及び水酸基含有ビニル単量体から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、水酸基含有ビニル単量体(x2-d)を少なくとも含むことが更に好ましい。
【化5】
【0073】
上記一般式(a1)中、Rb11は、水素原子又はメチル基である。
b12は、単結合、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、-O-、又は-NH-である。
b13は、炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。また、nは1以上の整数(好ましくは1~20の整数、より好ましくは1~5の整数)を示す。なお、nが2以上の整数の場合、複数のRb13は、同一であってもよく、異なっていてもよく、さらに、(Rb13O)部分は、ランダム結合でもブロック結合でもよい。
b14は、炭素数1~60(好ましくは10~50、より好ましくは20~40)の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0074】
本発明の一態様で用いる成分(F1)の重量平均分子量(Mw)としては、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは20万以上、より好ましくは25万以上、更に好ましくは30万以上、より更に好ましくは35万以上、特に好ましくは45万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは75万以下、特に好ましくは70万以下である。
つまり、成分(F1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万~100万、より好ましくは25万~90万、更に好ましくは30万~80万、より更に好ましくは35万~75万、特に好ましくは45万~70万である。
【0075】
また、本発明の一態様で用いる成分(F1)の分子量分布(Mw/Mn)(但し、Mnは成分(F1)の数平均分子量を示す)は、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは8.00以下、より好ましくは7.00以下、更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは4.00以下、特に好ましくは3.00以下であり、また、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、更に好ましくは1.05以上、より更に好ましくは1.07以上、特に好ましくは1.10以上である。
つまり、成分(F1)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.01~8.00、より好ましくは1.02~7.00、更に好ましくは1.05~6.00、より更に好ましくは1.07~4.00、特に好ましくは1.10~3.00である。
【0076】
本発明の一態様で用いる成分(F1)のSSI(せん断安定性指数)としては、耐デポジット性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、特に好ましくは50以下である。
また、成分(F1)のSSIは、下限値の制限は特に無いが、通常0.1以上である。
【0077】
なお、本明細書において、SSI(せん断安定性指数)とは、重合体成分に由来するせん断による粘度低下をパーセンテージで示すものであり、JPI-5S-29-06に準拠して測定された値であって、より具体的には、下記計算式(1)より算出された値である。
計算式(1):SSI(%)=(Kv-Kv)/(Kv-Kvoil)×100
【0078】
上記式(1)中、Kvは、重合体成分を鉱油に希釈した試料油の100℃における動粘度の値であり、Kvは、重合体成分を鉱油に希釈した試料油を、JPI-5S-29-06の手順にしたがって、出力法に準拠し、超音波を30分間照射した後の100℃における動粘度の値である。また、Kvoilは、重合体成分を希釈する際に用いた鉱油の100℃における動粘度の値である。
【0079】
なお、成分(F1)のSSIの値は、櫛形ポリマーの構造によって変化するものである。具体的には、以下に示す傾向があり、これらの事項を考慮することで、成分(F1)のSSIの値は容易に調整できる。なお、以下の事項は、あくまで一例であって、これら以外の事項を考慮することによっても調整可能である。
・櫛形ポリマーの側鎖がマクロモノマー(x1)で構成され、当該マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)の含有量が、構成単位の全量(100モル%)基準で、0.5モル%以上である櫛形ポリマーは、SSIの値が低くなる傾向にある。
・櫛形ポリマーの側鎖を構成するマクロモノマー(x1)の分子量が大きくなるほど、SSIの値が低くなる傾向にある。
【0080】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F1)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.50~6.00質量%、より好ましくは0.85~5.00質量%、より好ましくは0.88~4.00質量%、更に好ましくは1.00~3.50質量%、より更に好ましくは1.20~3.00質量%、特に好ましくは1.45~2.50質量%である。
【0081】
<成分(F2):オレフィン系共重合体>
本発明の一態様で用いる成分(F2)としては、アルケニル基を有するモノマーに由来の構成単位を有する共重合体であって、例えば、炭素数2~20(好ましくは2~16、より好ましくは2~14)のα-オレフィンの共重合体が挙げられ、より具体的には、エチレン-α-オレフィン共重合体、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0082】
本発明の一態様で用いる成分(F2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは40万以上、より更に好ましくは50万以上、特に好ましくは55万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは75万以下、特に好ましくは70万以下である。
つまり、成分(F2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万~100万、より好ましくは30万~90万、更に好ましくは40万~80万、より更に好ましくは50万~75万、特に好ましくは55万~70万である。
【0083】
また、本発明の一態様で用いる成分(F2)の分子量分布(Mw/Mn)(但し、Mnは成分(F2)の数平均分子量を示す)は、好ましくは8.00以下、より好ましくは7.00以下、更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは3.00以下、特に好ましくは2.00以下であり、また、好ましくは1.001以上、より好ましくは1.005以上、更に好ましくは1.01以上、より更に好ましくは1.02以上、特に好ましくは1.03以上である。
