(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】基板処理方法、部品処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
H01L21/302 105B
(21)【出願番号】P 2021078608
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2021010187
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】向山 広記
(72)【発明者】
【氏名】若生 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0351418(US,A1)
【文献】特開2002-033313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0142988(US,A1)
【文献】特開平06-224153(JP,A)
【文献】特開平04-083340(JP,A)
【文献】特開2020-136669(JP,A)
【文献】特開2009-283725(JP,A)
【文献】特開平11-097434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082373(WO,A1)
【文献】特開2018-026566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置のチャンバ内に配置された基板支持部上の基板を処理する方法であって、
(a)前記チャンバ内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、
(b)前記基板支持部の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御する工程と、
(c)前記基板支持部の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御する工程と、
を含み、
横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する、方法。
【請求項2】
前記グラフにおいて、前記第1領域はフッ化水素の飽和蒸気圧曲線よりも下に位置する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1温度及び前記第2温度が-140℃以上0℃以下の範囲内にあり、前記第1圧力及び前記第2圧力が1Pa以上1×10
5Pa以下の範囲内にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板が、シリコン含有膜を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が、金属含有膜を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記(b)において、前記基板の表面上に、前記基板処理装置から生成された物質が付着している、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理ガスが不活性ガスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
基板処理装置のチャンバ内に配置された部品を処理する方法であって、
(a)前記チャンバ内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、
(b)前記部品の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御する工程と、
(c)前記部品の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御する工程と、
を含み、
横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する、方法。
【請求項9】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、
フッ化水素ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記基板支持部の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御し、
前記基板支持部の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御するように構成され、
横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する、基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理する方法であって、
(a)
炭素を含有する下地膜と前記下地膜上に設けられ開口を有するマスクとを備える前記基板を提供する工程と、
(b)プラズマを用いて前記下地膜をエッチングする工程と、
(c)前記(b)により前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、
プラズマを生成することなく前記マスクにフッ化水素
ガスを供給する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
(d)前記(c)の後、プラズマを用いて前記下地膜をエッチングする工程を更に含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
(e)前記(d)の後、前記(d)により前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、前記マスクにフッ化水素を供給する工程を更に含む、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記マスクはシリコンを含有する、請求項10~1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部であり、前記基板が、
炭素を含有する下地膜と前記下地膜上に設けられ開口を有するマスクとを備える、基板支持部と、
第1処理ガスと、フッ化水素ガスを含む第2処理ガスとをそれぞれ前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内において前記第1処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記プラズマを用いて前記下地膜をエッチングするよう前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成され、
前記制御部は、前記下地膜をエッチングすることによって前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、
