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特許7622744液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20250121BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022531754
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022187
(87)【国際公開番号】W WO2021261281
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020110579
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎躍
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳和
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269833(JP,A)
【文献】特開2011-237766(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159733(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098493(WO,A1)
【文献】特開2010-106091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジアミン(1)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体(P)を含有することを特徴とする垂直配向用の液晶配向剤。
【化1】
(Arはフェニレン基を表し、Qは少なくとも1つのナフタレン環を含む2価の有機基を表し、Qと2つの酸素原子のそれぞれとは、前記少なくとも1つのナフタレン環を構成するベンゼン環上で結合し、一方の酸素原子と結合するベンゼン環と、他方の酸素原子と結合するベンゼン環とは、異なる。前記フェニレン基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。)
【請求項2】
Qが下記式(f)で表される炭素数10~40の2価の有機基を表す請求項1に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化2】
(A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいナフタレン環である。X及びXは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。Yは、炭素数1~8のアルキレン基、又は炭素数1~8のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子若しくは硫黄原子を含む2価の有機基である。mは0~2の整数であり、nは、0又は1の整数である。*は結合手を表す。)
【請求項3】
前記ジアミン(1)が、下記式(d-1)~(d-2)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項1又は2に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化3】
【請求項4】
前記重合体(P)が、下記式(S1)~(S3)で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミン(s)を構成成分として含む請求項1~3のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化4】
(X及びXは、それぞれ独立して、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-、-((CHa1-Am1-、又は-(A-(CHa1m1-〔a1は1~15の整数であり、Aは酸素原子、-COO-、又は-OCO-を表し、m1は1~2の整数である。m1が2のとき、複数のa1はそれぞれ独立し、複数のAはそれぞれ独立する。〕を表す。G及びGは、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基及び炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m及びnの合計は1~6である。Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、Rを形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化5】
(Xは、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-NH-、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を表す。Rは炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、Rを形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化6】
(Xは、-CONH-、-NHCO-、-O-、-COO-、-OCO-、-((CHa1-Am1-、又は-(A-(CHa1m1-〔a1は1~15の整数であり、Aは酸素原子、-COO-、又は-OCO-を表し、m1は1~2の整数である。m1が2のとき、複数のa1はそれぞれ独立し、複数のAはそれぞれ独立する。〕を表す。Rはステロイド骨格を有する構造を表す。)
【請求項5】
前記ジアミン(s)が、下記式(d1)又は式(d2)で表されるジアミンである請求項4に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化7】
(Xは、単結合、-O-、-C(CH-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、-(CH-、-SO-、-O-(CH-O-、-O-C(CH-、-CO-(CH-、-CO-(CH-CO-、-NH-(CH-、-NH-(CH-NH-、-SO-(CH-、-SO-(CH-SO-、-CONH-(CH-、-CONH-(CH-NHCO-、又は-COO-(CH-OCO-を表す。mは1~8の整数である。Yは、それぞれ独立して、前記式(S1)~(S3)のいずれかの部分構造を表す。)
【請求項6】
前記式(d1)で表されるジアミンが、下記の式(d1-1)~(d1-18)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項5に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化8】
(nは1~20の整数である。)
【化9】
【請求項7】
前記式(d2)で表されるジアミンが、下記の式(d2-1)~(d2-6)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項5に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化10】
