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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】加熱制御システム及びウインドシールド
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20250115BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20250115BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20250115BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20250115BHJP
   B60J 1/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H05B3/00 310D
H05B3/00 370
H05B3/84
H05B3/10 A
B60S1/02 310
B60S1/02 400Z
B60J1/20 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022504987
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048572
(87)【国際公開番号】W WO2021176817
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020034766
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】入江 哲司
(72)【発明者】
【氏名】定金 駿介
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮志
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017246(WO,A1)
【文献】特表2014-514200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
H05B 3/84
H05B 3/10
B60S 1/02
B60J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の室内外を仕切るガラスに設けられる加熱要素を制御するための加熱制御システムであって、
1つ以上のセンサからのセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報に基づいて、前記ガラスにおける第1領域に設けられる第1加熱要素と、前記ガラスにおける前記第1領域とは異なる第2領域に設けられる第2加熱要素とを制御する制御処理部と、を備え、
前記制御処理部は、前記ガラスにおける前記第1領域及び前記第2領域の間の第3領域でのガラス温度と、前記第1領域でのガラス温度又は前記第2領域でのガラス温度との温度差が上限値を超えないように、前記第1加熱要素及び前記第2加熱要素のうちの少なくとも一方を制御する温度差低減処理を実行する温度差低減処理部を含む、
加熱制御システム。
【請求項2】
前記温度差低減処理部は、前記温度差を表すパラメータの値が閾値を超えた場合に前記温度差低減処理を実行する、請求項1に記載の加熱制御システム。
【請求項3】
前記センサ情報は、前記ガラスの2つ以上の場所に設けられる2つ以上の温度センサからの温度情報を含み、
前記制御処理部は、前記温度情報に基づいて前記パラメータの値を算出する温度差パラメータ算出部を更に含む、請求項2に記載の加熱制御システム。
【請求項4】
前記センサ情報は、前記第3領域の熱伝達率に影響する所定情報を含み、
前記制御処理部は、前記所定情報に応じて、前記閾値又は前記パラメータの値を補正する処理を実行する、請求項2又は3に記載の加熱制御システム。
【請求項5】
前記制御処理部は、
前記センサ情報に基づいて、前記第1領域に結露が生じないように、前記第1加熱要素を通電する第1通電処理を実行する第1通電処理部と、
前記センサ情報に基づいて、前記第2領域に結露が生じないように、前記第2加熱要素を通電する第2通電処理を実行する第2通電処理部と、を更に含み
前記温度差低減処理は、前記第2通電処理が実行されている状態において、実行される、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の加熱制御システム。
【請求項6】
前記温度差低減処理は、前記第1通電処理によらずに前記第1加熱要素の通電を開始すること、及び、前記第1通電処理の終了条件の成立にもかかわらず前記第1加熱要素の通電を継続すること、のうちの少なくともいずれか一方を含む、請求項5に記載の加熱制御システム。
【請求項7】
前記温度差低減処理部は、前記第1領域でのガラス温度の方が前記第2領域でのガラス温度よりも低い場合、前記第1領域でのガラス温度が前記第1領域の第1露点温度に応じた第1通電開始温度よりも高い場合であっても、前記第1加熱要素の通電を開始する、請求項5に記載の加熱制御システム。
【請求項8】
前記温度差低減処理部は、前記第1通電処理が実行されている間に、前記第1領域でのガラス温度が前記第1領域の第1露点温度に応じた第1通電終了閾値以上となった場合であっても、前記第1加熱要素の通電を継続する、請求項5に記載の加熱制御システム。
【請求項9】
前記温度差低減処理部は、前記第1通電処理が実行されている間に、前記第1領域でのガラス温度が前記第1領域に結露が生じない温度となった場合であっても、前記第1加熱要素の通電を継続する、請求項5に記載の加熱制御システム。
【請求項10】
前記第2通電処理は、前記第1通電処理で実現される前記第1領域でのガラス温度よりも高い前記第2領域でのガラス温度が実現されるように、実行される、請求項5から9のうちのいずれか1項に記載の加熱制御システム。
【請求項11】
前記第2加熱要素は、前記第1加熱要素よりも発熱密度が高い、請求項1から10のうちのいずれか1項に記載の加熱制御システム。
【請求項12】
前記第2領域は、前記第1領域よりも上側に位置し、車両周辺情報を取得する室内のセンサに対応付けられる、請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の加熱制御システム。
【請求項13】
前記第1領域と前記第2領域との間の、前記ガラスの表面に沿った最短距離が10mm~200mmの範囲内である、請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の加熱制御システム。
【請求項14】
移動体の室内外を仕切るガラスであって、第1領域と、前記第1領域よりも上側に位置し、車両周辺情報を取得する室内のセンサに対応付けられる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に第3領域とを有するガラスと、
前記第1領域に設けられる第1加熱要素と、
前記第2領域に設けられる第2加熱要素と、
前記第1領域及び前記第2領域のうちの少なくとも一方に対応付けて設けられる第1温度センサと、
前記第3領域内に設けられ、前記第1領域及び前記第2領域から離れた所定位置に設けられる第2温度センサと、を含む、ウインドシールド。
【請求項15】
前記所定位置は、前記第3領域の中央部に位置する、請求項14に記載のウインドシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウインドシールド用の加熱制御システム及びウインドシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの2つの離れた領域のそれぞれに加熱要素を配置したウインドシールドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-216193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、加熱要素が配置された2つの領域の間に、当該2つの領域に対してガラス温度の差が大きくなる領域(本段落では、「中間領域」と称する)が発生するおそれがある。加熱要素が配置された領域に対して中間領域のガラス温度の差が過大になると、当該温度差に起因して中間領域においてガラスの欠陥が発生しうる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本発明は、加熱要素が配置された領域間の領域においてガラスの欠陥が発生する可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、移動体の室内外を仕切るガラスに設けられる加熱要素を制御するための加熱制御システムであって、
1つ以上のセンサからのセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報に基づいて、前記ガラスにおける第1領域に設けられる第1加熱要素と、前記ガラスにおける前記第1領域とは異なる第2領域に設けられる第2加熱要素とを制御する制御処理部と、を備え、
前記制御処理部は、前記ガラスにおける前記第1領域及び前記第2領域の間の第3領域でのガラス温度と、前記第1領域でのガラス温度又は前記第2領域でのガラス温度との温度差が上限値を超えないように、前記第1加熱要素及び前記第2加熱要素のうちの少なくとも一方を制御する温度差低減処理を実行する温度差低減処理部を含む。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、加熱要素が配置された領域間の領域においてガラスの欠陥が発生する可能性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による車両用ウインドシールドの概略図である。
図2図1のQ1部の拡大図である。
図3図2のラインA-Aに沿った概略的な断面図である。
図4】車両用ウインドシールドに係る制御系の概略図である。
図5】ウインドシールド用加熱制御に関連した制御装置の機能を示す機能図である。
図6】閾値情報の説明図である。
図7】第3領域に生じうる欠陥(例えば割れ)の原因の説明図である。
図8A】第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その1)である。
図8B】第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その2)である。
図8C】第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その3)である。