プラズマを生成することなく前記マスクに前記第2処理ガスを供給するよう前記ガス供給部を制御するように構成される、基板処理装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理方法、部品処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フッ素を含有した剥離液を用いて半導体基板上に付着しているエッチング残渣物を除去する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板又は部品の表面に存在する物質を除去できる基板処理方法、部品処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置のチャンバ内に配置された基板支持部上の基板を処理する方法が提供される。当該方法は、(a)前記チャンバ内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、(b)前記基板支持部の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御する工程と、(c)前記基板支持部の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御する工程と、を含む。横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、基板又は部品の表面に存在する物質を除去できる基板処理方法、部品処理方法及び基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置の部分拡大図である。
【
図4】
図4は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線及び飽和蒸気圧曲線の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、基板の表面においてフッ化水素が吸着する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、吸着したフッ化水素が脱離する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、基板処理装置から生成された物質が付着した表面を有する一例の基板の平面図である。
【
図10】
図10は、一つの例示的実施形態に係る部品処理方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図12】
図12は、基板の表面においてフッ化水素が吸着する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、吸着したフッ化水素が脱離する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図14】
図14の(a)及び(b)は、一例の基板の表面の部分拡大平面図である。
【
図15】
図15は、フッ化水素ガスの圧力とエッチング量との関係の例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、基板支持部の温度とエッチング量との関係の例を示すグラフである。
【
図17】
図17は、吸着時間とマスクの厚さ又はマスクの開口の寸法との関係の例を示すグラフである。
【
図18】
図18は、温度とマスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度との関係の例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、圧力とマスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度との関係の例を示すグラフである。
【
図20】
図20は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【
図21】
図21は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
【
図22】
図22は、凹部の深さと凹部の寸法との関係の例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、マスクの開口の位置の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置のチャンバ内に配置された基板支持部上の基板を処理する方法が提供される。当該方法は、(a)前記チャンバ内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、(b)前記基板支持部の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御する工程と、(c)前記基板支持部の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御する工程と、を含む。横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する。
【0010】
上記実施形態の方法によれば、例えばエッチング残渣又はパーティクル等の物質が基板の表面に存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。
【0011】
前記グラフにおいて、前記第1領域はフッ化水素の飽和蒸気圧曲線よりも下に位置してもよい。前記第1温度及び前記第2温度が-140℃以上0℃以下の範囲内にあり、前記第1圧力及び前記第2圧力が1Pa以上1×105Pa以下の範囲内にあってもよい。
【0012】
前記基板が、シリコン含有膜を備えてもよい。この場合、フッ化水素の脱離と共に、シリコン含有膜から生成された物質を除去できる。
【0013】
前記基板が、金属含有膜を備えてもよい。この場合、フッ化水素の脱離と共に、金属含有膜から生成された物質を除去できる。
【0014】
前記(b)において、前記基板の表面上に、前記基板処理装置から生成された物質が付着していてもよい。この場合、フッ化水素の脱離と共に、基板処理装置から生成された物質を除去できる。
【0015】
前記処理ガスが不活性ガスを含んでもよい。この場合、不活性ガスの流量比を調整することにより、除去される物質の量を調整できる。
【0016】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置のチャンバ内に配置された部品を処理する方法が提供される。当該方法は、(a)前記チャンバ内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する工程と、(b)前記部品の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御する工程と、(c)前記部品の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御する工程と、を含む。横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する。
【0017】
上記実施形態の方法によれば、例えばエッチング残渣又はパーティクル等の物質が部品の表面に存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。