つまり、成分(F2)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.001~8.00、より好ましくは1.005~7.00、更に好ましくは1.01~6.00、より更に好ましくは1.02~3.00、特に好ましくは1.03~2.00である。
【0084】
本発明の一態様で用いる成分(F2)のSSI(せん断安定性指数)としては、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。
また、成分(F2)のSSIは、下限値の制限は特に無いが、通常0.1以上である。
【0085】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F2)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.10~2.00質量%、より好ましくは0.15~1.70質量%、更に好ましくは0.17~1.50質量%、より更に好ましくは0.20~1.20質量%、特に好ましくは0.25~1.00質量%である。
【0086】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐デポジット性及びせん断安定性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(F2)が、星形ポリマー(F21)を含むことが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F2)中の成分(F21)の含有割合としては、当該潤滑油組成物に含まれる成分(F2)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0087】
本発明の一態様で用いる成分(F21)である星形ポリマーとしては、1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有する重合体であればよい。
また、成分(F21)を構成する鎖状高分子としては、例えば、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体やその水素化物等が挙げられる。
ビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、炭素数8~16のアルキル置換スチレン、炭素数8~16のアルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン、炭素数8~16のアルキル置換ビニルナフタレン等が挙げられる。
共役ジエンモノマーとしては、炭素数4~12の共役ジエンが挙げられ、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、4-メチルペンタ-1,3-ジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0088】
<成分(F1)及び(F2)以外の粘度指数向上剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(F1)及び(F2)以外の他の粘度指数向上剤を含有してもよい。
ただし、成分(F1)及び(F2)以外の他の粘度指数向上剤の含有量としては、潤滑油組成物に含まれる成分(F1)及び(F2)の全量100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~30質量部、更に好ましくは0~10質量部、より更に好ましくは0~1質量部である。
【0089】
<成分(G):耐摩耗剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに耐摩耗剤(G)を含有することが好ましい。
成分(G)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
本発明の一態様で用いる成分(G)としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
【0091】
これらの中でも、成分(G)としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含むことが好ましい。ジチオリン酸亜鉛としては、例えば、下記一般式(g-1)で表される化合物等が挙げられる。
【化6】
【0092】
上記式(g-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
~Rとして選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは3~12、より更に好ましくは3~10である。
【0093】
~Rとして選択し得る、具体的な当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、R~Rとして選択し得る、当該炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、第1級アルキル基又は第2級アルキル基がより好ましい。
【0094】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(G)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~3.0質量%、より好ましくは0.05~2.5質量%、更に好ましくは0.10~2.0質量%、より更に好ましくは0.20~1.8質量%である。
【0095】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(G)として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含む場合、ZnDTPの亜鉛原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.03~0.80質量%、更に好ましくは0.05~0.60質量%、より更に好ましくは0.08~0.50質量%、特に好ましくは0.10~0.40質量%である。
また、ZnDTPのリン原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.02~0.70質量%、更に好ましくは0.03~0.50質量%、より更に好ましくは0.05~0.40質量%、特に好ましくは0.07~0.30質量%である。
【0096】
<潤滑油用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更に成分(B)~(G)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
