(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】化学機械研磨のための蒸気発生の制御
(51)【国際特許分類】
B24B 37/015 20120101AFI20250114BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250114BHJP
B24B 55/00 20060101ALI20250114BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
B24B37/015
H01L21/304 622R
B24B55/00
B24B49/14
(21)【出願番号】P 2022544714
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 US2021039442
(87)【国際公開番号】W WO2022006008
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サウンダララジャン, ハリ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ショウ-サン
(72)【発明者】
【氏名】リー, カルビン
(72)【発明者】
【氏名】ドミン, ジョナサン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ダタル, シュチブラト
(72)【発明者】
【氏名】スクルヤー, ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】バターフィールド, ポール ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ポラード, チャド
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ハオション
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136406(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0016495(KR,A)
【文献】特表2009-527716(JP,A)
【文献】特開2011-149658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
B24B 55/00
B24B 49/14
F22B 1/00
F22B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテン、
前記研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、
吸水口及び蒸気出口を有する容器と、蒸気を発生させるために下方チャンバの一部に熱を加えるように構成された加熱要素とを含む蒸気発生器、
前記蒸気発生器から前記研磨パッド上に蒸気を供給するように方向付けられた少なくとも1つの開口を有する、前記プラテンにわたって延在するアーム、
前記開口及び前記蒸気出口を制御可能に接続及び接続解除するための、前記開口と前記蒸気出口との間の流体ラインにおける第1のバルブ、
前記蒸気発生器に流体的に連結され、前記蒸気発生器から圧力を抜くように構成された第2の圧力解放バルブ、
前記蒸気発生器内の蒸気パラメータをモニタリングするためのセンサ、並びに
前記センサ、前記第1のバルブ、前記第2の圧力解放バルブ、及び前記加熱要素に連結された制御システムであって、
非一時的記憶デバイス内にデータとして記憶され、回復段階と分与段階を交互に繰り返す研磨処理レシピにおける蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブを開閉させ、
前記センサから前記蒸気パラメータの測定値を受信し、
前記蒸気パラメータの目標値を受信し、
前記測定値が、前記蒸気供給スケジュールに従って次の分与段階の開始と前記第1のバルブを開くことの開始のほぼ直前に前記目標値に達するように、前記第2の圧力解放バルブ及び前記加熱要素を制御するように、前記目標値及び前記測定値を入力として比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行する
ように構成された制御システム
を備えている化学機械研磨システム。
【請求項2】
前記蒸気パラメータが蒸気温度であり、前記測定値が測定された蒸気温度値であり、前記目標値が目標蒸気温度値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記蒸気パラメータが蒸気圧力であり、前記測定値が測定された蒸気圧力値であり、前記目標値が目標蒸気圧力値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御システムが、前記蒸気供給スケジュールにおける供給期間以外の時間に前記第2の圧力解放バルブを制御するように、前記比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御システムが、前記加熱要素を制御するように、前記比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御システムは、前記測定値が、前記第1のバルブが開かれる10秒未満前に前記目標値に達するように、前記比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御システムは、前記測定値が、前記第1のバルブが開かれる3秒未満前に前記目標値に達するように、前記比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御システムは、前記測定値が、前記第1のバルブが開かれる1秒未満前に前記目標値に達するように、前記比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記容器内の水位をモニタリングするための水位センサを備え、前記制御システムは、前記水位センサから信号を受信し、前記容器内の水位を前記加熱要素の上方に及び前記蒸気出口の下方に維持するように前記水位センサからの前記信号に基づいて前記吸水口を通る水の流量を修正するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御システムは、サイクルの前記分与段階中に前記第1のバルブを開くように構成され、前記サイクルの前記回復段階中に前記第1のバルブを閉じるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
