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特許7620094スパッタ装置、スパッタ装置の制御方法およびスパッタ装置用制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】スパッタ装置、スパッタ装置の制御方法およびスパッタ装置用制御装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
C23C14/35 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023525429
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013491
(87)【国際公開番号】W WO2022254896
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021092168
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 裕利
(72)【発明者】
【氏名】田中 克育
(72)【発明者】
【氏名】望月 仁志
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0392617(US,A1)
【文献】特開平08-199354(JP,A)
【文献】特開2020-132967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、
前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットと、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出する最適解算出部を有する制御装置と、
前記最適解に基づいて、前記磁石ユニットの前記設定条件を個別に調整することが可能な調整ユニットと
を具備し、
前記最適解算出部は、任意の前記磁石ユニット各々の前記設定条件についての前記膜質の均質性の予測値を算出し、前記予測値に基づき、予め設定された所定の膜質均質性を満たすことができる前記磁石ユニット各々の前記設定条件を導出し、前記入力情報に基づき、前記予測値を補正する
スパッタ装置。
【請求項2】
請求項に記載のスパッタ装置であって、
前記最適解算出部は、前記入力情報に基づき、前記スパッタ装置の状態の推定によって前記予測値の補正を行う
スパッタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスパッタ装置であって、
前記基板上の成膜材料の膜質の測定値は、前記基板上の予め設定された複数の測定点における成膜材料の膜質に関する測定データを含む
スパッタ装置。
【請求項4】
請求項に記載のスパッタ装置であって、
前記膜質は、膜厚、シート抵抗、光線透過率、膜応力、屈折率、エッチング特性、膜密度の少なくとも1つを含む
スパッタ装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のスパッタ装置であって、
前記最適解算出部は、事前に成膜条件と膜質との関係を学習させた機械学習器を用いて前記最適解を算出する
スパッタ装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載のスパッタ装置であって、
前記入力情報は、前記成膜材料の種類、前記ターゲットの表面形状、前記ターゲットに印加する電圧、放電時間、スパッタガスの種類、成膜時圧力の少なくとも1つをさらに含む
スパッタ装置。
【請求項7】
基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットとを備えたスパッタ装置の制御方法であって、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出し、
前記最適解に基づいて、前記磁石ユニットの前記設定条件を個別に調整する
スパッタ装置の制御方法であって、
前記設定条件の最適解を算出する処理では、
任意の前記磁石ユニット各々の前記設定条件についての前記膜質の均質性の予測値を算出し、
前記予測値に基づき、予め設定された所定の膜質均質性を満たすことができる前記磁石ユニット各々の前記設定条件を導出し、
前記入力情報に基づき、前記予測値を補正する
スパッタ装置の制御方法
【請求項8】
基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットとを備えたスパッタ装置を制御する制御装置であって、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出する最適解算出部
を具備し、
前記最適解算出部は、任意の前記磁石ユニット各々の前記設定条件についての前記膜質の均質性の予測値を算出し、前記予測値に基づき、予め設定された所定の膜質均質性を満たすことができる前記磁石ユニット各々の前記設定条件を導出し、前記入力情報に基づき、前記予測値を補正する
スパッタ装置用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットの背面に1以上の磁石ユニットが配置されたカソードを1以上有するスパッタ装置、その制御方法およびスパッタ装置用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大面積の基板用の成膜装置として、1以上の磁石ユニットをターゲットの背面(非スパッタ面)に配列したマグネトロンスパッタ装置が知られている。マグネトロンスパッタ装置で成膜する基板表面の着膜均質性(例えば、膜厚やシート抵抗)は、当該基板の重要な性能要因であり、当該均質性を保つことはスパッタ装置に要求されるきわめて重要な機能である。
【0003】
マグネトロンスパッタ装置においては、ターゲット表面(スパッタ面)の水平磁束密度(電場に直交する磁束密度)が高いほどプラズマによるターゲット表面のエロージョン速度が高くなり、それに伴ってターゲット表面からより多くの成膜材料が放出されるため、基板表面への高速成膜が可能となる。典型的には、ターゲット表面において水平磁束密度が高い領域ほど、当該領域に対向する基板の表面領域への着膜速度が他の表面領域よりも相対的に高くなる傾向にある。
【0004】
従って、マグネトロンスパッタ装置を用いた大型基板の成膜にあたっては、水平磁場密度の分布が基板面内における膜質の均質性に及ぼす影響が大きい。膜質の均質な成膜を実施するためには磁石ユニットの位置若しくは移動パターン及び磁力強度若しくは磁力強度変動パターンを適切に設定することが必要である。
【0005】
