(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20250115BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20250115BHJP
H01Q 1/44 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q1/24 Z
H01Q1/44
(21)【出願番号】P 2021575680
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000849
(87)【国際公開番号】W WO2021157303
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020016621
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
(72)【発明者】
【氏名】庭野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 幸一郎
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 1/24
H01Q 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のガラス製又は樹脂製の透明カバーの外表面とは反対の内表面側に設けられる透明なフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられ、前記電子機器の外側を向く指向性を有する透明なアンテナエレメントと
を含
み、
前記アンテナエレメントの指向性は、エンドファイア方向であり、当該エンドファイア方向は、前記電子機器の外側を向いている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記フレキシブル基板に設けられるグランド層及び伝送路を有し、所定の特性インピーダンスを有する給電線路であって、前記アンテナエレメントに給電する給電線路をさらに含み、
前記フレキシブル基板は、前記アンテナエレメントの先端側と、前記グランド層の前記アンテナエレメントに対して遠い側の端部との間で折り曲げられており、
前記エンドファイア方向は、前記透明カバーの外表面から放射される方向である、請求項
1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
電子機器のガラス製又は樹脂製の透明カバーの外表面とは反対の内表面側に設けられる透明なフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられ、前記電子機器の外側を向く指向性を有する透明なアンテナエレメントと
を含み、
前記アンテナエレメントの指向性は、バックファイア方向であり、当該バックファイア方向は、前記電子機器の外側を向いている、アンテナ装置。
【請求項4】
前記フレキシブル基板に設けられるグランド層及び伝送路を有し、所定の特性インピーダンスを有する給電線路であって、前記アンテナエレメントに給電する給電線路をさらに含み、
前記フレキシブル基板は、前記アンテナエレメントの先端側と、前記グランド層の前記アンテナエレメントに対して遠い側の端部との間で折り曲げられており、
前記バックファイア方向は、前記透明カバーの外表面から放射される方向である、請求項
3記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記透明カバーは、三次元的に湾曲した湾曲部を有し、
前記電子機器は、前記湾曲した透明カバーの内表面に沿って湾曲したディスプレイパネルを含み、
前記フレキシブル基板の折り曲げられている部分は、前記ディスプレイパネルの湾曲部の裏側に設けられる、請求項
2又は
4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
電子機器のガラス製又は樹脂製の透明カバーの外表面とは反対の内表面側に設けられる透明なフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられ、前記電子機器の外側を向く指向性を有する透明なアンテナエレメントと
を含み、
前記アンテナエレメントの指向性は、前記フレキシブル基板の表面から放射される方向であり、
前記フレキシブル基板のうち前記アンテナエレメントが設けられる区間は、前記透明カバーの内表面に沿っており、
前記アンテナエレメントの指向性は、前記透明カバーの外表面から放射される方向である、アンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナエレメントは、所定値以上の透過率を有する、メッシュ状の導電線路によって実現される、請求項1
ないし6のいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記給電線路のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられる区間は、透明である、請求項
2又は
4記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記給電線路のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられる区間は、所定値以上の透過率を有する、メッシュ状の導電線路によって実現される、請求項
8記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記給電線路のうちの前記透明カバーの外側から見えない位置に設けられる区間は、前記フレキシブル基板の両面に設けられる一対の導電層と、前記フレキシブル基板を貫通して前記一対の導電層を接続する複数の円柱状又は円筒状の導体とを有し、前記一対の導電層と、前記複数の円柱状又は円筒状の導体とでシールドされた伝送線路で構成される、請求項
2、
4、
8、及び
9のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記透明カバーは、三次元的に湾曲した湾曲部を有し、
前記電子機器は、前記湾曲した透明カバーの内表面に沿って湾曲したディスプレイパネルを含み、
前記フレキシブル基板は、前記透明カバーと前記ディスプレイパネルの間に設けられ、前記ディスプレイパネルの表示面の全体を覆っており、
前記フレキシブル基板の端辺は、前記透明カバーの外表面から見て、前記ディスプレイパネルの裏側に設けられる、請求項1乃至
10のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記アンテナエレメントは、ダイポールアンテナ、Vivaldiアンテナ、八木宇田アンテナ、モノポールアンテナ、テーパスロットアンテナ、スロットアンテナ、又はログペリアンテナである、請求項1乃至
11のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記アンテナエレメントから給電される1又は複数の無給電素子をさらに含み、
前記アンテナエレメントと前記1又は複数の無給電素子とによって、前記電子機器の外側を向く指向性が実現される、請求項1乃至
11のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スマートフォン等の電子機器に用いるアンテナ装置であって、グランドプレーンと、前記グランドプレーンに間隔をあけて対向する部位を有する板状導体と、前記グランドプレーンをグランド基準とする給電点に接続された給電素子と、前記板状導体に接続された線条の放射素子とを備え、前記放射素子は、前記給電素子によって非接触で給電され放射導体として機能する、アンテナ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のアンテナ装置は、電子機器の透明カバーの外側から見える位置に配置すると、ディスプレイパネルの表示を妨げるため、透明カバーの外側から見える位置への配置には適していない。
【0005】
そこで、電子機器の透明カバーの外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメントを含むアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のアンテナ装置は、電子機器のガラス製又は樹脂製の透明カバーの外表面とは反対の内表面側に設けられる透明なフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板のうちの前記透明カバーの外側から見える位置に設けられ、前記電子機器の外側を向く指向性を有する透明なアンテナエレメントとを含む。
【発明の効果】
【0007】
電子機器の透明カバーの外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメントを含むアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】アンテナ装置100を含む電子機器200の断面の一例を示す図である。
【
図2】電子機器200の断面の一部を拡大して示す図である。
【
図7】基板101に形成された導波管300Bを示す図である。
【