(Xp1~Xp8は、-(CH-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-CHO-、-CHOCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。Xs1~Xs4はそれぞれ独立して、-O-、-COO-又は-OCO-を表す。X~Xは、単結合、-O-、-NH-、又は-O-(CH-O-(mは1~8の整数である。)を表す。R1a~R1hはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記重合体(P)が、下記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分を構成成分として含む請求項1~7のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【化11】
(Xは、下記(x-1)~(x-13)から選ばれる構造を表す。)
【化12】
(R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A及びAは、それぞれ独立して、単結合、エーテル(-O-)、カルボニル(-CO-)、エステル(-COO-又は-OCO-)、フェニレン基、スルホニル基(-SO-)又はアミド基(-CONH-又は-NHCO-)を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。前記式(x-13)において、2個のAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記式(T)のXが、(x-1)~(x-7)、及び(x-11)~(x-13)のいずれかである請求項8に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【請求項10】
前記ジアミン(1)が、前記重合体(P)の全ジアミン成分中、1~100モル%含有される請求項1~9のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【請求項11】
前記ジアミン(s)が、前記重合体(P)の全ジアミン成分中、1~99モル%含有される請求項4~9のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤を用いて形成されてなる垂直配向用の液晶配向膜。
【請求項13】
請求項11に記載の垂直配向用の液晶配向膜を具備する垂直配向型の液晶表示素子。
【請求項14】
以下の工程(A)、(B)、及び(C)を含む、垂直配向型の液晶表示素子の製造方法。
工程(A):請求項1~11のいずれか1項に記載の垂直配向用の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成する工程
工程(B):液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する工程
工程(C):前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、携帯電話、スマートフォンなどの小型用途から、テレビ用、モニター用などの比較的大型の用途まで幅広く使用されている。液晶表示素子は、一般的に、一対の電極基板を所定間隙(数μm)介し互いに対向するように配置するとともに電極基板の間に液晶を封入して構成されている。そして、電極基板の各電極を構成する透明導電膜間に電圧を印加することによって、液晶表示素子における表示を行うようにされている。これら液晶表示素子は、液晶分子の配列状態を制御するために不可欠な液晶配向膜を有する。
【0003】
一方、液晶表示素子としては、電極構造や、使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されている。例えば、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(fringe field switching)方式等の各種のモードが知られている。
なかでも、VA(垂直配向)方式の液晶表示素子は、視野角が広く、応答速度が速く、コントラストが大きく、また、生産プロセス上もラビング処理が不要にできることから、特に、大型化のニーズが高いテレビ用やモニター用を中心に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/117615号
【文献】特開2008-76950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液晶表示素子における上述した透明導電膜は、通常、酸化インジウムを主成分としこれに数%の酸化錫をドープした組成物(ITO)により形成されるが、その屈折率は、液晶配向膜の屈折率と異なり、高い値を有する。このため、表示光源からの光を電極基板に透過させようとした場合、光が各電極基板における透明導電膜と液晶配向膜との境界面で反射されてしまう。その結果、電極基板の光透過率を十分に得ることができず、表示輝度が低下するという不具合を招いている。
特に、近年では4Kや8Kといった超高精細なパネルが開発されているが、これらのパネルではブラックマトリクス(BM)やTFT(Thin Film Transistor)などの占有率が大きくなり、パネルの開口率が低下してしまうため、表示部の透過率向上が重要視されている。
【0006】
そこで、本発明者等は、透明導電膜の屈折率と液晶配向膜の屈折率との差を小さくすれば、上記不具合を解消させ得るという観点から、液晶配向膜の屈折率を高めるためその形成材料につき種々検討した。具体的には、液晶配向膜の屈折率を高めるために、液晶配向膜を形成する液晶配向剤に含有される重合体の種類を種々探索した。
【0007】
その結果、特定の重合体を選択することにより、透明導電膜の屈折率に近似する屈折率を有する液晶配向膜を得ることができたが、一方で、高い屈折率を有する液晶配向膜を形成する重合体は、液晶配向剤の溶剤成分に対する溶解性がさほど良好でないため、液晶配向剤の保存安定性や基板に対する塗布性(印刷性)の点で劣る傾向にあり、更なる改善の余地があることが明らかとなった。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、液晶配向剤の含有成分の溶解性が良好であって、しかも高い屈折率を有する液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する重合体を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記式(1)で表されるジアミン(1)(以下、特定ジアミンともいう。)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体(P)を含有することを特徴とする液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子にある。
【化1】
(Arはフェニレン基を表し、Qは少なくとも1つのナフタレン環を含む2価の有機基を表し、Qと2つの酸素原子のそれぞれとは、上記少なくとも1つのナフタレン環を構成するベンゼン環上で結合し、一方の酸素原子と結合するベンゼン環と、他方の酸素原子と結合するベンゼン環とは、異なる。上記フェニレン基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶配向剤の含有成分の溶解性が良好であって、しかも高い屈折率を有する液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤が得られる。かかる液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、高い屈折率を有するために、液晶表示素子における透明導電膜の屈折率と液晶配向膜の屈折率との差を小さくすることができ、表示品位に優れた液晶表示素子を得ることができる。
