(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法、コントローラ、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/22 20090101AFI20250121BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20250121BHJP
H04W 72/1268 20230101ALI20250121BHJP
H04W 84/12 20090101ALN20250121BHJP
【FI】
H04W8/22
H04W28/18
H04W72/1268
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2023506378
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010310
(87)【国際公開番号】W WO2022195650
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】坂上 裕希
(72)【発明者】
【氏名】南 勝也
(72)【発明者】
【氏名】福井 達也
(72)【発明者】
【氏名】津上 諒平
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515584(JP,A)
【文献】特開2018-011251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークのトラフィックを制御する制御システムであって、
前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントと、
前記端末及び前記アクセスポイントに対して送信制御を行うコントローラと、
を備えており、
前記コントローラは、前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
前記端末は、前記コントローラの制御に従ったパケット送信の
際のパケット量通知に、前記データベースを強制的に更新する強制更新フラグを埋め込んで送信し、
前記コントローラは、受信したパケット量通知に強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する、
制御システム。
【請求項2】
無線ネットワークのトラフィックを制御する制御方法であって、
前記制御方法は、前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントに対してコントローラが行う送信制御であって、
前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
受信したパケット量通知
の内前記コントローラの制御に従った前記端末のパケット送信の際のパケット量通知に
前記データベースを強制的に更新する強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する、
制御方法。
【請求項3】
無線ネットワークのトラフィックを制御するコントローラであって、
前記コントローラは、前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントに対して送信制御を行う装置であって、
前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
受信したパケット量通知
の内前記コントローラの制御に従った前記端末のパケット送信の際のパケット量通知に
前記データベースを強制的に更新する強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する、
コントローラ。
【請求項4】
請求項3に記載のコントローラとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクセスネットワーク内の通信帯域を割り当てる制御システム、制御方法、コントローラ、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、同一のネットワーク基盤上に様々なネットワーク要件をもつ複数のサービスやアプリケーションを収容する検討が進められている。そのためには、“端末から端末まで”や“端末からアプリケーションサーバまで”のEnd-End区間において、同一NWに収容された各サービスやアプリケーションが要求する品質を保証しなければならない。
【0003】
ネットワークのEnd-Endには、無線と有線の区間にわけることができる。その中でも無線区間では、既存技術としてIEEE802.11のEnhanced Distributed Channel Access(EDCA)と呼ばれる優先制御機能が存在する(非特許文献1、2)。
【0004】
EDCAは端末(宛先)単位での制御であり、サービスおよびアプリケーション単位での品質制御を可能とするようなトラフィックフロー単位での制御が困難である問題があるこの問題の解決策としては、端末からのパケット量の通知に基づいて、コントローラが通信帯域を割り当てることが考えられる。
【0005】
