(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】縮合環化合物、その製法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料
(51)【国際特許分類】
C07D 221/18 20060101AFI20250116BHJP
C07D 239/70 20060101ALI20250116BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20250116BHJP
C07D 401/10 20060101ALI20250116BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20250116BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20250116BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20250116BHJP
【FI】
C07D221/18 CSP
C07D239/70
C07D401/04
C07D401/10
C07D405/04
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H10K50/10
H10K50/16
(21)【出願番号】P 2020557789
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046422
(87)【国際公開番号】W WO2020111140
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018222499
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019064141
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕太
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】前川 健久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英人
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0334459(US,A1)
【文献】Database REGISTRY,2016年,RN 1972623-46-3, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 26 Dec 2019
【文献】Database REGISTRY,2014年,RN 1637279-68-5, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 26 Dec 2019
【文献】WEI,W. et al.,Synthesis of polybenzoquinazolines via an intramolecular dehydration of photocyclization,Tetrahedron,2016年,Vol.72, No.33,pp.5037-5046,ISSN 0040-4020
【文献】RANE,K.S. et al.,Liquid-Vapor Phase Behavior of Asphaltene-like Molecules,Industrial & Engineering Chemistry Research,2014年,Vol.53, No.45,pp.17833-17842,DOI 10.1021/ie5035144
【文献】HEWITT,C.L.,Polycyclic aromatic hydrocarbons. XVI. 1,2,3,4-Dibenzophenanthrene,Journal of the Chemical Society,1938年,No.0,pp.193-196,ISSN 0368-1769
【文献】Database REGISTRY,2013年,RN 1421343-91-0, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 26 Dec 2019
【文献】Database REGISTRY,2012年,RN 1391815-38-5, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 26 Dec 2019
【文献】JAEGER,K. et al.,Polycyclic Azoniahetarenes: Assessing the Binding Parameters of Complexes between Unsubstituted Liga,Chemistry - A European Journal,2012年,Vol.18, No.35,pp.10903-10915,DOI 10.1002/chem.201103019
【文献】BUU-HOI,N.P. et al.,Carcinogenic nitrogen compounds. LXXV. Skraup reactions with polycyclic amines, and two cases of a,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1,1972年,No.2,pp.263-265,ISSN 0300-922X
【文献】CHANG,H. et al.,Diindeno[1,2,3,4-defg;1',2',3',4'-mnop]chrysenes: solution-phase synthesis and the bowl-to-bowl inve,Chemical Communications,2010年,Vol.46, No.38,pp.7241-7243,DOI 10.1039/c0cc01730b
【文献】MATSUOKA,W. et al.,Rapid Access to Nanographenes and Fused Heteroaromatics by Palladium-Catalyzed Annulative π-Extensi,Angewandte Chemie, International Edition,2017年,Vol.56, No.40,pp.12224-12228,DOI 10.1002/anie.201707486
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され
、かつ、X
1
及びX
16
の2つの無置換の炭素原子が互いに結合して環を形成する縮合環化合物の製造方法であって、
下記式(12)で表される化合物を分子内環化させることを含み、下記式(7)で表される化合物と、下記式(8)で表される化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【化1】
上記式(1)中、
X
1
及びX
16
は、無置換の炭素原子であり;
X
2
~X
8は、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表し;
X
9~
X
15
は、それぞれ独立に、窒素原子、又は、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
X
13~
X
15
のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X
9及びX
12は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X
2
~
X
15
が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;
X
14及びX
15のうち、少なくとも1つが、環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子である場合、該環の環構造を構成する原子、及び、X
13~
X
15
のうち、少なくとも1つは窒素原子であり、
X
14及びX
15が、いずれも環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子ではない場合、X
14及びX
15のうち、少なくとも1つは窒素原子であ
る。
上記電荷輸送性基は、それぞれ独立に、重水素原子;フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;チオール基;置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基;置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基;置換基を有していてもよいシリル基;炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基;炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基;又は炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基である。
【化2】
上記式(7)及び式(8)中、X
1~X
16は、それぞれ独立に、式(1)に定義される原子を表す。Z
1~Z
2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。
【化3】
上記式(12)中、X
2
~X
14
は、それぞれ独立に、上記式(1)にて定義される電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表し;X
15
は、窒素原子を表し; X
2
~X
14
が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;Z
5
は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【請求項2】
前記電荷輸送性基が、塩素原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結若しくは縮環の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、又はトリフルオロメチルスルホニルオキシ基である請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記
式(1Bα)
、式(1Cα)、式(1Jα)、式(2Bα)、式(2Fα)、式(3Fα)、及び式(5Bα)からなる群より選ばれるいずれかで表される縮合環化合物。
【化4】
上記式中、X
0は、窒素原子を表し;A
3、A
4、A
6は、それぞれ独立して、電荷輸送性基を表し;k3、k6は、それぞれ独立して、0以上4以下の整数であり;k4は、0以上3以下の整数である。
上記電荷輸送性基は、それぞれ独立に、重水素原子;フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;チオール基;置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基;置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基;置換基を有していてもよいシリル基;炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基;炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基;又は炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基である。
【請求項4】
前記電荷輸送性基が、塩素原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結若しくは縮環の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、又はトリフルオロメチルスルホニルオキシ基である請求項
3に記載の縮合環化合物。
【請求項5】
請求項
3又は4に記載の縮合環化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環化合物、その製法、およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機ELともいう。)素子用の材料として、ジベンゾ[g,p]クリセン化合物が使用されることがある。しかし、該ジベンゾ[g,p]クリセン化合物の報告例は少なく、その研究は十分になされていない。
【0003】
非特許文献1は、無置換のジベンゾ[g,p]クリセン、および電子供与性基または電子求引性基で置換されたジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を開示している。さらに、特許文献1および特許文献2は、それぞれ、芳香族炭化水素基、およびトリアジル基で置換されたジベンゾ[g,p]クリセン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特許第5685832号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0318486号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Chemistry - An Asian Journal, 2014, 9, p.1623-1628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ジベンゾ[g,p]クリセン化合物について、本発明者等はさらなる研究を重ねた。その結果、非特許文献1および特許文献1~2に開示されるジベンゾ[g,p]クリセン化合物は、有機EL素子用材料として、有機EL素子における駆動電圧の点においてさらなる改善の余地があることがわかった。
そこで、本発明の一態様は、駆動電圧を低減できる縮合環化合物;およびその製法;を提供することに向けられている。また、本発明の他の態様は、駆動電圧を低減できる有機EL素子用材料を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る縮合環化合物は、式(1)で表される縮合環化合物である:
【化1】
【0008】
式中、
X1~X16は、それぞれ独立に、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
X1~X4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X5~X8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X13~X16のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X9およびX12は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X1~X16が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;
X14およびX15のうち、少なくとも1つが、環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子である場合、該環の環構造を構成する原子、および、X13~X16のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であり;
X14およびX15が、いずれも環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子ではない場合、X14およびX15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である;
(i)X1およびX16、(ii)X4およびX5、(iii)X8およびX9、または(iv)X12およびX13が無置換の炭素原子の場合、当該2つの無置換の炭素原子は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0009】
本発明の他の態様に係る縮合環化合物の製造方法は、
上記縮合環化合物の製造方法であって、式(7)で表される化合物と、式(8)で表される化合物と、を反応させることを含む方法である:
【化2】
【0010】
式中、
Y1~Y8は、それぞれ独立に、窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
Y1~Y4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
Y5~Y8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
C1およびC2は、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環を表す;
Z1~Z2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す;
Y1~Y8が、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である場合、C1およびC2のうち、少なくとも1つは電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環を表す;
C1およびC2が、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよい、ベンゼン環、またはナフタレン環である場合、Y1~Y8のうち、少なくとも1つは窒素原子である。
【0011】
本発明のさらに他の態様に係る縮合環化合物の製造方法は、上記縮合環化合物の製造方法であって、
式(9)で表される化合物と、式(10)で表される化合物と、を反応させることを含む方法である:
【0012】
【0013】
式中、
Y1~Y8は、それぞれ独立に、窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
Y1~Y4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
Y5~Y8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
D1は、電荷輸送性基を有していてもよい、ベンゼン環、またはナフタレン環を表す;
D2は、電荷輸送性基を有していてもよい、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環を表す;
Z3~Z4は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。
【0014】
本発明のさらに他の態様に係る縮合環化合物の製造方法は、上記縮合環化合物の製造方法であって、式(12)で表される化合物を、分子内環化させることを含む製造方法である。
【0015】
【0016】
式中、
X2~X15は、それぞれ独立に、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
X2~X4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X5~X8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X13~X15のうち、少なくとも1つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X9およびX12は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X2~X15が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;
X14およびX15のうち、少なくとも1つが、環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子である場合、該環の環構造を構成する原子、および、X13~X15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であり;
X14およびX15が、いずれも環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子ではない場合、X14およびX15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である;
Z5は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
本発明のまたさらに他の態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記縮合環化合物を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、駆動電圧を低減できる縮合環化合物を提供することができる。本発明の他の態様によれば、駆動電圧を低減できる縮合環化合物の製造方法を提供することができる。本発明のさらに他の態様によれば、駆動電圧を低減できる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一態様に係る有機EL素子の他の積層構成の例(素子実施例-1の構成)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
非特許文献1および特許文献1、2について本発明者等がさらなる研究を重ねたところ、以下の知見を得た。
非特許文献1に係る無置換のジベンゾ[g,p]クリセン骨格は、炭素原子のみから構成されており、骨格そのものの電子受容性が低い。そのため、有機EL素子、特に有機EL素子における電子輸送層に用いる場合、素子寿命は十分な性能を発揮するものの、駆動電圧が高いために駆動電圧の低減が必要であることがわかった。
上記駆動電圧を低減するためには、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格に対して、電子受容性の置換基を導入する必要がある。しかし、そのような電子受容性の置換基の導入は、分子量の増大を伴うため、昇華精製や蒸着成膜時において、材料の熱安定性の低下を招くことがわかった。
【0020】
本発明者等は、上記の難点を解消するべくさらに研究を重ねた結果、特定の骨格を有する縮合環化合物であれば、当該特定の骨格に由来してかかる問題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明の一態様に係る縮合環化合物は、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格、またはその類似骨格を構成する1つ、または複数の炭素原子を、窒素原子に置き換えた骨格である。窒素は炭素よりも電気陰性度が大きいため、骨格全体への電子求引効果が生じる。そのため、この骨格は、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格、またはその類似骨格よりも電子受容性が向上しており、電子求引性の置換基に依存することなく、電子輸送材料、発光材料等の種々の材料に適用可能であると本発明者等は推測している。すなわち、本発明の一態様に係る縮合環化合物は、特定の骨格を有し、この骨格に由来して駆動電圧の低減効果に優れた有機EL用材料として好適であり、そして、本発明の一態様に係る縮合環化合物は、有機EL素子を構成する電子輸送性の層に用いられた場合、該電子輸送性の層に求められる駆動電圧の低減に寄与するものと推察される。
【0021】
<縮合環化合物>
本発明の一態様に係る縮合環化合物は、式(1)で表される。
【0022】
【0023】
