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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】分割両面ウェーハ及びレチクルクランプ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250120BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250120BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
H01L21/68 R
G03F7/20 501
H02N13/00 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021568883
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020062964
(87)【国際公開番号】W WO2020239400
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/853,900
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リプソン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】モンクマン,エリック,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ペレズ-ファルコン,ビクター,アントニオ
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009715(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001978(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/060259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
G03F 7/20
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電クランプであって、
第1のスタック及び第2のスタックを備え、前記第1のスタックは前記第2のスタックに接合され、前記第1及び第2のスタックの各々は、
クランプ本体と、
前記クランプ本体上に配置された1つ以上の電極と、
前記電極上に配置された誘電板と、
前記クランプ本体内部の複数のチャネルと、
を備える、静電クランプ。
【請求項2】
前記第1及び第2のスタックはオプティカルコンタクトボンディングによって接合されている、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項3】
前記第1のスタックは伝導層を含み、前記伝導層及び前記1つ以上の電極は前記クランプ本体の両側にある、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項4】
前記第1及び第2のスタックは、前記第1のスタックの前記伝導層と前記第2のスタックの前記1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、請求項3に記載の静電クランプ。
【請求項5】
前記クランプ本体は超低膨張係数を有する絶縁体を含む、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項6】
前記複数のチャネルは熱的に調節された液体又は気体を運ぶように構成されている、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項7】
前記第1及び第2のスタックの各々は、前記1つ以上の電極を電気的に隔離するように構成された絶縁層をさらに含む、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項8】
前記誘電板は複数のバールを含む、請求項1に記載の静電クランプ。
【請求項9】
静電クランプを製造するための方法であって、
前記静電クランプの第1のスタックを形成することと、
前記静電クランプの第2のスタックを形成することと、
前記第1のスタックを前記第2のスタックと接合することと、
を含み、
前記静電クランプの前記第1及び第2のスタックを形成することは、
クランプ本体に複数のチャネルを形成することと、
前記クランプ本体上に1つ以上の電極を形成することと、
前記クランプ本体上に絶縁層を形成することと、
前記1つ以上の電極上に誘電板を形成することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記誘電板上に複数のバールを形成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のスタックを前記第2のスタックと接合することは、
前記静電クランプの前記第1及び第2のスタックの下面を研磨することであって、前記下面及び前記誘電板は前記第1及び第2のスタックの前記クランプ本体の各々の両側にある、下面を研磨することと、
前記第1及び第2のスタックの前記研磨した下面間にオプティカルコンタクトボンディングを形成することと、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のスタックを前記第2のスタックと接合することは、
前記第1のスタックの下面に伝導層を配置することであって、前記第1のスタックの前記下面及び前記誘電板は前記クランプ本体の両側にある、伝導層を配置することと、
前記第1のスタックの前記伝層に第1の電圧を印加することと、
前記第2のスタックの前記1つ以上の電極に前記第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加することと、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の静電クランプを含むリソグラフィ装置。
【請求項14】
パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置と、
前記パターンの像を基板に投影するように構成された投影システムと、
をさらに備え、前記基板は前記静電クランプ上に配置されている、請求項13に記載のリソグラフィ装置。
【請求項15】
前記第1のスタックは伝導層を含み、前記伝導層及び前記1つ以上の電極は前記クランプ本体の両側にある、請求項14に記載のリソグラフィ装置
【請求項16】
前記第1及び第2のスタックは、前記第1のスタックの前記伝導層と前記第2のスタックの前記1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、請求項15に記載のリソグラフィ装置。
【請求項17】
パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置であって、前記パターニングデバイスは前記静電クランプ上に配置されている、照明装置と、
前記パターンの像を基板に投影するように構成された投影システムと、
をさらに備える、請求項13に記載のリソグラフィ装置。
【請求項18】
前記第1のスタックは伝導層を含み、前記伝導層及び前記1つ以上の電極は前記クランプ本体の両側にある、請求項17に記載のリソグラフィ装置。
【請求項19】
前記第1及び第2のスタックは、前記第1のスタックの前記伝導層と前記第2のスタックの前記1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、請求項18に記載のリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2019年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/853,900号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、極端紫外線(EUV)リソグラフィシステム等の真空システムにおいて、例えばレチクル又は基板のような物体を支持するための静電クランプに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又はいくつかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0004】
[0004] 基板にパターンをプリントするため、リソグラフィ装置は電磁放射を用いることができる。電磁放射の波長は、レジストにプリントされる最小フィーチャサイズを決定する。半導体技術はサブ20nmノードへ進展しており、クリティカルディメンションを提供するため極端紫外線(EUV)放射を用いたリソグラフィシステムが使用されている。極端紫外線(EUV)放射は、例えば6.7nm又は13.5nm等、4nm~20nmの範囲内の波長を有し得る。
【0005】
[0005] リソグラフィプロセスの間、レチクル及び基板はクランプによってリソグラフィ装置内の所定位置に保持される。EUV放射を用いたリソグラフィ装置では、リソグラフィ動作中、EUV放射ビーム経路又は少なくともそのかなりの部分を真空に保つことが必要となり得る。従ってEUVリソグラフィ装置では、従来の真空チャックでなく静電クランプが用いられる。
【0006】
[0006] さらに、EUV放射を用いたリソグラフィ装置では、例えばレチクル及び/又は基板の温度制御が必要となり得る。吸収されたEUV放射又は望ましくない非EUV放射によって発生した熱は、レチクル及び/又は基板に変形を生じる可能性がある。変形を低減するため、静電クランプを通して冷却材を循環させることができる。
【0007】
[0007] IC製造中、機能製品を製造するため多くのリソグラフィレベルが用いられ、各リソグラフィレベルは異なるレチクルを有し得る。従って、半導体設備における動作中、リソグラフィ装置はレチクル及びウェーハを頻繁に変更する。
【0008】
[0008] 従って、EUVリソグラフィ装置のための信頼性が高く費用対効果の良いウェーハ及びレチクルクランプが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本開示において、静電クランプ及びこれを製造するための方法の実施形態が記載される。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、静電クランプは第1のスタック及び第2のスタックを含み、第1のスタックは第2のスタックに接合されている。第1及び第2のスタックの各々は、クランプ本体と、クランプ本体上に配置された1つ以上の電極と、電極上に配置された誘電板と、クランプ本体内部の複数のチャネルと、を含む。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態において、第1及び第2のスタックはオプティカルコンタクトボンディング(optical contact bonding)によって接合されている。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態において、第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態において、第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態において、クランプ本体は、超低膨張係数を有する絶縁体を含む。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態において、複数のチャネルは、熱的に調節された液体又は気体を運ぶように構成されている。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態において、第1及び第2のスタックの各々は、1つ以上の電極を電気的に隔離するように構成された絶縁層をさらに含む。