しかし、現実の通信には必ず送信から受信まで遅延時間が発生するため、各端末およびアクセスポイントからのパケット量通知とコントローラからのスケジューリング通知は時間差が発生し、実際のバッファに蓄積されたパケット量と送信指示により送信するパケット量に差が生まれる場合がある。例えば、スケジューリング周期内での最大パケット蓄積量が8パケット分だったとしても、スケジューリング周期内でパケット送信が発生した場合、バッファに蓄積したパケット量よりも大きいパケット量送信指示が来ることで、パケット送信効率が低下するという課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEEE 802.11e-2005 - IEEE Standard for Information technology--Local and metropolitan area networks--Specific requirements--Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications - Amendment 8: Medium Access Control (MAC) Quality of Service Enhancements
【文献】QoSを実現する無線LAN規格 IEEE802.11e” 映像情報メディア学会誌 Vol. 57, No. 11 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、スケジューリング周期内でパケット送信が発生した場合であっても、パケット送信効率の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端末は、パケット送信を行った直後のパケット量通知に、送信を実施したバッファのパケット量の更新をコントローラに実行させる強制更新フラグを埋め込む。強制更新フラグがあった場合、コントローラは、その通知のパケット量で強制的にデータベースを更新する。
【0009】
本開示に係る制御システムは、
無線ネットワークのトラフィックを制御する制御システムであって、
前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントと、
前記端末及び前記アクセスポイントに対して送信制御を行うコントローラと、
を備えており、
前記コントローラは、前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
前記端末は、前記コントローラの制御に従ったパケット送信の直後のパケット量通知に、前記データベースを強制的に更新する強制更新フラグを埋め込んで送信し、
前記コントローラは、受信したパケット量通知に強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する。
【0010】
本開示に係る制御方法は、
無線ネットワークのトラフィックを制御する制御方法であって、
前記制御方法は、前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントに対してコントローラが行う送信制御であって、
前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
受信したパケット量通知に強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する。
【0011】
本開示に係るコントローラは、
無線ネットワークのトラフィックを制御するコントローラであって、
前記コントローラは、前記無線ネットワークを介してパケットを相互に伝送する端末及びアクセスポイントに対して送信制御を行う装置であって、
前記端末から受信したパケット量通知に基づいて定められた前記端末のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースを参照し、前記データベースに基づいて前記端末から前記アクセスポイントへのパケット送信を制御し、
受信したパケット量通知に強制更新フラグが埋め込まれている場合、前記データベースにおける前記パケット量通知で通知された端末のバッファのパケット量を当該パケット量通知のパケット量に更新する。
【0012】
本開示は、前記コントローラとしてコンピュータを機能させるためのプログラムである。前記コントローラは、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スケジューリング周期内でパケット送信が発生した場合であっても、パケット送信効率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の制御システムの基本構成の一例を示す。
【
図2】本開示の制御システムのシステム構成の一例を示す。
【
図3】コントローラが備えるデータベースが保持する情報の一例である。
【
図5】スケジューリング周期がパケット量通知周期の1/5の周期であり、合計5パケット分で送信時刻をスケジューリングした場合のパケットスケジューリングの一例を示す。
【
図8】実施形態の本開示の制御システムの動作の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0016】
(基本構成)
まず、本実施形態の制御システムの基本構成を説明する。
図1は、本実施形態の制御システム300を説明する図である。
制御システム300は、無線ネットワーク15のトラフィックを制御する制御システムであって、
無線ネットワーク15を介してパケットを相互に伝送する端末11及びアクセスポイント12と、
端末11及びアクセスポイント12に対して送信制御を行うコントローラ13と、
を備える。
【0017】
本開示の制御システム300は、アクセスポイント12とコントローラ13と複数の端末11とを備えるネットワークにおいて、