式(1)における各記号の定義は、それぞれ、以下のとおりである。
<X1~X16について>
X1~X16は、それぞれ独立に、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;X1~X4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;X5~X8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;X13~X16のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;X9およびX12は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;X1~X16が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;X14およびX15のうち、少なくとも1つが、環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子である場合、該環の環構造を構成する原子、および、X13~X16のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であり;X14およびX15が、いずれも環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子ではない場合、X14およびX15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である;(i)X1およびX16、(ii)X4およびX5、(iii)X8およびX9、または(iv)X12およびX13が無置換の炭素原子の場合、当該2つの無置換の炭素原子は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0024】
式(1)で表される縮合環化合物は、式(1’)、式(2)~(5)のいずれか1つで表されるものが好ましい。
【0025】
【0026】
式(1’)、式(2)~(5)中の各記号の定義は、それぞれ、以下のとおりである。
<X1~X116について>
X1~X116は、それぞれ独立に、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
X1~X4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X5~X8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X13~X15のうち、少なくとも1つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X17~X20のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X25~X28のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X42~X44のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X52~X54のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X101~X104のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X105~X108のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X113~X116のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X9、X12、X109およびX112は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
式(1’)において、X114およびX115のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である;
式(2)~(5)において、Xnで表される前記縮合環化合物の骨格を構成するX群のうち、1つ以上は酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である。
【0027】
式(1’)、式(1)~(5)において、Xnで表される前記縮合環化合物の骨格を構成するX群のうち、1つ以上は酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である。Xnで表される前記縮合環化合物の骨格を構成するX群のうち、1つ以上8つ以下が酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であることが好ましく、1つ以上4つ以下が酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であることがより好ましい。
式(1’)、式(1)~(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物において、X群は、X1~X116からなり、Xn(nは1~116の整数である。)で表される。式(1)で表される縮合環化合物の場合、nは1~16であり、式(1’)で表される縮合環化合物の場合、nは101~116であり、式(2)で表される縮合環化合物の場合、nは1~12,17~22であり、式(3)で表される縮合環化合物の場合、nは1~12,23~28であり、式(4)で表される縮合環化合物の場合、nは5~15、42~44であり、式(5)で表される縮合環化合物の場合、nは5~12,17~21、52~54である。
【0028】
X1~X8、X42~X44、X52~X54およびX101~108からなるX群と、これら以外のX群と、のうちのいずれか一方のX群が、すべて電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であることが好ましい。また、X1~X4以外のX群、X5~X8以外のX群、X9~X12以外のX群、X13~X28以外のX群、X42~X44以外のX群、X52~X54以外のX群、X101~X104以外のX群、X105~X108以外のX群、X109~X113以外のX群、および、X105~X108以外のX群、からなる群より選ばれるいずれか1つのX群が、全て電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であることがより好ましい。
X1~X8、X42~X44、X52~X54およびX101~108のX群と、それ以外のX群と、のうちの一方のX群が、全て電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であり、他方のX群の中の1つ以上が酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である場合、X1~X8、X42~X44、X52~X54およびX101~108のX群の中のいずれか1つ以上と、それ以外のX群の中のいずれか1つ以上とが酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である場合と比較して、式(1’)、式(1)~(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物を収率よく製造できるため好ましい。
【0029】
<電荷輸送性基について>
電荷輸送性基とは、電荷を輸送する機能を有する置換基である。電荷とは、正孔、電子、またはその両方である。
前記電荷輸送性基としては、例えば、下記の(a-1)~(a-16)で示される置換基が挙げられる。
(a-1)重水素原子、
(a-2)フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、
(a-3)トリフルオロメチル基、
(a-4)ペンタフルオロエチル基、
(a-5)シアノ基、
(a-6)ニトロ基、
(a-7)ヒドロキシル基、
(a-8)チオール基、
(a-9)置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、
(a-10)置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基、
(a-11)置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、
(a-12)置換基を有していてもよいシリル基、
(a-13)炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、
(a-14)炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基、
(a-15)炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、
(a-16)トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、または
(a-17)式(6)もしくは(6’)で表される基:
【0030】
【0031】
式中、
R1~R3は、それぞれ独立して、
(r-1)水素原子、(r-2)重水素原子、
(r-3)置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、
(r-4)置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
(r-5)炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し;
Lは、それぞれ独立して、
メチル基もしくはフェニル基で置換されていてもよいフェニレン基、
メチル基もしくはフェニル基で置換されていてもよいナフチレン基、
メチル基もしくはフェニル基で置換されていてもよいビフェニレン基、または、
単結合を表し;
nは、1または2を表し、
Lが単結合の場合、nは1であり、
Lが単結合ではない場合、nは1または2であり;
nが2の場合、複数のR1~R2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
<(a-9)について>
(a-9)である、炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、ジベンゾ[g,p]クリセニル基等が挙げられる。また、炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基は、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0033】
なお、(a-9)の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基は、それぞれ独立して、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいシリル基、炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基であることが好ましい。
ホスフィンオキシド基としては、無置換のホスフィンオキシド基、置換基を有するホスフィンオキシド基が挙げられる。置換基を有するホスフィンオキシド基であることが好ましい。
置換基を有するホスフィンオキシド基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するホスフィンオキシド基が好ましい。具体的には、例えば、ジフェニルホスフィンオキシド等、2つのアリール基で置換された基が挙げられる。
【0034】
シリル基としては、無置換のシリル基、置換基を有するシリル基が挙げられる。置換基を有するシリル基であることが好ましい。
置換基を有するシリル基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するシリル基が好ましい。具体的には、例えば、トリフェニルシリル基等、3つのアリール基で置換された基が挙げられる。
炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基としては、例えば、ジヒドロキシボリル基(-B(OH)2)、4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]-ジオキサボロラニル基、5,5-ジメチル-[1,3,2]-ジオキサボリナン基等が挙げられる。
【0035】
炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
<(a-10)について>
(a-10)である、炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基としては、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を芳香環上に含有する炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基である。該ヘテロ芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジル基、1,3,5-トリアジルフェニル基、1,3,5-トリアジルビフェニリル基、4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、9-フェニルカルバゾリル基、9-(4-ビフェニリル)カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられる。
【0037】
なお、(a-10)のヘテロ芳香族基が置換基を有する場合、該置換基は、それぞれ独立して、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基であることが好ましい。炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基と同じものが挙げられる。炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基としては、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0038】
<(a-11)について>
(a-11)である、ホスフィンオキシド基としては、無置換のホスフィンオキシド基、置換基を有するホスフィンオキシド基が挙げられる。置換基を有するホスフィンオキシド基であることが好ましい。
置換基を有するホスフィンオキシド基としては、例えば、前述した(a-9)で例示したホスフィンオキシド基と同じものが挙げられる。
<(a-12)について>
(a-12)である、シリル基としては、無置換のシリル基、置換基を有するシリル基が挙げられる。置換基を有するシリル基であることが好ましい。
置換基を有するシリル基としては、例えば、前述した(a-9)で例示したシリル基と同じものが挙げられる。
【0039】
<(a-13)について>
(a-13)である、炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基としては、例えば、前述した(a-9)で例示したボロニル基と同じものが挙げられる。
【0040】
(a-14):炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基
炭素数1~18の直鎖のアルキル基としては、例えば、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基と同じものが挙げられる。
【0041】
(a-15):炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基
炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基としては、例えば、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0042】
(a-17):式(6)および(6’)で表される基
上述のとおり、電荷輸送性基は、上記式(6)または(6’)で表される基であってもよい。式(6)および(6’)において、L、R1~R3、nの定義はつぎのとおりである。
【0043】
<式(6)および(6’)について>
式(6)および(6’)において、R1~R3は、それぞれ独立して、(r-1)水素原子、(r-2)重水素原子、(r-3)置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、(r-4)置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基、または、(r-5)炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
R1~R3が置換基を有する場合、R1~R3は、1つの置換基で置換されていてもよく、2つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0044】
上記(r-3)である、炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基の定義は、その置換基の定義を除き、上記(a-9)において記載した炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基の定義と同じである。
なお、(r-3)の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基は、重水素原子、フッ素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、9-カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、N,N-ジフェニルアミノ基、またはN,N-ビス(4-ビフェニルイル)-アミノ基であることが好ましい。
【0045】
なお、上記炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖のアルキル基と同じものが挙げられる。
上記炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基としては、前述した(a-9)で例示した炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0046】
上記(r-4)である、炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基の定義は、その置換基の定義を除き、前述した(a-10)で例示した炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基と同じものが挙げられる。また、炭素数3~20の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基であることがより好ましい。
なお、(r-4)のヘテロ芳香族基が置換基を有する場合、該置換基は、重水素原子、フッ素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、9-カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、N,N-ジフェニルアミノ基、またはN,N-ビス(4-ビフェニルイル)-アミノ基であることが好ましい。これらの置換基は、例えば、前述した(r-3)の置換基と同じ定義である。
上記(r-5)である、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基の定義は、上記(a-9)において示した定義と同じである。
【0047】
式(6)および(6’)において、Lは、メチル基もしくはフェニル基で置換されていてもよいフェニレン基;メチル基もしくはフェニル基で置換されていてもよいナフチレン基;メチル基、もしくはフェニル基で置換されていてもよいビフェニレン基;または単結合を表す。
上記フェニレン基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等が挙げられる。
上記ナフチレン基としては、例えば、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,8-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基等が挙げられる。
上記ビフェニレン基としては、例えば、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ビフェニル-4,3’-ジイル基、ビフェニル-4,2’-ジイル基、ビフェニル-3,3’-ジイル基、ビフェニル-3,2’-ジイル基、ビフェニル-2,2’-ジイル基等が挙げられる。
【0048】
式(6)および(6’)において、nは1または2の整数を表す。Lが単結合の場合、nは1の整数である。Lが単結合ではない場合、nは1または2の整数である。
なお、nが2である場合、R1およびR2は2つずつ存在するが、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
<好ましい縮合環化合物>
式(1)で表される縮合環化合物は、式(1B)、(1C)、(1E)、(1F)、(1J)、(1K)、(2A)~(2F)、(3A)~(3F)、(4B)、(4J)、および(5B)からなる群より選択されるいずれか1つで表されるものがより好ましい。
【0050】
【0051】
【0052】
式(1B)~式(5B)中、
X0は、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子を表し;
A1~A8は、それぞれ独立して、電荷輸送性基を表し;
k1~k3およびk6は、それぞれ独立して、0以上4以下の整数であり;
k4は0以上3以下の整数であり;
k5およびk8は0以上2以下の整数であり;
k7は、0以上1以下の整数であり;
k1~k8の合計が2以上の整数である場合、複数のA1~A7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
<k1~k8について>
k1~k3およびk6は、それぞれ独立して、0以上4以下の整数である。k4は、0以上3以下の整数である。k5およびk8は、0以上2以下の整数である。k7は、0以上1以下の整数である。
なお、k1~k8の合計が2以上である場合、A1~A8は複数存在するが、複数のA1~A8は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
k1~k8の合計(k1+k2+k3+k4+k5+k6+k7+k8)が、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、0または1であることが特に好ましい。k1~k8の合計が3以下であると、k1~k8の合計が4以上の化合物と比較して分子量が小さくなる。その結果、化合物の昇華温度が低くなり、昇華時の耐熱安定性が向上するため好ましい。
【0054】
k1およびk2は、有機EL素子における優れた電荷輸送を実現する観点から、0、または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
k3~k8は、有機EL素子における優れた電荷輸送を実現する観点から、0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
上記式(1B)、(1C)、(1E)、(1F)、(1J)、(1K)、(2A)~(2F)、(3A)~(3F)、(4B)、(4J)、および(5B)からなる群より選択されるいずれか1つで表されるで表される縮合環化合物については、有機EL素子における優れた電荷輸送を実現する観点から、k1およびk2が0、且つk3~k8のいずれか1つが1のものが特に好ましい。