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下に述べることが一因と考えられる。すなわち、本発明の重合体では、ナフタレン環をアミノ基の結合位置ではなくジアミン分子の中心に配置しているため、重合体のパッキング性が下がり溶解性が向上すると共に、ナフタレン環の導入によって得られる液晶配向膜の屈折率が高くなったと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の説明において、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表す。また、「ハロゲン原子」として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0012】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、重合体(P)を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0013】
(重合体(P))
重合体(P)は、ジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
重合体(P)は、ポリイミド前駆体及びポリイミドから群から選ばれる少なくとも1種であり、1成分であってもよいし、2成分以上であってもよい。
【0014】
(ジアミン成分)
ジアミン成分は、下記式(1)で表されるジアミン(1)を含む。
【化2】
(上記式(1)において、Ar、Qは、それぞれ上記で定義したとおりである。)
【0015】
なかでも、本発明の効果を得る観点から、Qの炭素数は10~40であることが好ましく、Qは下記式(f)で表される炭素数10~40の2価の有機基であることがより好ましい。
【化3】
(A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいナフタレン環である。X及びXは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。Yは、炭素数1~8のアルキレン基、又は炭素数1~8のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子若しくは硫黄原子を含む2価の有機基である。mは0~2の整数であり、nは、0又は1の整数である。*は結合手を表す。)
【0016】
上記ナフタレン環は、置換基を有していてもよい。ナフタレン環が有していてもよい置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。X及びXは、好ましくは、酸素原子である。
【0017】
上記式(1)で表されるジアミン(1)の好ましい具体例としては、下記式(d-1)~(d-2)が挙げられる。
【化4】
【0018】
本発明の液晶配向剤に含有する重合体(P)は、TN方式、STN方式、VA方式、PSA方式、SC-PVAモードの液晶表示素子用の液晶配向剤に適用する場合、上記式(1)で表されるジアミンに加えて、下記式(S1)~(S3)で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミン(s)を構成成分として含むことが好ましい。重合体(P)において、ジアミン(s)は、ジアミン(1)を構成成分として含むポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の構成成分であってもよいし、ジアミン(1)を構成成分として含むポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種とは異なるポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の構成成分であってもよい。
【化5】
【0019】
式(S1)において、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-、-((CHa1-Am1-、又は-(A-(CHa1m1-〔a1は1~15の整数であり、Aは酸素原子、-COO-、又は-OCO-を表し、m1は1~2の整数である。m1が2のとき、複数のa1はそれぞれ独立し、複数のAはそれぞれ独立する。〕を表す。G及びGは、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基及び炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であって、m及びnの合計は1~6である。液晶配向性を高める観点から、m及びnの合計は、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、Rを形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
また、G、Gにおける2価の環状基としては、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基が挙げられる。これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されてもよい。
【0020】
【化6】
式(S2)において、Xは、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-NH-、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を表す。Rは炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、Rを形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
また、Rは、液晶配向性を高める観点から、炭素数3~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基が好ましい。
【0021】
【化7】
式(S3)において、Xは、-CONH-、-NHCO-、-O-、-COO-、-OCO-、-((CHa1-Am1-、又は-(A-(CHa1m1-〔a1は1~15の整数であり、Aは酸素原子、-COO-、又は-OCO-を表し、m1は1~2の整数である。m1が2のとき、複数のa1はそれぞれ独立し、複数のAはそれぞれ独立する。〕を表す。Rはステロイド骨格を有する構造を表す。また、Rはコレスタニル基、コレステリル基又はラノスタニル基を含む構造が好ましい。
【0022】
式(S1)の好ましい具体例としては、下記式[S1-x1]~[S1-x7]を挙げることができる。
【化8】
【0023】
上記式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。Xは、-(CH-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-CHO-、-CHOCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。Aは、酸素原子又は-COO-*(但し、「*」を付した結合手が(CHa2と結合する)、Aは、酸素原子又は*-COO-(但し、「*」を付した結合手が(CHa2と結合する)を表し、a1及びa3は、それぞれ独立して、0又は1の整数であり、a2は1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す。
【0024】
上記式(S3)の好ましい具体例として、下記式[S3-x]が挙げられる。なお、式[S3-x]中、Xは、式[X1]、式[X2]又は-CH-O-を表し、Colは、式[Col1]、式[Col2]又は式[Col3]を表し、Gは、式[G1]、式[G2]、式[G3]又は式[G4]を表す。式中、「Me」はメチル基を表す。*は結合手を表す。