コントローラ13は、端末11から受信したパケット量通知に基づいて定められた端末11のバッファ毎のパケット量を記憶したデータベースDB3を参照し、データベースDB3に基づいて端末11からアクセスポイント12へのパケット送信を制御し、
端末11は、コントローラ13の制御に従ったパケット送信の直後に、データベースDB3を強制的に更新する強制更新フラグを埋め込んだパケット量通知を送信し、
コントローラ13は、受信したパケット量通知に強制更新フラグが含まれている場合、データベースDB3における該当端末11のバッファ毎のパケット量を、当該パケット量通知のパケット量に基づいて強制的に更新する。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は、本実施形態の制御システムを説明する図である。本実施形態の制御システムは、N台の端末11、これらの端末11と通信を行うアクセスポイント12、端末11の通信帯域を割り当てるコントローラ13、を備える。端末11、アクセスポイント12及びコントローラ13は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0019】
端末11、アクセスポイント12及びコントローラ13は、端末11からのパケット量の通知に基づいて端末11の通信品質制御を行う機能を備える。具体的には、以下の構成を備える。
端末11は、主信号送受信部MTR1、主信号バッファ部MB1、フロー単位バッファ部FB1#1~#L、アプリケーションAP1#1~#L、スケジューラ部SCH1、パケット量通知部NTF1、制御信号送受信部CTR1を備える。
アクセスポイント12は、主信号送受信部(下位)MTR2、主信号バッファ部MB2、フロー単位バッファ部FB2#1~#K、主信号送受信部(上位)MTRU、パケット量通知部NTF2、スケジューラ部SCH2、制御信号送受信部CTR2を備える。
コントローラ13は、データベース部DB3、スケジューリング部SCH3、制御信号送受信部CTR3を備える。
【0020】
端末11及びアクセスポイント12のそれぞれは、
送信パケットをトラフィックフロー毎に蓄積するバッファ(FB1、FB2)と、
バッファ(FB1、FB2)に蓄積されたトラフィックフロー毎の前記送信パケットの蓄積量をコントローラ13に送信し、コントローラ13からトラフィックフロー毎の前記送信パケットの送信時刻および送信量を受信する装置側送受信部(CTR1、CTR2)と、
前記送信時刻および前記送信量に従ってバッファ(FB1、FB2)内のトラフィックフロー毎の前記送信パケットを無線ネットワーク15に送信する主信号送信部(MTR1、MTR2)と、
を備える。
【0021】
コントローラ13は、
端末11及びアクセスポイント12のそれぞれから前記蓄積量を受信し、端末11及びアクセスポイント12のそれぞれへ前記送信時刻および前記送信量を送信する制御信号送受信部CTR3と、
前記蓄積量に基づいてトラフィックフロー毎の前記送信パケットの前記送信時刻及び前記送信量を決定するスケジューリング部SCH3と、
を備える。
【0022】
制御システムは、主信号(トラフィックのパケット)の通信手段とは別の通信手段でコントローラ13とアクセスポイント12/端末11との間の制御信号を通信する。具体的には、制御信号は、端末11の制御信号送受信部CTR1とコントローラ13の制御信号送受信部CTR3との間、及びアクセスポイント12の制御信号送受信部CTR2とコントローラ13の制御信号送受信部CTR3との間で送受される。
【0023】
各端末11およびアクセスポイント12は、定期的にフロー単位バッファ部(FB1、FB2)に蓄積されたパケット量を制御信号としてコントローラ13に通知する。
端末11は各アプリケーションAP1からのパケットをアプリケーション毎(フロー毎)にバッファFB1に蓄積する。パケット量通知部NTF1は、定期的に各バッファFB1のパケット蓄積量を確認し、各バッファFB1に蓄積されているパケット量を制御信号として制御信号送受信部CTR1を介してコントローラ13へ通知する。本開示では、この制御信号を「パケット量通知」と称する。
なお、フロー単位バッファ部FB1をアプリケーションAP1が所有していてもよい。
【0024】
本開示のパケット量通知部NTF1は、パケットの送信直後のパケット量通知に強制更新フラグの挿入を実行する。強制更新フラグを挿入するパケット量通知は、定期的に行うパケット量通知であってもよいが、本開示ではこれに限定されない。例えば、パケット量通知部NTF1は、定期的なパケット量通知の前に、強制更新フラグを挿入したパケット量通知をコントローラ13に送信してもよい。この場合、端末11は、アクセスポイント12におけるパケットの受信の確認を待たずにパケット量通知を行ってもよいが、アクセスポイント12におけるパケットの受信が確認できたことを契機に、パケット量通知を行ってもよい。
【0025】
また、アクセスポイント12は上位ネットワーク装置50からのパケットをアプリケーション毎(フロー毎)にバッファFB2に蓄積する。パケット量通知部NTF2は、定期的に各バッファFB2のパケット蓄積量を確認し、これを制御信号として制御信号送受信部CTR2を介してコントローラ13へ通知する。
【0026】
コントローラ13は、通知されたパケット蓄積量、端末11、アクセスポイント12、及びフロー単位バッファ(FB1、FB2)の情報を記録し、それを元にバッファ毎の送信時刻と送信量を決定し、各端末11およびアクセスポイント12へ制御信号として通知する。
【0027】