各サイクルが、単一の基板の研磨に対応する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
各サイクルが、単一の分与段階及び単一の回復段階からなる、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記研磨パッドの温度を測定するための温度センサをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御システムが、前記温度センサから前記研磨パッドの前記温度を表す信号を受信し、前記信号に基づいて前記蒸気パラメータの前記目標値を設定するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御システムが、サイクルごとに前記目標値を設定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御システムが、サイクルを通じて連続的に前記目標値を設定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテン、
前記研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、
吸水口及び蒸気出口を有する容器と、蒸気を発生させるために下方チャンバの一部に熱を加えるように構成された加熱要素とを含む蒸気発生器、
前記蒸気発生器から前記研磨パッド上に蒸気を供給するように方向付けられた少なくとも1つの開口を有する、前記プラテンにわたって延在するアーム、
前記開口及び前記蒸気出口を制御可能に接続及び接続解除するための、前記開口と前記蒸気出口との間の流体ラインにおける第1のバルブ、
前記第1のバルブと前記蒸気出口との間の前記流体ラインにおける第2のバルブであって、当該第2のバルブが、前記容器から圧力を制御可能に抜くように構成された、第2のバルブ、
前記蒸気発生器内の蒸気パラメータをモニタリングするためのセンサ、並びに
前記センサ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ及び前記加熱要素に連結された制御システムであって、
非一時的記憶デバイス内にデータとして記憶され、回復段階と分与段階を交互に繰り返す研磨処理レシピにおける蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブを開閉させ、
前記センサから前記蒸気パラメータの測定値を受信し、
前記蒸気パラメータの目標値を受信し、
前記測定値が、前記蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブが開くほぼ直前に前記目標値に達するように、前記第2のバルブと前記加熱要素を制御するように、前記目標値及び前記測定値を入力として比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行する
ように構成された制御システム
を備えている化学機械研磨システム。
【請求項18】
蒸気発生アセンブリであって、
吸水口及び蒸気出口を有する容器と、蒸気を発生させるために下方チャンバの一部に熱を加えるように構成された加熱要素とを含む蒸気発生器、
前記蒸気出口を
、前記蒸気発生器から研磨パッド上に蒸気を供給するように方向付けられた開口に制御可能に接続及び前記開口から制御可能に接続解除するための、前記蒸気出口からの流体ラインにおける第1のバルブ、
前記蒸気発生器に流体的に連結され、前記蒸気発生器から圧力を抜くように構成された第2の圧力解放バルブ、
前記蒸気発生器内の蒸気パラメータをモニタリングするためのセンサ、並びに
前記センサ、前記第1のバルブ、前記第2の圧力解放バルブ及び前記加熱要素に連結された制御システムであって、
非一時的記憶デバイス内にデータとして記憶された研磨処理レシピにおける蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブを開閉させ、
前記センサから前記蒸気パラメータの測定値を受信し、
前記蒸気パラメータの目標値を受信し、
前記測定値が、前記蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブが開くほぼ直前に前記目標値に達するように、前記第2の圧力解放バルブ及び前記加熱要素を制御するように、前記目標値及び前記測定値を入力として比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行する
ように構成された制御システム
を備えている蒸気発生アセンブリ。
【請求項19】
命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を備えたコンピュータプログラム製品であって、前記命令は、1つ又は複数のプロセッサに、
非一時的記憶デバイス内にデータとして記憶された研磨処理レシピにアクセスさせ、
蒸気発生器の出口と
、前記蒸気発生器から研磨パッド上に蒸気を供給するように方向付けられた開口との間の第1のバルブを蒸気供給スケジュールに従って開閉させ、
前記蒸気発生器内の蒸気の蒸気パラメータの測定値をセンサから受信させ、
前記蒸気パラメータの目標値を受信させ、
