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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】光変調器とそれを用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20250115BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
G02F1/035
G02F1/01 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021013606
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117099
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】一明 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 稔
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/193981(WO,A1)
【文献】米国特許第10788689(US,B1)
【文献】特開2006-284838(JP,A)
【文献】特開平05-289034(JP,A)
【文献】特開2011-209456(JP,A)
【文献】特開2015-045790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、
該制御電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板を備えた光変調器において、
該制御電極が信号電極及び該信号電極を挟む接地電極とを備え、
該配線が信号配線と接地配線とを備え、
該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分においては、該信号電極は前記2つに分岐した該分岐導波路に挟まれており、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分における前記2つの分岐した該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔よりも広くなっており、
該変調信号の進行方向に対し、該接地電極と該接地配線とが先に電気的に接続され、その方側で、該信号電極と該信号配線と電気的に接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、
該制御電極に印加される変調信号を終端する配線を設けた配線基板を備えた光変調器において、
該制御電極が信号電極及び該信号電極を挟む接地電極とを備え、
該配線が信号配線と接地配線とを備え、
該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分においては、該信号電極は前記2つに分岐した該分岐導波路に挟まれており、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分における前記2つの分岐した該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔よりも広くなっており、
該変調信号の進行方向に対し、該信号電極と該信号配線とが先に電気的に接続され、その方側で、該接地電極と該接地配線と電気的に接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該配線基板には、該変調信号を中継する配線と該変調信号を終端する配線とが、共に形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、前記電気的に接続する部分では、フリップチップ接続を用いて電気的接続が行われていることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光変調器において、該光導波路は、凸部の高さが1μm以下の薄板のリブ構造で形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項1に記載の光変調器において、該光制御基板に隣接して該制御電極に印加する電気信号を発生するドライバ回路素子が配置され、該ドライバ回路素子の出力端子は、該配線基板の配線に接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項7】
請求項6に記載の光変調器と、該ドライバ回路素子に入力する変調信号を生成する信号発生器とを備えることを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器とそれを用いた光送信装置に関し、特に、1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、該制御電極に印加される電気信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光導波路と該光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極とを有する光制御基板を利用した光変調器が多用されている。近年の光変調器には広帯域化や小型化が求められており、例えば、一つの光変調器に複数の異なる高周波信号を同時に印加することが行われている。
【0003】
さらに、変調電極を含む各制御電極への電気信号の印加には、電気配線の取り回しを簡潔にするため、中継基板が利用されている。図1や特許文献1に示すように、中継基板2から光制御基板1への電気的接続には、配線のし易さの関係から、専らワイヤーボンディングWBが採用されている。しかしながら、96GBaud-800G変調器などように、数十GHz以上、特に、100GHzを超える周波数の光変調器においては、ワイヤーボンディングは、電気信号の伝搬損失が大きくなる。
【0004】
また、図1に示すように、複数の制御電極(S1~S4)を使用する場合は、中継基板が配置された光制御基板の側辺の近傍に配置された各入力ポートから各制御電極の作用部(図1の一点鎖線の左側、矢印Aで示す範囲)に到達するまでの配線の長さが異なり、各制御電極(各ポート)間で電気特性の差が発生する。
