(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】画像診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20250115BHJP
A61B 6/10 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61B6/03 533A
A61B6/10 553
(21)【出願番号】P 2020170330
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 早紀
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 繁治
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐子
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正寿
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161383(JP,A)
【文献】特開2003-345385(JP,A)
【文献】特開2020-156107(JP,A)
【文献】特開2000-185022(JP,A)
【文献】特開平01-091199(JP,A)
【文献】特開2005-013489(JP,A)
【文献】特開2017-077457(JP,A)
【文献】特開2009-172397(JP,A)
【文献】特開2020-039526(JP,A)
【文献】特開2014-068664(JP,A)
【文献】特開2011-235007(JP,A)
【文献】特開2008-278972(JP,A)
【文献】特開2020-121104(JP,A)
【文献】特開2003-265454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0086570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/00 - 5/01
A61B 5/055
G01T 1/161 - 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の医用画像を生成するために、前記被検者の投影データを取得するスキャナを備える画像診断装置であって、
前記スキャナが配置される撮影室に設けられる通話機及び動体センサと、
前記通話機によって収集される音声データを解析する音声解析部と、
前記動体センサによって取得される前記被検者の動体データを解析する動体解析部と、
前記音声データまたは前記動体データが解析された結果に基づいて、操作者の行動を誘導する画面
である行動誘導ウィンドウを表示させたり、前記スキャナの動作を制御したりする誘導・制御部を備え
、
前記誘導・制御部は、前記行動誘導ウィンドウとともに、前記音声データまたは前記動体データの履歴を示す画面である履歴ウィンドウを表示させ、前記履歴ウィンドウの中に前記被検者の異常な言動を示す項目があった場合、前記行動誘導ウィンドウをポップアップ表示させることを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像診断装置であって、
前記誘導・制御部は、前記音声データまたは前記動体データが解析された結果に基づいて算出される緊急度が大きい場合に前記スキャナの動作を停止させることを特徴とする画像診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像診断装置であって、
前記音声データの解析によって算出される音量または速度が予め定められる閾値よりも大きい場合に、前記緊急度が大きいと判定されることを特徴とする画像診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像診断装置であって、
前記速度は、前記音声データに含まれる文字数を前記音声データが発せられた時間で除すことで算出されることを特徴とする画像診断装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像診断装置であって、
前記音声データから抽出される文字列に特定のキーワードが含まれ、前記音声データの発声者が医師である場合に、前記緊急度が大きいと判定されることを特徴とする画像診断装置。
【請求項6】
請求項2に記載の画像診断装置であって、
前記動体データの解析によって算出される距離または速度が予め定められる閾値よりも大きい場合に、前記緊急度が大きいと判定されることを特徴とする画像診断装置。