図8D】第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その4)である。
図9A】第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その1)である。
図9B】第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その2)である。
図9C】第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その3)である。
図9D】第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その4)である。
図10A】第1領域及び第2領域間の距離が比較的大きい場合に、第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その1)である。
図10B】第1領域及び第2領域間の距離が比較的大きい場合に、第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その2)である。
図10C】第1領域及び第2領域間の距離が比較的大きい場合に、第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その3)である。
図10D】第1領域及び第2領域間の距離が比較的大きい場合に、第2通電処理のみが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図(その4)である。
図11】ウインドシールド用加熱制御に関連して本実施形態による制御装置により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。
図12】第1加熱要素制御処理(図11のステップS2)の一例を示す概略フローチャートである。
図13】第2加熱要素制御処理(図11のステップS3)の一例を示す概略フローチャートである。
図14】第2実施形態による車両用ウインドシールド1Aの一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。また、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の向きは、記号、数字の方向に対応する。また、平行、直角、鉛直などの方向は、効果を損なわない程度のズレを許容するものである。
【0010】
以下では、車両の前部に取り付けられる車両用ウインドシールド1を一例として、その各種の実施形態を説明する。ただし、以下で説明する車両用ウインドシールド1は、車両の側部や後部に取り付けられてもよい。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態による車両用ウインドシールド1の概略図である。図2は、図1のQ1部の拡大図である。図3は、図2のラインA-Aに沿った概略的な断面図である。なお、図3には、図1及び図2には図示されていないカバー4が概略的に図示されている。図3には、窓ガラス50の厚み方向の中心を基準とした車外側と車内側(車室側)が示される。
【0012】
図1には、車両用ウインドシールド1が取り付けられる車両筐体80が併せて示される。図1は、窓ガラス(フロントガラス)50の面を対向して視たときの図であって、窓ガラス50が車両に取り付けられた状態を車室内から視た図である。なお、窓ガラス50は自動車のみならず、多様な移動体に適用でき、電車やバス、船舶、航空機、建設機械などにも適用できる。
【0013】
以下では、窓ガラス50の各領域(第1領域131等)は、窓ガラス50の表面(例えば車室側の表面)の領域であるが、窓ガラス50の厚み部分を含む領域であってもよい。また、窓ガラス50の各領域間の距離(又はその類の距離)は、窓ガラス50の表面に沿った最短距離であるが、窓ガラス50の曲率半径が比較的大きい場合は、近似した平面上の最短距離であってよい。ここでは、図1に示すように、互いに直交する2方向であるX方向とY方向を定義し、XY平面は、窓ガラス50の表面を近似できるような平面であるとする。そして、X方向は、車幅方向に対応し、Y方向は、上下方向(ただし、鉛直方向に傾斜した上下方向でありうる)に対応する。
【0014】
車両用ウインドシールド1は、図1に非常に概略的に示すように、窓ガラス50と、加熱装置60と、センサ装置70とを含む。なお、図1では、センサ装置70の一部(図2参照)の図示は省略されている。
【0015】
窓ガラス50は、車両筐体80の開口部を覆う窓板である。窓ガラス50の基材は、ガラスに限られず、樹脂、フィルム等であってもよいが、電波を通過するものであるとする。なお、窓ガラス50は、複数の基材を貼り合わせることで形成されてよく、各種の機能を実現する膜等が付与されてもよいし、アンテナ等が形成されてもよい。本実施形態では、一例として、窓ガラス50は、2枚のガラス51a、51bを中間膜51cを介して重ねて(図3参照)重合体を作製し、作製した重合体をオートクレーブなどで加圧、加熱することにより作製されてよい。
【0016】
窓ガラス50は、車両筐体80に形成されたボデーフランジに取り付けられる。なお、図1には、窓ガラス50の外周縁50a、50b、50c、50dが破線で図示されている。車両筐体80は、車体の窓開口部を形成するボデーフランジの縁部80を有する。
【0017】
フロントガラス用の窓ガラス50は、面上の周縁領域に遮蔽領域を有する。遮蔽領域は、黒色又は茶色等の遮蔽膜54が形成された領域、又は中間膜の一部が着色された領域である。遮蔽膜54は、黒色セラミックス膜等のセラミックス又は黒色有機インク膜等により形成される。なお、この遮蔽膜54は、車載用デバイスを取り付ける場合に車外及び車室からの意匠性を向上するものであって、電波を透過するものとする。遮蔽膜54は、窓ガラス50の外周縁から略一定幅で形成される一定幅部54aと、窓ガラス50の上部かつ中央部(左右方向の中央部)において下側に凸となる凸部54bとを有する。なお、凸部54bは、下側に向かうほど左右方向の幅が小さくなる形態(左右対称の略台形の形態)であってよく、逆に左右方向の幅が大きくなる形態であってもよい。凸部54bは、一部に切れ目があってもよい。
【0018】
加熱装置60は、窓ガラス50を加熱するための装置である。加熱装置60は、第1加熱装置61と、第2加熱装置62とを含む。
【0019】
第1加熱装置61は、窓ガラス50の第1領域131に対応付けて設けられる。
【0020】
第1領域131は、窓ガラス50の全体領域のうちの一部であり、運転者等を含む乗員の前方視界に対応付けて設定される。なお、上述した遮蔽膜54は、第1領域131を介した前方視界に影響しないように設けられる。第1領域131の形態は、任意であるが、図1に示すように、平面視(XY平面に垂直に視たビュー、以下同じ)で、矩形であってよい。ただし、変形例では、第1領域131の形態は、平面視で、外周部に凹状や凸状の形態を含んでよい。
【0021】
第1加熱装置61は、第1加熱要素610と、バスバ612、613と、スイッチ部614とを含む。
【0022】
第1加熱要素610は、電熱線又は電熱膜の形態であり、電流が流れると発熱する特性を有する。第1加熱要素610は、例えば、図3に示すように、窓ガラス50における車室側のガラス51bの車外側の表面に設けられてよい。第1加熱要素610は、第1領域131内に配置される。換言すると、第1加熱要素610は、第1領域131を画成する態様で配置される。ここで、Y方向の第1領域131の境界は、第1加熱要素610で定まるものとする。すなわち、第1領域131のY方向上側の境界は、最もY方向上側の第1加熱要素610の位置であり、第1領域131のY方向下側の境界は、最もY方向下側の第1加熱要素610の位置である。また、X方向の第1領域131の境界は、X方向のそれぞれの側で、各第1加熱要素610の端部位置(バスバ612、613との接続位置)を結ぶ線で規定される。
【0023】
第1加熱要素610は、第1領域131内での均一な加熱が実現されるように、好ましくは、配置密度の偏りが実質的に無いように配置される。なお、本実施形態では、一例として、第1加熱要素610である電熱線は、図1に示すように、複数本が、Y方向の一定のピッチd1を有する態様でX方向に延在する。なお、各第1加熱要素610は、互いに連続しないが、X方向の一端から他端へと折り返し、他端から一端へと折り返す態様(往復する態様)で形成されてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、一例として、各第1加熱要素610は、X方向に延在し、Y方向に列をなすが、これに限らない。例えば、第1加熱要素610を構成する各電熱線は、Y方向に延在し、X方向に列をなしてもよい。
【0025】
電熱線としては、銅、銀又はタングステンが用いられる。電熱膜としては、誘電体層/銀/誘電体層又は誘電体層/銀/誘電体層/銀/誘電体層が用いられる。誘電体層としては、酸化スズ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムが用いられる。
【0026】
バスバ612は、例えば正極側の電極を形成し、車載バッテリ(図示せず)の正極側に電気的に接続される。バスバ612は、例えば、導体材料の膜の形態であってよい。これは、バスバ613等の他のバスバも同様である。なお、バスバ612には、所定の電源電圧を生成する電源生成部(図示せず)を介して、車載バッテリが電気的に接続されてよい。バスバ612は、例えば、図1に示すように、平面視でX方向左側の一定幅部54a内に位置する態様で、第1領域131のX方向左側にY方向に延在する。
【0027】
バスバ613は、例えば負極側の電極を形成し、車載バッテリ(図示せず)の負極側(グランド)に電気的に接続される。バスバ613は、例えば、図1に示すように、平面視でX方向右側の一定幅部54a内に位置する態様で、第1領域131のX方向右側にY方向に延在する。なお、バスバ613は、バスバ612と左右で対称な形態であってよい。
【0028】
スイッチ部614は、バスバ612と車載バッテリとの間に電気的に接続される。スイッチ部614は、第1加熱要素610の通電をオン/オフするためのスイッチを含む。なお、この種のスイッチは、例えば、リレーの形態であってもよいし、半導体スイッチ等の形態であってもよい。スイッチ部614がオンに制御されると、第1加熱要素610と車載バッテリとの間の導通(すなわち第1加熱要素610への通電)が実現され、第1加熱要素610が発生する熱によって第1領域131内の窓ガラス50が加温される。
【0029】