図8】アンテナ装置100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図9】アンテナ装置100の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す。
【
図10】電子機器200の例示的な断面にアンテナ装置100の指向性を記した図である。
【
図11】実施の形態の変形例の電子機器200Aを示す断面図である。
【
図14】アンテナ装置100M1のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図15】アンテナ装置100M1の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
【
図18】導波器115の数と、間隔Gと、指向性及びゲインとの関係を示す図である。
【
図19】導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図20】導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
【
図21】導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図22】導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
【
図23】電子機器200Aの例示的な断面にアンテナ装置100M2の指向性を記した図である。
【
図24】実施の形態の変形例の電子機器200Bを示す断面図である。
【
図26】アンテナ装置100M2を折り曲げる手法を説明する図である。
【
図27】アンテナ装置100M2の折り曲げモデルを示す図である。
【
図28】折り曲げ位置の異なるアンテナ装置100M2の指向性を示す図である。
【
図29】実施の形態の変形例によるアンテナ装置100M3を示す図である。
【
図30】アンテナ装置100M3のモデルを示す図である。
【
図31】Z=1mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M3のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図32】Z=1mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M3の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
【
図35】導波器115が1個のSub6用のアンテナ装置100M4のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図36】導波器115が1個のSub6用のアンテナ装置100M4の共振周波数を3.5GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
【
図37】実施の形態の変形例の電子機器200Cを示す図である。
【
図38】実施の形態の変形例の電子機器200Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のアンテナ装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、アンテナ装置100を含む電子機器200の断面の一例を示す図である。
図2は、電子機器200の断面の一部を拡大して示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、平面視とはYZ面視をいい、+X方向側を上側、-X方向側を下側とする上下方向と、上下方向に対する横方向(側方)とを用いて説明するが、普遍的な上下方向と横方向を表すものではない。
【0011】
また、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右等の方向には、実施の形態における開示の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X方向、Y方向、Z方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X方向とY方向とZ方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X方向及びY方向に平行な仮想平面、Y方向及びZ方向に平行な仮想平面、Z方向及びX方向に平行な仮想平面を表す。
【0012】
また、以下では、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0013】
アンテナ装置100は、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、1GHz超~300GHz)の電波の送受に好適である。アンテナ装置100は、一例として、第5世代移動通信システム(5G)、又は、第6世代移動通信システム(6G)等に適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。なお、第5世代移動通信システム(5G)には、例えば、28GHz帯と、6GHz未満の帯域(Sub 6)とが含まれる。
【0014】
図1及び
図2には、アンテナ装置100の部分100Aと部分100Bを示す。部分100Aは、アンテナ装置100の第1部分の一例であり、部分100Bは、第2部分の一例である。部分100Aと部分100Bの位置を分かり易くするために、部分100Aを白抜きで示し、部分100Bをグレーで示す。
【0015】
アンテナ装置100の詳細な構成については後述するが、アンテナ装置100は、例えば、フレキシブル基板、アンテナエレメント、及び給電線路を有し、折り曲げ可能である。
図1及び
図2では、アンテナ装置100は、部分100Aと部分100Bとの間で折り畳まれるように折り曲げられている。また、部分100Bは、収納部210Bの内部でさらに折り曲げられている。
【0016】
部分100Aは、フレキシブル基板に少なくともアンテナエレメントが設けられる部分であり、アンテナエレメントに加えて給電線路の一部が設けられていてもよい。部分100Bは、フレキシブル基板に少なくとも給電線路の一部(給電線路の全部、又は、部分100Aに設けられない給電線路の残りの部分)が設けられる部分である。
【0017】
アンテナ装置100の部分100Aは、表示操作部230に含まれるディスプレイパネルの上側(表示面側)に配置される。アンテナ装置100の部分100Aは、透明カバー220を介して電子機器200の外から見えるため、透明である。部分100Bは、表示操作部230の裏側に配置され、電子機器200の外から見えないため、透明ではなくてもよい。
【0018】
図1及び
図2では、説明の便宜上、アンテナ装置100の部分100Aを透明カバー220と表示操作部230との間に示すが、アンテナ装置100の部分100Aは、表示操作部230と透明カバー220との間に限らず、表示操作部230に含まれるタッチパネル、偏光板、及びディスプレイパネルの間のいずれかに配置してもよい。なお、アンテナ装置100の部分100Aと、透明カバー220と、表示操作部230との位置関係については後述する。
【0019】
また、アンテナ装置100は、電子機器200の外側を向く指向性を有する。アンテナ装置100の指向性は、メインローブの指向性である。外側を向く指向性とは、アンテナ装置100のメインローブの指向性が、電子機器200の筐体210及び透明カバー220の外側を向いていることである。外側を向くとは、例えば、電子機器200の内部から見て、透明カバー220の+X方向、透明カバー220の外側でYZ平面に平行な方向、又は、透明カバー220の+X方向と透明カバー220の外側でYZ平面に平行な方向との間の方向等を向いていることをいう。また、筐体210の一部に誘電体製の部分がある場合には、誘電体製の部分を通じて筐体210の外側を向いていてもよい。
【0020】
電子機器200は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ノートブック型PC(Personal Computer)等の情報処理端末機である。また、電子機器200は、これらに限られず、例えば、柱や壁等の構造物、デジタルサイネージ、電車内のディスプレイパネルを含む電子機器、又は、車両の中の様々なディスプレイパネルを含む電子機器等であってもよい。
【0021】
電子機器200は、アンテナ装置100の他に、筐体210、透明カバー220、表示操作部230、配線基板240、電子部品250A、250B、及びバッテリ260等を含む。表示操作部230は、ディスプレイパネルを有する。このように、電子機器200は、電子機器200は、筐体210、透明カバー220、及びディスプレイパネルを含む電子機器であればよい。
【0022】
筐体210は、例えば金属製及び/又は樹脂製のケースであり、電子機器200の下面側及び側面側を覆っている。筐体210は、上側に開口部210Aを有し、開口部210Aには、透明カバー220が取り付けられている。筐体210は、開口部210Aに連通する内部空間である収納部210Bを有し、収納部210Bには、配線基板240、電子部品250A、250B、及びバッテリ260等が収納されている。
【0023】
透明カバー220は、平面視で矩形状の透明なガラス板であり、平面視で開口部210Aに合わせられたサイズを有する。透明カバー220は、一例として平板状のガラス板である。ここでは、透明カバー220がガラス製である形態について説明するが、透明カバー220は、樹脂製であってもよい。
【0024】