【請求項7】
請求項2に記載の画像診断装置であって、
前記動体データの解析によって算出される位置が予め定められる領域に侵入した場合に、前記緊急度が大きいと判定されることを特徴とする画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置に係り、特にX線CT装置の安全性を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検者の周囲からX線を照射して複数の投影角度における投影データを取得し、投影データを逆投影することによって被検者の断層画像を再構成する装置である。再構成された断層画像は医用画像として被検者の画像診断に用いられる。X線CT装置が設置される撮影室に被検者が入室してから退室するまでの間、撮影室の被検者と操作室の操作者との会話が撮影室と操作室との双方に取付けられたマイクとスピーカを有する通話機によってなされる。
【0003】
特許文献1には、撮影室の被検者から発せられた音声を操作室の操作者が明瞭に聞き取れるようにするために、スキャナの回転状態に応じて選択されるノイズ成分を通話機で取り込んだ音声から引き算することでノイズ低減を図るX線CT装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、被検者が発した音声に基づいて、被検者やX線CT装置の状態を操作者が判断することになり、操作者の聞き漏らし等に対する配慮がなされていない。例えば、被検者の緊急を知らせる音声の聞き漏らしや、撮影室での被検者の異常な行動の見逃しがあると対応が遅れる場合がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、被検者が撮影室に入室してから退室するまでの間の安全性を向上させることが可能なX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被検者の断層画像を生成するために、前記被検者の投影データを取得するスキャナを備えるX線CT装置であって、前記スキャナが配置される撮影室に設けられる通話機及び動体センサと、前記通話機によって収集される音声データを解析する音声解析部と、前記動体センサによって取得される前記被検者の動体データを解析する動体解析部と、前記音声データまたは前記動体データが解析された結果に基づいて、操作者の行動を誘導する画面を表示させたり、前記スキャナの動作を制御したりする誘導・制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検者が撮影室に入室してから退室するまでの間の安全性を向上させることが可能なX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】行動誘導・動作制御の処理の流れの一例を示す図
【
図6】解析ON/OFFボタンの一例について説明する図
【
図8】行動誘導ウィンドウの一例について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係るX線CT装置の実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【実施例1】
【0011】
図1を用いてX線CT装置100の全体構成を説明する。なお、
図1において、横方向をX軸、縦方向をY軸、紙面に垂直な方向をZ軸とする。X線CT装置100は、スキャナ200と操作ユニット250を備える。スキャナ200は、X線管211、検出器212、コリメータ213、駆動部214、中央制御部215、X線制御部216、高電圧発生部217、スキャナ制御部218、寝台制御部219、コリメータ制御部221、プリアンプ222、A/Dコンバータ223、回転板230、寝台240等を有する。またスキャナ200が配置される撮影室には、撮影室側通話機1002と動体センサ1003が設けられる。撮影室側通話機1002と動体センサ1003は、スキャナ200に取り付けられても良い。
【0012】
X線管211は寝台240上に載置された被検者210にX線を照射する装置である。X線制御部216から送信される制御信号に従って高電圧発生部217が発生する高電圧がX線管211に印加されることによりX線管211から被検者にX線が照射される。
【0013】
コリメータ213はX線管211から照射されるX線の照射範囲を制限する装置である。X線の照射範囲は、コリメータ制御部221から送信される制御信号に従って設定される。
【0014】