【0055】
<A1~A8について>
A1~A8で表される電荷輸送性基は、式(1’)、式(2)~(5)における電荷輸送性基と同じ定義であり、好ましい範囲についても同じである。
A1~A8が置換基を有する場合、A1~A8は、1つの置換基で置換されていてもよく、2つ以上の置換基で置換されていてもよい。
A1~A8が、置換基を有する芳香族炭化水素基、または、置換基を有するヘテロ芳香族基である場合、該置換基は、それぞれ独立して、上記(a-9)で例示した置換基と同じものが挙げられる。
【0056】
A1~A8の具体例としては、以下に示す(1)~(24)の基等が好ましい例として挙げられる。
(1):メチル基、エチル基、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、重水素原子、メトキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基
【0057】
(2):フェニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、2-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシ基、2-ヒドロキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル基、3-トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル基、2-トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル基、3,4-ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル基、
【0058】
(3):4-ビフェニル基、3-ビフェニル基、2-ビフェニル基、2-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、4’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2,6-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2,4’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2’,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2’,4’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2’,5’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、2’,6’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4-イル基、4-フェニルビフェニル基、2-フェニルビフェニル基
【0059】
(4):1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-メチルナフタレン-1-イル基、4-メチルナフタレン-1-イル基、6-メチルナフタレン-2-イル基、4-(1-ナフチル)フェニル基、4-(2-ナフチル)フェニル基、3-(1-ナフチル)フェニル基、3-(2-ナフチル)フェニル基、3-メチル-4-(1-ナフチル)フェニル基、3-メチル-4-(2-ナフチル)フェニル基、4-(2-メチルナフタレン-1-イル)フェニル基、3-(2-メチルナフタレン-1-イル)フェニル基、4-フェニルナフタレン-1-イル基、4-(2-メチルフェニル)ナフタレン-1-イル基、4-(3-メチルフェニル)ナフタレン-1-イル基、4-(4-メチルフェニル)ナフタレン-1-イル基、6-フェニルナフタレン-2-イル基、4-(2-メチルフェニル)ナフタレン-2-イル基、4-(3-メチルフェニル)ナフタレン-2-イル基、4-(4-メチルフェニル)ナフタレン-2-イル基
【0060】
(5):2-フルオレニル基、9,9-ジメチル-2-フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9-フェナントリル基、2-フェナントリル基、11,11’-ジメチルベンゾ[a]フルオレン-9-イル基、11,11’-ジメチルベンゾ[a]フルオレン-3-イル基、11,11’-ジメチルベンゾ[b]フルオレン-9-イル基、11,11’-ジメチルベンゾ[b]フルオレン-3-イル基、11,11’-ジメチルベンゾ[c]フルオレン-9-イル基、11,11’-ジメチルベンゾ[c]フルオレン-2-イル基、3-フルオランテニル基、8-フルオランテニル基
【0061】
(6):1-イミダゾリル基、2-フェニル-1-イミダゾリル基、2-フェニル-3,4-ジメチル-1-イミダゾリル基、2,3,4-トリフェニル-1-イミダゾリル基、2-(2-ナフチル)-3,4-ジメチル-1-イミダゾリル基、2-(2-ナフチル)-3,4-ジフェニル-1-イミダゾリル基、1-メチル-2-イミダゾリル基、1-エチル-2-イミダゾリル基、1-フェニル-2-イミダゾリル基、1-メチル-4-フェニル-2-イミダゾリル基、1-メチル-4,5-ジメチル-2-イミダゾリル基、1-メチル-4,5-ジフェニル-2-イミダゾリル基、1-フェニル-4,5-ジメチル-2-イミダゾリル基、1-フェニル-4,5-ジフェニル-2-イミダゾリル基、1-フェニル-4,5-ジビフェニリル-2-イミダゾリル基
【0062】
(7):1-メチル-3-ピラゾリル基、1-フェニル-3-ピラゾリル基、1-メチル-4-ピラゾリル基、1-フェニル-4-ピラゾリル基、1-メチル-5-ピラゾリル基、1-フェニル-5-ピラゾリル基
(8):2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基
(9):2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基
【0063】
(10):2-ピリジル基、3-メチル-2-ピリジル基、4-メチル-2-ピリジル基、5-メチル-2-ピリジル基、6-メチル-2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-メチル-3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピリミジル基、2,2’-ビピリジン-3-イル基、2,2’-ビピリジン-4-イル基、2,2’-ビピリジン-5-イル基、2,3’-ビピリジン-3-イル基、2,3’-ビピリジン-4-イル基、2,3’-ビピリジン-5-イル基、5-ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジル基、4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル基
【0064】
(11):1-ベンゾイミダゾリル基、2-メチル-1-ベンゾイミダゾリル基、2-フェニル-1-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-2-ベンゾイミダゾリル基、1-フェニル-2-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-5-ベンゾイミダゾリル基、1,2-ジメチル-5-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-2-フェニル-5-ベンゾイミダゾリル基、1-フェニル-5-ベンゾイミダゾリル基、1,2-ジフェニル-5-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-6-ベンゾイミダゾリル基、1,2-ジメチル-6-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-2-フェニル-6-ベンゾイミダゾリル基、1-フェニル-6-ベンゾイミダゾリル基、1,2-ジフェニル-6-ベンゾイミダゾリル基、1-メチル-3-インダゾリル基、1-フェニル-3-インダゾリル基
【0065】
(12):2-ベンゾチアゾリル基、4-ベンゾチアゾリル基、5-ベンゾチアゾリル基、6-ベンゾチアゾリル基、7-ベンゾチアゾリル基、3-ベンゾイソチアゾリル基、4-ベンゾイソチアゾリル基、5-ベンゾイソチアゾリル基、6-ベンゾイソチアゾリル基、7-ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル基
【0066】
(13):2-ベンゾオキサゾリル基、4-ベンゾオキサゾリル基、5-ベンゾオキサゾリル基、6-ベンゾオキサゾリル基、7-ベンゾオキサゾリル基、3-ベンゾイソオキサゾリル基、4-ベンゾイソオキサゾリル基、5-ベンゾイソオキサゾリル基、6-ベンゾイソオキサゾリル基、7-ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル-4-イル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル-5-イル基
【0067】
(14):2-キノリル基、3-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、1-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、2-キノキサリル基、3-フェニル-2-キノキサリル基、6-キノキサリル基、2,3-ジメチル-6-キノキサリル基、2,3-ジフェニル-6-キノキサリル基、2-キナゾリル基、4-キナゾリル基、2-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,10-フェナントロリン-3-イル基、1,10-フェナントロリン-5-イル基
【0068】
(15):2-チエニル基、3-チエニル基、2-ベンゾチエニル基、3-ベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、4-ジベンゾチエニル基
(16):2-フラニル基、3-フラニル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基
【0069】
(17):9-メチルカルバゾール-2-イル基、9-メチルカルバゾール-3-イル基、9-メチルカルバゾール-4-イル基、9-フェニルカルバゾール-2-イル基、9-フェニルカルバゾール-3-イル基、9-フェニルカルバゾール-4-イル基、9-ビフェニルカルバゾール-2-イル基、9-ビフェニルカルバゾール-3-イル基、9-ビフェニルカルバゾール-4-イル基
【0070】
(18):2-チアントリル基、10-フェニルフェノチアジン-3-イル基、10-フェニルフェノチアジン-2-イル基、10-フェニルフェノキサジン-3-イル基、10-フェニルフェノキサジン-2-イル基
(19):1-メチルインドール-2-イル基、1-フェニルインドール-2-イル基、9-フェニルカルバゾール-4-イル基
【0071】
(20):4-(2-ピリジル)フェニル基、4-(3-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)フェニル基、3-(2-ピリジル)フェニル基、3-(3-ピリジル)フェニル基、3-(4-ピリジル)フェニル基
【0072】
(21):4-(2-フェニルイミダゾール-1-イル)フェニル基、4-(1-フェニルイミダゾール-2-イル)フェニル基、4-(2,3,4-トリフェニルイミダゾール-1-イル)フェニル基、4-(1-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾール-2-イル)フェニル基、4-(2-メチルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基、4-(2-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基、4-(1-メチルベンゾイミダゾール-2-イル)フェニル基、4-(2-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基、3-(2-メチルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基、3-(2-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基、3-(1-メチルベンゾイミダゾール-2-イル)フェニル基、3-(1-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル基
【0073】
(22):4-(3,5-ジフェニルトリアジン-1-イル)フェニル基、4-(2-チエニル)フェニル基、4-(2-フラニル)フェニル基、5-フェニルチオフェン-2-イル基、5-フェニルフラン-2-イル基、4-(5-フェニルチオフェン-2-イル)フェニル基、4-(5-フェニルフラン-2-イル)フェニル基、3-(5-フェニルチオフェン-2-イル)フェニル基、3-(5-フェニルフラン-2-イル)フェニル基、4-(2-ベンゾチエニル)フェニル基、4-(3-ベンゾチエニル)フェニル基、3-(2-ベンゾチエニル)フェニル基、3-(3-ベンゾチエニル)フェニル基、4-(2-ジベンゾチエニル)フェニル基、4-(4-ジベンゾチエニル)フェニル基、3-(2-ジベンゾチエニル)フェニル基、3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル基、4-(2-ジベンゾフラニル)フェニル基、4-(4-ジベンゾフラニル)フェニル基、3-(2-ジベンゾフラニル)フェニル基、3-(4-ジベンゾフラニル)フェニル基、5-フェニルピリジン-2-イル基、4-フェニルピリジン-2-イル基、5-フェニルピリジン-3-イル基、4-(9-カルバゾリル)フェニル基、3-(9-カルバゾリル)フェニル基
【0074】
(23):2-ジベンゾ[g,p]クリセニル基、3-ジベンゾ[g,p]クリセニル基、2-(7-フェニル)ジベンゾ[g,p]クリセニル基、3-(7-フェニル)ジベンゾ[g,p]クリセニル基
【0075】
(24):N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ビス(4-ビフェニルイル)-アミノ基、N,N-ビス(3-ビフェニルイル)-アミノ基、N-フェニル-4-ビフェニルアミノ基、N-フェニル-3-ビフェニルアミノ基、N-(4-ビフェニル)-4-p-ターフェニルアミノ基、N-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-4-ビフェニルアミノ基、N3-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-N1,N1-ジフェニル-1,3-ベンゼンジアミノ基、4-トリフェニルアミノ基、3-トリフェニルアミノ基、4-(4’,4’’-ジフェニル)トリフェニルアミノ基、3-(4’,4’’-ジフェニル)トリフェニルアミノ基、N1,N1,N3,N3-テトラフェニル-1,3-ベンゼンジアミノ基、4-(フェニルアミノ)トリフェニルアミノ基
【0076】
式(1B)~(5B)で表される縮合環化合物において、A1~A8は、原料入手の容易性の点で、それぞれ独立して、
フェニル基、ビフェニリル基、ピリジルフェニル基、テルフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、9,9-スピロビ[9H-フルオレニル]基、トリフェニレニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、ピリミジル基、または、これらの基が、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、もしくはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基で置換された基;
フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、アントリル基、ジベンゾ[g,p]クリセニル基、カルバゾリル基、または、これらの基が、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、メトキシ基、もしくはフェニル基で置換された基;
4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル基、(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル基、4,6-ビス(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル基、4,6-ビス(3-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルシリル基、ジヒドロキシボリル基(-B(OH)2)、4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]-ジオキサボロラニル基、5,5-ジメチル-[1,3,2]-ジオキサボリナン基、メチル基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ビス(4-ビフェニリル)アミノ基、N3-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-N1,N1-ジフェニル-1,3-ベンゼンジアミノ基、N-フェニル-3-ビフェニリルアミノ基、4-トリフェニルアミノ基、3-トリフェニルアミノ基、4-(4’,4’’-ジフェニル)トリフェニルアミノ基、3-(4’,4’’-ジフェニル)トリフェニルアミノ基、N1,N1,N3,N3-テトラフェニル-1,3-ベンゼンジアミノ基、または4-(フェニルアミノ)トリフェニルアミノ基であることが好ましい。
【0077】
<縮合環化合物の好ましい具体例>
以下に、式(1’)~(5B)のいずれか1つで表される縮合環化合物について、好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
表B-1~B-7は、表A-1およびA-2に示された(1Ba)~(5Ba)および(1ba)~(5ba)の骨格を有し、かつ、該骨格が有する置換基Aが、表B-1~B-7に示された基である、(N-1)~(N-275)の化合物を示している。ここで、Nは1Ba~5baの任意の記号を表す。従って、例えば、(N-3)という化合物の場合、N=1Baのときは、(1Ba)の骨格を有し、該骨格が有する置換基AがF原子である(1Ba-3)の化合物を示している。なお、N=1Bb、1Bc、1Cb、1Eb、1Fb、1Jb、1Kb、2Bb、2Cb、2Db、2Eb、3Cb、3Db、3Eb、1bb、1bc、1cb、1eb、1fb、1jb、1kb、2bb、2cb、2db、2eb、3cb、3db、3ebの場合、(1Bc-1)、(1Cb-1)、(1Eb-1)、(1Fb-1)、(1Jb-1)、(1Kb-1)、(2Bb-1)、(2Cb-1)、(2Db-1)、(2Eb-1)、(3C-1)、(3Db-1)、(3Eb-1)、(1bc-1)、(1cb-1)、(1eb-1)、(1fb-1)、(1jb-1)、(1kb-1)、(2bb-1)、(2cb-1)、(2db-1)、(2eb-1)、(3c-1)、(3db-1)、(3eb-1)は存在しない。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
<縮合環化合物の製造方法>
式(1’)、(2)、(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物(以下、式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物とも称する)は、製造時における収量および純度の観点から、後述する式(7)で表される化合物および(8)で表される化合物を出発原料とする製造方法、および、式(9)で表される化合物および(10)で表される化合物を出発原料とする製造方法のいずれかにより製造することが好ましい。
すなわち、本発明の一態様に係る縮合環化合物の製造方法は、式(5)で表される化合物と、式(8)で表される化合物とを反応させる方法、または、式(9)で表される化合物と、式(10)で表される化合物とを反応させる方法を含む。
【0087】
【0088】
<Y1~Y8について>
Y1~Y8は、それぞれ独立に、窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;Y1~Y4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;Y5~Y8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である。
Y1~Y8の中の4つ以下が窒素原子であることが好ましく、Y1~Y8の中の2つ以下が窒素原子であることがより好ましく、Y1~Y8の中の1つ以下が窒素原子であることがさらに好ましい。
【0089】
<C1およびC2について>
C1およびC2は、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環を表す。Y1~Y8が、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である場合、C1およびC2のうち、少なくとも1つは電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環である。
C1およびC2が、それぞれ独立に、電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環、またはナフタレン環である場合、Y1~Y8のうち、少なくとも1つは窒素原子である。
【0090】
<Z1およびZ2について>
式(7)、式(8)および式(11)におけるZ1およびZ2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。Z1は、収率の観点から、臭素原子、またはヨウ素原子であることが好ましく、ヨウ素原子であることがより好ましい。Z2は、収率の観点から、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子、ヨウ素原子であることがより好ましい。
【0091】
ここで、Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であることが好ましい。さらに、Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であり、C1が電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環、またはナフタレン環であり、且つ、C2が電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環であることが特に好ましい。
Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である場合、Y1~Y8の中のいずれか1つ、または複数が窒素原子である場合と比較して、式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物を収率よく製造できるため好ましい。
なお、電荷輸送性基の定義は、上述した縮合環化合物における電荷輸送性基の定義と同じである。
【0092】
【0093】
式(9)における、Y1~Y8の定義は、それらの好ましい態様を含めて、式(7)におけるY1~Y8の定義と同じである。また、Z3~Z4は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0094】
<D1およびD2について>