磁石ユニットの位置又は移動パターンの設定により膜質の均質化を図る方法として、磁石ユニットをターゲットの背面に沿って往復移動させる技術(例えば特許文献1参照)や、磁石ユニットをターゲットの背面に対して近接離間させる方向に移動させる技術(例えば特許文献2参照)が知られている。また、特許文献3には、円筒形状のターゲットとその内部に配置された複数の磁石ユニットとを備え、ターゲットの表面を周方向に回転させることで磁場の形成される部位をターゲットの表面において周方向に沿って走査させるロータリーカソードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-239841号公報
【文献】特開2020-200525号公報
【文献】特開2016-113646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ターゲット表面の形状はエロージョンの進行に伴って変化するため、膜質の分布も経時的に変化する。従って、膜質の均質性を保つためには、時間経過とともに常に最適な磁石ユニットの位置若しくは移動パターン及び磁力強度若しくは磁力強度変動パターンを設定し続ける必要がある。
【0008】
しかし、エロージョンの進行速度は、圧力、印加電圧、スパッタガス流入量、ターゲット構成材料、ターゲットの品質差等の多様な因子の影響を受けるため、エロージョンの進行を正確に予測することは困難である。加えて、水平磁束密度の高い領域ほど速くエロージョンが進行するため、予測と現実のエロージョンの進行の差は時間経過とともに加速的に増幅してしまう。
【0009】
従って、最適な磁石ユニットの位置若しくは移動パターン及び磁力強度若しくは磁力強度変動パターンを時間関数として予め設定することは困難であり、現実的には、成膜した基板の着膜状態を確認し、装置を停止させて、磁石ユニットの位置若しくは移動パターン及び磁力強度若しくは磁力強度変動パターンを調整する一連の作業を定期的に行う必要がある。当該作業の実施が装置稼働率低下の一因となっており、この問題は、基板が大型化するほどより顕著に発生しやすい。
【0010】
また、一般に、同一設計で生産された工業製品であっても個体差が生じることは避けられない。従って、複数のスパッタ装置を設置する場合には、認識できる成膜条件を全て統一しても同等の膜質の分布が得られないことが起こりうる。そのような場合には装置ごとに磁石ユニットの位置若しくは移動パターン及び磁力強度若しくは磁力強度変動パターンのチューニングが必要となり、装置運用の際に解決すべき問題の一つとなる。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、着膜均質性および装置稼働率の向上を図ることができるスパッタ装置、その制御方法およびスパッタ装置用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係るスパッタ装置は、
基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、
前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットと、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出する最適解算出部を有する制御装置と、
前記最適解に基づいて、前記磁石ユニットの前記設定条件を個別に調整することが可能な調整ユニットと
を具備する。
【0013】
前記スパッタ装置は、前記基板上の成膜材料の膜質を測定する装置に接続され、自動的に前記測定値の取得、前記最適解の算出、前記最適解に基づく前記設定条件の調整が行われるようにしてもよい。
【0014】
前記ターゲットは、プレーナーカソード等に供される平板状のターゲット又はロータリーカソードに供される円筒状のターゲットでもよい。1のターゲットに対して1または複数の磁石ユニットが対応していてもよい。
【0015】
前記磁石ユニットの位置は、磁石ユニットに対応するターゲットと当該磁石ユニットとの相対的な位置関係を示す。すなわち、平板状のターゲットに関しては、ターゲットに平行な任意の基準面に対する磁石ユニットの相対位置を示す。円筒状のターゲットに関しては、ターゲットの回転中心軸に対する磁石ユニットの相対位置を示す。
【0016】
前記磁石ユニットの移動パターンとは、前記磁石ユニットの位置を変動させながら1の基板の成膜を行う場合の、前記磁石ユニットの位置の時間変化のパターンを示す。
【0017】
前記磁石ユニットの流入電流は、磁石ユニットを構成する磁石の一部または全てが電磁石の場合に、磁力を生じさせるためにコイルに流される電流を示す。
【0018】
前記磁石ユニットの流入電流変動パターンとは、前記磁石ユニットの流入電流を変動させながら1の基板の成膜を行う場合の、前記磁石ユニットの流入電流の時間変化のパターンを示す。
【0019】
前記膜質は、前記スパッタ装置で成膜された膜の特性を示す物性値のうち1以上を含む。前記膜の特性を示す物性値とは、例えば、膜厚、シート抵抗、光線透過率、膜応力、屈折率、エッチング特性及び膜密度である。
【0020】
前記基板上の成膜材料の膜質の測定値は、前記基板上の複数の測定点における成膜材料の膜質に関する測定データを含む。
【0021】
前記入力情報は、膜質の分布に影響を与え得る因子の1以上に関する情報をさらに含んでもよい。前記膜質の分布に影響を与え得る因子とは、例えば、前記成膜材料の種類、前記ターゲットの表面形状、前記ターゲットに印加する電圧、放電時間、スパッタガスの種類及び成膜時圧力である。
【0022】
前記最適解算出部は、前記入力情報に基づき、所定の膜質分布の管理値を満たすことができる前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流変動パターンの少なくとも1つについての最適解を算出するように構成される。
【0023】
前記最適解の算出方法としては、例えば、実際の成膜結果を学習した機械学習器、数理モデルによるシミュレーション、前記数理モデルのうち計算負荷の大きな部分を機械学習器で再構築した縮退化モデルなどを利用可能である。
また、前記最適解を直接出力する前記機械学習器や前記数理モデルや縮退化モデルを用いてもよいし、任意の前記最適解の候補に対して予測膜質分布を出力する前記機械学習器や前記数理モデルや縮退化モデルと、前記予測膜質分布が最適となる前記最適解の候補を探索する数理最適化プログラムを組み合わせたものを用いてもよい。
【0024】
本発明の一形態に係るスパッタ装置の制御方法は、基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットとを備えたスパッタ装置の制御方法であって、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出し、
前記最適解に基づいて、前記磁石ユニットの前記設定条件を個別に調整する。
【0025】
本発明の一形態に係るスパッタ装置用制御装置は、基板に対向して配置され成膜材料で構成された1以上のターゲットと、前記ターゲットの背面に配置された1以上の磁石ユニットとを備えたスパッタ装置を制御する制御装置であって、
