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特許7619560光触媒プレート、光触媒粒子構成体、およびそれらの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】光触媒プレート、光触媒粒子構成体、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20250115BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20250115BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20250115BHJP
   B01J 27/045 20060101ALI20250115BHJP
   B01J 23/847 20060101ALI20250115BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20250115BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B01J35/39
C01B3/04 A
C01B13/02 B
B01J27/045 M
B01J23/847 M
B01J23/887 M
B01J23/644 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020206250
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093136
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-09-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513056835
【氏名又は名称】人工光合成化学プロセス技術研究組合
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】工藤 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宗徳
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 顕秀
(72)【発明者】
【氏名】山口 友一
(72)【発明者】
【氏名】林 利生
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122214(JP,A)
【文献】特許第6073520(JP,B2)
【文献】特開2019-084527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0165148(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214858(US,A1)
【文献】特開2020-179346(JP,A)
【文献】特開2017-217623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 35/00-35/80
C01B 3/04
C01B 13/02
B01J 27/04
B01J 23/00-23/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末を含む光触媒粒子構成体と有機材料基材とを含み、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子および前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が0.05μm以上50μm以下であり、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が、前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径に対して1.5倍以上500倍以下であり、
前記カーボン微粉末の存在比が前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して0.1wt%以上30wt%以下である光触媒プレート。
【請求項2】
前記カーボン微粉末が還元型酸化グラフェン(RGO)である請求項1記載の光触媒プレート。
【請求項3】
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が金属硫化物を含む光触媒粒子を含む請求項1または2記載の光触媒プレート。
【請求項4】
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が周期表8~11族の金属成分である助触媒を含む請求項1~3のいずれか1項記載の光触媒プレート。
【請求項5】
記水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が2μm以上50μm以下であ請求項1~4のいずれか1項記載の光触媒プレート。
【請求項6】
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子と前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との重量比率が10/90~80/20である請求項1~5のいずれか1項記載の光触媒プレート。
【請求項7】
水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末を含む光触媒粒子構成体とを含み、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が1.1μm以上50μm以下であり、
前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が0.05μm以上50μm以下であり、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が、前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径に対して1.5倍以上500倍以下であり、
前記カーボン微粉末の存在比が前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して0.1wt%以上30wt%以下である光触媒粒子構造体。
【請求項8】
請求項7記載の前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、前記カーボン微粉末とを接触させた後に加圧する工程を含む光触媒粒子構成体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項記載の前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、前記カーボン微粉末と、前記有機材料基材とを接触させた後に加圧する工程を含む光触媒プレートの製造方法。
【請求項10】
前記有機材料基材が樹脂基材である請求項9記載の光触媒プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子とカーボン化合物と基材とを含み、可視光応答型の水分解能を有する光触媒プレート、および水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子とカーボン化合物とを含む光触媒粒子構造体およびそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、深刻化しつつある化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題などの環境問題を解決する手段として、クリーンなエネルギーシステムの確立が大きく求められている。
このクリーンなエネルギーシステムの1つとして、太陽光エネルギーを有効利用して水を分解することによって水素を製造する「ソーラー水素製造技術」が注目されており、この水素製造技術の鍵となる可視光応答性光触媒の開発が盛んに行なわれている。
【0003】
水分解の形態として光触媒を基材に固定して用いる方法は、光触媒粒子を懸濁させた水溶液を用いる方法に比べて撹拌装置および撹拌のエネルギーや大型の容器を必要とせず水素製造装置の大面積化に適している。
この観点から簡便かつ低コストの光触媒粒子固定化技術の開発は重要である。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子と導電性粒子および基材を含む光触媒シートが例示されている。特許文献1では成膜と水分解活性の良好な発現には300℃の焼成工程を必要としており使用可能な光触媒や基材には制限が生じる。実際、実施されている光触媒は金属酸化物光触媒に限られており、可視光領域に幅広く吸収帯を有する金属硫化物光触媒の使用については言及されていない。またこの例では焼成工程を含むため基材としてはガラスが使用されており、軽量で柔軟性をもつ樹脂基材を用いた実施態様は開示されていない。成膜の強度について行われている試験は剥離防止部を含む特許文献2においても非接触の試験に留まっておりひっかきなどの接触型の試験については言及されていない。
【0005】
特許文献3には水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子と導電性基材を含みロールプレスで成膜された光触媒シートが例示されている。この例では導電材料が基材であるためこれが特定の仕事関数を有するTiやInなどの材料に限定され高価なものになってしまう。
【0006】
非特許文献1及び非特許文献2には水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子を含みこれらに導電性材料を蒸着するプロセスを含む粒子転写法による光触媒シートが例示されている。この例では真空プロセスを含むため大面積化に対しては高価なものになってしまう。
【0007】
非特許文献3には水全分解型光触媒と無機バインダー(ナノシリカ)および基材を含む光触媒シートが例示されている。この例では成膜と水分解活性の良好な発現には350℃の焼成工程を必要としており基材としてはガラスが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6073520号公報
【文献】特開2018-122214号公報
【文献】特開2017-217623号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Nature Mater.,15,6,p.611(2016),K.Domen et al.
【文献】J.Am.Chem.Soc.,139,4,p.1675(2017),K.Domen et al.
【文献】Joule,2,3,p.509(2018),K.Domen et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光による水の分解によって水素生成を大規模に行うためには、プレート状に光触媒粒子層を配置し、そのプレートの運搬や保存、加工、設置の簡便化が重要になる。そのためプレートの軽量性や柔軟性および光触媒粒子層とプレート基材との密着性が重要となってくる。無機材料である光触媒粒子層を設けたプレートを製造する場合、基材への密着性を得るために一般的な成膜に用いられる有機バインダーや無機バインダーを使用することは困難である。一般的な有機バインダーを用いた場合はこれが光触媒粒子の表面に接着し光触媒粒子表面の反応活性点をふさいでしまい水分解反応の進行を妨げてしまう場合がある。一般的な無機バインダーを用いた場合もこれが光触媒粒子の表面を覆う要因となり得る。また例えばZスキーム型水分解の光触媒粒子層に無機バインダーを用いた構成では粒子間の接触およびこれら粒子と導電材料との接触を妨げる要因となり得る。尚、本明細書において、「プレート」ないし「プレート状」は、可撓性のないもの、及び、可撓性のあるもの(シート、シート状を含む)を含む。
【0011】
このため安価で軽量、柔軟な樹脂等の有機材料を含む有機材料基材上に高密着な光触媒粒子層を、光触媒活性を損なうことなく固定する技術を開発することは重要であるが、有機材料基材上に高密着な光触媒粒子層を形成することと、光触媒活性とはトレードオフの傾向があり、双方を両立することは知られていないのが実情である。
【0012】
もし高密着な光触媒粒子層を有した光触媒プレートであれば、何枚もの光触媒プレートを直接重ねた棒積み状もしくは大面積で長尺の光触媒プレートをロール状の形態にすることができるので運搬および保存が容易となる。
【0013】
また、実用的な環境では光触媒粒子層が接触時の擦れによって容易に剥がれてしまう様なことは問題となる。もしも擦れを避けるためには、運搬、保存、加工、設置の際に常に光触媒粒子層上に空間を保持し続ける必要がある。このようなケースでは、特に水素製造装置の大面積化に対しては障害となる。
【0014】
また、水中で水分解反応を行う際にも長期間安定に光触媒粒子層を保持するためにも光触媒粒子層と基材との密着性が高いことは有用である。特にPETの様に安価で軽量かつ柔軟でさらに資源として再利用可能な基材上に高密着な光触媒粒子層を設けることが可能となれば、水素製造装置の大面積化へのメリットは非常に大きい。
【0015】
基材上に光触媒粒子層を設けるためには、基材の耐熱温度以下で固定化する非加熱プロセスの技術が必要である。樹脂等の有機材料基材は一般的に耐熱温度が無機材料基材に比して低い為、光触媒粒子層の固定化は困難な傾向にある。
【0016】
もし低温で光触媒プレートの製造が可能となれば、光触媒粒子層を構成する光触媒材料の選択肢を広げることができる。特に可視光領域に幅広く強い吸収帯を有することが可能な金属硫化物光触媒は、高温条件では酸化が進行して変質を招くおそれがあるので、低温での製造方法が可能となれば、光触媒の材料の選択肢を広げることも出来る。
【0017】
よって本発明が解決しようとする課題は、水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子の組み合わせによる可視光応答性のZスキーム型水分解反応を高効率に進めることが可能な光触媒粒子構成体および光触媒プレートを経済性、軽量性、柔軟性に優れた樹脂等の有機材料基材上で実現し、構造が安定で運搬性、保存性、加工性に優れた光触媒プレートを提供することにある。
また、例えば真空の様な高度に制御された環境や、低温環境でのプロセスでなくても、可視光領域に幅広い吸収帯を有する金属硫化物光触媒系光触媒材料や樹脂基材等の材料を使用した光触媒プレートを製造する技術を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために本発明者らが検討した結果、特定の粒径の水素生成用可視光応答性光触媒粒子、及び酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して特定の含有率のカーボン微粉末とを含む光触媒粒子構造体や、前記構造体層と有機材料基材とを含む光触媒プレート及びそれらの製法が、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。より具体的には、本発明は以下のような構成を有するものである。
