(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】センサモジュール及び構造物
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G01L1/22 M
(21)【出願番号】P 2020008885
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-10-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/インフラ状態モニタリング用センサシステム開発/道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジメルカ
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和義
(72)【発明者】
【氏名】大東 良一
(72)【発明者】
【氏名】武田 勇司
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-036178(JP,B1)
【文献】特開2016-075675(JP,A)
【文献】特開2009-063532(JP,A)
【文献】特開平08-086696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26
G01L 5/00-5/28
G01N 27/00-27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域を有する絶縁性のシートと、
前記第1領域を除いた前記シート上に設けられた複数のセンサと、
を備え、
前記複数のセンサは、前記第1領域内の所定の位置を基準点とする互いに異なる第1方向及び第2方向を含む複数の方向に設けられ、
前記複数のセンサのうち、少なくとも2つのセンサは、それぞれ前記第1方向及び前記第2方向に前記基準点から実質的に等距離にあり、
前記少なくとも2つのセンサの最大強度を検出する方向は、前記基準点を中心とする任意の円の円周上の前記少なくとも2つのセンサが設けられた位置における接線の延長方向と平行である、センサモジュール。
【請求項2】
第1領域を有する絶縁性シートと、
前記第1領域を除いた前記シート上に設けられた複数のセンサと、
を備え、
前記複数のセンサは、前記第1領域における所定の位置を基準とする第1方向を除く方向に設けられ、
前記複数のセンサは、
前記
所定の位置を基準とする前記第1方向とは反対方向である第2方向に
おいて、
前記所定の位置を中心とする任意の円の円周上に位置する第1のセンサと、
前記円周上に位置する、前記第1のセンサとは異なる第2のセンサと、を含み、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの最大強度を検出する方向は、前記円周上の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサが設けられた位置における接線の延長方向と平行である、センサモジュール。
【請求項3】
前記シートは、前記第1方向に切り欠き部を備える、請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記複数のセンサの各々は、歪みを検出するセンサである、請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記複数のセンサは、前記シート上にパターニングされている、請求項1乃至4に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のセンサモジュールを備える構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物の性質に係る物理量を検知するセンサを備えるセンサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道、港湾、ダム、建築物等の社会インフラを構成する構造物は、適切な維持管理や補修が求められている。例えば、道路や鉄道等における橋梁、トンネル、ブロックなどの構造物は、外壁の剥落が発生すると事故の原因となるため、定期的な点検及び検査を行い、必要箇所の補修工事が適宜行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された亀裂検出装置によれば、配線の引き回しを複雑化させることなく、構造物における亀裂発生が検出される。しかしながら、亀裂が発生して進展していくと予想される方向に対してセンサの長手方向を一致させてセンサを配置しなければならず、亀裂の進展方向の予測できない場合、亀裂の検出精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示の目的の一つは、信頼性の高いセンサモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るセンサモジュールは、第1領域を有する絶縁性のシートと、前記第1領域を除いた前記シート上に設けられた複数のセンサと、を備え、前記複数のセンサは、前記第1領域内の所定の位置を基準とする何れの方向にも設けられ、前記複数のセンサのうち、少なくとも2つのセンサは、前記点から実質的に等距離にある。