【0005】
図2では、光変調器の小型化を図るため、光入出力(Lin,Lout1,Lout2)部を光制御基板1の同じ側面に設けることが行われている。このような光変調器においても、入力される電気信号Sinについては、各入力ポートから各制御電極(S1~S4)の作用部(矢印Aで示す部分)までの範囲が、各制御電極間で異なり、図1と同様に、電気特性の差が発生する。図2では、信号電極Sのみ点線で示している。符号PDは、光導波路OWの合波部から放出される放射光の一部を検出するための光検出手段である。
【0006】
中継基板を光制御基板の側辺に沿って配置するには、中継基板を配置するスペースを別途確保する必要があり、光制御基板等を収容する筐体を小型化することが難しくなる。しかも、中継基板には、インピーダンス調整のための経路設計にスペースも必要となり、より小型化を困難にしている。
【0007】
これらの不具合を解消する方法として、特許文献2では、光制御基板に重なるように配線基板を配置する構造も提案されている。しかしながら、配線基板と光制御基板との電気的接続においては、配線基板と制御電極、特に変調信号に係る信号配線と信号電極との電気的接続が十分に確保することが難しくなっている。つまり、図2に示すように、光変調器の小型化のため、光導波路を急激に曲げる場合には、光導波路による光波の閉じ込めを強くするため、光導波路の幅や厚みを1μm程度以下に設定した薄板リブ構造が提案されている。このため、光導波路を挟むよう信号電極や接地電極を配置する電極間の間隔は益々狭くなり、信号電極自体の幅も極めて狭くなり、配線基板の信号配線と信号電極との接続部分の面積を十分に確保することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5494704号公報
【文献】特開2014-191250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光制御基板の作用部における信号電極の幅が狭くなった場合でも、信号電極と配線基板の信号配線との間の電気的接続を確実に行うことが可能な光変調器を提供することである。また、これらの光変調器を用いた光伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器及び光送信装置は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、該制御電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器において、該制御電極が信号電極及び該信号電極を挟む接地電極とを備え、該配線が信号配線と接地配線とを備え、該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分においては、該信号電極は前記2つに分岐した該分岐導波路に挟まれており、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分における前記2つの分岐した該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔よりも広くなっており、該変調信号の進行方向に対し、該接地電極と該接地配線とが先に電気的に接続され、その方側で、該信号電極と該信号配線と電気的に接続されていることを特徴とする。
(2) 1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、該制御電極に印加される変調信号を終端する配線を設けた配線基板を備えた光変調器において、該制御電極が信号電極及び該信号電極を挟む接地電極とを備え、該配線が信号配線と接地配線とを備え、該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分においては、該信号電極は前記2つに分岐した該分岐導波路に挟まれており、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分における前記2つの分岐した該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔よりも広くなっており、該変調信号の進行方向に対し、該信号電極と該信号配線とが先に電気的に接続され、その方側で、該接地電極と該接地配線と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該配線基板には、該変調信号を中継する配線と該変調信号を終端する配線とが、共に形成されていることを特徴とする。
【0012】
) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、前記電気的に接続する部分では、フリップチップ接続を用いて電気的接続が行われていることを特徴とする。
【0013】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光変調器において、該光導波路は、凸部の高さが1μm以下の薄板のリブ構造で形成されていることを特徴とする。
【0014】
(6) 上記(1)に記載の光変調器において、該光制御基板に隣接して該制御電極に印加する電気信号を発生するドライバ回路素子が配置され、該ドライバ回路素子の出力端子は、該配線基板の配線に接続されていることを特徴とする。
【0015】
) 上記(6)に記載の光変調器と、該ドライバ回路素子に入力する変調信号を生成する信号発生器とを備えることを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路と、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板と、該制御電極に印加される電気信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器において、該制御電極が信号電極を備え、該配線が信号配線を備え、該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分においては、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分における該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔よりも広くなっているため、信号電極と信号配線とを電気的に接続する部分における信号電極の幅を十分に確保することができ、両者の電気的接続を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の光変調器の一例を示す図である。
