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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】保持テーブル及び切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20250116BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20250116BHJP
   B25B 11/00 20060101ALI20250116BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 49/03 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20250116BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
B25B11/00 A
H01L21/78 N
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B49/03 Z
B24B49/12
B23Q3/06 304K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020214023
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099939
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】畑 亮
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161055(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159823(WO,A1)
【文献】特開2018-133432(JP,A)
【文献】特開2020-009926(JP,A)
【文献】実開平04-099829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06,41/06,49/03,49/12;
B23Q 3/06-3/08;
B25B 11/00;
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルが装着される切削装置であって、
該保持テーブルは、
被加工物を吸引保持する保持面を有する多孔質板と、
凹部を有し、該凹部に固定された該多孔質板を支持すると共に、吸引源に連通し該多孔質板の上面である該保持面へ吸引力を伝達するための流路を有する枠体と、を有し、
該多孔質板の上面には、該保持テーブルに関する所定の情報に変換可能なコードが設けられており、
該切削装置は、
スピンドルを有し、該スピンドルに装着される切削ブレードで該被加工物を切削するための切削ユニットと、
該コードを撮像の画像を取得可能なカメラユニットと、
該画像に含まれる該コードを読み取る読み取り部と、
該切削ユニットの基準高さ位置を決定するセットアップが行われた切削済領域の位置と、デコードされた場合に該保持テーブルの識別番号を含む該コードと、を関連付けて記憶するセットアップ制御部と、
を備えることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該セットアップ制御部は、記憶されているセットアップの履歴に基づいて、該保持テーブルのうちセットアップが行われていない未切削領域を特定し、該未切削領域においてセットアップを実行させることを特徴とする請求項に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を吸引保持する保持面を有する保持テーブル、及び、当該保持テーブルが装着される切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電子機器には、通常、デバイスチップが搭載される。デバイスチップを製造する際には、例えば、まず、円盤状のウェーハ(被加工物)の表面側に複数の分割予定ラインを格子状に設定し、複数の分割予定ラインで矩形状に区画された各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。
【0003】
そして、被加工物の裏面側を研削装置で研削して薄化した後、切削装置、レーザー加工装置等を用いて、この薄化後の被加工物を各分割予定ラインに沿って切断することで、被加工物を個々のデバイスチップに分割する。上述の研削装置、切削装置、レーザー加工装置等の加工装置は、加工時に被加工物を吸引保持するためのチャックテーブル(保持テーブル)を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
被加工物の直径には、5インチ(約125mm)、6インチ(約150mm)、8インチ(約200mm)、12インチ(約300mm)等の所定の規格で定められた複数の種類がある。それゆえ、加工する被加工物の直径に応じた適切な大きさの保持テーブルが、適宜、選択され、加工装置に装着される。
【0005】