【0019】
[1] 水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末を含む光触媒粒子構成体と有機材料基材とを含み、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子および酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が0.05μm以上50μm以下であり、
前記カーボン微粉末の存在比が酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して0.1wt%以上30wt%以下である光触媒プレート。
[2] カーボン微粉末が還元型酸化グラフェン(RGO)である[1]記載の光触媒プレート。
[3] 前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が金属硫化物を含む光触媒粒子を含む[1]または[2]記載の光触媒プレート。
[4] 前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が助触媒を含む[1]~[3]のいずれか1項記載の光触媒プレート。
[5] 前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が0.05μm以上5μm以下であり、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が2μm以上50μm以下であって、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径に対して1.5倍以上500倍以下の一次粒径を有する[1]~[4]のいずれか1項記載の光触媒プレート。
[6] 水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との重量比率が10/90~80/20である[1]~[5]のいずれか1項記載の光触媒プレート。
[7] 水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末を含む光触媒粒子構成体とを含み、
前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子が1.1μm以上50μm以下であり、
酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が0.05μm以上50μm以下であり、
前記カーボン微粉末の存在比が酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して0.1wt%以上30wt%以下である光触媒粒子構造体。
[8] [7]記載の前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末とを接触させた後に加圧する工程を含む光触媒粒子構成体の製造方法。
[9] [1]~[6]のいずれか1項記載の水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末と、基材とを接触させた後に加圧する工程を含む光触媒プレートの製造方法。
[10] 前記基材が樹脂基材である[9]記載の光触媒プレートの製造方法。
[11] 前記基材が、無機化合物層を含む樹脂基材である[9]記載の光触媒プレートの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光触媒粒子を含む層と有機材料基材とを含んで形成される光触媒プレートは、特定の粒径の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、特定の重量割合のカーボン微粉末とを含む光触媒粒子構造体の層を含んでいる。カーボン微粉末は、例えば導電材料としての役割や、加圧工程においては粒子間および粒子-基材間における結着材料としての機能等を発揮できる。
【0021】
とりわけカーボン微粉末として還元型酸化グラフェン(以後、RGOと称する場合がある。)を用いた場合にはこれらの効果が顕著である。例えば、高温環境下でなくても加圧工程によって、還元型酸化グラフェン(RGO)と光触媒粒子との間の結着力が向上することにより、導通性の向上による水分解反応の高活性化と光触媒粒子構成体を含む堅牢な光触媒プレートが得られる効果が発現するのが好ましい態様の一つである。
【0022】
また、例えば、上記の様な方法で得られる光触媒プレートは、とりわけ広い可視光領域の光の応答性が高い金属硫化物光触媒であっても、そのポテンシャルを損なうことなく発揮できるので、高い性能を発現することが出来る。また、前記の有機材料基材は一般的に安価で加工性に優れ、ロール・トゥ・ロール等の連続プロセスにも適用し易い特性を有しているので、扱いやすい光触媒プレートと出来ることが多い。
前記の光触媒粒子構造体は、当然、上記の様な高い水分解反応効率を発現させる主たる部位である。よって、前記の様に光による高い水分解性能を発現させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】光触媒粒子構成体の模式図
図1B】光触媒粒子構成体の模式図
図1C】光触媒粒子構成体の模式図
図1D】光触媒粒子構成体の模式図
図2A】光触媒プレートの模式図
図2B】光触媒プレートの模式図
図2C】光触媒プレートの模式図
図2D】光触媒プレートの模式図
図3】光触媒プレートの作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明
図4】閉鎖循環系による光触媒プレート光触媒機能の評価
図5】光触媒粒子構成体の作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明
図6】閉鎖循環系による光触媒プレート光触媒粒子構成体の評価
図7A】実施例1のスペクトル
図7B】実施例1のスペクトル
図8】実施例1の触媒粒子写真
図9】実施例1の水分解反応のグラフ
図10】実施例1の光触媒プレート写真
図11】実施例1の光触媒プレートの模式図
図12】実施例2の水分解反応のグラフ、光触媒プレート表面写真
図13A】実施例3の触媒粒子の写真
図13B】実施例3の触媒粒子と光触媒プレートの水分解反応のグラフ
図13C】実施例3の光触媒プレートの写真
図14A】実施例4の水分解反応のグラフ
図14B】実施例4の触媒粒子写真
図15A】実施例5の拡散反射スペクトル、X線回折スペクトル、触媒粒子写真
図15B】実施例5の水分解反応のグラフ、光触媒プレートの写真と模式図
図16】実施例6の水分解反応のグラフ
図17A】実施例8の触媒粒子写真
図17B】実施例8の水分解反応のグラフ
図17C】実施例8の光触媒プレート表面写真
図18】実施例9の水分解反応のグラフ
図19】実施例9の光触媒プレート表面写真
図20】実施例11の触媒粒子の拡散反射スペクトル
図21】実施例12の触媒粒子の拡散反射スペクトル
図22】実施例13の水素生成用可視光応答光触媒粒子の拡散反射スペクトル、水分解反応のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光触媒プレートは、特定の粒子径範囲の水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、特定の粒子径範囲の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、特定重量比率のカーボン微粉末とを含み、好ましくはこれらの部材が、例えば加圧によって結着した粒子構成体を含む層と、有機材料基材とを含む構成である。カーボン微粉末としては、とりわけ還元型酸化グラフェン(RGO)が適している。
この構成において還元型酸化グラフェン(RGO)は良好な導電材料であり、好ましくは加圧によって水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との間に介在して結着材料としても機能するので光触媒粒子の溶媒への懸濁状態においても粒子が結着した状態を提供することが可能となり、例えばZスキーム型水分解反応に必要な当該粒子間の電子伝達が容易となりひいては高い水分解活性を示す光触媒粒子構成体を形成することができる。
【0025】
また、本発明の光触媒粒子構造体は特定の粒径範囲の水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、特定粒径範囲の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、特定の重量比率のカーボン微粉末とを含む。カーボン微粉末としては還元型酸化グラフェン(RGO)が好ましい。この様なカーボン微粒子の効能は前記の通りである。
【0026】
以下、光触媒プレート、光触媒粒子構成体の構成およびそれらの製造方法について詳述する。
【0027】
<水素生成用可視光応答性光触媒粒子>
本発明における水素生成用可視光応答性光触媒粒子は、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と還元型酸化グラフェン(RGO)等のカーボン微粉末の存在する水等の水溶媒中で可視光の照射に応答して酸素生成用可視光応答性光触媒粒子側では酸素を生成する、例えばZスキーム型水分解に伴って水素生成反応を示す光触媒粒子である。
【0028】
本発明の光触媒プレートに含まれる水素生成用可視光応答性光触媒粒子は、水素生成反応を示せばどの様な金属光触媒粒子であってもかまわない。
本発明の水素生成用可視光応答性光触媒粒子としては金属酸化物光触媒、金属硫化物光触媒、金属酸硫化物(オキシサルファイド)光触媒、金属窒化物光触媒、金属酸窒化物(オキシナイトライド)光触媒などの金属化合物を含む光触媒が代表的である。
また金属光触媒粒子が助触媒を含む構成であることが好ましい。
【0029】
本発明における水素生成用可視光応答性光触媒粒子として、より具体的には文献Chem.Soc.Rev.,38,1,p.253(2009),Y.Miseki,A.Kudo et al.においてTable4、6、8、9で水素生成が認められる光触媒および光触媒と助触媒との組み合わせや、文献Faraday Discussions,215,p.313(2019),A.Kudo et al.のTable1、2で水素生成が認められる光触媒および光触媒と助触媒との組み合わせ、特開2016-55279に発明を実施するための形態の項で水素発生側の光触媒として例示された光触媒などが好適な例として挙げられるがこれらに限定されない。
また本発明で用いる水素生成用可視光応答性光触媒粒子は単一の成分でも良いし複数種の光触媒を組み合わせた態様でもかまわない。
【0030】
<水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒>
本発明における水素生成用可視光応答性光触媒粒子としては金属硫化物を含む光触媒粒子であることが好ましい。金属硫化物である水素生成用可視光応答性光触媒粒子は、可視光領域に幅広く強い光吸収帯を有する傾向があり、また、その応答性も優れる傾向がある。具体例としては前記の文献の他に、文献ChemSusChem,12,p.1977(2019),A.Kudo et al.で報告されたCuMS(M=V,Nb,Ta)およびその固溶体、文献J.Phys Chem.Lett.,6,6,,p.1042(2015),A.Kudo et al.で報告された(CuGa)1-xZnxS、文献Sustainable Energy Fuel,2,p.2016(2018),A.Kudo et al.で報告された(CuGa1-yIn1-xZn2x、文献Chem. Mater.,18,7,p.1969(2006),A.Kudo et al.で報告された(CuAg)In2xZn2(1-2x)、文献J.Mater.Chem.A,3,p.21815(2015),A.Kudo et al.で報告されたCu1-xAgGaS、また、実施例に記載した化合物の名などを挙げることが出来る。このような化合物は、上記の文献に準じた手法だけでなく、これらの文献の手法を組み合わせて合成することも出来る。それらは可視光に対し高い水素生成反応を示すことができるので、本発明における水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒として望ましい。
また本発明で用いる水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒粒子は単一の成分でも良いし複数種の光触媒の組合せでもかまわない。金属硫化物を構造中に含まない光触媒粒子と組み合わせてもかまわない。
【0031】
本発明の水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径は0.05μm以上50μm以下である。好ましい下限値は、0.1μm、より好ましくは0,5μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは1.1μm、殊に好ましくは2μmである。一方、好ましい上限値は40μm、より好ましくは、35μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは25μmである。
一次粒径が小さくなるほど水と光触媒との接触面積が増大し光照射による水分解反応の活性点が増える要因となるが、0.05μm未満では、光触媒の結晶性の低下や粒子間に十分な細孔を得られず気体の生成を妨げる場合がある。一方、一次粒径が大きくなるほど光触媒の結晶性は良好になりまた粒子間に十分な細孔を得やすくなるが、50μmを超えると光触媒粒子表面積の低下や光触媒粒子層形成の際に成膜状態の悪化を招き、触媒活性が低下する場合がある。
【0032】
さらに本発明の水素生成用可視光応答性光触媒粒子は、水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が2μm以上50μm以下の範囲で、後述する酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径に対して1.5倍以上500倍以下であることが望ましい。この場合の該一次粒径の好ましい下限値は、2.5μm、より好ましくは3μm、さらに好ましくは3.5μm、特に好ましくは4 μmである。一方、好ましい上限値は40μm、より好ましくは、35μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは25μmである。また、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径に対する大きさの好ましい下限値は、2.5倍であり、一方、好ましい上限値は400倍、より好ましくは、300倍、さらに好ましくは250倍、特に好ましくは200倍である。後述する酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対し、水素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径が相対的に大きい方が良好な水分解活性を得易い場合がある。