【0025】
【化9】
【0026】
上記式(S1)~(S3)で表される部分構造を有する好ましいジアミン(s)としては、上記式(S1)~(S3)で表される部分構造を有し、且つ少なくとも1つのベンゼン環を有するジアミンが好ましい。ジアミン(s)として、下記式(d1)又は式(d2)で表されるジアミンが挙げられる。
【化10】
【0027】
式(d1)、(d2)中、Yは、上記式(S1)~(S3)で表される側鎖構造を表す。また、Xは、単結合、-O-、-C(CH-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、-(CH-、-SO-、-O-(CH-O-、-O-C(CH-、-CO-(CH-、-CO-(CH-CO-、-NH-(CH-、-NH-(CH-NH-、-SO-(CH-、-SO-(CH-SO-、-CONH-(CH-、-CONH-(CH-NHCO-、又は-COO-(CH-OCO-を表す。mは1~8の整数である。上記式(d2)において、2個のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
上記式(d1)のジアミンの好ましい具体例としては、下記式(d1-1)~(d1-18)が挙げられる。
【化11】
(nは1~20の整数である。)
【0029】
【化12】
【0030】
上記式(d2)で表されるジアミンとしては、下記式(d2-1)~(d2-6)からなる群から選ばれる構造を挙げることができる。
【化13】
【0031】
上記式中、Xp1~Xp8は、-(CH-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-CHO-、-CHOCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。Xs1~Xs4はそれぞれ独立して、-O-、-COO-又は-OCO-を表す。X~Xは、単結合、-O-、-NH-、又は-O-(CH-O-(mは1~8の整数である。)を表す。R1a~R1hはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。
【0032】
(重合体(P)の製造)
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P)は、1成分又は2成分以上のポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドで構成されてもよい。ここにおいて、ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどのイミド化にすることによりポリイミドを得ることができる重合体である。重合体(P)のより好ましい具体的な態様を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
上記ジアミン(1)と上記ジアミン(s)とを含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(以下、共重合体ともいう);
上記ジアミン(1)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(p-1)と、上記ジアミン(s)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(p-2)との混合物(以下、重合体ブレンドともいう。)など。
上記共重合体または重合体ブレンドは単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0034】
上記重合体(P)のポリイミド前駆体であるポリアミック酸(P)は、上記ジアミン(1)を含有するジアミン成分(好ましくは上記ジアミン(1)に加えてジアミン(s)を含有するジアミン成分)とテトラカルボン酸成分との重合反応により得ることができる。
この場合、ジアミン(1)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、1~100モル%が好ましく、1~99モル%がより好ましく、5~95モル%がさらに好ましい。
【0035】
上記ジアミン(1)に加えてジアミン(s)を使用する場合、ジアミン(s)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、1~99モル%が好ましく、1~95モル%がより好ましい。
【0036】
上記ポリアミック酸(P)の製造に用いられるジアミン成分は、ジアミン(1)及びジアミン(s)以外のジアミン(以下、これらをその他のジアミンともいう。)を含んでいてもよい。以下にその他のジアミンの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、及び下記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシ基を有するジアミン;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル;1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、4-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)-3-フルオロアニリン、ジ(2-(4-アミノフェノキシ)エチル)エーテル、4-アミノ-4’-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、下記式(nh-1)~(nh-6)で表されるジアミン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミン、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリンなどの光重合性基を末端に有するジアミン、下記式(R1)~(R5)などのラジカル開始機能を有するジアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの光照射により増感作用を示す光増感機能を有するジアミン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(z-1)~(z-18)などの複素環を有するジアミン、下記式(Dp-1)~(Dp-9)などのジフェニルアミン骨格を有するジアミン、下記式(5-1)~(5-10)などの基「-N(Boc)」を有するジアミン、下記式(Ox-1)~(Ox-2)などのオキサゾリン構造を有するジアミン、国際公開第2016/125870号に記載のジアミンなど。
【化14】
(式(3b-1)中、Aは単結合、-CH-、-C-、-C(CH-、-CF-、-C(CF-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH)-、-CONH-、-NHCO-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CON(CH)-又は-N(CH)CO-を示し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~4の整数を示し、かつm1+m2は1~4の整数を示す。式(3b-2)中、m3及びm4はそれぞれ独立して、1~5の整数を示す。式(3b-3)中、Aは炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を示し、m5は1~5の整数を示す。式(3b-4)中、A及びAはそれぞれ独立して、単結合、-CH-、-C-、-C(CH-、-CF-、-C(CF-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH)-、-CONH-、-NHCO-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CON(CH)-又は-N(CH)CO-を示し、m6は1~4の整数を示す。)