現状、様々な製造会社により保持テーブルが製造されており、どの製造会社の保持テーブルも外観が非常に似ている。しかし、異なる製造会社で製造された保持テーブル間に、完全な互換性があるわけではない。
【0006】
それゆえ、例えば、一の製造会社で製造された保持テーブルが、他の製造会社で製造された加工装置に誤って装着された場合、既定の吸引力が得られなかったり、所定の加工安定性が得れなかったりする。従って、異なる製造会社の保持テーブルが誤って装着された状態で被加工物が加工された場合、加工品質が低下するという問題がある。
【0007】
更に、同一製造会社で製造された保持テーブルであっても、例えば、5インチ用の保持テーブルを装着すべきところ、6インチ用の保持テーブルを装着して被加工物を加工すると、加工装置が誤作動することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-69985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、誤った保持テーブルが加工装置に装着された状態で被加工物を加工することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、保持テーブルであって、被加工物を吸引保持する保持面を有する多孔質板と、凹部を有し、該凹部に固定された多孔質板を支持すると共に、吸引源に連通し該多孔質板の上面である該保持面へ吸引力を伝達するための流路を有する枠体と、を備え、該多孔質板の上面には、該保持テーブルに関する所定の情報に変換可能なコードが設けられている保持テーブルが提供される。
【0011】
好ましくは、該コードは、デコードされた場合に、該保持テーブルの製造会社名、該保持テーブルで保持される該被加工物の大きさ、該保持テーブルの型式番号、及び、該保持テーブルの識別番号の少なくともいずれかを示す。
【0012】
また、好ましくは、該多孔質板の該保持面には、製造会社を示すロゴ、該保持テーブルで保持される該被加工物の大きさ、該保持テーブルの型式番号、及び、該保持テーブルの識別番号の少なくともいずれかが更に設けられている。
【0013】
本発明の他の態様によれば、保持テーブルが装着される切削装置であって、該保持テーブルは、被加工物を吸引保持する保持面を有する多孔質板と、凹部を有し、該凹部に固定された該多孔質板を支持すると共に、吸引源に連通し該多孔質板の上面である該保持面へ吸引力を伝達するための流路を有する枠体と、を有し、該多孔質板の上面には、該保持テーブルに関する所定の情報に変換可能なコードが設けられており、該切削装置は、スピンドルを有し、該スピンドルに装着される切削ブレードで該被加工物を切削するための切削ユニットと、該コードを撮像の画像を取得可能なカメラユニットと、該画像に含まれる該コードを読み取る読み取り部と、該切削ユニットの基準高さ位置を決定するセットアップが行われた切削済領域の位置と、デコードされた場合に該保持テーブルの識別番号を含む該コードと、を関連付けて記憶するセットアップ制御部と、を備える切削装置が提供される。
【0015】
また、好ましくは、該セットアップ制御部は、記憶されているセットアップの履歴に基づいて、該保持テーブルのうちセットアップが行われていない未切削領域を特定し、該未切削領域においてセットアップを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る保持テーブルの保持面には、保持テーブルに関する所定の情報に変換可能なコードが設けられている。このコードを加工装置に設けられているカメラユニットで撮像し、加工装置に設けられているコンピュータで読み取れば、加工装置は、保持テーブルに関する情報を確認できる。それゆえ、誤った保持テーブルが加工装置に装着された状態で、被加工物を加工することを防止できる。
【0017】
例えば、デコードされた当該コードが保持テーブルの製造会社名を示す情報を示す場合、当該加工装置の製造会社名と一致しているか否かを加工装置が確認することで、既定の吸引力、所定の加工安定性を得ることができる。
【0018】
また、例えば、デコードされた当該コードが被加工物の大きさを示す場合、保持テーブルの大きさが、加工される被加工物の直径に対応しているか否かを加工装置が確認することで、加工装置の誤作動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】切削装置の斜視図である。
図2】被加工物を切削する様子を示す図である。
図3】チャックテーブルの上面図である。
図4】チャックテーブルの外周部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、切削装置2の斜視図である。なお、図1では、切削装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示す。また、X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(上下方向、高さ方向)は、互いに直交する方向である。
【0021】
切削装置2の前方(Y軸方向の一方)側には、操作パネル4が設けられている。オペレーターは、例えば、操作パネル4を介して所定の入力を行うことにより、切削装置2に対して切削条件等を設定できる。
【0022】