【0018】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。当該基板処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、フッ化水素ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記基板支持部の温度を第1温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第1圧力に、それぞれ制御し、前記基板支持部の温度を第2温度に、前記チャンバ内の前記フッ化水素ガスの圧力を第2圧力に、それぞれ制御するように構成される。横軸が温度であり、縦軸が圧力であるグラフにおいて、フッ化水素の吸着平衡圧曲線よりも上の第1領域に前記第1温度及び前記第1圧力が位置し、前記吸着平衡圧曲線よりも下の第2領域に前記第2温度及び前記第2圧力が位置する。
【0019】
上記実施形態の基板処理装置によれば、例えばエッチング残渣又はパーティクル等の物質が基板の表面に存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。
【0020】
一つの例示的実施形態において、基板を処理する方法が提供される。当該方法は、(a)下地膜と前記下地膜上に設けられ開口を有するマスクとを備える前記基板を提供する工程と、(b)プラズマを用いて前記下地膜をエッチングする工程と、(c)前記(b)により前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、前記マスクにフッ化水素を供給する工程と、を含む。
【0021】
上記実施形態の方法によれば、(c)においてフッ化水素により堆積物を除去できる。
【0022】
前記(c)において、プラズマを生成することなくフッ化水素ガスが供給されてもよい。この場合、プラズマによるマスクのエッチングが抑制される。
【0023】
前記(c)において、フッ化水素酸が供給されてもよい。この場合、フッ化水素酸により堆積物を除去できる。
【0024】
上記方法は、(d)前記(c)の後、プラズマを用いて前記下地膜をエッチングする工程を更に含んでもよい。この場合、(c)において堆積物が除去される。そのため、その後のエッチングにより、所望の形状を有する凹部を下地膜に形成できる。
【0025】
上記方法は、(e)前記(d)の後、前記(d)により前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、前記マスクにフッ化水素を供給する工程を更に含んでもよい。この場合、(e)においてフッ化水素により堆積物を除去できる。
【0026】
前記マスクはシリコンを含有してもよい。
【0027】
前記下地膜は炭素を含有してもよい。
【0028】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。当該基板処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部であり、前記基板が、下地膜と前記下地膜上に設けられ開口を有するマスクとを備える、基板支持部と、第1処理ガスと、フッ化水素ガスを含む第2処理ガスとをそれぞれ前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、前記チャンバ内において前記第1処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記プラズマを用いて前記下地膜をエッチングするよう前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成され、前記制御部は、前記下地膜をエッチングすることによって前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、前記マスクに前記第2処理ガスを供給するよう前記ガス供給部を制御するように構成される。
【0029】
上記実施形態の基板処理装置によれば、フッ化水素ガスを含む第2処理ガスにより堆積物を除去できる。
【0030】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。当該基板処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部であり、前記基板が、下地膜と前記下地膜上に設けられ開口を有するマスクとを備える、基板支持部と、第1処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、前記チャンバ内において前記第1処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、フッ化水素酸を収容するための容器を備えるウェット処理装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記プラズマを用いて前記下地膜をエッチングするよう前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成され、前記制御部は、前記下地膜をエッチングすることによって前記マスクの前記開口に付着した堆積物を除去するように、前記マスクに前記フッ化水素酸を供給するよう前記ウェット処理装置を制御するように構成される。
【0031】
上記実施形態の基板処理装置によれば、フッ化水素酸により堆積物を除去できる。
【0032】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0033】
図1及び
図2は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。本実施形態の基板処理装置は、例えばプラズマ処理システムである。
【0034】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0035】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;CapacitivelyCoupledPlasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:HeliconWave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(DirectCurrent)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(RadioFrequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0036】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0037】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0038】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0039】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0040】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0041】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0042】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0043】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0044】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0045】