【0017】
[0017] いくつかの実施形態において、誘電板は複数のバールを含む。
【0018】
[0018] 本開示の別の態様は、静電クランプを製造するための方法を提供する。この方法は、静電クランプの第1のスタックを形成することと、静電クランプの第2のスタックを形成することと、第1のスタックを第2のスタックと接合することと、を含む。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態において、静電クランプの第1及び第2のスタックを形成することは、クランプ本体に複数のチャネルを形成することと、クランプ本体上に1つ以上の電極を形成することと、クランプ本体上に絶縁層を形成することと、1つ以上の電極上に誘電板を形成することと、を含む。いくつかの実施形態において、方法は、誘電板上に複数のバールを形成することをさらに含む。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態において、第1のスタックを第2のスタックと接合することは、静電クランプの第1及び第2のスタックの下面を研磨することを含む。これらの下面及び誘電板は、第1及び第2のスタックのクランプ本体の各々の両側にある。また、第1のスタックを第2のスタックと接合することは、第1及び第2のスタックの研磨した下面間にオプティカルコンタクトボンディングを形成することを含む。
【0021】
[0021] いくつかの実施形態において、第1のスタックを第2のスタックと接合することは、第1のスタックの下面に伝導層を堆積することを含む。この下面及び第1のスタックの誘電板はクランプ本体の両側にある。また、第1のスタックを第2のスタックと接合することは、第1のスタックの伝導層に第1の電圧を印加することと、第2のスタックの1つ以上の電極に第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加することと、を含む。
【0022】
[0022] 本開示の別の態様は、上記の静電クランプを有するリソグラフィ装置を提供する。
【0023】
[0023] いくつかの実施形態において、リソグラフィ装置は、パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置と、パターンの像を基板上に投影するように構成された投影システムと、をさらに含む。基板は静電クランプ上に配置されている。
【0024】
[0024] いくつかの実施形態において、第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある。
【0025】
[0025] いくつかの実施形態において、第1及び第2のスタックは、第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている。
【0026】
[0026] いくつかの実施形態において、リソグラフィ装置は、パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置であって、パターニングデバイスは静電クランプ上に配置されている、照明装置と、パターンの像を基板上に投影するように構成された投影システムと、をさらに含む。
【0027】
[0027] いくつかの実施形態において、第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある。
【0028】
[0028] いくつかの実施形態において、第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている。
【0029】
[0029] 本発明の別の特徴及び利点並びに本発明の様々な実施形態の構造及び作用は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に記載されている。本明細書に含まれる教示に基づいて当業者はさらなる実施形態を容易に思いつくであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
[0030] 本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明を図示し説明とともに、さらに本発明の原理を説明し、当業者が本発明を作成して使用できるようにする働きをする。
【0031】
図1】[0031] 例示的な実施形態に従った反射型リソグラフィ装置の概略図である。
図2】[0032] 例示的な実施形態に従った反射型リソグラフィ装置のより詳細な概略図である。
図3】[0033] 例示的な実施形態に従ったリソグラフィセルの概略図である。
図4A】[0034] 本開示のいくつかの実施形態に従った静電クランプの概略図である。
図4B】[0034] 本開示のいくつかの実施形態に従った静電クランプの概略図である。
図5】[0035] 本開示の一実施形態に従った、二重スタック(dual stack)を備えた静電クランプの概略図である。
図6】[0036] 本開示の別の実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの概略図である。
図7】[0037] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックを形成するための例示的な方法を示す。
図8A】[0038] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図8B】[0038] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図8C】[0038] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図8D】[0038] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図9】[0039] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプを形成するための例示的な方法を示す。
図10A】[0040] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図10B】[0040] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図11】[0041] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプを形成するための例示的な方法を示す。
図12A】[0042] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図12B】[0042] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの様々なプロセス段階における断面図を示す。
図12C】[0042] 本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの様々なプロセス段階における断面図を示す。
【0032】
[0043] 本発明の特徴及び利点は、同様の参照符号は全体を通して対応する要素を識別する図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことでさらに明白になるであろう。図面では、一般に、同様の参照番号が同一の、機能が類似した、及び/又は構造が類似する要素を示す。さらに、一般に、参照番号の左端の桁は、参照番号が最初に表示される図面を識別する。他に示されない限り、本開示を通じて提供される図面は縮尺通りの図面として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[0044] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示される1つ又は複数の実施形態は本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は開示される1つ又は複数の実施形態に限定されない。本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0034】
[0045] 記載された実施形態、及び本明細書で「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的実施形態」などに言及した場合、それは記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、それぞれの実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含まないことがあることを示す。さらに、このようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、ある実施形態に関連して特定の特徴、構造、又は特性について記載している場合、明示的に記載されているか、記載されていないかにかかわらず、このような特徴、構造、又は特性を他の実施形態との関連で実行することが当業者の知識の範囲内にあることが理解される。
【0035】
[0046] 「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(on)」、「上(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、図に示すように、ある要素又は機能と別の1つ又は複数の要素又は1つ又は複数の機能との関係を説明するのを容易にするために、本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示されている方向に加えて、使用中又は動作中のデバイスの様々な方向を包含することを意図している。装置は、他の方法で方向付けられてもよく(90度又は他の方向に回転されてもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、同様にそれに応じて解釈され得る。
【0036】
[0047] 本明細書で使用される「約」という語は、特定の技術に基づいて変化し得る所与の量の値を示す。特定の技術に基づいて、「約」という語は、例えばその値の10~30%(例えば、その値の±10%、±20%、又は±30%)の範囲内で変化する所与の量の値を示す可能性がある。
【0037】