スイッチ部614のオン/オフ状態は、制御装置10(図4参照)により制御される。なお、スイッチ部614から制御装置10への配線は、図1等には図示されていないが、第1加熱装置61に係る各種配線と同様に、平面視で一定幅部54aに重なる領域に形成されてよい。
【0030】
第2加熱装置62は、窓ガラス50の第2領域132に対応付けて設けられる。
【0031】
第2領域132は、窓ガラス50の全体領域のうちの一部であり、車両周辺監視センサ20(図3の一点鎖線の矩形参照)に対応付けて設定される。車両周辺監視センサ20は、レーダセンサ(例えばミリ波レーダセンサ)や、画像センサ(すなわちカメラであり、例えばステレオカメラ)等であってよい。第2領域132は、図3に概略的に示すように、車室側においてカバー4により覆われる。カバー4は、第2領域132を少なくとも部分的に覆う形態であれば任意の形態であってよく、例えば筐体の形態であってよい。この場合、例えば、窓ガラス50の第2領域132とカバー4との間に形成される空間を利用して、レーダセンサや、画像センサ、LiDAR(ライダー)、基板等が配置されてもよい。
【0032】
このように、第2領域132は、車両周辺監視センサ20の“目”に対する前方視界に対応付けて設定される。従って、上述した遮蔽膜54の凸部54bは、第2領域132を介した前方視界に影響しないように、開口部を有してよい。ただし、電波を透過する遮蔽膜54が車両周辺監視センサ20の“目”に影響しない場合は、遮蔽膜54は、平面視で第2領域132に重なる態様で形成されてもよい。
【0033】
第2領域132の形態は、任意であるが、図2に示すように、平面視で、矩形であってよい。ただし、変形例では、第2領域132の形態は、平面視で、外周部に凹状や凸状の形態を含んでよい。
【0034】
第2加熱装置62は、第2加熱要素620と、バスバ622、623と、スイッチ部624とを含む。
【0035】
第2加熱要素620は、電熱線又は電熱膜の形態であり、電流が流れると発熱する特性を有する。第2加熱要素620は、例えば、図3に示すように、窓ガラス50における車室側のガラス51bの車室側の表面に設けられてよい。第2加熱要素620は、第2領域132内に配置される。換言すると、第2加熱要素620は、第2領域132を画成する態様で配置される。ここで、Y方向の第2領域132の境界は、第2加熱要素620で定まるものとする。すなわち、第2領域132のY方向上側の境界は、最もY方向上側の第2加熱要素620の位置であり、第2領域132のY方向下側の境界は、最もY方向下側の第2加熱要素620の位置である。また、X方向の第2領域132の境界は、X方向のそれぞれの側において、各第2加熱要素620の端部位置(バスバ622、623との接続位置)を結ぶ線で規定される。
【0036】
第2加熱要素620は、第2領域132内での均一な加熱が実現されるように、好ましくは、配置密度の偏りが実質的に無いように配置される。なお、本実施形態では、一例として、第2加熱要素620である電熱線は、図2に示すように、複数本が、Y方向の一定のピッチd2を有する態様でX方向に延在する。ピッチd2は、ピッチd1と同じであってもよいし、異なってもよい。本実施形態のように、第2領域132を車室側から覆うカバー4(図3参照)が設けられる場合は、第2領域132内の湿度が高くなりやすいため、第2領域132内での結露を防止しやすいように、ピッチd2は、ピッチd1よりも小さくてもよい。
【0037】
第2加熱要素620は、好ましくは、第1加熱要素610よりも発熱密度(W/cm)が高い。この場合、第2領域132のガラス温度を比較的早く上昇させることができる。本実施形態のように、第2領域132を車室側から覆うカバー4(図3参照)が設けられる場合は、第2領域132内の湿度が高くなりやすい。従って、第2加熱要素620の発熱密度を高くすることで、第2領域132内での結露を効果的に抑制できる。
【0038】
第2加熱要素620の発熱密度は、好ましくは、第1加熱要素610の発熱密度の1.5倍から6倍の範囲内であり、より好ましくは、第1加熱要素610の発熱密度の1.8倍から5倍の範囲内であり、最も好ましくは、第1加熱要素610の発熱密度の2倍から3倍の範囲内である。例えば、第1加熱要素610の発熱密度は、400W/cm程度であってよく、この場合、第2加熱要素620の発熱密度は、例えば、900W/cmから2200W/cmの範囲内であってよい。
【0039】
なお、本実施形態では、一例として、各第2加熱要素620は、互いに連続しないが、X方向の一端から他端へと折り返し、他端から一端へと折り返す態様(往復する態様)で形成されてもよい。また、本実施形態では、一例として、各第2加熱要素620は、X方向に延在し、Y方向に列をなすが、これに限らない。例えば、第2加熱要素620を構成する各電熱線は、Y方向に延在し、X方向に列をなしてもよい。
【0040】
バスバ622は、例えば正極側の電極を形成し、車載バッテリ(図示せず)の正極側に電気的に接続される。なお、バスバ622には、所定の電源電圧を生成する電源生成部(図示せず)を介して、車載バッテリが電気的に接続されてよい。バスバ622は、例えば、図2に示すように、第2領域132のX方向左側に、Y方向に延在する。
【0041】
バスバ623は、例えば負極側の電極を形成し、車載バッテリ(図示せず)の負極側(グランド)に電気的に接続される。バスバ623は、例えば、図2に示すように、第2領域132のX方向右側に、Y方向に延在する。なお、バスバ623は、バスバ622と左右で対称な形態であってよい。
【0042】
スイッチ部624は、バスバ622と車載バッテリとの間に電気的に接続される。スイッチ部624は、第2加熱要素620の通電をオン/オフするためのスイッチを含む。なお、この種のスイッチは、例えば、リレーの形態であってもよいし、半導体スイッチ等の形態であってもよい。スイッチ部624がオンに制御されると、第2加熱要素620と車載バッテリとの間の導通(すなわち第2加熱要素620への通電)が実現され、第2加熱要素620が発生する熱によって第2領域132内の窓ガラス50が加温される。
【0043】
スイッチ部624のオン/オフ状態は、制御装置10(図4参照)により制御される。なお、スイッチ部624から制御装置10への配線は、図1等には図示されていないが、第2加熱装置62に係る各種配線と同様に、平面視で一定幅部54a及び凸部54bに重なる領域に形成されてよい。また、配線は、平面視で一定幅部54aに重なる領域は利用せず、窓ガラス50の第2領域132とカバー4との間に配置されうる基板を利用して実現されてもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、第1加熱装置61の第1加熱要素610と第2加熱装置62の第2加熱要素620とは、互いに並列な関係で、車載バッテリ(図示せず)に電気的に接続される。また、第1加熱装置61のスイッチ部614は、第2加熱要素620と車載バッテリ(図示せず)との間の配線上に位置せず、かつ、第2加熱装置62のスイッチ部624は、第1加熱要素610と車載バッテリ(図示せず)との間の配線上に位置しない。従って、基本的には、第1加熱要素610と第2加熱要素620とは、互いに独立して動作可能である。
【0045】
センサ装置70は、第1温度センサ71と、第2温度センサ72と、第1湿度センサ76と、第2湿度センサ77とを含む。
【0046】
第1温度センサ71は、例えばサーミスタ等の形態であり、第1領域131に対応付けて設けられる。第1温度センサ71は、第1領域131のガラス温度を検出するために設けられる。この目的のため、第1温度センサ71は、好ましくは、第1領域131内又は第1領域131の近傍に設けられる。図1では、第1温度センサ71は、一例として、平面視でX方向左側の一定幅部54a内に位置する態様で、第1領域131のX方向左側かつY方向上側に設けられる。また、第1温度センサ71は、好ましくは、ガラス表面にセンシング素子が接するように、設置される。
【0047】
第1温度センサ71は、第1領域131のガラス温度を表す電気信号(温度情報の一例)を制御装置10(図4参照)に供給する。なお、第1温度センサ71から制御装置10への配線は、図1等には図示されていないが、第1加熱装置61に係る各種配線と同様に、平面視で一定幅部54aに重なる領域に形成されてよい。
【0048】
第2温度センサ72は、例えばサーミスタ等の形態であり、第2領域132に対応付けて設けられる。第2温度センサ72は、第2領域132のガラス温度を検出するために設けられる。この目的のため、第2温度センサ72は、好ましくは、第2領域132内又は第2領域132の近傍に設けられる。図2では、第2温度センサ72は、一例として、平面視で凸部54b内に位置する態様で、第2領域132内のY方向下側に設けられる。
【0049】
第2温度センサ72は、第2領域132のガラス温度を表す電気信号(温度情報の一例)を制御装置10(図4参照)に供給する。なお、第2温度センサ72から制御装置10への配線は、図1等には図示されていないが、第2加熱装置62に係る各種配線と同様に実現されてよい。
【0050】
第1湿度センサ76は、第1領域131に対応付けて設けられる。第1湿度センサ76は、第1領域131に係る空気の湿度を検出するために設けられる。この目的のため、第1湿度センサ76は、好ましくは、第1領域131内又は第1領域131の近傍に設けられる。図1では、第1湿度センサ76は、一例として、平面視でX方向左側の一定幅部54a内に位置する態様で、第1領域131のX方向左側かつY方向上側に設けられる。また、第1湿度センサ76は、好ましくは、ガラス表面から境界層の厚さ分離れた位置にセンシング素子(感湿材料等)が位置するように、設置される。
【0051】
なお、図1では、第1湿度センサ76は、第1温度センサ71とは別体であるが、第1温度センサ71が一体に組み込まれたIC(Integrated Circuit)の形態であってもよい。
【0052】
第1湿度センサ76は、設置位置における湿度を表す電気信号を制御装置10(図4参照)に供給する。なお、第1湿度センサ76から制御装置10への配線は、第1温度センサ71と同様の態様で実現されてよい。
【0053】
第2湿度センサ77は、第2領域132に対応付けて設けられる。第2湿度センサ77は、第2領域132に係る空気の湿度を検出するために設けられる。この目的のため、第2湿度センサ77は、好ましくは、第2領域132内又は第2領域132の近傍に設けられる。図2では、第2湿度センサ77は、一例として、平面視で第2領域132内に位置する態様で設けられる。また、第2湿度センサ77は、好ましくは、ガラス表面から境界層の厚さ分離れた位置にセンシング素子(感湿材料等)が位置するように、設置される。
【0054】
なお、図2では、第2湿度センサ77は、第2温度センサ72とは別体であるが、第2温度センサ72が一体に組み込まれたICの形態であってもよい。