検出器212は被検者210を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。検出器212はX線管211と対向配置され、X線管211と対向する面内に多数の検出素子が二次元に配列される。検出器212で計測された信号はプリアンプ222で増幅された後、A/Dコンバータ223でデジタル信号に変換される。その後、デジタル信号に対して様々な補正処理が行われ、投影データが取得される。
【0015】
駆動部214はスキャナ制御部218から送信される制御信号に従って、X線管211と検出器212とを搭載する回転板230を回転させることによって、X線管211と検出器212とを被検者210の周囲で回転させる。X線管211と検出器212の回転とともに、X線の照射と検出がなされることにより、複数の投影角度からの投影データが取得される。投影角度毎のデータ収集単位はビューと呼ばれる。二次元に配列された検出器212の各検出素子の並びは、検出器212の回転方向がチャネル、チャネルに直交する方向が列と呼ばれる。投影データはビュー、チャネル、列によって識別される。なお被検者210の体軸と直交する面に対して回転板230を傾斜させた状態で投影データが取得される場合もある。
【0016】
寝台制御部219は寝台240の動作を制御し、寝台240を静止させたままにしたり、Z軸方向に等速移動させたりする。寝台240を静止させたままでX線の照射と検出がなされるスキャンはアキシャルスキャン、寝台240を移動させながらのスキャンはらせんスキャンとそれぞれ呼ばれる。
【0017】
撮影室側通話機1002は、被検者210の音声を収集するマイクを有し、後述される操作室側通話機1001に接続される。収集された音声は、操作室側通話機1001が有するスピーカから出力され、操作室の操作者へ伝達される。また撮影室側通話機1002は、中央制御部215にも接続される。
【0018】
動体センサ1003は、カメラやレーザー変位計であり、被検者210の動きを表すデータである動体データを取得し、中央制御部215に動体データを出力する。被検者210の動体データは、例えば被検者210の頭部や体幹、四肢に対するデータであり、各部の振れ幅や速さが含まれる。
【0019】
中央制御部215は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、以上述べたスキャナ200の動作を、操作ユニット250からの指示に従って制御する。なお中央制御部215は操作ユニット250に設けられても良い。
【0020】
次に操作ユニット250について説明する。操作ユニット250は、再構成処理部251、画像処理部252、記憶部254、表示部256、入力部258等を有する。また操作ユニット250が配置される操作室には、操作室側通話機1001が設けられる。操作室側通話機1001は、操作ユニット250に取り付けられても良い。
【0021】
再構成処理部251は、例えばCPUやGPU(Graphics Processing Unit)であり、スキャナ200で取得された投影データを逆投影することにより、断層画像を再構成する。画像処理部252は、例えばCPUやGPUであり、断層画像を診断に適した画像にするため、様々な画像処理を行う。記憶部254は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等であり、投影データや断層画像、画像処理後の画像を記憶する。表示部256は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネルであり、断層画像や画像処理後の画像を表示する。入力部258は、例えばキーボードやポインティングデバイス、タッチパネルであり、投影データの取得条件(管電圧、管電流、スキャン速度等)や断層画像の再構成条件(再構成フィルタ、FOVサイズ等)を操作者が設定する際に用いられる。
【0022】
操作室側通話機1001は、操作室にいる操作者等の音声を収集するマイクを有し、前述のように撮影室側通話機1002と接続される。収集された音声は、撮影室側通話機1002が有するスピーカから出力され、撮影室の被検者210へ伝達される。また操作室側通話機1001は、中央制御部215にも接続される。
【0023】
図2を用いて実施例1の機能ブロック図について説明する。なお各機能ブロックは、専用のハードウェアで構成されても良いし、中央制御部215等のCPUで動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では実施例1の各機能ブロックがソフトウェアで構成される場合について説明する。実施例1は機能ブロックとして、音声解析部1004、動体解析部1005、誘導・制御部1006を備える。以下、各機能ブロックについて説明する。