[0048] 本開示の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらのいずれかの組み合わせにおいて実施可能である。また、本開示の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって読み取り及び実行され得る機械読み取り可能媒体上に記憶された命令としても実施することができる。機械読み取り可能媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態の情報を記憶又は送信するためのいずれかの機構を含み得る。例えば、機械読み取り可能媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音、又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)、及び他のものを含むことができる。さらに、一定の動作を実行するものとして本明細書ではファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、及び/又は命令を記載することができる。しかしながらそのような記載は単に便宜上のものであり、そういった動作は実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスから得られることは認められよう。
【0038】
[0049] このような実施形態を詳述する前に、本発明の実施形態を実施することができる例示の環境を提示することが有用であろう。
【0039】
[0050] 例示的な反射型リソグラフィシステム
[0051] 図1は、本発明の実施形態を実装することができるリソグラフィ装置100の概略図である。リソグラフィ装置100は、放射ビームB(例えば極端紫外線放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク、レチクル、又は動的パターニングデバイス)MAを支持するように構成され、パターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、基板Wを正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、を含む。また、リソグラフィ装置100は、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを、基板Wのターゲット部分(例えば1つ以上のダイを含む)Cに投影するように構成された反射型投影システムPSも有する。
【0040】
[0052] 照明システムILは、放射ビームBを誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0041】
[0053] 支持構造MTは、基準フレームに対するパターニングデバイスMAの向き、リソグラフィ装置100の設計、及びパターニングデバイスMAが真空環境に保持されているか否かといった他の条件に応じた方法で、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的、真空、静電、又は他のクランプ技術を使用して、パターニングデバイスMAを保持することができる。支持構造MTは、例えば、フレーム又はテーブルとすることができ、必要に応じて固定式又は可動式とすることができる。センサを使用することにより、支持構造MTは、パターニングデバイスMAが、例えば投影システムPSに対して所望の位置にあることを保証できる。
【0042】
[0054] 「パターニングデバイス」MAという用語は、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するために放射ビームBの断面にパターンを付与するのに使用され得る何らかのデバイスを指すものと広義に解釈されるべきである。放射ビームBに付与されたパターンは、集積回路を形成するためにターゲット部分Cに生成されるデバイスにおける特定の機能層に対応する可能性がある。
【0043】
[0055] いくつかの実施形態において、パターニングデバイスMAは、(図1のリソグラフィ装置100におけるように)反射型とすることができる。パターニングデバイスMAの例には、レチクル、マスク、プログラマブルミラーアレイ、又はプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、及びハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスク、さらには多様なハイブリッドマスクタイプ等のマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例は、それぞれが入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個別に傾斜され得る小さいミラーのマトリクス配列を使用する。傾斜させたミラーは、小さいミラーのマトリクスにより反射される放射ビームBにパターンを付与する。
【0044】
[0056] 「投影システム」PSという用語は、用いられる露光放射又は真空の使用のような他の要素に合わせて適宜、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、静電型の光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを包含し得る。その他のガスは放射又は電子を吸収し過ぎる可能性があるため、EUV又は電子ビーム放射には真空環境を使用することができる。従って、真空環境は、真空壁及び真空ポンプを用いてビーム経路全体に提供され得る。
【0045】
[0057] リソグラフィ装置100は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブルWT(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプとすることができる。このような「マルチステージ」機械においては、追加の基板テーブルWTが並行して使用されるか、あるいは1つ以上の基板テーブルWTが露光に使用されている間に、1つ以上の他のテーブルで準備工程を実行することができる。状況によっては、追加のテーブルが基板テーブルWTでない場合もある。
【0046】
[0058] イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。例えば放射源SOがエキシマレーザである場合、放射源SOとリソグラフィ装置100とは別個の物理的実体とすることができる。他の場合、例えば放射源SOが水銀ランプである場合には、放射源SOはリソグラフィ装置100の一体部分とすることができる。いくつかの実施形態において、放射源SOはEUV放射ビームを発生するように構成されている。
【0047】
[0059] 放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターン付与される。リソグラフィ装置100では、放射ビームBはパターニングデバイス(例えばマスク)MAから反射される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAから反射された後に、放射ビームBは投影システムPSを通過する。投影システムPSは放射ビームBを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF2(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、又は静電容量センサ)の助けによって、基板テーブルWTを(例えば、放射ビームBの経路に異なるターゲット部分Cを位置決めするように)正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPM及び別の位置センサIF1を使用して、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めすることができる。マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して、パターニングデバイス(例えばマスク)MA及び基板Wを位置合わせすることができる。
【0048】
[0060] 第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、又は静電容量センサ)の助けにより、(例えば放射ビームBの経路に異なるターゲット部分Cを位置決めするように)基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、(例えばマスクライブラリの機械的な取り出し後又はスキャン中に)第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1Bに図示せず)とを使用して、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。
【0049】
[0061] 一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1のポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けを借りて実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブラインアライメントマークとして周知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0050】
[0062] いくつかの実施形態において、マスクテーブルMT及びパターニングデバイスMAは真空チャンバV内にある可能性があり、真空内ロボットIVR(in-vacuum robot)を用いて、マスク等のパターニングデバイスを真空チャンバ内外へ移動させることができる。真空内ロボットは、任意のペイロード(例えばマスク)を移送ステーションの固定運動学的マウント(kinematic mount)へ円滑に移送するため較正する必要がある。
【0051】
[0063] 図示のリソグラフィ装置100は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0052】
[0064] 1.ステップモードでは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームBに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。
【0053】
[0065] 2.スキャンモードでは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームBに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造(例えばマスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。
【0054】
[0066] 3.別のモードでは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームBに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。パルス放射線源SOを使用することができ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、必要に応じて更新される。この動作モードは、プログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0055】