透明カバー220が筐体210の開口部210Aに取り付けられることにより、筐体210の収納部210Bは封止される。
【0025】
透明カバー220の上面は、透明カバー220の外表面の一例であり、透明カバー220の下面は、透明カバー220の内表面の一例である。透明カバー220の内表面側には、表示操作部230が設けられる。電子機器200の外部からは、透明カバー220を介して内部に設けられる表示操作部230が見える。
【0026】
表示操作部230は、タッチパネル、偏光板、及びディスプレイパネル等を重ねた構成物である。電子機器200は、透明カバー220の上面に触れることによって、表示操作部230のディスプレイパネルに表示されるGUI(Graphical User Interface)のボタン等を操作できる。利用者の操作は、表示操作部230のタッチパネルによって検出される。
【0027】
表示操作部230の最も下側にはディスプレイパネルが配置される。アンテナ装置100が存在しない部分では、ディスプレイパネルの上に、タッチパネルと偏光板が重ねられる。タッチパネルと偏光板は、どちらが上であってもよい。アンテナ装置100が存在する部分では、ディスプレイパネルの上側のいずれかの位置に、アンテナ装置100が設けられる。
【0028】
配線基板240には、電子部品250A、250Bが実装される。配線基板240には、アンテナ装置100の部分100Bの給電線路等が接続される。配線基板240と部分100Bとは、コネクタやACF(Anisotropic Conductive Film)等を用いて接続されていてもよく、その他の構成要素を用いて接続されていてもよい。
【0029】
電子部品250Aは、一例として、電子機器200の動作に関連する情報処理等を行う部品であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0030】
電子部品250Bは、一例として、配線基板240の配線を介してアンテナ装置100の部分100Bに接続されており、アンテナ装置100を介して送信又は受信する信号の処理を行う通信モジュールである。
【0031】
バッテリ260は、充電可能な二次電池であり、アンテナ装置100、表示操作部230、及び電子部品250A、250B等の動作に必要な電力を供給する。
【0032】
次に、アンテナ装置100と表示操作部230の位置関係について説明する。
図3は、
図1の点線部Aを拡大して示す図である。
【0033】
表示操作部230は、ディスプレイパネル231、層232、層233、及び接着層234を有する。接着層234は、表示操作部230を透明カバー220に接着するために設けられている接着材製の層である。
【0034】
ディスプレイパネル231は、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(Electro-luminescence)、又は、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイパネルであり、表示操作部230の最も下側に配置される。
【0035】
層232及び233は、少なくとも、タッチパネルと、偏光板と、複数の接着層とを含む。層232にタッチパネルと接着層とが含まれ、層233に偏光板と接着層が含まれる場合がある。また、これとは逆に、層232に偏光板と接着層が含まれ、層233にタッチパネルと接着層とが含まれる場合がある。
【0036】
図3では、一例として、アンテナ装置100の部分100Aを層232及び233の間に示すが、部分100Aは、層233と接着層234の間に配置されてもよく、層232とディスプレイパネル231との間に配置されてもよい。
【0037】
なお、アンテナ装置100の部分100Aが存在しない位置では、透明カバー220と表示操作部230との断面構造は、
図3からアンテナ装置100の部分100Aを取り除いた構造である。
【0038】
図4及び
図5は、アンテナ装置100を示す図である。
図4及び
図5には、
図1及び
図2に示すように部分100Bを折り曲げる前の状態をYZ平面に平行に示す。
【0039】
アンテナ装置100は、基板101、アンテナエレメント110、及びマイクロストリップライン120を含む。
図5(A)には、基板101と、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示し、
図5(B)には、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示す。なお、
図5(B)には、基板101の位置を破線で示す。
【0040】
マイクロストリップライン120のうちの部分100Aに含まれる部分は、一例として、マイクロストリップライン120のZ方向における全体のうちの+Z方向側の1/2~3/4程度である。このため、マイクロストリップライン120のZ方向における全体のうちの部分100Bに含まれる部分は、一例として、1/4から1/2程度である。
【0041】
すなわち、
図1及び
図2に示す部分100Aと部分100Bとの境界は、Z方向におけるマイクロストリップライン120の+Z方向側の端部から1/2~3/4程度の位置である。部分100Bは、
図3に示すディスプレイパネル231の上に位置するので、表示を妨げないようにするために透明であればよい。部分100Bは、透明ではなくてもよい。
【0042】
図4及び
図5では、一例として、部分100Aと部分100Bとの境界がZ方向におけるマイクロストリップライン120の+Z方向側の端部から1/2の構成を示す。
【0043】
基板101は、一例としてポリイミド製のフレキシブル基板であり、Z方向及び/又はY方向に折り曲げ可能である。基板101は、無色透明である。
【0044】
アンテナエレメント110は、ダイポール型のアンテナであり、エレメント111及び112を有する。エレメント111は、基板101の+X方向側の表面に設けられ、給電点111A、折り曲げ部111B、及び開放端111Cを有するL字型の素子である。エレメント111は、給電点111Aから折り曲げ部111Bに向かって+Z方向に延在し、折り曲げ部111Bで+Y方向に折れ曲げられ、開放端111Cまで延在している。
【0045】
エレメント112は、基板101の-X方向側の表面に設けられ、給電点112A、折り曲げ部112B、及び開放端112Cを有するL字型の素子である。給電点112Aと折り曲げ部112Bとの間の区間は、エレメント111の給電点112Aと折り曲げ部112Bとの間の区間と平面視で重ねて配置されており、折り曲げ部112Bと開放端112Cとの間の区間は、エレメント111の折り曲げ部111Bと開放端111Cとの間の区間とは反対方向に-Y方向に延在している。なお、開放端111Cと開放端112Cとの間のY方向の長さは、アンテナ装置100の共振周波数における波長λの電気長λeの約1/2(λe/2)の長さに設定されている。
【0046】
マイクロストリップライン120は、伝送路121とグランド層122とを有する給電線路である。伝送路121は、基板101の+X方向側の表面に設けられ、エレメント111の給電点111Aに接続されている。
【0047】
グランド層122は、基板101の-X方向側の表面において平面視で伝送路121と重ねて設けられている。グランド層122の+Z方向側の端辺は、エレメント112の給電点112Aに接続されている。
【0048】
このような構成を有するアンテナ装置100のうち、Z方向においてアンテナエレメント110と、マイクロストリップライン120のうちの+Z方向側の部分とが設けられる区間は、
図1及び
図2に示す部分100Aである。また、アンテナ装置100のうち、Z方向においてマイクロストリップライン120の残りの部分が設けられる区間は、
図1及び
図2に示す部分100Bである。
【0049】
アンテナ装置100は、
図1及び
図2に示す部分100Aと部分100Bとの間で折り曲げられているため、アンテナ装置100の基板101は、アンテナエレメント110の先端側と、グランド層122のアンテナエレメント110に対して遠い側の端部との間で折り曲げられている。
【0050】
図6は、透明導体300Aを示す図である。透明導体300Aは、透明な基板101の表面に形成されており、一例として、
図4及び
図5に示す部分100Aに含まれるアンテナエレメント110及びマイクロストリップライン120として用いられるものである。透明導体300Aは、人間の視力では確認が難しいほど光透過性が高い導体である。
【0051】
このような透明導体300Aは、光透過性を高くするために、一例としてメッシュ状に形成されている導電線路である。ここで、メッシュとは、透明導体300Aに網目状の透孔301が空いた状態をいう。
【0052】
透明導体300Aがメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形が好ましく、意匠性が良い。また、メッシュの目は、自己組織化法によるランダム形状でもよく、そうすることでモアレを抑制できる。メッシュの線幅w1、w2は、1~10μmが好ましい。また、メッシュの線間隔p1、p2は、300~500μmが好ましい。
【0053】
透明導体300Aの開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開口率は、透明導体300Aの開口部(透孔301)を含めた面積当たりの開口部の面積の割合である。透明導体300Aの開口率を大きくするほど、透明導体300Aの可視光透過率を高くできる。