【0024】
音声解析部1004は、操作室側通話機1001または撮影室側通話機1002によって収集される音声データを解析する。音声データの解析には、音量や速度の算出、音声データに含まれる文字列の抽出、発声者の特定等が含まれる。なお音声データからの文字列の抽出には、複数の言語辞書の中から予め選択された言語に対応する辞書が用いられる。例えば、日本語が選択されれば、収集される音声データと整合する文字列が日本語辞書の中から抽出される。言語辞書には、日本語辞書だけでなく、英語辞書、中国語辞書等が含まれる。解析されたデータは、誘導・制御部1006に送信される。
【0025】
動体解析部1005は、動体センサ1003によって取得される動体データを解析する。すなわち、被検者210の頭部や体幹、四肢等が動く距離や位置、速度が動体解析部1005の解析によって算出される。解析されたデータは、誘導・制御部1006に送信される。
【0026】
誘導・制御部1006は、音声解析部1004または動体解析部1005から送信されたデータに基づいて、操作者の行動を誘導するウィンドウである行動誘導ウィンドウを含む画面を表示部256に表示させたり、スキャナ200の動作を制御したりする。なお、行動誘導ウィンドウの表示や、スキャナ200の動作の制御をするか否かは、音声データや動体データが解析された結果が所定の条件を満たしたか否かによって判定される。すなわち、緊急を要するような音声や動きが検知されたときに、行動誘導ウィンドウが表示させられたり、スキャナ200の動作が停止させられたりする。
【0027】
図3を用いて、撮影準備の開始後に実施例1で実行される処理の流れの一例を説明する。
【0028】
(S301)
誘導・制御部1006は、音声解析部1004または動体解析部1005から出力されたデータに基づいて、緊急を要する音声や動きが検知されたか否かを判定する。緊急を要する音声や動きが検知された場合はS302へ処理が進められ、検知されなかった場合はS303へ処理が進められる。緊急を要する音声や動きが検知されたか否かは、音声データや動体データが解析された結果が所定の条件を満たしたか否かによって判定される。
【0029】
まず、音声データの解析に基づいた判定について説明する。例えば音声データの解析によって算出される音量が予め定められる閾値よりも大きい場合、緊急を要する音声が検知されたと判定される。音量に係る閾値には、撮影準備前の会話にて取得される被検者210の音声データの音量に1を超える係数、例えば5が乗じられた値が設定される。すなわち通常の会話時よりも大声が発せられたとき、緊急を要する場合であると判定される。なお撮影準備前の会話にて被検者210の音声データを取得できなかった場合は、施設毎に予め設定された値が閾値として用いられても良い。
【0030】
また音声データの解析によって算出される速度が予め定められる閾値よりも大きい場合、緊急を要する音声が検知されたと判定される。音声データの速度は、例えば音声データから抽出される文字数を、音声データが発せられた時間で除すことによって算出される。速度に係る閾値には、撮影準備前の会話にて取得される被検者210の音声データの速度に1を超える係数、例えば2が乗じられた値が設定される。すなわち通常の会話時よりも高速で言葉が発せられたとき、緊急を要する場合であると判定される。なお撮影準備前の会話にて被検者210の音声データを取得できなかった場合は、施設毎に予め設定された値が閾値として用いられても良い。
【0031】
また音声データから抽出される文字列の中に特定のキーワード、例えば「痛い」や「止めて」等が含まれる場合、緊急を要する音声が検知されたと判定される。判定に用いられるキーワードは施設毎に予め設定される。すなわち被検者210の危険を表す単語が発せられたとき、緊急を要する場合であると判定される。さらに音声データの中に同じ文字列が繰り返し含まれる場合も、同じ単語が繰り返されて緊急を要する音声が検知されたと判定されても良い。
【0032】
また音声データから抽出される文字列と比較されるキーワードは、発声者毎に設定されることが好ましい。特に発声者が医師や放射線技師である場合、キーワードとして動詞の命令形が設定されると、緊急を要する音声であるか否かの判定が容易になる。
【0033】
次に、動体データの解析に基づいた判定について説明する。例えば動体データの解析によって算出される距離が予め定められる閾値よりも大きい場合、緊急を要する動きが検知されたと判定される。動体データの距離に係る閾値は、例えば寝台240の大きさ等に基づいて設定される。すなわち被検者210が寝台240からはみ出る程度の動きをしたとき、緊急を要する場合であると判定される。なお距離に係る閾値は、被検者210の部位に応じて設定される。