前記磁石ユニット各々の位置、前記磁石ユニット各々の移動パターン、および、前記磁石ユニット各々を構成する電磁石の流入電流若しくは流入電流変動パターンの少なくとも1つを含む設定条件と、当該スパッタ装置によって成膜された前記基板上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニットの少なくとも1つについての前記設定条件の最適解を算出する最適解算出部
を具備する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、着膜均質性および装置稼働率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るスパッタ装置の概略横断面図である。
図2】上記スパッタ装置における磁石ユニットの一構成例を説明する拡大図である。
図3】ターゲットに対する磁石ユニットの相対位置と膜質均質性との関係を説明する模式図である。
図4】磁石ユニットの揺動の調整による膜質分布の時間変化の抑制を説明する模式図である。
図5】磁石ユニットの配列形態を示す正面図である。
図6】上記スパッタ装置における調整ユニットの概略構成図である。
図7】上記スパッタ装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図8図7に示す制御装置において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の他の実施形態に係るスパッタ装置の概略横断面図である。
図10図9に示すスパッタ装置におけるロータリーカソードの概略構成図である。
図11】磁石ユニットの揺動の調整による膜質分布の時間変化の抑制を説明する模式図である。
図12】ターゲットに対する磁石ユニットの揺動位置と膜質均質性との関係を説明する模式図である。
図13図9に示すスパッタ装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図14図13に示す制御装置において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15図1に示すスパッタ装置の構成の変形例を説明する要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
[スパッタ装置の基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るスパッタ装置100の概略横断面図である。図1において、X軸、Y軸およびZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、Z軸は上下方向(高さ方向)に相当する。
【0030】
スパッタ装置100は、マグネトロンスパッタ装置であり、真空チャンバ1と、基板ホルダ2と、ターゲット3と、バッキングプレート4と、複数の磁石ユニット5と、防着板6とを備える。スパッタ装置100は、枚葉式の縦型スパッタ装置であってもよいし、インライン方式の縦型スパッタ装置であってもよい。なお、基板のサイズが所定以下の場合には、スパッタ装置100は水平型のスパッタ装置であってもよい。
【0031】
真空チャンバ1は、真空ポンプ7に接続されており、内部を所定の減圧雰囲気に排気または維持可能に構成される。基板ホルダ2は、真空チャンバ1の内部に配置され、基板Wを垂直姿勢で支持する。真空チャンバ1および基板ホルダ2は、典型的にはグランド電位に接続される。基板Wは、例えば、横1850mm以上、縦1500mm以上の矩形のガラス基板である。
【0032】
図示せずとも真空チャンバ1には、基板ホルダ2の搬入口およびその搬出口が設けられる。上記搬入口および搬出口は共通であってもよいし、別々であってもよい。上記搬入口および搬出口は、図示しないゲートバルブ等を介して開閉可能に構成される。
【0033】
ターゲット3は、基板Wを成膜する成膜材料で構成される。成膜材料としては、典型的には、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、合成樹脂などが挙げられる。本実施形態では、導電性を有する金属あるいは合金ターゲットが用いられる。
【0034】
ターゲット3は、インゴットターゲットであってもよいし、焼結体ターゲットであってもよい。ターゲット3の数、大きさ、配列等は特に限定されないが、本実施形態では、ターゲット3は、基板Wよりも大きな面積で構成された単一の矩形の板材で構成され、真空チャンバ1内において基板Wに所定の距離(TS距離)をおいてX軸方向に対向して配置されている。
【0035】
バッキングプレート4は、ターゲット3の背面を支持する金属板であり、真空チャンバ1に対して絶縁部材11を介して固定される。バッキングプレート4は、典型的には、インジウム等のろう材を介してターゲット3に接合される。バッキングプレート4は、真空チャンバ1の外部に設置されたRF電源あるいは直流電源を有する電力供給源8に接続される。
【0036】
複数の磁石ユニット5は、バッキングプレート4を介してターゲット3の背面(非スパッタ面)に対向して配置される。複数の磁石ユニット5は、ターゲット3の表面(スパッタ面)に磁場を形成する磁気回路を構成する。
【0037】
図2は、磁石ユニット5の拡大図である。磁石ユニット5は、第1磁石51と、第2磁石52と、第1磁石51および第2磁石52を支持するヨーク53とを有する。第1磁石51のターゲット3側の端部と、第2磁石52のターゲット3側の端部は、それぞれ逆の磁極となるように着磁される。第1磁石51および第2磁石52の形状、配列形態等は特に限定されないが、本実施形態では、第1磁石51はZ軸方向に延びる直線的な形状に形成され、第2磁石52は、第1磁石51の周囲を取り囲むように矩形環状に形成される。磁気回路を構成する第1、第2磁石51,52の形状や個数はこの例に限られず、任意に設定することができる。
【0038】
防着板6は、基板ホルダ2とターゲット3との間に配置され、ターゲット3から飛来するスパッタ物質(成膜材料)が真空チャンバ1の側壁内面や基板Wの外周領域(基板ホルダ2の周縁部)に付着することを防止するとともに、ターゲット3と基板ホルダ2との間にプラズマを発生させるプラズマ空間Pを区画する。真空チャンバ1には、ガス源9sからプラズマ空間PへAr(アルゴン)等のスパッタガスを導入するガス導入ライン9が取り付けられている。
【0039】
スパッタ装置100によって基板Wに成膜を施すときは、ガス導入ライン9からプラズマ空間Pへスパッタガスが導入されるとともに、電力供給源4からバッキングプレート4を介してターゲット3にRF電源あるいはDC電源が入力されることで、プラズマ空間Pにマグネトロン放電が発生する。ターゲット3の背面に配置された複数の磁石ユニット5は、ターゲット3の表面に電場と直交する磁場を形成して、プラズマ中の電子をターゲット3の表面付近に拘束する。これにより、小さなスパッタ電力でも電子密度が高まり、ターゲットへのイオン突入量が増える。