【0007】
本開示の一実施形態に係るセンサモジュールは、第1領域を有する絶縁性シートと、前記第1領域を除いた前記シート上に設けられた複数のセンサと、を備え、前記複数のセンサは、前記第1領域における所定の位置を基準とする第1方向を除く方向に設けられ、前記点を基準とする前記第1方向とは反対方向である第2方向に、少なくとも1つのセンサが設けられる。
【0008】
前記複数のセンサの各々は、所定方向に延長されてもよく、前記複数のセンサの各々が最大強度を検出する方向は、前記所定方向から所定角度ずれていてもよい。
【0009】
前記複数のセンサの各々は、前記点を基準とする任意の円の円周に沿って設けられてもよい。
【0010】
前記複数のセンサのうちの所定センサが最大強度を検出する方向は、前記所定のセンサに対応する前記円周上の点における接線と平行であってもよい。
【0011】
前記シートは、前記第1方向に切り欠き部を備えてもよい。
【0012】
前記複数のセンサの各々は、歪みを検出するセンサであってもよい。
【0013】
前記複数のセンサは、前記シート上にパターニングされていてもよい。
【0014】
本開示の一実施形態に係る構造物は、前記何れかのセンサモジュールを備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、信頼性の高いセンサモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの概要図である。
【
図2】
図1に示したセンサモジュールの一部拡大図である。
【
図3】センサモジュールを説明するための概要図である。
【
図4】
図2に示したA-A線に沿った断面図の一例である。
【
図5A】
図2に示したA-A線に沿った断面図の他の一例である。
【
図5B】
図2に示したA-A線に沿った断面図のさらに他の一例である。
【
図5C】
図2に示したA-A線に沿った断面図のさらに他の一例である。
【
図6】外部回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】本開示の別の一実施形態に係るセンサモジュールの概要図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの変形例を示す概要図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの変形例を示す概要図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの変形例を示す概要図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなどを付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係るセンサモジュールについて、
図1~
図5を参照して説明する。
【0019】
図1は、本開示の第1実施形態に係るセンサモジュール100の概要図である。
図2は、センサモジュール100の一部拡大図である。
図3は、センサモジュールを説明するための概要図である。
図4は、
図2に示したA-A線の沿った断面図である。
【0020】
センサモジュール100は、シート101、複数のセンサ103、配線部105、接着層107を備える。
【0021】
シート101は、可撓性を有し、湾曲可能である。シート101は、絶縁性を有し、絶縁性フィルムであってもよい。シート101の材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
シート101には、第1領域109が設けられる。第1領域109は、基準点Cを中心とする半径dの円状であってもよい。この場合、基準点Cは、第1領域109の中心である。尚、第1領域109の形状は、円状に限定されるわけではなく、楕円状であってもよく、矩形状を含む多角形状であってもよい。第1領域109には、その厚み方向に開口が設けられてもよい。対象物に孔や欠け等の亀裂進展開始点になり得る領域10がある場合、センサモジュール100を対象物に取り付けて使用する際に、領域10と第1領域109の少なくとも一部とが重複するように、センサモジュール100を対象物に取り付けることが好ましい。また、シート101には、センサ103と配線113とを電気的に接続するためのビア115が設けられる。