前記測定値が、前記蒸気供給スケジュールに従って前記第1のバルブが開くほぼ直前に前記目標値に達するように、前記蒸気発生器に流体的に連結され、前記蒸気発生器から圧力を抜くように構成された第2の圧力解放バルブ及び加熱要素を制御するように、前記目標値及び前記測定値を入力として比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行させる、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)のための基板処理ツールのための蒸気の発生の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、半導体ウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を連続して堆積させることによって、基板上に形成される。種々の製造プロセスでは、基板上の層の平坦化が必要とされる。例えば、ある製造工程には、非平坦表面の上に充填層を堆積させ、その充填層を、パターニングされた層の上面が露出するまで研磨することが伴う。別の例として、パターニングされた導電層の上に層を堆積させ、平坦化して、後続のフォトリソグラフィステップを可能にすることができる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、認められた平坦化方法のうちの1つである。この平坦化方法では、通常、キャリアヘッド上に基板を設置することが必要になる。基板の露出表面は、通常、回転式研磨パッドに対して配置される。キャリアヘッドは、基板に対して制御可能な荷重を加え、基板を研磨パッドに押し付ける。通常、研磨粒子を含む研磨スラリが、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
研磨処理における除去速度は、温度に対して敏感であり得る。研磨中に温度を制御するために、様々な技法が提案されている。
【発明の概要】
【0005】
化学機械研磨システムは、研磨パッドを支持するためのプラテン、研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、プラテンとキャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、吸水口及び蒸気出口を有する容器と、蒸気を発生させるために下方チャンバの一部に熱を加えるように構成された加熱要素とを含む蒸気発生器、蒸気発生器から研磨パッド上に蒸気を供給するように方向付けられた少なくとも1つの開口を有する、プラテンにわたって延在するアーム、開口及び蒸気出口を制御可能に接続及び接続解除するための、開口と蒸気出口との間の流体ラインにおける第1のバルブ、蒸気パラメータをモニタリングするためのセンサ、並びにセンサ、バルブ、及び任意選択的に加熱要素に連結された制御システムを含む。制御システムは、非一時的記憶デバイス内にデータとして記憶された研磨処理レシピにおける蒸気供給スケジュールに従ってバルブを開閉させ、センサから蒸気パラメータの測定値を受信し、蒸気パラメータの目標値を受信し、測定値が、蒸気供給スケジュールに従ってバルブが開くほぼ直前に目標値に達するように、第1のバルブ及び/又は第2の圧力解放バルブ及び/又は加熱要素を制御するように、目標値及び測定値を入力として比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0006】
可能性のある利点には、以下のうちの1つ又は複数が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0007】
蒸気、すなわち、沸騰によって発生した気体状H2Oは、各基板の研磨前の研磨パッドの蒸気加熱を可能にするのに十分な量で発生させることができ、蒸気は、ウエハ間で一定の圧力で発生することができる。研磨パッドの温度、ひいては研磨処理温度は、ウエハ間で制御してより均一にすることができ、結果的にウエハ間の不均一(WIWNU:wafer-to-wafer non-uniformity)が減少する。過剰な蒸気の発生を最小限に抑えて、エネルギー効率を向上させることができる。蒸気は、実質的に純粋な気体、例えば、蒸気の中に懸濁液が少ししかない又は全くない気体であり得る。かような蒸気は、乾燥蒸気としても知られているが、エネルギー伝達性がより高く、フラッシュ蒸気などの他の蒸気代替より液状内容物が少ない、気体状のH2Oをもたらし得る。
【0008】
1つ又は複数の実装形態の詳細は、添付図面及び以下の記載において明記される。その他の態様、特徴、及び利点は、これらの記載及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】研磨装置の研磨ステーションの一例の概略断面図である。
【
図1B】化学機械研磨装置の例示的な研磨ステーションの概略上面図である。
【
図2】蒸気発生器への電力を制御するために実行され得る比例-積分-微分制御アルゴリズムを含む制御システムを示す。
【
図3B】例示的な蒸気発生器の概略上断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
化学機械研磨は、基板、研磨液、及び研磨パッドの間の界面における機械的研磨とケミカルエッチングとの組み合わせによって作用する。研磨プロセスの間、基板の表面と研磨パッドとの間の摩擦により、かなりの量の熱が発生する。さらに、幾つかのプロセスは、インシトゥパッド調整工程を含む。このインシトゥパッド調整工程では、コンディショニングディスク(例えば、研磨ダイヤモンド粒子でコーティングされたディスク)が、回転する研磨パッドに押し付けられ、研磨パッド表面を調整し、整える。調整プロセスの研磨により熱が発生することもある。例えば、2psiの公称ダウンフォース圧力及び8000Å/分の除去速度における典型的な1分間の銅CMPプロセスでは、ポリウレタン研磨パッドの表面温度が約30℃上昇し得る。
【0011】