D1は、電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環、またはナフタレン環を表し、電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環であることが好ましい。D2は、電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、またはイソキノリン環を表し、電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環であることがより好ましく、電荷輸送性基を有していてもよいピラジン環であることが特に好ましい。
【0095】
<Z3およびZ4について>
式(9)におけるZ3およびZ4は、収率の観点から、それぞれ独立に、臭素原子、またはヨウ素原子であることが好ましく、ヨウ素原子であることがより好ましい。
ここで、Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であることが好ましい。さらに、Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子であり、D1が電荷輸送性基を有していてもよいベンゼン環であり、且つ、D2が電荷輸送性基を有していてもよいピリジン環、ピリミジン環、またはピラジン環であることがより好ましい。
Y1~Y8が、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である場合、Y1~Y8の中のいずれか1つ、または複数が窒素原子である場合と比較して、式(1’)~(3)で表されるいずれか1つの縮合環化合物を収率よく製造できるため好ましい。
なお、電荷輸送性基の定義は、上述した縮合環化合物における電荷輸送性基の定義と同じである。
【0096】
なお、本発明の一態様に係る縮合環化合物の製造方法は、式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物のなかでも上述した好ましい縮合環化合物が得られる製造方法であることが好ましい。従って、式(7)~式(10)で表される化合物の好ましい範囲は、式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物の好ましい範囲に準ずるものである。
【0097】
<式(7)で表される化合物と式(8)で表される化合物の反応>
式(7)で表される化合物と、式(8)で表される化合物とを、触媒および塩基存在下で反応させ、式(11)で表されるフェナントレン化合物を経由し、直接的に式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物を得ることができる。
式(7)または式(8)で表される原料化合物は、公知の方法に基づいて合成することができ、あるいは市販されている化合物を用いることもできる。
【0098】
触媒としては、収率の観点から、パラジウム系の触媒が好ましい。
パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)ビス(テトラフルオロほう酸塩)、トリス(ベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。なかでも、収率の観点から、酢酸パラジウム(II)が好ましい。
【0099】
上記パラジウム触媒を使用する際、必要に応じて配位子となる化合物を用いてもよい。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリターシャリーブチルホスフィン(PtBu3)、ジターシャリーブチルメチルホスフィン(PtBu2Me)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(PtBu3・HBPh4)、ジターシャリーブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu2Me・HBF4)、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド(IPR・HCl)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,2-ビス(ジシクロへキシルホスフィノ)エタン、トリアダマンチルホスフィン等が挙げられる。なかでも、収率の観点から、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリターシャリーブチルホスフィン(PtBu3)、ジターシャリーブチルメチルホスフィン(PtBu2Me)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(PtBu3・HBPh4)、ジターシャリーブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu2Me・HBF4)(PtBu2Me・HBF4)、または1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、が好ましい。トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリターシャリーブチルホスフィン(PtBu3)、ジターシャリーブチルメチルホスフィン(PtBu2Me)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(PtBu3・HBPh4)、またはジターシャリーブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu2Me・HBF4)がより好ましい。
【0100】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、t-ブトキシカリウム、ピバル酸カリウム、ピバル酸セシウムが挙げられる。なかでも、収率の観点から、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、またはピバル酸セシウムが好ましく、酢酸カリウム、または酢酸ナトリウムがより好ましい。
【0101】
溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。なかでも、収率の観点から、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドが好ましい。
【0102】
反応温度としては、収率の観点から、室温以上200℃以下が好ましく、110℃以上200℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下が特に好ましい。ここで、室温とは10℃以上30℃以下を意味する。
反応雰囲気としては、触媒活性を維持する観点から、乾燥した窒素、または乾燥したアルゴン雰囲気が好ましい。
【0103】
<式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物の反応>
式(9)で表される化合物と、式(10)で表される化合物とを、塩基存在下で反応させ、直接的に式(1’)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物を得ることができる。
式(9)または式(10)で表される化合物は、公知の方法に基づいて製造することができ、あるいは市販されている化合物を用いることもできる。
【0104】
塩基としては、例えば、t-ブトキシカリウム、t-ブトキシナトリウム、t-ブトキシリチウムが挙げられる。また、上記塩基に加えて、t-ブチルヒドロペルオキシドを用いてもよい。なかでも、収率の観点から、t-ブトキシカリウムが望ましい。
上記塩基を使用する際、必要に応じて配位子となる化合物を用いてもよい。配位子としては、例えば、ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、1,10-フェナントロリン、バソフェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジフェニル-1,10-フェナントロリン等が挙げられる。
【0105】
溶媒としては、式(10)で表される化合物が液体の場合は、使用しなくてもよい。式(10)で表される化合物が固体の場合は、加熱により融解させて使用してもよい。式(10)で表される化合物が融解困難な場合、必要に応じて溶媒を使用してもよい。上記溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。なかでも、収率の観点から、式(10)で表される化合物が液体であることが好ましく、無溶媒で反応を行うことがより好ましい。
【0106】
反応温度としては、収率の観点から、室温以上200℃以下が好ましく、110℃以上200℃以下がより好ましい。必要に応じてマイクロ波照射装置を用いてもよい。マイクロ派照射装置を用いる場合、反応温度が室温以上110℃以下であることが好ましい。
反応雰囲気としては、収率の観点から、乾燥した窒素、または乾燥したアルゴン雰囲気であることが好ましい。
【0107】
上記のルートで得られた前記式(1’)~(3)のいずれか1つで表される化合物が、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素)、または炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基を有している場合には、必要に応じて追加のカップリング反応を行ってもよい。
【0108】
炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基としては、前述した(a-9)で例示した炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基と同じものが挙げられる。
【0109】
式(4)および(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物は、製造時における収量および純度の観点から、式(12)で表される化合物を出発原料とする製造方法により製造することが好ましい。
すなわち、本発明の一態様に係る縮合環化合物の製造方法は、式(12)で表される化合物を、触媒および塩基存在下で反応させ、分子内環化反応により式(4)および(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物を得る方法を含む。
【0110】
【0111】
<X2~X15について>
X2~X15は、それぞれ独立に、酸素原子で置換されていてもよい窒素原子、または、電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子を表す;
X2~X4のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X5~X8のうち、少なくとも2つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X13~X15のうち、少なくとも1つは電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X9およびX12は電荷輸送性基を有していてもよい炭素原子である;
X2~X15が有する電荷輸送性基のうち、隣り合う2つの電荷輸送性基は、互いに結合して環を形成していてもよい;
X14およびX15のうち、少なくとも1つが、環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子である場合、該環の環構造を構成する原子、および、X13~X15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子であり;
X14およびX15が、いずれも環を形成している電荷輸送性基を有する炭素原子ではない場合、X14およびX15のうち、少なくとも1つは酸素原子で置換されていてもよい窒素原子である。
なお、電荷輸送性基の定義は、上述した縮合環化合物における電荷輸送性基の定義と同じである。
【0112】
<Z5について>
式(12)におけるZ5は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。Z5は、原料入手の容易性の観点から、塩素原子、または臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
なお、本発明の一態様に係る縮合環化合物の製造方法は、式(4)または(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物のなかでも上述した好ましい縮合環化合物が得られる製造方法であることが好ましい。従って、式(12)で表される化合物の好ましい範囲は、式(4)または(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物の好ましい範囲に準ずるものである。
【0113】
上記触媒としては、収率の観点から、パラジウム系の触媒が好ましい。
パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)ビス(テトラフルオロほう酸塩)、トリス(ベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。なかでも、収率の観点から、酢酸パラジウム(II)が好ましい。
【0114】
上記パラジウム触媒を使用する際、必要に応じて配位子となる化合物を用いてもよい。配位子としては、例えば、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(Xphos)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリターシャリーブチルホスフィン(PtBu3)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu3・HBF4)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(PtBu3・HBPh4)、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド(IPR・HCl)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,2-ビス(ジシクロへキシルホスフィノ)エタン、トリアダマンチルホスフィン等が挙げられる。なかでも、収率の観点から、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(Xphos)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)が好ましく、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(Xphos)が特に好ましい。
【0115】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、t-ブトキシカリウム、ピバル酸カリウム、ピバル酸セシウムが挙げられる。なかでも、収率の観点から、炭酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、または酢酸ナトリウムが好ましく、炭酸カリウム、またはリン酸カリウムがより好ましい。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。なかでも、収率の観点から、テトラヒドロフランまたはトルエンが好ましい。
反応温度としては、収率の観点から、室温以上200℃以下であることが好ましく、室温℃以上150℃以下がより好ましく、室温℃以上100℃以下が特に好ましい。なお、室温の定義は、上述した縮合環化合物の製造方法における定義と同じである。
反応雰囲気としては、触媒活性を維持する観点から、乾燥した窒素、または乾燥したアルゴン雰囲気が好ましい。
【0116】
<有機EL素子用材料>
式(1)で表される縮合環化合物は、有機EL素子用材料として使用することができる。従って、本発明の一態様に係る有機EL素子用材料は、式(1)で表される縮合環化合物を含む。なお、式(1)で表される縮合環化合物は、電荷輸送特性や素子寿命の点で、高純度であることが好ましい。具体的には、ハロゲン原子や遷移金属元素による不純物や、製造原料や副生成物等の不純物が極力少ないものが好ましい。
式(1)で表される縮合環化合物を含む有機EL素子用材料は、発光層、または電子輸送性の層(陰極と発光層との間の電子輸送性を有する各層であり、具体的には、電子注入層、電子輸送層等が挙げられる)を形成する材料として用いることができる。なかでも、電子輸送性の層の材料として用いられることが好ましく、電子輸送層の材料として用いられることが特に好ましい。
【0117】
式(1)で表される縮合環化合物を有機EL素子の発光層の材料として使用する場合には、該縮合環化合物を単独で使用してもよいし、公知の発光ホスト材料にドープして使用してもよいし、公知の発光ドーパントをドープして使用してもよい。当該公知の材料については後述する。
【0118】
式(1)で表される縮合環化合物を含有する電子注入層、電子輸送層、または発光層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法等の公知の方法を適用することができる。
スピンコート法、キャスト法等の塗布法に用いられる有機EL素子用材料は、式(1)で表される縮合環化合物に加えて、有機溶媒を含む。有機溶媒としては特に制限はないが、例えば、モノクロロベンゼンおよびオルトジクロロベンゼン等が挙げられる。有機溶媒はこれらを2種以上組み合わせたものであってもよい。所望の塗工性能を発揮するべく有機溶媒が選択されて、有機EL素子用材料の粘度や濃度が調整されていることが好ましい。
【0119】
<有機EL素子>
本発明の一態様に係る有機EL素子は、上記式(1)で表される縮合環化合物を含む層を備える。
図1は、本発明の一態様に係る有機EL素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。以下、
図1を参照しながら本態様に係る有機EL素子について説明する。なお、
図1に示す有機EL素子は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有したものであると、本発明の一態様に係る有機EL素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様に係る有機EL素子は、トップエミッション型の素子構成であってもよく、その他の公知の素子構成であってもよい。
【0120】
有機EL素子100の基本的な構造としては、基板1、陽極2、正孔注入層3、電荷発生層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、および陰極9をこの順で含む。但し、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、電荷発生層4が省略され、正孔注入層3上に正孔輸送層5が直接設けられていてもよく、発光層6と電子輸送層7との間に正孔阻止層が設けられていてもよい。また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。
【0121】
そして、本態様に係る有機EL素子において、発光層、電子輸送層、および電子注入層からなる群より選ばれる1つ以上の層は、式(1)で表される縮合環化合物を含む。
発光層、電子輸送層、および電子注入層のうち、式(1)で表される縮合環化合物を含む層は、該縮合環化合物と共に、公知の材料の中から選択される任意の1種以上を含有していてもよい。また、発光層、電子輸送層、および電子注入層のうち、式(1)で表される縮合環化合物を含まない層は、公知の材料から選択される任意の1種以上を含有することが好ましい。
【0122】
有機EL素子100の陽極2および陰極9は、電気的な導体を介して電源に接続されている。陽極2と陰極9との間に電圧を印加することにより、有機EL素子100は作動、発光する。
正孔は陽極2で有機EL素子100内に注入され、電子は陰極9で有機EL素子100内に注入される。
なお、本態様に係る有機EL素子100は、陽極2が基板1に接して設けられている。基板と接触する電極は便宜上、下側電極と呼ばれる。但し、本態様はかかる構成に限定されるものではなく、陽極に代えて陰極が基板に接して設けられて下側電極となっていてもよく、基板と陽極または陰極とが接しておらず、陽極または陰極が他の層を介して基板上に積層されていてもよい。
【0123】
<基板1>
基板は、所望とする有機EL素子の発光方向(光が取り出される方向)に応じて光透過性を適宜選択すればよい。すなわち、基板は光透過性を有していてもよく、有していなくても(所定の波長を有する光に対して不透明であっても)よい。基板が光透過性を有するか否かは、例えば、当該基板から有機EL素子の発光に由来する光が所望の量以上観察されるか否かにより確認できる。
光透過性を有する基板として、透明ガラス板またはプラスチック板が一般的に採用される。但し、基板はこれらに何ら限定されない。基板は、例えば、多重の材料層を含む複合構造であってもよい。
【0124】
<陽極2>
基板1上には陽極2が設けられている。発光が陽極を通過して取り出される構成の有機EL素子の場合、陽極は当該発光を通すかまたは実質的に通す材料で形成される。
陽極に用いられる透明材料としては、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物;窒化ガリウム等の金属窒化物;セレン化亜鉛等の金属セレン化物;硫化亜鉛等の金属硫化物;等が挙げられる。
陽極は、プラズマ蒸着されたフルオロカーボンで改質することができる。
なお、陰極側のみから光を取り出す構成の有機EL素子の場合、陽極の透過特性は重要ではなく、陽極の材料として透明、不透明または反射性の任意の導電性材料を使用することができる。従って、この場合の陽極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0125】
<正孔輸送性の層(正孔注入層3、正孔輸送層5)>
陽極2と発光層6との間には、正孔輸送性の層が設けられる。
正孔輸送性の層とは、陽極と発光層との間に設けられた正孔輸送性を有する層であり、正孔注入層、正孔輸送層等である。正孔輸送性の層が陽極と発光層との間に複数設けられていてもよい。正孔注入層や正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する。これらの層を陽極と発光層との間に介在させることにより、正孔がより低い電界で発光層に注入される。
なお、正孔輸送層は、
図1に示す実施形態においては単層からなっているが、複数層、例えば、陽極側の第一正孔輸送層と、陰極側の第二正孔輸送層とからなっていてもよい。この2層構成の正孔輸送層の場合、第一正孔輸送層は第二正孔輸送層と比較して正孔輸送能に優れた層であり、第二正孔輸送層が第一正孔輸送層と比較して電子阻止能に優れた層であることが好ましい。第二正孔輸送層は、一般に電子阻止層と称されることもある。
【0126】
公知の正孔輸送性を有する材料(正孔注入材料、正孔輸送材料、電子阻止材料等を含む)としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。これらのうち、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0127】
上記芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)、3-[4-[1,1’-ビフェニル-4-イル](9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)アミノ]フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール、および4,4’-ビス[N-フェニル-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-1,1’-ビフェニル]、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-N-(p-テルフェニル-4-イル)アミン等が挙げられる。