【0054】
透明導体300Aの厚さは、可視光透過率を高くするために400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。透明導体300Aの厚さの下限は特に限定されないが、放射特性を向上するために2nm以上であってよく、10nm以上であってよく、30nm以上であってよい。
【0055】
また、透明導体300Aがメッシュ状に形成される場合、透明導体300Aの厚さは、1~40μmであってよい。透明導体300Aがメッシュ状に形成されることにより、透明導体300Aが厚くても、可視光透過率を高くできる。透明導体300Aの厚さは、5μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。また、透明導体300Aの厚さは、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下が特に好ましい。
【0056】
なお、透明導体300Aの導体材料としては銅が挙げられるが、他にも、金、銀、白金、アルミニウム、クロム等を使用でき、また、これらの材料に限られない。
【0057】
アンテナ装置100の部分100Aは、ディスプレイパネル231(
図3参照)の上に位置するので、部分100Aに含まれる導体(アンテナエレメント110及びマイクロストリップライン120等)は、一例として透明導体300Aで実現すればよい。
【0058】
透明導体300Aで実現されるアンテナエレメント110と、マイクロストリップライン120の一部分とは、透明であり、人間の視力では確認が難しいほど光透過性が高いアンテナエレメント及び給電線路である。
【0059】
また、アンテナ装置100の部分100Bに含まれるマイクロストリップライン120の残りの部分は、ディスプレイパネル231(
図3参照)の裏側に位置するため、透明である必要はなく、銅等のソリッドパターン(ベタパターン)であってよい。
【0060】
また、部分100Bに含まれるマイクロストリップライン120の残りの部分については、
図7に示すような導波管300Bを用いてもよい。
図7は、基板101に形成された導波管300Bを示す図である。
図7(A)は、導波管300Bを平面視で示し、
図7(B)は、
図7(A)におけるA-A矢視断面を示す。なお、
図7では、一例として図示するようにXYZ座標系を定義する。
【0061】
導波管300Bは、基板101に形成されており、導電層301B及び302Bと、TH(Through Hole)303Bとを含む。導波管300Bは、単層の基板101の両面に設けられる導電層301B及び302Bと、TH303Bとを含む、所謂SIW(Substrate Integrated Waveguide)である。
【0062】
導電層301B及び302Bは、基板101の-X方向側の表面と、+X方向側の表面との一部の領域内に形成されているソリッドパターン(ベタパターン)である。導電層301B及び302Bは、平面視におけるサイズが等しく、互いに位置を合わせた状態で基板101の両面に設けられている。
【0063】
TH303Bは、基板101をX方向に貫通する貫通孔の内側に、めっき処理等で形成される円柱状又は円筒状の導体である。TH303Bは、導電層301B及び302Bを接続する。TH303Bは、電波の伝搬方向(ここでは一例として+Z方向)に沿って、導電層301B及び302Bの両側に等間隔で設けられている。隣り合うTH303B同士のZ方向における隙間は、伝搬する電波の波長未満に設定されている。これにより、導電層301B及び302BとTH303Bとで囲まれた空間をシールドすることができる。
【0064】
このような導電層301B及び302BとTH303Bとで囲まれた空間は、シールドされた伝送路であり、電波を閉じ込めてZ方向に伝搬可能である。このような導波管300Bをアンテナ装置100の部分100B(
図1及び
図2参照)における給電線路として、マイクロストリップライン120の残りの部分の変わりに用いてもよい。
【0065】
図8は、アンテナ装置100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図8には、アンテナ装置100の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが28GHzの前後の広範囲にわたって-5dB以下になる良好な特性が得られた。
【0066】
図9は、アンテナ装置100の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す。
図9に示す指向性は、アンテナ装置100のメインローブの指向性である。なお、0度の方向は+Z方向に相当し、90度の方向は+X方向に相当する。
図9に示すように、+Z方向(0度の方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0067】
図10は、電子機器200の例示的な断面にアンテナ装置100の指向性を記した図である。
図9に示す指向性は、
図10では(1)で示す方向に電波を放射可能であり、(1)で示す方向の電波を受信可能であることを表す。(1)で示す方向は、電子機器200の透明カバー220の表面(電子機器200の表面)から、透明カバー220の表面に沿って放射される方向である。このような方向(1)を向く指向性を有するので、アンテナ装置100は、電子機器200の外部の通信機と通信しやすい。
【0068】
以上のように、アンテナ装置100は、透明な基板101に透明なアンテナエレメント110を設けた構成を有する。透明なアンテナエレメント110は、透明カバー220の外側から見える位置に設けられており、ディスプレイパネル231(
図3参照)に重ねて設けられている。
【0069】
したがって、電子機器200の透明カバー220の外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメント110と、マイクロストリップライン120のうちの部分100Aに含まれる透明な部分と、透明な基板101とを含むアンテナ装置100を提供できる。
【0070】
また、ダイポール型のアンテナエレメント110マイクロストリップライン120、非常に薄く形成できる。例えば、アンテナ装置100に許容される厚さが100μm以下のように制約が大きい場合には、パッチアンテナのようにグランド層にある程度の厚さが必要なアンテナ装置を用いることは困難である。その点において、、非常に薄く形成可能なダイポール型のアンテナエレメント110とマイクロストリップライン120を含むアンテナ装置100は、薄型化の観点で非常に有利である。
【0071】
なお、以上では、電子機器200の透明カバー220が平板状である形態について説明したが、透明カバー220は湾曲していてもよい。
【0072】
また、以上では、アンテナエレメント110がダイポール型のアンテナである形態について説明したが、モノポールアンテナ、テーパスロットアンテナ、スロットアンテナ、又はログペリアンテナであってもよい。
【0073】
また、アンテナ装置100は、アンテナエレメント110を介して給電される1又は複数の無給電素子をさらに含んでもよい。この場合に、アンテナエレメント110と1又は複数の無給電素子との位置関係を調整することによって、電子機器200の外側を向く指向性を実現するようにしてもよい。
【0074】
図11は、実施の形態の変形例の電子機器200Aを示す断面図である。
図11には、
図1に対応する断面を示す。電子機器200Aは、
図1に示す電子機器200の平板状の透明カバー220及び表示操作部230の代わりに、平面視における端部が湾曲した透明カバー220A及び表示操作部230Aを含む。部分100Aと部分100Bの位置を分かり易くするために、部分100Aを白抜きで示し、部分100Bをグレーで示す。
【0075】
透明カバー220は、XZ断面視では、Z方向の両端が-X方向に湾曲している。これは、YZ断面においても同様である。表示操作部230Aは、一例としてディスプレイパネルとしてOLEDを含んでおり、透明カバー220Aと同様に湾曲した形状を有する。
【0076】
図11では、アンテナ装置100の部分100Aは、透明カバー220Aの平坦な上面の部分と湾曲した部分とにわたって設けられている。
【0077】
図11では、説明の便宜上、アンテナ装置100の部分100Aを透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間に示すが、アンテナ装置100の部分100Aは、表示操作部230Aと透明カバー220Aとの間に限らず、
図3に示す層232及び233の間、層233と接着層234の間、又は、層232とディスプレイパネル231との間に配置してもよい。
【0078】
また、電子機器200又は200Aは、
図4及び
図5に示すアンテナ装置100の変わりに、
図12及び
図13に示すアンテナ装置100M1を含んでもよい。
図12及び
図13は、アンテナ装置100M1を示す図である。
【0079】
図12及び
図13は、アンテナ装置100M1を示す図である。
図12及び
図13には、折り曲げる前の状態のアンテナ装置100M1をYZ平面に平行に示す。アンテナ装置100M1は、部分100M1A及び100M1Bを含む。部分100M1A及び100M1Bは、
図1、
図2、
図4、及び