【0040】
マグネトロンスパッタ装置においては、ターゲット表面(スパッタ面)の水平磁束密度(電場に直交する磁束密度)が高いほどプラズマによるターゲット表面のエロージョン速度が高くなり、それに伴ってターゲット表面からより多くの成膜材料がスパッタされるため、基板表面への高速成膜が可能となる。典型的には、ターゲット3の表面において各磁石ユニット5の水平磁場Bの磁束密度が高い領域ほど、当該領域に対向する基板Wの表面領域への着膜速度が他の表面領域よりも相対的に高くなる傾向にある。このため、基板W上の膜質分布を均一にするためには、ターゲット3の表面における水平磁場Bの磁束密度分布を厳密にコントロールする必要がある。
【0041】
[磁石ユニットのX軸方向の位置調整により膜質分布を調整できることの説明]
例えば、磁石ユニットのX軸方向の位置が固定されている場合、ターゲット表面のエロージョンの進行に伴ってターゲット表面から磁石ユニットまでの距離が徐々に近づき、結果として、当該ターゲット表面における水平磁束密度が高くなる。また、図3(A),(B)に示すように、ターゲット表面の内、水平磁束密度の高い領域ほど速くエロージョン3eが進行するため、ターゲット3の表面における水平磁束密度の差は時間の経過に伴ってより顕著に表れる。そのため、処理枚数が多くなるにつれて基板Wへの着膜均質性が悪化する傾向にある。
【0042】
そこで、図3(C)に示すように、エロージョン3eの進行速度が高いターゲット3の表面領域での水平磁束密度を下げるべく、その磁気回路を構成している磁石ユニット5をターゲット3の表面から遠ざける方向に移動させるようにすれば、当該領域での水平磁束密度の加速度的な増加を抑制して、着膜量の均質化を図ることができる。
【0043】
また、磁気回路を構成する第1磁石51および第2磁石52の一部又は全部が電磁石である場合、磁石ユニット5のX軸方向の位置の調整のみならず、第1磁石51および第2磁石52を構成するコイルの流入電流の大きさや方向の調整によってもターゲット3の表面領域での水平磁束密度を調整し、着膜量の均質化を図ることができる。
【0044】
[磁石ユニットのY軸方向の揺動の調整により膜質分布を調整できることの説明]
ターゲット3の限られた領域のみがエロージョンする状態ではターゲットの使用効率が低いため、磁石ユニット5をY軸方向に揺動することでより広い範囲をエロージョンさせる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0045】
一般に、等速でY軸方向に揺動する単一の磁石ユニット5によるエロージョンは揺動の中心が最も速いため、ターゲットの表面形状は椀型となる。図4(A),(B)は、ターゲット3のスパッタ開始から所定時間経過後におけるターゲット3の表面形状の変化と、ターゲット3に対する磁石ユニット5のY軸方向の位置の時間変化とをそれぞれ示している。ターゲット3の表面の椀の中央部分ではターゲット3の表面と磁石ユニット5との距離が近づく速度が速いため、図4(B)に示すように、エロージョン中央部3e-centerとエロージョン両側部3e-sideの進行速度の差は時間経過とともにより顕著になる。
【0046】
従って、等速での揺動を続けた場合、エロージョン中央部3e-centerとエロージョン両側部3e-sideの進行速度バランスが変化し、エロージョンが進行するとこれらの速度の差はさらに顕著になる結果、膜質分布の変化を引き起こすとともにターゲット使用効率を低下させてしまう。
【0047】
そこで、図4(C)に示すように、エロージョン中央部3e-centerとエロージョン両側部3e-sideの進行速度バランスを保つべく、磁石ユニット5がエロージョン両側部3e-sideの領域の周囲に長く留まるように、磁石ユニット5のY軸方向の揺動距離を長くする、および(または)、揺動の両端での移動速度を遅くすることで、膜質分布の変化を抑制して、均質な膜質を維持することができる。具体的には、揺動の端周辺に磁石ユニット5が滞在する時間を長くする(図4(C)対策例1参照)、揺動の端で磁石ユニット5が停止する時間を設ける(同対策例2参照)、磁石ユニット5の揺動幅を長くする(同対策例3参照)、あるいは、これら対策例1~3を任意に組み合わせる、などの方法が採用可能である。
【0048】
また、磁気回路を構成する第1磁石51および第2磁石52の一部又は全部が電磁石である場合、磁石ユニット5の揺動中の位置に応じて変化する第1磁石51および第2磁石52を構成するコイルに流れる電流(以下、流入電流変動パターン)を調整することで、磁石ユニット5のY軸方向の移動パターンを調整することと同様の効果がある。具体的には、磁石ユニット5が揺動の端周辺にある時に電流を大きくし、揺動の中心周辺にある時に電流を小さくすることで膜質分布の変化を抑制することができる。
【0049】
上記に示したように、磁石ユニット5の設定条件として、磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターン、流入電流若しくは流入電流変動パターンを時間経過とともに変化させることが膜質均質性を保つために重要である。
【0050】
しかし、エロージョンの進行速度は、圧力、印加電圧、スパッタガス流入量、ターゲット構成材料、ターゲットの品質等の多様な因子の影響を受けるため、エロージョンの進行を正確に予測することは困難である。加えて、水平磁束密度の高い領域ほど速くエロージョンが進行するため、現実と予測のエロージョンの進行の差は時間経過とともに加速的に増幅してしまう。
【0051】
従って、最適な磁石ユニットのX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを時間関数として予め設定することは困難であり、現実的には、成膜した基板の着膜状態を確認し、装置を停止させて、磁石ユニットのX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを調整する一連の作業を定期的に行う必要がある。当該作業の実施が装置稼働率低下の一因となっており、この問題は、基板が大型化するほどより顕著に発生しやすい。
【0052】
そこで本実施形態では、着膜均質性および装置稼働率の向上を図るようにするため、スパッタ装置100が以下のように構成される。
【0053】
[スパッタ装置の詳細]
(磁石ユニット)
図5は、複数の磁石ユニット5の配列形態を示すX軸方向から見た正面図である。同図に示す例では、各磁石ユニット5は、高さ方向(Z軸方向)に長手の第1ブロック5aと、この第1ブロック5aの両端に配置された一対の第2ブロック5bとにより構成され、これら各ブロック5a,5bにそれぞれ図2に示した第1、第2磁石51,52が配置される。そして、第1ブロック5aおよび一対の第2ブロック5bの組からなる磁石ユニット5が、横方向(Y軸方向)に複数(図示の例では9組)配列される。このため、ターゲット3の背面に配置される磁気回路が合計27か所に分割される。