【0128】
また、p型-Si、p型-SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔注入層および正孔輸送層は、上記材料から選ばれる1種以上からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0129】
<電荷発生層4>
正孔注入層3と正孔輸送層5との間には、電荷発生層が設けられていてもよい。
電荷発生層の材料としては、例えば、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)が挙げられる。
【0130】
<発光層6>
正孔輸送層5と電子輸送層7または後述する正孔阻止層との間には、発光層6が設けられている。
発光層は、燐光発光材料、蛍光発光材料、または熱活性化遅延蛍光発光材料を含み、この領域で電子・正孔対が再結合された結果として発光を生ずる。
蛍光発光材料は、一重項状態の蛍光の放出を主として利用するものであり、熱活性化遅延蛍光は、一重項状態の蛍光の放出に加えて、熱により三重項状態を一重項状態へ逆変換して蛍光を放出するものである。
【0131】
発光層は、低分子材料およびポリマー材料のいずれか含む単一材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を呈することができる。
ホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、またはアントラニル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャルブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン、式(1)で表される縮合環化合物等が挙げられる。
ホスト材料としては、後述する電子輸送材料、前述した正孔輸送性を有する材料、正孔・電子再結合を助ける(サポート)別の材料、またはこれら材料の組み合わせであってもよい。
【0132】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、式(1)~(3)のいずれか1つで表される縮合環化合物等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の遷移金属の有機金属錯体が挙げられる。
熱活性化遅延蛍光ドーパントとしては、例えば、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0133】
蛍光ドーパント、燐光ドーパント、熱活性化遅延蛍光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、およびFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))、1,6-ピレンジアミン,N1,N6-ビス([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-N1,N6-ビス(4-ジベンゾフラニル)-、1,2,4,5-テトラキス(カルバゾル-9-イル)-3,6-ジシアノベンゼン(4Cz-IPN)等が挙げられる。
発光層は単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0134】
<電子輸送性の層(電子輸送層7、電子注入層8)>
電子輸送層7は、電子注入層8と、発光層6との間に設けられている。
電子輸送層は、電子注入層より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層を電子注入層と発光層との間に介在させることにより、電子がより低い電界で発光層に注入される。
なお、電子輸送層は、
図1に示す態様においては単層からなっているが、複数層、例えば、陽極側の第一電子輸送層と、陰極側の第二電子輸送層とからなっていてもよい。この2層構成の電子輸送層の場合、第二電子輸送層が第一正孔輸送層と比較して電子輸送能に優れた層であり、第一電子輸送層が第二電子輸送層と比較して正孔阻止能に優れた層であることが好ましい。第一電子輸送層は、一般に正孔阻止層と称されることもある。正孔阻止層は、キャリアバランスを改善させることができる。電子輸送層が複数層からなる場合、式(1’)~(5)のいずれか1つで表される縮合環化合物は、いずれか1つの層に含まれていてもよく、2層以上に含まれていてもよい。
電子輸送層が式(1)で表される縮合環化合物を含む場合、電子輸送層は式(1)で表される縮合環化合物のみからなっていてもよく、後述する公知の電子輸送材料をさらに含んでいてもよい。
【0135】
電子輸送層は電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料としては、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-1-ナフトラートアルミニウム、またはビス(2-メチル-8-キノリナート)-2-ナフトラートガリウム、2-[3-(9-フェナントレニル)-5-(3-ピリジニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(4,’’-ジ-2-ピリジニル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム)、式(1)で表される縮合環化合物等が挙げられる。
【0136】
電子注入層は、電子注入性を向上させ、素子特性(例えば、発光効率、定電圧駆動、または高耐久性)を向上させることができる。
式(1)で表される縮合環化合物以外の電子注入層の材料として望ましい化合物としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等が挙げられる。また、上記した金属錯体やアルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、SiO2、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、C等の各種酸化物、窒化物、または酸化窒化物等の無機化合物等も使用できる。
【0137】
<陰極9>
電子注入層8上には陰極9が設けられている。
陽極を通過した発光のみが取り出される構成の有機EL素子の場合、前述したように陰極は任意の導電性材料から形成することができる。望ましい陰極材料としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0138】
以上説明した本発明の一態様に係る有機EL素子100は、前述したように、発光層6、電子輸送層5、および電子注入層3からなる群より選ばれる1つ以上は、式(1)で表される縮合環化合物を含む。
式(1)で表される縮合環化合物は、従来のジベンゾ[g,p]クリセンを用いた場合と比較して、有機EL素子、特に燐光発光性の発光層、蛍光発光性の発光層、または電子輸送層に用いた場合、駆動電圧が低減された有機EL素子が得られる。従って、従来の有機EL素子におけるジベンゾ[g,p]クリセン化合物を、式(1)で表される縮合環化合物で置き換えることで、駆動電圧が低減された有機EL素子を提供できる。
また、式(1)で表される縮合環化合物は、ねじれた構造をしているため、式(11)で表されるような平面性の高い化合物と比較して、アモルファス性が高い。従って、式(1)で表される縮合環化合物は、長期的に安定なアモルファス膜を形成する観点から、長期の使用に耐え得る有機EL素子を提供できる。
【0139】
式(1)で表される縮合環化合物は、有機EL素子用材料、例えば、発光層材料、電子輸送材料、電子注入材料として使用できる。式(1)で表される縮合環化合物を用いた有機EL素子は、駆動電圧を低減することができる。さらに、式(1)で表される縮合環化合物は、有機EL素子への使用に限られず、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の有機光導電材料への分野にも使用できる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。なお、用いた分析方法および測定方法は以下のとおりである。
【0141】
[材料純度測定(HPLC分析)]
測定装置:東ソー社製 マルチステーションLC-8020(製品名)
測定条件:カラム Inertsil ODS-3V(4.6mmΦ×250mm)
検出器 UV検出(波長 254nm)、
溶離液 メタノール/テトラヒドロフラン=9/1(v/v比)
[NMR測定]
NMR測定は、JEOL JNM-ECA-600(日本電子社製、製品名)を用いて行った。
【0142】
[質量分析]
質量分析装置:日立製作所社製 M-80B(製品名)
測定方法:FD-MS分析
[単結晶X線構造解析]
単結晶X線構造解析は、微結晶用高輝度X線構造解析装置 XtaLAB P200 MM007HF-N(リガク社製、製品名)を用いて行った。
【0143】
[ガラス転移温度分析]
ガラス転移温度の測定は、DSC7020(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて行った。上記DSCの測定条件は以下のとおりである。なお、測定は、窒素雰囲気下(流量50ml/min)にて行った。また、ファーストヒーティング、ファーストクーリング、セカンドヒーティングの順に行い、セカンドヒーティングの際のガラス転移温度を試料のガラス転移温度とした。
試料量 :5~10mg
測定条件:
<ファーストヒーティング>
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:30℃~400℃
<ファーストクーリング>
ドライアイスによる急冷
<セカンドヒーティング>
昇温速度:5℃/min
測定温度範囲:30℃~350℃
【0144】
[有機EL素子の発光特性]
測定装置:トプコンテクノハウス社製LUMINANCEMETER(BM-9)
【0145】
[合成例-1](3-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジンの合成)
【化13】
【0146】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に1-ブロモ-2-エチニルベンゼン 1.99g(11.0mmol)、3-ヨードピリジン 2.05g(10.0mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 211mg(0.30mmol)、ヨウ化銅 114mg(0.60mmol)、テトラヒドロフラン 50mL、およびトリエチルアミン 50mLを加え、室温で2時間撹拌した。その後、100mLの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて撹拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1,v/v)により、3-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジンの淡黄色液体を2.40g(9.30mmol)単離した(収率93%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);8.79(dd,1H),8.55(dd,1H),7.84(dt,1H),7.61(dd,1H),7.55(dd,1H),7.29(td,1H),7.28(td,1H),7.20(td,1H)
【0147】
[合成例-2](4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジンの合成)
【化14】
【0148】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に1-ブロモ-2-エチニルベンゼン 1.80g(9.90mmol)、4-ヨードピリジン 1.85g(9.00mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 190mg(0.27mmol)、ヨウ化銅 83.0mg(0.43mmol)、テトラヒドロフラン 45mL、およびトリエチルアミン 45mLを加え、室温で2時間撹拌した。その後、100mLの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて撹拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1,v/v)により4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジンの茶色液体を2.33g(9.00mmol)単離した(収率>99%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);8.60(dd,2H),7.62(dd,1H),7.56(dd,1H),7.41(dd,2H),7.31(td,1H),7.22(td,1H)
【0149】
[実施例-1](化合物(1Ba-1)の合成)
【化15】
【0150】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に3-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジン 2.27g(8.80mmol)、2-ヨードビフェニル 2.24g(8.00mmol)、酢酸パラジウム 358.4mg(1.60mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 857mg(2.33mmol)、酢酸カリウム 2.35g(24.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 80mLを加え、130℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、50mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、80mLの純水を添加し攪拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィーにより黄色の粗精製物を分取した(ヘキサン:酢酸エチル=3:1,v/v)。得られた粗精製物を再結晶(熱エタノール)することにより、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリンの無色粉末を1.22g(3.72mmol)単離した(収率46.5%、HPLC純度99.91%)。化合物(1Ba-1)の昇華温度は、240℃であり、昇華品の化合物(1Ba-1)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.96(s,1H),8.79(d,1H),8.75-8.70(m,4H),8.68(d,1H),8.64(dd,1H),8.46(d,1H),7.76-7.67(m,5H),7.65(td,1H)
【0151】
[実施例-2](化合物(1Ba-7)の合成)
【化16】
【0152】
窒素気流下、100mLの二口ナスフラスコ中に5-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-2-(4-クロロフェニル)ピリジン 369mg(1.00mmol)、2-ヨードビフェニル 281mg(1.00mmol)、酢酸パラジウム 12.3mg(0.05mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 37.9mg(0.10mmol)、酢酸カリウム 296mg(3.00mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 10mLを加え、150℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、15mLの純水を添加し攪拌した。析出した固体をろ過で回収し、ヘキサンおよび酢酸エチルで洗浄することで、化合物(1Ba-7)の粉末を153mg(0.35mmоl)単離した(収率35%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.05(s,1H),8.89(s,1H),8.86-8.68(m,6H),8.29(t,1H),8.16(dt,1H),7.80-7.65(m,6H),7.53-7.44(m,2H)
【0153】
[実施例-3](化合物(1Ba-18)の合成)
【化17】
#
【0154】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に5-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-2-メトキシピリジン 2.30g(8.00mmol)、2-ヨードビフェニル 2.24g(8.00mmol)、酢酸パラジウム 89.6mg(0.40mmol)、ジtert-ブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート 198.4mg(0.80mmol)、酢酸カリウム 2.35g(24.0mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド 80mLを加え、130℃で35時間撹拌した。室温まで冷却後、160mLの純粋を添加し攪拌した。その後、生じた沈殿を200mLの純水で洗浄しながら濾過にて回収した。得られた固体を100mLのジクロロメタンに溶かし、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:クロロホルム=1:1 ,v/v)、赤色の粗精製物を得た。得られた粗精製物を少量の酢酸エチルに溶解させ、エタノールで再沈殿させた。生じた沈殿をエタノールで洗浄しながら濾過で回収し、2-メトキシベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの淡黄色粉末を828mg(2.30mmol)単離した(収率29%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.58(s,1),8.73(dd,1H),8.72(dd,1H),8.69-8.66(m,2H),8.64(dd,1H),8.60(dd,1H),7.84(s,1H),7.73-7.63(m,6H),4.15(s,3H)
【0155】
[実施例-4](化合物(1Ba-30)の合成)
【化18】
【0156】
100mLのナスフラスコ中に2-メトキシベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン 538.5mg(1.5mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物 14.3g(75mmol)、塩化リチウム 3.18g(75mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド 15mLを加え、120度で4時間撹拌した。室温まで冷却後、1.0M 水酸化ナトリウム水溶液 40mLを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をpH7.0付近になるまで添加した。生じた黄色沈殿を純粋で洗浄しながら、濾過にて回収し、減圧下で、水分を除去した。
窒素気流下、100mL二口ナスフラスコに、得られた黄色固体、ジクロロメタン 15mL、ピリジン 242μL(3.0mmol)を加え、室温で撹拌した。0度まで冷却後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物400μL(2.38mmol)を滴下しながら添加し、室温でさらに1時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 15mLを加え、15分撹拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:クロロホルム=1:1 ,v/v)、ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-2-イル トリフルオロメタンスルホナートの淡黄色固体を704.9mg(1.48mmol)単離した(収率98%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.75(s,1H),8.77-8.74(m,3H),8.67(t,2H),8.56(d,1H),8.31(s,1H),7.84-7.67(m,6H)
【0157】
[実施例-5](化合物(1Ba-39)の合成)
【化19】
窒素気流下、ネジ口試験管中にベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-2-イル トリフルオロメタンスルホナート47.7mg(100μmol)、4-シアノフェニルボロン酸 14.7mg(100μmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 11.5mg(10μmol)、炭酸カリウム 41.4mg(300μmmol)、トルエン 500μL、エタノール 300μL、および水 200μLを加え、密閉し,110℃で10時間撹拌した。室温まで冷却後、水 10mL、クロロホルム 20mLを加えた。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:クロロホルム=1:1 ,v/v)、4-(ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-2-イル)ベンゾニトリルの淡黄色固体を41.1mg(95.4μmol)単離した(収率95%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl
3);10.05(s,1H),8.92(s,1H),8.82-8.81(m,1H),8.79-8.77(m,1H),8.76(d,2H),8.71(dd,1H),8.66(dd,1H),8.39(d,2H),7.86-7.85(m,2H),7.81-7.67(m,6H)
【0158】
[実施例-6](化合物(1Ba-44)の合成)
【化20】
【0159】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に5-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-2-フェニルピリジン 2.34g(7.00mmol)、2-ヨードビフェニル 1.40g(5.00mmol)、酢酸パラジウム 313mg(1.40mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 750mg(2.04mmol)、酢酸カリウム 2.05g(21.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 70mLを加え、130℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、50mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、80mLの純水を添加し攪拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィーにより赤色の粗精製物を分取した(ヘキサン:酢酸エチル=10:1,v/v)。得られた粗精製物をもう一度カラムクロマトグラフィーにより精製した(100%クロロホルム)。得られた、黄色固体を再結晶(熱トルエン)することにより、2-フェニルベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの淡黄色粉末を928mg(2.29mmol)単離した(収率46%)。化合物(1Ba-44)の昇華温度は、260℃であり、昇華品の化合物(1Ba-44)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.05(s,1H),8.91(s,1H),8.85-8.83(m,1H),8.78-8.75(m,3H),8.71(ddd,2H),8.28(dd,2H),7.78-7.66(m,6H),7.59(t,2H),7.49(tt,1H)