[0067] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0056】
[0068] 図2は、ソースコレクタ装置SO、照明システムIL、及び投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示す。
【0057】
[0069] ソースコレクタ装置SOは、閉鎖構造220内に真空環境を維持できるように構築及び配置されている。ソースコレクタ装置SOは、ソースチャンバ211及びコレクタチャンバ212を含み、EUV放射を生成し伝送するように構成されている。
【0058】
[0070] EUV放射を生成するには、例えばXeガス、Li蒸気、又はSn蒸気のようなガス又は蒸気によって、EUV放射放出プラズマ210を生成して、電磁スペクトルのEUV範囲内の放射を放出させればよい。少なくとも部分的に電離したEUV放射放出プラズマ210は、例えば放電又はレーザビームによって生成することができる。効率的な放射発生のため、例えば分圧が10PaのXe、Li、Snの蒸気又は他のいずれかの適切なガスもしくは蒸気が必要となることがある。ある実施形態では、励起したスズ(Sn)のプラズマを供給してEUV放射を生成する。
【0059】
[0071] EUV放射放出プラズマ210が放出した放射は、ソースチャンバ211からコレクタチャンバ212内へ、ソースチャンバ211の開口内又は開口の後ろに位置決めされた任意選択のガスバリア又は汚染物質トラップ230(場合によっては汚染物質バリア又はフォイルトラップとも呼ばれる)を介して送出される。汚染物質トラップ230はチャネル構造を含み得る。また、汚染物質トラップ230は、ガスバリア又はガスバリアとチャネル構造との組み合わせを含み得る。本明細書でさらに示す汚染物質トラップ又は汚染物質バリア230は、少なくともチャネル構造を含む。
【0060】
[0072] コレクタチャンバ212は、いわゆるかすり入射型コレクタの場合もある放射コレクタCOを含んでよい。放射コレクタCOは、上流放射コレクタ側251及び下流放射コレクタ側252を有する。コレクタCOを横断する放射は、格子スペクトルフィルタ240で反射して、仮想光源点IFに合焦させることができる。仮想光源点IFは一般に中間焦点と呼ばれ、ソースコレクタ装置は、中間焦点IFが閉鎖構造220の開口219に又はその近傍に位置するように配置される。仮想光源点IFは、放射放出プラズマ210の像である。格子スペクトルフィルタ240は、特に赤外線(IR)放射を抑制するために用いられる。
【0061】
[0073] この後、放射は照明システムILを横断する。照明システムILは、パターニングデバイスMAにおいて放射ビーム221の所望の角度分布を与えるとともにパターニングデバイスMAにおいて所望の放射強度均一性を与えるように配置されたファセットフィールドミラーデバイス222及びファセット瞳ミラーデバイス224を備えてよい。支持構造MTにより保持されたパターニングデバイスMAで放射ビーム221が反射されると、パターン付きビーム226が形成され、このパターン付きビーム226は、投影システムPSによって反射要素228、229を介して、ウェーハステージ又は基板テーブルWTにより保持された基板W上に結像される。
【0062】
[0074] 一般に、照明光学ユニットIL及び投影システムPSには、図示するよりも多くの要素が存在する場合がある。格子スペクトルフィルタ240は、リソグラフィ装置のタイプに応じて任意選択的に存在する場合がある。さらに、図2に示したものよりも多くのミラーが存在する場合があり、例えば投影システムPSには、図2に示したものに比べて1つから6つの追加の反射要素が存在することがある。
【0063】
[0075] 図2に示すようなコレクタ系COは、コレクタ(又はコレクタミラー)の単なる一例として、かすり入射型リフレクタ253、254、及び255を有する入れ子状のコレクタとして示されている。かすり入射型リフレクタ253、254、及び255は、光軸Oを中心として軸方向に対称配置され、このタイプのコレクタ系COは、DPP源と呼ばれることが多い放電生成プラズマ源と組み合わせて好適に用いられる。
【0064】
[0076] 例示的なリソグラフィセル
[0077] 図3は、リソセル又はクラスタと呼ばれることもあるリソグラフィセル300を示す。リソグラフィ装置100はリソグラフィセル300の一部を形成し得る。リソグラフィセル300は、基板に露光前プロセス及び露光後プロセスを実行する1つ以上の装置も含み得る。従来、これらには、レジスト層を堆積するスピンコータSC、露光されたレジストを現像するデベロッパDE、冷却プレートCH、及びベークプレートBKが含まれる。基板ハンドラすなわちロボットROは、入出力ポートI/O1、I/O2から基板を取り出し、それらを様々なプロセス装置間で移動させ、リソグラフィ装置100のローディングベイLBに引き渡す。これらのデバイスは、まとめてトラックと称されることも多く、トラック制御ユニットTCUの制御下にある。TCU自体は監督制御システムSCSによって制御される。SCSは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。従って、これら様々な装置は、スループット及び処理効率を最大化するように動作させることができる。
【0065】
[0078] 例示的な静電クランプ
[0079] 図4A及び図4Bは、いくつかの実施形態に従った、リソグラフィ装置100の動作中に物体403を保持するように構成できる例示的な静電クランプ400及び402の断面図の概略を示す。物体403は、パターニングデバイス(例えばレチクル)又は基板(例えばウェーハ)とすることができる。一例では、静電クランプ400を用いてリソグラフィ装置100の支持構造MT上にパターニングデバイス(例えばレチクル)MAを保持することができ、静電クランプ402を用いて基板テーブルWT上に基板(例えばウェーハ)Wを保持することができる。この例において、静電クランプ400はレチクルクランプ400とも呼ばれ、静電クランプ402はウェーハクランプ402とも呼ばれる。
【0066】
[0080] 一実施形態によれば、静電クランプ400及び402は、クランプ本体404と、誘電板406と、電極408と、を含む。いくつかの実施形態において、静電クランプ400及び402は、クランプ本体404内部に埋め込まれた複数のチャネル410も含む。
【0067】
[0081] クランプ本体404は、両側にある平行な表面404f及び404bを有する。表面404fの方が物体403(例えばレチクル又はウェーハ)に近い。表面404bの方が、リソグラフィ装置100(図1及び図2)の支持構造MT上に配置されたレチクルチャック412(図4Aに示されている)に近い場合がある。表面404bの方が、リソグラフィ装置100(図1及び図2)の基板テーブルWT上に配置されたウェーハチャック413(図4Bに示されている)に近い場合がある。
【0068】
[0082] いくつかの実施形態において、クランプ本体404は、以下で詳述する通り、物体に機械的な支持を与えるように、かつ、静電クランプ400及び402の動作中に静電界を隔離するように構成された絶縁体で作製することができる。いくつかの実施形態において、この絶縁体は超低熱膨張係数を有することができ、例えば、超低膨張シリコンベース材料(例えばCorning社によって製造されたULE(登録商標))、ガラス材料、セラミック材料、シリコンベースのガラスセラミック材料(例えばSCHOTT社によって製造されたZERODUR(登録商標))、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。超低熱膨張の材料を用いることによって、静電クランプ400及び402の高温製造中の熱応力を低減させることができる。大きい熱応力は静電クランプ400及び402に変形を生じさせる可能性があり、基板テーブルWT又は支持構造MT上の静電クランプ400及び402に物体403が搭載されている場合、この変形がクランプ動作中に物体403へ伝達する恐れがある。
【0069】
[0083] いくつかの実施形態において、誘電板406は絶縁体で作製することができ、これも超低熱膨張係数を有し得る。いくつかの実施形態では、誘電板406をクランプ本体404と同一の材料で作製して、異種材料間の熱膨張の不一致に起因した熱応力を最小限に抑えることができる。また、いくつかの実施形態において、誘電板406は、レチクル又はウェーハと実質的に一致した特性を有する材料で作製することができる。
【0070】
[0084] いくつかの実施形態において、誘電板406は複数のバール414も含むことができる。バール414は、クランプ動作中に物体403又はチャック412と接触する。バール414は、物体403との合計接触面積を低減できるように、小さい横方向寸法(例えば図4Aに示されている「L」)を有する。このため、バール414は物体403との密接な接触を促進できる。これは、統計的に、汚染粒子は大きい平坦な表面よりも小さい表面積の方が付着する可能性が低いからである。さらに、特定のクランプ力が与えられた場合、静電クランプ400又は402と物体403との間の圧力は、接触面積が小さくなるにつれて増大する。従って、より密接な接触を形成することができる。
【0071】
[0085] いくつかの実施形態において、静電クランプ400又は402の電極408はクランプ本体404と誘電層406との間に位置付けられ、各電極408は絶縁層416によって別の電極から分離されている。いくつかの実施形態において、電極408及び絶縁層416は同一平面上にある。いくつかの実施形態において、電極408は、例えばアルミニウム、クロム、白金、金、又はそれらの任意の組み合わせ等、金属又は金属合金のような任意の適切な伝導材料で作製することができる。いくつかの実施形態において、絶縁層416は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリイミド、スピンオンガラス等、任意の適切な絶縁体で作製することができる。
【0072】
[0086] 電極408は、100~5000Vの範囲内の電圧を印加され、誘電板406を通して電界を発生することができる。この電界は、物体403の伝導表面上に反対の電荷(「ミラー電荷(mirror charges)」とも呼ばれる)を誘導することができる。電極とミラー電荷との間の引力によって、物体を静電クランプ400又は402と密着した状態に保持する。いくつかの実施形態において、物体403は半導体ウェーハを含み、この半導体ウェーハの裏面の半導体材料は伝導表面を有し得る。このため、静電クランプ402は半導体ウェーハの裏面にミラー電荷を誘導し、従ってウェーハを所定位置に(図4Bでは上に向いている)保持することができる。いくつかの実施形態において、物体403はレチクルを含み、レチクルの裏面は伝導薄膜でコーティングすることができる。同様に、静電クランプ400はレチクルの裏面にミラー電荷を誘導し、これによりレチクルを所定位置に(図4Aでは下を向いている)保持することができる。
【0073】