【0054】
各磁石ユニット5において、第1ブロック5aのZ軸方向に沿った長さは、第2ブロック5bよりも長く形成されるが、これに限られず、各ブロック5a、5bが等しい長さで形成されてもよい。各磁石ユニット5を構成するブロックの数も3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。磁石ユニット5の配列数も9に限られず、これよりも少ない又は多い数であってもよい。つまり、複数の磁石ユニット5で構成される磁気回路の分割数や分割された磁気回路の大きさなどは、図示の例に限られず、ターゲット3あるいは基板Wの大きさ、着膜量を調整するべき基板W上の位置、目標とする基板W上の着膜量の面内分布などに応じて任意に設定可能である。
【0055】
スパッタ装置100は、各磁石ユニット5の第1、第2ブロック5a,5bのターゲット3に対する相対距離を個々に調整可能な調整ユニット10と、調整ユニット10を制御する制御装置20とをさらに備える。
【0056】
(調整ユニット)
図6は、調整ユニット10の概略構成を示すZ軸方向から見た平面図である。調整ユニット10は、真空チャンバ1の外部に配置され、各磁石ユニット5の第1、第2ブロック5a,5bに対応して配置された複数の駆動部11を有する。各駆動部11は、例えば、第1、第2ブロック5a,5bに一端が連結された駆動軸11aおよび11bを有する駆動シリンダあるいは駆動モータで構成される。駆動軸11aは、X軸方向に伸縮することで、ターゲット3に近接あるいは離間させる方向に第1、第2ブロック5a,5bを移動させる。駆動軸11bは、Y軸方向に伸縮することで、ターゲット3に水平な方向に第1、第2ブロック5a,5bを移動させる。
【0057】
また、各磁石ユニット5を構成する磁石の一部又は全部が電磁石である場合には、調整ユニット10は各電磁石に流れる電流を調整する装置を備えてもよい。前記電磁石に流れる電流を調整する装置は、常に一定の電流が流れるように調整してもよいし、磁石ユニット5のY軸方向の揺動に連動して流入電流が変化するように調整してもよい。
【0058】
調整ユニット10は、作業者によって各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを手動で調整するようにしてもよいし、制御装置20からの制御指令に基づいて、X軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを自動で調整するようにしてもよい。
【0059】
(制御装置)
制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)や内部メモリや入出力インターフェース等を含むコンピュータで構成される。本実施形態においては、制御装置20は、調整ユニット10、真空ポンプ7、電力供給源8、ガス導入ライン9を含むスパッタ装置100全体の動作を制御する。
【0060】
図7は、制御装置20の機能のうち、本発明に係る部分の構成を示すブロック図である。制御装置20は、入力部21と、最適解算出部22と、出力部23とを有する。
【0061】
入力部21は、各基板が成膜された際の各種成膜条件と各基板上に成膜された膜質の測定値をスパッタ装置100から取得する機能を有する。また、前記各基板上に成膜された膜質をスパッタ装置100とは異なる測定装置で測定している場合には、制御装置20は前記測定装置に接続され、入力部21が前記各基板上に成膜された膜質の測定値を取得する機能をも有する。
【0062】
前記基板が成膜された際の各種成膜条件は、各磁石ユニット5の設定条件として、各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンのいずれかひとつ以上を必ず含むほか、ターゲット3を構成する成膜材料の種類、ターゲット3の消費量(ターゲット3の表面形状)、ターゲット3への印加電圧(電力供給源8からの投入電圧)、スパッタガスの流入量、チャンバ内圧力などを含んでもよい。
【0063】
前記各基板上に成膜された膜質の測定値は、基板W上の複数の特定の位置における測定点における膜質の測定値である。測定点の配置は特に限定されないが、前記各基板上に成膜された膜質の分布を管理する観点からは、基板W上に広範に配置されていることや基板Wの面内において膜質が極大または極小となる位置が含まれていることが望ましい。これらの測定点は、成膜開始前にあらかじめ決められてもよいし、成膜後に任意に決められてもよい。
【0064】
最適解算出部22は、前記設定条件と、当該スパッタ装置100によって成膜された前記基板W上の成膜材料の膜質の測定値とを少なくとも含む入力情報に基づき、前記磁石ユニット5の少なくとも1つについての前記設定条件の最適解(あるいは最適値)を算出する。
【0065】
最適解算出部22は、入力部21が取得した各種入力情報を基に、膜質の均質性が得られる各磁石ユニット5の最適なX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを算出する機能を有する。以下、最適解算出部22の詳細について説明する。
【0066】
本実施形態における最適解算出部22は、予測部221と補正部222と最適化部223により構成される。
【0067】
予測部221は、任意の前記磁石ユニット各々の前記設定条件についての前記膜質の均質性の予測値を算出する。予測部221は、各種成膜条件を引数とし、その条件で成膜が行われたと仮定した場合の膜質の予測値を戻値とする関数である。前記膜質の予測値の算出方法は特に限定されず、本実施形態では、各種成膜条件と膜質との関係を事前に学習させた機械学習器を用いる。
【0068】
機械学習器のアルゴリズムは特に限定されず、例えば、重線形回帰、ニューラルネットワーク、決定木、サポートベクトルマシンのいずれか又はそれらの複数を組み合わせたアンサンブル学習モデルが適用可能である。
【0069】
予測部221の引数は、各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを含むことが必須である。さらに、例えば成膜材料の種類、ターゲットの表面形状、ターゲットに印加する電圧、放電時間、スパッタガスの種類及び成膜時圧力などの、膜質分布に影響を与える成膜条件を追加で引数に含むようにすることで、より精度の高い機械学習器を構築することが可能である。
【0070】
予測部221の戻値である膜質の予測値は、実際の基板W上の全ての測定点における膜質の予測値である。実際の基板Wと同じ測定点である理由は、入力部21が取得した実際の膜質の測定値と比較する必要があるためである。
【0071】