【0160】
[実施例-7](化合物(1Ba-46)の合成)
【化21】
【0161】
窒素気流下、100mLの二口ナスフラスコ中に2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-5-((2-ブロモフェニル)エチニル)ピリジン 1.09g(2.66mmol)、2-ヨードビフェニル 0.75g(2.66mmol)、酢酸パラジウム 36.3mg(0.16mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 120mg(0.32mmol)、酢酸カリウム 788mg(7.99mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 30mLを加え、150℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、100mLの純水を添加し攪拌した。析出した固体をろ過で回収し、アセトンで再結晶することで、化合物(1Ba-46)の粉末を200mg(0.42mmоl)単離した(収率16%,HPLC純度99.4%)。化合物(1Ba-46)の昇華温度は、270℃であり、昇華品の化合物(1Ba-46)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(DMSO-d6);9.96(s,1H),9.41(s,1H),9.37-9.30(m,1H),8.93(d,2H),8.74-8.64(m,4H),8.50(d,1H),7.90-7.74(m,9H),7.69(t,1H),7.55(t,2H),7.44(t,1H)
【0162】
[実施例-8](化合物(1Ba-47)の合成)
【化22】
#
【0163】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-5-((2-ブロモフェニル)エチニル)ピリジン 2.58g(6.30mmol)、2-ヨードビフェニル 1.76g(6.30mmol)、酢酸パラジウム 141mg(0.63mmol)、ジtert-ブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート 312mg(1.26mmol)、酢酸カリウム 1.85g(18.9mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 63mLを加え、130℃で39時間撹拌した。室温まで冷却後、120mLの純水を添加し攪拌した。その後、生じた沈殿を100mLの純水で洗浄しながら濾過にて回収した。得られた固体を100mLのジクロロメタンに溶かし、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:クロロホルム=1:1 ,v/v)、淡黄色の粗精製物を得た。得られた粗精製物を極少量のトルエンに溶かし、ジエチルエーテルを加えて再沈殿させることにより、2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリンの白色粉末を1.14g(2.37mmol)単離した(収率37%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CD2Cl2);9.90(s,1H),8.74(dd,2H),8.68-8.64(m,3H),8.11(s,1H),8.03-8.00(m,2H),7.75-7.63(m,5H),7.59-7.53(m,4H),7.33(d,2H),7.28(t,2H),7.22(t,1H)
【0164】
[実施例-9](化合物(1Ba-83)の合成)
【化23】
窒素気流下、ネジ口試験管中にベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-2-イル トリフルオロメタンスルホナート 47.7mg(100μmol)、ジベンゾフラン-4-ボロン酸 21.2mg(100μmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 11.5mg(10μmol)、炭酸カリウム 41.4mg(300μmmol)、トルエン 500μL、エタノール 300μL、および水 200μLを加え、密閉し,100℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、水 10mL、およびクロロホルム 50mLを加えた。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(100%クロロホルム)、白色の固体を得た。得られた固体を少量のクロロホルムを添加したエタノールで洗浄することにより、2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの無色固体を40.1mg(81.0μmol)単離した(収率81%)。
化合物の同定は
1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl
3);10.14(s,1H),9.69(s,1H),8.97(dd,1H),8.81(dd,1H),8.78-8.74(m,4H),8.55(dd,1H),8.09-8.07(m,2H),7.85-7.80(m,3H),7.77-7.72(m、3H),7.69(td,1H),7.60-7.55(m,2H), 7.45(t,1H)
【0165】
[実施例-10](化合物(1Ba-151)の合成)
【化24】
窒素気流下、ネジ口試験管中にベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-2-イル トリフルオロメタンスルホナート 47.7mg(100μmol)、3-ピリジルボロン酸 12.3mg(100μmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 11.5mg(10μmol)、炭酸カリウム 41.4mg(300μmmol)、トルエン 500μL、エタノール 300μL、および水 200μLを加え、密閉し,100℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、水 10mL、およびクロロホルム 20mLを加えた。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(クロロホルム:メタノール=10:1 ,v/v)、淡黄色の固体を得た。得られた固体をエタノールで洗浄することにより、2-(ピリジン-3-イル)ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの白色固体を22.1mg(54.4μmol)単離した(収率54%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl
3);10.06(s,1H),9.48(s,1H),8.92(s,1H),8.83-8.81(m,1H),8.79-8.77(m,1H),8.76(d,2H),8.73-8.70(m,2H),8.68(d,1H),8.58(dt,1H),7.80-7.78(m,2H),7.77-7.66(m,3H),7.68(td,1H),7.51(ddd,1H)
【0166】
[実施例-11](化合物(1Bb-4)の合成)
【化25】
【0167】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に5-[(2-ブロモ-4-クロロフェニル)エチニル]-2-フェニルピリジン 2.38g(6.45mmol)、2-ヨードビフェニル 1.68g(6.00mmol)、酢酸パラジウム 67.2mg(0.30mmol)、ジtert-ブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート 148.8mg(0.60mmol)、酢酸カリウム 1.76g(18.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 60mLを加え、130℃で48時間撹拌した。室温まで冷却後、120mLの純水を添加し攪拌した。その後、生じた沈殿を100mLの純水で洗浄しながら濾過にて回収した。得られた固体を100mLのジクロロメタンに溶かし、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をジエチルエーテルで洗浄し、赤色の不純物を出来る限り除去した。得られた黄色の粗精製物をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:酢酸エチル=10:1 ,v/v)、15-クロロ-2-フェニルベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリンの淡黄色粉末を606mg(1.38mmol)単離した(収率23%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.04(s,1H),8.79(s,1H),8.76-8.74(m,3H),8.68(d,2H),8.59(dd,1H),8.28(dd,2H),7.77-7.66(m,5H),7.60(t,2H),7.50(t,1H)
【0168】
[実施例-12](化合物(1ba-1)の合成)
【化26】
【0169】
50mlのナスフラスコ中にベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン 329mg(1.0mmol)ジクロロメタン 10mLを加え、室温で5分撹拌した。3-クロロ過安息香酸(約30%水含む)を344 mg(1.4mmol相当)を少しずつ加え、室温でさらに一晩撹拌した。ジクロロメタン 30ml,飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液 20mLを加え10分間撹拌した後、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(クロロホルム:メタノール=10:1 ,v/v)、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン 3-オキシドの黄色固体を329.8mg(0.95mol)単離した(収率95%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.63(s,1H),8.74-8.71(m,3H),8.68(d,1H),8.58-8.46(m,4H),7.78-7.73(m,4H),7.71-7.67(m,2H)
【0170】
[合成例-3](ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン-4(3H)-オンの合成)
【化27】
【0171】
ネジ口試験管中に、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン 3-オキシド 34.5mg(100μmol)、および無水酢酸 1mLを加え、密閉したのち120℃で14時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 5mLを滴下し、室温で3時間撹拌した。生じた沈殿を濾過にて回収し、カラムクロマトグラフィーすることにより(クロロホルム:クメタノール=10:1 ,v/v)、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン-4(3H)-オンの淡黄色固体を26.1mg(75.6μmol)単離した(収率76%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);8.79(dd,1H),8.69(dd,1H),8.63(dd,1H),8.57(dd,1H),8.53(dd,1H),8.19(dd,1H),7.74-7.71(m,1H),7.70-7.66(m,2H),7.64-7.61(m,2H),7.56-7.53(m,1H),7.47(d,1H),7.45(d,1H);N-Hの1Hは観測されず
【0172】
[実施例-13](化合物(1Bc-30)の合成)
【化28】
【0173】
窒素気流下、10mLシュレンク管中に、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリン-4(3H)-オン 69mg(200μmol)、ジクロロメタン1mL、およびピリジン 32μL(398μmol)を加え、室温で撹拌した。0度まで冷却後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物40μL(243μmol)を滴下しながら添加し、室温でさらに1時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1mLを加え、15分撹拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーすることにより(ヘキサン:クロロホルム=1:1,v/v)、ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]イソキノリン-4-イル トリフルオロメタンスルホナートの黄色固体を81.8mg(171μmol)単離した(収率86%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);8.78(d,1H),8.74(d,1H),8.71(d,1H),8.67(d,1H),8.63(d,1H),8.57-8.55(m,2H),7.93(d,1H),7.81-7.73(m,3H),7.70(d,1H),7.68(d,1H),7.64(t,1H)
【0174】
[実施例-14](化合物(1Ca-1)の合成)
【化29】
【0175】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]ピリジン 2.27g(8.80mmol)、2-ヨードビフェニル 2.24g(8.00mmol)、酢酸パラジウム 358.4mg(1.60mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 857mg(2.32mmol)、酢酸カリウム 2.35g(24.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 80mLを加え、130℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、50mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、80mLの純水を添加し攪拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィーにより黄色の粗精製物を分取した(ヘキサン:酢酸エチル=3:1 ,v/v)。得られた粗精製物を再結晶(熱エタノール)することにより、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの無色粉末を1.31g(3.98mmol)単離した(収率49.8%、HPLC純度99.93%)。化合物(1Ca-1)の昇華温度は、250℃であり、昇華品の化合物(1Ca-1)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.03(s,1H),8.81(d,1H),8.76(d,1H),8.72-8.69(m,4H),8.65(d,1H),8.50(d,1H),7.76-7.63(m,6H)
【0176】
[参考例-1]
実施例-12において、触媒として用いた酢酸パラジウムとトリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレートの代わりに、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(COD)2)を用いた以外は、実施例-12と同じ方法で反応させた。しかし、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの生成は確認できなかった。
【0177】
[実施例-14-2~6、参考例2~7]
実施例-14において、配位子として用いたトリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(PCy3・HBF4)の代わりに、順に、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(PtBu3・HBPh4)、ジターシャリーブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(PtBu2Me・HBF4)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン(DPCYE)、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド(IPR・HCl)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、3,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)チオフェン(DCYPT)、1,10-フェナントロリン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(Xphos)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos)を用いたか、あるいは配位子を用いなかった以外は、実施例-14と同じ方法で実施し、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの生成を1H-NMR収率で確認した。結果を表1に示す。
【0178】
【0179】
[実施例-14-7~10]
実施例-14において、塩基として用いた酢酸カリウム(KOAc)の代わりに、それぞれ、順に、ジメチルアセトアミド(DMAc)、炭酸カリウム(K2CO3)、リン酸カリウム(K3PO4)、ピバル酸セシウム(CsOPiV)を用いた以外は、実施例-14と同じ方法で実施し、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの生成を1H-NMR収率で確認した。結果を表2に示す。
【0180】
【0181】
[実施例-14-11~12、参考例8~11]
実施例-14において、溶媒として用いたN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、それぞれ、順に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、トルエン、1,2-ジクロロエタン(ClCH2CH2Cl)を用いた以外は、実施例-14と同じ方法で実施し、ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-f]イソキノリンの生成を1H-NMR収率で確認した。結果を表3に示す。
【0182】
【0183】
[実施例-15](化合物(1Ea-1)の合成)
【化30】
【0184】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に5-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-ピリミジン 1.00g(3.86mmol)、2-ヨードビフェニル 777mg(2.78mmol)、酢酸パラジウム 173mg(0.77mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 413mg(1.12mmol)、酢酸カリウム 1.13g(11.6mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 40mLを加え、130℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、50mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、80mLの純水を添加し攪拌した。次いで、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物からカラムクロマトグラフィーにより赤色の粗精製物を分取した(クロロホルム:メタノール=10:1,v/v)。得られた、黄色固体を再結晶(熱トルエン)することにより、ベンゾ[h]フェナントロ[9,10-f]キナゾリンの無色粉末を671mg(2.03mmol)単離した(収率73%)。化合物(1Ea-1)の昇華温度は、250℃であり、昇華品の化合物(1Ea-1)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.05(s,1H),9.48(s,1H),9.40(dd,1H),8.78-8.75(m,4H),8.52(dd,1H),7.87(ddd,1H),7.82(ddd,1H),7.78-7.72(m,3H),7.69(ddd,1H)
【0185】
[参考例-16](ベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノキサリンの合成)
【化31】
【0186】
窒素気流下、100mLのヤングシュレンク中に、9-ヨード-10-(2-ヨードフェニル)フェナントレン 2.60g(5.13mmol)、ピラジン 41.0g(51.3mmol)、およびカリウムtert-ブトキシド 1.48g(12.8mmol)を加え、120℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、トルエン20mLを添加し撹拌した。不要物を濾過した後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより橙色の粗精製物を分取した(ヘキサン:クロロホルム=1:1 (v/v))。得られた粗精製物を再結晶(トルエン/エタノール)することによりベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノキサリンの黄色結晶を380mg(1.16mmol)単離した(収率22%、HPLC純度99.79%)。
【0187】
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.92-9.90(m,1H),9.31-9.29(m,1H),9.04(d,1H),8.93(d,1H),8.74-8.70(m,4H),7.79-7.70(m,5H),7.63(ddd,1H)
【0188】
[実施例-17](化合物(1Ja-1)の合成)
【化32】