[0087] いくつかの実施形態において、電極408に対する印加電圧は誘電板406を通して大きい電界を生成できるが、漏れ電流は極めて小さい可能性がある。いくつかの実施形態において、誘電板406の厚さ及び材料は、電極408と物体403との間の漏れ電流が無視できる程度であるように、かつ、高電界に関連した破壊電圧が静電クランプ400及び402の動作電圧範囲よりも大きいように選択される。物体403の伝導表面上に誘導されるミラー電荷は、静電電荷とも呼ばれる。同様に、各電極408と絶縁層416の材料との間の距離は、電極408間の漏れ電流が無視できる程度であるように、かつ、絶縁層416の破壊電圧が静電クランプ400及び402の動作電圧範囲よりも大きいように選択される。
【0074】
[0088] 図4Bにおいて、静電クランプ(例えばウェーハクランプ)402は、図1及び図2の基板テーブルWTに配置されたウェーハチャック413上にウェーハクランプ402を保持するように構成された下部誘電板418、下部絶縁層420、及び下部電極422を含む。下部誘電板418、下部絶縁層420、及び下部電極422の材料及び構造はそれぞれ、誘電板406、絶縁層416、及び電極408と同様である。ウェーハチャック413は典型的に金属材料で作製されるか又は金属材料でコーティングされ、電気的に接地することができる(又は外部電圧を直接印加することができる)ので、ウェーハクランプ402では単一の下部電極422で充分である可能性がある。この例では、電位差(例えば異なる電圧値)に起因して、下部電極422とウェーハチャック413との間に電界が直接確立され得る。このため、ウェーハクランプ402は電気力によってウェーハチャック413に保持することができる。
【0075】
[0089] 図4A及び図4Bは4つのみの電極408を示しているが、静電クランプ400又は402がより少数か又はより多数の電極を含み得ることは理解されよう。同様に、図4Bの下部電極422は単一の電極に限定されない。
【0076】
[0090] いくつかの実施形態において、静電クランプ400及び402のチャネル410は表面404f又は404bと平行である。チャネル410は、限定ではないが、水、空気、アルコール、グリコール、又は相変化冷却材(例えばフレオン、二酸化炭素)等、熱的に調節された液体又は気体を運ぶように構成できる。外部ポンプ(図示せず)を用いて、チャネル410を通る液体又は気体の温度を制御すると共にその循環を駆動することができる。
【0077】
[0091] 熱的に調節された液体又は気体の循環は、静電クランプ400及び402の温度を所望の温度に制御するために役立ち得る。静電クランプ400及び402の温度制御は、熱的に調節された流体によって静電クランプ400及び402から望ましくない熱を吸収することを含み得る。この望ましくない熱は、クランプされた状態の物体403からクランプ表面及び/又はバールを介して静電クランプ400及び402へ伝達され得る。
【0078】
[0092] いくつかの実施形態において、リソグラフィ装置100はEUVシステムである。レチクル又はウェーハ等の物体403は動作中にEUV放射を吸収する可能性があり、吸収された光エネルギによって物体403に熱ヒート(thermal heat)が生じて温度が上昇することで、物体に変形(反り)が発生し、このためリソグラフィ中にパターン転写のエラーが発生する恐れがある。チャネル410に冷却水を流すことにより、静電クランプ400及び402の温度を比較的一定に保持できる。物体403(例えばウェーハ又はレチクル)からの余分な熱は、冷却させたクランプ400又は402を介して放散させることができる。
【0079】
[0093] 図4Bに示されているように、静電クランプ402はウェーハクランプとして使用できる。この例において、静電クランプ402は、ウェーハ403を所定位置に保持すると共にウェーハチャック413に取り付けるため電気力を利用する。電気力は、電極408とウェーハ403上のミラー電荷との間で発生させることができる。また、電気力は、下部電極422とウェーハチャック413(電気的に接地されている)との間でも発生させることができる。
【0080】
[0094] 図4Aに示されているように、静電クランプ400はレチクルクランプとして使用できる。この例において、静電クランプ400は、電極408とレチクルに誘導されたミラー電荷との間の電気力によってレチクル403を所定位置に保持することができる。いくつかの実施形態において、レチクルクランプ400は、表面404bにおける「オプティカルコンタクト」によってレチクルチャック412に取り付けることができる。この例において、「オプティカルコンタクト」は、エポキシ又は他のいずれかの接着材料のようなボンディング材料を用いない、実質的に欠陥の無い高度に研磨された表面間の直接ボンディングと見なされる。「オプティカルコンタクト」は、ボンディング表面間のファンデルワールス力のような分子間相互作用から生じ得る。いくつかの実施形態では、アニールによってファンデルワールス力をより強い共有結合に変換することで、ボンディングした構造を強化することができる。
【0081】
[0095] 集積回路(IC)の製造中、半導体ウェーハに設計パターンを形成するためリソグラフィプロセスが広く用いられる。製造設備において、大量の半導体ウェーハがリソグラフィツールで処理される。特定の時間内に処理することができるウェーハの数(例えば1時間当たりのウェーハ処理数(wafer-per-hour))は、生産性の性能指数である。従って、リソグラフィツールのためのウェーハクランプは、高速かつ容易なウェーハ変更、及び、多数の使用に起因して損傷又は摩耗したウェーハクランプの容易な交換を円滑に行う必要がある。図4Bに示されているウェーハクランプ402はこれらの特徴を実現可能とするが、単一の静電クランプ上の2つの電極は作製することが難しく費用も高い。
【0082】
[0096] 高度な半導体技術ノードは50を超えるリソグラフィレベルを必要とし、各レベルで特別設計のレチクルが用いられるが、レチクルの変更はウェーハの変更よりも低い頻度で行われる。図4Aに示されている静電クランプ400は、レチクル403に近い一方側に電極408を有し、これは作製が容易であり費用も安い可能性がある。しかしながら、レチクルチャック412へのレチクルクランプ400の取り付けは、オプティカルコンタクト(又は直接ボンディング)を介して行われ、これは特別な環境で当業者にしか実行することができない。レチクルクランプ400の交換を必要とする問題が発生した場合は、レチクルクランプ400全体とレチクルチャック412を交換しなければならないが、これらは特別な環境でしか取り外すことができない。この問題は生産性に負の影響を及ぼし、製造コストを上昇させる可能性がある。
【0083】
[0097] 本開示では、二重スタックを備えた静電クランプ及びこれを作製するための方法が開示される。二重スタックを備えた静電クランプは、高速かつ容易なウェーハ/レチクル変更、及び、高速かつ容易なウェーハ/レチクルクランプの変更を行うことができる。開示される静電クランプの二重スタックは並行して製造することができ、これによってサイクルタイム及び歩留まりが改善される。
【0084】
[0098] 二重スタックを有する例示的な静電クランプ
[0099] 図5は、本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタック(例えば第1のスタック501及び第2のスタック502)を備えた例示的な静電クランプ500を示す。静電クランプ500の第1のスタック501は、第1の誘電板506及び第1の電極508を含む。静電クランプ500の第2のスタック502は、第2の誘電板518及び第2の電極522を含む。この例では、第1のスタック501及び第2のスタック502はクランプ本体504において1つに接合されている。第1の誘電板506及び第2の誘電板518は、クランプ本体504の両側に配置されている。第1の電極508は、第1の誘電板506とクランプ本体504との間に挟まれている。第2の電極522は、第2の誘電板518とクランプ本体504との間に挟まれている。いくつかの実施形態において、静電クランプ500の第1及び第2のスタック501及び502の各々は、クランプ本体504内部に埋め込まれた複数のチャネル510を含む。
【0085】
[0100] いくつかの実施形態において、静電クランプ500は、リソグラフィ装置100における動作中にチャック512及び物体503にクランプするよう構成できる。物体503は、パターニングデバイス(例えばレチクル)又は基板(例えばウェーハ)とすることができる。一例では、静電クランプ500を用いて、リソグラフィ装置100の支持構造MTのチャック512上にパターニングデバイス(例えばレチクル)MAを保持することができる。また、別の例では、静電クランプ500を用いて、基板テーブルWTのチャック512上に基板(例えばウェーハ)Wを保持することができる。このように、二重スタックを備えた静電クランプ500はレチクルクランプ又はウェーハクランプとして使用できる。
【0086】
[0101] いくつかの実施形態において、静電クランプ500は、第1の電極508を介して物体503にクランプすることができ、第2の電極522を介してチャック512にクランプすることができる。クランプ動作中、物体503及びチャック512はそれぞれ第1及び第2の誘電板506及び518に接触している。
【0087】
[0102] いくつかの実施形態において、クランプ本体504は、図4A及び図4Bの静電クランプ400又は402のクランプ本体404に用いられている材料と同様の絶縁体で作製することができる。この例では、クランプ本体504は超低熱膨張係数を有する絶縁体で作製することができ、例えば、超低膨張シリコンベース材料(例えばCorning社によって製造されたULE(登録商標))、ガラス材料、セラミック材料、シリコンベースのガラスセラミック材料(例えばSCHOTT社によって製造されたZERODUR(登録商標))、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0088】
[0103] いくつかの実施形態において、第1及び第2の誘電板506及び518は、誘電板406又は418のものと同様の絶縁体で作製することができる。第1及び第2の誘電板506及び518は、超低熱膨張係数を有する絶縁体で作製することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の誘電板506及び518をクランプ本体504と同一の材料で作製して、異種材料間の熱膨張の不一致に起因した熱応力を最小限に抑えることができる。
【0089】
[0104] いくつかの実施形態において、第1及び第2の誘電板506及び518は複数のバール514も含むことができ、バール514は、クランプ動作中に物体503又はチャック512とのより良好な接触を与えることができる。バール514のサイズ及び機能は、図4A及び図4Bに示されているバール414と同様である。
【0090】