このような潤滑油用添加剤としては、例えば、流動点降下剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、防錆剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0098】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点から、成分(A)に、成分(B)~(E)、並びに必要に応じて、成分(F)~(G)及び他の潤滑油用添加剤を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。
なお、成分(F)等の樹脂成分は、成分(A)との相溶性の観点から、希釈油に溶解された溶液の形態とし、当該溶液を成分(A)に配合することが好ましい。
【0099】
〔潤滑油組成物の性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の40℃における動粘度としては、好ましくは10~130mm/s、より好ましくは20~115mm/s、更に好ましくは25~100mm/s、より更に好ましくは30~90mm/s、特に好ましくは35~80mm/sである。
【0100】
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度としては、好ましくは6.0~16.0mm/s、より好ましくは8.0~14.0mm/s、更に好ましくは8.5~13.5mm/s、より更に好ましくは9.0~13.0mm/s、特に好ましくは9.3~12.5mm/sである。
【0101】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数としては、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上、より更に好ましくは130以上である。
【0102】
本発明の一態様の潤滑油組成物のSAE粘度グレードは、0W-30又は5W-30であることが好ましい。これらのSAE粘度グレードにおいて、過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に適用した際に各種性能を十分に発現させることができる。
【0103】
本発明の一態様の潤滑油組成物の酸価としては、好ましくは0.30~4.00mgKOH/g、より好ましくは0.70~3.50mgKOH/g、更に好ましくは1.20~3.20mgKOH/g、より更に好ましくは1.50~3.00mgKOH/gである。
なお、本明細書において、潤滑油組成物の酸価は、JIS K2501:2003(電位差滴定法)に準拠して測定された値を意味する。
【0104】
本発明の一態様の潤滑油組成物の塩基価としては、好ましくは2.0~12.0mgKOH/g、より好ましくは4.0~11.0mgKOH/g、更に好ましくは5.0~10.0mgKOH/g、より更に好ましくは7.0~9.5mgKOH/gである。
なお、本明細書において、潤滑油組成物の塩基価は、JIS K2501:2003(過塩素酸法)に準拠して測定された値を意味する。
【0105】
本発明の一態様の潤滑油組成物のホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.001~0.070質量%、より好ましくは0.003~0.060質量%、更に好ましくは0.006~0.050質量%、より更に好ましくは0.008~0.040質量%、特に好ましくは0.010~0.035質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物のホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、0.011質量%以上、0.012質量%以上、又は0.013質量%以上としてもよく、また、0.032質量%以下、0.030質量%以下、0.027質量%以下、0.025質量%以下、0.023質量%以下、又は0.020質量%以下としてもよい。
【0106】
本発明の一態様の潤滑油組成物の窒素原子の含有量は、前記潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.025~0.400質量%、より好ましくは0.030~0.300質量%、更に好ましくは0.040~0.250質量%、より更に好ましくは0.050~0.200質量%、特に好ましくは0.060~0.170質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の窒素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、0.070質量%以上、0.080質量%以上、0.090質量%以上、又は0.100質量%以上としてもよく、また、0.160質量%以下、0.150質量%以下、0.140質量%以下、又は0.130質量%以下としてもよい。
【0107】
〔潤滑油組成物の用途〕
以上のとおり、本発明の一態様の潤滑油組成物は、デポジットの形成の抑制効果が高いため、過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に好適に適用し得る。
本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、JPI-5S-55-99に準拠してガラス管内の温度300℃でホットチューブ試験を行った際に生じる堆積物量は、好ましくは40.0mg以下、より好ましくは35mg以下、より好ましくは30mg以下、更に好ましくは20mg以下、更に好ましくは10mg以下、より更に好ましくは6.5mg以下、より更に好ましくは5.0mg以下、特に好ましくは4.0mg以下である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、Fed. Test Method Std. 791-3462に準拠し、パネル温度350℃、油温100℃の条件下で、スプラッシュ時間を3時間、停止時間はなしで、パネルコーキング試験を行った際に生じたコーキング量は、好ましくは400mg以下、より好ましくは385mg以下、より好ましくは345mg以下、更に好ましくは320mg以下、更に好ましくは300mg以下、より更に好ましくは250mg以下、より更に好ましくは200mg以下、特に好ましくは170mg以下である。
上記のホットチューブ試験を行った際に生じる堆積物量は、潤滑油組成物の経時的使用に伴い発生するデポジット量の指標となり、当該堆積物量の値が小さいほど、経時的使用によってもデポジットの形成の抑制効果が高い潤滑油組成物であるといえる。
また、上記のパネルコーキング試験を行った際に生じるコーキング量は、潤滑油組成物を高温環境下で発生するデポジット量の指標となり、当該堆積物量の値が小さいほど、高温環境下での使用によってもデポジットの形成の抑制効果が高い潤滑油組成物であるといえる。