【0034】
また動体データの解析によって算出される位置が予め定められる領域に侵入した場合、緊急を要する動きが検知されたと判定される。予め定められる領域とは、例えば回転板230の傾斜によって回転板230を覆うカバーが動きうる領域である。すなわち被検者210が回転板230を覆うカバーに衝突しうる位置へ動いたとき、緊急を要する場合であると判定される。なお予め定められる領域は、被検者210の部位に応じて設定される。
【0035】
また動体データの解析によって算出される速度が閾値よりも大きい場合、緊急を要する動きが検知されたと判定される。動体データの速度に係る閾値は、例えば四肢を振ったときの速度等に基づいて設定される。すなわち被検者210が四肢を振って暴れるような動きをしたとき、緊急を要する場合であると判定される。なお速度に係る閾値は、被検者210の部位に応じて設定される。
【0036】
(S302)
誘導・制御部1006は、操作者の行動を誘導するウィンドウである行動誘導ウィンドウを含む画面を表示部256に表示させたり、スキャナ200の動作を制御したりする。
【0037】
図4を用いてS302の処理の流れの一例について説明する。
【0038】
(S401)
誘導・制御部1006は、スキャナ200が動作中であるか否かを判定する。より具体的には、寝台240が移動中であるか、又は回転板230が回転中であるか、回転板230が傾斜動作の途中であるか、X線管211がX線を照射中であるかがそれぞれ判定される。スキャナ200が動作中である場合はS402へ処理が進められ、動作中でない場合はS404へ処理が進められる。
【0039】
(S402)
誘導・制御部1006は、音声解析部1004または動体解析部1005から出力されたデータに基づいて、緊急度が大きいか否かを判定する。緊急度が大きい場合はS403へ処理が進められ、そうでない場合はS404へ処理が進められる。
【0040】
緊急度は、緊急を要する程度を表す値であり、音声データや動体データが解析された結果に基づいて算出される。より具体的には、音声データの解析によって算出される音量や速度、音声データから抽出される文字列、動体データの解析によって算出される距離や位置、速度に基づいて、緊急度が算出される。すなわち、S301における判定と同様に、音声データや動体データが解析された結果が所定の条件を満たしたか否かによって、緊急度が大きいか否かが判定される。なおS301との違いは、閾値等の条件がより高く設定される点である。閾値等の条件は施設毎に設定される。特に、音声データから特定される発声者が医師であって、医師に対して設定されたキーワードが音声データに含まれる場合、緊急度が大きいと判定される。
【0041】
(S403)
誘導・制御部1006は、スキャナ200の動作を停止させる。より具体的には、寝台240が移動中であれば寝台240の移動が、回転板230が回転中であれば回転板230の回転が、回転板230が傾斜動作の途中であれば回転板230の傾斜動作が、X線管211がX線を照射中であればX線の照射が停止させられる。
【0042】
S403は、S402において緊急度が大きいと判定されたときに実行されるので、緊急を要する程度が大きいと判定されたときにスキャナ200の動作が停止する。このような制御により、被検者210に関わる不具合を抑止できる。例えば移動中の寝台240に四肢を挟みそうになった被検者210が叫んだときに、寝台240の移動を直ちに停止させることにより、被検者210の怪我を未然に防ぐことができる。また、X線照射中に被検者210が撮影位置から大きく動いたときに、X線照射を直ちに停止させることにより、被検者210の無効被ばくを低減できる。さらに、造影検査中に撮影室に立ち会う医師が何らかの異変、例えば造影剤の漏れに気づき、医師に対して設定されたキーワード「止めて」を発したときに、X線照射またはその準備を停止させることにより、被検者210の無効被ばくを低減できる。
【0043】
(S404)
誘導・制御部1006は、操作者の行動を誘導するウィンドウである行動誘導ウィンドウを含む画面を表示部256に表示させる。
【0044】
図5を用いてS404にて表示される画面の一例について説明する。
図5に例示される画面には、解析ON/OFFボタン501と、履歴ウィンドウ502、行動誘導ウィンドウ503が含まれる。以下、各部について説明する。
【0045】