図3は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置の部分拡大図である。
図3に示されるように、基板支持部11は、本体部111、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュール113を含んでもよい。温調モジュール113は、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、温調モジュール113は、本体部111の内部に形成された冷媒流路113aを備える。チラーユニットから出力された例えば冷却水及びブライン等の冷却媒体は、冷媒入口配管113b、冷媒流路113a、冷媒出口配管113cと流れ、チラーユニットに戻り、所定の温度に制御されて上述の経路を循環する。これにより、本体部111は抜熱され、冷却される。
【0046】
図4は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
図4に示される基板処理方法(以下、「方法MT1」という)は、上記実施形態の基板処理装置により実行され得る。方法MT1は、基板Wに適用される。方法MT1は、工程ST1、工程ST2及び工程ST3を含む。工程ST1、工程ST2及び工程ST3は、順に実行される。工程ST2は、工程ST1と同時に実行されてもよい。
【0047】
以下、方法MT1について、方法MT1が上記実施形態の基板処理装置を用いて基板Wに適用される場合を例にとって、説明する。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT1が実行され得る。
【0048】
方法MT1では、
図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11上の基板Wを処理する。方法MT1により、基板Wはクリーニング(又はエッチング)され得る。
【0049】
図5は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図5に示されるように、一実施形態において、基板Wは、下地領域URと、金属含有膜MFと、シリコン含有膜SFとを備える。シリコン含有膜SF及び金属含有膜MFは、下地領域UR上に設けられ、基板Wの表面Waに位置している。
【0050】
シリコン含有膜SFは、酸素及び窒素のうち少なくとも1つを含有してもよい。シリコン含有膜SFは、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。シリコン含有膜SFは、シリコン膜であってもよいし、シリコン酸化膜であってもよいし、シリコン窒化膜であってもよい。
【0051】
シリコン含有膜SFは、1つ以上の凹部RSを有してもよい。凹部RSは、開口であってもよい。凹部RSは例えばホール又はトレンチである。凹部RSは、プラズマ処理装置1を用いたエッチングにより形成され得る。凹部RSの底には金属含有膜MFが露出し得る。金属含有膜MFは、シリコン含有膜SFのうち隣り合う凹部RS間の部分の下方に配置されていない。
【0052】
シリコン含有膜SF上には、凹部RSをエッチングにより形成するためのマスクが形成されてもよい。マスクは例えば炭素を含む。基板Wの表面Waには、例えば凹部RSをエッチングにより形成する際に生成されたエッチング残渣RD1又はRD2が付着していることがある。エッチング残渣RD1は、シリコン含有膜SFから生成された残渣(反応副生成物)である。エッチング残渣RD2は、金属含有膜MFから生成された残渣(反応副生成物)である。
【0053】
工程ST1では、プラズマ処理チャンバ10内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する。処理ガスは、実質的にフッ化水素ガスのみからなってもよいし、フッ化水素ガス以外のガスを含んでもよい。一実施形態において、処理ガスは、フッ化水素ガスと不活性ガスとを含む。不活性ガスの例はアルゴンガス等の希ガスを含む。
【0054】
工程ST2では、基板支持部11の温度Tを第1温度T1に、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを第1圧力P1に、それぞれ制御する。制御部2は、そのような制御を行うように構成される。
【0055】
図6は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線及び飽和蒸気圧曲線の一例を示すグラフである。横軸は温度(℃)である。縦軸は圧力(mTorr)である。
図6のグラフの吸着平衡圧曲線C1上の温度及び圧力において、フッ化水素の吸着及び脱離は平衡となる。吸着平衡圧曲線C1は、BETの吸着理論に基づき、測定データを用いて近似された指数関数により描かれてもよい。
【0056】
第1温度T1及び第1圧力P1は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線C1よりも上の第1領域R1に位置する。これにより、工程ST2では、基板Wの表面Waにおいてフッ化水素が吸着する。第1領域R1はフッ化水素の飽和蒸気圧曲線C2より下に位置してもよい。この場合、フッ化水素は基板Wの表面Waに気相吸着する。第1温度T1及び第1圧力P1が飽和蒸気圧曲線C2より上に位置する場合、フッ化水素は基板Wの表面Waに液相吸着する。第1温度T1は、-140℃以上0℃以下の範囲内にあってもよいし、-70℃以上-30℃以下の範囲内にあってもよい。第1圧力P1は1Pa以上1×105Pa以下の範囲内にあってもよいし、30Pa以上100Pa以下の範囲内にあってもよい。工程ST2の時間は、フッ化水素吸着による反応生成物が生成する範囲であれば時間的な制約は問わず、工程ST2の時間に応じてクリーニング量が決定される。基板支持部11の温度Tは、温調モジュール113を用いて調整され得る。基板Wの温度は基板支持部11の温度Tと同じであってもよい。プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pは、流量制御器22によりフッ化水素ガスの流量を制御することによって調整され得る。処理ガスがフッ化水素ガス以外のガスを含む場合、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pはフッ化水素ガスの分圧である。工程ST2においてプラズマは生成されない。
【0057】