図5に示す部分100A及び100Bと同様であり、部分100M1Aは、電子機器200又は200Aの透明カバー220又は220Aを介して電子機器200又は200Aの外から見える部分であり、部分100M1Bは、表示操作部230又は230Aの裏側に配置され、電子機器200又は200Aの外から見えない部分である。
【0080】
図12及び
図13では、一例として、部分100M1Aと部分100M1Bとの境界がZ方向におけるマイクロストリップライン120M1の+Z方向側の端部から1/2の構成を示す。
【0081】
アンテナ装置100M1は、基板101、アンテナエレメント110M1、及びマイクロストリップライン120M1を含む。
図13(A)には、基板101と、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示し、
図13(B)には、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示す。なお、
図13(B)には、基板101の位置を破線で示す。
【0082】
アンテナエレメント110M1は、Vivaldi型のアンテナであり、エレメント111M1及び112M1を有する。アンテナエレメント110M1は、透明導体300A(
図6参照)によって実現される。
【0083】
エレメント111M1は、基板101の+X方向側の表面に設けられ、給電点111M1A及び開放端111M1Cを有する。エレメント111M1は、給電点111M1Aから開放端111M1Cまで延在している。
【0084】
エレメント112M1は、基板101の-X方向側の表面に設けられ、給電点112M1A及び開放端112M1Cを有する。給電点112M1Aは、エレメント111M1の給電点111M1Aと平面視で重ねて配置されている。エレメント112M1を-X方向から見た形状、サイズ、及び基板101に対する位置は、エレメント111M1を+X方向から見た形状、サイズ、及び基板101に対する位置と等しい。
【0085】
マイクロストリップライン120M1は、伝送路121M1A、121M1Bとグランド層122M1A、122M1Bとを有する。伝送路121M1A及び121M1Bは、基板101の+X方向側の表面に設けられる。伝送路121M1Aは、グランド層122M1Aと重ねて設けられる。伝送路121M1Bは、伝送路121M1Aの+Z方向側に接続され、グランド層122M1Bと重ねて設けられ、エレメント111M1の給電点111M1Aに接続されている。
【0086】
グランド層122M1Aは、基板101の-X方向側の表面において平面視で伝送路121M1Aと重ねて設けられている矩形状のグランドパターンである。グランド層122M1Bは、グランド層122M1Aの+Z方向側に連続的に形成されており、+Z方向側に行くに従ってY方向の幅が徐々に狭くなっている。グランド層122M1Bの+Z方向側の端部は、基板101のY方向の中央に位置し、グランド層122M1Bの+Z方向側の端部のY方向の幅は、エレメント112M1の給電点112M1AのY方向の幅と等しい。グランド層122M1Bの+Z方向側の端部は、エレメント112M1の給電点112M1Aに接続されている。
【0087】
このような構成を有するアンテナ装置100M1のうち、Z方向においてアンテナエレメント110M1と、マイクロストリップライン120M1の+Z方向側の一部分とが設けられる部分は、
図1及び
図2に示す部分100Aである。また、アンテナ装置100M1のうち、マイクロストリップライン120M1のうちの残りの部分が設けられる区間は、
図1及び
図2に示す部分100Bである。部分100Aは、
図3に示すディスプレイパネル231の上に位置するので、表示を妨げないようにするために透明であればよい。
【0088】
図14は、アンテナ装置100M1のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図14には、アンテナ装置100M1の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが28GHzの前後で-5dB以下になる良好な帯域が得られた。なお、約41GHz前後における-5dB以下の帯域は、意図せずに生じたものである。
【0089】
図15は、アンテナ装置100M1の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
図15に示す指向性は、アンテナ装置100M1のメインローブの指向性である。なお、0度の方向は+Z方向に相当し、90度の方向は+X方向に相当する。
図15に示すように、+Z方向(0度の方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0090】
電子機器200にアンテナ装置100M1を取り付けた場合の指向性は、
図10に示すように電子機器200にアンテナ装置100を取り付けた場合の指向性と略同様になると考えられる。
【0091】
アンテナ装置100M1は、アンテナ装置100と同様に、透明な基板101に透明なアンテナエレメント110M1を設けた構成を有する。透明なアンテナエレメント110M1は、透明カバー220の外側から見える位置に設けられており、ディスプレイパネル231(
図3参照)に重ねて設けられている。
【0092】
したがって、電子機器200の透明カバー220の外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメント110M1と、マイクロストリップライン120M1のうちの+Z方向側の透明な部分と、透明な基板101とを含むアンテナ装置100M1を提供できる。
【0093】
また、Vivaldi型のアンテナエレメント110M1とマイクロストリップライン120M1は、非常に薄く形成できる。例えば、アンテナ装置100M1に許容される厚さが100μm以下のように制約が大きい場合には、パッチアンテナのようにグランド層にある程度の厚さが必要なアンテナ装置を用いることは困難である。その点において、非常に薄く形成可能なVivaldi型のアンテナエレメント110M1とマイクロストリップライン120M1を含むアンテナ装置100M1は、薄型化の観点で非常に有利である。
【0094】
図16及び
図17は、アンテナ装置100M2を示す図である。
図16及び
図17には、折り曲げる前の状態のアンテナ装置100M2をYZ平面に平行に示す。アンテナ装置100M2は、部分100M2A及び100M2Bを含む。部分100M2A及び100M2Bは、
図1、
図2、
図4、及び
図5に示す部分100A及び100Bと同様であり、部分100M2Aは、電子機器200又は200Aの透明カバー220又は220Aを介して電子機器200又は200Aの外から見える部分であり、部分100M2Bは、表示操作部230又は230Aの裏側に配置され、電子機器200又は200Aの外から見えない部分である。
【0095】
図16及び
図17では、一例として、部分100M2Aと部分100M2Bとの境界がZ方向におけるマイクロストリップライン120の+Z方向側の端部から1/2の構成を示す。
【0096】
アンテナ装置100M2は、基板101、アンテナエレメント110、導波器115、及びマイクロストリップライン120を含む。アンテナ装置100M2は、
図4及び
図5に示すアンテナ装置100に導波器115を追加した八木宇田アンテナである。
【0097】
導波器115は、アンテナエレメント110と同様に、透明導体300A(
図6参照)によって実現される。また、伝送路121及びグランド層122を有するマイクロストリップライン120のZ方向の長さは、
図4及び
図5に示すアンテナ装置100のマイクロストリップライン120のZ方向の長さよりも短いが、構成は同様である。
【0098】
図17(A)には、基板101と、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示し、
図17(B)には、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示す。なお、
図17(B)には、基板101の位置を破線で示す。
【0099】
導波器115は、2つの導波器115A、115Bを有する。以下では、2つの導波器115A、115Bを区別しない場合には、単に導波器115と称す。
図16及び
図17には、導波器115が2つの導波器115A、115Bを有する構成を示すが、導波器115の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0100】
導波器115A、115BのY方向の長さは、アンテナエレメント110の開放端111Cと開放端112Cとの間の長さよりも少し短い。導波器115Aと導波器115BのZ方向の間隔Gは、アンテナエレメント110の開放端111C及び112Cの間の区間と、導波器115AとのZ方向の間隔Gと等しい。
【0101】
このような構成を有するアンテナ装置100M2のうち、Z方向においてアンテナエレメント110と導波器115と、マイクロストリップライン120のうちの+Z方向側の一部分とが設けられる部分は、
図1及び
図2に示す部分100Aである。また、アンテナ装置100M2のうち、マイクロストリップライン120の残りの部分が設けられる部分は、
図1及び
図2に示す部分100Bである。部分100Aは、
図3に示すディスプレイパネル231の上に位置するので、表示を妨げないようにするために透明であればよい。
【0102】
図18は、導波器115の数と、間隔Gと、指向性及びゲインとの関係を示す図である。
図18(A)には、間隔Gに対する指向性の特性を示す。