本発明において、一次粒径は光触媒粒子の一次粒径測定は粒径に応じて2000~20000倍のSEM画像を用い、30個ほどの光触媒粒子の一次粒径を測りとり平均化して明細書中の一次粒径とした。もしは、明らかに本発明の請求項の範囲内と思われるほど、粒径が或る程度揃っていると目視で判断される場合は、SEM画像を目視で観察し画像上のゲージとの比較から一次粒径の値を決定した。
【0033】
<酸素生成用可視光応答性光触媒粒子>
本発明の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子は水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粒子、好ましくは還元型酸化グラフェン(RGO)の存在する水溶媒中で可視光の照射に応答して水素生成用可視光応答性光触媒粒子側では水素を生成する好ましくはZスキーム型水分解に伴って酸素生成反応を示す光触媒粒子である。
【0034】
酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の組成としてはBiVO、TiO、なかでもBiVOなどが代表的であるが、本発明の光触媒プレートや後述する光触媒粒子構成体において酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として構成することにより酸素生成反応を示す金属光触媒粒子であればどの組成の金属光触媒粒子を用いてもかまわないし、例えば、BiVOのMoドープ体であるBiVO:Mo等や、TiOのチタン元素Rh,Sbドープ体であってもよい。
また本発明の酸素発生用可視光応答性触媒粒子は、助触媒と併用することが好ましい態様である。助触媒との組み合わせによって、前記水分解反応の活性が向上できる場合がある。上記の組合せの具体例としては、酸素発生用可視光応答性触媒粒子に助触媒を担持する態様が好適例である。尚、本発明においては、水素発生用可視光応答性触媒粒子や酸素発生用可視光応答性触媒粒子と、助触媒との組合せの態様を金属光触媒粒子あるいは光触媒粒子と称する場合がある。
【0035】
酸素生成用可視光応答性光触媒粒子はより具体的には文献Chem.Soc.Rev.,38,1,p.253(2009),Y.Miseki,A.Kudo et al.においてTable4、6、8、9で酸素生成が認められる光触媒および助触媒との組み合わせや、Faraday Discussions,215,p.313(2019),A.Kudo et al.においてTable1、2で酸素生成が認められる光触媒および助触媒との組み合わせ、特開2016-55279に発明を実施するための形態の項で酸素発生側の光触媒として例示された光触媒で示された光触媒などがあげられるがこれらに限定されない。
また本発明で用いる酸素生成用可視光応答性光触媒粒子は単一の成分でも良いし複数種の光触媒の混合物でもかまわない。
【0036】
本発明の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径は0.05μm以上50μm以下である。好ましい下限値は0.07μm、より好ましくは0.1μm、さらに好ましくは0.15μm、特に好ましくは0.17μmである。一方、好ましい上限値は40μm、より好ましくは35μm、さらに好ましくは33μm、特に好ましくは30μm、殊に好ましくは25μmである。
一次粒径が小さくなるほど水と光触媒との接触面積が増大し光照射による水分解反応の活性点が増える要因となるが、0.05μmを下回ると光触媒の結晶性の低下や粒子間に十分な細孔を得られず気体の生成を妨げる場合がある。一方、一次粒径が大きくなるほど光触媒の結晶性は良好になりまた粒子間に十分な細孔を得やすくなるが、50μmを上回ると反面光触媒粒子表面積の低下や光触媒粒子層形成の際に成膜状態の悪化を招く場合がある。
【0037】
本発明において、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との重量比に特に制限は無い。それぞれの触媒粒子の性能に応じてその割合を選択することが出来る。具体的な好ましい重量比の範囲は以下の通りである。
水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との重量比として、10/90~80/20の範囲が好ましい。より好ましい下限値は15/85、さらに好ましくは20/80である。一方、より好ましい上限値は70/30、さらに好ましくは65/35、特に好ましくは60/40である。
【0038】
<カーボン微粉末、還元型酸化グラフェン(RGO)>
本発明に使用するカーボン微粒子は、特に制限は無いが、好ましくは還元型酸化グラフェン(RGO)である。RGOはグラファイトの単分子層にエポキシ基およびカルボキシル基、カルボニル基、水酸基などの官能基が結合した酸化グラフェン(以後、GOと称する場合がある。)を還元して得られる導電性を有する材料である。原料となる酸化グラフェン(GO)は文献J.Am.Chem.Soc.,80,p.1339(1958),W.S.Hummers et al.に記載の方法などで製造できるがこれに限定されない。
【0039】
市販で入手できる酸化グラフェン(GO)としては、粉末である仁科マテリアル社製Rap dGO(TQ-11)、シグマーアルドリッチ社製796034、東京化成工業社製G0443、粉末の水分散液である仁科マテリアル社製Rap GO(TQ-2)、Rap GO(TQ-2pure)、Rap GO(TQ-11)、Rap eGO(TQ-11)、Rap bGO(TQ-11)、シグマーアルドリッチ社製777676、東京化成工業社製G0444などがあげられるがこれに限定されない。
【0040】
本発明に使用する還元型酸化グラフェン(RGO)は文献Chem.Soc.Rev.,43,1,p.291(2014),M.Pumera et al.に記載の方法などで製造できるがこれに限定されない。
市販で入手できる還元型酸化グラフェン(RGO)としては粉末としては仁科マテリアル社製Rap rGO(TQ-11)、シグマーアルドリッチ社製777684、805424、805084などがあげられるがこれに限定されない。
【0041】
本発明に使用する還元型酸化グラフェン(RGO)はあらかじめ製造されたものを前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子や前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と組み合わせて用いても良いし、本発明の実施例に記載の様に後述する光触媒粒子構成体または光触媒プレートを構成する光触媒粒子と酸化グラフェン(GO)を媒体に懸濁させて光照射し光還元によって光触媒粒子中で還元型酸化グラフェン(RGO)を調製させる方法を用いても良い。
【0042】
本発明においてカーボン微粒子は、前記酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対して0.1wt%以上30wt%以下の割合で含まれる。好ましい下限値は0.5wt%、より好ましくは0.8wt%、さらに好ましくは1.0wt%である。一方、好ましい上限値は、25wt%、より好ましくは20wt%、さらに好ましくは17wt%、特に好ましくは15wt%である。
0.1wt%を下回ると、後述する導電性や結着剤としての機能が十分でない場合がある。一方、30wt%を上回ると可視光をRGOが吸収する割合が増え、水分解反応性が十分ではなくなる場合がある。
尚、本明細書において、「カーボン微粉末」の具体例としては、上記のとおりRGO等が挙げられる。また、カーボン(C)のみならず、カーボンと酸素等のヘテロ原子とを含むカーボン化合物からなる微粉末であってもよい。また、本明細書においては、「カーボン微粉末」をカーボン粒子、カーボン微粒子等ということがある。
【0043】
<還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る酸素生成用可視光応答性光触媒粒子>
本発明の光触媒プレートや後述する光触媒粒子構成体はその一例としてあらかじめ形成された還元型酸化グラフェン(RGO)を含む酸素生成用可視光応答性光触媒粒子を構成要素として含む態様であることが好ましい。酸素生成用可視光応答性光触媒粒子への還元型酸化グラフェン(RGO)とを組み合わせる方法は特に限定しないが、本発明の実施例に記載の様に犠牲試薬の存在下酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸化グラフェン(GO)の懸濁液に光照射を行い、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子から酸化グラフェン(GO)への還元による還元型酸化グラフェン(RGO)の生成反応を利用した添加方法が好ましい一例である。酸素生成用可視光応答性光触媒粒子BiVOへの還元型酸化グラフェン(RGO)の添加方法は文献J.Am.Chem.Soc.,133,29,p.11054(2011),A.Iwase,A.Kudo et al.に報告がある。
【0044】
<有機材料基材>
本発明に使用する有機材料基材は光触媒粒子と組み合わせ使用する際に光触媒機能を害しない等、本発明の目的を損なわない限り、特に制限は無い。好ましくは、後述する加圧工程で破損しない、光触媒粒子構造体との親和性を有する、ロール・トゥ・ロールを実現できる柔軟性を有するなどの機能の1つ以上を有していることが好ましい。さらには、安価、軽量な材料であることが好ましいのは自明である。安価で軽量、柔軟な樹脂基材を用いれば運搬、保存、加工などの点で優位であり、大面積化の課題に対して経済性に優れた光触媒プレートを提供できる。前記の様な有機材料基材としては樹脂基材であることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PEs)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂などが好ましい例としてあげられる。前記有機材料基材に導電材料などの層を有するものが好ましい。前記導電材料としては金、銀、導電性カーボン、ITO、FTO層などがあげられる。そのほか、前記有機材料基材表面に剥離防止層を含む態様も好ましい態様である。具体的な剥離防止層としては粘着樹脂層、マット加工(艶消し加工)などがあげられる。また、融点やガラス転移温度の低い材料の層、極性の高い材料の層、弾性率の低い材料の層を形成すると融着、溶着、圧着層として機能させることも出来る。
【0045】
<助触媒>
本発明の水素生成用可視光応答性光触媒粒子や酸素生成用可視光応答性光触媒粒子は、前記の通り、助触媒を併用することが好ましい。この様な助触媒としては、公知の助触媒成分を制限なく用いることが出来る。具体的には、水素生成用可視光応答性光触媒粒子に対しては、周期表の8~11族金属成分等、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に対しては、周期表の8~11族金属の酸化物等を挙げることが出来る。また、水素生成用可視光応答性光触媒粒子、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との重量比も公知の範囲内であれば特に制限は無い。
水素生成用可視光応答性光触媒粒子に好適な助触媒として具体的には、ルテニウム、白金、金、ロジウム、ニッケルなどを含む成分を好適な例として挙げることが出来る。最も好ましくはルテニウムである。
酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に好適な助触媒として具体的には、酸化コバルト、酸化イリジウム、酸化鉄、酸化マンガン等の金属酸化物を好適な例として挙げることが出来る。
本発明に用いられる前記の助触媒の粒径は、水素生成用可視光応答性光触媒粒子や酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の粒径に対して小さいことが好ましい。
【0046】
<光触媒粒子構成体とその製造方法>
本発明における光触媒粒子構成体は水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末とを含んだ構造体である。例えば、これらの3点の部材を加圧によって結着した粒子構成体である態様が好ましく、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末とを接触させた後に加圧によって結着した粒子構成体がより好ましい態様である。前記の水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末とは、前記の光触媒プレートで紹介した材料と同様である。ただし、前記光触媒粒子構造体は、前記水素生成用可視光応答性光触媒粒子径の下限値が1.1μmであることが好ましい。また、前記の通り、カーボン微粉末としてはとりわけ還元型酸化グラフェン(RGO)が適している。本明細書において、「光触媒粒子構成体」は、光触媒粒子構造体、光触媒粒子構成体層、光触媒粒子構造体層、光触媒粒子層などということがある。
【0047】
本発明の光触媒粒子構造体の好ましい用途は、前述の光触媒プレートにおける光触媒粒子構造体層を挙げることが出来る。ただ、前記用途に限定されることは無く、例えば光触媒粒子構造体のみで水分解触媒として使用することも可能である。この場合は、後述する様な打錠成形方法を用いた錠剤型の態様で用いるのが一例である。
前記、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末とを用いた結着方法においては、各成分を接触させる、例えば混合するなどの組み合わせる順序には特に制限がなく、この3点の部材を一度に混合した混合体に加圧を行って光触媒粒子構成体を形成してもかまわないし、順に形成してゆく工程をとってもかまわない。
一例としてまず還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る酸素生成用可視光応答性光触媒粒子を形成し、ついで水素生成用可視光応答性光触媒粒子を接触させる、例えば混合した後に加圧を行って光触媒粒子構成体を形成する工程があげられる。
【0048】