図7は、基板の表面においてフッ化水素が吸着する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。
図7に示されるように、基板Wの表面Waにおいてフッ化水素は吸着する。フッ化水素ガス中のフッ化水素分子HF1は、基板Wの表面Waに吸着し得る。これにより、基板Wの表面Wa上にはフッ化水素を含む層HF2が形成され得る。層HF2は、例えばフッ化水素分子層である。層HF2は、エッチング残渣RD1又はRD2を覆うように形成される。層HF2中のフッ化水素は、エッチング残渣RD1又はRD2と反応して、例えばフッ化ケイ素等の反応生成物HF3(
図8参照)となってもよい。
【0058】
工程ST1の前に、フッ化水素ガスを含まず、不活性ガスを含む処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給してもよい。この場合、基板支持部11の温度Tを第1温度T1に、プラズマ処理チャンバ10内の不活性ガスの圧力を第1圧力P1に、それぞれ制御してもよい。その後、不活性ガスを含む処理ガスを、フッ化水素ガスを含む処理ガスに置換することによって、工程ST1及び工程ST2を同時に開始してもよい。
【0059】
工程ST3では、基板支持部11の温度Tを第2温度T2に、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを第2圧力P2に、それぞれ制御する。制御部2は、そのような制御を行うように構成される。
図6のグラフにおいて、吸着平衡圧曲線C1よりも下の第2領域R2に第2温度T2及び第2圧力P2が位置する。これにより、工程ST3では、基板Wの表面Waに吸着したフッ化水素が脱離する。第2温度T2は、-140℃以上0℃以下の範囲内にあってもよいし、-70℃以上-30℃以下の範囲内にあってもよい。第2圧力P2は1Pa以上1×10
5Pa以下の範囲内にあってもよいし、30Pa以上100Pa以下の範囲内にあってもよい。工程ST3の時間は、フッ化水素吸着による反応生成物が脱離できる範囲であれば時間的制約は問わない。第2温度T2は第1温度T1より高くてもよい。第2圧力P2は第1圧力P1より低くてもよい。工程ST3は、フッ化水素の脱離を促進するために、フッ化水素ガスを含む処理ガスの供給を停止した後に行われ得る。工程ST3においてプラズマは生成されない。
【0060】
図8は、吸着したフッ化水素が脱離する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。工程ST3において、基板Wの表面Waにおいて吸着したフッ化水素は、脱離する。基板Wの表面Waに吸着したフッ化水素分子は、脱離してフッ化水素ガスとなる。フッ化水素の脱離と共に、エッチング残渣RD1又はRD2は基板Wの表面Waから離れ得る。あるいは、
図8に示されるように、工程ST2において生成された反応生成物HF3は、基板Wの表面Waから脱離する。このように、工程ST3において、エッチング残渣RD1又はRD2は基板Wの表面Waから除去され得る。
【0061】
上記方法MT1によれば、例えばエッチング残渣RD1,RD2等の物質が基板Wの表面Waに存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。
【0062】
基板Wがシリコン含有膜SFを備える場合、フッ化水素の脱離と共に、シリコン含有膜SFから生成された物質を除去できる。基板Wが金属含有膜MFを備える場合、フッ化水素の脱離と共に、金属含有膜MFから生成された物質を除去できる。
【0063】
処理ガスが不活性ガスを含む場合、不活性ガスの流量比を調整することにより、除去される物質の量を調整できる。例えば、不活性ガスの流量比を大きくすると、フッ化水素ガスの流量比が小さくなるので、除去される物質の量は少なくなる。
【0064】
工程ST1の前に、プラズマ処理チャンバ10内において生成されたプラズマを用いて基板Wをエッチングしてもよい。例えば、エッチングにより凹部RSを形成した後、工程ST1、工程ST2及び工程ST3を行ってもよい。これにより、プラズマ処理チャンバ10から基板Wを外に出すことなくin-situで連続的にエッチング及びクリーニングを行うことができる。
【0065】
図9は、基板処理装置から生成された物質が付着した表面を有する一例の基板の平面図である。工程ST2において、
図9に示されるように、基板Wの表面Wa上に、上記実施形態の基板処理装置から生成された物質が付着していてもよい。当該物質は、プラズマ処理装置1から生成されたシリコン含有パーティクルPT1であってもよいし、プラズマ処理装置1から生成された金属含有パーティクルPT2であってもよい。シリコン含有パーティクルPT1は、例えばシリコン酸化物を含有する。金属含有パーティクルPT2は、例えばイットリウム又はアルミニウムを含有する。金属含有パーティクルPT2は、例えばイットリウム酸化物又はアルミニウム酸化物を含有する。
【0066】
図9の基板Wに対して方法MT1を適用すると、シリコン含有パーティクルPT1又は金属含有パーティクルPT2等の物質を除去できる。
【0067】
図10は、一つの例示的実施形態に係る部品処理方法のフローチャートである。
図10に示される部品処理方法(以下、「方法MT2」という)は、上記実施形態の基板処理装置により実行され得る。方法MT2は、プラズマ処理装置1に適用される。方法MT2が実行される際に、基板Wはプラズマ処理チャンバ10内に存在していなくてもよい。方法MT2は、工程ST11、工程ST12及び工程ST13を含む。工程ST11、工程ST12及び工程ST13は、順に実行される。工程ST12は、工程ST11と同時に実行されてもよい。
【0068】
以下、方法MT2について、方法MT2が上記実施形態の基板処理装置を用いてリングアセンブリ112(
図3参照)に適用される場合を例にとって、説明する。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT2が実行され得る。
【0069】
方法MT2では、プラズマ処理チャンバ10内に配置された部品としてのリングアセンブリ112を処理する。リングアセンブリ112の表面112aには、例えば
図9に示されるシリコン含有パーティクルPT1又は金属含有パーティクルPT2等の物質が付着していることがある。方法MT2により、リングアセンブリ112はクリーニング(又はエッチング)され得る。
【0070】
工程ST11では、プラズマ処理チャンバ10内に、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給する。工程ST11は、基板Wが基板支持部11上に配置されていないこと以外は工程ST1と同様に実行され得る。
【0071】
工程ST12では、リングアセンブリ112の温度TRを第1温度T1に、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを第1圧力P1に、それぞれ制御する。これにより、リングアセンブリ112の表面112aにおいてフッ化水素が吸着する。工程ST12は、基板Wが基板支持部11上に配置されていないこと以外は工程ST2と同様に実行され得る。リングアセンブリ112の温度TRは、基板支持部11の温度Tと同じであってもよく、温調モジュール113を用いて調整され得る。リングアセンブリ112の温度TRは、温調モジュール113とは異なる温調モジュールを用いて調整されてもよい。