[0105] いくつかの実施形態において、静電クランプ500の第1及び第2の電極508及び522は、それぞれ第1及び第2の絶縁層516及び520によって電気的に隔離されている。いくつかの実施形態において、第1及び第2の電極508及び522は、それぞれ第1及び第2の絶縁層516及び520と同一平面上にある。いくつかの実施形態において、第1及び第2の電極508及び522は、例えばアルミニウム、クロム、白金、金、又はそれらの任意の組み合わせ等、金属又は金属合金のような任意の適切な伝導材料で作製することができる。いくつかの実施形態において、第1及び第2の絶縁層516及び520は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリイミド、スピンオンガラス等、任意の適切な絶縁体で作製することができる。
【0091】
[0106] いくつかの実施形態において、第1及び第2の電極508及び522は、図4A及び図4Bの電極408及び422と同様に、100~5000Vの範囲内の電圧を印加され、それぞれ第1及び第2の誘電板506及び518を通して電界を発生することができる。第1及び第2の誘電板506及び518を通した電界は、それぞれ物体503及びチャック512の伝導表面上に反対の電荷(「ミラー電荷」とも呼ばれる)を誘導することができ、これによって、第1の電極508と物体503上のミラー電荷との間、及び、第2の電極522とチャック512上のミラー電荷との間に引力を発生させることができる。このようにして、静電クランプ500は物体503及びチャック512を密着した状態に保持できる。
【0092】
[0107] いくつかの実施形態において、物体503は半導体ウェーハとすることができ、この半導体ウェーハの裏面503bは伝導表面を有し得る。このため、静電クランプ500は半導体ウェーハの裏面503bにミラー電荷を誘導し、従ってウェーハを所定位置に保持することができる。いくつかの実施形態において、物体503はレチクルとすることができ、レチクルの裏面503bは、例えばクロム層のような伝導薄膜でコーティングすることができる。同様に、静電クランプ500はレチクルの裏面503bにミラー電荷を誘導し、これによりレチクルを所定位置に保持することができる。
【0093】
[0108] いくつかの実施形態において、静電クランプ500は、図1及び図2の支持構造MT又は基板テーブルWT上に配置されたチャック512にクランプするように構成できる。いくつかの実施形態において、チャック512は金属材料で作製されるか又は金属材料でコーティングすることができる。この例では、チャック512は電気的に接地するか又は外部電圧を直接印加することができる。従って、第2の電極522及びチャック512に異なる電気的バイアスが印加された場合、これらの間に電界が直接確立され得る。この電界による電気力が、静電クランプ500をチャック512に保持することができる。なお、第1及び第2の電極508及び522の数は図5に示されているものに限定されない。静電クランプ500はより少数か又はより多数の電極を含み得る。これは当技術分野では既知である。
【0094】
[0109] 図4A及び図4Bの誘電板406/418と同様に、第1及び第2の誘電板506及び518の厚さ及び材料は、第1及び第2の誘電板506/518と物体503/チャック512との間の漏れ電流が無視できる程度であるように、かつ、高電界に関連した破壊電圧が静電クランプ500の動作電圧範囲よりも大きいように選択することができる。同様に、第1及び第2の絶縁層516及び520の幅及び材料は、電極間(例えば図5の各第1の電極508の間)の漏れ電流が無視できる程度であるように、かつ、第1及び第2の絶縁層516及び520の破壊電圧が静電クランプ500の動作電圧範囲よりも大きいように選択することができる。
【0095】
[0110] いくつかの実施形態において、静電クランプ500は少なくとも2列のチャネル510を含み、各列は静電クランプ500の表面に対して平行に延出している。一方の列は第1の電極508に近く、他方の列は第2の電極522に近い。図4A及び図4Bのチャネル410と同様に、チャネル510は、限定ではないが、水、空気、アルコール、グリコール、又は相変化冷却材(例えばフレオン、二酸化炭素)等、熱的に調節された液体又は気体を運ぶように構成できる。外部ポンプ(図示せず)を用いて、チャネル510を通る液体又は気体の温度を制御すると共にその循環を駆動することができる。熱的に調節された液体又は気体の循環は、静電クランプ500の温度を所望の温度に制御するために役立ち得る。少なくとも2列のチャネル510の構成によって、静電クランプ500の両側の熱制御を別個に実行できる。例えば、第1の電極508に近い方のチャネル510は冷却水を循環させ、クランプ動作中に物体503を冷却するために使用できる。別の例では、第2の電極522に近い方のチャネル510は温水を循環させて、クランプ動作中にチャック512を室温に保持できるようになっている。
【0096】
[0111] 図6は、本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタック(例えば第1のスタック601及び第2のスタック602)を備えた例示的な静電クランプ600を示す。この例では、第1のスタック601は第2のスタック602の上に積層されている。静電クランプ600の第1及び第2のスタック601及び602は、それぞれ第1及び第2のクランプ本体604及び605を含む。いくつかの実施形態では、第1のクランプ本体604の上に第1の電極608及び第1の誘電板606が配置されている。第2のクランプ本体605上に第2の電極622及び第2の誘電板618が配置されている。第1の電極608及び第1の誘電板606と反対側の第1のクランプ本体604上に、伝導層624が配置されている。この例では、伝導層624、第2の誘電板618、及び第2の電極622は、第1のクランプ本体604と第2のクランプ本体605との間に位置付けられている。いくつかの実施形態において、静電クランプ600は、第1のクランプ本体604内部に埋め込まれた複数のチャネル610及び第2のクランプ本体605内部に埋め込まれた複数のチャネル611を含む。第1及び第2の誘電板606及び618の各々は複数のバール614を含む。また、静電クランプ600は、第1及び第2の電極608及び622をそれぞれ隔離するように構成された第1及び第2の絶縁層616及び620も含む。
【0097】
[0112] いくつかの実施形態において、第1及び第2の誘電板606及び618は図5の静電クランプ500の第1及び第2の誘電板506及び518と同様である。いくつかの実施形態において、第1及び第2の電極608及び622は静電クランプ500の第1及び第2の電極508及び522と同様である。いくつかの実施形態において、第1及び第2の絶縁層616及び620は静電クランプ500の第1及び第2の絶縁層516及び520と同様である。いくつかの実施形態において、第1及び第2のチャネル610及び611は静電クランプ500のチャネル510と同様である。いくつかの実施形態において、バール614は静電クランプ500のバール514と同様である。
【0098】
[0113] いくつかの実施形態において、静電クランプ600は、第1の電極608が特定の電圧で適正にバイアスをかけられた場合に物体603を保持するように構成できる。例えば、第1の電極608に対して正と負の電圧を交互に印加することができる。第1の電極608の各々は、反対のバイアスをかけられる2つの第1の電極608に隣接させることができる。静電クランプ500の第1の電極508と同様、第1の電極608は物体603の伝導表面603b上にミラー電荷を誘導することができる。電界と、それによる第1の電極608と物体603上のミラー電荷との間の電気的引力は、物体603を静電クランプ600と密接に接触した状態に保持するほど強力であり得る。
【0099】
[0114] いくつかの実施形態では、第2の電極622及び伝導層624に特定の電圧を印加して、第2の電極622及び伝導層624の電位が異なるように、これにより第2の誘電板618を通して誘引電界(attractive electrical field)及び電気力を生成できるようになっている。例えば、第2の電極622に正電圧を印加し、伝導層624に負電圧を印加するか又はこれを電気的に接地することができる。別の例では、第2の電極622に負電圧を印加するか又はこれを電気的に接地し、伝導層624に正電圧を印加することができる。第2の電極622と伝導層624との間の電気力は、第1のスタック601及び第2のスタック602を1つの静電クランプ600として共にボンディングするほど強力であり得る。
【0100】
[0115] いくつかの実施形態において、静電クランプ600は、オプティカルコンタクトボンディングとも呼ばれる直接ボンディングを介してチャック612に取り付けることができる。オプティカルコンタクトボンディングは、エポキシ等の接着剤を用いることなく、2つの実質的に欠陥の無い高度に研磨された表面間で行うことができる。オプティカルコンタクトボンディングは、ボンディング表面間のファンデルワールス力のような誘引分子間相互作用から生じ得る。いくつかの実施形態では、ボンディング後のアニールによってファンデルワールス結合の結合力をより強い共有結合に変換することで、オプティカルコンタクトボンディングを強化することができる。
【0101】
[0116] 二重スタックの静電クランプを形成するための例示的な方法
[0117] 図7図9、及び図11は、一実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプを形成するための方法を示すフロー図700、900、及び1100を示す。本明細書で提供される開示を実行するために図7図9、及び図11の全てのステップが必要であるとは限らないことは認められよう。さらに、ステップのいくつかは同時に実行され得るか、又は図7図9、及び図11に示されているものとは異なる順序で実行され得る。フロー図700、900、及び1100は、それぞれ図8Aから図8D図10Aから図10B、及び図12Aから図12Cを参照して説明するものとする。しかしながら、フロー図700、900、及び1100は、これらの例示的な実施形態に限定されない。
【0102】
[0118] 図7は、本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプの第1のスタックを製造するためのフローチャート700を示す。図8Aから図8Dは、フローチャート700に従った様々なプロセスステップにおける第1のスタック800の断面図を示す。
【0103】
[0119] 図7のプロセスステップ702では、図8Aに示されている例示的な構造によって、複数のチャネル810を備えたクランプ本体804を形成する。クランプ本体804は、図5のクランプ本体504及び図6の第1/第2のクランプ本体604/605と同様とすることができる。クランプ本体804は、超低熱膨張係数を有する絶縁体で作製することができ、例えば、超低膨張シリコンベース材料(例えばCorning社によって製造されたULE(登録商標))、ガラス材料、セラミック材料、シリコンベースのガラスセラミック材料(例えばSCHOTT社によって製造されたZERODUR(登録商標))、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0104】
[0120] クランプ本体804の表面を研磨して(又は機械加工して)、約0.5nm以下の二乗平均平方根(RMS:root mean square)ラフネスの平滑性を得ることができる。研磨(又は機械加工)プロセスは、例えば酸化セリウムスラリを用いたガラス又はセラミックのための任意の適切な研磨プロセスを含み得る。