前記加圧工程での圧力は任意であるが、好ましくは0.1~10トンf/cmの範囲である。より好ましい下限値は0.2トンf/cm、さらに好ましくは0.3トンf/cmである。一方でより好ましい上限値は7トンf/cm、さらに好ましくは5トンf/cm、特に好ましくは4トンf/cmである。圧力が小さすぎると、各成分の結着力が十分ではなく構造体の強度が十分でない場合が有る。一方、圧力が高過ぎると各種触媒成分粒子が崩壊する可能性や、有機材料基材を併用する場合は当該基材の破損等が起こる場合がある。
【0049】
加圧の方法としては特に限定しないが油圧プレス器と錠剤成形器を利用する方法があげられる。錠剤成形器に前記3点の部材の混合物を充填した後に油圧プレス器で加圧し、その後内容物を乳鉢などで粉砕して光触媒粒子構成体を製造する。この場合3点の部材を分散媒に分散させたペーストを作製し適当な基材の上で塗布乾燥させて光触媒粒子層を形成する工程を加えると各部材が均質に混合された光触媒粒子構成体を形成しやすい。前記ペーストを調製する場合に用いる分散媒としては、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末の本発明の目的とする機能を損なわない範囲において公知の媒体を制限なく用いることが出来る。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の液状炭化水素、市販のシリコーン類などを挙げることが出来る。これらの中でもヘテロ原子を有する極性化合物であることが好ましく、より好ましくはアルコール類であり、特に好ましくはエタノールやブタノールを挙げることが出来る。
【0050】
前記のペーストの組成としては、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、カーボン微粉末を含む光触媒粒子を構成する成分の重量と媒体の体積との比として好ましくは1~50グラム/リットル(g/L)である。より好ましい下限値は2g/Lであり、さらに好ましくは4g/Lであり、特に好ましくは5g/Lである、一方、より好ましい上限値は40g/Lであり、さらに好ましくは35g/Lであり、特に好ましくは20g/Lである。
【0051】
さらにこの工程の際に剥離フィルムを介して光触媒粒子層に加圧をおこなう方がのぞましい。剥離フィルムとしては例えばITO等のような無機化合物を被覆した樹脂フィルムを用い、この被覆面を光触媒粒子層に接触させて加圧を行う方法が加圧面に光触媒粒子を転写させることがなく有効である。
【0052】
光触媒粒子構成体の作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明を図5に示す。
【0053】
本発明の光触媒粒子構成体に該当する模式図を図1A図1Dの(図1-1)~(図1-22)に示す。
図1-1)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-2)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-3)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-4)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子と一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-5)は、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-6)は、凝集した一次粒径小の水素生成用光触媒粒子と一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-7)は、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と凝集した一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-8)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子と一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-9)は、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-10)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子と一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-11)は、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-12)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子2種と酸素生成用光触媒粒子2種に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布し凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-13)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在、酸素生成用光触媒粒子が優先的に凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-14)は、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在、水素生成用光触媒粒子が優先的に凝集した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-15)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子が付着した孤立の一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-16)は、一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子が付着した孤立の一次粒径大の水素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が均等に分布した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-17)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が周辺に偏在して凝集し、一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子は孤立した、光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-18)は、一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が周辺に偏在して凝集し、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子は孤立した、光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-19)は、一次粒径小の水素生成用光触媒粒子が付着した孤立の一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子周辺に偏在した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-20)は、一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子が付着した孤立の一次粒径大の水素生成用光触媒粒子に対して還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-21)は、還元型酸化グラフェン(RGO)が孤立した一次粒径大の酸素生成用光触媒粒子に偏在、さらに一次粒径小の水素生成用光触媒粒子が付着した光触媒粒子構成体の模式図である。
図1-22)は、還元型酸化グラフェン(RGO)が孤立した一次粒径大の水素生成用光触媒粒子に偏在、さらに一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子が付着した光触媒粒子構成体の模式図である。
【0054】
<光触媒プレートとその製造方法>
本発明における光触媒プレートは前記の通り、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)に加えて基材を含む。好ましい製造方法は、この4種の部材が加圧によって結着して光触媒プレートとする方法である。加圧時の圧力の好ましい範囲は前記の通りである。
結着の順序には特に制限がなく、この4点の部材を一度に合わせあった構成体に加圧を行って光触媒プレートを形成してもかまわないし、順に形成してゆく工程をとってもかまわない。
【0055】
さらにこの工程で形成された光触媒プレートの光触媒粒子層の表面に第2あるいはそれ以上の光触媒粒子層を追加して成膜した構成体に加圧を行って光触媒プレートを形成する工程があげられる。この場合、追加する光触媒粒子層は他の光触媒粒子層とは別の組成あるいは形態の光触媒粒子から構成されてもかまわない。
【0056】
一例としてまず酸素生成用可視光応答性光触媒粒子が還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る光触媒粒子を形成し、ついで水素生成用可視光応答性光触媒粒子を混合した後にこの混合体を基材の表面に光触媒粒子層として成膜した構成体に加圧を行って光触媒プレートを形成する工程があげられる。
【0057】
さらに一例としてまず水素生成用可視光応答性光触媒粒子のみを基材の表面に光触媒粒子層として成膜し、ついでその表面に酸素生成用可視光応答性光触媒粒子が還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る光触媒粒子を光触媒粒子層として成膜して成る構成体に加圧を行って光触媒プレートを形成する工程があげられる。さらにはこの積層を交互に複数回繰り返して成膜し加圧を行って光触媒プレートを形成する工程があげられる。
【0058】
複数の光触媒粒子層が積層して成膜された光触媒プレートを形成する場合、各層の成膜の度に逐次的に加圧を行っても良いし、すべての層を形成し終えた後に一括的に加圧を行っても良い。
【0059】
基材の配置は基材の片面のみに光触媒粒子層を配置してもかまわないし両面にこれを配置してもかまわない。両面にこれを配置する場合は各々に構成される組成の種類および重量や加圧の荷重が異なってもかまわない。
【0060】
本発明の光触媒プレートの製造における加圧の方法としては特に限定しないが光触媒粒子層を配置した基材に対してプレス器で加圧する方法やロールツーロールによる加圧を行う方法があげられる。
【0061】
光触媒粒子層を形成する部材を溶剤に分散させたペーストを作製し基材の上に塗布乾燥させる工程を加えると各部材が均質に混合された光触媒粒子層を形成しやすい。
一例として試験的には油圧プレス器と錠剤成形器を利用する方法があげられる。錠剤成形器に光触媒粒子層を配置した基材を充填し、油圧プレス器で加圧して光触媒プレートを製造する。
【0062】
さらにこの工程の際に剥離フィルムを介して光触媒粒子層に加圧をおこなう方がのぞましい。剥離フィルムとしては例えばITO等のような無機化合物を被覆した樹脂フィルムを用い、この被覆面を光触媒粒子層に接触させて加圧を行う方法が加圧面に光触媒粒子を転写させることがなく有効である。
【0063】
光触媒プレートの作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明を図3に示す。
【0064】
本発明の光触媒プレートに該当する模式図を図2A図2Dの(図2-1)~(図2-15)に示す。
図2-1)は、基材の片面に光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-1-1)は、(図2-1)の1例として、同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-1-2)は、(図2-1)の1例として、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と凝集した一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-1-3)は、(図2-1)の1例として、一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-2)は、基材の片面に光触媒粒子層の組成、一次粒径、分布などの構成が異なる2層の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-3)は、基材の両面に光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-4)は、基材の両面各々に光触媒粒子層の組成、一次粒径、分布などの構成が異なる光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-5)は、基材の片面基材側に水素生成用光触媒粒子層、その上層に酸素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-6)は、基材の片面基材側に酸素生成用光触媒粒子層、その上層に水素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-5-1)は、(図2-5)の1例として一次粒径大の水素生成用光触媒粒子層、その上層に凝集した一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-7)は、基材の片面基材側に水素生成用光触媒粒子層、その上層に酸素生成用光触媒粒子層の繰り返しを有する光触媒プレートの模式図である。