予測部221の引数に実際の成膜条件を入力することで、実際の成膜における膜質の予測値を算出できる。しかし、膜質は各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターン、圧力、印加電圧、スパッタガス流入量、ターゲット構成材料、ターゲットの品質差等の多様な因子の影響を受け、それら因子の全てを測定することは難しいことから、実際の成膜における膜質の予測値が測定値と一致することはまれである。
【0072】
従って実際の成膜の膜質の予測値を測定値と一致させるために膜質の予測値に補正をおこなう必要がある。補正部222は、実際の成膜における膜質の予測値と測定値を比較し、補正パラメータの算出と膜質の予測値の補正を行う。予測部221による予測の精度が十分に高ければ補正の影響は小さくなることから、補正部222による補正の方法は、単純な加算や乗算でもよい。
【0073】
予測部221の算出する膜質の予測値に補正部222による補正を行うことで、任意の成膜条件に対して膜質の予測を行うことが可能になる。以下、補正部222により補正された膜質の予測値を、膜質の補正済み予測値と記述する。
【0074】
最適化部223は、最適な膜質の補正済み予測値が得られる成膜条件を探索する。本実施例では、膜質の補正済み予測値の均質性を表す統計量が最小になるような各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを、数理最適化アルゴリズムを用いて探索する。前記膜質の補正済み予測値の均質性を表す統計量は、スパッタ分野で一般的に用いられる均質性の指標である(Max-Min)/(Max+Min)や変動係数を用いる。前記数理最適化アルゴリズムとしては、例えば勾配降下法、グリッドサーチ、ブルートフォース法、ベイズ最適化などを用いてよい。
【0075】
本実施形態によれば、実際の直近の成膜について、最適な膜質の均質性を得るためには各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンがどのように設定されるべきであったかという情報(最適成膜条件)を得ることができる。ターゲット3のエロージョンは数日から数週間のタイムスパンで進行する事から、前記直近の成膜が実施されてから前記最適成膜条件の算出が完了するまでの時間が前記エロージョンの進行速度に対して十分に短ければ、前記最適成膜条件は算出が完了した時点でも有効な成膜条件であると考えられる。
【0076】
出力部23は最適解算出部22が算出した各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを調整ユニット10に送信し、調整を実施させる。
【0077】
各実際の成膜データに対して、自動的に制御装置20を使用することで、膜質の均質性が大きく損なわれる前に各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンを調整し、膜質の均質性を保つことが可能となる。
【0078】
さらに、前記最適解を算出する際に実際の成膜結果を参照することで、時間経過に伴う変化に対応が可能になるだけでなく、複数の装置間に存在する個体差をも自動的に吸収し、それぞれの装置に対して最適な調整を行うことが可能となる。
【0079】
図8は、本実施形態の制御装置20において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0080】
入力部21は、入力情報を取得する(ステップ101)。入力情報としては、各基板が成膜された際の各種成膜条件と各基板上に成膜された膜質の測定値が含まれる。
【0081】
続いて、最適解算出部22(予測部221)は、入力部21が取得した入力情報を基に、基板W上の成膜材料の膜質の均質性の予測値を算出し、算出した予測値を基に、膜質の均質性が目標範囲内にあるか否かを判定する(ステップ102,103)。
【0082】
続いて、最適解算出部22(補正部222)は、膜質の均質性が目標範囲内にない場合、入力部21で取得された膜質の測定値と予測部221で算出された予測値とを比較し、予測値を補正するための補正係数を決定する(ステップ104,105)。
【0083】
続いて、最適解算出部22(最適化部223)は、補正済膜質予測値が最適となる各磁石ユニット5の位置等の設定条件について、目標とする膜質の均質性を満たすことができる最適解を探索する(ステップ106)。
【0084】
続いて、出力部23は、最適解算出部22で算出された最適解に基づき、現在の各磁石ユニット5の上記最適解への調整量を個々に算出して図示しない表示部へ出力する(ステップ107)。あるいは、出力部23は、算出された各磁石ユニット5の最適解に基づいて制御指令を生成し、当該制御指令を調整ユニット10へ出力して、各磁石ユニット5の設定条件を上記最適解に設定する。
【0085】
以上のように本実施形態によれば、各磁石ユニット5の設定条件や実際の測定値などの入力情報を基に、基板W上に成膜される材料の膜質の均質性が所定の目標範囲にあるか否かを判定することができる。また、最適解算出部22は、これらの情報を基に、膜質の均質性が得られる各磁石ユニット5の設定条件の最適解を算出することができる。
【0086】
従来のスパッタ装置(比較例)においては、定期的に成膜した基板W上の膜質均質性を評価し、その評価結果が目標範囲内(管理値以下)であればそのまま処理を継続し、その評価結果が目標範囲外(管理値超え)であれば、装置の稼働を停止させて、各磁石ユニット5の位置の調整を手作業で行っていた。このため、磁石ユニット5の調整のたびに装置を停止させる必要があるため、装置稼働率の低下が問題となっていた。また、各磁石ユニット5の位置の調整作業に熟練度が要求されるため、装置稼働率の改善には限界があった。さらに、装置稼働率の低下を抑えるため、管理値を厳しく設定できないことから、ロット内又はロット間における膜質の安定した均質性が得られにくかった。
【0087】
これに対して本実施形態によれば、スパッタ装置100の稼働を停止させることなく各磁石ユニット5の位置の調整を自動的に行うことができるため、装置稼働率の大幅な向上を図ることができる。また、スパッタ処理の進行による膜質の算出値を基に均質性の評価を行っているため、膜質の均質性が大きく損なわれる前に磁石ユニット5の位置の調整が可能となる。さらに、比較例よりも管理値の設定をより厳しくすることができるため、ロット内又はロット間における均質性のばらつきが抑えられ、これにより均質な膜質で安定した成膜を継続させることができる。
【0088】
<第2の実施形態>
続いて本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の他の実施形態に係るスパッタ装置200の概略横断面図である。図9において、X軸、Y軸およびZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、Z軸は上下方向(高さ方向)に相当する。