【0055】
第2湿度センサ77は、設置位置における湿度を表す電気信号を制御装置10(図4参照)に供給する。なお、第2湿度センサ77から制御装置10への配線は、第2温度センサ72と同様の態様で実現されてよい。
【0056】
次に、図4から図7を参照して、車両用ウインドシールド1に係る制御系について説明する。
【0057】
図4は、車両用ウインドシールド1に係る制御系の概略図である。
【0058】
車両用ウインドシールド1に係る制御系は、制御装置10を備える。なお、制御装置10は、車両のドアロック等を制御するボデーECU(Electronic Control Unit)として実現されてもよい。
【0059】
制御装置10は、バス19で接続されたCPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、補助記憶装置14、ドライブ装置15、及び通信インターフェース17、並びに、通信インターフェース17に接続された有線送受信部25及び無線送受信部26を含む。
【0060】
補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
【0061】
有線送受信部25は、CAN(Controller Area Network)などのプロトコルに準拠した車載ネットワーク31を利用して通信可能な送受信部を含む。有線送受信部25には、車載ネットワーク31を介して各種の電子部品3が接続される。
【0062】
本実施形態では、各種の電子部品3は、ブレーキECU32や車輪速センサ33、空調ECU34、外気温センサ35、内気温センサ36等を含む。
【0063】
ブレーキECU32は、車輪速センサ33等からのセンサ情報等に基づいて、車両の制動装置(図示せず)を制御する。車輪速センサ33は、車輪速に応じた車速パルスを検出する。ブレーキECU32は、車輪速センサ33からの車速パルス情報に基づいて、車速を演算し、車速情報を車載ネットワーク31に送信する。なお、この場合、車載ネットワーク31に接続される制御装置10は、車速情報を取得できる。
【0064】
空調ECU34は、外気温センサ35や内気温センサ36等からのセンサ情報等に基づいて、車両の空調装置を制御する。外気温センサ35は、車両の外部の空気の温度(外気温)を検出する。内気温センサ36は、車室内の空気の温度(内気温)を検出する。空調ECU34は、外気温センサ35からの外気温情報や内気温センサ36からの内気温情報を車載ネットワーク31に送信する。
【0065】
なお、各種の電子部品3の一部は、バス19に電気的に接続されてもよいし、無線送受信部26に接続されてもよい。
【0066】
無線送受信部26は、無線ネットワークを利用して通信可能な送受信部である。無線ネットワークは、携帯電話の無線通信網、インターネット、VPN(Virtual Private Network)、WAN(Wide Area Network)等を含んでよい。また、無線送受信部26は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)部、ブルートゥース(Bluetooth、登録商標)通信部、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)送受信部、赤外線送受信部などを含んでもよい。
【0067】
なお、制御装置10は、記録媒体16と接続可能であってもよい。記録媒体16は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体16に格納されたプログラムは、ドライブ装置15を介して制御装置10の補助記憶装置14等にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、制御装置10のCPU11により実行可能となる。例えば、記録媒体16は、CD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。
【0068】
制御装置10には、第1温度センサ71、第2温度センサ72、第1湿度センサ76、及び第2湿度センサ77が電気的に接続される。また、制御装置10には、スイッチ部614及びスイッチ部624が電気的に接続される。なお、図4には、スイッチ部614及びスイッチ部624が第1加熱要素610及び第2加熱要素620とともに模式的に示される。なお、図4においてVccは、第1加熱要素610及び第2加熱要素620に供給される電源電圧を表す。
【0069】
制御装置10は、各種制御を実行する。各種制御は、車両用ウインドシールド1に関する制御(以下、「ウインドシールド用加熱制御」とも称する)を含む。ウインドシールド用加熱制御は、第1温度センサ71、第2温度センサ72、第1湿度センサ76、及び第2湿度センサ77からの各種センサ情報に基づいて、第1加熱装置61及び第2加熱装置62を制御することを含む。
【0070】
図5は、ウインドシールド用加熱制御に関連した制御装置10(加熱制御システム)の機能を示す機能図である。図6は、閾値情報の説明図である。図7は、第3領域133(後述)に生じうる欠陥(例えば割れ)の原因の説明図である。
【0071】
制御装置10(加熱制御システム)は、図5に示すように、センサ情報取得部150と、制御情報記憶部151と、制御処理部152とを含む。センサ情報取得部150及び制御処理部152は、上述したCPU11が記憶装置(例えばROM13)内の1つ以上のプログラムを実行することで実現できる。制御情報記憶部151は、記憶装置(例えばROM13や補助記憶装置14等)により実現できる。
【0072】
センサ情報取得部150は、第1温度センサ71、第2温度センサ72、第1湿度センサ76、及び第2湿度センサ77から、窓ガラス50に関連した各種センサ情報を取得する。また、センサ情報取得部150は、車載ネットワーク31を介して車速情報、外気温情報、及び内気温情報(以下、これらの3つの情報を「環境情報」とも総称する)を取得する。なお、センサ情報取得部150は、所定周期ごとに各種センサ情報を取得してよい。
【0073】
制御情報記憶部151は、ウインドシールド用加熱制御で用いる制御情報が記憶される。本実施形態では、制御情報は、閾値(後述の閾値Th)を設定するための閾値情報を含む。閾値情報の詳細は、後述する。
【0074】
制御処理部152は、センサ情報取得部150により取得される各種センサ情報に基づいて、第1加熱装置61及び第2加熱装置62を制御する制御処理を行う。具体的には、制御処理部152は、センサ情報取得部150により取得される各種センサ情報に基づいて、スイッチ部614をオン/オフ制御することで、第1加熱要素610の状態を通電状態と非通電状態との間で遷移させる。また、制御処理部152は、センサ情報取得部150により取得される各種センサ情報に基づいて、スイッチ部624をオン/オフ制御することで、第2加熱要素620の状態を通電状態と非通電状態との間で遷移させる。
【0075】
制御処理部152は、図5に示すように、第1通電処理部1521と、第2通電処理部1522と、閾値設定処理部1523と、温度差パラメータ算出部1524と、閾値判定処理部1525と、温度差低減処理部1526とを含む。
【0076】
第1通電処理部1521は、第1温度センサ71及び第1湿度センサ76からの各センサ情報に基づいて、第1領域131に結露(曇りを含む)が生じないように、第1加熱要素610を通電する第1通電処理を実行する。
【0077】
例えば、第1通電処理部1521は、第1温度センサ71及び第1湿度センサ76からの各センサ情報に基づいて、第1領域131に結露が生じ始める露点温度(以下、「第1露点温度」とも称する)を算出する。そして、第1通電処理部1521は、第1温度センサ71からのセンサ情報に基づく第1領域131のガラス温度が、第1露点温度に応じた第1通電開始閾値以下である場合、第1加熱要素610を通電する。なお、第1通電開始閾値は、第1露点温度であってもよいし、一定のマージンだけ高い値であってもよい。また、このようにして通電を開始すると、第1通電処理部1521は、第1温度センサ71からのセンサ情報に基づく第1領域131のガラス温度が、第1露点温度に応じた第1通電終了閾値以上となると、第1加熱要素610の通電を停止する。なお、第1通電終了閾値は、第1露点温度よりもわずかに大きい値であってよい。ただし、変形例では、第1通電終了閾値は、第1通電開始閾値と同じであってもよい。
【0078】
第2通電処理部1522は、第2温度センサ72及び第2湿度センサ77からの各センサ情報に基づいて、第2領域132に結露が生じないように、第2加熱要素620を通電する第2通電処理を実行する。
【0079】
例えば、第2通電処理部1522は、第2温度センサ72及び第2湿度センサ77からの各センサ情報に基づいて、第2領域132に結露が生じ始める露点温度(以下、「第2露点温度」とも称する)を算出する。そして、第2通電処理部1522は、第2温度センサ72からのセンサ情報に基づく第2領域132のガラス温度が、第2露点温度に応じた第2通電開始閾値以下となると、第2加熱要素620を通電する。なお、第2通電開始閾値は、第2露点温度であってもよいし、一定のマージンだけ高い値であってもよい。また、このようにして通電を開始すると、第2通電処理部1522は、第2温度センサ72からのセンサ情報に基づく第2領域132のガラス温度が、第2露点温度に応じた第2通電終了閾値以上となると、第2加熱要素620の通電を停止する。なお、第2通電終了閾値は、第2露点温度よりもわずかに大きい値であってよい。ただし、変形例では、第2通電終了閾値は、第2通電開始閾値と同じであってもよい。
【0080】
閾値設定処理部1523は、センサ情報取得部150により取得された環境情報(車速情報、外気温情報、及び内気温情報)に基づいて、閾値(以下、他の閾値との区別のため、「閾値Th」と表記する)を設定する。閾値Thは、一定であってもよいが、本実施形態では、閾値情報に基づいて設定される可変値である。なお、閾値Thが一定である場合は、制御情報記憶部151内の閾値情報及び閾値設定処理部1523は省略される。閾値Thは、以下で詳説するように、温度差低減処理部1526による温度差低減処理の実行条件に係る閾値であり、温度差パラメータの値と比較される。閾値Thの具体的な設定方法の例は、後述する。
【0081】
温度差パラメータ算出部1524は、センサ情報取得部150により取得された第1温度センサ71及び第2温度センサ72からの各センサ情報に基づいて、温度差パラメータの値を算出する。温度差パラメータは、窓ガラス50における第3領域133でのガラス温度と、第1領域131でのガラス温度又は第2領域132でのガラス温度との温度差を表すパラメータである。
【0082】