図2-8)は、基材の片面基材側に第1の水素生成用光触媒粒子層、その上層に第1の酸素生成用光触媒粒子層、その上層に組成、一次粒径、分布などの構成が第1の水素生成用光触媒粒子層とは異なる水素生成用光触媒粒子層、その上層に組成、一次粒径、分布などの構成が第1の酸素生成用光触媒粒子層とは異なる酸素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-9)は、基材の片面に水素生成用光触媒粒子層、基材の裏面に酸素生成用光触媒粒子層(基材は多孔質)を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-10)は、基材の片面基材側に水素生成用光触媒粒子層、その上層に酸素生成用光触媒粒子層、基材の裏面基材側に酸素生成用光触媒粒子層、その上層に水素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-11)は、基材の両面基材側各々に水素生成用光触媒粒子層、その上層各々に酸素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-12)は、基材の片面基材側に水素生成用光触媒粒子層、その上層に酸素生成用光触媒粒子層、基材の裏面基材側に組成、一次粒径、分布などの構成が表面側とは異なる酸素生成用光触媒粒子層、その上層に組成、一次粒径、分布などの構成が表面側とは異なる水素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-13)は、基材の片面に還元型酸化グラフェン(RGO)層を介して光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-13-1)は、(図2-13)の1例として一次粒径大の水素生成用光触媒粒子と凝集した一次粒径小の酸素生成用光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)が酸素生成用光触媒粒子周辺と基材と水素生成用光触媒粒子との界面に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-14)は、基材の片面基材側に水素生成用光触媒粒子層、還元型酸化グラフェン(RGO)層を介してその上層に酸素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-15)は、基材の片面基材側に還元型酸化グラフェン(RGO)層を介して水素生成用光触媒粒子層、その上層に酸素生成用光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
図2-14-1)は、(図2-14)の1例として同等な一次粒径の水素生成用光触媒粒子層と酸素生成用光触媒粒子層および還元型酸化グラフェン(RGO)が水素生成用光触媒粒子層酸素生成用光触媒粒子との界面に偏在した構成の光触媒粒子層を有する光触媒プレートの模式図である。
【実施例
【0065】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0066】
〔実施例1〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性および膜強度に対する還元型酸化グラフェン(RGO)の有無および成膜時の加圧荷重の効果を見る実施例その1)
【0067】
〔実施例1-1〕
(水素生成用可視光応答性光触媒粒子の調製)
金属硫化物を構造中に含む水素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRu担持CuVS(Ru/CuVS)を以下の様に調製した。
【0068】
(光触媒粒子CuVSの合成)
光触媒粒子CuVSの合成は文献ChemSusChem,12,9,p.1977(2019),A.Kudo et al.および特開2018-58732号公報に記載の合成方法に準拠した。元素比Cu/V/Sが3/1.1/8となる割合で原料CuS、V、Sを配合し(V元素10%過剰、S元素100%過剰条件)、脱気封菅アンプル中温度条件650℃10時間で固相法合成を行い、目的物を得た。この合成方法による光触媒のDRS(拡散反射スペクトル)とXRDパターンおよびSEM観察像をそれぞれ図7A図7Bの(図101-1-1)、(図101-2-1)、図8の(図101-3-1)に示す。DRS(拡散反射スペクトル)より光触媒粒子CuVSは波長800nmまでの可視光全域に吸収帯を有していることがわかる。SEM観察像により合成された光触媒粒子CuVSの一次粒径は5~10μm程度であることがわかる。
【0069】
(光触媒粒子Ru担持CuVS(Ru/CuVS)の調製)
光触媒粒子のCuVSに対して助触媒としてRuが担持されたRu担持CuVSの調製を以下の様に行った。
CuVSに対して金属Ruの重量比が0.75%に該当する量の塩化ルテニウム(田中貴金属社製)の水溶液を準備した。三角フラスコに準備した水50ml中にCuVSを100mgを投入し、超音波分散処理をおこなった後に撹拌しながら塩化ルテニウム水溶液を滴下した。撹拌を続けながらこの混合液を加熱して65℃に昇温後30分間保持し、その後メンブランフィルターでろ過し、適当量の水とエタノールで洗浄した後に室温で乾燥させることにより目的物を得た。これをRu(0.75wt%)/CuVSと表記する。
【0070】
(酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の調製)
還元型酸化グラフェン(RGO)が添加された酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRGO添加CoOx担持BiVO(RGO-CoOx/BiVO)を以下の様に調製した。
【0071】
(光触媒粒子BiVOの合成)
光触媒粒子BiVOの合成は文献J.Solar Energy Engineering,132,2,021106,(2010),A.Kudo et al.、文献J.Am.Chem.Soc.,121,49,p.11459(1999),A.Kudo et al.に記載の合成方法に準拠して行い目的物を得た。この合成における光触媒のDRS(拡散反射スペクトル)とXRDパターンおよびSEM観察像を図7A図7Bの(図101-1-2)、(図101-2-2)、図8の(図101-3-2)に示す。DRS(拡散反射スペクトル)より光触媒粒子BiVOは波長520nmまでの可視光に吸収帯を有していることがわかる。SEM観察像により合成された光触媒粒子BiVOの一次粒径は1μm前後であることがわかる。
実施例によっては合成原料にMoOを添加してバナジウム元素の0.05~0.25%を置換して得られたMoドープ体BiVO:MoをBiVOの代わりに用いた。
【0072】
(光触媒粒子CoOx担持BiVO(CoOx/BiVO)の調製)
光触媒粒子のBiVOに対して助触媒としてCoOxが担持されたCoOx担持BiVOの調製は文献J.Am.Chem.Soc.,138,32,p.10260(2016),A.Kudo et al.に記載の方法に準拠して行い目的物を得た(金属Coに対する酸素の組成比は不確定)。助触媒の原料としてはBiVOに対して金属Coの重量比が0.5%に該当する量の硝酸コバルト(2価)(和光純薬社製)の水溶液を準備して用いた。これをCoOx(0.5wt%)/BiVOと表記する。
【0073】
(光触媒粒子RGO添加CoOx担持BiVO(RGO-CoOx/BiVO)の調製)
光触媒粒子のCoOx担持BiVOに対して導電材料として還元型酸化グラフェン(RGO)が添加されたRGO添加CoOx担持BiVOの調製は文献J.Am.Chem.Soc.,133,29,p.11054(2011),A.Iwase,A.Kudo et al.に記載の方法に準拠して行った。CoOx(0.5wt%)/BiVOに対してRGOの重量比が5%に該当する量の酸化グラフェンの水分散液(仁科マテリアル社製Rap GO(TQ-11))を準備して調製し目的物を得た。
【0074】
具体的には容量50mlのガラス製菅瓶に20mlの水溶剤(水)を充填し、これにRap GO(TQ-11)-10(酸化グラフェン(GO)濃度10mg/mlの水分散液)の1mlを加えて超音波処理したのちにCoOx(0.5wt%)/BiVOの200mgを超音波分散し、さらにメタノールを20ml加え、撹拌しながら30分間窒素フローを行った後にこれを継続しながら近接距離から300Wキセノンランプによる光照射を3時間行った後に沈殿が容易となった固形分を濾別し風乾して目的物を得た。
これをRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOと表記する。
【0075】
(光触媒粒子の一次粒径測定)
光触媒粒子の一次粒径測定は粒径に応じて2000~20000倍のSEM画像を用い、30個ほどの光触媒粒子の一次粒径を測りとり平均化して明細書中の一次粒径とした。粒径が明らかに本発明の請求項の要件の範囲内と目視で判断できる場合は、SEM画像を目視で観察し画像上のゲージとの比較から一次粒径の値を得た。
【0076】
(ドロップキャスト成膜用光触媒分散ペーストの調製)
基材の表面に光触媒粒子層を形成して配置するために、用いる光触媒の混合物を溶剤中に分散させたペーストを調製して、これを基材表面に滴下および乾燥を繰り返して成膜するドロップキャストの工程を行う。
ドロップキャスト成膜用光触媒分散ペーストを以下の様に調製した。
【0077】
水素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRu(0.75wt%)/CuVS、RGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOを用い、光触媒粒子合計重量が1.6mg/cm、本実施例においては面積12cmの光触媒プレート全体に対して19.2mg、光触媒粒子重量比が記載順に1:1となる様に計量し、これを2.5mlのエタノール中に配合して超音波で10分間分散させることにより目的の光触媒分散ペーストを得た。
【0078】
(光触媒プレートの作製)
本発明の光触媒プレートは基材の表面に水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)とが光触媒粒子層を形成して配置され、これらが加圧によって結着することにより作製される。
【0079】
金属硫化物を構造中に含む水素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRu(0.75wt%)/CuVS、還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOおよび基材を含む光触媒プレートを以下の様に作製した。
【0080】
(PET基材の準備)
光触媒プレートの作製における加圧工程では加圧面の直径が20mmの錠剤成型器を用いた。成型器内に収まる基材を以下の様に準備した。
透明で厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタラート(PET)製の基材に対してポンチを用いて1枚の面積が3cmの円板を切り抜いた。これを4枚準備し面積12cmの光触媒プレート用の基材とした。実際の面積が12cmからずれた場合は式1によって実施例中の水分解活性値を補正し面積12cmの光触媒プレートの活性値とした(*は乗算、/は除算を表す)。
【0081】
面積12cmの光触媒プレートの活性値=測定された活性値*(12cm/実際の基材面積) ・・・・・式1
【0082】
(ドロップキャスト法による光触媒粒子層の形成)
調製した光触媒分散ペーストを用いてドロップキャスト法により光触媒粒子層を以下の様に形成した。
準備したPET基材4枚の上にピペッターを用いて光触媒分散ペーストを適当な分量に分けて滴下し乾燥させる操作を繰り返すことより光触媒粒子層を形成させた。途中、必要に応じて光触媒分散ペーストの超音波による再分散を行いながらこの操作を進めた。
具体的には毎回PET基材1枚あたり約70μlの光触媒分散ペーストを滴下し乾燥させる操作を繰り返すことより目的の光触媒粒子層を形成させた。
【0083】
(加圧による光触媒プレートの作製)
PET基材上に形成された光触媒粒子層を加圧することにより水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と還元型酸化グラフェン(RGO)と基材が結着し本発明の光触媒プレートが作製される。
加圧による光触媒プレートを以下の様に作製した。
【0084】
加圧には油圧プレス器「ハンドプレスSSP―10A」(島津製作所社製)と直径20mm用の錠剤成形器(同社製)を用いた。錠剤成型器内に光触媒粒子層が形成された4枚のPET基材を各光触媒粒子層が上になる様に重ねて配置した。
この時PET基材と同等の形状に切り抜いた剥離フィルムの4枚を各基材上の光触媒粒子層表面を覆う様に配置した。剥離フィルムには厚み0.125mmの低抵抗ITO-PENフィルム「PECF-IP」(ペクセル・テクノロジーズ社製)を用い、ITO面が光触媒粒子層に接する様に配置した。
【0085】
図3に光触媒プレートの作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明図を示す。
【0086】
当該無機化合物で被覆された剥離フィルムを用いることで剥離フィルム側に光触媒粒子層が転写することを防ぎ、光触媒の原料としての損失のないかつ均質な光触媒プレートを形成させることができる。
【0087】
この錠剤成形器内への配置後にこれを油圧プレス器でゲージが1.5tonを示す位置まで加圧を行い、2分間この圧力を保持した。各PET基材の面積が3cmなのでこの加圧荷重を0.5ton/cmとした。
加圧処理後錠剤成型器から内容物を取り出し、剥離フィルムを除去することで合計面積12cmの目的の光触媒プレートを得た。
【0088】
(光触媒プレートの光触媒機能の評価)
得られた光触媒プレートに対して、図4に示す閉鎖循環系により、得られた光触媒プレートの水素生成活性として、発生する水素量(水素ガス)および酸素生成活性として、発生する酸素量(酸素ガス)を測定することによって光触媒機能の評価を行なった。
図4において、201は反応管、202はカットオフフィルター、203は真空ポンプに接続される発生水素・酸素ガス排気系真空ライン、204はガスクロマトグラフ用アルゴンガス供給ライン、205は恒温槽、206はスターラー、207は撹拌子、208は光触媒プレート(水溶媒中に支持台で固定)、209は水溶媒の液面、210は循環器、211は圧力計、212はガスクロマトグラフ、213はリービッヒ冷却管、L1は光源である。水溶媒とは水である。
【0089】
具体的には、図4の閉鎖循環系における、その内部がアルゴンガス雰囲気の反応管201に、水120mlを満たし図4の位置に光触媒プレートを支持台で固定して配置した。この水面および光触媒プレートに対して、当該反応管201の上部から、300W のキセノンランプ「CERMA X LX-300」(ILC technology社製)よりなる光源L1からの放射光のうちの波長420nmよりも長波長側の光を、波長420nm 以下の光をカットするカットオフフィルター「HOYA L42」(HOYA社製)よりなるカットオフフィルター202を介することによって照射した。そして、ガスクロマトグラフ「GC-8A」(島津製作所社製;MS-5A column;TCD;Ar carrier)よりなるガスクロマトグラフ212によって生成した水素(水素ガス)および酸素(酸素ガス)の定量を行なうことにより、水素生成活性および酸素生成活性より成る水分解活性を測定した。定量は1時間ごとに行い、生成速度が安定した時間帯の測定値を平均し、これを光触媒プレート12cmにおける水分解活性の測定値とした。
【0090】
(同一実施例内の測定値の比較および実施例間の比較)
実施例中の水分解活性の測定値は複数種の材料から成る光触媒粒子構成体および光触媒プレートの材料各々の仕上がり具合や保存履歴などによる状態にも影響される。