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
(nは1~6の整数である。)
【化19】
【化20】
【化21】
【0038】
なかでも、その他のジアミンとして、本発明の効果を好適に得る観点から,p-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミン、上記式(5-1)~(5-10)で表されるジアミン、上記式(Ox-1)~(Ox-2)で表されるジアミンが好ましい。
上記ジアミン(1)に加えてその他のジアミンを使用する場合、上記その他のジアミンの使用量は、使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは1~99モル%であり、より好ましくは5~95モル%である。
上記ジアミン(1)及びジアミン(s)に加えてその他のジアミンを使用する場合、ジアミン(s)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、98モル%以下が好ましく、94モル%以下がより好ましい。
【0039】
上記式(5-1)~(5-10)で表されるジアミンの使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは5~40モル%であり、より好ましくは10~40モル%である。
【0040】
PSA方式やSC-PVAモードを用いる液晶表示素子では、応答速度を高める点から、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、光重合性基を末端に有するジアミン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミンは、ポリアミック酸(P)を製造する場合に1種以上用いることができ、その使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは1~40モル%であり、より好ましくは5~40モル%である。
【0041】
(テトラカルボン酸成分)
上記ポリアミック酸(P)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。
【0042】
上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0043】
また、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0044】
なかでも、上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、下記式(T)で表されるものが好ましい。即ち、重合体(P)は、式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分を構成成分として含むことが好ましい。
【化22】
但し、式(T)中、Xは、下記(x-1)~(x-13)からなる群から選ばれる構造を表す。
【0045】
【化23】
【0046】
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A及びAは、それぞれ独立して、単結合、エーテル(-O-)、カルボニル(-CO-)、エステル(-COO-又は-OCO-)、フェニレン基、スルホニル基(-SO-)又はアミド基(-CONH-又は-NHCO-)を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。式(x-13)において、2個のAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
上記式(x-1)のより好ましい具体例として、下記式(X1-1)~(X1-6)が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0048】
【化24】
【0049】
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【化25】
【化26】
【0050】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-7)、及び(x-11)~(x-13)から選ばれるものが挙げられる。
【0051】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、使用される全テトラカルボン酸成分1モルに対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。
ポリアミック酸(P)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、上記式(T)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含有していてもよい。
【0052】
ポリアミック酸(P)の製造は、上記ジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を溶媒中で(縮重合)反応させることにより行われる。溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。
上記溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記の式[D-1]~[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0053】
【化27】
(式[D-1]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素数1~4のアルキル基を表す。)。
【0054】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、重合体を溶解させない溶媒であっても、生成した重合体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、反応液に対するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との合計量は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することができる。
反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成する特定重合体の分子量は大きくなる。
【0055】
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
【0056】
[ポリイミド]
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは上記ポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドである。ポリイミドにおいては、アミック酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0057】
ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドを得る方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0058】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミントリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0059】
ポリイミド前駆体のイミド化の反応溶液から、生成したポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0060】
ポリイミド前駆体及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~1,000,000であり、より好ましくは10,000~150,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。かかる分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性を確保することができる。
【0061】
<末端封止剤>
本発明における重合体(P)を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸成分、及びジアミン成分とともに、適当な末端封止剤を用いて末端封止型の重合体を合成することとしてもよい。末端封止型の重合体は、塗膜によって得られる液晶配向膜の膜硬度の向上や、シール剤と液晶配向膜の密着特性の向上という効果を有する。
本発明における重合体(P)の末端の例としては、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基又はこれらの誘導体が挙げられる。上記末端は、通常の縮合反応により得るか、又は、以下の末端封止剤を用いて、末端を封止することにより得ることができる。
【0062】
末端封止剤としては、例えば無水酢酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、下記式(m-1)~(m-6)で表される化合物、3-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-3,4-ジヒドロフラン-2,5-ジオン、4,5,6,7-テトラフルオロイソベンゾフラン-1,3-ジオン、4-エチニルフタル酸無水物などの酸一無水物;
【化28】
二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジアリルなどの二炭酸ジエステル化合物;アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、ニコチン酸クロリドなどのクロロカルボニル化合物;アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンなどのモノアミン化合物;エチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物などを挙げることができる。
【0063】
末端封止剤の使用割合は、使用するジアミン成分の合計100モル部に対して、0.01~20モル部とすることが好ましく、0.01~10モル部とすることがより好ましい。
【0064】
本発明の液晶配向剤における重合体(P)の含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、30~100質量部がより好ましく、50~100質量部が更に好ましい。
【0065】
(その他の成分)
本発明の液晶配向剤は、例えば、重合体(P)、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物である。
【0066】
本発明の液晶配向剤においては、例えば電気特性、垂直配向性や溶液特性を改善することなどを目的として、重合体(P)のほかに、それ以外の重合体(以下、その他の重合体ともいう。)を含有させてもよい。
その他の重合体の含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、10~90質量部がより好ましく、20~80質量部が更に好ましい。
【0067】
その他の重合体は特に限定されず、例えばポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどの主骨格が挙げられる。なかでも、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、その他の重合体は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
本発明の液晶配向剤は、その他、必要に応じて上記以外の成分を含有していてもよい。当該成分としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ブロックイソシアネート基、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、並びに重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、官能性シラン化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物などが挙げられる。
架橋性化合物の好ましい具体例としては、下記式(CL-1)~(CL-11)で示される化合物が挙げられる。
【化29】
【0069】
液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物としては、3-ピコリルアミンなどの窒素含有芳香族複素環を有するモノアミンが挙げられる。窒素含有芳香族複素環を有するモノアミンを使用する場合は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0070】
官能性シラン化合物の好ましい具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。官能性シラン化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0071】
液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(これらを総称して「良溶媒」ともいう)などを挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0072】
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒の使用が好ましい。併用する有機溶媒の具体例を下記するが、これらに限定されない。
【0073】
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)など。
【0074】
なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。
貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0075】
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールジアセテート、N,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、N-エチル-2-ピロリドンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとエチレングリコールモノブチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとN-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとN,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトンなどを挙げることができる。