【0189】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に3-[(1-ブロモナフタレン-2-イル)エチニル]-ピリジン 2.46g(8.00mmol)、2-ヨードビフェニル 2.24g(8.00mmol)、酢酸パラジウム 358mg(1.60mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 857mg(2.33mmol)、酢酸カリウム 2.35g(24.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 80mLを加え、130℃で18時間撹拌した。室温まで冷却後、80mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、150mLの純水を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物から、カラムクロマトグラフィーにより粗精製物を分取した(クロロホルム:メタノール=50:1 ,v/v)。得られた、茶色の固体である粗精製物を再結晶(トルエン)することにより、ナフト[1,2-f]フェナントロ[9,10-h]イソキノリンの淡黄色粉末を958mg(2.52mmol)単離した(収率32%、HPLC純度99.63%)。化合物(1Ja-1)の昇華温度は、260℃であり、昇華品の化合物(1Ja-1)は粉末状であることを確認した。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.05(s,1H),9.12(d,1H),8.83-8.79(m,3H),8.76-8.73(m,3H),8.70-8.69(m,1H),8.14(d,1H),8.07(d,1H),7.78-7.68(m,6H)
【0190】
[実施例-18](化合物(2Ba-1)の合成)
【化33】
【0191】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に3-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-キノリン 2.16g(7.01mmol)、2-ヨードビフェニル 1.96g(7.00mmol)、酢酸パラジウム 313mg(1.40mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 750mg(2.04mmol)、酢酸カリウム 2.06g(21.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 70mLを加え、130℃で18時間撹拌した。室温まで冷却後、70mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、150mLの純水を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物から、カラムクロマトグラフィーにより粗精製物を分取した(クロロホルム:メタノール=10:1 ,v/v)。得られた、茶色固体の祖精製物を再結晶(熱トルエン)することにより、ベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジンの無色粉末を1.47g(3.89mmol)単離した(収率55%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.21(s,1H),9.10(d,1H),9.04(dd,1H),8.81(dd,1H),8.75-8.72(m,3H),8.68(dd,1H),8.32(dd,1H),7.84(ddd,1H),7.78-7.69(m,7H)
【0192】
[実施例-19](化合物(2Ba-7)の合成)
【化34】
【0193】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 6.07g(16.0mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 356mg(0.80mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 548mg(1.60mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 3.86g(40.0mmol)、3-クロロヨードベンゼン 4.62g(19.2mmol)、およびトルエン 160mLを加え、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサン 160mLを加えて撹拌した。析出物をろ過で回収し、純水とエタノールで洗浄することにより、化合物(2Ba-7)の薄黄色粉末を6.69g(13.77mmol)単離した(収率85.4%、HPLC純度95.3%)。
化合物の同定は1HNMR測定により行った。
1H-NMR(DMSO-d6);10.03(s,1H),9.12(dd,1H),9.06(dd,1H),8.93(d,2H),8.80(d,1H),8.75-8.69(m,2H),7.95-7.80(m,9H),7.70(dt,1H),7.58-7.50(m,2H)
【0194】
[実施例-20](化合物(2Ba-8)の合成)
【化35】
【0195】
窒素気流下、1Lの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 10.02g(26.4mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 0.47g(1.06mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 0.73g(2.11mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 6.34g(66mmol)、4-クロロヨードベンゼン 7.60g(31.7mmol)、およびトルエン 260mLを加え、110℃で11時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサン 200mLを加えて撹拌した。析出物をろ過で回収し、再結晶(トルエン)により化合物(2Ba-8)の薄黄色粉末を5.57g(11.37mmol)単離した(収率43.0%、HPLC純度97.9%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(DMSO-d6);10.20(s,1H),9.11(dd,1H),9.04(dd,1H),8.83(d,1H),8.76-8.73(m,3H),8.70(dd,1H),7.81-7.69(m,10H),7.53-7.50(m,2H)
【0196】
[実施例-21](化合物(2Ba-39)の合成)
【化36】
【0197】
窒素気流下、50mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 190.0mg(0.50mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 6.6mg(0.015mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 10.2mg(0.03mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 120mg(1.25mmol)、4-ブロモベンゾニトリル 109.2mg(0.6mmol)、およびトルエン 5mLを加え、密閉し、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサン 5mLを加えて撹拌した。析出物をろ過で回収し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄後の粉末をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により化合物(2Ba-39)の黄色粉末を8.8mg単離した(収率3.6%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.22(s,1H),9.11(d,1H),9.05(d,1H),8.82(dd,1H),8.78-8.72(m,3H),8.70-8.68(m,1H),8.32(d,1H),7.93-7.59(m,11H)
【0198】
[実施例-22](化合物(2Ba-41)の合成)
【化37】
【0199】
窒素気流下、100mLの二口ナスフラスコ中に化合物(2Ba-8) 1.72g(3.50mmol)、4-シアノフェニルボロン酸 0.57g(3.85mmol)、酢酸パラジウム 16mg(0.07mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(Xphos) 67.6mg(0.14mmol)、テトラヒドロフラン 35mL、および濃度2Mの炭酸カリウム水溶液 12mLを加え、70℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、ヘキサン50mLを加えて撹拌し、析出した固体をろ過で回収した。この固体を再結晶(トルエン)することで、化合物(2Ba-41)の黄色粉末を1.41g(2.53mmol)単離した(収率72.5%、HPLC純度99.7%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.23(s,1H),9.13(dd,1H),9.06(dd,1H),8.83(dd,1H),8.77-8.72(m,3H),8.70(dd,1H),7.94-7.69(m,16H)
【0200】
[実施例-23](化合物(2Ba-44)の合成)
【化38】
【0201】
窒素気流下、乾燥した試験管中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 37.9mg(0.1mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 1.32mg(0.003mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 2.05mg(0.006mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 24mg(0.25mmol)、ブロモベンゼン15.7mg、およびトルエン 0.5mLを加え、密閉し、95℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、4mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、減圧下で濃縮した。濃縮物からカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により11-フェニルベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジンの白色固体を24.8mg(0.055mmol)単離した(収率55%)。
化合物の同定は
1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CD
2Cl
2);10.11(s,1H),9.10(dd,1H),9.06(dd,1H),8.81(dd,1H),8.77-8.74(m,3H),8.70(dd,1H),7.86-7.70(m,10H),7.53(t,2H),7.45(t,1H)
[実施例-24](化合物(2Ba-45)の合成)
【化39】
【0202】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 3.04g(8.00mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 107mg(0.24mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 164mg(0.48mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 1.94g(20.0mmol)、4-ヨードビフェニル 2.24g(8.00mmol)、およびトルエン 80mLを加え、密閉し、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサン 100mLを加えて撹拌した。析出物をろ過で回収し、再結晶(トルエン)により化合物(2Ba-45)の薄黄色粉末を1.68g(3.16mmol)単離した(収率39.5%、HPLC純度98.1%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.24(s,1H),9.12(d,1H),9.06(d,1H),8.83(dd,1H),8.78-8.71(m,4H),7.91-7.88(m,3),7.83(d,1H),7.80-7.68(m,10H),7.51-7.46(m,2H),7.37(tt,1H)
【0203】
[実施例-25](化合物(2Ba-46)の合成)
【化40】
【0204】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 3.04g(8.00mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 108mg(0.24mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 165mg(0.48mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 1.93g(20.0mmol)、3-ヨードビフェニル 2.25g(8.00mmol)、およびトルエン 80mLを加え、密閉し、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサン 80mLを加えて撹拌した。析出物をろ過で回収し、再結晶(トルエン)により化合物(2Ba-46)の薄黄色粉末を1.62g(3.05mmol)単離した(収率38.1%、HPLC純度99.1%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.21(s,1H),9.11(dd,1H),9.07(dd,1H),8.82(dd,1H),8.77-8.70(m,4H),7.99(t,1H),7.89(dd,1H),7.83-7.68(m,11H),7.63(t,1H),7.46(t,2H),7.35(tt,1H)
【0205】
[実施例-26](化合物(2Ba-59)の合成)
【化41】
【0206】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 1.90g(5.00mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 222mg(0.50mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 341mg(1.00mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 1.20g(12.5mmol)、2-ヨードトリフェニレン 1.77g(5.00mmol)、およびトルエン 50mLを加え、110℃で13時間撹拌した。室温まで冷却後析出した固体をろ過で回収した。回収した固体を再結晶(о-キシレン/ヘキサン)することにより、化合物(2Ba-59)の黄色粉末を1.75g(2.89mmol)単離した(収率57.9%、HPLC純度99.0%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.26(s,1H),9.18(dd,1H),9.14-9.10(m,1H),9.05(d,1H),8.86-8.83(m,2H),8.80-8.70(m,8H),8.16(dd,1H),8.05(dd,1H),7.90(t,1H),7.81-7.63(m,10H)
【0207】
[実施例-27](化合物(2Ba-161)の合成)
【化42】
【0208】
窒素気流下、100mLの二口ナスフラスコにベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 0.72g(1.90mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 25.7mg(0.057mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 39.7mg(0.114mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 0.46g(4.75mmol)、4-ブロモ-2,6-ジフェニルピリジン 0.59g(1.90mmol)、およびトルエン 19mLを加え、110℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後析出した固体をろ過で回収した。回収した固体を再結晶(トルエン)することにより、化合物(2Ba-161)の薄黄色粉末を0.65g(1.07mmol)単離した(収率55.8%、HPLC純度99.8%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.23(s,1H),9.20(dd,1H),9.07(dd,1H),8.83(dd,1H),8.77-8.68(m,4H),8.26-8.23(m,4H),8.11(s,2H),7.95(dd,1H),7.87(t,1H),7.81-7.68(m,6H),7.51(t,4H),7.43(tt,2H)
【0209】
[実施例-28](化合物(2Ba-162)の合成)
【化43】
【0210】
窒素気流下、50mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 190mg(0.50mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 6.6mg(0.015mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 10.3mg(0.03mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 121mg(1.25mmol)、4-(4-ブロモフェニル)-2,6-ジフェニルピリジン 233mg(0.60mmol)、およびトルエン 5mLを加え、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後析出した固体をろ過で回収した。回収した固体を再結晶(о-キシレン/ヘキサン)することにより、化合物(2Ba-162)を含む粉末を353mg得た。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.26(s,1H),9.14(d,1H),9.07(dd,1H),8.83(d,1H),8.78-8.71(m,4H),8.24(d,4H),8.02(s,2H),7.99-7.68(m,12H),7.55(t,4H),7.47(td,2H)
【0211】
[実施例-29](化合物(2Ba-163)の合成)
【化44】
【0212】
窒素気流下、50mLの二口ナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 190mg(0.50mmol)、酢酸ロジウム(II)二量体 6.6mg(0.015mmol)、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド 10.3mg(0.03mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド 121mg(1.25mmol)、4-(3-ブロモフェニル)-2,6-ジフェニルピリジン 233mg(0.60mmol)、およびトルエン 5mLを加え、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後析出した固体をろ過で回収した。回収した固体を再結晶(о-キシレン/ヘキサン)することにより、化合物(2Ba-163)を含む粉末を384mg得た。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.23(s,1H),9.15(dd,1H),9.07(dd,1H),8.84(d,1H),8.78-8.69(m,4H),8.21(dd,4H),8.16(t,1H),8.02(s,2H),7.92(td,2H),7.87-7.83(m,2H),7.80-7.66(m,7H),7.50(td,4H),7.43(tt,2H)
【0213】
[実施例-30](化合物(2ba-1)の合成)
【化45】
【0214】
窒素気流下、1Lのナスフラスコ中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナントリジン 19.0g(50.0mmol)、純度77%以下のメタクロロ過安息香酸 17.3g、およびクロロホルム 500mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層へチオ硫酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物をアセトンで洗浄することにより、化合物(2ba-1)の黄色粉末を18.2g(46.1mmol)を単離した(収率92.1%、HPLC純度99.4%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.92(s,1H),9.11(dd,1H),9.06(dd,1H),8.88-8.86(m,1H),8.78-8.65(m,4H),8.61-8.59(m,1H),7.92-7.84(m,2H),7.78-7.68(m,6H)
【0215】
[実施例-31](化合物(2ba-44)の合成)
【化46】
【0216】
窒素気流下、1Lのナスフラスコ中に化合物(2Ba-44) 10.9g(24.0mmol)、純度77%以下のメタクロロ過安息香酸 8.30g、およびクロロホルム 240mLを加え、室温で3日間撹拌した。反応後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層へチオ硫酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物をアセトンで洗浄することにより、化合物(2ba-44)を含む粉末を8.0G得た。得られた粉末をそのまま次の反応に使用した。
【0217】
[実施例-32](化合物(2bb-14)の合成)
【化47】
【0218】
窒素気流下、シュレンク管中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナンスロリジン 10-オキシド 39.5mg(100μmol)、およびテトラヒドロフラン1mLを加え、撹拌した。-78℃に冷却後、1.0Mイソプロピルマグネシウムクロリド テトラヒドロフラン溶液 170μL(170μmol)を滴下しながら加え、1時間撹拌した。室温に戻した後、さらに1時間撹拌した。ヨウ素 42.8mg(170μmol)を1mLのテトラヒドロフランに溶かし滴下し、1時間撹拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液2mLとクロロホルム5mLを加え、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣からカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により9-イソプロピルベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナンスロリジン 10-オキシドの無色粉末を34.5mg(78.8μmol)単離した(収率79%)。