一方で、研磨パッドが前の研磨動作によって加熱された場合、研磨パッドと接触するように新しい基板を最初に下降させたとき、研磨パッドはより低い温度にあり、したがってヒートシンクとして機能することができる。同様に、研磨パッド上に分与されるスラリもヒートシンクとして機能することができる。全体としてこれらの効果は、研磨パッドの温度の空間的及び経時的な変動をもたらす。
【0012】
例えば、CMPプロセスにおける化学反応関連変数(例えば、関与する反応の開始及び速度としての変数)、及び機械関連変数(例えば、研磨パッドの表面摩擦係数及び粘弾性)の両方は、温度に対する依存性が高い。結果として、研磨パッドの表面温度の変動により、除去速度、研磨均一性、腐食、ディッシング、及び残留物の変化がもたらされ得る。研磨中の研磨パッドの表面の温度をより厳密に制御することによって、温度の変動を低減させることができ、例えば、ウエハ内不均一性又はウエハ間不均一性を基準として測定される研磨性能を改善することができる。
【0013】
化学機械研磨プロセスの温度を制御するために提案されている1つの技法は、研磨パッド上に蒸気を噴霧することである。蒸気は、熱水よりも優れている場合がある。なぜなら、例えば、蒸気の潜熱の故に、熱水と同等の量のエネルギーを付与するために必要とされる蒸気はより少ない可能性があるからである。
【0014】
典型的な研磨プロセスでは、蒸気は、1%から100%の範囲であり得るデューティサイクル(典型的には、あるウエハの研磨の開始から後続のウエハの研磨の開始までの合計時間の割合として測定される)で付与される。デューティサイクルが100%未満である場合、蒸気発生サイクルは、2つのセクション、すなわち、回復段階及び分与段階に分けることができる。
【0015】
典型的には、回復段階では、蒸気発生のための容器は閉ざされていると見なされる。すなわち、蒸気が容器から逃げることができないように、バルブが閉じている。電力が加熱器(例えば、抵抗加熱器)に印加され、容器内の液体水に熱エネルギーが注入される。さらに、液体水が、容器内に流れ込んで先の分与サイクルで失われた水と置換され得る。
【0016】
分与段階では、蒸気が分与されるようにバルブが開かれる。分与段階の間、蒸気発生器は、蒸気の流量に追い付くことができない場合がある。この場合、分与段階には容器内の圧力降下が伴う。ある状況では、加熱された液体水が雰囲気に曝露されると、一般にフラッシュ蒸気と呼ばれる、気体の急激な相変化が起こり得る。
【0017】
概して、回復段階の間、処理に必要とされ得るパラメータ(温度、流量、圧力)によって規定されるように、次の分与段階のために蒸気を準備するのに十分な熱エネルギーを加えることが目標とされる。場合によっては、例えば、20秒の分与段階の後に80秒の回復段階が続く場合、次の分与サイクルの開始前までに必要な蒸気圧を余裕もって達成することができる。このシナリオでは、蒸気が必要なパラメータ(例えば、圧力)を上回ることを回避するために、加熱器への電力を切ることがある。しかしながら、容器は完全な断熱体ではないので、幾らかの熱損失が生じる場合があり、蒸気は所望のパラメータに留まらない可能性がある。あるいは、必要なパラメータ(例えば、圧力)を維持するために、加熱器への電力を維持することができ、過剰な蒸気を解放(例えば、排気)することができる。しかしながら、これによりエネルギーが過剰に消費されて、エネルギー効率が良くない。
【0018】
この問題に対処するために、回復段階の間、制御システムは、次の分与段階の開始直前に必要なパラメータが達成されるように、例えば、比例-積分-微分制御アルゴリズムを使用して、加熱器に印加する電力を制御することができる。
【0019】
図1Aと
図1Bは、化学機械研磨システムの研磨ステーション20の一例を示す。研磨ステーション20は、研磨パッド30が置かれる回転可能な円盤形状のプラテン24を含む。プラテン24は、軸25の周りを回転するように動作可能である(
図1Bの矢印A参照)。例えば、モータ22は、プラテン24を回転させるために駆動シャフト28を回すことができる。研磨パッド30は、外側研磨層34及びより柔らかいバッキング層32を備えた2層式研磨パッドであり得る。
【0020】
研磨ステーション20は、研磨スラリなどの研磨液38を研磨パッド30上に分与するために、例えば、スラリ供給アーム39の端部に供給ポートを含み得る。研磨ステーション20は、研磨パッド30の表面粗さを維持するための、コンディショニングディスクを備えたパッドコンディショナをさらに含み得る。
【0021】
キャリアヘッド70は、基板10を研磨パッド30に対して保持するように動作可能である。キャリアヘッド70は、支持構造体72(例えば、カルーセル又はトラック)から懸架され、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に接続され、これにより、キャリアヘッド70は軸71の周りで回転することができる。あるいは、キャリアヘッド70は、トラックに沿った移動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、例えば、カルーセル上のスライダ上で、側方に振動することができる。
【0022】
キャリアヘッド70は、基板10の裏側に接触する基板装着面を有する可撓性膜80、及び基板10の種々のゾーン(例えば、種々の径方向ゾーン)に種々の圧力を加える複数の加圧可能チャンバ82を含み得る。キャリアヘッド70は、基板を保持する保持リング84を含み得る。幾つかの実装形態では、保持リング84は、研磨パッドに接触する下方プラスチック部分86、及びより硬い材料(例えば、金属)の上方部分88を含み得る。
【0023】
プラテンは、動作中、その中心軸25の周りを回転し、キャリアヘッドは、その中心軸71の周りを回転し(
図1Bの矢印B参照)、研磨パッド30の上面にわたって側方に移動する(
図1Bの矢印C参照)。
【0024】