【0076】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合、固形分濃度は1.5~4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3~9質量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12~50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1~5質量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3~15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0077】
(液晶配向膜・液晶表示素子)
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤から得られる。本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型の液晶配向膜に用いることができるが、中でもVA方式又は後述するPSAモード等の垂直配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜である。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を具備する。
本発明の液晶表示素子の製造方法の一例は、工程(A)、(B)、及び(C)を含む。
工程(A):本発明の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成する工程
工程(B):液晶分子の層を介して塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する工程
工程(C):一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程
【0078】
本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)~(3)又は工程(1)~(4)を含む方法により製造することができる。
(1)液晶配向剤を基板上に塗布する工程
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。ここで基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0079】
(2)塗膜を焼成する工程
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは先ず予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、より好ましくは40~150℃であり、特に好ましくは40~100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25~10分であり、より好ましくは0.5~5分である。そして溶剤を蒸発させるため、さらに加熱(ポストベーク)工程が実施されることが好ましい。このポストベーク温度は好ましくは80~300℃であり、より好ましくは120~250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5~200分であり、より好ましくは10~100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0080】
上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。配向能付与処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。
【0081】
光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
【0082】
(3)液晶層を形成する工程
(3-1)VA型液晶表示素子の場合
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
【0083】
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0084】
本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により、重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子(以下、PSA型液晶表示素子ともいう。)にも好ましく用いられる。
また、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、上記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子(以下、SC-PVAモード型の液晶表示素子ともいう。)にも用いてもよい。
【0085】
(3-2)PSA型液晶表示素子を製造する場合
重合性化合物を含有する液晶組成物を注入又は滴下する点以外は上記(3-1)と同様にする。重合性化合物としては、例えば下記式(M-1)~(M-7)で表されるような重合性化合物を挙げることができる。
【化30】
【0086】
(3-3)SC-PVAモード型の液晶表示素子を製造する場合
上記(3-1)と同様にした後、後述する紫外線を照射する工程を経て液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。この方法によれば、上記PSA型液晶表示素子を製造する場合と同様に、少ない光照射量で応答速度に優れた液晶表示素子を得ることができる。重合性基を有する化合物は、上記式(M-1)~(M-7)で表されるようなアクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物であってもよく、その含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。また、上記重合性基は液晶配向剤に用いる重合体が有していてもよく、このような重合体としては、例えば上記光重合性基を末端に有するジアミンを含むジアミン成分を反応に用いて得られる重合体が挙げられる。
【0087】
(4)紫外線を照射する工程
上記(3-2)又は(3-3)で得られた一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000~200,000J/mであり、より好ましくは1,000~100,000J/mである。
【0088】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0089】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。また、上記液晶配向剤に含まれる重合体組成物は、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用の液晶配向膜、或いはこれら以外の用途、例えばカラーフィルタの保護膜、フレキシブルディスプレイのゲート絶縁膜、基板材料にも用いることができる。
【実施例
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。化合物の略号、及び各特性の測定方法は以下のとおりである。