【0023】
複数のセンサ103は、第1領域109を除き、第1領域109の周囲を取り囲むようにシート101の第1面101a上に設けられる。各センサ103は、対象物の性質に係る物理量を検出する。センサ103は、シート101上にスクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサ、スパッタ、めっきなどによってパターニングすることにより形成することができる。センサ103は、
図1に示すように、第1領域109における基準点C(中心C)を基準とする何れの方向にも設けられる。複数のセンサ103のうち、少なくとも2つのセンサ103は、基準点Cから実質的に等距離にある。
図3に示すように、複数のセンサ103は、第1領域109を除いて、基準点Cを基準とする所定の同心円R-1、R-2、R-3に沿っ
て設けられてもよい。即ち、複数のセンサ103は、基準点Cを基準とする任意の円の円周に沿って設けられてもよい。
【0024】
構造物に亀裂が発生する場合、亀裂は、亀裂進展開始点から亀裂進展開始点に対して遠ざかる方向に進展する場合が多く、その方向の予測は困難である。そのため、亀裂進展開始点になり得る領域10の周囲に基準点Cを基準とする同心円に沿って複数のセンサ103を設けることにより、対象物の領域10の周囲におけるあらゆる方向の物理的変化を検出することができる。領域10において亀裂進展開始点となり得る位置に基準点Cが重畳するように、シート101を構造物に設置してもよい。
【0025】
また、基準点Cを基準とする所定の同心円に沿っ
て設けられた所定のセンサ103は、該所定の同心円に隣接する別の同心円に沿っ
て設けられた互いに隣接するセンサ103同士の間に位置することが好ましい。
図3を参照すると、同心円R-2に沿っ
て設けられた所定のセンサ103は、同心円R-1又は同心円R-3に沿って設けられた2つ隣接するセンサ103の間の位置に設けられている。これにより、対象物の領域10の周囲におけるあらゆる方向の物理的変化をより確実に検出することができる。
【0026】
以下、センサ103について説明する。ここでは、一例として、センサ103が歪みセンサである場合を説明する。センサ103は、歪によって物性値が変わる歪受感材料からなる。歪受感材料としては、例えば、歪に対して抵抗値を変える導電性材料であってもよい。このような導電性材料としては、銅等の金属、コンスタンタン等の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等が挙げられる。センサ103は、ゲージ式センサ、ピエゾ式センサ、光ファイバセンサ等、歪を検出することができるセンサであれば、特に限定されない。センサ103によって、対象物における歪みや亀裂の発生等の該対象物の変化を検出することができる。
【0027】
センサ103の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、一例として、シート101の所定の場所を中心部201として、中心部201から少なくとも3方向以上の複数の放射方向に延長された複数の延伸部203を有するセンサ103を示している。
図1及び
図2に示すように、センサ103は、中心部201から16方向に延伸する16個の延伸部203を備えてもよい。本実施形態に示されたセンサ103の形状の詳細については、特開2018-013339号公報を参照されたい。尚、センサ103の形状は、
図1及び
図2に示したパターンに限定されるわけではなく、直線状、所定の曲率を有する曲線状、ミアンダ状であってもよい。
【0028】
複数のセンサ
103のうちの所定のセンサ
103が最大強度を検出する方向は、所定のセンサ
103が設けられた位置に対応する、基準点Cを中心とする円の円周上の点における接線と平行であることが好ましい。例えば、
図3に示すように、複数のセン
サ103のうち所定のセンサ
103が最大強度を検出する方向は、センサ
103が設けられた位置に対応している、基準点Cを中心とする円R-1の円周上の点における接
線の延長方向と平行であってもよい。このようなセンサ
103によれば、亀裂等の歪による変形が生じる対象物に、接着層107によってセンサ
103を固着した際に、対象物に生じる歪による変形が進展する方向に関係なく、当該変形を確実に検出することができる。
【0029】