したがって同一の材料構成として表記される光触媒プレートおよび光触媒粒子構成体であっても水分解活性の測定値は測定の機会毎に異なり得る。本明細書における水分解活性の測定値は同一の表内については同等の測定機会から得たものなので実施例間の比較が成り立つが異なる表の間では成り立つとはかぎらない。
【0091】
(光触媒プレート光触媒粒子層の膜強度評価1)
得られた光触媒プレートに対して、光触媒粒子層の膜強度評価を鉛筆硬度試験によって行った。試験はJIS K5600-5-4に準拠し10Hから10Bの22段階で評価した。
【0092】
(光触媒プレート光触媒粒子層の膜強度評価2)
本発明の光触媒プレートは加圧により光触媒粒子層の膜強度が向上している。加圧しない光触媒粒子層は著しく膜強度が弱く、指の腹で簡単に擦り取れ基材表面が露出するくらいなので鉛筆硬度法だけでは加圧の有無での膜強度の差を表現しにくい。従って以下の光触媒粒子層の膜強度評価を行った。
【0093】
(膜強度評価2の試験方法)
光触媒プレートの試験片を光触媒粒子層側が上になる様に上皿天秤の天秤皿上に両面テープなどで固定し、光触媒粒子層表面をラテックスパウダーフリー手袋「ナビロール手袋 0-5905-22」(アズワン社製)を装着した指の腹で天秤が100gを示す強度で1回擦った。この操作で光触媒粒子層が擦り取れて基材表面が一部以上露出する場合の評価を△とし、そうでない場合を○とした。
【0094】
加圧荷重と評価の結果を表1内に示す。
【0095】
さらにこの評価後、4枚の光触媒プレートのうちの1枚に対して指圧でPET基材が外側になるように折り曲げる試験を行った結果、光触媒粒子層はPET基材に密着しており剥がれないことが認められた。
折り曲げ試験を行った光触媒プレートの写真を図10の(図101-7-2)に示す。
【0096】
〔実施例1-2、実施例1-3〕
実施例1-1における加圧荷重を各1ton/cm、2ton/cmに変更したこと以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表1内に示す。
【0097】
〔実施例1-4〕
実施例1-1における加圧荷重をかけないこと以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表1内に示す。
【0098】
〔比較例1〕
実施例1-1における酸素生成用光触媒粒子に還元型酸化グラフェン(RGO)が添加されないこと以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表1内に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に対応する水分解活性の経時変化を図9の(図101-4)に、その実施例1-1~実施例1-3、実施例1-4に対応する水素生成速度、酸素生成速度の加圧荷重依存性の図を図9の(図101-7-1)に示す。
【0101】
(実施例1の総括)
実施例1-1~実施例1-4の光触媒プレートの水分解活性は比較例に比べて向上した。実施例1の水分解活性は加圧工程を含む方法で得られる光触媒プレートの方が優位であり、この実験における最適加圧荷重は実施例1-1の0.5ton/cmである。 さらに光触媒粒子層の膜強度も加圧荷重を加える工程によって顕著に向上した。
還元型酸化グラフェン(RGO)が含まれていない比較例では水分解活性は顕著に低下、膜強度も低下した。(このことからRGOが結着剤としての機能を有していることが分かる。)
【0102】
加圧荷重が光触媒粒子層に与える変化は、水素生成用可視光応答性光触媒粒子、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子、還元型酸化グラフェン(RGO)間の結着が強くなりZスキーム型水分解反応に必要な当該粒子間の電子伝達が容易となって水分解反応を促進する変化と、光触媒粒子層内の空隙が減少しこれが気体発生を妨げる要因となる変化であり、双方の要因のバランスとして最適加圧荷重が存在すると思われる(図9の(図101-7-1))。
酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径(1μm前後)に対して一次粒径大の水素生成用可視光応答性光触媒粒子(5~10μm)を用いた本実施例の構成は、加圧工程による圧縮に対して一次粒径大の光触媒粒子がスペーサー的に機能し、光触媒粒子層内の適度な空隙を確保することに寄与していると考えられる。尚、本明細書において、一次粒径がより大きいことを「一次粒径大」ということがあり、一次粒径がより小さいことを「一次粒径小」ということがある。
【0103】
実施例1-1に対応する光触媒プレートの模式図を図11の(図101-7-3)に示す。
樹脂基材および一次粒径大の水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒粒子と一次粒径小の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子、さらに、導電性を有する還元型酸化グラフェン(RGO)から成る光触媒粒子層が加圧荷重の付与により結着した光触媒プレートであり、高い水分解活性と堅牢な膜強度を有している。
この構成は図2A図2Dの光触媒プレートの模式図中では(図2-1-2)または(図2-1-3)の構成に該当すると思われる。
【0104】
〔実施例2〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性および膜強度に対する成膜時の加圧荷重の効果を見る実施例その2)
【0105】
〔実施例2-1〕
実施例1-1における水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの光触媒粒子重量比を1:2に変更したこと以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表2内に示す。
【0106】
〔実施例2-2〕
実施例2-1における加圧荷重を2ton/cmに変更したこと以外は実施例2-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表2内に示す。
【0107】
〔実施例2-3〕
実施例2-1における加圧荷重をかけないこと以外は実施例2-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表2内に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に対応する水分解活性の経時変化を図12の(図102-4)に、各実施例に対応する光触媒プレート表面のSEM観察像を図12の(図102-5)に示す。
【0110】
(実施例2の総括)
水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの光触媒粒子重量比が1:2の構成においても実施例1と同様に水分解活性に対する最適加圧荷重は実施例2-1の0.5ton/cmであり、加圧荷重を加えた光触媒プレートの水分解活性は加圧荷重を加えない比較例に比べて高くかつ光触媒粒子層の膜強度は顕著に向上した。
光触媒プレート表面のSEM観察像から加圧圧力が高くなるほど、粒子が密に詰まる傾向があることが分かる。この結果と前記の実施例2-1の結果から、触媒としての性能は、適度な密着性と空隙性との適度なバランスが重要であろうことが分かる。
【0111】
〔実施例3〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対する各光触媒の粒径変化の効果を見る実施例)
光触媒プレートにおける水素生成用可視光応答性光触媒粒子と、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径の大小の組み合わせを検討した。
【0112】
〔実施例3-1~実施例3-4〕
一次粒径大の水素生成用可視光応答性光触媒粒子としては金属硫化物光触媒粒子として実施例1-1におけるRu(0.75wt%)/CuVSと同様の合成・調製条件による光触媒粒子を用いた。
一次粒径小の水素生成用可視光応答性光触媒粒子としては、CuVSの合成時の温度条件を500℃10時間で行い、その他は実施例1-1におけるRu(0.75wt%)/CuVSと同様の合成・調製条件による光触媒粒子を用いた。
一次粒径大、一次粒径小として合成されたCuVSのSEM観察像による比較を図13Aの(図103-3-1)に示す。
【0113】
一次粒径大の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としては金属酸化物光触媒粒子として文献Catal.Lett.,144,p.1962(2014),A.Kudo et al.に記載の合成方法に準拠し、マイクロ波支援尿素合成方法による光触媒粒子BiVOを合成し、その他は実施例1-1と同様の方法でRGO(5wt%)-CoOx(0.3wt%)/BiVOとして調製した光触媒粒子を用いた。
一次粒径小の酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としては実施例1-1におけるRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOと同様の合成・調製条件による光触媒粒子を用いた。
一次粒径大、一次粒径小として合成されたBiVOのSEM観察像による比較を図13Aの(図103-3-2)に示す。
【0114】
実施例1-1における水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの光触媒粒子重量比を1:2に変更し、加圧荷重を2ton/cmに変更し、その他の実施条件は実施例1-1と同様に行った。
光触媒粒子一次粒径の大小関係と評価の結果を表3内に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3に対応する水分解活性の経時変化を図13Bの(図103-4)に、光触媒プレート表面のSEM観察像を図13Cの(図103-5)に示す。
【0117】
(実施例3の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートの水分解活性は構成される水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子各々の一次粒径の大小関係によって大きく変動し、一次粒径大(約2-10μm)のRu(0.75wt%)/CuVSと一次粒径小(約1μm)のRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの組み合わせが最も高い水分解活性を示した(実施例3-3)。
この組み合わせは実施例1、実施例2における光触媒プレートの構成に該当する。
【0118】
〔実施例4〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒粒子構成体において水分解活性に対する加圧荷重の効果および同じ光触媒粒子同士を単純に配合した組成の粉末との比較を見る実施例)
【0119】
〔実施例4-1〕
(ドロップキャスト成膜用光触媒分散ペーストの調製)
光触媒粒子の調製と粒径測定までを実施例1-1と同様に行った。
ドロップキャスト成膜用光触媒分散ペーストの調製は実施例1-1と同様ではあるが光触媒粒子合計重量が120mg、使用するエタノールの量を6mlに変更して目的の光触媒分散ペーストを得た。
【0120】
(光触媒粒子構成体の作製)
本発明の光触媒粒子構成体は水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子および還元型酸化グラフェン(RGO)とが加圧によって結着することにより作製される。
【0121】
金属硫化物を構造中に含む水素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRu(0.75wt%)/CuVS、還元型酸化グラフェン(RGO)を添加して成る酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としてRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOを含む光触媒粒子構成体を以下の様に作製した。
【0122】
(ドロップキャスト法による光触媒粒子層の形成)
調製した光触媒分散ペーストのうち半量を用いて、実施例1-1のPET基材を剥離フィルムに変えること以外は実施例1-1と同様の方法でドロップキャスト法により剥離フィルム上に光触媒粒子層を以下のように形成させた。剥離フィルムとしては実施例1-1で用いたものと同等のものを4枚準備し、そのITO面上に光触媒粒子層を形成させた。
【0123】
(加圧による光触媒粒子構成体の作製)
剥離フィルムのITO面上に形成された光触媒粒子層を加圧することにより水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と還元型酸化グラフェン(RGO)とが結着し、その後これが剥離フィルムから剥離することで本発明の光触媒粒子構成体が作製される。
加圧による光触媒粒子構成体を以下の様に作製した。
【0124】
実施例1-1と同様の油圧プレス器、錠剤成形器を用い、錠剤成型器内に前記剥離フィルムのITO面上に光触媒粒子層を形成させた4枚を各光触媒粒子層が上になる様に重ねて配置した。その際各4枚の光触媒粒子層表面には新たに4枚準備した剥離フィルムをそのITO面が各光触媒粒子層に接する様に交互に配置した。つまり4枚分の各光触媒粒子層はそれぞれが錠剤成型器内にITO面に挟まれて配置されている。
【0125】
図5に光触媒粒子構成体の作製過程における加圧工程時の各部材の配置の例および加圧後の説明図を示す。
【0126】
当該無機化合物で被覆された剥離フィルムを用いることで剥離フィルム側に光触媒粒子層が転写することを防ぎ、光触媒の原料としての損失のないかつ均質な光触媒粒子構成体を形成させることができる。
【0127】
この錠剤成形器内への配置後にこれを油圧プレス器でゲージが3tonを示す位置まで加圧を行い、2分間この圧力を保持した。各剥離フィルムの面積が3cmなのでこの加圧荷重を1ton/cmとした。
【0128】
加圧処理後錠剤成型器から内容物を取り出し、剥離フィルムを除去し、加圧された光触媒粒子層をメノウ乳鉢上に集め軽く粉砕し目的の光触媒粒子構成体を得た。
【0129】
(光触媒粒子構成体光触媒機能の評価)
得られた光触媒粒子構成体に対して、図6に示す閉鎖循環系により、得られた光触媒プレートの水素生成活性として、発生する水素量(水素ガス)および酸素生成活性として、発生する酸素量(酸素ガス)を測定することによって光触媒機能の評価を行なった。
図6において、301は反応管、302はカットオフフィルター、303は真空ポンプに接続される発生水素・酸素ガス排気系真空ライン、304はガスクロマトグラフ用アルゴンガス供給ライン、305は恒温槽、306はスターラー、307は撹拌子、309は光触媒粒子構成体懸濁液の液面、310は循環器、311は圧力計、312はガスクロマトグラフ、313はリービッヒ冷却管、L1は光源である。