図2】従来の光変調器の他の一例を示す図である。
図3】本発明に係る光変調器の一例を示す図である。
図4図3の制御電極における電気信号を入力する部分Scの拡大図である。
図5図3の光変調器の光制御基板1に配線基板(中継基板)20を重ね合わせた状態を示す図である。
図6図5の信号電極と配線基板との電気的接続の状況を示す断面図である
図7】本発明に係る光変調器の他の一例を示す図である。
図8図7の光変調器の光制御基板1に配線基板(中継基板)20と配線基板(終端基板)21とを重ね合わせた状態を示す図である。
図9】本発明に係る光送信装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、図3乃至8に示すように、1つの光波を2つに分岐する分岐導波路を少なくとも含む光導波路OWと、該分岐導波路に電界を印加するための制御電極とを有する光制御基板1と、該制御電極に印加される電気信号を中継する配線又は該電気信号を終端する配線を設けた配線基板(20,21)とを備えた光変調器において、該制御電極が信号電極Sを備え、該配線が信号配線を備え、図4に示すように、該信号電極と該信号配線とを電気的に接続する部分(信号電極側はSc)においては、該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔W1は、該制御電極が該分岐導波路に電界を印加する作用部分(符号A)における該分岐導波路が該信号電極を挟む間隔W2よりも広くなっていることを特徴とする。
【0019】
図3は、本発明に係る光変調器を構成する光制御基板1を示す図であり、光制御基板1には、光導波路OWと制御電極(信号電極S,接地電極は不図示)が形成されている。図4は、図3の信号電極Sの電気信号を入力する部分の拡大図である。さらに、図5は、図4の光制御基板1に電気信号の中継を行う線路を備えた配線基板(中継基板20)を重ねて配置した様子を示したものである。また、図6は、図5における一点鎖線B-B’における断面図の一部を示したものである。
【0020】
光導波路OWを含む光制御基板1として、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの電気光学効果を有する強誘電体基板を用いることも可能であるが、補強基板上にこれらの材料による気相成長膜を形成したものを利用することも可能である。さらに、InPなどの半導体材料や有機材料など種々の材料を利用した基板も利用可能である。補強基板には、石英、水晶等が利用できる。
【0021】
光導波路の形成方法としては、図6に示すように、光導波路(OW1,OW2)以外の基板表面をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板に光導波路に対応する部分を凸状としたリブ型光導波路を利用することが可能である。さらに、リブ型光導波路の形成に併せて、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に高屈折率部分を形成するなど、複合的な光導波路を利用することも可能である。
【0022】
光導波路を形成した基板100の厚さは、変調信号のマイクロ波と光波との速度整合を図るため、5μm以下、より好ましくは3μm以下の薄板で構成される。薄板を形成するには、補強基板110に基板100を直接接合で貼り付けた状態で薄く研磨する方法や、補強基板110上に基板100を気相成長膜として形成する方法がある。リブ型光導波路(OW1,OW2)の高さは、2μm以下、より好ましくは1μm以下に設定される。
【0023】
光導波路(OW1,OW2)に電界を印加する制御電極には、変調信号のようなマイクロ波の電気信号を伝搬する信号電極と接地電極の組合せや、DCバイアス電圧を印加するバイアス用電極などがある。光導波路に沿って制御電極を形成する方法としては、AuやTiなどの下地金属の上にメッキ法によりAuを積層することで構成することができる。
【0024】
図6に示すように、光導波路(OW1,OW2)において、凸部の高さが1μm以下の薄板のリブ構造を有する場合には、制御電極、特に、信号電極Sと接地電極GNDによる変調電極は、光導波路に効率的電界を印加する構造と、電気信号と光波との伝搬速度の整合を図り、電気信号の伝搬損失を低減するための構造を考慮する必要がある。このため、信号電極Sと接地電極GNDには、各々に、下部電極部分(SlpとGlp)を設け、光導波路(OW1,OW2)に近接して、これらの下部電極部分を配置している。また、下部電極部分(SlpとGlp)の上側には下部電極部分よりも幅の狭い上部電極部分(SupとGup)を配置し、信号電極Sと接地電極GNDとの間隔を離すと共に、例えば、上部電極部分の高さを数十μm以上とするように、信号電極等における十分な断面積を確保している。
【0025】
図3は、本発明の光変調器に使用される光制御基板1の一例を示す平面図である。光導波路OWは、入力光Linを3段階の分岐部を経て、8つの分岐導波路を形成すると共に、その後、2段階の合波部を経て、最終的に2つの出力光(Lout1,Lout2)を出射するよう構成されている。
【0026】
点線枠のDC1とDC2は、バイアス制御を行うためのDCバイアス電極が配置される領域を示している。符号Cは光導波路を曲げる領域であり、光導波路の高さや幅を1μm以下に設定することで、光の閉じ込めを強くし、曲率半径を小さくすること可能となる。点線枠Aの領域は、光導波路(分岐導波路)に制御電極(変調電極)で電界を印加する作用部分を示している。PDは出力光(Lout1,Lout2)の出射前の一部を受光する受光素子である。このような受光素子に代え、当業者において周知の技術である合波部における放射モード光を受光するよう受光素子を配置することも可能である。
【0027】