切削装置2の前方側の側面には、モニター6が設けられている。モニター(表示装置)6には、オペレーターに対して操作を案内する案内画面、後述するカメラユニット36によって撮像された画像等が表示される。
【0023】
なお、モニター6は、表示入力装置(例えば、タッチパネル)であってもよい。この場合、操作パネル4は省略される。切削装置2では、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハ(被加工物11)が切削される。
【0024】
被加工物11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン(ストリート)が設定されている。複数の分割予定ラインによって区画される矩形状の各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス(不図示)が形成されている。
【0025】
被加工物11の裏面11b側には、樹脂で形成された被加工物11よりも大径の粘着テープ(ダイシングテープ)13が貼り付けられる。被加工物11は、粘着テープ13の中央部に貼り付けられ、粘着テープ13の外周部には、金属製の環状のフレーム15の一面が貼り付けられる。
【0026】
被加工物11、粘着テープ13及びフレーム15は、被加工物ユニット17を構成する。被加工物11は、この被加工物ユニット17の形態で、搬送され、切削され、洗浄される。切削装置2は、前方側の角部に、矩形板状のカセットテーブル8を有する。
【0027】
カセットテーブル8上には、複数の被加工物ユニット17が収容されたカセット10が載置される。カセット10の高さは、カセットテーブル8の下方に設けられたエレベータ12により調整される。なお、図1では、エレベータ12の凡その位置を示す。
【0028】
カセットテーブル8の後方(Y軸方向の他方)には、第1の搬送ユニット14が設けられている。第1の搬送ユニット14は、カセット10から被加工物ユニット17を搬出したり、被加工物ユニット17をカセット10へ搬入したりする。
【0029】
第1の搬送ユニット14の移動経路の両脇には、被加工物ユニット17のX軸方向の位置を調整する一対のガイドレール16が設けられている。一対のガイドレール16の近傍には、第2の搬送ユニット18が設けられている。
【0030】
第2の搬送ユニット18は、上面視で略L字状のアームを有する。アームの一端側には、吸着機構が設けられており、アームの他端側には、X-Y平面内でアームを回転させる回転機構と、この回転機構を上下移動させる移動機構と、が設けられている。
【0031】
第2の搬送ユニット18は、フレーム15を吸着機構で吸着した状態で、搬入搬出領域に配置されたチャックテーブル(保持テーブル)20へ、被加工物ユニット17を搬送する。ここで、図2を参照して、チャックテーブル20について説明する。
【0032】
図2に示す様に、チャックテーブル20は、ステンレス鋼等で形成された円盤状の枠体22を有する。枠体22の上部には、円盤状の凹部22aが形成されている。凹部22aには、多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質板(保持部)24が固定されている。
【0033】
多孔質板24は、凹部22aに固定された状態で、枠体22に支持されている。多孔質板24の上面24aには気孔が露出しているが、多孔質板24の上面24aと、枠体22の外周部の上面22bとは、略面一の平坦面となっている。
【0034】
上面24aは、負圧により被加工物ユニット17(被加工物11)を吸引保持する保持面として機能し、上面22bは、被加工物ユニット17を支持する支持面として機能する。凹部22aの底部には、略同心円状に複数の環状の流路22cが形成されている。
【0035】
各流路22cは、枠体22を上面視した場合に十字状に設けられた接続流路(不図示)を介して互いに接続しており、更に、凹部22aの中央部に形成された流路22dに接続している。
【0036】
流路22dは、電磁弁26を介して、エジェクタ等の吸引源28に接続している。吸引源28を動作させて、電磁弁26を開状態とすると、流路22c、22dは吸引源28に連通し、多孔質板24には負圧が伝達され、上面24aには吸引力が生じる。
【0037】
上面24aには、チャックテーブル20に関する所定の情報に変換可能なコード24b(図3参照)が設けられている。図3は、チャックテーブル20の上面図である。本実施形態のコード24bは、二次元コードであるが、1次元コードであってもよい。
【0038】
二次元コードとしては、例えば、データマトリックス(Data Matrix)、QRコード(登録商標)、ベリコード(VeriCode)、マキシコード(MaxiCode)等のマトリックス式が用いられるが、スタック式が用いられてもよい。
【0039】
コード24bを、切削装置2のカメラユニット36(後述)で撮像し、切削装置2に設けられているコンピュータ等を用いて、所定の規格に従って読み取れば(即ち、デコードすれば)、切削装置2は、チャックテーブル20に関する情報を確認できる。
【0040】
コンピュータ等で読み取られたコード24bは、チャックテーブル20の製造会社名、チャックテーブル20で吸引保持される被加工物11の大きさ、チャックテーブル20の型式番号、及び、チャックテーブル20の識別番号の少なくともいずれかを含む。