センサ103は、少なくとも2個以上の電極111と電気的に接続する。本実施形態において、電極111は、シート101の第1面と該第1面101aとは反対側の第2面101bとを貫通するビア115を介して、シート101の第2面101bに設けられた配線113と電気的に接続されている。各センサ103によって検出された対象物の性質に係る物理量に応じた信号、ここでは、各センサ103の抵抗値は、電極111及びビア115を介して配線113に伝達される。本実施形態では、一例として、
図1及び
図2に示すように、センサ103は、等間隔を空けて4個の電極111と接続しているが、2個以上であれば特に限定されない。
【0030】
複数の配線113のうち何本かが集約され、配線部105を構成する。各センサ103の抵抗値は、配線部105を介して後述する外部回路13に伝達される。
【0031】
配線部105は、その端部に接続端子部106を備える。各センサ103の抵抗値は、接続端子部106からフレキシブル印刷回路基板(FPC)11を介して外部回路13に伝達される。
【0032】
接着層107は、シート101の第1面101a上に設けられる。接着層107は、例えば、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂を含んでもよい。また、接着層107は、潜在性の硬化剤、紫外線や電子線を照射することで塩基を発生する硬化触媒とメルカプト基を有する硬化剤、フェノール性水酸基を有する硬化剤を含んでもよい。つまり、接着層107は、空気に触れて経時的に硬化する層、水分によって硬化する層、光硬化性を有する層、常温で硬化する層、又は熱硬化性を有する層であってもよい。
【0033】
接着層107は、シート101とともに、湾曲可能である。接着層107の一方の面は、シート101の第1面101aに接する。接着層の107の他方の面は、対象物の表面に接着され、固定される。尚、対象物の表面に接着される前は、接着層107の他方の面には、剥離フィルムが取り付けられていてもよい。センサモジュール100を使用する際、使用者は、接着層107に取り付けられた剥離フィルムを剥がして、接着層107の他方の面を対象物に接着させて固定する。
【0034】
尚、センサ103と配線113との接続構造は、
図4に示した構造に限定されるわけではない。
図5A~
図5Cにおいて、
図4に示した接続構造とは異なる、センサ103と配線113との別の接続構造を示す。
図5A~
図5Cは、
図2に示したA-A線の沿った断面図の他の一例である。
【0035】
例えば、
図5Aに示すように、接着層107の一方の面が接するシート101の第1面101a側に配線113が設けられてもよく、配線113が設けられたシート101の第1面101aとは反対側の第2面101bにセンサ103及び電極111が設けられてもよい。センサ103及び電極111は、可撓性を有する保護フィルム117に覆われていてもよい。
【0036】
また、
図5B及び
図5Cに示すように、センサ130と配線113が直接接触してもよい。
図5Bでは、接着層107の一方の面が接するシート101の第1面101a側にセンサ103と、センサ103と直接接続される配線113が設けられている構造を示している。
図5Cは、接着層107の一方の面が接するシート101の第1面101aとは反対側の第2面101b側にセンサ103と、センサ103と直接接続される配線113が設けられている構造を示している。
【0037】
図6は、外部回路13の構成の一例を示すブロック図である。複数のセンサ103から配線部105を介して伝達された、各センサ103の抵抗値(対象物の性質に係る物理量に応じた信号)は、外部回路13に伝達される。外部回路13は、物理量検出回路501、及び位置特定回路503を備えてもよい。
【0038】
物理量検出回路部501は、複数のセンサ103の各々に対応する物理量検出回路を含む。物理量検出回路は、対応するセンサ103から伝達された、対象物の性質に係る物理量に応じた信号に基づいて、対象物の性質に係る物理量の変化を検出する。ここでは、物理量検出回路501は、対応するセンサ103の抵抗値に基づいて、該センサ103の抵抗値の変化を検出してもよい。
【0039】
位置特定回路503は、物理量検出回路501において検出された対象物の性質に係る物理量の変化に基づいて、対象物における物理量の変化が生じた位置を判別する。ここでは、位置特定回路503は、抵抗値の変化を検出したセンサ103の位置に基づいて、対象物における物理量の変化が生じた位置を特定する。位置特定回路503は、対象物における物理量の変化が生じた位置を、外部の表示用ディスプレイを備える位置表示装置(図示せず)に出力してもよい。例えば、位置特定回路503は、対象物における物理量の変化が生じた位置を、シート101上のX軸方向の位置情報、及びY軸方向の位置情報として出力してもよい。使用者は、位置表示装置に表示された位置情報に基づいて、対象物における物理量の変化が生じた位置、例えば、対象物における亀裂発生位置を確認することができる。