幾つかの実装形態では、研磨ステーション20は、研磨ステーション内の温度、又は研磨ステーションの構成要素若しくは研磨ステーション内の構成要素の温度(例えば、研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度)をモニタリングするための温度センサ64を含む。例えば、温度センサ64は、研磨パッド30の上方に位置付けされ、かつ研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を測定するように構成された赤外線(IR)センサ(例えば、IRカメラ)であってもよい。特に、温度センサ64は、径方向の温度プロファイルを生成するために、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントで温度を測定するように構成され得る。例えば、IRカメラは、研磨パッド30の半径に跨がる視野を有し得る。
【0025】
幾つかの実装形態では、温度センサは、非接触型センサではなく接触型センサである。例えば、温度センサ64は、プラテン24の上又はその中に位置付けされた熱電対又はIR温度計であってもよい。さらに、温度センサ64は、研磨パッドと直接接触することができる。
【0026】
幾つかの実装形態では、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントにおいて温度を提供するために、研磨パッド30にわたって種々の径方向位置に複数の温度センサを離間させてもよい。この技法は、IRカメラの代わりに、又はIRカメラに加えて使用することができる。
【0027】
図1Aでは、温度センサ64は、研磨パッド30の、及び/又はパッド30上のスラリ38の温度をモニタリングするよう位置付けされているように示されているが、基板10の温度を測定するためにキャリアヘッド70の内部に位置付けされてもよい。温度センサ64は、基板10の半導体ウエハと直接接触してもよい(すなわち、接触型センサであってもよい)。幾つかの実装形態では、例えば、研磨ステーションの種々の構成要素又は研磨ステーション内の種々の構成要素の温度を測定するために、複数の温度センサが研磨ステーション22内に含まれる。
【0028】
研磨システム20は、研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を制御するための温度制御システム100をさらに含む。温度制御システム100は、蒸気、すなわち、温度制御された媒体を研磨パッド30の研磨表面36(又は研磨パッド上に既に存在する研磨液)上に供給することによって動作する加熱システム104を含む。特に、媒体は、例えば蒸気発生器410からの蒸気を含む(
図2A参照)。蒸気は、別の気体(例えば、空気)若しくは液体(例えば、加熱された水)と混合されてもよく、又は媒体は実質的に純粋な蒸気であってもよい。幾つかの実施態様では、添加剤又は化学物質が蒸気に添加される。
【0029】
媒体は、例えば、加熱供給アーム上の1つ又は複数のノズルによって設けられた孔又はスロットなどのアパーチャを通流することによって、供給され得る。アパーチャは、加熱媒体の供給源に接続されたマニホールドによって設けることができる。
【0030】
例示的な加熱システム104は、研磨パッド30の端部から、研磨パッドの中心まで、又は少なくともその近く(例えば、研磨パッドの全半径の5%以内)まで、プラテン24及び研磨パッド30にわたって延在するアーム140を含む。アーム140はベース142によって支持することができ、ベース142は、プラテン24と同じフレーム40上で支持され得る。ベース142は、1つ又は複数のアクチュエータ、例えば、アーム140を上昇若しくは下降させるための線形アクチュエータ、及び/又は、プラテン24の上でアーム140を側方に揺動させるための回転式アクチュエータを含み得る。アーム140は、研磨ヘッド70、パッドコンディショニングディスク92、及びスラリ分与アーム39などの他のハードウェア構成要素との衝突を回避するように位置付けされる。
【0031】
アーム140の底面には、複数の開口144が形成されている。各開口144は、気体又は水蒸気、例えば、蒸気を研磨パッド30上に誘導するように構成されている。開口144が間隙126によって研磨パッド30から分離されるように、アーム140をベース142によって支持することができる。間隙126は、0.5から5mmであり得る。特に、流体が研磨パッドに到達する前に加熱流体の熱が著しく消散しないように、間隙126を選択することができる。例えば、開口から放出された蒸気が研磨パッドに到達する前に凝縮しないように、間隙を選択することができる。
【0032】
加熱システム104は、蒸気源、例えば、蒸気発生器410を含み得る。蒸気発生器410は、流体供給ライン146によってアーム140における開口144に接続される。流体供給ライン146は、配管、可撓性チューブ、アーム140を設ける固体を貫通する通路、又はこれらの組み合わせによって設けられ得る。
【0033】
蒸気発生器410は、水を保持する容器420、及び容器420内の水に熱を供給するための加熱器430を含む。電力は、電源250から加熱器430に供給され得る。センサ260は、蒸気の物理的パラメータ(例えば、温度又は圧力)を測定するために、容器420内又は流体送出ライン146内に配置され得る。
【0034】
幾つかの実装形態では、処理パラメータ(例えば、流量、圧力、温度、及び/又は液体と気体との混合比)は、ノズルごとに独立して制御することが可能である。例えば、各開口144のための流体は、加熱流体の温度(例えば、蒸気の温度)を個別に制御するために、個別に制御可能な加熱器を通って流れることができる。
【0035】
様々な開口144は、蒸気148を研磨パッド30上の種々の径方向ゾーン124上に誘導することができる。互いに隣接する径方向ゾーンは重なり合う場合がある。任意選択的に、開口144のうちの幾つかは、当該開口からのスプレーの中心軸が研磨面36に対して斜角になるように配向することができる。蒸気は、プラテン24の回転によって引き起こされる衝突領域において研磨パッド30の運動方向と反対の方向に水平方向成分を有するように、開口144のうちの1つ又は複数から誘導され得る。
【0036】