化合物の同定は1H-NMR測定と質量分析(APCI)により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.02(dd,1H),8.92(d,1H),8.90-8.88(m,2H),8.81(dd,1H),8.72(dd,1H),8.60(d,1H),8.02(dd,1H),7.87(ddd,1H),7.82-7.77(m,2H),7.75-7.66(m,3H),7.63(ddd,1H),7.57(ddd,1H),3.85(sep,1H),1.84(d,3H),0.94(d,3H)
MS(APCI);m/z calc. for C32H24NO[M+H] 438.5 found;438.2
【0219】
[実施例-33](化合物(2bb-44)の合成)
【化48】
【0220】
窒素気流下、シュレンク管中にベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナンスロリジン 10-オキシド 39.5mg(100μmol)、およびテトラヒドロフラン1mLを加え、撹拌した。-78℃に冷却後、3.0Mフェニルマグネシウムブロミド テトラヒドロフラン溶液 57μL(171μmol)を滴下しながら加え、1時間撹拌した。室温に戻した後、さらに1時間撹拌した。ヨウ素 42.8mg(170μmol)を1mLのテトラヒドロフランに溶かし滴下し、室温で1時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム水溶液2mLとクロロホルム5mLを加え、水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣から分取薄層クロマトグラフィー(クロロホルム)により9-フェニルベンゾ[k]フェナントロ[9,10-i]フェナンスロリジン 10-オキシドの無色粉末を37.2mg(78.9μmol)単離した(収率79%)。
化合物の同定は1H-NMR測定と質量分析(APCI)により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.14(dd,1H),9.12(d,1H),8.93-8.92(m,1H),8.81-8.80(m,1H),8.78-8.76(m,1H),8.59-8.56(m,1H),8.23(d,1H),7.92-7.87(m,2H),7.78(d,1H),7.56-7.70(m,4H),7.27(t,1H),7.10(t,1H),6.96(t,1H);4Hはブロードニングにより観測されず
MS(APCI);m/z calc. for C35H22NO[M+H] 472.5 found;472.1
【0221】
[実施例-34](化合物(2Bb-4)の合成)
【化49】
【0222】
窒素気流下、1Lのナスフラスコ中に化合物(2ba-1) 18.2g(46.0mmol)、トルエン 300mL、およびN,N-ジメチルホルムアミド 150mLを加え、0℃に冷却した。次いで、塩化ホスホリル(POCl3) 18mLを加え、10分間撹拌した。反応後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物を酢酸エチルおよびヘキサンで洗浄することにより、化合物(2Bb-4)の黄色粉末を18.1G(43.7mmol)得た(収率95.1%、HPLC純度99.7%)。
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.08(d,1H),9.02(d,1H),8.83(d,1H),8.72(t,2H),8.59(d,1H),8.26(d,1H),8.07(d,1H),7.86(t,1),7.79-7.63(m,6H),7.58(
t,1H)
【0223】
[実施例-35](化合物(2Bc-4)の合成)
【化50】
【0224】
窒素気流下、1Lのナスフラスコ中に、実施例20で得た化合物(2ba-44)を含む粉末 7.12g、トルエン 140mL、およびN,N-ジメチルホルムアミド 70mLを加え、0℃に冷却した。次いで、塩化ホスホリル(POCl
3) 3mLを加え、10分間撹拌した。反応後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物を酢酸エチルおよびヘキサンで洗浄することにより、化合物(2Bc-4)を含む黄色粉末を5.11G得た。得られた粉末をそのまま次の反応に使用した。
[実施例-36](化合物(2Bb-44)の合成)
【化51】
【0225】
窒素気流下、50mLの二口ナスフラスコ中に、化合物(2Bb-4) 706mg(1.70mmol)、およびテトラヒドロフラン 17mLを加え、関東化学社製の1.1Mのフェニルリチウム、シクロヘキサン、ジエチルエーテル溶液 8.6mLを滴下し、室温で15分間撹拌した。反応後、純水 20mLを添加し、撹拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物を再結晶(トルエン/ヘキサン)することにより、化合物(2Bb-44)を426mg(0.93mmol)単離した(収率55.0%)。化合物(2Bb-44)の昇華温度は、250℃であり、昇華品の化合物(2Bb-44)は粉末状であることを確認した。
【0226】
化合物の同定は単結晶X線構造解析により行った。
X-ray crystal structure
【化52】
【0227】
Empirical formula;C35H21N
Formula weight;455.53
Temperature;293(2)K
Wavelength;0.71073 Å
Crystal system;monoclinic
Space group;P21/n
Unit cell dimensions;a=10.4468(6)Å,a=90°,b=10.9683(9)Å,b=92.890(6)°,c=19.4712(9)Å,g=90°
Volume;2228.2(2)Å3
Z;4
Density(calculated);1.358Mg/m3
Absorption coefficient;0.078mm-1
F(000);952
Crystal Size;0.1×0.1×0.1mm3
Theta range for data collection;2.09to25.00°
Refrections collected;14871
Independent reflections;3873[R(int)=0.1325]
parameters;325
Goodness-of-fit on F2;0.957
Final R indices[I>2sigma(I)];R1=0.0580,wR2=0.1321
R indices(all data);R1=0.1195,wR2=0.1550
【0228】
[実施例-37](化合物(2Fa-1)の合成)
【化53】
【0229】
窒素気流下、100mLの二口ナスフラスコ中に8-ブロモ-7-(フェニルエチニル)キノリン 1.49g(4.83mmol)、2-ヨードビフェニル 1.35g(4.83mmol)、酢酸パラジウム 54mg(0.24mmol)、ジtert-ブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート 119mg(0.48mmol)、酢酸カリウム 1.42g(14.5mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 48mLを加え、130℃で41時間撹拌した。室温まで冷却後、50mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、80mLの純水を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物からカラムクロマトグラフィーにより赤色の粗精製物を分取した(ヘキサン:クロロホルム=5:1 ,v/v)。得られた粗精製物をもう一度カラムクロマトグラフィーにより精製した(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)。得られた、黄色固体を再結晶(熱酢酸エチル)することにより、ベンゾ[11,12]クリセノ[5,6-h]キノリンの淡黄色粉末を407mg(1.07mmol)単離した(収率22%)。
【0230】
化合物の同定は1H-NMR測定と単結晶X線構造解析により行った。
1H-NMR(CDCl3);10.46(dd,1H),9.23(dd,1H),8.84(d,1H),8.76(dd,1H),8.74-8.72(m,3H),8.64(dd,1H),8.33(dd,1H),7.95(d,1H),7.80(ddd,1H),7.73-7.66(m,5H),7.58(dd,1H)
【0231】
X-ray crystal structure
【化54】
【0232】
Empirical formula;C29H17N
Formula weight;379.43
Temperature;123(2)K
Wavelength;0.71073 Å
Crystal system;Orthorhombic
Space group;Pbca
Unit cell dimensions;a=7.6965(2)Å,a=90°,b=18.3892(6)Å,b=90°,c=25.5080(8)Å,g=90°
Volume;3610.21(19)Å3
Z;8
Density(calculated);1.396Mg/m3
Absorption coefficient;0.081mm-1
F(000);1584
Crystal Size;0.100×0.100×0.050mm3
Theta range for data collection;2.355to24.999°
Index ranges;-9<=h<=9,-21<=k<=21,-30<=l<=29
Refrections collected;36884
Independent reflections;3177[R(int)=0.0349]
Completeness to theta=24.999°,99.80%
Refinement method; Full-matrix least-squares on F2
Data/restraints/parameters;3177/0/271
Goodness-of-fit on F2;1.061
Final R indices[I>2sigma(I)];R1=0.0329,wR2=0.0800
R indices(all data);R1=0.0398,wR2=0.0841
Extinction coefficient;n/a
Largest diff. peak and hole;0.157and-0.151e・Å-3
【0233】
[実施例-38](化合物(3Fa-1)の合成)
【化55】
【0234】
窒素気流下、200mLの二口ナスフラスコ中に4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-イソキノリン 1.78g(5.80mmol)、2-ヨードビフェニル 1.64g(5.80mmol)、酢酸パラジウム 260mg(1.16mmol)、トリシクロへキシルホスホニウムテトラフルオロボレート 621mg(1.68mmol)、酢酸カリウム 1.70g(17.4mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド 58mLを加え、130℃で18時間撹拌した。室温まで冷却後、60mLのジクロロメタンを加え希釈した。不溶物を濾過にて除去した後、100mLの純水を添加し攪拌した。水層と有機層を分液し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。濃縮物を再結晶(トルエン)することにより、ベンゾ[c]フェナントロ[9,10-a]フェナンスロリジンの無色粉末を300mg(0.79mmol)単離した(収率14%)。
【0235】
化合物の同定は1H-NMR測定と単結晶X線構造解析により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.53-9.52(m,2H),8.81(dd,2H),8.75(d,1H),8.62(d,1H),8.27(d,1H),8.13(d,1H),8.05(d,1H),7.78-7.70(m,4H),7.61(d,1H),7.58(d,1H),7.46(t,1H),7.31(t,1H)
【0236】
X-ray crystal structure
【化56】
【0237】
Empirical formula;C29H17N
Formula weight;379.43
Temperature;123(2)K
Wavelength;0.71073 Å
Crystal system;Monoclinic
Space group;P21/n
Unit cell dimensions;a=10.4701(3)Å,a=90°,b=8.8984(2)Å,b=99.531(3)°,c=19.6220(5)Å,g=90°
Volume;1802.89(8)Å3
Z;4
Density(calculated);1.398Mg/m3
Absorption coefficient;0.081mm-1
F(000);792
Crystal Size;0.100×0.100×0.100mm3
Theta range for data collection;2.519to25.000°
Index ranges;-12<=h<=12,-10<=k<=10,-23<=l<=23
Refrections collected;19052
Independent reflections;3183[R(int)=0.0286]
Completeness to theta=25.000°,99.80%
Refinement method; Full-matrix least-squares on F2
Data/restraints/parameters;3183/0/271
Goodness-of-fit on F2;1.049
Final R indices[I>2sigma(I)];R1=0.0321,wR2=0.0809
R indices(all data);R1=0.0382,wR2=0.0843
Extinction coefficient;n/a
Largest diff. peak and hole;0.146and-0.182e・Å-3
【0238】
[実施例-39](化合物(5Ba-1)の合成)
【化57】
【0239】
窒素気流下、50mLのシュレンクに、化合物(2Bb-4) 663mg(1.60mmol)、酢酸パラジウム 19mg(0.08mol)、Xphos 78mg(0.16mmol)、テトラヒドロフラン 15mL、および濃度2Mの炭酸カリウム水溶液 5mLを加え、70℃で24時間攪拌した。反応後、ヘキサン 20mLを添加し、撹拌した。析出した固体をろ過で回収し、再結晶(оーキシレン)することにより、化合物(5Ba-1)の黄色粉末403mg(1.07mmol)を単離した(収率66.7%、HPLC純度99.9%)
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.52(d,1H),9.45(d,1H),9.33(d,1H),9.26(d,1H),8.88(d,1H),8.55(t,2H),8.43(d,1H),7.95-7.81(m,7H)
【0240】
[実施例-40](化合物(5Ba-44)の合成)
【化58】
【0241】
窒素気流下、300mLの二口ナスフラスコ中に、実施例22で得た化合物(2Bc-4)を含む粉末 5.10g、酢酸パラジウム 116mg(0.52mol)、Xphos 496mg(1.04mmol)、テトラヒドロフラン 100mL、および濃度2Mの炭酸カリウム水溶液 30mLを加え、70℃で24時間攪拌した。反応後、室温まで放冷し、析出した固体をろ過で回収し、トルエンで洗浄することにより、化合物(5Ba-44)の黄色粉末を2.41g(5.31mmol)を単離した(HPLC純度99.2%)
化合物の同定は1H-NMR測定により行った。
1H-NMR(CDCl3);9.54(dd,1H),9.47(dd,1H),9.34(dd,1H),9.28(dd,1H),8.87(dd,1H),8.50(d,1H),8.28(d,1H),7.96-7.79(m,9H),7.58(t,2H),7.52-7.48(m,1H)
【0242】
[比較例-1]
式(X1)で表されるジベンゾ[g,p]クリセン(非特許文献1に開示された化合物)を合成した。化合物(X1)の昇華温度は、250℃であり、昇華品の化合物(X1)は粉末状であることを確認した。
【化59】
【0243】
[比較例-2]
式(X2)で表される4-(10-フェニル-9-フェナントレニル)ピリジン(Synlett 2015,26,p.1991-1996に開示された化合物)を合成した。化合物(X2)の昇華温度は、240℃であり、昇華品の化合物(X2)は粉末状であることを確認した。
【化60】
【0244】
[比較例-3]
式(X3)で表されるベンゾ[f]フェナントロ[9,10-h]イソキノキサリン(実施例5で記載した化合物)を合成した。化合物(X3)の昇華温度は、240℃であり、昇華品の化合物(X3)は粉末状であることを確認した。
【化61】
【0245】
【0246】
非特許文献1に記載されているジベンゾ[g,p]クリセン(X1)と比較すると、本発明の一態様にかかる縮合環化合物は、高いガラス転移温度を有していることがわかる。
【0247】
[成膜実施例-1]
ガラス基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄により表面処理を行った。洗浄後の前記ガラス基板を真空蒸着槽内に導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。抵抗加熱方式で、前記基板上に、化合物(1Ba-24)を0.15nm/秒の成膜速度で100nm成膜した。その後、上記成膜後のガラス基板を取り出し、窒素雰囲気化で保管した。24時間後、ガラス基板上の膜の状態を確認した。結果を表5に示す。
【0248】
[成膜実施例-2~4、成膜比較例-1~2、]
成膜実施例-1において、化合物(1Ba-24)の代わりに、順に、化合物(1Ca-1)、化合物(1Ja-1)、化合物(2B-1)、化合物(X2)、化合物(X3)を用いた以外は、成膜実施例-1と同じ方法で、それぞれ評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0249】
【0250】
表1からわかるように、実施例に係る縮合環化合物から成る蒸着膜は、アモルファス性が高く、長期の使用に耐え得る有機EL素子を提供できる。
【0251】
[素子実施例-1]
次に、実施例-1で得られた化合物(1Ba-1)を用いて、
図2に示す積層構成を有する有機EL素子を作製した。
図2は、本発明の一態様に係るEL素子の他の積層構成の例を示す概略断面図である。有機EL素子の作製に用いた化合物の構造式およびその略称は、以下のとおりである。
【0252】
【0253】
(基板1、陽極2の作製)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。次いで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄により表面処理を行った。
【0254】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。各有機材料および金属材料は抵抗加熱方式により成膜した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0255】
(正孔注入層3の作製)
昇華精製したHILを0.15nm/秒の速度で50nm成膜し、正孔注入層を作製した。
(電荷発生層4の作製)
昇華精製したHATを0.05nm/秒の速度で5nm成膜し、電荷発生層を作製した。
(第一正孔輸送層51の作製)
HTL-1を0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第一正孔輸送層を作製した。
【0256】
(第二正孔輸送層52の作製)
HTL-2を0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第二正孔輸送層(電子阻止層)を作製した。この第二正孔輸送層は、電子の流入を阻止する電子阻止層としても機能する層である。
(発光層6の作製)
EML-1およびEML-2を5:95(質量比)の割合で25nm成膜し、発光層を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0257】
(第一電子輸送層71の作製)
ETL-1を0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第一電子輸送層(正孔阻止層)を作製した。この第一電子輸送層は、正孔の流入を阻止する正孔阻止層としても機能する層である。
(第二電子輸送層72の作製)
化合物(1Ba-1)およびLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第二電子輸送層を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
(電子注入層8の作製)
Liqを0.01nm/秒の速度で1nm成膜し、電子注入層を作製した。
【0258】
(陰極9の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、陰極(陰極層)を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmの厚みで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は0.2nm/秒であった。
【0259】
以上により、
図2に示すような積層構成を有する発光面積4mm
2有機EL素子を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(Bruker社製DEKTAK)で測定した。
さらに、この素子を酸素濃度1ppm以下および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気のグローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0260】
上記のようにして作製した有機EL素子に直流電流を印加し、輝度計(TOPCON社製LUMINANCE METER BM-9)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cm2を流した時の電圧(V)、電流効率(cd/A)を測定した。得られた測定結果を表6に示す。なお、電圧、および電流効率は、後述の素子比較例-1における結果を基準値(100)とした相対値である。
【0261】
[素子実施例-2~6、素子比較例-1、2]
素子実施例-1において、化合物(1Ba-1)の代わりに、それぞれ、順に、化合物(1Ba-24)、(1Ba-44)、(1Ca-1)、(1Ea-1)、(1Ja-1)、(2Ba-1)、(2Ba-44)、(2Ba-45)、(2Ba-46)、(2Bc-44)、(5Ba-1)、化合物(X1)、化合物(X2)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機EL素子を作製し、それぞれ評価した。得られた測定結果を表6に示す。
【0262】
【符号の説明】
【0263】
1:基板、 2:陽極、 3:正孔注入層、 4:電荷発生層、 5:正孔輸送層、 6:発光層、 7:電子輸送層、 71:第一電子輸送層、 71:第二電子輸送層、 8:電子注入層、 9:陰極、 51:第一正孔輸送層、 52:第二正孔輸送層、 10、100:有機EL素子
【0264】
なお、2018年11月28日に出願された日本特許出願2018-222499号および2019年3月28日に出願された日本特許出願2018-064141号の明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。