【0041】
例えば、デコードされたコード24bがチャックテーブル20の製造会社名を示す場合、切削装置2は、その製造会社名が、切削装置2に予め登録されている切削装置2の製造会社名と一致しているか否かを確認する。
【0042】
一致している場合、チャックテーブル20において既定の吸引力が得られ、更に、所定の加工安定性が得られるので、チャックテーブル20の製造会社と、切削装置2の製造会社とが異なる場合に比べて、切削品質の低下を防止できる。
【0043】
また、例えば、デコードされたコード24bが、チャックテーブル20で使用すべき被加工物11の大きさ(例えば、直径)を示す場合、チャックテーブル20の大きさが、操作パネル4等を通じて入力された切削予定の被加工物11の直径に対応しているか否かを、切削装置2が確認する。これにより、切削装置2の誤作動を防止できる。
【0044】
なお、同一の製造会社であっても、例えば、切削装置2の改良等に伴い、切削装置2に装着可能なチャックテーブル20の型が制限されている場合がある。そこで、デコードされたコード24bが、チャックテーブル20の型式番号を示す場合、切削装置2に装着可能なチャックテーブル20であるか否かを切削装置2が確認する。これにより、切削品質の低下や、切削装置2の誤作動を防止できる。
【0045】
また、同一の型式番号のチャックテーブル20であっても、チャックテーブル20毎に個体差がある。それゆえ、デコードされたコード24bが、チャックテーブル20の識別番号(シリアル番号)を示す場合、切削装置2は、トレーサビリティ(Traceability)のために、チャックテーブル20を使用して製造された物(例えば、デバイスチップ)と紐付けた状態で、チャックテーブル20の識別番号を記憶する。
【0046】
上面24aには、コード24bに加えて、製造会社を示すロゴ24cが設けられている。図3に示すロゴ24cは、所定のマークと、英文字で表記されたDISCOと、で構成されているが、種々のマーク、模様、文字等で構成されてよい。ロゴ24cを設けることで、チャックテーブル20の製造会社名が、切削装置2の製造会社名と一致しているか否かを、オペレーターが目視で確認できる。
【0047】
上面24aには、コード24b及びロゴ24cに加えて、チャックテーブル20で保持される被加工物11の大きさを示すサイズ情報24dが更に設けられている。図3に示すサイズ情報24dは、文字及び数字から成り、Φ8及びinchを含む。
【0048】
図3のサイズ情報24dは、チャックテーブル20が、直径8インチ(約200mm)の被加工物11を保持するために使用すべきであることを示している。サイズ情報24dにより、チャックテーブル20の大きさが、切削される被加工物11の直径に対応しているか否かを、オペレーターが目視で確認できる。
【0049】
上面24aには、コード24b、ロゴ24c及びサイズ情報24dに加えて、チャックテーブル20の型式番号24e及び識別番号24fが更に設けられている。型式番号24e及び識別番号24fは、通常、英文字及び数字を含むが、英文字及び数字以外の文字、記号等を含んでもよい。
【0050】
型式番号24eは、切削装置2に装着可能なチャックテーブル20であるか否かを示す。それゆえ、オペレーターは、型式番号24eを介して、切削装置2に装着可能なチャックテーブル20であるか否かを容易に確認できる。また、識別番号24fは、例えば、チャックテーブル20を使用して製造された物(例えば、デバイスチップ)に対するトレーサビリティのために利用される。
【0051】
なお、コード24b、ロゴ24c、サイズ情報24d、型式番号24e及び識別番号24fは、例えば、上面24aに顔料インクで塗布することにより描かれるが、上面24aに対してレーザー刻印を施すことにより描かれてもよい。
【0052】
コード24b、ロゴ24c等を、上面22bに比べて十分に広い上面24aに適度な大きさで描くことで、カメラユニット36でコード24bを撮像しやすくなり、且つ、オペレーターの目視でロゴ24c等を確認しやすくなる。
【0053】
本実施形態では、ロゴ24c、サイズ情報24d、型式番号24e、識別番号24f等に加えて、コード24bが上面24aに設けられているので、仮に、オペレーターがロゴ24c等を見誤ったとしても、切削装置2がチャックテーブル20に関する所定の情報を確認できる。
【0054】
この様に、切削装置2と、オペレーターとが、共にチャックテーブル20に関する情報を確認することにより、どちらか一方のみが確認する場合に比べて、誤ったチャックテーブル20が切削装置2に装着された状態で被加工物11を切削することを、より確実に防止できる。
【0055】
枠体22の底部の略中央には、円柱状の凸部30(図2参照)が形成されている。この凸部30を、テーブル保持台32(図1参照)の上部に形成されている凹部(不図示)に係合させ、更に、枠体22の底部を、テーブル保持台32側へ吸引することで、チャックテーブル20は、切削装置2に装着される。
【0056】
図1に示す様に、テーブル保持台32の外周部には、フレーム15を上下方向にそれぞれ挟持する複数のクランプユニット32aが、円柱状のテーブル保持台32の周方向に沿って離散的に配置されている。