コントローラ13の制御信号送受信部CTR3は、各端末11とアクセスポイント12から制御信号を受信し、制御信号に含まれるパケット蓄積量、端末11、アクセスポイント12、及びフロー単位バッファ(FB1、FB2)の情報をデータベースDB3に整理する。
【0028】
図3は、データベースDB3に整理された情報の一例を説明する図である。
本データベースDB3は、次の3つの情報を整理する。
項番は、端末11とアクセスポイント12の全てのバッファ(FB1、FB2)に対する通し番号である。
ノード番号は、アクセスポイント12又は端末11の番号である。
バッファ番号は、各端末11が保有するバッファFB1の番号、又はアクセスポイント12保有するバッファFB2の番号である。
パケット量は、それぞれのバッファ番号を持つバッファが保持するパケット蓄積量である。例えば、項番K+2は、端末11#1が持つフロー単位バッファ部FB1#2のパケット蓄積量であり、その量は“B12”であることを意味する。
【0029】
コントローラ13のスケジューリング部SCH3は、後述するスケジューリング方式を利用し、データベース部DB3の内容からバッファ毎の送信時刻と送信量を決定する。そして、スケジューリング部SCH3は、決定した送信時刻と送信量を制御信号とし、制御信号送受信部CTR3から端末11やアクセスポイント12へ送信する。
【0030】
各端末11およびアクセスポイント12は、通知された送信時刻と送信量でフロー単位バッファ部(FB1、FB2)が蓄積するパケットを取り出して主信号バッファ部(MB1、MB2)へ入力する。主信号送受信部(MTR1、MTR2)は、主信号バッファ部(MB1、MB2)のパケットを無線ネットワーク15へ送信する。
【0031】
図4は、以上で説明した動作をフローチャートで説明した図である。本実施形態の制御方法は、無線ネットワーク15のトラフィックを制御する制御方法であって、
前記制御方法は、無線ネットワーク15を介してパケットを相互に伝送する端末11及びアクセスポイント12に対してコントローラ13が行う送信制御であって、
端末11及びアクセスポイント12のそれぞれのバッファ(FB1、FB2)にトラフィックフロー毎に送信パケットを蓄積すること(ステップS111、S112、S121,S122)、
それぞれの前記バッファに蓄積されたトラフィックフロー毎の前記送信パケットの蓄積量を前記コントローラに送信すること(ステップS113、S123)、
前記コントローラにて、前記端末及び前記アクセスポイントのそれぞれから受信した前記蓄積量に基づいてトラフィックフロー毎の前記送信パケットの送信時刻及び送信量を決定すること(ステップS131、S132)、
前記コントローラから前記端末及び前記アクセスポイントのそれぞれへ前記送信時刻および前記送信量を送信すること(ステップS133)、及び
前記送信時刻および前記送信量に従って前記端末及び前記アクセスポイントのそれぞれの前記バッファからトラフィックフロー毎の前記送信パケットを前記無線ネットワークに送信すること(ステップS114、S124)
を特徴とする。
【0032】
現実の通信には必ず送信から受信まで遅延時間が発生するため、各端末11およびアクセスポイント12からのパケット量通知とコントローラ13からのスケジューリング通知は時間差が発生し、実際のバッファFB1に蓄積されたパケット量と送信指示により端末11が送信するパケット量に差が生まれる場合がある。例えば、
図5に示すように、スケジューリング周期がパケット量通知周期の1/5の周期であり、コントローラ13が、合計5パケット分で端末11#Nのバッファ番号#Mの送信時刻をスケジューリングした場合、
図6に示すように、スケジューリング周期内での最大パケット蓄積量が8パケット分だったとしても、スケジューリング周期内でパケット送信が発生した場合、バッファに蓄積したパケット量よりも大きいパケット量送信指示が来ることで、パケット送信効率が低下する可能性がある。そこで、本開示の端末11は、パケット送信を行った直後に送信するパケット量通知に強制更新フラグを埋め込み、コントローラ13のデータベースDB3を強制的に更新する。
【0033】
図7に、本実施形態の制御方法の一例を示す。本実施形態の制御方法は、無線ネットワーク15のトラフィックを制御する制御方法であって、端末11#Nのバッファ番号#Mに格納されたパケットを送信する際、以下のステップを実行する。
端末11#Nは、
バッファFB1#Mにパケットが格納されると(S311)、パケット量通知部NTF1がバッファFB1#Mのパケット量をカウントし(S312)、パケット送信直後であるか否かを判定する(S313)。
パケット送信直後である場合(S313においてYes)、パケット量通知部NTF1にて送信直後のバッファFB1のパケット量通知に強制更新フラグを挿入する(S314)。
パケット送信直後でない場合(S313においてNo)、又はステップS114の後、パケット量通知部NTF1がバッファFB1#Mに格納されたパケット量をコントローラ13に通知する(315)。
【0034】
コントローラ13は、端末11#Nからパケット量通知を受信すると、強制更新フラグはあるか否かを判定する(S321)。
強制更新フラグがない場合(S321においてNo)、データベース部DB3に記録された端末11#Nのバッファ番号#Mのパケット量より、通知のパケット量の方が大きいか否かを判定する(S322)。データベース部DB3に記録された端末11#Nのバッファ番号#Mのパケット量より、通知のパケット量の方が小さい場合(S322においてNo)、通知を廃棄する。