【0105】
[0121] 研磨の後、例えばフッ化水素酸を含む酸混合物を用いてクランプ本体804の表面に酸エッチングを実行することができる。酸エッチングは、クランプ本体804を数ミクロン(例えば約5ミクロン)除去できる。研磨表面からのこの材料除去は、機械加工プロセスによって誘発される可能性のあるクランプ本体804の応力を緩和するのに役立ち得る。
【0106】
[0122] チャネル810は、図5のチャネル510及び図6の第1/第2のチャネル610/611と同様とすることができる。いくつかの実施形態において、チャネル810は、フォトリソグラフィ及びガラスエッチングプロセスを用いて形成できる。なお、図8Aのチャネル810の矩形の断面形状は説明のためのものであって、限定ではない。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に従って、チャネル810は他の断面形状(例えば円錐形、台形)を有することができる。
【0107】
[0123] 図7のプロセスステップ704では、図8Bの例示的な構造によって、クランプ本体804上に1つ以上の電極808を形成する。1つ以上の電極808は、図5の第1の電極508及び図6の第1の電極608と同様とすることができる。1つ以上の電極808の形成は、伝導フィルム層を堆積することと、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いてパターニングすることと、を含む。伝導フィルムは、例えばアルミニウム、クロム、白金、金、又はそれらの任意の組み合わせ等、金属又は金属合金とすることができる。伝導フィルムは、スパッタリング、めっき、熱蒸着、原子層体積(ALD:atomic layer deposition)、又は化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)等、金属に適した任意の従来の方法を用いて堆積できる。いくつかの実施形態において、1つ以上の電極808の形成は、シャドーマスクを用いた堆積も含むことができる。
【0108】
[0124] 図7のプロセスステップ706では、図8Cに示されている例示的な構造によって、クランプ本体804上に絶縁層816を形成する。いくつかの実施形態において、絶縁層816は、図5の第1/第2の絶縁層516/520、及び図6の第1/第2の絶縁層616/620と同様とすることができる。絶縁層816は例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、ポリイミド、スピンオンガラス、又はそれらの任意の組み合わせ等、任意の適切な絶縁体とすることができる。絶縁層816の形成は、堆積及びパターニングを含み得る。絶縁層816は、限定ではないが、CVD、スパッタリング、蒸着、及びスピンオンコーティング(spin-on coating)等、誘電材料に適した任意の従来の方法を用いて堆積することができる。次いで、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて絶縁層816をパターニングすることができる。いくつかの実施形態において、絶縁層816の形成は、例えば化学機械研磨のような、絶縁層816を1つ以上の電極808と同一平面上とすることができる平坦化プロセスも含み得る。
【0109】
[0125] 図7のプロセスステップ708では、図8Dに示されている例示的な構造によって、クランプ本体804上に誘電板806を形成する。いくつかの実施形態において、誘電板806は1つ以上の電極808及び絶縁層816の上に形成することができる。いくつかの実施形態において、誘電板806は第1/第2の誘電板506/518及び第1/第2の誘電板606/618と同様とすることができる。いくつかの実施形態において、誘電板806は超低熱膨張係数を有する絶縁体で作製され得る。いくつかの実施形態では、誘電板806をクランプ本体804と同一の材料で作製して、異種材料間の熱膨張の不一致に起因した熱応力を最小限に抑えることができる。
【0110】
[0126] いくつかの実施形態において、誘電板806は複数のバール814も含む。バール814は、図5のバール514及び図6のバール614とすることができる。バール814は、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて誘電板806をパターニングすることによって形成できる。誘電板806のエッチングは、ウェットエッチング又はドライエッチング(例えばリアクティブイオンエッチング)を含む。なお、バール814の矩形の断面形状は説明のためのものであって、限定ではない。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に従って、バール814は他の断面形状(例えば球形、円錐形、台形)を有することができる。
【0111】
[0127] 図7のプロセスステップ708が完了した後、二重スタックを備えた静電クランプのための第1のスタック800(図8Dに示されている)が完成する。第1のスタック800は、図5の第1のスタック501及び図6の第1のスタック601と同様とすることができる。
【0112】
[0128] 図9は、本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプを製造するためのフローチャート900を示す。図10Aから図10Bは、フローチャート900に従った様々なプロセスステップにおける二重スタックを備えた静電クランプ1010の断面図を示す。
【0113】
[0129] 図9のプロセスステップ902では、二重スタックを備えた静電クランプのための第1のスタックを形成する。第1のスタックは、図7のフローチャート700を用いて形成することができる。第1のスタックの一例は、図8Dに示されている第1のスタック800である。
【0114】
[0130] 図9のプロセスステップ904では、二重スタックを備えた静電クランプのための第2のスタックを形成する。第2のスタックの一例は、図10Aの第2のスタック1000として示されている。第2のスタック1000は、図7のフローチャート700における同様のプロセスステップを用いて形成できる。一例では、第2のスタック1000は単一の電極1022を有し得る。第2のスタック1000の電極の数はより多い可能性があり、本開示の範囲では限定されない。
【0115】
[0131] 図9のプロセスステップ906では、静電クランプの第1のスタック800及び第2のスタック1000をオプティカルコンタクトボンディングによってボンディングする。このようにして、二重スタックを備えた静電クランプ1010を形成する。図10Bは、オプティカルコンタクトボンディングにおける第1のスタック800及び第2のスタック1000の構成を示す。この構成において、第2のスタック1000は上下逆にひっくり返され、ボンディング界面は第1及び第2のスタックのクランプ本体の間にある。ボンディング後の静電クランプ1010は、図5の静電クランプ500とすることができる。
【0116】
[0132] オプティカルコンタクトボンディングプロセスは、オプティカルコンタクトボンディングの前に、ボンディング界面の下面800b及び1000bを研磨及び洗浄することを含み得る。下面800b及び1000bは、限定ではないが、酸化セリウムスラリ研磨プロセスのような任意の適切な研磨プロセスを用いて、約0.5nm以下の二乗平均平方根(RMS)ラフネスに研磨することができる。この後、使用されている基板材料に適した圧力のもとで下面800bを下面1000bに対して押圧することにより、第1のスタック800を第2のスタック1000に直接ボンディングすることができる。任意選択として、二重スタックを備えた静電クランプ1010を約200~1200℃の範囲内の温度でアニールすることで結合を強化してもよい。
【0117】
[0133] オプティカルコンタクトボンディング(直接ボンディングとも呼ばれる)は、一実施形態に従った、エポキシ又は他のいずれかの接着材料のようなボンディング材料を用いない、実質的に欠陥の無い高度に研磨された表面(例えば下面800b及び1000b)間のボンディングである。オプティカルコンタクトボンディングは、ボンディング表面(例えば下面800b及び1000b)間のファンデルワールス力のような誘引分子間相互作用から生じ得る。(上述したように)オプティカルコンタクト結合のアニールによって、例えばボンディング表面間のファンデルワールス結合をより強い共有結合に変換することで、オプティカルコンタクトボンディングした構造を強化することができる。
【0118】
[0134] 図11は、本開示のいくつかの実施形態に従った、二重スタックを備えた静電クランプを製造するためのフローチャート1100を示す。図12Aから図12Cは、フローチャート1100に従った様々なプロセスステップにおける二重スタックを備えた静電クランプ1210の断面図を示す。
【0119】
[0135] プロセスステップ1102では、第1の電極及び第1の誘電板を備えた静電クランプのための第1のスタックを形成する。第1のスタックは図8Dの第1のスタック800とすることができ、図7のフローチャート700を用いて製造することができる。
【0120】
[0136] プロセスステップ1104では、第2の電極及び第2の誘電板を備えた静電クランプのための第2のスタックを形成する。第2のスタックは図10Aに示されている第2のスタック1000とすることができ、図9のプロセスステップ904の記載に従って製造することができる。
【0121】
[0137] プロセスステップ1106では、第2のスタック1000を直接ボンディング(例えばオプティカルコンタクトボンディング)によってチャック1212にボンディングする。図12Aに例示的な構造が示されている。チャック1212は、ウェーハチャック、レチクルチャック、又は真空システムにおける任意の適切なチャックとすることができる。
【0122】
[0138] プロセスステップ1108では、第1のスタック800上に伝導層を配置する。第1の電極及び伝導層は第1のスタックの両側にある。図12Bに例示的な構造1200が示され、単一の電極として機能する伝導層1224が図示されている。しかしながら、伝導層1224(例えば電極)の数はこれに限定されず、任意の適切な数とすればよい。伝導層1224は、図8Bの第1の電極808と同様の材料及びプロセスを用いて形成することができる。
【0123】
[0139] プロセスステップ1110では、第2の電極及び伝導層に異なる電圧を印加することによって第1及び第2のスタックを接合する。図12Cは、接合処理における、第1の電極808及び伝導層1224を備えた第1のスタック1200、並びに第2の電極1022を備えた第2のスタック1000の構成を示す。完成時の静電クランプ1210は、図6の600と同様とすることができる。
【0124】