図1Bは、開口144が等間隔で離隔されていることを示しているが、これは必須ではない。ノズル120は、径方向、角度方向、又はその両方に不均一に分散していてもよい。例えば、開口144は、研磨パッド30の中心に向かってより密にクラスタ化されてもよい。別の例として、開口144は、スラリ供給アーム39によって研磨液39が研磨パッド30に供給される半径に対応する半径においてより密にクラスタ化され得る。さらに、
図1Bは9つの開口を示しているが、開口の数がより多くてもよいし、又はより少なくてもよい。
【0037】
(例えば、
図2Aの蒸気発生器410内で)蒸気が生成されるときに、蒸気148の温度は90℃から200℃であり得る。例えば、通過中の熱損失のために、蒸気がノズル144によって分与される場合、蒸気の温度は90から150℃であり得る。幾つかの実装形態では、蒸気は、70から100℃(例えば、80から90℃)で、ノズル144によって供給される。幾つかの実装形態では、ノズルによって供給される蒸気は、過熱される(すなわち、(その圧力に対して)沸点を超える温度となる)。
【0038】
蒸気がノズル144によって供給されるとき、蒸気の流量は、加熱器の出力及び圧力に応じて1から1000cc/分であり得る。幾つかの実装形態では、蒸気が他の気体と混合され、例えば、通常の雰囲気又はN2と混合される。あるいは、ノズル120によって供給される流体は、実質的に純粋な水である。幾つかの実装形態では、ノズル120によって供給される蒸気148は、液体水、例えば、エアロゾル化水と混合される。例えば、液体水と蒸気を1:1から1:10の相対流量比(例えば、sccmの流量)で組み合わせることができる。しかしながら、液体水の量が低い(例えば5重量%未満、例えば3重量%未満、例えば1重量%未満)場合、蒸気は、優れた熱伝達性を有することになる。したがって、幾つかの実装形態では、蒸気は、乾燥蒸気であり、すなわち、水滴を実質的に含まない。
【0039】
研磨システム20は、冷却システム(例えば、冷却流体を研磨パッド上に分与するための、アパーチャを有するアーム)、高圧リンスシステム(例えば、リンス液を研磨パッド上に噴霧するノズルを有するアーム)、及び研磨パッド30にわたって研磨液38を均一に分配するワイパーブレード又はワイパー体をさらに含み得る。
【0040】
図2を参照すると、研磨システム20は、様々な構成要素(例えば、温度制御システム100)の動作、並びにキャリアヘッドの回転、プラテンの回転、キャリアヘッド内のチャンバによって印加される圧力などを制御するための制御システム200を含む。
【0041】
制御システム200は、温度センサ64からパッド温度測定値を受信するように構成され得る。制御システムは、サイクルごとに蒸気のための目標パラメータを設定することが可能な第1の制御ループ202を実施する(各サイクルは、上述のように、回復段階及び分与段階を含む)。簡単に説明すると、制御ループ202は、測定されたパッド温度を目標パッド温度と比較し、フィードバック信号を生成することができる。目標パッド温度に達するように、蒸気の修正された目標パラメータを計算するために、フィードバック信号が使用される。例えば、測定されたパッド温度が、先の分与段階で目標パッド温度に達しなかった場合、フィードバック信号は、温度制御システム200に、後続の分与段階で研磨パッドにより多くの熱を供給させるが、測定されたパッド温度が先の分与段階で目標パッド温度を超えた場合、フィードバック信号は、温度制御システム200に、後続の分与段階で研磨パッドにより少ない熱を供給させる。
【0042】
分与段階ごとに研磨パッドに供給される熱の量を制御するために、幾つかの技術を単独で又は組み合わせて使用することができる。第1に、蒸気が供給される期間、例えば、デューティサイクルは、(より多くの熱を供給するために)延長してもよく、又は(より少ない熱を供給するために)短縮してもよい。第2に、蒸気が供給される温度は、(より多くの熱を供給するために)上昇させてもよく、又は(より少ない熱を供給するために)降下させてもよい。第3に、蒸気が供給される圧力は、(より多くの熱を供給するために)上昇させてもよく、又は(より少ない熱を供給するために)降下させてもよい。
【0043】
したがって、測定されたパッド温度が目標パッド温度に達しなかった場合、フィードバック信号は、制御ループ202に、後続の分与段階のための目標蒸気温度、圧力、及び/又はデューティサイクルを増加させることができる。一方、測定されたパッド温度が先の分与段階で目標パッド温度を超えた場合、フィードバック信号は、制御ループ202に、目標蒸気温度、圧力、及び/又はデューティサイクルを減少させる。結果として、蒸気のパラメータ目標値r(t)、例えば、圧力又は温度のための目標値は、サイクルごとに変化し得る。幾つかの実装形態では、制御ループは、サイクルごとに動作するのではなく、連続的に動作することができ、研磨が進行するにつれて、研磨パッド30の温度を連続的にモニタリングし、パラメータ目標値r(t)を調整する。
【0044】
パラメータ目標値r(t)は、制御ループ202から、比例-積分-微分(PID)コントローラ204に出力される。このコントローラは、比例-積分-微分制御アルゴリズムを実行して、電源250によって加熱器430に印加される電力を制御する。PIDコントローラ204は、パラメータ(例えば、温度又は圧力)の測定値Y(t)を受信するためにセンサ260に接続され得る。目標パラメータ値が次の分与段階の開始直前に達成されるように、PIDコントローラ204を調整することができる。例えば、目標パラメータは、バルブが開く180秒未満(例えば60秒未満、例えば30秒未満、例えば10秒未満、例えば3秒未満、例えば1秒未満)前に到達することができる。
【0045】
PIDコントローラ204では、目標パラメータ値r(t)は、比較器210によって、センサ260からの測定されたパラメータ値Y(t)と比較される。比較器は、差に基づいて誤差信号e(t)を出力する。
【0046】
誤差信号は、第1の比例出力Pを計算する比例値計算器212に入力される。比例出力Pは、
に基づいて計算することができ、ここで、K