図18(B)には、間隔Gに対するゲインの特性を示す。導波器115の数は、0個、1個、3個、5個である。導波器115が0個の場合は、アンテナエレメント110はダイポールアンテナ(Dipole)であり、導波器115が1個、3個、5個の場合は、アンテナエレメント110は八木宇田アンテナである。また、指向性は、メインローブの角度(deg.)を表し、ゲインは、メインローブのゲイン(dBi)を表す。
【0103】
図18(A)に示すように、間隔Gが1mmと2mmの場合には、導波器115が1個、3個、5個のいずれの場合においても90度前後の指向性が得られた。これは、
図16及び
図17において+X方向の指向性が得られていることを意味する。
【0104】
また、導波器115が1個の場合は、間隔Gを3mm以上にすると、約10度前後の指向性が得られた。導波器115が3個の場合は、間隔Gを3mmと4mmにすると、約10度前後の指向性が得られ、5mm以上では、約90度又はそれ以上の指向性が得られた。導波器115が5個の場合は、間隔Gを3にすると、約10度前後の指向性が得られ、4mm以上では、約75度又はそれ以上の指向性が得られた。
【0105】
ダイポールアンテナの指向性は約35度であることから、導波器115の数と個数を選択することによって、指向性を調節できることが分かった。
【0106】
また、
図18(B)に示すように、導波器115が1個の場合は、間隔Gを1mmから4mmまで拡げると、ゲインが約2dBiから約5dBiまで増大し、間隔Gが5mm以上では、ゲインは約3.5dBiに低下する特性が得られた。
【0107】
導波器115が3個と5個の場合は、間隔Gが1mmと2mmの場合には、約4.5dBiのゲインが得られ、間隔Gを3mm以上から5mmまで拡げると、ゲインが約2dBiまで徐々に低下し、間隔Gが6mmになると、再びゲインは少し増大する特性が得られた。
【0108】
導波器115の個数がいずれである場合においても、間隔Gを選択することで、ダイポールアンテナのゲイン(約3.7dBi)以上のゲインが得られることを確認することができた。
【0109】
図19は、導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2のS11パラメータの周波数特性を示す図である。導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2は、導波器115が1個の場合に最大のゲインが得られた構成である(
図18(B)参照)。
【0110】
図19には、アンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが28GHzの前後で-5dB以下になる良好な帯域が得られた。
【0111】
図20は、導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
図20に示す指向性は、アンテナ装置100M2のメインローブの指向性である。なお、0度の方向は+Z方向に相当し、90度の方向は+X方向に相当する。
図20に示すように、+Z方向(0度の方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0112】
電子機器200に導波器115が1個で間隔Gを4mmに設定したアンテナ装置100M2を取り付けた場合の指向性は、
図10に示すように電子機器200にアンテナ装置100を取り付けた場合の指向性と略同様になると考えられる。
【0113】
図21は、導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2のS11パラメータの周波数特性を示す図である。導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2は、導波器115が5個の場合に最大のゲインが得られた構成である(
図18(B)参照)。
【0114】
図21には、アンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが28GHzの前後で-5dB以下になる良好な帯域が得られた。
【0115】
図22は、導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
図22に示す指向性は、アンテナ装置100M2のメインローブの指向性である。
図22に示すように、+X方向(90度の方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0116】
電子機器200に導波器115が5個で間隔Gを1mmに設定したアンテナ装置100M2を取り付けた場合の指向性は、電子機器200の透明カバー220から鉛直上方を向く指向性になる。
【0117】
図23は、電子機器200Aの例示的な断面にアンテナ装置100M2の指向性を記した図である。部分100M2Aと部分100M2Bの位置を分かり易くするために、部分100M2Aを白抜きで示し、部分100M2Bをグレーで示す。
【0118】
図23では、透明カバー220Aの上面部220A1と-Z方向側の湾曲部220A2とにわたって、アンテナ装置100M2の部分100M2Aが設けられている。部分100M2Aは、
図16及び
図17に示すアンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120のうちの+Z方向側の一部分とが設けられている部分であり、透明な部分である。また、アンテナ装置100M2の部分100M2Bは、表示操作部230Aの裏側に設けられている。部分100M2Bは、
図16及び
図17に示すマイクロストリップライン120のうちの部分100Aに含まれない残りの部分が設けられている部分であり、透明ではない部分である。
【0119】
図23では、説明の便宜上、アンテナ装置100M2の部分100M2Aを透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間に示すが、アンテナ装置100M2の部分100M2Aは、表示操作部230Aと透明カバー220Aとの間に限らず、
図3に示す層232及び233の間、層233と接着層234の間、又は、層232とディスプレイパネル231との間に配置してもよい。
【0120】
このようにアンテナ装置100M2を含む電子機器200Aにおいて、
図22に示す指向性は、
図23では(2)で示す方向になる。すなわち、アンテナ装置100M2は、(2)で示す方向に電波を放射可能であり、(2)で示す方向の電波を受信可能である。(2)で示す方向は、電子機器200Aの透明カバー220Aの上面部220A1の法線方向に沿って放射される方向である。透明カバー220Aの上面部220A1は、透明カバー220Aの表面の一部であり、電子機器200Aの表面の一部である。このような方向(2)を向く指向性を有するので、アンテナ装置100は、電子機器200の外部の通信機と通信しやすい。
【0121】
アンテナ装置100M2は、アンテナ装置100に、導波器115を追加した構成を有する。透明なアンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120のうちの部分100M2Aに含まれる部分とは、透明カバー220の外側から見える位置に設けられており、ディスプレイパネル231(
図3参照)に重ねて設けられている。
【0122】
したがって、電子機器200の透明カバー220の外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメント110と、透明な導波器115と、マイクロストリップライン120のうちの部分100M2Aに含まれる透明な部分と、透明な基板101とを含むアンテナ装置100M2を提供できる。
【0123】
また、アンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120とは、非常に薄く形成できる。例えば、アンテナ装置100M2に許容される厚さが100μm以下のように制約が大きい場合には、パッチアンテナのようにグランド層にある程度の厚さが必要なアンテナ装置を用いることは困難である。その点において、非常に薄く形成可能なアンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120とを含むアンテナ装置100M2は、薄型化の観点で非常に有利である。
【0124】
図24は、実施の形態の変形例の電子機器200Bを示す断面図である。
図24には、
図11に対応する断面を示す。電子機器200Bは、アンテナ装置100とアンテナ装置100M2とを含む。アンテナ装置100及びアンテナ装置100M2は、
図4、
図5、
図16、及び
図17に示す基板101の変わりに、共通の基板101Bを含む。アンテナ装置100及びアンテナ装置100M2は、互いに共振周波数が異なる構成を有していてもよい。
【0125】
基板101Bは、平面視で表示操作部230Aよりも大きく、透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間の全体にわたって設けられている。基板101Bの端部101B1、101B2は、折り曲げられて表示操作部230Aの裏側に位置しており、配線基板240に接続されている。アンテナ装置100は、-Z方向側の上面部220A1と湾曲部220A2とに設けられている。アンテナ装置100M2は、+Z方向側の上面部220A1と湾曲部220A3とに設けられている。このため、Z方向においてアンテナ装置100及びアンテナ装置100M2が設けられていない部分では、透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間に基板101Bのみが設けられている。