[0140] 上述したように、第1のスタック800及び第2のスタック1000は製造中に並行して作製することができる。オプティカルコンタクトボンディングによって(図9及び図10に示されているように)、又は、第1及び第2のスタック上の電極で制御される電気力によって(図11及び図12に示されているように)、第1のスタック800及び第2のスタック1000を接合することで、二重スタックを備えた静電クランプを形成できる。これにより、図10Bの二重スタックを備えた静電クランプ1010又は図5の500、及び、図12Cの二重スタックを備えた静電クランプ1210又は図6の600を、それぞれ形成することができる。図5の静電クランプ500又は図6の600は、第1の電極808に電圧を印加することによって動作中に高速かつ容易なウェーハ/レチクルの取り付け及び取り外しを可能とする。一方、静電クランプ500は、第2の電極522の電圧制御によって高速かつ容易なクランプの取り付け及び取り外しも可能とする。また、静電クランプ600は、第2の電極622及び伝導層624の電圧制御によって高速かつ容易なクランプの取り付け及び取り外しも可能とする。
【0125】
[0141] 実施形態は、以下の条項を用いてさらに記載することができる。
1.静電クランプであって、
第1のスタック及び第2のスタックを備え、第1のスタックは第2のスタックに接合され、第1及び第2のスタックの各々は、
クランプ本体と、
クランプ本体上に配置された1つ以上の電極と、
電極上に配置された誘電板と、
クランプ本体内部の複数のチャネルと、
を備える、静電クランプ。
2.第1及び第2のスタックはオプティカルコンタクトボンディングによって接合されている、条項1に記載の静電クランプ。
3.第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある、条項1に記載の静電クランプ。
4.第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、条項3に記載の静電クランプ。
5.クランプ本体は超低膨張係数を有する絶縁体を含む、条項1に記載の静電クランプ。
6.複数のチャネルは熱的に調節された液体又は気体を運ぶように構成されている、条項1に記載の静電クランプ。
7.第1及び第2のスタックの各々は、1つ以上の電極を電気的に隔離するように構成された絶縁層をさらに含む、条項1に記載の静電クランプ。
8.誘電板は複数のバールを含む、条項1に記載の静電クランプ。
9.静電クランプを製造するための方法であって、
静電クランプの第1のスタックを形成することと、
静電クランプの第2のスタックを形成することと、
第1のスタックを第2のスタックと接合することと、
を含む方法。
10.静電クランプの第1及び第2のスタックを形成することは、
クランプ本体に複数のチャネルを形成することと、
クランプ本体上に1つ以上の電極を形成することと、
クランプ本体上に絶縁層を形成することと、
1つ以上の電極上に誘電板を形成することと、
を含む、条項9に記載の方法。
11.誘電板上に複数のバールを形成することをさらに含む、条項10に記載の方法。
12.第1のスタックを第2のスタックと接合することは、
静電クランプの第1及び第2のスタックの下面を研磨することであって、下面及び誘電板は第1及び第2のスタックのクランプ本体の各々の両側にある、下面を研磨することと、
第1及び第2のスタックの研磨した下面間にオプティカルコンタクトボンディングを形成することと、
を含む、条項10に記載の方法。
13.第1のスタックを第2のスタックと接合することは、
第1のスタックの下面に伝導層を配置することであって、第1のスタックの下面及び誘電板はクランプ本体の両側にある、伝導層を配置することと、
第1のスタックの伝送層に第1の電圧を印加することと、
第2のスタックの1つ以上の電極に第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加することと、
を含む、条項10に記載の方法。
14.条項1に記載の静電クランプを含むリソグラフィ装置。
15.パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置と、
パターンの像を基板に投影するように構成された投影システムと、
をさらに備え、基板は静電クランプ上に配置されている、条項14に記載のリソグラフィ装置。
16.第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある、条項15に記載の方法。
17.第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、条項16に記載の方法。
18.パターニングデバイスのパターンを照明するように構成された照明装置であって、パターニングデバイスは静電クランプ上に配置されている、照明装置と、
パターンの像を基板に投影するように構成された投影システムと、
をさらに備える、条項14に記載のリソグラフィ装置。
19.第1のスタックは伝導層を含み、伝導層及び1つ以上の電極はクランプ本体の両側にある、条項18に記載の方法。
20.第1及び第2のスタックは、第1のスタックの伝導層と第2のスタックの1つ以上の電極との間に発生した電気力によって接合されている、条項19に記載の方法。
【0126】
[0142] 本明細書ではリソグラフィ装置における静電クランプの使用について具体的な言及がなされているが、本発明に記載されている静電クランプが他の適用例を有し得ることは理解されよう。他の適用例は例えば、マスク検査装置、ウェーハ検査装置、空間像メトロロジ装置、及び、より一般的には、例えばプラズマエッチング装置又は堆積装置等、真空条件又は周囲(非真空)条件のいずれかで、ウェーハ(もしくは他の基板)又はマスク(もしくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定又は処理する任意の装置における使用である。
【0127】
[0143] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、LCD、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0128】
[0144] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組み合わせを適用することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0129】
[0145] 本明細書中の言い回し又は専門用語は説明を目的とするものであって限定を目的とするものではないことが理解されるべきであり、従って、本明細書の専門用語又は言い回しは、本明細書中の教示に照らして当業者によって解釈されるべきである。
【0130】
[0146] 本明細書で使用される「基板」という用語は、その上に材料層が追加される材料を記述する。一部の実施形態では、基板自体にパターンが付与されると共に、その上に追加された材料にもパターンが付与されるか、又はパターン付与されないままである場合がある。
【0131】
[0147] 本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらのいずれかの組み合わせにおいて実施可能である。また、本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって読み取り及び実行され得る機械読み取り可能媒体上に記憶された命令としても実施することができる。機械読み取り可能媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態の情報を記憶又は送信するためのいずれかの機構を含み得る。例えば、機械読み取り可能媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音、又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)、及び他のものを含むことができる。さらに、一定の動作を実行するものとして本明細書ではファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、及び/又は命令を記載することができるが、そのような記載は単に便宜上のものであり、そういった動作は実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、及び/又は命令を実行する他のデバイスから得られることは認められよう。
【0132】
[0148] 以下の例はこの開示の実施形態を説明するものであるが限定的ではない。本技術分野で通常見られ、当業者に自明と思われる各種の条件及びパラメータのその他の適切な変更形態及び適応形態も本開示の趣旨及び範囲内にある。
【0133】
[0149] 本文では、ICの製造における本発明による装置及び/又はシステムの使用について特に言及しているが、そのような装置及び/又はシステムは他の多くの可能な用途を有することを明確に理解されるべきである。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、LCDパネル、薄膜磁気ヘッドなどに使用できる。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「レチクル」、「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「マスク」、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。
【0134】
[0150] 本発明の特定の実施形態が上に記載されているが、本発明は、記載されている以外の方法で実施され得ることが理解されるであろう。この説明は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0135】
[0151] 特許請求の範囲を解釈するには、「発明の概要」及び「要約書」の項ではなく、「発明を実施するための形態」の項を使用するよう意図されていることを理解されたい。「発明の概要」及び「要約書」の項は、本発明者が想定するような本発明の1つ以上の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明及び添付の特許請求の範囲をいかなる意味でも限定しないものとする。
【0136】
[0152] 以上では、特定の機能の実施態様を例示する機能的構成要素及びその関係を用いて本発明について説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、本明細書では説明の便宜を図って任意に画定されている。特定の機能及びその関係が適切に実行される限り、代替的境界を画定することができる。
【0137】
[0153] 特定の実施形態の前述の説明は、本発明の全体的性質を十分に明らかにしているので、当技術分野の知識を適用することにより、過度の実験をせず、本発明の全体的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に変更及び/又はこれを様々な用途に適応させることができる。したがって、このような適応及び変更は、本明細書に提示された教示及び案内に基づき、開示された実施形態の同等物の意味及び範囲に入るものとする。
【0138】
[0154] 本発明の幅及び範囲は、上述した例示的実施形態のいずれによっても限定されず、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C