Pは、調整中に設定される重みである。誤差信号e(t)は、第2の積分出力Iを計算する積分値計算器214にも入力される。積分出力Iは、
に基づいて計算することができ、ここで、K
Iは、調整中に設定される重みである。誤差信号e(t)は、3次微分出力Dを計算する微分値計算器216にも入力される。積分出力Dは、
に基づいて計算することができ、ここで、K
Dは、調整中に設定される重みである。
【0047】
和計算器218が、比例出力P、積分出力I、及び微分出力Dを合計し、制御信号u(t)を出力する。制御信号u(t)は、電源250が加熱器430へ出力する電力を設定する。
【0048】
概して、PIDコントローラ204を調整する際には、KPをできるだけ低く保つことが望ましい。次いで、目標パラメータ値が次の分与段階の開始直前に達成されるように、オーバーシュート及び設定時間に基づいて、必要に応じてKI及びKDを増加させることができる。様々なPID調整法、例えば、Cohen-Coon法、Ziegler-Nichols法、Tyreus-Luyben法、及びAutotune法が利用可能である。幾つかの実装形態では、加えられる熱の量は、バルブのデューティサイクルが一定であるという仮定の下で制御される。この場合、ゲイン値KI、KP、及びKDは、サイクルごとに変化させる必要はない。しかしながら、幾つかの実装形態では、デューティサイクルがサイクルごとに変化する場合、KI、KP、及びKDはデューティサイクルごとに調整することができる。例えば、一旦デューティサイクルが計算されると、ゲイン値KI、KP、及びKDをデューティサイクルパーセンテージに関連付けるルックアップテーブルに基づいて、ゲイン値を選択することができる。
【0049】
幾つかの実装形態では、加熱器430によって加えられる熱を制御するのではなく、PIDコントローラ204は、蒸気発生器410内の容器から圧力を抜くことができる流量計又はバルブ270を制御することができる。この場合、流量計又はバルブを制御して圧力を抜き、蒸気圧力を目標圧力値に維持する。バルブとして実装された場合、バルブは、制御信号u(t)に依存するデューティサイクルで開閉し得る。流量計として実装される場合、制御信号u(t)は、例えば、アパーチャのサイズを調整することによって、レギュレータを通る流量を制御することができる。幾つかの実装形態では、PIDコントローラ204はバルブ438を制御することができ、この場合、蒸気はアームの開口を通して排出される。
【0050】
制御システム200及びその機能的動作は、デジタル電子回路、有形に具現化されたコンピュータソフトウェア若しくはファームウェア、コンピュータハードウェア、又はこれらのうちの1つ若しくは複数の組合せにおいて実装することができる。コンピュータソフトウェアは、1つ又は複数のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置のプロセッサによる実行のために、又はデータ処理装置のプロセッサの動作を制御するために、有形の非一過性の記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールとして実装することができる。電子回路及びデータ処理装置は、汎用のプログラム可能な、プログラム可能なデジタルプロセッサ、及び/又は複数のデジタルプロセッサ若しくはコンピュータを含むことができ、かつ、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)であってもよい。
【0051】
制御システムが特定の動作又はアクションを実行するように「構成されている(configured to)」とは、動作中、システムにその動作又はアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせがシステムにインストールされていることを意味する。1つ又は複数のコンピュータプログラムが特定の動作又はアクションを実行するように構成されているとは、1つ又は複数のプログラムが、データ処理装置によって実行されると、装置にその動作又はアクションを実行させる命令を含むことを意味する。
【0052】
図3Aを参照すると、本明細書に記載された処理のための、又は化学機械研磨システムにおける他の使用のための蒸気は、蒸気発生器410を使用して発生させることができる。例示的な蒸気発生器410は、内部空間425を囲むキャニスタ420を含み得る。キャニスタ420の壁は、鉱物汚染物質が非常に低レベルである断熱材料(例えば、石英)で製作することができる。あるいは、キャニスタの壁を別の材料で形成してもよく、例えば、キャニスタの内表面をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は別のプラスチックでコーティングしてもよい。幾つかの実装形態では、キャニスタ420は、長さが10から20インチ、幅が1から5インチであってもよい。
【0053】
図3A及び
図3Bを参照すると、幾つかの実施形態では、キャニスタ420の内部空間425は、バリア426によって下方チャンバ422と上方チャンバ424とに分割される。バリア426は、キャニスタ壁と同じ材料、例えば、石英、ステンレス鋼、アルミニウム、又はアルミナなどのセラミックで製作することができる。石英は、汚染のリスクが低いという点で優れている場合がある。バリア426は、沸騰水によって飛散する水滴を遮断することによって、液体水440が上方チャンバ424に侵入することを実質的に防止することができる。これにより、乾燥蒸気が上方チャンバ424内に蓄積することが可能となる。
【0054】
バリア426は、1つ又は複数のアパーチャ428を含む。アパーチャ428は、蒸気が下方チャンバ422から上方チャンバ424内へ通過することを可能にする。アパーチャ428、及び特にバリア426の端付近のアパーチャ428によって、上方チャンバ424の壁の凝縮物が下方チャンバ422内に滴下し、上方チャンバ426内の液体含有量が低減し、水440を用いて液体を再加熱することが可能となる。
【0055】