【0057】
テーブル保持台32の内部には、チャックテーブル20を所定の回転軸の周りに回転させるモーター等の回転機構(不図示)が設けられている。また、テーブル保持台32の下部には、テーブル保持台32をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式の加工送りユニット34が連結されている。
【0058】
なお、図1では、加工送りユニット34の概略位置が示されており、具体的な形状は図示されていない。チャックテーブル20の上方には、上面24aを撮像可能な態様で、カメラユニット36が設けられている。
【0059】
カメラユニット36は、光源と、所定の光学系と、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子と、を含む。例えば、カメラユニット36は、上面24aを撮像することで、コード24bを含む画像を取得する。また、例えば、カメラユニット36は、チャックテーブル20で吸引保持された被加工物11の画像を取得する。
【0060】
カメラユニット36に対してX軸方向の一方側には、切削ユニット38が設けられている。ここで、図2を参照し、切削ユニット38について説明する。切削ユニット38は、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル40を有する。
【0061】
スピンドル40の基端部には、サーボモーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル40の先端部には、円環状の切り刃を有する切削ブレード42が装着されている。回転駆動源を動作させると、切削ブレード42は高速で回転する。
【0062】
スピンドル40の一部は、スピンドルハウジング内に回転可能に収容されている。スピンドルハウジングには、ボールねじ式の切り込み送りユニット(不図示)が連結されている。切り込み送りユニットは、切削ユニット38をZ軸方向に沿って移動させる。
【0063】
切り込み送りユニットには、切り込み送りユニットをY軸方向に沿って移動させるためのボールねじ式の割り出し送りユニット(不図示)が連結されている。次に、切削ユニット38を用いた被加工物11の切削方法について説明する。
【0064】
被加工物11を切削する場合には、まず、1つの被加工物ユニット17をカセット10からチャックテーブル20へ搬送する。そして、チャックテーブル20で粘着テープ13を介して被加工物11を吸引保持すると共に、複数のクランプユニット32aでフレーム15を固定する。
【0065】
次いで、被加工物11の表面11a側をカメラユニット36で撮像し、撮像により取得した画像に基づいて被加工物11のアライメントを行い、切削ブレード42の切り刃を一の分割予定ラインの延長線上に配置する。
【0066】
そして、回転している切削ブレード42の下端を、被加工物11及び粘着テープ13の境界と、上面24aとの間に位置付けた状態で、切削水を供給しながらチャックテーブル20をX軸方向に加工送りする。
【0067】
これにより、一の分割予定ラインに沿って切削溝11cを形成する。次いで、切削ユニット38をY軸方向に割り出し送りし、一の分割予定ラインに対してY軸方向に隣接する他の分割予定ラインに沿って、同様に切削溝11cを形成する。
【0068】
図2は、被加工物11を切削する様子を示す図である。X軸方向に沿う全ての分割予定ラインに沿って被加工物11を切削した後、被加工物11をX-Y平面内で90度回転させ、同様に、切削溝11cを形成する。
【0069】
切削後の被加工物ユニット17は、第3の搬送ユニット44(図1参照)により、チャックテーブル20から、スピンナ洗浄ユニット46へ搬送される。スピンナ洗浄ユニット46では、被加工物11が、スピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0070】
スピン洗浄及びスピン乾燥後、被加工物ユニット17は、第2の搬送ユニット18、ガイドレール16、第1の搬送ユニット14等により、カセット10へ搬入される。この様な切削装置2の動作は、制御ユニット50により制御される。
【0071】
制御ユニット50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0072】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット50の機能が実現される。
【0073】
制御ユニット50は、画像に含まれるコード24bを読み取るための読み取り部52を含む。読み取り部52は、例えば、補助記憶装置に記憶されたプログラムで構成されており、コード24bをデコードする(即ち、読み取る)既知のプログラムを含む。
【0074】
なお、コード24bをデコードすることで、光学的文字認識(Optical Character Recognition:OCR)により文字等を含む画像から文字等をコンピュータが読み取る場合に比べて、高い読取信頼性を確保できる。
【0075】
読み取り部52がコード24bを読み取った結果、チャックテーブル20の製造会社名が、予め登録された切削装置2の製造会社と異なる場合、制御ユニット50は、モニター6や、ランプ、ブザー等の警報器(不図示)を通じて、オペレーターに注意喚起を促す。