強制更新フラグがある場合(S321においてYes)、又はデータベース部DB3に記録された端末11#Nのバッファ番号#Mのパケット量より、通知のパケット量の方が大きい場合(S322においてYes)、更新が必要なバッファ番号#Mのパケット量をデータベース部DB3に記録する(S323)。
そして、コントローラ13は、データベース部DB3の記録から、スケジューリング部SCH3で端末11#Nのバッファ番号#Mの格納パケットの送信時刻と送信量を決定し(S324)、スケジューリング部SCH3で決定した端末11#Nのバッファ番号#Mのパケット送信時刻と送信量を各アクセスポイント12、端末11#Nに通知する(S325)。
【0035】
端末11#Nは、コントローラ13からの通知を受信すると、スケジューリング部SCH3で決定した送信時刻と送信量に従ってスケジューラ部SCH1がバッファ#Mの格納パケットを送信する(S316)。
【0036】
図8に、強制更新フラグを用いてデータベース部DB3の更新を行った場合のパケットスケジューリングの一例を示す。コントローラ13が、合計5パケット分で端末11#Nのバッファ番号#Mの送信時刻T
1と終了時刻(T
1+t
1)をスケジューリングした場合、端末11#Nは、5パケット目を送信した直後のパケット量通知に強制更新フラグを埋め込む。
【0037】
例えば、5パケット目を送信した直後のパケット量通知時の端末11#Nのバッファ番号#Mのパケット量が4の場合、端末11#Nは、バッファ番号#Mのパケット量が4である旨と共に強制更新フラグを埋め込んだパケット量通知をコントローラ13に送信する。コントローラ13はこのパケット量通知を受信すると、端末11#Nから受信した強制更新フラグに従い、データベース部DB3におけるバッファ番号#Mのパケット量を4に更新する。これにより、コントローラ13は、合計5パケット分で送信時刻T2と終了時刻(T2+t2)をスケジューリングすることができる。
【0038】
[スケジューリング方式]
ここで、コントローラ13のスケジューリング部SCH13が行うスケジューリング方式を説明する。
[1]公平にスケジューリング
本スケジューリング方式は、端末11とアクセスポイント12のフロー単位バッファ(FB1、FB2)のうち、パケットが蓄積されているフロー単位バッファの総数で帯域や時間を割る計算を行う。
以下、パラメータを説明する。
端末11とアクセスポイント12を合わせた、パケットが蓄積されているフロー単位バッファの数: n
1cycleの時間: T[sec]
1cycle時間あたりの主信号総送信限界量: Z[Bytes/sec]
最初に蓄積されたパケットを送信する時刻: tstart[sec]
【0039】
この場合、
フロー単位バッファ#Jの送信量S
J[Bytes]は、
【数1】
フロー単位バッファ#Jの送信時刻T
J[sec]は、
【数2】
フロー単位バッファ#Jの送信時刻t
J[sec]は、
【数3】
と計算される。
【0040】
なお、送信を開始するフロー単位バッファの順番は、例えばコントローラ13のデータベース部DB3に整理されている項番の若番から行う、などが考えられる。
【0041】
[2]帯域重み付けを考慮してスケジューリング
本スケジューリング方式は、端末11とアクセスポイント12のフロー単位バッファ(FB1、FB2)のうち、パケットが蓄積されているフロー単位バッファの数とそのパケット蓄積量で決定する。
以下、パラメータを説明する。
フロー単位バッファ#Jのパケット蓄積量: BJ[Bytes]
1cycleの時間: T[sec]
1cycle時間あたりの送信限界量: Z[Bytes/sec]
全フロー単位バッファに蓄積された全パケットを送信するために必要な時間: Tall[sec]
全フロー単位バッファに蓄積されたパケットのうち最初にパケット送信する時刻: tstart[sec]
【0042】
この場合、
【数4】
とすると、
フロー単位バッファ#Jの送信量S
J[Bytes]は、
T
all≦Tの場合、
【数5a】
T
all>Tの場合、
【数5b】
フロー単位バッファ#Jの送信時刻T
J[sec]は、
T
all≦Tの場合、
【数6a】
T
all>Tの場合、
【数6b】
フロー単位バッファ#Jの送信時刻t
J[sec]は、
T
all≦Tの場合、
【数7a】
T
all>Tの場合、
【数7b】
と計算される。
【0043】
なお、Tall>Tの場合、送信しきれないパケットは、次の送信タイミングに繰り越す。また、本実施形態では、コントローラ13が各端末11に割り当てる通信帯域の一例として送信時刻及び送信量を割り当てる例を示すが、本開示はこれらに限定されない。
【0044】
以上説明したように、本開示の実施形態は、
端末11が、パケット送信の直後のパケット量通知に強制更新フラグを挿入し、
コントローラ13が、パケット量通知に埋め込まれた強制更新フラグに基づいて、データベースDB3を強制的に更新する。
これにより、本開示は、スケジューリング周期内でパケット送信が発生した場合であっても、パケット送信効率の低下を防ぐことができる。
さらに、一定周期で通知されたパケット量をコントローラ13のデータベース部DB3で逐次更新することは、パケット量の通知周期が小さく、かつ端末数が多い場合ではコントローラ13への負荷が大きい。この点、本開示は、更新の必要なタイミングでバッファ単位でデータベースを更新するため、コントローラ13への負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11:端末
12:アクセスポイント
13:コントローラ
15:無線ネットワーク
50:上位ネットワーク装置
300:制御システム