【0089】
スパッタ装置200は、真空チャンバ201と、基板ホルダ202と、複数のロータリーカソードRCと、防着板206とを備える。複数のロータリーカソードRCは、Y軸方向に沿って等間隔に配置される。各ロータリーカソードRCは、円筒状のターゲット203と、ターゲット203の内周面を支持する円筒状のバッキングチューブ204と、ターゲット203の内部に配置された磁石ユニット205とを有する。
【0090】
真空チャンバ201は、真空ポンプ207に接続されており、内部を所定の減圧雰囲気に排気または維持可能に構成される。基板ホルダ202は、真空チャンバ201の内部に配置され、基板Wを垂直姿勢で支持する。真空チャンバ201および基板ホルダ202は、典型的にはグランド電位に接続される。基板Wは、例えば、横1850mm以上、縦1500mm以上の矩形のガラス基板である。
【0091】
各ターゲット203は、Z軸方向に平行な軸心のまわり(ターゲット203の円周方向)に回転可能に構成される。ターゲット203は、基板Wを成膜する成膜材料で構成される。成膜材料としては、典型的には、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、合成樹脂などが挙げられる。本実施形態では、導電性を有する金属あるいは合金ターゲットが用いられる。
【0092】
各バッキングチューブ204は、ターゲット203の背面を支持する金属板であり、真空チャンバ201の外部に設置された図示しないRF電源あるいは直流電源を有する電力供給源に接続される。
【0093】
磁石ユニット205は、各ターゲット203の内側に、各ターゲット203の軸心方向に沿って複数配置される。基板Wと対向するターゲット203の表面(スパッタ面)に磁場を形成する磁気回路を構成する。各磁石ユニット205は、図2を参照して説明したように、第1磁石51と、第2磁石52と、第1磁石51および第2磁石52を支持するヨーク53とを有する。
【0094】
防着板206は、ロータリーカソードRCの周囲に配置され、ターゲット3から飛来するスパッタ物質(成膜材料)が真空チャンバ201の側壁内面や基板Wの外周領域(基板ホルダ2の周縁部)に付着することを防止するとともに、ターゲット203と基板ホルダ202との間にプラズマを発生させるプラズマ空間Pを区画する。真空チャンバ201には、ガス源209sからプラズマ空間PへAr(アルゴン)等のスパッタガスを導入するガス導入ライン209が取り付けられている。
【0095】
スパッタ装置200によって基板Wに成膜を施すときは、ガス導入ライン209からプラズマ空間Pへスパッタガスを導入し、各ターゲット3を軸心まわりに一定速度で回転させるとともに、電力供給源からバッキングチューブ204を介してターゲット203へRF電源あるいはDC電源を印加することで、プラズマ空間Pにマグネトロン放電を発生させる。
【0096】
スパッタ装置200においては、ターゲット203がその軸心まわりに回転することで、ターゲット203の円周方向に均等にエロージョンが進行する。このため、ターゲット203の使用効率を高めることができる。
【0097】
本実施形態において、各ロータリーカソードRCは、図10に示すように、各磁石ユニット205をターゲット203の半径方向に移動させるとともに、各磁石ユニット205をターゲット203の円周方向に揺動させることが可能な駆動部211を有する。各磁石ユニット205がターゲット203の半径方向に移動可能に構成されることにより、ターゲット203のスパッタレートを制御することができる。また、各磁石ユニット205がターゲット203の円周方向に揺動可能に構成されることにより、成膜される膜の形状をある程度操作できる。駆動部211は、磁石ユニット205の揺動幅および揺動速度を調整することが可能に構成される。
【0098】
[磁石ユニットの半径方向の調整により膜質分布の調整が可能であることの説明]
一般に、複数並んだ回転する筒状カソード(ロータリーカソード)の浸食速度は等しいことが望ましいが、電子の挙動に影響を及ぼす因子(アノードや他のロータリーカソード)との距離や、ターゲットのわずかな品質の差などの影響で等しい浸食速度を得られない場合がある。また、希望する膜質分布を得るためにあえて異なる浸食速度になるように設定する場合もある。
いずれのターゲットも浸食とともに径が縮小し磁石ユニットとの距離が近づくため浸食速度は加速するが、複数のロータリーカソードで浸食速度に差がある場合、時間経過とともにその差は顕著になってしまい、膜質分布の変化を生じさせる。
従って、狙った浸食速度バランスを保つためには、エロージョンの進行に伴って磁石ユニットの半径方向の位置を調整する必要がある。
また、磁石ユニットに用いられる磁石の一部又は全部が電磁石である場合には、流入電流を調整することでも同様の効果がある。
すなわち、電磁石のコイルに流す電流の大きさや方向により、ターゲット表面の浸食速度を調整することが可能である。
【0099】
[磁石ユニットの円周方向の揺動の調整により膜質分布の調整が可能であることの説明]
1の筒状ターゲットにより成膜される基板上の膜厚分布は、磁石ユニットの円周方向の位置に影響される。一般に、磁石ユニットが基板に対向する位置に配置されている場合は左右対称な釣鐘型の分布となり、磁石ユニットが基板に対向する位置から回転した位置に配置されている場合はピーク位置が回転方向に移動した左右非対称な釣鐘型の分布となる。これはターゲット粒子が放出される位置が磁石ユニットの位置に応じて変化することに起因する(図11(A),(B)参照)。
この性質を利用し、成膜中に磁石ユニットを円周方向に揺動することで得られる膜厚分布を操作する技術が知られている(図12(A))。
ターゲットの浸食の進行とともにターゲットの径は縮小し、それに伴って膜厚分布も変化する。一般には、粒子放出位置が基板から離れていく影響で膜厚分布はよりなだらかな釣り鐘型に変化する(図12(B))。このような変化への対策として、磁石ユニットの円周方向の揺動パターンを調整することが有効である(図12(C))。
エロージョンの進行に伴って、磁石ユニットの揺動幅を小さくすることや磁石ユニットが基板に対向する位置に長く留まるように揺動速度を調整することで膜厚分布を保つことが可能である。
また、磁石ユニットに用いられる磁石の一部又は全部が電磁石である場合には、揺動位置に応じた流入電流のパターンを調整することでも同様の効果がある。
【0100】
上記の磁石ユニットの半径方向の位置、円周方向の揺動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンは、第1の実施形態で示した各磁石ユニット5のX軸方向の位置、Y軸方向の移動パターンおよび流入電流若しくは流入電流変動パターンと対応する概念である。そのため、第1の実施形態に対する記述について上記を入れ替えて解釈すれば、第1の実施形態はロータリーカソードに対しても適用できることがわかる。同様に、本実施形態もプレーナーカソード(第1の実施形態)に対して適用できる。