図3では制御電極の中の信号電極Sのみしか明示していない。信号電極Sの入力部分Scは、図4に拡大図を示すように、作用部分の信号電極の幅よりも太い部分で構成されている。これは、後述するようにフリップチップ接続を行う際の、信号電極側の接続部分として機能する。図4に示すように、信号電極Sの電気的接続部分Scの幅が広くなるのと、それに合わせて分岐導波路(OW)の間隔も広くなる。このため、信号電極の接続部分はScにおいて、分岐導波路(OW)が信号電極Sを挟む間隔W1は、作用部分Aにおける該分岐導波路が信号電極Sを挟む間隔W2よりも広くなる。このように、光導波路を急激に曲げることができるのは、上述したように光導波路の光を閉じ込めが強いためでもある。
【0028】
図4では、信号電極Sを挟むように接地電極GNDも明示している。信号電極と同様に接地電極においても、配線基板の配線(接地配線)との電気的接続を行う必要があり、図4では、点線Gcに接地電極の接続部分を明示している。一般的に、変調信号の進行方向に対して、接地電極を先に接続し、その後、信号電極を接続する方が、より安定的に電気信号の移動を可能にすることができる。さらに好ましくは、変調信号の進行方向の前後で信号電極の接続部分を挟むように、接地電極の接続部分を複数(例えば4か所)設けることも可能である。L1は分岐導波路に入力する光であり、L2は分岐導波路を伝搬する光である。
【0029】
信号電極Sの入力部分Scは、作用部分の信号電極の幅よりも太い部分で構成されているが、更に、厚さが厚くても良い(例えば厚さ5μm~30μm)。厚さを厚くすることにより、フリップチップ接続を行う際の信号電極の破断や剥がれを防止し、接続強度を高めることができる。
【0030】
フリップチップ接続を行うことにより、ワイヤーボンディング接続と比べ電気信号の伝搬損失を改善することできる。又、フリップ接続を行うことにより、複数の信号電極の配線の長さをある程度一緒にすることができるので、各制御電極間での電気特性の差を低減することができる。
【0031】
信号電極Sへの電気信号の入力には、図5に示すような配線基板(中継基板)20が利用される。配線基板20は光制御基板1に重なるように配置され、光制御基板を収容する筐体自体のサイズを小型化している。配線基板20に一例としては、配線基板20の一側辺に沿って入力用パッド部20Pが形成され、該入力用パッド部20Pは、配線基板20の下面(光制御基板側の面)に配置された配線20Lに電気的に接続されている。配線20Lは、信号配線と接地配線を含み、配線20Lの他端は、フリップチップ接続部分FCで、図3又は図4に示した信号電極の接続部分Sc及び接地電極の接続部分Gcに電気的に接続されている。図6は信号電極Sにおけるフリップチップ接続部分FCによる配線基板20側(信号配線は不図示)との接続の様子を示している。フリップチップ接続のサイズは、例えば、幅が30~60μm程度であり、信号電極の接続部分の幅もこれに対応して30~80μm程度に設定される。
【0032】
図3の信号電極Sの構成は、作用部分Aを経た後は、図2の従来例と同様に、光制御基板1の側辺に沿って配置される出力パッド部分に接続され、外部に電気信号(変調信号)を出力(Sout)するように構成されている。これに対し、図7及び図8では、信号電極の出力側の端部にも作用部分よりも太い部分(接続部分Sc2)を形成し、配線基板(終端基板)21に直接、電気的に接続するよう構成することも可能である。図7図3の変形例であり、図8図5の変形例となる。
【0033】
図8の符号21は終端基板であり、終端基板には、信号電極と接続される出力用パッド部21PSが形成されている。また、接地電極に対して接続される出力用パッド部21PGも、設けることが可能である。信号電極Sの出力側では、一般的に、変調信号の進行方向に対して、信号電極を先に接続し、その後、接地電極を接続する方が、信号電極からの変調信号の放射を抑制することができる。さらに好ましくは、変調信号の進行方向の前後で信号電極の接続部分を挟むように、接地電極の接続部分を複数(例えば4か所)設けることも可能である。終端基板21には、終端抵抗等の終端素子TEが設けられ、出力用パッド部(21PS,21PG)と電気的に接続されている。
【0034】
図8では、終端基板21は、中継基板20とは別に設けられているが、両者を一体化した配線基板として形成することも可能である。当然、本発明の光変調器においては、中継基板は、従来通りとし、終端基板のみ図8のように光制御基板1に重ねて配置するよう構成することも可能である。また、配線基板に近接して受光素子PDが配置される場合は、配線基板(20,21)と受光素子PDとが重ならないように、配線基板の形状及び受光素子の配置を設定することが好ましい。受光素子PDは、光導波路OWの合波部からの放射光を検出するだけでなく、光導波路OWを伝搬する光波の一部を分岐させて検出するよう構成することも可能である。
【0035】
図9は、光送信装置の一例を示す図である。
光変調器において、光制御基板1に隣接して制御電極に印加する電気信号を発生するドライバ回路素子DRVが配置され、該ドライバ回路素子の出力端子は、上述した配線基板20の配線に接続される。図9の光制御基板1には、光ファイバーFを用いて、レンズ等の光学部品を介して入力光Linが入力される。他方、光制御基板1から出射した光波は、例えば、偏波合成手段PCを経て合成され、レンズ等の光学部品を介して、別の光ファイバーに入力され、出力光Loutとなる。
【0036】
さらに、ドライバ回路素子DRVに入力する変調信号S0を生成する信号発生器DSPを設け、光送信装置として構成することも可能である。光変調器とドライバ回路素子を筐体CSに組み込み、さらに当該筐体CSと信号発生器DSPを一つのシャーシに組み込むことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明によれば、光制御基板の作用部における信号電極の幅が狭くなった場合でも、信号電極と配線基板の信号配線との間の電気的接続を確実に行うことが可能な光変調器を提供することが可能となる。また、これらの光変調器を用いた光伝送装置を提供することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 光制御基板
20 配線基板(中継基板)
21 配線基板(終端基板)
S 信号電極
Sc 信号電極の接続部分
GND 接地電極
Gc 接地電極の接続部分
OW 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9