【0076】
チャックテーブル20で吸引保持される被加工物11の大きさが誤っている場合や、チャックテーブル20の型式番号が、切削装置2に装着可能でない番号である場合も同様である。
【0077】
ところで、切削ユニット38で被加工物11を切削する前には、所謂セットアップが行われる。セットアップとは、切削ブレード42の下端が枠体22の上面22bに接触するときの切削ユニット38の高さ位置(基準高さ位置)を、切削装置2に登録する作業を意味する。
【0078】
セットアップでは、切削ブレード42を回転させながら切り込み送りユニットで切削ユニット38を所定の速度で下降させる。切削ブレード42の下端が上面22bに接触すると、切削ブレード42及び枠体22を電気導通経路として含む所定の回路において、電気的導通が検出される。
【0079】
電気的導通が検出されたタイミングにおける切削ユニット38の高さ位置を特定することで、切削ユニット38の基準高さ位置が決定される。セットアップでは、上面22b側が部分的に切削され、チャックテーブル20の径方向に沿う直線状の切削痕22e(図4参照)が形成される。
【0080】
制御ユニット50は、セットアップ制御部54を有する。セットアップ制御部54は、例えば、補助記憶装置に記憶されたプログラムで構成されており、切削装置2にセットアップを実行させる。
【0081】
1つのチャックテーブル20において、複数回のセットアップが行われることがある。図4は、複数回のセットアップが行われたチャックテーブル20の外周部の上面図である。
【0082】
しかし、切削痕22eが既に形成された箇所に再度セットアップを行うと、切削ブレード42の下端が上面22bよりも低い高さ位置で枠体22に接触し、基準高さ位置を正確に測定できないことがある。
【0083】
そこで、セットアップ制御部54は、コード24bと関連付けて、セットアップが行われた切削済領域22f図4参照)の位置を記憶する。例えば、セットアップ制御部54は、上面24aの中心に対する各切削痕22eの相対位置を記憶することで、セットアップの履歴を記憶する。
【0084】
セットアップ制御部54は、記憶されているセットアップの履歴に基づいて、枠体22の上面22bのうちセットアップが行われていない未切削領域22f図4参照)を特定する。例えば、時計回り方向に切削痕22eが順に形成される場合、未切削領域22fは、最も新しい切削痕22eから時計回り方向に所定距離だけ離れた矩形領域に設定される。
【0085】
この未切削領域22fにおいてセットアップを実行させることで、既に切削痕22eが形成された位置で再度セットアップを行うことを防止できる。それゆえ、より正確に基準高さ位置を決定できる。
【0086】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。切削装置2には、カメラユニット36とは別に、コード24bを読み取るためのリーダー(スキャナー)(不図示)が設けられてもよい。
【0087】
リーダーは、例えば、オペレーターが手に持つことができる携帯式であり、切削装置2の筐体の外側に設けられる。リーダーは、光源、所定の光学系、撮像素子等を有し、リーダーで撮像されたコード24bの画像は、制御ユニット50へ送信される。
【0088】
この場合、チャックテーブル20をテーブル保持台32に装着する前に、切削装置2がチャックテーブル20に関する所定の情報を確認できるので、誤ったチャックテーブル20をテーブル保持台32に装着することを事前に防止できる。
【0089】
この様に、チャックテーブル20の誤装着を未然に防止できれば、誤装着を修正する作業が不要になるので、切削装置2の稼働効率の低下を防止できる。なお、読み取り部52は、制御ユニット50に代えて、このリーダーに設けられてもよい。
【0090】
ところで、上述の実施形態では、加工装置として切削装置2を示したが、チャックテーブル20は、研削装置、レーザー加工装置、バイト切削装置、粘着テープ13の貼り替え装置、被加工物11の検査装置などの種々の加工装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0091】
2:切削装置、4:操作パネル、6:モニター、8:カセットテーブル、10:カセット
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11c:切削溝
12:エレベータ、14:第1の搬送ユニット、16:ガイドレール
13:粘着テープ、15:フレーム、17:被加工物ユニット
18:第2の搬送ユニット
20:チャックテーブル(保持テーブル)
22:枠体、22a:凹部、22b:上面、22c:流路、22d:流路
22e:切削痕、22f:切削済領域、22f:未切削領域
24:多孔質板(保持部)、24a:上面、24b:コード
24c:ロゴ、24d:サイズ情報、24e:型式番号、24f:識別番号
26:電磁弁、28:吸引源、30:凸部
32:テーブル保持台、32a:クランプユニット
34:加工送りユニット、36:カメラユニット
38:切削ユニット、40:スピンドル、42:切削ブレード
44:第3の搬送ユニット、46:スピンナ洗浄ユニット
50:制御ユニット、52:読み取り部、54:セットアップ制御部
図1
図2
図3
図4