【0101】
[制御部]
本実施形態のスパッタ装置200は、各磁石ユニット5の位置等を制御する制御装置220をさらに備える。図13は、制御装置220の機能のうち、本発明に係る部分の構成を示すブロック図である。制御装置220は、第1の実施形態と同様に、入力部21と、最適解算出部22と、出力部23とを有する。
【0102】
本実施形態では、最適解算出部22の構成が上述の第1の実施形態と異なる。本実施形態における最適解算出部22は、予測部221と状態推定部224と最適化部223により構成される。また、予測部221の機能も第1の実施形態のそれとは異なっている。
【0103】
本実施形態の予測部221は成膜条件と隠れパラメータである装置状態を引数とし、その成膜条件および装置状態で成膜が行われたと仮定した場合の膜質の予測値を戻値とする関数である。前記膜質の予測値の算出方法は、スパッタリングに関する物理現象をプログラムで再現した数理モデルに基づいて行われる。
【0104】
隠れパラメータである装置状態とは、例えば、ターゲットのエロージョンの進行状態などの、成膜に影響を与えることが判っているが測定機器の不在ゆえに値が不明である物理量や、完全に未知であるが成膜に影響を与えている要素をホワイトノイズでモデル化したものをベクトルとして表現したものである。
【0105】
予測部221に成膜条件と適切な装置状態を入力すれば、任意の成膜条件に対して膜質分布を予測することができる。通常、前記隠れパラメータである装置状態は未知であることから、予測部221を使用するためには装置状態の推定が不可欠である。
従って、実際の成膜結果を利用して装置状態を推定する役割を担うのが状態推定部224である。
【0106】
状態推定部224は、実際の成膜条件と成膜結果を基に、最尤推定法やMAP推定法を用いて装置状態の推定値を計算する。計算は、勾配降下法などの各種数理最適化アルゴリズムや、マルコフ連鎖モンテカルロ法などを用いてもよい。
【0107】
第1の実施形態は膜質の予測値と測定値の誤差を機械的に埋めていたのに対し、第2の実施形態では、なぜ誤差が発生したのかという問題について装置状態の推定によって理論的に説明することができる。従って、予測の信頼性が高く、実際の成膜結果が長期間得られなかったとしてもその間の装置状態の推移を予測することで膜質の均質性を保ち続けることができるという利点がある。
【0108】
第1の実施形態の補正部221と第2の実施形態の状態推定部224はともに、予測精度を向上することを目的として導入される。従って前記状態推定部224は補正部221の一形態であると捉えられる。
【0109】
図14は、本実施形態の制御装置220において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0110】
入力部21は、スパッタ装置200の成膜条件および測定値を含む入力情報を取得する(ステップ201)。続いて、最適解算出部22(予測部221)は、入力部21が取得した入力情報を基に、基板W上の成膜材料の膜質の均質性の予測値を算出し、算出した予測値を基に、膜質の均質性が目標範囲内にあるか否かを判定する(ステップ202,203)。
【0111】
続いて、最適解算出部22(状態推定部224)は、膜質の均質性が目標範囲内にない場合、入力部21が取得した入力情報を基に、現在の装置状態の尤度が最大になるような成膜条件を計算(推定)する(ステップ204)。
【0112】
続いて、最適解算出部22(最適化部223)は、装置状態の尤度が最大になる各磁石ユニット205の位置等の設定条件について、目標とする膜質の均質性を満たすことができる最適解を探索する(ステップ205)。
【0113】
続いて、出力部23は、最適解算出部22で算出された最適解に基づき、現在の各磁石ユニット205の上記最適解への調整量を個々に算出して図示しない表示部へ出力する(ステップ206)。あるいは、出力部23は、算出された各磁石ユニット205の最適解に基づいて制御指令を生成し、図示しない調整ユニットを介して各磁石ユニット205の設定条件を上記最適解に設定する。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0115】
例えば以上の実施形態では、制御装置20,220からの制御指令に基づいて調整ユニット10により自動的に磁石ユニット5,205の位置の調整を行うようにしたが、これに限られず、磁石ユニット5,205の位置の調整を作業者が行うようにしてもよい。この場合、制御ユニット20,220において指定された磁石ユニット5,205について、制御ユニット20,220によって算出された調整量に基づいて位置の調整作業を行えばよいので、作業者の熟練度に関係なく速やかに磁石ユニット5,205の位置の調整を行うことができる。
【0116】
また、以上の実施形態では、制御装置20,220がスパッタ装置100の一部として構成されたが、これに限られず、スパッタ装置100,200とは独立して構成されてもよい。例えば、制御装置20,220を複数台のスパッタ装置とネットワークを介して接続された管理装置の一部として構成されてもよい。この場合、複数台のスパッタ装置における膜質の均質性の評価、磁石ユニットの位置等の最適解の算出、磁石ユニットの位置を調整する制御指令の生成等を一台の制御装置20,220で実行することができる。
【0117】
さらに以上の第1の実施形態では、単一のターゲット3に対して複数の磁石ユニット5を配置した例について説明したが、複数のターゲット3が同一平面内に配列されたマルチカソードタイプのマグネトロンスパッタ装置にも本発明は適用可能である。この場合においても図15(A),(B)に概略的に示すように、各ターゲット3のエロージョンの進行に応じて、所望とする膜質の均質性が得られるように、各ターゲット3の背面に配置された各磁石ユニット5がX軸方向に移動し、Y軸方向に揺動することが可能に構成されることで、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0118】
さらに以上の各実施形態では、複数のターゲットにそれぞれ複数の磁石ユニットを配置したマグネトロンスパッタ装置への適用例について説明したが、単一のターゲットに単一の磁石ユニットが配置されたマグネトロンスパッタ装置にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1,201…真空チャンバ
3,203…ターゲット
5,205…磁石ユニット
10…調整ユニット
20,220…制御装置
21…入力部
22…最適解算出部
23…出力部
100,200…スパッタ装置
221…予測部
222…補正部
223…最適化部
224…状態推定部
W…基板
図1
図2
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図15