【0040】
以上に述べたように、本開示の第1実施形態に係るセンサモジュール100では、第1領域109における基準点Cを基準とする同心円に沿って複数のセンサ103が設けられる。これにより、対象物におけるあらゆる方向の物理的変化を検出することができる。
【0041】
このようなセンサモジュール100は、例えば、道路や鉄道等における橋梁、トンネル、ブロック等の構造物、航空機、船舶、車両、鉄道車両や、建築機械などに適用されるが、これらに限定されるわけではない。また、道路、港湾、ダム、建築物等の補修後にセンサモジュール100を適用し、補修完了部分の物理量を測定し、亀裂の再発を監視することもできる。
【0042】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係るセンサモジュールについて、
図7を参照して説明する。
【0043】
図7は、本開示の第2実施形態に係るセンサモジュール100Aの概要図である。センサモジュール100Aにおいて、
図1に示した本開示の第1実施形態に係るセンサモジュール100の構成と同一又は類似の構成については、
図7においても同一の参照番号を付与する。また、以下では、第1実施形態に係るセンサモジュール100とは異なる構成について詳細に説明し、重複する説明は省略する。
【0044】
センサモジュール100Aは、シート601、複数のセンサ103、配線部605、接着層(図示せず)を備える。本実施形態に係るセンサモジュール100Aは、シート601に切り欠き部603を有する点で第1実施形態に係るセンサモジュール100とは異なる。尚、
図7においては、センサモジュール100Aと接続するフレキシブル印刷回路基板(FPC)や外部回路は図示を省略している。
【0045】
シート600は、可撓性を有し、湾曲可能である。シート600の材料は、上述したセンサモジュール100のシート101の材料と同様である。シート601には、第1領域609が設けられる。第1領域609は、基準点Cを中心とする半径dの円状であってもよい。この場合、基準点Cは、第1領域609の中心である。第1領域609の形状は、円状に限定されるわけではない。第1領域609には、その厚み方向に開口が設けられてもよい。さらに、シート601には、基準点Cを基準とする所定の第1方向D1に切り欠き部603が設けられる。切り欠き部603は、第1領域609の開口に接続している。図示はしないが、シート601には、上述した第1実施形態と同様に、センサ103と配線部105とを電気的に接続するための電極111とビア115が設けられる。
【0046】
複数のセンサ103は、シート601の第1領域609及び切り欠き部603を除き、第1領域609の周囲を取り囲むようにシート601の第1面上に設けられる。本実施形態において、複数のセンサ103は、シート601において、第1方向D1に設けられた切り欠き部603を除く、他の方向に設けられる。言い換えると、基準点Cを基準とする第1方向D1とは反対方向である第2方向D2に、少なくとも1つのセンサ103が設けられる。複数のセンサ103は、第1領域609及び切り欠き部603を除いて、センサモジュール100のセンサ103と同様に、基準点Cを基準とする同心円に沿って設けられてもよい。各センサ103の構成は、第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態に係るセンサモジュール100Aの各センサ103において検出された、対象物の性質に係る物理量に応じた信号は、配線113及び配線部105を介して、図示しない外部回路に出力される。
【0048】
本実施形態のセンサモジュール100Aは、構造物に設けられたストップホールの監視に好適に用いられる。構造物に亀裂が発生した場合、亀裂が進展しないように、応急的に亀裂の先端にストップホール(孔)を設け、亀裂の先端への応力集中を緩和し、構造物における損傷部分の延命を図ることがある。しかしながら、この処置は恒久的処置ではない。そのため、時間が経過すると、ストップホールの疲労強度が低下し、ストップホールから新たな亀裂が発生する虞がある。そのため、ストップホール周辺の歪み等の物理的変化を検出し、ストップホールから発生する新たな亀裂の有無を監視する必要がある。
【0049】
センサモジュール100Aを構造物に設けられたストップホールの監視に適用する場合、
図7に示すように、構造物に発生した亀裂15にシート601の切り欠き部603の少なくとも一部が重畳し、亀裂15の先端に設けられたストップホール17に第1領域609の少なくとも一部が重畳するように、センサモジュール100Aを構造物に取り付けることが好ましい。