【0130】
具体的には、図6の閉鎖循環系における、その内部がアルゴンガス雰囲気の反応管301に、あらかじめ水120mlを満たし光触媒粒子構成体の100mgを分散させておき、図5の様に光触媒粒子構成体を形成する様に懸濁液を配置した。この液面に対して、当該反応管301の上部から、300W のキセノンランプ「CERMA X LX-300」(ILC technology社製)よりなる光源L1からの放射光のうちの波長420nmよりも長波長側の光を、波長420nm 以下の光をカットするカットオフフィルター「HOYA L42」(HOYA社製)よりなるカットオフフィルター302を介することによって照射した。そして、ガスクロマトグラフ「GC-8A」(島津製作所社製;MS-5A column;TCD;Ar carrier)よりなるガスクロマトグラフ312によって生成した水素(水素ガス)および酸素(酸素ガス)の定量を行なうことにより、水素生成活性および酸素生成活性より成る水分解活性を測定した。反応開始直後は水素生成速度と酸素生成速度の比が定量的な水分解反応から著しく逸脱する傾向が認められため、反応開始後3ないしは5時間後に反応容器内を一旦排気したのちに反応を再開する再排気処理を行った。定量は再排気後1時間ごとに行い、生成速度が安定した時間帯の測定値を平均し、これを光触媒粒子構成体懸濁液における水分解活性の測定値とした。
加圧荷重と評価の結果を表4内に示す。
【0131】
〔実施例4-2、実施例4-3〕
実施例4-1における加圧荷重を各0.5、0.1ton/cmに変更したこと以外は実施例4-1と同様に処理して光触媒粒子構成体を得た。
加圧荷重と評価の結果を表4内に示す。
【0132】
〔実施例4-4〕実施例4-1における加圧荷重が0ton/cmの条件で光触媒粒子構成体100mgを作製し評価した。つまりドロップキャスト法による光触媒粒子層の形成工程までは行い、加圧工程は行うことなく光触媒粒子層を剥離フィルムから剥離することで光触媒粒子構成体を得た。加圧荷重と結果を表4内に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
表4に対応する水分解活性の経時変化を図14Aの(図104-4)に、実施例4-1、実施例4-4に対応する光触媒粒子構成体懸濁液の光学顕微鏡観察像を図14Bの(図104-6-J1)、(図104-6-J4)に示す。
【0135】
(実施例4の総括)
光触媒粒子層の形成工程と加圧荷重を加える工程を経て得られた光触媒粒子構成体の懸濁液は、本検討結果の範囲内では、加圧圧力を高めると水活性が向上する傾向がみられた。実施例4の範囲の中では加圧荷重1ton/cmの処理条件が水分解活性に対して最適であった(実施例4-1)。
【0136】
光学顕微鏡観察像において実施例4-1では光触媒粒子の二次粒子的に立体的に集合した構成体が認められる(破線内)。実施例4-4にはそのような構成が見られず、水分解の活性が実施例4-1には及ばない。よって、前記「光触媒粒子の二次粒子的に立体的に集合した構成体」が、光触媒としての好ましい構成の一つであると考えられる。
【0137】
〔実施例5〕
((CuGa)0.5ZnSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性および膜強度に対する成膜時の加圧荷重の効果を見る実施例)
【0138】
〔実施例5-1、実施例5-2〕
実施例1-1における金属硫化物光触媒粒子CuVSを(CuGa)0.5ZnSに置き換えて加圧荷重を変化させた以外は実施例1-1と同様の処理により光触媒プレートを得た。
【0139】
(光触媒粒子(CuGa)0.5ZnSの合成)
光触媒粒子(CuGa)0.5ZnSの合成は文献J.Phys.Chem.Lett., 6,6,p.1042(2015),A.Kudo et al.に記載の合成方法に準拠した。金属元素比Cu/Ga/Znが0.5/0.6/1となる割合で原料CuS、Ga、ZnSを配合し(Ga元素20%過剰条件)、脱気封菅アンプル中温度条件800℃10時間で固相法合成を行い、目的物を得た。
【0140】
この合成方法による光触媒のDRS(拡散反射スペクトル)とXRDパターンおよびSEM観察像をそれぞれ図15Aの(図105-1)、(図105-2)、(図105-3)に示す。SEM観察像により合成された光触媒粒子(CuGa)0.5ZnSの一次粒径は2~3μm程度であることがわかる。
【0141】
実施例1-1における水素生成用可視光応答性光触媒粒子をRu(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSに置き換え、RGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子にはRGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.05%)を用い、光触媒粒子合計重量が2mg/cm、光触媒粒子重量比が記載順に1:1(それぞれ12mg)となる条件で加圧工程時の加圧荷重を0~2ton/cmの範囲で変化させて光触媒プレートを作成した。Ru助触媒の担持は加熱を行わない以外は実施例1-1と同条件で吸着担持を行った。
その他は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
加圧荷重と評価の結果を表5内に示す。
【0142】
【表5】
【0143】
表5に対応する水分解活性の経時変化を図15Bの(図105-4)に示す。
膜強度評価で使用した鉛筆で書き込みを行った実施例5-2の光触媒プレートの写真を図15Bの(図105-7)に示す。
【0144】
(実施例5の総括)
実施例の光触媒プレートは堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートの水分解活性は加圧荷重を加える工程によって向上した。
ただし一次粒径大(5~10μm)の水素生成用可視光応答性光触媒粒子を使用した実施例1、実施例2の場合と比べ、酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の一次粒径(1μm前後)に対して水素生成用可視光応答性光触媒粒子(2~3μm)を用いた本実施例の構成は加圧荷重の増大に対する水分解活性向上の変化はゆるやかで最適加圧荷重も実施例5の条件範囲内では認められなかった。実施例5の範囲の中では加圧荷重2ton/cmの処理条件が水分解活性に対して最適であった(実施例5-2)。
【0145】
実施例5-2に対応する光触媒プレートの模式図を図15Bの(図105-7-2)に示す。
樹脂基材および水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と導電性を有する還元型酸化グラフェン(RGO)から成る光触媒粒子層が加圧荷重の付与により結着した光触媒プレートであり、高い水分解活性と堅牢な膜強度を有している。RGOは酸素生成用可視光応答性光触媒粒子上に結着している。
この構成は図2A図2Dの光触媒プレートの模式図中では(図2-1-1)の構成に該当すると思われる。
【0146】
〔実施例6〕
((CuGa)0.5ZnSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対する水素生成用可視光応答性光触媒粒子への助触媒吸着担持処理時の加熱効果を見る実施例)
【0147】
〔実施例6-1、実施例6-2、実施例6-3〕
水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.25%)を用い、光触媒粒子合計重量が2mg/cm、光触媒粒子重量比が記載順に2:3となる条件で水素生成用可視光応答性光触媒粒子へのRu助触媒の担持の温度条件を変化させて吸着担持を行った(処理時間はいずれも30分)。
その他は実施例5-2と同様に処理して光触媒プレートを得た。
助触媒担持処理温度と評価の結果を表6内に示す。
【0148】
【表6】
【0149】
表6に対応する水分解活性の経時変化を図16の(図106-4)に示す
【0150】
(実施例6の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
水素生成用可視光応答性光触媒粒子(CuGa)0.5ZnSへのRu助触媒の水溶剤中における吸着担持工程において加熱を行うことでこれを用いた光触媒プレートの水分解活性は向上する傾向であった。実施例6の範囲の中では65℃30分の処理条件が水分解活性に対して最適であった(実施例6-1)。
【0151】
〔実施例7〕
((CuGa)0.5ZnSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対する光触媒粒子構成比(重量比)変化の効果を見る実施例)
【0152】
〔実施例7-1~実施例7-5〕
水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.25%)との光触媒粒子重量比を変化させた。
(CuGa)0.5ZnSの合成条件は700℃10時間で行った。
その他は実施例6-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
光触媒重量比と評価の結果を表7内に示す。
【0153】
【表7】
【0154】
(実施例7の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートを構成する水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.25%)との光触媒粒子重量比は記載順に1:2となる条件が最適で最も高い水分解活性を示した(実施例7-3)。
【0155】
〔実施例8〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対するCuVSの粒径変化の効果を見る実施例)
実施例3に関連して光触媒プレートにおける水素生成用可視光応答性光触媒粒子の粒径変化の影響をさらに調べた。
【0156】
〔実施例8-1~実施例8-4〕
実施例1-1におけるCuVSの合成時の温度条件を変化させた以外は実施例1-1におけるRu(0.75wt%)/CuVSと同様の合成・調製条件による光触媒粒子を用いた。
合成温度としては500、580、650、800℃各10時間の条件で実施した。
各温度条件で合成されたCuVSのSEM観察像による比較を図17Aの(図108)に示す。
【0157】
その他の実施条件は実施例1-1と同様に行った。
各CuVSの一次粒径と評価の結果を表8に示す。
【0158】
【表8】
【0159】
表8に対応する水分解活性の経時変化を図17Bの(図108-4)に、光触媒プレート表面のSEM観察像を図17Cの(図108-5)に示す。
【0160】
(実施例8の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートの水分解活性は用いる水素生成用可視光応答性光触媒粒子の合成温度を変えて一次粒径を変化させることによって大きく変動した。合成温度650℃の条件で得られた一次粒径5~10μmの光触媒粒子を用いた構成が最も高い水分解活性を示す好ましい態様であると言える(実施例8-3)。一次粒径がそれを超えてもそれ未満でもその水分解活性は低下する傾向にあるが、比較例1よりは高い活性を示す。
実施例8-3における一次粒径の大小の組み合わせは実施例1、実施例2における光触媒プレートの構成に該当する。
【0161】
〔実施例9〕
(CuVSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対する光触媒粒子構成比変化の効果を見る実施例)
【0162】
〔実施例9-1~実施例9-4〕
実施例7に関連して、水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの光触媒粒子重量比を変化させた。
その他は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
光触媒粒子重量比と評価の結果を表9内に示す。
【0163】
【表9】
表9に対応する水分解活性の経時変化を図18の(図109-4)に、光触媒プレート表面のSEM観察像を図19の(図109-5)に示す。
【0164】
(実施例9の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートを構成する水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOとの光触媒粒子重量比は記載順に1:1が最適で、この実施例9の中では最も高い水分解活性を示し(実施例9-4)、水素生成用光触媒粒子の含有率低下と共に水分解活性も低下する傾向を示した(何れも比較例1より高活性である。)
この最適比はRu(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSを水素生成用可視光応答性光触媒粒子として用いた実施例7で最適であった1:2の光触媒粒子比とは異なる。水素生成用可視光応答性光触媒粒子径によって酸素生成用可視光応答性光触媒粒子との光触媒粒子重量比の水分解反応活性への影響が異なっている可能性も考えられる(実施例9のCuVSは一次粒径5~10μm、実施例7の(CuGa)0.5ZnSは一次粒径2~3μm)。
【0165】
〔実施例10〕
((CuGa)0.5ZnSを水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて水分解活性に対する光触媒粒子層の単位面積膜重量変化の効果を見る実施例)
【0166】
〔実施例10-1~実施例10-6〕
水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSと、実施例7と同様の条件で調製したRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.25%)との光触媒粒子重量比が記載順に1:2となる条件で、単位面積あたりの合計光触媒重量(単位面積膜重量)を変化させて光触媒プレートを作成した。
上記(CuGa)0.5ZnSの合成条件は、脱気封菅アンプル中温度を700℃10時間で行った以外は、実施例5と同様とした。得られた粒子の1次粒径は2~3μmであった。
それ以外は実施例6-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
単位面積膜重量と評価の結果を表10内に示す。
【0167】
【表10】
【0168】
(実施例10の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートを構成する水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa)0.5ZnSとRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVO:Mo(0.25%)が重量比1:2の際の光触媒粒子の単位面積膜重量は、酸素生成速度が最大となる1.6mg/cmが最適で最も良好な水分解活性を示した(実施例10-3)。