【0126】
基板101Bを平面視で表示操作部230Aよりも大きくして、基板101Bの端部101B1、101B2を表示操作部230Aの裏側に位置させたのは、基板101Bの端部101B1、101B2が目立つような場合を考慮して、端部101B1、101B2が透明カバー220Aの外側から見えないようにするためである。
【0127】
このため、端部101B1、101B2は、ディスプレイパネル231(
図3参照)を含む表示操作部230Aの裏側に位置していればよく、
図24に示すように配線基板240に接続されていなくてもよい。
【0128】
また、基板101Bの端部は、XY断面においても、折り曲げられて表示操作部230Aの裏側に位置している。基板101Bの端部が透明カバー220Aの外側から見えないようにするためである。
【0129】
図24では、アンテナ装置100の部分100Aは、透明カバー220Aの平坦な上面部220A1と湾曲部220A2とにわたって設けられている。部分100Aの範囲は、
図11と同様である。また、部分100Bの範囲も
図11と同様である。
図24では、説明の便宜上、アンテナ装置100の部分100Aを透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間に示すが、アンテナ装置100の部分100Aは、表示操作部230Aと透明カバー220Aとの間に限らず、
図3に示す層232及び233の間、層233と接着層234の間、又は、層232とディスプレイパネル231との間に配置してもよい。
【0130】
また、
図24では、透明カバー220Aの+Z方向側の湾曲部220A3と上面部220A1とにわたって、アンテナ装置100M2の部分100M2Aが設けられている。
図24では、説明の便宜上、アンテナ装置100M2の部分100M2Aを透明カバー220Aと表示操作部230Aとの間に示すが、アンテナ装置100M2の部分100M2Aは、表示操作部230Aと透明カバー220Aとの間に限らず、
図3に示す層232及び233の間、層233と接着層234の間、又は、層232とディスプレイパネル231との間に配置してもよい。
【0131】
アンテナ装置100及びアンテナ装置100M2は、表示操作部230Aよりも大きい基板101Bを有し、基板101Bの端部101B1、101B2を表示操作部230Aの裏側に位置させている。
【0132】
このため、基板101Bの端部101B1、101B2が透明カバー220Aの外側から見えない意匠製の高いアンテナ装置100及びアンテナ装置100M2を提供できる。
【0133】
また、ここでは、電子機器200Bがアンテナ装置100及びアンテナ装置100M2を含む形態について説明したが、アンテナ装置100及びアンテナ装置100M2のいずれか1つを含む構成であってもよい。また、電子機器200Bは、アンテナ装置100及びアンテナ装置100M2以外のアンテナ装置を含んでいてもよいし、3つ以上のアンテナ装置を含んでいてもよい。
【0134】
電子機器200Bが共振周波数の異なる複数のアンテナ装置を含む場合には、複数の通信帯域で通信可能な電子機器200Bを提供できる。
【0135】
図25は、アンテナ装置100M2を示す図である。アンテナ装置100M2は、基板101、アンテナエレメント110、導波器115、及びマイクロストリップライン120を含む。アンテナエレメント110は、エレメント111及び112を有し、マイクロストリップライン120は、伝送路121及びグランド層122を有する。
【0136】
ここでは、Z方向における給電点111Aにおいて、アンテナ装置100M2を折り曲げたモデルについて検討を行う。
図26は、アンテナ装置100M2を折り曲げる手法を説明する図である。
図26(A)、(B)には、例示的な部分100M2A、100M2Bを示す。
【0137】
図26(A)には、折り曲げていない状態のアンテナ装置100M2を示し、
図26(B)には折り曲げた状態のアンテナ装置100M2を示す。このようなアンテナ装置100M2の折り曲げは、シミュレーションのモデルを使って行うものであるが、ここでは説明を分かり易くするために、仮想的な治具105を用いてアンテナ装置100M2の折り曲げについて説明する。
【0138】
また、アンテナ装置100M2のモデルは、
図26(A)、(B)に示すように、カバー102及び103を含む。カバー102及び103は、それぞれ、接着層102A及び103Aでアンテナ装置100M2の+X方向側と-X方向側の表面に貼り付けられている。なお、カバー102及び103のサイズは、基板101のサイズと等しい。
【0139】
治具105は、XZ断面において半径1mmで湾曲し、Y方向に長い端部105Aを有する。
図26(A)に示すように、端部105Aをアンテナ装置100M2の-X方向側の表面に押し当てる。端部105AのZ方向における位置がZ=0mmのときに、端部105Aは給電点111Aの位置にある。すなわち、端部105AのZ方向における位置がZ=0mmのときに、端部105AのZ方向における位置は、アンテナエレメント110とマイクロストリップライン120の境界の位置に等しい。
【0140】
図26(B)に示すように、アンテナ装置100M2のアンテナエレメント110側をマイクロストリップライン120側に対して
図26(B)における時計回りの方向に90度折り曲げる。このときに、XYZ座標も同様に90度回転させる。すなわち、折り曲げた後も+Z方向はアンテナエレメント110のエンドファイアの方向になる。
【0141】
このようなアンテナ装置100M2の折り曲げを治具105の位置をZ=0mm、Z=2mm、Z=4mmの3種類の位置に設定して行ったところ、
図27(A)~(C)に示すモデルを得た。
図27は、アンテナ装置100M2の折り曲げモデルを示す図である。
【0142】
図27(A)に示すモデルは、Z=0mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M2のモデルである。
図27(B)に示すモデルは、Z=2mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M2のモデルである。
図27(C)に示すモデルは、Z=4mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M2のモデルである。
【0143】
治具105の位置がZ=0mmから、Z=2mm、Z=4mmになると、治具105の位置は、アンテナエレメント110とマイクロストリップライン120の境界よりも+Z方向側にシフトする。このため、Z=2mm、Z=4mmの場合には、アンテナエレメント110の途中で折り曲げられることになる。
【0144】
図28は、折り曲げ位置の異なるアンテナ装置100M2の指向性を示す図である。
図28には、折り曲げ位置がZ=0mm、Z=2mm、Z=4mm、Z=6mmの4種類のアンテナ装置100M2のモデルで得た指向性を示す。
【0145】
Z=0mmでは、180度の方向(-Z方向)のバックファイア方向の指向性を示すのに対して、Z=2mm、4mm、6mmでは、90度の方向(+X方向)の鉛直上向きの指向性を示すことが分かる。
【0146】
このように、折り曲げ位置を変えることにより、アンテナ装置100M2の指向性を調節できることが分かった。
【0147】
図29は、実施の形態の変形例によるアンテナ装置100M3を示す図である。アンテナ装置100M3は、基板101、アンテナエレメント110、反射器116、及びマイクロストリップライン120を含む。アンテナ装置100M3は、
図16及び
図17に示すアンテナ装置100M2の導波器115の変わりに反射器116を含む構成を有する。反射器116は、アンテナエレメント110と同様に、透明導体300A(
図6参照)によって実現される。
【0148】
アンテナ装置100M3は、部分100M3A及び100M3Bを含む。部分100M3A及び100M3Bは、
図1、
図2、
図4、及び
図5に示す部分100A及び100Bと同様であり、部分100M3Aは、電子機器200又は200Aに取り付けた場合に、電子機器200又は200Aの透明カバー220又は220Aを介して電子機器200又は200Aの外から見える部分であり、部分100M3Bは、表示操作部230又は230Aの裏側に配置され、電子機器200又は200Aの外から見えない部分である。
【0149】
図29では、一例として、部分100M3Aと部分100M3Bとの境界がZ方向におけるマイクロストリップライン120の+Z方向側の端部から1/2の構成を示す。
【0150】
反射器116のY方向の長さは、アンテナエレメント110の開放端111Cと開放端112Cとの間のY方向の長さよりも少し長い。
【0151】
図30は、アンテナ装置100M3のモデルを示す図である。
図30に示すアンテナ装置100M3は、Z=1mmの位置で折り曲げてある。Z=1mmの位置は、給電点111Aよりも+Z方向側に1mmの位置である。
【0152】
図31は、Z=1mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M3のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図31には、アンテナ装置100M3の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが28GHzの前後で-5dB以下になる良好な帯域が得られた。なお、約41GHz前後における-5dB以下の帯域は、意図せずに生じたものである。