【0072】
工程ST13では、リングアセンブリ112の温度TRを第2温度T2に、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを第2圧力P2に、それぞれ制御する。これにより、リングアセンブリ112の表面112aに吸着したフッ化水素が脱離する。工程ST13は、基板Wが基板支持部11上に配置されていないこと以外は工程ST3と同様に実行され得る。
【0073】
上記方法MT2によれば、例えばシリコン含有パーティクルPT1又は金属含有パーティクルPT2等の物質がリングアセンブリ112の表面112aに存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。
【0074】
以下、方法MT1が上記実施形態の基板処理装置を用いて基板W1に適用される場合を例にとって、説明する。この場合、方法MT1を実行する際に、上述の基板Wに代えて基板W1が用いられる。方法MT1により、基板W1はクリーニング(又はエッチング)され得る。
【0075】
図11は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図11に示されるように、一実施形態において、基板W1は、炭素含有膜ACと、炭素含有膜AC上に設けられたマスクMSとを備える。炭素含有膜ACは、1つ以上の凹部RSを有してもよい。炭素含有膜ACはアモルファスカーボン膜であってもよい。マスクMSは、凹部RSをエッチングにより形成するためのマスクであってもよい。マスクMSは、凹部RS上に位置する開口MSaを有してもよい。マスクMSは、シリコン、酸素及び窒素を含有する膜であってもよい。マスクMSの開口MSaには、例えば凹部RSをエッチングにより形成する際に生成された堆積物DPが付着していることがある。堆積物DPは、シリコン及び酸素を含有してもよい。堆積物DPにより、マスクMSの開口MSaの寸法CDが減少し得る。
【0076】
図12は、基板の表面においてフッ化水素が吸着する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。工程ST2において、
図12に示されるように、基板W1の表面W1aにおいてフッ化水素が吸着する。フッ化水素ガス中のフッ化水素分子HF1は、マスクMSの開口MSaに吸着し得る。これにより、基板W1の表面W1a上にはフッ化水素を含む吸着層が形成され得る。吸着層は、堆積物DPを覆うように形成される。吸着層中のフッ化水素は、堆積物DPと反応して、例えばフッ化ケイ素等の反応生成物HF3(
図13参照)となってもよい。
【0077】
図13は、吸着したフッ化水素が脱離する場合における一例の基板の部分拡大断面図である。工程ST3において、基板W1の表面W1aに吸着したフッ化水素は、脱離する。基板W1の表面W1aに吸着したフッ化水素分子は、脱離してフッ化水素ガスとなる。フッ化水素の脱離と共に、堆積物DPは基板Wの表面Waから離れ得る。あるいは、
図13に示されるように、工程ST2において生成された反応生成物HF3は、マスクMSの開口MSaから脱離する。このように、工程ST3において、堆積物DPは基板W1の表面W1aから除去され得る。
【0078】
上記方法MT1によれば、例えば堆積物DP等の物質がマスクMSの開口MSaに存在する場合に、フッ化水素の脱離と共に当該物質を除去できる。方法TM1によれば、プラズマエッチングにより物質を除去する場合に比べて、マスクMSの厚さTHの減少を抑制しつつマスクMSの開口MSaの寸法CDを増大させることができる。
【0079】
以下、方法MT1の評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0080】
(第1実験)
第1実験では、シリコン酸化膜とシリコン酸化膜上のマスクとを備える基板Wを準備した。マスクを用いてシリコン酸化膜のエッチングを行って凹部RSを形成した。その後、上記プラズマ処理システムを用いて基板Wに対して上記方法MT1を実行した。工程ST2において、第1温度T1は、-70℃であり、第1圧力P1は50Paである。工程ST3において、第2温度T2は、-70℃であり、第2圧力P2は2Paである。
【0081】
図14の(a)及び(b)は、一例の基板の表面の部分拡大平面図である。
図14の(a)は、上記方法MT1を実行する前の基板Wの表面Waを示す。
図14の(b)は、上記方法MT1を実行した後の基板Wの表面Waを示す。
図14の(a)では、基板Wの表面Waにエッチング残渣RD1が付着していた。一方、
図14の(b)では、基板Wの表面Waからエッチング残渣RD1が除去されていた。このように、フッ化水素溶液を用いた場合と同等の効果が得られた。
【0082】
(第2実験)
第2実験では、シリコン酸化膜を備える基板Wを準備した。基板支持部11の温度Tを-70℃に固定し、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを変化させて、基板Wに対して上記方法MT1を実行した。その後、シリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。エッチング量が大きくなるほどクリーニング効果が高くなる。結果を
図15に示す。また、プラズマ処理チャンバ10内のフッ化水素ガスの圧力Pを350mTorr(1mTorr=0.133322Pa)に固定し、基板支持部11の温度Tを変化させて、基板Wに対して上記方法MT1を実行した。その後、シリコン酸化膜のエッチング量を測定した。結果を
図16に示す。
【0083】
図15は、フッ化水素ガスの圧力とエッチング量との関係の例を示すグラフである。縦軸は、エッチング量(nm)を示す。横軸は、フッ化水素ガスの圧力P(mTorr)を示す。各圧力Pについて2回の実験を行った。E1,E2は2回の実験結果を示す。
図15から、圧力Pが上昇するに連れてエッチング量が増加することが分かった。よって、圧力Pを調整することによって、エッチング量を制御できる。さらに、200mTorr以下の低圧領域においてエッチング量の制御性が高くなることも分かった。また、圧力Pの上昇プロファイルは、ラングミュア吸着線に近似していることも分かった。これは、フッ化水素ガス分子の吸着及び脱離が支配的である可能性を示す。
【0084】
図16は、基板支持部の温度とエッチング量との関係の例を示すグラフである。縦軸は、エッチング量(nm)を示す。横軸は、基板支持部11の温度T(℃)を示す。各温度Tについて2回の実験を行った。E3,E4は2回の実験結果を示す。
図16から、温度Tが上昇するに連れてエッチング量が減少することが分かった。温度Tが-35℃の場合、-70℃に比べてエッチング量が減少する。
【0085】
(第3実験)
第3実験では、アモルファスカーボン膜とアモルファスカーボン膜上のマスクとを備える基板W1(