なお、上記のホットチューブ試験及びパネルコーキング試験の詳細な測定方法及び測定条件は、後述の実施例の記載のとおりである。
【0108】
本発明の一態様の潤滑油組成物の上述の特性を考慮すると、本発明は、以下の[1]及び[2]も提供し得る。
[1]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を適用した、過給機搭載ディーゼルエンジン。
[2]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を過給機搭載ディーゼルエンジンの潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【実施例
【0109】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法又は評価法は、下記のとおりである。
【0110】
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)カルシウム原子、ホウ素原子、亜鉛原子、リン原子の含有量
JPI-5S-38-2003に準拠して測定した。
(3)窒素原子の含有量
JIS K2609に準拠して測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本、順次連結したもの。
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
また、測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔Mw/Mn〕を分子量分布として算出した。
(5)SSI(せん断安定性指数)
測定対象となる重合体に希釈油である鉱油を加えて試料油を調製し、当該試料油及び当該鉱油を用いて、JPI-5S-29-06に準拠して測定した。
具体的には、対象となる重合体について、前記計算式(1)中のKv、Kv、Kvoilの各値を測定して、当該計算式(1)より算出した。
(6)塩基価
JIS K2501:2003(過塩素酸法)に準拠して測定した。
(7)酸価
JIS K2501:2003(電位差滴定法)に準拠して測定した。
【0111】
実施例1~8、比較例1~3
表1及び2に示す種類及び配合量にて、基油に、各種添加剤を配合し、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。なお、表1及び2に記載された粘度指数向上剤の配合量は、希釈油で溶解された状態で配合したとしても、当該希釈油の質量を除いた有効成分換算(固形分換算)での配合量を記載している。
また、それぞれの潤滑油組成物の調製に使用した、基油及び各種添加剤の詳細は以下のとおりである。
【0112】
<基油>
・100N鉱油:API基油カテゴリーのグループ3に分類されるパラフィン系鉱油、40℃動粘度=18.4mm/s、100℃動粘度=4.1mm/s、粘度指数=125。
【0113】
<コハク酸イミド>
・非ホウ素変性コハク酸イミド(1):前記一般式(b-1)又は(b-2)で表される非ホウ素変性コハク酸イミド、窒素原子(N)含有量=1.0質量%。
・非ホウ素変性コハク酸イミド(2):前記一般式(b-2)中のRがMw500~3000のアルケニル基、Rが水素原子ある非ホウ素変性コハク酸ビスイミド、窒素原子(N)含有量=1.15質量%。
・ホウ素変性コハク酸イミド:前記一般式(b-1)又は(b-2)で表されるコハク酸イミドのホウ素変性物、ホウ素原子(B)含有量=0.49質量%、窒素原子(N)含有量=1.50質量%、B/N=0.33。
【0114】
<金属系清浄剤>
・中性Caスルホネート:塩基価(過塩素酸法)=17mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca原子含有量=2.4質量%。
・中性Caサリシレート:塩基価(過塩素酸法)=64mgKOH/gのカルシウムサリシレート、Ca原子含有量=2.3質量%。
・過塩基性Caサリシレート:塩基価(過塩素酸法)=225mgKOH/gのカルシウムサリシレート、Ca原子含有量=8.0質量%。
【0115】
<酸化防止剤>
・アミン系酸化防止剤:4,4’-ジノニルフェニルアミン、窒素原子含有量=4.6質量%。
・フェノール系酸化防止剤:C7~C9アルキル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0116】
<粘度指数向上剤>
・櫛形ポリマー:Mw=60万、Mw/Mn=2.4、SSI=49である櫛形ポリマー。
・星形ポリマー(OCP):Mw=58万、Mw/Mn=1.1、SSI=14である星形ポリマー。
【0117】
<耐摩耗剤>
・ZnDTP:第2級アルキルジチオリン酸亜鉛、P含有量=7.0質量%、Zn原子含有量=8.3質量%。
【0118】
<他の添加剤>
・添加剤混合物:摩擦調整剤及び金属不活性化剤と共に、流動点降下剤、及び消泡剤を含む添加剤の混合物。
【0119】
調製した潤滑油組成物について、上述の方法に準拠して、40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数、酸価、並びに塩基価を測定又は算出すると共に、以下の評価を行った。これらの結果を表1及び2に示す。
【0120】
(1)ホットチューブ試験
調製した潤滑油組成物に対して、JPI-5S-55-99に準拠したホットチューブ試験を行った。具体的には、予め質量を測定した内径2mmのガラス管に、ガラス管の温度を300℃に保ちながら、そのガラス管内に、調製した潤滑油組成物を流量0.3mL/時間で、空気を流量10mL/分で16時間流し続けた。そして、試験後のガラス管の質量を測定し、試験前のガラス管の質量との差を、ガラス管内に付着した堆積物量(単位:mg)として算出した。当該堆積物量が少ない潤滑油組成物ほど、デポジットの形成の抑制効果が高いといえる。
【0121】
(2)パネルコーキング試験
Fed. Test Method Std. 791-3462に準拠し、パネルコーキング試験機を用いて、パネル温度350℃、油温100℃の条件下で、スプラッシュ時間を3時間、停止時間はなしで、調製した潤滑油組成物を連続的にパネルへ散布した。試験終了後、パネルの重量を測定し、試験前のパネル重量との差から、パネルに付着したコーキング量を測定した。当該コーキング量が少ない潤滑油組成物ほど、デポジットの形成の抑制効果が高いといえる。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1及び2より、実施例1~8で調製した潤滑油組成物は、比較例1~3の潤滑油組成物に比べて、ホットチューブ試験による堆積物量及びパネルコーキング試験によるコーキング量が少なく、デポジットの形成の抑制効果が高いことが分かる。一方で、比較例1~3で調製した潤滑油組成物は、ホットチューブ試験による堆積物量及びパネルコーキング試験によるコーキング量の少なくとも一方が多く、デポジットの形成の抑制効果に改善の余地がある結果となった。