【0153】
図32は、Z=1mmの位置で折り曲げたアンテナ装置100M3の共振周波数を28GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
図32に示す指向性は、アンテナ装置100M3のメインローブの指向性である。なお、0度の方向は+Z方向(エンドファイアの方向)に相当し、90度の方向は+X方向に相当し、180度は-Z方向(バックファイアの方向)に相当する。
図32に示すように、-Z方向(バックファイアの方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0154】
このようにバックファイアの方向の指向性が得られたのは、アンテナ装置100M3が反射器116を含むことと、グランド層122がアンテナエレメント110に対して90度折り曲げられてアンテナエレメント110のバックファイアの方向からずれたこととの相乗効果であると考えられる。
【0155】
アンテナ装置100M3は、アンテナ装置100に、反射器116を追加して折り曲げた構成を有する。透明なアンテナエレメント110及び反射器116は、透明カバー220の外側から見える位置に設けることができる。
【0156】
したがって、電子機器200の透明カバー220の外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメント110と、透明な反射器116と、マイクロストリップライン120のうちの+Z方向側の透明な一部分と、透明な基板101とを含むアンテナ装置100M3を提供できる。
【0157】
また、アンテナエレメント110と、反射器116と、マイクロストリップライン120とは、非常に薄く形成できる。例えば、アンテナ装置100M3に許容される厚さが100μm以下のように制約が大きい場合には、パッチアンテナのようにグランド層にある程度の厚さが必要なアンテナ装置を用いることは困難である。その点において、非常に薄く形成可能なアンテナエレメント110と、反射器116と、マイクロストリップライン120とを含むアンテナ装置100M3は、薄型化の観点で非常に有利である。
【0158】
図33及び
図34は、アンテナ装置100M4を示す図である。アンテナ装置100M4は、基板101、アンテナエレメント110、導波器115、及びマイクロストリップライン120を含む。アンテナ装置100M4は、八木宇田アンテナであり、第5世代移動通信システム(5G)の6GHz未満の帯域(Sub6)用の構成を有する。
【0159】
アンテナ装置100M4は、部分100M4A及び100M4Bを含む。部分100M4A及び100M4Bは、
図1、
図2、
図4、及び
図5に示す部分100A及び100Bと同様であり、部分100M4Aは、電子機器200又は200Aに取り付けた場合に、電子機器200又は200Aの透明カバー220又は220Aを介して電子機器200又は200Aの外から見える部分であり、部分100M4Bは、表示操作部230又は230Aの裏側に配置され、電子機器200又は200Aの外から見えない部分である。
【0160】
図33及び
図34では、一例として、部分100M4Aと部分100M4Bとの境界がZ方向におけるマイクロストリップライン120の+Z方向側の端部から1/2の構成を示す。
【0161】
図34(A)には、基板101と、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示し、
図34(B)には、基板101の+X方向側の表面に配置される構成要素を示す。なお、
図34(B)には、基板101の位置を破線で示す。
【0162】
アンテナ装置100M4が含む導波器115は、一例として1つである。
【0163】
図35は、導波器115が1個のSub6用のアンテナ装置100M4のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図35には、アンテナ装置100M4の共振周波数を3.5GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めたS11パラメータの周波数特性を示す。S11パラメータが3.5GHzの前後で-5dB以下になる良好な帯域が得られた。
【0164】
図36は、導波器115が1個のSub6用のアンテナ装置100M4の共振周波数を3.5GHzに設定して行った電磁界シミュレーションで求めた指向性を示す図である。
図36に示す指向性は、アンテナ装置100M4のメインローブの指向性である。なお、0度の方向は+Z方向に相当し、90度の方向は+X方向に相当する。
図36に示すように、+Z方向(0度の方向)の指向性が得られていることが分かる。
【0165】
電子機器200に導波器115が1個のSub6用のアンテナ装置100M4を取り付けた場合の指向性は、
図10に示すように電子機器200にアンテナ装置100を取り付けた場合の指向性と略同様になると考えられる。
【0166】
アンテナ装置100M4は、アンテナ装置100に、導波器115を追加してSub6用のサイズにした構成を有する。透明なアンテナエレメント110及び導波器115は、透明カバー220の外側から見える位置に設けられており、ディスプレイパネル231(
図3参照)に重ねて設けられている。
【0167】
したがって、電子機器200の透明カバー220の外側から見える位置に配置可能な透明なアンテナエレメント110と、透明な導波器115と、マイクロストリップライン120のうちの+Z方向側の透明な一部分と、透明な基板101とを含むアンテナ装置100M4を提供できる。
【0168】
また、アンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120とは、非常に薄く形成できる。例えば、アンテナ装置100M4に許容される厚さが100μm以下のように制約が大きい場合には、パッチアンテナのようにグランド層にある程度の厚さが必要なアンテナ装置を用いることは困難である。その点において、非常に薄く形成可能なアンテナエレメント110と、導波器115と、マイクロストリップライン120とを含むアンテナ装置100M4は、薄型化の観点で非常に有利である。
【0169】
図37は、実施の形態の変形例の電子機器200Cを示す図である。電子機器200Cは、
図11に示す電子機器200Aのアンテナ装置100の変わりに、バックファイアの方向の指向性を有するアンテナ装置100M3(
図29参照)を含む。
【0170】
アンテナ装置100M3は、透明カバー220Aの-Z方向側の湾曲部220A2の裏側に、アンテナ装置100M3の折り曲げられた部分が位置するように配設されており、(3)で示す方向に電波を放射可能であり、(3)で示す方向の電波を受信可能である。(3)で示す方向は、電子機器200Aの透明カバー220の湾曲部220A2から、電子機器200Aの外側に向かって放射される方向である。このような方向(3)を向く指向性を有するので、アンテナ装置100M3は、電子機器200Aの外部の通信機と通信しやすい。
【0171】
このように、バックファイアの方向の指向性を有するアンテナ装置100M3を透明カバー220Aの湾曲部220A2の裏側に配設すれば、透明カバー220や筐体210からより離れて外側を向く指向性を得ることができる。
【0172】
図38は、実施の形態の変形例の電子機器200Dを示す図である。電子機器200Dは、
図37に示す電子機器200Cのアンテナ装置100M3を
図4及び
図5に示すアンテナ装置100に変更したものである。アンテナ装置100は、エンドファイアの方向の指向性を有する。
【0173】
アンテナ装置100は、透明カバー220Aの-Z方向側の湾曲部220A2の裏側において、部分100Aと部分100Bとの間で緩やかに折り曲げられて配設されており、(4)で示す方向に電波を放射可能であり、(4)で示す方向の電波を受信可能である。(4)で示す方向は、電子機器200Aの透明カバー220の上面部220A1及び湾曲部220A2から、電子機器200Aの外側に向かって放射される方向である。このような方向(4)を向く指向性を有するので、アンテナ装置100M3は、電子機器200Aの外部の通信機と通信しやすい。
【0174】
このように、エンドファイアの方向の指向性を有するアンテナ装置100を透明カバー220Aの湾曲部220A2の裏側に配設すれば、透明カバー220や筐体210からより離れて外側を向く指向性を得ることができる。
【0175】
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0176】
なお、本国際出願は、2020年2月3日に出願した日本国特許出願2020-016621号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0177】
100、100M1、100M2、100M3、100M4 アンテナ装置
101、101B 基板
110、110M1 アンテナエレメント
111、111M1、112、112M1 エレメント
120、120M1 マイクロストリップライン
121 伝送路
122 グランド層
200、200A、200B、200C,200D 電子機器
210 筐体
220 透明カバー
230 表示操作部