第3領域133は、第1領域131及び第2領域132のいずれにも一部すら属さない(すなわち、加熱要素が設けられてない)領域のうちの、上述した第1通電処理及び第2通電処理によって生じる温度差(第1領域131及び第2領域132のいずれか高い方のガラス温度との温度差)に起因して、窓ガラス50に欠陥(例えば割れ)が生じうる領域を含む。なお、第3領域133は、典型的には、ある程度の面積を有する領域であるが、比較的小さい面積の領域であってもよい。
【0083】
本実施形態では、一例として、第3領域133は、Y方向で第1領域131及び第2領域132の間の領域全体であるとし、以下、「第3領域133」と称する。なお、変形例では、第3領域133は、第1領域131及び第2領域132の間の領域のうちの、一部であってよい。Y方向で第1領域131及び第2領域132の間の領域とは、Y方向に視て、第1領域131及び第2領域132のいずれにも重なる位置の集合であってよい。なお、本実施形態では、第3領域133のX方向の境界位置は、X方向の位置としては、第2領域132と実質的に同じである。
【0084】
第3領域133は、第1領域131及び第2領域132の間に位置し、かつ、加熱要素が設けられないが故に、ガラス温度が、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度よりも有意に低くなりやすい。
【0085】
以下では、「第3領域133のガラス温度」とは、特に言及しない限り、第3領域133の各位置でのガラス温度の最小値であるとする。また、以下で、第3領域133のガラス温度と、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度との温度差に関して、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度とは、第1温度センサ71及び第2温度センサ72からの各センサ情報に基づく各ガラス温度であるとする。また、第3領域133のガラス温度と、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度との温度差は、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度のうちの高い方との温度差を指すものとする。これは、温度差が大きい方が窓ガラス50に欠陥(例えば割れ)が生じやすいためである。従って、以下で、単に「第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差」と称する場合、第3領域133のガラス温度と、第1領域131及び第2領域132のいずれか高い方のガラス温度との温度差を意味するものとする。
【0086】
なお、領域間の温度差に起因した窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)は、温度勾配(図7の温度勾配dT/dY参照)が大きいほど生じやすい。図7には、横軸に、図2のラインA-Aに沿った各位置を取り、縦軸にガラス温度を取り、図2のラインA-Aに沿ったガラス温度の変化特性の2つの例(特性G700及び特性G702)が示される。なお、図7では、横軸において、右側に向かうほどY方向上側に向かい、位置P1は、第1領域131と第3領域133との境界位置に対応し、位置P2は、第3領域133と第2領域132との境界位置に対応する。特性G700は、温度差が実質的にない場合の特性であり、特性G702は、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)を生むような特性の一例である。なお、図7において、ΔTは、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差に相当する。一般的に、位置P1と位置P2とのY方向の距離が同じである場合(すなわち、第3領域133のY方向の長さが同じである場合)、ΔTが大きいほど、勾配dT/dYも大きくなる傾向がある。
【0087】
温度差パラメータ算出部1524による温度差パラメータの値の算出方法は、任意である。本実施形態では、温度差パラメータの値は、第1温度センサ71及び第2温度センサ72からの各センサ情報を含む所定の入力パラメータの各値に基づいて、任意の態様で算出されてよい。例えば、人工知能を利用して、所定の入力パラメータの各値を入力して温度差パラメータの値を出力(生成)することも可能である。人工知能の場合は、機械学習により得られる畳み込みニューラルネットワークを実装することで実現できる。機械学習では、例えば、温度差に係る実績データを用いて、温度差パラメータの値に係る誤差が最小になるような畳み込みニューラルネットワークの重み等が学習される。この場合、所定の入力パラメータは、第1領域131のガラス温度、第2領域132のガラス温度、これらのガラス温度の差、車速、外気温、内気温等のような、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差に影響する任意のパラメータであってよい。
【0088】
また、温度差パラメータは、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差を直接的に表すパラメータである必要はなく、当該温度差を間接的に表すパラメータであってよい。例えば、温度差パラメータは、第3領域133と第1領域131又は第2領域132との間のガラス温度の変化勾配(単位距離あたりのガラス温度の変化率であり、図7の温度勾配dT/dY参照)等を表すパラメータであってもよい。
【0089】
本実施形態では、一例として、温度差パラメータは、第1温度センサ71及び第2温度センサ72からの各センサ情報のそれぞれが示すガラス温度の差である。すなわち、温度差パラメータは、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差である。なお、図7を参照して上述したように、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)に直接寄与するパラメータは、温度勾配dT/dYであるが、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差は、温度勾配dT/dYに相関するパラメータである。すなわち、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差が大きいほど、温度勾配dT/dYが大きくなる傾向がある。ただし、変形例では、温度差パラメータの値は、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差の値に基づいて、当該差の値を、温度勾配dT/dYをより正確に表す値へと補正することで、導出されてもよい。
【0090】
閾値判定処理部1525は、温度差低減処理部1526による温度差低減処理の実行条件の成否を判定する。具体的には、閾値判定処理部1525は、温度差パラメータ算出部1524により算出された温度差パラメータの値が、閾値設定処理部1523により設定された閾値Thを超えたか否かを判定する。この場合、温度差低減処理部1526による温度差低減処理の実行条件は、温度差パラメータの値が閾値Thを超えた場合に成立する。
【0091】
温度差低減処理部1526は、温度差低減処理の実行条件が成立した場合(すなわち温度差パラメータの値が閾値Thを超えた場合)に、温度差低減処理を実行する。温度差低減処理は、第3領域133でのガラス温度と、第1領域131でのガラス温度又は第2領域132でのガラス温度との温度差(以下、単に「窓ガラス50における局所的な温度差」とも称する)が上限値を超えないようにするための処理である。具体的には、温度差低減処理は、窓ガラス50における局所的な温度差が上限値を超えないように、第1加熱要素610及び第2加熱要素620のうちの少なくとも一方を制御する処理である。
【0092】
上限値は、窓ガラス50の第3領域133に係る欠陥(例えば割れ)が生じるときの、窓ガラス50における局所的な温度差に対応する。例えば、窓ガラス50における局所的な温度差が、ある範囲内であるときに、窓ガラス50の第3領域133に係る欠陥(例えば割れ)が生じる場合、上限値は、当該範囲の下限値に対応する。
【0093】
例えば、第1領域131及び第2領域132のうちの、第1領域131に係るガラス温度の方が第2領域132に係るガラス温度よりも有意に低い場合、温度差低減処理部1526は、第1領域131のガラス温度が上昇するように、及び/又は、第2領域132のガラス温度の上昇が抑制されるように、第1加熱要素610及び第2加熱要素620を制御してよい。これにより、第1領域131に係るガラス温度の方が第2領域132に係るガラス温度よりも有意に低いことに起因して生じうる窓ガラス50の欠陥(窓ガラス50の第3領域133に係る欠陥)の可能性を低減できる。
【0094】
温度差低減処理は、第1通電処理及び第2通電処理のいずれか一方又は双方の実行に伴って生じる窓ガラス50における局所的な温度差に対して、実行される。第1通電処理及び第2通電処理は、上述のように、それぞれ、第1領域131及び第2領域132での結露が生じないように実行されるが、ガラス温度の上昇を伴うので、窓ガラス50における局所的な温度差を増大させる傾向があるためである。
【0095】
ここで、本実施形態のように、第2領域132を車室側から覆うカバー4(図3参照)が設けられる場合、上述のように、第2領域132内の湿度が高くなりやすく、それ故に、第2露点温度は、第1露点温度よりも高くなりやすい。これに伴い、ある一時点において、第2通電開始閾値及び第2通電終了閾値は、それぞれ、第1通電開始閾値及び第1通電終了閾値以上である場合がほとんどである。このため、車両周辺監視センサ20が機能すべき状況下においては、第2通電処理だけが実行されている状態が発生するが、第1通電処理だけが実行されている状態は実質的に生じない。従って、本実施形態において、温度差低減処理の実行条件は、基本的には、第2通電処理が実行されている状態において成立することになる。すなわち、温度差低減処理は、第2通電処理が実行されている状態において、第1領域131のガラス温度が上昇するように、及び/又は、第2領域132のガラス温度の上昇が抑制されるように、実行される。
【0096】
例えば、温度差低減処理は、第1領域131及び第2領域132のうちの、第1領域131に係るガラス温度の方が第2領域132に係るガラス温度よりも低い場合、第1通電処理によらずに(すなわち第1領域131のガラス温度が第1通電開始温度よりも高いにもかかわらず)第1加熱要素610の通電を開始することを含んでよい。この場合、第1領域131のガラス温度が上昇することで、窓ガラス50における局所的な温度差を低減できる。
【0097】