図11参照)を準備した。マスクはSiON膜である。マスクを用いてアモルファスカーボン膜のエッチングを行って凹部RSを形成した。その後、上記プラズマ処理システムを用い、工程ST2における時間(吸着時間)を変化させて、基板W1に対して上記方法MT1を実行した。工程ST2における第1温度T1及び第1圧力P1は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線C1よりも上の第1領域R1に位置する。その後、マスクの厚さ及びマスクの開口の寸法を測定した。結果を
図17に示す。
【0086】
図17は、吸着時間とマスクの厚さ又はマスクの開口の寸法との関係の例を示すグラフである。縦軸は、マスクの厚さ又はマスクの開口の寸法(nm)を示す。横軸は、吸着時間(秒)を示す。吸着時間がゼロの結果は、方法MT1が実行される前の基板W1における厚さ又は寸法を示す。
図17から、吸着時間が60秒程度である場合に、マスクの厚さの減少を抑制しながらマスクの開口の寸法を増大できることが分かった。
【0087】
(第4実験)
第4実験では、第3実験と同じ基板W1を準備し、マスクを用いてアモルファスカーボン膜のエッチングを行って凹部RSを形成した。その後、上記プラズマ処理システムを用い、工程ST2における第1温度T1を変化させて、基板W1に対して上記方法MT1を実行した。工程ST2における第1温度T1及び第1圧力P1は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線C1よりも上の第1領域R1に位置する。その後、マスクの厚さ及びマスクの開口の寸法を測定し、マスクの厚さの減少速度及びマスクの開口の寸法の増加速度を算出した。結果を
図18に示す。
【0088】
図18は、温度とマスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度との関係の例を示すグラフである。縦軸は、マスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度(nm/分)を示す。横軸は、温度(℃)を示す。
図18から、温度が低い程、マスクの厚さの減少を抑制しながらマスクの開口の寸法を増大できることが分かった。
【0089】
(第5実験)
第5実験では、第3実験と同じ基板W1を準備し、マスクを用いてアモルファスカーボン膜のエッチングを行って凹部RSを形成した。その後、上記プラズマ処理システムを用い、工程ST2における第1圧力P1を変化させて、基板W1に対して上記方法MT1を実行した。工程ST2における第1温度T1及び第1圧力P1は、フッ化水素の吸着平衡圧曲線C1よりも上の第1領域R1に位置する。その後、マスクの厚さ及びマスクの開口の寸法を測定し、マスクの厚さの減少速度及びマスクの開口の寸法の増加速度を算出した。結果を
図19に示す。
【0090】
図19は、圧力とマスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度との関係の例を示すグラフである。縦軸は、マスクの厚さの減少速度又はマスクの開口の寸法の増加速度(nm/分)を示す。横軸は、圧力(mTorr)を示す。
図19から、圧力が高い程、マスクの厚さの減少を抑制しながらマスクの開口の寸法を増大できることが分かった。
【0091】
図20は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
図20に示される基板処理方法(以下、「方法MT3」という)は、上記実施形態の基板処理装置により実行され得る。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT3が実行され得る。方法MT3は、工程ST21、工程ST22、工程ST23、工程ST24及び工程ST25を含む。工程ST21~工程ST25は、順に実行され得る。工程ST21~工程ST25は、in-situで行われてもよいし、異なるチャンバ内で行われてもよい。例えば、工程ST21、工程ST22及び工程ST24がプラズマ処理チャンバ10内で行われる一方、工程ST23及び工程ST25がプラズマ処理チャンバ10とは異なるチャンバ内で行われてもよい。工程ST23及び工程ST25はバッチ処理又は枚葉処理され得る。工程ST24及び工程ST25のうち少なくとも1つは省略されてもよい。
【0092】
以下、
図11~
図13及び
図20を参照しながら、方法MT3が上記実施形態の基板処理装置を用いて基板W1に適用される場合を例にとって、説明する。方法MT3により、基板W1はクリーニング(又はエッチング)され得る。
【0093】
工程ST21では、基板W1を提供する。基板W1は、下地膜としての炭素含有膜ACと、炭素含有膜AC上に設けられ開口MSaを有するマスクMSとを備える。基板W1は、
図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11上に載置され得る。
【0094】
マスクMSはシリコンを含有し得る。マスクMSは、シリコン含有膜であってもよい。シリコン含有膜は、シリコン膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、及びシリコン酸窒化膜のうち少なくとも1つを含んでもよい。シリコン含有膜はシリコン酸化膜を含まなくてもよい。
【0095】
炭素含有膜ACは、カーボンを含む膜であればよく、例えば、スピンオンカーボン(SOC)膜、アモルファスカーボン膜及びレジスト膜のうち少なくも1つを含んでもよい。レジスト膜は、ArFレジスト膜又はKrFレジスト膜等であってもよい。下地膜として炭素含有膜ACとは異なる膜が用いられてもよい。炭素含有膜ACとは異なる下地膜としては、例えば、多結晶シリコン膜、アモルファスシリコン膜及びSiGe膜のうち少なくとも1つが用いられてもよい。
【0096】
工程ST22では、
図11に示されるように、プラズマを用いて炭素含有膜ACをエッチングする。プラズマは、プラズマ処理チャンバ10内に供給される第1処理ガスから生成され得る。エッチングにより、炭素含有膜ACに凹部RSが形成されると共に、マスクMSの開口MSaに堆積物DPが付着する。
【0097】
工程ST23では、
図12及び
図13に示されるように、堆積物DPを除去するようにマスクMSにフッ化水素を供給する。一つの例示的実施形態において、フッ化水素ガスを含む第2処理ガスがプラズマ処理チャンバ10内に供給される。工程ST23では、上述の方法MT1の工程ST1~工程ST3が実行され得る。フッ化水素ガス中のフッ化水素分子HF1が堆積物DPと反応することによって、フッ化ケイ素等の反応生成物HF3が生成され得る。反応生成物HF3が揮発することによって、堆積物DPが除去され得る。一つの例示的実施形態において、プラズマを生成することなくフッ化水素ガスを含む第2処理ガスが供給される。この場合、プラズマによるマスクMSのエッチングを抑制できる。その結果、マスクMSの変形を抑制できる。
【0098】
工程ST24では、工程ST22と同様に、プラズマを用いて炭素含有膜ACをエッチングする。
【0099】
工程ST25では、工程ST23と同様に、工程ST24により形成された堆積物DPを除去するようにマスクMSにフッ化水素を供給する。
【0100】
工程ST25の後、工程ST22及び工程ST23を更に繰り返してもよい。これにより、凹部RSを深くすることができる。