【0050】
シート601の切り欠き部603の少なくとも一部が亀裂15に重畳することにより、シート601は、構造物における亀裂15の周囲にかかる引張応力の影響を受けないため、構造物からシート601が剥がれることを防止することができる。また、ストップホール17に第1領域609の少なくとも一部が重畳することにより、第1領域609の周囲を取り囲むように設けられた複数のセンサ103によってストップホール17周辺の物理的変化を確実に検出する。そのため、ストップホール17から放射方向に進展する亀裂の発生を確実に検知することができる。
【0051】
本実施形態に係るセンサモジュール100Aは、例えば、道路や鉄道等における橋梁、トンネル、ブロック等の構造物、航空機、船舶、車両、鉄道車両や、建築機械などに適用されるが、これらに限定されるわけではない。特に、亀裂が発生した構造物にストップホールを設けるなど応急的な補修を施した後に、ストップホールの周囲にセンサモジュール100Aを適用すると、ストップホール17から放射方向に進展する亀裂の発生を検知することができる。
【0052】
<変形例>
以下では、本開示のセンサモジュールの変形例を説明する。
図8~
図11は、それぞれ本開示の一実施形態に係るセンサモジュールの変形例を示す概要図である。
図8~
図11において、
図1に示したセンサモジュール100と同一又は類似の構成については、
図8~
図11においても同一の参照番号を付与し、重複する説明を省略する。尚、
図8~
図11においては、シートとセンサ以外の構成は、図示を省略している。
【0053】
上述した本開示の第1実施形態に係るセンサモジュール100、及び第2実施形態に係るセンサモジュール100Aにおいては、
図2に示すように中心部201から放射状に延長されたn個の延伸部203を有する形状のセンサ103が適用される場合を説明した。しかしながら、センサ103は、これに限定されない。
【0054】
例えば、
図8に示すように、センサ103Aが、線状であってもよい。第1実施形態のセンサ103と同様に、センサ103Aは、基準点Cを基準とする何れの方向にも設けられる。少なくとも2つのセンサ103Aは、基準点Cから実質的に同距離に設けられる。センサ103Aが最大強度を検出する方向は、所定のセンサ103Aが設けられた位置に対応する、基準点Cを中心とする円の円周上の点における接線と平行であることが好ましい。複数のセンサ103Aの各々は、所定方向に延長される。この場合、センサ103Aの各々が最大強度を検出する方向は、該所定方向から所定角度ずれていることが好ましい。
【0055】
また、
図9に示すように、センサ103B(103B-1、103B-2、103B-3)は、円弧状であってもよい。センサ103B-1は、基準点Cを基準とする同心円R-1に沿って、シート101上に設けられる。同様に、センサ103B-2は、基準点Cを基準とする同心円R-2に沿って、シート101上に設けられ、センサ103B-3は、基準点Cを基準とする同心円R-3に沿って、シート101上に設けられる。センサ103Bにおいて、基準点Cを中心とする半径が相対的に小さな同心円に沿って設けられたセンサよりも、センサの曲率が小さくてもよい。例えば、同心円R-1に沿って設けられたセンサ103B-1の曲率は、同心円R-2及びR-3に沿って設けられたセンサ103B-2、103B-3の曲率よりも大きく、同心円R-2に沿って設けられたセンサ103B-2の曲率は、同心円R-3に沿って設けられたセンサ103B-3の曲率よりも大きい。
【0056】
また、
図10に示すように、基準点Cを基準とする1つの同心円に沿って1つのセンサ103C(103C-1、103C-2)が設けられてもよい。この場合、センサ103C(103C-1、103C-2)は、シート101の第1領域109の周囲を取り囲む円弧状であってもよい。
【0057】
また、
図11に示すように、センサシート101Dに設けられた第1領域109Dは、角丸矩形状であってもよい。この場合、センサ103Dは、第1領域109Dのエッジ部において隣接する2辺に沿って設けられてもよい。このようなセンサ103Dの形状は、対象物のエッジの曲率に依存する曲線状であってもよい。曲線状のセンサ103Dの曲線中心Cは、対象物のエッジ毎に異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100,100A…センサモジュール、101,601…シート、103…センサユニット、105…配線部、107…接着層、109,609…第1領域、103…センサ、111…電極、115…ビア、603…切り欠き部