また、温度差低減処理は、第1領域131及び第2領域132のうちの、第1領域131に係るガラス温度の方が第2領域132に係るガラス温度よりも低い場合、第1通電処理の終了条件の成立にもかかわらず(すなわち第1領域131のガラス温度が第1通電終了温度よりも高いにもかかわらず)第1加熱要素610の通電を継続することを含んでよい。この場合、第1領域131のガラス温度が上昇することで、窓ガラス50における局所的な温度差を低減できる。
【0098】
このように本実施形態によれば、第2通電処理が実行されている状態において、温度差パラメータの値が閾値Thを超えた場合に、温度差低減処理が実行されるので、窓ガラス50における局所的な温度差を低減できる。これにより、第2通電処理が実行されている状態において、窓ガラス50における局所的な温度差が顕著になることに起因して生じうる窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)を効果的に低減できる。
【0099】
次に、図8A図9Dを参照して、本実施形態の効果を説明する。
【0100】
図8A図8Dは、第2通電処理だけが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図であり、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度と、第3領域133のガラス温度との関係の一例を示す説明図である。図8A図8Dでは、横軸に、図2のラインA-Aに沿った各位置を取り、縦軸にガラス温度を取り、図2のラインA-Aに沿ったガラス温度の変化特性(以下、単に「変化特性」と称する)の一例が示される。なお、図8A図8Dでは、横軸において、右側に向かうほどY方向上側に向かい、位置P1は、第1領域131と第3領域133との境界位置に対応し、位置P2は、第3領域133と第2領域132との境界位置に対応する。
【0101】
図8A図8Dは、異なる時点t1から時点t4での変化特性をそれぞれ示す。
【0102】
時点t1は、初期状態であり、第2領域132のガラス温度が第2通電開始閾値以下となった時点に対応する。なお、図8Aでは、時点t1において、第2領域132のガラス温度は、第1領域131のガラス温度よりも高い状態である。
【0103】
時点t2は、時点t1の後の時点であり、第2通電処理が開始されてからある程度の時間が経過した後の時点に対応する。このように、時点t2では、時点t1に比べて、第2通電処理に起因して、第2領域132のガラス温度が第1領域131のガラス温度よりも大きく上昇しており、それ故に、窓ガラス50における局所的な温度差が比較的大きくなっている。
【0104】
このようにして、第2通電処理だけが実行されている状況下では、窓ガラス50における局所的な温度差が比較的大きくなりやすい。図8Bでは、時点t2の直後に、温度差パラメータの値が閾値Thを超え、温度差低減処理が開始される。すなわち、時点t2の直後から、第1領域131のガラス温度が第1通電開始温度以上であるにもかかわらず、第1加熱要素610の通電が開始される。
【0105】
時点t3は、時点t2の後の時点であり、温度差低減処理が開始されてからある程度の時間が経過した後の時点に対応する。図8Cに示すように、温度差低減処理が開始されることで、窓ガラス50における局所的な温度差が低減される。なお、時点t3では、時点t1で開始された第2通電処理は依然として継続されている。
【0106】
時点t4は、時点t3の後の時点であり、時点t1で開始された第2通電処理が正常に終了した時点(すなわち、第2領域132のガラス温度が第2通電終了閾値以上となった時点)に対応する。時点t4に至ると、図8Dに示すように、第2通電処理が終了するのに伴い(その後に窓ガラス50における局所的な温度差が更に増加する可能性が低いことから)、時点t2の直後に開始された温度差低減処理も終了する。すなわち、定常状態となる。なお、変形例では、温度差低減処理は、時点t4よりも前に終了されてもよい。
【0107】
図8Cには、時点t3での変化特性(実線)に対応付けて、時点t2の直後からの温度差低減処理が実行されない比較例の場合の変化特性801が一点鎖線で示される。このような比較例では、変化特性801に示すように、窓ガラス50における局所的な温度差が更に増大している。すなわち、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)が生じるおそれがある。
【0108】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、第2通電処理だけが実行されている状況下(第1通電処理の実行条件が満たされない状況下)において、温度差低減処理が実行されるので、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)の可能性を効果的に低減できる。
【0109】
図9A図9Dは、第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の説明図であり、図8A図8Dと同様に、異なる時点t11から時点t14での変化特性をそれぞれ示す。なお、ここでは、好ましい例として、上述のように、第2加熱要素620の方が第1加熱要素610よりも発熱密度が高いものとする。
【0110】
時点t11は、初期状態であり、第1領域131のガラス温度が第1通電開始閾値以下となり、第2領域132のガラス温度が第2通電開始閾値以下となった時点に対応する。なお、図9Aでは、時点t11において、第2領域132のガラス温度は、第1領域131のガラス温度よりも高い状態である。
【0111】
時点t12は、時点t11の後の時点であり、第1通電処理と第2通電処理が開始されてからある程度の時間が経過した後の時点に対応する。なお、時点t12では、時点t11で開始された第1通電処理と第2通電処理は依然として継続されている。
【0112】
時点t12では、時点t11に比べて、第2加熱要素620の方が第1加熱要素610よりも発熱密度が高いことに起因して、第2領域132のガラス温度が第1領域131のガラス温度よりも大きく上昇しており、それ故に、窓ガラス50における局所的な温度差が比較的大きくなっている。
【0113】
このようにして、第2加熱要素620の方が第1加熱要素610よりも発熱密度が高い場合は、第1通電処理と第2通電処理がともに実行されている状況下においても、窓ガラス50における局所的な温度差が比較的大きくなりやすい。図9Bでは、時点t12の直後に、温度差パラメータの値が閾値Thを超え、温度差低減処理の実行条件が満たされる。従って、時点t12の直後から、第1領域131のガラス温度が第1通電終了温度以上に至ったとしても、温度差低減処理により第1加熱要素610の通電が維持される。図9Bでは、時点t2の直後に、温度差パラメータの値が閾値Thを超えている状況下で、第1領域131のガラス温度が第1通電終了温度以上となることで、第1通電処理に代わる温度差低減処理が開始される。
【0114】
時点t13は、時点t12の後の時点であり、温度差低減処理が開始されてからある程度の時間が経過した後の時点に対応する。図9Cに示すように、温度差低減処理が開始されることで、窓ガラス50における局所的な温度差が低減される。なお、時点t13では、時点t1で開始された第2通電処理は依然として継続されている。
【0115】
時点t14は、時点t13の後の時点であり、時点t11で開始された第2通電処理が正常に終了した時点(すなわち、第2領域132のガラス温度が第2通電終了閾値以上となった時点)に対応する。時点t14に至ると、図9Dに示すように、第2通電処理が終了するのに伴い(その後に窓ガラス50における局所的な温度差が更に増加する可能性が低いことから)、時点t12の直後に開始された温度差低減処理も終了する。すなわち、定常状態となる。なお、変形例では、温度差低減処理は、時点t14よりも前に終了されてもよい。
【0116】
図9Cには、時点t13での変化特性(実線)に対応付けて、時点t2の直後からの温度差低減処理が実行されない比較例の場合の変化特性901が一点鎖線で示される。このような比較例では、変化特性901に示すように、窓ガラス50における局所的な温度差が更に増大している。すなわち、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)が生じるおそれがある。
【0117】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、第1通電処理と第2通電処理とが実行されている状況下において、第1通電処理が終了される場合でも温度差低減処理が実行されるので(すなわち第1通電処理が実質的に延長されるので)、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)の可能性を効果的に低減できる。
【0118】
ところで、本実施形態では、上述したように、温度差パラメータは、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差であり、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差を直接的に表すパラメータではない。すなわち、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差は、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差と相関するものの、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差と一致しない場合がある。
【0119】
このような傾向(すなわち、第1領域131及び第2領域132の各ガラス温度の差の、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差に対する、差分が大きくなる傾向)は、第1領域131及び第2領域132間の距離が比較的大きい場合に生じる。以下、このような傾向を、「第1領域131及び第2領域132間の距離の増加に応じた差分増大傾向」又は「差分増大傾向」と称する。
【0120】
図10A図10Dは、第1領域131及び第2領域132間の距離の増加に応じた差分増大傾向の説明図である。図10A図10Dは、前出の図8A図8Dと対比となる図であり、図8A図8Dと同様に、第2通電処理だけが実行されている状況下で温度差低減処理が実行される場合の各変化特性を示し、時点t1から時点t4については上述したとおりである。
【0121】
図10A図10Dは、図8A図8Dとは異なり、第1領域131及び第2領域132間の距離が比較的大きい場合の各変化特性を示す。
【0122】