これより単位面積膜重量が減少すると水素生成速度も低下(水分解活性が低下)する傾向を示した。一方、単位面積膜重量が増大すると水素生成速度は上昇するが酸素生成速度が優先的に低下する傾向がある。(比較例1よりも全て水分解反応活性は高い。)
【0169】
〔実施例11〕
(水素生成用可視光応答性光触媒粒子種を変更し、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおける水分解活性を見る実施例)
【0170】
〔実施例11-1~実施例11-8〕
実施例1-1における金属硫化物光触媒粒子CuVSをそれ以外の水素生成用可視光応答性光触媒粒子種に置き換えて、それ以外は実施例1-1と同様の処理により光触媒プレートを得た。金属硫化物光触媒粒子CuVSを含む光触媒プレートの評価も比較として実施した。
【0171】
(各金属硫化物水素生成用光触媒粒子の合成)
CuVS以外の各金属硫化物水素生成用光触媒粒子(実施例11-2~実施例11-7に使用)の合成は、文献Sustainable Energy Fuel,2,p.2016(2018),A.Kudo et al.に記載の合成方法を参考にして、原料としてCuS、Ga、AgS、In、ZnSを各組成式に対応する金属元素比で配合して脱気封菅アンプル中の固相法合成で行った。その際、Ga元素が必要な水素生成用光触媒粒子は必要な組成式比に対して20%過剰で配合した(Ga元素20%過剰条件)。また、過剰の硫黄分を配合する合成条件に対しては、硫黄(結晶;関東化学社製)の粉砕品を必要な組成式比に対して100%過剰となる様に配合した(S元素100%過剰条件)。
各金属硫化物水素生成用光触媒粒子の一次粒径は、それぞれ3~5μm程度(実施例11-3に使用したもの)、2~5μm程度(実施例11-4に使用したもの)、6~12μm程度(実施例11-5に使用したもの)、0.1~3μm程度(実施例11-6に使用したもの)、0.5μm程度(実施例11-7に使用したもの)であった。実施例11-1のCuVSは実施例1、実施例11-2の(CuGa)0.5ZnSは実施例5と同様の条件で調製した。
【0172】
(光触媒粒子SrTiO:Rh(1%)の合成)(実施例11-8に使用)
光触媒粒子SrTiO:Rh(1%)の合成は文献J.Phys.Chem.B,108,p.8992(2004),A.Kudo et al.に記載の合成方法に準拠して行い目的物を得た。得られた粒子の一次粒径は0.5~1μm程度であった。
【0173】
実施例11-3~実施例11-8に使用した各水素生成用可視光応答性光触媒粒子のDRS(拡散反射スペクトル)を図20の(図111-1)に示す。
【0174】
水素生成用可視光応答性光触媒粒子とRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOの光触媒粒子重量比を実施例11-6、実施例11-7では1:2に変更した。
光触媒粒子SrTiO:Rh(1%)へのRu助触媒担持処理は塩化ルテニウム(田中貴金属社製)の水溶液を使用し10%濃度のメタノール水溶液中において光電着法で行った。
それ以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
各実施例に使用した各種水素生成用可視光応答性光触媒粒子の組成と固相法合成条件および評価の結果を表11内に示す。
【0175】
【表11】
【0176】
(実施例11の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートを構成する水素生成用可視光応答性光触媒粒子種を変化させて実施した結果、実施例11の範囲内の構成においていずれも水分解活性を示した。この中で実施例1-1と同じ構成に該当する金属硫化物光触媒粒子CuVSを含む光触媒プレートが最も高い水分解活性を示した。
【0177】
〔実施例12〕
(水素生成用可視光応答性光触媒粒子種を変更し、TiO:Rh(0.5%),Sb(1%)を酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおける水分解活性を見る実施例)
【0178】
〔実施例12-1~実施例12-3〕
実施例1-1における金属硫化物光触媒粒子CuVSをそれ以外の水素生成用可視光応答性光触媒粒子種に置き換えて、さらにRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOをRGO(5wt%)-TiO:Rh(0.5%),Sb(1%)に置き換えて、それ以外は実施例1-1と同様の処理により光触媒プレートを得た。金属硫化物光触媒粒子CuVSを含む光触媒プレートの評価も比較として実施した。
【0179】
(TiO:Rh(0.5%),Sb(1%)の合成)
TiO:Rh(0.5%),Sb(1%)の合成は文献RSC Advances, 8,10,p.5331(2018),A.Kudo et al.に記載の合成方法に準拠して行い目的物を得た。得られた粒子の一次粒径は0.5~1.5μm程度であった。
【0180】
この合成方法による光触媒のDRS(拡散反射スペクトル)を図21の(図112-1)に示す。
【0181】
各水素生成用可視光応答性光触媒粒子とRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-TiO:Rh(0.5%),Sb(1%)を用いたこと以外は実施例1-1と同様に処理して光触媒プレートを得た。
各実施例に使用した各種水素生成用可視光応答性光触媒粒子の組成と固相法合成条件および評価の結果を表12内に示す。
【0182】
【表12】
【0183】
(実施例12の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
光触媒プレートを構成する酸素生成用可視光応答性光触媒粒子としてTiO:Rh(0.5%),Sb(1%)を用いて実施した結果、実施例12の範囲内の構成においていずれも水分解活性を示した。
【0184】
〔実施例13〕
(Cu(Ga1-yIn0.8Zn0.4を水素生成用、BiVOを酸素生成用可視光応答性光触媒粒子として含む光触媒プレートにおいて、組成式中のy値を変えて水分解活性に対する水素生成用可視光応答性光触媒粒子の吸収波長変化の効果を見る実施例)
【0185】
〔実施例13-1~実施例13-3〕
実施例1-1における金属硫化物光触媒粒子CuVSを(CuGa1-yIn0.8Zn0.4に置き換えた。構造式中のy値としては各々0.3、0.5、0.7に該当するCu0.8Ga0.56In0.24Zn0.4、Cu0.8Ga0.4In0.4Zn0.4、Cu0.8Ga0.24In0.56Zn0.4を用いた。
また、水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa1-yIn0.8Zn0.4とRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOの光触媒粒子重量比を1:2に変更し、RGOの原料となるGOは仁科マテリアル社製Rap GO(TQ-2)-10(酸化グラフェン(GO)濃度10mg/mlの水分散液)に変更した。
それ以外は実施例1-1と同様の処理により光触媒プレートを得た。
【0186】
(光触媒粒子(CuGa1-yIn0.8Zn0.4の合成)
光触媒粒子(CuGa1-yIn0.8Zn0.4の合成は、実施例11-4の粒子の合成方法と同様の方法で行った。
元素比のCu/Ga/In/Zn/Sが0.8/((1-y)*0.8)*1.2/y*0.8/0.4/4となる割合で原料CuS、Ga、In、ZnS、Sを配合し(Ga元素20%過剰、S元素100%過剰条件)、脱気封菅アンプル中温度条件800℃10時間で固相法合成を行い、目的物を得た(*は乗算を表す)。
この合成方法による光触媒粒子のDRS(拡散反射スペクトル)を図22の(図113-1)に示す。
【0187】
各水素生成用光触媒粒子の吸収端波長と評価の結果を表13内に示す。
【0188】
【表13】
【0189】
表13に対応する水分解活性の経時変化を図22の(図113-4)に示す。
【0190】
(実施例13の総括)
いずれの光触媒プレートも堅牢な膜強度を示した。
組成式中のy値を変えて吸収波長を変化させた水素生成用可視光応答性光触媒粒子Ru(0.5wt%)/(CuGa1-yIn0.8Zn0.4を含む光触媒プレートの水分解活性は、実施例13の中で最も短波長側に吸収端を有する組成の水素生成用可視光応答性光触媒粒子を有する光触媒粒子を含む構成が最も高い水分解活性を示した(実施例13-1)。
【0191】
(全実施例の総括)
樹脂基材および水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と導電性を有する還元型酸化グラフェン(RGO)から成る光触媒粒子層が加圧荷重の付与により結着した光触媒プレートは高い水分解活性と堅牢な膜強度を示した。加圧荷重と還元型酸化グラフェン(RGO)は水素生成用光触媒粒子と酸素生成用光触媒粒子によるZスキーム型水分解反応を促進しかつ膜強度向上に寄与する(実施例1、比較例1による比較)。還元型酸化グラフェン(RGO)は加圧条件下で光触媒粒子層内の電子伝達を容易にする導電材料として、および光触媒粒子間や光触媒粒子と基材との間の密着強度を向上させる結着材料として機能していると考えられる。
【0192】
この光触媒プレートの構成は様々な構造式の水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子に適用できる(実施例11、実施例12、実施例13)。
【0193】
一次粒径が1μm前後のRGO添加酸素生成用可視光応答性光触媒粒子RGO(5wt%)-CoOx(0.5wt%)/BiVOに対して、一次粒径が5~10μmの大粒径である水素生成用可視光応答性金属硫化物光触媒粒子Ru(0.75wt%)/CuVSを組み合わせた構成の光触媒プレートは水分解活性が特に優れている(実施例11)。
この水分解活性はCuVSの一次粒径の影響が大きい可能性があり、例えば実施例8においては一次粒径が5~10μmが好適である結果を得た。これは、一次粒径が小さすぎると加圧による圧縮により光触媒粒子層内の空隙が減少しこれが気体発生を妨げる可能性や、一次粒径が大き過ぎると光触媒粒子の表面積が低下して実働する光触媒の活性種の数が減少する可能性が要因の一つではないかと考えられる。
【0194】
また、実施例8では一次粒径が5~10μmのCuVSを含むこの光触媒プレートの構成は加圧工程による圧縮に対して大粒径の光触媒粒子がスペーサー的に機能し、光触媒粒子層内の適度な空隙を確保することに寄与している可能性も考えられる。
この構成の光触媒プレートの水分解活性は、加圧工程時の圧力の影響を受けることも示唆された。例えば、実施例1、2の態様では、0.5ton/cmに最適と考えられる結果となっており、触媒粒子の種類によって、圧力の最適値が有ると考えることが出来る。
一方、加圧荷重が大きすぎると光触媒粒子層内の空隙が減少し、前記の様な気体の発生が起こり難くなる可能性が考えられる。
【0195】
水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子の最適な構成比(重量比)は用いる水素生成用光触媒粒子の一次粒径などによって異なるが、比較的広い範囲で優れた水分解活性を示すことが実施例7、実施例9等から示唆された。
【0196】
光触媒粒子の一次粒子の組み合わせとしては、水素生成用光触媒粒子の方が、酸素生成用光触媒粒子よりも大きい方が高い水分解活性を示す傾向があることが、実施例3等から示唆される。これは、光触媒粒子層内の還元型酸化グラフェン(RGO)の配置が光触媒粒子間の電子伝達に対して適切とならない可能性などが考えられる。
【0197】
さらに、光触媒プレートの水分解活性を促進させる要素技術としては水素生成用光触媒粒子に助触媒を担持し、更に担持工程で加熱することがより好適であることが実施例6から示唆される。
【0198】
さらに、均質で高活性の光触媒粒子層を得る製造に関する要素技術としては加圧工程においてITOなどの剥離層を有した剥離フィルムを介して加圧する方法が有効であることも示唆された。
【0199】
本発明による光触媒プレートの高効率な水分解活性は、水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と導電性を有する還元型酸化グラフェン(RGO)とを加圧工程を含む方法で光触媒粒子構成体を形成することが好適であることが、例えば実施例4の結果が示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0200】
可視光照射下で水分解活性を高効率に発現可能な光触媒粒子構成体、光触媒プレートにおいて、経済性、軽量性、柔軟性に優れた樹脂基材上で実現し、堅牢で運搬性、保存性、加工性に優れた光触媒プレートを提供する技術は、環境問題を解決するエネルギーシステムの推進における水素製造装置の大面積化にとって必要な技術である。
本発明による、特定範囲の粒径を有する樹脂基材および水素生成用可視光応答性光触媒粒子と酸素生成用可視光応答性光触媒粒子と、導電性を有する還元型酸化グラフェン(RGO)を特定の含有率の範囲で含む光触媒粒子層を含む光触媒プレートとこれを製造する技術の提供により、高い水分解活性と堅牢性、経済性を有し、大面積の水素製造装置を提供出来る重要なデバイスになるであろう。また前記光触媒プレートは、加圧工程を併用することで、その性能を向上されることが期待できる。
【符号の説明】
【0201】
1 還元型酸化グラフェン(RGO)
2 水素生成用光触媒粒子
3 酸素生成用光触媒粒子
4 2とは組成、一次粒径などが異なる水素生成用光触媒粒子
5 3とは組成、一次粒径などが異なる酸素生成用光触媒粒子
11 基材
12 光触媒粒子層
13 12とは組成、一次粒径、分布などが異なる光触媒粒子層
21 還元型酸化グラフェン(RGO)を含んでも良い水素生成用光触媒粒子層
22 還元型酸化グラフェン(RGO)を含んでも良い酸素生成用光触媒粒子層
23 21とは組成、一次粒径、分布などが異なる還元型酸化グラフェン(RGO)を含んでも良い水素生成用光触媒粒子層
24 22とは組成、一次粒径、分布などが異なる還元型酸化グラフェン(RGO)を含んでも良い酸素生成用光触媒粒子層
31 還元型酸化グラフェン(RGO)層
201、301 反応管
202、302 カットオフフィルター
203、303 発生水素ガス排気系真空ライン
204、304 ガスクロマトグラフ用アルゴンガス供給ライン
205、305 恒温槽
206、306 スターラー
207、307 撹拌子
208 光触媒プレート(水溶媒中に支持台で固定)
209 水溶媒の液面
309 光触媒粒子構成体懸濁液の液面
210、310 循環器
211、311 圧力計
212、312 ガスクロマトグラフ
213、313 リービッヒ冷却管

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22