アパーチャ428は、バリア426がキャニスタ420の内壁と接触する、バリア426の端部(例えば、端部のみ)に配置され得る。アパーチャ428は、バリア426の端部の近傍(例えば、バリア426の端部とバリア426の中心との間)に配置されてもよい。この構成は、バリア426が中央にアパーチャを有さず、したがって、液体水滴が上方チャンバに侵入するリスクを低減し、なおかつ上方チャンバ424の側壁の凝縮物が上方チャンバから流れ出ることを可能にするという点で有利であり得る。
【0056】
しかしながら、幾つかの実装形態では、アパーチャは、例えば、バリア426の幅全面に、例えば、バリア425の領域にわたって均一に離間するように、端部から離れるようにさらに位置付けされる。
【0057】
図3Aを参照すると、吸水口432は、水リザーバ434をキャニスタ420の下方チャンバ422に接続することができる。吸水口432は、下方チャンバ422に水440を供給するために、キャニスタ420の底部において又は底部付近に配置され得る。
【0058】
1つ又は複数の加熱要素430は、キャニスタ420の下方チャンバ422の一部を囲むことができる。加熱要素430は、例えば、キャニスタ420の外側に巻き付けられた加熱コイル(例えば、抵抗加熱器)であり得る。さらに、加熱要素は、キャニスタの側壁の材料上の薄膜コーティングによって設けられ得る。電流が印加された場合、この薄膜コーティングは加熱要素として機能することができる。
【0059】
加熱要素430は、キャニスタ420の下方チャンバ422内に配置され得る。例えば、加熱要素は、加熱要素からの汚染物質(例えば、金属汚染物質)が蒸気中に移動するのを防止する材料でコーティングされ得る。
【0060】
加熱要素430は、最低水位443aまでキャニスタ420の底部に熱を加えることができる。すなわち、加熱要素430は、最低水位443aより下のキャニスタ420の部分を覆うことができ、それにより、過熱を防ぎ、不必要なエネルギー消費を削減する。
【0061】
蒸気出口436は、上方チャンバ424を蒸気供給通路438に接続することができる。蒸気供給通路438をキャニスタ420の頂部又は頂部付近(例えば、キャニスタ420の天井)に配置することができる。それにより、蒸気が、キャニスタ420から蒸気送出通路438を通過して、CMP装置の様々な構成要素に到達することが可能になる。蒸気供給通路438を用いて、例えば、キャリアヘッド70、基板10、及びパッドコンディショナディスク92の蒸気洗浄及び予熱のために、蒸気を化学機械研磨装置の様々な領域に向けて送り込むことができる。
【0062】
幾つかの実装形態では、フィルタ470が、蒸気446中の汚染物質を低減するように構成された蒸気出口438に連結される。フィルタ470は、イオン交換フィルタであり得る。
【0063】
水440は、水リザーバ434から吸水口432を通って下方チャンバ422内に流れることができる。水440は、少なくとも、加熱要素430の上方にありかつバリア426の下方にある水位442まで、キャニスタ420を充填することができる。水440を加熱すると、気体媒体446が発生し、バリア426のアパーチャ428を通って上昇する。アパーチャ428により、蒸気が上昇して、同時に凝縮物が消散することが可能となり、その結果、水が実質的に液体を含まない蒸気である(例えば、蒸気中に液体水滴が浮遊していない)気体媒体446が生じる。
【0064】
幾つかの実装形態では、バイパス管444内の水位442を測定する水位センサ460を使用して、水位が決定される。バイパス管は、キャニスタ420と並行して、水リザーバ434を蒸気供給通路438に接続する。水位センサ460は、水位442がバイパス管444内、ひいてはキャニスタ420内のどこにあるかを示すことができる。例えば、水位センサ444及びキャニスタ420は、等しく加圧される(例えば、両方とも同じ水リザーバ434から水を受け取り、両方とも上方において同じ圧力を有し、例えば、両方とも蒸気供給通路438に接続される)ので、水位442は水位センサとキャニスタ420との間で同じである。幾つかの実施形態では、水位センサ444の水位442は、他の状況ではキャニスタ420の水位442を示すことができ、例えば、水位センサ444の水位442は、キャニスタ420の水位442を示すようにスケーリングされる。
【0065】
稼働中、キャニスタの水位442は、最低水位443aより上方にあり、最高水位443bより下方にある。最低水位443aは少なくとも加熱要素430より上方にあり、最大水位443bは蒸気出口436及びバリア426より十分に下方にあるので、気体媒体446(例えば、蒸気)が、キャニスタ420の上部近辺に貯まりながらも、液体水を実質的に含有しないようにするのに十分な空間が設けられる。
【0066】
幾つかの実装形態では、コントローラ200は、吸水口432を通る流体の流れを制御するバルブ480、蒸気出口436を通る流体の流れを制御するバルブ482、及び/又は水位センサ460に連結される。水位センサ460を使用して、コントローラ200は、キャニスタ420に流れ込む水440の流れを制御し、キャニスタ420から出る気体446の流れを制御して、最低水位443aより上方(かつ加熱要素430より上方)で、最大水位443bより下方(かつバリア426がある場合は、バリア426より下方)の水位442を維持するように構成される。コントローラ200は、キャニスタ420内の水440に供給される熱の量を制御するために、加熱要素430のための電源250にさらに連結され得る。
【0067】
パッド温度の測定及びパッドへの蒸気の供給について説明してきたが、これらは、パッド上のスラリの測定又はパッド上のスラリへの蒸気の供給を含むものとして理解するべきである。
【0068】
本発明の幾つかの実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明の本質及び範囲から逸脱しない限り、様々な修正が行われ得ることを理解されたい。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内に含まれる。