Y方向で第1領域131及び第2領域132間の距離(すなわち、Y方向の第3領域133の幅)が比較的大きい場合、図10A図10Dに示すように、第3領域133のガラス温度と第1領域131のガラス温度との差異が比較的大きくなる。すなわち、第3領域133のY方向の中央部(図10Dの区間CT、図2の領域1331参照)では、第1加熱要素610及び第2加熱要素620からの熱エネルギが伝わりがたく、ガラス温度が上昇しがたい。従って、図10A図10Dに示すように、第3領域133の変化特性は、第1領域131側から第2領域132に向けて位置が変化するにつれて、中央部で有意に低下してから、増加する。このような中央部での変化特性が極小となる傾向は、第1領域131及び第2領域132間の距離が大きいほど大きくなる。
【0123】
また、このような中央部での変化特性が極小となる傾向は、第3領域133での熱伝達率(例えば、第1領域131又は第2領域132から中央部までの、熱伝達率)に依存する。このような熱伝達率は、第1領域131及び第2領域132間の距離とは異なり、一定ではなく、窓ガラス50の温度に応じて変化する。従って、熱伝達率は、車速や、外気温、内気温等のような、窓ガラス50の温度に影響を与える環境パラメータの値(所定情報の一例)に応じて変化する。例えば、車速が高いほど、窓ガラス50の温度が下がりやすく、従って、第3領域133等の熱伝達率は低くなりやすい。
【0124】
このため、上述した温度差パラメータの値は、かかる熱伝達率が考慮される態様で、環境パラメータの値に応じて補正されてもよい。また、これに代えて又は加えて、上述した閾値Thは、かかる熱伝達率が考慮される態様で、環境パラメータの値に応じて補正(変化)されてもよい。本実施形態では、一例として、閾値Thが環境パラメータの値に応じて補正(変化)される。
【0125】
具体的には、閾値設定処理部1523は、車速情報に基づいて、車速が高くなるほど閾値Thが小さくなるように、閾値Thを設定してもよい。これは、上述したように、車速が高いほど、窓ガラス50の温度が下がりやすく、従って、熱伝達率は低くなりやすいためである。同様に、閾値設定処理部1523は、外気温情報に基づいて、外気温が低くなるほど閾値Thが小さくなるように、閾値Thを設定してもよい。また、閾値設定処理部1523は、内気温情報に基づいて、内気温が低くなるほど閾値Thが小さくなるように、閾値Thを設定してもよい。これにより、環境パラメータの値の変化に応じて、第3領域133の熱伝達率が変化した場合でも、適切なタイミングで温度差低減処理の実行条件が満たされるような閾値Thを設定できる。
【0126】
例えば、本実施形態では、一例として、閾値設定処理部1523は、制御情報記憶部151内の閾値情報を参照して、車速、外気温、及び内気温の3つの環境パラメータの各値(環境情報)に応じた閾値Thを設定する。この場合、閾値情報は、車速、外気温、及び内気温の3つの環境パラメータの各値と閾値との関係を表す。図6に示す例では、車速、外気温、及び内気温の3つのパラメータの各値に対応する閾値係数が示される。例えば、0~V1(低速域)の範囲内の車速に対しては、閾値係数α1が対応付けられ、V1~V2(中速域)の範囲内の車速に対しては、閾値係数α2が対応付けられ、以下同様である。なお、これらの区分の数は、任意であり、より細かい区分が設定されてもよい。図6の場合、閾値設定処理部1523は、閾値情報を参照して、環境情報に基づく車速、外気温、及び内気温の3つの環境パラメータの各値に対応する閾値係数を抽出する。そして、閾値設定処理部1523は、抽出した閾値係数を、閾値Th算出用の所定の基準値に乗じることで、閾値Thを算出する。なお、各閾値係数は、このようにして算出される閾値Thが、適切なタイミングで温度差低減処理の実行条件が満たされる閾値となるように、適合されてよい。
【0127】
なお、本実施形態では、一例として、閾値情報は、図6に示すように、車速、外気温、及び内気温の3つの環境パラメータの各値に対応する閾値係数を示す情報であるが、これに限らない。閾値情報は、車速、外気温、及び内気温の3つの環境パラメータの各値の各組み合わせに対応した閾値Thを定義するマップデータであってもよい。また、本実施形態では、3つの環境パラメータを利用するが、1つや2つの環境パラメータだけを利用してもよいし、4つ以上の環境パラメータを利用してもよい。
【0128】
ところで、上述のように、第1領域131及び第2領域132間の距離が大きくなるにつれて、第1領域131及び第2領域132間の中央部に、第1加熱要素610及び第2加熱要素620からの熱が伝わりがたくなる。そして、第1領域131及び第2領域132間の距離が、所定距離以上となると、第1領域131及び第2領域132間の中央部に、第1加熱要素610及び第2加熱要素620からの熱が実質的に伝わらない。このような場合、上述した温度差低減処理は、実質的に機能しなくなる。従って、本実施形態は、第1領域131及び第2領域132間の距離が、上述した温度差低減処理が機能できるような距離であることが望ましい。かかる距離に係る上限距離(すなわち、上記の所定距離)は、窓ガラス50の各種の特性値等に依存するので、試験やシミュレーション等により導出できる。
【0129】
他方、第1領域131及び第2領域132間の距離が小さくなるにつれて、第3領域133に第1加熱要素610及び第2加熱要素620からの熱が伝わりやすくなり、窓ガラス50における局所的な温度差が生じがたくなる。
【0130】
従って、本実施形態は、第1領域131及び第2領域132間の距離が10mm~200mmの範囲内である場合に好適である。なお、本実施形態では、図2に示すように、第1領域131及び第2領域132間の距離は、Y方向の距離L1で規定できる。換言すると、第1領域131及び第2領域132間の距離が10mm以下である場合は、窓ガラス50における局所的な温度差が生じがたい車両用ウインドシールド1を実現できる。すなわち、第1領域131及び第2領域132間の距離が10mm以下である場合は、図10A図10Dで説明したような、中央部での変化特性が極小となる傾向が生じがたくなり、欠陥(例えば割れ)が生じがたい車両用ウインドシールド1を実現できる。なお、第1領域131及び第2領域132間の距離は、電気的な絶縁性を確保する観点から最小化されてよい。
【0131】
この場合、窓ガラス50は、第3領域133に係る部分において、好ましくは、平面引張応力が5MPa以下である。これは、もともとのガラスが持つ残留引張応力が小さい方が熱応力での割れの危険性が下がるためである。また、窓ガラス50は、第3領域133に係る部分において、好ましくは、ガラス(例えば車室側のガラス51b)の厚さが2mm以下である。このような厚みの薄いガラスは熱容量が比較的に小さいため、窓ガラス50における局所的な温度差を低減できるためである。また、上述した温度差低減処理の際に応答性良く第3領域133のガラス温度が上昇するためである。
【0132】
次に、図11以降のフローチャートを参照して、本実施形態による制御装置10の動作例について説明する。以降の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
【0133】
図11は、ウインドシールド用加熱制御に関連して本実施形態による制御装置10により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。図11に示す処理は、例えば、車両の起動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ)がオン状態である際に、所定周期ごとに繰り返し実行されてよい。
【0134】
ステップS1では、制御装置10は、制御に必要な各種情報を取得する。制御に必要な各種情報は、センサ情報取得部150に関連して上述したとおりであり、窓ガラス50に関連した各種センサ情報や環境情報(車速情報、外気温情報、及び内気温情報)等である。
【0135】
ステップS2では、制御装置10は、第1加熱要素610を制御するための第1加熱要素制御処理を実行する。第1加熱要素制御処理は、第1通電処理部1521に関連して上述した第1通電処理を包含し、第1加熱要素制御処理の一例は、図12を参照して後述する。
【0136】
ステップS3では、制御装置10は、第2加熱要素620を制御するための第2加熱要素制御処理を実行する。第2加熱要素制御処理は、第2通電処理部1522に関連して上述した第2通電処理を包含し、第2加熱要素制御処理の一例は、図13を参照して後述する。
【0137】
ステップS4では、制御装置10は、温度差低減中フラグF3が“0”であるか否かを判定する。温度差低減中フラグF3は、温度差低減処理の実行状態に対応付けて“1”となり、温度差低減処理の非実行状態に対応付けて“0”となるフラグである。判定結果が“YES”の場合、ステップS5に進み、それ以外の場合は、ステップS6に進む。
【0138】
ステップS5では、制御装置10は、第2通電中フラグF2が“1”であるか否かを判定する。第2通電中フラグF2は、第2加熱要素620の通電状態に対応付けて“1”となり、第2加熱要素620の非通電状態に対応付けて“0”となるフラグである。判定結果が“YES”の場合、ステップS7に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
【0139】
ステップS6では、制御装置10は、第2通電中フラグF2が“0”であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS11に進み、それ以外の場合は、ステップS7に進む。
【0140】
ステップS7では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報に基づいて、温度差パラメータの値を算出する。温度差パラメータは、温度差パラメータ算出部1524に関連して上述したとおりである。
【0141】
ステップS8では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報と、閾値情報とに基づいて、閾値Thを算出(設定)する。閾値情報は、制御情報記憶部151に関連して上述したとおりであり、閾値Thについては、閾値設定処理部1523に関連して上述したとおりである。
【0142】
ステップS9では、制御装置10は、ステップS7で得た温度差パラメータの値が、ステップS8で得た閾値Thを超えているか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS10に進み、それ以外の場合は、ステップS11に進む。
【0143】
ステップS10では、制御装置10は、温度差低減中フラグF3を“1”にセット又は維持する。
【0144】
ステップS11では、制御装置10は、温度差低減中フラグF3を“0”にリセット又は維持する。