【0101】
上記方法MT3によれば、工程ST23においてマスクMSの変形を抑制しながらフッ化水素により堆積物DPを除去できる。よって、工程ST24において、所望の形状を有する凹部RSを炭素含有膜ACに形成できる。例えば、フッ化水素ではないフッ素含有ガスから生成されるプラズマを用いて堆積物DPを除去する場合に比べて、凹部RSの形状不良(ボーイング)を抑制できる。これは、マスクMSの肩部の傾きが小さい状態で工程ST24を実行できるからと考えられる。
【0102】
所望の形状を有する凹部RSは、一例において、炭素含有膜ACの厚み方向と平行な側壁を有する。所望の形状を有する凹部RSは、他の例において、炭素含有膜ACの厚み方向に対して傾斜した側壁を有する。例えば、凹部RSの側壁はテーパー形状を有する。
【0103】
図21は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
図21に示される基板処理装置を用いて方法MT3を基板W1に適用してもよい。
【0104】
図21の基板処理装置は、プラズマ処理装置1と、制御部2と、ウェット処理装置200とを備える。基板処理装置は、プラズマ処理装置1とウェット処理装置200との間で基板W1を搬送する搬送ロボットを備えてもよい。制御部2は、プラズマ処理装置1及びウェット処理装置200の各部を制御するように構成される。制御部2の制御により、
図21の基板処理装置において方法MT3が実行され得る。
【0105】
ウェット処理装置200は、フッ化水素酸を収容するための容器210と、リンス液を収容するための容器212と、純水を収容するための容器214とを備え得る。ウェット処理装置200は、基板W1を乾燥させるための乾燥機を備えてもよい。
【0106】
ウェット処理装置200は、プラズマ処理装置1から搬出された基板W1を受け入れるための搬入口216と、基板W1をプラズマ処理装置1に搬出するための搬出口218と、基板W1を搬送するための搬送ロボット220とを備え得る。搬送ロボット220は、基板W1を搬入口216から容器210に搬送する。搬送ロボット220は、基板W1を容器210から容器212に搬送する。搬送ロボット220は、基板W1を容器212から容器214に搬送する。搬送ロボット220は、基板W1を容器214から搬出口218に搬送する。
【0107】
図21の基板処理装置において方法MT3が実行される場合、工程ST21、工程ST22及び工程ST24はプラズマ処理装置1において行われ得る。工程ST23及び工程ST25はウェット処理装置200において行われ得る。工程ST23及び工程ST25において、基板W1にフッ化水素酸が供給される。その結果、堆積物DPはフッ化水素酸により除去される。基板W1は、容器210内においてフッ化水素酸中に浸漬され得る。その後、基板W1は、容器212内においてリンス液中に浸漬され得る。その後、基板W1は、容器214内において純水中に浸漬され得る。その後、基板W1は、ウェット処理装置200の乾燥機において乾燥され得る。あるいは、基板W1は、プラズマ処理装置1のプラズマ処理チャンバ10内の減圧により乾燥され得る。
【0108】
以下、方法MT3の評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0109】
(第6実験)
第6実験では、アモルファスカーボン膜とアモルファスカーボン膜上に設けられたマスクとを備える基板を準備した。マスクは、シリコン酸窒化膜である。その後、基板に対して上記方法MT3の工程ST21~工程ST23を実行した。工程ST22では、プラズマを用いてアモルファスカーボン膜をエッチングした。工程ST23では、フッ化水素酸中に基板を浸漬した。これにより、エッチングによりマスクの開口に付着した堆積物を除去した。
【0110】
(第7実験)
第7実験では、工程ST22の後、工程ST23を行わず、フッ化水素ではないフッ素含有ガスから生成されたプラズマを用いてマスクの開口に付着した堆積物を除去した。
【0111】
(結果)
第6実験及び第7実験において得られた基板の断面画像から、アモルファスカーボン膜に形成された凹部の深さ及び寸法を測定した。結果を
図22に示す。
【0112】
図22は、凹部の深さと凹部の寸法との関係の例を示すグラフである。縦軸は、アモルファスカーボン膜に形成された凹部の深さ(μm)を示す。縦軸の値が0μmとなる位置は、アモルファスカーボン膜とマスクとの境界位置である。横軸は、アモルファスカーボン膜に形成された凹部の寸法(nm)を示す。グラフ中、E6は第6実験の結果を示し、E7は第7実験の結果を示す。
図22に示されるように、-0.5~0μmの深さ範囲及び-3~-1μmの深さ範囲において、第6実験における凹部の寸法が第7実験における凹部の寸法よりも小さくなっていた。これは、第6実験では第7実験に比べて凹部の形状不良(ボーイング)が抑制されることを示す。
【0113】
さらに、第6実験及び第7実験において得られた基板の断面画像から、マスクの開口の位置を測定した。結果を
図23に示す。
【0114】
図23は、マスクの開口の位置の例を示すグラフである。縦軸は、マスクの厚さ方向の位置(μm)を示す。縦軸の値が0μmとなる位置は、アモルファスカーボン膜とマスクとの境界位置である。横軸は、基板の面方向(マスクの厚さ方向と直交する方向)の位置(nm)を示す。横軸の値が0μmとなる位置は、マスクの開口の中心位置である。グラフ中、E8は第6実験の結果を示し、E9は第7実験の結果を示す。
図23に示されるように、第6実験におけるマスクの厚みが第7実験におけるマスクの厚みよりも大きくなっていた。これは、第6実験では第7実験に比べてマスクのエッチングが抑制されることを示す。また、
図23に示されるように、第6実験におけるマスクの肩部の基板W1の面方向に対する傾きE8aが第7実験におけるマスクの肩部の基板W1の面方向に対する傾きE9aよりも小さくなっていた。これは、第6実験では第7実験に比べてマスクの肩部が変形し難いことを示す。
【0115】
図24は、一例の基板の部分拡大断面図である。
図24に示されるように、基板W1の断面において、マスクMSの肩部は、基板W1の面方向に対して角度θだけ傾斜している。角度θが小さいと、プラズマ中のイオンI1はマスクの肩部に衝突し、マスクをスパッタする。一方、角度θが大きいと、プラズマ中のイオンI2はマスクの肩部によって凹部RS内へ反射され得る。その結果、イオンI2によって凹部RSの側壁がエッチングされるため、凹部の形状不良(ボーイング)が生じ易い。
【0116】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0117】
例えば、基板処理装置は、プラズマ生成部12を備えなくてもよい。この場合、基板処理装置のチャンバ内においてプラズマ処理は行われない。そのような基板処理装置を用いて方法MT1,MT2を行うこともできる。
【0118】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0119】
2…制御部、10…プラズマ処理チャンバ、11…基板支持部、20…ガス供給部、112…リングアセンブリ、112a…表面、C1…吸着平衡圧曲線、R1…第1領域、R2…第2領域、W,W1…基板。