【0091】
(テトラカルボン酸二無水物)
DC-1~DC-3:下記式(DC-1)~(DC-3)で表される化合物
【化31】
【0092】
(ジアミン)
DA-1~DA-11:下記式(DA-1)~(DA-11)で表される化合物。
【化32】
【0093】
式(DA-1)で表される化合物は、非特許文献(High Performance Polymers,vol.31(9-10),p1043-1053(2019))に記載の合成法にて合成した。
式(DA-2)で表される化合物は、非特許文献(Separation and Purification Technology,vol.235,116218(2020))に記載の合成法にて合成した。
式(DA-3)で表される化合物は、非特許文献(Polymer Science, Series B: Polymer Chemistry,vol.60(3),273-282(2018))に記載の合成法にて合成した。
【0094】
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0095】
[粘度]
E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃において測定した。
[分子量の測定]
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101、昭和電工社製)、カラム(GPC KD-803,GPC KD-805、昭和電工社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0096】
[ポリアミック酸の合成]
<合成例1>
撹拌装置付き100mL四つ口フラスコに、ジアミン成分としてDA-1を2.05g(6.0mmol)、DA-7を2.80g(14.0mmol)量り取り、NMPを19.4g加えて、撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらテトラカルボン酸二無水物成分としてDC-1を4.26g(19.0mmol)添加し、さらにNMPを17.0g加え、60℃で15時間撹拌してポリアミック酸(A-1、粘度:625mPa・s、数平均分子量:7,094)の溶液を得た。
【0097】
<合成例2~7>
ジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分を下記表1に示すものに変更したこと以外は、合成例1と同様に実施することにより、下記表1に示すポリアミック酸(A-2)~(A-7)の溶液を得た。得られたポリアミック酸の粘度、分子量は、下記表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
[液晶配向剤の調製]
<実施例1>
上記で得たポリアミック酸(A-1)の溶液(6.0g)にNMP(6.0g)、BCS(8.0g)を加え室温で10時間撹拌して、液晶配向剤に占めるポリアミック酸(A-1)の濃度が6質量%、NMPの濃度が54質量%、BCSの濃度が40質量%の液晶配向剤(PAA-1)を得た。
【0100】
<実施例2~3及び比較例1~3及び調製例1>
ポリアミック酸溶液を下記表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様に実施することにより、下記表2に示す液晶配向剤(PAA-2)~(PAA-7)を得た。
【0101】
【表2】
【0102】
<実施例4>
上記で得た液晶配向剤(PAA-1)(4.0g)にNMP(0.6g)、BCS(1.4g)を加え室温で10時間撹拌して、液晶配向剤に占めるポリアミック酸(A-1)の濃度が4質量%、NMPの濃度が46質量%、BCSの濃度が50質量%の液晶配向剤(PAA-r-1)を得た。
【0103】
<実施例5~6及び比較例4~6>
ポリアミック酸溶液を下記表3に示すものに変更したこと以外は、実施例4と同様に実施することにより、下記表3に示す液晶配向剤(PAA-r-2)~(PAA-r-6)を得た。
【0104】
【表3】
【0105】
<実施例7~9及び比較例7~9>
実施例1で得られた液晶配向剤(PAA-1)と調製例1で得られた液晶配向剤(PAA-7)とを、それぞれの質量比が3:7(PAA-7:PAA-1)となるように混合して、室温で3時間攪拌し、実施例7の液晶配向剤(PAA-b-1)を調製した。
また、使用する液晶配向剤の組み合わせを下記表4に示すものに変更した以外は実施例7と同様に実施することにより、それぞれ、下記表4に示す、実施例8~9及び比較例7~9の液晶配向剤(PAA-b-2)~(PAA-b-6)を調製した。
【0106】
【表4】
【0107】
[液晶配向剤の貧溶媒への溶解性]
上記実施例4~6及び比較例4~6で調製した液晶配向剤を、-20℃の冷凍庫で14時間静置した。その後、室温に取り出し、重合体固形分が析出しているか目視で確認した。結果を表5に示す。重合体が溶解していた場合を「〇」、析出していた場合を「×」とした。
【0108】
【表5】
【0109】
[液晶配向膜の屈折率の測定]
上記実施例1~3及び比較例1~3で調製した液晶配向剤を、シリコンウエハーにスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次に、分光エリプソメーター(M-2000、J.A.Woollam社製)を使用し、CAUCHYモデルによるフィッティングを行って、波長250~800nmにおける屈折率を測定した。結果を表6に示す。表6には波長550nmにおける屈折率を記した。屈折率が1.630以上の場合を「優良」とし、1.630未満の場合を「不可」とした。
【0110】
【表6】
【0111】
[液晶配向膜及び液晶セルの作製]
上記実施例7~9及び比較例7~9で調製した液晶配向剤を用いて、以下のようにして液晶セルを作製した。
各液晶配向剤を、画素サイズが100μm×300μmでライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
また、液晶配向剤を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(溶剤型熱硬化タイプのエポキシ樹脂)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。この空セルに重合性化合物を含有する液晶(MLC-3023、メルク社製)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
その後、この液晶セルに15Vの直流電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から325nm以下の波長をカットするフィルターを通した紫外線を10J/cm照射した。なお、紫外線の照度は、ORC社製UV-MO3Aを用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態でUV-FL照射装置(東芝ライテック社製)を用いて紫外線(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射した。
【0112】
[垂直配向性の評価]
上記のようにして作製した各液晶セルの垂直配向性の評価を表7に示す。評価方法は以下のとおりである。各液晶セルをクロスニコルの偏光板で挟み、後部からバックライトを照射した状態で、液晶セルを回転させて、明暗の変化で液晶が垂直配向しているかを目視にて観察した。評価基準は、液晶が垂直配向している場合を「〇」、液晶が垂直配向していない場合を「×」とした。結果を、表7に示す。
【0113】
【表7】