【0145】
ステップS12では、制御装置10は、第1通電中フラグF1が“1”であるか否かを判定する。第1通電中フラグF1は、第1加熱要素610の通電状態に対応付けて“1”となり、第1加熱要素610の非通電状態に対応付けて“0”となるフラグである。判定結果が“YES”の場合、今回周期の処理は終了し、それ以外の場合は、ステップS13に進む。
【0146】
ステップS13では、制御装置10は、第1通電中フラグF1を“1”にセットする。すなわち、制御装置10は、第1通電中フラグF1を“0”から“1”に変化させる。
【0147】
図12は、第1加熱要素制御処理(図11のステップS2)の一例を示す概略フローチャートである。
【0148】
ステップS20では、制御装置10は、第1通電中フラグF1が“1”であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS21に進み、それ以外の場合は、ステップS25に進む。
【0149】
ステップS21では、制御装置10は、スイッチ部614をオンすることで、第1加熱要素610を通電する。
【0150】
ステップS22では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報に基づいて、第1通電終了閾値を算出する。第1通電終了閾値は、上述のとおりである。
【0151】
ステップS23では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報に基づく第1領域131のガラス温度が、ステップS22で得た第1通電終了閾値以上であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS24に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
【0152】
ステップS24では、制御装置10は、第1通電中フラグF1を“0”にリセットする。
【0153】
ステップS25では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報に基づいて、第1通電開始閾値を算出する。第1通電開始閾値は、上述のとおりである。
【0154】
ステップS26では、制御装置10は、ステップS1で得た各種情報に基づく第1領域131のガラス温度が、ステップS25で得た第1通電開始閾値以下であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS27に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
【0155】
ステップS27では、制御装置10は、第1通電中フラグF1を“1”にセットする。
【0156】
図13は、第2加熱要素制御処理(図11のステップS3)の一例を示す概略フローチャートである。図13の第2加熱要素制御処理に係るフローチャートは、図12に示した第1加熱要素制御処理のフローチャートに対して、実質的に以下の説明の『第1』を『第2』に読み替えるだけの相違であるので、詳細な説明は省略する。
【0157】
図11図13に示す処理によれば、第2通電処理部1522により第2通電処理が実行される状態において(ステップS5の“YES”)、温度差パラメータの値が閾値Thを超えると(ステップS9の“YES”)、第1通電中フラグF1が“0”であっても“1”に変化される(ステップS13)。この場合、第1加熱要素610の通電が実行されることで(ステップS21)、温度差低減処理が実現されることになる。すなわち、図11図13に示す処理では、ステップS13で第1通電中フラグF1が“1”に変化されることに起因した第1加熱要素610の通電(ステップS21)が、温度差低減処理となる。従って、図11図13に示す処理によれば、第2通電処理部1522により第2通電処理が実行される状態において、温度差低減処理が実現されることで、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)の可能性を効果的に低減できる。
【0158】
なお、図11図13に示す処理では、ステップS13で第1通電中フラグF1の状態を強制的に変化させることで、ステップS21により温度差低減処理を実現しているが、これに限られない。例えば、温度差低減中フラグF3が“1”である場合に、ステップS22で算出される第1通電終了閾値を、より大きい値に補正することで、ステップS21により温度差低減処理を実現してもよい。また、温度差低減中フラグF3が“1”である場合に、ステップS25で算出される第1通電開始閾値を、より小さい値に補正することで、ステップS21により温度差低減処理を実現してもよい。
【0159】
なお、図11図13に示す処理では、温度差低減処理は、温度差パラメータの値が閾値Th以下になった場合(ステップS9の“NO”)や、第2加熱要素620の通電が終了する場合(ステップS6の“YES”)に、終了されるが、これに限られない。これらの2つの条件のうちの、いずれか一方が満たされる場合のみ終了されてもよいし、他の条件が付加されてもよい。
【0160】
[第2実施形態]
以下の第2実施形態の説明において、上述した第1実施形態と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。また、特に説明しない構成要素については、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0161】
図14は、第2実施形態による車両用ウインドシールド1Aの一部の拡大図であり、図1のQ1部に対応する部分を示す図である。
【0162】
第2実施形態による車両用ウインドシールド1Aは、上述した第1実施形態による車両用ウインドシールド1に対して、第1温度センサ71の位置が異なる。具体的には、本実施形態では、第1温度センサ71は、図14に示すように、第3領域133内に設けられる。すなわち、第1温度センサ71は、第1領域131及び第2領域132から離れた所定位置に設けられる。所定位置は、好ましくは、第3領域133のうちの、第1領域131又は第2領域132との温度差が最大となる位置(すなわち第3領域133のガラス温度に係る位置)又はその近傍である。典型的には、所定位置は、第3領域133の中央部(領域1331参照)内である。
【0163】
このような本実施形態による車両用ウインドシールド1Aによれば、第3領域133内に配置される第1温度センサ71により、第3領域133内のガラス温度の最小値を精度良く検出できる。これにより、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差を精度良く検出できる。この結果、窓ガラス50の欠陥(例えば割れ)の可能性を更に効果的に低減できる。
【0164】
なお、本実施形態では、ウインドシールド用加熱制御に関連した制御装置の機能については、図示を省略するが、上述した第1実施形態と同様であってよい。本実施形態によれば、温度差パラメータ算出部1524が算出する温度差パラメータの値は、第3領域133と第1領域131又は第2領域132の温度差を精度良く表すことができるので、制御の信頼性を高めることができる。
【0165】
また、本実施形態では、第1温度センサ71及び第2温度センサ72のうちの、第1温度センサ71が第3領域133に設けられるので、第2通電処理は第2温度センサ72を利用して精度良く実現できる。ただし、変形例では、第2温度センサ72が第3領域133に設けられてもよいし、新たな第3温度センサ(図示せず)が第3領域133に設けられてもよい。
【0166】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0167】
例えば、上述した実施形態では、温度差低減処理は、上述したように、第2通電処理が実行されている状態において、温度差低減処理の実行条件が満たされた場合に実行されるが、これに限られない。例えば、温度差低減処理は、第2通電処理が実行される場合は常に実行されてもよい。また、温度差パラメータの値の変化を予測することで、より早い段階から温度差低減処理が開始されるようにしてもよい。例えば、上述のように第2通電処理だけが開始される場合であって、当該第2通電処理に起因して温度差パラメータの値が閾値Thを超えることが予測される場合は、温度差パラメータの値が閾値Thを超えるよりも前に第1通電処理が実行されてもよい。
【0168】
また、本実施形態は、ウインドシールド用の加熱制御プログラムとしても用いることができる。すなわち、本実施形態にかかるプログラムは、移動体の室内外を仕切るガラスに設けられる加熱要素を制御するためのプログラムであって、1つ以上のセンサからのセンサ情報を取得する処理と、前記センサ情報に基づいて、前記ガラスにおける第1領域に設けられる第1加熱要素と、前記ガラスにおける前記第1領域とは異なる第2領域に設けられる第2加熱要素とを制御する制御処理とを、コンピュータに実行させる。前記制御処理は、前記ガラスにおける前記第1領域及び前記第2領域の間の第3領域でのガラス温度と、前記第1領域でのガラス温度又は前記第2領域でのガラス温度との温度差が上限値を超えないように、前記第1加熱要素及び前記第2加熱要素のうちの少なくとも一方を制御する温度差低減処理を含む。
【0169】
この出願は、2020年3月2日に出願された日本出願特願2020-034766を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0170】
1、1A 車両用ウインドシールド
3 電子部品
4 カバー
10 制御装置
20 車両周辺監視センサ
31 車載ネットワーク
33 車輪速センサ
35 外気温センサ
36 内気温センサ
50 窓ガラス
51a ガラス
51b ガラス
51c 中間膜
54 遮蔽膜
54a 一定幅部
54b 凸部
60 加熱装置
61 第1加熱装置
610 第1加熱要素
612 バスバ
613 バスバ
614 スイッチ部
62 第2加熱装置
620 第2加熱要素
622 バスバ
623 バスバ
624 スイッチ部
70 センサ装置
71 第1温度センサ
72 第2温度センサ
76 第1湿度センサ
77 第2湿度センサ
131 第1領域
132 第2領域
133 第3領域
150 センサ情報取得部
151 制御情報記憶部
152 制御処理部
1521 第1通電処理部
1522 第2通電処理部
1523 閾値設定処理部
1524 温度差パラメータ算出部
1525 閾値判定処理部
1526 温度差低減処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
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図14