図6を用いて解析ON/OFFボタン501の一例について説明する。解析ON/OFFボタン501は、音声解析部1004や動体解析部1005による解析のONとOFFを切り替えるボタンであり、マウスポインタ等を用いたクリックによって、ONとOFFが切り替えられる。また解析ON/OFFボタン501の色や点滅によって、解析の状態が表示されても良い。例えば、解析ONの場合は解析ON/OFFボタン501に色が付き、解析OFFの場合は無色となる。また、解析ONであって、緊急を要する音声や動きが検知された場合は、解析ON/OFFボタン501が点滅表示されるとともに、行動誘導ウィンドウ503がポップアップ表示されても良い。
【0046】
図7を用いて履歴ウィンドウ502の一例について説明する。履歴ウィンドウ502には、誘導・制御部1006によって検知された音声データや動体データがリアルタイムに表示されるとともに、その履歴が表示される。例えば
図7に例示される履歴ウィンドウ502には、16:00に操作者が検査を開始するとの発声をしていること、16:11に被検者210の動きを検知したこと、16:13に被検者210の発声に応じて医師が検査を中断させたこと等が表示されている。操作者は、このような履歴ウィンドウ502から、被検者210の言動に異常があったかどうか等を確認できる。
【0047】
図8を用いて行動誘導ウィンドウ503の例について説明する。行動誘導ウィンドウ503は操作者の行動を誘導するウィンドウであり、緊急を要する音声や動きが検知されたときや、履歴ウィンドウ502の中の該当項目、例えば16:11の「被検者の動きを検出しました」が選択されたときにポップアップ表示される。行動誘導ウィンドウ503は、S402にて判定される緊急度に応じて色分けされたり特殊な記号が付与されたりしても良い。
【0048】
図8に例示される行動誘導ウィンドウ503Aは、寝台240の移動中に被検者210が「痛い」と発したことが検出されたときに表示され、寝台240の移動を停止するか否かを操作者に問いかけるウィンドウである。行動誘導ウィンドウ503Aが表示されたときに、「はい」が選択されると寝台240は移動停止となり、「いいえ」が選択されると寝台240は移動し続ける。なお「はい」も「いいえ」も選択されずに所定の時間、例えば10秒を経過した場合、行動誘導ウィンドウ503Aは画面から消え、寝台240も移動し続ける。行動誘導ウィンドウ503Aが画面から消えるまでの時間は、緊急度に応じて設定されても良い。すなわち緊急度が高いほど長い時間に設定される。
【0049】
図8に例示される行動誘導ウィンドウ503Bは、X線照射中に被検者210の動きが検出されたときに表示され、被検者210やスキャナ200の状態を確認することを操作者に誘導するウィンドウである。行動誘導ウィンドウ503Bの右上の「×」がクリックされる、または所定の時間が経過すると、行動誘導ウィンドウ503Bは画面から消える。
【0050】
【0051】
(S303)
誘導・制御部1006は、撮影が継続されるか否かを判定する。撮影が継続される場合はS302に処理が戻され、継続されない場合は処理の流れが終了となる。撮影が継続されるか否かは、例えば予め設定された撮影範囲を撮影したか否か、又は行動誘導ウィンドウ503においてスキャナ200の動作を停止させる選択がなされたか否かに応じて判定される。すなわち、設定された撮影範囲の撮影を終了していたり、行動誘導ウィンドウ503において動作の停止が選択されたりした場合は、処理の流れが終了となる。
【0052】
以上説明した処理の流れにより、音声データや動体データに基づいて、行動誘導ウィンドウ503が表示されたり、スキャナ200の動作が制御されたりするので、被検者が撮影室に入室してから退室するまでの間の安全性を向上させることが可能になる。また履歴ウィンドウ502の確認により、被検者210が発する音声の聞き漏らしや異常な行動の見逃しを減らせるので、異常時の対応が遅れることを抑制できる。
【0053】
なお、本発明のX線CT装置は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0054】
100:X線CT装置、200:スキャナ、210:被検者、211:X線管、212:検出器、213:コリメータ、214:駆動部、215:中央制御部、216:X線制御部、217:高電圧発生部、218:スキャナ制御部、219:寝台制御部、221:コリメータ制御部、222:プリアンプ、223:A/Dコンバータ、230:回転板、240:寝台、250:操作ユニット、251:再構成処理部、252:画像処理部、254:記憶部、256:表示部、258:入力部、501:解析ON/OFFボタン、502:履歴ウィンドウ、503:行動誘導ウィンドウ、1001:操作室側通話機、1002:撮影室側通話機、1003:動体センサ、1004:音声解析部、1005:動体解析部、1006:誘導・制御部